平成21(ワ)4064 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年10月15日 大阪地方裁判所
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判決文本文52,241 文字)

主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告らは,原告Aに対し,連帯して418万円及びこれに対する平成21年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告国は,原告Bに対し,616万円及びこれに対する平成21年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 紛争の概要原告らは,戦没者等の妻に対する特別給付金を受給する権利を有していたが,消滅時効により,その権利を失った者である。 原告らは,本件において,被告らが個別請求指導(個別制度案内,個別通知)を怠った違法行為によって権利が時効消滅したと主張するとともに,被告国が消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない立法不作為も違法行為に該当すると主張する。そして,原告らは,被告らに対し,国家賠償法1条1項に基づき,損害賠償(各訴状送達の日の翌日である平成21年4月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む。)を求めている。 これに対し,被告らは,原告らの請求を争い,個別請求指導を行う法的義務はなく,また,消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない立法不作為は裁量の範囲内であると主張している。 法令の定め⑴戦没者等の妻に対する特別給付金(以下「特別給付金」という。)は,戦没者等の妻に対する特別給付金支給法(昭和38年法律第61号。以下「支給法」という。)に基づき支給されるものである。 支給法は,特別給付金の支給に関し必要な事項を規定する法律であり(支 給法1条),次のとおり定めている。 「戦没者等の妻」とは,昭和12年7月7日以後に死亡した者(同日前の負傷又は疾病により死亡した者を除く 金の支給に関し必要な事項を規定する法律であり(支 給法1条),次のとおり定めている。 「戦没者等の妻」とは,昭和12年7月7日以後に死亡した者(同日前の負傷又は疾病により死亡した者を除く。)の妻(婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)であったことにより,昭和38年4月1日において支給法2条各号に掲げる給付を受ける権利を有する者をいう。同給付として,死亡した者が,恩給法の一部を改正する法律(昭和21年法律第31号)による改正前の恩給法(大正12年法律第48号)19条に規定する軍人,準軍人その他もとの陸軍又は海軍部内の公務員又は公務員に準ずべき者(戦時又は事変に際し臨時特設の部局又は陸海軍の部隊に配属せしめたる文官補闕の件(明治38年勅令第43号)に規定する文官を含む。)であったことにより支給される恩給法75条1項2号に規定する扶助料等が掲げられている。(支給法2条)支給法3条1項は,戦没者等の妻には,特別給付金を支給するとし(昭和38年4月1日を基準日とする特別給付金),同条2項は,戦没者等の妻であって,同条1項の特別給付金を受ける権利を取得した日から10年を経過した日において同法2条各号に掲げる給付等を受ける権利を有するものには,特別給付金を支給する(昭和48年4月1日を基準日とする特別給付金),同法3条3項は,同条2項の特別給付金を受ける権利を取得した者であって,当該特別給付金を受ける権利を取得した日から10年を経過した日において同法2条各号に掲げる給付等を受ける権利を有するものには,特別給付金を支給する(昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金),同法3条4項は,同条3項の特別給付金を受ける権利を取得した者であって,当該特別給付金を受ける権利を取得した日から10年を経過した日 給付金を支給する(昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金),同法3条4項は,同条3項の特別給付金を受ける権利を取得した者であって,当該特別給付金を受ける権利を取得した日から10年を経過した日において同法2条各号に掲げる給付等を受ける権利を有するものには,特別給付金を支給する(平成5年4月1日を基準日とする特別給付金),同法3条5項は,同条4項の特別給付金を受ける権利を取得した者であって,当該特別給付金を受ける権利を取得した日から10年を経過した日において同法2条各号に掲げる給付 等を受ける権利を有するものには,特別給付金を支給するとしている(平成15年4月1日を基準日とする特別給付金)。ただし,同法3条2項は昭和48年法律第64号によって追加された規定,同条3項は昭和58年法律第30号によって追加された規定,同条4項は平成5年法律第45号によって追加された規定,同条5項は平成15年法律第15号によって追加された規定である。 特別給付金を受ける権利の裁定は,これを受けようとする者の請求に基づいて,厚生労働大臣(平成11年法律第160号による改正前は,厚生大臣。 ただし,本判決においては,特に区別せず「厚生労働大臣」を用いることがある。)が行なう(支給法3条6項)。 特別給付金の額は,昭和38年4月1日を基準日とする特別給付金にあっては20万円,昭和48年4月1日を基準日とする特別給付金にあっては60万円,昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金にあっては120万円,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金にあっては180万円,平成15年4月1日を基準日とする特別給付金にあっては200万円とし,それぞれ10年以内に償還すべき記名国債をもって交付する(支給法4条1項)。 特別給付金を受ける権利は,3年間行わな 円,平成15年4月1日を基準日とする特別給付金にあっては200万円とし,それぞれ10年以内に償還すべき記名国債をもって交付する(支給法4条1項)。 特別給付金を受ける権利は,3年間行わないときは,時効によって消滅する(支給法6条)。 支給法に規定する厚生労働大臣の権限に属する事務の一部は,政令で定めるところにより,都道府県知事が行うこととすることができる(支給法12条)。 支給法に特別の規定がある場合を除くほか,特別給付金に係る請求又は届出の経由に関して必要な事項は政令で,支給法の実施のための手続その他その執行について必要な細則は厚生労働省令(平成11年法律第160号による改正前は,厚生省令)で定める(支給法13条)。 ⑵戦没者等の妻に対する特別給付金支給法施行令(昭和38年政令第125 号)3条(平成11年政令第393号による改正前は,2条)は,特別給付金を受ける権利の裁定は,死亡した者の除籍当時の本籍地の都道府県知事が行うこととしている。 (3)戦没者等の妻に対する特別給付金支給法施行規則(昭和38年厚生省令第13号)4条1項は,戦没者等の妻に対する特別給付金請求書は,請求者の居住地の市町村長,都道府県知事を順次経由して,裁定を行う都道府県知事に提出するものとしている。 争いのない事実等⑴当事者ア原告Aは,昭和20年7月26日に日本陸軍の兵として戦死したC(除籍当時の本籍地:高知県)の妻である。 原告Aは,恩給法による公務扶助料の支給を受けており,昭和38年4月1日,昭和48年4月1日,昭和58年4月1日,平成5年4月1日及び平成15年4月1日の各時点において,戦没者等の妻に該当し,特別給付金の支給を受ける権利を有していた。 原告Aは,昭和61年5月大阪 48年4月1日,昭和58年4月1日,平成5年4月1日及び平成15年4月1日の各時点において,戦没者等の妻に該当し,特別給付金の支給を受ける権利を有していた。 原告Aは,昭和61年5月大阪市d区から同市e区に,平成11年1月同市f区に,平成14年3月同市g区にそれぞれ転居した(甲2)。 イ原告Bは,昭和20年3月に日本陸軍の兵として戦死したH(除籍当時の本籍地:三重県)の妻である。 原告Bは,恩給法による公務扶助料の支給を受けており,昭和38年4月1日,昭和48年4月1日,昭和58年4月1日,平成5年4月1日及び平成15年4月1日の各時点において,戦没者等の妻に該当し,特別給付金の支給を受ける権利を有していた。 原告Bは,昭和48年1月三重県松阪市から大阪府豊中市に,昭和53年8月大阪府箕面市にそれぞれ転居した(甲4)。 ⑵原告らに対する特別給付金の支給状況等 ア原告Aは,昭和48年4月1日及び昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の支給を受けたが,平成5年4月1日及び平成15年4月1日を基準日とする特別給付金については,支給を請求しなかったため,3年間の経過による消滅時効によって失権した。 イ原告Bは,昭和38年4月1日を基準日とする特別給付金の支給を受けたが,昭和48年4月1日,昭和58年4月1日,平成5年4月1日及び平成15年4月1日を基準日とする特別給付金については,支給を請求しなかったため,3年間の経過による消滅時効によって失権した。 争点 ⑴被告国に,昭和48年4月1日を基準日とする特別給付金について,公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成した上,原告Bに対する個別請求指導を怠った違法行為があるか。 ⑵被告国に,昭和58 月1日を基準日とする特別給付金について,公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成した上,原告Bに対する個別請求指導を怠った違法行為があるか。 ⑵被告国に,昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金について,公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成した上,原告Bに対する個別請求指導を怠った違法行為があるか。 ⑶被告らに,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金について,下記アからウまで記載の事項を理由とする,原告らに対する個別請求指導を怠った違法行為があるか。 ア公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成した上,個別請求指導を行わなかったこと。 イ被告国が個別請求指導を指示したのに,被告大阪府ないし被告大阪市がこれに反したことなど。 ウ特別給付金の前回受給者と非受給者を差別的に取り扱い,前者に対してのみ個別請求指導を行ったこと。 ⑷被告国に,平成15年4月1日を基準日とする特別給付金について,下記ア,イ記載の事項を理由とする,原告らに対する個別請求指導を怠った違法行為があるか。 ア公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成した上,個別請求指導を行わなかったこと。 イ特別給付金の前回受給者と非受給者を差別的に取り扱い,前者に対してのみ個別請求指導を行ったこと。 ⑸被告国に,特別給付金の消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない違法な立法不作為があるか。 ⑹因果関係の有無⑺損害の有無及びその額⑻除斥期間の成否第3争点に対する当事者の主張 争点⑴(昭和48年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)及び争点⑵(昭和58年 損害の有無及びその額⑻除斥期間の成否第3争点に対する当事者の主張 争点⑴(昭和48年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)及び争点⑵(昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)について(原告Bの被告国に対する主張)⑴特別給付金は,恩給法による公務扶助料を受けている戦没者の妻を対象者とするもので,公務扶助料の低額性を補う付加的な給付という性格を有する。 そして,支給法の制定過程においては,衆議院社会労働委員会の審議において,厚生省援護局長が,次のとおり答弁している。すなわち,特別給付金は,恩給(公務扶助料)なり遺族年金なりを前提としているところ,その受給者名簿はあるので,その名簿に基づいて個別請求指導をし,消滅時効による失権がないように,受給権者の99パーセント程度が請求する状態になるよう努めるし,また,そうしないといけないというのである。これが支給法の趣旨である。(甲9・27頁)被告国(厚生省援護局)は,以上の特別給付金の趣旨及び支給法制定時の議論に加え,3年という短期消滅時効を設定したこととの関係で,特別給付金の受給権者の99パーセント程度が支給を請求する状態を作らなければな らなかった。 ⑵具体的には,次のとおりである。 被告国(総理府恩給局)は,昭和48年4月1日及び昭和58年4月1日の時点において,恩給法の公務扶助料を受ける権利を有する者の氏名・住所のデータを有していた。同データは,平成16年3月までは,すべての受給者について,その誕生月ごとに,受給権存否の調査を行い,また,受給権調査申立書及び住所変更届の提出を義務付けて,受給者の生存及び住所を確認していたもので,正確な氏名・住所のデータであ ,すべての受給者について,その誕生月ごとに,受給権存否の調査を行い,また,受給権調査申立書及び住所変更届の提出を義務付けて,受給者の生存及び住所を確認していたもので,正確な氏名・住所のデータであった(甲28)。 被告国(厚生省援護局)は,扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成し,これを都道府県に送付した上,都道府県が市町村を通じて,昭和48年4月1日及び昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の受給権者に対して個別請求指導を行うよう指示すべきであった。 また,被告国(厚生省援護局)は,併せて,都道府県及び市町村に対し,転居した者及び郵便が届かなくなった者をどう扱うかについて,的確な指示をすべきであった。 ⑶しかし,被告国(厚生省援護局)は,以上の措置を怠った。これは,国家賠償法1条1項における違法行為である。 (被告国の原告Bに対する主張)⑴国家賠償法1条1項における違法は,最高裁判所平成17年9月14日大法廷判決(民集59巻7号2087頁)において「国賠法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである。」と判示されたとおり(最一小判昭和60年11月21日民集39巻7号1512頁も同旨。),保護法益が侵害されたことを前提として,公務員が個別の国民に対して負担 する職務上の法的義務に違背することをいう。公務員の職務上の法的義務の存否の基準に関しても,当該公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく,漫然と当該行為をしたかどうかが基準とされるべきである。 そして,法律による行政の原理によれば,違法性判断の前提となる公 の基準に関しても,当該公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく,漫然と当該行為をしたかどうかが基準とされるべきである。 