平成29(ワ)214 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年4月26日 広島地方裁判所 福山支部
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判決文本文33,594 文字)

- 1 - 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告Aに対し、4844万8500円及びうち4789万8500円に対する平成28年6月18日から、うち55万円に対する平成29年6月21日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告Bに対し、4500万3758円及びうち4445万3758円に対する平成28年6月18日から、うち55万円に対する平成29年6月 21日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告C及び原告Dに対し、それぞれ132万円及びこれに対する平成28年6月18日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (仮執行宣言)第2 事案の概要 1 事案の骨子⑴ E(当時14歳。)は、被告が設置運営する幼小中一貫校である広島大学附属三原学校園(以下「本件学校」という。)に在籍していたところ、平成28年6月18日、本件学校で開催された運動会(以下「本件運動会」という。)において、組体操のプログラム(以下「本件プログラム」とい う。)に参加し、その後、同月▲日、脳内出血により死亡した。 ⑵ 本件は、Eの親族である原告らが、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、次の各請求をする事案である。 ① 原告らが、Eは、本件プログラムで実施された騎馬の演技の際、頭部に外力を受ける事故に遭い、その結果脳内出血を発症して死亡したのであ り、本件学校の教諭らには、その実施によって生ずる生命等への危険か- 2 - ら同人を保護すべき安全配慮義務の違反があると主張して、原告A(父)及び原 脳内出血を発症して死亡したのであ り、本件学校の教諭らには、その実施によって生ずる生命等への危険か- 2 - ら同人を保護すべき安全配慮義務の違反があると主張して、原告A(父)及び原告B(母。以下、原告A及び原告Bを併せて「原告夫婦」ということがある。)については、Eに生じた損害に係る各相続分(各2分の1)及び固有の慰謝料等の損害金(合計額:原告Aにつき4789万8500円、原告Bにつき4445万3758円)、原告C及び原告D (いずれも弟)については、固有の慰謝料等の損害金(各自132万円)の各支払を求めるともに、これらに対する上記事故が発生したと主張する日(違法行為の日)である平成28年6月18日から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求(以下「請求1」という。) ② 原告A及び原告Bが、被告ないし本件学校の長は、Eの死亡が本件プログラムにおける上記事故と関連性があることを探知し得たのであるから、その原因を調査し、その結果知り得た事実を正確に報告し、かつ、これらに際し、遺族の心情等を傷つけないよう誠実に対応すべき各義務があったのに、これらに違反し、迅速かつ適切な調査・報告を怠り、かつ、 原告夫婦を傷つけるような言動をし、これらにより、原告夫婦は、真相究明を求める思いを蔑ろにされ、その心や名誉を傷つけられ、精神的苦痛を負ったなどと主張して、慰謝料等の損害金各55万円及びこれに対する違法行為後の日(被告が最後に真相究明を拒否した日の翌日)である平成29年6月21日から各支払済みまで前記同様の年5分の割合に よる遅延損害金の支払を求める請求(以下「請求2」という。)⑶ 上記の各請求に対し、被告は、本件プログラムの際に )である平成29年6月21日から各支払済みまで前記同様の年5分の割合に よる遅延損害金の支払を求める請求(以下「請求2」という。)⑶ 上記の各請求に対し、被告は、本件プログラムの際にEの頭部に外力が加わる事態は生じておらず、本件プログラムの実施とEの死亡との因果関係がない、被告に安全配慮義務や調査報告義務等の違反もないと主張するなどして、原告らの各請求をいずれも争っている。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲証拠[枝番のあるものは、当該証- 3 - 拠に付された全ての枝番を含む。以下同じ。]及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)⑴ 当事者等ア E(平成13年▲月▲日生、男性)は、平成28年6月18日当時、本件学校に9年生(中学3年生に相当)として在籍し、本件運動会におい て本件プログラムに参加した後、同月▲日に死亡した者である。 原告AはEの父、原告Bは母、原告C及び原告DはいずれもEの弟(前者が次男、後者が三男)であり、Eの死亡による相続分は、原告夫婦において各2分の1ずつである(甲1)。 イ被告は、広島県三原市内で本件学校を設置運営する国立大学法人である。 Fは、本件運動会の当時、Eの所属学級である9年▲組の担任を務めていた教諭であり、Gは、同校の校園長を務めていた者であり、Hは、同校中学校の副校長を務めていた教諭である。 ⑵ 本件プログラム及びその際の騎馬の実施等ア平成28年6月18日、本件学校において「第105回大運動会」と称 する運動会(本件運動会)が開催された。本件運動会におけるプログラムは、別紙1「平成28年度大運動会プログラム」のとおりであるところ、その26番目(午後の11番目)のプロ 回大運動会」と称 する運動会(本件運動会)が開催された。本件運動会におけるプログラムは、別紙1「平成28年度大運動会プログラム」のとおりであるところ、その26番目(午後の11番目)のプログラムとして、「若い力」と称する5年生(小学校5年生)から9年生の男子生徒全員による組体操のプログラム(本件プログラム)が実施された。(甲2、乙4) 本件運動会におけるグラウンド内の関係者席や入退場門の配置状況は、別紙2「第105回大運動会ご案内」のとおりである。(乙4)イ本件プログラムの最後に、参加生徒らが複数の騎馬を組み、その状態のまま、グラウンド内の退場門まで移動して退場するという演目(以下「本件演目」という。)が実施された。 同生徒らのうち、7年生(中学校1年生)から9年生までの生徒らは、- 4 - 9名による3段の騎馬(下から1段目が6名、2段目が2名、3段目が1名で構成される。)を構成した。この騎馬の組み方は、通常、別紙3図面の1ないし4のとおりであり、その概要は、①まず、1段目の生徒らが、前後3人ずつ横並びにしゃがみ、前列の3名は隣の生徒との間で肩を組み、後列の3名は中央の生徒の腕が上になるように隣の生徒の腕 と交差させて前列の生徒の肩や腕に手を掛ける(別紙3の4)、②2段目の生徒2名は、左側の生徒が、左手を1段目左前の生徒の左肩付近に、右手を1段目中央前の生徒の右肩付近に置き、左足の脛付近を1段目左後ろの生徒の右肩付近に、右足の脛付近を1段目中央後ろの生徒の左肩付近に置き、右側の生徒が、右手を1段目右前の生徒の右肩付近に、左 手を1段目中央前の生徒の左肩付近に置き、左足の脛付近を1段目中央前の生徒の右肩付近に、右足の脛付近を1段目右後ろの生徒の左肩付近に置く(別紙3の が、右手を1段目右前の生徒の右肩付近に、左 手を1段目中央前の生徒の左肩付近に置き、左足の脛付近を1段目中央前の生徒の右肩付近に、右足の脛付近を1段目右後ろの生徒の左肩付近に置く(別紙3の3)、③3段目の生徒1名が、左右の脛付近を2段目の生徒それぞれの背中に置き、左右の手を2段目の生徒の肩付近に置く(別紙3の2)、④最後に、1段目の生徒らが立ち上がり(別紙3の 1)、一団となって歩行するとともに、3段目の生徒が上体を上げて両腕を左右に広げる姿勢を取ることを試みるというものである。 本件演目の際、Eが加わった騎馬を構成する生徒らの位置関係は、別紙4図面のとおりであり、その1段目には、前列の進行方向左からI、J、K、後列の同じく左からL、M、N、その2段目には同じく左からE、 O、その3段目にはPがそれぞれ位置していた(以下、この騎馬のことを「本件騎馬」という。)。なお、本件騎馬を構成する生徒らは、いずれも、本件学校9年▲組に所属する生徒らであった。(乙20、証人F)⑶ Eの救急搬送及び死亡並びに死亡診断書の記載ア Eは、平成28年▲月▲日午前3時20分頃、自宅内で、原告Bに頭痛 や吐き気を訴え、その後嘔吐するなどしたため、同日午前3時53分頃、- 5 - 社会医療法人里仁会興生総合病院(以下「興生総合病院」という。)に救急搬送されたが、同日午前5時52分、死亡した(甲7、8、乙105)。 イ興生総合病院のQ医師作成の死亡診断書には、Eの直接死因は「小脳出血、急性肺水腫」とされ、これらの原因は「不詳」とされている(甲 7)。 ⑷ Eの死亡後に行われた調査等の概要本件学校の教諭らは、Eの死亡後、原告夫婦の依頼を受けるなどして、本件プログラムの際、Eの頭部に死因と 因は「不詳」とされている(甲 7)。 ⑷ Eの死亡後に行われた調査等の概要本件学校の教諭らは、Eの死亡後、原告夫婦の依頼を受けるなどして、本件プログラムの際、Eの頭部に死因となるような外力が生じたか、及び本件騎馬が崩落した事実があったか等につき、次のとおり、生徒らに対する聞取 り調査を本件学校において行った(以下これらを総称して「本件聞取り調査」という。)。