- 1 -主文原判決のうち上告人に関する部分を破棄する。 前項の部分につき被上告人らの控訴を棄却する。 控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする。 理由 上告代理人石津廣司,同林範夫,同坂巻道子の上告受理申立て理由第1点について 本件は,静岡県(以下「県」という。)が,退職した教職員に支払う退職手当に係る源泉所得税を法定納期限後に納付したため,延滞税及び不納付加算税の納付を余儀なくされたことにつき,県の住民である被上告人らが,納付が法定納期限後となったのは県教育委員会財務課(以下「財務課」という。)の職員の事務処理上の過誤によるものであると主張して,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「法」という。)242条の2第1項4号の規定に基づき,当時財務課長の職にあった上告人に対し,県に代位して,延滞税及び不納付加算税相当額の損害の賠償を求める事案である。 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。 (1)平成13年5月当時,財務課は,県教育委員会事務局及び教育機関の予算の執行に関すること等を所掌しており,教育予算班及び学校施設班の2班があって,上告人以外の所属職員は兼務者を含めて26名であった。財務課長は,財務課の事務を掌理し,所属職員を指揮監督する立場にあり,上告人は平成12年度からその職にあった。 教育予算班の担当する事務には,約2万7000人の教職員の人件費全般に関す- 2 -る事務のほか,県議会における教育長説明関連事務,県の他部局や文部科学省との間の調整事務などがあった。 (2)県は,平成13年4月23日,退職した教職員に退職手当を支払うとともに,その退職手当について所得税5億7420万9700円(以下「本件源泉所得税」という。)を徴収し,県出納長は,国に納付するまで保管するため 成13年4月23日,退職した教職員に退職手当を支払うとともに,その退職手当について所得税5億7420万9700円(以下「本件源泉所得税」という。)を徴収し,県出納長は,国に納付するまで保管するため,これを歳入歳出外現金として受け入れた。本件源泉所得税は同年5月10日までに納付しなければならないものであり(所得税法199条),その納付のためには地方自治法施行令(平成18年政令第361号による改正前のもの。以下「施行令」という。)168条の7第2項の規定により県知事の出納長に対する払出しの通知(以下「払出通知」という。)が必要であるところ,この払出通知は静岡県財務規則(昭和39年静岡県規則第13号。平成19年静岡県規則第30号による改正前のもの)183条の規定により財務課長が専決処理することができることとされ,実際に財務課長が行っていた。 歳入歳出外現金払出しのための出納長に対する払出通知を行う文書である歳入歳出外現金払出票(以下「払出票」という。)は,教育予算班経理担当副主任であるA(以下「A」という。)が起案して決裁に上程し,経理主査,課長補佐らの合議を経て上告人が決裁印を押捺することにより作成することとされ,上告人が不在の場合は課長補佐であるB(以下「B」という。)の代決により作成することとされていた。A,B及びAの直近の上司で教育予算班経理担当経理主査であるC(以下「C」という。)は,いずれも同13年4月1日に財務課に着任したばかりであった。 なお,前記退職手当の支払及び本件源泉所得税の歳入歳出外現金としての受入れ- 3 -は,同月16日と19日に上告人が専決処理した支出命令及び受入れの通知に基づいて行われたものであり,その決裁文書は,Aが起案し,Cがサインをし,Bが押印をした上で,上告人が決裁したものであった。 (3)本件源 日と19日に上告人が専決処理した支出命令及び受入れの通知に基づいて行われたものであり,その決裁文書は,Aが起案し,Cがサインをし,Bが押印をした上で,上告人が決裁したものであった。 (3)本件源泉所得税を納付するための払出票を作成するためには,その資料として所得税集計表が必要であり,Aは,これが県企画部情報システム室から平成13年4月27日に電子メールにより送信されるとの連絡をあらかじめ受けていたが,同日,財務課にある財務会計端末のメール配信画面を確認しなかった。