平成14(わ)599 傷害等

裁判年月日・裁判所
平成16年2月13日 福岡地方裁判所 小倉支部
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判決文本文13,555 文字)

平成16年2月13日宣告裁判所書記官簑田直美平成14年(わ)第599号,第602号,第701号,平成15年(わ)第256号判決 主文 1 被告人Aを懲役8年に,被告人Bを懲役6年に,被告人Cを懲役5年に処する。 2 未決勾留日数中,被告人A,被告人Bに対しては各460日を,被告人Cに対しては510日を,それぞれその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)第1 被告人3名は,Dと共謀の上, 1 平成13年12月10日午後11時30分ころ,福岡県中間市a町b番c号所在のE学園裏門前付近路上において,F(当時49歳)に対し,被告人Bが金属製懐中電灯(長さ約43.5センチメートル,重さ約1キログラム〔乾電池込み〕)で,その頭部及び顔面等を多数回殴打し,上記Dが折りたたみ式ナイフ(刃体の長さ約4センチメートル)で,その頸部及び背部を切り付けるなどの暴行を加え,よって,上記Fに対し,加療約111日間を要する頭頂部挫創,右眼球破裂,右脈絡膜剥離,頸部切創,背部切創等の傷害を負わせ, 2 引き続き,上記場所において,被告人C及び上記Dが,上記Fを,同所に停車中の普通乗用自動車の後部座席に押し込み,上記Dが同車両を直ちに発進させて,同市d町e番f号先交差点付近まで時速約50キロメートルで疾走させ,そのころから同日午後11時35分ころまでの間,上記Fを同車内から脱出することを著しく困難ならしめ,もって,同人を不法に監禁し,第2 被告人A及び同Cは共謀の上,同月11日午前2時ころ,北九州市g区大字h字ij番のk所在のG事務所休憩所(当時)横において,上記Cが,上記F所有の普通乗用自動車の車内に灯油を撒いた上,ライターで点火したタオルを同車内に投げ入れて同車を焼損し,もって,他人の物を損壊し,第3 被告人Cは,平 務所休憩所(当時)横において,上記Cが,上記F所有の普通乗用自動車の車内に灯油を撒いた上,ライターで点火したタオルを同車内に投げ入れて同車を焼損し,もって,他人の物を損壊し,第3 被告人Cは,平成13年1月14日午後8時30分ころ,福岡県直方市l町m番n号所在のH株式会社給油所において,同店経営者I(当時39歳)に対し,その左顔面を右手拳で殴打するなどの暴行を加え,よって,同人に加療約7日間を要する左頬部挫傷の傷害を負わせ,第4 被告人Cは,法定の除外事由がないのに,平成14年5月24日午後9時ころ,福岡県遠賀郡o町大字pq番地のr付近路上に駐車中の普通乗用自動車内において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパンの塩類若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し,もって,覚せい剤を使用し,第5 被告人Bは,自己の内妻(当時)が経営する北九州市g区st丁目u番v号wビル所在の飲食店Jの従業員であったKが,従業員同士の男女交際を禁止している同店の規則に違反し,同店のホステスであったLと交際していることを聞知するや,上記Kから迷惑料名下に金員を喝取しようと企て,平成14年6月25日午後9時ころ,同店出入口前通路において,同人の腹部等を数回足蹴にするなどの暴行を加えた上,同店店内において,同人に対し,「これは店とは関係ない,おれとお前の問題やけ,裏切ったりした分の迷惑料たい。」,「その分の迷惑料として,1年間毎月10万ずつ,120万持ってこい。」