平成16年1月29日判決言渡平成11年(行ウ)第93号差押処分無効確認請求事件(以下「平成11年事件」という。)平成14年(ワ)第544号損害賠償請求事件(以下「平成14年事件」という。)判決原告 A平成11年事件被告東京国税局長平成14年事件被告国 主文 1 被告国は、原告に対し金5648万7320円及びこれに対する平成10年8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告国に対するその余の請求及び被告東京国税局長に対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、原告に生じた費用の4分の1を被告国の負担とし、その余は各自の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 平成11年事件(1) 被告が原告に対し平成10年7月23日付けでした別紙1物件目録記載1ないし4の土地に対する差押処分が無効であることを確認する。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 2 平成14年事件(1) 被告は、原告に対し、金2億4818万5900円のうち1億4379万4400円及びこれに対する平成10年8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 (3) 仮執行宣言第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、別紙1物件目録記載1ないし4の土地(以下「本件各土地」という。)を相続で取得した原告が、租税特別措置法(以下「租特法」という。)に定める農地等の納税猶予の特例の適用を受け、同法の平成3年改正の附則により定められた特定転用の承認を受け本件各土地に別紙1物件目録記載5の建物(以下「本件建物」という。)を建築したところ、北沢税務署長が後に適正家賃に係る証明書の写しを提出しなかったことを理由として相続税の納税猶予期限が確定したとして、本件各土地の差押処分を行った の建物(以下「本件建物」という。)を建築したところ、北沢税務署長が後に適正家賃に係る証明書の写しを提出しなかったことを理由として相続税の納税猶予期限が確定したとして、本件各土地の差押処分を行ったことから、原告が適正家賃に係る証明書を提出し納税猶予期限が確定していないこと、信義則上被告が納税猶予期限の確定を主張し得ないことを主張して、北沢税務署長の事務を引き継いだ被告東京国税局長に対し差押処分の無効の確認を求めるものである(平成11年事件)。また、原告は、納税猶予期限の確定が北沢税務署長の説明義務違反又は違法な承認によるものであると主張して、被告国に対し、既払の相続税相当額の損害賠償を求める訴えを提起し(平成14年事件)、同事件は、前記無効確認訴訟に弁論併合された。 2 法規の定め(1) 租税特別措置法(平成3年法律第16号による改正前のもの、以下「旧法」という。)70条の6第1項農業を営んでいた個人として政令で定める者(以下この条において「被相続人」という。)の相続人で政令で定める者(以下この条において「農業相続人」という。)が当該被相続人からの相続又は遺贈によりその農業の用に供されていた農地法第2条第1項に規定する農地及び同項に規定する採草放牧地の取得(前条の規定により相続又は遺贈により取得したとみなされる場合の取得を含む。第9項を除き、以下この条において同じ。)をした場合(当該被相続人からの相続又は遺贈により当該農地及び牧草放牧地とともに農業振興地域の整備に関する法律第8条第2項第1号に規定する農用地区域として定められている区域内にある土地で当該農地又は採草放牧地に準ずるものとして政令で定めるもの(以下この条において「準農地」という。)の取得をした場合を含む。)には、当該相続に係る相続税法第27条第1項の規定による申告書 にある土地で当該農地又は採草放牧地に準ずるものとして政令で定めるもの(以下この条において「準農地」という。)の取得をした場合を含む。)には、当該相続に係る相続税法第27条第1項の規定による申告書(当該申告書の提出期限前に提出するものに限る。以下この条において「相続税の申告書」という。)の提出により納付すべき相続税額のうち、当該農地、採草放牧地及び準農地で当該申告書にこの項の規定の適用を受けようとする記載があるもの(当該農地及び採草放牧地については当該農業相続人がその農業の用に供するもの(第8項の規定に該当する農業相続人にあっては、その推定相続人の農業の用に供するものを含む。)に限るものとし、準農地については当該農地又は採草放牧地とともにこの項の規定の適用を受けようとするものに限る。以下この条において「特例農地等」をいう。)に係る納税猶予分の相続税については、当該申告書の提出期限までに当該納税猶予分の相続税の額に相当する担保を提供した場合に限り、同法第33条の規定にかかわらず、当該農業相続人の死亡の日又は当該申告書の提出期限の翌日から20年を経過する日のいずれか早い日(括弧内省略)まで、その納税を猶予する。ただし、当該農業相続人が、その死亡の日、当該20年を経過する日又は当該贈与があった日のいずれか早い日(以下この条において「死亡等の日」という。)前において次の各号の一に掲げる場合に該当することとなった場合には、当該各号に掲げる日から2月を経過する日まで、当該納税を猶予する。 一当該相続又は遺贈により取得した特例農地等の譲渡、贈与(括弧内省略)若しくは転用(括弧内省略)をし、若しくは当該特例農地等につき地上権、永小作権、使用貸借による権利若しくは貸借権の設定をし、又は当該取得に係るこれらの権利の消滅(括弧内省略)があった場合(括弧 略)若しくは転用(括弧内省略)をし、若しくは当該特例農地等につき地上権、永小作権、使用貸借による権利若しくは貸借権の設定をし、又は当該取得に係るこれらの権利の消滅(括弧内省略)があった場合(括弧内省略)において、当該譲渡、贈与、転用若しくは設定又は消滅(以下この条において「譲渡等」という。)があった当該特例農地等に係る土地の面積(括弧内省略)が、当該農業相続人のその時に直前における当該取得をした特例農地に係る耕作又は養蓄の用に供する土地(括弧内省略)の面積(括弧内省略)の100分の20を超えるときその事実が生じた日二 (省略)(2) 租特法の一部を改正する法律(平成3年法律第16号、平成9年3月法律22号による改正前のもの)附則(以下「改正法附則」という。)19条ア第5項平成4年1月1日前に旧法第70条の6第1項に規定する取得をした財産のうちに同項に規定する農地、採草放牧地又は準農地がある場合における当該相続又は遺贈に係る相続税については、同条の規定は、なおその効力を有する。 イ第6項前項の規定によりなおその効力を有するものとされる旧法第70条の6第1項の規定の適用を受ける同項に規定する特例農地等のうち平成3年1月1日において特定市街化区域農地等に該当するもの(昭和60年1月1日前に開始した相続に係るものに限る。)については、同項に規定する農業相続人が、平成4年1月1日から平成9年12月31日までの間に、当該特定市街化区域農地等の全部又は一部につき次の各号に掲げる要件に該当する転用をする見込みであることにつき、政令で定めるところにより、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該農業相続人に係る同項ただし書及び同条7項の規定の適用については、当該承認に係る当該転用は、これらの規定に規定する譲渡等に該当しないも るところにより、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該農業相続人に係る同項ただし書及び同条7項の規定の適用については、当該承認に係る当該転用は、これらの規定に規定する譲渡等に該当しないものとみなす。この場合において、当該特例農地等の全部につき当該承認に係る当該転用があったときは、当該農業相続人は、同条第1項第2号に掲げる場合に該当しないものとみなす。 一及び二 (省略)三当該農業相続人が、当該特定市街化区域農地等をその賃貸の用に供する中高層耐火建築物である共同住宅(次に掲げる全ての要件を満たすものに限る。)の敷地の用に供すること。 イ住居の用途に供する独立部分が15以上のものであること又は当該共同住宅の床面積が1000平方メートル以上のものであることその他政令で定める要件を満たすものであること。 ロ賃貸に係る家賃の額が公営住宅法(昭和26年法律第193号)第12条第1項に規定する計算方法に準ずるものとして建設大臣が定める計算方法によって算定された額を超えないものであること。 ハ平成9年12月31日までに建設の工事に着手することとされていること。 ニ次に掲げる要件のいずれかを満たすものであること。 (1) 住宅金融公庫又は農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法(昭和46年法律第32号)第2条第1項に規定する農業協同組合その他政令で定める法人(同項に規定する利子補給契約を締結するものに限る。以下この号において「農業協同組合等」という。)の融資を受けて新築することとされており、かつ、当該融資を行う者(当該農業協同組合等の融資にあっては、建設大臣)が当該農業相続人に係る前項の規定によりなおその効力を有するものとされる旧法第70条の6第1項の納税の猶予に係る期限(以下、この号、第8項及び第10項において「納税猶予期 融資にあっては、建設大臣)が当該農業相続人に係る前項の規定によりなおその効力を有するものとされる旧法第70条の6第1項の納税の猶予に係る期限(以下、この号、第8項及び第10項において「納税猶予期限」という。)