平成27(行ケ)10046 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年1月21日 知的財産高等裁判所 3部 判決 請求棄却
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平成28年1月21日判決言渡 平成27年(行ケ)第10046号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成27年12月16日判決 原告X訴訟代理人弁理士鎌田文二 同鎌田直也 被告特許庁長官 指定代理人赤木啓二 同住田秀弘 同長馬望 同金子尚人 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2013-24653号事件について平成27年1月21日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は,発明の名称を「洋式便器」とする発明について,平成20年8月8日,特許出願(特願2008-205432号。請求項の数2。以下「本願」という。)をした。 原告は,本願について,平成25年5月20日付けの拒絶理由通知(甲2。以下「本件拒絶理由通知」という。)を受けた後,同年9月25日付けの拒絶査定(甲6。以下「本件拒絶査定」という。)を受けた。 原告は,同年12月16日,拒絶査定不服審判を請求(以下「本件審判請求」という。)するとともに,同日付け手続補正書(甲8)により,特許請求の範囲の 甲6。以下「本件拒絶査定」という。)を受けた。 原告は,同年12月16日,拒絶査定不服審判を請求(以下「本件審判請求」という。)するとともに,同日付け手続補正書(甲8)により,特許請求の範囲の請求項1について補正(以下「本件補正」という。)をした。 その後,特許庁においては,特許法162条に基づき,審査官による前置審査(以下「本件前置審査」という。)が行われ,平成26年3月27日付けで,審査官から特許庁長官に対し,特許をすべき旨の査定はできない旨の報告がされ,特許庁は,同年4月4日付けで,原告に対し,審査前置解除通知(甲9)を行うとともに,本件前置審査に係る前置報告書(甲10。以下「本件前置報告書」という。)を送付した。 (2) 特許庁は,本件審判請求について不服2013-24653号事件として審理を行い,平成27年1月21日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,同年2月3日,その謄本が原告に送達された。 (3) 原告は,平成27年3月5日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載(1) 本件補正前のもの本件補正前の特許請求の範囲は,請求項1及び2からなり,その請求項1の記載は,次のとおりである(甲1。以下,本件補正前の請求項1に係る発明を「本願発明」といい,本件補正前の明細書と図面を併せて,「本願明細書」という。)。 「【請求項1】- 3 -洋式便器本体の後部位置に,その前面の開口縁が洋式便器本体の上端開口部周縁の後部両側から連なって,この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設けて洋式便器が形成され,この立ち上がり部の上端部に,便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう 部両側から連なって,この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設けて洋式便器が形成され,この立ち上がり部の上端部に,便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取付けられ,伏倒位置で前記立ち上がり部の前面を閉鎖し,起立位置で立ち上がり部の前面を開放する蓋板を設け,この蓋板の先端部に,蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なる便座を,蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏動自在に取付けた洋式便器。」(2) 本件補正後のもの本件補正後の特許請求の範囲は,請求項1及び2からなり,その請求項1の記載は,次のとおりである(甲8。以下,本件補正後の請求項1に係る発明を「本件補正発明」という。なお,下線部は,本件補正による補正箇所である。)。 「【請求項1】洋式便器本体の後部位置に,その前面の開口縁が洋式便器本体の上端開口部周縁の後部両側から連なって,この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設けて洋式便器が形成され,この立ち上がり部の上端部に,便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取付けられ,伏倒位置で前記立ち上がり部の前面を閉鎖し,起立位置で立ち上がり部の前面を開放する蓋板を設け,この蓋板の先端部に,蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり,蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する便座を,蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏- 4 -動自在に取付けた洋式便器。」 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであるが,要するに,①本件補正は,特許 て便器の前後方向に対して起伏- 4 -動自在に取付けた洋式便器。」 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであるが,要するに,①本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に当たるところ,本件補正発明は,本願出願前に頒布された刊行物である特開2008-169680号公報(甲4。以下「引用例1」という。)に記載された発明及び実願平1-145078号(実開平3-085991号)のマイクロフィルム(甲11。以下「引用例2」という。)の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである,②本願発明は,引用例1に記載された発明であるから,同法29条1項3号の規定により特許を受けることができず,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきである,というものである。 (2) 本件審決が認定した引用例1(甲4)に記載された発明(以下「引用発明1」という。),本件補正発明と引用発明1の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明1「便器本体の開口部に水平面からの傾斜部を設け,傾斜部に対応する便器本体内部が小水受け用である立式座式兼用便器において,傾斜部の開口縁が水平面の周縁から後部に連なっており,傾斜部を覆う閉部の上端は便器本体の上端部に取り付け部によって取り付けられて,閉部が立式座式兼用便器の前後方向に起伏動自在であり,傾斜部を覆う閉部は便座に設けられ,便座に折り畳み部 に連なっており,傾斜部を覆う閉部の上端は便器本体の上端部に取り付け部によって取り付けられて,閉部が立式座式兼用便器の前後方向に起伏動自在であり,傾斜部を覆う閉部は便座に設けられ,便座に折り畳み部を設けて便座を立式座式兼用便器の前後方向に起伏動自- 5 -在とし,閉部及び便座を開けると,起立した閉部の先端から後面側に便座が垂れ下がり,閉部及び便座を閉めると,便座は水平面の周縁に重なることができる立式座式兼用便器。」イ本件補正発明と引用発明1の一致点「洋式便器本体の後部位置に,その前面の開口縁が洋式便器本体の上端開口部周縁の後部両側から連なって,この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設けて洋式便器が形成され,この立ち上がり部の上端部に,便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取付けられ,伏倒位置で前記立ち上がり部の前面を閉鎖し,起立位置で立ち上がり部の前面を開放する蓋板を設け,この蓋板の先端部に,蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり,蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する便座を,蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏動自在に取付けた洋式便器。」である点。 ウ本件補正発明と引用発明1の相違点本件補正発明においては,蓋板が起立した際に,便座が蓋板の先端から前面側に垂れ下がるのに対し,引用発明1においては,後面側に垂れ下がる点。 第3 原告の主張 1 取消事由1(本件補正発明の独立特許要件の判断の誤り)(1) 一致点の認定の誤り及び相違点の看過引用発明1は,以下のとおり,本件補正発明の「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の 本件補正発明の独立特許要件の判断の誤り)(1) 一致点の認定の誤り及び相違点の看過引用発明1は,以下のとおり,本件補正発明の「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり,蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に- 6 -垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する便座」との構成を備えていないから,本件審決には,本件補正発明と引用発明の一致点の認定に誤りがあり,その結果,相違点を看過した誤りがある。 