などと申し向け,その要求に応じなければ同人の身体等に更にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して同人を畏怖させ,よって,そのころ,同所において,同人の雇用主であるMを介して,上記Kから,同人の給料から差し引いた現金10万円の交付を受け,さらに,同年8月3日,同年9月2日,同年9月下旬ころから 人を畏怖させ,よって,そのころ,同所において,同人の雇用主であるMを介して,上記Kから,同人の給料から差し引いた現金10万円の交付を受け,さらに,同年8月3日,同年9月2日,同年9月下旬ころから10月上旬ころの前後3回にわたり,福岡県遠賀郡x町yz丁目z番a’号所在のN店駐車場において,また,同年10月31日,同県中間市b’町c’番d’号所在のO商店前路上において,いずれも被告人Bから集金方の指示を受けたPをして,上記Mを介して,上記Kから前同様の現金各10万円(合計40万円)の交付を受けさせて,これを喝取したものである。 (証拠)(略)(事実認定の補足説明)判示第1の1,2及び第2の,F(以下「被害者」という。)を襲撃した後監禁し,その所有車両を損壊した,一連の傷害,監禁,器物損壊の各事実について,被告人Aは,自分が他の共犯者と共謀した事実を否認し,被告人Bと被告人Cも,それぞれ自分が関与した判示各事実につき被告人Aとの共謀はなかった旨供述し,また,被告人Bは,判示第1の2の監禁の事実につき,当該外形的事実は争わないものの,被害者を監禁したつもりはない旨,監禁罪の成立を争う趣旨の供述をし,弁護人らも,いずれもその旨主張するが,当裁判所は,判示のとおり,被告人Aと同B,同C及びDとの共謀の事実及び被告人B,同C及びDによる監禁の事実を,いずれも認定したので,以下,補足して説明する。 1 被告人Aとの前記共謀の事実について(1) 関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。 ア被告人3名及び共犯者Dは,本件当時,いずれも指定暴力団Q組に所属し,被告人Aは同組若頭,被告人Bは同組行動隊長,被告人Cは同組行動隊長補佐,Dは同組筆頭若頭補佐であった。 被害者は,福岡県中間市議会議員を4期連続して務める者であり,平成13年7月に行われ 属し,被告人Aは同組若頭,被告人Bは同組行動隊長,被告人Cは同組行動隊長補佐,Dは同組筆頭若頭補佐であった。 被害者は,福岡県中間市議会議員を4期連続して務める者であり,平成13年7月に行われた同市長選挙において公約として暴力追放,公共工事の不正排除などを訴えて当選した同じ会派に属するRの選挙参謀を務めたが,同選挙戦においては暴力追放が大きな争点の1つとなり,R候補は暴力追放を前面に押し出した選挙戦を行っていた。また,当選後,R市長は街頭等で引き続き暴力追放運動を行っていた。 そうしたところ,被害者は,同年9月ころ,「市会議員をやめろ。北九州のやくざがおまえをねらっている。」などといった脅迫電話を受けたこともあった。 イ被告人Aは,同年9月ころ,Dに対し,中間市在住のSが暴力追放の運動家であるとして,同人の襲撃を指示し,自らもその住居にDとともに下見に行くなどしていたが,結局,上記襲撃の件は実行されないままとなっていた。 ウ被告人Aは,同年12月8日昼前ころ,Dの携帯電話に架電して同人を自宅に呼び,同宅付近で,被告人Bが風邪を引いて往生した旨述べて同被告人に何らかの犯行を実行させようとしていることをほのめかすなどしたが,この際,被告人Aは,同Bから電話を受け,「行くやつはほかにもおるんぞ。」などと同被告人を叱責し,また,Dに対し,「電池も切れるしの。」と,被害者の車に無断で装着した所在位置確認のための発信機のバッテリーが近々切れる旨言った。そして,Dは,被告人Aの指示により,同Bらの行う被害者の襲撃・捕捉(ただし,Dはその相手や内容を具体的には知らされなかった。)を手助けすべく,途中で話し合いに加わった被告人Aの舎弟であるTと一緒に,下関の競艇場に向かった。 他方,被告人B及び同Cも,同Aの指示により,被害者を生け捕るために,こ 体的には知らされなかった。)を手助けすべく,途中で話し合いに加わった被告人Aの舎弟であるTと一緒に,下関の競艇場に向かった。 他方,被告人B及び同Cも,同Aの指示により,被害者を生け捕るために,この競艇場に探索に行き,被害者の車を発見したが,その車内に同乗者がいたことから,被害者に対する襲撃は中止された。 