当該所得税集計表はメールにより実際に送信されたが,そのメールは,A以外の者が同日これを開いたため,財務会計システム(県出納局会計課所管)の特性によりその翌日に自動消去されてしまった。Aは,その後,本件源泉所得税の法定納期限である同年5月10日までの間,財務会計端末のメール配信画面に所得税集計表の送信に関するメールが見当たらないにもかかわらず,同僚との相談,上司への報告,関係部署への照会を何ら行わず,同月14日の夕方に同僚から問われて初めて上記納期限を徒過したことに気付き,翌15日に払出票を起案した。同日,上告人が出張中で不在であったためBの代決により払出票が作成されて出納長への払出通知が行われ,この払出通知を受けた出納長は本件源泉所得税を静岡税務署に納付した。 この間,上告人,B又はCが,本件源泉所得税の納付に関する事務についてAに対して指導をすることはなかった。 (4)静岡税務署長は,本件源泉所得税につき県から不納付加算税2871万円を徴収することとして,平成13年8月29日,延滞税35万3900円と共にこれを納付するよう県に告知し,県は同14年5月31日までにこれらを納付した。 (5)上告人は,財務課長として総括的な事務を行う立場にあったが,通常の業- 4 -務は各担 税35万3900円と共にこれを納付するよう県に告知し,県は同14年5月31日までにこれらを納付した。 (5)上告人は,財務課長として総括的な事務を行う立場にあったが,通常の業- 4 -務は各担当の部下に任せており,例えば,平成12年度に退職手当等の支払の決裁を4回行ったが,払出票の起案の時期などを部下に指示したことはなかった。退職手当に係る源泉所得税についても,出納長に対する払出通知に関する事務が財務課の所管であることやその納期限が支払のあった日の翌月10日であることについての知識はあったが,その払出通知の期限がいつで,遅延防止のためにいつ何をすべきかなどを具体的に意識することはなかった。 (6)県では,平成12年7月にも,退職手当支払に係る源泉所得税の法定納期限を7日間徒過する事務処理上の過誤が発生していたが,その所管は県総務部財政室であった。また,少額であったため延滞税の納付を要せず,偶発的納付遅延等に該当し法定納期限までに納付しなかったことについて正当な理由があると認められ不納付加算税も徴収されなかった。そのため,上記過誤が財務課において注意すべき実例として注目されることはなく,上告人も知らなかった。 財務課においては,同13年2月13日,退職手当に係る源泉所得税について緊急払出手続が執られるという事態が発生し,結果的に納期限は徒過しなかったものの,これについて上告人名義で遅延理由書が作成されたが,上告人は,当時外国出張中で,報告も受けておらず,自らの名義で遅延理由書が作成されたことも知らなかった。 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,法243条の2第1項後段の規定を根拠とする上告人に対する損害賠償請求を認容した。 (1)上告人は,歳入歳出外現金の出納のために施行令168条の7第2項の規定により普通地方 て,次のとおり判断して,法243条の2第1項後段の規定を根拠とする上告人に対する損害賠償請求を認容した。 (1)上告人は,歳入歳出外現金の出納のために施行令168条の7第2項の規定により普通地方公共団体の長が行う通知について,県財務規則により専決処理する権限を有する者であり,法243条の2第1項後段に規定する職員(以下「予算- 5 -執行職員等」という。)に該当する。 Aは,予算執行職員等の権限に属する事務を直接補助する職員であるが,同項後段の県の規則で指定したものではないから,予算執行職員等には該当しない。 (2)予算執行職員等に該当しない職員が予算執行職員等を補助する場合において,当該補助行為に関する違法が法243条の2第1項各号に掲げる行為の違法を構成する関係にあるときには,同項後段所定の要件の下に損害賠償責任を負うのは予算執行職員等に限られ,当該補助職員自らは損害賠償責任を負わず,その補助行為は,予算執行職員等が予見可能な範囲内のものである限り,当該予算執行職員等の行為と同視され,当該予算執行職員等が当該行為を行い又は怠ったものとして重大な過失があるかどうかが評価されるものと解するのが相当である。 