ア本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載によれば,本件補正発明における「便座」は,「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり,蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する」ものであるところ,当該便座は,その挙動を表現する動詞が全て自動詞であることから分かるように,蓋板の伏倒及び起立に連動して自動的に「洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり」及び「蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する」との各挙動(以下「本件各挙動」という場合がある。)を示すように構成されているものである。 そして,このことは,本願明細書における「蓋板を跳ね上げれば,立ち上がり部の前面から洋式便器本体の上面が同時に開放されることになり,急ぐ場合の放尿に対して速やかに対応することができる。」(段落【0014】,「図1(a)のように,蓋板6が立ち上がり部3の前面を閉鎖した伏倒状態で,便座7は洋式便器本体2の上面に重なり,便座カバー8は便座7に対して起伏回動できるようになる。」(段落【0023】),「図1(b)のように,蓋板6を立ち上がり部3の上部に跳ね を閉鎖した伏倒状態で,便座7は洋式便器本体2の上面に重なり,便座カバー8は便座7に対して起伏回動できるようになる。」(段落【0023】),「図1(b)のように,蓋板6を立ち上がり部3の上部に跳ね上げると,便座7と便座カバー8は,重なり状態で蓋板6の先端から前面側に垂れ下がり,これによって,立ち上がり部3の前面と洋式便器本体2の上面が開放される。」(段落【0024】)との各記載のほか,図1(a)及び図1(b)(本願明細書中の図面については,別紙1参照)からも根拠付けられる。例えば,図1(b)の状態から蓋板を下方に回動させると,便座はまずその先端から洋式便器本体の上面に接し,次いで蓋板をさらに下方に回動させると,便座は- 7 -ヒンジ機構11を中心に水平の向きに自動的に回動し,洋式便器本体の上面に重なることが自然に理解できる。 イこれに対し,引用発明1においては,図6(引用例1中の図面については,別紙2参照)に記載のとおり,蓋板(閉部)が起立して立ち上がり部(起立部)の前面を開放する状態で,便座が蓋板(閉部)の先端から後面側に「垂れ下げられている」にすぎない。すなわち,引用発明1においては,蓋板(閉部)を伏倒状態から起立させた際に,便座がそれに連動して蓋板(閉部)の後面側へと自動的に回り込んで垂れ下がることは構造上あり得ないので,便座は手動により蓋板(閉部)の後面側へと回り込むように操作され,「垂れ下げられている」と解するほかない。 また,引用発明1においては,蓋板(閉部)を起立状態から伏倒させた際に,便座がそれに連動して自動的に便器本体の開口部(水平面)の周縁上に重なるのか否かは明らかではなく,むしろ手動で便座を水平面の周縁に「重ねている」ことが推認される。 ウこのように,引用発明1における便座は,蓋板(閉部)の伏倒及 器本体の開口部(水平面)の周縁上に重なるのか否かは明らかではなく,むしろ手動で便座を水平面の周縁に「重ねている」ことが推認される。 ウこのように,引用発明1における便座は,蓋板(閉部)の伏倒及び起立に連動して自動的に本件各挙動を示すものではないにもかかわらず,本件審決が,引用発明1について,「閉部及び便座を開けると,起立した閉部の先端から後面側に便座が垂れ下がり」,「閉部及び便座を閉めると,便座は水平面の周縁に重なる」構成を有していると認定し,「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり,蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する便座」との構成を本件補正発明と引用発明1の一致点と認定したことは誤りであり,その結果,本件審決は,本件補正発明と引用発明1との相違点を看過している。 (2) 相違点の容易想到性の判断の誤り- 8 -本件審決は,引用発明1において,小便器と同様の飛散防止及び水洗効果を得るための閉部及び便座の配置として,引用例2の記載事項を採用し,起立した閉部の先端から,閉部の下面と便座の下面とが対向するように前面側に便座を垂れ下がらせて,引用発明1との相違点に係る本件補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことであると判断した。しかし,以下に述べるとおり,本件審決の上記判断は誤りである。 ア改変の動機付けがないこと本件審決は,引用発明1と引用例2に記載の洋式便器が「洋式便器において小便器のように小便を受ける立ち上がり部を設けるという共通した構成を有している」ことを理由に,引用発明1における,蓋板(閉部)が起立して立ち上がり部(起立部)の前面を開放する状態で蓋板(閉部)の先端から のように小便を受ける立ち上がり部を設けるという共通した構成を有している」ことを理由に,引用発明1における,蓋板(閉部)が起立して立ち上がり部(起立部)の前面を開放する状態で蓋板(閉部)の先端から後面側に垂れ下げられている便座を,引用例2に記載のとおり蓋板の前面側に位置するように改変することは容易である旨判断する。 しかしながら,引用発明1においては,蓋板(閉部)が起立して立ち上がり部(起立部)の前面を開放する状態で,便座が蓋板(閉部)の先端から後面側に垂れ下げられるようにする構成を採用することで,「小便器と同様の飛散防止及び水洗効果を得る」という発明の効果は既に奏されているのであるから,あえてここに引用例2の記載事項を適用して,蓋板の起立状態において蓋板の後面側に位置する便座を前面側に位置するように改変を行うことの動機付けはない。 むしろ,小水の「飛散防止」という観点では,人体が唯一接触する箇所となり得る便座の上面に対する小水の飛散,付着が最も忌まれるべきところ,蓋板の起立状態において蓋板の後面側に位置する便座を前面側に位置するように改変を行うことは,便座の上面に対する小水の飛散,付着の可能性を潜在的に増加させることになるから,そのような改変には阻害要因が存在するといえる。 - 9 -イ引用発明1に引用例2の開示事項を適用したとしても,引用発明1との相違点に係る本件補正発明の構成とすることが容易であるとはいえないこと本件審決が,引用発明1との相違点とする本件補正発明の構成は,「蓋板が起立した際に,便座が蓋板の先端から前面側に垂れ下がる」構成(以下「相違点に係る本件補正発明の構成」という。)であり,ここで言う「起立」が,「立ち上がること」を意味するのは明らかである。しかるところ,引用例2における蓋板は,第4図(b 側に垂れ下がる」構成(以下「相違点に係る本件補正発明の構成」という。)であり,ここで言う「起立」が,「立ち上がること」を意味するのは明らかである。しかるところ,引用例2における蓋板は,第4図(b)(引用例2中の図面については,別紙3参照)から明らかなとおり,その上限位置の状態において,上方に向けて「起立」しているのではなく,「水平」,つまり横方向を向いているにとどまっている。 また,引用例2における便座は,蓋板の前面側に重ね合わされており,蓋板の先端から前面側に垂れ下がる構成とはなっていない。 このように,引用例2には,相違点に係る本件補正発明の構成は開示されておらず,そこで開示されているのは,蓋板が上限位置の状態において,便座が蓋板の前面に重なり合っており,蓋板から垂れ下がらないような構成にすぎない。 そうすると,引用発明1に引用例2の開示事項を適用したとしても,その結果として得られる便器は,蓋板が上限位置の状態において,便座が蓋板の前面に重なり合っており,蓋板から垂れ下がらないような構成のものにすぎず,そこから更に,便座が蓋板から離間して蓋板の先端から垂れ下がるような構成にすることは,容易想到の範囲を超えている。 したがって,引用発明1に引用例2の開示事項を適用したとしても,相違点に係る本件補正発明の構成とすることが容易であるとはいえない。 ウ小括以上によれば,引用発明1において引用例2の記載事項を採用すること- 10 -により相違点に係る本件補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことであるとした本件審決の判断は誤りである。 (3) まとめ以上のとおり,本件審決には,本件補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り及び相違点の看過,相違点の容易想到性の判断の誤りがあり,その結果,本件補 本件審決の判断は誤りである。 (3) まとめ以上のとおり,本件審決には,本件補正発明と引用発明との一致点の認定の誤り及び相違点の看過,相違点の容易想到性の判断の誤りがあり,その結果,本件補正発明は,引用発明1及び引用例2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであると判断した誤りがある。 したがって,本件審決における本件補正発明の独立特許要件の判断は誤りであるから,本件審決は取り消されるべきである。 2 取消事由2(本願発明の新規性の判断の誤り)本件審決は,本願発明は引用例1に記載された発明と同一であるから,新規性を欠く旨判断した。 しかし,本願発明においても,「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なる便座」とは,蓋板の伏倒に連動して自動的に上記のような挙動を示すように構成されているものを指すと解されるところ,引用発明1がこれに相当する構成を有していると認められないことは,前記1(1)のとおりであるから,引用発明1と本願発明とが同一であるとはいえない。 したがって,本件審決の上記判断は誤りであるから,本件審決は取り消されるべきである。 