- 1 -主文 1 原告の本訴請求及び被告の反訴請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、本訴・反訴を通じ、各自の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 本訴(1) 原告が、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 (2) 被告は、原告に対し、2万7270円及びこれに対する令和2年8月29日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 (3) 被告は、原告に対し、令和2年9月から毎月28日限り、5万4540円及びこれに対する各弁済期の翌日から各支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 (4) 被告は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和4年3月10日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 反訴原告は、被告に対し、440万円、及びうち330万円に対する令和3年7月30日から、うち110万円に対する令和4年1月16日から、各支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件本訴事件は、原告が、被告に対し、①被告との間で期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結して就労していた原告が、被告による雇止め(以下「本件雇止め」という。)は無効であると主張して、労働契約上の地位の確認及び本件雇止め後の賃金の支払等(前記第1の1(1)ないし(3))を求めるとともに、②本件反訴は不当訴訟であるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、その賠償金等の支払(前記第1の1(4))を求め- 2 -た事案である。 本件反訴事件は、被告が、原告に対し、①被告の名誉や信用を毀損する内容の記者会見を行い、②京都府下の多数の労働組合をして、被告の雇止めへの (前記第1の1(4))を求め- 2 -た事案である。 本件反訴事件は、被告が、原告に対し、①被告の名誉や信用を毀損する内容の記者会見を行い、②京都府下の多数の労働組合をして、被告の雇止めへの抗議や撤回を求める大量の書面を被告に送りつけさせて被告の業務を妨害し、③A労働組合総連合会(以下「本件総連」という。)の関係者に誤った事実を流布して、被告の名誉や信用を毀損したなどと主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、その賠償金等の支払を求めた事案である。 1 前提事実(特に証拠を掲げない事実については当事者間に争いはない。)(1) 当事者等ア被告は、色紙・書道用紙等の製造販売等を業とする株式会社である。 (乙56)イ原告は、平成30年5月7日からの3か月にわたる試用期間を経て、同年8月7日、被告との間で、概要、下記内容の有期労働契約(以下「本件労働契約」という。)を締結し、製造部で下記業務に従事していた。 記(ア) 雇用期間(2条)平成30年8月7日から1年間(令和元年8月6日)とし、原告及び被告が本件労働契約の継続を望んだ場合には、同内容で1年間に限り継続し、その後も同様とする。ただし、原告が定年(60歳)に至った時点で、原告は退職する。 (イ) 業務内容(3条)被告の商品の製造を基本とするが、場合により営業部の補助その他被告の指示する業務を行うこととする。 (ウ) 賃金(4条)1時間当たり882円。毎月20日締め同月28日払い。 (エ) 勤務日並びに始業・終業時間及び休憩時間(5条)- 3 -月曜日、水曜日、金曜日の午前9時から午後3時まで(休憩時間1時間10分)。 (甲1、弁 8日払い。 (エ) 勤務日並びに始業・終業時間及び休憩時間(5条)- 3 -月曜日、水曜日、金曜日の午前9時から午後3時まで(休憩時間1時間10分)。 (甲1、弁論の全趣旨)(2) 本件労働契約は、令和元年8月、上記(1)イと同様の内容で更新され、雇用期間は、令和2年8月6日までとされた。 (3) 被告代表者及び被告の取締役である被告訴訟代理人B弁護士(以下「B取締役」ということがある。)は、令和2年3月4日、原告と面談し(以下「本件面談」という。)、他の従業員から原告に対する苦情が出ている旨告げた。 (4) 被告は、新型コロナウィルス感染症拡大による非常事態宣言の発令を受け、令和2年4月20日頃から、一部の無期雇用従業員と全てのパート従業員を休業とした。 (甲10、21、乙61、弁論の全趣旨)(5) 被告は、令和2年7月8日頃、原告に対し、雇用期間満了(同年8月6日)後、本件労働契約を更新しない旨通知した。 一方、原告は、遅くとも同月上旬までには、被告に対し、本件労働契約の更新を申し込んだが、被告が承諾することはなかった。 (甲5、21)(6) 原告は、令和2年10月、本件本訴を提起したことにつき、株式会社C社のインタビュー(以下「本件インタビュー」という。)に応じ、概要、次のアないしエの各発言(以下、併せて「本件インタビュー上の発言」という。)をし、その内容が、同月10日頃、インターネット上で広く公開された。 ア採用時、「1年更新、60歳まで」とする雇用契約で、1回目の更新時期が来た昨年(令和元年)は、契約更新の手続もなく継続されたが、今年(令和2年)は様子が違った。 イ (令和2年)3月に社長と取締役との三者面談に呼び出され、皆 する雇用契約で、1回目の更新時期が来た昨年(令和元年)は、契約更新の手続もなく継続されたが、今年(令和2年)は様子が違った。 