裁判所
昭和49年7月19日 最高裁判所第二小法廷 判決 その他 東京高等裁判所 昭和41(行コ)14
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主文 原判決中、上告人が被上告人に対してした昭和三七年五月一日から昭和三八年四月三〇日までの事業年度分法人税額の更正処分及び加算税の賦課決定処分のうち昭和四〇年九月一七日付裁決によつて取り消された部分についての異議申立棄却決定の取消しを求める請求に関する部分を破棄する。前項記載の破棄部分につき被上告人の控訴を棄却する。その余の部分に関する上告人の上告を棄却する。第一項記載の部分に関する控訴費用、上告費用は被上告人の負担とし、第三項記載の部分に関する上告費用は上告人の負担とする。理由 上告指定代理人上田明信、同横山茂晴、同山田保明の上告理由第一点について。所論は、要するに、原判決が、本件各異議申立棄却決定(以下、本件各決定という。)が判決によつて取り消されたとしても、昭和四五年法律第八号による改正前の国税通則法(以下、単に「旧法」という。なお、同改正後の国税通則法を、以下、単に「新法」という。)八〇条一項一号の適用の余地はないとしたのは、法律の解釈を誤つたものである、というのである。案ずるに、旧法七六条一項、七九条三項、八七条一項(新法七五条一、三項、七七条一、二項、一一五条一項)は、国税に関する法律に基づく税務署長の処分(以下、原処分という。)に対する不服申立方法として異議申立て及び審査請求の手続を設け、原則としてこの二段階の不服手続を経たのちでなければ原処分の取消訴訟を提起することができない旨を定めているが、その趣旨は、国税の賦課に関する処分が大量かつ回帰的なものであり、当初の処分が必ずしも十分な資料と調査に基づいてされえない場合があることにかんがみ、まず、事案を熟知し、事実関係の究明に便利な地位にある原処分庁に対する不服手続によつてこれに再審理の機会 ものであり、当初の処分が必ずしも十分な資料と調査に基づいてされえない場合があることにかんがみ、まず、事案を熟知し、事実関係の究明に便利な地位にある原処分庁に対する不服手続によつてこれに再審理の機会を与え、- 1 -処分を受ける者に簡易かつ迅速な救済を受ける道を開き、その結果なお原処分に不服がある場合に審査裁決庁の裁決を受けさせることとし、一面において審査裁決庁の負担の軽減をはかるとともに、他面において納税者の権利救済につき特別の考慮を払う目的に出たものであり、租税行政の特殊性を考慮し、その合理的対策としてとられた制度であることは明らかである。 処分庁に対する不服手続によつてこれに再審理の機会を与え、- 1 -処分を受ける者に簡易かつ迅速な救済を受ける道を開き、その結果なお原処分に不服がある場合に審査裁決庁の裁決を受けさせることとし、一面において審査裁決庁の負担の軽減をはかるとともに、他面において納税者の権利救済につき特別の考慮を払う目的に出たものであり、租税行政の特殊性を考慮し、その合理的対策としてとられた制度であることは明らかである。ところで、異議申立てをした場合に、申立後三月を経過してもこれについての決定がされないときは、異議申立人が別段の申出をした場合を除き、審査請求がされたものとみなす旨を規定している旧法八〇条一項一号も、このような法の趣旨、目的を反映しているのであつて、不服申立人を行政救済手続の遅延による不利益からまもるとともに、他面において行政手続経済の合理化をはかることにその主たる目的があることはいうまでもないが、この場合に異議手続による救済を全く無意味かつ不要とするものではなく、不服申立人がこの手続による救済を求める利益をも重視し、これを権利として尊重する趣旨であることは、前記規定が審査請求とみなす効果の発生を異議申立人の意思にかからしめ、異議決定が遅延したときは、その選択により、異議決定を省略して審査裁決を受けることもでき、また、あくまでまず異議手続による救済を求めることもできることとしていることからも明らかである。