平成24(ワ)2303 ドメイン名使用差止請求権不存在確認請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年2月13日 東京地方裁判所
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判決文本文24,864 文字)

平成25年2月13日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(ワ)第2303号ドメイン名使用差止請求権不存在確認請求事件口頭弁論終結日平成24年11月21日判決東京都目黒区<以下略>原告日本ユナイテッド・システムズ株式会社東京都品川区<以下略>被告シティバンク銀行株式会社同訴訟代理人弁護士高松薫同奥原力也 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告には,商標第1447343号,商標第3176413号,商標第3221808号,商標第4469518号,商標第4802712号及び商標第4910939号の本件各商標による,ドメイン名citibank.jpに対する商標法上の使用差止請求権については,本件各商標登録時から短くとも平成24年1月25日の現在に至ってもなお,使用差止請求権は存在していないことを確認する。 第2 事案の概要本件は,ドメイン名「CITIBANK.JP」(以下「本件ドメイン名」という。)を株式会社日本レジストリサービス(以下「JPRS」という。)に登録している原告が,被告の申立てに係るJPドメイン名紛争処理手続において,日本 知的財産仲裁センター紛争処理パネルが本件ドメイン名の登録を被告に移転せよとする裁定(以下「本件裁定」という。)をしたため,被告に対し,別紙1記載 るJPドメイン名紛争処理手続において,日本 知的財産仲裁センター紛争処理パネルが本件ドメイン名の登録を被告に移転せよとする裁定(以下「本件裁定」という。)をしたため,被告に対し,別紙1記載の各商標権(以下,併せて「本件各商標」という。)に基づく本件ドメイン名の使用差止請求権の不存在確認を求めた事案である。 1 前提事実(証拠等を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)(1) 原告原告は,平成13年3月26日,登録者名を「moving.citibank.jp」として,本件ドメイン名を登録した会社である。 (甲1)(2) 被告被告は,米国法人Citibank, N.A.(以下「米国シティバンク」という。)のグループ会社であり,米国シティバンク日本支店の銀行業務に係る事業を譲り受け,平成19年7月以降,当該業務を行うほか,米国シティバンクの外国銀行としての日本における業務を代理している。なお,米国シティバンクに係る商業登記簿(外国会社登記簿)は,平成21年8月,すべての日本における代表者退任を事由として閉鎖された。 (甲2,7の5,乙1,3)(3) 本件各商標米国シティバンクは,本件各商標のうち,商標登録第1447343号,商標登録第3176413号,商標登録第3221808号,商標登録第4802712号及び商標登録第4910939号の商標権を有している。また,米国シティバンクは,本件各商標のうち,商標登録第4469518号を有していたが,当該商標権は,平成23年4月20日存続期間満了を原因として,同年12月28日登録が抹消された。 (4) JPドメイン名の登録事業ア JPRSは,平成14年4月,社団法人日本ネットワークインフォメー ションサービスセン 満了を原因として,同年12月28日登録が抹消された。 (4) JPドメイン名の登録事業ア JPRSは,平成14年4月,社団法人日本ネットワークインフォメー ションサービスセンター(以下「JPNIC」という。)からJPドメイン名(トップレベルドメインが「.jp」のドメイン名を指す。)の登録事業を移管され,当該事業を行っている。なお,JPドメイン名紛争処理に関する規則制定の権限は,JPドメイン名事業移管契約によって,JPNICに残されている。 JPドメイン名の登録申請は指定事業者を通じて行われるが,登録されたドメイン名に関わる契約関係は,登録者と指定事業者との間ではなく,登録者とJPRSとの間に生じる。 (以上につき甲4,乙8の2)イ JPNICは,平成12年10月,「汎用JPドメイン名登録等に関する規則」(以下「本件登録規則」という。)を定め,その後本件登録規則はJPRSに引き継がれた(汎用JPドメイン名とは,JPドメイン名のうち,セカンドレベルドメインに任意の文字列を登録できるものをいい,本件ドメイン名も汎用JPドメイン名に当たる。)。 本件登録規則は,登録者とJPRSとの間の登録契約関係を規律するものということができる。そして,後に述べる本件紛争処理方針と本件手続規則も,本件登録規則と一体のものとして,原告とJPRSとの間のドメイン名登録に関する登録契約関係を規律するものということができる。 本件登録規則は,別紙2のとおりであり,JPドメイン名紛争処理手続に関連する規定は以下のとおりである。 「第25条の2(紛争処理方針の裁定等による汎用JPドメイン名の移転登録)JPNICが認定する紛争処理機関(以下「認定紛争処理機関」という)で移転の裁定があ のとおりである。 「第25条の2(紛争処理方針の裁定等による汎用JPドメイン名の移転登録)JPNICが認定する紛争処理機関(以下「認定紛争処理機関」という)で移転の裁定があり,当社がその裁定結果を受領してから10営業日(当社の営業日をいう)以内に,登録者から,紛争処理方針(注記:後記の本件紛争処理方針を指す。)第4条k項に定める文書の提出がされない 場合,当社は,その裁定にしたがって,当社所定の方法による汎用JPドメイン名の移転登録をする。この場合,前条第2項の規定は適用しない。 (2項以下略)」「第29条(登録の取消)下記各号の事由がある場合,当社は,汎用JPドメイン名の登録を取り消すことができる。ただし,第4号および第6号の場合には,必ず取り消さなければならないものとする。 (1~5号略)(6)認定紛争処理機関にて取消の裁定があり,裁定結果の通知から10日以内に,裁判所へ出訴したことの証明が登録者から提出されないとき」「第37条(紛争処理)登録者は,その登録にかかる汎用JPドメイン名について第三者との間に紛争がある場合には,紛争処理方針に従った処理を行うことに同意し,当社は認定紛争処理機関の裁定に従った処理を行う。」(以上につき乙6の1,乙8の2,乙10)ウ JPNICは,平成12年7月,「JPドメイン名紛争処理方針」(以下「本件紛争処理方針」という。)及び「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則」(以下「本件手続規則」という。)を定めた。本件紛争処理方針は,本件登録規則その他の規則の参照により,それと一体になるものであって,登録者が登録したドメイン名の登録と使用から発生する,登録者と第三者との間のドメイン名 」という。)を定めた。本件紛争処理方針は,本件登録規則その他の規則の参照により,それと一体になるものであって,登録者が登録したドメイン名の登録と使用から発生する,登録者と第三者との間のドメイン名に係わる紛争処理に関する規約を定めたものとされている。 本件紛争処理方針は,別紙3のとおりであり,その主要な規定は以下のとおりである。 