そして,法律による行政の原理によれば,違法性判断の前提となる公務員の職務上の法的義務は,基本的に法令の規定によって生じることとなる。国家賠償を請求する者は,公務員の職務上の法的義務の内容を法令の根拠に基づいて特定する必要がある。 しかし,原告Bは,特別給付金の受給権者に対して個別請求指導等を行わせるべき公務員の職務上の法的義務が,いかなる法令上の根拠に基づき発生するのかを具体的に主張せず,昭和38年の衆議院社会労働委員会における厚生省援護局長の発言等を主張するのみである。原告Bの主張は,公務員の職務上の法的義務の内容を法令の根拠に基づいて特定しておらず,失当である。 ⑵そもそも,法令の国民への周知は,基本的には,官報の掲載をもってすれば足りると解される(最大判昭和32年12月28日刑集11巻14号3461頁)。被告国は,支給法(改正法を含む。)を官報によって公布しているのであって,それ以上の行為をすべき国家賠償法上の法的義務はない。 また,支給法は,特別給付金の支給について申請主義を採用し,権利の裁定を都道府県が処理する事務と定めており,また,法令上も,特別給付金制度の広報,周知徹底を法的義務として定めた明文の規定は存在しない。これらのことからすると,特別給付金の受給権者に対して個別請求指導等を行わせることが,被告国又はその公務員の職務上の法的義務になるとは解されない。 なお,この点に関し,国が児童扶養手当に関する広報・周知徹底義務を怠ったため,出生時から認定請求時までの児童扶養手当相当額の損害を被ったと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,国に対して賠償を求めた事案につ 点に関し,国が児童扶養手当に関する広報・周知徹底義務を怠ったため,出生時から認定請求時までの児童扶養手当相当額の損害を被ったと主張して,国家賠償法1条1項に基づき,国に対して賠償を求めた事案について,広報,周知徹底義務は国家賠償法上の法的義務とはならない旨判示 した大阪高等裁判所平成5年10月5日判決(訟務月報40巻8号1927頁)がある。 ⑶したがって,被告国の公務員には,特別給付金の受給権者に対して漏れなく個別請求指導を行わせるべき法的義務はなく,扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成すべき法的義務もない。 なお,広報活動が法的義務とは解されないものの,被告国は,支給法を官報によって公布するほか,特別給付金について周知させ,請求漏れや受給権の時効消滅を防止するため,現時点において確認できる限りにおいても,各都道府県知事あてに通知を発するとともに,各都道府県の担当者に対して各種会議,広報案文を通じた指導を行い,また,政府広報の実施及び戦没者遺族相談員による継続的な請求指導をするなど,複数の方法で特別給付金に関する広報活動を行っている。 争点⑶(平成5年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)について⑴公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成した上,個別請求指導を行わなかった違法行為の有無について(争点(3)ア)(原告らの被告国に対する主張)前記1(原告Bの被告国に対する主張)のとおりである。 (被告国の原告らに対する主張)前記1(被告国の原告Bに対する主張)のとおりである。 (2)被告国が個別請求指導を指示したのに,被告大阪府ないし被告大阪市がこれに反したなどの違法行為の有無について(争 に対する主張)前記1(被告国の原告Bに対する主張)のとおりである。 (2)被告国が個別請求指導を指示したのに,被告大阪府ないし被告大阪市がこれに反したなどの違法行為の有無について(争点(3)イ)(原告Aの被告らに対する主張)ア個別請求指導が機関委任事務等であることについて平成5年4月1日を基準日とする特別給付金に関する事務は,地方公共 団体の首長(都道府県知事,市町村長)が法令に基づいて国から委任され,「国の機関」として処理する機関委任事務である。なお,地方分権の推進を図るための関係法令の整備等に関する法律(平成11年法律第87号。以下「地方分権一括法」という。)により機関委任事務が廃止された後は,法定受託事務となっている。)。 地方分権一括法による改正前の地方自治法(以下「旧地方自治法」という。)150条は,普通地方公共団体の長が国の機関として処理する行政事務について,普通地方公共団体の長が,都道府県にあっては主務大臣,市町村にあっては都道府県知事及び主務大臣の指揮監督を受けるとしていた。機関委任事務について,上級機関に当たる主務大臣は,下級機関に当たる都道府県知事に対して指揮監督権を有し,また,都道府県知事は,市町村長に対して指揮監督権を有していたのである。 そして,下級機関が上級機関の適法な指示を理解せず,これに反する事務処理をすることは,それ自体が違法であり,国家賠償法上の違法行為となる。本件において,個別請求指導をすることは,機関委任事務に関するもので,上級機関である厚生大臣の指揮監督権に基づく下級機関である被告大阪府及び被告大阪市の長に関する指示であった。 なお,都道府県知事への機関委任事務として明記されていたのは,戦没者等の妻からの請求に基づいて特別 大臣の指揮監督権に基づく下級機関である被告大阪府及び被告大阪市の長に関する指示であった。 なお,都道府県知事への機関委任事務として明記されていたのは,戦没者等の妻からの請求に基づいて特別給付金を受ける権利の裁定を行うことである。しかし,戦没者等の妻の現住所の市町村から,現住所の都道府県を経て,裁定を行う本籍地の都道府県に請求書を経由(送付)することは,機関委任事務である権利の裁定を適切に行う前提となる事務であるから,これ自体も適正に行う必要がある。機関委任事務自体ではないとしても,その前提となる事務については,都道府県知事は,国の適正な指示にのっとり,適正に処理しなければならない。 イ被告国が個別請求指導を指示したことについて(ア)被告国(厚生省社会・援護局)は,昭和60年,特別給付金の受給権者となる戦没者等の妻の氏名,住所をコンピュータに入力して前回受給者名簿を作成した上,これを利用して,都道府県が市町村を通じて個別請求指導をするとの方策を策定した。 そして,被告国(厚生省社会・援護局)は,特別給付金の支給対象者に個別請求指導をさせる目的で,被告大阪府を含む都道府県に対し,平成5年5月ないし7月ころ,原告Aのデータ(ただし,住所は,大阪市d区のもの)が含まれる昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の受給者名簿を送付するとともに,平成5年6月1日,厚生省主催の特別給付金に関する説明会において,前回受給者名簿を送付するので,それに基づいて,市区町村を通じ,個別請求指導をするように指示した。 (イ)被告国による個別請求指導の指示は,次の事実から明らかである。 まず,被告国(厚生省社会・援護局)が都道府県あてに前回受給者名簿を送付したのは,平成5年度が初めてであるところ, (イ)被告国による個別請求指導の指示は,次の事実から明らかである。 まず,被告国(厚生省社会・援護局)が都道府県あてに前回受給者名簿を送付したのは,平成5年度が初めてであるところ,前回受給者名簿は,全国約28万件のデータを,市区町村別にして作成したものであって,明らかに相当の労力及び費用を費やして作成されたものである。 そして,被告国(厚生省社会・援護局援護課)は,平成5年6月1日,特別給付金に関する説明会を主催した後,同年10月から同年11月にかけて,各都道府県の援護課担当職員を対象として,「戦傷病者戦没者遺族等援護法,特別弔慰金支給法及び各種特別給付金支給法の施行事務研修会」を開催している(乙4の2)。そして,同月に開催された関東甲信越の都県に対する研修会では,埼玉県が個別請求指導について,「他県の状況及び,請求指導についての国の考え方を御教示願いたい」と質問したのに対して,被告国(厚生省社会・援護局援護課)は,「個別の請求指導については,できる限り手持ちの資料等にもとづいて行ってい ただきたいと考えている」と回答している(乙4の1)。 また,被告国(厚生省社会・援護局)は,平成6年3月10日,「援護関係事務主管課長会議」を開催し(乙5),その説明資料において,第17回特別給付金「い号」については対象件数28万2000件と見込んでいるが7万7398件しか処理されていない旨を記載した上,アンダーラインを引いて「未請求の受給権者に対する請求指導及び審査,裁定事務の促進になお一層努められたい」と注意を促している。なお,未請求の受給権者に対する請求指導を行う方法は,個別請求指導をする以外に考えられない。 さらに,被告国(厚生省社会・援護局)は,平成7年3月1日にも,「援護関係事務主 促している。なお,未請求の受給権者に対する請求指導を行う方法は,個別請求指導をする以外に考えられない。 さらに,被告国(厚生省社会・援護局)は,平成7年3月1日にも,「援護関係事務主管課長会議」を開催し(乙6),その説明資料において,約2万7000件の処理がなされていない旨を記載した上,同様にアンダーラインを引いて「未請求の受給権者に対する請求指導」に努めるよう注意を促しているのである。 ウ被告国の責任(ア)被告大阪府及び被告大阪市の指示違反被告大阪府及び被告大阪市は,後記エ及びオ記載のとおり,被告国の個別請求指導の指示に違反した。 (イ)被告国(厚生省社会・援護局)は,前回受給者のデータを作成し都道府県に送付したのみで,そのデータに基づいて,都道府県が市町村を通じて,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金の支給対象者に個別請求指導をしたかどうかを確認しなかった。また,機関委任事務においては,下級機関である普通地方公共団体の長が上級機関である主務大臣の指示に反する事務処理を行ったときは,下級機関の責任であるにとどまらず,上級機関も責任を負う。したがって,被告国には,国家賠償法上の損害賠償責任がある。 エ被告大阪府の責任(ア)被告国は,前記イのとおり,昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の受給者名簿に基づいて,個別請求指導を行うよう指示していた。 被告大阪府(福祉部社会課恩給援護係)は,厚生省主催の特別給付金に関する説明会等に職員を出席させた上,復命書を起案させ,各職員に対して回覧しているのであるから,被告国による指示内容等を認識していたはずである。仮に認識していないとしても,被告大阪府は,厚生省が前回受給者名簿を送付した際や研修会等の 復命書を起案させ,各職員に対して回覧しているのであるから,被告国による指示内容等を認識していたはずである。仮に認識していないとしても,被告大阪府は,厚生省が前回受給者名簿を送付した際や研修会等の場において,確認することが容易だったのであり,また,これをすべきであった。 ところが,被告大阪府(福祉部社会課恩給援護係・I係長,J主査及びK主事)は,府下市町村に対し,平成5年6月22日の大阪府主催の市町村に対する説明会において,前回受給者名簿に基づいて個別請求指導をするよう指示しなかった。また,被告大阪府(福祉部社会課恩給援護係)は,府下市町村援護事務主管課あてに,同年7月15日付けで,原告Aのデータが含まれる前回受給者名簿を送付したが,「前回再継続分の受給者名簿を送付いたしますので,事務処理の参考にしていただきますようよろしくお願いします」との記載がある「戦没者等の妻に対する特別給付金の前回受給者名簿の送付について」と題する送付書を付けただけで(甲8の3),前回受給者名簿に基づいて個別請求指導をするよう指示しなかった。 これは,上級機関である厚生大臣の適法な指示に従わず,これに反する事務処理をしたものであるから,国家賠償法上の違法行為である。 なお,被告大阪府が府下市町村を通じて個別請求指導をすることは,容易な状況であった。 (イ)また,立法者意思に照らせば,被告大阪府は,一般的な広報をする だけでなく,被告国からの指示の有無にかかわらず,特別給付金の受給権者の99パーセント程度が支給を請求できるように,受給権者に対して確実に個別請求指導をするため,恩給法に規定する扶助料等の受給者のリストに従って個別通知するか,少なくとも住民票上の住所に個別通知を送付する義務を負っていたというべきである ように,受給権者に対して確実に個別請求指導をするため,恩給法に規定する扶助料等の受給者のリストに従って個別通知するか,少なくとも住民票上の住所に個別通知を送付する義務を負っていたというべきである。また,被告大阪府は,併せて,転居者に対しても確実に個別請求指導をするため,住民票上の住所に送付しても宛先不明で送達できない転居者に対しては,転居元の市町村から転居先の市町村に連絡し,転居先の市町村から個別通知を送らせる措置を講じる義務を負っていたというべきである。 すなわち,昭和38年3月20日衆議院社会労働委員会におけるL援護局長の答弁から分かるように,立法者は,恩給や遺族年金と同様,特別給付金の請求も99パーセント程度となる状況を想定していた。しかし,単に特別給付金について一般的な広報をするだけでは,それを見聞きしない人が現れるのは当然であり,99パーセント程度の請求を実現するに足りないことは明らかである。立法者は,3年の短期消滅時効を規定したことの関係で,国,都道府県及び市町村に対し,一般的広報に努めるだけでなく,互いに連携を取り,受給権者に対して確実に個別請求指導をし,転居者に対する事後的なフォローを講ずることを求めていたというべきである。 にもかかわらず,被告大阪府(福祉部社会課恩給援護係)は,以上の措置を怠った。 オ被告大阪市の責任(ア)被告大阪市(民生局総務部庶務課)は,被告大阪府から,平成5年7月15日付けの「戦没者等の妻に対する特別給付金の前回受給者名簿の送付について」と題する文書(甲8の3)及び前回受給者名簿を受領したが,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金の受給権者に対し て個別請求指導を実施することは指示されていないと判断した。 そのため,被告大阪市(民 の3)及び前回受給者名簿を受領したが,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金の受給権者に対し て個別請求指導を実施することは指示されていないと判断した。 そのため,被告大阪市(民生局総務部庶務課庶務係)は,被告大阪府に対して送付文書の意味を問い合わせることもしないまま,各区区民室長あてに,平成5年8月30日付けで,「戦没者等の妻に対する特別給付金請求及び戦没者の父母等に対する特別給付金請求にかかる事務について」と題する文書(丁5の1)を送付したのみで,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金の受給権者に対する個別請求指導をしなかった。 これは,上級機関である厚生大臣の適法な指示に従わず,これに反する事務処理をしたものであるから,国家賠償法上の違法行為である。 (イ)被告大阪市は,原告Aが大阪市d区から同市e区に転居し,その住民票が保管されていなかったので,被告大阪市が原告Aに対して個別請求指導をすることは不可能だったと主張する。 しかし,被告大阪市においては,大阪市内の転居者について,原則は区役所と区役所の間で連絡を取り合い,困難なケースが出た場合は大阪市本庁が連絡を取ることもあるとされていた(甲8の1)。大阪市d区は,平成3年9月に住民票のコンピュータへの入力を完了しており,大阪市e区は,平成4年2月に住民票のコンピュータへの入力を完了している。この大阪市全域の住民票のコンピュータ化により,大阪市本庁が調査を行えば,被告大阪市は,手持ち資料のみによっても,大阪市e区に原告Aの住民票があることを確認できた。 (被告国の原告Aに対する主張)ア支給法は,厚生労働大臣が特別給付金を受ける権利の裁定を行うとし(同法3条6項),支給法が規定する厚生労働大臣の権限に属する事務の一部 とを確認できた。 (被告国の原告Aに対する主張)ア支給法は,厚生労働大臣が特別給付金を受ける権利の裁定を行うとし(同法3条6項),支給法が規定する厚生労働大臣の権限に属する事務の一部を,政令で定めることにより,都道府県知事が行うこととすることができるとし(同法12条),また,旧地方自治法別表第3の55の 9は,機関委任事務として,戦没者等の妻に対する特別給付金支給法及びこれに基づく政令の定めるところにより,特別給付金を受ける「権利を裁定」すると規定していた。 しかるに,原告Aが主張する「個別請求指導」は,支給法3条6項の「特別給付金を受ける権利の裁定」にも,旧地方自治法別表第3の55の9の「特別給付金を受ける権利を裁定すること」にも当たらない。また,支給法において,個別請求指導が厚生労働大臣の権限であるとする規定もない。 したがって,個別請求指導を行うことが国の機関委任事務であるとは言えない。 イまた,前記1(被告国の原告Bに対する主張)のとおり,個別請求指導を行うことが職務上の法的義務とは認められない以上,個別請求指導が行われなかったとしても,国家賠償法1条1項の違法行為とはならない。 ウなお,被告国(厚生省社会・援護局)が平成5年4月1日を基準日とする特別給付金に関し,都道府県にデータ(昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の受給権者のうち,昭和60年の電算化以後に特別給付金の請求をした者についてのデータ)を送付したこと及びこれを前提として,一般的に,当該データを利用し,市町村を通じてその所管する受給権者に対して個別請求指導を行った都道府県が存在することは認める。ただし,受給権者に対する個別請求指導を行うべき義務が被告国にあることを前提とするものではない。 (被告大阪 じてその所管する受給権者に対して個別請求指導を行った都道府県が存在することは認める。ただし,受給権者に対する個別請求指導を行うべき義務が被告国にあることを前提とするものではない。 (被告大阪府の原告Aに対する主張)ア個別請求指導が機関委任事務等でないことについて支給法の定める「権利の裁定」は,権利の有無を行政庁によって確認する行為であり,厚生大臣が除籍された当時における戦没者の本籍地の都道 府県知事に機関委任することとされている(戦没者等の妻に対する特別給付金支給法施行令2条)。 これを原告Aとの関係でいえば,戦没者であるCの除籍された当時の本籍は高知県であるので,権利の裁定は,高知県知事に委任されていたこととなる。したがって,原告Aとの関係で大阪府知事が厚生大臣から委任を受けた事務は,そもそも存在しない。個別請求指導を実施することは,大阪府知事に機関委任された事務ではない。 権利の裁定事務以外の事務については,機関委任事務とする法令はないのであるから,旧地方自治法150条の適用はない。したがって,乙第5,6,10号証等による指示ないし指導について,大阪府知事が厚生大臣の指揮監督に服する関係にはなく,これに従うべき法的根拠もない。 なお,国が都道府県に対して行った指示ないし指導が旧地方自治法150条に基づくものであったとしても,これに従うことは,知事が主務大臣に対して負う義務であって,原告Aに対して負っている義務ではない。 イ被告国が個別請求指導を指示していないことについて被告国が,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金について,原告Aのデータが含まれる前回受給者名簿(昭和60年の電算化以後に特別給付金の請求があった者についてのデータではない。)を作成し,各都 被告国が,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金について,原告Aのデータが含まれる前回受給者名簿(昭和60年の電算化以後に特別給付金の請求があった者についてのデータではない。)を作成し,各都道府県に送付したこと,被告大阪府が被告大阪市に対し,原告Aのデータが含まれる前回受給者名簿を送付したことは認める。 そして,被告国は,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金に関して,各都道府県の主管課長に対し,「未請求の受給権者に対する請求指導(中略)の促進になお一層努められたい」,「請求期限が平成8年5月18日であるので,請求漏れが生じないよう広報等に努められたい」などと指導ないし指示を行っている(乙5,6,10)。 しかし,乙第5,6,10号証と,個別的に申請を促す措置を執るよう明確に求めた平成15年4月1日を基準日とする特別給付金に関する乙第 11号証等を比較すれば分かるように,これは,受給権者に対して個別請求指導を行うよう求めたものではない(「請求指導」の語を使用しているが,個別請求指導を指示してはいない昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金に関する乙3,23も参照)。 また,国会における議論を見ても,この点は,明らかである。すなわち,平成8年12月11日の参議院予算委員会において,M国務大臣が,「個人に向けての通知書が出せないものかどうか。広報といっただ単に一片の,いろんな問題が書かれている中にその一行があってみたところで,それは必ずしも完全な効果にはならないという気もいたしますので,研究をさせていただきます」と述べている(甲17)。また,平成10年3月19日の参議院国民福祉委員会において,N厚生大臣が,「行政側で把握できる特別給付金の対象者に対しては,新たな措置として未請求者の方々に個別に だきます」と述べている(甲17)。また,平成10年3月19日の参議院国民福祉委員会において,N厚生大臣が,「行政側で把握できる特別給付金の対象者に対しては,新たな措置として未請求者の方々に個別に制度の内容を送付する。自動的に個別に案内が来ますから,ああ,こういうことができるのかなということがわかるはずです。」と述べている(甲18)。以上の経緯からも明らかなように,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金については,被告国には個別的に請求を促す措置を執る用意がなかったのである。 なお,乙第4号証の1によれば,平成5年当時,埼玉県が個別請求指導を実施していたようであるが,埼玉県を含む少数の都道府県によってされていたにすぎないものである。 ウ被告大阪府が個別請求指導を行う義務を負っていないことについて(ア)被告大阪府は,被告国からの指示の有無にかかわらず,個別請求指導を行う義務を負っていない。 不作為が違法となるには,当然のこととして,作為義務がなければならない。しかも,法律による行政の原理からいえば,作為義務は,法令に根拠がなければならない。 すなわち,公権力の行使に当たる公務員の行為(不作為を含む。)が 国家賠償法1条1項の適用上違法となるのは,当該公務員が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えた場合とされている(最一小判昭和60年11月21日民集39巻7号1512頁)。そして,公務員による規制権限の不行使が国家賠償法上違法となるには,規制権限の根拠となる法令が存在し,それを行使するための要件が満たされていることに加え,規制権限の不行使によって損害を受けたと主張する個別の国民との関係で,当該公務員が規制権限を行使すべき法的義務(作為義務)を負い,その が存在し,それを行使するための要件が満たされていることに加え,規制権限の不行使によって損害を受けたと主張する個別の国民との関係で,当該公務員が規制権限を行使すべき法的義務(作為義務)を負い,その義務の違反があると認められることが必要となる(平成16年度最判解説民事編(下巻)568頁参照)。 前記最高裁判決の事例では,規制権限が法令上に存在することが判示されている。その上で,「規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国賠法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である」とされている。 そして,特別給付金の受給権者に対して個別請求指導を行うことに関する規定は,当時の支給法及び関係法令のどこにも見当たらない。したがって,個別請求指導を義務付ける法的根拠がないから,これを行わないことが,国家賠償法1条1項の適用上違法と解する余地は全くない。 原告Aは,この点につき,立法者意思を取り上げ,昭和38年3月20日衆議院社会労働委員会における厚生省援護局長の答弁を援用する。 しかし,この答弁は,「万一にも権利の上に眠るというようなことがあっては,せっかくの法律をつくった役割を果たし得ませんので,都道府県なり市町村なり,あるいは遺族会等の関係団体等の活動もお願いいたしまして,所定の時間に十分請求ができるように,御指摘の点は十分心して行政に当たっていきたいと考えております」とし,法の執行に当たって所定の時間内に請求がなされるよう努めることを言うとともに, 「現在までに恩給なり遺族年金につきましては,ほとんど九九%といっていいくら たっていきたいと考えております」とし,法の執行に当たって所定の時間内に請求がなされるよう努めることを言うとともに, 「現在までに恩給なり遺族年金につきましては,ほとんど九九%といっていいくらいに本人からの請求が出ておるような状況でございます」,「この給付金につきましては,全然別種の給付金ではございませんので,比較的そういう点は関係者が熟知しておると考えております」として,特別給付金の受給権者は恩給や遺族年金の受給者と重複するので,自ら請求すると期待できるとの予測を述べているにすぎない。 また,そもそも,立法者意思は,生の形で法令と同視されるものではない。立法者の当該法令の制定に当たっての意図が立法者意思と呼ばれるものであるが,これは,当該法令の解釈の際の一つの指針とされるものであって,法令解釈の決定的要素とはいえないものである。 原告Aの主張の意図は,戦没者等の妻には一心同体である夫を失った特別の痛手があること,生計の中心を失ったことによる経済的な困難と闘ってこなければならなかったなどの特別の精神的痛苦があること,また,認識として正しいかどうかはともかく,国家の意思によって戦争が惹起されたのであるから,徴兵という制度に基づいて駆り出され戦没した者及びその関係者に対し,国として何らかのけじめをつけるべしとの考えがあることなどから,特別給付金は,他の給付行政と異なる制度であるというものであろう。しかし,支給法が,他の給付行政と本質的に異なるものとは考えられない。国民に対して給付を実施する法規は,いずれの場合においても,給付をするべき行政目的を有しているのであって,支給法のみが他と異なる扱いを受ける理由はない。そして,他の給付行政において,権利者あるいは権利者として要件を充足する者の99パーセントが請求する措 ,給付をするべき行政目的を有しているのであって,支給法のみが他と異なる扱いを受ける理由はない。そして,他の給付行政において,権利者あるいは権利者として要件を充足する者の99パーセントが請求する措置を採るようにすることを行政に義務付けることはあり得えない。原告Aの要求は過大である。 個別請求指導の実施は容易ではない。被告大阪府は,特別給付金の業務は継続的に発生しているものではなく,10年ごとに発生する業務であり,その度に市町村において,業務を処理するための組織・人員体制 を整えざるを得ないため,個別請求指導の実施は人口の多い市町村に対して相当の負担をかけることなどから,府下市町村に対し,個別請求指導の実施を求めないこととしたものである。 (イ)また,法令上の根拠の有無をおくとしても,被告大阪府に特別給付金が請求漏れによって大量に時効消滅しているとの認識がなかったという事情の下では,被告大阪府が特別給付金の受給権者に対して個別請求指導を行わないことが,許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くともいえない。 すなわち,平成5年当時,大量の請求漏れが存在する事実は知られておらず,請求漏れによる時効消滅が社会的に知られるようになったのは,平成19年6月17日のマスコミ報道によってであった(いわゆる請求漏れに関する議論につき,甲9,16,17,18,11,12参照)。 平成5年より以前の段階では,国会で制定当時に請求漏れを危ぐする意見があり,また,昭和52年に主として特別給付金に関して窓口対応が問題とされたことがあるにとどまる。 そして,以上の事情に加え,従来の周知方法である一般的広報及び遺族連合会の周知活動(特に,婦人部は,組織力がかなりしっかりしていた。)が行き届いているとの認識があったため るにとどまる。 そして,以上の事情に加え,従来の周知方法である一般的広報及び遺族連合会の周知活動(特に,婦人部は,組織力がかなりしっかりしていた。)が行き届いているとの認識があったため,被告大阪府は,平成5年当時,特別給付金が請求漏れによって大量に時効消滅しているとの認識がなかったのである。 (ウ)なお,被告大阪府は,個別請求指導を行うべき義務を負ってはいないが,特別給付金の支給について,その周知を図る措置を執っている。 周知を図る措置の具体的内容は,法の執行を行う行政がその裁量に基づいて自主的に定めるものであるが,おおむね,受給権者の高齢化に従い,徐々にその内容が一般的広報から個別的案内にまで拡大されてきた経緯がある。 このような周知方法について,当・不当の問題はあるとしても,原告 Aが主張する個別請求指導を採用しないからといって,法律上の問題が発生する余地はない。 (被告大阪市の原告Aに対する主張)ア被告国が個別請求指導を指示していないことについて被告国が,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金について,原告Aのデータが含まれる前回受給者名簿を作成し,各都道府県に送付したこと,被告大阪府が被告大阪市に対し,原告Aのデータが含まれる前回受給者名簿を送付したことについては,特に争わない。被告大阪市が,個別請求指導を行ったかどうかは不知である。 被告大阪市は,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金について,被告国ないし被告大阪府から,個別請求指導の実施を指示されていない。 被告大阪市は,被告大阪府から,平成5年7月15日付けで,「戦没者等の妻に対する特別給付金の前回受給者名簿の送付について」と題する文書(甲8の3)を送付されたが,これには,前回受給者名簿 ていない。 被告大阪市は,被告大阪府から,平成5年7月15日付けで,「戦没者等の妻に対する特別給付金の前回受給者名簿の送付について」と題する文書(甲8の3)を送付されたが,これには,前回受給者名簿を用いた個別請求指導の実施等を指示する記載はなかった。 また,仮に上記指示があり,上記指示に対して協力すべき一般的な義務があったとしても,かかる協力義務が,直ちに,原告Aの利益を個別に保護するため,被告大阪市の担当職員に課せられた職務上の法的義務になるなどとはいえない。 イ被告大阪市が個別請求指導を行う義務を負っていないことについて(ア)被告大阪市の担当職員が個別請求指導という行政指導を行わなかった不作為が国家賠償法上違法となるのは,当該職員に対し,原告Aの利益を個別に保護するために,かかる行政指導を行うべき職務上の法的義務が課されているにもかかわらず,同職員がこれに違反して行政指導を行わなかった場合である。 しかし,被告大阪市又はその担当職員に対して個別請求指導を義務付ける法令は,一切存在しない(被告国からの指示がその根拠とならない ことは,前記アのとおりである。)。 (イ)aもちろん,被告大阪市又はその担当職員に対して個別請求指導を義務付ける法令等が存在しない場合であっても,例外的に,被告大阪市の担当職員の不作為が違法となることがないとまではいえない。 しかし,かかる法令等が存在せず,また,個別請求指導が飽くまで行政指導でしかなく,かかる行政指導を行うかどうかが,当該担当職員の裁量にゆだねられていることに照らせば,個別請求指導を行わない不作為が違法となるのは,作為が法的及び現実的に可能であることを前提として,当該不作為が,その許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認 にゆだねられていることに照らせば,個別請求指導を行わない不作為が違法となるのは,作為が法的及び現実的に可能であることを前提として,当該不作為が,その許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められ場合に限られるというべきである。 bそして,被告大阪市は,平成5年当時,社会通念上,原告Aの現住所を確知し,個別請求指導を行うことが不可能であった。 すなわち,住民票は,転居等により消除された日から,5年間しか保存されないところ(住民基本台帳法施行令34条),被告大阪市において住民票の電算化が行われたのは,平成3年から平成4年までの間であり,電算化データは,電算化時点での住民登録情報を基に作成されており,消除されて保存期間中の廃棄待ち情報は,反映されていない。 そして,原告Aは,昭和61年5月15日,d区内からe区内に転居している。このため,d区にあった原告Aの住民票は,直ちに消除され,平成3年5月14日まで保存されていたものの,その後程なくして廃棄されている。原告Aが,d区の電算化された住民基本台帳に登録されたことはなく,被告大阪市のd区役所担当者は,平成5年当時,原告Aの現住所を認識できなかったのである(なお,原告Aの本籍地も不明であったから,戸籍の附票により現住所を確認することもできなかった。)。 確かに,被告大阪市のd区役所担当者が,全国津々浦々の市町村に 照会するという調査手法を講じれば,原告Aの現住所を確知できた可能性は残る。しかし,そもそも,原告Aの同意を得ることなく,そのような探索的な調査の実施が許されるかには疑義があるだけでなく,同調査手法が非現実的であることは明白である。したがって,社会通念上,原告Aの現住所を確知することは,不可能であったといわざるを得ない ような探索的な調査の実施が許されるかには疑義があるだけでなく,同調査手法が非現実的であることは明白である。したがって,社会通念上,原告Aの現住所を確知することは,不可能であったといわざるを得ない(現実には,原告Aは,大阪市e区に居住していたのであるが,結果論にすぎない。)。 cまた,以下の(a)から(g)までなどの各事情を総合評価すれば,被告大阪市の担当職員が原告Aに対して個別請求指導を行わなかった不作為が,その許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いていたなどとはいえない。 すなわち,(a)支給法や関連法令等には,個別請求指導を予想させる規定は,全く存在していないこと,(b)原告Aが主張する被侵害利益は,生命,身体,健康等ではなく,特別給付金の受給権を逸失したという財産なものであること,(c)原告Aに対する個別請求指導の実施は,物理的に不可能だったとは言い切れないとしても,極めて困難であったこと,(d)原告Aは,個別請求指導を受けることなく,昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金を受給しており(なお,特別給付金は,10年国債で1年ごとに支給されるものであるから,原告Aは,平成4年まで,これを受給していた可能性がある。),平成5年4月1日を基準日とする特別給付金についても,原告Aが自ら請求することが期待できたこと,(e)被告大阪市は,被告国及び被告大阪府と連携し,鋭意,様々な広報活動を展開していたこと,(f)被告大阪市は,被告国及び被告大阪府のいずれからも,個別請求指導の実施の指示を受けていなかったこと,(g)少なくとも,平成5年当時,国民が,被告大阪市による個別請求指導の実施を期待する状況が存在していたとはいえないことなどである。 (3)特別給付金の前回受給者と非受給者を差別的に取り扱 g)少なくとも,平成5年当時,国民が,被告大阪市による個別請求指導の実施を期待する状況が存在していたとはいえないことなどである。 (3)特別給付金の前回受給者と非受給者を差別的に取り扱い,前者に対してのみ個別請求指導を行った違法行為の有無について(争点(3)ウ)(原告Bの被告国に対する主張)原告Bは,昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の支給を請求できず,失権したが,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金の受給権者であることに変わりはない。 しかし,被告国(厚生省社会・援護局)は,前記(2)(原告Aの被告らに対する主張)イ記載のとおり,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金について,前回受給者名簿を作成し,都道府県に送付し,前回受給者にのみ請求指導をすることとした。そして,同前回受給者名簿に基づいて,都道府県が市町村を通じ,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金の受給権者に対してのみ個別請求指導をした。 すなわち,被告国は,特別給付金の受給権者を前回受給者と非受給者に区別し,前者に対する個別請求指導を行わせる一方,後者に対する個別請求指導は行わせないという差別的取扱いをした。 しかしながら,前回受給者と非受給者を区別的に取り扱う合理的な理由はない。被告国(厚生省社会・援護局)の行為は,不合理な差別であり,憲法14条1項に反する違法行為である。 (被告国の原告Bに対する主張)ア前回受給者のデータ送付等に関する被告国の認否は,前記(2)(被告国の原告Aに対する主張)ウのとおりである。 イ被告国は,前回受給者として把握されている者については,前回受給者として把握した事実をデータ化して都道府県に提供する一方,前回受給者として把握されていない者については,別途,政府広報を である。 イ被告国は,前回受給者として把握されている者については,前回受給者として把握した事実をデータ化して都道府県に提供する一方,前回受給者として把握されていない者については,別途,政府広報を実施するなどの方法で制度の周知を図ることによって,特別給付金の請求を促したものである。これは,合理的な措置であって,不合理な差別との評価を受けるも のではない。 ウまた,そもそも,原告Bの主張は,結局,特別給付金の受給権者に対する個別請求指導を行うべき法的義務の存在を前提とする主張であるところ,これが認められないことは,前記1(被告国の原告Bに対する主張)のとおりである。 争点⑷(平成15年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)について⑴公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成した上,個別請求指導を行わなかった違法行為の有無について(争点(4)ア)(原告らの被告国に対する主張)前記1(原告Bの被告国に対する主張)のとおりである。 (被告国の原告らに対する主張)前記1(被告国の原告Bに対する主張)のとおりである。 ⑵特別給付金の前回受給者と非受給者を差別的に取り扱い,前者に対してのみ個別請求指導を行った違法行為の有無について(争点(4)イ)(原告らの被告国に対する主張)前記2(3)(原告Bの被告国に対する主張)のとおりである。 (被告国の原告らに対する主張)前記2(3)(被告国の原告Bに対する主張)のとおりである。 争点⑸(違法な立法不作為の有無)について(原告らの被告国に対する主張)⑴被告国(国会)は,特別給付金について消滅時効を撤廃することなどを内容とする平成19年6月21日に提出された る。 争点⑸(違法な立法不作為の有無)について(原告らの被告国に対する主張)⑴被告国(国会)は,特別給付金について消滅時効を撤廃することなどを内容とする平成19年6月21日に提出された「戦没者等の妻に対する特別給付金支給法による特別給付金の支給に係る時効の特例等に関する法律案」(第166回参議院第14号)を,審議未了で廃案とした。 この立法不作為は,憲法13条,14条1項に違反するとともに,憲法上の条理にも反し,著しく不合理で立法府の裁量の限界を超えており,違法である。 ⑵憲法13条違反について特別給付金の受給権は,憲法上の権利である。すなわち,特別給付金は,軍人,軍属等の妻の精神的苦痛を慰謝する性質を有し,戦争で愛する夫を亡くした妻が,戦後人格的に生きていくために必要不可欠なものである。かかる特別給付金は,憲法前文ないし憲法13条に基づく幸福追求権に根拠付けられるものである。したがって,特別給付金は,憲法上保障された権利であるから,これを侵害する立法不作為は,「国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するもの」として,違法行為となる(最大判平成17年9月14日民集59巻7号2087頁参照)。 政府の行為によって侵略戦争を惹起し,230万人の国民を戦死させた責任を履行することは,日本国憲法の遵守と履行である。 戦没者等の妻に対し,恩給法に基づく公務扶助料を支払うことは,憲法上の国家の義務である。そして,戦没者等の妻に対する特別給付金は,公務扶助料の付加的な給付であり,同じく憲法上の国家の義務である。 ⑶憲法14条1項違反について被告国(国会)は,平成19年7月6日,「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(平成19年法律第111号) 義務である。 ⑶憲法14条1項違反について被告国(国会)は,平成19年7月6日,「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律(平成19年法律第111号)」を制定した。これは,厚生年金保険の保険給付の支給を受ける権利について裁定の日までに消滅時効(5年)が完成した場合においても,当該権利に基づく保険給付を支払うとする法律である。 特別給付金は,戦没者等の妻に対する公務扶助料の低額性を補充するため(当初は「特別加給金」とも呼ばれた。),公務扶助料の付加的な給付として立案されたもので,国家補償の性格をも有するものである。他方,公的年 金は,相互扶助の精神に基づき保険(一部税金)の原則によって運営されるもので,いずれも,単なる恩恵給付ではない。すなわち,特別給付金は,年金給付と同様に,被告国が責任をもって給付しなければならないものである。 したがって,時効消滅した一方の給付(年金の給付)については時効を撤廃し,他方の給付(特別給付金の支給)については時効を撤廃しないのは,不合理な差別であって,憲法14条1項に違反する。 ⑷憲法上の条理違反について原告らのほか,多数かつ巨額の特別給付金の受給権が,請求漏れによって時効消滅したのは,前記1から3までのとおり,被告国の違法行為によるものである。 そして,被告国(国会)は,予算審議をするとともに,決算承認をするのであるから,予算に比して,巨額の請求漏れがあることを容易に認識できた。 被告国(国会)は,支給法を制定し,かつ,多数かつ巨額の請求漏れがあることを容易に認識し得たのであるから,その救済のために,時効を撤廃する立法をする憲法上,条理上の義務がある。 (被告国の原告らに対する主張)⑴最高裁判所平成17年 多数かつ巨額の請求漏れがあることを容易に認識し得たのであるから,その救済のために,時効を撤廃する立法をする憲法上,条理上の義務がある。 (被告国の原告らに対する主張)⑴最高裁判所平成17年9月14日大法廷判決(民集59巻7号2087頁)は,立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上,違法と評価される場合に関し,「立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国会議員の立法行為又は立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきである。」と判示している。 ⑵まず,特別給付金受給権は,戦没者等の妻の精神的痛苦を特別に慰藉する 趣旨で定められた支給法によって初めて認められた権利であって,憲法上直接認められる権利ではない。 したがって,原告ら主張に係る立法をしないことが,上記最高裁平成17年判決のいう「憲法上保障されている権利を違法に侵害するものである」等の場合に当たらないことは明らかである。 ⑶特別給付金受給権の権利内容や権利行使の方法については,国の財政状況をも考慮して,立法府が,その広範な裁量を行使して定めるものである。 そして,厚生年金保険は,「労働者の老齢,障害又は死亡について保険給付を行い,労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とし」(厚生年金保険法1条),政府が管掌し(同法2条),被保険者は適用事業所に使用される70歳未満の者であり(同法9条),被保険者及び被保険者を使用する事業主がそれぞれ の向上に寄与することを目的とし」(厚生年金保険法1条),政府が管掌し(同法2条),被保険者は適用事業所に使用される70歳未満の者であり(同法9条),被保険者及び被保険者を使用する事業主がそれぞれ保険料の半額を負担し(同法82条1項),政府が事業主から保険料を徴収し(同法81条1項,82条2項),当該徴収に係る保険料及び国庫による負担金(同法80条)等をもって,年金給付等の厚生年金保険事業に要する費用を負担している。また,国民年金は,「日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き,老齢,障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し,もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的と」し(国民年金法1条),その「目的を達成するため,国民の老齢,障害又は死亡に関して必要な給付を行うものと」し(同法2条),政府が事業を管掌し(同法3条1項),その被保険者は同法7条所定の者であり,政府は被保険者等から保険料を徴収し(同法87条1項,88条),当該徴収に係る保険料及び国庫による負担金(同法85条)等をもって,年金給付等の国民年金事業に要する費用を負担している。 これに対し,特別給付金は,戦没者等の妻の精神的痛苦を特別に慰藉する趣旨で認められたもので,給付を受ける条件として自己の出捐を伴わないものである。 以上のとおり,厚生年金保険法及び国民年金法上の年金受給権と,特別給付金受給権とは,給付を受ける条件として自己の出捐を伴うか否かといった点で明らかに異なるものである。したがって,年金受給権者の地位と戦没者等の妻の地位が同列であるという前提に立ち,特別給付金についても公的年金同様に時効撤廃に関する立法をしなければ憲法14条1項に違反するとの原告らの主張は,明らかに不合理である。被 権者の地位と戦没者等の妻の地位が同列であるという前提に立ち,特別給付金についても公的年金同様に時効撤廃に関する立法をしなければ憲法14条1項に違反するとの原告らの主張は,明らかに不合理である。被告国に,立法裁量の逸脱はない。 争点⑹(因果関係の有無)について(原告らの被告らに対する主張)⑴原告らは,各基準日の特別給付金について,個別請求指導を受けなかったため,支給の請求を行えず,時効によって失権した。 