(甲18~21、乙6、43、79) 日時(平成28年)対象生徒聴取者6月25日PF6月27日J、IF6月28日N、O、PF6月29日K、M、LF6月30日PH、R教諭(当時9年▲組担任)7月1日S(本件騎馬の後方の騎馬の3段目の生徒)F11月28日PT教諭(当時9学年副担任・養護教諭)⑸ 組体操実施に関する通達平成28年3月25日、スポーツ庁政策課学校体育室は、附属学校を置く - 6 - 各国立大学法人担当課等に宛て、運動会等で実施される組体操について、平成23年度から平成26年度の間に年間8000件を上回る負傷者が発生し、社会的関心を集めているなどとして、学校設置者に対し、これを実施するに当たっては、下記の事項を踏まえた措置を講ずるよう要請する「組体操等による事故の防止について」と題する事務連絡(以下「本件事務連絡」とい う。)を発出した。(甲10)① 各学校においては、組体操を実施するねらいを明確にし、全教職員で共通理解を図ること。 ② 各学校においては、練習中の児童生徒の習熟の状況を正確に把握し、その状況に応じて、活動内容や指導計画を適時適切に見直すこと。万が一、 練習中に児童生徒が負傷する事故が発 図ること。 ② 各学校においては、練習中の児童生徒の習熟の状況を正確に把握し、その状況に応じて、活動内容や指導計画を適時適切に見直すこと。万が一、 練習中に児童生徒が負傷する事故が発生した場合には、速やかにその原因を究明し、活動内容を見直したり更なる安全対策を講じたりするなどの措置を行うこと。 ③ 各学校においては、タワーやピラミッド等の児童生徒が高い位置に上る技、跳んできた児童生徒を受け止める技、一人に多大な負荷のかかる技 など、大きな事故につながる可能性がある組体操の技については、確実に安全な状態で実施できるかどうかをしっかりと確認し、できないと判断される場合には実施を見合わせること。 ④ 各小学校においては、組体操に関しては小学校での事故の件数が相対的に多いことや、小学校高学年は成長の途中で体格の格差が大きいことに 鑑み、在籍する児童の状況を踏まえつつ、事故につながる可能性がある危険度の高い技については特に慎重に選択すること。 ⑤ 各教育委員会等においては、段数の低いタワーやピラミッド等でも死亡や障害の残る事故が発生していることなど、具体的な事故の事例、事故になりやすい技などの情報を、現場で指導する教員に周知徹底すること。 3 争点- 7 - ⑴ 請求1及び請求2に共通する争点本件プログラムの際、Eの頭部に外力が加わる事象が発生し、その結果Eが死亡したといえるか。(争点1)⑵ 請求1に関する争点(争点2)ア被告の安全配慮義務違反の有無(争点2-1) (ア) 準備段階における注意義務違反(争点2-1-A) (イ) 運動会当日における注意義務違反(争点2-1-B)イ被告の安全配慮義務違反とEの死亡との因果関係(争 (ア) 準備段階における注意義務違反(争点2-1-A) (イ) 運動会当日における注意義務違反(争点2-1-B)イ被告の安全配慮義務違反とEの死亡との因果関係(争点2-2)ウ損害の発生及びその数額(争点2-3)⑶ 請求2に関する争点(争点3) ア被告の注意義務違反の有無(争点3-1) (ア) 調査、報告義務違反(争点3-1-A) (イ) 誠実対応義務違反(争点3-1-B)イ注意義務違反と相当因果関係のある損害の発生及び数額(争点3-2) 4 争点に関する当事者の主張 各争点に関する当事者の主張は、別紙5争点整理表(以下単に「争点整理表」という。)に記載されたとおりである。なお、以下、争点整理表に記載された略称をそのまま用いる。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前記第2の2の前提事実に加え、後掲証拠(ただし、後記認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。 ⑴ 本件プログラムの沿革及び本件運動会に至るまでの事故の発生状況ア本件学校において、昭和30年代前半、運動会に本件プログラムの前身となる組体操競技が初めて導入され、昭和40年代には、異校種交流が 始まったことを契機として、小学校5・6年生と中学生が合同で演技を- 8 - するようになり、その後、本件運動会に至るまで、児童・生徒の体力に応じて内容の変更を伴いつつも、運動会において組体操競技としての本件プログラムが実施されてきた。(乙8)イ Fは、遅くとも平成15年頃には本件学校の教諭であったところ、同人の知る限りにおいて、本件運動会の練習開始時までの間に、運動会及び その練習中に、組 グラムが実施されてきた。(乙8)イ Fは、遅くとも平成15年頃には本件学校の教諭であったところ、同人の知る限りにおいて、本件運動会の練習開始時までの間に、運動会及び その練習中に、組体操の種目であるタワーの練習中に生徒が打撲傷を負う事故や、リレー競技で走っている生徒が転倒して骨折する事故があったほかは、特段の事故は生じていなかった。(証人F)⑵ 本件運動会における本件プログラムの練習の状況ア平成28年度において、本件運動会の開催までの間に実施された本件プ ログラムの練習は、概ね、別紙6「若い力の練習について」のとおりであり、9年生については、同年6月3日までに、昼休みにおいて合計5回の学年別の練習が実施された上、同月6日以後、本件運動会実施までの間に、予行演習のほか、各校時(設定時間50分)に8回にわたり、また、これに加え、必要に応じて各校時又は放課後に多くて7回、小学生(5年生・ 6年生)及び中学生(7年生ないし9年生)合同での練習、中学生のみの練習及び学年別練習が実施された。(甲16、39、証人F)イ本件プログラムの練習においては、小学生、及び7年生から9年生までの学年ごとに、1ないし2名の教員が指導等の担当に指名されるところ、Fは、9年生の担当教諭に指名されていた。(甲39、証人F) Fは、上記担当教諭として、生徒らの指導に当たっていたところ、9年生の生徒らに対しては、5年生から8年生までの各学年時に本件プログラムに参加しており、各組体操の組み方に一応の理解があることから、本件演目の騎馬についても、特段組み方等を改めて指導することはなく、生徒らの配置を決めた上で実際に組ませ、バランスの悪い騎馬を個別に指導す るという方針で指導を行っていた。(証人F)- 9 - の騎馬についても、特段組み方等を改めて指導することはなく、生徒らの配置を決めた上で実際に組ませ、バランスの悪い騎馬を個別に指導す るという方針で指導を行っていた。(証人F)- 9 - ウ本件運動会では、種目ごとに生徒らによる実行委員会が設けられており、本件プログラムについては、各級ごとに2名ずつ指名された実行委員が、担当教諭らから指導を受けた内容に基づいて他の生徒に演技内容を指導するなどした。Eは、本件プログラムにおける9年▲組の実行委員に指名されていた。(甲39、証人F) エ Fが知る限りにおいて、本件運動会に向けた本件プログラムの練習の際、本件演目における騎馬やピラミッドを含め、EとPが一緒に構成する組体操が崩れたことはなかった。(証人F)⑶ 本件運動会当日のEの参加種目等及び本件プログラムの状況ア平成28年6月18日午前9時より、本件運動会が開催された。Eは、 本件プログラムまでの間に、午前中の「準備運動」(番号1番、全生徒対象)、午後の「絢爛乱舞~希望を胸に~」(番号16番[午後1番目]、9年生対象)、「PUSHしちゃう!(玉入れ)」(番号19番[午後4番目]、2年生対象[係員として参加])、「夢を志に!附属最後の学級対抗リレー」(番号24番[午後9番目]、9年生対象)の 各プログラムに参加した。(甲2)本件学校が設置されている広島県三原市の周辺自治体である同県福山市の同日午前9時から午後4時までの天気は、概ね晴れで、気温は24. 2℃~28.2℃、湿度が55%~71%であった。(甲3)イ本件運動会の26番目(午後の11番目)のプログラムとして、本件プ ログラムが実施された。本件演目までに行われた演技の内容は次のとおりである。(甲39、乙2) であった。(甲3)イ本件運動会の26番目(午後の11番目)のプログラムとして、本件プ ログラムが実施された。本件演目までに行われた演技の内容は次のとおりである。(甲39、乙2) 代表生徒1名の笛の合図により、別紙2の入退場門及び家族席・係席テントの各間の計4箇所のいずれかの場所から走ってグラウンド内に入場し、まず全生徒らにより、手足の曲げ伸ばし等の準備運動を行う。 準備運動終了後、全生徒により、①3人1組となって扇を組む、②- 10 - 地面にうつ伏せになった後、後方の生徒の肩に足を掛けた状態で腕を立てて上半身を上げブリッジを作る、③立った状態で前方の生徒の肩に手をかけてウェーブを行う等の各演技を行う。 次に、グラウンドの中央部で、予め指名された生徒ら10名が、1段目6名、2段目3名、3段目1名のタワーを組み、その余の生徒らは、 学年ごとに異なる演目(サボテン、帆掛け船等)を行う。Eはタワーの1段目に配置されていた。 次に、生徒らが、12人1組(1段目5名、2段目4名、3段2名、4段目1名)又は6人1組(1段目3名、2段目2名、3段目1 名)によるピラミッドを組む。なお、この際、Eは、12人1組のピラミッド の2段目に配置され、その3段目にはPが配置されていた。 ウ本件プログラムの開始から約8分後、本件演目が開始された。本件騎馬を構成する生徒らは、本部席の前付近において、前記第2の2⑵イに記載された組み方と同様の組み方で本件騎馬を組むと、先頭から2騎目の騎馬として、退場門方向に移動を開始した。本件騎馬が退場門に到達す るまでの間に、3段目に配置されていたPは、2度、2段目の生徒らの肩付近に置いていた両手を離して上体を起こすとともに両腕を左右斜め下方向に広 門方向に移動を開始した。本件騎馬が退場門に到達す るまでの間に、3段目に配置されていたPは、2度、2段目の生徒らの肩付近に置いていた両手を離して上体を起こすとともに両腕を左右斜め下方向に広げると両手を2段目の生徒の肩付近に置きなおすことをした。 