そして、国税通則法は、旧法、新法いずれも審査請求によつては異議決定固有の瑕疵を争うことを認めていない(旧法七九条三、五項、七六条五項一号、新法七五条三項、七六条一号)のであるから、右瑕疵を是正す そして、国税通則法は、旧法、新法いずれも審査請求によつては異議決定固有の瑕疵を争うことを認めていない(旧法七九条三、五項、七六条五項一号、新法七五条三項、七六条一号)のであるから、右瑕疵を是正するためには、右決定自体の取消訴訟を提起するほかなく、またこのような訴えは、それ自体固有の利益をもつ訴えとして許されるのである。このようにみてくると、異議申立人が異議決定取消しの判決をえ、その判決により異議決定が遡つて効力を失う結果として、異議申立ての時から三月以内に決定がされていない状態に復帰することがあつても、その場合に、旧法八〇条一項一号により審査手続に移行するものと解するとすれば、異議決定庁がその拘束を受ける取- 2 -消判決の趣旨を没却させ、異議手続による救済を求める申立人の権利を認めないのと同一の結果に帰着することとなるのであるから、このような解釈は、法の趣旨、目的に反し、採ることができない。 遡つて効力を失う結果として、異議申立ての時から三月以内に決定がされていない状態に復帰することがあつても、その場合に、旧法八〇条一項一号により審査手続に移行するものと解するとすれば、異議決定庁がその拘束を受ける取- 2 -消判決の趣旨を没却させ、異議手続による救済を求める申立人の権利を認めないのと同一の結果に帰着することとなるのであるから、このような解釈は、法の趣旨、目的に反し、採ることができない。すなわち、取消判決の確定が異議申立ての時から既に三月を経過していても直ちに当然に審査手続に移行するものではなく、異議手続は依然として係属し、異議決定庁は、これに対して改めて適法な審理、決定をすべき拘束を受けるものと解すべきである。したがつて、被上告人のした各異議申立ては、本件各決定が判決によつて取り消されても、旧法八〇条一項一号の規定により審査請求に移行するものでないとした原審の判断は、結局正当であり、右と異なる見解に立つ論旨は、採用することができない。同第二点について。所論は、要するに、十分な理由が附記された裁決により原処分が適法妥当と認められた場合には、法が異議決定に理由の附記を求める趣旨は実質的に充足されたものといいうるとともに、異議決定庁が原処分の取消決定をすることは事実上殆んど期待しえないから、異議決定の取消しを求める訴 められた場合には、法が異議決定に理由の附記を求める趣旨は実質的に充足されたものといいうるとともに、異議決定庁が原処分の取消決定をすることは事実上殆んど期待しえないから、異議決定の取消しを求める訴えの利益は失われるものと解すべきであるのに、本件各決定の取消しを求める訴えの利益を肯認した原判決は、法律の解釈を誤つたものである、というのである。旧法七五条、行政不服審査法四八条、四一条一項(新法八四条四項、一〇一条一項)が異議決定、審査裁決に理由を附記すべきものとしているのは、異議決定庁、審査裁決庁の判断の慎重、公正を期し、その恣意を抑制するとともに、決定、裁決の理由を明示することによつて不服申立人に原処分に対する不服申立てないしは取消訴訟の提起に関して判断資料を与える趣旨に出たものと解される。したがつて、異議決定、審査裁決の理由附記に不備がある場合には、当該決定、裁決はそれぞれ固有の瑕疵あるものとして違法となり、不服申立人はその決定、裁決の取消しを求- 3 -めることができるのであるが、異議決定にこのような瑕疵がある場合、のちにされた審査裁決に適法な理由附記があつたからといつて、それは審査裁決庁の原処分に対する判断の理由を明らかにしたのにとどまり、異議決定の右瑕疵がこれによつて当然に治癒されるわけではなく、また、異議決定庁の原処分に対する判断の理由附記によつてその慎重、公正な判断を受ける利益は、このような審査裁決の理由附記によつてみたされるものということはできないのであるから、単なる形式の追完を求める利益を有するにすぎないとして異議決定取消訴訟の利益を否定することは当をえたものということができない。 する判断の理由を明らかにしたのにとどまり、異議決定の右瑕疵がこれによつて当然に治癒されるわけではなく、また、異議決定庁の原処分に対する判断の理由附記によつてその慎重、公正な判断を受ける利益は、このような審査裁決の理由附記によつてみたされるものということはできないのであるから、単なる形式の追完を求める利益を有するにすぎないとして異議決定取消訴訟の利益を否定することは当をえたものということができない。