平成13(ワ)1346 請負代金請求

裁判年月日・裁判所
平成14年9月5日 札幌地方裁判所
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判決文本文4,471 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,65万9800円及びこれに対する平成12年10月1日から支払済みまで年29.2パーセントの割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,109万9750円及びこれに対する平成12年10月1日から支払済みまで年29.2パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,建物改修工事の請負人である原告が,注文者である被告に対し,工事代金残金109万9750円及び遅延損害金の支払を請求するのに対し,被告が,当該工事の手順には誤りがあり,工事のやり直しが必要であり同金額を上回る損害賠償請求権を取得したとして,これを自働債権とし工事代金残金の債権を受働債権とする相殺の主張をする事案である。 第3 争いのない事実等 1 原告は,被告から,平成12年6月10日,被告肩書地所在の建物(以下「本件建物」という。)の外部改修工事を代金197万9250円(消費税を含む。),遅延損害金年29.2パーセントの約定で請け負い,その後,追加工事を代金22万0500円(消費税を含む。)で請け負った〔争いがない。〕。 2 原告は,平成12年9月上旬ころまでに1の外部改修工事及び追加工事(以下,これらを「本件工事」という。)を完成させ,被告に対し引き渡した〔争いがない。〕。 3 原告は,断熱材であるグラスウールの外側に防水シートであるタイベックを張り,その外側に合板であるOSBを張った上で,胴縁を打ち,その外側に外壁材であるサイディングを張るという手順(以下「本件手順」という。)で,本件工事を施工した〔争いがない。〕。 4 被告は,平成12年12 の外側に合板であるOSBを張った上で,胴縁を打ち,その外側に外壁材であるサイディングを張るという手順(以下「本件手順」という。)で,本件工事を施工した〔争いがない。〕。 4 被告は,平成12年12月15日,原告に対し,本件工事の代金として110万円を支払った〔争いがない。〕。 5 被告は,本件工事はタイベックと合板とを張る順番を誤ったものであり,工事のやり直しが必要であり,本件工事の残代金109万9750円を上回る損害賠償請求権を取得したとして,本件口頭弁論期日において,これを自働債権とし本件工事の残代金109万9750円の債権を受働債権とする相殺(以下「本件相殺」という。)の意思表示をした〔顕著な事実〕。 第4 争点 1 本件手順が請負の仕事の目的物の瑕疵に当たるか。 2 1で瑕疵に当たる場合に,被告が取得した損害賠償請求権の金額第5 争点に対する判断 1 争点1(瑕疵該当性)について(1) 防水シートは,①雨水及び外気が断熱材の内部に入ることを防ぐ,②断熱材の水蒸気の放出を妨げないように通気を確保するのみならず〔甲3の2丁,A証人8項〕,③サイディングの内側にある材料を漏水から保護するという機能を有し,サイディングのすぐ内側に設けられる通気層に面して設置されることが,防水シートの設置方法として通常備えるべき性状であるということができる〔乙1の2頁以下,乙4資料1,資料5,乙10の5頁〕(これと異なる設置方法が広く行われているとすれば,それらは通常備えるべき性状を欠いているということができる。また,本件手順を正当とする文献的根拠は証拠に現れていない。)。 (2) しかし,本件手順においては,防水シートの外側に合板が張られていることから,②の機能が十分に果たされているとはいい難い上に,合板に対しては③の機能は全く果たされておらず〔乙1の いない。)。 (2) しかし,本件手順においては,防水シートの外側に合板が張られていることから,②の機能が十分に果たされているとはいい難い上に,合板に対しては③の機能は全く果たされておらず〔乙1の6頁,乙4の3丁〕,(1)で述べた通常備えるべき性状を欠いているということができる。 (3) この点について,被告のB工事部長(以下「B」という。)は,まず,本件手順においても合板の外側に通気層が確保されていることから,②の機能に欠けるところはない旨の陳述をする〔甲4〕。 しかし,本件手順のように防水シートが合板の内側に設置される場合には,合板が通気性に乏しいと考えられることに照らし,防水シートがサイディングのすぐ内側に設けられる通気層に面して設置される場合に比較して,②の機能は相当程度阻害されていると考えることができる〔A証人18ないし22項〕。 (4) また,Bは,本件工事は既存の住宅の改修工事であり,新築の場合と同程度の気密,防湿施工ができないと推測されるとして,本件工事においては防水シートはあくまで①の機能を目的とするものである旨の陳述をする〔甲4〕。 しかし,防水シートが合板の外側に設置される場合には,合板に対する③の機能について,たとえ新築の場合と同程度の効果が期待できないとしても,相当程度の効果が期待できると考えられることからすると,本件手順において合板に対する③の機能が度外視されていることは,防水シートの設置方法として通常備えるべき性状を欠いているということができる。 (5) さらに,原告のC一級建築士(以下「C」という。)は,本件工事において合板の設置が必ずしも必要なものではなかった旨の陳述をする〔甲3〕。 しかし,現実に合板が設置されている以上は,合板に対しても③の機能を果たさせることが望ましく,そうすることが防水シート 事において合板の設置が必ずしも必要なものではなかった旨の陳述をする〔甲3〕。 しかし,現実に合板が設置されている以上は,合板に対しても③の機能を果たさせることが望ましく,そうすることが防水シートの設置方法として通常備えるべき性状であると考えることができる。 (6) また,Cは,本件工事に使用された合板であるOSBは耐久性が強く,雨水が浸入しても剥離又は腐食することは考えられない旨の陳述をする〔甲7,8〕。 しかし,防水シートが合板の外側に設置される場合には,合板に対して雨水が浸入し合板に負荷がかかる危険性が低減すると考えられることからすると(合板に対して雨水が浸入することがないのであれば,合板の雨水に対する耐久性を云々すること自体が必要でなくなる。),本件手順において防水シートが合板の内側に設置されていることは,防水シートの設置方法として通常備えるべき性状を欠いているということができる。 (7) 加えて,原告は,本件工事が被告が居住しながらの工事であったことから,雨水が断熱材を通して室内に進入することや,断熱材が雨水で濡れることにより被告が不信を抱くことを防止するために本件手順を選択したところ,本件手順でも工法上問題はない旨の主張をし,原告のD工事部係長は,これに沿う陳述や,工期が短い上に天候の悪くなる時期であった旨,本件工事以前に被告の妻であるEから種々のクレームを受けたことがあり,本件工事に際しても同人からのクレームに神経を使っていた旨の陳述をする〔甲11の7ないし9項〕。 しかし,当該事情は,原告の過失の有無に関する事情とはいうことはできても(なお,請負人の担保責任は,無過失責任であると解される。),本件工事の仕事の目的物に瑕疵があるか否かという客観的性状に関する事情とはいうことができない。 (8) したがって,本件手順は防水 きても(なお,請負人の担保責任は,無過失責任であると解される。),本件工事の仕事の目的物に瑕疵があるか否かという客観的性状に関する事情とはいうことができない。 (8) したがって,本件手順は防水シートの設置方法として通常備えるべき性状を欠いているということができるから,本件工事の仕事の目的物には,瑕疵があるということができる。 2 争点2(損害額)について(1) 本件工事の仕事の目的物の瑕疵による損害額は,本件工事に瑕疵がない場合すなわち合板を張った上で防水シートを張るという手順で行われた場合の価値と,現況による価値との差額をもって算定することが相当である(篠塚昭次=前田達明編「講義債権各論」188頁(2))。 (2) そして,本件工事に際し本件手順が採られたことにより,本件工事の目的物には,②の機能が十分に果たされないおそれや,合板に対し③の機能が果たされていないことから合板等が劣化するおそれ〔乙1の6頁〕,さらには具体的損害が発生した場合に建材メーカーによる10年間の保証〔乙15〕を受けられないおそれ〔乙8〕が生じていることが認められるが,これらはいずれも可能性の域を出るものではなく,雨漏り等の具体的損害が発生している事実を認めるに足りる証拠はない。 (3) このように,本件工事の目的物は,現況でも相応に外壁としての機能を果たしていることが窺われることからすると,全く無価値であるとはいい難いから,工事のやり直しの費用をもって損害額を算定することは相当とはいうことができない(最高裁判所昭和58年1月20日判決・判例時報1076号56頁は,比較的軽微な瑕疵があるがその修補に著しく過分の費用を要する場合において,修補に代えて改造工事費用について損害賠償請求をすることは許されないとしている。)。 (4) 以上のとおり,本件工事の仕事の目 比較的軽微な瑕疵があるがその修補に著しく過分の費用を要する場合において,修補に代えて改造工事費用について損害賠償請求をすることは許されないとしている。)。 (4) 以上のとおり,本件工事の仕事の目的物の瑕疵による損害額は,損害が未だ具体化していないため算定が困難であるので,民事訴訟法248条の適用により,本件建物が築後20年を経過していることや〔F証人3項〕,1(6)で述べたとおり本件工事に使用された合板であるOSBが耐久性の強いものであることに照らし,本件建物の耐用年数内に具体的損害が発生する蓋然性が必ずしも高いとはいえないことを考慮の上,本件工事代金計219万9750円の2割に相当する43万9950円をもって相当な損害額と認定することが相当である。 3 以上によると,本件工事の残代金109万9750円の債権は,本件相殺により,43万9950円の範囲で消滅しているということができるから,原告の請求は,109万9750円から43万9950円を控除した65万9800円及びこれに対する平成12年10月1日から支払済みまで約定の年29.2パーセントの割合による遅延損害金の限度で,理由がある。 4 なお,仮執行宣言については,損害額の算定について民事訴訟法248条を適用したことに照らし,これを付さないこととする。 札幌地方裁判所民事第2部裁判官岩松浩之

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