令和3(ワ)1821 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年2月1日 福岡地方裁判所
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判決文本文18,770 文字)

- 1 -主 文1 被告らは、原告Aに対し、連帯して1650万円及びこれに対する平成23年11月26日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告Bに対し、連帯して1650万円及びこれに対する平成23年11月26日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 53 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを2分し、その1を原告らの、その余を被告らの負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 10第1 請求1 被告らは、原告Aに対し、連帯して3600万円及びこれに対する平成23年11月26日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告Bに対し、連帯して3600万円及びこれに対する平成23年11月26日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 153 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要本件は、原告らの父(以下「被害者」という。)が、建設業界からの暴力団排除の動きに対する報復と建設業界における利権確保のための見せしめのた20め、指定暴力団五代目工藤會(以下「工藤會」という。)構成員であったEから銃撃された(以下「本件犯行」という。)ことにより死亡したと主張して、被害者の損害賠償請求権を相続により取得した原告らが、工藤會総裁であった被告C及び工藤會会長であった被告Dに対して、使用者責任(民法715条)又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴対法」という。)2531条の2に基づき、原告ら各自につき損害賠償金3600万円及 会長であった被告Dに対して、使用者責任(民法715条)又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴対法」という。)2531条の2に基づき、原告ら各自につき損害賠償金3600万円及びこれに対 - 2 -する不法行為の日(本件犯行の日)である平成23年11月26日から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 なお、原告らは、当初Eに対しても本件犯行を理由として、損害賠償請求の訴えを提起したが、これを取り下げた。 51 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア 被害者は、昭和▲年▲月▲日生まれの男性であり、平成23年当時、F株式会社及び社団法人G九州支部の会長を務めていた。 10イ 工藤會は、北九州市内を中心として勢力を有する暴力団であり、平成4年6月26日以降、福岡県公安委員会から暴対法3条所定の指定暴力団に指定され(当時の名称は「二代目工藤連合草野一家」)、平成24年12月27日には同法30条の8所定の特定危険指定暴力団に指定されている。 15平成23年7月に五代目工藤會の体制が発足して以降、被告Cが総裁を、被告Dが会長をそれぞれ務めていた。 (以上につき、甲6、8、10)(2) 本件犯行被害者が、平成23年11月26日、大相撲九州場所の観戦を終えて知20人の運転する車で帰宅し、同日午後9時頃同車から降車したところ、Eが、回転弾倉式拳銃で被害者の身体を目掛けて弾丸2発を発射し、うち一発を被害者の頚部に命中させた。被害者は、ほぼ即死状態で病院に緊急搬送され、同日午後10時3分に死 9時頃同車から降車したところ、Eが、回転弾倉式拳銃で被害者の身体を目掛けて弾丸2発を発射し、うち一発を被害者の頚部に命中させた。被害者は、ほぼ即死状態で病院に緊急搬送され、同日午後10時3分に死亡が確認された(甲8~14、37、38、42)。 25(3) 被害者の相続人は、被害者の妻及びその子である原告らであったとこ - 3 -ろ(甲1)、被害者の妻及び原告らは令和3年4月30日、遺産分割協議書を作成し、被害者が有していた本件犯行に係る加害者に対する損害賠償請求権について、原告らがそれぞれ2分の1ずつ取得することについて合意した(甲2)。そして、被害者の妻は、上記損害賠償請求権の譲渡通知を行うことについて原告Aに委任し代理権を付与した。 5原告らは、同年5月31日、本件訴えを提起し、上記被害者の妻から原告らへの債権譲渡(以下「本件債権譲渡」という。)について、同年7月15日に各被告らに送達された訴状によって通知した(甲2、3、当裁判所に顕著な事実)。 2 争点及び争点に関する当事者の主張10(1) 本件犯行の事業(民法715条)又は威力利用資金獲得行為(暴対法31条の2)該当性(争点1)(原告らの主張)ア 本件犯行について(ア) 工藤會は、かねてから北九州市内を組織全体の主な縄張りとし15て主張しており、特に同市内において工事が行われる際には、建設業者からその縄張り内で工事を行うことを容認する代償として工事費の1~3%をみかじめ料として徴収していた。