- 1 -主文原判決を破棄する。 本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人高橋美博,同間瀬聡の上告受理申立て理由について 本件は,被上告人から熱電供給システム(以下「本件システム」という。)の製造及び設置に係る工事(以下「本件工事」という。)を請け負った上告人が,被上告人に対し,請負代金3045万円及びこれに対する平成18年12月8日からの遅延損害金の支払を求める事案である。 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1)上告人は,石油類供給設備に関する工事の設計,施工等を目的とする会社であり,被上告人は,土木建築用資材その他の物品の売買,輸出入等を目的とする会社である。 (2)Aは,平成17年ころ,温泉施設「甲」の建設を計画し,同施設に本件システムを導入することを検討していた。Bは,Aから相談を受けて,上告人に本件工事を施工させることを考え,上告人との交渉を始めた。 (3)Aは,平成17年9月ころ,Bに対し,本件システムを発注した。その当時,AとBは,本件システムについて,BがCに売却した上で,AがCとの間でリース契約を締結することを予定していた。 (4)上告人は,平成17年9月ころ,Bから,本件工事を請負代金2900万円(消費税別)で請け負ってもらえないかと打診され,上記代金額については了承したが,請負代金の支払を確保するために,Bと直接請負契約を締結するのではな- 2 -く,信用のある会社を注文者として本件システムに係る取引に介在させることを求めた上,Bの求めに応じて本件工事に着手した。 (5)被上告人は,Bから依頼を受け,平成18年3月,上告人との間で,請負代金を2900万円(消費税別)として,本件工事の請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結するとともに,本件システムをBに代金 被上告人は,Bから依頼を受け,平成18年3月,上告人との間で,請負代金を2900万円(消費税別)として,本件工事の請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結するとともに,本件システムをBに代金3070万円(消費税別)で売り渡す旨の売買契約を締結した。 本件請負契約の締結に当たり,被上告人が上告人に交付した注文書には,「支払いについて,ユーザー(甲)がリース会社と契約完了し入金後払いといたします。 手形は,リース会社からの廻し手形とします。」との記載があった。 (6)上告人は,平成18年4月,本件工事を完成させて,本件請負契約において合意されたところに従い,本件システムをAに引き渡した。 (7)AとCとの間では,平成18年5月ころ,本件システムのリース契約が締結されないことになり,Aは,その後も,Bに対して本件システムの代金の支払をしていない。 原審は,上記事実関係の下で,本件請負契約は,AとCとの間で本件システムのリース契約が締結されることを停止条件とするものであり,上記リース契約が締結されないことになった時点で無効であることが確定したとして,上告人の請求を棄却した。 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 前記事実関係によれば,AがCとの間で締結することを予定していたリース契約は,いわゆるファイナンス・リース契約であって,Aに本件システムの代金支払に- 3 -つき金融の便宜を付与することを目的とするものであったことは明らかである。そうすると,たとえ上記リース契約が成立せず,Aが金融の便宜を得ることができなくても,Aは,Bに対する代金支払義務を免れることはないというのが当事者の合理的意思に沿うものというべきである。加えて,上告人は,本件工事の請負代金の支払確保のため,あえて信用 宜を得ることができなくても,Aは,Bに対する代金支払義務を免れることはないというのが当事者の合理的意思に沿うものというべきである。加えて,上告人は,本件工事の請負代金の支払確保のため,あえて信用のある会社を本件システムに係る取引に介在させることを求め,その結果,被上告人を注文者として本件請負契約が締結されたことをも考慮すると,上告人と被上告人との間においては,AとCとの間でリース契約が締結され,Cが振り出す手形によって請負代金が支払われることが予定されていたとしても,上記リース契約が締結されないことになった場合には,被上告人から請負代金が支払われることが当然予定されていたというべきであって,本件請負契約に基づき本件工事を完成させ,その引渡しを完了したにもかかわらず,この場合には,請負代金を受領できなくなることを上告人が了解していたとは,到底解し難い。 したがって,本件請負契約の締結に当たり,被上告人が上告人に交付した注文書に前記記載があったとしても,本件請負契約は,AとCとの間で本件システムのリース契約が締結されることを停止条件とするものとはいえず,上記リース契約が締結されないことになった時点で,本件請負契約に基づく請負代金の支払期限が到来すると解するのが相当である。 これと異なる原審の判断には,契約当事者の意思解釈についての経験則に反する違法があり,この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。 以上によれば,論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,被上告人のその余の主張につき,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこ- 4 -ととする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官近藤崇晴裁判官那須弘平裁判官田原睦夫裁判官岡部喜代子) 主文 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官近藤崇晴裁判官那須弘平裁判官田原睦夫裁判官岡部喜代子)
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