までの間の各年12月31日(以下この号、第8項第3号及び第12項において「提出期限」という。)までに当該年分の当該賃貸に係る家賃の額がロの限度内である旨の証明書を発行することについての同意を与えていること。 (2) (省略)ホ当該農業相続人が当該共同住宅に係るニの証明書の写しを提出期限までに納税地の所轄税務署長に提出すること。 四 (省略)ウ第8項第6項の場合において、同項の税務署長の承認を受けたときにおける第5項の規定によりなおその効力を有するものとされる旧法第70条の6第7項及び第9項の規定については次に定めるところによる。 一 (省略)二平成9年12月31日において、第6項各号に掲げる要件に係る建設の工事に着手していない場合で大蔵省令で定める場合には、同項の規定にかかわらず、同日において転用されたものとみなす。 三第6項第3号の要件に係る農業相続人が同号の共同住宅に係る同号ニの証明書の写しを提出期限までに納税地の所轄税務署長に提出しなかった場合には、同項の規定にかかわらず、当該提出期限において転用をされたものとみなす。 四及び五 (省略)(3) 租特法施行令の一部を改正する政令(平成3年政令第88号、平成9年3月政令106号で改正前のもの)附則(以下「改正令附則」という。)10条ア第4項改正法附則第19条第6項の税務署長の承認を受けようとする同項に規定する農業相続人は、平成6年10月31日までに、同項に規定する特定市街化区域農地等(以下この項において「特定市街化区域農地等」という。)について同条第 6項の税務署長の承認を受けようとする同項に規定する農業相続人は、平成6年10月31日までに、同項に規定する特定市街化区域農地等(以下この項において「特定市街化区域農地等」という。)について同条第6項の規定の適用を受けようとする旨及び次に掲げる事項を記載した申請書に同項各号に掲げる要件に該当することを証する書類で大蔵省令で定めるものを添付し、これを納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 一 申請者の氏名及び住所二被相続人からの相続又は遺贈により改正法附則第19条第6項に規定する特例農地等(以下この項において「特例農地等」という。)の取得をした年月日及び当該特例農地等の明細三 当該特例農地等のうち改正法附則第19条第6項の承認を受けようとする特定市街化区域農地等の明細四 当該特例農地等及び当該特定市街化区域農地等の被相続人からの相続又は遺贈による取得の時における旧令第40条の7第13項に規定する農業投資価格控除後の価額並びに当該特例農地等及び当該特定市街化区域農地等に係る納税猶予分の相続税の額五 改正法附則第19条第6項各号に掲げる要件に係る事項として大蔵省令で定めるもの六 その他参考となるべき事項イ第5項前項の規定による申請書の提出があった場合において、その提出があった日から1月以内に、当該申請の承認又は却下の処分がなかったときは、当該申請の承認があったものとみなす。 (4) 租税特別措置法施行規則の一部を改正する政令(平成3年3月30日大蔵省令第17号、平成9年3月大蔵省令32号で改正前のもの)附則(以下「改正省令附則」という。)9条ア第2項改正令附則第10条第4項に規定する申請書に添付する書類は、次の各号に掲げる転用の区分に応じ、当該各号に定める書類とする。 一 (省略)二 )附則(以下「改正省令附則」という。)9条ア第2項改正令附則第10条第4項に規定する申請書に添付する書類は、次の各号に掲げる転用の区分に応じ、当該各号に定める書類とする。 一 (省略)二改正法附則第19条第6項第2号に係る転用次に掲げる書類イ新築又は取得をする改正法附則第19条6項第2号に規定する共同住宅(以下この条において「共同住宅」という。)が同号に規定する中高層耐火建築物に該当し、かつ、地上階数3以上を有するもので同号イに規定する要件のすべてを満たすものであることを証する住宅・都市整備公団又は当該共同住宅の建設の工事を請け負った建設業法(昭和24年法律第100号)第2条第3項に規定する建設業者の書類で、当該共同住宅の建設の工事の着手の年月日及び当該共同住宅が完成する年月日の記載があるものロ (省略)三改正法附則第19条第6項第3号に係る転用次に掲げる書類イ前号イに掲げる書類ロ住宅金融公庫若しくは改正法附則第19条第6項第3号に規定する農業協同組合等(以下この条において「農業協同組合等」という。)の当該共同住宅の新築に際し融資を行う旨を約する書類又は住宅・都市整備公団の当該共同住宅を当該農業相続人に譲渡する旨を約する書類ハ住宅金融公庫、建設大臣又は住宅・都市整備公団の書類で、当該共同住宅の賃貸に係る家賃の額が改正法附則第19条第6項第3号ロの限度内である旨の証明書を当該農業相続人に係る同号ニに規定する納税猶予期限までの間、同号ニに規定する提出期限までに発行することについての同意の記載があるもの四 (省略)イ第4項改正法附則第19条第5項の規定によりなおその効力を有するものとされる旧法第70条の6第1項の規定の適用を受ける改正法附則第19条第6項に規定する特定市街化区域農地等の転用につき 略)イ第4項改正法附則第19条第5項の規定によりなおその効力を有するものとされる旧法第70条の6第1項の規定の適用を受ける改正法附則第19条第6項に規定する特定市街化区域農地等の転用につき同項の税務署長の承認を受けた当該農業相続人は、当該承認を受けた日から1年を経過する日までに同項第1号若しくは第4号に規定する貸付けを行った場合又は平成9年12月31日までに同項第2号若しくは第3号に掲げる要件に係る建設の工事に着工した場合(住宅・都市整備公団が当該共同住宅の建設の工事に着手した場合を含む。)には、当該貸付け又は着手の日後遅滞なく、次の各号に掲げる転用の区分に応じ、当該各号に定める事項を記載した届出書に次項に定める書類を添付して、これを当該承認をした税務署長に提出しなければならない。 一改正法附則第19条第6項第1号に係る転用次に掲げる事項イ届出書を提出するものの氏名及び住所又は居所ロ第2項第1号の共同住宅の敷地の用として貸付けをした当該特定市街化区域農地等の地目、面積及びその所在場所その他の明細ハ及びニ (省略)二改正法附則第19条第6項第2号に係る転用次に掲げる事項イ前号イ及びロに掲げる事項ロ当該共同住宅の建設の工事に着手した年月日ハ当該共同住宅に係る独立部分の改正令附則第10条第7項第3号イの床面積及び当該共同住宅に係る独立部分の数ニ改正令附則第10条第7項第3号ハの取得価額に係る予定費用の額及び当該共同住宅の階数ホ及びヘ (省略)三改正法附則第19条第6項第3号に係る転用次に掲げる事項イ前号イからニまでに掲げる事項ロ前項第3号ハの融資を受けて当該共同住宅を新築する場合には、住宅金融公庫又は農業協同組合等からの融資の額及びその貸付けの条件ハ当該共同住宅を住宅・都市整備公団から取 イからニまでに掲げる事項ロ前項第3号ハの融資を受けて当該共同住宅を新築する場合には、住宅金融公庫又は農業協同組合等からの融資の額及びその貸付けの条件ハ当該共同住宅を住宅・都市整備公団から取得する場合には、その旨及び当該共同住宅を譲り受ける年月日ニその他参考となるべき事項四 (省略)ウ第5項前項の届出書に添付すべき書類は、次の各号に掲げる転用の区分に応じ、当該各号に定める書類とする。 一 (省略)二改正法附則第19条第6項第2号に係る転用次に掲げる書類イ (省略)ロ当該共同住宅を新築する場合にあっては、建設の工事の請負契約書の写し、当該共同住宅及び附属設備ごとの費用の明細の見積書の写し並びに当該共同住宅の独立部分及び共用部分の床面積、独立部分の数、構造、階数、専用設備その他の明細を証する書類ハ当該共同住宅を住宅都市整備公団から取得する場合にあっては、当該共同住宅の売買契約書の写し、当該共同住宅及び付属設備ごとの費用の明細の見積書の写し並びに当該共同住宅の独立部分及び共用部分の床面積、独立部分の数、構造、階数、専用設備その他の明細を証する書類ニ当該農業相続人の書類で、当該共同住宅の新築又は取得をした場合には遅滞なく所轄税務署長に対して当該共同住宅に係る建築基準法(昭和25年法律第201号)第6条第3項の規定による確認通知書及び同法第7条第3項に規定する検査済証の写し又は登記簿の謄本を提出する旨の記載があるもの三改正法附則第19条第6項第3号に係る転用次に掲げる書類イ前号ロからニまでに掲げる書類ロ第3項第3号ハの融資を受けて当該共同住宅を新築する場合には、住宅金融公庫又は農業協同組合等の融資に関する契約書の写し四 (省略) 3 判断の前提となる事実(認定根拠を掲記しない事実は、当事者間に争 3項第3号ハの融資を受けて当該共同住宅を新築する場合には、住宅金融公庫又は農業協同組合等の融資に関する契約書の写し四 (省略) 3 判断の前提となる事実(認定根拠を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか当裁判所に顕著な事実である。)(1) 原告は、亡Bを昭和58年9月13日に相続し、本件各土地を所有するに至った。 (2) 原告は、昭和59年3月8日に、前記相続に係る相続税の申告書を北沢税務署長に提出し、その際、本件各土地について、旧法70条の6第1項に規定する納税猶予の特例の適用を受けた。 (3) 原告は、平成6年3月29日、本件特例農地について、改正法附則19条6項3号の適用を受けるため、改正令附則10条の4の規定による「特定市街化区域農地等の特定転用に関する承認申請書」を北沢税務署長に提出したところ、同年4月8日付け「特定市街化区域の内等の特定転用に関する承認書」により、承認がされた。 (4) 原告は、平成6年12月31日までに、北沢税務署に対し、改正法附則19条6項3号ニに規定する証明書(以下「適正家賃に係る証明書」という。)を提出しなかった。 (5) 北沢税務署長は、平成9年9月3日、原告に対し、「『特定転用の継続届出書』の提出について」と題する書面を送付し、転用された特定市街化区域農地等について納税猶予の特例の適用を引き続き受けようとする場合には、「特定転用の継続届出書」を平成9年4月8日までに提出することが要件であるから、提出するように通知した。同書面には、「『適正家賃にかかる証明書』の提出も必要であるので、平成7、8年の証明書の提出もお願いします。」との手書きの記載が付記されていた。 (6) 原告は、平成9年10月13日に特定転用継続届出書を、平成10年3月27日に住宅金融公庫東京支店長作成に係る「適正家賃にかかる証 書の提出もお願いします。」との手書きの記載が付記されていた。 (6) 原告は、平成9年10月13日に特定転用継続届出書を、平成10年3月27日に住宅金融公庫東京支店長作成に係る「適正家賃にかかる証明書」を提出した(特定転用継続届出書を提出した時期については当事者間に争いがある。)。 (7) 北沢税務署長は、原告が平成6年12月31日までに、適正家賃に係る証明書の写しを提出しなかったことを理由として、改正法附則19条8項3号に基づき、平成7年3月6日、相続税の納税猶予期限が確定したとして、平成10年6月9日付け「猶予期限が確定した相続税額の通知書」により、納税の猶予がされていた相続税の全額について納税猶予の期限が確定した旨を原告に通知した。 (8) 北沢税務署長は、平成10年6月24日、国税通則法37条の規定に基づき督促状により納税猶予期限が確定した相続税の納付を督促した。 (9) 北沢税務署長は、平成10年7月23日現在、原告に対し既に納期限を徒過した本税1億4379万4400円、利子税1億0439万1500円、延滞税6927万8000円の計3億1746万3900円の租税債権を有していたことから、同租税債権を徴収するため、同日、国税通則法52条1項の規定に基づき、原告が所有する別紙1物件目録記載1ないし4の本件特例農地について担保の処分である差押をし、同差押を原因として東京法務局調布出張所平成10年7月27日受付第27813号差押登記を経由した。 (10) 原告は、平成10年8月25日、北沢税務署長に対し、相続税額金1億4379万4400円を納付した。 (11) 原告は、平成10年8月6日、北沢税務署長に対し、納税猶予期限の確定についての異議申立てをしたが、同年10月27日、北沢税務署長はこれを却下する決定をした。そこで、原告は、同 を納付した。 (11) 原告は、平成10年8月6日、北沢税務署長に対し、納税猶予期限の確定についての異議申立てをしたが、同年10月27日、北沢税務署長はこれを却下する決定をした。そこで、原告は、同年11月26日、国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成11年3月8日、これを却下する旨の裁決を行った。 4 当事者の主張(1) 原告ア平成11年事件について(ア) 納税猶予期限の確定が無効であることa 被告が指摘するとおり、原告は、改正法附則に規定される建設大臣発行の適正家賃にかかる証明書の提出を行っていない。 しかし、原告は、住宅金融公庫東京支店長作成の適正家賃にかかる証明書を提出しており、証明書の作成名義は異なるものの、「適正家賃」は、建設省告示の計算額、すなわち、建設大臣の責任において決定される計算額との比較により算出されるものであるから、作成名義のいかんにかかわらず、その内容は同一である。そして、本件において、原告は、適正家賃にかかる証明書の前提となる利子補給制度を利用しておらず、にもかかわらず、居住者に対する家賃設定はいわゆる適正家賃の範囲内となっており、利子補給という恩恵を受けなかったのに、納税猶予期限が到来するという非常に不合理でバランスを欠く結果になっているものである。そうすると、原告が提出した証明書にも改正法附則19条6項3号2の「適正家賃にかかる証明書」を類推適用し、本件にも適用すべきである。 そうすると、原告は、適正家賃にかかる証明書を提出したこととなるから、納税猶予期限は確定していないというべきである。 b 本件において、形式的に納税猶予期限が確定したとしても、被告は、信義則上、その確定を原告に対して対抗し得ないというべきである。 信義則の適用について、判例は「租税法律関係にお いうべきである。 b 本件において、形式的に納税猶予期限が確定したとしても、被告は、信義則上、その確定を原告に対して対抗し得ないというべきである。 信義則の適用について、判例は「租税法律関係においては、信義則法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者の平等・公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分にかかる課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきである。そして、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより、納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、のちに右表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか、また、納税者が税務官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものである」旨述べる(昭和62年10月30日最高裁判所第3小法廷判決)。そして、本件においては、原告は、3号転用による納税猶予の承認申請及び受理に際し、株式会社ザ・アクト設計企画(以下「アクト」という。)を通じ、再三税務相談をし、承認申請書の記入方法や添付書類の説明についても北沢税務署所部職員の指導を受け、実際の申請に至ったものであるが、その相談・指導の際に、適正家賃に係る証明書、適正家賃にかかる証明書の発行同意書及び証明書発行の前提となる利子補給契約について、説明でも一切触れられず、利子補給契約を締結がないのに承認されるなど、北沢税務署長の課税庁を表示したものと評価し得るもので、原告は、その北沢税務署長の指導を信頼し、 提となる利子補給契約について、説明でも一切触れられず、利子補給契約を締結がないのに承認されるなど、北沢税務署長の課税庁を表示したものと評価し得るもので、原告は、その北沢税務署長の指導を信頼し、指導に沿った手続を行い、その表示とは異なる前提での納税猶予期限の確定がされ、原告が経済的不利益を被っているのであり、その行動は、課税庁の指導を信頼してのものであるから、原告に帰責事由が存するものではないから、本件においては、被告は、信義則上、納税猶予期限の確定を原告に対して対抗し得ないというべきである。 c よって、納税猶予期限の確定自体が誤りであり、その誤りは、本件における一連の課税処分・徴収処分の是非につき根幹にかかわり、差押を受ける債務者に不利益を甘受させることは著しく不当と考えられるものであるから、本件差押処分は無効というべきである。 イ平成14年事件について(ア) 原告は、相続税本税の金1億4379万4400円を納付しており、これに相当する金額の損害を被っているが、これは、以下に述べる北沢税務署職員等の職務上の行為により、租税徴収作用という公権力の行使に当たって、原告が被った違法な損害である。 a 北沢税務署担当職員は、平成4年3月から平成6年3月までアクトのC(以下「C」という。)が北沢税務署を訪問した際、同人に対して、納税猶予継続のための必要な申請書類を指示し説明するに当たり、適正家賃に係る証明書、適正家賃に係る証明書の発行同意書及びその前提たる利子補給契約について説明すべきであったにもかかわらず、これを怠った(説明義務違反)。 b 北沢税務署担当職員は、書類が不備であるにもかかわらず特定転用を承認し、又は、仮に建物建設の着工や完成により農地が非農地化されるとしたら、既に転用により非農地化した農地について特定転用を承認した( 北沢税務署担当職員は、書類が不備であるにもかかわらず特定転用を承認し、又は、仮に建物建設の着工や完成により農地が非農地化されるとしたら、既に転用により非農地化した農地について特定転用を承認した(承認に関する瑕疵)。 c 北沢税務署担当職員は、実質的には適正家賃に係る証明書と同内容である住宅金融公庫東京支店長発行の「適正家賃にかかわる証明書」を受理し、瑕疵が治癒したと考えるべきであるのに、同証明書を漫然放置した(承認に関する瑕疵の治癒)。 d 北沢税務署長は、個人課税第5部門資産税第1担当職員に対して指揮監督を適正に行う義務を負うにもかかわらず、これを漫然放置した(監督義務違反)。 (イ) 因果関係について被告国は、特定転用の承認申請前に既に建物が建築されているから、この時点で既に転用があり、納税猶予期限が確定し、その後に原告が承認申請をして、北沢税務署長が違法に当該承認申請を受理して承認したことと原告の被った損害との因果関係は切断される旨主張する。 a 時期に遅れた攻撃防御方法平成11年4月から係属する平成11年事件の審理において、原告の建物建築が転用であるとした因果関係不存在の主張はされておらず、一連の紛争を全体としてみれば、時期に遅れた攻撃防御方法というべきものである。 