エ被告人Aは,その後,本件当日である同月10日午後9時34分ころ,小倉e’区内のスナックにいたDに電話をかけ,「Cと連絡取れんけの。車を探しちゃらんかの。」,「f’インターから500メートル以内の,飲み屋街の方のホテル関係を探せ。」などと,2日前に下関で見つけた車(被害者の車)を探索するよう指示した。Dは,途中で被告人Aが差し向けた同Bと合流して同人運転の車に乗って探索を続けたものの被害者の車を発見できずにいたところ,さらに,被告人Aは,同Bに電話で,北九州都市高速に乗って黒崎方面に行くよう指示した。その後,被告人Bは,同Aと数回電話で話した後,g’インターから一般道に降り,被告人Aの指示を受けるなどして北九州市g区h’i’丁目j’番k’号所在のファミリーレストランU付近まで行き,同店の駐車場にある被害者の車を見つけた。他方,被告人Cは,同Bから電話で呼び出され,自動車を運転してこのレストラン付近に到着し,被告人Bに電話連絡した後,被害者の車両を見張った。 Dは,被害者がレストランから出てくるのを待つ間,被告人Bに,同Aは被害者をどうしろと言っているのかを尋ねたところ,同Bは,「若頭は生け捕れと言うとります。」と答えた。しばらくすると,被害者がレストランから出て車に乗って移動し始めたので,被告人BはDを同乗させたまま,被害者運転の車の後をつけ,被告人Cもその後を追った。 オ被告人B,同C及びDの3名は,被害者運転の車をしばらく追 害者がレストランから出て車に乗って移動し始めたので,被告人BはDを同乗させたまま,被害者運転の車の後をつけ,被告人Cもその後を追った。 オ被告人B,同C及びDの3名は,被害者運転の車をしばらく追跡した後,判示E学校裏門前付近で被告人Bが被害者の車を追い越して停車させ,こもごも被害者に対し判示のとおり激しく執ような暴行を加えた上,被害者を運転席から車外に引きずり出し同車の後部座席に押し込んだ。 その後,気を失ってぐったりとなった被害者を車に乗せたまま,この車をDが運転し,その前を被告人B運転車両が,後を同C運転車両がそれぞれ進行する形で,3台の車が判示交差点付近まで平均時速約50キロメートルで約700メートル進行し,信号機の赤色表示に従い同交差点手前でそれぞれ停止した。 カ被害者は,この進行の途中で意識を回復したものの,車がかなりの速度で走行している上,直前に受けた暴行の影響により体に力が入らず,当時掛かっていたドアロックを解くことが困難であったことなどから脱出できずにいたが,必死にパワーウィンドウのボタンを押したところ,ドアの窓が開き,そのころ,たまたま車が上記のとおり信号停止したことから同車から脱出した。被告人Cらは更に被害者を生け捕ろうと試みたものの,結局,被害者の生け捕りは失敗した。 その後,Dと被告人Cは,被害者の車両を隠匿すべく2回移動させた。他方,被告人Aは,同月11日午前0時過ぎころから,Dに対し,電話で前記発信機を取り外すよう再三指示した。こうして,被害者の車両から発信機が取り外されたが,この発信機は,その後,被告人Aに手渡された。 キまた,被告人Aは,同月11日午前1時23分ころ,Dに対し,「車の処分はこっちでするけ。車を燃やすけ。どこにあるんか。」などと電話したところ,Dが車の隠し場所に不案内であったことから 渡された。 キまた,被告人Aは,同月11日午前1時23分ころ,Dに対し,「車の処分はこっちでするけ。車を燃やすけ。どこにあるんか。」などと電話したところ,Dが車の隠し場所に不案内であったことから,電話を替わった被告人Cが,同Aの指示に従い,判示G事務所休憩所(当時)横まで被害者の車両を移動させた後,同所において判示のとおり同車両を焼損した。 (2) 被告人Aと同B,同C及びDとの判示共謀の事実が認められることについてア本件では,犯行日(平成13年12月10日夜から翌11日未明にかけて)における,被告人Aの犯行指示・関与の点を除く外形的事実については,被告人B,同C,Dの本件実行犯3名と被害者の各供述が,各人の関与した関係箇所において相互に概ね合致している(この限度でいずれの供述も十分信用できる)。