3 取消事由3(手続違背)本件審決に至る本願の手続経過によれば,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定では,本願発明は,実願昭54-180795号(実開昭56-096186号)のマイクロフィルム(甲3)又は特開2008-169680号公報(引用例1)を引用文献として新規性又は進歩性を欠くから特許を受けることはできないと判断され,本件前置報告書では,本件補正発明は,実願平1-145- 11 -078号(実開平3-085991号)のマイクロフィルム(引用例2)を引用文献として新規性を欠くから特許を受けることはできないと判断 件前置報告書では,本件補正発明は,実願平1-145- 11 -078号(実開平3-085991号)のマイクロフィルム(引用例2)を引用文献として新規性を欠くから特許を受けることはできないと判断され,さらに,本件審決では,本件補正発明は,引用例1及び引用例2を引用文献として進歩性を欠くから特許を受けることはできないと判断されたものである。 このように本件の審査の過程における拒絶理由,本件前置審査の過程における拒絶理由及び本件審決における拒絶理由がいずれも異なるにもかかわらず,本件前置審査及び本件審判の段階で,原告に対し,拒絶理由通知をせず,反論及び補正の機会を与えなかったことは,以下に述べるとおり,手続違背に当たるから,本件審決は違法として取り消されるべきである。 (1) 本件前置審査において拒絶理由通知をしなかった手続の違法前置審査において,補正発明が独立特許要件を満たさないと判断される場合,特許法163条2項において読み替えて準用する同法50条ただし書の規定によれば,少なくとも明文上は,審査官に拒絶理由を通知する義務は課せられていない。しかしながら,このような場合に,明文の規定がないことのみを根拠として,拒絶理由通知を一律に省略することは,憲法31条が要請する,法に基づく適正手続(デュー・プロセス)の理念に反するものであり,個別具体的な事案において拒絶理由を通知しないことが,特許出願人にとって自らの責めに起因しない過酷な結果を招来すると認められる場合には,特許法163条2項で準用する同法50条本文に基づく拒絶理由を通知すべき義務に違反するものというべきである。 これを本件についてみれば,本件前置報告書において,審査官は,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定において引用文献として挙げられていない引用例2を唯一の引用文献と 務に違反するものというべきである。 これを本件についてみれば,本件前置報告書において,審査官は,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定において引用文献として挙げられていない引用例2を唯一の引用文献とし,これに基づいて本件補正発明は独立特許要件を欠くから,本件補正は却下されるべきであり,本願は本件拒絶査定の理由のとおり拒絶されるべきである旨判断しているが,このことは,前置審査の段階において,引用文献が審査の段階から差し替えられていることを意味し,- 12 -これに伴って拒絶理由(独立特許要件を満たさない理由)が拒絶理由通知及び拒絶査定におけるものと変更されていることを意味する。 審査の過程において,同様に引用文献の差し替えによる新たな拒絶理由が生じた場合,審査官には,拒絶理由を通知することが義務付けられ,特許出願人には,それに対する反論及び補正の機会が保障されている(特許法50条本文)が,引用文献の差し替えによる新たな拒絶理由の発生という事情においては,審査と前置審査とで何ら異なるところがなく,むしろ,前置審査を含む審判段階では,審査段階とは異なり,拒絶理由が通知されない限り反論及び補正の機会がなく,審判において拒絶審決を受けたときには,もはや再補正の機会が与えられることはないので,この点において,出願人である原告にとって審査段階よりも過酷であるといえる。 ところが,本件前置審査においては,原告に対し,引用例2に基づく新たな拒絶理由(独立特許要件を満たさない理由)についての拒絶理由通知はされておらず,そのため,原告にはこれに対する反論及び補正の機会が与えられていない。 したがって,本件前置審査において,審査官が拒絶理由を通知しなかったことは,適正手続の理念に反し,特許法163条2項で準用する同法50条に違反するものであり,こ 補正の機会が与えられていない。 したがって,本件前置審査において,審査官が拒絶理由を通知しなかったことは,適正手続の理念に反し,特許法163条2項で準用する同法50条に違反するものであり,このことが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件審決は取り消されるべきである。 (2) 本件審判手続において拒絶理由通知をしなかった手続の違法拒絶査定不服審判において,補正発明が独立特許要件を満たさないと判断される場合,特許法159条2項において読み替えて準用する同法50条ただし書の規定によれば,少なくとも明文上は,審判官に拒絶理由を通知する義務は課せられていない。しかしながら,このような場合に,明文の規定がないことのみを根拠として,拒絶理由通知を一律に省略することは,憲法31条が要請する,法に基づく適正手続(デュー・プロセス)の理念に反する- 13 -ものであり,個別具体的な事案において拒絶理由を通知しないことが,特許出願人にとって自らの責めに起因しない過酷な結果を招来すると認められる場合には,特許法159条2項で準用する同法50条本文に基づく拒絶理由を通知すべき義務に違反するものというべきである。 これを本件についてみれば,本件審決においては,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定において引用文献とされた引用例1に加え,これらにおいて引用文献として挙げられていない引用例2を引用文献とした上で,引用発明1において引用例2の記載事項を適用することにより相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとの理由により,本件補正発明は独立特許要件を欠くから,本件補正は却下されるべきであり,本願は拒絶すべきものである旨判断しているが,このことは,審判の段階において,引用文献が審査の段階から差し替えられて 由により,本件補正発明は独立特許要件を欠くから,本件補正は却下されるべきであり,本願は拒絶すべきものである旨判断しているが,このことは,審判の段階において,引用文献が審査の段階から差し替えられていることを意味し,これに伴って拒絶理由(独立特許要件を満たさない理由)が拒絶理由通知及び拒絶査定におけるものと変更されていることを意味する。 また,本件前置審査では,前記(1)のとおり,審査官は,引用例2のみを引用文献とし,これに基づいて本件補正発明は独立特許要件を欠くと判断していたのであるから,審決の段階においては,前置審査の段階からも,引用文献の差し替え及び拒絶理由(独立特許要件を満たさない理由)の変更が行われていることになる。 前記(1)のとおり,審査の過程において,同様に引用文献の差し替えによる新たな拒絶理由が生じた場合,審査官には,拒絶理由を通知することが義務付けられ,特許出願人には,それに対する反論及び補正の機会が保障されている(特許法50条本文)が,引用文献の差し替えによる新たな拒絶理由の発生という事情においては,審査と審判とで何ら異なるところがなく,むしろ,審判段階では,審査段階とは異なり,拒絶理由が通知されない限り反論及び補正の機会がなく,審判において拒絶審決を受けたときには,もはや再- 14 -補正の機会が与えられることはないので,この点において,出願人である原告にとって審査段階よりも過酷であるといえる。 ところが,本件審判手続においては,原告に対し,引用例1及び引用例2に基づく新たな拒絶理由(独立特許要件を満たさない理由)についての通知はされておらず,そのため,原告にはこれに対する反論及び補正の機会が与えられていない。 加えて,原告は,本件前置審査に係る解除通知を受けた後に特許庁に提出した平成26年10 い理由)についての通知はされておらず,そのため,原告にはこれに対する反論及び補正の機会が与えられていない。 加えて,原告は,本件前置審査に係る解除通知を受けた後に特許庁に提出した平成26年10月16日付け上申書(甲12。以下「本件上申書」という。)において,審判で引用文献を差し替え,審査の段階とは異なる拒絶理由で拒絶をしようとする場合には,事前に拒絶理由を通知して原告に反論及び補正の機会を与えないことは違法であるから,拒絶理由を通知されたい旨を述べていたにもかかわらず,この要求が容れられなかったという事情もある。 したがって,本件審判手続において,審判官が拒絶理由通知をしなかったことは,適正手続の理念に反し,特許法159条2項で準用する同法50条に違反するものであり,このことが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件審決は取り消されるべきである。 第4 被告の主張 1 取消事由1(本件補正発明の独立特許要件の判断の誤り)に対し(1) 「一致点の認定の誤り及び相違点の看過」の主張について原告は,本件補正発明における「便座」の構成について,その挙動が全て自動詞で表現されていることなどを根拠に,蓋板の伏倒及び起立に連動して自動的に本件各挙動を示すように構成されているものである旨主張する。 しかし,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には,「便座」について,「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり」,「蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する- 15 -状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する」と記載されているのみであり,原告が主張するような「自動的に」,「連動して」等の文言は記載されていないから,このような特許請求の範囲の記載 先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する」と記載されているのみであり,原告が主張するような「自動的に」,「連動して」等の文言は記載されていないから,このような特許請求の範囲の記載からは,蓋板の伏倒及び起立に連動して,便座が「自動的に」本件各挙動を示すように構成されているとは解釈できない。