平成30(ワ)1732 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年7月31日 札幌地方裁判所
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判決文本文15,828 文字)

- 1 -令和2年7月31日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成30年(ワ)第1732号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和2年4月10日判決主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,3668万5180円及びこれに対する平成▲年▲月 ▲日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,利用契約に基づき被告の運営する介護施設に入居していた亡A(以下「A」という。)に対して被告の従業員が食事介助を適切に行う注意義務な どに違反した過失によりAが死亡したと主張して,Aの子である原告が,被告に対し,不法行為(民法709条,715条1項)又は安全配慮義務違反の債務不履行に基づき,損害賠償金3668万5180円及びこれに対する不法行為の日(Aの死亡の日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案で ある。 2 前提事実(証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告は,A(大正△年△月△日生まれ。甲1の1)の次男であり,被告は,介護施設「グループホームB」(以下「本件施設」という。)その他の介護施 設を運営する株式会社である。 - 2 -(2) Aの入所及び状態ア Aは,平成21年9月19日,被告との間で本件施設の利用契約を締結し,本件施設に入所した。 上記利用契約においては,①被告が,Aが病気又は負傷等により検査や治療が必要となった場合,その他必要を認めた場合は,Aの主治医又は被 告の協力医療機関において必要な治療等が受けられるよう支援 上記利用契約においては,①被告が,Aが病気又は負傷等により検査や治療が必要となった場合,その他必要を認めた場合は,Aの主治医又は被 告の協力医療機関において必要な治療等が受けられるよう支援すること(7条1項),②被告が,Aに健康上の急変があった場合は,消防署又は適切な医療機関と連絡を取り,救急治療あるいは緊急入院が受けられるようにすること(同条2項)が定められていた(甲3〔4枚目〕)。 イ Aは,平成▲年▲月▲日当時,アルツハイマー型認知症で,脳萎縮によ る麻痺,関節の拘縮,全身の筋力低下により,容易に転倒し,骨折する状態にあり,また,起居動作,食事,着替え,入浴,排せつ,体位変換その他生活全般に全面的な介助及び見守りを要していて,要介護度4の認定を受けていた。 (3) 事故の発生 ア Aは,平成▲年▲月▲日午前11時40分頃からミキサー食の昼食を摂り始めた。被告の従業員であるC(以下「C」という。)は,Aに対する食事介助の開始後,Aの顔色が変わり,黒目が上転して視線の定まらない状態になって,ぐったりと脱力しているのに気付いた(乙3)。 イ施設管理者であるD(以下「D」という。)は,Cの依頼によりAの元 に駆け付け,Aの口内の食べ物を取り出し,顔を上向きにして気道を確保し,喉の入口付近の痰を取り除いたが,顔面,唇等の様子は変化しなかった。Dは,午後0時20分頃,電話で医師の指示を仰ぎ,Aの背中をたたいたが,状態に変化はなく,意識は喪失していた。 ウ Dは,医師の指示に従って救急車を依頼した。救急隊が午後0時35分 頃にAを見た際には,Aは心肺停止の状態であった。なお,本件施設にA- 3 -ED(自動体外式除細動器)は常備されておらず,Aに対してAEDが使用されることはなかった。 エ A 35分 頃にAを見た際には,Aは心肺停止の状態であった。なお,本件施設にA- 3 -ED(自動体外式除細動器)は常備されておらず,Aに対してAEDが使用されることはなかった。 エ Aは,午後1時頃,病院に救急搬送されたが,午後1時30分頃,死亡が確認された。医師の死亡診断書上,Aの直接死因は窒息である旨が記載されている(甲4)。 (4) 債権譲渡原告は,平成30年8月28日までに,Aの子であるE及びFから,Aが被告に対して有する損害賠償請求権のうち上記E及びFが相続した部分を譲り受けた(甲2の1~4)。 