平成12(わ)1396 覚せい剤取締法違反

裁判年月日・裁判所
平成13年9月20日 神戸地方裁判所
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判決文本文5,529 文字)

判決平成13年9月20日神戸地方裁判所平成12年(わ)第1396号,第1521号覚せい剤取締法違反被告事件 主文 被告人を懲役9年及び罰金200万円に処する。 未決勾留日数中210日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 訴訟費用は全部被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 法定の除外事由がないのに,平成12年10月27日ころから同月31日までの間に,大阪市内又は兵庫県西宮市内若しくはそれらの周辺地域において,フェニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する覚せい剤結晶粉末若干量を水に溶かして自己の身体に注射し,もって覚せい剤を使用し,第2 A及びBと共謀の上,みだりに,営利の目的で,同月31日午後7時50分ころ,兵庫県西宮市a町b丁目c番d号C団地d棟e号室において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩酸塩結晶粉末約1001.125グラム(平成13年押第32号の1,2はその鑑定残量)を所持したものである。 (証拠の標目)―括弧内は検察官請求証拠甲乙の番号(省略)(事実認定の補足説明) 1 弁護人は,判示第2の事実について,被告人は判示第2の覚せい剤が自宅に存在していたことを認識していなかったのであるから無罪である旨主張し,被告人も同旨の弁解供述をするので,前示のとおり認定した理由について,以下補足して説明する。 2 関係各証拠によると,判示第2の日時ころ,被告人とAの住居である判示第2のC団地d棟e号室に,チャック付ポリ袋入り覚せい剤白色結晶2袋( 前示のとおり認定した理由について,以下補足して説明する。 2 関係各証拠によると,判示第2の日時ころ,被告人とAの住居である判示第2のC団地d棟e号室に,チャック付ポリ袋入り覚せい剤白色結晶2袋(合計約1001.125グラム,以下「本件覚せい剤」という。なお,2袋のうち,約996. 393グラム入りのものを「本件覚せい剤①」,約4.732グラム入りのものを「本件覚せい剤②」という。)が存在した事実は間違いなく,また,同室内や被告人及びAらが使用していた自動車2台の中から,大量の注射器,ポリ袋,複数の携帯電話及び電子秤,クリップシーラー,平成12年10月27日付けのマイジェクター17箱の納品書等が発見,押収されていることなどが客観的な事実として認められる。 証人Bの当公判廷における供述(以下「B証言」という。)は,被告人及びAと共謀の上,本件覚せい剤を営利の目的で所持していた事実を明確に認めているだけでなく,平成12年9月20日ころから,月20万円の給料をもらう約束で,被告人及びAのしていた覚せい剤密売を手伝うようになり,被告人やAの指示を受け,5グラム入りや10グラム入りの覚せい剤を密売客に届けることを繰り返していたこと,本件犯行当日,被告人らが自動車修理業者から借りていた代車のトランク内で保管していた本件覚せい剤①を取り出し忘れたまま業者に同車を返却してしまい,慌てて被告人に報告の上,本件覚せい剤①を取り戻したこと,被告人から密売客のFに渡すよう指示されて本件覚せい剤②を持っていったが,同人と会えなかったことから,一旦自宅に帰った後,被告人の指示を受けて本件覚せい剤,注射器,小分け用のビニール袋等を持って前記被告人の住居に行ったこと,そして本件覚せい剤②は被告人に手渡し,本件覚せい剤①は被告人の指示で入口の脇にある部屋に持ってい 人の指示を受けて本件覚せい剤,注射器,小分け用のビニール袋等を持って前記被告人の住居に行ったこと,そして本件覚せい剤②は被告人に手渡し,本件覚せい剤①は被告人の指示で入口の脇にある部屋に持っていって置いたこと,麻薬取締官が捜索のため前記被告人の住居を訪れた際には,被告人が「あれは。」と言うのに応じて,本件覚せい剤①を被告人に手渡したことなどを明確に供述するものであるところ,B証言は,詳細かつ具体的である上,上記の客観的事実に加え,前記代車に置き忘れた本件覚せい剤①を取り戻した経緯についても修理業者の供述と一致していることや,被告人の日頃使用している手帳に上記Fの電話番号等の記載があることなど,他の証拠によって裏付けられてもいるし,AがBは本件覚せい剤や覚せい剤密売に関与していない旨の供述をしているにもかかわらず,これに与することなく,自らも重い刑事責任を問われながら,自己の犯行関与の事実を素直に述べているのであるから,その信用性は非常に高いと認められる。 