原告は,上記主張の根拠として,便座の挙動が自動詞で表現されていることを挙げているが,例えば,「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり」との記載中の「蓋板が伏倒して」との記載では,蓋板の挙動が自動詞で表現されているのに,本件補正発明の蓋板は自動的に伏倒するものではないことからすると,便座の挙動が自動詞で表現されていることが,上記主張の根拠となり得ないことは明らかである。 また,本願明細書(甲1)の記載においては,「また,洋式便器本体2に座って用を足す場合は,図1(a)のように,蓋板6を前方に倒して立ち上がり部3の前面に重ね,便座7を洋式便器本体2の上に重ねればよく,洋式便器本体2を従来の洋式便器と同様に使用することができる。」(段落【0030】)とされており,便器の使用者が,「蓋板6を…立ち上がり部3の前面に重ね,便座7を洋式便器本体2の上に重ね」るものとされており,「蓋板の伏倒時に自動的に便座が便器本体の開口縁に重な」るものとはされていない。 以上によれば,本件補正発明における「便座」について,蓋板の伏倒及び起立に連動して自動的に本件各挙動を示すように構成されているものであるとする原告の主張は,特許請求の範囲及び本願明細書の記載に基づかない主張であって理由がなく,これを前提として,本件審決には本件補正発明と引用発明1との一致点の認定の誤り,相違点の看過があるとする原告の主張には理 張は,特許請求の範囲及び本願明細書の記載に基づかない主張であって理由がなく,これを前提として,本件審決には本件補正発明と引用発明1との一致点の認定の誤り,相違点の看過があるとする原告の主張には理由がない。 (2) 「相違点の容易想到性の判断の誤り」の主張について- 16 -ア 「改変の動機付けがない」との主張について原告は,引用発明1において,蓋板(閉部)の起立状態においてその後面側に位置する便座を前面側に位置するような改変を行うことには,動機付けがなく,むしろ,便座の上面に対する小水の飛散,付着の可能性を潜在的に増加させることになる点において,阻害要因がある旨主張する。 しかし,引用発明1の閉部及び便座においては,閉部及び便座を開放すること,開放時に閉部及び便座を重ね合わせることが重要なのであって,開放時に便座が閉部の前面側と後面側のいずれにあるかは,発明の目的・効果に直接関係がないことである。 しかるところ,引用例1に,引用発明1に係る図6の実施例のほかにも様々な実施例が開示されていることからも明らかなとおり,一つの実施例から他の変形例を作り出すなどの適宜の改変を行い,実施例を増やすことは当業者がなし得る通常の創作能力の発揮であることからすれば,引用発明1において,閉部の起立状態においてその後面側に位置する便座を前面側に位置するような改変を行うことに動機付けがないとはいえず,また,当該改変によって,便座正面に対する小水の飛散,付着の可能性を潜在的に増加させる可能性があるとしても,そのようなことは本質的な事項ではなく,改変を阻害させるほどの事情ではない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 イ 「引用発明1に引用例2の開示事項を適用したとしても,引用発明1との相違点に係る本件補正発明の構成とすることが 改変を阻害させるほどの事情ではない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 イ 「引用発明1に引用例2の開示事項を適用したとしても,引用発明1との相違点に係る本件補正発明の構成とすることが容易であるとはいえない」との主張について原告は,引用例2には,相違点に係る本件補正発明の構成は開示されておらず,引用発明1に引用例2の開示事項を適用したとしても,相違点に係る本件補正発明の構成とすることが容易であるとはいえない旨主張する。 - 17 -この点,引用発明1は,蓋板が起立した際に,便座が蓋板の先端から後面側に垂れ下がるものであるから,引用発明1と本件補正発明とは,「蓋板が起立した際に,便座が蓋板の先端から垂れ下がる」という点では一致し,便座の垂れ下がる方向が後面側か,前面側かという点においてのみ相違する。しかるところ,そもそも引用発明1において,便座が蓋板の先端から垂れ下がる方向は,後面側と前面側の2方向しか存在しないのであるから,これを後面側として用便時に便座を見えないようにして美観の向上を図るか,それとも,前面側として用便時に便座の裏面が使用者に向かないようにするかは,当業者が適宜選択できる事項にすぎない。そして,これを前提とすれば,引用発明1に,引用例2に記載された小便受け用蓋板の前面側に便座が位置する構成を適用することにより,相違点に係る本件補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 2 取消事由2(本願発明の新規性の判断の誤り)に対し原告は,本願発明においても,「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なる便座」とは,蓋板の伏倒に連動して自動的に上記のような挙動を示すように構成されているもので 本願発明においても,「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なる便座」とは,蓋板の伏倒に連動して自動的に上記のような挙動を示すように構成されているものであることを要するとの前提に立った上で,引用発明1がこれに相当する構成を有していないことから,引用発明1と本願発明とが同一であるとはいえない旨主張する。 しかしながら,原告の上記主張がその前提において理由がないことは,前記1(1)において述べたとおりである。 3 取消事由3(手続違背)に対し(1) 「本件前置審査において拒絶理由通知をしなかった手続の違法」の主張について原告は,本件前置審査において,審査官が拒絶理由を通知しなかったこと- 18 -は,適正手続の理念に反し,特許法163条2項で準用する同法50条に違反する旨主張する。 しかし,審査前置制度の趣旨や前置審査に係る特許法164条の規定からすれば,前置報告は,審判合議体による適正な審理の参考に供するために行われるものであり,審査官は,同条1項に規定する場合を除き,拒絶査定不服審判の請求について査定をすることなく,その審査の結果を特許庁長官に報告しなければならないのであるから,その際に,特許出願人への拒絶理由の通知を必要とするものではない。 したがって,本件前置審査において審査官が拒絶理由を通知しなかったことに手続上の違法はないから,この点に関する手続の違法をいう原告の主張は理由がない。 (2) 「本件審判手続において拒絶理由通知をしなかった手続の違法」の主張についてア原告は,本件審判手続において,審判官が拒絶理由通知をしなかったことは,適正手続の理念に反し,特許法159条2項で準用する同法50条に違反する違法がある旨主張する。 しかしながら,特許法1 ア原告は,本件審判手続において,審判官が拒絶理由通知をしなかったことは,適正手続の理念に反し,特許法159条2項で準用する同法50条に違反する違法がある旨主張する。 しかしながら,特許法159条2項において読み替えて準用する同法50条ただし書の規定からすれば,拒絶査定不服審判の請求と同時にした明細書等の補正について,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により補正の却下の決定をするときには,独立特許要件に係る拒絶の理由がたとえ査定の理由と異なるものであったとしても,審判請求人に対し,その拒絶の理由を通知し意見書を提出する機会を与える必要がないことは,条文の規定から明らかであるから,本件審判手続において,審判官が拒絶理由を通知しなかったことに何ら違法はない。 イこの点,原告は,本件審決が,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定において引用文献とされた引用例1に加え,これらにおいては引用文献とされ- 19 -なかった引用例2を引用文献とし,これらの文献に基づいて本件補正発明は独立特許要件を欠くと判断していることは,審判の段階において,拒絶理由(独立特許要件を満たさない理由)が差し替えられていることを意味するから,それにもかかわらず,審判官が,原告に対し,拒絶理由の通知を行わず,反論及び補正の機会を与えなかったことは,適正手続の理念に反し,違法である旨主張する。 しかしながら,本件補正の内容となる構成は,本願発明の特徴を何ら変更するものではなく,当業者にとっての周知技術や技術常識を適用したような限定であって,本件補正前の構成に比して大きく限定されたものではない。また,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定の理由と本件審決が独立特許要件を欠くと判断した理由とは同趣旨のものであって,異なる拒絶理由とはいえないか 件補正前の構成に比して大きく限定されたものではない。また,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定の理由と本件審決が独立特許要件を欠くと判断した理由とは同趣旨のものであって,異なる拒絶理由とはいえないから,本件審判手続において,審判官が拒絶理由を通知しなかったことに,適正手続の理念に反する違法があるということはできない。 ウ以上によれば,本件審判手続において,審判官が拒絶理由を通知しなかったことに手続上の違法はないから,この点に関する手続の違法をいう原告の主張は理由がない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件補正発明の独立特許要件の判断の誤り)について(1) 本願明細書の記載事項等についてア本件補正発明の特許請求の範囲の請求項1の記載は,前記第2の2(2)のとおりである。 イ本願明細書(甲1)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙1を参照)。 (ア) 【技術分野】【0001】- 20 -この発明は,洋式便器本体の後方の位置に,男子の放尿時の小水受けとなる立ち上がり部を設けた洋式便器に関する。 (イ) 【背景技術】【0002】一般に,洋式便器は,洋式便器本体の上部周縁の上面がフラットに形成され,この洋式便器本体の上部周縁の後部位置に便座と便座カバーを起伏自在に取付けた構造を有し,洋式便器本体の上に倒した便座に座って用便を行うものであるが,男性は放尿時に立って放尿するため,その時は便座カバーと便座を起こすようにしている。 