イ (令和2年)3月に社長と取締役との三者面談に呼び出され、皆と仲良くしていない、仕事の効率が悪いなどと身に覚えのない叱責を受け、改善- 4 -がない場合は雇止めを検討する旨宣告された。 ウ大きなミスをしたわけではなく、一方的に契約を更新しないと言われても納得できない。 エ呼出しを受けたころから不安が募るようになり、会社側から関わるなと言われた労働組合員に相談した。 (乙35)(7) 原告は、本件第1回口頭弁論期日が行われた令和2年10月26日、京都市内で、記者会見(以下「本件記者会見」という。)を行った。その際、原告は、理不尽な理由で雇止めにあい、強い憤りを感じる旨述べた(以下「本件記者会見上の発言」という。)。 そして、本件記者会見を受けた記事(乙33、34)等が、広く公開された。 (8) 令和4年1月15日、本件総連22年春闘討論集会・第222回拡大中央委員会において、被告につき、概要、下記内容を含む宣言(以下「本件宣言」という。)が採択され、その内容を記載した文書(乙57)が被告宛てに送付された。 ア雇用調整助成金を受給しているにもかかわらず、業績悪化を理由とする雇止めを強行した。 イ経営悪化の根拠とする資料をなかなか提出しない。 ウ原告と同時期に入社し、現在も雇用が維持されている非正規雇用労働者と処遇が違う理由を説明しない。 エコロナ禍を口実に、出廷して直接原告と向き合わない。 オ労働組合活動に対し、被告の名誉を傷つけたとして原告個人に損害賠償を求める反訴を起こした。 2 争点及び争点についての エコロナ禍を口実に、出廷して直接原告と向き合わない。 オ労働組合活動に対し、被告の名誉を傷つけたとして原告個人に損害賠償を求める反訴を起こした。 2 争点及び争点についての当事者の主張(1) 雇用継続の合理的期待について- 5 -(原告の主張)ア原告が被告において従事していた業務には恒常性がある。 すなわち、被告は主に色紙製造を業としており、原告の主たる担当業務は、ベルトコンベヤーの先頭に設置された糊付け機に多種類の紙を通すこと(以下「紙流し作業」ということがある。)であったが、同作業は、色紙製造の最初の工程であり、必要不可欠である。また、原告は、縁巻き機での検品作業も担当していたところ、同作業は、縁巻き機に流れている色紙の表面にしわや汚れ、破れがないかを目視により確認する作業で、色紙製造の最終工程であり、必要不可欠である。 上記各工程は、現在、新型コロナウィルス感染症禍の事情から他の無期雇用従業員が兼任している。 イ本件労働契約は、臨時的なものではない。 本件労働契約では、雇用期間につき、原告及び被告が本件労働契約の継続を望んだ場合には、同内容で1年間に限り継続し、その後も同様とし、原告が定年(60歳)に至った時点で退職とする旨定められている。 ウ原告は、55歳4か月のときに、被告との間で本件労働契約を締結していて、その際、雇用契約書(甲1)に60歳定年と記載されており、被告代表者からも定年となる60歳まで働けると聞かされたため、少なくとも60歳までは雇用が確保されると信じていた。 また、原告は、原告が担当する業務を以前に担当していた有期雇用パート従業員が長期にわたって勤務していたことを知り、原告自身も短期間で雇止めさ 60歳までは雇用が確保されると信じていた。 また、原告は、原告が担当する業務を以前に担当していた有期雇用パート従業員が長期にわたって勤務していたことを知り、原告自身も短期間で雇止めされることはないと信じていた。 さらに、令和元年8月には、被告から原告に対して契約更新意向について聴取されるようなことも、また、互いに明示的な意思表示をするようなこともなく本件労働契約が更新されたことから、今後も同様に雇用は継続するものと信頼していた。 - 6 -エ原告は、令和2年8月7日時点で、試用期間を含めると2度の契約更新を経ていて、その契約期間は通算2年3か月である。そして、上記ウのとおり、令和元年8月の更新時には、原告についての更新手続は形骸化していた。 オ被告では、これまでに退職したパート従業員は、いずれも自己都合又は合意によって退職したもので、契約期間満了により雇止めされた者は1人もいない。 (被告の主張)ア原告が携わっていた業務は機械的業務であって、継続性が必要とされるものではない。 なお、現在、ベルトコンベヤーを使用した業務自体は稼働しているが、従前紙流し作業1名、紙をとる作業1名、サポート作業2名で業務を行っていたが、現在では、紙流し作業1名、紙をとる作業1名、サポート作業1名で業務を行っており、しかも、その3名ですら、全ての営業日に出勤しているわけではない。 イ本件労働契約は、1回のみ更新されたにすぎず、その通算期間も2年と短期間である。その労働時間も、週3回、終業時間午前9時から午後3時まで(休憩時間合計1時間10分)のパート勤務で、給与も時給制であり、本件労働契約が臨時的なものであることは明白である。 被告は、和紙製造加工の業務量が多い 、終業時間午前9時から午後3時まで(休憩時間合計1時間10分)のパート勤務で、給与も時給制であり、本件労働契約が臨時的なものであることは明白である。 被告は、和紙製造加工の業務量が多い時期があったことから、その応援として有期雇用の従業員を求め、原告との間で本件労働契約を締結するに至ったものであり、その経緯からも、本件労働契約が臨時的なもので、長期雇用を前提としたものでないことは明らかである。 ウ本件労働契約では、雇用期間につき、原告及び被告が本件労働契約の継続を望んだ場合には、同内容で1年間に限り継続する旨定められているのであって、1回を超える更新の期待を明確に打ち消している。なお、定年- 7 -(60歳)に至った時点で定年退職とする旨の定めは、最長でも60歳で退職となる旨の記載であって、60歳になるまで必ず継続雇用するとの意味ではない。 