令和5特(わ)311 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反

裁判年月日・裁判所
令和6年7月11日 東京地方裁判所
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判決文本文27,285 文字)

令和6年7月11日東京地方裁判所刑事第16部宣告令和5年特(わ)第311号私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件 主文 被告人株式会社Bを罰金2億円に、被告人B1を懲役1年6 月に処する。 被告人B1に対し、この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実) 株式会社Cグループ(令和元年12月31日以前の商号は株式会社C)、被告人株式会社B(以下「被告会社」という。)及び株式会社D(平成30年7月16日以前の商号は株式会社D´)は、いずれも広告代理業等を営む事業者、株式会社E、株式会社F及び株式会社Gは、いずれもイベントの企画・運営等を営む事業者であり、C1は、株式会社Cグループの(省略)の地位にあり、その従業者として公益 財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)が順次発注する第32回オリンピック競技大会(2020/東京)及び東京2020パラリンピック競技大会(以下、両大会を合わせて「東京2020大会」という。)に関して競技・会場ごとに実施される各テストイベント計画立案等業務委託契約並びに同契約の受注者との間で締結されることとされていた各テ ストイベント実施等業務委託契約及び各本大会運営等業務委託契約(以下「テストイベント計画立案等業務委託契約等」という。)の受注等に関する業務に従事していたもの、被告人B1(以下「被告人B1」という。)は、株式会社B´の(省略)の地位にあるとともに同社及び被告会社が共同で設置した(省略)の構成員の地位にあり、被告会社の従業者として前記同様の業務に従事していたもの、D1は、株 式会社Dの(省略)の地位にあり、その従業者とし にあるとともに同社及び被告会社が共同で設置した(省略)の構成員の地位にあり、被告会社の従業者として前記同様の業務に従事していたもの、D1は、株 式会社Dの(省略)の地位にあり、その従業者として前記同様の業務に従事してい たもの、E1は、株式会社Eの執行役員の地位にあり、その従業者として前記同様の業務に従事していたもの、F1は、株式会社Fの(省略)の地位にあり、その従業者として前記同様の業務に従事していたもの、G1は、株式会社Gの取締役等の地位にあり、その従業者として前記同様の業務に従事していたもの、Hは、組織委員会大会準備運営第一局次長等として、テストイベント計画立案等業務委託契約等 の発注等に関する業務に従事していたものである。 被告人B1は、H、C1、D1、E1、F1、G1、広告代理業等を営むその他の事業者1社(以下、同事業者を「A社」といい、A社と株式会社Cグループ、被告会社、株式会社D、株式会社E、株式会社F及び株式会社Gの6社とを合わせて「関係事業者7社」という。)の従業者として前記同様にテストイベント計画立案 等業務委託契約等の受注等に関する業務に従事していた者及びそれぞれその従業者として業務に従事する関係事業者7社の他の従業者らと共謀の上、上記従業者らがそれぞれその従業者として業務に従事する関係事業者7社の業務に関し、平成30年2月頃から同年7月頃までの間、東京都港区虎ノ門1丁目23番1号虎ノ門ヒルズ森タワー所在の組織委員会事務所等において、面談等の方法により、テストイベ ント計画立案等業務委託契約等について関係事業者7社の受注希望等を考慮して受注予定事業者を決定するとともに基本的に当該受注予定事業者のみがテストイベント計画立案等業務委託契約に係る入札を行うことなどを合意した上、同合意に従っ 等について関係事業者7社の受注希望等を考慮して受注予定事業者を決定するとともに基本的に当該受注予定事業者のみがテストイベント計画立案等業務委託契約に係る入札を行うことなどを合意した上、同合意に従ってテストイベント計画立案等業務委託契約等についてそれぞれ受注予定事業者を決定するなどし、もって関係事業者7社が共同して、テストイベント計画立案等業務 委託契約等の受注に関し、相互にその事業活動を拘束し、遂行することにより、公共の利益に反して、テストイベント計画立案等業務委託契約等の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限した。 (事実認定の補足説明)第1 はじめに 1 本件は、被告人B1をはじめとする被告会社等関係事業者7社の従業者らが、 組織委員会の幹部職員として同発注について中心的な役割を有していたH(以下「H」という。)や、その意を受けた株式会社Cグループ(以下「C」という。)の従業者であるC1(以下「C1」という。)らを通じて「罪となるべき事実」記載の入札を行うことなどを合意するなどし、談合をしたとされる事案である。 被告人B1及び被告会社は、基本的に事実関係の存在については争わないが、同 事実関係を前提として、独占禁止法89条1項1号及び3条所定の不当な取引制限罪が成立するかについては慎重に判断して欲しい旨述べて、その成立を争っている。 2 弁護人は、検察官の主張する事実関係を一部争った上で、被告会社は、他の事業者との間で合意をしておらず、これが各事業者の事業活動を拘束するものでもない、仮に拘束力ある合意があったとしても、競争を実質的に制限したとはいえな い、また、合意の対象が本大会運営等業務等まで含むという検察官の主張も否定されるべきである、被告人B1には合意に参加する故意はなかったな 合意があったとしても、競争を実質的に制限したとはいえな い、また、合意の対象が本大会運営等業務等まで含むという検察官の主張も否定されるべきである、被告人B1には合意に参加する故意はなかったなどとして、不当な取引制限罪は成立しない旨主張する。 3 当裁判所は、被告人B1及び弁護人の主張等を踏まえても、判示のとおり、不当な取引制限罪が成立すると判断したので、以下、その理由を補足して説明する。 第2 事実関係等関係各証拠によれば、以下の事実が明らかに認められる。なお、弁護人は、同意された各供述調書等の信用性について、極めて慎重に判断すべきと主張しているが、以下に記載する事実関係については、当時の関係者間のメール、手帳、議事録等の客観的な資料に照らして、いずれも、その存在を認めることができる。 1 東京2020大会、組織委員会の概要等⑴ 東京2020大会においては、同大会を招致するにあたって東京都及び日本オリンピック委員会と国際オリンピック委員会との間で締結された開催都市契約に基づき、本大会の運営能力向上のため、本大会で使用する競技会場において、競技や会場ごとに、競技運営、会場運営等のテストイベントを行うこととされていた。 ⑵ 東京2020大会の準備及び運営に関する事業等を行っていた組織委員会 には、テストイベントに関連する業務を担当する部局としてテストイベントマネジメント課(以下「TEM」という。)が置かれ、Hは、TEMが置かれていた大会準備運営第一局の次長として、テストイベントに関する業務(以下「テストイベント業務」という。)の発注業務に中心的に関与していた。 ⑶ア組織委員会における物品・役務等の調達は、会計処理規程に基づいて行わ れており、同規程は、契約の方法として、競争入札、複数 ストイベント業務」という。)の発注業務に中心的に関与していた。 ⑶ア組織委員会における物品・役務等の調達は、会計処理規程に基づいて行わ れており、同規程は、契約の方法として、競争入札、複数見積契約、プロポーザル方式契約のほか、単数見積による契約として特別契約を定めているところ、同規程33条は、原則として競争入札によることを定め、それ以外の方法によって調達する場合には、同規程34条ないし36条に定める例外的な場合に当たる必要があるとされていた(以下「特別契約」のことを一般的な用例に従い、「随意契約」とい う。)。 イテストイベント業務は、テストイベント計画立案等業務(以下「計画業務」という。)とテストイベント実施等業務(以下「実施業務」という。)に分けられ、入札の単位となった会場・競技の案件(以下「会場案件」という。)毎に発注されたが、別表記載(別表省略)の会場案件に係る計画業務(以下「本件計画業務」と いう。)については一般競争入札により、その実施業務及びその後の本大会運営等業務(以下「本大会業務」という。)については、随意契約により発注された(以下、別表記載(別表省略)の会場案件に係る実施業務を「本件実施業務」、同案件に係る本大会業務を「本件本大会業務」という。)。 2 スポーツイベントの運営、各事業者の事業内容等 ⑴ア一般的にスポーツイベントを開催するにあたっては、競技運営、会場運営等(以下単に「競技大会の運営等」という。)を行うに当たり、スポンサーを探してイベント運営に必要な資金提供を受けるマーケティングが行われ、このようなマーケティングを行う事業者が、国内競技団体(以下「NF」という。)との関係性を作るなどして競技大会の運営等を担当することが多かった。 イしかし、競技大会の運営等に グが行われ、このようなマーケティングを行う事業者が、国内競技団体(以下「NF」という。)との関係性を作るなどして競技大会の運営等を担当することが多かった。 イしかし、競技大会の運営等にあたっては、競技ごとに、大会運営の基準が存 在するなどしていることから、その経験やノウハウが必要であった。そのため、競技大会の運営等については、マーケティングを行う事業者が、このような経験等を欠く場合、たとえマーケティングについて競合関係にあったとしても、これを有する事業者に対して再委託をするなどして協力を得ることも行われていた。 ⑵ア被告会社は、日本でも有数の広告代理店としてスポーツイベントのマーケ ティング、競技大会の運営等を行っており、他社との経営統合等を経て、本件当時、被告会社、その関連会社である株式会社B´、その子会社である株式会社B´´が連携しながら、東京2020大会に関する事業に当たっていた。 イ Cは、国内で圧倒的に最大手の広告代理店として、スポーツイベントのマーケティング、競技大会の運営等を行っており、長年にわたり、日本オリンピック委 員会のマーケティング専任代理店を務めていたほか、平成10年の長野冬季オリンピック、平成14年の日韓共催FIFAワールドカップを始めとする様々な大規模スポーツイベントにおいて、そのマーケティング等を行うなどしていた。東京2020大会においても、組織委員会からマーケティング専任代理店に選定されており、自社の従業者を組織委員会の幹部職員として出向させるなど、組織委員会をはじめ 東京2020大会全体の運営に対して大きな影響力を有していた。 ウ株式会社D(以下「D」という。)及びA社も、被告会社及びCとともに、広告代理店としてスポーツイベントのマーケティング、競技大会の運営等 2020大会全体の運営に対して大きな影響力を有していた。 ウ株式会社D(以下「D」という。)及びA社も、被告会社及びCとともに、広告代理店としてスポーツイベントのマーケティング、競技大会の運営等を行っており、株式会社E(以下「E」という。)、株式会社F(以下「F」という。)及び株式会社G(以下「G」という。)は、いずれもイベントの企画・運営等の事業 を行う事業者として、競技大会の運営等を行っていた。 エ関係事業者7社は、経験やノウハウ等に応じて、それぞれ競技大会の運営等を得意とする競技・会場があり、また、日本でスポーツの競技大会の運営等を行うことのできる実績、能力のある事業者は、関係事業者7社をはじめとする一定の範囲の事業者に限られていた。 3 テストイベント業務の発注方式の決定経緯等 ⑴ア Hは、平成29年7月頃から、テストイベントの実施が遅延する中、テストイベント業務の事業委託に関する発注方法について、Cの従業者らに協力を求めるなどして検討した結果、時間的に余裕のない状況で、各競技について競技大会の運営等の実績等を有する事業者を確保するためには、随意契約により、テストイベント業務を発注する必要があると考え、組織委員会内部での調整を進めることとし た。 イ Hは、平成29年10月11日及び同月12日、組織委員会における財務全般の最高責任者であったI1(以下「I1」という。)や、その部下で、組織委員会における物品・役務等の調達全般を担当する調達部の部長であったI2(以下「I2」という。)と順次打合せを行った。Hは、その場で、テストイベント業務を外 部事業者に委託すべきことに加え、委託先事業者の選定は本大会の実施運営体制を見据えて行うことが重要であり、テストイベント及び本大会の準備・実施運営を遂 。Hは、その場で、テストイベント業務を外 部事業者に委託すべきことに加え、委託先事業者の選定は本大会の実施運営体制を見据えて行うことが重要であり、テストイベント及び本大会の準備・実施運営を遂行しうる充分な制作能力等がある事業者を選定するためには、これらの要件を満たす事業者については随意契約により発注することが適当であり、該当する事業者がいない場合には、総合評価方式入札の選定が可能であるとの説明を行った。 I1及びI2は、Hの説明を踏まえても、前記会計処理規程に照らせば、随意契約によってテストイベント業務の委託先事業者を選定する特別な理由はないと考え、テストイベント業務を随意契約によって調達することを承諾しなかった。 ウその後も、TEMと調達部の職員との間でテストイベント業務の調達方法について検討が進められたが、平成30年1月11日には、同業務のうち本件計画業 務については、その委託先事業者を総合評価方式の一般競争入札(以下、単に「入札」、「競争入札」又は「一般競争入札」ということがある。)