3 争点 (1) 被告又はその従業員による過失の有無ア Cが,食事介助の際に,目を離さず,少しずつ食べさせて様子を見る注意義務違反イ Cが誤嚥に即時対応する注意義務違反ウ Dが誤嚥に即時対応する注意義務違反 エ吸引器及びAEDを即時用いて措置を行う注意義務違反オ被告が体制を整備する注意義務違反(2) 過失とAの死亡との間の因果関係の有無(3) 損害の発生及び額 4 争点についての当事者の主張 (1) 争点(1)(被告又はその従業員による過失の有無)について(原告の主張)ア Cが,食事介助の際,目を離さず,少しずつ食べさせて様子を見る注意義務違反(ア) Aは,食事を始めとした生活全般に介助を要していて,意思疎通が困 難で,過去に喀痰の誤嚥を原因とした誤嚥性肺炎で入院した経験があっ- 4 -て,誤嚥のおそれが大きいと医師から指摘されていたし,食事中のむせこみ,痰絡みが多発し,痰の除去等が必要であった。こうした状態では,一度窒息に至れば平均的一般人に比較して死に至る時間が短く,死に至る危険性が高い。 (イ) したがって,被告ないし食事を介助す せこみ,痰絡みが多発し,痰の除去等が必要であった。こうした状態では,一度窒息に至れば平均的一般人に比較して死に至る時間が短く,死に至る危険性が高い。 (イ) したがって,被告ないし食事を介助する従業員は,Aが食事中に誤嚥 を起こし,窒息死するおそれがあると予見し得たのであり,こうしたおそれがあることを前提とすれば,食事中は目を離すことなく,Aの一口ずつの嚥下を終始見届けて,食事を少しずつ食べさせることが必要であるとともに,痰絡みがあればこれを除去するなどし,Aに誤嚥,窒息等の異常が生じていないか注視する義務があった。 (ウ) しかるに,食事介助をしていたCは,これらの行為をせず,漫然と食事をとらせ,また,Aの異常にも気づかずに窒息状態に至らせたから,上記の義務を怠った過失がある。 イ Cが誤嚥に即時対応する注意義務違反上記ア(ア)のように,Aは誤嚥のおそれが大きいから,Aの食事介助に 関わるCには,自ら誤嚥の対処方法を習得し,即座に実践して対処する義務があったし,被告の緊急時マニュアルには,窒息時に口の中の食べ物を掻き出し,何度も吐かせ,それでも呼吸をしないときは救急車を要請するなどの定めがあったから,これに従った行動をとる義務があった。 しかるに,Cは,誤嚥に対応する行動に何ら出ておらず,Dを呼ぶよう に要請したにすぎないから,こうした義務を怠った過失がある。 ウ Dが誤嚥に即時対応する注意義務違反Aは,上記ア(ア)のように誤嚥のおそれが大きかったことに加え,昼食中に顔面蒼白等の症状が見られたのであるから,Dは,即座に食事中の誤嚥及び窒息を疑い,誤嚥に対する基本的な対処である背部叩打法等を施す とともに,速やかに救急車を呼ぶように指示し,看護師に対処を求める義- 5 -務があっ あるから,Dは,即座に食事中の誤嚥及び窒息を疑い,誤嚥に対する基本的な対処である背部叩打法等を施す とともに,速やかに救急車を呼ぶように指示し,看護師に対処を求める義- 5 -務があった。 しかるに,Dは,医師の指示があるまで背部の殴打すらせず,救急車の要請も医師からの2度目の指示に従っている上に,応急処置を自分しか行えないにもかかわらず,要請の電話を自らかけて救助の手を止めている。 看護師を呼びに行ったのは,上記の電話の後であった。したがって,Dに は,上記義務を怠った過失がある。 エ吸引器及びAEDを即時用いて措置を行う注意義務違反Aは,平成27年1月16日付け訪問看護計画書において,自力で喀痰核出が困難で口腔内の汚染や呼吸に苦痛を伴っていることなどが問題点とされ,呼吸音や喀痰の状態確認,必要時の喀痰吸引実施等がその解決策と されていたから,Dないし被告は,少なくとも吸引器を常備し,これを用いて直ちに対処する,誤嚥から生じる窒息ひいては心肺停止に対処するためにAEDを常備して使用する体制を整える義務があった。 しかるに,Dないし被告は,救急隊が到着して初めて吸引器により痰の付着したものを取り出し,看護師の到着後に初めて心臓マッサージを開始 したのであり,上記義務を怠った過失がある。 オ被告が体制を整備する注意義務違反被告は,Aの状態,他の入居者の状態,人数等を考慮して,Aに対して安全に食事介助を行い得る人数,介護者に通常期待される能力や経験等を備えた職員を配置すべきであった。しかるに,被告は,これを怠り,不十 分な人数と能力,経験等を欠く職員しか配置せず,他の入居者の食事対応と並行しながら,漫然とAの食事介助をし,Aの異状を発見するのが遅れた上,発見後も職員がAに対して適時に ,これを怠り,不十 分な人数と能力,経験等を欠く職員しか配置せず,他の入居者の食事対応と並行しながら,漫然とAの食事介助をし,Aの異状を発見するのが遅れた上,発見後も職員がAに対して適時に適切な処置を講ずることができず,Aを窒息死に至らせた過失がある。 (被告の主張) ア Cが,食事介助の際,目を離さず,少しずつ食べさせて様子を見る注意- 6 -義務違反被告の介護職員は,入所者の上体をギャッジアップして誤嚥を防止する姿勢とした上で,30分ないし1時間程度の時間をかけてゆっくりと少量ずつ食事を提供し,痰絡みがあるときには痰を除去した上で給仕を再開し,むせこみが強く食事が困難な場合は誤嚥を防止するために給仕を中止する などの配慮をしている。Cも,Aについて同様の配慮をしていた。DによるAの口腔内の食物除去及び背部叩打法の実施,救急隊による吸引,咽頭展開等の実施によっても気道閉塞をうかがわせる食物,担当の固形物が一切確認されていないことからも,Cの給仕方法に窒息を生じさせるような特段の問題がなかったといえる。 また,Cは,Aに異変が生じたことに即時に気付き,即時にDに対応を求めた。 このように,Cは原告の主張する注意義務を果たしていた。 イ Cが誤嚥に即時対応する注意義務違反入所者の病態が急変した時の対応は,介助者自身が常に行わなければな らないものでなく,適切な知識経験を有する者が迅速に対応する体制が整えられ,実践されていれば足りる。 CがAの異状に気付いてDを呼び,駆け付けたDが対応を開始するまでは僅か1分程度で,そこから直ちにAの口腔内の食物が除去されているから,初動対応に不備はない。 ウ Dが誤嚥に即時対応する注意義務違反Dは,Aの元に到着した後,直ちにA を開始するまでは僅か1分程度で,そこから直ちにAの口腔内の食物が除去されているから,初動対応に不備はない。 ウ Dが誤嚥に即時対応する注意義務違反Dは,Aの元に到着した後,直ちにAの口から少量のミキサー食を取り除き,更に痰を口腔スポンジで除去するなど誤嚥に対する適切な対応をした。 加えて,Aの異常は,食物や痰による窒息とは考え難く,窒息であるこ との具体的予見可能性がない。 - 7 -エ吸引器及びAEDを即時用いて措置を行う注意義務違反(ア) 吸引器による吸引行為は医行為で,介護ヘルパーや介護福祉士は原則としてこれを行い得ず,都道府県知事への登録が必要となるが,そうした施設は北海道内にない。また,医療機関でない本件施設に,医療機器である吸引器を常備し,吸引を常時行える体制を整える義務はない。 (イ) AEDは,主として虚血性心疾患等によって行う致死性不整脈の一つである心室細動による心停止に対応する機器で,窒息によって生じる心肺停止を対象としたものでない。心疾患の既往がなく,心機能の異常所見もないAに対してAEDを常備する義務はない。また,法令上も,札幌市内で介護施設(グループホーム)にAEDの設置を義務付ける規定 はない。したがって,本件施設にAEDの設置義務はない。 オ被告が体制を整備する注意義務違反これまで主張したところに照らし,被告に体制を整備する注意義務違反はない。 (2) 争点(2)(過失とAの死亡との間の因果関係の有無)について (原告の主張)Aは,過去に飲料や少量の食事であってもむせなどを起こしていて,食事の際に誤嚥,窒息の可能性は十分にあったし,とろみのある食材は窒息の危険性が高いものである。加えて,死亡診断書で窒息との診断がされていること,過去 や少量の食事であってもむせなどを起こしていて,食事の際に誤嚥,窒息の可能性は十分にあったし,とろみのある食材は窒息の危険性が高いものである。加えて,死亡診断書で窒息との診断がされていること,過去の誤嚥で入院した際の症状と類似していること,DないしCにおい ても,当初,食事中に喉が詰まってものを取り出すも意識がない状態であるとの認識で,喉の詰まりが窒息の原因であると認めていること,他に突然死の具体的兆候がないこと,以上の諸点からすれば,Aの死因が窒息であることは明らかである。 (被告の主張) Aは,午前11時40分頃に昼食を開始してから約35分間は特段の異常- 8 -なく摂食していたが,その後に様子が急変し,顔面蒼白となり,視線が定まらず途中黒目が上転するなどして脱力した状態となった。こうした状態からすれば,Aは,この時点で意識が既に消失していたか,消失しかかっていた可能性が高い。仮にAが誤嚥によるむせやせき,気道閉塞による呼吸困難や苦しむしぐさ,チョーキングサインなどを呈していれば,面前のCが即座に 気付かないはずはないから,Aの意識消失は,Cが少量の食物を給仕後,嚥下が終了して次の給仕までのごく短い時間に突如発生したものと考えられる。 こうした経過は,気道の完全閉塞による呼吸停止,これによる窒息死とみるには不自然である。