- 1 - 主文 被告人両名をそれぞれ懲役2年に処する。 被告人両名に対し、未決勾留日数中各220日を、それぞれその刑に算入する。 被告人両名に対し、この裁判が確定した日から4年間、それぞれその刑 の執行を猶予する。 理由 【罪となるべき事実】被告人両名は、共謀の上、インターネット宿泊予約サイト「B.com」を運営する株式会社Bの事務処理を誤らせる目的で、別表(添付省略)記載のとおり、令 和元年8月25日午後零時23分頃から同年11月17日午前10時8分頃までの間、113回にわたり、京都市a 区b 町c 番地d ホテル❶等3か所において、インターネットに接続された通信端末を用いて、前記「B.com」に接続し、真実は宿泊する意思がないのに、「C」等104名の名義を用い、同サイトに掲載されていた大阪市e 区f 町g 丁目h 番i 号ホテル❷等101施設に同人らが別表宿泊予約 内容欄記載のとおり宿泊する旨内容虚偽の宿泊予約を行い、その虚偽の情報を、同社管理のサーバコンピュータに送信して記録させ、もって同社の宿泊予約情報伝達等の事務処理の用に供する権利、義務に関する電磁的記録を不正に作出した上、即時同所において、これを同社の事務処理の用に供した。 【事実認定等の補足説明】 第1 争点本件の争点は、①被告人らが、意思を通じ合い、真実は宿泊する意思がないのに、「B.com」を通じて、別表記載の各宿泊予約をしたかどうか、②その事実が認められる場合、被告人らに私電磁的記録不正作出罪・同供用罪が法律上成立するかどうか、である。また、各弁護人は、③被告人らが宿泊していたホテル客室等に対 する捜索差押え等の手続は違法であり、被告人らの同意書(乙11ないし13)は - 2 - 任意性が否定 るかどうか、である。また、各弁護人は、③被告人らが宿泊していたホテル客室等に対 する捜索差押え等の手続は違法であり、被告人らの同意書(乙11ないし13)は - 2 - 任意性が否定されると主張し、それらに基づいて収集された証拠は違法収集証拠であるとして証拠能力を争っている。 そこで、はじめに争点③についての判断を示し、次いで争点①、②についての判断を示す。 第2 争点③(違法収集証拠)について 1 各弁護人の主張令和2年1月22日に、被告人らが滞在していたホテル❸617号室(以下「617号室」という。)等に対する捜索差押え及び被告人A1使用のタブレット端末等に対する検証は、いずれも令状が呈示されないまま行われたものであるから、全体として違法な強制処分である。また、警察官が、捜索差押え及び検証の間、被告 人らが617号室等から外へ出ることを許さなかったこと、加えて被告人らに食事をとらせず、トイレにも行かせなかったことは、立会いとして許される限度を超えた違法な身体拘束である。そして、そのような違法な身体拘束に端を発した身体拘束下において、被告人らに作成を強要して得られた被告人らの同意書(乙11ないし13)は任意性を欠いている。したがって、本件捜索差押え、検証及び同意書に 基づいて収集された証拠(甲18、22、24、27ないし29、131ないし135、137ないし140、143ないし149)は、違法収集証拠であり、証拠能力が否定される。 2 当裁判所の判断⑴ 本件捜索差押え及び検証について ア優に認定できる事実警察官が、令和2年1月21日に、617号室等に対する捜索差押許可状、被告人A1使用のタブレット端末等に対する検証許可状及び被告人らに対する逮捕状を取得したこと、同月 ア優に認定できる事実警察官が、令和2年1月21日に、617号室等に対する捜索差押許可状、被告人A1使用のタブレット端末等に対する検証許可状及び被告人らに対する逮捕状を取得したこと、同月22日午前7時過ぎ頃、朝食を取るために617号室から出てきた被告人らに対して、捜査のため同客室へ戻るよう促し、同人らから明示の承 諾を得ないまま、同人らを同客室へと戻し、同客室に対する捜索差押え等を実施し - 3 - たこと、その後被告人らは、同日午前11時から同日午前11時18分までに同客室等で逮捕されるまでの間、食事をとらず、トイレに行かないまま、同客室や警察において確保した隣室(618号室)から外に出なかったことは、優に認められる。 