昭和55(う)845 所得税法違反、法人税法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和56年12月7日 東京高等裁判所
ファイル
hanrei-pdf-20395.txt
🤖 AI生成要約2026/3/13

【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。          理    由  本件控訴の趣意は、弁護人葛西宏安作成名義の控訴趣意書に、これに対する答弁 は、検察官岡田照彦作成名義の答弁書にそれぞれ記

タグ

キーワード(AI生成)

判決文本文9,425 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人葛西宏安作成名義の控訴趣意書に、これに対する答弁は、検察官岡田照彦作成名義の答弁書にそれぞれ記載されているとおりであるから、これらを引用する。 控訴趣意第一の四について所論は、要するに、原判決は、判示第一の一、二の事実に関し、被告人が金銭の貸付けによつて得た所得を雑所得と認定したが、被告人が貸付けにまわした資金量、利息収入の額、貸付回数、貸付けの相手方の人数等に照らすと、被告人が金銭の貸付けによつて得た所得は事業所得と認めるのが相当であるから、原判決は事実を誤認したものであるというのである。 そこで、検討すると、被告人が金銭の貸付けによつて得た所得が事業所得にあたるか否かは、被告人のした金銭の貸付けが所得税法二七条一項を受けた所得税法施行令六三条八号にいう「金融業」に該当するか否かの問題に帰着する。そして、個人による金銭の貸付けが右金融業にあたるというためには、当該個人による金銭の貸付けが営利を目的として反復継続して行われ、かつ、その貸付口数、貸付資金量、貸付利率、貸付資金の調達方法、店舗ないし事務所設置の有無、事務員の雇い入れの有無、貸付けのための広告宣伝の有無等の諸般の状況に徴し、社会通念上も金融業と認められるだけの社会的実体を具備していることが必要であると解される。そこで、このような観点から被告人の行つた金銭の貸付行為についてみると、被告人が昭和四八年及び同四九年の両年中に貸付けた金額が高額で、いずれの貸付けにおいても月三分くらいの利息を徴し、十数名に及ぶ貸付相手から右両年で合計六八〇〇万円余りにも達する利息収入を得ているなど、一見被告人による金銭貸付けの事業性を肯認すべき事情が認められないわけではない。しかし他方、原判決 の利息を徴し、十数名に及ぶ貸付相手から右両年で合計六八〇〇万円余りにも達する利息収入を得ているなど、一見被告人による金銭貸付けの事業性を肯認すべき事情が認められないわけではない。しかし他方、原判決も指摘するように、関係証拠によれば、被告人が行つた金銭の貸付けは、知人からの求めに応じた一時余裕資金を融通したり、被告人に資金的余裕があることを知るいわゆる金融ブローカーが持ち込んできた融資の申し込みに応じるという形で行われたものであつて、広告宣伝を行うなどして被告人の方から積極的に融資の申し込みを勧誘したような事実は一切なく、貸付資金も、一部に金融機関からの借り入れによつてまかなわれたものもあるが、多くは被告人がこれまで蓄積してきた自己資金及び自己の経営する株式会社A等からの借り入れによつてまかなわれたこと、被告人は、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律七条による貸金業の届け出をしておらず、金銭の貸付けを行うために店舗を設けたり、使用人を雇つたようなこともないこと等、被告人が金銭の貸付けを事業として継続して行う意思を有していたか否か及び被告人の行つた貸金行為の事業性に疑問を生じさせるような事情も認められる。そこで、以上のような諸事情を総合し、また、被告人自身も、犯則調査の段階から原審公判段階まで一貫して、金銭の貸付けを営業として行うというような意思はなかつた旨供述していることをも併せて判断すると、被告人が金銭の貸付けを自己の事業として反復継続して行う意思まで有していたとは認められず、また、それが金融業と称しうるだけの社会的実体を備えていたとも認められない。してみれば、原判決が、金銭の貸付けによつて得た被告人の所得を事業所得とせず、所得税法三五条所定の雑所得と認定したのは正当であつて、原判決に所論のような事実の誤認があるとは認め たとも認められない。してみれば、原判決が、金銭の貸付けによつて得た被告人の所得を事業所得とせず、所得税法三五条所定の雑所得と認定したのは正当であつて、原判決に所論のような事実の誤認があるとは認められない。