平成22(行ウ)186 農地法3条に基づく所有権移転不許可処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年6月21日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文14,753 文字)

- 1 - 主文 1 処分行政庁が平成21年5月25日付けで原告に対してした別紙物件目録記載の土地に係る農地所有権移転不許可処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が農地である別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の所有権を取得することについての農地法(平成21年法律第57号による改正前のもの。以下,特に断らない限り,同じ。)3条の規定による許可申請(以下「本件許可申請」という。)に対して,処分行政庁から,① 原告がその取得後において農地の全てについて耕作の事業を行うとは認められず(農地法3条2項2号),② 原告は,主たる事業が農業ではなく農業生産法人ではないから,農業生産法人以外の法人がこれを取得しようとする場合である(農地法3条2項2号の2)との各不許可事由があるとして,不許可処分(平成21年法律第57号附則2条1項により,同法による改正後の農地法3条1項の規定によってしたものとみなされる。以下「本件不許可処分」という。)を受けた原告が,処分行政庁の上記判断には誤りがあり,本件不許可処分は違法であると主張して,本件不許可処分の取消しを求めている事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告原告は,平成17年6月24日にインターネットでのホームページ編集と伝達配信等を目的として設立された株式会社(会社法2条5号の公開会社ではない。)であるが,平成19年9月18日に葬送及び葬祭の企画運営,野- 2 - 6月24日にインターネットでのホームページ編集と伝達配信等を目的として設立された株式会社(会社法2条5号の公開会社ではない。)であるが,平成19年9月18日に葬送及び葬祭の企画運営,野- 2 -菜農園,造園,園芸及び植木の製造,運営及び販売,植木や物品のレンタル業務,絵画,書籍の著作販売,画廊運営などを目的として追加する定款変更をした。(甲1)また,a,b及びcが,本件申請時の原告の取締役であり,このうち,aが原告の代表取締役であり,aとbが農業に常時従事する者(年間200日従事)とされている。(甲1)(2) 本件許可申請及び本件不許可処分ア原告は,平成21年4月8日,処分行政庁に対し,農地である本件土地について,その所有者であるdから原告に対して贈与により所有権移転することについての農地法3条の規定による許可の申請(本件許可申請)をした。(甲1)本件許可申請の際に原告が提出した申請書(以下「本件申請書」という。)及びその添付書類である「農業生産法人の要件に係る事項」には,本件土地のうち約1300㎡を椿肥培育樹リース園・花壇として使用し,ここで育成する椿と桜の苗木を記念樹として植栽管理する事業(以下「本件事業」という。)を行う旨が記載され,a及びbにつき「年間農業従事日数」,「年間農作業従事日数」のいずれの「前年実績」欄,「見込み」欄にも共に200日と記載されており,また,上記「農業生産法人の要件に係る事項」のうち,1(2)の「事業の実施状況及び事業計画」(以下「本件事業計画」という。)及び農業経営計画書(以下「本件計画書」という。)には,農地等を耕作の事業の用に供することとなる日を含む事業年度以降の3か年の「椿の記念樹」,「桜の記念樹」及び「育成管理表(入金売上)」に係る売上げ合計額(以下「記念樹収入等」 計画書」という。)には,農地等を耕作の事業の用に供することとなる日を含む事業年度以降の3か年の「椿の記念樹」,「桜の記念樹」及び「育成管理表(入金売上)」に係る売上げ合計額(以下「記念樹収入等」という。)並びに原告の事業全体の売上高が次の(ア)ないし(ウ)のとおり計上されていた。(甲1,5,6)このうち,「椿の記念樹」及び「桜の記念樹」に係る売上げは,椿や桜- 3 -の顧客からの賃料収入であり,本件計画書に記載されている「育成管理表(入金売上)」とは育成管理料の誤記であって,苗木の生育や樹木の維持管理に必要な肥料等の購入費用や人件費の実費収入である。 (ア) 初年度事業全体の売上高(①)1237万5000円内記念樹収入等(②)1012万5000円②の①に占める割合約81.8%(イ) 2年目事業全体の売上高(①)4095万円内記念樹収入等(②)3375万円②の①に占める割合約82.4%(ウ) 3年目事業全体の売上高(①)6769万5000円内記念樹収入等(②)6049万5000円②の①に占める割合約89.4%イこれに対し,処分行政庁は,平成21年5月25日,本件許可申請につき,以下の不許可事由が認められることを理由として本件不許可処分をし,その旨を原告に通知した。(甲2)(ア) 農地法3条2項2号の不許可事由原告は,本件事 21年5月25日,本件許可申請につき,以下の不許可事由が認められることを理由として本件不許可処分をし,その旨を原告に通知した。(甲2)(ア) 農地法3条2項2号の不許可事由原告は,本件事業を行うとしているが,本件事業はその目的及び内容からみて,耕作の事業に該当せず,農地法3条2項2号の不許可事由に当たる。 (イ) 農地法3条2項2号の2の不許可事由原告は,本件申請書添付の本件計画書で,椿の記念樹,桜の記念樹,椿絵及び工芸品の販売額等を売上げとして計上しているが,これらはいずれも農業による売上げとは認められない上,苗木の販売額も売上げと- 4 -して同計画書に計上されておらず,原告の主たる事業は農業といえないため,農業生産法人の要件を満たさず,農地法3条2項2号の2の不許可事由に当たる。 (3) 本訴提起に至る経緯等ア原告は,平成21年6月30日,上記各不許可事由はいずれも認められないなどとして,本件不許可処分を不服として,東京都知事に対し審査請求をしたが,東京都知事は,同年10月21日,審査請求を棄却する旨の裁決をし,その裁決書謄本が同月22日に原告に送達された。 なお,東京都知事は,平成21年10月26日,上記裁決書に対する更正決定をし,その更正決定謄本が同月27日に原告に送達された。 イ原告は,平成22年4月16日,本件訴訟を提起した。(顕著な事実)(4) 農業生産法人該当性の判断基準に関する通知の定め平成12年6月1日12構改B404農林水産事務次官通知「農地法関係事務に係る処理基準について」(平成18年5月1日改正のもの)は,農地法2条7項に規定する農業生産法人の判断基準等につき,要旨次のとおりの基準(以下「本件判断基準」という。)を定めている。(乙2)① 農地法2条7項1号の法人の主 18年5月1日改正のもの)は,農地法2条7項に規定する農業生産法人の判断基準等につき,要旨次のとおりの基準(以下「本件判断基準」という。)を定めている。(乙2)① 農地法2条7項1号の法人の主たる事業が農業であるか否かの判断は,その判断の日を含む事業年度前の直近する3か年におけるその農業に係る売上高が,当該3か年における法人の事業全体の売上高の過半を占めているか否かによる(第1の(3)②)。 ② 農地法3条2項2号の2に該当するか否かの判断に当たっては,法令の定め及び第1の(3)によるほか,次によるところ,農地等の権利の取得後において,同法2条7項各号の要件を満たし得ると認められる場合には,同法3条2項2号の2に該当するものとはされないが,この場合,同法2条7項1号の「法人の主たる事業が農業」であるか否かについては,従前の事業の状況と併せ,その農地等を耕作の事業の用に供することとなる日を- 5 -含む事業年度以降の3か年の農業の売上高が,当該3か年における当該法人の事業全体の売上高の過半を占めるか否かも勘案して総合的に判断する(第2の1(4)①なお書き)。 2 争点(1) 農地法3条2項2号の不許可事由の存否(原告がその取得後において耕作の事業に供すべき農地の全てについて耕作の事業を行うと認められるか否か)(2) 農地法3条2項2号の2の不許可事由の存否(原告が農業生産法人であるか否か) 3 当事者の主張(1) 争点(1)(農地法3条2項2号の不許可事由の存否)について(被告の主張の要旨)ア農地法の目的は,耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ることにあり,農業生産力の増進とは,作物等を収穫することにある。 