一方,犯行日を含めた被告人Aの犯行指示・関与の有無については,これを認めるDの公判供述と,これを否定し被害者の襲撃・拉致は被告人Bが首謀者となり企んだものである旨の同被告人の供述及びこれに沿う被告人Cの供述とが相異し,この点につき,少なくともどちらかが殊更虚偽の供述をしていることが明らかである。 イしかるに,上記被告人Aの犯行指示・関与の有無の点につきDは,被告人Aと自分や同Bらとの間での携帯電話での犯行に関するやり取りにつき具体的で詳細な供述をしているところ,その内容は犯行当日を含めた被告人Bらの行動等の外形的な事実経緯ともよく整合する極めて自然なものであるばかりか,それらの供述は判示共犯者間の携帯電話の通話履歴により逐一裏付けられてもいるものであり,このことはDの供述の信用性が高いことを示すものである。 弁護人は,上記通話履歴については携帯電話の使用者が必ずしも特定されていない旨指摘する。しかし,この点被告人らは納得できるような具体的 あり,このことはDの供述の信用性が高いことを示すものである。 弁護人は,上記通話履歴については携帯電話の使用者が必ずしも特定されていない旨指摘する。しかし,この点被告人らは納得できるような具体的な反論をしていないし(被告人Bも履歴中の電話を使っていたかは覚えていない旨供述するに止まる。),この証拠によれば,少なくとも当時Dが何者かと連絡を取り合い,この者が別の者らと連絡を取り合うなど,Dを含む4名の者が犯行日を含めて頻繁に連絡を取り合っていたことが認められるところ,Dの供述内容は上記の証拠から認められる状況や上記の争いのない外形的事実とも整合している上,上記のとおり,Dの供述中,携帯電話での犯行に関するやり取りの部分が上記証拠により逐一裏付けられているのであるから,これらの事情は,上記外形的事実と整合しあるいは逐一裏付けが存する部分と密接に関連する,携帯電話の通話の相手方,すなわち使用者の特定に関する部分の信用性をも十分に保証するものである。 このようにして証拠の裏付けが存在し,外形的事実と整合するDの供述の信用性は高いと認められるのであるが,さらに,被告人Aに関する部分について別の角度から検討してみるに,被告人Aは,Dの所属していた暴力団組織の中でDよりも格上の人物であり,後日の報復等のおそれを考えてみても,Dが被告人Aを敢えて陥れる虚偽供述をするだけの動機はおよそ考えがたく(組の内外での日頃のうっ憤や交際していた女性の死亡などといった被告人Aが供述する抽象的な事情では,暴力団組織の上位者を陥れる動機としては余りに薄弱である。),Dが,ビデオリンクや遮へいの措置が講じられたとはいえ,公判廷で被告人Aの犯行指示・関与につき敢えて供述したことは,その部分の信用性判断において大きな積極事情となるというべきである。そして,Dと被告人B及 デオリンクや遮へいの措置が講じられたとはいえ,公判廷で被告人Aの犯行指示・関与につき敢えて供述したことは,その部分の信用性判断において大きな積極事情となるというべきである。そして,Dと被告人B及び同Cとは,互いにあまり付き合いがなかったことが認められるところ,同じ組内で格上の被告人Aが上記3名を指揮・統率していたとみれば上記3名が本件各犯行に及んだことがよく理解できるのであるし,Dばかりでなく被告人Cも供述するとおり被害者の車には所在位置を知らせる発信機が装着されていたところ,Dの供述どおり被告人Aがその受信情報を同Bらに提供し指示していたとみれば,同被告人らが犯行日に短時間のうちに前記認定事実記載の場所的に隔たりのある場所で被害者の車両を発見し得た事実が極めて整合性を持つことになるのである。 そうしてみると,やはり,被告人Aから本件各犯行を指示された旨のDの供述は,極めて信用性が高いというべきである。 ウ次に,被告人Bの供述について見てみると,同被告人は,被害者の襲撃・拉致は自分が思い付きDと被告人Cに話した旨供述する。