また,最初の失権以降,前回受給者として次回の個別請求指導を受けることができなかったため,次回以降の特別給付金についても失権した。 ⑵原告らは,被告国が特別給付金の支給について時効の特例を認めなかったことにより,特別給付金を受け取ることができなかった。 (被告らの原告らに対する主張)否認ないし争う。 (被告大阪府の原告らに対する主張)大部分の受給権者は,行政による個別請求指導がなくても,支給法改正の前後における一般的広報や遺族会等の関係団体による周知活動によって権利の存在を知り,支給の請求をするのであり,因果関係はない。 争点⑺(損害の有無及びその額)について(原告らの被告らに対する主張)⑴原告Aア平成5年4月1日を基準日とする特別給付金の額 180万円イ平成15年4月1日を基準日とする特別給付金の額 200万円ウ弁護士費用 38万円 ⑵原告Bア昭和48年4月1日を基準日とする特別給付金の額 60万円イ昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の額 120万円ウ平成5年4月1日を基準日とする特別給付金の額 180万円エ平成15年4月1日を基準日とする特別給付 イ昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の額 120万円ウ平成5年4月1日を基準日とする特別給付金の額 180万円エ平成15年4月1日を基準日とする特別給付金の額 200万円オ弁護士費用 56万円(被告らの原告らに対する主張)否認ないし争う。 争点⑻(除斥期間の成否)について(原告らの主張)⑴本件の事情にかんがみれば,最高裁判所平成10年6月12日第二小法廷判決(民集52巻4号1087頁)及び最高裁判所平成21年4月28日第三小法廷判決(民集63巻4号853頁)の趣旨に照らし,民法724条後段による除斥期間の効果は生じない。 ⑵あるいは,民法724条後段の規定は消滅時効を定めたものであり,本件の事情にかんがみれば,本件における時効の援用は,信義則に反して許されない。 第4当裁判所の判断 認定事実前記第2の3の争いのない事実等に加え,証拠(認定事実に付記する。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の各事実が認められる。 ⑴支給法制定等に関する認定事実ア内閣は,昭和38年,「戦没者等の妻に対する特別給付金支給法案」を国会に提出した。 O厚生大臣は,昭和38年3月20日の衆議院社会労働委員会において,その提案理由について,「過ぐる大戦[中略]の遺族の方々のうちでも,戦没者等の妻であった方々につきましては,一心同体ともいうべき夫を失 ったという大きな心の痛手を受けつつ今日に至ったという特別の事情があると考えられます。従いまして,この際,このような戦没者等の妻の精神的痛苦に対しまして,国としても何らかの形において慰謝することが必要であるものと考え,これらの方々に特別給付金を支給することとい あると考えられます。従いまして,この際,このような戦没者等の妻の精神的痛苦に対しまして,国としても何らかの形において慰謝することが必要であるものと考え,これらの方々に特別給付金を支給することといたしますため,ここに,この法案を提案することといたした次第であります」,「特別給付金の支給件数は約四十四万程度と見込んでおります」などと説明した。 P衆議院議員が同法案6条について,特別給付金を受給する権利があることを知らず,時効消滅させてしまう受給権者がいるであろうから,「私は時効を取るべきだと思う。」と質問したところ,L厚生省援護局長(政府委員)は,「P先生の御注意は,非常にわれわれ行政を担当するものといたしまして,留意しなければならないところと考えておる次第でございます。ただ,この給付金は,法律にも書いてございますように恩給なり遺族年金なり,そうしたいわば基本になりますところの年金の権利を有するものが請求することになっておりますので,現在までに恩給なり遺族年金につきましては,ほとんど九九%といっていいくらいに本人からの請求が出ておるような状況でございますので,この給付金につきましては,全然別種の給付金ではございませんので,比較的そういう点は関係者が熟知しておると考えております。しかしながら,万一にも権利の上に眠るというようなことがあっては,せっかくの法律をつくった役割を果たし得ませんので,都道府県なり市町村なり,あるいは遺族会等の関係団体等の活動もお願いいたしまして,所定の時間に十分請求ができるように,御指摘の点は十分心して行政に当たっていきたいと考えております。」,「なお,時効が三年と定めてございますが,これは引揚者給付金のような手近な例でも三年という例がございますので,援用しておるわけでございます。ところが,引揚者給 当たっていきたいと考えております。」,「なお,時効が三年と定めてございますが,これは引揚者給付金のような手近な例でも三年という例がございますので,援用しておるわけでございます。ところが,引揚者給付金の場合は,ごく一部でございますけれども,期間内に 請求が出せなかった人がございまして,その後,国会で時効の延長を立法していただいたような経緯もございます。私どもといたしましては,ある意味では非常に簡単な請求でございますので三年あれば十分やれると思いますけれども,万一多少でも残るというようなものがその後において判明いたします場合におきましては,また国会に所要の法律改正をお願いするということもあろうかと存じますが,現在のところ,十分御注意の点を留意してやりますれば,ほぼ目的は達し得るものと考えております。」と答弁した。(以上につき,甲9)イ昭和38年4月1日を基準日とする特別給付金の受給者数は,41万9740人であった(甲13)。 ⑵昭和48年4月1日を基準日とする特別給付金に関する認定事実ア内閣は,昭和48年,「戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案」を提出した。同法案は,特別給付金の継続支給等を内容とするものであった。 Q厚生省援護局長(政府委員)は,昭和48年6月26日の参議院社会労働委員会において,「第二回目の新たなる特別給付金制度の対象でございますが,戦没者の妻が四十一万五千人[中略]と見込んでおります」などと説明した。(以上につき,甲15)イ被告国(厚生事務次官)は,各都道府県知事等にあてて,昭和45年7月13日付けで,「戦没者遺族相談員の設置について」(昭和45年7月13日厚生省発援第73号。乙2の1)を通達した。 戦没者遺族相談員は,戦没者遺族の援護の相談に応 等にあてて,昭和45年7月13日付けで,「戦没者遺族相談員の設置について」(昭和45年7月13日厚生省発援第73号。乙2の1)を通達した。 戦没者遺族相談員は,戦没者遺族の援護の相談に応じ,必要な指導,助言を行うとともに,関係機関の業務の円滑なる遂行に資する業務を行い,もって戦没者遺族の福祉の増進を図ることを目的として設置されたものである。戦没者遺族相談員は,民間篤志家が充てられ,「戦没者遺族に係る各種年金,給付金等の受給に関する相談に応じ,必要な指導を行なうこと」 等が業務委託されていた。 戦没者遺族相談員は,昭和45年度は全国で532人であったが,昭和46年度に940人となり,昭和48年度から1410人となった。戦没者遺族相談員は,現在まで継続して,特別給付金に関することを含め,各種相談,請求指導等を行っている。(乙2の2)ウ被告国(厚生省援護局長)は,各都道府県知事にあてて,昭和48年7月24日付けで,「戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律等の施行について(施行通達)」(昭和48年7月24日厚生省援発第804号。乙1,22)を発出した。 同施行通達は,事務態勢について,「今回の継続措置の円滑な運用を期するためには,市町村の積極的な協力に期待するところが大であるので,市町村の関係職員に対し,今回の継続の趣旨,内容,手続等の周知徹底を図る等協力を得るように努めること」,「今回の継続措置の趣旨,内容等を戦没者等の妻に周知させることは,改正法を施行するために重要なことであるから,広報活動についても十分考慮し,請求漏れのないように努めること」,「なお,関係団体等に対しては,時宜に応じその側面的協力を求めること」などとし,特別給付金の裁定事務について,「今回の特別給付金の支給の対象と ついても十分考慮し,請求漏れのないように努めること」,「なお,関係団体等に対しては,時宜に応じその側面的協力を求めること」などとし,特別給付金の裁定事務について,「今回の特別給付金の支給の対象となる者は,大部分は前回の特別給付金の裁定を受けた者であるため,裁定に当たつては前回の裁定の際の資料等に基づきあらかじめ必要な台帳等の整備につき万全の準備をし,裁定を誤ることのないよう注意すること」,「今回の特別給付金の支給の対象となる者には,一部,時効等により前回の特別給付金の裁定を受けていない者もあるのでこの点とくに留意すること」などとするものであった。 エ昭和48年4月1日を基準日とする特別給付金の受給者数は,38万8230人であった(甲13)。 ⑶昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金に関する認定事実ア被告国(厚生省援護局長)は,各都道府県知事にあてて,昭和58年5 月19日付けで,「戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律の施行について(施行通知)」(昭和58年5月19日厚生省援発第358号。乙3,23)を発出した。 同施行通知は,裁定事務について,「今回の措置の円滑な運用を期するためには,市町村の積極的な協力に期待するところが大であるので,市町村の関係職員に対し,今回の継続の趣旨,内容,手続等の周知徹底に努められたいこと」,「今回の法改正により特別給付金の受給権を得た者が時効(三年間)により請求もれとならないよう,市町村,戦没者遺族相談員,関係団体等を通じて,広報活動に努められたいこと」,「なお,再継続分の特別給付金の受給権者については,継続分の特別給付金の裁定の際の資料等に基づき,その対象者に対する適切な請求指導に努められたいこと」などとするものであった。 イ被告大阪府(民生 ,再継続分の特別給付金の受給権者については,継続分の特別給付金の裁定の際の資料等に基づき,その対象者に対する適切な請求指導に努められたいこと」などとするものであった。 イ被告大阪府(民生部長)は,大阪市民生局長にあてて,昭和58年6月16日付けで,特別給付金の受給権者への広報等周知徹底を依頼した(丁3の2)。 被告大阪市は,「大阪市政だより(昭和58年8月号)」において,特別給付金の支給に関する広報文を掲載した(丁3の1)。 ウ被告大阪府(民生部福祉課長)は,府下市町村援護担当課長にあてて,昭和58年7月26日付けで,特別給付金の支給に関するポスターの掲示を依頼した(丁4の2)。 被告大阪市(民生局総務部庶務課長)は,各区区民室長にあてて,同年8月,同ポスターの掲示を依頼した(丁4の1)。 エ被告大阪府は,昭和58年8月5日の「府政だより」において,特別給付金の支給に関する広報文を掲載した。なお,「府政だより」は,新聞折り込みで届けられていたほか,府民センター,市区役所,町村役場等に備えられていた。(丙1)オ被告国(厚生省援護局援護課長)は,各都道府県民生主管部(局)長に あてて,昭和60年4月26日付けで,「各種特別給付金支給法及び特別弔慰金支給法の特給システムの管理運用要領について」(甲26)を発し,支給法の施行事務等を処理するためのコンピュータシステムとして「特給システム」の管理・運用を同年5月1日から開始することとした。そして,電算化の運用開始に当たり,電算化前に支給決定がされた者のデータは入力されず,昭和60年以降,特別給付金の請求があった者について入力がされた(甲19)。 カ昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の受給者数は,34万6538人であった(甲 者のデータは入力されず,昭和60年以降,特別給付金の請求があった者について入力がされた(甲19)。 カ昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の受給者数は,34万6538人であった(甲13)。 (4)平成5年4月1日を基準日とする特別給付金に関する認定事実ア被告国(厚生省社会・援護局援護課給付係)は,各都道府県援護主管課特別給付金担当者にあてて,平成5年6月2日付けで,各都道府県において実施する特別給付金の支給に関する広報の参考に資するため,広報案を作成し,送付した(乙9)。 被告大阪府(福祉部社会課恩給援護係長)は,府下市町村援護事務担当係長にあてて,同月23日付けで,同広報案を送付し,広報紙等に掲載して周知することを依頼した(丁5の2)。 被告大阪市は,「大阪市政だより(平成5年9月号)」において,特別給付金の支給に関する広報文を掲載した(丁5の1)。 イ被告国(厚生省)は,平成5年6月1日,都道府県を対象とし,戦没者等の妻に対する特別給付金支給に関する説明会を開催した。 また,被告大阪府は,同月22日,府下市町村を対象とし,説明会を実施した。(以上につき,丙13,証人J)ウ被告国は,各都道府県にあてて,昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金を受給した者の名簿である「前回受給者名簿」を送付した(丙13,証人J)。ただし,この名簿は,昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の受給対象者のうち,昭和60年の電算化以後に特別給付金の 請求があった者の名簿である。 被告大阪府(福祉部社会課恩給援護係)は,府下市町村援護事務主管課にあてて,平成5年7月15日付けで,原告Aのデータも含まれる「前回受給者名簿」を送付した(甲8の1,3,4)。送付に際しては, 被告大阪府(福祉部社会課恩給援護係)は,府下市町村援護事務主管課にあてて,平成5年7月15日付けで,原告Aのデータも含まれる「前回受給者名簿」を送付した(甲8の1,3,4)。送付に際しては,「事務処理の参考にしていただきますようよろしくお願いします」と記載したのみ(甲8の3)で,被告大阪府(福祉部社会課恩給援護係)は,府下市町村に対し,特別給付金の受給権者に対して個別請求指導をすることを指示しなかった(丙13,証人J)。 被告大阪市(民生局長)は,各区区民室長にあてて,平成5年8月,戦没者等の妻に対する特別給付金請求等にかかる事務についての事務連絡を出したが,その中には,対象者を「戦没者等の妻で昭和58年4月1日から特別給付金(再継続分)を受けていた者ほか」とし,広報として,市政だより(9月号)に掲載すること,市遺族会には別途説明済みであることのほか,具体的請求事務についての説明の記載があるのみで,個別請求指導についての記載はなかった(丁5の1)。 エ被告国は,平成5年8月22日から同月28日までの間,大阪を含む全国の主要7都市で行われた「テレフォン・ニュースサービス」において,特別給付金の支給に関する案内を実施した(乙7)。 オ被告国は,平成5年10月4日に読売新聞に,同月8日に地方紙51紙及び郷土紙16紙に,特別給付金の支給に関する広報文を掲載した(乙8)。 カ被告国(厚生省社会・援護局援護課及び同課審査室)は,平成5年10月から同年11月にかけて,「(平成5年度)戦傷病者戦没者遺族等援護法,特別弔慰金支給法及び各種特別給付金支給法の施行事務研修会」を開催した。 同研修会は,北海道東北,関東甲信越,東海北陸,近畿,中国四国,九州のブロックごとに行われた。同研修会において,埼玉県が,特 金支給法及び各種特別給付金支給法の施行事務研修会」を開催した。 同研修会は,北海道東北,関東甲信越,東海北陸,近畿,中国四国,九州のブロックごとに行われた。