b 信義則違反また、平成11年事件の審理経過にかんがみれば、被告の上記主張は、仮に時期に遅れた防御方法に該当しないとしても、別件訴訟における原被告両当事者及び裁判所間の訴訟進行に関する信頼を覆すものであるし、異議申立てや審査請求の手続では全く触れられていなかったことであるから、これを現段階にいたって主張することは信義則に反するものといわざるを得ない。 c 被告の前記主張に理由がないこと(a) 農地とは「耕作の目的に供される土地」(農地法2条1項)である たことであるから、これを現段階にいたって主張することは信義則に反するものといわざるを得ない。 c 被告の前記主張に理由がないこと(a) 農地とは「耕作の目的に供される土地」(農地法2条1項)であるが、これには、現に耕作されている土地のほか、現在は耕作されていなくても耕作しようとすればいつでも耕作できるような、すなわち客観的にみてその現状が耕作の目的に供されるものと認められる土地(休耕地、不耕作地)も含まれる(農地法関係事務に係わる処理基準について、平成12年6月1日次官通知)。つまり、農地か否かは、第一にその土地の客観的な状態を基準に決せられることとなる(現況主義)。 そして、第二に、所有者等の主観的意思も、土地の客観的な状況とともに考慮されるというべきである。 本件では、原告は、相続税の納税猶予が受けられることを当然の大前提としてマンション計画を遂行しているのであるから、仮に、納税猶予が受けられないことが事前に判明すれば、マンション計画は頓挫する。これは、マンションがほぼ完成した場合であっても同様である。なぜなら、原告と正和建設株式会社(以下「正和建設」という。)とは、相続税の猶予が受けられることを前提に請負契約を締結しており、仮にマンションが完成し、その後に納税猶予が受けられないことが明らかになったならば、原告は、正和建設に対して、同社の負担においてマンションを取り壊して農地に戻すことを要求し、同社もこれを承諾せざるを得ないからである。すなわち、工事が着工され、その後完成した時点においても、原告はひとたび納税猶予期限が確定する事態に陥ったならば、マンションを取り壊して農地にする意図を有しているのである。 したがって、本件土地上に建物が建築されたとしても、その一事をもって非農地化される転用があったとはいえない。 (b) 態に陥ったならば、マンションを取り壊して農地にする意図を有しているのである。 したがって、本件土地上に建物が建築されたとしても、その一事をもって非農地化される転用があったとはいえない。 (b) 北沢税務署の担当者は、承認申請受理時及び承認時に建物存在を熟知していた。にもかかわらず、被告らが、建物建築により土地が非農地化したとして納税猶予期限確定を主張することは禁反言であり、許されない。 (c) 上記の点をおくとしても、改正法附則19条6項柱書本文は、旧法70条の6第1項ただし書1号において転用がされた場合を当然の射程距離においていると解され、原告は、法所定の承認を受けているのであるから、承認前にマンション建築に着手しているか否かに関わらず、旧法第70条の6第1項ただし書に規定する譲渡に該当しないとの効果が発生するというべきであり、本件マンション建築による転用の日から2ヶ月経過後に納税猶予期限が確定するということはできない。 (2) 被告らア平成11年事件について(被告東京国税局長の主張)a 証明書の作成主体について(a) 改正法附則19条6項3号ニ(1)の規定によれば、本件適正家賃にかかる証明書は、当該融資を行う者、当該農業協同組合等の融資にあっては、建設大臣が発行する証明書でなければならないことは一義的に明らかであり、それ以外の者が発行した証明書は、本件適正家賃にかかる証明書とはいえない。 原告は、千歳農業協同組合(以下「千歳農協」という。)から融資を受けたものであり、建設大臣が発行した適正家賃にかかる証明書の写しが必要であるところ、その提出がなかったものである。 (b) そして、租税法律主義の見地からすれば、内容が適正な証明書が提出されれば、発行主体の異なる証明書にも改正法附則19条6項3号に係る特例を適用すべきとの原 ころ、その提出がなかったものである。 (b) そして、租税法律主義の見地からすれば、内容が適正な証明書が提出されれば、発行主体の異なる証明書にも改正法附則19条6項3号に係る特例を適用すべきとの原告の主張は失当というべきであるし、いかなる方法でもよいから適正家賃であることの証明がされればいいとの主張も成り立つものではない。また、農業協同組合等の融資に当たって建設大臣の証明書を必要としたのは、農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法(以下「利子補給法」という。)10条に基づく利子補給契約を伴う融資を受けた者からの建設大臣に対する各種報告制度及び各種審査・検査・調査制度を前提に、適正な家賃による貸付事業が継続していることなどを建設大臣において確認するシステムが執られており、これにより優良な賃貸住宅の供給を図るものであるから、利子補給制度を利用している者とこれを利用しない者との間に法適用の差異があっても、何らバランスを欠くものではない。 b 信義則違反の主張について(a) Cは、承認申請に際し、適正家賃にかかる証明書の発行同意書及び融資確約書を要することについて、遅くとも、平成4年8月の時点においては十分認識しており、また、千歳農協職員は、農協の証明する融資確約書が利子補給契約を前提とすることを認識していた。また、両名は、特定転用の適用には事前承認が必要であり、転用後の申請が許されないことも知っていたのである。 してみると、C及び千歳農協職員は、平成6年3月29日の本件特定転用に係る承認申請の時点で、原告が、将来にわたって、利子補給契約を前提とする融資確約書及び適正家賃にかかる証明書の発行同意書を入手する見込みがないことを十分知悉した上で、既に本件建物が完成していることから、承認なく本件各土地を転用した事実が発覚しないよう、 約を前提とする融資確約書及び適正家賃にかかる証明書の発行同意書を入手する見込みがないことを十分知悉した上で、既に本件建物が完成していることから、承認なく本件各土地を転用した事実が発覚しないよう、可及的速やかに承認を得ることを目的として、上記「確約書」を作成し、申請書の「建設工事の着手予定日」「建設工事の完成予定日」欄を空欄にして、承認申請に及んだものと解される。 そうすると、仮に、本件税務署長の承認に、上記のような瑕疵があったとしても、その原因は原告側にあるものというべきであり、本件においては、信義則違反の要件のうち、「納税者が表示を信頼して行動したこと」、「納税者の責めに帰すべき事由がないこと」が認められないことは明らかである。 また、自ら違法な承認を得るために働きかけておきながら、当該承認の違法を主張すること自体許されないことである上、承認の適法性の有無は客観的に決せられるものであるから、被告が本件訴訟で承認が有効であることを認めたからといって、承認の違法性が治癒されるわけではない。 イ平成14年事件について(被告国の主張)(ア) 説明義務違反についてa 職員による「指導」が認められないこと原告の主張及びCの陳述書、証言によっても、北沢税務署の所部職員がCに対していかなる具体的な指導を行ったのかは不明であり、同人は相談を担当した職員の名前すら知らなかったものである。 また、北沢税務署において特定転用の相談を行っていたDの陳述書では、特定転用の相談は、概ね一般的な質問であった上、一般的にいわゆる窓口での相談については、自ずと一般的なことに限られるのであって、本件においては、そもそも、職員の説明義務違反を問われるような職員による「指導」が存在していないというべきである。 bCが必要書類を熟知していたこと(相当因果関係の欠 的なことに限られるのであって、本件においては、そもそも、職員の説明義務違反を問われるような職員による「指導」が存在していないというべきである。 bCが必要書類を熟知していたこと(相当因果関係の欠如)Cは、平成4年3月の段階で、申請書の添付書類として、少なくとも「適正家賃にかかる証明書」及び「適正家賃にかかる証明書発行同意書」を要することを十分承知していたものであり、さらに、同年4月には、農協の発行する「融資確約書」を要することも承知していたものであって、承知していたからこそ、農協職員に対し「融資確約書」の発行依頼をしたものである。 そして、Cが発行依頼をした時点では、既に、農協に対し、「融資確約書」の様式及び同確約書が利子補給契約を前提とすること、適正家賃に係る証明書の発行同意書等については、都道府県知事を経由して建設大臣に申請する必要があることが通知されていたのであるから、Cは、千歳農協職員に対し、自身が依頼した融資確約書について確認さえすれば、利子補給契約書の締結を要することも十分知り得たものである。 してみれば、本件において、原告が、利子補給契約を締結しなかったこと、あるいは、上記各証明書を取得することができなかったことについては、専ら、Cないし千歳農協職員に係る事情、すなわち、原告の内部事情に起因するものというべきであって、税務署所部職員のCに対する説明内容いかんとは関係がない。 したがって、本件において、税務署所部職員の説明と原告が利子補給契約を締結できず、上記証明書を提出することができなかったこととの間には相当因果関係が認められないから、この点に係る原告の主張は、それ自体失当というべきである。 c 小括そうすると、本件においては、税務署所部職員による詳細な「指導」が認められず、税務署所部職員の説明と原告 係が認められないから、この点に係る原告の主張は、それ自体失当というべきである。 