「第1条目的この「JPドメイン名紛争処理方針」(以下「本方針」という)は,社 団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(以下「JPNIC」という)により採択されたものであり,株式会社日本レジストリサービス(以下「JPRS」という)にドメイン名の登録をした者(以下「登録者」という)が従う登録規則(JPRSがJPドメイン名の登録等に適用するとして定める規則群)からの参照により,それと一体になるものであって,登録者が登録したドメイン名の登録と使用から発生する,登録者と第三者との間のドメイン名に係わる紛争処理に関する規約を定めたものである。本方針の第4条で定めるJPドメイン名紛争処理手続は,「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則」(以下「手続規則」という),およびJPNICにより認定された紛争処理機関(以下「紛争処理機関」という)が別途定める補則に従って,実施されるものとする。」「第3条ドメイン名登録の移転および取消JPRSは,下記のいずれかに該当する場合には,当該ドメイン名登録の移転または取消の手続を行う。 (a,b項略)c.JPNICが採択した本方針またはその改訂版に基づいて実施され,登録者が当事者となっているJPドメイン名紛争処理手続において,紛争処理機関におけるパネルが下したその旨の裁定を,JPRSが受領 c.JPNICが採択した本方針またはその改訂版に基づいて実施され,登録者が当事者となっているJPドメイン名紛争処理手続において,紛争処理機関におけるパネルが下したその旨の裁定を,JPRSが受領したとき(本方針第4条i項とk項を参照)(以下略)」「第4条 JPドメイン名紛争処理手続本条は,登録者が,このJPドメイン名紛争処理手続に応じなければならない紛争を定めたものである。このJPドメイン名紛争処理手続は,JPNICのウェブサイトに列挙されている紛争処理機関のいずれか一つの紛争処理機関により実施される。 a.適用対象となる紛争 第三者(以下「申立人」という)から,手続規則に従って紛争処理機関に対し,以下の申立があったときには,登録者はこのJPドメイン名紛争処理手続に従うものとする。 (i)登録者のドメイン名が,申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること(ⅱ)登録者が,当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと(ⅲ)登録者の当該ドメイン名が,不正の目的で登録または使用されていることこのJPドメイン名紛争処理手続において,申立人はこれら三項目のすべてを立証しなければならない。 b.不正の目的で登録または使用していることの証明紛争処理機関のパネルが,本条a項(ⅲ)号の事実の存否を認定するに際し,特に以下のような事情がある場合には,当該ドメイン名の登録または使用は,不正の目的であると認めなければならない。ただし,これらの事情に限定されない。 (i)登録者が,申立人または申立人の競業者に対して,当該ドメイン名に直接か ドメイン名の登録または使用は,不正の目的であると認めなければならない。ただし,これらの事情に限定されない。 (i)登録者が,申立人または申立人の競業者に対して,当該ドメイン名に直接かかった金額(書面で確認できる金額)を超える対価を得るために,当該ドメイン名を販売,貸与または移転することを主たる目的として,当該ドメイン名を登録または取得しているとき(ⅱ)申立人が権利を有する商標その他表示をドメイン名として使用できないように妨害するために,登録者が当該ドメイン名を登録し,当該登録者がそのような妨害行為を複数回行っているとき(ⅲ)登録者が,競業者の事業を混乱させることを主たる目的として,当該ドメイン名を登録しているとき(ⅳ)登録者が,商業上の利得を得る目的で,そのウェブサイトもしく はその他のオンラインロケーション,またはそれらに登場する商品およびサービスの出所,スポンサーシップ,取引提携関係,推奨関係などについて誤認混同を生ぜしめることを意図して,インターネット上のユーザーを,そのウェブサイトまたはその他のオンラインロケーションに誘引するために,当該ドメイン名を使用しているときc.登録者がドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していることの証明申立書を受領した登録者は,手続規則第5条を参照し,答弁書を紛争処理機関に対して提出しなければならない。パネルが,申立人および登録者の双方から提出されたすべての証拠を検討し,本条a項(ⅱ)号の事実の存否を認定するに際し,特に以下のような事情がある場合には,登録者は当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していると認めなければならない。ただし,これらの事情に限定されない。 (i)登録者が,当該 ,特に以下のような事情がある場合には,登録者は当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していると認めなければならない。ただし,これらの事情に限定されない。 (i)登録者が,当該ドメイン名に係わる紛争に関し,第三者または紛争処理機関から通知を受ける前に,商品またはサービスの提供を正当な目的をもって行うために,当該ドメイン名またはこれに対応する名称を使用していたとき,または明らかにその使用の準備をしていたとき(ⅱ)登録者が,商標その他表示の登録等をしているか否かにかかわらず,当該ドメイン名の名称で一般に認識されていたとき(ⅲ)登録者が,申立人の商標その他表示を利用して消費者の誤認を惹き起こすことにより商業上の利得を得る意図,または,申立人の商標その他表示の価値を毀損する意図を有することなく,当該ドメイン名を非商業的目的に使用し,または公正に使用しているときd.紛争処理機関の選択申立人は,申立書を提出することにより,JPNICが認定した紛争処理機関の中から一つの紛争処理機関を選択しなければならない。申立人に より選択された当該紛争処理機関が,本条f項に規定する併合審理の場合を除き,このJPドメイン名紛争処理手続を管理し,実施するものとする。 e.手続の開始とパネルの指名手続の開始および実施の手順,ならびに紛争処理の裁定を下すパネルの指名手続は,手続規則の定めによる。 (f~h項略)i.救済申立人がパネルに対して求めることのできる救済は,登録者のドメイン名登録の取消請求または当該ドメイン名登録の申立人への移転請求に限られる。 (j項略)k.裁判所への出訴いずれの当事者も, ることのできる救済は,登録者のドメイン名登録の取消請求または当該ドメイン名登録の申立人への移転請求に限られる。 (j項略)k.裁判所への出訴いずれの当事者も,このJPドメイン名紛争処理手続の開始前,係属中または終結後のいずれの段階においても,当該ドメイン名の登録に関して裁判所に出訴することができる。本条に定めるいかなる要件も,本項による当事者の出訴を妨げるものではない。パネルが,登録者のドメイン名登録の取消または移転の裁定を下した場合には,JPRSはパネルの裁定の実施を,紛争処理機関からの裁定の通知後10日間(JPRSの本店の営業日で計算)の間,保留する。もしこの10日間の間に,JPRSに対し,登録者から申立人を被告として手続規則第3条(b)(ⅻ)に基づいて申立人が合意している管轄裁判所に出訴したとの文書(裁判所受領印のある訴状等)の正本の提出がなければ,JPRSはその裁定を実施する。(この合意裁判管轄は,東京地方裁判所またはJPRSのドメイン名登録原簿に記載されている登録者の住所における管轄裁判所とする。