被害者の経営するF株式会社も、平成11年頃から平成23年頃までの間、工藤會に対し、みかじめ料を支払っていた。 20しかし、平成22年4月1日、福岡県暴力団排除条例(平成21年福 者の経営するF株式会社も、平成11年頃から平成23年頃までの間、工藤會に対し、みかじめ料を支払っていた。 20しかし、平成22年4月1日、福岡県暴力団排除条例(平成21年福岡県条例第59号)が施行されたことも相まって、被害者を含めた建設業者は、工藤會に対するみかじめ料の支払を拒むなど建設業界からの暴力団排除を推進するようになった。 このような中で、工藤會に対してみかじめ料の支払を拒む建設25業者を威圧し、建設業者から徴収していたみかじめ料の減収を避 - 4 -け、工藤會による建設業界からの暴力団排除の動きに対する報復と建設業界に対する利権を確保するため、本件犯行当時建設団体の会長を歴任し、福岡県暴力団排除条例の施行にも合わせて、建設業界のとりまとめ役として同業界からの暴力団排除を推進していた被害者に対し、本件犯行を行ったものである。 5(イ) 本件犯行当時工藤會直若兼瓜田組組長の立場にあったH及び工藤會専務理事兼五代目田中組若頭の立場にあったIは、被害者を殺害することを決意し、複数の配下組員らに指示し、工藤會の活動として、あらかじめ定められた任務分担に従って、被害者の行動確認や車両の手配といった本件犯行の準備を行った。 10平成23年11月26日、大相撲九州場所の観戦を終えた被害者が知人の運転する車に乗って自宅へと向かった際、工藤會の配下組員らは、被害者を追跡するなどして行動確認しており、これを携帯電話で実行役であるEに伝わるように組員間で伝達するなどし、Eが本件犯行を実行した。 15イ 工藤會は、本件犯行当時、総裁である被告Cを頂点として、会長、会長代行、理事長、最高顧問等の指示又は命令することができる地位の階層及び末端である会 し、Eが本件犯行を実行した。 15イ 工藤會は、本件犯行当時、総裁である被告Cを頂点として、会長、会長代行、理事長、最高顧問等の指示又は命令することができる地位の階層及び末端である会員の地位の階層によりピラミッド型に構成された団体であり、総裁等の一部の者を除き、これらの者は、二次組織及び三次組織に所属しており、末端に至るまで総裁の統制が20及んでいた。工藤會の運営方針等については総裁である被告Cと会長である被告Dの協議で決定される場合のほか、執行部会で審議し、その内容を会長に報告する場合があるが、いずれにおいても総裁が最終的な決定を行っていた。この決定事項の組織内における伝達については、幹部クラスによる各会議で指示又は伝達され、さらに、25二次組織の長らは、それぞれ組織ごとの会合において指示又は伝達 - 5 -することにより、末端の構成員まで周知徹底されていた。 本件犯行のように、工藤會の幹部組員や田中組の複数の組員が関与し、それぞれに与えられた役割に沿って時間をかけて周到に準備を行った上で敢行された組織的な犯罪について「当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のため5の資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得る」目的で行われていることは当然であり、それ以外の目的はおよそあり得ない。どのような襲撃であっても市民に強烈な恐怖心を与え、しのぎ行為を維持、拡大しやすくなる等の効果があるからである。 ウ 以上のとおり、本件犯行は、工藤會が、被害者の襲撃を実行して10その威力を誇示することにより、被害者からの支払も含む建設業者からのみかじめ料収入や建設業界に対する利権確保のため、不法な影響力等を維持・拡大させることを目的として実行されたものであ して10その威力を誇示することにより、被害者からの支払も含む建設業者からのみかじめ料収入や建設業界に対する利権確保のため、不法な影響力等を維持・拡大させることを目的として実行されたものであるから、工藤會の威力を利用しての資金獲得行為であるとともに、工藤會の事業の執行に該当する。 15(被告らの主張)原告らの主張立証によっても本件犯行の動機、目的は不明であり、威力利用資金獲得行為ないし工藤會の事業の執行を認めるに足りる証拠はない。原告ら提出の証拠は、被害者が暴力団排除のために具体的に何をしていたかについて明らかにするものではなく、工藤會から特に反発20と攻撃の標的とされなければならないような暴力団排除運動に取り組んでいたといえるものではない。原告ら主張の被害者のみかじめ料の支払状況によれば、被害者及び建設業界は本件犯行時までみかじめ料の支払を続けていたものであるから、その獲得のための本件犯行という動機は認められない。 25また、原告らは、暴力団が組織的に襲撃事件を起こす場合、経済的利 - 6 -益の獲得が目的にあるから、それは当然威力利用資金獲得行為であると主張するが、これは、そもそも暴力団の複数の構成員が組織の指揮命令に基づき、役割を分担して他人の生命、身体、財産を侵害する行為は、その目的において必ず経済的利益に関係があり、それ以外にはあり得ないという知見ないし経験則を前提とするものであるが、そのような知見5ないし経験則は一般的なものとはいえない。 (2) 被告らの使用者性(民法715条)又は代表者性(暴対法31条の2)(争点2)(原告らの主張)ア 被告Cの責任10被告Cは工藤會の「代表者」であり、本件犯行の実行役や関与した組 民法715条)又は代表者性(暴対法31条の2)(争点2)(原告らの主張)ア 被告Cの責任10被告Cは工藤會の「代表者」であり、本件犯行の実行役や関与した組員らをその直接又は間接の指揮監督の下、工藤會の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業に従事させていたものといえるので、実行犯らとの使用関係が認められる。 