によって選定すること等が事実上決定され、同年3月15日には、組織委員会において、事務総長が議長を務め、予算の執行に関して事実上の意思決定を行っていた経営会議において、本件計画業務を一般競争入札によって発注することが決定された。同経営会議の場 で、Hは、本大会に向けては別途検討を行うが、当然本大会を見据えてのテストイ ベントであるから、基本的には同じ事業者でいくことを考えている旨発言し、それに対して、事務総長であったI3(以下「I3」という。)も、テストイベントの委託業者と本番の委託業者は、基本的には、一致しないと意味がないなどと発言した。 ⑵ア一般競争入札によって本件計画業務が発注されることとなった後、事業者 下「I3」という。)も、テストイベントの委託業者と本番の委託業者は、基本的には、一致しないと意味がないなどと発言した。 ⑵ア一般競争入札によって本件計画業務が発注されることとなった後、事業者 決定基準が作成され、満点100点のうち、価格点が30点、技術点が70点とされ、技術点中20点は、「対象競技テストイベント事業実施における予算計画の管理手法及び本大会コスト最適化に向けた提案」にあてられた。この事業者決定基準は、入札の際に、事業者に公表された。 なお、上記の通り事業者決定基準が決定された理由は、テストイベントのノウハ ウを生かす観点から、実施業務及び本大会業務を計画業務の受注事業者に随意契約により委託する方針であったところ、計画業務の発注の段階で、その後の業務委託に関する価格を安くできる仕組みを導入するためであった。 イ組織委員会がある業務について一般競争入札により発注する場合には、調達部が当該業務の担当部署と協議の上で予定価格を決定していた。そして、本件計画 業務の予定価格は、会場案件毎に原則一つの事業者から下見積書の提出を受け、同見積書記載の金額を元に決められていた。もっとも、調達部は、準備が遅れる中、テストイベントの実施運営等に関する全体的な予算との関係等を考慮して、1競技当たり2000万円で計算した範囲内であれば、TEMが予定価格案として提案してきた、下見積書記載の金額にある程度余裕を持たせた金額や下見積書記載の金額 に近い金額をそのまま予定価格としていた。 4 Hが面談等を行うに至る経緯等Hは、一般競争入札により本件計画業務が発注されることになったことを受け、前記2⑴イ及び⑵エ記載の特性を有する競技大会が短期間に多数かつ大規模に行われる東京2020大会の競技大会の運営等を遺漏なく行うために 般競争入札により本件計画業務が発注されることになったことを受け、前記2⑴イ及び⑵エ記載の特性を有する競技大会が短期間に多数かつ大規模に行われる東京2020大会の競技大会の運営等を遺漏なく行うためには、各事業者の実 績等を把握した上で、各事業者に受注してもらいたい競技を伝えたり、各事業者の 意向を取りまとめるなどして調整を行うことが必要と考え、平成30年1月25日及び同月30日、Cの従業者らと打合せを行い、HやCの従業者らで、実績等がある、Cを除く関係事業者7社を含む複数の事業者の従業者らと面談等を順次行うこととした。 5 被告会社関係者とHとの面談等 ⑴ア被告人B1は、本件当時、株式会社B´のスポーツビジネス局長として、被告会社のスポーツビジネスに関連する業務に従事していたところ、平成29年9月20日には被告人B1の部下で被告会社の東京2020大会関連業務に従事していたB2(以下「B2」という。)と共に、同年10月31日には同局局長代理であったB3(以下「B3」という。)及びB2と共に、テストイベントを含む東京 2020大会の競技大会の運営等について、Hと面談するなどした。 イ被告人B1は、平成29年9月以前に、Cの執行役員であったC2と会い、同人から、東京2020大会の運営は、50を超える世界大会を1か月の間に日本でやるため、C1社では対応できない旨を聞いていた。さらに、被告人B1は、同年11月15日、C1から、被告会社が東京2020大会の競技大会の運営等を行 うに当たって、Cの2020東京オリンピックパラリンピック室長のC3(以下「C3」という。)に挨拶して欲しいなどと伝えられ、同月20日、B2とともにC3、C1と面談をした。同日の面談では、被告人B1は、C3に対し、被告会社として受注が可能 パラリンピック室長のC3(以下「C3」という。)に挨拶して欲しいなどと伝えられ、同月20日、B2とともにC3、C1と面談をした。同日の面談では、被告人B1は、C3に対し、被告会社として受注が可能である競技として、自転車競技、自転車ロードレース、ホッケー、スポーツクライミング及びバドミントンを伝えた。 ⑵ア被告人B1は、平成30年3月2日、B3及びB2と共に、組織委員会においてHと面談した。被告人B1らは、Hに対して、本件計画業務に関し、被告会社として受注可能であり受注を希望する競技として、自転車競技、バドミントン、スポーツクライミング、ホッケー及び野球を挙げた。Hは、自転車競技及びホッケーについては、いいですねなどと返答したのに対し、バドミントンについては、D かななどと、また、スポーツクライミングについては、Cにやってもらったほうが いいかなというふうに思っていますなどと返答した。野球については、Hは、特定の事業者の名前は挙げなかったものの、どの事業者もできるという趣旨の返答をした。 イまた、この日までの打合せにおいては、Hから被告人B1らに対し、本件計画業務が一般競争入札により発注される可能性があること、計画業務を受注した事 業者が、その後の実施業務や本大会業務を受注することが望ましい旨も伝えられた(なお、これに反するとも解される当公判廷における被告人B1の供述の信用性については後述する。)。 ⑶ア被告人B1は、Hとの前記面談を受けて、スポーツクライミングが開催される会場案件の計画業務の受注に関し、Hから名前が挙げられたCの従業者と打合 せを行うこととし、平成30年3月9日又は同月30日、C1と会い、被告会社が同会場案件の計画業務を受注したいと伝え、協業について協議した。 イ被告人 Hから名前が挙げられたCの従業者と打合 せを行うこととし、平成30年3月9日又は同月30日、C1と会い、被告会社が同会場案件の計画業務を受注したいと伝え、協業について協議した。 イ被告人B1は、平成30年4月頃、B2から、本件計画業務が一般競争入札により発注されることに決まったと聞き、同月17日に、再度、Hと面談を行い、スポーツクライミングについて、Hから、Cとジョイントベンチャー(以下「JV」 という。)を組むか、Cから再委託を受けることで業務を行うのはどうかと提案を受け、同競技を含む会場案件についての計画業務の入札参加締切日の前後を通じて協業に関する協議を継続した。