被告代表者が、採用時、原告に対し、定年60歳まで働ける旨発言したことはない。 被告代表者は、令和2年3月4日、B取締役とともに、原告と面談した際(本件面談)、原告に対し、本件労働契約を更新するかしないかについては、原告の勤務態度を考慮せざるを得ない旨告げており、原告においてもその際、異議を唱えるようなことはなかった。 エ双方が本件労働契約の継続を望んだ令和元年8月の本件労働契約更新時に、被告から形式的な説明等がなかったからといって、更新手続が形骸化していたとはいえない。 オ被告は、以前にも、経営上の理由で、短期間で有期労働契約を終了したことは複数回あったもので、被告における他の有期労働契約の雇用状況をもって、原告に更新の合理的期待が認められる余地はない。 (2) 本件雇止めの客観的合理性・社会的相当性について(原告の主張 複数回あったもので、被告における他の有期労働契約の雇用状況をもって、原告に更新の合理的期待が認められる余地はない。 (2) 本件雇止めの客観的合理性・社会的相当性について(原告の主張)令和2年8月当時、雇用調整助成金の特別拡充の延長期限は同年9月末までとされており、同年12月末までの延長については、正式決定されていたわけではなかったが、その旨の報道はあったもので、被告は、同年9月末まで原告の雇用を延長し、雇用調整助成金の特別拡充による支給の対象とすることにより、同年8月時点での原告の雇止めを容易に回避できた。 現に、被告は、原告の雇用期間延長につき、雇用調整助成金の特別拡充適用期間に限定して同年9月末まで延長することを検討していた。なお、原告は、労働時間が短いため、雇用保険等社会保険に加入しておらず、その使用者負担も発生しない。 - 8 -(被告の主張)ア原告に更新の合理的期待が認められるとしても、その程度が高いとはいえないから、本件雇止めの客観的合理性や相当性は、通常の解雇の場合と比較して、緩やかに判断されるべきである。 イ被告の売上げは、新型コロナウィルス感染症の影響が始まった令和2年3月は、前年度比の約62%、同年4月は前年度比の約29.4%、同年5月は前年度比の約26.8%、緊急事態宣言解除後の同年6月でも前年度比の約48.8%にとどまっていて、本件雇止め時点で、被告の経営状況は著しく悪化しており、過去に一度もなかった従業員全員への賞与不支給も決断した。 ウ本件雇止め時点では、2か月にわたり、製造部のパート従業員全員及び無期雇用従業員の一部が完全に休業しており、出勤している無期雇用従業員ですら、所定の就業日の一部しか出社していなかった。ベルトコンベヤー 雇止め時点では、2か月にわたり、製造部のパート従業員全員及び無期雇用従業員の一部が完全に休業しており、出勤している無期雇用従業員ですら、所定の就業日の一部しか出社していなかった。ベルトコンベヤー業務は止まっており、原告が行わなければならない業務はなかった。 エ本件雇止め時点では、雇用調整助成金の支給が令和2年12月まで延長されることは決定されておらず、同決定がされたのは、同年8月末のことであった。 オ製造部には、原告以外に、2度の契約更新(雇用期間各1年)を経た、通算雇用期間3年になる有期雇用パート従業員(以下「本件従業員」という。)がいたが、令和2年6月、雇用調整助成金の支給要領(令和2年6月12日版。乙3)は、期間雇用労働者に対する解雇と見なされる雇止めを行わないなどの雇用維持要件を満たす場合には、助成金の助成率を中小企業にあっては10分の10に引き上げるとされたところ、本件従業員を雇止めにした場合は(雇用保険法23条2項2号、同法施行規則36条7号)、被告に支給される雇用調整助成金が減額される状況にあり、減額されれば被告の経営に大打撃となるため、原告以外の従業員を雇止めにする- 9 -選択肢はなかった。 カ原告の勤務態度については、被告の複数の従業員から、製造部の従業員の指示を忠実に遂行しない傾向にあり、同じことを何度言われてもそれを実行しないとか、指導を受けると反発する発言をしたり、他の従業員への苦情に転化させたりするなどといった苦情や是正要望が繰り返しあったもので、人選の合理性がある。 (3) 原告による被告に対する名誉・信用毀損等(被告の主張)ア本件記者会見(ア) 原告は、本件記者会見の席上、理不尽な理由で雇止めにあい、強い憤りを感じる旨述べるとともに、 原告による被告に対する名誉・信用毀損等(被告の主張)ア本件記者会見(ア) 原告は、本件記者会見の席上、理不尽な理由で雇止めにあい、強い憤りを感じる旨述べるとともに、被告が、新型コロナウィルス感染症対策の雇用調整助成金を受給しているにもかかわらず、同感染症の影響を理由に雇止めにしたのは不当である旨述べた。 本件記者会見は、その内容が広く一般国民に報道されることを企図して、多数の報道機関に対して、被告の会社名を明示した上で、具体的な事実を摘示して行われ、その内容がテレビや新聞、インターネット等の媒体を通じて広く報道された。 そして、本件記者会見での報道内容は、一般人の普通の注意と読み方によれば、被告が実際には何ら違法なことなどしていないにもかかわらず、受給した雇用調整助成金に相当する休業手当を原告に支払っていないかのような印象を与え、また、被告が、実際には原告を適法に雇止めしたにもかかわらず、雇用調整助成金を受給しているのに理不尽な理由で違法に雇止めしたかのような、労働者の権利を侵害する不当な企業であるとの印象を確実に与えるものである。 (イ) 被告は、受給した雇用調整助成金を全て適切に従業員給与の支払に充てている。被告が雇用調整助成金を受給しているからといって、雇止め- 10 -が不当とされることなどない。 理不尽な理由による雇止めがあったかどうか等は、証拠等をもってその存否を確定し得る事項であり、原告の発言は事実を摘示するものであって、論評にとどまるものではない。 (ウ) 本件雇止めを巡る紛争は、新型コロナウィルス感染症禍での経営に苦しむ零細企業とその従業員との間の個別労使紛争にすぎず、公共性はない。 イ本件インタビュー い。 (ウ) 本件雇止めを巡る紛争は、新型コロナウィルス感染症禍での経営に苦しむ零細企業とその従業員との間の個別労使紛争にすぎず、公共性はない。 イ本件インタビュー(ア) 本件インタビュー上の発言も、広くインターネット上で公開されることを前提として行われている。 そして、その発言は、一般人の普通の注意と読み方によれば、被告が、原告の身に覚えのない叱責をしておらず、また、改善がない場合には雇止めを検討するなどとは実際には言っていないにもかかわらず、被告が、法的に正当でない雇止めを行うような会社であるとの印象を与えるもので、被告の社会的評価を貶めるものである。 被告から労働組合員に関わるなと言われたとの発言についても、被告が不当労働行為をしているかのような印象を与える。 (イ) 原告の本件インタビュー上の発言は、いずれも真実に反しており、また、真実であると信じることについて相当な理由もない。 (ウ) 本件雇止めを巡る紛争は、新型コロナウィルス感染症禍での経営に苦しむ零細企業とその従業員との間の個別労使紛争にすぎず、公共性はない。 ウ本件宣言(ア) 本件宣言の採択は、多数の組合員等が参加する本件総連で公表することを前提に行われており、かつ書面でも広く関係者に送付されている。 その内容は、一般人の普通の注意と読み方によれば、被告が、実際に- 11 -は何ら違法なことなどしていないにもかかわらず、受給した雇用調整金に相当する給与を原告に支払っていないかのような印象を与え、また、被告が、実際には適法な雇止めをしただけであるにもかかわらず、雇用調整助成金を受給しているのに理不尽な理由で、原告を違法に雇止めするなど、労働者の権利を侵害する不 いないかのような印象を与え、また、被告が、実際には適法な雇止めをしただけであるにもかかわらず、雇用調整助成金を受給しているのに理不尽な理由で、原告を違法に雇止めするなど、労働者の権利を侵害する不当な企業であるとの印象を確実に与えるものである。 本件宣言の採択及びその書面の送付は、原告からの情報提供を受けなければ作成することは不可能であり、また、その作成や送付は原告に無断で行うことはあり得ないから、原告の不法行為が成立する。 (イ) 原告の本件インタビュー上の発言は、いずれも真実に反しており、また、真実であると信じることについて相当な理由もない。 (原告の主張)ア原告が、本件記者会見の席上において、被告が、新型コロナウィルス感染症対策の雇用調整助成金を受給しているにもかかわらず、同感染症の影響を理由に雇止めにしたのは不当である旨述べたことはない。通信社が、本件本訴の訴状を基に、その記事において上記のように記載したものであって、原告の本件記者会見における発言ではない。 本件宣言は、本件総連E地連の組合員において、本件訴訟の第1回弁論期日から傍聴してきたことに基づき作成したものであり、原告はその作成に一切関与していない。 イ本件記者会見上及び本件インタビュー上の各発言は、新型コロナウィルス感染症禍における非正規労働者の雇止めという重要な労働問題に関するものであって公共の利害に関する事項に係る。 ウ本件記者会見上及び本件インタビュー上の各発言は、いずれも真実を述べたものである。また、「理不尽」等の表現は、意見ないし論評としての域を逸脱したものではない。 - 12 -エ原告が指摘した事実が真実であることの証明がないとされたとしても、真実と信じるについて相当の理由 た、「理不尽」等の表現は、意見ないし論評としての域を逸脱したものではない。 - 12 -エ原告が指摘した事実が真実であることの証明がないとされたとしても、真実と信じるについて相当の理由がある。 (4) 原告による業務妨害行為(被告の主張)原告は、令和2年7月10日頃から約1週間、被告に対し、京都府下の多数の労働組合をして、原告の雇止めへの抗議や撤回を求める、威圧的な内容の書面(乙37の1ないし37の35)を大量に送りつけた。 上記書面の作成は、原告からの情報提供を受けなければ作成することは不可能であり、また、その作成や送付は原告の了解の下に行われたのであるから、原告の不法行為が成立する。 被告は、これらの書面の対処に追われるとともに、被告従業員にも動揺が生じたことにより、被告の業務が妨害された。 上記原告の行為は、被告の受忍限度を超える。 (原告の主張)原告の雇止め撤回を求める書面(乙37の1ないし37の35)は、本件総連E地連がひな型を作成し、組合活動として、各地連等に協力を依頼したものであり、原告はその書面作成や協力依頼に一切関与していない。被告が上記書面により被告の業務が妨害されたとの点は否認する。 (5) 上記(3)、(4)の行為による被告の損害の発生及びその額(被告の主張)ア原告の上記(3)、(4)の行為により、被告は、多数の顧客のほか、金融機関からも信用を失ったもので、被告が被った損害は400万円〔上記(3)(被告の主張)ア、イの各行為及び上記(4)(被告の主張)の行為につき300万円、上記(3)(被告の主張)ウの行為につき100万円〕を下らない。 イ弁護士費用 40万円(原告の主張)- 13 - イの各行為及び上記(4)(被告の主張)の行為につき300万円、上記(3)(被告の主張)ウの行為につき100万円〕を下らない。 イ弁護士費用 40万円(原告の主張)- 13 -争う。 (6) 本件反訴の違法性並びに原告の損害の発生及びその額等(原告の主張)ア被告が本件反訴において主張する行為は、いずれも違法性がなく、中には、原告が一切関与していない行為まで、原告によるものと決めつけている。 