上告人は,出納長が本件源泉所得税を法定納期限までに納付することができるように払出通知をすべき職務を負っていたところ,上告人を直接補助する職員であるAが適時に払出票を起案して決裁に上程することを怠る事態が起こり得ることや,その結果納付が遅延して多額の延滞税及び不納付加算税を納付しなければならない事態が起こり得ることを予見することが可能であった。Aは,上告人の上記職務を直接補助する職務を行うについて重大な過失によりこれを怠ったというほかないが,県の規則で指定したものではないから予算執行職員等に該当せず,その重大な過失により職務を怠った 。Aは,上告人の上記職務を直接補助する職務を行うについて重大な過失によりこれを怠ったというほかないが,県の規則で指定したものではないから予算執行職員等に該当せず,その重大な過失により職務を怠ったことについて損害賠償責任を負うものではない。他方,Aが重大な過失によりその職務を怠ったことは,上告人が上記職務を怠ったことについて重大な過失があったものと同視し,評価する根拠となるべきであるから,上告人は,法243条の2第1項後段の規定により,県に対して与えた損害を賠償すべき義務を免れない。 - 6 - しかしながら,原審の上記3(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 (1)法243条の2第1項後段の規定する予算執行職員等の損害賠償責任は,故意又は重大な過失により違法に「当該行為をしたこと又は怠ったこと」に基づく責任であるから,その責任が生ずるためには,予算執行職員等自身が故意又は重大な過失により違法な行為をし又は違法に職務を怠ったと認められることが必要であり,予算執行職員等は,これに該当しない職員の補助を受けてその職務の執行をする場合においても,その補助職員が違法な行為をしたこと又は違法に職務を怠ったことにつき,当然に自らの行為と同視されてその責任を問われるものではない。 (2)前記事実関係によれば,平成13年5月当時,財務課の所掌事務は,約2万7000人の教職員の人件費全般に関する事務を始め,県教育委員会事務局及び教育機関の予算の執行に関する事務に広く及ぶもので,財務課長が指揮監督すべき職員は26名であったというのであるから,その事務内容,事務量や課の規模からして,前記のとおり,上告人が通常の業務について個々の文書の起案の時期等をその都度部下に指示することまではせず,その処理を各担当の部下に任せていたこと のであるから,その事務内容,事務量や課の規模からして,前記のとおり,上告人が通常の業務について個々の文書の起案の時期等をその都度部下に指示することまではせず,その処理を各担当の部下に任せていたことは,特に非難されるべきことではない。そして,前記事実関係によれば,本件源泉所得税の納付に係る払出通知に関する事務は財務課の通常の業務に属するところ,それまで,財務課においては,払出通知が遅滞したために源泉所得税の納付が法定納期限後となる事態に至ったことはなかった上,この通知の事務にかかわる部下はB,C及びAの3名がいたというのであるから,そのいずれもが同年4月1日に着任したばかりであったことを考慮しても,上記3名全員がこれを怠り法定納期限を徒過する事態が発生することは,上告人において容易には想定し難いことであった- 7 -というべきである。そうすると,上告人がわずかの注意さえすれば上記事態を予測し,これを未然に防止するための措置を講ずることができたものということは困難である。なお,同12年7月に県総務部財政室において源泉所得税の法定納期限を徒過する事態が発生していたが,これが財務課において注目されることはなく,上告人も知らなかったというのであるし,また,同13年2月13日に財務課において緊急払出手続が執られる事態が発生した際も,上告人自身はその事実を知らなかったというのであるから,これらの事実を基に,上告人において容易に上記のような予測や過誤発生の防止をすることが可能であったということもできない。 