このように入札参加締切日の時点では協業に関する調整が整っていない中、被告会社は、協業がまとまらなかったときのことを考え、入札に一旦参加したものの、最終的に、Cから、スポーツクライミングの計画業務 について再委託を受けることで協議がまとまったことから、組織委員会へ企画提案書等を提出することなく、入札を取り下げた。 ⑷ア株式会社B´´の代表取締役社長であるB4(以下「B4」という。)は、同社の従業者であったB5(以下「B5」という。)と共にバドミントンについての計画業務の受注に向けて準備を進めていたところ、平成30年5月中旬頃、被告 人B1から、電話で、組織委員会は、広告代理店等との間で話をし、ある程度、会 場案件毎に受注させたい業者を決めている、バドミントンについては、Dのかなり上のレベルの人物が、組織委員会のHに対して依頼しており、HもDに担当させるつもりになっている旨を聞いた。 イ B4は、これを受け、東京2020大会のバドミントンの競技運営に関わるためDと協業することについて検討を行い、被告人B1やB2とも相談した。その 担当させるつもりになっている旨を聞いた。 イ B4は、これを受け、東京2020大会のバドミントンの競技運営に関わるためDと協業することについて検討を行い、被告人B1やB2とも相談した。その 後の平成30年5月31日、被告人B1は、Hと面談をして、バドミントンの受注希望を伝えた上で、DとJVを組むか、Dから再委託を受けるように動いてもいいかと質問するなどした。 ウ被告人B1からHとの面談結果を聞いたB4は、B5に対し、Dとの間でバドミントンに関する協業の交渉を始めるように指示し、B5は、Dの担当者との間 で、協業の交渉を行ったが、平成30年6月22日、Dからバドミントンについて被告会社と協業することはできない旨伝えられた。 エ B5は、その後、B4に対してバドミントンの計画業務の入札に参加して欲しい旨伝え、平成30年6月26日、B4が、B5の熱心さ等に押される形で、被告人B1及びB2と面談して入札への参加を訴えた結果、被告会社としてバドミン トンが行われる会場案件の計画業務の入札に参加する方針となって入札に参加したが、結局、Dが同業務を落札した。 ⑸ア野球について、B2は、その計画業務に被告会社として入札したいと考え、平成30年6月26日、B4に対して入札に賛同するよう促すメールを送ったところ、B4は、「ガチで応札する場合、CとB1さんがお話しされている関係の中で 大丈夫なのでしょうか?」などと返信した。 イ結局、B2は、自らの判断で、平成30年7月5日、野球が行われる会場案件の計画業務の入札に参加し、その後にその事実を被告人B1に報告するとともに、翌日頃、CのC3に電話し、「野球も記念受験することにしました」などと伝えた。 しかしながら、結局、野球についてはCが落札した。 ⑹アホッケーに にその事実を被告人B1に報告するとともに、翌日頃、CのC3に電話し、「野球も記念受験することにしました」などと伝えた。 しかしながら、結局、野球についてはCが落札した。 ⑹アホッケーについては、前記のとおり、平成30年3月2日のHとの面談に おいて、被告人B1らが、被告会社が受注を希望する競技として挙げたところ、Hからいいですねなどと返答があり、同年4月17日にも、Hから、被告会社がホッケーのNFと関係性が良いことを再確認するなどされていた。 イ被告会社は、平成30年4月27日、ホッケーの計画業務に関し、組織委員会の職員からの依頼を受け参考見積を提出するなどした後、ホッケーが行われる会 場案件の計画業務の入札に参加した。同会場案件については、Fも、同社において東京2020大会関連の業務を行っていたF1が事前にHに入札に参加する旨報告した上で、その入札に参加した。被告会社は、事業者からの質問への組織委員会の回答が記載された書面に被告会社が行った質問以外の質問に対する回答も記載されていたことから、被告会社以外の事業者も応札しているのではないかと考え、提出 した参考見積よりも低い金額の見積書を提出するなどし、結局、被告会社が落札した。 ⑺アテニスについては、被告人B1らからHに対し、被告会社として受注を希望する旨伝えていなかったが、B2は、東京2020大会におけるテニスの競技大会の運営等に携わりたいなどと考えた。 イ B2は、入札参加の期限までに、東京2020大会のテニスの競技大会の運営等を行う体制を整えることはできなかったものの、入札参加後に体制を整えることができる可能性も考慮し、テニスの計画業務の入札に参加した。B2は、入札参加後の平成30年7月6日、被告人B1に対し入札参加の事実を報 制を整えることはできなかったものの、入札参加後に体制を整えることができる可能性も考慮し、テニスの計画業務の入札に参加した。B2は、入札参加後の平成30年7月6日、被告人B1に対し入札参加の事実を報告したが、その後も、体制を整えることはできず、結局、同月19日、被告人B1の了解も得て、 企画提案書提出前に入札を取り下げた。 ⑻ア自転車競技については、平成30年3月2日のHとの面談において、被告人B1らが、被告会社が東京2020大会に関する受注を希望する競技として挙げたところ、Hからいいですねなどと返答があり、同年4月17日にも、Hから、被告会社がやってもらっていい旨言われるなどしていた。 イ被告会社は、同月26日、自転車競技の計画業務に関し、組織委員会からの 依頼を受け、参考見積を提出するなどした。その後、被告会社は、自転車競技が行われる会場案件の計画業務の入札に参加したところ、事業者からの質問に対する組織委員会の回答が記載された書面に被告会社が行った質問以外の質問に対する回答も記載されていたことから、被告会社以外の事業者も入札に参加してきたのではないかと考え、提出した参考見積よりも低い金額の見積書を提出するなどし、被告会 社が同業務を落札することとなった。 ⑼ ボクシングについては、平成30年4月17日のHとの面談において、被告人B1らは、Hから、被告会社がボクシングの計画業務の受注希望があるかについて尋ねられるなどしたが、希望しない旨伝えた。ボクシングが行われる会場案件の計画業務に対しては、入札参加をした事業者がおらず、入札不調となった。その後 の同年12月中旬から下旬頃、Hから、同業務を被告会社が受注してくれないか、受け手がいなくて困っていると言われた被告人B1は、Hの依頼に応えることとし、 業者がおらず、入札不調となった。その後 の同年12月中旬から下旬頃、Hから、同業務を被告会社が受注してくれないか、受け手がいなくて困っていると言われた被告人B1は、Hの依頼に応えることとし、随意契約によって、同業務を受注した。 6 被告会社以外の各事業者とHらとの面談等⑴ Cは、東京2020大会のマーケティング専任代理店になったこと等から、 平成29年7月頃からHとともに計画業務の事業委託に関する発注方法等について検討を進めていたところ、平成30年1月中旬以降、Cにおいて東京2020大会関連の業務を行っていたC1及びC4(以下「C4」という。)