したがって,当該事業が,耕作ひいては農業に該当するためには,当該事業の目的が農業生産力を増進 の地位の安定と農業生産力の増進を図ることにあり,農業生産力の増進とは,作物等を収穫することにある。 したがって,当該事業が,耕作ひいては農業に該当するためには,当該事業の目的が農業生産力を増進すること,すなわち,作物等の収穫を目的としていることが決定的な要件となる。 そうすると,当該事業が耕作といえるか否かについては,単なる「賃貸借」か,それとも「作物等の収穫」か,いかなる目的で栽培しているかが極めて重要であり,そのいずれに当たるかは,原告が主張するような単なる営業手法の違いにとどまるものではない。 イ本件事業は,苗木の栽培やその販売を行うものではなく,散骨・樹木葬・自然葬のため樹木を記念樹として賃貸するものとしており,前記アからすると耕作には当たらない。 特に本件土地の後記ウの花壇部分については,鑑賞及び種子収穫を目的として,樹木を植栽し,顧客に賃貸するとしているが,幼木を生育させて- 6 -いるのではなく,成育した樹木を賃貸するものであり,これが農業生産力の増進に寄与することはなく,肥培管理をするものとはいえないので,花壇における樹木の植栽は耕作に当たらない。 ウ本件土地4652㎡のうち,苗園は約1000㎡でその占める割合は約21.5%であり,花壇は約1300㎡でその占める割合は約27.9%であり,これら大半の土地が,花壇,ポット,樹木葬見本等として,リース用ないし鑑賞用の樹木の植栽がされているにすぎないし,別紙図面1の「e(画廊)」部分は耕作と関係のない画廊となっている。 仮に,苗園につき,賃貸目的の苗木栽培が耕作の事業に当たるとしても,本件土地に占める割合からすると,耕作の事業に供すべき農地の全てについて耕作の事業を行うとは認められない。 エよって,原告がその取得後において本件土地の全てについて耕作の の事業に当たるとしても,本件土地に占める割合からすると,耕作の事業に供すべき農地の全てについて耕作の事業を行うとは認められない。 エよって,原告がその取得後において本件土地の全てについて耕作の事業を行うものとは認められず,農地法3条2項2号の不許可事由が認められる。 (原告の主張の要旨)ア農地法3条2項2号の耕作に当たるか否かは,肥培管理が当該土地に施されているか否かが判断基準であるところ,「肥培管理」とは,作物の生育を助けるための農作業一般をいうものである。被告は,原告の事業は作物の栽培を目的としていない旨主張するが,「栽培」という用語の定義をみても,植物の繁殖と生育とを保護・管理することであるから,成育した作物を販売するか賃貸するかといった使用・処分形態は営業手法上の違いにすぎない。 したがって,作物等の収穫を目的としていることは肥培管理の要件ではなく,また,成育した作物の賃貸を目的とすることをもって,耕作に当たらないということはできない。 イ本件事業は,椿,あじさい,α桜の苗木の植栽及び肥培管理を行い,そ- 7 -れによって成育した椿と桜の樹木を,誕生・結婚・葬送等の記念樹として顧客を募集し,顧客に対し一定期間リースするというものであり,また,それにとどまらず,樹木から収穫される椿や桜の種子を顧客に頒布したり,挿し木・接ぎ木等による分樹することをも目的とし,後記ウの態様により,苗木の状態から生育させた椿や桜を,成熟前の幼木段階から同一土地内で引き続き肥培管理により生育させているから,前記アに照らすと,耕作に当たる。 ウ本件土地は,別紙図面2のとおり,AないしEまで5つの区画に分けられる。このうち,A及びB区画は,「椿肥培育樹リース園」であり,C及びD区画は椿の苗園,E区画は桜の苗園となっており,原告は 。 ウ本件土地は,別紙図面2のとおり,AないしEまで5つの区画に分けられる。このうち,A及びB区画は,「椿肥培育樹リース園」であり,C及びD区画は椿の苗園,E区画は桜の苗園となっており,原告は,椿ないし桜を苗木の状態から栽培し,生育させた幼木を「椿肥培育樹リース園」に植え替えて肥培管理して生育させている。 AないしEの区画の総面積は2440.35㎡(花壇は別紙図面3のとおりA区画の斜線部分に所在し,34.25㎡に限られ,これを除外する。)であり,本件土地の総面積4652㎡に占める割合は約52.5%となっており,耕作その他の農作業に必要な農道や農機具置き場,堆肥保管場所を含めると総面積は4617.75㎡となり,本件土地の総面積に占める割合は約99.26%となり,「耕作の事業に供すべき農地の全て」について耕作の事業を行うものと認められる。 