なお,弁護人は,B証言が,(1)Aから携帯電話の箱の中の本件覚せい剤①を見せられたと言っているが,AがBに本件覚せい剤①を見せる必要性や必然性はなく不自然である,(2)本件覚せい剤①を取り出し忘れたまま代車を業者に返してしまったのに,被告人が格別大騒ぎした様子がなく,「しっかりせえや。」と言っただけで,Bを叱りもしなかったというのは,被告人がそれが覚せい剤であることを知らなかったことを示唆している,(3)麻薬取締官が捜索に来た際,被告人に携帯電話の箱に入った本件覚せい剤①を手渡したというが,被告人がそれを覚せい剤と知っていれば,麻薬取締官による捜索押収を逃れるためトイレの水に流していたはずであるといい,B証言の信用性を争っている。しかし,Bは被告人及びAのしていた覚せい剤密売の が,被告人がそれを覚せい剤と知っていれば,麻薬取締官による捜索押収を逃れるためトイレの水に流していたはずであるといい,B証言の信用性を争っている。しかし,Bは被告人及びAのしていた覚せい剤密売の手伝いをしていたものであるから,AがBに新しく仕入れてきた本件覚せい剤①を見せたとしても不思議はないし,Bは本件覚せい剤①を取り出し忘れたまま代車を業者に返してしまったものの,間もなくそれに気付き,業者に連絡を取って回収しているのであるから,被告人が大騒ぎしたり,Bを厳しく叱らなければならないような事態には至っておらず,また,本件覚せい剤①が数百万円の密売価格のものであることからすれば,被告人がトイレの水に流さず,隣室のベランダに隠匿して,麻薬取締官による捜索押収を逃れようとしたことも十分納得のいくところであり,実際にも,隣室の住人が麻薬取締官らに本件覚せい剤①がベランダにあった旨申し出なければ,押収を逃れられていたのであるから,弁護人の指摘する諸点はいずれもB証言の信用性を疑うべき理由とはなし得ない。 そして,以上のB証言に加え,被告人自身も,捜査段階の当初は,本件覚せい剤を売ろうと思って所持していたことを認めていたことをも考え併せると,被告人が,A及びBと共謀の上,本件覚せい剤を営利の目的で所持していたことは間違いがないと認めることができる。 3 この点,被告人は,捜査段階の当初を除いて,本件覚せい剤が自宅に存在していたことを知らなかったとして,本件犯行を否認し,Aも,捜査公判段階を通じて,従前から被告人やBとともに覚せい剤の密売をしていたことを否認し,Bに月20万円を渡していたこと自体は認めながらも,それは単にタクシー代わりに運転手をしてもらう報酬の趣旨で渡していたとか,本件覚せい剤は自分一人で仕入れてきたものであって,被告人やBは, 否認し,Bに月20万円を渡していたこと自体は認めながらも,それは単にタクシー代わりに運転手をしてもらう報酬の趣旨で渡していたとか,本件覚せい剤は自分一人で仕入れてきたものであって,被告人やBは,一切関知しておらず,これらの覚せい剤を見てもいないと思うなどと供述するけれども,被告人は,前記のとおり,捜査段階の当初において,本件覚せい剤をこれから売ろうと思って持っていたことに間違いない旨供述し,その後の取調べにおいて,Aが一人で罪をかぶろうとしている行動を無駄にするのはAに申し訳ないので,自分の口から罪を認める供述をするわけにはいかないなどとして否認に転じている上,被告人の否認供述は,前記捜索差押に係る大量の注射器,ポリ袋及び電子秤等について何ら合理的な説明をなし得ておらず,その供述は不自然・不合理であるから,前記捜索差押の状況やB証言に照らしても到底措信し難いし,また,Aの供述は,全体的に内縁の夫である被告人を庇おうとする姿勢が顕著に認められ,それ自体不自然・不合理であるばかりか,前記捜索差押の状況やB証言に照らして,その信用性の乏しいことが明白であるから,このような被告人及びAの各供述によって,前記認定に合理的な疑いを容れるには至らない。 4 以上のとおりであるから,判示第2の事実は十分これを認めることができる。 (累犯前科)被告人は,平成7年1月23日神戸地方裁判所尼崎支部で覚せい剤取締法違反の罪により懲役6年及び罰金150万円に処せられ,平成11年11月29日その懲役刑の執行を受け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(乙8)によって認める。