は、前記4記載のとおり、本件計画業務が一般競争入札により発注されることを認識しつつ、Hと打合せを行った。その打合せ等を通じて、競技ごとに大会運営実績等を有する事業者を 記載した一覧表が作成されるなどした。 ⑵ア HやC1は、平成29年12月から平成30年4月にかけて、それぞれ、関係事業者7社中被告会社及びC以外の各事業者とも面談を進めたが、その際、各事業者から計画業務への入札参加を希望する会場案件について聴取し、Hが当該事業者による受注が望ましいとは考えていない会場案件について受注希望が述べられ た場合には他の事業者の名前を挙げるほか、Hにおいて協業先として望ましいと考 える他の事業者の名前を挙げたり、C1においては組織委員会側の依頼を受けて事業者の選定作業をしていることを伝えるなどした。 イ各事業者は、これらHやC1との面談等を通じて、Hから受注が望ましいとされたり協業先として望ましいとされたりした別の事業者の名前が挙げられた場合等には、受注に向けて当該別の事業者と打合せをするなどした。その上で、関係事 業者7社のうち、前記の被告会社(5⑶⑷⑸⑺) れたり協業先として望ましいとされたりした別の事業者の名前が挙げられた場合等には、受注に向けて当該別の事業者と打合せをするなどした。その上で、関係事 業者7社のうち、前記の被告会社(5⑶⑷⑸⑺)やF(5⑹)のほか、A社が、別表番号4(別表省略)の会場案件について、競技団体関係者からの要望を受け、Hの意向に反した入札参加をすることはあったが、その際A社は、入札に参加する経緯・事情についてHに事前に連絡するなどしている。これらを除くと、関係事業者7社は、結論としてHらの意向に沿って入札をし、これと齟齬する入札はしなかっ た。 ⑶ 並行して、HやC1らは、前記⑵アの面談等の結果を踏まえ、各事業者の実績、受注希望のほか、本件計画業務全体における委託先事業者のバランス等を踏まえたHの意向等も考慮して、前記一覧表を修正するなどしており、平成30年4月2日には、C1、C4、Hに加え、当時Cから組織委員会に出向していたC5とで 打合せを行い、同日までの面談等の結果を集約し、Hが各事業者との間で、計画業務の入札行動、協業体制等について認識の一致が得られた会場案件について整理するなどして、前記一覧表の最終更新を行った。 7 入札結果等⑴ 別表記載(別表省略)の会場案件について、計画業務が入札により発注され たところ、別表番号4、18、20ないし22及び25(別表省略)を除く相当数の会場においてHの意向に沿った、関係事業者7社中では1社のみによる入札が行われ、その結果も、全26会場案件中、別表番号15及び同18(別表省略)の合計二つの会場案件を除く、24会場案件においてHの意向に沿った事業者が受注するに至り、更にそのうち16会場案件については、Hの意向 に沿った事業者のみが入札に参加して必要書類を提出するに至った。また、 会場案件を除く、24会場案件においてHの意向に沿った事業者が受注するに至り、更にそのうち16会場案件については、Hの意向 に沿った事業者のみが入札に参加して必要書類を提出するに至った。また、計 画業務が発注された後、順次、実施業務及び本大会業務が発注されたが、お台場海浜公園会場で行われたマラソンスイミング、新国立競技場及び東京スタジアムで行われたサッカーを除き、計画業務を受注した事業者が、その会場案件において行われた実施業務及び本大会業務を随意契約により受注した。なお、お台場海浜公園会場で行われたマラソンスイミングはG、新国立競技場及 び東京スタジアムを会場に含むサッカーについてはCが、それぞれ計画業務を受注していたものであるが、同一会場で行われる競技の本大会業務は同一の事業者が行ったほうが効率的であるなどと言った理由から、それぞれ同一会場で行われる他の競技の計画業務を受注していた別の事業者(お台場海浜公園及び新国立競技場についてはF、東京スタジアムについてはD)に、本大 会業務を委託することになった。 ⑵ 別表記載(別表省略)の会場案件のテストイベント計画業務の入札のうち、入札によって受注事業者が決まった25の会場案件についての入札金額(入札参加後に変更があったものについては変更後のもの)を予定価格で除した落札率は、平均約65パーセントであり、90パーセント台が4件、80パー セント台が2件、70パーセント台が7件、60パーセント台が3件、50パーセント台が3件、40パーセント台が1件、30パーセント台が1件、20パーセント台が4件であった。 第3 争点に対する当裁判所の判断等1⑴ 弁護人は、被告会社は、他の事業者との間で合意をしていない旨主張して いるため、まず、その点について検討 1件、20パーセント台が4件であった。 第3 争点に対する当裁判所の判断等1⑴ 弁護人は、被告会社は、他の事業者との間で合意をしていない旨主張して いるため、まず、その点について検討する。 不当な取引制限罪が成立するにあたっては、複数の事業者間において、取決めに基づいた行動をとることを認識ないし予測し、これと歩調を合わせるという意思の連絡が必要と解されるところ、そのような意思の連絡があるというためには、事業者相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく、直接又は特定 の者を媒介として、相互に他の事業者の入札行動等に関する行為を認識して、暗黙 のうちに認容することで足りると解される。 ⑵ア被告人B1は、平成30年3月2日までに、Hとの面談を通じて、計画業務が一般競争入札により発注される可能性があること、テストイベント業務の発注に組織委員会内で中心的に関与していたHにおいて各会場案件に応じ受注が適切と考えている事業者がいること、自転車競技及びホッケーについては被告会社が当該 事業者である一方、被告人B1らが受注を希望するその他のバドミントン、スポーツクライミング及び野球についてはそうではなく、バドミントン、スポーツクライミングについては当該事業者として他の会社が特定されている一方で、野球については当該事業者が特定されてはいないことに加え、Hは、計画業務を受注した事業者が、その後の実施業務及び本大会業務を受注することが望ましいと考えているこ と等を認識したものと認められる。 なお、被告人B1は、当公判廷において、同日の時点では、計画業務が一般競争入札により発注されることは認識していなかった、Hとの面談の中では、計画業務を受注した事業者が、実施業務及び本大会業務を受注できるようにす B1は、当公判廷において、同日の時点では、計画業務が一般競争入札により発注されることは認識していなかった、Hとの面談の中では、計画業務を受注した事業者が、実施業務及び本大会業務を受注できるようにするという話はなかったなどと弁解する一方で、Hから計画業務が一般競争入札により発注される 可能性があるという話や、テストイベントから本大会までを一社で全部やることが望ましいという話があったかもしれないなどとも述べており、いずれも、これらの話があったことを明確には否定していない。