このような被告Cの総裁としての地位は、暴対法31条の2の「指15定暴力団の代表者等」に該当する。このことは、暴対法5条1項に基づく指定暴力団への指定の際に「代表者」である被告Cの意見を聴取し、代表者を被告Cとして指定したこと、工藤會本部事務所の所有者の代表取締役は一貫して被告Cであることから裏付けられる。また、被告Cが絶対的な指揮命令権を有していることは同種の各判決でも20認定されている。 イ 被告Dの責任被告Dは、本件犯行当時、ピラミッド型の階層組織を持つ工藤會の会長として、自ら、又は工藤會執行部、幹部等を通じ、工藤會組員を直接又は間接に指揮監督することができる地位にあった。よって、被25告Dと実行犯らとの使用関係が認められる。また、仮に被告Cが意思 - 7 -決定権者であったとしても、被告Dは、執行部の長であり、少なくとも工藤會の階層における序列2位に位置する会長として、工藤會の事業の執行を監督する立場にあったので、民法715条2項にいう代理監督者としての地位を有する。 このような被告Dの会長の地位は、同会の運営を支配していたもの5で、暴対法31条の2の「指定暴力団の代表者等」に該当する。 (被告Cの主張)被告Cは、平成23年7月の五代目工藤會発足に際し、同會総裁となり、この代替わりによって もの5で、暴対法31条の2の「指定暴力団の代表者等」に該当する。 (被告Cの主張)被告Cは、平成23年7月の五代目工藤會発足に際し、同會総裁となり、この代替わりによって、工藤會の運営について會を代表し、組織運営を指揮する権能一切は被告Cから被告Dに移譲された。工藤會10における総裁とは隠居的な立場で會には残ることを意味する地位の名称であり、會を代表するものではない。 したがって、本件犯行当時の工藤會の運営を指揮する権能と責任を負っていたのは、被告Dであって、被告Cには、そのような権能も責任もなかった。このことは被告Cが定例会に1年足らずで出席しなく15なったことや執行部会に出席したことがないことから裏付けられる。 (被告Dの主張)争う。 (3) 損害の発生及び数額(争点3)(原告らの主張)20本件犯行の動機は反社会的で不当であること、本件犯行の態様が計画的かつ至近距離から殺傷能力の高い拳銃により弾丸2発を発射し、うち1発を被害者の頚部に命中させるという極めて危険性の高いものであって、一般人である被害者が自宅前路上で突如として拳銃を発射されるという残忍で周囲に衝撃を与えるものであったこと及びその結果何らの落ち度も25認められない被害者が死亡したことからすれば、本件の慰謝料は少なくと - 8 -も6000万円を下らない。 また、本件犯行は指定暴力団である工藤會によるものであり、複数の弁護士を必要としたことからすれば、上記慰謝料の2割に相当する1200万円が弁護士費用として認められる。 よって、原告らは、被告らに対し、被害者の損害賠償請求権の一部に該5当する死亡慰謝料3000万円及び弁護士費用600万円の の2割に相当する1200万円が弁護士費用として認められる。 よって、原告らは、被告らに対し、被害者の損害賠償請求権の一部に該5当する死亡慰謝料3000万円及び弁護士費用600万円の合計3600万円ずつを請求する。 (被告らの主張)原告ら主張の損害額は過大であり争う。被告ら両名は、被害者の殺害について関与しておらず直接の不法行為責任を負っているわけではないの10に、原告らは直接不法行為責任を負っている実行犯には請求を行っていないことも慰謝料の額の算定で考慮されるべき事情である。 (4) 消滅時効の成否(争点4)(被告らの主張)仮に原告らの損害賠償請求権が認められたとしても改正民法施行前の15令和2年2月9日又は同年3月31日の経過により時効により消滅しており、被告らはこの時効を援用する(令和5年9月25日第1回口頭弁論において陳述された準備書面(1)及び準備書面(2)における意思表示)。 原告らは、本件犯行の実行行為者が起訴された平成29年2月9日又は遅くともその後50日程度経過した同年3月末には、本件犯行の加害者が20工藤會の組員であること、被告Cが工藤會の総裁、被告Dが同会長の地位にあることに加えて、本件共同不法行為が工藤會の威力を利用して行われる資金獲得事業の執行又はこれに密接に関連するものとしてなされたと判断するに足りる事情を認識するに至っていた。このことは本件犯行の実行犯らが同年1月19日に逮捕され、同年2月9日に起訴され、被害者通25知制度によりこのことが原告らに知らされたこと、原告らはその間新聞報 - 9 -道や原告ら及び実行犯らに対する事情聴取から工藤會の関与及び工藤會が指定暴力団であり、被告らが工藤會を代表し又はその運 度によりこのことが原告らに知らされたこと、原告らはその間新聞報 - 9 -道や原告ら及び実行犯らに対する事情聴取から工藤會の関与及び工藤會が指定暴力団であり、被告らが工藤會を代表し又はその運営を支配するものであったと知っていたことから明らかである。 (原告らの主張)被告らがその根拠とする起訴は被告らを対象とするものではないし、原5告ら被害者は刑事事件における刑事記録や証拠自体にアクセスできる制度上の保障があったわけではないので、原告らは起訴のときに「加害者を知った」とは評価できない。 (5) 原告らへの債権譲渡が信託法10条に基づき無効となるか否か(争点5)10(被告らの主張)原告らは、原告らの母が相続した被害者の被告らに対する損害賠償請求権について、各2分の1の割合で債権譲渡を受けたと主張しているが、これは被害者の相続開始から約10年を経過し、本件訴え提起直前の令和3年4月30日になってからのことである。 15これは訴え提起の意思がなかった原告らの母の損害賠償請求権について、原告らがその全額を訴求するための便宜として遺産分割と債権譲渡により取得した形をとっているにすぎず、信託法10条の禁止する訴訟提起を主たる目的とする訴訟信託であって、信託制度の目的に反するもので無効である。 20(原告らの主張)原告らの遺産分割には実態が伴っているし、原告らは悪質な動機に基づく残虐な行為態様によって死亡させられた被害者の無念を少しでも晴らすために訴えを提起したものであるから、信託法10条の趣旨に抵触する点は存在しない。 25第3 争点に対する判断 - 10 -1 認定事実等当事者間に争いのない事実並びに後掲各証 すために訴えを提起したものであるから、信託法10条の趣旨に抵触する点は存在しない。 25第3 争点に対する判断 - 10 -1 認定事実等当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実を総合すると、本件の事実経過は以下のとおりである。 (1) 本件犯行当時の工藤會及び被告らについて(後掲各証拠の他、乙1~3)ア 前記前提事実のとおり、平成23年7月の五代目工藤會発足時から本件5犯行時まで、被告Cが総裁、被告Dが会長の地位にあった。 組織が拡大した暴力団においては、組織は各階層に分かれ、下部組織は、自らを表示する場合、例えば「五代目工藤會甲組乙組」というように、必ず最上部組織を冒頭に掲げ、以下、二次組織、三次組織と順に表示し、各階層を明示するところ、田中組及び瓜田組は当時の工藤會の二次10団体の一つである。(甲6)イ 本件犯行までの會の行事での出来事について他団体の最高幹部も出席して行われた五代目工藤會の継承式典の際、被告CがJから四代目工藤會会長を継承した際とは異なり、媒酌人は、被告Cは引退せず、席改め(被告Dが上座に座ること)もしない旨を宣15言した。 五代目工藤會発足に当たり、被告C及び被告Dらが他の幹部職員と共に他団体への挨拶に赴いた際、執行部として慶弔委員長を務めていたKが被告Cの紹介を失念し、このことを理由に絶縁処分を受けた。この絶縁状について、通常は執行部名義で行われるところ、総裁である被告C20名義で作成されたものが全国の暴力団組織に発送され、後に執行部名義のものが再度全国に発送された。 五代目工藤會発足後に開催された事始め式(新年会)の際、被告Cは被告Dより上座に座り、また被告Dの前を歩き、幹部組員等による挨拶も「総裁 送され、後に執行部名義のものが再度全国に発送された。 五代目工藤會発足後に開催された事始め式(新年会)の際、被告Cは被告Dより上座に座り、また被告Dの前を歩き、幹部組員等による挨拶も「総裁」、「会長」の順に、被告Cが上位者であることを示す方法で25行われた。工藤會の年賀状において、被告Cの名前は冒頭に記載され、 - 11 -被告Dの名前はその次に、それ以降他の幹部の名前が記載された。 被告Cは、総裁就任後、五代目田中組継承盃事、新年の事始め式、少なくとも本件犯行までの定例会、親子盃といった會の行事に参加していた。 ウ 被告らの會における役割等について5被告Dは会長として、會を代表し、執行部からの報告を受けていた。 被告Cは、総裁就任後、五代目田中組の継承盃や親子盃では承認という役割を担っていた。被告Cの自宅は、組員から「本家」と呼ばれ、五代目工藤會が発足した平成23年以降も総裁には総裁秘書と総裁付きが付き、二次団体の組員が24時間交替制の当番及び部屋住みとして被告10Cの身の回りの世話等を行っており、その費用は工藤會事務局から支出されていた。また、被告Dはほぼ毎日、その他の幹部組員も頻繁に、被告Cに朝の挨拶をするためだけに上記被告Cの自宅を訪れていた。 エ その他工藤會本部事務所の敷地及び建物は有限会社Lが所有していたとこ15ろ、その代表取締役の地位は、四代目工藤會の発足から4年経過して前記Jから被告Cに継承された後、五代目工藤會体制の発足後も引き続き被告Cが務めており、令和2年に同本部事務所が売却された際には、被告Cが前記有限会社Lの代表者として売却のための契約書に署名押印した(甲67~73、乙2、3、7)。 20福岡県警察は、本件犯行当時、工藤會を代表する者を被告 部事務所が売却された際には、被告Cが前記有限会社Lの代表者として売却のための契約書に署名押印した(甲67~73、乙2、3、7)。 20福岡県警察は、本件犯行当時、工藤會を代表する者を被告C、工藤會の運営を支配する地位にある者の一人を被告Dと把握し(甲6)、令和3年12月末時点でもそのホームページの指定暴力団の紹介において工藤會の代表者を被告Cと記載している(甲66)。 (2) 被害者と工藤會の関わり(甲78、79)25工藤會は、建設関係の業者や土木関係の業者、解体関係の業者等から建築 - 12 -等の工事に関するみかじめ料を受け取っていたところ、被害者は、遅くとも平成13年からF株式会社の工事に関するみかじめ料を工藤會に支払っていた。当該みかじめ料は一回数千万円となることもあり、被害者から仲介人を通して、被告Cに届けられることもあった。 被害者は、平成13年、他の建設業界の関係者と共に、被告Cの自宅の新5築祝いパーティにも参加した。 (3) 建設業界における暴力団排除の動きと暴力団の反応ア 国、地方公共団体の動き政府は平成19年6月19日、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表し、企業に暴力団と取引を含めた一切の関係遮断10と裏取引や資金提供の禁止等を基本原則とする指針を示した(甲54)。 福岡県は、暴力団の排除を推進するため、福岡県暴力団排除条例を制定し、事業者への暴力団への利益供与の禁止等を義務付けた(同条例15条、甲56、80)。同条例は、平成23年10月に改正され、書面による契約には暴力団を排除するための契約条項を盛り込むよう努めることがすべての事15業者に義務付けられ(平成24年4月1日施行)、暴力団から不当な要求を受けた建設工事 年10月に改正され、書面による契約には暴力団を排除するための契約条項を盛り込むよう努めることがすべての事15業者に義務付けられ(平成24年4月1日施行)、暴力団から不当な要求を受けた建設工事関係者は、速やかに県警察等に通報することが義務付けられた(甲60)。 北九州市は、北九州市暴力団排除条例(平成22年6月23日 北九州市条例第19号、平成22年7月1日施行)を制定し、市民らへの暴力団への20利益供与の禁止等を義務付けた(同条例10条、甲58)。 イ 建設業界の動き建設業界は、上記アの動きを受けて、平成24年頃までに取引約款や契約書に暴力団排除条項を導入するなどの対策により、暴力団との取引を遮断する取組を推進した(甲59)。 25被害者は、本件事件発生時までに福岡県や北九州市の複数の建設団体の - 13 -理事、会長等を務めており(甲55)、うち、当時副会長を務めていた社団法人Mが主催委員会の一部となった平成22年11月15日の平成22年度福岡県建設業構造改善推進大会では、建設業界からの暴力団排除が講演内容とされ、建設業界における暴力団の排除を決議した(甲61)。 ウ 上記に対する暴力団の対応5暴力団は、このような取組や市民によるみかじめ料の支払拒否に対して、暴力行為を起こすようになり、平成22年や23年に建設会社やその社員に対する拳銃発砲事件等が複数発生し、その発生件数が増加した(甲59)。 工藤會の構成員も平成20年1月に建設会社の九州支店長管理の普通乗10用自動車に対する発砲事件、同年5月に廃棄物処理業者役員に対する脅迫及び傷害事件、平成21年4月に建設会社役員等に対する傷害事件、同年8月に建設会社役員方駐車場での拳銃所持事件及び平成23年2月に建設会社役員 する発砲事件、同年5月に廃棄物処理業者役員に対する脅迫及び傷害事件、平成21年4月に建設会社役員等に対する傷害事件、同年8月に建設会社役員方駐車場での拳銃所持事件及び平成23年2月に建設会社役員に対する発砲、殺人未遂事件を起こした(甲55)。 (4) 本件犯行について(後掲各証拠の他、甲8~13、弁論の全趣旨)15ア 当時の各人の肩書(甲6)本件犯行に関わった者の犯行当時の五代目工藤會における肩書は、Hが直若兼瓜田組組長、Iが専務理事兼五代目田中組若頭、Nが専務理事兼五代目田中組筆頭若頭補佐、Oが常任理事兼五代目田中組組織委員長、Pが常任理事兼瓜田組若中、Qが常任理事兼瓜田組若中、Eが常任理事兼五代20目田中組若頭補佐及びRが幹事兼五代目田中組若中であった。 イ 本件犯行までの経緯(ア) 被害者は、平成23年11月中旬から開催されていた大相撲九州場所を観戦するために、ほぼ毎日、自家用車や知人の車等で福岡市の福岡国際センターに通っていた(甲12~14)。 25Iは、同月16日、配下の者に大相撲九州場所のテレビ中継に映って - 14 -いる被害者の行動を監視させた(甲27、29)。Nは、同月25日頃、配下の者に大相撲九州場所のテレビ中継に映っている被害者の行動を監視させた(甲28)。 Iは、同月16日頃、配下の者と共に福岡国際センターに出向き、相撲を観戦する被害者を監視し、相撲終了後、博多駅まで赴く被害者を尾行し5た(甲26)。Iは、同月17日、Q及びEに指示をして、相撲観戦をした被害者の車を同人の自宅まで尾行させた(甲20、50)。Iは、同月21日から23日、Rに指示をして被害者の自宅に赴いて、被害者の車の車種やナンバーを覚えさせ、被害者の車を尾行して て、相撲観戦をした被害者の車を同人の自宅まで尾行させた(甲20、50)。Iは、同月21日から23日、Rに指示をして被害者の自宅に赴いて、被害者の車の車種やナンバーを覚えさせ、被害者の車を尾行して築港インターまで向かったり、福岡国際センターまでIを送迎するなどさせた(甲21、22、1052)。 (イ) Hは、同月頃、Qに指示し、本件犯行に用いられたオートバイ(以下「本件車両」という。)を盗ませ、同月19日までにそのナンバープレートを取り外して別に盗ませたナンバープレートに交換したり塗装する作業等をさせた(甲19、30、48、50)。同車両は、同月23日又は2415日頃、Oが知人から借り受けた北九州市a区のガレージに保管された(甲19、31、32)。 ウ 本件犯行当日の状況被害者は、同月26日の午後2時から3時頃、妻及び知人と共に、知人の運転する車両に乗って福岡国際センターに赴き、大相撲九州場所を観戦して、20午後6時頃に観戦を終えた後、福岡市内の飲食店で知人らと食事をし、午後9時頃自宅前に到着した(甲14、37)。 E、O、Q及びPは同日午後5時頃から、Pが運転する車両に乗り、a区付近を巡回して連絡を待ち、渡された携帯電話に連絡が入ったところで、E及びOが本件車両に乗りかえて、それぞれ配置についた(甲45)。Hは、同25日午後6時頃、被害者らの食事中、同人らの車両の周辺を徘徊した(甲35、 - 15 -36)。