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条に,判示第2 書(乙8)によって認める。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条に,判示第2の所為は刑法60条,覚せい剤取締法41条の2第2項(1項)にそれぞれ該当するところ,判示第2の罪について情状により所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し,被告人には前記の前科があるので刑法56条1項,57条により判示第1の罪の刑及び判示第2の罪の懲役刑についてそれぞれ再犯の加重(ただし,後者について同法14条の制限に従う。)をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,懲役刑については,同法47条本文,10条により重い判示第2の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をし,その刑期及び所定金額の範囲内で,被告人を懲役9年及び罰金200万円に処し,同法21条を適用して,未決勾留日数中210日をその懲役刑に算入し,被告人においてその罰金を完納することができないときは,同法18条により金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。 なお,判示第2の罪に係る覚せい剤(平成13年押第32号の1,2)は,共犯者のBの関係でこれを没収する旨の判決が既に確定しているので,被告人からこれを没収することをしない。 (量刑の理由)本件は,被告人が,内妻らと共謀の上,約1キログラムの覚せい剤を営利目的で所持した(判示第2)ほか,覚せい剤を自己使用した(判示第1)という覚せい剤取締法違反の事案である。 被告人は,違法かつ有害な覚せい剤を密売し,社会に拡散させることにより不法に財産上の利益を得ようとしたものであって,厳しい非難に値するところ,所持していた覚せい剤の量は 取締法違反の事案である。 被告人は,違法かつ有害な覚せい剤を密売し,社会に拡散させることにより不法に財産上の利益を得ようとしたものであって,厳しい非難に値するところ,所持していた覚せい剤の量は極めて大量であって,このような大量の覚せい剤が社会に拡散することにより生じたであろう害悪は誠に甚大なものであったと考えられること,被告人は,常習的かつ職業的に覚せい剤を密売していたものである上,いわゆる末端使用者に対してではなく,その上位者である密売人に対して比較的多量の覚せい剤を売却するいわゆる卸売的立場にあったとみられ,その営利性,反社会性は顕著であること,被告人は内妻のAとともに,Bを運転手として雇って密売を手伝わせ,自ら主体的に覚せい剤の密売を行っていたものであり,判示第2の犯行の主犯格であること,これまで覚せい剤事犯による懲役前科7犯を有していて,前示累犯前科のとおり,平成7年1月に覚せい剤の営利目的所持及び自己使用の罪により懲役6年及び罰金150万円に処せられたにもかかわらず,その懲役刑の服役を終えた後1年も経たないうちに再び覚せい剤の密売を始め,判示第2の犯行に至ったものであること,覚せい剤使用についても常習性は顕著であり,その親和性,依存性には根深いものがあることなどに鑑みるならば,その犯情は非常に悪く,被告人の刑事責任は重いというべきである。 加えて,被告人が,判示第2の犯行に係る覚せい剤が自宅に存在していたことさえ知らなかったなどと不自然・不合理な弁解を繰返して自己の刑事責任を免れようとし,真摯な反省の態度が見受けられないことも,量刑上看過することはできない。 してみると,判示第2の営利目的所持に係る大量の覚せい剤は,幸いにも社会に拡散される前に押収されたこと,判示第1の覚せい剤の自己使用については犯行を認めているこ ,量刑上看過することはできない。 してみると,判示第2の営利目的所持に係る大量の覚せい剤は,幸いにも社会に拡散される前に押収されたこと,判示第1の覚せい剤の自己使用については犯行を認めていることなどの,被告人のために酌むべき事情を考慮しても,主文の刑はやむを得ないところである。 (検察官の科刑意見懲役10年及び罰金200万円)よって,主文のとおり判決する。 平成13年9月20日神戸地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官森岡安廣 裁判官溝國禎久 裁判官山田智子

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