この点について、B2及びB3はいずれもこれらの話があった旨一致して供述しているところ、B2の手帳には、平成30年3月2日の箇所に、Hの発言を書き留めたものとして、「運A計画~本番(入 札は可能性あり)」との記載があり、同記載は、Hが同日、被告人B1らに計画業務が一般競争入札により発注される可能性があり、計画業務を受注した事業者に実施業務、本大会業務を受注させることが望ましい旨発言したことを裏付けるものと言えるから、B2らの供述は信用でき、被告人B1の供述中、前記弁解については信用できない。 イこれらの事情に加え、Hは、組織委員会の幹部職員として、計画業務の発注 に中心的に関与しており、こうしたHの役割について被告人B1ら被告会社関係者が認識していたことは関係証拠に照らして明らかであるから、被告人B1らは、平成30年3月2日までのHとの面談により、計画業務が一般競争入札により発注される可能性があり、その場合には、Hの意向に沿って受注に向けた行動等をとることで、被告会社が受注を希望する競技に関するテストイベント業務や本大会業務に ついて、受注の可能性が高まる旨認識したと認められる。 被告会社以外の事業者の従業者らについても、Hや、圧倒的 とることで、被告会社が受注を希望する競技に関するテストイベント業務や本大会業務に ついて、受注の可能性が高まる旨認識したと認められる。 被告会社以外の事業者の従業者らについても、Hや、圧倒的最大手であり、東京2020大会においても、マーケティング専任代理店に選定されており、Hとともに計画業務の発注にも多大な影響を及ぼしていることが明らかなCの従業者との面談を通じて、計画業務が一般競争入札により発注される可能性があることに併せ、 発注者である組織委員会側のHにおいて各会場案件について受注が望ましい事業者がいる旨を明示又は黙示に伝えられるなどしていたことが認められ、HやCの役割等について認識していたと認められるそれらの従業者らも、被告人B1と同様、HやHの意を受けたCの意向に沿って受注に向けた行動等を行うことで、それぞれの事業者が受注を希望する競技に関するテストイベント業務や本大会業務について、 受注の可能性が高まる旨認識していたと認めることができる。 ウその上で、被告人B1や他の事業者の従業者らは、HやCの従業者らとの面談等を通じて、会場案件に応じて、Hにおいて受注が適切と考えている他の事業者の存在を認識したと認められ、さらに、同面談の内容等に照らし、Hは、それら事業者の従業者らとも面談等を行って、その意向を示すなどしているであろうことを 認識ないし予測していたことも認められる。そして、そもそも、東京2020大会は、世界的なスポーツイベントであり、従前からスポーツの競技大会の運営等を行っていた事業者にとって、他の同種事業者も、各競技団体との関係性を維持等するため、東京2020大会に関連する競技大会の運営等の業務を受注したいと考えていることは、当然想定し得た。そうすると、前記イの認識を有するに至っていた被 業者も、各競技団体との関係性を維持等するため、東京2020大会に関連する競技大会の運営等の業務を受注したいと考えていることは、当然想定し得た。そうすると、前記イの認識を有するに至っていた被 告人B1や他の事業者の従業者らは、そのような業務の受注に関し、発注者である 組織委員会の幹部職員として当該業務の発注について中心的な役割を果たしていたHからその意向を示されるなどした他の同種事業者らが、受注の可能性を高めるため、Hの意向に沿って入札等に向けた行動等をとることを相当程度の確実性をもって相互に予測していたと認めることができる。 ⑶ア被告会社に関し、更に個別の会場案件の調整についてみると、被告人B1 は、被告会社の希望どおりスポーツクライミングに関する業務を受注する可能性を高めるため、平成30年3月に、Hとの前記面談でその名前が挙げられていたCの従業者であったC1に連絡を取るなどして調整を行い、さらに、同年4月17日におけるHとの面談において、Hから、CとJVを組むか、再委託を受けることで業務を行うことを提案されると、その頃には既に本件計画業務が一般競争入札により 発注されることを明確に認識していたにも関わらず、受注の可能性を高めるためにHの意向に沿って調整を進める方針を維持し、C1に連絡を取ってHの提案どおりに伝え、被告会社及びC間で協業の調整を行い、最終的にCから再委託を受けることで協議がまとまると、入札を取り下げている。 イまた、バドミントンについても、本件計画業務が一般競争入札によって発注 されることを明確に認識していたにも関わらず、被告人B1は、入札に向けて準備を進めていたB4に対し、平成30年5月中旬頃、電話で、HがDにバドミントンを受注させる意向である旨伝え、B4から、東京2020大会の を明確に認識していたにも関わらず、被告人B1は、入札に向けて準備を進めていたB4に対し、平成30年5月中旬頃、電話で、HがDにバドミントンを受注させる意向である旨伝え、B4から、東京2020大会のバドミントンの競技運営に関わるためDと協業することについて相談を受けると、Hと面談を行い、Hに対し、DとJVを組むか、Dから再委託を受けるように動いてもいいかと質問 するなどしている。 ⑷ア以上を踏まえると、被告人B1らは、Hの意向に沿って受注に向けた行動等を行うことで、受注を希望する競技に関する業務について受注の可能性が高まると認識し、他の事業者もHの意向に沿って入札等に向けた行動等をとることを相当程度確実と予測した上で、実際に、Hの意向に沿った形で他の事業者と調整を試み ており、被告会社は、遅くとも、被告人B1がHの意向に沿った形で⑶ア記載のス ポーツクライミングに関する協業をCのC1に持ち掛けた平成30年3月9日又は同月30日の段階において、相当程度の確実性をもって予測した他の事業者の入札行動等に協調して、Hの意向に沿った入札等に向けた行動等を行う旨の意思を有するに至っていたというべきである。その後、⑶のとおり、調整を行っていることや、他の事業者と協業に向けて協議することについてHの意向を確認するなどしている ことも、そのような認定を支える。 イそして、被告会社以外の事業者の従業者についても、Hの意向に沿って受注に向けた行動等を行うことで、受注の可能性が高まる旨を認識し、他の事業者もHの意向に沿って入札等に向けた行動等をとることを相当程度確実と予測した上で、その面談等において、HやC1に異を唱えることなく、その後、各事業者それぞれ に、実際に、Hの意向に沿って入札するほか、受注を希望していた会場案件 行動等をとることを相当程度確実と予測した上で、その面談等において、HやC1に異を唱えることなく、その後、各事業者それぞれ に、実際に、Hの意向に沿って入札するほか、受注を希望していた会場案件があっても、Hの意向に反する入札行動をとらなかったり、事前にHに連絡した上で入札してHの意向を無視するわけではないことを示す行動に出たりしている。