しかし,被告人Bは,その後は上記2名の者と話し合ったり被害者を襲撃する準備をしたりしたことはないというほか,本件各犯行に及んだ経緯についても,偶然小倉の街中で被害者の運転する車両を見つけて襲撃をする気になったといいながら,直ちに連絡を取ったDから言われるまま同人を迎えに行って上記車両を見失い,別の機会に探せばいいと思ったという一方で被害者を探しに中間市方面にすぐに向かい(この点は組事務所へ帰るためであったともいう。),またもや偶然被害者の車両を見つけたというなど,その供述内容は相当に不自然ないしちぐはぐなものである。 また,被告人Bは,判示第1の2の事実の後被害者が逃亡すると,Dらに何も言わずにそのまま現場を離 たもや偶然被害者の車両を見つけたというなど,その供述内容は相当に不自然ないしちぐはぐなものである。 また,被告人Bは,判示第1の2の事実の後被害者が逃亡すると,Dらに何も言わずにそのまま現場を離れて自宅に戻り,その後は自分からはDらと連絡を何ら取っていないなど,被告人BがDらを犯行に誘った首謀者であったとはおよそ認めがたいところでもある。 そもそも,(被告人Bは否定するが)Dは被告人Bよりも組内の地位としては格上であり(被告人Cもその旨供述する。),被告人Bがあまり付き合いもなかったDを共犯者2名のうち1人に選んだということ自体が相当に不自然であるし(被告人CもDの犯行関与に奇異な感を抱いている。),前記通話履歴によれば,犯行の最中やその直前後にDが被告人Bや同C以外の者と頻繁に携帯電話で話をしていることが明らかに認められるなど,本件実行犯3名のみで犯行を企み実行した旨の被告人Bの供述は上記証拠と整合的でない反面,Dらと連絡を取り合っていた上記人物がDら3名を指揮・統率していたとみれば,Dが実行犯に加わった事情がよく理解できる。そして,犯行当日に比較的短時間のうちに被害者の車を小倉の街中と中間市近辺で発見し得たのは前記発信機の受信情報によるとみるのが自然であるのは前記のとおりであるところ,上記3名はその受信機を所持していなかったのであるから,上記受信情報を提供する第三者が存在していたものとみるのが極めて自然であって,結局のところ,被告人BがDと被告人Cを誘いこの3名だけで本件各犯行に及んだ旨の被告人Bの供述は,にわかに信用できないものであるといわざるを得ない。 エ被告人Cの供述にしても,基本的に同Bの供述と同旨である上に,被害者の車両に火を付けて損壊した(第2の犯行)という罪証隠滅として相当に重要な行為を,自分の判断だけでしたこ といわざるを得ない。 エ被告人Cの供述にしても,基本的に同Bの供述と同旨である上に,被害者の車両に火を付けて損壊した(第2の犯行)という罪証隠滅として相当に重要な行為を,自分の判断だけでしたことである旨供述し,また,前記発信機の装着はある若い者が気を利かせてしたものである旨の曖昧な供述に終始するなど,被告人Cの供述もやはり不自然で直ちに信用できないものである。 オそして,被告人Aは自己が犯行に関与していないことについて具体的供述を何らしていないのであり,以上の,Dと被告人3名の各供述内容を比較検討してみても,被告人Aから本件各犯行を指示された旨のDの供述は十分に信用することができ,被告人Aが,被害者を襲撃する直前にその捕捉を指示するなどして傷害,監禁の指示を,また,被害者が逃亡した後被告人Cに被害者車両の処理の指示をそれぞれ行った事実は優に認めることができる(なお,傷害行為の直後監禁行為の前に被告人Aが被害者の監禁を具体的に指示したと認めるだけの確実な証拠はない。)。 そして,上記被告人Aによる各指示は,その暴力団内部における地位からして,自己の各犯罪意思を,配下の組員である被告人B,同C及びDを利用することにより,同被告人らと共同して実現する意思のもとにされたものというべきであるから,被告人Aと同B,同C及びDとの共謀の事実を優に認めることができる。 