本件騎馬は、退場門を過ぎてある程度進んで停止すると、1段目の生徒らが「せーの」といった掛け声とともに腰を落とし始めるのにやや遅れ て、3段目のPが後方やや右に飛び降りるように降りて解体した。(甲18~21、乙1、2、7、43)エ本件演目の際、騎馬ごとに教諭が配置されることはなく、退場門付近に配置された教諭1名が、騎馬の通り道を空けるよう保護者らを誘導したり、退場門に到達した騎馬を誘導したりしていたほか、本件騎馬の複数 騎後方から、Fを含めて少なくとも4名の教諭らが、騎馬の移動に合わ- 11 - せて退場門に向かって歩き誘導するなどしていた。また、この際、別紙2の「救護」と記載されたテントの前で、養護教諭1名が写真撮影をしていたほか、テント内には、2名の養護教諭が控えていた。他方、本件騎馬が解体する際、教諭らがその側について補助をすることはなかった。 (乙2、4、7、証人F、弁論の全趣旨) オ Fは、騎馬の誘導等を行った後、準備係(各種目の準備物の設置、回収等を担当する係)の担当教諭として別紙2の退場門のすぐ横の「係席」と表示されたテントに戻ったところ、準備係を務めるEが、同じ準備係のKに続いて同テントに戻った。この際、K及びEは、Fに対し、本件騎馬が崩れたとか、頭を打ったとか、体調が悪いなどと発言することは なかった。(乙2、7、証人F)⑷ 本件プログラム終了後Eの死亡に至るまでの経緯ア本件運動会当日の本件プログラム終了後 たとか、頭を打ったとか、体調が悪いなどと発言することは なかった。(乙2、7、証人F)⑷ 本件プログラム終了後Eの死亡に至るまでの経緯ア本件運動会当日の本件プログラム終了後の状況 本件運動会の閉会式において、Eは、優勝した白組の代表として、グラウンドに整列した生徒らの前でGから優勝旗を受け取り、これを持っ たまま、グラウンド内を走って優勝旗を披露した。また、Eは、本件運動会終了後、片付け作業に従事したほか、9年▲組の生徒らで開催された反省会に参加し、感想を述べたが、その際、本件騎馬が崩れたとか、頭を打ったなどと発言することはなかった。(乙3、17、20、証人F) Eは、帰宅後、原告ら家族及び自宅を訪れた母方の祖父母とリビングで夕食を摂ったが、それまではそのままリビングに残って祖父母らと会話することが多かったにも関わらず、自室に戻って同室で過ごし、原告Bが途中で声を掛けたものの、祖父母が帰宅するまで、同室から出ることはなく、そのまま就寝した。なお、この日、Eは、友人らと夜店に行 く約束をしていたが、これに行かなかった。 - 12 - また、原告Aは、同日、Eの自室の前で、Eが、上の子の足が当たって大変だったという趣旨の発言をしたのを聞いた。 (以上につき、甲120、原告B本人)イ本件運動会翌日の状況 平成28年6月19日(本件運動会翌日)の朝、原告Bは、Eと外出 を予定していたことから、Eの自室に2度起こしに行ったところ、その2度目の際、Eが、右手の肘を右膝に乗せ、右手のひらで頭を抱えるようにしているのを見た。原告Bは、Eが疲れているかもしれないと考え、同人に、出かけることができるか尋ねたところ、同人が行けると答えたため、当初の Eが、右手の肘を右膝に乗せ、右手のひらで頭を抱えるようにしているのを見た。原告Bは、Eが疲れているかもしれないと考え、同人に、出かけることができるか尋ねたところ、同人が行けると答えたため、当初の予定どおり、広島県福山市内の神社に高校受験のためのお 守りを買いに出かけた。 Eは、その道中、自動車内で背もたれに背中をつけて寝ているようにしていたものの、神社に到着して神社内を歩くなどするときに異状は感じられなかった。原告Bは、Eとともに、用事を済ませ、昼食にうどんを食べた後、Eに対し、映画を観に行くことや、Eがパン好きであるこ とからパン屋に立ち寄ることを誘ったが、Eはこれを断り、帰宅したいと述べたため、そのまま帰宅した。 (以上につき、甲119、原告B本人) Eは、帰宅後、いずれかの時点で、近隣(自宅から自転車で5分程度の距離)にある書店に一人で行って漫画本を購入し、自室に戻って過ご した。その後、原告ら家族と一緒にステーキ店に出かけて夕食を摂ったが、変わった様子は見られていない。Eは、帰宅後、原告Aとともに、自室で少なくとも同日午後10時頃まで勉強し、その後自室で就寝した。 同月20日午前0時頃、原告Bは、Eの自室の前を通りかかったところ、同室のドアが少し開いていたが、室内が真っ暗であったことから、ドア を閉め、そのまま就寝した。(甲30、84、119、120、証人F、- 13 - 原告B本人)ウ体調の悪化から死亡までの経過 同日午前3時20分頃、Eは、原告夫婦の寝室に行き、原告Bに頭痛と吐き気を訴えた。原告Bは、洗面器を取りに行き、同室に戻ると、Eは、床にほぼ横になった状態であり、呂律が回っておらず、間もなく激 しく嘔吐した。(甲8、11 原告夫婦の寝室に行き、原告Bに頭痛と吐き気を訴えた。原告Bは、洗面器を取りに行き、同室に戻ると、Eは、床にほぼ横になった状態であり、呂律が回っておらず、間もなく激 しく嘔吐した。(甲8、119、乙105、原告B本人) 救急隊員らは、要請に基づき、同日午前3時26分頃自宅に到着し、同日午前3時52分頃、Eを興生総合病院に搬送した。Eは、上記救急隊員到着時には意識があったが、その後急速に意識レベルが悪化し、上記搬送時には、JCS300(痛み刺激に全く反応しない)、対光反射 低迷、血圧200~160・110、SpO₂80%台の状態であった。 Q医師は、直ちにEの頭部CT検査を実施したところ(以下、この際撮影された画像を、「本件CT画像」という。)、小脳出血、脳室内出血及びくも膜下出血の存在を認めた。 Eは、その後心停止を起こし、同日午前5時52分頃、死亡した。な お、原告Aは、Q医師から、Eが頭部に打撃を受けたり転落したりしたことはなかったかと聞かれたが、Eが本件運動会の際に頭部に打撃を受けた可能性について言及しなかった。 (以上につき、甲7、8、30、120、乙105)⑸ Eの死後の原告夫婦と被告との対応状況 ア Eの死後本件学校による調査の開始に至るまでの経緯 原告Aは、同日午前6時頃、本件学校の事務員に、Eが死亡したとの連絡をし、その後、同日の午前中にはG及びHらに、昼過ぎにはFに、その旨が伝えられた。また、同日午前中には、本件学校により、生徒の保護者らに対して、Eが逝去した旨の電子通知が発信された。(乙24、 25、79)- 14 - Eの遺体は、同日のうちに自宅に運ばれ、生徒及びその保護者ら、並びにF、Hを含む教諭らが 対して、Eが逝去した旨の電子通知が発信された。(乙24、 25、79)- 14 - Eの遺体は、同日のうちに自宅に運ばれ、生徒及びその保護者ら、並びにF、Hを含む教諭らが弔問に訪れた。そうした中、Pは、一人で同宅を訪れると、Eの遺体の頭側に座り、原告Bやその友人らがいる前で、「お父さんが救急隊員なので、こんなこと言ったらいけないんですけど」「頭と聞いて、脳出血と聞いて、僕のせいだと思って」などと言った (以下「本件発言」という。)。これに対し、原告Bは、「大丈夫よ」と応じたが、それ以上に上記発言の意味をPに尋ねることなどはしなかった。(乙79、原告B本人) 同月21日には、Eの通夜、同月22日には、葬儀がそれぞれ執り行われ、葬儀には、G、Fをはじめとする本件学校の職員らのほか、Eと 同学年の9年生全員が参列した。原告Aは、遺族代表の挨拶をし、その中で、亡くなる前日にEが肉や野菜をたくさん食べたこと、高校受験のため原告Aとともに夜遅くまで勉強していたこと等を話した。(乙79、証人F、原告B本人) 原告Aは、葬儀終了後、同月24日までのいずれかの時期に、原告B に対し、Eが本件運動会の日に頭を打ったなどと話していたと伝えたところ、原告BからPが本件発言をしたことを伝えられた。原告夫婦は、本件学校に、Pへの聞取り調査を依頼することとし、同月24日、原告Aは本件学校を訪れ、Fらに対し、本件プログラムにおけるピラミッドの配置等について質問したり、Pから本件発言があったこと等を伝えた りした上で、FがPに対して聞取り調査をするよう依頼した。これを受け、Fらは、Hと対応を協議したところ、翌日、P及び保護者を来校させた上でPに対する聞取り調査を実施する方針とした。なお、本件 りした上で、FがPに対して聞取り調査をするよう依頼した。これを受け、Fらは、Hと対応を協議したところ、翌日、P及び保護者を来校させた上でPに対する聞取り調査を実施する方針とした。なお、本件学校は、これに先立ち、新聞記者からEの死亡の原因等について取材を受けていた。(乙43、79、証人F、原告B本人、弁論の全趣旨) Fは、上記依頼を受け、同日のうちに、事実関係を確認するため、H- 15 - らとともに、本件学校が所持していた、本件学校の付近の山の中腹及び本部テント横からそれぞれ本件運動会の様子を撮影した録画映像(乙1、2。以下まとめて「本件各映像」という。)につき、ピラミッドの場面を重点的に確認したが、本件演目が実施された場面も含めて、特段の異状があったとは認識しなかった。(乙79、証人F) イ本件学校による本件聞取り調査の状況等 Pからの1回目の聞取りa 同月25日の午前中、Fは、Pの自宅に電話をかけ、同人の父親に、Pとともに来校するよう依頼した。 原告夫婦は、教諭らによる聞取りが実施される前に、Pの話を直接 聞きたいとの思いを抱き、同人宅を訪れ、Pに対し、本件発言の内容がどの場面のことであるかなどと尋ねたところ、同人は、本件騎馬での退場の際、EとOの体格が異なるためバランスが取りにくく、Eの方に体重をかけていたところ、どこかで前のめりになった際、膝がEの後頭部付近に当たった旨の説明を、身振り手振りを交えてした。 (以上につき、甲77、119、乙79、証人F、原告B本人)b 同日、Fは、本件学校の相談室で、Pに対する聞取り調査を実施した。この際、Pは、Fに対し、①本件騎馬を降りた後、Eに肩辺りを押されて「痛いじゃないか」と言われ、 証人F、原告B本人)b 同日、Fは、本件学校の相談室で、Pに対する聞取り調査を実施した。この際、Pは、Fに対し、①本件騎馬を降りた後、Eに肩辺りを押されて「痛いじゃないか」と言われ、「ごめんごめん」と応じたことがあり、このやり取りから、本件騎馬を降りる際に膝がEの後頭部 辺りに当たったのだと思って原告Bに本件発言をした、②Eとの上記やり取りの際、険悪な雰囲気ではなく、その後、EもPもそれぞれのテントに帰ったなどと説明した。Fは、Pに対し、どの場面でどのように当たったのかを更に尋ねたが、Pは、分からないなどと答えたことから、同室にあった机を2段目の生徒に見立て、同人が本件騎馬の 3段目に上るところから、解体時に降りるところまでの手足の位置等- 16 - について再現をさせるなどして説明を求めたものの、Pは、膝がEに当たる具体的な状況について説明することができなかった。(甲18、乙43、79、証人F)c 上記聞取り調査の後、G、H及びFは、原告夫婦の自宅を訪れ、上記聞取り調査の結果を報告した。同月26日、上記教諭らは、初七日 への参列のため同自宅を訪れた際、原告夫婦との間で、Pの聞取り調査時の話がPから原告夫婦が受けた説明内容と整合していないことが話題となり、原告夫婦から、更に調査を行うよう求められたため、再度Pに対する聞取りを実施するとともに、本件騎馬を組んでいた他の生徒らへの聞取りも併せて実施することとした。(乙43、79、証 人F、原告B本人) 6月27日から7月1日までに実施された聞取りaFは、同月27日から同月29日まで及び同年7月1日に、本件騎馬の構成生徒ら全員及び本件騎馬の後方の騎馬の3段目に配置された生徒に対し、本件騎馬の解体時に何らか でに実施された聞取りaFは、同月27日から同月29日まで及び同年7月1日に、本件騎馬の構成生徒ら全員及び本件騎馬の後方の騎馬の3段目に配置された生徒に対し、本件騎馬の解体時に何らかの異状が生じたかどうかにつ いて聞取り調査を実施した。その際の生徒らの発言内容の要旨は、別紙7「聞取り内容一覧表」(以下単に「聞取り内容一覧表」という。)の番号1ないし8及び10に各記載のとおりである。なお、これらの調査に当たり、生徒らの順番はFが決め、生徒らを個別に別室へ案内して実施された。(甲19~21、乙43、証人F) bG、H及びFは、同年6月29日、原告夫婦の自宅を訪れ、同人らに対し、同日までに実施された聞取り調査の結果(聞取り内容一覧表の番号1ないし8)を口頭で報告したところ、同人らから、Hにも再度Pへの聞取りをしてもらいたいとの要望を受けたことから、これを承諾した。そこで、Hは、同月30日、R教諭とともに、Pに対する 聞取り調査を実施した。この際のPの発言の要旨は、聞取り内容一覧- 17 - 表の番号9のとおりである。 本件学校の教諭らは、原告夫婦に対し、同日、Pに対する上記調査の結果を、同年7月1日、Fが実施したSに対する聞取り調査の結果を、それぞれ報告した。 (以上につき、甲22、119、乙43、79) ウ聞取り調査実施後の状況 同月4日以降、Hと原告夫婦との間では、同月7日に本件学校において開催されるPTA実行委員会において、本件学校がEの死亡に関して報告を行うかどうかの相談がなされ、同月6日の時点で、一旦は報告を行うこととなり、Hは、原告夫婦らに対し、報告原稿の原案を示した。 この原案は、Eの死後、本件学校において本 がEの死亡に関して報告を行うかどうかの相談がなされ、同月6日の時点で、一旦は報告を行うこととなり、Hは、原告夫婦らに対し、報告原稿の原案を示した。 この原案は、Eの死後、本件学校において本件聞取り調査が行われるに至った経緯及びその調査内容の概要を述べた上で、Pの述べる同人の足がEの頭部に当たったということとEの死亡との間に関連があるかないかは不明であるものの、来年度以降の本件プログラムについては、生徒らの安全に配慮して演目の変更等を予定している、などと説明する内容 であった。 これに対し、同月7日、原告夫婦らは、Hに対し、上記説明原稿案に対する修正案を示したところ、これには、Eの遺族から、死亡の原因が本件運動会での事故にありその責任は主催者である本件学校にあるとの強い思いが伝えられているなどといった説明が付加されていた。また、 原告夫婦は、Eの死亡は、本件学校の管理体制ができていなかったことにより起きた事故であると認め、学校の責任として対応してほしいなどという内容の原告B自筆の書面を手渡した。 これを受け、Hは、他の職員らと相談の上、上記原告夫婦らの求める修正等は本件学校として承服することができないと判断し、PTA実行 委員会における報告を中止することとし、その旨を原告夫婦に伝えた。 - 18 - (以上につき、甲84、119、乙29~33、79) 原告夫婦は、同月10日、再度、Pから直接話を聞こうと考え、同人の自宅を訪ねた。そこでは、主にPの父親が対応し、Eの死因について、本件演目において生じた事態によるものではないとの認識を示すなどしたが、その中途で、Pも、「自分的には、あの時ここに来てくださった ときに、自分でも整理があまりできてなくて、確証 死因について、本件演目において生じた事態によるものではないとの認識を示すなどしたが、その中途で、Pも、「自分的には、あの時ここに来てくださった ときに、自分でも整理があまりできてなくて、確証のないことを言ってしまったんです。」、「本番の時に崩れたって僕は思ったんですけど、崩れてないっていう人もいて、もしかしたら練習の時と本番の時が食い違ってしまったのかもしれない。」などと述べた。(甲77、78、原告B本人) Hは、同年9月14日、月命日に原告ら宅へ訪問する意向を伝えるため、原告ら宅へ電話をかけたところ、応対した原告Aから、当時の本件騎馬の状態等について生徒らからの聴取内容を記録したものがあれば見せてほしいとの依頼を受けた。そこで、Hは、Gや、被告の本部職員と相談した上で、本件騎馬における各生徒らの配置を図示したもの、及び 前記イで実施された各生徒らへの聞取り調査における生徒らの供述の内容をまとめた文書(但し、生徒らの氏名等については仮名処理をしているもの。)を交付することとし、同月29日、これを原告ら宅に持参して原告Aに交付した。(乙47~50、79) 原告Aは、同年11月24日、本件学校を訪問し、G及びHと面談し た。この際、原告Aは、Gらに対し、本件プログラムの際に事故があった可能性があることを認め謝罪してほしいなどと求めたが、同人らは、事故があったという証拠はないので、応じることはできないなどと回答した。これを受け、原告Aは、もう一度Pから聞取りをすることや、本件学校のグラウンド全体を映した映像を開示することを要望し、Gらは、 前者について、本件学校の養護教諭による聞取りを実施することとし、- 19 - 後者についても応じることとした。 Hは、同月 体を映した映像を開示することを要望し、Gらは、 前者について、本件学校の養護教諭による聞取りを実施することとし、- 19 - 後者についても応じることとした。 Hは、同月25日、本件学校を訪れた原告Aに対し、本件各映像の全部又は一部が記録されたUSBメモリを手渡した。 T教諭は、同月28日、Pに対する聞取りを実施した。その際の発言内容は、聞取り調査一覧表の番号11のとおりである。 (以上につき、乙6、79) Hは、前記のPへの聞取り調査の結果等を踏まえ、同月30日、原告Aと協議をしたところ、原告Aから、同年12月7日に開催されるPTA実行委員会で話をさせてほしいとの依頼を受けた。 同月5日、原告A及びEの祖父とG及びHは、本件学校において面談 し、その際、Eの祖父は、本件演目における事故の有無について、どう思っているのかはっきり聞かせてほしいなどと求めたところ、Gは、事故があった可能性はゼロとはいえないが、証拠がないため認めることはできない、認めるとPへの対応が難しいし、何を根拠にそのような判断をしたのか問われることになるなどと返答したが、Eの祖父は、Pの足 が頭部に当たったことがEの死因であると確信しているなどと述べた。 同月6日、Hは、本件学校を訪れた原告Aに対し、PTA実行委員会で発言する内容を確認したいと伝えたところ、これに対し、原告Aは、同月7日の朝、読み上げる予定の文案を本件学校に持参した。これは、本件騎馬の退場の際に、Eが頭部に打撲を受けた可能性があるとした上 で、退場時の様子を目撃した保護者や、その様子を撮影した映像を持っている保護者がいたら連絡してほしいなどと呼びかける内容であった。 これを 頭部に打撲を受けた可能性があるとした上 で、退場時の様子を目撃した保護者や、その様子を撮影した映像を持っている保護者がいたら連絡してほしいなどと呼びかける内容であった。 これを受け、Hは、Gや被告の本部職員と協議し、原告Aが上記実行委員会で発言することを認めないこととして、その旨を同日原告Aに電話で連絡した。 (以上につき、甲89、90、乙79)- 20 - 同月9日、Hは、原告Aに電話をかけ、今後の対応について、Gと被告の本部との協議により結論を出すこととなるなどと伝えた。Gは、被告の本部職員らと連絡を取り、平成29年1月13日、G及びHのほか、被告の本部の法務担当職員も参加して協議を行い、その結果、原告夫婦に対して、事故があったという証拠がないことから事故があった可能性 を認めて謝罪をしてほしいとの原告らの要望に応えることはできない旨を伝えるとの結論に至った。 同月19日、G及びHは、Eの月命日に合わせ、原告らの自宅を訪れた。この際、Gは、応対した原告夫婦に対し、被告本部の附属学校担当の理事等の職員らに今回の事案を相談したことを伝えた上で、「しかし 大学としては事故があったとは考えていない、で、心情は本当にお察しするけれども、どうかご理解いただきたい。