エよって,原告がその取得後に本件土地の全てについて耕作の事業である本件事業を行うことは客観的に明らかであり,農地法3条2項2号の不許可事由は存しない。 (2) 争点(2)(農地法3条2項2号の2の不許可事由の存否)について(被告の主張の要旨)ア本件判断基準②は,農地等の権利取得後に農地法2条7項各号の要件を満たし得る場合として,判断の日を含む事業年度前の直近する3か年では- 8 -なく,本件判断基準①の例外として農地等を耕作の事業の用に供することとなる日を含む事業年度以降の3か年の農業の売上高の実績を勘案する趣旨のものである。 イ前提事実(2)アで原告が売上げとして計上した「椿の記念樹」及び「桜の記念樹」の各項目は,各樹木の顧客からの賃料であり,「育成管理料」という項目は,花壇の管理費用である。 本件事業は,前記の内容のとおりであるところ,実際の本件土地の使用状況も,椿や 」及び「桜の記念樹」の各項目は,各樹木の顧客からの賃料であり,「育成管理料」という項目は,花壇の管理費用である。 本件事業は,前記の内容のとおりであるところ,実際の本件土地の使用状況も,椿や桜がリース園や花壇に植えられ,樹木葬ないし観賞用に供されており,別紙図面1の「e(画廊)」が画廊とされ,本件土地のメイン部分となっていることからすると,本件事業は耕作に当たらず,上記各項目は農業による売上高とは認められない。 また,原告が,本件許可申請時に,本件事業計画の初年度ないし3年目の農業外収入として一旦記載した前提事実(2)ア(ア)ないし(ウ)の各①の金額をいずれも農業収入に訂正したこと(以下「本件訂正」という。)からすると,原告主張の農業収入は実態がないと強く推測される。 ウよって,原告は,本件土地を耕作の事業の用に供することとなる日を含む事業年度以降の3か年の農業の売上げが,各年度とも,原告の事業全体の売上高の50%以上を占めることはなく,主たる事業が農業であるとの要件は満たさないため,農業生産法人に該当しないから,農地法3条2項2号の2の不許可事由が認められる。 (原告の主張の要旨)ア本件判断基準にいう農業とは,耕作,養畜,養蚕等の業務の他,その業務に必要な肥料・飼料等の購入,通常商品として取り扱われる形態までの生産物の処理販売までが含まれるとされている。 そして,耕作については,前記(1)(原告の主張の要旨)のとおり生育させた作物等の賃貸を目的としていても耕作に該当するので,本件土地に植- 9 -栽された樹木につき顧客が原告に支払う賃料は,農業による売上収入に入る。 また,原告が本件計画書で計上している育成管理料も,苗木の生育や樹木の維持管理に必要な肥料等の購入費用や,農作業に要する人件費等の実費であり 客が原告に支払う賃料は,農業による売上収入に入る。 また,原告が本件計画書で計上している育成管理料も,苗木の生育や樹木の維持管理に必要な肥料等の購入費用や,農作業に要する人件費等の実費であり,農業の売上高である。 これに対し,① 被告が本件土地の使用状況から本件事業が耕作に当たらないと主張する点は,極めて概括的・抽象的である上,リース園部分と花壇部分は明確に区別され,かつ,花壇部分の割合は些少であり,建物の内部に椿絵が展示されていることと原告の農業生産法人該当性とは何ら関連性がないし,② 被告が指摘する本件訂正の点も,α町産業課の担当者からの指導に基づき必要な文字の加除訂正を行ったものであり,形式的な記載ミスにすぎない。 なお,被告は本件判断基準①が原則であり本件判断基準②は例外であると主張するが,本件判断基準①のようにその判断の日を含む事業年度前の直近する3か年に農業の売上高がない場合も当然あり得,そのような場合に本件判断基準②を定めたものと解されるので,原則と例外という関係はなく,失当である。 イ上記アからすると,本件事業計画上,初年度ないし3年目における原告の事業全体の売上高に占める農業の売上高は前提事実(2)アのとおりとなる(椿絵その他の工芸品販売による売上高は,農業の売上高とみなされない場合も考慮して,除く。)。 なお,原告は本件不許可処分を受けたため,本件土地において現在に至るまで,本件事業に基づく実際の販売活動は行っておらず,平成21年度及び平成22年度の売上実績はないが,このことにより,本件事業計画における上記計画ないし見通しが失当となるものではない。 