2 被告人Bらによる前記監禁の事実について前記認定事実のとおり,判示第1の1の犯行の後,被告人Bらは,気を失ってぐったりとなった被害者を車の後部座席に運び入れたままその車をDが運転し,3台の車を連ねて前記交差点まで平均時速約50キロメートルで停止することなく進行したものであり,被害者は,途中で意識を回復したものの,車が上記速度で走行している上,事前に受けた暴行による前記影響もあっ の車を連ねて前記交差点まで平均時速約50キロメートルで停止することなく進行したものであり,被害者は,途中で意識を回復したものの,車が上記速度で走行している上,事前に受けた暴行による前記影響もあって脱出できずにいたものであるから,上記の行為は被害者に対する監禁行為であると認められ,また,被告人Bは,上記走行の事実を十分認識していた以上,監禁の共同行為の故意に何ら欠けるところはない。 3 以上の次第で,判示のとおり被告人Aと同B,同C及びDとの共謀の事実及び被告人Bらによる監禁の事実を,いずれも認定した。 (累犯前科)(略)(法令の適用) 1 被告人A(1) 罰条判示第1の1の所為刑法60条,204条判示第1の2の所為刑法60条,220条判示第2の所為刑法60条,261条(2) 刑種の選択(判示第1の1,第2の各罪)それぞれ懲役刑を選択(3) 再犯の加重(各罪の刑)刑法56条1項,57条(4) 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の1の罪の刑に刑法14条の制限内で法定の加重(ただし,短期は判示第1の2の罪の刑のそれによる。))(5) 未決勾留日数の算入刑法21条(6) 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書 2 被告人B(1) 罰条判示第1の1の所為刑法60条,204条判示第1の2の所為刑法60条,220条判示第5の所為刑法249条1項(2) 刑種の選択(判示第1の1の罪)懲役刑を選択(3) 再犯の加重(各罪は前記ア,イの各前科との関係で再犯)刑法56条1項,57条(4) 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第1の1の罪の刑に刑法14条の制限内で法定の加重(ただし,短期は第1の2の罪の刑のそれ 犯)刑法56条1項,57条(4) 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第1の1の罪の刑に刑法14条の制限内で法定の加重(ただし,短期は第1の2の罪の刑のそれによる。))(5) 未決勾留日数の算入刑法21条(6) 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書 3 被告人C(1) 罰条判示第1の1の所為刑法60条,204条判示第1の2の所為刑法60条,220条判示第2の所為刑法60条,261条判示第3の所為刑法204条判示第4の所為覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条(2) 刑種の選択(判示第1の1,第2,第3の各罪)それぞれ懲役刑を選択(3) 再犯の加重(各罪の刑)刑法56条1項,57条(4) 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第1の1の罪の刑に刑法14条の制限内で法定の加重(ただし,短期は第1の2の罪の刑のそれによる。))(5) 未決勾留日数の算入刑法21条(6) 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由) 1 本件は,判示のとおり,指定暴力団Q組組員である被告人3名及び共犯者Dによる傷害(第1の1),監禁(第1の2),被告人A,同Cによる器物損壊(第2)のほか,同Cによる傷害(第3)及び覚せい剤の自己使用(第4),同Bによる恐喝(第5)の事案である。 2 第1の各犯行は,共犯者の中で最も格上である被告人Aの指示のもと,その配下の同B,同C,Dが実行犯となって敢行されたものであるが,中間市の現市長が公約の1つとして掲げた暴力追放が,同市に事務所を置く上記Q組の組員としての活動の妨げとなることなどから,暴力追放運動の萎縮・排除を目的とし,先の市長選で現市長の選挙参謀 であるが,中間市の現市長が公約の1つとして掲げた暴力追放が,同市に事務所を置く上記Q組の組員としての活動の妨げとなることなどから,暴力追放運動の萎縮・排除を目的とし,先の市長選で現市長の選挙参謀として中心的役割を果たした市議会議員である被害者を襲撃して見せしめとすることなどを企図してなされたものであると考えられるのであり,反社会性は顕著であって,許容することなど到底できないものである。 