【0003】ところで,男性の放尿は身体構造上,小水の方向が定まりにくく,洋式便器本体の外部に小水が飛び散りやすいものであるが,通常は本人が注意をすれば飛び散りを極力防ぐことができる。 【0004】しかし,男性の場合,特に子供の場合は,寝 水の方向が定まりにくく,洋式便器本体の外部に小水が飛び散りやすいものであるが,通常は本人が注意をすれば飛び散りを極力防ぐことができる。 【0004】しかし,男性の場合,特に子供の場合は,寝起きのときには生理現象で前方へ勢いよく放尿する状態になっているので,洋式便器本体の前に立って放尿すると本人が注意をしていても,洋式便器本体の後方位置にまで小水が届くことになり,このため,洋式便器本体の周縁上面だけでなく,起立させた便座やその後ろに起立する便座カバーまで小水で汚すという問題がある。 【0005】このような便器の汚れ発生を防ぐため,便器本体内の後部から跳ね上げた便座の裏面に紙製の飛散防止カバーを立てかけるように取付け,この飛散防止カバーで小水による汚れを防ぎ,用便後はこれを水洗にながすことが提案されている…。 (ウ) 【発明が解決しようとする課題】- 21 -【0006】ところで,上記のような飛散防止カバーの使用は,取付けに手間がかかり,小便が急を要するときには使用が間に合わないだけでなく,こどもの場合,故意にカバーへ小水をかけることで,実際には便器を汚したり,処理するときに手が汚れることになり,しかも,一回ごとの使い捨てになるので,経済的にも資源的にも不都合がある。 【0007】そこでこの発明の課題は,洋式便器に男性用小水便器の機能を付加し,飛散防止カバーを使用する必要がなく,洋式便器本体の後方位置にまで届いた小水で,洋式便器本体の周縁上面だけでなく,起立させた蓋板や便座,便座カバーを汚すことがない洋式便器を提供することにある。 (エ) 【課題を解決するための手段】【0008】上記のような課題を解決するために,この発明は,洋式便器本体の後部位置に,その前面の開口縁が洋式便器本体の上端開口部 を提供することにある。 (エ) 【課題を解決するための手段】【0008】上記のような課題を解決するために,この発明は,洋式便器本体の後部位置に,その前面の開口縁が洋式便器本体の上端開口部周縁の後部両側から連なって,この洋式便器本体の内部と連なる延長状態で上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設けて洋式便器が形成され,この立ち上がり部の上端部に,便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取付けられ,伏倒位置で前記立ち上がり部の前面を閉鎖し,起立位置で立ち上がり部の前面を開放する蓋板を設け,この蓋板の先端部に,蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なる便座を,蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏動自在に取付けた構成を採用したのである。 【0010】ここで,上記洋式便器本体は,上端開口部の前半に位置する周縁が水平となり,この上端開口部周縁の中程から後部が上方へ弧を描いて立ち- 22 -上がり,この立ち上がり部は前面開口が周縁で囲まれた溝状となって洋式便器本体の内部と連通し,立ち上がり部に対する小水を洋式便器本体の内部に導入することができるようになっている。 【0012】…蓋板は,立ち上がり部の上端面に固定した取付けベースに上端部をヒンジ機構で取付け,その伏倒時に立ち上がり部の前面を閉鎖して先端下縁が,洋式便器本体の上面後部に位置するようになっている。 (オ) 【発明の効果】【0013】この発明によると,洋式便器本体の上端開口部の周縁で後方の位置に,上方に延びる立ち上がり部を洋式便器本体内と連通するように設けたので,男性の放尿時に,洋式便器本体の後方位置にまで届いた小水を立ち上がり部で捕捉して洋式便器本体の内部に導入することができ,洋式便器本体の周囲床面や 上がり部を洋式便器本体内と連通するように設けたので,男性の放尿時に,洋式便器本体の後方位置にまで届いた小水を立ち上がり部で捕捉して洋式便器本体の内部に導入することができ,洋式便器本体の周囲床面や洋式便器本体の周縁上面だけでなく,起立させた蓋板や便座,その後ろの便座カバーを小水で汚すことがなくなり,便器を衛生的に保つことができる。 【0014】また,立ち上がり部の前面を開閉する蓋板の先端に便座を取付けたので,洋式便器本体上に座った状態で用便が支障なく行なえると共に,蓋板を跳ね上げれば,立ち上がり部の前面から洋式便器本体の上面が同時に開放されることになり,急ぐ場合の放尿に対して速やかに対応することができる。 (カ) 【発明を実施するための最良の形態】【0016】図示のように,この発明の洋式便器1は,洋式便器本体2の上端開口部の周縁2aで後方の位置に,この洋式便器本体2の内部と連なる延長- 23 -状態で上方に延びる立ち上がり部3を設けて形成されている。…【0017】上記洋式便器本体2は,上端開口部の前半に位置する周縁2aが水平となり,この上端開口部周縁2aの中程から後部が立ち上がり部3となって上方へ弧を描いて立ち上がり,この立ち上がり部3は,前面の周縁3aで囲まれた部分が後方に凹入する横断面溝状となって洋式便器本体2の内部と連通し,小水を洋式便器本体2の内部に導入することができるようになっている。 【0018】この立ち上がり部3は,図示の場合,洋式便器本体2の水平となる周縁2aの最大幅の部分から,そのままの幅で弧状に立ち上がって前面の周縁3aが下向きコ字状となり,上端部が水平となる形状になっている。 【0019】図1(a)と(b)は,水洗方式として水洗水を貯留するロータンク4を組合わせた洋式 幅で弧状に立ち上がって前面の周縁3aが下向きコ字状となり,上端部が水平となる形状になっている。 【0019】図1(a)と(b)は,水洗方式として水洗水を貯留するロータンク4を組合わせた洋式便器1の例を示し,立ち上がり部3の背面下部に突設した支持台5上にロータンク4を載置するようにしている。 【0021】上記洋式便器1における立ち上がり部3の上端部に,洋式便器1の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取付けられ,伏倒位置で前記立ち上がり部3の前面を閉鎖し,起立位置で立ち上がり部3の前面を開放する蓋板6を設け,この蓋板6の先端部に,蓋板6が伏倒して立ち上がり部3の前面を閉鎖する状態で,洋式便器本体2の上端開口部周縁2a上に重なる便座7と,同じく蓋板6の先端部に,便座7の上面に重なる状態から洋式便器1の後方に跳ね上げることができる便座カバー8が取付けられている。 【0022】- 24 -…蓋板6は立ち上がり部3の前面形状に合うように下部が少し湾曲し,立ち上がり部3の上端面に固定した取付けベース9に上端部をヒンジ機構10で取付け,その伏倒時に立ち上がり部3の前面を閉鎖して先端下縁が,洋式便器本体2の上面後部に位置するようになっている。 【0023】上記便座7は…蓋板6の先端に後端部をヒンジ機構11で取付け,蓋板6に対して洋式便器1の前後方向に沿う上下に回動自在となり,…図1(a)のように,蓋板6が立ち上がり部3の前面を閉鎖した伏倒状態で,便座7は洋式便器本体2の上面に重なり,…【0024】また,図1(b)のように,蓋板6を立ち上がり部3の上部に跳ね上げると,便座7と便座カバー8は,重なり状態で蓋板6の先端から前面側に垂れ下がり,これによって,立ち上がり部3の前面と洋式便器本体2の上面が開放される。 に,蓋板6を立ち上がり部3の上部に跳ね上げると,便座7と便座カバー8は,重なり状態で蓋板6の先端から前面側に垂れ下がり,これによって,立ち上がり部3の前面と洋式便器本体2の上面が開放される。 (キ) 【0025】図2(a)と(b)は,蓋板6を立ち上がり部3の上部に跳ね上げた状態で,便座7と便座カバー8を,蓋板6の後方位置に倒し込むことができるようにし,用便時に便座7と便座カバー8を見えないようにすることで美観の向上を図るようにした例を示している。 (ク) 【0028】この発明の洋式便器1は,上記のような構成であり,男性の小用の場合は,洋式便器本体2の前に立ち,図1(b)のように,蓋板6を跳ね上げて起こし,便座7と便座カバー8を上昇位置に保持し,立ち上がり部3の前面と洋式便器本体2の上面を開放した状態で,洋式便器本体2内に放尿する。 【0029】- 25 -洋式便器1は,洋式便器本体2の上端開口部の周縁2aで後方の位置に,横断面が溝形となる立ち上がり部3が上方に延びるように設けてあるので,前方に向けて勢いよく放尿された場合に,洋式便器本体2の後方位置にまで届いた小水が立ち上がり部3で捕捉され,小水をこの立ち上がり部3で洋式便器本体2の内部に導入することができ,従って,洋式便器本体2の周囲床面や洋式便器本体2の周縁2a上面だけでなく,起立させた蓋板6や便座7,便座カバー8を小水で汚すことがなくなり,汚した洋式便器本体2を掃除する手間が省け,トイレ室内及び洋式便器1を衛生的に保つことができる。 【0030】また,洋式便器本体2に座って用を足す場合は,図1(a)のように,蓋板6を前方に倒して立ち上がり部3の前面に重ね,便座7を洋式便器本体2の上に重ねればよく,洋式便器本体2を従来の洋式便器と同様に使用する 洋式便器本体2に座って用を足す場合は,図1(a)のように,蓋板6を前方に倒して立ち上がり部3の前面に重ね,便座7を洋式便器本体2の上に重ねればよく,洋式便器本体2を従来の洋式便器と同様に使用することができる。 ウ前記ア及びイの記載を総合すれば,本願明細書(甲1)には,本件補正発明に関し,次の点が開示されていることが認められる。 (ア) 一般に,洋式便器は,本体の上部周縁の上面がフラットに形成され,その上部周縁の後部位置に便座と便座カバーを起伏自在に取付けた構造を有し,本体の上に倒した便座に座って用便を行うものであるが,男性は放尿時に立って放尿するため,その時は便座カバーと便座を起こすようにしている。