ウよって,原告は,本件土地を耕作の用に供することとなる日を含む事業- 10 -年度以降の3か年の農業の売上げが,各年度とも,原告の事業全体の売上 上記計画ないし見通しが失当となるものではない。 ウよって,原告は,本件土地を耕作の用に供することとなる日を含む事業- 10 -年度以降の3か年の農業の売上げが,各年度とも,原告の事業全体の売上高の50%以上を占め,主たる事業が農業であるとの要件を満たすから,農業生産法人であり,農地法3条2項2号の2の不許可事由は存しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(農地法3条2項2号の不許可事由の存否)について(1) 農地法にいう耕作(同法2条1項,3条2項2号等参照)とは,土地に労資を加え,肥培管理を行って作物を栽培することをいい,その作物は,林業の対象となるようなものでない限り,永年生の植物でも妨げないと解される(最高裁昭和38年(オ)第1065号同40年8月2日第二小法廷判決・民集19巻6号1337頁)から,永年生の植物の苗木や成育した樹木を植栽管理する行為(事業)が「耕作」に該当するか否かは,上記永年生の植物の苗木や成育した樹木が林業の対象となるようなものでない限り,このような作物を栽培するために土地に肥培管理を施すものであるか否かによって決定すべきであり(最高裁昭和55年(オ)第1069号同56年9月18日第二小法廷判決・裁判集民事133号463頁),作物を栽培するために土地に作物の生育を助けるための農作業一般(その土地に施される耕耘,整地,播種,灌漑,排水,施肥,農薬散布,除草等の一連の人為的作業)を行うものである以上,作物を栽培するために土地に肥培管理を施すものに該当するというべきである。 以上に対し,被告は,農地法の目的から,① 上記行為(事業)が耕作に該当するためには,作物等の収穫を目的とすることが必要であり,② 成育した樹木の賃貸を目的とする場合には,これに該当しない旨主張する。 しかしながら,農 の目的から,① 上記行為(事業)が耕作に該当するためには,作物等の収穫を目的とすることが必要であり,② 成育した樹木の賃貸を目的とする場合には,これに該当しない旨主張する。 しかしながら,農地法3条の趣旨は,同法の目的(1条)からみて望ましくない不耕作目的の農地の取得等の権利の移転又は設定を規制し,耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ろうとするものである(最高裁平成14年(受)第1459号同16年7月13日第三小法廷判決・裁判集民事21- 11 -4号953頁)。このような不耕作目的の農地取得を規制して農地の荒廃を防ぐという観点からすれば,権利の取得者により適切に農地に肥培管理が施されることが重要であって,農地法が,作物等の収穫があることに着目し,それを目的として上記のような規制をしたものとは解されないし,農地法は,農地で栽培すべき作物やその処分の方法等を一定のものに制限する規定を設けていないことからすると,農地で栽培した作物等を利用して金銭的収入を上げることなども農業生産力の増進と評価できるといえるから,農地法にいう耕作(肥培管理)については,作物等の収穫を不可欠の要件とまではしていないものと解すべきである。 したがって,被告の上記主張は理由はなく,たとえ本件事業が作物等を顧客に賃貸借するものであっても,直ちに耕作の事業に該当しないとはいえないので,本件事業が本件土地に肥培管理を施すものであるか否かを検討する。 (2) 前提事実に加え,証拠(甲1,3,5,10ないし13,乙1,3)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件事業の事業計画・事業形態等(ア) 本件事業の概要本件事業計画によれば,本件事業は,本件土地を「e」と称して,顧客の分身として花の木を植樹して育て,花を咲かせることを目的 る。 ア本件事業の事業計画・事業形態等(ア) 本件事業の概要本件事業計画によれば,本件事業は,本件土地を「e」と称して,顧客の分身として花の木を植樹して育て,花を咲かせることを目的とした記念植樹園とするため,その農畜産物を椿苗木,あじさい,桜とし,土地の利用計画の用途を椿,桜,あじさい,香花等の肥培植栽を基本にした農業事業とするものである。 (イ) 椿苗木植栽及び椿記念樹植栽椿については,まず,① 本件土地の苗園部分でプランターに苗木を肥培植栽し(以下,この植栽を「椿苗木植栽」という。),② 植え替えに適してきたら本件土地の「椿肥培育樹リース園」部分に植え替えて,「お誕生記念」,「α来島記念」,「結婚記念」,「金銀婚式記念」,- 12 -「葬送の標樹」(樹木葬)の記念樹として,鑑賞並びに挿し木,接ぎ木及び種子収穫による増殖を目的として顧客に1年単位最長25年,椿1本当たり25年分の賃料30万円,年間の管理費5000円で賃貸借をするというもの(以下,この植え替え後の植栽を「椿記念樹植栽」という。)であって,本件土地全体を利用して総合的に植栽する計画であり,鉢植え商品の通常販売も並行して行うものとされている。 ②椿記念樹植栽については,顧客において花の色・柄,花の大きさ,花びらが一重か二重か,花の芯の太さ,花が咲く月等の花の種別に着目して約300種もの多様な椿の花の中からふさわしいものを選択でき(殊に顧客にまず選択してもらうのは花が咲く月としている。),原告において,次の作業を行うことを予定している。 a 花木の名称と植樹者(顧客)の名前を記したネームプレートを木の根元に付けるとともに,顧客情報を植樹台帳とデータで管理し,顧客の記念日や椿の花が咲く季節が到来する際には,事前に顧客に連絡し,αへの来島を の名称と植樹者(顧客)の名前を記したネームプレートを木の根元に付けるとともに,顧客情報を植樹台帳とデータで管理し,顧客の記念日や椿の花が咲く季節が到来する際には,事前に顧客に連絡し,αへの来島を勧誘すること。 b 顧客が椿の記念樹に散骨を希望する場合は,遺灰にチッソ,リン酸,カリを混ぜて肥料として撒布を行うこと。 c 椿の記念樹の賃貸借契約締結後においても,引き続き椿の記念樹の肥育をし,椿の丈の長さ2m以下となるように剪定するなどの手入れをしたり,椿の記念樹が枯れ又は自然現象で破損した場合は無償で新木と交換したりすること。 (ウ) 桜苗木植栽及び桜記念樹植栽α桜についても,苗木から植栽し(以下,この植栽を「桜苗木植栽」という。),植え替えに適したら街路樹として植え替え,椿と同様の方法でプレミア桜については1本当たり25年分の賃料100万円,α桜については12人で1本とし,一人当たり25年分の賃料30万円,い- 13 -ずれの場合も年間の管理費5000円で顧客に賃貸借をするというもの(以下,この植え替え後の植栽を「桜記念樹植栽」という。)である。 (エ) その他あじさいについては苗園で,香花については苗園横で肥育するとされている。 (以上につき,甲1,3,5,13,乙1)イ本件土地の利用計画等(ア) 本件土地の利用計画本件土地は,南側を東西に走る一般道路に通じる通路部分とこれに旗状に接する長方形の部分からなる4652㎡の土地であり,別紙図面2記載のとおり,長方形部分の土地には,その北側,西側及び南側に三つの「農機具置き場(既存)」(北側農機具置き場は別紙図面1の「e(画廊)」に,西側農機具置き場は同図面の小屋に,南側農機具置き場は同図面の倉庫にそれぞれ相当する。)が存在し,「椿肥培育樹リース園」 の「農機具置き場(既存)」(北側農機具置き場は別紙図面1の「e(画廊)」に,西側農機具置き場は同図面の小屋に,南側農機具置き場は同図面の倉庫にそれぞれ相当する。)が存在し,「椿肥培育樹リース園」であるA及びB区画,「苗園(椿)」であるC及びD区画,「苗園(椿,桜)」であるE区画が配置されている。AないしEの各区画等の面積は次のとおりであるから,その総面積は,2440.35㎡となり,本件土地の総面積4652㎡に対し約52.4%を占める。 ① A区画別紙図面3のとおり,483.6㎡(椿以外の草木が植えられている斜線部分34.25㎡を除外した場合は,449.35㎡となる。)② B区画 992㎡③ C区画 332㎡④ D区画 345㎡⑤ E区画 322㎡⑥ 農機具置き場(既存) 北側農機具置き場109㎡,西側農機具置- 14 -き場119.48㎡,南側農機具置き場125.6㎡(イ) 本件土地の使用状況本件土地の現在の使用状況は,次のとおりである。 ① A区画丸太様のもので区画された各花壇に椿の記念樹が植栽されている。 ② B区画除草・整地が施されて,椿の記念樹が区画されて植栽されている。 ③ C区画椿の苗木がプランター様の容器に植栽されている。 ④ D区画椿が石材で四角く枠取られた各区画部分に1本ずつ植栽されており,樹木葬等記念樹の見本となっている。 ⑤ E区画桜の苗木が植栽されている。 ⑥ 農機具置き場(既存)北側農機具置き場は主に「e(画廊)」として椿画家の描いた椿絵(顧客が「e」の会員である「f」に入会して椿の植樹をした際に提供される。)を展示している画廊であり,西側農機具置き場は小屋,南側農機具置き場は農機具等の倉庫として使用されている。 ⑥ いた椿絵(顧客が「e」の会員である「f」に入会して椿の植樹をした際に提供される。)を展示している画廊であり,西側農機具置き場は小屋,南側農機具置き場は農機具等の倉庫として使用されている。 ⑥ その他別紙図面2の南西側の角部分は堆肥置き場として,その他は本件事業のための通路として使用されている。 (以上につき,甲3,10ないし12,乙3,弁論の全趣旨)(3) 以上によれば,本件事業のうち,① 椿苗木植栽及び桜苗木植栽は,椿の苗園とされるC区画及びD区画や桜の苗園とされるE区画において,椿や桜を苗木として植え替えに適する程度まで人為的に生育させるものであるか- 15 -ら,林業の対象となるようなものではなく,作物を栽培するために土地に肥培管理を施すものに該当すると容易に認められる。また,② 椿記念樹植栽等も,A区画及びB区画において,椿等の花をもって顧客の人生の節目を記念する目的で上記①のとおり成育した椿等の苗木を顧客に賃貸し,これらを記念樹として植え替えた上,その状態から更に生育させるものであって,上記のような顧客の目的に応じて椿等の花を適時かつ適切に咲かせるため,自然の力による生育に任せるのではなく,顧客への賃貸後も椿等の花の生育を助けるための人為的作業を施すというのであるから(実際にも,本件土地の上記各区画は,山野とは異なり,一定程度の除草や整地がされ,A区画については丸太様のもので区画された部分に均等に記念樹が配置され,B区画についても棒様のもので区画された部分に均等に記念樹が配置されているのであるし,散骨希望者による遺灰と栄養素を混ぜた肥料だけでなく堆肥置き場からの施肥が普段から行われていることもうかがわれる。),上記各区画に植栽された椿等の樹が永年生の植物であって上記賃貸期間のうち一定の時期以降は成育した状 灰と栄養素を混ぜた肥料だけでなく堆肥置き場からの施肥が普段から行われていることもうかがわれる。),上記各区画に植栽された椿等の樹が永年生の植物であって上記賃貸期間のうち一定の時期以降は成育した状態になり,専ら上記のような花の生育を助けるための人為的作業を施すにとどまるとしても,このことをもって直ちに自然の生育に任せるものとか林業の対象となるようなものということはできず,作物を栽培するために土地に肥培管理を施すものに該当すると認められる。さらに,③D区画は,上記①で説示したとおり作物を栽培するために土地に肥培管理を施すものに該当する椿の苗園とされることが予定されていたから,現況としては,椿の記念樹の見本が石枠様のもので区画された部分に均等に配置されているとしても,上記①の判断を左右するに足りるものではない。そして,④ 別紙図面1の「e(画廊)」部分も,現況としては耕作と直接関係のない画廊となっているが,椿絵はいわば椿の記念樹の賃貸借契約の成約を促進するための特典ということができるし,椿の花に着目した本件事業からすると本件事業の名称を冠した画廊を設けて椿絵を展示しておくことは,本件事- 16 -業の発展のために適当な広報手段であって,農機具等の倉庫やAないしE区画と一般道路を結ぶ通路部分を含め,一体として本件土地が利用されているということができ,⑤ 原告主張の花壇部分も,A区画の椿の記念樹の植栽部分と一体利用がされていると認められるから,いずれも農地法3条2項2号の規制の趣旨に反した土地利用形態ということはできない(なお,本件事業が本件土地全体に占める割合は,別紙図面1及び同3の椿絵の画廊部分やA区画の草木の花壇部分を除外したとしても,本件事業に供されている土地は4508.75㎡であり,約96.9%である。)。 以上からすると 地全体に占める割合は,別紙図面1及び同3の椿絵の画廊部分やA区画の草木の花壇部分を除外したとしても,本件事業に供されている土地は4508.75㎡であり,約96.9%である。)。 以上からすると,本件事業は農地の全てについて耕作の事業を行うものに該当するということができ,本件申請につき農地法3条2項2号の不許可事由は認められない。 