本件反訴は、本件本訴を提起した原告に対し、嫌がらせ目的で提起された不当訴訟である。 イ(ア) 慰謝料 100万円原告は、被告から本件反訴により多額の損害賠償請求を受け、動悸が止まらなくなるほどの恐怖を覚えた。これにより被った原告の精神的損害を慰謝するには、100万円を下らない。 (イ) 弁護士費用 10万円。 (被告の主張)争う。 本件反訴は、事実的、法律的根拠を欠くものではないから、本件反訴提起は違法ではない。 第3 判断 1 争点(1)、(2)について(1)ア前記第2の1前提事実に、証拠(甲1、2、3、5、7ないし14、16の1・2、17の1・2、20ないし24、乙2、7、8、13、14、56、60の1・2、61、64の1、証人D、原告本人、被告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。 (ア) 原告は、ハローワークの紹介により、色紙・書道用紙等の製造販売等を業とする被告に採用され、平成30年5月7日からの3か月にわたる試用期間を経て、同年8月7日(当時55歳)、被告との間で、主たる- 14 -業務内容を商品の製造、賃金を時給882円(毎月20日締め、同月28日支払い)、勤務日 0年5月7日からの3か月にわたる試用期間を経て、同年8月7日(当時55歳)、被告との間で、主たる- 14 -業務内容を商品の製造、賃金を時給882円(毎月20日締め、同月28日支払い)、勤務日及び勤務時間を平日週3日、1日当たりの勤務時間を4時間50分、雇用期間を平成30年8月7日から1年間(令和元年8月6日まで)とする本件労働契約(甲1)を締結した。 本件労働契約には、原告及び被告が本件労働契約の継続を望んだ場合には、同内容で1年間に限り継続し、その後も同様とする(ただし、60歳に至ったときは退職する。)旨の定め(2条)があり、原告は、その旨の記載がある労働契約書(甲1)2通に署名押印し、その1通を受領した。なお、ハローワークに出された被告の求人票(甲12)にも、雇用期間12か月の定めがある旨及び契約更新の可能性がある旨記載されていた。 (イ) 原告は、週3日、1日当たり4時間50分、製造部で、ベルトコンベヤーの先頭に設置された糊付け機に多種類の紙を通す業務等に従事していた。上記業務を行うに当たっては、安全面を含む製造工程上の注意等が求められるものではあるが、資格や特殊な技能を必要とするものではなく、紙を糊付け機に通すことが難しい製品については、原告に代わって他の従業員が行っていた。 製造部には、当時、無期雇用従業員が8名(パート勤務1名を含む。)、また、有期雇用パート従業員が原告及び本件従業員の計2名いた。 (ウ) 被告は、令和元年8月6日の契約期間終了を迎えるに当たり、7月21日以前に、同日から同年8月20日までの原告のタイムカードを準備し、原告に対して本件労働契約の更新意向について確認するようなことはなかった。 本件労働契約は、令和元年8月、同様の内容で更新され( 同日から同年8月20日までの原告のタイムカードを準備し、原告に対して本件労働契約の更新意向について確認するようなことはなかった。 本件労働契約は、令和元年8月、同様の内容で更新され(その後、時給909円となった。)、雇用期間は、令和2年8月6日までとされた。 (エ) 被告代表者及び被告取締役であるB取締役(以下、併せて「被告代表- 15 -者ら」という。)は、令和2年3月4日、原告と面談した(本件面談)。 その際、被告代表者らは、他の複数の従業員から原告に関し、自分(原告)だけがしんどい作業をさせられているとの不満を漏らすといったネガティブな言動が目立つとか、その作業効率について苦情が出ている旨告げ、原告の認識を聴取するなどした。これに対し、原告は、そのような言動に及んでいる認識はなく、また、他の従業員も業務中私語に及んでいる旨述べた。 被告代表者らは、再度、そのような苦情が出た場合には、事実関係を調査し、その結果如何によっては、本件労働契約の更新に影響し得る旨述べた。なお、これに対し、原告は、定年(60歳)まで雇用が継続されるはずであるというような異議を述べることはなかった。 (オ) 令和2年に入った頃から、国内外で新型コロナウィルス感染症がまん延し、同年4月には、わが国でも新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う非常事態宣言が発令された。 このため、被告は、同月20日頃から、営業事務部署を含め一部の無期雇用従業員と原告を含む全てのパート従業員を休業とした。その頃の被告の売上げは、同年3月は前年度比の約62.3%、同年4月は前年度比の約29.4%、同年5月は前年度比の約26.8%に落ち込んだ。 そこで、被告は、緊急事態宣言解除後の同年6月に入ってからも、同様に休業 3月は前年度比の約62.3%、同年4月は前年度比の約29.4%、同年5月は前年度比の約26.8%に落ち込んだ。 そこで、被告は、緊急事態宣言解除後の同年6月に入ってからも、同様に休業とし、同月の売上げも前年度比の約48.8%にとどまっていた。なお、被告は、新型コロナウィルス感染症禍以前から、経営状態が赤字に陥っていた。 (カ) 被告は、こうした中、令和2年夏季の賞与を支給しない旨決定し、また、勤続20年以上、勤続5年以上のパート従業員2名に対し、売上げ・業務減少を理由に退職勧奨し、同従業員らはこれに応じて退職することになった。 - 16 -なお、被告は、これまでも、売上げ減少時などには、有期パート従業員に退職勧奨を行い、契約更新をしなかったことがあった。 (キ) 本件総連E地連の組合員であるDは、令和2年6月のB取締役との団体交渉の際、同じ組合員となった原告につき、雇用調整助成金の新型コロナウィルス感染症の影響に伴う特例措置を利用して、雇用を継続するよう申し入れた。