しかし,男性の場合,特に子供の場合は,寝起きのときには生理現象で前方へ勢いよく放尿する状態になっているので,洋式便器本体の前に立って放尿すると,本体の後方位置にまで小水が届くことになり,本体の周縁上面だけでなく,起立させた便座やその後ろに起立する便座カバーまで小水で汚すという問題がある。また,このような便器の汚れ発生を防ぐため,跳ね上げた便座の裏面に飛散防止カバーを取- 26 -付ける方法もあるが,取付けに手間がかかり,経済的にも資源的にも不都合があるなどの問題がある。 (イ) 本件補正発明は,上記の問題を解決し,洋式便器に男性用小水便器の機能を付加し,飛散防止カバーを使用する必要がなく,洋式便器本体の後方位置にまで届いた小水で,本体の周縁上面だけでなく,起立させた蓋板や便座,便座カバーを汚すことがない洋式便器を提供することを課題とするものである。 本件補正発明は,上記課題を解決するための手段として,洋式便器本体の後部位置に,上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設け,この立ち上がり部の上端部に,便器の前後方向に沿って起伏動 るものである。 本件補正発明は,上記課題を解決するための手段として,洋式便器本体の後部位置に,上方に延びる小水受け用の立ち上がり部を設け,この立ち上がり部の上端部に,便器の前後方向に沿って起伏動自在となるよう取り付けられ,伏倒位置で前記立ち上がり部の前面を閉鎖し,起立位置で立ち上がり部の前面を開放する蓋板を設け,この蓋板の先端部に,蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で本体の上端開口部周縁上に重なり,蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって本体の上面を開放する便座を,蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏動自在に取付けるという構成を採用したものである。 (ウ) 本件補正発明は,洋式便器本体の後部位置に上記のような立ち上がり部を設けることにより,男性の放尿時に,洋式便器本体の後方位置にまで届いた小水を立ち上がり部で捕捉して本体の内部に導入することができ,本体の周囲床面や本体の周縁上面だけでなく,起立させた蓋板や便座,その後ろの便座カバーを小水で汚すことがなくなり,便器を衛生的に保つことができるという効果を奏し,また,立ち上がり部の前面を開閉する蓋板の先端に便座を取り付けることにより,洋式便器本体上に座った状態で用便が支障なく行なえるとともに,蓋板を跳ね上げれば,立ち上がり部の前面から洋式便器本体の上面が同時に開放されることに- 27 -なり,急ぐ場合の放尿に対して速やかに対応することができるという効果を奏するものである。 (2) 引用例1の記載事項について引用例1(甲4)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙2を参照)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は,便器開口部に水平面からの傾斜部を設け,便座には前記傾斜部を覆う開閉自在 ,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙2を参照)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は,便器開口部に水平面からの傾斜部を設け,便座には前記傾斜部を覆う開閉自在の閉部を設けた便器及びその便座に関する。 イ 【背景技術】【0002】従来の便器では,小便器においては,使用目的が立式小便のみにおかれ,洋式大便器においては,立式座式兼用ではあるものの,便器開口部全体が水平で便座の開閉のみにて,立式小便に対応している。 ウ 【発明が解決しようとする課題】【0003】従来の洋式大便器にあっては,立式小便時に小便の飛散が多々有り,飛散防止ガード等も考案されているが,衛生面や維持費用,清掃時の負担に問題点があった。 【0004】本発明は座式大小便に対応し,立式小便時にも小便の飛散を防止し,衛生的で維持費用,清掃時の負担の軽減等,洋式大便器と小便器の両方の利点を合わせもち,さらに座式大小便時の安定感を提供することを目的としている。 エ 【課題を解決するための手段】【0005】- 28 -上記目的を達成するために,本発明の便器及びその便座においては,便器開口部に水平面からの傾斜部を設け,便座には前記傾斜部を覆う開閉自在の閉部を設けたものである。 オ 【発明を実施するための最良の形態】【0009】発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。 図1,2,3において,便器本体1の開口部2に水平面からの傾斜部3を設け,便座4には傾斜部3を覆う閉部5を設け,閉部5の上端を便器本体1に取り付け部6によって取り付ける。 【0010】図4,5,6に示される実施例では,便座11に折り畳み部13を設ける。 カ 【発明の効果】【0019】便器本体の開口部に水 器本体1に取り付け部6によって取り付ける。 【0010】図4,5,6に示される実施例では,便座11に折り畳み部13を設ける。 カ 【発明の効果】【0019】便器本体の開口部に水平面からの傾斜部を設けることにより,立式小便としての使用時には,閉部及び便座を開けると,小便器と同様の飛散防止及び水洗効果を得ることができる。 【0020】また,便座に傾斜部を覆う閉部を設けることにより,座式大小便としての使用時には,閉部及び便座を閉めると,洋式大便器と同様に,傾斜部の衛生面等を気にすることなく使用でき,かつ同様の水洗効果を得ることができる。 【0021】そして,便座に折り畳み部を設けることにより立式小便使用時に便座を開ける為のスペースを小さくすることができる(3) 一致点の認定の誤り及び相違点の看過の有無について- 29 -原告は,本件補正発明における「便座」の「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり,蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する」との構成について,蓋板の伏倒及び起立に連動して自動的に「洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり」及び「蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する」との各挙動(本件各挙動)を示すものに限定されるとの前提に立った上で,引用発明1における便座は,蓋板(閉部)の伏倒及び起立に連動して自動的に本件各挙動を示すものではないから,本件審決が,「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり,蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放す 板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり,蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する便座」の構成を本件補正発明と引用発明1の一致点と認定したことは誤りであり,ひいては相違点の看過がある旨主張するので,以下検討する。 アまず,本件補正発明に係る特許請求の範囲(請求項1)には,「便座」の構成については,「蓋板の先端部に,蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態で洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なり,蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態で蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する便座を,蓋板に対して便器の前後方向に対して起伏動自在に取付けた」と記載されているが,蓋板の伏倒及び起立に際して,便座が蓋板の動きに連動して自動的に本件各挙動を示すことについての記載はない。 この点,原告は,上記記載において,蓋板の伏倒及び起立に際しての便座の挙動について,「重なり」,「垂れ下がって」及び「開放する」といった自動詞で表現されていることをその主張の根拠とするが,自動詞による表現であることが,直ちに原告主張のような解釈につながるものとはい- 30 -えない。 むしろ,上記記載については,「蓋板が伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する状態」にある際に,便座が「洋式便器本体の上端開口部周縁上に重な」る状態となり,また,「蓋板が起立して立ち上がり部の前面を開放する状態」にある際に,便座が「蓋板の先端から前面側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する」状態となるという,蓋板の状態に応じた便座の状態を表したものと解するのが自然な解釈というべきである。 イ(ア) 次に,本願明細書(甲1)の記載をみても 側に垂れ下がって洋式便器本体の上面を開放する」状態となるという,蓋板の状態に応じた便座の状態を表したものと解するのが自然な解釈というべきである。 イ(ア) 次に,本願明細書(甲1)の記載をみても,本件補正発明における便座について,蓋板の伏倒及び起立に連動して自動的に本件各挙動を示すものであることを明示する記載はない。 かえって,本願明細書の段落【0030】には,実施例の説明として,「洋式便器本体2に座って用を足す場合は,図1(a)のように,蓋板6を前方に倒して立ち上がり部3の前面に重ね,便座7を洋式便器本体2の上に重ねればよく,洋式便器本体2を従来の洋式便器と同様に使用することができる。」との記載があるところ,この記載においては,起立した蓋板を伏倒して立ち上がり部の前面を閉鎖する際に,使用者が,「蓋板6を前方に倒して立ち上がり部3の前面に重ね」るとともに,「便座7を洋式便器本体2の上に重ね」る操作を行うことが示されているものといえる。 (イ) 原告は,本願明細書の記載のうち,①「蓋板を跳ね上げれば,立ち上がり部の前面から洋式便器本体の上面が同時に開放されることになり,急ぐ場合の放尿に対して速やかに対応することができる。」