以上の事情を総合的に考慮すれば,本件源泉所得税の納付に係る払出通知が遅滞したことについて,上告人が著しく注意義務を怠ったということはできず,上告人に重大な過失があったとまでは認められないから,上告人が県に対し法243条の2第1項後段の規定による損 に係る払出通知が遅滞したことについて,上告人が著しく注意義務を怠ったということはできず,上告人に重大な過失があったとまでは認められないから,上告人が県に対し法243条の2第1項後段の規定による損害賠償責任を負うものということはできない。 上記と異なる見解の下に,被上告人らの上告人に対する前記請求を認容した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決のうち上告人に関する部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,被上告人らの上告人に対する請求は理由がなく,これを棄却した第1審判決は結論において正当であるから,上記部分につき被上告人らの控訴を棄却することとする。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官泉徳治の補足意見がある。 裁判官泉徳治の補足意見は,次のとおりである。 原審の適法に確定した事実関係によると,上告人は,平成12年度及び平成- 8 -13年度の財務課長として,教職員の退職手当に係る支出命令及び源泉所得税の払出通知の専決権者であったところ,平成12年度において同源泉所得税払出通知の決裁を4回行っている。財務課においては,平成13年2月13日に,退職手当に係る源泉所得税を納付最終日に払い出すという緊急払出しが行われ,同日付けで上告人名義の「所得税払出し遅延理由書」(甲第16号証)が作成されているが,それには「このことについては,毎月1日に財務会計端末から打ち出しされるメールにより処理しておりますが,今回の2月分の払い出し遅延については,メールを打ち出した者が別にファイルしてしまい,担当者が処理を忘れたことによるものです。今後の対策として,退職手当支出の際には所得税の有無を必ず確認し,メールの打ち出しも担当者が行 遅延については,メールを打ち出した者が別にファイルしてしまい,担当者が処理を忘れたことによるものです。今後の対策として,退職手当支出の際には所得税の有無を必ず確認し,メールの打ち出しも担当者が行うよう課内で徹底することにより,再発防止に努めます。」と記載されている。この緊急払出しについて,上告人は,当時アメリカに出張しており,帰国後も報告を受けておらず,本件払出遅延が起こるまで全く知らなかった。しかし,上告人としては,緊急払出しのような特別の事例については,帰国後にこれを把握して,課員に対する再発防止のための指導を行うべきであったというべきである。 財務課における退職手当に係る源泉所得税の払出通知は,県企画部情報システム室からの所得税集計表の送信を受けて,経理担当副主任が払出票を起案し,経理主査,課長補佐及び専決権者である課長の決裁を経て,これを出納長に回付することにより行われていた。平成13年度の経理担当副主任A,経理主査C及び課長補佐Bは,同年4月1日に財務課に着任したばかりの職員であり,Aは,本件源泉所得税の払出通知を同年5月10日までに行わなければならないことは認識していたものの,所得税集計表がどのようなものであるかを具体的には知らなかったし,- 9 -それがいったん出力されると翌日には消滅してしまうということも知らなかったものであり,C及びBは,同源泉所得税の払出通知が財務課の担当であることも認識していなかった。上告人は,日常的な払出しについては,各担当者が起案し,経理主査,課長補佐等を経て上程された払出票を専決権者として決裁するという認識でおり,決裁文書が回ってくる以前に,起案担当者に対して個別具体的に指揮監督しなければならないという意識はなかった。しかし,同払出通知の専決権者であり,平成12年度において同払出通知 するという認識でおり,決裁文書が回ってくる以前に,起案担当者に対して個別具体的に指揮監督しなければならないという意識はなかった。しかし,同払出通知の専決権者であり,平成12年度において同払出通知を経験している上告人としては,平成13年度に着任したばかりのA,C及びBに対し,同払出通知の事務処理について過誤のないよう,一般的に指導監督すべきであったというべきである。 上告人は,平成13年4月16日及び19日に,本件源泉所得税に係る退職手当の支出命令を専決権者として決裁している。