論旨は理由がない。 控訴趣意第一の二について所論は、要するに、原判決は、判示第一の一の事実に関し、被告人が昭和四八年六月二八日頃Bに対して貸付けた二〇〇〇万円の利息として同人から最終的に収受した金額は一五〇万円であると認定し、被告人が同年一〇月一六日頃Bに右一五〇万円のうちの一〇〇万円を返還した事実があるにもかかわらず、それは被告人がその時Bとの間で右二〇〇〇万円の貸付金の弁済方法として行つた代物弁済契約による追加支払金であるとして、右利息収入の減額を認めなかつたのは事実を誤認したものであるというのである。 そこで、検討すると、原判決挙示の関係各証拠を総合すると、原判決が所論の点に関し認定判示するところはすべて正当として是認することができる(ただし、原判決七丁目表四行目に九月とあるのは八月の誤記と認められる。)。所論は、原判決が、被告人が前払方式により収受していた利息は九月二七日までの分であるから、これを一〇月一六日になつて返還しなければならない根拠は全く存しないとした判断を独断であるとし、被告人とBは真実利息を返還する旨の合意をしたものであると主張するけれども、被告人がBに一〇〇万円を交付した昭和四八年一〇月一六日頃の時点では、被告人が先に受領した合計一五〇万円の利息に対応する二〇〇〇万円の貸付期間は既に終了していたのであり、しかも、被告人が右時点でBに一〇〇万円を交付することとしたのは、その頃同人との間でかわされた右二〇〇〇万円の代物弁済契約の内容が被告人に非常に有利なもののように思われたからであつて、右一〇〇万円交付の原 被告人が右時点でBに一〇〇万円を交付することとしたのは、その頃同人との間でかわされた右二〇〇〇万円の代物弁済契約の内容が被告人に非常に有利なもののように思われたからであつて、右一〇〇万円交付の原因が同代物弁済契約にあつたことは明らかである。してみれば、たとい右一〇〇万円の交付が当事者間においては利息の返還という名目の下に行われたとしても、これを実質的に評価すれば、利息の返還ではないと認めるのが相当であるから、所論は採用することができない。原判決に所論のような事実の誤認があるとは認められず、論旨は理由がない。 控訴趣意第一の三について所論は、要するに、原判決は、判示第一の二の事実に関し、被告人が昭和四九年四月一一日にCを介して水戸地方裁判所麻生支部に納付した競売法の規定による不動産の競売予納金三〇万円並びに前同日同人を介して千葉地方裁判所八日市場支部に納付した同法の規定による不動産の競売予納金二〇万円及び競売申立ての嘱託登記につき納めた登記免許税二四万円について、これらは最終的には競売に付される物件の所有者が負担すべきものであり、競売申立人はその申立てに際していわば立替払いをしているにすぎないから、非営業貸金による雑所得の金額の計算上総収入金額から控除すべき必要経費にはあたらない旨認定判示したが、法律的にはこれらの金額は競売申立人が競売費用として支出するものであるから、支出した日の属する年分の必要経費と認めるべきであるのに、それを認めなかつた原判決は事実を誤認したものであるというのである。 そこで、検討すると、競売法の規定による不動産の競売費用は(本件は民事執行法施行前の事案である。)、本来債権者である競売申立人がみずからの債権を回収するために支払う費用であつて、これにあてられる競売予約金及び登録免許税の納付義務者も競売申立人と 売費用は(本件は民事執行法施行前の事案である。)、本来債権者である競売申立人がみずからの債権を回収するために支払う費用であつて、これにあてられる競売予約金及び登録免許税の納付義務者も競売申立人とされている(民事訴訟費用等に関する法律一二条、登録免許税法三条等参照)。したがつて、雑所得等の金額の計算にあたり、競売費用を必要経費として計上する方法も、所得金額計算の一方法として全く考えられないわけではない。しかし、競売予納金は、裁判所が競売手続上の個別的な費用を支出する前に、競売申立人がそれにあてるべきものとしてその概算額をあらかじめ提供する金員であつて、競売申立人がそれを裁判所に納付した時点では未だ競売費用とはなつておらず(納付された競売予納金は会計法上も国庫に帰属せず、保管金として扱われ、納付者の返還請求権が留保されている。)、また、納付された競売予納金がすべて必ず競売費用に充当されるとは限らないのであるから、競売申立人がこれを裁判所に納付した段階で直ちにその金額を債権回収のための費用として計上することは相当でない。