Rは、同日、Iからの指示を受け、被害者らが乗っていた車が小倉東インター出口を通過するまで、同所を監視し、同日午後8時50分頃、同車が通過したことを工藤會の者に伝えた(甲22、24、33)。 被害者が、自宅前で知人の車から降車した同日午後9時頃、Oの運転する 口を通過するまで、同所を監視し、同日午後8時50分頃、同車が通過したことを工藤會の者に伝えた(甲22、24、33)。 被害者が、自宅前で知人の車から降車した同日午後9時頃、Oの運転する本件車両に乗車して同所まで来たEが、被害者に対し、回転弾倉式拳銃5を使用して弾丸2発を発射し、うち1発を同人の頚部に命中させた(甲8~14、37、38)。 エ 本件犯行後の状況QとPは、本件犯行後、EとOを待ち合わせ場所で迎え、Hの指示を仰ぎつつ、本件車両、Pが運転した車両、本件犯行に用いられた拳銃、Oや10Eの着替えの処分等を行った(甲19、45)。 Iは、本件犯行後の夜、他の組員に対し、Eが本件犯行の実行犯であることをほのめかす発言をし(甲39、40)、その後、R及びQのそれぞれに対し、本件犯行の報酬と思われる各15万円を交付した(甲19、43、46、48、50)。 15オ 被害者の死亡被害者は、本件犯行直後に病院に救急搬送されたが、当初から意識不明、心肺停止状態であり、同日午後10時3分頃に、大血管損傷による出血性ショック死により死亡した(甲38、42)。 カ その後の関係者の逮捕、起訴等20I及びHを含む工藤會の組員ら12人は、平成29年1月19日、被害者に対する殺人の容疑で逮捕され、うち、少なくともQ、R及びPは、同年2月9日に起訴されて、平成30年10月から令和2年10月13日までの間に、第1審及び控訴審での同罪の共同正犯としての有罪判決の宣告を受けた(甲8~13、乙8~22)。 252 争点1(本件犯行の事業(民法715条)又は威力利用資金獲得行為(暴 - 16 -対法31条の2)該当性)について(1) 暴対法31条の2は、威 8~13、乙8~22)。 252 争点1(本件犯行の事業(民法715条)又は威力利用資金獲得行為(暴 - 16 -対法31条の2)該当性)について(1) 暴対法31条の2は、威力利用資金獲得行為を、「当該指定暴力団の威力を利用して生計の維持、財産の形成若しくは事業の遂行のための資金を得、又は当該資金を得るために必要な地位を得る行為」と定義している。 前記認定事実によれば、本件犯行について、工藤會は建設業界から多額の5みかじめ料を受け取ってその資金を獲得しており、被害者自身も仲介者を介して被告Cの手に渡るみかじめ料を支払ったり、同人の自宅新築祝いに出席するなど工藤會の資金獲得行為と密接な関係を有していたものと認められる。他方、前記認定事実のとおり、本件犯行前の数年間は国及び地方公共団体の暴力団排除の動きに合わせて建設業界もこれを推進しており、当時建設10業界の団体の要職に多数就き、暴力団排除を標目とした大会にも出席していた被害者も暴力団排除の動きに追随し、みかじめ料の支払を拒絶しようとしていたものと推認できる。また、工藤會は上記建設業界の動きに反発し、本件犯行前の3年以内に建設業界関係者への襲撃行為を複数行っていたこと、本件犯行は工藤會及びその下部組織の構成員複数名が関わり本件犯行の数週15間前から準備を始め、証拠隠滅も行われた計画的犯行であり、各組員の私怨によるものと認めるに足りる証拠もないことからすれば工藤會の組織的犯行であったことがそれぞれ認められる。 以上の被害者側及び工藤會側の事情を総合して考慮すれば、本件犯行の動機は、被害者自身を含む建設業界からのみかじめ料支払の途絶の動きに対す20る報復と、建設業界の要職に就いており工藤會とも密接な関係を有していた被害者を襲撃すること 合して考慮すれば、本件犯行の動機は、被害者自身を含む建設業界からのみかじめ料支払の途絶の動きに対す20る報復と、建設業界の要職に就いており工藤會とも密接な関係を有していた被害者を襲撃することで工藤會の意に反する者は加害する姿勢を示し、會の資金回収を保持することにあったと認めるのが相当である。そうすると、本件犯行は、暴力団の資金獲得行為であるみかじめ料徴収等を行うに際し、組員が指定暴力団員としての地位に基づいて組織的な暴力行為を実行し、これ25により資金を得るために必要な地位を得ようとしたものであるから、暴力団 - 17 -の威力を利用して資金獲得行為がなされたものといえ、暴対法31条の2の「威力利用資金獲得行為」に該当する。 (2) 被告らは、被害者の具体的な活動やみかじめ料の支払を拒否したことは立証されていないから、本件犯行の動機は不明であり、威力利用資金獲得行為への該当性が認められないと主張する。 5確かに、本件犯行の実行犯らは、本件犯行の動機を述べていないが(甲8~13、46~50)、上記のとおりの事情の下では、本件犯行の動機を資金獲得行為の一環と考えるのが自然であるし、資金獲得行為以外に被害者が工藤會から襲撃される事情をうかがわせる証拠が存在しないこと等を併せ鑑みれば、被告らの主張は採用できない。 10また、被告らは、事業者による工藤會へのみかじめ料に由来するとされる被告Cのほ税所得額が平成22年分と平成23年分とを対比して減少傾向にあったとはいえないから、建設業者らが工藤會へのみかじめ料支払に応じなくなったことが本件の犯行の動機とはならない旨主張する。しかし、建設業者のみかじめ料支払の拒否が従前獲得していた資金の減少となることには変15わらず、上記期間のほ税所得額の対比のみをもっ 応じなくなったことが本件の犯行の動機とはならない旨主張する。