その際、Dは、今後の売上げ回復を見通すことは困難かもしれないが、夏季賞与に加え、冬季賞与が支給されない事態となると、従業員が離れていく可能性もあるなどとも述べた。 これに対し、B取締役は、売上げ減少等から、原告との本件労働契約の更新には応じられない旨説明した。 (ク) 令和2年7月、製造部の業務は殆どなく、原告は、引き続き休業とされ、同部の無期雇用従業員も一部休業している状態にあった。 被告は、同月8日頃、原告に対し、新型コロナウィルス感染症禍の影響が非常に大きいとして、雇用期間満了(同年8月6日)後、本件労働契約を更新しない旨通知した。 一方、原告は、遅くとも同月上旬までには、 日頃、原告に対し、新型コロナウィルス感染症禍の影響が非常に大きいとして、雇用期間満了(同年8月6日)後、本件労働契約を更新しない旨通知した。 一方、原告は、遅くとも同月上旬までには、被告に対し、本件労働契約の更新を申し込んだが、被告が承諾することはなく、同年7月に行われたB取締役との団体交渉でも、同様に、本件雇止めの理由について説明するなどした。なお、製造部に所属するもう1名のパート従業員である本件従業員は、当時、2度の契約更新(雇用期間各1年)を経て、通算雇用期間が3年となっていた。 原告は、休職期間中、給与全額分に相当する休業手当の支払を受けた。 (ケ) 令和2年8月4日、厚生労働省が、同年9月末までとされた雇用調整助成金の新型コロナウィルス感染症の影響に伴う特例措置を、同年12月末までとする案を軸に延長する方向での検討に入った旨の報道がされた。 - 17 -その後、同月28日、雇用調整助成金の拡充制度(雇用保険被保険者以外の労働者に対する緊急雇用安定助成金を含む。)が同年12月まで延長されることが、閣議決定された。 (コ) 被告は、令和2年、加工高の107%に相当する額を人件費に充てた。 なお、被告は、現在、原告が担当していた業務を製造部の無期雇用従業員3名に同人らの業務と兼務して行わせ、同部の無期雇用従業員1名には他部署の業務と兼務させ、製造部の無期雇用従業員3名を新たに立ち上げたeコマース部へ部署替えした。 イ上記アの認定事実に対し、原告は、その本人尋問において、平成30年8月7日、本件労働契約に係る契約書(甲1)を取り交わすに当たり、被告代表者から、定年である60歳まで働けると聞いた旨供述するけれども、これを裏付ける証拠はない上、反対趣旨の 問において、平成30年8月7日、本件労働契約に係る契約書(甲1)を取り交わすに当たり、被告代表者から、定年である60歳まで働けると聞いた旨供述するけれども、これを裏付ける証拠はない上、反対趣旨の被告代表者の供述(乙56)に照らし、原告の上記供述は採用することができない。 (2) 上記(1)で認定した事実によると、本件労働契約は、原告の主たる業務内容自体、ベルトコンベヤーを使用した紙製品の製造工程において紙をこれに流すというものであって、資格や特殊な技能を必要とするものではなく、その勤務日及び勤務時間は、週3日、1日当たりの勤務時間を4時間50分とするパート契約であり、その契約期間は1年とされていたというのであるから、被告において、本件労働契約を有期労働契約とした目的には、相応の合理性があり、しかも、上記のとおり、原告の担当業務は、代替可能なものであるということができる。そして、上記(1)で認定した事実によると、その後の更新についても飽くまで単年度毎の契約更新となる旨定められていたというのであり、原告自身、令和元年8月の1回目の契約更新を経た後、令和2年3月に被告代表者らとの本件面談時に同年8月に必ずしも契約更新とならない旨示唆されたというのであるから、原告は、本件労働契約締結当時及びその後も、本件労働契約の雇用期間が1年であることを十分認識していたという- 18 -べきである。 以上のほか、本件雇止めまでの間、僅か1回という更新回数や、試用期間を含めても、その雇用通算期間は合計2年3か月と比較的短期間にとどまっていること等を併せ考えると、原告が指摘する契約更新される年齢の上限の定めや、1回目の契約更新時の状況を十分考慮してみても、原告の雇用継続に対する合理的期待を認めるのは難しく、そうでないとしても、その程度は必 を併せ考えると、原告が指摘する契約更新される年齢の上限の定めや、1回目の契約更新時の状況を十分考慮してみても、原告の雇用継続に対する合理的期待を認めるのは難しく、そうでないとしても、その程度は必ずしも高いものということはできない。 (3) 上記(2)で述べた点はともかく、上記(1)で認定した事実、とりわけ、①被告においては赤字経営が続いていたところ、令和2年に入って新型コロナウィルス感染症が拡大していく中、その売上げは、同年3月は前年度比の約62.3%、同年4月は前年度比の約29.4%、同年5月は前年度比の約26.8%に落ち込み、緊急事態宣言解除後の同年6月でも前年度比の約48. 8%にとどまっていたこと、②被告は、同年4月20日頃から、一部の無期雇用従業員と原告を含む全てのパート従業員を休業とし、また、勤続20年以上、勤続4年以上のパート従業員2名に対し、退職勧奨をして退職してもらうことにし、さらに、他に従業員に対しても同年夏季の賞与を支給しない旨決定していたこと(なお、被告は、同年、加工高の107%に相当する額を人件費に充てていた。)