競売申立の嘱託登記につき納める登記免許税は、競売申立人がその申立ての登記を受ける時に納期限が到来し、その税額も確定するものではあるが(国税通則法一五条、登録免許税法九条、二七条参照)、この登録免許税の納付も、前記予納金の納付と同様に、競売申立人が競売手続を利用するために法律上必要な支出であつて、納付した登録免許税は競売費用とされ、売却代金から優先して償還を受けられるものであるから、その経済的実質ないし所得金額計算上の観点からすれば、登録免許税の納付を競売予納金の納付とは別異に扱わなければならない理由は存しないうえ、競売費用にあてるための支出を細分して、登録免許税納付のための支払い等その支払いの段階で直ちに競売費用として金額 、登録免許税の納付を競売予納金の納付とは別異に扱わなければならない理由は存しないうえ、競売費用にあてるための支出を細分して、登録免許税納付のための支払い等その支払いの段階で直ちに競売費用として金額の確定するもののみをその都度費用に計上するというような方法は、登録免許税等の支払いの法的性質等について必ずしも専門的な知識を有するとは思われない企業等にその履践を期待し難い計理処理の方法であると考えられる。しかも、競売費用は、最終的には競売不動産の所有者において負担すべきものとされており(競売法三三条二項参照、なお、この点は現行の民事執行法においても同様である。同法一九四条、四二条参照。)、売却代金交付の際、先に競売申立人が国庫に納付した登録免許税の金額及び裁判所に納めた予納金中競売費用に充当された金額については、競売費用として売却代金の中から他の債権に優先して競売申立人に支払いがなされるのであり、また、予納金中未使用に終つた分についても、競売手続の終了により保管事由が消滅し、返納される運びとなるのであつて、競売申立人による予納金及び登録免許税付のための支払いは、償還ないし返納が予定された一時的な支払いにとどまるのであるから、右支払いを直ちに損益計算に反映させることなく、貸借対照表上の資産勘定にあたる仮払金勘定で処理することには十分な合理性があるというべきである。 そのほか、競売手続は常に代金交付の段階まで進行するとは限らず、申立ての取下げや手続の取消決定により終了することもあり、そのような場合には、それまでに支払つた競売費用を前記法条によつて競売不動産の所有者に負担させることはできないから、別途当事者間で話合いでも成立しない限り、右費用は最終的に競売申立人において負担せざるをえないこととなるのであるが、最終的に自己負担となつた競売費用につい 産の所有者に負担させることはできないから、別途当事者間で話合いでも成立しない限り、右費用は最終的に競売申立人において負担せざるをえないこととなるのであるが、最終的に自己負担となつた競売費用についてのみこれを費用として計上することとし、競売費用全額の償還があつた場合には、現金勘定と仮仏金勘定のみの操作で済ませるような計理処理の方法を採用している場合には、競売費用にあてるための現金の支払いは、その支払いの時点では未だ相手勘定もその金額も未確定であつてこのような場合における現金等の支出を記録する勘定科目である仮払金勘定で処理するよりほかにないのである。このようにみて<要旨>くると、競売予納金及び登録免許税の納付による現金の支払いは、前記のように、競売費用にあてるための現</要旨>金の収支を原則として現金勘定及び仮払金勘定のみで処理する方法による場合は勿論、これをすべて債権回収費用として損益計算に反映させるような計理処理の方法による場合であつても、原則として一旦仮払金勘定に計上し、債権回収費用勘定への計上は、競売手続が終了し、競売費用の負担者及びその金額並びに返納される予納金の額が確定し、その支払いがあつた時に行うこととするのが相当である。したがつて、競売予納金及び登録免許税の納付による支出につき継続して右以外の計理処理の方法によつているような場合は格別、そうでない場合には、雑所得の金額の計算にあたり、右支出を直ちに支出した日の属する年分の総収入金額から控除すべき必要経費に算入することは許されないというべきである。そこで、このような観点から関係証拠を検討すると、被告人が競売費用に関して何らかの計理処理方法を採用していたというような事実は全くなく、また、前記各競売裁判所において所論指摘の予納金及び登録免許税の納付にかかる競売手続が売却代金の交 検討すると、被告人が競売費用に関して何らかの計理処理方法を採用していたというような事実は全くなく、また、前記各競売裁判所において所論指摘の予納金及び登録免許税の納付にかかる競売手続が売却代金の交付、未使用予納金の返納によつて終了したのは、いずれも昭和五〇年にはいつてからであることが明らかである。 