c 小括そうすると、本件においては、税務署所部職員による詳細な「指導」が認められず、税務署所部職員の説明と原告の主張する損害との間に相当因果関係がないのであるから、この点についての原告の主張に理由がないことは明らかである。 (イ) 税務署長の承認に係る主張について上記(ア)b記載のとおり、Cは、本件特定転用の承認申請に当たり、「適正家賃にかかる証明書」、「適正家賃にかかる証明書発行同意書」、「融資確約書」を要することを十分承知し、農協職員に対し「融資確約書」の発行依頼もしていたのであるから、利子補給契約の締結を要することを知る機会も十分にあったものである。 してみれば、本件において、原告が、利子補給契約を締結しなかったこと、あるいは、上記各証明書を取得することができなかったことについては、専ら、Cないし農協職員に係る事情、すなわち、原告の内部事情に起因するものというべきであって、被告税務署長が当該承認申請を承認するか否かとは関係がない。 したがって、本件税務署長の承認と、原告が利子補給契約を締結できず、上記証明書を提出することができなかったこととの間には、相当因果関係が認められないから、この点に係る原告の主張は、それ自体失当というべきである。 (ウ) 損害との間に因果関係がないことa 本件においては、原告は、平成5年2月、本件建物の建設に着手し、平成6年3月上旬ころ完成したというのであり、当該事実は、同年3月24日受付に係る原告名義の所有権保存登記がされていることに照らしても明らかである。これによれば、原告は、遅くとも、平成6年3月24日には、本件各農地の全部について、旧法70条の6第1項ただし書1号に定める転用を行ったものというべきである されていることに照らしても明らかである。これによれば、原告は、遅くとも、平成6年3月24日には、本件各農地の全部について、旧法70条の6第1項ただし書1号に定める転用を行ったものというべきである。 他方、北沢税務署長が、原告に対し、本件各土地について改正法附則19条6項柱書本文の承認をしたのは、同年4月8日である。 したがって、原告は、改正法附則19条6項柱書本文の承認を受ける前に、自ら本件建物の建設に着手して、本件各土地の全部を転用したものであり、これにより、転用の日から2ヶ月の経過した日をもって納税猶予期限が確定したというべきであり、仮に、原告が上記所有権保存登記の申請をした日を転用の日ととらえたとすると、その日から2ヶ月が経過した平成6年5月24日をもって、原告にかかる相続税の納税猶予期限は確定したものというべきである。そうすると、納税猶予期限の確定と原告の主張する税務署所部職員の説明義務ないし北沢税務署長の却下義務との間には相当因果関係が認められないというべきである。 b 時期に遅れた攻撃防御方法の主張について平成11年事件と平成14年事件の被告は、異なるものであり、原告の主張は失当というべきであるが、仮にこの点をおくとしても、原告の主張は、民事訴訟法157条1項の趣旨を正解しないものである。 すなわち、平成11年事件においては、専ら改正法附則19条6項3号(二)に規定する証明書の不提出による納税猶予期限確定の有無が争点となっていたものであって、その余の原因による納税猶予期限確定の有無については、何ら争点となっていなかったのであるから、そもそも原告自身による本件各土地の転用について、被告が「主張することが期待できた」とはいえないものである。 被告国は、原告が、平成14年事件において、税務署所部職員の説明義務違反な であるから、そもそも原告自身による本件各土地の転用について、被告が「主張することが期待できた」とはいえないものである。 被告国は、原告が、平成14年事件において、税務署所部職員の説明義務違反ないし承認審査義務違反による納税猶予期限の確定による損害を新たに主張したことに対し、国家賠償法1条1項の要件該当性の検討を踏まえて、上記の主張をしたものであって、これが「時期に遅れた攻撃防御方法」に該当しないことは明らかというべきである。 第3 争点及び争点に関する当裁判所の判断本件の争点は、①本件差押処分が無効なものといえるか否か(争点1)、②原告の国家賠償請求権の成否(争点2)である。 1 各項掲記の認定根拠によれば、以下の事実が認められる。 (1) 原告は、昭和58年9月13日、相続により本件各土地の所有権を取得し(甲1ないし4)、同相続に係る相続税の申告書を昭和59年3月8日に北沢税務署長宛提出して、その際、本件各土地について旧法70条の6第1項に規定する納税猶予の特例の適用を受けた(当事者間に争いのない事実)。 (2) 原告は、取得以来、本件各土地を農地として営農していたが、平成3年夏ころ、正和建設のE専務から、本件各土地上に相続税猶予を継続したまま建物を建てられるので、マンションを建築してはどうかと持ちかけられた。原告及びその母は、マンション建築には多額の借入れが必要で、宅地化により納税猶予が取り消され、相続税を払うことになれば非常に大きな負担を強いられることとなるため、マンション建築には消極的であったが、Eや千歳農業協同組合のFらから毎日のように「必ず大丈夫」と説得されたため、納税猶予が問題なく継続できることを前提にマンション建築を考えることとした(原告本人)。 (3) 正和建設は、平成3年11月ころ、同社の設計監理業務を主に行っ のように「必ず大丈夫」と説得されたため、納税猶予が問題なく継続できることを前提にマンション建築を考えることとした(原告本人)。 (3) 正和建設は、平成3年11月ころ、同社の設計監理業務を主に行っていたアクトの取締役所長(当時)であるCに対し、本件各土地に建設する設計業務及び税金に関する調査を依頼し、特に、本件土地について転用後も納税猶予が継続できるように調査をし、手続をして欲しいと依頼した。Cは、その時点で納税猶予についての知識はなかったが、設計業務を引き受けたいことから、周りに助けてもらえば何とかなるだろうと考えて、設計業務を受諾した(C)。 (4) Cは、当初、アクトが会社の会計を依頼している税理士や千歳農協の資産管理部等に頼んで資料の収集等をしたり、話を聞いたりし、納税猶予制度の概要を把握した後、平成4年3月31日、国税に関する相談室がある世田谷税務署に行き、本件各土地のような場合、納税猶予が可能であるか、特に納税猶予を受けている土地と受けていない土地にまたがって建物を建てるような場合に納税猶予の継続が可能かについて質問をしたが、問題がないので所轄の税務署に相談し、承認申請を提出するようにアドバイスを受けた(C)。 (5) そこで、Cは、平成4年4月28日に北沢税務署を訪れ、世田谷税務署で相談した建物の敷地の点や農協から融資を受け、民間の建設会社が建設して、自ら賃貸するといった内容を話して納税猶予について相談を行った。北沢税務署の所部職員は、3号転用であり承認が受けられる旨話し、申請書類のひな形(甲35)を渡し、承認申請書の裏面に記載された記載方法や添付書類を参照して、承認申請書を出して欲しいと述べた。Cは、裏面の細かい記載をその場でみても理解が困難であると考え、それを読んでもう一度質問したい旨を告げて帰った(C)。 (6 載された記載方法や添付書類を参照して、承認申請書を出して欲しいと述べた。Cは、裏面の細かい記載をその場でみても理解が困難であると考え、それを読んでもう一度質問したい旨を告げて帰った(C)。 (6) 前記(5)のひな形は、申請書本体と付表並びに添付書類としての「建築確認通知書の写し等の提出確約書」、「共同住宅の建設工事の着手に関する届出書」及び「共同住宅の賃貸を公募により行う旨の届出書」の書式が記載されたもので、「建築確認通知書の写し等の提出確約書」以外の書式の裏面には、それぞれ「記載方法等」との標題の下に記載方法や注意事項が記載されていた。このうち、申請書本体の書式裏面には、申請書「2」欄の「(1)共同住宅に関する事項」欄及び「(2)新築又は取得に関する事項」欄につき、前者は原則として住宅・都市整備公団等から受領した「新築又は取得に係る共同住宅に関する証明書」に、後者は原則として住宅金融公庫から受領した「共同住宅の新築資金の融資確約書・適正家賃証明書の発行同意書」又は農業協同組合等から受領した「共同住宅の新築資金の融資確約書」に従って記載するようにとの記載があった(甲35)。 (7) なお、建設省住宅局民間住宅課長は、平成4年1月1日付けで全国農業協同組合中央会営農生活部長等に宛てて「農地等の特定転用に係る相続税の納税猶予等の運用に関する証明事務等の取扱いについて」と題する通達(建設省住民発第3号)を発しており、同通達中には、上記(6)の「共同住宅の新築資金の融資確約書」及び建設大臣が発行すべき「適正家賃にかかる証明書の発行同意書」の書式が示されており、前者の書式中には、確約の内容として、利子補給法2条に基づき利子補給契約が締結され、融資条件が整備された場合に新築資金を融資することを約する旨の文言が示されていた。この通達は、全国の 示されており、前者の書式中には、確約の内容として、利子補給法2条に基づき利子補給契約が締結され、融資条件が整備された場合に新築資金を融資することを約する旨の文言が示されていた。この通達は、全国の農業協同組合に周知されたほか、国税庁資産税課から各税務署にも送付された(乙6、乙ロ6)。 (8) Cは、前記(5)のとおり北沢税務署の職員から渡されたひな形の中に融資を受ける予定の農業協同組合から受領すべき「共同住宅の新築資金の融資確約書」のひな形がなかったことから、平成4年8月18日北沢税務署を訪れ融資元が農協であることを告げ、その書式について質問をしたところ、同署の職員であるDは、「融資確約書のひな形はありません。農協がよく知っているので、農協に行って聞きなさい」という回答をした。Cは、これを聞いて、農協が作る農協独自のひな形でいいものと理解した。