手続規則第1条および第3条(b)(ⅻ)を参照。)もしこの10日間の間に,登録者から出訴したとの文書の正本の提出があったときには,JPRSはその裁 定結果の実施を見送る。また,(i)公正証書による当事者間での和解契約書の正本,(ⅱ)登録者が提訴した当該訴訟についての訴えの取下書および申立人の同意書の正本,または(ⅲ)当該訴訟を却下もしくは棄却する,あるいは登録者は当該ドメイン名を継続して使用する権利がないとの裁判所による確定判決またはそれと同一の効力を有する文書の正本を,申立人または登録者からJPRSが受領するまで,JPRSはパネルの裁定の実施に関わるいかなる手続も行わない。なお,上記の 利がないとの裁判所による確定判決またはそれと同一の効力を有する文書の正本を,申立人または登録者からJPRSが受領するまで,JPRSはパネルの裁定の実施に関わるいかなる手続も行わない。なお,上記の正本にかえ,写しを提出することができる。」(以上につき乙6の1及び2)(5) JPドメイン名紛争処理手続JPドメイン名紛争処理手続は,JPドメイン名の登録者と第三者との間のドメイン名に係わる紛争を処理する手続であり,本件紛争処理方針,本件手続規則等に従って処理される。申立人は,①登録者のドメイン名が,申立人が権利又は正当な利益を有する商標その他表示と同一又は混同を引き起こすほど類似していること,②登録者が,当該ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないこと,③登録者の当該ドメイン名が,不正の目的で登録又は使用されていることの3項目をすべて立証する必要があり(本件紛争処理方針4条a項),その救済は登録者のドメイン名登録の取消請求又は当該ドメイン名登録の申立人への移転請求に限られる(同条i項)。紛争処理機関におけるパネルが登録者のドメイン名登録の取消又は移転の裁定を下した場合には,JPRSは,登録者が裁定の通知後10日営業日以内に管轄裁判所に出訴した場合を除いて,その裁定結果に基づいて,ドメイン名登録の取消又は移転を行う(本件紛争処理方針3項c項,4条k項。本件登録規則25条の2第1項,29条6号も参照)。 日本知的財産仲裁センターは,JPドメイン名紛争処理手続について,JPNICにより認定された紛争処理機関である。 (以上につき乙6の1及び2,乙7,8の1,乙9,10)(6) 本件裁定被告は,平成23年10月28日,日本知的財産仲裁センターに対し,原告を相手方として,本件ド る。 (以上につき乙6の1及び2,乙7,8の1,乙9,10)(6) 本件裁定被告は,平成23年10月28日,日本知的財産仲裁センターに対し,原告を相手方として,本件ドメイン名の登録を被告に移転せよとの裁定を求めて,本件紛争処理方針に基づく申立てを行った。日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは,平成24年1月18日,別紙4のとおり本件裁定を行い,そのころ原告及び被告に対して本件裁定が通知された。その後本件訴訟が提起されたため,JPRSは,同月31日,本件紛争処理方針4条k項に基づいて,本件裁定結果の実施を見送った。 (乙2の1~4,乙3,5)(7) 原告と被告との関係原告と被告との間には,本件訴訟提起以前において,本件裁定に係る申立て以外に紛争はなかった。 2 争点本件の争点は,①確認の利益の有無(本案前の争点),②本件裁定の正当性(本件ドメイン名登録の移転義務の有無)である。 3 当事者の主張(原告の主張)(1) 商標法上の使用差止請求権の不存在ア本件各商標の商標権者は米国シティバンクである。なお,商標第4469518号は,平成23年4月20日にて商標存続期間満了により,同年12月28日付けで登録は抹消されているが,その登録時から短くとも平成24年1月25日の現在に至ってもなお,被告に「本件各商標の商標法上の使用差止請求権は存在していない」ことを確認するため,本件にて取り扱う。 イ本件各商標は,その登録時から短くとも平成24年1月25日の現在に 至ってもなお,専用使用権は1度も設定されたことがない。 ウしたがって,被告は,本件各商標の商標権者及び専用使用権者のどちらでもないことから,その登録時から短くとも平成24年1 に 至ってもなお,専用使用権は1度も設定されたことがない。 ウしたがって,被告は,本件各商標の商標権者及び専用使用権者のどちらでもないことから,その登録時から短くとも平成24年1月25日の現在に至ってもなお,本件各商標の商標法上の使用差止請求権については無権原であり,当該請求権を有していなかった。 (2) 確認の利益ア過去の法律関係の確認確認の利益が存在することの要件としては,確認対象の適切性と即時確定の必要性が挙げられるが,特に本件訴訟では「請求の趣旨」において「本件各商標登録時から短くとも平成24年1月25日」というように,過去の一定期間の法律関係が確認できれば足りる旨の内容がある。 確認対象は,現在の紛争の解決あるいは当事者の法的地位の安定に役立つ具体的な法律関係でなければならないので,通常は,現在の法律関係が確認の対象となるが,過去の法律関係の確認でも,現在の権利関係の個別的な確認が必ずしも紛争の抜本的な解決をもたらさず,かえって,それらの権利関係の基礎にある過去の基本的な法律関係を確定することが,現存する紛争の直接かつ抜本的な解決のために適切かつ必要と認められるような場合には,確認の利益が認められる。 イ紛争が現存すること本件裁定が行われ,現在は,本件訴訟の判決結果をもとに,裁定結果を実施する又は見送ったまま不実施にするかという最終判断がされる段階であり,本件ドメイン名に関する紛争は現在も続いている。 ウ確認対象の適切性確認対象の適切性は,原告の権利又は法的地位について生じた不安又は危険を除去する方法として,確定判決を得ることが適切であるということであるが,特に本件訴訟は,過去の法律関係の確認によって,現存する紛 適切性は,原告の権利又は法的地位について生じた不安又は危険を除去する方法として,確定判決を得ることが適切であるということであるが,特に本件訴訟は,過去の法律関係の確認によって,現存する紛 争の直接かつ抜本的な解決となることで適切となる。 (ア) 過去の法律関係と本件訴訟の請求の趣旨の期間について本件裁定は,未来の法律関係を基にしていないことは自明であることから,JPドメイン名紛争処理の手続開始日の平成23年11月2日から裁定通知の平成24年1月18日に至る過去の期間(裁定対象期間)における,本件ドメイン名,原告及び被告について,本件登録規則,本件紛争処理方針及び本件手続規則による法律関係を基に裁定結果が出されている。 請求の趣旨では「本件各商標登録時から短くとも平成24年1月25日」としたが,被告は本件各商標を基に裁定を申立てており,「本件各商標登録時」はJPドメイン名紛争処理の手続開始日の平成23年11月2日より前である。さらに,裁定通知が出された平成24年1月18日は,「平成24年1月25日」より前である。つまり,裁定対象期間は,「本件各商標登録時から短くとも平成24年1月25日」に含まれている。 したがって,本件請求において,過去の法律関係として,被告に商標法上の使用差止請求権は存在していないことを確認する期間については,「本件各商標登録時から短くとも平成24年1月25日」を確認すれば足りる。 (イ) 現存する紛争の直接かつ抜本的な解決裁定制度上,裁定の結果には既判力はなく,裁定の結果に拘束されずに裁判所へ不服申立ができる。 原告は,裁定制度に忠実に従って本件訴訟を進めている。