また、警察官が、捜索差押えのために、617号室に入った直後に、同客室に対する捜索差押許可状を同客室内にいた被告人らに呈示し、差押目的物に対する捜索活 動を始めたことは、捜索差押えに従事し、証人として出頭した各警察官が一致して供述するところであり、既に同許可状を取得していた警察官において、そうしない理由は考えられず、同客室に対する捜索状況の写真撮影報告書(甲156)によっても裏付けられているから、優に認められる。 イ判断 警察官が、被告人らの宿泊する617号室に立ち入るには、同人らの承諾のない限り、立入りに先立ち捜索差押許可状を同人らに呈示する必要がある。しかし、警察官による617号室内への立入りを承諾していなかった旨の被告人らの供述を排斥することはできない。また、警察官は、617号室への立入りに先立ち、捜索差押許可状を被告人らに呈示していないが、同許可状執行の実効性を確保するため、 呈示しなかったことにやむを得ない事情があったともいえない。したがって、警察官が、捜索差押許可 入りに先立ち、捜索差押許可状を被告人らに呈示していないが、同許可状執行の実効性を確保するため、 呈示しなかったことにやむを得ない事情があったともいえない。したがって、警察官が、捜索差押許可状を呈示することなく617号室に立ち入ったことは、刑訴法110条に反し違法である。 しかしながら、前記のとおり、警察官は、617号室に入った直後に、被告人らに対して捜索差押許可状を呈示し、差押目的物に対する捜索活動を始めている。し たがって、令状呈示前に617号室に立ち入った警察官の行為の違法性の程度は低い。そして、令状呈示後は適法に捜索差押えが行われたのであるから、被告人らに立会いを求め、同室内に留まることを求めたことに問題はなかったと認められる。 被告人らは食事をとらせてもらえず、トイレにも行かせてらえなかった旨供述する。しかし、捜索差押えの所用時間が4時間程度であったことからすると、617 号室等からの外出を伴う食事の要求に警察官が応じなかったとしても、そのことが - 4 - 違法であるとは認められない。また、トイレはホテル客室内にあり、被告人らの着衣携帯品に対する捜索差押えは、比較的早期に行われたと認められるから(D警察官、甲159、162)、それ以後、被告人らを捜索差押え中にトイレに行かせても警察官にとって何ら問題はなく、そのような状況で、警察官が被告人らをトイレに行かせなかったとは考えられない。被告人らが逮捕されるまでの間、トイレに行 かなかったのは、単に、自らトイレに行こうとしなかったからにすぎないと認められる。 また、被告人らの着衣携帯品に対する捜索差押え並びに被告人A1のタブレット端末及び被告人A2のスマートフォンに対する検証を実施した警察官は、いずれも各被告人に令状を呈示した上で強制捜査に着手した また、被告人らの着衣携帯品に対する捜索差押え並びに被告人A1のタブレット端末及び被告人A2のスマートフォンに対する検証を実施した警察官は、いずれも各被告人に令状を呈示した上で強制捜査に着手した旨供述するところ(D、E、F、 G各警察官の供述)、各令状をすでに取得していた警察官において、そうしない理由は見当たらず、各提示状況を明らかにした写真撮影報告書等(甲143、145、159、162)によっても裏付けられているから、いずれも信用することができる。 以上より、本件捜索差押え及び検証の執行に、令状主義の精神を没却するような 重大な違法は認められず、同手続に基づいて収集された証拠の証拠能力が否定されることはない。 ⑵ 同意書(乙11ないし13)について各弁護人は、同意書(乙11ないし13)は、警察官の強要により作成されたため任意性を欠くから、それらに基づいて収集された証拠は、違法収集証拠であって、 証拠能力は認められない旨主張する。しかしながら、以下で述べるとおり、同意書の任意性は認められるから、それらに基づいて収集された証拠の証拠能力が否定されることはない。 ア乙13について被告人A1は、体調が悪い状態で取調べを強要されたこと、罪を認めないと何度 でも逮捕すると脅されたことなどから、やむなく同意書(乙13)にサインした旨 - 5 - 供述する。しかしながら、被告人A1の取調べを担当したH警察官は、同被告人に対し、捜査上必要があること、強制手続ではないことを説明した上で、特にもめることはなく同意書(乙13)を作成してもらった、被告人A1から抗議を受けた覚えはない旨供述する。