せきや呼吸困難によって苦しむなどする,喘鳴,異常な呼吸音,チョーキングサイン,チアノーゼその他の外部から明らかに覚知 できる何らかの異常症状を呈するのに,これらが全くないからであるし,Dによる食物と痰の除去後にAが大きく呼吸をしたことからして,食物等によるAの気道閉塞はないからである。 このように,Aの死因は,気道閉塞による窒息であるとはいえないのであり,原告の主張する過失と による食物と痰の除去後にAが大きく呼吸をしたことからして,食物等によるAの気道閉塞はないからである。 このように,Aの死因は,気道閉塞による窒息であるとはいえないのであり,原告の主張する過失とAの死亡に因果関係はない。 仮にAが窒息死であったと仮定しても,原告が主張する背部叩打法,救急要請などの対応をしたとしても,Aに救命可能性があったとは到底考えられないから,同様に,原告の主張する過失とAの死亡に因果関係はない。 (3) 争点(3)(損害の発生及び額)について(原告の主張) ア治療費等1万1995円イ葬儀費用150万4288円ウ逸失利益386万8897円Aの年金収入は年間202万9596円,平均余命は3.22年で,生活費控除率を30%とし,中間利息を控除すると,次の計算式のとおり, 上記冒頭額となる。 - 9 -〔計算式〕2,029,596×(1-0.3)×2.7232=3,868,897エ死亡慰謝料2500万0000円Aは,信頼していた介護施設の過失により息子らと過ごす残りの余生を突如として終了させられるに至り,その無念は筆舌に尽くし難い。その精神的苦痛に対応する慰謝料は上記冒頭額を下回らない。 オ原告を含む子らの固有の慰謝料300万0000円原告を含むAの息子3名は,信頼していた介護施設の過失により,母親であるAと突然別れることになったのであり,無念は想像に難くない。その精神的苦痛に対応する慰謝料は上記冒頭額を下回らない。 カ弁護士費用330万0000円 原告は本件訴訟を弁護士に委任して追行することを余儀なくされた。上記アないしオの額の1割に相当する上記冒頭額は,Aの死亡により通常生ずべき損害である。 (被告の主 330万0000円 原告は本件訴訟を弁護士に委任して追行することを余儀なくされた。上記アないしオの額の1割に相当する上記冒頭額は,Aの死亡により通常生ずべき損害である。 (被告の主張)不知ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 従前のAの病状等ア Aは,平成26年3月に受けたCT検査及びPET検査の結果,膵臓の 膵尾部に小さな腫瘍が発見され,同月24日,膵癌であることがほぼ間違いないとの診断を受けた。原告は,同年4月8日,上記の診断のほか,手術による腫瘍の除去は可能であるが,年齢や認知症の発症を考えると,入院及び手術により,身体機能が大きく低下し,認知症が進行して寝たきりになることが考えられ,余命が1年程度であり,半年後の再検査で転移が 見つかるかもしれないとの説明を医師から受け,兄弟と相談の上,Aに手- 10 -術を受けさせない旨の決断をした(甲9,乙33,原告本人〔12頁〕)。 イ Aは,平成27年4月1日の食事中に多量に発汗して目の焦点が合わなくなり,意識状態の低下,呼吸状態の悪化が見られ,救急搬送されて入院し,点滴,食事介助により症状が落ち着いて同月10日に退院した。同月8日に主治医が診断したAの状態は,栄養状態は良好で,食事行為につい ては,自立ないし何とか自分で食べられるものの,その後の接触・嚥下機能の低下が見込まれるというものであった(甲9,11)。 ウ原告は,平成27年5月17日には,Aが老衰による突然の呼吸・心停止が起こって死亡することも考えられる,誤嚥性肺炎で症状が悪化することも考えられるなどの説明を医師から受け,Aがぎりぎりの状態になるま で本件施設で見てほしい,いよ 老衰による突然の呼吸・心停止が起こって死亡することも考えられる,誤嚥性肺炎で症状が悪化することも考えられるなどの説明を医師から受け,Aがぎりぎりの状態になるま で本件施設で見てほしい,いよいよ悪くなった時に病院を探してもらいたいが,夜間に亡くなった時は仕方がないとの意向を表明し,心・呼吸停止時はそのまま本件施設で看取ることを了承した(乙34,原告本人〔12,13頁〕)。 (2) Aの居室その他の位置関係 Aは,平成▲年▲月▲日当時,本件施設1階にはAを含めて9名の入居者がいて,本件施設1階の居間・食堂及びテラスに隣接する部屋(居室9)を居室としており,普段から当該居室で食事を摂っていた。