(段落【0014】,②「図1(a)のように,蓋板6が立ち上がり部3の前面を閉鎖した伏倒状態で,便座7は洋式便器本体2の上面に重なり,便座カバー8は便座7に対して起伏回動できるようになる。」(段落【0023】),③「図1(b)のように,蓋板6を立ち上がり部3の上部に跳ね上- 31 -げると,便座7と便座カバー8は,重なり状態で蓋板6の先端から前面側に垂れ下がり,これによって,立ち上がり部3の前面と洋式便器本体2の上面が開放される。」(段落【0024】)との各記載によって,原告の前記主張が根拠付けられる旨主 重なり状態で蓋板6の先端から前面側に垂れ下がり,これによって,立ち上がり部3の前面と洋式便器本体2の上面が開放される。」(段落【0024】)との各記載によって,原告の前記主張が根拠付けられる旨主張する。 しかし,上記①ないし③の各記載は,いずれも,前記アで述べたとおりの蓋板の伏倒又は起立の状態に応じた便座の状態を述べたものとして理解し得る記載であり,これらの記載から,本件補正発明における便座について,蓋板の伏倒及び起立に連動して自動的に本件各挙動を示すものに限定されるとの趣旨が読み取れるとはいえない。 また,原告は,別紙1の図1(a)及び図1(b)に示された洋式便器の構造からすると,図1(b)の状態から蓋板を下方に回動させると,便座はその先端から洋式便器本体の上面に接し,蓋板をさらに下方に回動させると,便座はヒンジ機構11を中心に水平の向きに自動的に回動して,洋式便器本体の上面に重なることが自然に理解できるなどとして,これらの図面によって原告の前記主張が根拠付けられる旨主張する。 しかし,本願明細書における図1(a)及び図1(b)に関係する記載を見ても,便座7については,「蓋板6の先端に後端部をヒンジ機構11で取付け,蓋板6に対して洋式便器1の前後方向に沿う上下に回動自在となり,…図1(a)のように,蓋板6が立ち上がり部3の前面を閉鎖した伏倒状態で,便座7は洋式便器本体2の上面に重なり」(段落【0023】),「また,図1(b)のように,蓋板6を立ち上がり部3の上部に跳ね上げると,便座7と便座カバー8は,重なり状態で蓋板6の先端から前面側に垂れ下がり,これによって,立ち上がり部3の前面と洋式便器本体2の上面が解放される。」(段落【0024】)との記載があるのみであり,図1(b)の状態から蓋板を下方に回動させた場合の便座7 ら前面側に垂れ下がり,これによって,立ち上がり部3の前面と洋式便器本体2の上面が解放される。」(段落【0024】)との記載があるのみであり,図1(b)の状態から蓋板を下方に回動させた場合の便座7の挙動が原告主張のとおりであることを示す記載はなく,また,図1(a)及び図1(b)- 32 -に示された便器の構造のみから直ちに,便座7が原告主張のとおりの挙動を示すものであることが明らかであるともいえない。また,仮に,図1(a)及び図1(b)から,便座7が原告主張のとおりの挙動を示すものであることが理解できるとしても,これらの図面は,本件補正発明の一実施例を示すものにすぎないから,これのみによって,本件補正発明の便座の構成を上記のとおり限定して解釈する原告の主張が根拠付けられるものとはいえない。 ウ以上によれば,本件補正発明に係る特許請求の範囲(請求項1)の記載及び本願明細書の記載に基づいて,本件補正発明における「便座」の構成について,原告主張のように,蓋板の伏倒及び起立に連動して自動的に本件各挙動を示すものに限定されると解することはできない。そうすると,このような限定解釈を前提として,本件審決における本件補正発明と引用発明1の一致点の認定に誤りがあり,ひいては相違点の看過があるとする原告の主張は,その前提において理由がないものといえる。 (4) 相違点の容易想到性の判断の誤りの有無についてア相違点の容易想到性について前記(2)の引用例1の記載事項によれば,引用例1には,引用発明1に関し,①従来の洋式大便器においては,立式小便時に小便の飛散が多々有り,飛散防止ガード等も考案されているが,衛生面や維持費用,清掃時の負担に問題点があったことから,「本発明」は,座式大小便に対応し,立式小便時にも小便の飛散を防止し,衛生的で維 に小便の飛散が多々有り,飛散防止ガード等も考案されているが,衛生面や維持費用,清掃時の負担に問題点があったことから,「本発明」は,座式大小便に対応し,立式小便時にも小便の飛散を防止し,衛生的で維持費用,清掃時の負担の軽減等,洋式大便器と小便器の両方の利点を合わせもち,更に座式大小便時の安定感を提供することを課題とし,その課題を解決するための手段として,便器本体の開口部に水平面からの傾斜部を設け,便座に傾斜部を覆う閉部を設ける構成を採用したこと(段落【0003】ないし【0005】),②このように便器本体の開口部に水平面からの傾斜部を設けることにより,- 33 -立式小便としての使用時には,閉部及び便座を開けると,小便器と同様の飛散防止及び水洗効果を得ることができるとの効果(段落【0019】)を,便座に傾斜部を覆う閉部を設けることにより,座式大小便としての使用時には,閉部及び便座を閉めると,洋式大便器と同様に,傾斜部の衛生面等を気にすることなく使用でき,かつ同様の水洗効果を得ることができるとの効果(段落【0020】)を,更には,便座に折り畳み部を設けることにより,立式小便使用時に便座を開けるためのスペースを小さくすることができるとの効果(段落【0021】)を,それぞれ奏することが開示されていることが認められる。 以上のような引用例1の開示事項によれば,引用発明1において,閉部及び便座の構成として重要なことは,閉部及び便座が傾斜部を開閉するものであり,かつ,傾斜部を開放した際には,便座を開けるためのスペースが小さくなるように,閉部に対して便座が折り畳まれるということにあるものと解される。他方で,閉部に対して便座が折り畳まれる際,便座が折り畳まれる方向が,閉部の後面側か前面側かという点は,上記のような引用発明1の効果に直接関わる て便座が折り畳まれるということにあるものと解される。他方で,閉部に対して便座が折り畳まれる際,便座が折り畳まれる方向が,閉部の後面側か前面側かという点は,上記のような引用発明1の効果に直接関わる事項ではなく,また,引用例1の図6(別紙2参照)によれば,引用発明1において,閉部12が起立した際に便座11が折り畳まれる方向は閉部の後面側と前面側しかないことが明らかであるから,便座を開けるためのスペースが小さくなるようにするために,これをいずれとするかは,当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎないというべきである。 そうすると,引用例1に接した当業者は,引用発明1において,閉部が起立した際に,便座が閉部の先端から後面側に垂れ下がる構成を,便座が閉部の先端から前面側に垂れ下がる構成(相違点に係る本件補正発明の構成)に置き換えることを容易に想到することができたものと認められる。 イ原告の主張について- 34 -原告は,①引用発明1において,閉部(本件補正発明の「蓋板」に相当)が起立した際に,その後面側に位置する便座を,前面側に位置するように改変する動機付けはなく,かえって阻害要因があること,②引用例2には相違点に係る本件補正発明の構成は開示されていないから,引用発明1において,引用例2の開示事項を適用することにより相違点に係る本件補正発明の構成とすることが容易であるとはいえないことを理由として,引用発明1において,引用例2の記載事項を採用することにより,相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとした本件審決の判断は誤りである旨を主張する。 しかしながら,上記①の点については,引用発明1において,閉部が起立した際に,その後面側に位置する便座の構成を,前面側に位置する構成とした場合であって た本件審決の判断は誤りである旨を主張する。 しかしながら,上記①の点については,引用発明1において,閉部が起立した際に,その後面側に位置する便座の構成を,前面側に位置する構成とした場合であっても,便座が閉部の前面側に折り畳まれて垂れ下がる態様いかんによっては,便座の上面に対する小水の飛散,付着の可能性が当然に増加するものとはいえないし,また,仮に上記可能性の潜在的な増加が認められるとしても,引用発明1の効果と直接関わる事項ではないから,これをもって上記構成とすることに阻害要因があるとまではいえない。 次に,上記②の点については,前記アのとおり,引用発明1において,閉部が起立した際に,閉部の先端から後面側に折り畳まれて垂れ下がっている便座を,前面側に折り畳まれて垂れ下がるように構成することは,当業者が適宜行う設計的事項の範囲内のものにすぎないから,引用例2に上記構成が開示されているかどうかは,相違点に係る本件補正発明の構成の容易想到性の判断を左右するものではない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (5) 小括以上のとおり,本件補正発明は,引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものと認める。 - 35 -したがって,本件補正発明は独立特許要件を欠くとした本件審決の判断は結論において誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本願発明の新規性の判断の誤り)について原告は,本願発明における「便座」の構成についても,本件補正発明と同様に,蓋板の伏倒に連動して自動的に「洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なる」との挙動を示すものに限定されるとの前提に立った上で,引用発明1における「便座」はこれに相当する構成を有しないから,本願発明は引用例1に記載された発明 的に「洋式便器本体の上端開口部周縁上に重なる」との挙動を示すものに限定されるとの前提に立った上で,引用発明1における「便座」はこれに相当する構成を有しないから,本願発明は引用例1に記載された発明であり,新規性を欠くとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。 