というのが、向こうの回答でした。」と伝えた。原告Aが、その結論はどのような根拠で出されたものかと問うたところ、Gは、本件学校が把握している時系列や本件聞取り調査の結果等を報告したことを伝えた上で、「ですから、どういう ふうな形で何を根拠としてというのは私達にはわからないです。」などと述べた。これに対し、原告Aは、「もう大学側の方で、決められたことをそのまま先生が聞いてっていう、それをそのまま伝 どういう ふうな形で何を根拠としてというのは私達にはわからないです。」などと述べた。これに対し、原告Aは、「もう大学側の方で、決められたことをそのまま先生が聞いてっていう、それをそのまま伝えた、という」と言うと、Gは、「そういうことです。」と発言した。 (以上につき、甲64、乙54~56、60~69) 原告Aは、同年6月6日、原告Bと連名で、Eが本件プログラムにおける演技の際の事故で亡くなったのではないか、事実が明らかになっていないと考えるなどとした上、本件学校に対し、本件演目の状況を見ていた教諭らへの聞取りの実施をする意向や、保護者らに情報提供の協力を依頼する意向があるか等を質問する内容のG及びHに充てた手紙を作 成し、これを本件学校に持参した。これに対し、Gは、同月15日、本- 21 - 件聞取り調査の結果、本件演目の際にEの死亡を惹起するような行動ないし状況はなかったと考えていることから、本件プログラムにEの死亡の原因があるとの主張に賛同することはできず、今後再調査することは予定していないという内容の回答をした。(甲41、乙87、88、90~94) G、H及びFらは、同年6月23日、Eの一周忌に合わせ、原告らの自宅を訪れた。この際、Gらと原告夫婦との間で、本件演目の際に退場門付近で騎馬が崩れるのを見たと述べた保護者について話題となり、Gは、「そりゃあ、それはAさんたちの気持ちを分かって嘘を言ってるかもしれないでしょ。それはね、根拠がないといけませんよね。」などと 述べ、原告Bが、「見た方の言葉までも信じられないって、そうとられるんだったら・・・」と発言したのに対して、「じゃ騎馬が崩れた時に、当たったPくんの犯人にするってことになりますよ。だから、それ 述べ、原告Bが、「見た方の言葉までも信じられないって、そうとられるんだったら・・・」と発言したのに対して、「じゃ騎馬が崩れた時に、当たったPくんの犯人にするってことになりますよ。だから、それは前にも申し上げたけど、こちら側の気持ちはよく分かるから、そうだったんですね、そうかもしれませんねって認めることはできるけど、そうす ると、Pくんに罪を与えることになって、逆にそれが裁判になった時に、何を根拠にして崩れたって認めたのか?って言われることになるんですよ。結局そういうことです。」などと述べた。(甲56)⑹ 本件プログラムの実施内容の変更本件学校は、平成29年度の運動会において、本件プログラムの演目につ き、ピラミッドや本件演目と同様の移動式の騎馬等の高低差のある演技をとりやめ、集団行動的要素を取り入れた演目に変更した。(証人F)⑺ 判断の前提となる医学的知見ア急性硬膜下血腫(甲99、乙109)急性硬膜下血腫とは、硬膜下腔に急性に生じる血腫のことをいう。小皮 質動脈や架橋静脈等の脳の表在血管の断裂や、脳内血腫の脳表への波及- 22 - 等が原因で生じ、外傷由来が多いとされる(約95%)。症状としては、受傷直後から意識障害がみられることがある(50~60%)が、ときには意識清明期(lucidinterval)がみられることもあり、ゆるやかに意識混濁する場合もあるとされている。非外傷性の原因としては、血液疾患や薬剤性、脳動脈瘤、脳動静脈奇形及び骨膜腫等が報告されている。 イ脳挫傷(乙109)脳挫傷とは、頭部外傷により、脳の局所に挫滅、小出血及び浮腫等を来たしたものをいう。打撃部の脳に直撃損傷(coupinjury)として生じることも イ脳挫傷(乙109)脳挫傷とは、頭部外傷により、脳の局所に挫滅、小出血及び浮腫等を来たしたものをいう。打撃部の脳に直撃損傷(coupinjury)として生じることもあるが、前頭葉・側頭葉の下面や前方に対側損傷(contrecoupinjury)として生じることが多いとされる。頭部外傷後、頭部CTにて 脳実質内に低吸収域の中に斑点状の高吸収域(小出血、血腫)(いわゆるsaltandpepperappearance)を認め、血腫周囲に低吸収域(浮腫)を認めた場合には、脳挫傷の可能性を考慮すべきとされている。 ウびまん性脳損傷等(乙101、110)びまん性脳損傷とは、大脳白質を中心に広範囲な脳損傷を来たし、受傷 後より意識障害を呈するが、CT上は原因となる頭蓋内病変を認めないものの総称である。その病態は、脳震盪(軽症例)、びまん性脳腫脹、びまん性軸索損傷(重症例)が中心であり、重症例ほど意識障害が長時間持続し、予後も不良となる。 びまん性軸索損傷は、交通事故等で脳組織全体に回転加速度衝撃が加わ り、組織によって回転速度が異なるため各組織間にずれが生じ、神経線維が損傷・断裂(軸索損傷)することで生じる。損傷は、大脳白質の広範囲に及び、受傷後より強い意識障害が持続するとされている。 エ遅発性外傷性脳内血腫(甲30の添付文献⑤、乙10の添付文献①)遅発性外傷性脳内血腫とは、外傷後に形成される脳内血腫のうち、受傷 直後には認めないが、受傷後数時間からときには2、3か月程度が経過- 23 - して出現する脳内血腫をいう。これを単一の疾患として説明することは困難であり、複数の病態が存するものと考えられ、その定義自体にも混乱があると 時間からときには2、3か月程度が経過- 23 - して出現する脳内血腫をいう。これを単一の疾患として説明することは困難であり、複数の病態が存するものと考えられ、その定義自体にも混乱があるとされている。 その診断基準は、既往に脳血管障害がないこと、はっきりした頭部外傷の既往があること、無症状の期間があって、突発的に発症してくること とされ、頭部外傷の程度は一般的に軽症とされている。 その詳細な発生機序はいまだ判明しておらず、種々の仮説があるところ、代表的なものとしては、①脳挫傷により壊死に陥った脳組織が嚢胞を形成し、嚢胞を横切る損傷血管が破綻するという説、②外傷により半球深部血管に血管運動神経麻痺が起こり、毛細管うっ滞、局所血流停滞、血 管透過性亢進を来たし、漏出性出血が多発、集合して血腫を作るという説、③脳挫傷又は挫滅部周辺の血流増加のため、小静脈から漏出が起こり、長時間かけて十分大きな血腫が形成されるという説、④脱水剤の使用ないし減圧開頭術により、既に存在した病変部を圧迫していた効果が除去されるためとする説、⑤播種性血管内凝固障害(DIC)が主原因 であるとする説等があるとされている。 その発生部位は、前頭・側頭葉が多く、頭頂・後頭部打撲による対側損傷部に一致するほか、時に後頭部や小脳内にもみられ、多発することもあり、脳挫傷や挫滅部と関連し、最初のCTでの低吸収域部に起こりやすいとされる。 オ脳動静脈奇形(乙109の3)脳動静脈奇形とは、脳の動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながり(静動脈短絡)、拡張・蛇行した異常な血管の塊(ナイダス)がみられる先天性の脳血管異常をいう。その病態としては、脳組織の虚血症状を呈したり、破綻して脳内出血や二次性のく 毛細血管を介さず直接つながり(静動脈短絡)、拡張・蛇行した異常な血管の塊(ナイダス)がみられる先天性の脳血管異常をいう。その病態としては、脳組織の虚血症状を呈したり、破綻して脳内出血や二次性のくも膜下出血を来たしたりする とされ、約70%は出血で発症するとされている。 - 24 - その症状としては、ナイダスの破綻による出血に伴うものと、脳組織の圧迫や盗血現象による虚血に伴うものがあるとされ、前者については、突然の頭痛・片麻痺・意識障害等の症状が、後者については、頭痛、けいれん発作や進行する片麻痺等の症状が生じるとされている。好発年齢は、小児から若年成人(20~40歳代)とされ、好発部位は、テント (大脳と小脳を隔てる膜[硬膜]をいう[証人U]。)上(80~85%)で、中大脳動脈領域に多いとされているほか、その年間出血率は、全体で約1.7~2.2%とされている。 他方、脳動静脈奇形の画像所見としては、脳血管造影やMRAでナイダスが見られたり、MRIで多数の無信号域(flowvoid)が見られたりす るときに脳動静脈奇形を考えるとされ、その確定診断のためには、脳血管撮影やMRI、MRAによりナイダスを確認するものとされる。 2 争点1(本件プログラムにおいて、Eの頭部に外力が加わる事象が生じ、その結果Eが死亡したといえるか。)について⑴ はじめに 各請求原因に係る義務違反の有無を検討するに当たり、共通の前提として、本件プログラムの際にEの頭部に外力が加わる事象が生じたのか、及びその外力が原因でEが死亡したといえるのかに争いがある。原告らは、争点整理表第1の2のとおり、本件騎馬解体時の映像等の客観的証拠、本件騎馬の構成生徒らの供述及び本件運動会後のEの状況等から、Eの頭部に強い外力が 生 したといえるのかに争いがある。原告らは、争点整理表第1の2のとおり、本件騎馬解体時の映像等の客観的証拠、本件騎馬の構成生徒らの供述及び本件運動会後のEの状況等から、Eの頭部に強い外力が 生じる事態が生じたと認められ又は推認されるかという観点(同⑴、以下「観点①」という。)、及びEの死因について、外傷性の脳内出血によるものといえるかどうかという観点(同⑵。以下「観点②」という。)から、上記事項を主張立証するものである。 以下、上記各観点について、個別に検討を加えた上で、その検討結果を総 合して、上記事項が立証されたといえるかを検討する。 - 25 - ⑵ 観点①からの検討ア Eの頭部に外力が加わったかについて 原告らは、本件騎馬の解体時、Pの左膝がEの頭部に当たったほか、その後Eが四つん這いのまま地面に落下した際、着地の瞬間にも回転性の外力が加わったと主張する。 前記1の認定事実によれば、Pは、Eの死亡当日、Eの自宅を訪れて、原告Bらに対し、Eの死亡の原因が自身にあるとの趣旨の本件発言をし(同⑸ア)、その後、原告夫婦がPの自宅を訪れた際にも、同人らに対し、本件騎馬が退場した際に前のめりの体勢になり、膝がEの後頭部付近に当たったとする趣旨の説明をした(同イa)ことが認めら れる。このようなPの発言は、少なくとも本件発言については自発的なものであるといえる上、Eも、本件運動会当日に、(時期や具体的な態様について特定されているわけではないものの)原告Aに対し、本件プログラムの際に上の子の足が当たって大変だったと述べていること(同⑷ア)や、本件各映像によれば、Pが本件騎馬の解体時に後方に降り る直前、やや前のめりといい得る姿勢を取っていることが見受けられること(乙1、 子の足が当たって大変だったと述べていること(同⑷ア)や、本件各映像によれば、Pが本件騎馬の解体時に後方に降り る直前、やや前のめりといい得る姿勢を取っていることが見受けられること(乙1、2)からも一定程度裏付けられているといえる。これらを総合すると、本件騎馬の解体時にPの膝がEの後頭部付近に接触した可能性は否定できないというべきである。 もっとも、本件各映像によれば、本件騎馬の解体時、Pは両手を2段 目のE及びOの肩付近に置いており、その状態のまま、後方やや右に落下していることが認められ(乙1、2)、Pの膝がEの後頭部付近に接触したとしても、直ちにEの後頭部付近に強い外力や加速的な回転が加えられた可能性が高いということはできず、そのような可能性を根拠付ける具体的な身体の動きを特定するに足りる証拠もない。また、本件聞 取り調査時の各生徒らの供述内容によれば、Pは、自分の身体のどの部- 26 - 分が、Eの身体のどの部分に当たったのかについて自覚はなく、解体後、Eから「痛いじゃないか」などと言われたことから本件発言をするに至ったと述べている(1⑸イb、聞取り内容一覧表の番号5、9及び11)上、本件騎馬を構成する他の生徒らも、本件騎馬の解体直後にうずくまったり起き上がれなかったりした者はいないと述べている(同表番 号1ないし4)ことが認められる。これらに照らせば、Pの膝がEの後頭部付近に接触したとしても、そのときにEの頭部に強い外力が加わったとは考え難い。 他方、原告らの主張のうち、本件騎馬の解体時、Eが地面に落下したとの部分は、その根拠となる本件各映像の鮮明化映像(甲31)や画像 (甲47)を見ても、それら自体が不鮮明といわざるを得ない上、本件騎馬が後続の騎馬に隠れるなどし の解体時、Eが地面に落下したとの部分は、その根拠となる本件各映像の鮮明化映像(甲31)や画像 (甲47)を見ても、それら自体が不鮮明といわざるを得ない上、本件騎馬が後続の騎馬に隠れるなどしていることから、Pの下でEが落下した事実の有無や、Lが左側に倒れていった事実の有無を確認することはできない。これに加えて、本件聞取り調査において、本件騎馬を構成した生徒ら及びその後続の騎馬の生徒からも、本件騎馬の解体時にEが落 下したという発言は出ておらず(聞取り内容一覧表)、上記原告らの主張部分は、生徒らの上記供述内容とも整合せず、これを採用することはできない。 イその他の原告らの主張についての検討 原告らは、本件運動会当日から死亡に至るまでの間に、Eに普段と異 なる様子や動静が見られており、これは頭部打撃の脳内への影響の現れであると主張する。確かに、前記1⑷の各認定事実によれば、Eは、本件運動会当日、友人と出かける約束をしていたのに行かなかったり、祖父母が自宅に来ているときは同人らと会話することが多いのに、自室に戻って見送りをすることもなくそのまま就寝したり、その翌日も、右手 のひらで頭を抱えるようにしたり、原告Bからの映画やパン屋に行く誘- 27 - いを断ったりしたことが認められるが、これらは、Eが本件運動会を終えるなどして相応に疲労を蓄積させていたことによるものとみることも何ら不自然ではない。一方で、Eは、本件運動会当日も、閉会式で優勝旗を持ってグラウンドを走り、その後も片付け作業等に従事したほか(同ア)、その翌日には、一人で外出して漫画本を購入したり(同イ )、原告ら家族とともにステーキ店に行き変わった様子なく夕食を摂ったり(同)していることにも照らせば、上記原告らの主張するE (同ア)、その翌日には、一人で外出して漫画本を購入したり(同イ )、原告ら家族とともにステーキ店に行き変わった様子なく夕食を摂ったり(同)していることにも照らせば、上記原告らの主張するEの様子や動静のみをもって、体調の急激な悪化に至るまでの間に頭部打撃が脳内に影響したというべき状態が生じていたとは評価できない。 原告らは、V意見書に基づき、Pの左膝がEに当たった際の衝撃度は、 95%が中等度の頭部外傷を負う程度のものである等と主張する。しかし、V意見書が示した上記衝撃度(HIC値)は、Pの左膝がEの後頭部に衝突した際の衝突時の速度を1.5m/s、静止までの移動距離を2cmとして試算されたものであるところ、これらの数値が当時の実態に適合するものといえるかは疑わしい(例えば、V意見書は、上記衝突 時の速度について、Pの膝が約10cmにわたり自由落下したと仮定した場合の数値をもとに算出している[甲55]が、Pが本件騎馬の3段目で前かがみになった際にEの後頭部に膝が当たったという状況であってもこれは自由落下とは異なるというべきである。)し、V自身、上記数値は、Eに実際に生じた頭部への打撃がどの程度であったのかといっ た観点から算出したものではないと説明していること(甲81)からしても、V意見書に依拠して、Eの頭部に強い外力が加わったと認めることはできない。 原告らは、本件聞取り調査の際の生徒らの回答は、いずれも誘導によるものであって信用できないと主張する。しかし、証拠(証人F)によ れば、①Fが、平成28年6月25日に実施したPに対する聞取りに際- 28 - して、相談室にあった机を用いて当時の状況を再現させた(1⑸イb)のは、当時、Pが、膝がEの後頭部に当たったことを示唆す Fが、平成28年6月25日に実施したPに対する聞取りに際- 28 - して、相談室にあった机を用いて当時の状況を再現させた(1⑸イb)のは、当時、Pが、膝がEの後頭部に当たったことを示唆する発言をしたものの、それがどの時点でのことであるかや当たった具体的状況等について分からないなどと答えたため、騎馬を組んだ時点から解体までの手足の位置等の状況を再現させて記憶を想起させようとしたためであっ たこと、②Fは、他の生徒らに対する聞取りに当たり、対象生徒を個別に呼び出した上で、その生徒らに対し、Pの足がEに当たったか否かが問題となっていること等について示唆することなく、本件騎馬を組んだ時点から解体するまでの間の生徒らの動きや、騎馬が崩れたり、誰かがうずくまったりしたことがあったか等を具体的に質問し、終了後は、聞 取りの内容を他の生徒に言う必要はないとの注意をしたことが認められる。これらに照らせば、本件聞取り調査に際して、Eの頭部に外力が生じていない方向での不当な誘導や誤導が生徒らに加えられたとは認められない。 ⑶ 観点②からの検討 ア本件CT画像から認められる争いのない所見及びW医師の意見の要旨 W意見書、U意見書並びにW医師及びU医師の各供述によれば、Eの臨床経過及び本件CT画像から明らかに認められる所見等は次のとおりである。 a 小脳の中心部である虫部に上方に広がる出血及びその周囲の浮腫を 認める。この出血は、小脳前方の第4脳室に穿破し、中脳水道に広がった上、テント上の第3脳室、側脳室にまで逆流している。 くも膜下出血のほか、左後頭部下方に硬膜下血腫が生じている。 b 上記小脳の出血及び浮腫により、小脳は腫脹し、大脳方向への上行性テント切痕ヘルニア及び 脳室にまで逆流している。 くも膜下出血のほか、左後頭部下方に硬膜下血腫が生じている。 b 上記小脳の出血及び浮腫により、小脳は腫脹し、大脳方向への上行性テント切痕ヘルニア及び延髄を圧迫する小脳扁桃ヘルニアを生じさ せるとともに、脳幹部を直接圧迫し、中脳及び橋が低吸収となってい- 29 - る(脳浮腫を意味する)。 c テント上では、圧迫による中脳水道閉塞による水頭症で脳室拡大を呈している。 d 本件CT画像上、頭部に皮下出血や、頭蓋骨の骨折はみられず、テント上の大脳半球には、外傷等に伴う所見は見られない。 e 急性肺水腫は、上記脳内出血に伴う神経原性の肺水腫と推定される。 原告らは、W意見書及びW医師の供述に基づき、大要、①Eの後頭部に硬膜下血腫が生じていることは、脳内出血が外傷性によるものであることを裏付ける、②Eが頭部外傷を負った後、一定の意識清明期間を経て脳内出血を発症したことは、遅発性外傷性脳内血腫の病態として説明 することができる、③Eの脳内出血につき、脳動静脈奇形等の内因性疾患が原因である可能性はないなどとして、Eの死因となった小脳の出血は、後頭部への外力によって小脳の血管が障害を来たし遅発性外傷性脳内血腫を生じたことによるものであると主張する。 そこで、以下、原告らの主張する上記論拠ごとに、各論拠に対するU 意見書及びU医師の供述の内容と対比させつつ検討する。 イ検討 硬膜下血腫について原告らは、硬膜下血腫の原因は95%が外傷によるものとされていること等から、Eの後頭部に生じた硬膜下血腫は、脳内出血が外傷性であ ることを裏付けると主張する。 原告らの上記指摘は疫学的な見地か 膜下血腫の原因は95%が外傷によるものとされていること等から、Eの後頭部に生じた硬膜下血腫は、脳内出血が外傷性であ ることを裏付けると主張する。 