その当時,Cのほか2名の従業員は,入居者の介護等に当たり,Dは,施設長室に在室していた(乙7,19,20~23,40〔3頁〕,証人C〔22,23頁〕,証人 G〔1,4頁〕,証人D〔1頁〕)。 (3) 昼食の開始ア Aを含む8名の入居者は,平成▲年▲月▲日午前11時半頃から順次,ハヤシライス,チンゲン菜とえのきスープ,桜ポテトサラダ及びキウイを昼食としてとり始めた。上記8名のうち,Aを含む2名はミキサー食,他 の1名は刻み食でそれぞれとろみをつけたものを昼食とし,いずれも食事- 11 -介助を必要としていたが,他の者は食事介助を必要としていなかった(乙1〔1頁〕,3,5,6,22,24,37,38,40〔2頁〕,証人C〔11頁〕,証人G〔3,5,6頁〕,証人D〔12,13頁〕)。 イ食事介助を要するA以外の2名は,むせこみなく速いペースで全量を摂取し,食事を終えていた(乙37,38,41〔3頁〕,証人G〔8頁〕)。 (4) Aの異変及びその後の対応ア Cは,Aに対し,平成▲年▲月▲日午前11時40分頃 こみなく速いペースで全量を摂取し,食事を終えていた(乙37,38,41〔3頁〕,証人G〔8頁〕)。 (4) Aの異変及びその後の対応ア Cは,Aに対し,平成▲年▲月▲日午前11時40分頃からミキサー食の昼食介助を始めた後,Aの顔色が変わり,黒目が上転して視線の定まらない状態になって,ぐったりと脱力しているのに気付き,他の職員をしてDを呼ばせた(乙3,39〔4頁〕,証人C〔1,5,17頁〕,証人G 〔3頁〕)。 イ Dは,施設長室から30mに満たない距離を移動してAの居室に駆け付け,Aの口内の食べ物を取り出し,顔を上向きにして気道を確保し,喉の入口付近の痰を取り除いたが,Aは,大きく呼吸をした一方で,顔面,唇等は変化しなかった。Dは,午後0時20分頃,気道を確保しながら背部 を殴打し,それでも容態に変化がなければ再度連絡するよう医師から指示を受け,Aの背中をたたいたが,状態に変化はなく,意識を喪失していたことから,再度医師の指示を仰いだところ,救急車の要請を指示された。 この指示に従ってDが救急車を要請した後,デイサービスを担当する看護師が,Dからの依頼を受けて駆け付け,Aを床に下ろして心臓マッサージ を行った(乙3,7,証人C〔6,24頁〕,証人D〔6頁〕)。 (5) 救急搬送時のAの状態等ア救急隊が午後0時35分頃に到着した際,Aは,口腔内に液体が貯留し,呼吸がなく,顔貌蒼白であった。救急隊は,Aにつき,吸引を実施して液体の吸引を確認し,心電図モニターで検査して心静止を確認し,その旨を Dに伝えた(乙3,4)。 - 12 -イ Dは,救急搬送を求めている旨の原告の意向を消防隊に伝えた際,消防隊からは,チアノーゼが出ていないので喉の詰まりではなく,食事中にAの身体に何らかの異変が生じたの 乙3,4)。 - 12 -イ Dは,救急搬送を求めている旨の原告の意向を消防隊に伝えた際,消防隊からは,チアノーゼが出ていないので喉の詰まりではなく,食事中にAの身体に何らかの異変が生じたのではないかとの見解を示された(乙3,証人D〔7,9頁〕)。 2 争点(2)(過失とAの死亡との間の因果関係の有無)について 事案に鑑み,争点(2)から判断する。 (1) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の医学的知見を認めることができる。 ア急性窒息の一般的な経過及び症状は,①明らかな症状が発現しない前駆期が通常は20ないし30秒,長くて1分程度続く,②口唇や爪床のチア ノーゼが目立ち,脳が酸素欠乏に陥る頃には呼気性呼吸困難に移行して,意識消失,瞳孔散大が起こる呼吸困難が全体で1ないし2分,これに,呼吸筋の収縮が増強し骨格筋が痙攣するようになる痙攣期が30秒ないし2分程度続く,③呼吸筋が弛緩して呼吸運動が停止し,動きがない仮死状態となる無呼吸期が1ないし2分続く,④口を開き鼻翼を広げ,下あごを突 き出してあえぐような動きが数回ないし10回発現し,1分程度で完全に動きが止まる行動で,一見呼吸運動に見える終末呼吸が行われる終末呼吸期が続くというものである(甲16)。また,親指と人差し指で喉をつかむ仕草が見られれば,窒息を疑うべきである(甲5)。 イ窒息の原因には,高齢者においては,餅,刺身,肉片,ゼリー等の食物 その他の物による気道閉塞,胃内容物の誤嚥による窒息が考えられ,その対応法としては,口内の物を指で掻き出すこと,腹部突き上げ法,背部叩打法,吸引等が考えられる(甲17,乙11〔335頁〕,12〔301,302頁〕)。異物による気道閉塞部位によっては症状の程度が異なり,完全閉塞の場合は声が出ない,チョ こと,腹部突き上げ法,背部叩打法,吸引等が考えられる(甲17,乙11〔335頁〕,12〔301,302頁〕)。