したがって,上告人としては,本件源泉所得税の払出通知が遅延しないよう留意しておくべきであったというべきである。 以上に述べたような過失が上告人に存することは明白であるというべきであるが,本件以前に県において源泉所得税の納付遅延に基づき多額の不納付加算税や延滞税を徴収されたという事例があったということはうかがえないので,上告人において不納付加算税等が徴収されるという事態の生ずることを容易に予測することができたということはできず,上告人の過失を重大な過失とまで評価するにはやや躊躇を覚える。そこで,私は,法廷意見に同調するものである。ただ,県では,本件源泉所得税の納付遅延を契機として,所要の再発防止策を講じ,職員への注意喚起を図ったというのであるから,県の教育委員会や出納機関で将来同種事例が生じた場合の関係職員の過失の程度を評価する上においては,本件で県が多額の不納付- 10 -加算税等を徴収されているということが,一つの判断要素となり得ると考える。 ちなみに,原判決は,法243条の2第2項の規定に考慮を払うことなく,県が本件源泉所得税の納付遅延により不納付加算税及び延滞税を徴収されたことにより受けた損害の全額につき,上告人は同条1項の規定に基づき賠償責任を 決は,法243条の2第2項の規定に考慮を払うことなく,県が本件源泉所得税の納付遅延により不納付加算税及び延滞税を徴収されたことにより受けた損害の全額につき,上告人は同条1項の規定に基づき賠償責任を負うと判断している。仮に,上告人に重大な過失があったとしても,上告人が損害の全額につき賠償責任を負うとすることには,以下に述べるような疑問がある。 同条2項は,「前項の場合において,その損害が二人以上の職員の行為によって生じたものであるときは,当該職員は,それぞれの職分に応じ,かつ,当該行為が当該損害の発生の原因となった程度に応じて賠償の責めに任ずるものとする。」と規定し,同条9項は,「第一項の規定によって損害を賠償しなければならない場合においては,同項の職員の賠償責任については,賠償責任に関する民法の規定は,これを適用しない。」と規定している。すなわち,「同条の趣旨とするところは,同条一項所定の職員の職務の特殊性に鑑みて,同項所定の行為に起因する当該地方公共団体の損害に対する右職員の賠償責任に関しては,民法上の債務不履行又は不法行為による損害賠償責任よりも責任発生の要件及び責任の範囲を限定」するものであり,「法二四三条の二の規定は,同条一項所定の職員の行為に関する限りその損害賠償責任については民法の規定を排除し,その責任の有無又は範囲は専ら同条一,二項の規定によるものとし」ているのである(最高裁昭和58年(行ツ)第132号同61年2月27日第一小法廷判決・民集40巻1号88頁。最高裁平成5年(行ツ)第145号同6年11月8日第三小法廷判決・裁判集民事173号275頁)。 本件においては,同条2項の適用は争点になっていない。しかし,原審の認定事- 11 -実からして,県の受けた前記損害が2人以上の同条1項所定の職員の行為によって生じたもので 173号275頁)。 本件においては,同条2項の適用は争点になっていない。しかし,原審の認定事- 11 -実からして,県の受けた前記損害が2人以上の同条1項所定の職員の行為によって生じたものであることが明らかであるから,裁判所としては,同条2項の規定に基づき,上告人の職分に応じ,上告人の行為が前記損害の発生の原因となった程度に応じて,上告人の賠償責任の範囲を判断すべきであったと考える。住民である被上告人らと個人である上告人との間の住民訴訟において,上告人の職分等に応じた賠償責任の範囲を判断することには困難を伴うが,だからといって同項の適用を排除すべき理由はない。なお,平成14年法律第4号による改正後においては,本件のような住民訴訟は,同法242条の2第1項4号後段の規定により,当該普通地方公共団体の長を被告として賠償の命令をすることを求める訴訟となったので,当該職員の職分等に応じた賠償責任の範囲を判断することの困難性は軽減されることになった。 (裁判長裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官涌井紀夫裁判官宮川光治)
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