原告らの上記指摘は疫学的な見地からのものであるが、本件において、本件騎馬の解体時にEの後頭部付近に強い衝撃や加速的な回転が加わったというべき具体的な状況は認定できないのであり、また、前記1の認定事実によれば、本件聞取り調査時において、本件騎馬の構成生徒らは、 本件騎馬の解体直後にうずくまったり起き上がれなかったりした者はい- 30 - ないと述べている(聞取り内容一覧表の番号1ないし4)上、実際、Eは、本件騎馬の解体後直ちに準備テントに戻っていること(同⑶エ)からすれば、少なくとも、本件騎馬の解体直後において、Eに急性硬膜下血腫の裏付けとなるべき意識障害が生じたとは認められず、症状の面からも、本件騎馬の解体時にEに硬膜下血腫が生じたことを基礎づけるこ とはできない。 U医師は、小脳上部に広がった出血が、小脳表面に及び、くも膜を穿破して硬膜下腔に流れ出たことにより、Eの硬膜下血腫が形成されたと供述する(証人U)。この供述は、急性硬膜下血腫の発生原因の一つとして、脳内血腫の脳表への波及が挙げられていること(同⑺ア)、根拠 となるCT画像を具体的に示して供述していることに加え、W医師も、Eの症例において、上記機序により硬膜下血腫が生じた可能性を否定していないこと(証人W)に照らし、その信用性は高いというべきである。 これに対し、原告らは、小脳出血と硬膜下血腫の各発生部位の位置が離れているなどと指摘して、小脳からの出血が硬膜下血腫を形成したもの ではないと主張するが、この点につき、U医師は、硬膜下腔はくも膜下腔に比して抵抗が少なく、一度硬膜 血腫の各発生部位の位置が離れているなどと指摘して、小脳からの出血が硬膜下血腫を形成したもの ではないと主張するが、この点につき、U医師は、硬膜下腔はくも膜下腔に比して抵抗が少なく、一度硬膜下腔に流れ込んだ血液は、硬膜下腔に広く広がって硬膜下血腫を形成することとなると供述するところ(証人U)、この供述内容は本件CT画像に沿うものといえるほか、その信用性に疑いを生じさせる証拠もないから、原告らの上記指摘をもってし ても、Eの硬膜下血腫がU医師の述べる発生機序により発生した可能性を否定することはできない。 そうすると、Eに生じた硬膜下血腫が本件騎馬の解体時に受けた外力によって生じたと認めることはできない。よって、Eに生じた硬膜下血腫は、脳内出血が外傷性であることを裏付けるものではない。 遅発性外傷性脳内血腫について- 31 - a 前記で説示したとおり、本件騎馬の解体直後に、Eに意識障害の症状が生じていたとはいえず、また、前記⑵イのとおり、平成28年6月20日午前3時20分頃に頭痛や吐き気等を訴えるに至るまでの間、頭部外傷による症状が生じていたとも認められない一方で、Eは、上記のとおり頭痛や吐き気等を訴えた後、急速に意識レベルを悪 化させ、短時間のうちに死亡した(1⑷ウ)のであって、このような臨床経過によれば、Eの死亡の原因となった小脳出血は、上記頭痛や吐き気等の訴えをした時点又はこれに近接する時点で生じ、急速に悪化したものと認められる(証人U)。 そして、本件プログラムは、同月18日の日中に行われていること を考慮すると、本件騎馬の解体時から、上記小脳出血の発生までに、30時間以上の時間が経過していたこととなる。 原告らは、Eの死亡に至 グラムは、同月18日の日中に行われていること を考慮すると、本件騎馬の解体時から、上記小脳出血の発生までに、30時間以上の時間が経過していたこととなる。 原告らは、Eの死亡に至るまでの上記経過について、外傷性遅発性脳内血腫の臨床経過として説明できるものであると主張する。 b しかし、U医師は、小脳の存在するテント下(後頭蓋窩)は、生命 維持に重要な脳幹の存在する場所であり、この部分の頭蓋骨は厚い上、同部の上方には小脳テントが存在し、大脳部に比して空間が狭いため、脳出血の原因となり得る直接損傷やせん断力が加わりにくい構造となっているため、小脳出血は非常に大きな外力が加わらなければ生じないのであって、後頭部に小脳出血の原因となる程度の外力を受けた場 合には、通常、頭蓋骨骨折が生じ、その外力が脳全体に作用するため大脳の前頭葉及び側頭葉の先端部に脳挫傷や硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血等が生じたりするはずである、Eに生じた小脳出血は内因的な要因で出血したと考えられ、外傷によるものであることを前提にすると出血の機序が想像できないと述べている(乙9、証人U)。この 供述は、脳神経外科医としての臨床経験等に基づいた知識及び経験則- 32 - を述べるものとして信用性が高いというべきである。また、W意見書がその意見の根拠として引用する文献等においても、外傷性後頭蓋窩血腫は稀で頭部外傷全体の0.4%であり、その中でも小脳内出血は外傷性頭蓋内出血の0.6%にとどまるとされている(甲30の添付文献①)上、外傷性の後頭蓋窩や小脳の出血(遅発性のものも含む) に関する各症例報告等をみても、その受傷機転は、交通外傷や転倒、転落等、後頭部に強力な外力が加わったと考えられるものがほとんどであり、また、頭蓋骨 の後頭蓋窩や小脳の出血(遅発性のものも含む) に関する各症例報告等をみても、その受傷機転は、交通外傷や転倒、転落等、後頭部に強力な外力が加わったと考えられるものがほとんどであり、また、頭蓋骨の骨折や、後頭蓋窩に何らかの外傷性病変の存在が認められたり、テント上に脳挫傷等の病変が認められたりした症例が多いことが認められる(甲30の添付文献①ないし④、⑥ないし ⑪及び⑬並びに甲61の添付文献⑦)。 Eの頭部には、前記アdのとおり、本件CT画像上、頭皮の外傷所見や明らかな頭蓋骨の骨折、前頭葉、側頭葉を含めてテント上の外傷性病変の存在は認められない。また、前記⑵アで詳述したとおり、本件騎馬の解体時にEの頭部にPの膝が当たったとしても、Eの頭部 に上記症例報告等における各症例と同様の強力な外力が加わったとは認められない。 そうすると、Eの死因となった小脳出血及びその発症の機序について、これを遅発性外傷性脳内血腫の臨床経過として説明することは相応に困難であるといわざるを得ない。 c これに対し、W医師は、本件騎馬の解体時に、Pの膝がEの後頭部に当たったことにより、Eの頭部に前後ないし上下方向の回転性の力が加わり、これによるせん断力によって小脳の血管が損傷し、血管運動神経麻痺が生じて血管の調整機能が障害され、出血に至った可能性があり、このようなせん断力による血管の損傷の場合には、頭蓋骨骨 折や、テント上の外傷性病変等が指摘できないこともあり得ると供述- 33 - する(証人W)。 この点、遅発性外傷性脳内血腫の発生機序はいまだ判明しておらず、種々の仮説が対立する状況であり(1⑺エ)、U医師は、血管に神経の異常(麻痺)を生じさせるような外傷は一定程度の強い外傷 この点、遅発性外傷性脳内血腫の発生機序はいまだ判明しておらず、種々の仮説が対立する状況であり(1⑺エ)、U医師は、血管に神経の異常(麻痺)を生じさせるような外傷は一定程度の強い外傷であって、脳内の血管に比較して神経線維のほうが弱いから、血管に損傷が 加わるようなせん断力が脳内に加わった場合には、同時に神経損傷が生じて意識障害を呈するはずであり、神経損傷が僅かであっても通常、脳震盪の症状を呈する、血管の神経麻痺に起因する出血の場合には激烈な出血を起こさないので本件はこれと経過が異なると供述する(証人U)ところ、この供述も、同医師の脳神経外科専門医としての臨床 経験等に基づく知識及び経験則を述べるものとしてその信用性は高いというべきである。前記イで述べたとおりの本件騎馬の解体直後の様子からすれば、Eに、びまん性脳損傷のうち重症例であるびまん性軸索損傷の症状のみならず、より軽度の可逆的な神経損傷しか伴わない脳震盪による意識障害等も生じていたとは認められない。そのため、 W医師の上記供述は採用することができない。 なお、かかるU医師の供述に対し、原告らは、文献(甲117、118)を提出の上、血管の損傷と神経線維の損傷とが同時に起こるとは限らないと主張するが、かかる文献は、局在性脳損傷と、びまん性脳損傷の中でも重症例であるびまん性軸索損傷との併発可能性等を検 討しているものにすぎず、上記判断を左右しない。 以上によれば、W医師の供述する上記小脳出血の発症機序は、あくまで観念的・理論的な可能性にとどまり、Eに同様の発症機序で小脳出血が生じたと認めることはできない。 脳動静脈奇形の可能性について 原告らは、小脳に脳動静脈奇形が生じる可能性は極めて 論的な可能性にとどまり、Eに同様の発症機序で小脳出血が生じたと認めることはできない。 脳動静脈奇形の可能性について 原告らは、小脳に脳動静脈奇形が生じる可能性は極めて低く、Eの小- 34 - 脳出血につき、内因性の疾患が原因である可能性はないと主張する。 しかし、原告らの上記主張は、疫学的見地からの脳動静脈奇形の発生頻度や好発部位等を指摘するにとどまるものである。 一方で、脳動静脈奇形一般につき、その好発年齢は、小児から若年成人とされ、その約70%が出血で発症するとされている(1⑺オ)ほか、 小児の症例に関して取り上げられた文献(甲68の2の6)によれば、その発症部位として、小脳に発生するものも10%程度あり、脳内出血がその初発症状の70~90%を占め、脳動静脈奇形による小脳出血の死亡率は67%という報告もあり極めて重篤な疾患であるなどとされている。Eは、死亡当日に頭痛等を訴える時点まで、特段脳内出血等に伴 う症状が生じていたとは認められないところ、同時点に至って小脳出血を生じ、これが急速に悪化してその2時間余り後に死亡するに至った(前記a)のであって、このような経過は、上記小児において小脳に生じる脳動静脈奇形の臨床症状と一定程度合致するというべきであるから、小脳出血が脳動静脈奇形によるものである可能性は否定できない。 