同研修会において,埼玉県が,特別給付金の請求指導について,「リストにない前回時効による失権者や,転居先ま たは死亡等の確認のできない者についての取扱い」に関する質疑を提出し,「他県の状況及び,請求指導についての国の考え方を御教示願いたい」とした。被告国(厚生省社会・援護局援護課及び同課審査室)は,これに対し,「個別の請求指導については,できる限り手持ちの資料等にもとづいて行っていただきたいと考えているが個別指導のできない部分については,広報等を行い権利者が時効により失権することのないように努められたい」と回答した(なお,埼玉県の質疑及びこれに対する回答が,近畿ブロックの研修会においても紹介されたかどうかは,不明である。)。(以上につき,乙4の1ないし4)キ被告国(厚生省社会・援護局)は,平成6年3月10日及び平成7年3月1日,各都道府県の援護関係事務主管課長を対象として,「援護関係事務主管課長会議」を開催した。被告国(厚生省社会・援護局)は,同会議において,特別給付金の事務処理促進について,「未請求の受給権者に対する請求指導及び審査,裁定事務の促進になお一層努められたい」などと指導した。(乙5,6)ク被告国(厚生省社会・援護局)は,平成8年3月5日,各都道府県の援護関係事務主管課長を対象として,「援護関係事務主管課長会議」を開催した。被告国(厚生省社会・援護局)は,同会議において,特別給付金の「請求期限が同年5月18日〔中略〕であるので,請求漏れが生じないよう広報等に努められたい」と指導した。(乙10)ケ被告大阪府は,平成8年4月10日 援護局)は,同会議において,特別給付金の「請求期限が同年5月18日〔中略〕であるので,請求漏れが生じないよう広報等に努められたい」と指導した。(乙10)ケ被告大阪府は,平成8年4月10日付け「府政だより」において,特別給付金の支給に関する広報文を掲載した(丙3)。 コ平成5年4月1日を基準日とする特別給付金の受給者数は,27万2035人であった(甲13)。 サ平成8年12月11日の参議院予算委員会において,R参議院議員が,特別給付金の時効による失権,個別通知の可否,国及び地方公共団体の広報活動の内容等について質問した。 同委員会においては,M内閣官房長官が,「個人に向けての通知書が出せないものかどうか。広報といっただ単に一片の,いろんな問題が書かれている中にその一行があってみたところで,それは必ずしも完全な効果にはならないという気もいたしますので,研究をさせていただきます」と述べている。(以上につき,甲17)シ平成10年3月19日の参議院国民福祉委員会において,R参議院議員が,前記サの質問に関連して,特別給付金の広報の在り方等について質問した。 同委員会においては,N厚生大臣が,「請求漏れを防止するため,いろいろな措置を講じ」てきたところ,「行政側で把握できる特別給付金の対象者に対しては,新たな措置として未請求者の方々に個別に制度の内容を送付する。自動的に個別に案内が来ますから,ああ,こういうことができるのかなということがわかるはずです。」との答弁をした(以上につき,甲18)。 ⑸平成15年4月1日を基準日とする特別給付金及びその後の経過に関する認定事実ア被告国(厚生労働省社会・援護局援護課給付係)は,各都道府県援護主管課特別給付金担当者にあてて,平成15年2 ⑸平成15年4月1日を基準日とする特別給付金及びその後の経過に関する認定事実ア被告国(厚生労働省社会・援護局援護課給付係)は,各都道府県援護主管課特別給付金担当者にあてて,平成15年2月7日付けで,「平成15年改正予定の戦没者等の妻に対する特別給付金及び戦没者の父母等に対する特別給付金に係る事務スケジュールについて」(乙11)及び「前回受給者リスト」(丙12)を送付し,「受給権の消滅を防止する観点からも,次のとおりきめ細かな広報施策に努められるよう」求めた上で,「各都道府県及び各市区町村等の広報紙等を活用した広報の実施」及び「前回受給者リスト(第十七回特別給付金〔中略〕裁定者リスト)を活用の上,同リストによる個別の制度案内の実施」を行うよう指導した。なお,「リストに出力されている制度案内対象者が住所地に居住していない等の場合には,次のように対応」することとし,「リストに出力されている住所地に 制度案内対象者が居住おらず,住民票等により転居先を確認できるものについては,現居住地を所管する都道府県に制度案内を依頼すること」「制度案内対象者が権利発生日において既に死亡していることを,住民票等により確認できるものについては,制度案内を行わないこと」としている(「第十七回特別給付金裁定者リスト」は,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金を受給した者のリストである。)。また,被告国(厚生労働省社会・援護局援護課給付係)は,併せて,各都道府県及び各市区町村等において実施する特別給付金の支給に関する広報の参考に資するため,広報案を送付した(乙11)。 イ被告大阪市(健康福祉局総務部庶務課長)は,「大阪市政だより(平成15年5月号)」において,特別給付金の支給に関する広報文を掲載するとともに(なお,「府政だより(6月分)」 た(乙11)。 イ被告大阪市(健康福祉局総務部庶務課長)は,「大阪市政だより(平成15年5月号)」において,特別給付金の支給に関する広報文を掲載するとともに(なお,「府政だより(6月分)」にも掲載された。),各区区民企画室長にあてて,平成15年4月1日付けで,特別給付金の支給に関する広報文を区広報紙に掲載するよう依頼した(丁6)。 ウ被告国(厚生労働省社会・援護局援護課)は,個別請求指導を実施する際に利用するためのリーフレットを作成し,平成15年4月11日,各都道府県あてに送付した(乙12)。 被告大阪府(健康福祉部社会援護課恩給援護グループ)は,府下市町村援護事務主管課にあてて,同月23日付けで,同リーフレットを配布した(丁7の2)。 被告大阪市(健康福祉局総務部庶務課長)は,各区区民企画室長にあてて,同年5月6日付けで,同リーフレットを配布した(丁7の1)。 エ被告大阪府(健康福祉部社会援護課)は,平成15年6月4日,「平成15年度市区町村援護事務担当者会議」を開催した。被告大阪府(健康福祉部社会援護課)は,同会議において,前回受給者リスト登載者のうち,平成15年4月1日現在生存者の管内居住者に対して個別請求指導をすること,転居者,転居先,転居年月日,転居先不明者(生死不明者を含む。) を報告すること,特別給付金の支給について市区町村の広報紙等を活用して広報することなどを依頼した。(丙8,11)オ被告大阪府は,平成15年6月30日,大阪府遺族連合会の「平成15年度支部長・婦人部長合同研修会」において,大阪府職員を講師として,「特別給付金の請求手続等について」と題する講演を行った(丙10)。 カ被告大阪府は,平成15年7月1日付け「府政だより」において,特別給付金の支給 研修会」において,大阪府職員を講師として,「特別給付金の請求手続等について」と題する講演を行った(丙10)。 カ被告大阪府は,平成15年7月1日付け「府政だより」において,特別給付金の支給に関する広報文を掲載した(丙4)。 キ被告国(厚生労働省社会・援護局援護課給付係)は,各都道府県において実施する特別給付金の支給に関する広報の参考に資するため,各都道府県援護主管課特別給付金担当者にあてて,平成15年9月1日付けで,広報案を送付し,制度の周知を依頼した(乙19)。 ク被告国(厚生労働省社会・援護局援護課長)は,特別給付金の審査事務及び未請求者に対する制度案内の実施における活用目的で,平成15年12月1日付けで,各都道府県民生主管部(局)長にあてて,「平成15年4月1日現在の公務扶助料等受給者リスト」等を送付した。そして,同リストによる特別給付金の受給権確認及び制度案内の実施に当たっては,次の点に留意するとし,(1)「第二十二回特別給付金「い」号の請求者について,特別給付金の受給要件である『平成15年4月1日現在公務扶助料等を受給していること』が提出書類により確認できない場合」は,同リストにより確認するよう指導した。なお,同(2)では,同時に送付した「平成15年改正による戦没者妻特別給付金の基準日変更対象者及び戦傷病者妻特別給付金からの移行対象者に係るリスト」に「出力されている制度案内対象者が住所地に居住していない場合で,住民票等により転出先を確認できる者については,現住所地を管轄する都道府県に制度案内を依頼」している(乙13)。 ケ被告国は,平成16年1月24日放映の朝日ニュースター「政策対談明日への架け橋」の政府からのお知らせコーナーにおいて,対象者,請求期 限を明示して,特別給付金の支給につい 乙13)。 ケ被告国は,平成16年1月24日放映の朝日ニュースター「政策対談明日への架け橋」の政府からのお知らせコーナーにおいて,対象者,請求期 限を明示して,特別給付金の支給についての広報を実施した(乙17の1,17の2)。 コ被告国(厚生労働省社会・援護局援護課)は,平成16年3月2日,平成17年3月1日及び平成18年2月28日,各都道府県の社会・援護局関係主管課長を対象として,「社会・援護局関係主管課長会議」を開催した。被告国(厚生労働省社会・援護局援護課)は,同会議において,「対象者が全体的に高齢化しており,広報等の看過による受給権の消滅も考えられるので,きめ細かな広報施策に努められるようお願いいたしたい」などと指導するとともに,時効消滅の対象となる特別給付金の名称,請求期限等を明示した。(乙14ないし16)サ被告国は,平成16年8月10日に産経新聞に,同月12日にブロック3紙(北海道新聞,東京中日新聞及び西日本新聞)に,同月13日に読売新聞に,特別給付金の支給に関する広報文を掲載した(乙18)。 シ被告大阪府(健康福祉部社会援護課長)は,大阪市健康福祉局総務部庶務課長にあてて,平成17年2月9日付けで,前回の特別給付金受給者のうち,他府県及び府内市区町村から新たに大阪市管内に転入し,未請求となっている「別添の者」に対する特別給付金の請求指導等を依頼した(丁1の2)。 これを受けて,被告大阪市(健康福祉局総務部庶務課長)は,各区区民企画室長にあてて,平成17年3月,上記の者の請求指導等を依頼した(丁1の1)。 ス被告大阪府(健康福祉部社会援護課長)は,平成17年11月15日付けで,各都道府県援護主管課長にあてて,大阪府からの転出した前回の特別給付金受給者の名簿を送付して 依頼した(丁1の1)。 ス被告大阪府(健康福祉部社会援護課長)は,平成17年11月15日付けで,各都道府県援護主管課長にあてて,大阪府からの転出した前回の特別給付金受給者の名簿を送付して,請求指導等を依頼するとともに,府下市町村援護主管課長にあてて,転入者に対する請求指導等を依頼した(丙9,丁2の2)。 これを受けて,被告大阪市(健康福祉局総務部庶務課長)は,各区区民 企画室長にあてて,同年12月,請求指導等を依頼した(丁2の1)。 セ被告国(厚生労働省社会・援護局援護課給付係)は,各都道府県援護主管課特別給付金担当者にあてて,平成17年12月13日付けで,特別給付金の時効失権防止のための請求指導並びに各都道府県及び各市区町村等の広報紙を活用した広報施策の実施を指導するとともに,広報案を送付した(乙20)。 これを受けて,被告大阪府(健康福祉部社会援護課長)は,府下市町村援護主管課長にあてて,平成17年12月22日付けで,特別給付金の時効失権防止の目的で,広報案を送付し,広報紙等を活用した広報施策を依頼した(丙7)。 ソ被告大阪府(健康福祉部社会援護課長)は,平成18年3月1日付け「府政だより」において,特別給付金の支給に関する広報文を掲載した(丙5)。 タなお,被告大阪府は,平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間,ホームページにおいて,特別給付金の支給に関する広報を行っていた(丙6)。 チ平成15年4月1日を基準日とする特別給付金の受給者数は,15万8954人であり,同日現在の平均年齢は86.1歳であった(甲13)。 同日を基準日とする特別給付金の受給権を有すると思われる者は約17万人で,受給権が時効消滅した人数は約9000人である(甲19)。 ツ平成1 同日現在の平均年齢は86.1歳であった(甲13)。 同日を基準日とする特別給付金の受給権を有すると思われる者は約17万人で,受給権が時効消滅した人数は約9000人である(甲19)。 ツ平成19年3月7日の参議院予算委員会において,S議員が特別給付金の消滅時効に対する対策等を質問した。 同委員会において,T厚生労働大臣は,「特別給付金の請求漏れを防止するため,例えば恩給受給者データを活用して受給者の方々への個別案内が行き渡るようにすることができないかどうか,総務省,都道府県等と相談しながら十分に検討してまいりたい」と述べている。(以上につき,甲19)テ消滅時効完成後も特別給付金を支給することなどを内容とする「戦没者 等の妻に対する特別給付金支給法による特別給付金の支給に係る時効の特例等に関する法律案」(甲21)は,平成19年6月21日,議員発議によって国会に提出された(第166回参法第14号)が,審議未了により,廃案となった(甲20)。 なお,年金記録の訂正がなされた上で裁定(裁定の訂正を含む。)が行われた場合において,消滅時効完成後も年金を支給することなどを内容とする「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律案」は,同年5月29日,議員発議によって国会に提出され(第166回衆法第37号),同国会において,成立した(平成19年法律第111号。甲22の1及び2)。 争点⑴(昭和48年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)及び争点⑵(昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)について⑴争点⑴,争点⑵に対する判断の要旨当裁判所は,個別請求指導を義務付ける法令がなく,また,本件 8年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)について⑴争点⑴,争点⑵に対する判断の要旨当裁判所は,個別請求指導を義務付ける法令がなく,また,本件においては,個別請求指導を行うべき事情もないので,被告らに,各基準日の特別給付金に関して個別請求指導を怠った違法行為等があると認めることはできないと判断する。なお,以下では,争点(3)ア,争点(4)アについても,併せて判断する。 ⑵国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合について国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものである(最一小判昭和60年11月21日民集39巻7号1512頁)。 そして,ここでいう職務上の法的義務は,法令の定めから発生するのが通常である。しかし,法令に直接的な定めがない場合であっても,関係する法令等の定めを前提とした上で,損害発生の可能性及びその重大性,行為の容 易性,代替的手段の有無及びその実効性等の事情から,職務上の法的義務が発生することはあり得なくはないというべきである。 ⑶個別請求指導をすべき職務上の法的義務等についてア支給法及び関係法令を見ても,個別請求指導に関する規定はない。かえって,支給法は,申請主義を採り(同法3条6項),特別給付金の支給を,これを受けようとする者の請求に係らせている。このような法令の定めからすれば,支給法は,個別請求指導を積極的に予定しているものではないということができる。 とはいえ,特別給付金について,官報による公布以外に,何らの周知措置がされなければ,多数の受給権者が請求 れば,支給法は,個別請求指導を積極的に予定しているものではないということができる。 とはいえ,特別給付金について,官報による公布以外に,何らの周知措置がされなければ,多数の受給権者が請求することなく,消滅時効によって失権するに至ることは明らかであり,支給法を制定した趣旨が果たせないこととなる。