、③加えて、本件労働契約の期間満了時である同年8月6日時点では、その2日前に、厚生労働省が、同年9月末までとされた雇用調整助成金の新型コロナウィルス感染症の影響に伴う特例措置を同年12月末までとする案を軸に延長する方向での検討に入った旨の報道がされてはいたものの、緊急雇用安定助成金を含む雇用調整助成金の拡充制度の延長の有無及びその内容や期間は依然として定まっていなかったこと、④製造部には、原告のほかに、もう1名のパート従業員である本件従業員が所属していたが、同従業員は、原告よりも前に採用され、当時既に2度の契約更新(雇用期間各1年)を経て、通算雇用期間も3年となっていたこと、⑤被告- 19 - もう1名のパート従業員である本件従業員が所属していたが、同従業員は、原告よりも前に採用され、当時既に2度の契約更新(雇用期間各1年)を経て、通算雇用期間も3年となっていたこと、⑤被告- 19 -は、契約期間満了の約1か月前には、理由を付して契約更新に応じられない旨通知し、その前後の団体交渉の席上においても、被告の業績が芳しくないため原告を雇止めする旨説明していたことを指摘することができ、これらを総合考慮すると、本件雇止めが、客観的合理性・社会的相当性を欠いたものということはできない。 (4) 以上によると、原告の労働契約上の地位の確認及び本件雇止め後の賃金の支払等を求める請求は、いずれにせよ理由がない。 2 争点(3)について(1) 本件記者会見上の発言ア(ア) 前記第2の1前提となる事実及び証拠(乙33、34)並びに弁論の全趣旨を総合すると、原告は、本件第1回口頭弁論期日が行われた令和2年10月26日、原告訴訟代理人弁護士(以下、原告と併せて「原告側」という。)とともに、本件記者会見を開き、原告側において、被告の原告に対する本件雇止めは無効であるとして本件本訴を提起した旨説明したほか、原告において理不尽な理由で雇止めにあったなど(本件記者会見上の発言)と述べたことが認められる。 しかしながら、被告が名誉毀損行為として主張する原告の本件記者会見上の発言そのものは、本件雇止めに関して、原被告間で紛争が生じ、そのための交渉を踏まえた、本件本訴における原告の立場から見た意見表明にとどまるものであって、被告側としても、これに対し、本件雇止めは正当なものであったと反論すれば足りる程度のものであったというべきである。 (イ) そして、新型コロナウィルス感染症拡大に関連する雇止めは社会的関心事で としても、これに対し、本件雇止めは正当なものであったと反論すれば足りる程度のものであったというべきである。 (イ) そして、新型コロナウィルス感染症拡大に関連する雇止めは社会的関心事であり(乙1)、そのような社会的関心事に関して本件本訴を提起したことを述べ、これと併せて原告の立場を説明するため、本件記者会見を開いたことについては、本件記者会見上の発言が人身攻撃に及ぶよ- 20 -うなものではなかったなど自らの意見表明の域を逸脱したとはいうことができない本件においては、表現の自由の尊重が社会の根幹を構成することに照らし、違法な無形的利益の侵害行為であるということはできない。 (ウ) そうすると、被告の上記主張は、採用することができない。 イ被告は、原告が、本件記者会見において、被告につき、新型コロナウィルス感染症対策の雇用調整助成金を受給しているにもかかわらず、同感染症の影響を理由に雇止めにしたのは不当である旨述べて、受給した雇用調整助成金に相当する休業手当を原告に支払っていないかのような印象を与えて、被告の社会的評価を低下させた旨主張し、これに沿う証拠として、配信記事(乙33)を援用する。 しかしながら、原告は、本件記者会見の席上、理不尽な理由で雇止めにあった旨述べたことは認めてはいるものの、被告の上記主張に係る趣旨の発言をしたことは否認しているところ、上記配信記事によっても、本件記者会見の席上での原告の具体的発言内容は詳らかではなく、さらに、本件記者会見を取材した別の新聞社の記事(乙34)は、本訴本件の訴状を引用して、原告が受給した休業手当は全額雇用調整助成金で賄われており、雇用を継続しても会社に不利益は生じないとの、原告の上記訴状における主張そのものを伝えていることからしても、原告が、 本件の訴状を引用して、原告が受給した休業手当は全額雇用調整助成金で賄われており、雇用を継続しても会社に不利益は生じないとの、原告の上記訴状における主張そのものを伝えていることからしても、原告が、本件記者会見の席上、上記被告主張の趣旨の発言をしたとは認め難い。 したがって、被告のこの点に関する主張は、採用することができない。 (2) 本件インタビュー上の発言ア被告は、原告の本件インタビュー上の発言につき、被告が、法的に正当でない雇止めを行うような会社であるとの印象を与え、また、被告が不当労働行為をしているかのような印象を与えるもので、いずれも真実に反しており、また、真実であると信じることについて相当な理由もない旨主張- 21 -する。 イしかしながら、上記(1)のとおり、新型コロナウィルス感染症拡大に関連する雇止めは社会的関心事であり、そのような社会的関心事に関し、前記第2の1前提事実(6)のとおり、本件本訴提起後、原告が自らの立場を表明するため本件インタビューに応じたこと自体は、何ら問擬されるべき事柄ではない。 前記1(1)ア(ア)(ウ)(エ)で認定したところによると、本件労働契約には契約更新される年齢の上限の定めがあり、被告側は、1回目の契約更新の際には、原告に対して本件労働契約の更新意向について確認するようなことはなかったが、本件雇止めの約4か月前には、本件面談を実施し、その席上、原告に対し、他の従業員から言動や作業効率について苦情が寄せられており、再度、そのような苦情が出た場合には、事実関係を調査し、その結果如何によっては、本件労働契約の更新に影響し得る旨述べたというのである。そうすると、本件インタビュー上の発言のうち、1回目の契約更新時の状況や本件面談時の状況等、その事実関 実関係を調査し、その結果如何によっては、本件労働契約の更新に影響し得る旨述べたというのである。そうすると、本件インタビュー上の発言のうち、1回目の契約更新時の状況や本件面談時の状況等、その事実関係の主要な部分に違いはない。 