そして、H警察官の供述は、同意書(乙13)の作成日(令和2年2月18日)の被告人A1の被疑者ノート(弁1)の記載に 意書(乙13)を作成してもらった、被告人A1から抗議を受けた覚えはない旨供述する。そして、H警察官の供述は、同意書(乙13)の作成日(令和2年2月18日)の被告人A1の被疑者ノート(弁1)の記載により裏付けられ ている。 したがって、被告人A1は、同意書(乙13)を任意に作成したと認められる。 イ乙11について同意書(乙11)は、本件捜索差押えの実施中に被告人A2が記載したものである。E警察官は、被告人A2に対して同意書を作成することは任意の手続であるこ とを説明し、同被告人は任意に複数のパスワードを記載して同意書(乙11)を作成した旨供述する。また、D警察官は、被告人A2は少し悩んだ様子だったが素直に同意書(乙11)に署名した旨供述する。他方、被告人A2は、同意できないと何度も言ったにもかかわらず、3名ないし5名の警察に囲まれて、同意書を作成するよう脅され、適当にパスワードを書けと言われたので、自分がよく使っているパ スワードをもじって適当に同意書(乙11)を書いた旨供述する。 被告人A2が同意書(乙11)に記載したパスワードは、別表番号1ないし90の犯行に使用された各YahooIDのパスワードと一致している。仮に被告人A2の上記供述が事実であれば、同被告人が適当に書いたパスワードが偶然にも上記犯行に用いられた各YahooIDのパスワードと一致したということになるが、 そのようなことはおよそ考え難い。したがって、被告人A2の上記供述はおよそ信用することができない。 以上より、E及びD両警察官が供述するとおり、被告人A2は同意書(乙11)を任意に作成したと認められる。 ウ乙12について 被告人A2は、取調室で、自分は同意書を書きたくないと言ったが、Iその他2 - 6 - り、被告人A2は同意書(乙11)を任意に作成したと認められる。 ウ乙12について 被告人A2は、取調室で、自分は同意書を書きたくないと言ったが、Iその他2 - 6 - 名の警察官からおうおうおうと体当たりを食らうような感じで脅されたので、仕方なく同意書(乙12)を書いた旨供述する。他方、I警察官は、被告人A2に任意の手続であることを説明し、同被告人は嫌がることなく同意書(乙12)のパスワードを書いた旨供述する。前記のとおり、被告人A2は同意書(乙11)を任意に作成しているところ、同意書(乙12)と同意書(乙11)とは、対象のYaho oIDこそ異なるものの、被告人A2によって記載されたパスワードは同じものである。したがって、同意書(乙11)は任意に作成されたのに、同意書(乙12)の作成が任意でなかったとは考えられない。 よって、被告人A2は、同意書(乙12)を任意に作成したと認められる。 第3 争点①(被告人らが、意思を通じ合い、真実は宿泊する意思がないのに、「B. com」を通じて、別表記載の各宿泊予約をしたか)について 1 犯人にかかる事実⑴ 別表記載の各架空宿泊予約が認められることア捜査報告書(甲4、5及び23)の信用性株式会社Bの最高情報セキュリティ責任者であるJが供述する、架空宿泊予約に 気付いたきっかけや、宿泊予約の通信ログデータについて行った調査の手順や内容、同調査に基づき得られたデータ等を警察に提出した経緯等は、矛盾なく自然かつ合理的であり、十分信用することができる。Jが、何者かを陥れる意図で作為的にデータをねつ造したとはおよそ考えられないし、同データは、宿泊しなかった宿泊予約の通信ログデータから、同じIPアドレスやユーザーエージェント情報等の特定 の共 が、何者かを陥れる意図で作為的にデータをねつ造したとはおよそ考えられないし、同データは、宿泊しなかった宿泊予約の通信ログデータから、同じIPアドレスやユーザーエージェント情報等の特定 の共通性を有するものを抽出し、それに各宿泊予約データに対応するフルビジターIDを追加等したものであって、いずれも機械的な操作により得られたものであるから、そこに人為的誤りが介入した可能性は乏しい。したがって、Jが作成し、警察に提出したデータの内容は、信用することができる。 