そして,被告人らは,予め被害者が使用している自動車に発信機を取り付けるなど,被害者の動静を把握して襲撃を容易にするための手段を講じた上,受信機を通じて被害者の動静を把握していたとみられる被告人Aの指揮・統率のもと,計画的かつ組織的に本件犯行に及んだものであって,相当に悪質である。 しかも,被告人Bら実行犯は,被害者の自動車を停止させるや,Dにおいて,助手席側から乗り込んで小型ナイフで首の後ろや背中を切りつけ,被告人Bにおいて,所携の金属製懐中電灯で,運転席の窓ガラスをたたき割って,被害者の頭部,顔面等を多数回殴打した上,車外でも被害者の頭頂部を殴打するなどという激しい暴行を加えたのであって,その態様も粗暴で悪質である。 もとより被害者は何らの落ち度もないにもかかわらず,突然の激しい暴行により,殺されるかもしれないと思うほどの強い恐怖感と身体的苦痛を味わわされて重い傷害を負い,現在,右目の視力をほとんど失い,右足のじん帯が伸びて歩行時に痛むなどの後遺症を負っており,被害者が受けた身体的・精神的苦痛は甚大である。 加えて,暴力追放を願う市民,社会は,第1の各犯行により大きな衝撃を受けたと考えられ,第1の各犯行の犯情はすこぶる悪い。 また,第2の犯行は,第1の各犯行の証拠隠滅のために,被告人Aの指示のもと同Cにより実行されたものであるが,これにより 各犯行により大きな衝撃を受けたと考えられ,第1の各犯行の犯情はすこぶる悪い。 また,第2の犯行は,第1の各犯行の証拠隠滅のために,被告人Aの指示のもと同Cにより実行されたものであるが,これにより被害者が受けた財産的損害は大きく,被害者はいわれのない暴力を受けて重傷を負った上に大きな財産的被害をも被ったものであり,やはり犯情は極めて悪質である。 そして,第1及び第2の各犯行を通じて,被害者に対する慰謝の措置はとられておらず,被害感情が厳しいのも当然である。 そうすると,第1及び第2の各犯行に関与した被告人らの刑事責任は相当に重い。 3 被告人Aは,第1の各犯行において,前記Q組の若頭として,その計画及び実行の指示,発受信機によって把握した被害者車両の所在場所の伝授等を行った主犯格と認められ,その果たした役割は大きい。 しかるに,被告人Aは,各犯行の指示を全面的に否定し,真摯な反省の態度はおよそ認められない。 のみならず,被告人Aは,自己の所属する暴力団組織への警察の取締りの強化への危機感からその矛先を他に向けるため,共犯者とともに中国総領事館に対して散弾銃を発砲するなどした事件で昭和63年12月23日に懲役4年に,暴力団取締捜査に携わった元警察官に対する報復や警察組織への威嚇・挑戦の目的をもって,その居宅を放火した事件で平成3年4月12日に懲役8年(後者が前者の確定裁判の余罪に係るものではある。)に処せられているところ,いずれも自己の所属する暴力団組織の防衛ないしは誇示等を目的とするとみられる組織的暴力犯罪によるものであるのに,前記各刑の服役を終えて出所後約1年3か月にして,またしても同種犯罪ともいうべき本件各犯行に及んでいるものであり,この種の反社会的な暴力犯罪傾向は誠に顕著であって,本件での供述態度等にも照らし,今後も同様に暴 服役を終えて出所後約1年3か月にして,またしても同種犯罪ともいうべき本件各犯行に及んでいるものであり,この種の反社会的な暴力犯罪傾向は誠に顕著であって,本件での供述態度等にも照らし,今後も同様に暴力団組織の幹部として活動し,同種再犯に及ぶおそれも強く懸念されるところである。 そうすると,被告人Aの刑事責任はとりわけ重く,本件では被害者が自ら車外に脱出したことで監禁時間が比較的短く被害者の捕捉という当初の目的は失敗に終わったことなどの事情も併せ考慮し,さらに,共犯者Dの量刑の点をも斟酌してもなお,主文の刑が相当である。 