異物による気道閉塞部位によっては症状の程度が異なり,完全閉塞の場合は声が出ない,チョークサイン,呼吸困難などが見られ,不 完全閉塞の場合は咳嗽発作などが見られる(乙11〔334頁〕,12- 13 -〔301頁〕)。 (2)ア以上の医学的知見を踏まえ,Aの状態について検討する。 前記認定事実によれば,Aは,本件施設内で食事介助を受けてとろみのついたミキサー食を摂取していた(認定事実(3)ア,(4)ア)ところ,顔色が蒼白化し,黒目が上転して視線が定まらない状態になって脱力した(同 (4)ア,(5)ア)もので,食事中に意識が消失したといえる。食事中に意識が消失する原因の一つには食物による窒息があるといえるから,Aが食物により喉が詰まって呼吸困難となり,窒息するという機序をたどったのではないかと疑うことはできる。 その一方で,Aは,大きく息をするなどし,チアノーゼが発現せず,D により口内の食べ物と喉の入口付近の痰を取り出されたものの意識喪失の状態が変化せず,救急隊到着時には心肺停止となり,吸引しても固形物が取り出されなかった(認定事実(4),(5))ものである。このことから,Aについては,窒息の際に発現すべき症状を看取し得ず,窒息の原因となる固形物等が見当たらず,また,窒息の原因と除去する処置がされたにもか かわらず身体状態が変化していないといえる。このように,窒息の場合に起こるべき幾つもの機序が見られていないことからすれば,Aの経過は,窒息による機序とは整合的でなく,意識喪失から死亡に至る原因を窒息とみるには疑問があるといわざるを得ない。 イ加えて,前記認定事実によれば,Aは本件事故日の約 ていないことからすれば,Aの経過は,窒息による機序とは整合的でなく,意識喪失から死亡に至る原因を窒息とみるには疑問があるといわざるを得ない。 イ加えて,前記認定事実によれば,Aは本件事故日の約1年10か月前に 膵癌が発見され,その際には余命が1年程度である(認定事実(1)ア)と,特段の根治療法が試みられず経過した後にも老衰による突然の心停止や呼吸停止が生じ得る(同(1)ウ)とそれぞれ医師により診断されていた。膵癌は一般的に死因となり得るもので,しかもその状態が深刻となっていたといえるから,本件事故日当時,Aには,こうした原因により突然死に至 るおそれが相当程度高度に至っていた。 - 14 -ウこのように,Aについて窒息が起こったとみるにはその後の身体状態が整合せず,また,他の原因により呼吸停止,心停止に至るおそれが高かったから,Aの死因が食事中の窒息にあると認めることは困難である。 エこれに対して,原告は,次のとおり主張するが,それぞれにおいて判断するとおり,いずれも採用することができない。 (ア) 原告は,貧血時にはチアノーゼが出現しにくいところ,Aは,貧血気味の状態にあったから,チアノーゼが出現しないことは不自然でないと主張する。しかし,後掲の証拠によれば,貧血時にチアノーゼが出現しないとの医学的知見がある一方,その例として,総ヘモグロビン値が5g/dlの高度貧血患者ではチアノーゼが出現しないことを指摘するに とどまっている(甲19)ところ,Aは,死亡の約2週間前には総ヘモグロビン値が11.0で,基準値の最小値(11.2)を僅かに下回る程度にすぎない(甲23の2,24)から,Aの窒息の際にチアノーゼが出現しないのが通常であるとは判断し得ない。 また,原告は,Aの死亡診断書上,直接死因を窒 準値の最小値(11.2)を僅かに下回る程度にすぎない(甲23の2,24)から,Aの窒息の際にチアノーゼが出現しないのが通常であるとは判断し得ない。 また,原告は,Aの死亡診断書上,直接死因を窒息とされていること を指摘するが,本件の証拠上,上記死亡診断書がAの経過をどの程度把握して作成されたものかが明らかでないから,その存在は,前記判断を左右しない。 (イ) 原告は,Aが死の直前まで容態に大きな変化がなかったことから,窒息以外の原因は考え難い旨主張する。証拠(甲25)によれば,Aの死 亡日(▲月▲日)の約2週間前及び前日における医師の診察によっても,Aの症状の増悪がなく,病状が安定している旨診断されていることが認められるが,前記認定事実(1)ウのとおり,従前から突然の呼吸停止,心停止が考えられると医師により診断されていたのであるから,死亡直前の容態に特段の変化がないことから直ちに他の原因を排除し得るとみ ることはできない。 - 15 -(ウ) 原告は,そのほかにも,とろみをつけた食事に窒息の危険性があることなどを主張するが,結局固形物が見当たっていないことなどの事実経過に照らして,Aに窒息があったとは推認し得ない。 (3) 以上によれば,Aの死因が窒息にあったとはいえないから,仮に①食事介助の際に,目を離さず,少しずつ食べさせて様子を見る注意義務違反,②誤 嚥に即時対応する注意義務違反,③吸引器を即時用いて措置を行う注意義務違反の各過失があったとしても,こうした過失行為とAの死亡に因果関係を認めることはできない。 また,④AEDを即時用いて措置を行う注意義務違反の過失との関係でも,証拠(乙17)によれば,AEDの用途は,心室細動を起こした心臓の拍動 の正常化であるところ,上記(2)の認定を ない。 また,④AEDを即時用いて措置を行う注意義務違反の過失との関係でも,証拠(乙17)によれば,AEDの用途は,心室細動を起こした心臓の拍動 の正常化であるところ,上記(2)の認定を踏まえると,心室細動がAに生じていたとはうかがわれない。したがって,過失行為とAの死亡の間に因果関係を認めることはできない。 さらに,⑤被告が体制を整備する注意義務違反の過失との関係についてみると,そもそも,経験豊かな職員を配置する義務の内容自体が具体性を欠い ていて,仮にこうした職員を配置したからといってAの死亡を避け得たと判断することはできない。また,Aの誤嚥に適切に対応し得る職員を配置する義務と理解するとすれば,Aの死因が誤嚥による窒息とは認め難い以上,こうした過失とAの死亡との間に因果関係を認めることはできない。 3 争点(1)(被告又はその従業員による過失の有無)について 以上によれば,被告の従業員による過失の有無については判断の必要がないことになるが,念のため,この点についても判断する。 (1) Cが,食事介助の際に,目を離さず,少しずつ食べさせて様子を見る注意義務違反ア原告は,Cが,①食事介助の際に,目を離さず,少しずつ食べさせて様 子を見る注意義務,②Aの痰絡みがあればこれを除去し,窒息等に適切に- 16 -対処する注意義務に違反したと主張する。 イ上記①の注意義務について,被告は,Aの食事介助を担当したCにこうした注意義務があったことは争っていない。 前記認定事実(3)ア,(4)及び(5)によれば,固形物のないミキサー食を摂取していたAが,食事中に突然黒目が上転して顔色が白くなり,Dや消 防隊が口腔内や喉の異物を取り出す処置をしたものの,少量の痰を除いて固形物が取り出されなかっ よれば,固形物のないミキサー食を摂取していたAが,食事中に突然黒目が上転して顔色が白くなり,Dや消 防隊が口腔内や喉の異物を取り出す処置をしたものの,少量の痰を除いて固形物が取り出されなかったものである。そうすると,Aに喉の詰まりはなかったとみられ,喉が詰まるような食事のとらせ方をしたということはできないから,Cは,Aに対し,適切な速度及び量の食事をとらせる介助をしていたとみることができる。 また,上記②の注意義務について,本件の証拠上,Aの食事中に痰が絡んでいると外部から認識し得たことをうかがわせる事情は見当たらず,Aの異状にCが気づくのが遅れたことをうかがわせる事情も見当たらないから,そうした注意義務がCに生じていたとも,これに反していたともいえない。 ウこの点に関し,原告は,①本件施設1階の入居者9名のうちAを含めた3名に食事介助が必要であり,他にも介護度が4,自立度がⅢ又はⅣの者がいたこと,②本件施設では日常的に介護職員の募集がされていて,十分な職員数があったか疑問であること,③Aが一瞬の間で窒息が進行したような状態となる状況は極めて不自然であることからすれば,CがAに長時 間常侍していたことはないと主張するが,以下のとおりであるから,採用することができない。 上記①について,前記認定事実によれば,介護度4であるからといって食事介助を必ず要するものとはいえず(認定事実(1)イ),また,介護度,自立度にかかわらず,3名のほかは食事介助を不要としていた(同(3)ア) のであり,介助を必要とした他の2名は介助により食事が迅速に済ませら- 17 -れた(同(3)イ)のであるから,CがAに常侍し得ないということはできない。 上記②について,証拠(甲22〔3,4頁〕)によれば少なくとも 他の2名は介助により食事が迅速に済ませら- 17 -れた(同(3)イ)のであるから,CがAに常侍し得ないということはできない。 上記②について,証拠(甲22〔3,4頁〕)によれば少なくとも令和元年5月初頭時に被告が本件施設の介護職員の募集をしていたと認められるが,仮にこれが継続的に行われていたものであったとしても,募集の動 機は職員の常時不足には限られないから,Aの死亡日に本件施設1階の職員が不足していたと直ちに評価し得ない。 上記③については,前記のとおり,Aが突然の呼吸停止等を起こし得る状態にあったことに照らすと,必ずしも不自然なものとはいえない。 