具体的には,「『JPドメイン紛争処理方針(JPDRP) の結果には既判力はなく,裁定の結果に拘束されずに裁判所へ不服申立ができる。 原告は,裁定制度に忠実に従って本件訴訟を進めている。具体的には,「『JPドメイン紛争処理方針(JPDRP)』には,どのような訴えとすべきかの定めはなく,登録者の判断に委ねられています。これまでの例では,ドメイン名使用権確認請求やドメイン名使用差止請求権不存在確認請求 などの訴えが提起されています。」(乙7・4枚目)という文言に従って,本件訴状のように「ドメイン名使用差止請求権不存在確認請求」として一字も変えずに忠実に本件訴訟を進めている。 裁定結果の実施・不実施を最終判断する実施機関(JPRS)は,訴状正本を要求していることから請求の趣旨について裁定結果の実施見送りを決定できるか当然チェックを入れており,請求の趣旨に明記されている過去の法律関係の確認請求であることを当然認識した上で,裁定結果の実施見送りを正式に決定しているものである。実施機関は,本件訴訟の判決結果をもとに,裁定結果である本件ドメイン名の移転つまり原告から被告へ本件ドメイン名を強制的に移転するか移転しないかの判断を行う,裁定制度における最終段階となっている。 以上のとおり,現存する紛争について,裁定には既判力がなく,裁定結果に拘束されずに裁判所へ不服申立てができることから,原告は裁定制度に忠実に従って本件訴訟を進めているので正に「適切」である。原告が適切に進めた本件訴訟に対して実施機関は裁定結果の一時実施見送りを正式に決定し,本件訴訟の判決結果を待って,原告から被告へ本件ドメイン名を強制的に移転するか移転しないかという,現存する紛争処理の最終判断をする段階にある。つまり,本件訴訟の判決結果が正に直接作用して,JPドメイン名の紛争処理を行う裁定制 原告から被告へ本件ドメイン名を強制的に移転するか移転しないかという,現存する紛争処理の最終判断をする段階にある。つまり,本件訴訟の判決結果が正に直接作用して,JPドメイン名の紛争処理を行う裁定制度上,本件ドメイン名に関する紛争処理の抜本的な最終解決に至ることになっている。 (ウ) 以上のとおり,過去の法律関係の確認によって現存する紛争の直接かつ抜本的な解決となることが明らかであり,本件請求の確認対象は適切である。 エ即時確定の必要性即時確定の必要性(即時確定の利益)は,原告の権利又は法的地位について不安又は危険が現存しており,これを除去するために確定判決を得る ことが必要であるということである。 原告は,本件訴訟の結果次第で,強制的に本件ドメイン名が移転されてしまうか移転されないで済むかという原告にとっては切迫した状態にある。 まさに,原告にとって本件ドメイン名に関する権利が奪われるか奪われないかという危険が現存しており,これを除去するために確定判決を得ることが必要であることに言を待たない。 オ以上のとおり,原告と被告の間で本件ドメイン名に関する紛争が現存し,確認対象に適切性及び即時確定の必要性があるから,本件訴えには確認の利益が存在する。 (3) 本件裁定の正当性(本件ドメイン名の移転義務の有無)についての反論被告は,既判力がない裁定にもかかわらず既判力があるという前提で,裁定の内容が正当であるから履行義務があるといった旨主張するが,既判力ない本件裁定で裁定の内容が正当である主張すること自体明らかに失当である。 裁定は,本件登録規則,本件紛争処理方針及び本件手続規則に基づいた裁定制度全体への当事者双方による包括的同意が法的根拠である。一方,本件訴訟 正当である主張すること自体明らかに失当である。 裁定は,本件登録規則,本件紛争処理方針及び本件手続規則に基づいた裁定制度全体への当事者双方による包括的同意が法的根拠である。一方,本件訴訟は商標法(36条)である。 被告は,「申立人(被告)が権利または正当な利益を有する商標権」などと,裁定の内容から「正当な利益」を主張しているが,特定の規則や方針の限られた中で規定された基準による単なる一用語にすぎない。もっといえば,規則や方針に同意すれども,商標の専用使用権さえない者を「正当な利益」があるからと,登録維持料を払っている登録者からドメイン名を奪おうという点からも,「正当な利益」はいい加減な基準でもある。 そもそも,専用使用権もない者に,正当な利益と認定したこと自体,過去例にないほどのパネリストによる暴論かもしれないが,少なくとも,商標を提示して裁定の申立てを行っているのであるから,最低限,商標権なり専用使用権なり排他的権利が当然あるものとして裁定制度は設計されているはず である。 (被告の主張)(1) 確認の利益についてア確認の訴えは,即時確定の利益がある場合,換言すれば,現に,原告の有する権利又は法律的地位に危険又は不安が存在しており,これを除去するため,被告に対して確認判決を得ることが,必要かつ適切であるといえる場合に限り許されるものである(最高裁昭和30年12月26日第三小法廷判決・民集9巻14号2082頁,最高裁昭和54年11月1日第一小法廷判決・判時952号55頁等)。 イこの点,本件訴訟は,本件裁定を受けたことに不服である原告が,本件裁定結果の実施すなわち本件ドメイン名の被告に対する移転を回避するため,本件紛争処理方針4条k項に基づき出訴したものである。本件 イこの点,本件訴訟は,本件裁定を受けたことに不服である原告が,本件裁定結果の実施すなわち本件ドメイン名の被告に対する移転を回避するため,本件紛争処理方針4条k項に基づき出訴したものである。本件訴訟によって確認すべきものがあるとすれば,それは,①裁定により登録者が負うこととなる義務を定める本件紛争処理方針の規定それ自体の有効性・適法性か,②本件紛争処理方針の定めに従い登録者がかかる義務を負うといえるか否か,すなわち,当該義務の発生根拠としてパネリストにより認定された本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)~(ⅲ)号の事由があるか否かのいずれかであるというべきである。 ウすなわち,本件裁定結果が命じる原告における本件ドメイン名の被告への移転義務は,本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)~(ⅲ)号に該当していることが,パネリストにより認定されたことによって発生したものである。 言い換えれば,原告の被告に対する本件ドメイン名の移転義務は,原告が本件ドメイン名の登録時において従うことを同意した本件紛争処理方針の定めに基づき発生したものである。そうであれば,確認の利益を有するといえるためには,その内容は,請求認容の確認判決を受けることによって,本件裁定に示された原告の移転義務が否定ないし変更されるとともに,本 件ドメイン名の登録を原告が維持することができるという法律効果を発生するような性質のものでなければならない。 エところが,原告は,かかる本件裁定結果の実施(すなわち本件ドメイン名の被告に対する移転)を回避するために提起した本件訴訟において,「被告には本件各商標の商標法上の使用差止請求権は存在していないことを確認する」との判決を求める旨述べ,本件各商標の商標権者は米国シティバンクであるとか,被告は専用使用権の設定を受けていないから ,「被告には本件各商標の商標法上の使用差止請求権は存在していないことを確認する」との判決を求める旨述べ,本件各商標の商標権者は米国シティバンクであるとか,被告は専用使用権の設定を受けていないから,商標法に基づく使用差止請求権がないという主張を展開している。 