また、原処分を取消し又は変更する裁決は、異議決定庁を拘束するが(旧法七五条、行政不服審査法四三条、新法一〇二条)、原処分を適法と認めて審 訟の利益を否定することは当をえたものということができない。また、原処分を取消し又は変更する裁決は、異議決定庁を拘束するが(旧法七五条、行政不服審査法四三条、新法一〇二条)、原処分を適法と認めて審査請求を棄却する裁決があつても、異議決定庁は独自の審理判断に基づいて自ら原処分を取消し又は変更することを妨げないものと解すべきであつて、その可能性が残されているかぎり、異議申立人は異議決定庁に対し、更に原処分の取消し又は変更を求める利益を依然として保有しているものといわなければならない。それゆえ、原処分を維持して審査請求を棄却する裁決があり、これに適法な理由附記があつたとしても、これによつて、異議申立人が異議決定における理由附記の不備の瑕疵を主張してその取消しを求める訴えの利益は失われるものではないというべきである。ところで、異議決定を経たのちの原処分に対してされた審査請求につき、原処分の全部又は一部を取り消す旨の裁決がされたときは、遡つてその効力が失われる結果、右原処分を維持した異議申立棄却決定の取消しを求める訴えは、その限度においてその利益が失われるものと解するのが相当である。これを本件についてみるに、原審の確定するところによれば、被上告人は、本件各決定後の各原処分(法人税額の更正処分及び加算税の決定処分)につき東京国税局長に対して審査請求をし、同国税局長は、(イ)昭和三五年五月一日から昭和三六年四月三〇日まで及び(ロ)昭和三六年五月一日から昭和三七年四月三〇日まで- 4 -の各事業年度分に関する各原処分に対する審査請求については、それぞれ棄却の裁決を、(ハ)昭和三七年五月一日から昭和三八年四月三〇日までの事業年度分に関する原処分に対する審査請求については、原処分のうち所得金額一七二万五二四六円をこえる部分を取り消し、その余の部分につ 、同国税局長は、(イ)昭和三五年五月一日から昭和三六年四月三〇日まで及び(ロ)昭和三六年五月一日から昭和三七年四月三〇日まで- 4 -の各事業年度分に関する各原処分に対する審査請求については、それぞれ棄却の裁決を、(ハ)昭和三七年五月一日から昭和三八年四月三〇日までの事業年度分に関する原処分に対する審査請求については、原処分のうち所得金額一七二万五二四六円をこえる部分を取り消し、その余の部分につ の裁決を、(ハ)昭和三七年五月一日から昭和三八年四月三〇日までの事業年度分に関する原処分に対する審査請求については、原処分のうち所得金額一七二万五二四六円をこえる部分を取り消し、その余の部分についての審査請求を棄却する裁決をしたというのである。そうすると、右(イ)(ロ)両事業年度分に関する各異議決定及び(ハ)事業年度分に関する異議決定中、右裁決によつて審査請求が棄却された部分の原処分に関する部分については、被上告人がその取消しを求める訴えの利益を有するとした原判決の判断は正当である。しかし、右(ハ)事業年度分に関する異議決定中、前記裁決により取り消された部分の原処分に関する部分については、既にその取消しを求める訴えの利益は失われているのであるから、なおその利益があるとした原判決は法律の解釈を誤つたものといわなければならない。したがつて、原判決中、右部分については原判決を破棄すべく、当該部分につき訴えを却下した第一審判決は結局正当であるので、右部分に関する控訴を棄却し、その余の部分に関する上告人の上告を棄却すべきものである。よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、八九条、九六条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官村上朝一裁判官岡原昌男裁判官小川信雄裁判官大塚喜一郎裁判官吉田豊- 5 - 裁判官吉田豊
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