4 被告人Bは,Q組行動隊長として第1の各犯行に加担し,金属製懐中電灯で被害者の頭部及び顔面等に対し激しい暴行を加え,それが判示の重い傷害の主因となったものであり,同Aに次ぐ役割を果たしたものと認められるところ,捜査段階から同被告人との共謀の事実はない旨の供述を一貫させて組の上位者をかばう姿勢を徹底させているほか,中間市での暴力追放運動を非難する姿勢を見せるなど,真摯な反省の態度はおよそ認められない。 また,被告人Bによる第5の犯行は,同被告人の内妻(当時)の経営する飲食店の従業員であった被害者が,従業員同士の男女交際を禁止している同店の規則に違反するなどして同被告人に迷惑を掛けたとして,迷惑料名下に金員を喝取したものであるが,暴力を用いて高額の金員を喝取するなど粗暴な姿勢がうかがわれ,また,被害者が受けた財産的被害は小さくないのに被害弁償はされておらず,同人が受けた恐怖感や身体的苦痛も大きい。 そして,被告人Bは,5回の服役経験を有しながら更に本件各犯行に及んだものであり,同被告人の規範意識及び更生意欲の欠如は顕著である。 以上の被告人Bに係る諸事情に照らせば,同被告人の刑事責任も相当に重く,第1の各犯行では の服役経験を有しながら更に本件各犯行に及んだものであり,同被告人の規範意識及び更生意欲の欠如は顕著である。 以上の被告人Bに係る諸事情に照らせば,同被告人の刑事責任も相当に重く,第1の各犯行では被害者が自ら車外に脱出したことで監禁時間が比較的短く被害者の捕捉という当初の目的は失敗に終わったことなどの事情のほか,同被告人は第1の各犯行につき自己のした行為自体は認め,第5の犯行を素直に認めていることなどの同被告人のために酌むべき事情も併せ考慮し,共犯者Dの量刑の点をも斟酌してもなお,主文の刑が相当である。 5 被告人Cは,第1の各犯行について,自らも被害者に暴行を加えたほか,監禁の際Dとともに被害者を車両内に運び入れるなど,本犯行に加担したことでその実行を容易にしたほか,第2の犯行を実行するなど,その役割は軽視できない。 また,被告人Cは,第1,第2の各犯行のほかに第3,第4の各犯行にも及んでいるところ,第3の傷害の事案については,同被告人が判示給油所で給油を受けたガソリン代の支払を猶予してもらったのにその支払が遅れたことなどから被害者との間で言い争いとなったことが原因であり,被害者の応対に全く問題がないとはいえないものの,本件暴行を正当化できるものではなく,被害者が負った傷害も必ずしも軽いとはいえないところ,同被告人の安易に暴力に訴える粗暴性は軽視できない。また,第4の覚せい剤使用の事案については,同被告人は,過去に覚せい剤の使用ないしこれを含む罪による3度の服役を含めて合計4回の服役経験を有しているにもかかわらず,更生の機会を生かすことなく,前刑終了後2年を経ずして本件覚せい剤の使用に及んでおり,同被告人の覚せい剤に対する親和性のみならず,規範意識及び更生意欲の欠如は顕著であり,再犯のおそれも否定できない。 以上の被告人Cに係る諸 ,前刑終了後2年を経ずして本件覚せい剤の使用に及んでおり,同被告人の覚せい剤に対する親和性のみならず,規範意識及び更生意欲の欠如は顕著であり,再犯のおそれも否定できない。 以上の被告人Cに係る諸事情に照らせば,同被告人の刑事責任は重く,第1の各犯行では被害者が自ら車外に脱出したことで監禁時間が比較的短く被害者の捕捉という当初の目的は失敗に終わったことなどの事情のほか,同被告人は,第1及び第2の各犯行につき,その役割が従属的であること,第3及び第4の各犯行については素直に犯行を認めて反省の態度を示していることなどの同被告人のために酌むべき事情も併せ考慮し,共犯者Dの量刑の点をも斟酌してもなお,主文の刑が相当である。 (求刑被告人Aにつき懲役10年,被告人Bにつき懲役7年,被告人Cにつき懲役6年)平成16年2月13日福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部裁判長裁判官野島秀夫裁判官西森英司裁判官大庭和久

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