E警察官は、捜査報告書(甲4、5及び23)について、Jから提供を受けたデ ータに、罫線や通し番号を加えたり、同データを予約日時順に並べ替えたり、特定 - 7 - の期間のデータのみを抽出して印刷したものである旨供述する。その供述に疑義を抱かせる事情は何ら見当たらず、E警察官の供述は信用することができる。そして、Jが提供したデータに警察官がした加工は、いずれも機械的で単純なものであり、その過程でデータ内容が改ざんされる可能性は乏しい。したがって、捜査報告書(甲4、5及び23)の内容も、信用することができる。 イ小括捜査報告書(甲4、5及び23)によると、何者かが、真実は宿泊する意思がないのに、別表(犯行場所を除く)記載の各架空宿泊予約をしたことが認められる(以下、架空宿泊予約のことを「犯行」ということがある。)。 ⑵ 別表記載の番号1ないし90 の犯行と、91ないし113の犯行は、それ ぞれ同一人物によるものであることアフルビジターID等の共通性フルビジターIDは、端末のブラウザ上のCookieに保存されるものであり、そのCookieを削除しない限り、同一の端末の同じブラウザを用いて「B.com」に接続すると、同じIDが記録される。そ フルビジターIDは、端末のブラウザ上のCookieに保存されるものであり、そのCookieを削除しない限り、同一の端末の同じブラウザを用いて「B.com」に接続すると、同じIDが記録される。そのIDは、別の端末ブラウザに割 り当てられることのない唯一無二の番号である。ユーザーエージェント情報は、端末とブラウザの種類をバージョン単位で識別するものである。そして、下記①ないし⑦の各宿泊予約の通信ログは、それぞれ同一のフルビジターID及びユーザーエージェント情報によるものであるから(甲4、5及び23)、それぞれ、同一の端末(FireHD)にインストールされた同じバージョンのブラウザ(スレイプニ ル)を用いて行われた犯行であると認められる(以下、番号は別表のもの)。 ① 番号1ないし5、40ないし46、71ないし78(スレイプニルのバージョンは3.5.0)② 番号6ないし12、31ないし39、62ないし70(スレイプニルのバージョンは3.5.10) ③ 番号13ないし21、54ないし61、88ないし90(スレイプニルのバー - 8 - ジョンは3.5.13)④ 番号22ないし30、47ないし53、79ないし87(スレイプニルのバージョンは3.5.13)⑤ 番号91ないし96(スレイプニルのバージョンは3.5.13)⑥ 番号97ないし105(スレイプニルのバージョンは3.5.13) ⑦ 番号106ないし113(スレイプニルのバージョンは3.5.0)イ番号1ないし90について番号1ないし90の犯行に使われたYahooIDには、すべて同じパスワード(nyan1717@)が設定されている(甲4、5、131ないし135)。英小文字、数字及び記号の組合せからなる9文字の当該パスワード いし90の犯行に使われたYahooIDには、すべて同じパスワード(nyan1717@)が設定されている(甲4、5、131ないし135)。英小文字、数字及び記号の組合せからなる9文字の当該パスワードが偶然一致するとい うことは考え難いから、番号1ないし90の犯行は、同一人物によるものであると強く推認される。 また、番号31ないし87は、令和元年8月27日から同月29日午前10時までの間に連続して行われた犯行であり(甲4、5)、いずれもホテル❶のWi-FiのIPアドレスからのものであると認められる(甲15)。そして、番号1ない し30は、その直前の令和元年8月25日及び26日に、番号31ないし87と同じIPアドレスからなされた犯行であり(甲4、5)、それらのフルビジターID及びユーザーエージェント情報は、前記ア①ないし④のとおり、同月27日から同月29日午前10時までになされた犯行のいずれかと同じであると認められる。また、番号88ないし90は、令和元年8月29日午後8時27分頃から39分頃ま での間に連続的に行われた犯行であり(甲4、5)、番号87までとはIPアドレスが異なるものの、そのフルビジターID及びユーザーエージェント情報は、前記ア③のとおり、同月26日(番号13ないし21)及び同月28日(番号54ないし61)の犯行と同じである。 以上より、番号1ないし90の犯行は、同一人物によるものと認められる。 