しかしながら,パネリストは,本件紛争処理方針の諸規定に基づいて,本件各商標の商標権者が米国シティバンクであることを認定するとともに,本件各商標に係る専用使用権の設定の有無にかかわらず,本件各商標につき,被告は正当な利益を有することを認定した上で,本件裁定をしたものである。 すなわち,パネリストは,被告が,本件各商標について「正当な利益を有する」(本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)号)ことを認定することにより,本件紛争処理方針に基づき,仲裁センターに対し本件紛争処理手続の実施を求め,また,本件ドメイン名について仲裁センターの裁定を求め得る「申立人」としての適格を有していることも認定しているのである。 オ以上からすれば,本件訴訟において,原告が求めるような,被告における本件各商標にかかる「商標法上の使用差止請求権」の存否を確認したとしたところで,本件裁定の結果に対する影響とか効果を及ぼすものではない。したがって,かかる権利の存否について確認したとしても,原告と被告との間の本件ドメイン名にかかる紛争解決の役に立たないことは明白であり,紛争解決のために必要かつ適切なものであるともいえない。 よって,本件訴えは,確認の利益がなく不適法である。 (2) 本件裁定の正当性(本件ドメイン名の移転義務の有無) 仮に,本件訴訟が,本件裁定における認定判断を争い,被告に対し本件ドメイン名登録を移転する義務を負わないことを確認する趣旨であると 件裁定の正当性(本件ドメイン名の移転義務の有無) 仮に,本件訴訟が,本件裁定における認定判断を争い,被告に対し本件ドメイン名登録を移転する義務を負わないことを確認する趣旨であると解される場合であっても,①本件紛争処理方針の規定が有効かつ適法であり,また,②本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)~(ⅲ)号の事由があるといえるから,原告の請求は棄却されるべきである。 ア本件紛争処理方針の規定が有効かつ適法であること(ア) JPドメイン名紛争処理手続に関しては,本件紛争処理方針4条a項が,「適用対象となる紛争」として,申立人から次の(ⅰ)ないし(ⅲ)の申立てがあったときには,登録者は本件紛争処理方針の定める紛争処理手続に従うべきことを規定している。 (ⅰ)登録者のドメイン名が,申立人が権利または正当な利益を有する商標権その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること(ⅱ)登録者が,当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと(ⅲ)登録者の当該ドメイン名が,不正の目的で登録または使用されていること(イ) また,本件紛争処理方針4条b項には,紛争処理機関のパネル(パネリスト)が上記(ⅲ)の事実の存否を認定するに際して,不正の目的による登録又は使用であると認めることができる場合として,「登録者が,申立人または申立人の競業者に対して,当該ドメイン名に直接かかった金額(書面で確認できる金額)を超える対価を得るために,当該ドメイン名を販売,貸与または移転することを主たる目的として,当該ドメイン名を登録または取得しているとき」を含む場合が掲げられている。 さらに,同条i項には,パネルによる申立人に対する救済は,登録者のドメイン名登録の することを主たる目的として,当該ドメイン名を登録または取得しているとき」を含む場合が掲げられている。 さらに,同条i項には,パネルによる申立人に対する救済は,登録者のドメイン名登録の取消し又は申立人への移転によりされる旨も定められている。 (ウ) 上記の定めは,その内容に照らし,ドメイン名にかかる紛争を処理するための規定として,合理的なものであって,公序良俗その他法令の趣旨に照らしても相当なものと認められる。また,ドメイン名の登録者は,登録に当たって,上記の定めに服することにつきあらかじめ同意をした上で,ドメイン名登録の利益を享受している(この点,原告も同様である)。したがって,本件紛争処理方針の規定が有効かつ適法なものであることは明らかである。 イ本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)~(ⅲ)号の事由があること上記のとおり,本件紛争処理方針の規定が有効かつ適法なものであり,原告においても本件ドメイン名の登録時にこれに従うことに同意している以上,本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)~(ⅲ)号の事由がある場合には,原告において,本件ドメイン名の登録を移転すべき義務が生じるというべきである。 そして,本件ドメイン名に関し,上記(ⅰ)~(ⅲ)号の各要件に該当する事由があることは,以下のとおり明らかである。 (ア) 要件(ⅰ)についてa 本件ドメイン名は「citibank.jp(CITIBANK. JP)」であるところ,特段の識別力を有しないトップレベルドメイン部分を除いた本件ドメイン名において,識別力を有する要部といえるのは,「citibank(CITIBANK)」の部分である。 b 米国シティバンクは,本件各商標の商標権者であるところ,当該各商標はいずれ ドメイン名において,識別力を有する要部といえるのは,「citibank(CITIBANK)」の部分である。 b 米国シティバンクは,本件各商標の商標権者であるところ,当該各商標はいずれも,「citibank」又は「CITIBANK」の文字構成からなり,本件ドメイン名はこれと同一である。 c そして,被告は,米国シティバンクから,平成19年に日本支店から銀行業務にかかる事業譲渡を受け,その業務を開始しており,また,現在においても,米国シティバンクの外国銀行としての日本における 業務を代理している関係にある。かかる事実からすれば,本件各商標は,被告が権利又は正当な利益を有する商標であることは明らかである。 d この点,被告は,本件各商標を使用することについて,商標権者である米国シティバンクから許諾を得ているから,商標法上の専用使用権の設定の有無にかかわらず,本件各商標につき,正当な利益を有していることは明らかである。 e 以上から,本件ドメイン名が,被告が権利または正当な利益を有する商標権その他表示と,類似の範囲を超えて同一であることは明らかであるから,上記要件(ⅰ)に該当する事由がある。 (イ) 要件(ⅱ)についてa 登録者である原告が,「citibank」又は「CITIBANK」といった名称で一般に知られた事実はなく(本件紛争処理方針4条c項(ⅱ)号),本件ドメイン名の登録者所在地(甲1)に登録者の登記も存在しておらず(乙3・資料4),登記簿上の本店所在地(平成24年2月17日付上申書)にも,登録者の本店は所在していない(甲7の2)。 b また,本件ドメイン名の登録者住所地は,バーチャルオフィスサービスにより郵便物の取次等がなされるのみであり,事 年2月17日付上申書)にも,登録者の本店は所在していない(甲7の2)。 b また,本件ドメイン名の登録者住所地は,バーチャルオフィスサービスにより郵便物の取次等がなされるのみであり,事務所が存在しているわけでもなく,また,登録者電話番号もファックス専用となっている(甲7の2,乙3・3頁)。さらに,登録者ホームページ(甲1)を入力しても,製作中である旨が表示されるのみで稼働していない(甲7の2,乙3・資料5)。原告が「休眠」状態にあって,何ら事業活動を行っていないことは,原告が認めている(乙3・資料6・8頁)。 