してみれば、原判決が、被告人の昭和四九年分の雑所得の金額の認定にあたり、被告人が競売予納金及び登録免許税を納付するために同年中にした支出を仮払金として処理し、これを総収入金額から控除すべき必要経費たる貸金回収費用と認めなかつたのは正当として是認することができ、原判決に所論のような事実の誤認があるとは認められない。論旨は理由がない。 控訴趣意第一の一について所論は、要するに、原判決は、判示第一の二の事実に関し、被告人がD株式会社を通じてE株式会社に貸付けた二〇〇〇万円の貸付元金について、同会社は倒産したので、同会社から直接弁済を受けることは不可能となつたが、被告人は、同年末当時には、共同貸付者であるD及び株式会社Fと共にEから担保として取得したaの別荘地に対し四分の一の共有持分を有しており、これによつて右貸付元金の回収をはかることが可能であつたから、右貸付元金の貸倒れによる損失の発生を認めることはできない旨認定判示したが、被告人は、右aの土地に対する共有持分は取得しておらず、また、Dに対し、同土地を売却してその売得金を出資割合に応じて分配するよう請求しうる権利も有していなかつたから、右貸付元金は貸倒れになつたものと認めるべきであるのに、原判決がこれを否定し、右貸倒れによる損失の金額を昭和四九年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入しなかつたのは、事実を誤認したものであるというのである。 そこで検討すると、先に判示したとおり、被告人の貸金 れを否定し、右貸倒れによる損失の金額を昭和四九年分の雑所得の金額の計算上必要経費に算入しなかつたのは、事実を誤認したものであるというのである。 そこで検討すると、先に判示したとおり、被告人の貸金行為による所得は雑所得と認められるから、所論指摘の貸付元金につき貸倒れによる損失の発生を認めるか否かは、所得税法五一条四項の解釈適用の問題に帰着する。そして、被告人の行つたような非営業貸付けにおける元金の貸倒れによる損失は、同条項にいう雑所得の基因となる資産の損失にあたることが明らかであり、債務者の資産状態、支払能力、担保物件の価値等からみて、貸付元金の全部又は一部が事実上回収不能となつたときには、その限度で右貸倒れによる資産の損失が生じたと認めるのが相当である。そこで、以下このような観点から事実関係について検討することとする。まず、被告人が出捐した二〇〇〇万円の貸付けの相手方及びその条件並びにEが八〇〇〇万円を借り受けるにあたつて担保として提供した神奈川県足柄下郡a町b字cd番eほか二筆の宅地三二六二・七九平方メートルの所有権の取得関係について関係証拠を検討すると、Eに対する八〇〇〇万円の貸付けの話は、Dの代表取締役Gが、単独では貸付資金全額を調達できなかつたため、H株式会社のIことJに協力を求め、同人が被告人及びFの経営者Kに出捐方を勧誘し、結局Dが四〇〇〇万円、被告人及びFが各二〇〇〇万円を出捐することとなつたこと、被告人の出捐にあたつては、金を通じてGから、前記aの土地を担保に取るので、万一不履行があつた場合には、Dが責任を持つて同土地を売却し、売得金を出捐割合に応じて分配する旨の申し出があつたこと、Eと折衝し、貸付条件をまとめたのはGであり、被告人や右KはEとは全く接触していないこと、Eに八〇〇〇万円を貸付けた際作成された土地売買 し、売得金を出捐割合に応じて分配する旨の申し出があつたこと、Eと折衝し、貸付条件をまとめたのはGであり、被告人や右KはEとは全く接触していないこと、Eに八〇〇〇万円を貸付けた際作成された土地売買契約書(当庁昭和五五年押第三〇九号の一一)には、契約の当事者としてEとDのみが表示され、被告人及びFの名は全く表示されておらず、同土地の所有権移転登記も、EからDが単独で所有権を取得したようになされていること、被告人は、Eの信用状態については調査しておらず、出捐する二〇〇〇万円を確実に回収するためにはE振出しにかかる約束手形にDの裏書をつけさせる必要があると考え、金をしてGのもとに二〇〇〇万円を届けさせるにあたり、その旨を指示したが、金が持ち帰つた約束手形(前同押号の一一)にはDの裏書はなく、また、前記土地売買契約書中にも前記aの土地が被告人の元利金をも担保するものである旨が全く記載されていなかつたため、元利金の回収に不安を覚え、金を通じ、またみずからもGに掛け合い、右約束手形への裏書を求めるとともに、前記aの土地について被告人が前記出捐割合に応じた持分権を有することを認めさせようとしたが、Gはこれに応ぜず、前記Hが同土地に対して二分の一の共有持分を有することを認め、Hに対し、同土地を売却処分して売得金を同社に支払うべき清算義務を負担していることを承認するにとどまつたこと、その後Eは本件貸金の返済期限である昭和四九年一〇月八日より前に手形の不渡りを出して倒産し、経営者は所在不明となり、あとには見るべき資産も残されていなかつたため、被告人が前記約束手形金をEから取り立てることは事実上不可能となつたこと、以上の事実を認めることができる。