ウ番号91ないし113について - 9 - 番号91ないし113は、令和元年11月17日午前4時43分から同日午前10時8分までの間に連続して行われた犯行であり(甲23)、そのIPアドレスは、いずれもホテル❹のものである(職権4)。また、いずれの架空宿泊予約もFireHDにインストールされたス 分から同日午前10時8分までの間に連続して行われた犯行であり(甲23)、そのIPアドレスは、いずれもホテル❹のものである(職権4)。また、いずれの架空宿泊予約もFireHDにインストールされたスレイプニルによって行われている。 したがって、番号91ないし113の犯行は、同一人物によるものと強く推認さ れる。 エ架空宿泊予約をした者(犯人)について前記ア①ないし④等からすると、番号1ないし90の犯人は、端末としてFireHDを、ブラウザとして、異なるバージョン(3.5.0、3.5.10、3.5.13)のスレイプニルを利用するとともに、少なくともバージョン3.5.13 のスレイプニルを複数保有 し1、ほとんどの犯行でホテルのWi-Fiを利用して、連続的に多数の架空宿泊予約をしたことが認められる。一方、前記ア⑤ないし⑦等からすると、番号91ないし113の犯人は、端末としてFireHDを、ブラウザとして異なるバージョン(3.5.0、3.5.13)のスレイプニルを利用し、ホテルのWi-Fiを利用して、連続的に多数の架空宿泊予約をしたことが認められる。これら両者の共通点からすると、 番号1ないし90の犯人と番号91ないし113の犯人は、同一人物であることが推認される。 2 犯人と被告人らの同一性について⑴ 被告人A2のスマートフォンの家計簿アプリの記載被告人A2のスマートフォンの家計簿アプリには、番号4、7、9、19、27、 49、50、63、65、72、74、86、88、90、92、93、101、103、104、112及び113の犯行に使用されたYahooID及びそれらの犯行により犯人が取得したTポイント数と同じ数字が「ポイント収入」として、 2及び113の犯行に使用されたYahooID及びそれらの犯行により犯人が取得したTポイント数と同じ数字が「ポイント収入」として、 1 番号21と54のフルビジターIDが同じであることからすると、番号21と22とが同じバージョンのスレイプニルであるにもかかわらず、フルビジターIDが異なる理由を、Cookieの削除で説明することはできない。 - 10 - 記載されていたことが認められる(甲4、5、22、23)。 このことは、被告人A2が上記各番号の犯人であることを強く推認させる。そして、上記各番号は、前記1アの①ないし⑦を網羅しているから、被告人A2が、番号1ないし113の犯人であると強く推認される。 ⑵ 被告人A1のノートの記載 被告人A1のノートには、番号91ないし113(95は除く。)の犯行に使用されたYahooIDが記載されていることが認められる(甲149、156、K供述及びL供述)。なお、同ノートが被告人A1のものであることは、その発見状況や同被告人の被疑者ノート(弁1)の記載等からして明らかである。 このことは、被告人A1が上記各番号の犯人であることを強く推認させる。そし て、前記1アの⑤からすると、被告人A1は、番号95も含め、番号91ないし113の犯人であると強く推認される。また、番号92、93、101、103、104、112及び113の犯行に使用されたYahooIDは、被告人A2のスマートフォンの家計簿アプリと被告人A1のノートの両方に記載されていたことが認められ、このことは、被告人らが一緒に架空宿泊予約をしていたことを強く推認 させる。 ⑶ YahooIDのパスワード被告人らは、番号1ないし90 A1のノートの両方に記載されていたことが認められ、このことは、被告人らが一緒に架空宿泊予約をしていたことを強く推認 させる。 ⑶ YahooIDのパスワード被告人らは、番号1ないし90の犯行に使用された各YahooIDのパスワード(nyan1717@)を知っていたことが認められ(甲4、5、131ないし135、乙11ないし13)、このことは、被告人らが、その犯人であり、一緒に架空宿泊 予約をしていたことを強く推認させる。 ⑷ ホテル❶、ホテル❹の宿泊事実番号1ないし87の犯人は、令和元年8月25日午後零時23分から同月29日午前9時56分までの間に、ホテル❶にて各犯行に及び、番号91ないし113の犯人は、同年11月17日午前4時43分から同日午前10時8分までの間に、ホ テル❹にて各犯行に及んでいるところ、以下のとおり、被告人A2は、同年8月2 - 11 - 5日から同月29日までの間、ホテル❶に宿泊し、同年11月16日には、ホテル❹に宿泊していたと認められる。 アホテル❶ホテル❶には、令和元年8月25日(チェックイン)から同月29日(チェックアウト)まで、「M」の予約名で宿泊がされている(甲5、152)。「M」名義 のホテル❶の宿泊カードの郵便番号欄には「161-****」、住所欄には「東京都新宿区j」、電話番号欄には「070-****-****」と記載されている(甲152)ところ、被告人A2のスマートフォンの家計簿アプリには、「2019/8/25」ないし「2019/8/28」の各欄に「宿泊」「B ❶」との記載があり(甲22)、同スマートフォンのメモ帳アプリには、「❶’ M 070*** ***** 161-**** j」等の記載がある(甲147)(*は伏字部分。 ❶’は❶の最初の文 ❶」との記載があり(甲22)、同スマートフォンのメモ帳アプリには、「❶’ M 070*** ***** 161-**** j」等の記載がある(甲147)(*は伏字部分。 ❶’は❶の最初の文字等)。 被告人A2のスマートフォンの上記記載は、「M」名義の宿泊カードに記載された名義、郵便番号、電話番号、住所及び宿泊日と一致している。このことから、被告人A2が、令和元年8月25日ないし同月29日の間、ホテル❶に宿泊していた ことが認められる。なお、その予約客室タイプがモデレートツインであることや、被告人らは日頃から行動を共にしていたと認められることからすると、被告人A1も被告人A2と共にホテル❶に宿泊していたことが推認される。 イホテル❹令和元年11月16日、ホテル❹には、「N」の名義で宿泊がされている(甲2 4)。同名義のホテル❹の登録証の郵便番号欄には「102-****」、住所欄には「東京都千代田区k」、電話番号欄には「070********」と記載されている(甲24)ところ、被告人A2のスマートフォンの家計簿アプリには「2019/11/16」の欄に「宿泊」「B ❹」との記載があり(甲22)、同スマートフォンのメモ帳アプリには「❹’ N 070******** 102-*** * k」等の記載がある(甲147)(*は伏字部分。❹’は❹の最初の文字)。 - 12 - 被告人A2のスマートフォンの上記記載は、「N」名義の宿泊カードに記載された名義、郵便番号、電話番号、住所及び宿泊日が一致している。このことから、被告人A2が、令和元年11月16日、ホテル❹に宿泊していたことが認められる。 なお、その宿泊内容がダブルルームの2名利用であると認められること(甲23、24)等からすると、被告人A1も被告人A2 、被告人A2が、令和元年11月16日、ホテル❹に宿泊していたことが認められる。 なお、その宿泊内容がダブルルームの2名利用であると認められること(甲23、24)等からすると、被告人A1も被告人A2と共にホテル❹に宿泊していたこと が推認される。 ウ小括被告人A2が、番号1ないし87及び番号91ないし113の各犯行が行われた期間に、犯行場所である各ホテルに宿泊していたことは、被告人A2が、その犯人であることを相当程度推認させる。また、被告人A1についても、同様に宿泊して いたことが推認されるから、このことは、同被告人も上記犯行の犯人であり、被告人A2と一緒になって犯行に及んだことを推認させる。 ⑸ スレイプニルのインストールされたFireHDの所持被告人A1は、令和2年1月22日の捜索差押え時に、FireHD端末を保有し、同端末には、異なるバージョン(3.5.0、3.5.10、3.5.13 等)のスレイプニルが インストールされていて、バージョン3.5.13 のスレイプニルは3つインストールされていたことが認められる(甲143、146、156)。 この端末とブラウザの保有状況は、前記1エの犯人のそれと共通している。そして、ブラウザについて、異なるバージョンのものを同時に保有したり、同じバージョンのものを複数保有したりすることは比較的珍しいといえるから、この共通点 は、被告人A1の犯人性をある程度推認させる。 ⑹ 総合評価被告人A2の家計簿アプリに犯行に使用されたYahooIDが記載されていた事実は、被告人A2が全ての犯行の犯人であることを強く推認させるものであり、被告人A1のノートに番号91以下(番号95を除く)の犯行に使用されたYah ooIDが記載されていた事実等は、被告人A1が番号9 人A2が全ての犯行の犯人であることを強く推認させるものであり、被告人A1のノートに番号91以下(番号95を除く)の犯行に使用されたYah ooIDが記載されていた事実等は、被告人A1が番号91以下の犯人であること - 13 - を強く推認させるものである上、被告人らが共に番号90までの犯行に使用されたYahooIDのパスワードを知っていた事実は、被告人らがその犯人であることを強く推認させるものである。加えて、番号88から90までを除く各犯行日に犯行場所である各ホテルに被告人A2が宿泊していて、被告人A1も同様であったと推認されること、被告人A1のブラウザの保有状況が犯人の比較的珍しいそれと共 通するものであったことは、いずれも被告人らが犯人であることの推認を強める事情である。被告人らが犯人でないのに、これらの事情が偶々生じたとは考えにくい。 そして、被告人らは公私にわたって日頃から行動を共にしており、いずれも番号90までの犯行に使用されたYahooIDのパスワードを知っていたこと、被告人A2のスマートフォンの家計簿アプリと被告人A1のノートに、犯行に使用され たYahooIDと同じものが複数記載されていたことからすると、被告人らは、意思を通じ合い、すなわち共謀して犯行に及んだものと強く推認される。もっとも、犯行は、被告人A1が使用するタブレットによって行われたと認められるので、それらを実行したのは、被告人A1だけであった可能性はある。しかし、そうであったとしても、被告人らは、Tポイントを利用してホテルに宿泊しながら行動を共に する中で(甲5、22)、被告人A1において犯行を実行し、被告人A2において犯行を通じて得られたTポイントを管理するなどしていたから、被告人らは相互に利用補充し合いながら犯行に及んだ を共に する中で(甲5、22)、被告人A1において犯行を実行し、被告人A2において犯行を通じて得られたTポイントを管理するなどしていたから、被告人らは相互に利用補充し合いながら犯行に及んだといえる。したがって、被告人らは、共謀の上、全ての犯行に及んだと認められる。 なお、被告人らは、令和元年8月29日に、ホテル❺に宿泊したと認められると ころ(甲20、22、147)、同日、被告人らは番号88ないし90の各犯行に及んでいること、そのIPアドレスは、証拠上、令和3年7月7日時点における同ホテルのIPアドレスと一致することから(甲141)、被告人らは、番号88ないし90の各犯行を、ホテル❺にて行ったと認められる。 以上より、争点①について、被告人らが、意思を通じ合い、真実は宿泊する意思 がないのに、「B.com」を通じて、別表記載の各宿泊予約をしたことが認めら - 14 - れる。 第4 争点②(私電磁的記録不正作出罪・同供用罪の成否)について各弁護人は、株式会社Bは、各宿泊施設との契約上、株式会社Bの宿泊サイトである「B.com」の利用者が同サイトの予約画面上に入力した予約情報をそのまま当該宿泊施設に閲覧させることをその事務としており、当該予約情報の正確性を 吟味した上で各宿泊施設に閲覧させているわけでも、予約情報の正確性を確約するものではないから、宿泊する意思の有無が明らかでない架空名義による予約情報を入力することが、株式会社Bの「事務処理を誤らせる」行為とはいえない旨主張する。 株式会社Bが運営する「B.com」は、Bと契約した宿泊施設の宿泊予約を代 行し、利用者が「B.com」を通じて宿泊予約をすると、その予約情報データがBのサーバー内に保存され、保存された宿泊予約情報を宿泊施設に閲覧さ .com」は、Bと契約した宿泊施設の宿泊予約を代 行し、利用者が「B.com」を通じて宿泊予約をすると、その予約情報データがBのサーバー内に保存され、保存された宿泊予約情報を宿泊施設に閲覧させるなどして同情報を宿泊施設に伝達し、利用者が予約に従い宿泊すると宿泊施設からBに手数料が支払われることを事業内容としている。