これに対し、原告らは、本件CT画像上、脳動静脈奇形の存在が確認できないと主張するが、その確定診断には、脳血管造影、MRA及びMRI検査によってナイダスを確認する必要があるとされており(1⑺オ)、文献(乙107の添付文献⑤)によれば、単純CT検査ではナイダスの発見が困難な例が多いことが指摘されていることを踏まえれば、 上記事 よってナイダスを確認する必要があるとされており(1⑺オ)、文献(乙107の添付文献⑤)によれば、単純CT検査ではナイダスの発見が困難な例が多いことが指摘されていることを踏まえれば、 上記事情をもって、Eの小脳出血が脳動静脈奇形によるものである可能性を否定するには至らない。 外傷を起因とする脳動静脈奇形の出血の可能性について原告らは、予備的主張として、本件騎馬の解体時にEの頭部に加わった外力により、Eの頭部に存在した脳動静脈奇形が出血した可能性があ ると主張する。 - 35 - しかし、脳動静脈奇形の出血の要因として、特定のトリガーや原因等は指摘されていない(証人U)。原告らが上記主張の根拠としている症例報告(甲79)をみても、その症例は、ヘルメットを装着せずに自動二輪車を運転中、歩行者と接触事故を起こして転倒し、そのまま約30m路上を転がって受傷し、受傷から10時間経過後に脳内出血を認めた 症例であり、そもそも受傷状況がEの本件騎馬の解体時の状況とは大きく異なり、前記aのとおり、本件騎馬の解体時からEの小脳出血の発症まで少なくとも30時間が経過している点からしても、Eの臨床経過が上記症例と類似しているとはいえない。 したがって、原告らの上記主張は採用できない。 ⑷ 観点①及び②を総合した判断前記⑵及び⑶で詳述したところによれば、観点①に基づく検討において、本件騎馬の解体時に、Eの頭部に外力が加わる事象が生じた可能性は否定できないものの、その際の具体的状況に照らしてその外力の程度は強度のものとは認められず、観点②に基づく検討においても、原告らの主張する小脳出 血の発症機序はいずれもそのまま採用することができず、小脳出血が脳動静脈奇形に起因 況に照らしてその外力の程度は強度のものとは認められず、観点②に基づく検討においても、原告らの主張する小脳出 血の発症機序はいずれもそのまま採用することができず、小脳出血が脳動静脈奇形に起因する可能性が比較的高いというべきである。 そうすると、上記各観点に基づく検討結果を総合しても、Eが、本件騎馬の解体時において頭部に加わった外力により、脳内出血を生じて死亡したと認めるのは困難といわざるを得ない。 3 争点2(請求1に関する争点)について前記2で詳述したとおり、本件では、本件騎馬の解体時にEの頭部に加わった外力によって同人が死亡したとはいえないから、争点2における各争点について判断するまでもなく、被告の安全配慮義務違反に基づく原告らによる損害賠償請求はいずれも理由がない(なお、前記2で説示したとおり、本件騎馬の 解体時に、Eの頭部に外力が加えられた可能性は否定できないが、同⑵で述べ- 36 - たように、強い外力が加えられたとは認められず、上記外力は、通常受傷を生じさせる程度のものであったとは認められないから、そのような外力がEの身体に加えられたことによってEに損害が発生したとは認められない。)。 4 争点3(請求2に関する争点)について⑴ 争点3-1(被告の注意義務違反の有無)について ア争点3-1-A(調査・報告義務違反)について 前記1⑸の各認定事実によれば、G、H及びFを含む本件学校の職員らは、Eの死後、原告夫婦から、Eの死亡が本件プログラムの際に発生した事故によるものである疑いがあるなどとして調査を求められた(同ア)後、本件各映像を確認したほか、本件騎馬の構成生徒らに対する 本件聞取り調査を直ちに行い(同イ及び同ウ)、各調査終了後の早期の段階でこ のである疑いがあるなどとして調査を求められた(同ア)後、本件各映像を確認したほか、本件騎馬の構成生徒らに対する 本件聞取り調査を直ちに行い(同イ及び同ウ)、各調査終了後の早期の段階でこれを原告夫婦らにその結果を口頭で報告した(同イc及びb並びに同ウ)ほか、その後も、原告夫婦らの求めに応じて、同調査における各生徒らの供述内容をまとめた書面や本件各映像の全部又は一部が入ったUSBメモリを交付するなどした(同及び)ことが認 められる。これらの事実によれば、被告は、Eの死亡が本件学校の教育活動によって生じたのではないかとの上記疑いに対し、適時に合理性の認められる調査を行い、その結果を原告夫婦らに適切に報告したものというべきであって、被告らに調査・報告義務違反があるとは認められない。 原告夫婦は、争点整理表第3の1⑵ないし⑷のとおり主張して、調査・報告義務違反があると主張する。 しかし、前記2で詳述したとおり、本件騎馬の解体時にEの頭部に外力が加わったことによって同人が死亡したとは認められず、その死亡について、本件指針のいう「登下校中を含めた学校の管理下で発生した事 故」とはいえないから、本件指針に基づく調査報告義務に違反したとす- 37 - る原告らの主張には理由がない。 この点を措いても、前記1⑶オのとおりのEの本件騎馬の解体直後の状況や、本件聞取り調査の際の生徒らの供述内容に照らせば、解体直後の時点で、Eが直ちに救護を要するような状況であったといえないことは明らかである(原告らの提出する他の保護者らのメール[甲32]も、 本件騎馬やEを特定しているものではないから、上記判断を左右しない。)から、本件学校の職員らが直ちにEを救護等しなかったことに違法性は ある(原告らの提出する他の保護者らのメール[甲32]も、 本件騎馬やEを特定しているものではないから、上記判断を左右しない。)から、本件学校の職員らが直ちにEを救護等しなかったことに違法性は認められない(同表第3の1⑵関係)。 また、学校事故が発生した疑いがある場合に、学校として具体的にどのような調査を行うかについては、当該学校が、調査の必要性や調査に よる生徒への影響等を考慮し、その裁量的判断に基づいて、これを定めるべきものである。原告らは、本件学校の職員らが、本件演目時に近い状況を再現して聞き取り調査をしなかったり、原告夫婦らによる他の保護者への情報提供の呼びかけの依頼に応じなかったり、同校におけるPTA実行委員会で原告Aが保護者らに同様の呼びかけをすることを拒否 したりしたことが不当であると主張するが、本件聞取り調査における生徒らの説明内容や、本件発言をしたPの心情に与える影響等を考慮すれば、上記のような対応をしたことが、学校の裁量的判断として不合理・不適切なものであったとはいえない。そして、Fの行った各生徒らへの聞取り調査において、不当な誤導があったとはいえないことは、前記2 ⑵イで詳述したとおりである。これらによれば、被告に調査義務違反があるとはいえない(同表第3の1⑶関係)。 さらに、前記のとおり、本件学校の職員らは、原告夫婦らに対し、本件聞取り調査の結果を口頭で報告し、その結果をまとめた書面や本件各映像を交付しており、その上で、被告として本件演目の際に事故があ ったとは考えていないとの見解を伝えた(1⑸ウ)のであって、これ- 38 - らの報告に不適切な点があったとはいえず、被告がEの死亡につながるような事故が生じてはいないと判断したことの説明が社会通念上 えていないとの見解を伝えた(1⑸ウ)のであって、これ- 38 - らの報告に不適切な点があったとはいえず、被告がEの死亡につながるような事故が生じてはいないと判断したことの説明が社会通念上理解困難なものであったとはいえないのであって、被告に報告義務違反があるとはいえない(同表第3の1⑷関係)。 したがって、調査・報告義務違反をいう原告夫婦の主張はいずれも採 用できない。 イ争点3-1-B(誠実対応義務違反)について原告夫婦は、争点整理表第3の⑸のとおり、誠実対応義務違反があると主張する。 しかし、前記アで説示したところに照らすと、被告の職員が事実関係を 隠ぺいしたと評価すべき事実があるはいえず、このような事実を認めるに足りる証拠はない。 また、原告らが指摘する平成29年1月19日のGの発言(1⑸ウ)については、その発言内容及び会話の流れにも照らすと、そのような発言をしたことのみをもって、Eの尊厳を冒とくし原告夫婦の人格的利益 を侵害する違法性があったとはいえない。同年6月23日のGの発言(同)についても、「Pくんの犯人にする」とか「Pくんに罪を与える」といった表現は真実を明らかにしたいという原告夫婦の心情を理解していないかのようなやや不穏当といえる面があることは否定できないものの、その会話の流れを踏まえると、Gは、本件発言をしたPの立場 や心情等に配慮する必要があることを強調して伝えようとしたものであると解され、そのような発言をしたことをもって、原告夫婦の人格的利益を侵害する違法性があったとはいえない。 したがって、原告夫婦の上記主張は理由がない。 ⑵ 小括 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、被告の調査・- を侵害する違法性があったとはいえない。したがって、原告夫婦の上記主張は理由がない。 第4 結論 以上の検討によれば、本件において、被告が原告らに対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償義務を負うとは認められず、原告らの本件各請求はいずれも理由がないから、これらを棄却すべきである。よって、主文のとおり判決する。 広島地方裁判所福山支部 裁判長裁判官森實将人 裁判官大久保俊策 裁判官牛濵裕輝は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官森實将人

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