以上の説示に反する被告の主張は,いずれも理由がなく採用することができない。 2 争点(2)(農地法3条2項2号の2の不許可事由の存否)について(1) 農地法3条2項2号の2(同法2条7項)にいう農業生産法人への該当性のうち,同法2条7項1号の「法人の主たる事業が農業」であるか否かについては,同号が単に「その法人の主たる事業が農業であること」と規定し,その他の規定を併せて見ても,当該法人が現に耕作の事業等を行っていることを要件とする規定はないことに照らすと,当該法人に農業の売上げの実績がないことのみをもって農業生産法人への該当性を否定するものではないと解され,殊に農地法3条2項2号の2との関係では,農地等の権利の取得後に行う予定の当該法人の主たる事業が農業である場合にも,農業生産法人に該当するものとして農地の権利移転を認める趣旨であると解される(このように解さなければ,新規に事業を始めようとする農業生産法人が農地を取得することを認めることができないこととなり,妥当でない。)。 そうであるとすれば,その判断日を含む事業年度前の直近する3か年にお- 17 -けるその農業に係る売上高が,当該3か年における法人の事業全体の売上高の過半を占めている場合(本件判断基準①参照)はもちろん,当該法人の従前の事業の状況と併せ,その農地等を耕作の事業の用に供することとなる日を含む事業年度以降の3か年の農業の売上 人の事業全体の売上高の過半を占めている場合(本件判断基準①参照)はもちろん,当該法人の従前の事業の状況と併せ,その農地等を耕作の事業の用に供することとなる日を含む事業年度以降の3か年の農業の売上高が,当該3か年における当該法人の事業全体の売上高の過半を占めている場合(本件判断基準②参照)にも,等しく農業生産法人の該当性を認めるのが相当であり,上記の場合のいずれかを原則とするものではないから,これと同旨の解釈を示す本件判断基準②は相当であると解される(以上と異なる趣旨を述べる被告の主張は採用することができない。)。 (2) 前提事実に加え,前記1の争点(1)の判断も踏まえれば,本件事業は,耕作の事業に該当するから,これが農業に該当することも明らかである。 そうすると,前提事実(2)アで売上げとして計上された「椿の記念樹」及び「桜の記念樹」の賃料収入は耕作の事業の収入であり,「育成管理料」の実費収入も農作業の受託の対価であって,いずれも農業の売上高と認められるから,前提事実(2)アのとおり,本件事業計画上,農地等を耕作の事業の用に供することとなる日を含む事業年度以降の3か年の本件事業の売上高が,当該3か年における原告の事業全体の売上高の過半(いずれも8割以上)を占めていることが明らかであるといえ,原告の従前の事業状況をみても,農地法1条の目的や同法3条の規制の趣旨に照らして,原告の主たる事業が農業であることを否定すべき事情が特に存しないことをも併せ考慮すると,本件判断基準に照らして原告の主たる事業が農業であると認められる。 これに対し,被告は本件訂正があったことを指摘するが,単なる誤記の訂正以上のものとは認められず,上記認定の妨げとなるものではない。 なお,被告は,原告が農業生産法人に該当するためのその他の要件である農地法 ,被告は本件訂正があったことを指摘するが,単なる誤記の訂正以上のものとは認められず,上記認定の妨げとなるものではない。 なお,被告は,原告が農業生産法人に該当するためのその他の要件である農地法2条7項2号,3号各所定の要件を満たさないとの主張及び立証は特にしておらず,原告の農業生産法人該当性を否定すべき事情は特に存しない。 - 18 -よって,本件申請につき,農地法3条2項2号の2の不許可事由は認められない。 3 小括したがって,本件許可申請については,農地法3条2項2号及び同項2号の2の不許可事由はいずれも認められないのであるから,これらの不許可事由が認められるとして本件許可申請を不許可とした本件不許可処分は違法であるといわざるを得ない。 第4 結論以上の次第で,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官川神 裕 裁判官林 史高 裁判官菅野昌彦

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