エしたがって,Cが,原告の主張する注意義務に違反したとはいえない。 (2) Cが誤嚥に即時対応する注意義務違反ア原告は,Cが,Aの誤嚥に対し,背部叩打法の実行等により即時対応する注意義務に違反したと主張する。 イそこで検討すると,食事介助中にAに生じた変化は,前記2(2)アのとおり,黒目の上転,顔面蒼白化であり,大きく息をしていたというのであ り,窒息の場合に起こる典型的な状態とは必ずしも整合的でないから,直ちに窒息を疑うべき状態にあるとみるには疑問がある。そうすると,Cにおいて,直ちに背部叩打法の実行など,窒息に対応する行動をする注意義務が生じていたということは困難である。 ウしたがって,Cが,原告の主張する注意義務に違反したとはいえない。 (3) Dが誤嚥に即時対応する注意義務違反ア原告は,Dが即座にAについて誤嚥及び窒息を疑い,背部叩打法を実行して救急車を要請する注意義務に違反したと主張する。 イしかし,前記(2)イのとおりのAの状態は,窒息を積極的に疑うべきものといえず,背部叩打法を実行する注意義務が生じているとみるに 叩打法を実行して救急車を要請する注意義務に違反したと主張する。 イしかし,前記(2)イのとおりのAの状態は,窒息を積極的に疑うべきものといえず,背部叩打法を実行する注意義務が生じているとみるには疑問 がある。この点を措くとしても,前記前提事実(2)アによれば,利用契約- 18 -上,Aの急変時に被告の従業員は救急対応と医師との連携とを選択的に求め得るのであり,医師の指示を受けて対応することが直ちに救急対応における注意義務に反しているとは評価し得ない。そして,前記認定事実(4)によれば,Dは,Aの気道の確保,口腔内の物及び痰の除去をした後,医師の指示を受け,直ちに背部を叩打し,また,救急車を要請しているので あるから,必要な処置を行っていたものと評価することができる。 なお,原告の主張には,Dが施設長室から直ちに駆けつけたことを疑問視する部分があるが,前記認定事実(4)イによれば施設長室からAの居室までは30m足らずであり,移動に時間を要するとはいえない。 ウしたがって,Dが,原告の主張する注意義務に違反したとはいえない。 (4) 吸引器及びAEDを即時用いて措置を行う注意義務違反ア原告は,Dないし被告が,少なくとも吸引器を常備し,これを用いて直ちに対処する,誤嚥から生じる窒息ひいては心肺停止に対処するためにAEDを常備して使用する体制を整える注意義務に違反したと主張する。 イまず,吸引器の常備をいう点についてみると,他人の口腔内,鼻腔内及 び気管カニューレ内部の喀痰吸引は医行為であり,介護福祉士は,所属する事業所を管轄する都道府県知事の登録を受けた場合は,医師の指示の下でこれを行い得るにすぎない(社会福祉士及び介護福祉士法2条2項,48条の3,社会福祉士及び介護福祉士法施行規則1条1~3号 所属する事業所を管轄する都道府県知事の登録を受けた場合は,医師の指示の下でこれを行い得るにすぎない(社会福祉士及び介護福祉士法2条2項,48条の3,社会福祉士及び介護福祉士法施行規則1条1~3号。なお,乙15の2参照)ところ,証拠(乙16の2)によれば,本件施設において そうした登録はされていないと認められる。そうすると,本件施設において吸引器を常備する前提が欠けるものといわざるを得ない。 次に,AEDの常備をいう点についてみると,証拠(乙18の2)によれば,50人以上が利用する高齢者施設では設置が望ましいとされる一般財団法人日本救急医療財団が定めたガイドラインがあるにすぎず,他に設 置を義務付ける特段の法令等はなく,常備が被告に義務付けられていると- 19 -はいえない。 ウしたがって,Dないし被告が,原告の主張する注意義務に違反したとはいえない。 (5) 被告が体制を整備する注意義務違反原告は,被告が適切な職員を配置するなど体制を整備する注意義務違反を 主張するが,その主張は,単に適時適切に対応すべきことをいうにすぎず,具体的な注意義務を特定し得ていない。この点を措くとしても,前記(1)ないし(4)に判断したところによれば,被告やD,Cは,Aに対する注意義務がないか,これを果たしていたといえるから,適時適切に対応し得ていないという評価は当たらない。 4 結論よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第5部 裁判長裁判官瀬 孝 裁判官萩原孝基 裁判官佐藤克郎 裁判長 裁判官瀬孝 裁判官萩原孝基 裁判官佐藤克郎

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