c 上記事情からすれば,そもそも,原告において,何ら,「citi bank」又は「CITIBANK」の名称を用いて事業を営んでいるというような実体は皆無であり,本件ドメイン名の登録を得ることについて,権利又は正当な利益を有していないことは明白である。 d 原告は,米国シティバンクから,過去に同社名義で本件ドメイン名の取得及び管理の依頼を受けたが,平成18年3月13日以降登録維持料の支払いがないから,未払債権が存在しているとか,平成21年8月31日に本件ドメイン名の放棄につき最終通知を送ったとかいった事情を述べる(甲5・8頁等)。 しかしながら,本件裁定書(乙2の1)における判断のとおり,まさに,かかる点はそもそも米国シティバンクとの間で解決されるべき問題である上,さらには,仮に,かかる事情の存在を前提としたとしても,「債権回収」(甲5・12頁等)の名目のもとに,被告あるいは米国シティバンクの承諾もなしに,本件ドメイン名を原告名義(moving.citibank.jp名義)で登録することそれ自体,法律上,当然に正当化されるわけではない。本件ドメイン名にかかる無主物先占 国シティバンクの承諾もなしに,本件ドメイン名を原告名義(moving.citibank.jp名義)で登録することそれ自体,法律上,当然に正当化されるわけではない。本件ドメイン名にかかる無主物先占などといった独自の主張(甲5・8頁等)が成り立たないことも,また自明である。 e 以上のとおりであり,原告が,被告あるいは米国シティバンクの承諾もないまま,本件ドメイン名を勝手に原告名義で登録したことは明らかであって,かかる行為を法律上正当化するに足りる事情もない以上,原告が,本件ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有するとはいえないことは明らかである。 したがって,上記要件(ⅱ)に該当する事由がある。 (ウ) 要件(ⅲ)についてa この点,原告は,被告ないし米国シティバンクの在米代理人に対して,「権利の移転料を『一度だけ』金額を提示していただこうと思い ました。それが弊社で納得がいかなければ,すぐに第三者に売却なり委託をして,あとはそちらでやりとりをしていただく,ということにいたしたく存じます。弊社は清算の段階ではなく休眠の段階ですが,債権だけでなく債務の処理を行っていることや,商法の規定において利益追求をしなさいとされている株式会社でもありますことから,高い金額の方が良いことになります。」などと申し向けており(乙3・資料6・8頁),本件ドメイン名を,被告ないし米国シティバンクに対し,高額で売却しようとする意図を有していたことは,上記メールの内容から明白である。 b さらに,譲渡金額の決定については,「内容としてはこれまでお伝えしております通りでございますが,一点,金額につきまして御社から一度ご提示頂くお話をお伝えいたしましたものの,弊社も金額を聞かれて,はたと困 ,譲渡金額の決定については,「内容としてはこれまでお伝えしております通りでございますが,一点,金額につきまして御社から一度ご提示頂くお話をお伝えいたしましたものの,弊社も金額を聞かれて,はたと困り,Citibank様でも算定する基準に困ったのではと思いました。」「それで,今どきは日本でも日本以外でも,第三者による客観・科学的な査定サービスが盛んでもありますので,中立な第三者による査定を受けて,その査定金額をベースにしてお話を進めて,最終的な金額を決めて行くのはいかがでしょう。」などと申し向けているところ(乙3・資料6・3頁),かかる「査定」による譲渡金額の決定を提案すること自体,原告が,本件ドメイン名の取得に「直接かかった金額」ではなく,これを超える金額を米国シティバンクから得ようとする意思を有していたことを示すものというべきものである。 したがって,「登録者が,申立人または申立人の競業者に対して,当該ドメイン名に直接かかった金額(書面で確認できる金額)を超える対価を得るために,当該ドメイン名を販売,貸与または移転することを主たる目的として,当該ドメイン名を登録または取得している」(本件紛争処理方針4条b項(ⅰ)号)ことも,上記事情から容易に 認められる。 c 以上からすれば,本件紛争処理方針4条b項(ⅰ)号に基づいて,本件ドメイン名は,原告により不正の目的で登録または使用されていると認められる。よって,上記要件(ⅲ)に該当する事由があることもまた明らかである。 ウ以上のとおり,本件訴訟が,原告が被告に対し本件ドメイン名登録を移転する義務を負わないことを確認する趣旨であると解される余地がある場合であっても,①本件紛争処理方針の規定が有効かつ適法であり,かつ,②本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)~(ⅲ)号の ドメイン名登録を移転する義務を負わないことを確認する趣旨であると解される余地がある場合であっても,①本件紛争処理方針の規定が有効かつ適法であり,かつ,②本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)~(ⅲ)号の事由があるといえることから,本件裁定における本件パネリストの判断は正当であり,原告が,本件紛争処理方針の定めに基づき,本件裁定に従って,被告に対し本件ドメイン名登録の移転義務を負っていることは明白である。 第3 当裁判所の判断 1 確認の利益の有無(本案前の争点)について(1) 前提事実に加え,後掲の証拠等によれば,以下の各事実がそれぞれ認められる。 ア被告は,平成23年10月28日,日本知的財産仲裁センターに対し,原告を相手方として,本件ドメイン名の登録を被告に移転せよとの裁定を求めて,本件紛争処理方針に基づく申立てを行った。 (前提事実(6))イ被告は,当該申立てにおいて,本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)号の事由として,①米国シティバンクが本件各商標を有し,被告は本件各商標を使用することにつき許諾を得ていること,②原告は本件ドメイン名をJPRSに登録していること,③本件ドメイン名の要部である「CITIBANK」と本件各商標は,全く同一又は小文字と大文字の違いがあるだけであり,同一又は誤認混同を生ずるほどに類似していることを主張した。 また,被告は,同項(ⅱ)号の事由として,㋐本件各商標は,世界的に周知・著名であるため,原告が本件各商標を知らなかったことはおよそあり得ないこと,㋑原告は被告と何ら取引関係がなく,被告が原告に対して本件各商標の使用を許諾したことも本件ドメイン名の取得を依頼したこともないこと,㋒原告の本件ドメイン名の登録者住所地は商業登記簿上の本店所在地ではなく,原告のホーム 引関係がなく,被告が原告に対して本件各商標の使用を許諾したことも本件ドメイン名の取得を依頼したこともないこと,㋒原告の本件ドメイン名の登録者住所地は商業登記簿上の本店所在地ではなく,原告のホームページは稼働していない上,原告に電話をかけても何らの応答もないことを主張した。 さらに,被告は,同項(ⅲ)号の事由として,ⓐ本件各商標が周知・著名である場合には,原告が本件ドメイン名の登録について権利又は正当な利益を有する特段の事情が存在することを明らかにしなければ,本件ドメイン名の登録は,インターネット上のユーザーを誤認混同させる不正の目的でされたものといえること,ⓑ被告在米代理人が原告に対し,本件ドメイン名が被告の商号及び周知表示であることを指摘して本件ドメイン名の使用の停止及び譲渡を要求したところ,原告が本件ドメイン名の売却を要求したこと,ⓒ原告は,ドメイン名の新規登録料・更新料を遥かに上回る金員の支払の要求を暗に示唆したことを主張し,このような経緯から,原告が不当な対価を得て本件ドメイン名を販売する目的で本件ドメイン名を登録又は取得したものであることは明らかであると主張した。 (以上につき乙2の1,乙3)ウ他方で,原告は,当該申立てにおいて,本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)号の事由について,①被告は,本件各商標の商標権者である米国シティバンクから専用使用権の設定を受けていないのであって,単なる通常使用権の許諾を受けているにすぎないから,本件各商標について排他的な権利がないこと,②シティグループは,海外では著名であるが,国内において著名ではないこと,③「CITIBANK」という名称は,日本国内では観念上一般名称であり,本件ドメイン名について排他的権利を主張することは 難しいことを主張した。 ま 内において著名ではないこと,③「CITIBANK」という名称は,日本国内では観念上一般名称であり,本件ドメイン名について排他的権利を主張することは 難しいことを主張した。 また,原告は,同項(ⅱ)号の事由について,㋐原告と米国シティバンクは,原告のインターネットサービスについて取引があり,原告は,本件ドメイン名を米国シティバンクの依頼により登録し,平成18年3月13日までドメイン名の登録維持料の支払を受けていたこと,㋑原告は,米国シティバンクの在日営業所が閉鎖された後も,本件ドメイン名につき事務管理(民法697条)を行い,登録を維持していたが,米国シティバンクに対して原告との取引や支払の履歴の確認を求めても,米国シティバンクは全く対応なく放置したこと,㋒原告は,本件ドメイン名の保管料債権があることから,本件ドメイン名について先取特権(民法320条)をもとにそのまま占有することにしたが,民法239条1項からすれば「知的財産という無体物を無主物であれば先占できる」と解釈できるので,放棄により所有者のなくなった本件ドメイン名を,所有の意思をもって占有することによって,その所有権を取得することにしたこと,㋓原告は本件ドメイン名を将来的に使用する準備を進めていることを主張した。 さらに,原告は,同項(ⅲ)号の事由について,米国シティバンクに対して原告との取引や支払の履歴の確認を求めても,米国シティバンクが対応しなかったことから,原告は,債権なりコストなりを回収するために本件ドメイン名を正式に取得することを考えたのであり,正当な目的であることを主張した。 (以上につき甲7の1,6及び19,乙2の1)エ原告と被告との間には,本件訴訟提起以前において,本件裁定に係る申立て以外に紛争はなかった。 (前提 ,正当な目的であることを主張した。 (以上につき甲7の1,6及び19,乙2の1)エ原告と被告との間には,本件訴訟提起以前において,本件裁定に係る申立て以外に紛争はなかった。 (前提事実(7))(2) 以上に基づいて,確認の利益について検討する。 確認の訴えにおける確認の利益は,判決をもって法律関係の存否を確定す ることが,その法律関係に関する法律上の紛争を解決し,当事者の法律上の地位の不安,危険を除去するために必要かつ適切である場合に認められる(最高裁昭和44年(オ)第719号同47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁)。 これを本件についてみるに,原告は,本件ドメイン名の登録によりJPRSとの間に生じた登録契約関係に基づく地位についての不安,危険を除去するために,本件訴訟を提起することが必要,適切であると主張しているものと解される。 そこで,検討するに,被告は,本件裁定に係る申立てにおいて,本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)号の事由に関し,米国シティバンクが本件各商標を有し,被告は本件各商標を使用することにつき許諾を得ていることを主張しているが,本件各商標について,その商標権や専用使用権を有するとして,本件ドメイン名の使用差止めを主張するものではない。 すなわち,被告は,本件ドメイン名の登録に関し,原告とJPRSと間の法律関係を規律する本件登録規則(及びそれと一体をなす本件紛争処理方針及び本件手続準則)に則して,登録契約内容の変更(登録の移転)を求めているものであり,その主張する事由は,米国シティバンクの本件各商標に由来する権利又は正当な利益ではあるが,被告自身が本件各商標について,商標権や専用使用権を有することを主張するものではない。 したがって,仮に,本件訴訟にお る事由は,米国シティバンクの本件各商標に由来する権利又は正当な利益ではあるが,被告自身が本件各商標について,商標権や専用使用権を有することを主張するものではない。 したがって,仮に,本件訴訟において被告に本件各商標についての商標法上の使用差止請求権が存在しないことを確認してみても,被告が本件各商標について米国シティバンクから許諾を得ているという事実関係が本件ドメイン名の登録の移転を基礎付け得るものである以上は,原告の本件ドメイン名の登録に関するJPRSとの間の契約関係に基づく地位についての不安,危険は除去されないものといわざるを得ない。 そして,原告と被告との間には,本件訴訟提起以前において,本件裁定に 係る申立て以外に紛争はなかったのであるから,本件各商標の商標権に基づく本件ドメイン名の使用差止めという紛争は存在しなかったというほかはない。 そうすると,本件は,判決をもって法律関係の存否を確定することにより,その法律関係に関する法律上の紛争を解決するものではないから,確認の利益が認められない。 この点,原告は,本件裁定が行われ,現在は,本件訴訟の判決結果をもとに,裁定結果を実施する又は見送ったまま不実施にするかという最終判断がされる段階であり,本件ドメイン名に関する紛争は現在も続いている旨主張する。しかしながら,JPドメイン名紛争処理手続において,本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)号の事由に関し,申立人が商標権ないしその専用使用権に基づく差止請求権を主張する場合ならばともかく,本件裁定に係る申立てにおいては,そのような主張はないのであるから,それに沿った確認対象を選択すべきであって,本件ドメイン名を使用する権利があることの確認を求めるのが相当であったと解される。なお,当裁判所は,原告に対し,本件ドメイン ような主張はないのであるから,それに沿った確認対象を選択すべきであって,本件ドメイン名を使用する権利があることの確認を求めるのが相当であったと解される。なお,当裁判所は,原告に対し,本件ドメイン名を使用する権利があることの確認を求めるか否かを釈明したが,原告は訴えの変更をしなかったものである。 (3) 以上のとおり,本件訴えは,確認の利益がなく不適法であるから,却下を免れない。 2 本件ドメイン名登録の移転義務の有無について前記1のとおり,本件訴えは却下されるべきものと解されるが,念のため,本件ドメイン名登録の移転義務の有無について判断する。 (1) まず,本件紛争処理方針の有効性について検討する。 JPドメイン名の登録は,前記のとおり,登録者とJPRSとの間の登録契約に基づいて行われるのであり,本件登録規則は登録契約の一部を構成するものと解される。そして,本件登録規則37条は,「登録者は,その登録 にかかる汎用JPドメイン名について第三者との間に紛争がある場合には,紛争処理方針に従った処理を行うことに同意し,当社は認定紛争処理機関の裁定に従った処理を行う。」