しかし、建設業者のみかじめ料支払の拒否が従前獲得していた資金の減少となることには変15わらず、上記期間のほ税所得額の対比のみをもって前記認定判断を左右するものではなく、被告らの上記主張は採用することができない。 3 争点2(被告らの使用者性(民法715条)又は代表者性(暴対法31条の2))について(1) 暴対法31条の2の「代表者等」とは、「当該暴力団を代表する者又は20その運営を支配する地位にある者」(同法3条3号)を指すところ、同条は、被害者保護の観点から、指定暴力団の代表者等には広く損害賠償責任を負わせる趣旨の規定と解され、暴力団の首領及び最高幹部会議の出席メンバー等は、組織内におけるその肩書の呼称を問わず、同条にいう「代表者等」に当たると解するのが相当である。 25(2) 前記認定事実によれば、平成23年7月に発足した五代目工藤會におい - 18 -ては、被告Cが総裁、被告Dが会長にそれぞれ就任したところ、同會の序列としては1位が被告Cで、2位が被告Dであると被告らも認識して、被告Dは被告Cの意に沿うように行動しており(乙2、3)、認定できる各会での席次や挨拶の順序、會における被告Cの取扱いからは、工藤會の組織内において、被告Cを頂点(絶対的権力者)とする上記序列が徹底され5ていたものと認められる。また、前記認定事実のとおりの継承式典での宣言や年賀状・絶縁状の記載、福岡県警察が被告Cを代表者として把握していることからすると、対外的にも被告Cが最上位の扱いを受け、被告D以下が続く序列が示されていたといえ、上下関係を明確にして上の者の命令は絶対的であるという暴力団の性格(甲6)からすれば、被告Cは工藤會10全体に対して絶対的 被告Cが最上位の扱いを受け、被告D以下が続く序列が示されていたといえ、上下関係を明確にして上の者の命令は絶対的であるという暴力団の性格(甲6)からすれば、被告Cは工藤會10全体に対して絶対的な影響力を有していたといえる。 したがって、五代目工藤會の会長として會を代表し、執行部の報告を受けていた被告Dだけでなく、総裁である被告Cも、組織の内外を問わず工藤會の実質的に最上位の立場にあった者として工藤會の首領であったといえ、いずれも暴対法31条の2の「代表者等」に該当すると認めるのが相15当である。 (3) 被告Cは、平成23年7月の代替わり以降、工藤會を指揮する権能一切は被告Dに移譲されており、自身は隠居的な立場にすぎない旨主張し、工藤會の組員及び被告らも同様の供述をしている(乙1~3)。 しかし、前記認定事実のとおり、被告Cは、総裁就任後も継承盃、新年20の事始め式、少なくとも本件犯行までの定例会、親子盃といった會の行事に参加して一定の役割を担っており、工藤會にとって最重要施設ともいうべき工藤會本部事務所の売却にも関わっていることや工藤會の幹部等に定期的に複数回電話をかけていたこと(乙3)が認められ、上下関係が絶対である暴力団の性格(甲6)及び上記で認定した被告Cの序列1位とい25う地位からすれば、被告Cの會への影響力は総裁就任後も残存していたこ - 19 -とがうかがわれる。また、Kの絶縁の経緯や絶縁状の作成・発出からして、その絶縁には被告Cの意向が働いたものと推認される。 以上のとおり、被告Cは、五代目工藤會が発足し総裁に就任した後も、會の行事に参加し、上記のような重要事項の決定に関与していたのであるから、名目的な地位にすぎない隠居的な立場にあったとは到底いえず、被5告Cの上記主 は、五代目工藤會が発足し総裁に就任した後も、會の行事に参加し、上記のような重要事項の決定に関与していたのであるから、名目的な地位にすぎない隠居的な立場にあったとは到底いえず、被5告Cの上記主張は採用することができない。 4 争点3(損害の発生及数額)について本件犯行は、暴力団がみかじめ料収入を確保する等の不当な目的の下、一市民であり何の落ち度もない被害者に危害を加え、死亡させた殺人行為であり、被害者の動向を監視して被害者に対し、突然複数回発砲の上、その頚部に命中10させこれを即死させ、組織的に犯行を隠蔽しようとした態様は残忍かつ卑劣というほかない。このように被害者に何ら落ち度がないこと、犯行態様、その他本件にあらわれた一切の事情を総合考慮すると、被害者が本件犯行及びこれによる死亡において受けた精神的苦痛を慰謝するための死亡慰謝料として、3000万円を認めるのが相当である。 15被告らは、原告らが本件の実行行為を行った者に対して損害賠償請求を行っていないことを慰謝料減額の事由とすべきと主張するが、前記のとおり本件は工藤會全体の資金獲得行為のための組織的犯行と認められ、その代表者等である被告らと実行行為者で慰謝料額が異なることにはならないし、後述のとおり、被告らは実行行為者含めて本件損害賠償に対し不真正連帯債務を負うものと解される20から、実行行為者への損害賠償請求の有無がその慰謝料の総額に影響を及ぼすものでもないから、その主張は採用することができない。 また、本件事案の内容、本件訴訟における審理の経過等に照らせば、弁護士費用は300万円が相当である。 5 争点4(消滅時効の成否)について25民法715条における使用者に対する損害賠償請求権と被用者個人に対 - 20 -する損害賠償請求権と 士費用は300万円が相当である。 5 争点4(消滅時効の成否)について25民法715条における使用者に対する損害賠償請求権と被用者個人に対 - 20 -する損害賠償請求権とはそれぞれ個別に時効が進行し、その起算点となる加害者を知るとは、被害者らにおいて、一般人が当該不法行為が使用者の事業の執行につきなされたものであると判断するに足りる事実をも認識することをいうものと解するのが相当である(大審院昭和11年(オ)第844号同12年6月30日第三民事部判決・民集16巻19号1285頁、最高裁5判所昭和40年(オ)第486号同44年11月27日第一小法廷判決・民集23巻11号2265頁各参照)。