しかしながら,本願発明における「便座」の構成が,原告主張のようなものに限定されるものでないことは,前記1(3)において,本件補正発明について述べたとおりであるから,原告の上記主張は,その前提において理由がないものといえる。 したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(手続違背)について(1) 本件前置審査において拒絶理由通知をしなかった手続の違法の有無について原告は,本件前置審査において,審査官は,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定で引用文献として挙げられていない引用例2を唯一の引用文献として,本件補正発明が新規性を欠き,独立特許要件を満たしていないとの判断をし,その旨を本件前置報告書に示しているにもかかわらず,本件前置審査の手続において,原告に対し,本件補正発明について,引用例2に基づく拒絶理由(独立特許要件を満たさない理由)の通知をしなかったことは,適正手続の理念に反し違法である旨主張する。 そこで検討するに,特許法163条2項及び同項が準用する同法50条本文の規定によれば,前置審査において,審査官が審判の請求に係る査定の理- 36 -由と異なる拒絶の理由を発見した場合には,特許出願人(審判請求人)に対し,拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならないものとされるが,他方で,拒絶査定不服審判の請求と同時にされた補正(同法17条の2第1項4号)について,同法53条1項の規定に基づき,同法17条の 定して,意見書を提出する機会を与えなければならないものとされるが,他方で,拒絶査定不服審判の請求と同時にされた補正(同法17条の2第1項4号)について,同法53条1項の規定に基づき,同法17条の2第3項から6項までの規定に違反していることを理由に,その補正の却下の決定をする場合には,特許出願人(審判請求人)に拒絶理由を通知しなければならないとはされていない(同法50条ただし書)。 また,特許法164条は,前置審査における事件の最終処理の方法について,審査官は,特許をすべき旨の査定をするときは,審判の請求に係る拒絶をすべき旨の査定を取り消さなければならない(1項)と規定する一方で,1項に規定する場合以外には,補正についての却下の決定をしてはならず(2項),また,審判の請求について査定をすることなくその審査の結果を特許庁長官に報告しなければならない(3項)と規定している。 以上のような特許法の規定内容からすれば,前置審査において,審査官が特許をすべき旨の査定をする場合以外に事件の最終処理として行われる審査官から特許庁長官への報告(前置報告)は,審判官による審理の参考に供するために行われるものであって,当該報告の内容が,拒絶査定不服審判における審判官の判断を拘束するものではなく,また,審判請求人に対して何らかの法的効力を及ぼすものでもないと解される。 このように前置審査及びこれに基づく前置報告が,その性質上,審判請求人に対して法的効力を及ぼさない,特許庁の内部的な手続にすぎないことからすると,審査官が本件前置審査の際に,原告に対し,引用例2に基づく拒絶理由(独立特許要件を満たさない理由)の通知を行わなかったとしても,それによって原告の手続保障に欠ける状況が生じるものではないものと認められる。 - 37 -以上によれば,原告 2に基づく拒絶理由(独立特許要件を満たさない理由)の通知を行わなかったとしても,それによって原告の手続保障に欠ける状況が生じるものではないものと認められる。 - 37 -以上によれば,原告の上記主張は理由がない。 (2) 本件審判手続において拒絶理由通知をしなかった手続の違法の有無について原告は,本件審決においては,本件拒絶理由通知及び本件拒絶査定において引用文献とされた引用例1に加え,これらにおいて引用文献として挙げられていない引用例2を引用文献とした上で,引用発明1において引用例2の記載事項を適用することにより相違点に係る本件補正発明の構成とすることが当業者において容易に想到し得たことを理由として,本件補正発明の独立特許要件充足性を否定し,本件補正を却下すべき旨判断しているにもかかわらず,本件審判手続において,原告に対し引用例1及び引用例2に基づく新たな拒絶理由(独立特許要件を満たさない理由)の通知をしなかったことは,適正手続の理念に反し違法である旨主張する。 そこで検討するに,本件のように,拒絶査定不服審判において,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正が行われ,当該補正後の発明について独立特許要件を判断する場合に,審判官が,査定の理由とは異なる拒絶理由を発見し,その理由に基づいて当該補正を却下するという場合においては,前記(1)で述べたように,特許法の規定上は,審判官から特許出願人(審判請求人)に拒絶理由を通知しなければならないとはされていないが(特許法159条2項,50条ただし書,53条1項,17条の2第6項,126条7項),その具体的な事実関係のいかんによっては,あらかじめ審判請求人に対し当該拒絶理由を通知し,意見書の提出及び補正の機会を与えるのでなければ,審判請求人にとって酷な結果となり,その手続保 26条7項),その具体的な事実関係のいかんによっては,あらかじめ審判請求人に対し当該拒絶理由を通知し,意見書の提出及び補正の機会を与えるのでなければ,審判請求人にとって酷な結果となり,その手続保障に欠け,適正手続の理念に反するものと評価される場合もあり得ると考えられる。 そこで,本件拒絶査定の理由と本件審決の判断とを対比検討するに,本件拒絶査定の理由は,本件拒絶理由通知の理由と同一であり,その中には,本願発明について,引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明- 38 -することができたものであるから,特許法29条2項により特許を受けることができないとの理由がある。他方,本件審決は,本件補正発明について,引用例1に記載された発明及び引用例2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項により独立特許要件を欠くとして,本件補正を却下すべき旨判断している。 したがって,本件拒絶査定の理由と本件審決が本件補正発明の独立特許要件充足性を否定した理由とは,引用発明1に基づき進歩性が欠如するとした点においては同一であるが,本件審決が本件拒絶査定の理由には挙げられていない引用例2の記載事項を加えて上記判断をしている点において異なるものである。 そして,本件審決は,引用発明1において,起立した閉部の先端から,閉部の下面と便座の下面とが対向するように前面側に便座を垂れ下がらせて,相違点に係る本件補正発明の構成とすることが当業者において容易に想到し得たことであるとの結論を導き出すに当たって,引用例2に開示された「蓋板が起立した際に,便座が蓋板の前面側に位置する」洋式便器の構成を適用したものである。 しかるところ,前記1(4)アで述べたとおり,引用発明1において,閉部が起立した際に,その後 に開示された「蓋板が起立した際に,便座が蓋板の前面側に位置する」洋式便器の構成を適用したものである。 しかるところ,前記1(4)アで述べたとおり,引用発明1において,閉部が起立した際に,その後面側に折り畳まれている便座を,前面側に折り畳まれるようにし,便座が閉部の先端から前面側に垂れ下がる構成(相違点に係る本件補正発明の構成)とすることは,当業者が適宜行う設計的事項の範囲内のものにすぎないものといえるのであり,これを前提とすれば,引用例2は,引用発明1において相違点に係る本件補正発明の構成を採用するために不可欠の引用例として位置付けられるものではないというべきである。 以上のような引用例2の位置付けからすれば,本件審決が,本件拒絶査定には挙げられていない引用例2の記載事項を加えて本件補正発明の独立特許要件充足性を否定したことは,本件拒絶査定に対して,新たな公知文献を加- 39 -え,実質的に異なる理由によって上記判断をしたものということはできない。 また,原告は,本件審判手続において提出した本件上申書(甲12)において,本件補正発明は,引用例2に記載された発明であるから,特許法29条1項3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができず,本件補正は却下されるべきものである旨の本件前置報告書(甲10)の記載に関し,「新引用文献」(引用例2)に開示された発明の認定自体がそもそも誤っており,「新引用文献には,補正後の本願発明と同一の構成が開示されておりません。」,「その他,いわゆる進歩性に関して…以上のことから,新引用文献に記載された発明からみて,補正後の本願発明に当業者が容易に想到することは不可能です。」などと記載して,引用例2について反論している。 してみると,本件審判手続において,審判官が,審判請求人である 記載された発明からみて,補正後の本願発明に当業者が容易に想到することは不可能です。」などと記載して,引用例2について反論している。 してみると,本件審判手続において,審判官が,審判請求人である原告に対し引用例2の記載事項を加えた拒絶理由の通知を行わず,この点について原告に意見書の提出及び補正の機会を与えなかったからといって,原告の手続保障に欠けるものとはいえない。 以上によれば,本件審判手続において,審判官が原告に対し拒絶理由の通知をしなかったことについて,適正手続の理念に反し,手続上の違法があるとする原告の主張も理由がない。 (3) したがって,原告主張の取消事由3は理由がない。 4 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部- 40 - 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官大西勝滋 裁判官田中正哉 - 41 -(別紙1) 本願明細書図面【図1】 【図2】 - 42 -(別紙2) 引用例1図面【図1】 【図2】 - 43 -【図3】 【図4】 - 44 -【図5】 【図6】 - 45 -(別紙3) 引用例2図面 (別紙3) 引用例2図面

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