また、Cが「新築又は取得に係る共同住宅に関する証明書」の書式を尋ねたところ、Dは、そのひな形を交付して、これを拡大コピーしてもワープロで打っても構わないとの回答をした。Cは、その日のうちに、千歳農協のFのところに向かい、融資確約書の発行の依頼を行うとともに、「新築又は取得に係る共同住宅に関する証明書」については、上記ひな形どおりにワープロで打ち直して添付書類を作成することとしたが、その後提出された同証明書の書式、特にその左肩に「別記様式第2号」との記載があることからすると、Dが交付したひな形は、前記(7)の通達に示されているものであると認められる(甲14、15、22、37、乙6、乙ロ5の2、6、C)(9) Cは、平成4年9月28日、北沢税務署資産税第一担当個人課税第5部門において、本件各土地上に建てる建物の基本設計を記載した図面を示して相談をし、承認申請書の記入方法や必要な添付書類について話を 9) Cは、平成4年9月28日、北沢税務署資産税第一担当個人課税第5部門において、本件各土地上に建てる建物の基本設計を記載した図面を示して相談をし、承認申請書の記入方法や必要な添付書類について話を聞いた。 このときまでの3度の相談の際に、北沢税務署所部職員から融資に当たり利子補給契約を利用する必要があることや転用の承認前に工事を開始してはならないという説明はなかった(C)。 (10) そこで、正和建設及びアクトは、特定転用承認の見通しが立ったと考え、建物建築に向けた具体的な行動を開始し、アクトにおいて詳細な設計に取り掛かり、平成4年9月8日には、世田谷区建築主事に対し、建築確認申請をし、同年12月2日には世田谷区建築主事による建築確認の通知を受け、平成5年2月2日、原告との間で、原告を発注者、正和建設を請負者、アクトを監理者とし、請負代金7億2615万円(消費税込)、工期を着手平成5年2月5日(契約の日から7日以内)、完成を平成6年2月28日(着手の日から389日以内)とする工事請負契約を締結した(甲32、C)。 本件建物の工事は、請負契約締結の直前ころから開始され、平成6年2月末ころに建物の検査が終わり、建物本体が完成するに至った(C)。 (11) Cは、千歳農協の資産管理部の者から、納税猶予の手続は着工前に出すものではないかとの指摘を受け、平成6年3月24日、北沢税務署資産税第一担当個人課税第5部門を訪れ、申請書及び添付書類に事前チェックや不足書類の確認を求めた。その際、Dは、書面をめくりながら図面以外の申請書類に目を通し、融資確約書が存在していないとの指摘をした。そこでCは、同書類を後日追加することとした。また、このとき、Cは、Dに対し、建物がかなりでき上がっていたことから、申請書表面の「建設工事の着工予定日」欄及び「建設工事 在していないとの指摘をした。そこでCは、同書類を後日追加することとした。また、このとき、Cは、Dに対し、建物がかなりでき上がっていたことから、申請書表面の「建設工事の着工予定日」欄及び「建設工事の完成予定日」欄についてどのように記載すればよいか聞いたところ、Dは、空欄のまま出すように指導した(C)。 なお、Dの陳述書(乙ロ4)の中には、この日Cの相談を受けた事実を否定する旨の記載があるが、同陳述書の記載は全般にあいまいであって、信用性に疑問があるのに対し、Cの証言は具体的であって説得力があるし、上記のような空欄とされた部分がいずれも申請の適否にかかわる重要な欄であるにもかかわらず、提出後に税務署から補正の指示はもとより問い合わせがされた形跡もないことからすると、同証言のように税務署側の助言に基づくものと推認できるから、同証言は全体として信用することができ、これに反する上記記載は採用できない。 (12) Cは、平成6年3月28日に、千歳農協から融資確約書を受領した。同書作成の前提として、Cは、農協の職員から融資確約書のひな形を作るように依頼されたことから、自らワープロでひな形を作成して渡し、同ひな形に押印を受ける形での交付を受けた。翌29日には、融資確約書を追加した上、建設工事の着工予定日」欄及び「建設工事の完成予定日」欄については上記の指導のとおり空欄としたまま、承認申請書を北沢税務署長宛に提出し、同署は、同申請署を受理した(乙ロ5の2、C)。 (13) 北沢税務署長は、平成6年4月8日付け「特定市街化区域の内等の特定転用に関する承認書」により、本件土地に係る租税特別措置法の一部を改正する法律附則第19条6項3号の承認申請を承認した(甲6)。 なお、北沢税務署においては、一般に特定転用の承認申請につき承認の可否を審査するために、「 より、本件土地に係る租税特別措置法の一部を改正する法律附則第19条6項3号の承認申請を承認した(甲6)。 なお、北沢税務署においては、一般に特定転用の承認申請につき承認の可否を審査するために、「特定転用の適否判定表」と題する定型書式を用いて法令所定の要件を列挙して逐一要件に該当するか否かをチェックした上、総合判定を下すこととしているが、本件申請について作成された判定表においては、審査すべき14項目の要件のうち、11項目については要件に該当する旨のチェックがされているものの、残りの3項目、すなわち、添付書類が十分か否か、共同住宅は農協等から融資を受けて新築又は取得する予定のものか否か及び家賃が限度内である旨の説明書の発行につき同意があるか否かについては、要件に該当するとも該当しないともチェックされないまま、総合判定として、特定転用の要件を満たしており添付書類も適正であるとの記載がされている(乙ロ3)。また、Dが平成14年事件提起後に作成した陳述書(乙ロ4)中には、この点につき、適正家賃にかかる証明書の発行同意書が添付されていないことには気付いたが、後日追完されるものと判断したこと、その余の添付書類は、融資確約書を含めて適正なものと判断したとの記載がある。 (14) Cは、平成6年6月7日、改正規則附則9条4項に基づき、北沢税務署に共同住宅の建築工事の着工に関する届出書を提出した。同届出書には、平成5年1月28日付けの賃貸住宅ローン借入申込書、前記契約書、前記建築確認通知書等が添付されているところ、同届出書表面の「建設工事の着工日」及び「建設工事の完成予定日」欄は、Cが自らの判断で空欄としたものの、賃貸住宅ローン借入契約書には着工日の欄に「平成5年2月5日完成引渡し6/2」との記載があり、利子補給契約には何らの言及もなかった(甲 工事の完成予定日」欄は、Cが自らの判断で空欄としたものの、賃貸住宅ローン借入契約書には着工日の欄に「平成5年2月5日完成引渡し6/2」との記載があり、利子補給契約には何らの言及もなかった(甲36、C)。 (15) 北沢税務署長は、平成9年9月3日、原告に対し、「『特定転用の継続届出書』の提出について」と題する書面を送付し、転用された特定市街化区域農地等について納税猶予の特例の適用を引き続き受けようとする場合には、「特定転用の継続届出書」を平成9年4月8日までに提出することが要件であるから、提出するように通知した。同書面には、「『適正家賃に係る証明書』の提出も必要であるので、平成7、8年の証明書の提出もお願いします。」との手書きの記載が付記されていた(甲7、当事者に争いのない事実)。 (16) 原告は、北沢税務署長に対し、平成9年10月13日、転用の継続届出書及び理由書を提出し(乙1、2)、平成10年3月27日、住宅金融公庫東京支店長が作成した本件建物の平成6年分ないし平成9年分の家賃についての「適正家賃に係る証明書」を提出した(甲8の1ないし4)。 (17) 北沢税務署長は、平成10年6月9日、原告が平成6年12月31日までに、適正家賃に係る証明書の写しを提出しなかったことにより、平成7年3月6日に相続税の納税猶予期限が確定したとして、「猶予期限が確定した相続税額の通知書」により、納税の猶予がされていた相続税の全額1億4379万4400円について納税猶予の期限が確定したため、これに加えて猶予されていた期間中の利子税1億0439万1500円と相続税本税に対する猶予期限の翌日から延滞税(少なくとも同日まで3425万0700円、別紙2計算書参照)を納付すべきことを原告に通知した(甲9)。 2 本件差押処分が無効なものといえるか否か(争点1 相続税本税に対する猶予期限の翌日から延滞税(少なくとも同日まで3425万0700円、別紙2計算書参照)を納付すべきことを原告に通知した(甲9)。 2 本件差押処分が無効なものといえるか否か(争点1)原告は、法で要求されるものとは異なるもの、それとほぼ同内容の適正家賃に係る証明書を提出していることによれば納税猶予期限は確定せず、また、北沢税務署の所部職員の相談指導の内容にかんがみれば信義則上、納税猶予期限の確定を原告に対抗し得ず、相続税の納税義務は、差押処分時においても履行しなければならないものではないとし、にもかかわらずされた本件差押処分は無効である旨主張する。 しかし、改正法附則19条6項3号ニ(1)の規定によれば、適正家賃に係る証明書は、農業協同組合等の融資に当たっては建設大臣が発行する証明書を提出することが義務付けられ、それを提出しなかった場合には、同条8項3号により当該提出期限において転用がされたものとみなすと明記されている以上、それと同内容を有する他の者が作成した証明書を提出したとしても、同条所定の証明書を提出したと扱うことは困難というべきであり、転用に基づく納税猶予期限の確定が生じたものとみざるを得ない。