このような仕組みは、利用者による宿泊予約情報が正しいものとして信頼できることを前提としており、仮に、同情 報が信頼できないとすると、宿泊施設の適正な運営は困難となり、Bは宿泊施設からの信用をなくし、ひいては事業が立ちゆかなくなってしまうおそれがある。B利用規約(甲2)13条1項8号が、利用者に対し、虚偽の情報による宿泊予約を禁止しているのは、このことの表れと解される。Bが宿泊予約情報の正確性を独自に調査等していないことは、この結論を左右しない。 したがって、真実は宿泊する意思がないのに、「B.com」を通じて架空の宿泊予約をすることは、Bが宿泊施設に伝える宿泊予約情報に対する信用を害する行為であって、その宿泊予約情報伝達等の事務処理を誤らせるものというべきである。 各弁護人の主張は採用することができず、被告人らの判示所為は、私電磁的記録不正作出罪・同供用罪に該当する。 第5 公訴棄却の主張について - 15 - 各弁護人は、公訴提起に至るまでの種々の捜査手続には違法があり、その違法な手続により得た証拠等に基づいてなされた公訴提起もまた是正できない程度に重大な違法性を帯びているから、刑訴法338条4号により公訴棄却判決がなされるべきである旨主張する。 しかし、検察官の極めて広範な裁量にかかる公訴提起の性質からすると、仮に捜 査手続に違法があるとしても、それが必ずしも公訴提起の効力を 条4号により公訴棄却判決がなされるべきである旨主張する。 しかし、検察官の極めて広範な裁量にかかる公訴提起の性質からすると、仮に捜 査手続に違法があるとしても、それが必ずしも公訴提起の効力を当然に失わせるものではなく、例外的に、捜査手続に極めて重大な違法がある場合にのみ、それに引き続く公訴提起も無効となる余地があるに過ぎない。そして、本件では、公訴提起に至るまでの種々の捜査手続に上記重大な違法性は認められない。 したがって、各弁護人の上記主張は認められない。 【法令の適用(被告人両名に共通)】罰条私電磁的記録不正作出の点包括して刑法60条、161条の2第1項不正作出私電磁的記録供用の点 包括して刑法60条、161条の2第3項、1項科刑上一罪の処理1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり、かつ私電磁的記録不正作出と不正作出私電磁的記録供用との間には手段結果の関係があるので、刑法54条1項前段、後段、10条により1罪として犯情の重い不正作出私電 磁的記録供用の罪の刑で処断する。 刑種の選択懲役刑を選択未決勾留日数の算入刑法21条 刑の全部執行猶予 - 16 - 刑法25条1項訴訟費用刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)【量刑の理由】被告人らは、多数回にわたって内容虚偽の宿泊予約を繰り返しており、被害会社 が管理する宿泊予約情報に対する信頼を害する程度は大きく、その行為態様は悪質である。少なくともTポイントを得るという動機があったことは認められ、その点に酌量すべき点はない。また、犯行を否認し、反省の意を全く示さない被告人らの態度は強い非難に値する。なお、被告人らは一緒になって犯行を遂げた もTポイントを得るという動機があったことは認められ、その点に酌量すべき点はない。また、犯行を否認し、反省の意を全く示さない被告人らの態度は強い非難に値する。なお、被告人らは一緒になって犯行を遂げたとみるべきであるから、被告人らの行為責任に軽重があるとは認められない。他方、本件は法 定刑が5年以下の懲役にとどまる犯罪であることに加え、被告人らには前科がないなど被告人らのために酌むべき事情もある。 そこで、それらの事情を総合考慮し、主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑被告人A1につき懲役2年6月、被告人A2につき懲役2年)令和5年12月13日 京都地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官安永武央 裁判官村川主和 裁判官法花義与
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