と定めるから,登録者は,登録ドメインについて第三者との間に紛争がある場合には,本件紛争処理方針に従った処理を行うことにあらかじめ同意しているといえる。 このように,本件紛争処理方針は,登録者の同意に法的根拠があると解され,その条項をみても公序良俗に反するなどの事情は見当たらない。 そうすると,本件紛争処理方針は有効であり,登録者である原告は本件紛争処理方針に従う義務がある。 (2) そこで,本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)~(ⅲ)号の事由の有無について検討する。 ア本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)号の事由の有無に る原告は本件紛争処理方針に従う義務がある。 (2) そこで,本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)~(ⅲ)号の事由の有無について検討する。 ア本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)号の事由の有無について米国シティバンクは,本件各商標(ただし,商標登録第4469518号を除く。以下,この意味で「本件各商標」を使用する。)を有する(前提事実(3))。他方で,被告は,米国シティバンクのグループ会社であり,米国シティバンク日本支店の銀行業務に係る事業を譲り受け,平成19年7月以降,当該業務を行うほか,米国シティバンクの外国銀行としての日本における業務を代理している(前提事実(2))。また,弁論の全趣旨によれば,被告は,米国シティバンクから本件各商標の使用許諾を受けていることが認められる。これらの事実に照らすと,本件各商標は被告が「権利または正当な利益を有する商標」であると認めるのが相当である。 そして,本件ドメイン名は,「CITIBANK.JP」であり,「.JP」は日本の国別コードを示すトップレベルドメインであって,特段の識別力を有するものではないから,その識別力を有する要部は「CITIBANK」である。他方,本件各商標の要部が「CITIBANK」又は「citibank」にあることは明らかである。 そこで,本件ドメイン名と本件各商標を対比すると,要部である「CITIBANK」又は「citibank」において,共通又は小文字と大文字の相違があるにすぎないから,本件ドメイン名は,被告が権利又は正当な利益を有する商標と同一又は誤認混同を生ずるほどに類似していると認められる。 以上のとおり,本件ドメイン名は,被告が権利又は正当な利益を有する商標と同一又は混同を引き起こすほど類似していると認められ る商標と同一又は誤認混同を生ずるほどに類似していると認められる。 以上のとおり,本件ドメイン名は,被告が権利又は正当な利益を有する商標と同一又は混同を引き起こすほど類似していると認められる。 イ本件紛争処理方針4条a項(ⅱ)号の事由の有無について「CITIBANK」又は「citibank」は,米国シティバンクや被告を含むシティグループの商標あるいは営業表示として,日本においても著名であることは明らかである。 そして,証拠(甲1,7の2,乙3)によれば,原告の本件ドメイン名の登録者としての住所地は,商業登記簿上の本店所在地ではない上,原告の事務所は存在しないこと,本件ドメイン名の登録者電話番号はファックス専用となっていること,原告のホームページは,製作中である旨が表示され,コンテンツが存在しないことがそれぞれ認められる。 他方で,米国シティバンクの依頼により原告が本件ドメイン名を登録したことや,原告が本件ドメイン名の使用を準備していたことを認めるに足りる証拠はない。 以上に照らすと,原告が本件ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していないと認めるのが相当である。 ウ本件紛争処理方針4条a項(ⅲ)号の事由の有無について上記イのとおり,「CITIBANK」又は「citibank」は,米国シティバンクや被告を含むシティグループの商標あるいは営業表示として,日本においても著名であることは明らかである。 そして,証拠(乙3)によれば,原告が,米国シティバンクに対し,本件ドメイン名について,「権利の移転料を『一度だけ』金額を提示してい ただこうと思いました。それが弊社で納得がいかなければ,すぐに第三者に売却なり委託をして,あとはそちらでや ンクに対し,本件ドメイン名について,「権利の移転料を『一度だけ』金額を提示してい ただこうと思いました。それが弊社で納得がいかなければ,すぐに第三者に売却なり委託をして,あとはそちらでやりとりをしていただく,ということにいたしたく存じます。弊社は清算の段階ではなく休眠の段階ですが,債権だけでなく債務の処理を行っていることや,商法の規定において利益追求をしなさいとされている株式会社でもありますことから,高い金額の方が良いことになります。」,「穏便な形で権利を移転しても,またCitibank側でまともに引き継ぎがなされず,ドメイン名の消失や停止なりが起きては,移転した者として残念な思いをしてしまいますので,将来8年分の更新を行って,移転手続きをしてさしあげようと思いました。これは単なる老婆心にも似た気持ちです。」,「内容としてはこれまでお伝えしております通りでございますが,一点,金額につきまして御社から一度ご提示頂くお話をお伝えいたしましたものの,弊社も金額を聞かれて,はたと困り,Citibank様でも算定する基準に困ったのではと思いました。それで,今どきは日本でも日本以外でも,第三者による客観・科学的な査定サービスが盛んでもありますので,中立な第三者による査定を受けて,その査定金額をベースにしてお話を進めて,最終的な金額を決めて行くのはいかがでしょう。」などとメールにより通知していることが認められる。 以上に照らすと,原告は,米国シティバンクに対し,本件ドメイン名を高額で売却することを意図して交渉していたと認められる。 そうすると,原告の本件ドメイン名が不正の目的で登録又は使用されていると認めるのが相当であり,本件紛争処理方針4条b項(ⅰ)号によるまでもなく,同条a項(ⅲ)号の事由が認められる。 そうすると,原告の本件ドメイン名が不正の目的で登録又は使用されていると認めるのが相当であり,本件紛争処理方針4条b項(ⅰ)号によるまでもなく,同条a項(ⅲ)号の事由が認められる。 (3) 以上のとおり,本件紛争処理方針は有効であり,本件処理方針4条a項(ⅰ)~(ⅲ)号の事由が認められるから,原告は,同様に当該事由の存在を認めた本件裁定に従って,本件ドメイン名登録を移転する義務を負うというべきである。 これに対し,原告は,裁定には既判力はない旨主張するが,被告の主張は裁定に既判力があることを前提としていないので,主張自体失当である。また,原告は,本件紛争処理方針4条a項(ⅰ)号の「正当な利益」が基準としていい加減であるなどと主張するが,上記(1)のとおり,本件紛争処理方針は有効であるし,申立人が通常使用権を有する商標が「申立人が権利または正当な利益を有する商標」に含まれ得ると解釈しても不合理であるとはいえない。 3 結論よって,本件訴えは,確認の利益がなく不適法であるから,却下することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官小川雅敏 裁判官西村康夫

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