そこで、これらの事実を総合して判断すると、被告人がEに対して直接二〇〇〇万円を貸付けたとみることはできず、被告人 金をEから取り立てることは事実上不可能となつたこと、以上の事実を認めることができる。そこで、これらの事実を総合して判断すると、被告人がEに対して直接二〇〇〇万円を貸付けたとみることはできず、被告人はDがEに対して八〇〇〇万円を貸付けるにあたり、Dに対して内部的に出資したにとどまると認めるのが相当である。 したがつて、また、Eから前記aの土地を譲り受けたのはDのみであり、Gが被告人に出資を勧誘した際に前記のような申し出をしたことも、Gが被告人に対し右申し出のような内容の債務を負担する原因とはなりえても、被告人がDの取得した同土地に対して共有持分を当然に取得する原因とはなし難い。また、DのGが同土地に対するHの共有持分を承認した際、Gは被告人が共有持分を有することを承認しなかつたのであるから、DのGがHの共有持分を承認した事実も、直ちに被告人が同土地に対して共有持分を取得する根拠とはなし難い。このようにみてくると、被告人が二〇〇〇万円の貸付元金に関し、その担保として前記aの土地に対する共有持分を取得したとの事実は認め難いものといわなければならない。しかしながら、前認定のように、DのGは、被告人に対し、Hの金を通じて、Eから担保として取得する前記aの土地の限度内において出捐した金員の回収に責任を負う旨を約束していたのであり、その後、被告人に代わり右義務の履行を求めた金に対しても、Hが同土地に対して二分の一の共有持分を有すること及びその関係の清算義務を負つていることを認めていたのであるから、被告人としては、その貸付元金を回収するために、Dに対し、直接又はHを通じて右約束の履行を求め、あるいは、金に対しHの取得した共有持分の移転を求める等の手段が残されていたものというべきである。そこで、進んで、昭和四九年末の時点において、右手段が、貸付元金の 接又はHを通じて右約束の履行を求め、あるいは、金に対しHの取得した共有持分の移転を求める等の手段が残されていたものというべきである。そこで、進んで、昭和四九年末の時点において、右手段が、貸付元金の回収を現実に可能ならしめるものであつたか否かの点について検討すると、関係証拠によれば、Dはもともと借金に依存する経営を続けていたところ、昭和四九年一〇月九日前記aの土地について登記簿上Eの前所有者となつているLから処分禁止の仮処分をかけられたため、資金繰りがつかなくなり、同年末には経営状態がかなり悪化していたけれども、ともかく営業は、続けていたこと、同土地には同年八月一七日付けで債権額を一億円とする抵当権設定仮登記が付されていたが、実際の被担保債権額はせいぜい三〇〇〇万円程度であり、当時同土地の時価は優に一億円を超えていたから、前記被告人に対する責任を果すだけの残余価値は十分に残つていたこと、現に同土地は、その後昭和五〇年一〇月九日には、債権額を一億五〇〇〇万円とする抵当権設定仮登記の目的ともされていること、また、前記Lの申立てにより付された仮処分は、昭和五一年六月二五日取り消されたこと、以上の事実を認めることができる。そこで、これらの事実から判断すると、被告人の貸付元金二〇〇〇万円は、昭和四九年末の時点では未だ前記aの土地によつてその返済が実質的に担保されており、回収不能の状態になつていたとは認められない。そうすると、原判決が右二〇〇〇万円の貸付元金について貸倒れによる損失の発生を認めなかつたのは結論において正当であり、原判決に所論のような事実の誤認があるとは認められない。論旨は理由がない。 よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官海老原震一裁判官杉山英巳裁判官浜井一夫) 認があるとは認められない。論旨は理由がない。 よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官海老原震一裁判官杉山英巳裁判官浜井一夫)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る