そうすると、民法715条の特則と解され民法の適用を受ける(暴対法31条の3)暴対法31条の2における代表者の責任の消滅時効の進行についても、少なくとも本件犯行が被告らにおいて代表者を務める工藤會の威力利用資金獲得行為であると一般人が判断す10るに足りる事実を認識することが必要である。 前記認定事実のとおり、Q、R及びP等本件犯行の実行行為を行った者らは、平成29年2月9日に同事実について殺人罪で起訴されているところ、被告らは、原告らは当該起訴時又は遅くともこれを受けて調査を尽くした同年3月31日には被告らを加害者として認識し得たと主張する。しかし、前15記認定事実のとおり、本件犯行は工藤會の複数の組員がそれぞれ役割を担って行ったものであり、一部の者の実行行為が認められたとしても本件犯行が工藤會の組織的犯行と直ちには判断できない。また、本件犯行の動機は上記起訴時から判決宣告時まで証拠上明らかになっておらず、本件訴訟に至っても被告らがその威力利用資金獲得行為該当性を強く争っていること、刑事事20件における起 断できない。また、本件犯行の動機は上記起訴時から判決宣告時まで証拠上明らかになっておらず、本件訴訟に至っても被告らがその威力利用資金獲得行為該当性を強く争っていること、刑事事20件における起訴が必ずしもその加害者性を確定づけるものではなく、まして起訴されていない被告らを加害者として認識することは困難であることといった事情を鑑みれば、上記被告ら主張の時点において、一般人が、本件犯行が工藤會の威力利用資金獲得行為であると判断するに足りる事実を認識できたとは認められず、実際原告らも被告らの責任を認識していなかったか25ら(甲83、84)、この時点を基準とした消滅時効を主張する被告らの主 - 21 -張は採用することができない。 6 争点5(原告らへの債権譲渡が信託法10条に基づき無効となるか否か)について被告らは、本件債権譲渡は、本件訴訟を原告らに行わせるためのものであり、信託法10条で禁止されている訴訟信託に当たると主張する。確かに、5被害者の死亡が平成23年11月26日であるのに対し、本件債権譲渡は令和3年4月30日と相当の期間が経過しているものの、原告ら及び被害者の妻は元々被害者の相続人であり(甲1)、同人らが遺産分割協議により遺産の一部である債権を一部の者に相続させるように定めることは何ら不自然な行為ではないし、原告らに対し将来的に相続させる債権を早めに譲渡した10という被害者の妻の説明(甲82)も合理性を有するものである。加えて、原告らは本件債権譲渡を受けた部分に加えて同人ら固有の被害者からの相続分も含めて本件損害賠償請求を行っており、同人らが本件債権譲渡を受けて本件訴訟の提起を義務付けられたとは評価できないことも併せ鑑みれば、本件債権譲渡が訴訟行為をさせることを主たる目的としたものとは認めら 含めて本件損害賠償請求を行っており、同人らが本件債権譲渡を受けて本件訴訟の提起を義務付けられたとは評価できないことも併せ鑑みれば、本件債権譲渡が訴訟行為をさせることを主たる目的としたものとは認めら15れず、被告らの主張は採用することができない。 7 以上によれば、被告C及び被告Dは暴対法31条の2に基づき、原告らに対し、上記4記載の損害元本合計3300万円を賠償する義務を負う。 また、暴対法31条の2に基づく損害賠償責任は使用者責任(民法715条)の特則と解され、民法の適用を受ける(暴対法31条の3)から、被告らは上記20金員及びこれに対する本件犯行(不法行為)の日である平成23年11月26日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5%の遅延損害金を支払う義務を負い、かつ、被告らの上記損害賠償債務は互いに不真正連帯債務の関係に立つ。 なお、以上の認定説示からすれば、被告C及び被告Dの使用者責任に基づく請25求の認容額は、これと選択的併合の関係にある暴対法31条の2に基づく請求に - 22 -ついての認容額を超えないことは明らかである。 第4 結論以上のとおりであるから、原告らの被告らに対する請求は、各1650万円及びこれに対する不法行為の日(本件犯行の日)である平成23年11月26日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由5があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとする。なお、被告ら申立ての仮執行免脱宣言についてはいずれも相当でないので、これを付さないこととする。 よって、主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第6民事部10 裁判長裁判官 上 田 洋 幸 ないので、これを付さないこととする。 よって、主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第6民事部10 裁判長裁判官 上 田 洋 幸 15裁判官 橋 口 佳 典 裁判官馬渡万紀子は、差支えのため署名押印することができない。 20 裁判長裁判官 上 田 洋 幸

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