また、本件インタビュー上の発言のうち、被告側から労働組合員に関わるなと言われたとの部分については、原告の陳述書(甲21)中には、被告に採用されてから間もなくして、被告代表者から複数回にわたり、被告には労働組合があるが、関わらないようになどと言われた旨の供述記載があるほか、Dにおいて、令和2年6月30日のB取締役との団体交渉時、被告代表者が新規採用者に対して労働組合についてどうのこうの言っていると指摘したのに対し、B取締役もこれを否定することはなかったこと(甲16の1・2)等も併せ考えると、被告代表者が原告に対してそうした趣旨の発言をしたことがあった旨認めるのが相当である。 以上によれば、原告の本件インタビュー上の発言は、概ね原被告間の訴- 22 -訟外でのやり取り等の事実経過に沿うものであって、それを踏まえて、原告の立場から見解、意見を述べたものにとどまるというべきである。 したがって、原告の上記発言は、違法な無形的利益の侵害行為であるということはできない。 ウそうすると、被告の上記主張は、採用することができない。 (3) 本件宣言被告は、本件宣言(乙57)の採択及びその書面の送付は、原告からの情報提供を受けなければ作成することは不可能であり、また、その作成や送付は原告に無断で行うことはあり得ないから、原告の不法行為が成立する旨主張する。 しかしながら、証拠(甲20、証人D、原告本人)によると、本件宣言は、本件総連E地連が、本件訴訟手続を傍聴 付は原告に無断で行うことはあり得ないから、原告の不法行為が成立する旨主張する。 しかしながら、証拠(甲20、証人D、原告本人)によると、本件宣言は、本件総連E地連が、本件訴訟手続を傍聴して作成したものであって、その過程で、原告側に本件本訴で提出された証拠等について尋ねてその回答を得たようなことはあったものの、原告は、本件宣言自体の作成に関与しておらず、事前に本件総連からその内容を聞かされたようなこともなかったことが認められる。 そうすると、被告の上記主張は、採用することができない。 3 争点(4)について(1) 被告は、原告が、令和2年7月10日頃から約1週間、被告に対し、京都府下の多数の労働組合をして、原告の雇止めへの抗議や撤回を求める、威圧的な内容の書面(乙37の1ないし37の35)を大量に送りつけた旨、あるいは、上記書面の作成は、原告からの情報提供を受けなければ作成することは不可能であり、また、その作成や送付は原告の了解の下に行われたのであるから、原告の不法行為が成立する旨主張する。 (2) しかしながら、証拠(甲20、乙37の1ないし37の35、56、証人D、原告本人、被告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると、本件総連E地- 23 -連の基幹会議は、組合活動の一環として、その組合員である原告に対する本件雇止めの撤回を求めるべく、団体交渉に加え、京都府内の労働組合に抗議活動への協力を求めることを決定し、本件雇止めに抗議し、その撤回を求める旨の文書(1枚)のひな型を作成して、令和2年7月9日頃から同月16日頃にかけて、少なくとも京都府内の35の労働組合に要請し、これを受けた各組合から上記文書を被告へファクシミリ送信して抗議活動を行ったことが認められるが、これに先立ち、原告に対し、組合としてそ 日頃にかけて、少なくとも京都府内の35の労働組合に要請し、これを受けた各組合から上記文書を被告へファクシミリ送信して抗議活動を行ったことが認められるが、これに先立ち、原告に対し、組合としてそうした抗議活動を行う旨告げたことはあったものの、原告が、自らこれらの文書の作成を依頼したこともなく、その作成自体にも関与したようなことはなかったことが認められる。 そうすると、被告の上記主張は、採用することができない。 4 争点(6)について(1) 原告は、本件反訴は、本件本訴を提起した原告に対し、嫌がらせ目的で提起された不当訴訟である旨主張する。 (2) 前記2、3で認定、説示したとおり、被告が主張する無形的利益の侵害行為や業務妨害行為については、原告が違法な侵害行為に及んだとは認められず、あるいは当該行為の存在自体が認められない、ないしは原告がその主体とは認められないところ、本件反訴請求は、結果として、提訴者である被告の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものということになる。 しかしながら、これらの行為当時の原告及び所属労働組合と被告間の紛争や交渉経過の実情等に鑑みると、当該各行為それだけを取り上げてみれば、被告側からすると、原告により、被告の無形的な利益が損なわれ、あるいはその業務に支障が生じたと考えてもやむを得ないというべきであるから、本件反訴提訴者である被告において、その主張した権利又は法律関係が事実的・法律的根拠を欠くことを知りながら又は通常人であれば容易に知り得たの- 24 -にあえて訴えを提起したとか、原告に対する嫌がらせ目的で訴えを提起したとまでは認められず、本件反訴の提起そのものが、裁判制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠くということはできない。 そうすると、 て訴えを提起したとか、原告に対する嫌がらせ目的で訴えを提起したとまでは認められず、本件反訴の提起そのものが、裁判制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠くということはできない。 そうすると、原告の上記主張は、採用することができない。 5 以上によると、原告の本件本訴請求及び被告の本件反訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第6民事部 裁判官光吉恵子
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