したがって,そのような事態を避けるため,国及び地方公共団体が,特別給付金に関し,一定の周知措置を行うべきであるのは当然である。問題は,いかなる周知措置が職務上の法的義務として認められるかである。そもそも法制度に対する周知措置をどの程度実施するかは,対象者を含めたその法制度の内容やその周知の程度,国及び地方公共団体の財政事情,その他諸般の事情を勘案して,国及び地方公共団体の裁量に委ねられているといわざるを得ないからである。そして,その裁量の範囲を著しく逸脱し,合理性を著しく欠くといえるような場合にのみ違法と評価されるというべきである。 この点につき,原告らは,公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成した上で,当該データに基づき個別請求指導をすべき職務上の法的義務があったと主張する。 確かに,支給法は,各基準日現在,現に恩給法による公務扶助料等の支給を受ける権利を有する「戦没者等の妻」に対して支給される特別給付金であるから,その対象者は特定されている上,平成15年4月1日現在の対象者の平均年齢は86.1歳となるなど対象者の高齢化が進んでいるこ とが認められ,当該対象者については,恩給法による公務扶助料等の受給者名簿により特定することが可能で,同名簿を活用して個別請求指導を行えば,特別給付金の受給権があることを知らずに当該権利を時効消滅させてしまう受給権者をほとんどなくすことが可能なのでは 助料等の受給者名簿により特定することが可能で,同名簿を活用して個別請求指導を行えば,特別給付金の受給権があることを知らずに当該権利を時効消滅させてしまう受給権者をほとんどなくすことが可能なのではないかと思われる。 他方,前記のとおり,法令上,個別請求指導を予定するような規定はないこと,周知措置の程度は,基本的に国及び地方公共団体の裁量に委ねられていること,対象者は特定されているとはいえ,昭和38年4月1日を基準日とする特別給付金の場合で約44万人,平成15年4月1日を基準日とする特別給付金の場合でも約17万人と多数にのぼること,戦没者等の妻の精神的痛苦を慰謝するためのものとはいえ,特別給付金の具体的内容は,毎年6万円(昭和48年4月1日を基準日とするもの)から20万円(平成15年4月1日を基準日とするもの)の金銭的給付という財産的給付であること,受給権者は,現に公務扶助料等の受給を受けている者である上,支給法は,10年ごとに法改正をして特別給付金を継続支給してきており,支給方法として,記名国債が交付され(支給法4条),国債の償還金は,発行の日から10年間に均等償還の方法により毎年2回支払われる(戦没者等の妻に対する特別給付金支給法第4条第2項の規定により発行する国債の発行交付等に関する省令(昭和38年大蔵省令第25号)5条1項)ことから,通常は新しく受給権者になるというものではないこと,法改正が10年ごとであり,個別請求指導をするとすれば,相当な労力や費用を要することが予想されること,さらに,他に種々の広報活動がされていること,具体的には,被告国は,支給法の改正法が施行されるに際し,その都度,都道府県に対し,施行通達や施行通知を発出するとともに,説明会,主管課長会議や研修会を実施して,その周知徹底を指示したこと,また ,具体的には,被告国は,支給法の改正法が施行されるに際し,その都度,都道府県に対し,施行通達や施行通知を発出するとともに,説明会,主管課長会議や研修会を実施して,その周知徹底を指示したこと,また,被告大阪府も府下市町村に対し,説明会等を実施して周知徹底を指示したこと,これらを受けて,被告らは,特別給付金について,新 聞や都道府県,市町村の広報紙への掲載,ポスターの掲示,テレフォン・ニュースサービス等を利用した広報活動,戦没者遺族相談員による継続的な請求指導,遺族会等の関係団体における講演やその側面的協力などによる周知活動を行っている上,平成15年4月1日を基準日とする特別給付金においては,これらに加え,リーフレットの配布,ホームページでの広報,前回受給者名簿に基づく個別請求指導を行っているところ,原告らの推計によっても,現在に至るまで,受給権者の約95パーセントが支給を請求しているとされている(甲14)。これによれば,対象者の高齢化等に従い,周知措置の内容も一般的な案内から個別的な案内へと拡大されてきたものであり,被告らは,原告らが主張する個別請求指導の代替的手段となる周知活動を複数行い,その実効性もそれなりに上がっているということができる。 以上のとおり,発生する可能性のある損害が必ずしも重大なものでなく,相対的に軽微であること,特別給付金の全受給権者に対して個別請求指導を行うことは容易でないこと,被告らが個別請求指導の代替的手段となる周知活動を複数行い,その実効性もそれなりに上がっていることなどの事情を総合的に考慮すれば,被告らが行っていた周知活動に加え,原告らが主張するような公務扶助料等の受給者データに基づいた個別請求指導まですべき職務上の法的義務があるということはできない。 イまた,個別請求指導をすべ ,被告らが行っていた周知活動に加え,原告らが主張するような公務扶助料等の受給者データに基づいた個別請求指導まですべき職務上の法的義務があるということはできない。 イまた,個別請求指導をすべき職務上の法的義務が認められない以上,転居した者及び郵便が届かなくなった者をどう扱うかについて,的確な指示を怠った違法行為も認められない。 (4)原告らの主張について原告らは,支給法の趣旨ないし立法者意思を主張の根拠として援用する。 そして,原告らが支給法の趣旨ないし立法者意思を見出す原因として挙げるものは,支給法の制定過程での衆議院社会労働委員会の審議における厚生省援護局長の答弁である。 しかし,同答弁は,行政機関の一員である厚生省援護局長が行ったものであり,これを支給法の趣旨ないし立法者意思と見ることは困難である。また,その答弁内容を見ても,行政の担当者として,特別給付金は関係者が熟知することになるであろうから,大部分の者は請求するであろうとの予測及び受給権者が知らないうちに権利が時効消滅しないように,十分注意して行政に当たるとするものにすぎない。原告ら主張のように,時効による失権を防止するため,受給権者の99パーセント程度が請求する状態になるように公務扶助料等の受給者データを利用して個別請求指導をすべきとの支給法の趣旨ないし立法者意思を見出すことはできない。 原告らの主張は採用することができない。 ⑸ 結論 以上のとおりであるから,被告らに,各基準日の特別給付金に関して原告らが主張する個別請求指導を怠った違法行為等があったとは認められない。 争点⑶(平成5年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)について⑴公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給 った違法行為等があったとは認められない。 争点⑶(平成5年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)について⑴公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成した上,個別請求指導を行わなかった違法行為の有無について(争点(3)ア)前記2のとおりであるから,これを引用する。 (2)被告国が個別請求指導を指示したのに,被告大阪府ないし被告大阪市がこれに反したなどの違法行為の有無について(争点⑶イ)ア争点⑶イに対する判断の要旨当裁判所は,被告国が個別請求指導を指示したことはなく,また,被告らに個別請求指導をすべき義務もなかったので,被告らに,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金について,被告国が個別請求指導を指示したのに,被告大阪府ないし被告大阪市がこれに反し,個別請求指導を怠ったなどの違法行為は認められないと判断する。 イ被告国が個別請求指導を指示していないことについて(ア)まず,被告国は,各都道府県にあてて,昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金を受給した者の名簿である「前回受給者名簿」を送付したこと(ただし,この名簿は,昭和58年4月1日を基準日とする特別給付金の受給対象者のうち,昭和60年の電算化以後に特別給付金の請求があった者の名簿である。),被告大阪府(福祉部社会課恩給援護係)は,府下市町村援護事務主管課にあてて,事務処理の参考にするために,平成5年7月15日付けで,原告Aのデータも含まれる「前回受給者名簿」を送付したことが認められる。 これに対し,平成8年12月11日の参議院予算委員会において,R参議院議員が,特別給付金の時効による失権,個別通知の可否,国及び地方公共団体の広報活動の内 」を送付したことが認められる。 これに対し,平成8年12月11日の参議院予算委員会において,R参議院議員が,特別給付金の時効による失権,個別通知の可否,国及び地方公共団体の広報活動の内容等について質問し,M内閣官房長官が,「個人に向けての通知書が出せないものかどうか。広報といっただ単に一片の,いろんな問題が書かれている中にその一行があってみたところで,それは必ずしも完全な効果にはならないという気もいたしますので,研究をさせていただきます」と述べている(前記1⑷サ)。そして,平成10年3月19日の参議院国民福祉委員会において,N厚生大臣が,請求漏れを防止するため,「行政側で把握できる特別給付金の対象者に対しては,新たな措置として未請求者の方々に個別に制度の内容を送付」する措置を執る旨答弁している(前記1⑷シ)。その後,被告国(厚生労働省社会・援護局援護課給付係)は,各都道府県援護主管課特別給付金担当者にあてて,平成15年2月7日付けで,「平成15年改正予定の戦没者等の妻に対する特別給付金及び戦没者の父母等に対する特別給付金に係る事務スケジュールについて」(乙11)及び「前回受給者リスト」(丙12)を送付し,前回受給者リスト(第十七回特別給付金裁定者リスト)を活用の上,同リストによる個別の制度案内の実施等を行うよう具体的に指導している(前記1⑸ア)。 上記事実経過からすれば,被告国は,平成5年4月1月を基準日とする特別給付金の支給当時は,前回受給者名簿の送付はしたものの,個別請求指導の指示まではしておらず,平成15年4月1月を基準日とする特別給付金の支給に当たって初めて,個別請求指導の指示をしたと考えるのが相当である。 また,平成15年4月1月を基準日とする特別給付金に関する乙第11,12号証 年4月1月を基準日とする特別給付金の支給に当たって初めて,個別請求指導の指示をしたと考えるのが相当である。 また,平成15年4月1月を基準日とする特別給付金に関する乙第11,12号証と平成5年4月1月を基準日とする特別給付金に関する乙第5,6,10号証を対比しても,前者は,「個別の制度案内」等と記載しているのに対し,後者は,単に「請求指導」等と記載するのみである(なお,「請求指導」の語は,個別請求指導が行われていない昭和58年4月1月を基準日とする特別給付金の支給の際も用いられている。 前記1⑶ア)。これらの文言からしても,被告国が,平成5年4月1月を基準日とする特別給付金について,個別請求指導を指示していたとは考え難い。 したがって,被告国は,平成5年4月1月を基準日とする特別給付金について,個別請求指導を指示していないと認められる。 (イ)この点につき,原告Aは,「(平成5年度)戦傷病者戦没者遺族等援護法,特別弔慰金支給法及び各種特別給付金支給法の施行事務研修会」における埼玉県からの質疑及びこれに対する回答(前記1⑷カ参照)を主張の根拠の一つとしている。 しかし,埼玉県からの質疑は,飽くまで,都道府県の一つにおける取扱いに関する質疑でしかない。むしろ,埼玉県が,「他県の状況及び,請求指導についての国の考え方を御教示願いたい」としていることは,請求指導についての被告国の考え方がいまだ明らかにされておらず,他の都道府県の取扱いも統一されたものでなかったことを示すもので,被告国が個別請求指導を指示していたこととは整合しない。また,埼玉県の質疑に対する被告国の回答も,「個別の請求指導については,できる 限り手持ちの資料等にもとづいて行っていただきたいと考えているが個別指導のできない部分に ていたこととは整合しない。また,埼玉県の質疑に対する被告国の回答も,「個別の請求指導については,できる 限り手持ちの資料等にもとづいて行っていただきたいと考えているが個別指導のできない部分については,広報等を行い権利者が時効により失権することのないように努められたい」とするにすぎず,必ず個別請求指導をせよというものではない上,これをしない余地を認めているようである。 また,原告Aが主張の根拠とする他の事項によっても,被告国が,個別請求指導を指示していたと認めるに十分ではない。 原告Aの主張は採用することができない。 ウ被告らに個別請求指導をすべき義務がなかったことについて前記2のとおりであるから,これを引用する。 なお,特別給付金を受ける権利の裁定は,都道府県知事への機関委任事務として規定されていた(旧地方自治法148条2項,別表第3,55の9)が,個別請求指導を実施することは,機関委任事務ではない。 エ 結論 以上のとおりであるから,被告らに,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金について,被告国が個別請求指導を指示したのに,被告大阪府ないし被告大阪市がこれに反し,個別請求指導を怠ったなどの違法行為があったとは認められない。 (3)特別給付金の前回受給者と非受給者を差別的に取り扱い,前者に対してのみ個別請求指導を行った違法行為の有無(争点(3)ウ)ア争点⑶ウに対する判断の要旨当裁判所は,そもそも被告国には,特別給付金について個別請求指導を行う義務はない上(前記2),特別給付金の前回受給者に対してのみ個別請求指導を行い,非受給者に対しては行わないようにしていたと認めることもできないから,原告Bの主張する違法行為は認められないと判断する。 はない上(前記2),特別給付金の前回受給者に対してのみ個別請求指導を行い,非受給者に対しては行わないようにしていたと認めることもできないから,原告Bの主張する違法行為は認められないと判断する。 イ平成5年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導の実施状況等について 前記認定事実によれば,被告国は,そもそも平成5年4月1日を基準日とする特別給付金に関し,個別請求指導を指示してはおらず(前記(2)イ),被告大阪府及び被告大阪市も,これを実施してはいなかった(前記1⑷ウ参照)。すなわち,被告国は,特別給付金の前回受給者及び非受給者のいずれに対しても,個別請求指導を指示していなかったのである。 なお,被告国は,各都道府県にあてて,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金について,原告Aのデータが含まれている前回受給者名簿を送付したことが認められるが,前記(2)イのとおり,個別請求指導を指示したものではないし,特別給付金の受給権者に対し政府広報等を実施するとともに,前回受給者として把握されている者のデータを各都道府県に提供することは,合理的な措置であって,不合理な差別ということはできない。 この点は,被告大阪府が,府下市町村にあてて,事務処理の参考にするために,前回受給者名簿を送付している事実(前記1(4)ウ)についても同様であって,合理的な措置である。 また,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金についても,埼玉県等いくつかの都道府県は,個別請求指導を実施していたことが認められる(乙4の1,証人J)。