また、仮に、原告が主張するとおり、北沢税務署の所部職員の本件承認申請時の相談・指導の内容や承認を税務署による見解の表示とみて信義則の適用を考えるとしても、信義則を主張するには、まず自らの帰責事由のないことが必要であると考えられるところ、上記証明書及びその提出することの同意書が必要であることは、上記の法文自体から明らかであり、これを看過して承認処分をした北沢税務署長の行為が法に違反するものであると同時に、原告が同処分が有効であること信じたとすると、原告にはその点に過失があったといわざるを得ず、信義則違反を主張して同処 これを看過して承認処分をした北沢税務署長の行為が法に違反するものであると同時に、原告が同処分が有効であること信じたとすると、原告にはその点に過失があったといわざるを得ず、信義則違反を主張して同処分の有効性を主張することはできないというべきであって、処分が違法であることは原告の過失を加味しつつ国家賠償請求の可否において検討すべき問題であると考えられる。 そうすると、原告の納税猶予期限の無効の主張には理由がなく、原告は、本件差押処分固有の違法については何ら主張していないところであるから、本件差押え処分が無効であるとの原告の主張を採用することはできないことになる。 3 国家賠償請求の成否(争点2)(1) 違法な承認の存在改正法附則19条6項によれば、農業相続人が、平成4年1月1日から平成9年12月31日までの間に、当該特定市街化区域農地等の全部又は一部につき、同項の各号に掲げる要件に該当する転用をする見込みであることにつき、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該承認に係る当該転用は、旧法70条の6第1項及び第7項に規定する譲渡等に該当しないものとみなすとされ、同項3号は、転用の要件として、利子補給法2条1項に規定する農業協同組合等(同項に規定する利子補給契約を締結するものに限る)の融資を受けて新築することとされており、納税猶予期限までの間の各年12月31日までに当該年分の当該賃貸にかかる家賃の額がロの限度内である旨の証明書を発行することについての同意を与えていることを定めている。そして、改正令附則第10条4項は、特定転用の承認申請の申請書及び大蔵省令で定める添付書類を提出しなければならないものと定め、改正規則附則9条2項3号は、農業協同組合等の当該共同住宅の新築に際し融資を行う旨を約する書類(「共同 は、特定転用の承認申請の申請書及び大蔵省令で定める添付書類を提出しなければならないものと定め、改正規則附則9条2項3号は、農業協同組合等の当該共同住宅の新築に際し融資を行う旨を約する書類(「共同住宅の新築資金の融資確約書」)、建設大臣の書類で、当該共同住宅の賃貸にかかる家賃の額が附則19条6項3号ロの限度内である旨の証明書を当該農業相続人に係る同号ニに規定する納税猶予期限までの間、同号ニに規定する提出期限までに発行することについての同意の記載があるものの提出をすることを義務付けており、それらは、承認を行うための要件とみるべきものである。 そして、施行規則附則が「共同住宅の新築資金の融資確約書」を添付資料として提出するよう定めた趣旨は、農業相続人が農業協同組合等の融資を受けて共同住宅を新築する場合に、承認の対象となるのは利子補給契約を締結してするものに限られるとしていることから、申請の段階において、後に利子補給契約が確実に締結されるか否かを確認するためであると解される。 これを、本件についてみるに、前記1(14)のとおり、原告が千歳農協と締結した融資契約は単なる賃貸住宅ローン契約と題するものであって、利子補給契約を伴わないものとなっており、原告が提出した融資確約書は、Cが自ら作成した書式によるものであって、前記1(7)の通達が定める「共同住宅の新築資金の融資確約書」と全く異なるものであることはもちろん、共同住宅の新築に当たり、利子補給契約が締結され、融資条件が整備された場合に、新築資金を融資することを約する旨の記載はなかった。そして、実際にも、原告は、利子補給契約の締結の申請を行っておらず、千歳農協が利子補給契約を締結することはなかったものである。 そうすると、本件承認申請は、改正規則附則が要求する融資確約書の添付がなく、また にも、原告は、利子補給契約の締結の申請を行っておらず、千歳農協が利子補給契約を締結することはなかったものである。 そうすると、本件承認申請は、改正規則附則が要求する融資確約書の添付がなく、また、改正法附則が要件とする利子補給契約を伴う農業協同組合からの融資がないままされたものであり、本来であれば、要件を充足しないものであり、にもかかわらず、承認という結論を採った本件承認処分は、改正法附則に違反するとの趣旨で違法なものであるといわざるを得ない。 そして、前記1(13)のとおり、北沢税務署の担当官であるDには、本件処分時はもとより本訴提起後に至っても本件申請にこのような問題があることを看過していたといわざるを得ない。この点は法令を素直に読めば税務署職員として当然に認識し得べきことである上、前記1(7)の通達は、この点に遺漏がないよう「共同住宅の新築資金の融資確約書」の書式を定め、その提出によってこの要件具備の有無を容易に判断できるようにしているのである。同通達は各税務署にも送付され、Dが、前記1(8)のとおり同通達別記様式第2号の「新築又は取得に係る共同住宅に関する証明書」をひな形としてCに交付していることからすると、同人は同通達が別記様式第1号として「共同住宅の新築資金の融資確約書」の書式を定めていることも容易に知り得たものと認めることができ、それにもかかわらず、その書式と異なった融資確約書が提出され、利子補給契約が締結されているか否かが不明であるのに、その点に気付かなかったことは、本件承認の担当者として職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件申請が法令所定の要件を満たしていると判断したものというべきであり、その点において国家賠償法1条1項にいう違法な公権力の行使を行ったものと認められる。 (2) 損害及び本件承認処分と となく漫然と本件申請が法令所定の要件を満たしていると判断したものというべきであり、その点において国家賠償法1条1項にいう違法な公権力の行使を行ったものと認められる。 (2) 損害及び本件承認処分と損害の因果関係ア原告は、自己の相続税のうち旧法70条の6第1項の適用を受けた本件各土地について、同条の特例の適用を受けたまま(納税猶予期限が確定することなく)相続税の申告書の提出期限の翌日から20年を経過した場合などには、相続税の免除を受けることができるものとされ(同条20項4号)、昭和58年9月30日本件各土地を相続で取得した原告においては、納税猶予期限が確定することなく平成16年3月31日ころ(死亡を知った日により若干の変動が考えられる。)を経過した場合には相続税の免除を受けることができたところ、納税猶予期限が確定したことにより、本件各土地にかかる相続税本税に加え、利子税1億0439万1500円と納税猶予期限の確定時からその旨の通知を受けた同年6月9日までの延滞税3425万0700円の合計2億8243万6600円の支払いを余儀なくされ、同年8月25日に本税相当額の1億4379万4400円を支払った。 イそして、北沢税務署長が、原告が所定の融資確約書を提出してないことや利子補給契約を伴う融資契約を行っていないことを看過せずに違法な承認を行わず、申請書類作成段階でその旨指摘を行うか、申請を却下するかのいずれかを行った場合、原告としては、その時点において利子補給法2条に定める利子補給契約締結の申請を国土交通大臣に対して(利子補給法施行規則1条)行うことは困難であった可能性が高いものの、その時点でほぼ完成していた本件建物(その完成により転用の状態とはなっていなかったことは後に説示する)を直ちに取り壊し、再度、本件各土地を農地とすることによ うことは困難であった可能性が高いものの、その時点でほぼ完成していた本件建物(その完成により転用の状態とはなっていなかったことは後に説示する)を直ちに取り壊し、再度、本件各土地を農地とすることによって本件各土地に係る納税猶予期限の確定を避けることができたにもかかわらず、違法な承認がされたために本件建物を賃貸の用に供することによって本件各土地を農地以外のものに転用したものというべきであり、そのような転用をしなければ、上記合計2億8243万6600円の支払義務が現実に生ずることはなかったと認められるから、上記違法な承認により、原告はこれと同額の損害が発生したと認められる(なお、利子税及び延滞税については、原告の支払いが遅延したことによって発生したかのようにみえないでもないが、利子税は納税猶予期間中のものであるから猶予が続く限り支払いを要しなかったものであり、延滞税も北沢税務署長が納税猶予期間の確定通知をした日までに既に発生していたものであって、本件の事実関係の下では原告がそれ以前に相続税の納付をしてその発生を阻止することができなかったものと認められるから、いずれも原告の損害に算入すべきものと認められる。また、原告の損害に関する主張の中には利子税及び延滞税相当額が明示されていないが、原告が、平成14年事件につき、損害発生の前提事実として納税猶予期限が確定した旨の通知を受けたことに言及していることからすると、本件における損害は、納税猶予期限が確定した旨の通知書に記載された相続税本税、利子税及び延滞税を含む旨主張しているものと善解し得る。)。 ウ(ア) この点につき、被告国は、本件においては、原告は、遅くとも、平成6年3月24日には、本件各土地の全部について、旧法70条の6ただし書1号に定める転用を行ったものというべきであり、転用の日から2 ア) この点につき、被告国は、本件においては、原告は、遅くとも、平成6年3月24日には、本件各土地の全部について、旧法70条の6ただし書1号に定める転用を行ったものというべきであり、転用の日から2ヶ月の経過した日をもって納税猶予期限が確定したというべきであり、北沢税務署長の承認と損害との間には相当因果関係が存しないと主張する。 (イ) 原告は、被告国の前記(ア)の主張につき、時期に遅れた攻撃防御方法にあたり、また、時期に遅れた攻撃防御方法に当たらないとしても、これまでの審理経過にかんがみれば信義則上、主張することは許されないものである旨主張する。 しかし、前記(ア)の主張の主体である被告国は、原告が平成14年1月15日に提起した平成14年事件において初めて被告となったものであり、平成14年3月4日の同事件の第1回弁論準備手続期日で訴状が陳述された後(同日には、平成11年事件の第4回弁論準備手続期日も行われ、同日平成11年事件と平成14年事件の弁論が併合された。)、平成14年6月11日に提出し、平成14年10月16日の第6回(併合後)弁論準備手続期日において陳述された被告国の第1準備書面において前記(ア)の主張を行っているのである。確かに、被告国の指定代理人は平成11年事件につき被告東京国税局長の指定代理人が兼ねており、被告国と被告東京国税局長を同一視して時期に遅れた攻撃防御方法や信義則を検討するとの主張も理解できないでもなく、上記主張は平成11年事件においても被告東京国税局長において北沢税務署長のした処分の有効性を基礎付けるものとして主張し得たばかりか、同主張が正しいものとするならば、本来この主張をこそすべきものであったとも考えられるが、同事件においては、この主張をしなくても被告東京国税局長が勝訴することが可能であり、この主張を し得たばかりか、同主張が正しいものとするならば、本来この主張をこそすべきものであったとも考えられるが、同事件においては、この主張をしなくても被告東京国税局長が勝訴することが可能であり、この主張をすることは、本件承認処分時に処分庁が重要な事実を看過していたことも認めることを意味することからすると、あえて同事件被告がその主張を差し控え、因果関係が争点として顕在化した平成14年事件の訴え提起の後に至って上記主張をしたことには無理からぬ点があると認められるから、民事訴訟法157条1項の規定や信義則により、前記の主張を却下すべきとの原告の主張は採用し得ない。 (ウ) そこで、被告の前記(ア)の主張の当否について検討するに、農地とは「耕作の目的に供される土地」(農地法1条)をいい、土地の事実状態に基づき客観的に判定すべきものであるところ、いわゆる耕地とは異なり、現に耕作されている土地に限らず、一時的に耕作していない状態であっても、所有者が耕作するつもりになれば耕作することが可能な場合も含まれるものと解される。そして、転用とは、農地を農地以外のものに変えることであり、耕作の目的に供されない土地に変更することをいう。 これを本件についてみるに、原告は、昭和58年に相続により本件各土地を取得し、相続税の申告の際に同土地について旧法70条の6第1項の納税猶予の特例を受け、同土地において20年間営農しなければ相続税の猶予を受けられないということを認識して同土地において8年間にわたり営農してきたが、平成3年に至り、正和建設から納税猶予を継続したまま建物を建てられるのでマンションを建てないかという誘いを受け、当初は、相続税を払うことになれば非常に大きな負担を強いられるとして消極的であったが、その後も強い誘いを受け続けたため、契約書に明示こそしなかったも れるのでマンションを建てないかという誘いを受け、当初は、相続税を払うことになれば非常に大きな負担を強いられるとして消極的であったが、その後も強い誘いを受け続けたため、契約書に明示こそしなかったものの、納税猶予が問題なく継続できることを条件としてマンション建築の話を前向きに考えることとしたものであり、原告本人尋問においても、仮に建物が完成した後でも、納税猶予期限が確定し免除が受けられないことが明らかになった場合、解体費用を負担してでも、マンションを壊して再度農地化する意向を持っていた旨を明確に述べている。また、上記の事実関係に照らすと、本件建物は、本件承認当時において完成後間もない状態であって、この時点において承認申請が却下されたならば、これを賃貸の用に供さず、正和建設の責任において解体させた上、農地の現状に復させることも十分可能であったと認められる。 以上によれば、平成6年3月28日の承認申請時、若しくは同年4月8日の承認時において、原告としては同申請が認められない場合には本件建物を取り壊して再度営農をする意向を持っており、それは十分に可能なものであったといえるのであるから、本件各土地は未だ転用には至っていないものとみるべきである。 また、仮に、建物の完成時に転用に至ると考えた場合においても、旧法70条の6第1項によれば、納税猶予期限が確定するのはその2ヶ月後であり、確定前に転用を指摘され猶予期限が確定する前に再度農地としての供用を開始した場合には納税猶予期限は確定しないものとして取り扱われるべきであるところ、本件建物の完成時は証拠上必ずしも明らかではないが、被告の主張する平成6年3月24日(登記受付日)よりもさかのぼって、本件建物の登記簿謄本による本件建物の完成日である平成6年2月26日を完成日とみたとしても、納税猶予期限 必ずしも明らかではないが、被告の主張する平成6年3月24日(登記受付日)よりもさかのぼって、本件建物の登記簿謄本による本件建物の完成日である平成6年2月26日を完成日とみたとしても、納税猶予期限の確定はその日から2ヶ月後の平成6年4月26日となるのであり、仮に、Cが本件申請書の提出のために平成6年3月下旬の時点で、北沢税務署所部職員が本件転用が承認される見通しがないことを告げ、原告及び正和建設が4月26日までに本件建物を取り壊して営農可能な状態にしなければならない旨を認識したならば、それが可能であったと考えられる。 そうすると、本件建物は、本件承認申請及び違法な承認決定の時点で未だ転用がされていないか、転用がされたとしても、納税猶予期限の確定前に転用前の状態に戻すことが可能であったものというべきであり、被告の主張は採用し得ない。 (3) 北沢税務署担当職員の過失及び過失相殺ア前記(1)で説示したことからすると、本件申請の違法な承認について、北沢税務署担当職員であるDに国家公務員としての注意義務に違反し、過失が存することは明らかといわざるを得ない。特に、本件特例に関する旧法の規定は、一般人にとっては、その文言が難解である上、附則に規定が置かれていることなどから理解することが極めて困難であり、本件承認を得るまでに必要とされる契約の内容や添付資料、申請手続等を正確に把握するのは容易なことではないのであるから、税務署の担当職員には、その行為規範として、納税者からの照会があった場合に手続について具体的かつ親切に説明を行うことを要求され、また、仮に、納税者に不利益が生じる可能性が発生した場合には、その不利益が可及的に少ないものであるように配慮しなければならないことは論を待たないというべきである。 イ他方、一般的に、租税法規の定める特 仮に、納税者に不利益が生じる可能性が発生した場合には、その不利益が可及的に少ないものであるように配慮しなければならないことは論を待たないというべきである。 イ他方、一般的に、租税法規の定める特例の適用を申請するに当たり、その要件を理解し、適式な申請書や要求された添付書類を用意することなどは第一義的には納税者の義務であるというべきであり、本件においても、原告が前記のとおりその義務を果たさなかったことについては、原告に注意義務違反があるものというべきである。本件では、原告自身は納税猶予手続に関与しておらず、むしろ、建物の建築を請け負った正和建設、建物の設計管理を請け負い納税猶予手続を具体的に行ったアクトに注意義務違反があり、それ以上に本件建物建築計画に主体的に関与し、建設大臣から本件特例に関する通達を受けていながら本件特例の適用に必要な契約の締結や書類の作成を怠った千歳農業協同組合には著しい注意義務違反があるというべきであるが、被告国との関係においては、これらの注意義務違反は原告側の過失と評価すべきものであり、これらの注意義務違反が本件の損害発生に寄与した割合は極めて高いというべきであり、本件賠償額の算定に当たっては、原告側の前記過失を考慮し、原告の損害に8割の過失相殺をするのが相当である。 (4) まとめ以上によれば、原告の損害のうち、被告国において賠償すべき金額は、損害額2億8243万6600円に8割の過失相殺をした5648万7320円となり、同被告は、原告に対し、不法行為の日の後である平成10年8月27日から民法所定の年5分の割合の遅延損害金を支払うべきである。 第4 結論以上によれば、原告の被告国に対する請求は主文掲記の範囲で理由があるからこれを認容し、被告東京国税局長に対する請求及び被告国に対するその余の請求は理由 の遅延損害金を支払うべきである。 第4 結論以上によれば、原告の被告国に対する請求は主文掲記の範囲で理由があるからこれを認容し、被告東京国税局長に対する請求及び被告国に対するその余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については、本件が税務署職員の違法な職務行為に端を発していることにかんがみ、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法64条本文、61条のほか同法62条の趣旨にかんがみ主文のとおり判決する。なお、仮執行宣言は、相当でないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官廣澤諭裁判官加藤晴子(別紙1,2略)
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