しかし,個別請求指導が都道府県等の義務ではなく(前記2参照),行政サービスとして行われていたことに照らせば,居住する地方公共団体によって個別請求指導の実施の有無に差異があったとしても,やむを )。しかし,個別請求指導が都道府県等の義務ではなく(前記2参照),行政サービスとして行われていたことに照らせば,居住する地方公共団体によって個別請求指導の実施の有無に差異があったとしても,やむを得ないものといわざるを得ない。 ウ 結論 以上のとおりであるから,被告国が,平成5年4月1日を基準日とする特別給付金について,特別給付金の前回受給者と非受給者を差別的に取り扱い,前者に対してのみ個別請求指導を行った違法行為があったとは認められない。 争点⑷(平成15年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導を怠った違法行為の有無)について ⑴公務扶助料等の受給者データに基づいて特別給付金の受給権者データを作成した上,個別請求指導を行わなかった違法行為の有無について(争点(4)ア)ア当裁判所は,前記2で説示したとおり,被告国には,原告らが主張する個別請求指導をすべき義務はないと判断するので,上記の違法行為があったとは認められないと判断する。 イなお,平成15年4月1日を基準日とする特別給付金に関する被告国の個別請求指導の実施状況等は,後記(2)イで説示しているとおりであり,被告国は,平成15年4月1日を基準日とする特別給付金については,前回受給者名簿による個別請求指導を行うよう指導したものの,公務扶助料等の受給者データに基づく個別請求指導を行うよう指導はしていないことが認められる。しかしながら,被告国には,そもそも原告らが主張するような個別請求指導をすべき義務がないのであるから,これを違法とすることはできない。 (2)特別給付金の前回受給者と非受給者を差別的に取り扱い,前者に対してのみ個別請求指導を行った違法行為の有無について(争点⑷イ)ア争点(4)イに対する判断の要旨 ことはできない。 (2)特別給付金の前回受給者と非受給者を差別的に取り扱い,前者に対してのみ個別請求指導を行った違法行為の有無について(争点⑷イ)ア争点(4)イに対する判断の要旨当裁判所は,被告国には,特別給付金の前回受給者に対してのみ個別請求指導を行った事実は認められるものの,そもそも被告国には,特別給付金について個別請求指導を行う義務はなく(前記2),前回受給者のみに個別請求指導を行ったとしてもそれは合理的な措置であるから,原告らの主張する違法行為は認められないと判断する。 イ平成15年4月1日を基準日とする特別給付金に関する個別請求指導の実施状況等について前記認定のとおり,被告国(厚生労働省社会・援護局援護課給付係)は,各都道府県援護主管課特別給付金担当者にあてて,平成15年2月7日付けで,「平成15年改正予定の戦没者等の妻に対する特別給付金及び戦没 者の父母等に対する特別給付金に係る事務スケジュールについて」(乙11)及び「前回受給者リスト」(丙12)を送付し,前回受給者リスト(第十七回特別給付金裁定者リスト)を活用の上,同リストによる個別の制度案内の実施等を行うよう指導している(前記1⑸ア)。その後,被告大阪府(健康福祉部社会援護課)は,同年6月14日,「平成15年度市区町村援護事務担当者会議」を開催し,前回受給者リスト登載者のうち,平成15年4月1日現在生存者の管内居住者に対して個別請求指導をすることなどを依頼している(前記1⑸エ)。これを受けて,被告大阪市は,各区に対し,前回受給者名簿に基づく個別請求指導を依頼し,各区は,個別請求指導を実施したものと推認される(前記1(5)シ,ス参照)。 そして,上記以外に,被告国(厚生労働省社会・援護局援護課長)は,平成1 受給者名簿に基づく個別請求指導を依頼し,各区は,個別請求指導を実施したものと推認される(前記1(5)シ,ス参照)。 そして,上記以外に,被告国(厚生労働省社会・援護局援護課長)は,平成15年12月1日付けで,各都道府県民生主管部(局)長にあてて,「平成15年4月1日現在の公務扶助料等受給者リスト」等を送付しているが,同リストは,受給権を確認するための資料であった(前記1⑸ク)。 以上からすれば,被告国(厚生省援護局)は,公務扶助料受給者データに基づく特別給付金の受給権者データ(「平成15年4月1日現在の公務扶助料等受給者リスト」)に基づく個別請求指導の指示は行ってはいないが,前回受給者名簿に基づく個別請求指導は指示をしたこと,これに基づき,大阪府は,府内各市区町村に対し,同様の指導をしたことが認められる。そして,大阪市は,市内各区に対し,同様の指導をし,各区によって,前回受給者に対する個別請求指導が実施されたこと,しかし,原告らは,前回受給者名簿には登載されていなかったので,個別請求指導を受けることはできなかったことが推認される。 ウ被告国に公務扶助料等の受給者データに基づいて個別請求指導をすべき義務がなかったこと等について被告国に,公務扶助料等の受給者データに基づいて個別請求指導まですべき義務がないとしても,一般的に,周知措置をきめ細かく行い,時効消 滅する受給権者をできる限り少なくすることが望ましいことはいうまでもないところである。特に,特別給付金のように対象者が特定し,かつ,高齢化が進んでいる状況にかんがみると,周知措置の内容が一般的なものから個別的な案内へと拡大されてきたことは,望ましい方向であるというべきである。そして,その拡大の一段階として,前回受給者名簿に基づく個別請求指導を行 況にかんがみると,周知措置の内容が一般的なものから個別的な案内へと拡大されてきたことは,望ましい方向であるというべきである。そして,その拡大の一段階として,前回受給者名簿に基づく個別請求指導を行うことは,それ自体は,合理的な措置というべきであり,これをもって,不合理な差別ということはできない。 エ 結論 以上のとおりであるから,被告国にはそもそも個別請求指導をすべき義務はなく,特別給付金の受給権者に対し政府広報等を実施するとともに,前回受給者として把握されている者に対し個別請求指導をしたとしても,それは合理的な措置であって,不合理な差別とはいえず,違法行為があったとは認められない。 争点⑸(違法な立法不作為の有無)について⑴争点⑸に対する判断の要旨当裁判所は,特別給付金は憲法によって保障された権利ではなく,また,厚生年金及び国民年金との区別に合理的な理由がないとはいえないから,特別給付金の消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない立法不作為は,最大判平成17年9月14日民集59巻7号2087頁等に照らし,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法と評価することはできないと判断する。 ⑵国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合について国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである。したがって,国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に 対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって,当該立法の内容又は立法不作為の 行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に 対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって,当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきであり,仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても,そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない。しかしながら,立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国会議員の立法行為又は立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきである。(以上につき,最大判平成17年9月14日民集59巻7号2087頁。最一小判昭和60年11月21日民集39巻7号1512頁も参照)⑶特別給付金が憲法によって保障された権利ではないことなどについて特別給付金は,第二次世界大戦において,一心同体ともいうべき夫が戦没したことによって,大きな心の痛手を受けた戦没者等の妻の精神的痛苦を慰謝するために設けられた給付金である(前記1⑴ア)。 戦争中から戦後占領時代にかけての国の存亡にかかわる非常事態にあっては,国民のすべてが,多かれ少なかれ,その生命・身体・財産の犠牲を堪え忍ぶことを余儀なくされていた。これらの犠牲は,いずれも,戦争犠牲又は戦争損害として,基本的に,国民が等しく受忍しなければならないところであり,これに対する補償等は,憲法の全く予想しないところというべきである 儀なくされていた。これらの犠牲は,いずれも,戦争犠牲又は戦争損害として,基本的に,国民が等しく受忍しなければならないところであり,これに対する補償等は,憲法の全く予想しないところというべきである。(最大判昭和43年11月27日民集22巻12号2808頁参照)特別給付金は,戦争犠牲又は戦争損害を受けた国民のうち,戦没者等の妻について特別に,その精神的痛苦を慰謝するために設けられたものであり,憲法上は,これを保障する条項を見出すことができない。特別給付金は,憲法によって保障された権利ではないといわざるを得ない。特別給付金が憲法 前文ないし憲法13条に基づく幸福追求権に根拠付けられるとの原告らの主張は,採用できない。 したがって,特別給付金の消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない立法不作為は,国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合にも,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などにも該当しないというべきである。特別給付金の消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない立法不作為が憲法13条に違反するとはいえない。 ⑷厚生年金及び国民年金との区別に合理的な理由がないとはいえないことなどについて厚生年金保険は,「労働者の老齢,障害又は死亡について保険給付を行い,労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的と」するもので(厚生年金保険法1条),国民年金は,「日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き,老齢,障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し,もつて健全な国民生活の維持及び向上に 条),国民年金は,「日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き,老齢,障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し,もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的と」するものである(国民年金法1条)。 いずれも,給付を受けるべき者等の出捐等を条件とする(厚生年金保険法82条1項,国民年金法87条1項,88条)。また,少なくとも国民年金については,憲法25条2項に規定する理念に基づくことが,条文上も明記されている。 すなわち,厚生年金及び国民年金と特別給付金は,給付を受けるべき者の出捐等を条件とするか否かのほか,次の違いがある。まず,厚生年金及び国民年金が,老齢,障害又は死亡という全国民が等しく遭う可能性のある事項によって国民の生活の安定が損なわれることの防止を目的としているのに対し,特別給付金は,他の国民と区別して戦没者等の妻について特別に,その精神的痛苦を慰謝するために設けられたものである。また,少なくとも国民 年金については,憲法25条2項に根拠付けられるのに対し,特別給付金は,憲法によって保障された権利ではない(前記⑶)。 そして,平成19年5月29日提出に係る「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律案」は,年金記録の処理について,基礎年金番号に統合されていない記録が残っていたことをめぐり,国民の間に不安が広がっていたため,年金記録の訂正に伴う増額分の年金の支給が時効によって消滅する不利益を解消し,政府管掌年金事業における被保険者等の記録の管理に対する国民の信頼を確保するため,記録した事項の訂正に係る年金の支給を受ける権利について時効の特例を設けるものである(甲22の2)。年金給付を受けるべき者等が既に出捐等を行っていることな 録の管理に対する国民の信頼を確保するため,記録した事項の訂正に係る年金の支給を受ける権利について時効の特例を設けるものである(甲22の2)。年金給付を受けるべき者等が既に出捐等を行っていることなどからすると,年金記録の処理に伴う問題のために年金の支給が時効によって消滅することに対処する必要性は,高かったと考えられる。 以上の厚生年金及び国民年金と特別給付金の差異,時効の特例を設ける対象とその必要性,「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律案」の提出理由等からすれば,厚生年金及び国民年金のうち記録した事項の訂正に係る年金の支給を受ける権利と特別給付金を区別し,前二者についてのみ消滅時効の定めを撤廃することについて,合理的な理由がないということはできない。 したがって,特別給付金の消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない立法不作為が憲法14条1項に違反するとはいえない。 ⑸その他の原告らの主張について原告らは,特別給付金の消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない立法不作為が,憲法上の条理に反すると主張する。 しかし,まず,被告国が特別給付金の受給権者に対して個別請求指導を行わなかったことが,国家賠償法1条1項の適用上,違法と評価されないことは,前記のとおりである。 また,原告らが主張する事情によっては,特別給付金の消滅時効の定めを さかのぼって撤廃すべき憲法上の条理があると認めることはできない。 したがって,特別給付金の消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない立法不作為が憲法上の条理に反するとはいえない。 ⑹ 結論 以上のとおりであるから,特別給付金の消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法と評価す 為が憲法上の条理に反するとはいえない。 ⑹ 結論 以上のとおりであるから,特別給付金の消滅時効の定めをさかのぼって撤廃しない立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法と評価することはできない。 第5結語以上によれば,原告らの請求は,その余の争点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第19民事部裁判長裁判官揖斐潔裁判官濱本章子裁判官北川瞬

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