以上に照らせば、被告会社以外の事業者についても、遅くとも、HやC1らにおいて各事業者と面談等を行い、その結果を一覧表に最終的にまとめた平成30年4月2日まで には、相当程度の確実性をもって予測した他の事業者の入札行動等と協調して、Hの意向に沿った入札等に向けた行動等を行う旨の意思を有するに至っていたというべきである。 ウ以上によれば、関係事業者7社の従業者が、平成30年2月以降、組織委員会の職員であるH又はCの従業者であるC1等との面談等を行うことにより、それ ぞれ他の事業者がHの意向に沿った入札行動等をとることを相当程度の確実性をもって相互に予測し、遅くとも同年4月2日までに、自らも他の事業者と歩調を合わせ、Hの意向に沿った入札行動等を行う旨の意思を他の事業者と共有するに至ったということができる。このような事実関係に照らすと、被告会社等関係事業者7社は、Hを介するなどして、相互に他の事業者の入札行動等に関する行為を認識し、 暗黙のうちに認容したと評価することができ、他の事業者との間で意思の連絡をし ていたと認めることができる。 エこの点に関し、弁護人は、現にHの意向に反して入札を行った事業者の存在を指摘する。確かに、弁護人指摘の点や、被告人B1とHとの面談におけるやり取りからすると、個々の会場案件についてHから暗に入札を断念するように促されることがあったとしても て入札を行った事業者の存在を指摘する。確かに、弁護人指摘の点や、被告人B1とHとの面談におけるやり取りからすると、個々の会場案件についてHから暗に入札を断念するように促されることがあったとしても、全ての事業者側において、Hのそうした促しが、これに反 した入札を一切禁ずるものとして受け止められたとまでみることは困難である。 しかしながら、前述したところによれば、関係事業者7社の従業者らにおいては、受注の可能性を高めるという利点のため、まずは、Hの意向に沿った形で、受注予定事業者について決定し、基本的に当該受注予定事業者のみが入札する、当該受注予定事業者以外の事業者において、事業者内外の事情に照らし、入札する者はいる かもしれないが、その場合には、Hの意向に沿った場合と同程度に受注可能というわけではないと予測され、そうしたことなどを理由にHの意向に反して入札する事業者はさほどいないと想定される、といった程度には理解されていたと認められる。 以上によれば、関係事業者7社間において、上記の理解を前提として、相互に他の事業者の入札行動等に関する行為を認識して、歩調を合わせた入札行動等をとる 旨の共通の意思が形成され、意思の連絡があったとみることができ、「罪となるべき事実」記載のとおり、関係事業者7社間において、受注予定事業者を決定するとともに基本的に当該受注予定事業者のみが入札を行うことなどを合意していた(以下「本件基本合意」という。)と認定できる。これに反する弁護人の主張は採用できない。 ⑸ なお、弁護人は、被告人B1に故意がない旨主張するが、被告人B1は、前記のとおり、バドミントン等の会場案件についてHにおいて受注が適切と考えている他の事業者の存在を分かっていたのであるから、Hが被告会社以外の事業者の従業者とも面 がない旨主張するが、被告人B1は、前記のとおり、バドミントン等の会場案件についてHにおいて受注が適切と考えている他の事業者の存在を分かっていたのであるから、Hが被告会社以外の事業者の従業者とも面談しHの意向を示すなどしており、それら事業者の従業者らもHの意向に沿って受注に向けた行動等を行うことで受注の可能性が高まる旨認識したことを、 当然認識ないし予測していたと認められる。その上、被告人B1もまた、前記の関 係事業者にとっての東京2020大会の意義を理解していたと認められるから、Hからその意向を示されるなどした事業者の多くが、受注の可能性を高めるため、Hの意向に沿って入札等に向けた行動等を行う意思を有するに至ることも、当然予測していたというべきであり、以上によれば、関係事業者7社間で合意があることについて、被告人B1の故意に欠けるところはない。 この点について、弁護人は、被告人B1は、それまでに大会の運営を行ったことがある競技を受注できるかどうかにのみ関心があり、それら以外の競技については、全く関心がなく、他の関係事業者の従業者らがHらと面談していたとの認識は全くない旨主張しているが、前述したとおり、Hとの面談内容に加え、被告人B1も、スポーツ競技の運営等を行う事業者の従業者としてHから面談を求められていたの であるから、同様の事業を行っていた他の事業者の従業者もまたHと面談を行っていると考えたとみるのが合理的であって、弁護人の主張には理由がない。 2⑴ 次に、本件基本合意が合意に参加した各事業者の事業活動を拘束するものと言えるかについて検討すると、本来的には各事業者は自由に入札に参加する会場案件について意思決定し得るところ、本件基本合意に参加した事業者は、まずはH の意向に沿った形で協議を行う必 するものと言えるかについて検討すると、本来的には各事業者は自由に入札に参加する会場案件について意思決定し得るところ、本件基本合意に参加した事業者は、まずはH の意向に沿った形で協議を行う必要があるなど、これに制約された意思決定を行うことになるという意味において、各事業者の事業活動が事実上拘束されたことが明らかである。したがって、本件基本合意は合意に参加した各事業者の事業活動を拘束するものであったと言える。 ⑵ この点、弁護人は、本件基本合意に関し、Hの意向に反して入札に参加した としても、そのような事業者は、なんら不利益を受けておらず、拘束力があったかどうかは疑問であると主張する。しかしながら、独占禁止法2条6項にいう「その事業活動を拘束した」と認めるに当たっては、合意の実効性を担保するための制裁等が必要とまでは解されず、被告会社等関係事業者7社の事業活動が前記⑴のとおり事実上拘束されていたのは明らかであるから、弁護人の主張は採用することがで きない。 3⑴ 次に、本件基本合意によって、一定の取引分野における競争が実質的に制限されたと言えるかについて検討する。 一定の取引分野における競争を実質的に制限するとは、当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい、一定の入札市場において、入札に参加する事業者の範囲等を取り決める行為によって競争制限が行われる場合には、当該取り決め によって、その当事者である事業者らがその意思で当該入札市場における落札者及び落札価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらすことをいうものと解される。 ⑵ 本件基本合意は、関係事業者7社が、入札行動等に関して、他の事業者と共に、それぞれ競争機能を損なう協調的行動をとることを期待して形成されたもので をもたらすことをいうものと解される。 ⑵ 本件基本合意は、関係事業者7社が、入札行動等に関して、他の事業者と共に、それぞれ競争機能を損なう協調的行動をとることを期待して形成されたもので あった。そして、本件基本合意に参加した事業者は、本件計画業務の入札に参加した全事業者11社のうち7社に及んでいる。さらに、本件基本合意には、日本有数の広告事業者である被告会社のほか、売上・事業規模等に照らし、他の事業者を圧倒しており、東京2020大会においてマーケティング専任代理店もつとめるなど、東京2020大会全体の運営に対して大きな影響力を有していたCも参加していた。 入札参加事業者のうちに、本件基本合意に参加した事業者が占める割合のほか、参加事業者の範囲及びその規模等を考慮すれば、本件基本合意は、各事業者らが、その意思で当該入札市場における落札者及び落札価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらし得るものであったということができる。 そして、実際に、相当数の会場において本件基本合意の内容に沿ってHの意向に 沿った形で入札や協業の調整が行われ、その入札結果も、全26会場案件中、24会場案件において事前に事業者間でHの意向に沿い受注が望ましいとされた事業者が受注するに至り、更にその内16会場案件については、受注が望ましいとされた事業者のみが入札に参加して必要書類を提出するに至ったこと、本件計画業務を受注するに至った事業者9社中、本件基本合意と全く無関係に入札による受注を果た したのは1社にとどまること等を考慮すれば、本件基本合意は、事実上の拘束力を もって有効に機能し、前記の状態をもたらしていたものということができる。そうすると、本件基本合意により、後述する一定の取引分野において、競争を実質的に制限 件基本合意は、事実上の拘束力を もって有効に機能し、前記の状態をもたらしていたものということができる。そうすると、本件基本合意により、後述する一定の取引分野において、競争を実質的に制限していたと認めることができる。 なお、被告人B1も、C1やHとの打合せを通じてCを含む競技大会の運営等を事業として行っていた一定の範囲の事業者が、Hとの面談等を行っていたことは予 測していたと認められ、その後、自らも、本件基本合意に従って、Hの意向に沿った形での協業の調整等を行っているのであるから、本件基本合意が、競争を実質的に制限するものであることについて認識していたことは明らかである。 ⑶ この点について、弁護人は、計画業務の入札に関し、入札不調にならなかった会場案件のうち4割の会場案件でHらが受注予定事業者若しくは受注予定事業者 の候補と考えていた事業者以外の事業者が入札に参加している、全体の落札率は64.8パーセントにとどまっているなどと主張し、競争の実質的な制限が生じたと認めるには合理的な疑いが残る旨主張している。しかしながら、前記⑵の検討のほか、Hの意向に反する入札が行われた経緯、予定価格の決定経緯等に照らせば、弁護人が主張する事情は、いずれも、競争の実質的な制限が生じたことに合理的な疑 いを生じさせる事情とは言えず、弁護人の主張は採用できない。 4⑴ 次に、本件基本合意の対象である一定の取引分野の範囲について検討する。 ⑵ア弁護人は、本件基本合意の対象には、本件実施業務及び本件本大会業務は含まれない旨主張しているので、まず、その点について検討する。 イ組織委員会は、前記第2の3の経緯により本件計画業務を一般競争入札によ り発注することになったが、計画業務の受注事業者に実施業務及び本大会業務を随意契約に まず、その点について検討する。 イ組織委員会は、前記第2の3の経緯により本件計画業務を一般競争入札によ り発注することになったが、計画業務の受注事業者に実施業務及び本大会業務を随意契約により発注することにつき組織委員会内で異論はなく、前述のとおりこの点を踏まえて本件計画業務の事業者決定基準が定められただけでなく、実際、ほとんどの会場案件及び競技について、計画業務を受注した事業者が、その後の実施業務及び本大会業務を随意契約により受注するに至っている。このように、組織委員会 にとって、本件計画業務は、その後の本件実施業務、本件本大会業務と同一の事業 者が受注する一連のものとして認識されており、同認識の下、本件計画業務の発注がされたものと認められる。そして、その理由は、前記の経営会議の場におけるHやI3の発言に端的に表れているとおり、前記第2の1⑴のとおり、テストイベントは、そもそも本大会の運営能力向上のため、本大会で使用する競技会場において行うものであったからである。 ウ本件基本合意に参加した各事業者にとっても、テストイベントが本大会の運営能力向上のため、本大会で使用する競技会場において行うものであることは明らかだったのであるから、それらの関係性等に照らし、テストイベント業務を受注した事業者が本大会業務を受注するのが合理的であると考えられていたと認められ、そのこと自体は、被告人B1も認めるところである。そして、各事業者は、平成3 0年4月以降、前記事業者決定基準等公表された資料を見た上で入札に臨み、その際、特段、当該基準の趣旨等について疑問等が述べられたことはうかがえない。さらに、その後も、各事業者は、計画業務を受注していない競技・会場について本大会業務を受注するために営業活動を行うなど、計画業務と 特段、当該基準の趣旨等について疑問等が述べられたことはうかがえない。さらに、その後も、各事業者は、計画業務を受注していない競技・会場について本大会業務を受注するために営業活動を行うなど、計画業務とその後の業務の受注者が異なり得ることを前提とした活動をしたこともうかがえない。以上の事情を踏まえ れば、各事業者においても、本件基本合意をした際には、計画業務は、その後の実施業務及び本大会業務と一連のものとして同一の事業者が受注する可能性が高いことを前提としていたと認められる。各事業者の従業者は、Hやその意を受けたCのC1との面談において、計画業務の受注事業者については、同業務の実施等に関し特に問題がなければ、同一の会場案件や競技に関するその後の実施業務及び本大会 業務も受注することが望ましいなどと伝えられていたと認められることも、これを裏付ける。 エ以上によれば、本件基本合意の対象は、本件計画業務に加え、その後の本件実施業務及び本件本大会業務も含まれていたと認められ、弁護人の主張には理由がない。 オこれに対し、弁護人は、①組織委員会が本件計画業務、本件実施業務及 び本件本大会業務を一体のものとみていたのであれば、全ての契約を一般競争入札により発注すればよいのにそれをしていない、②仮にそうした発注をした場合には、計画業務等で支障があったときに、委託事業者を変更できなくなるなどの支障があったというのだとしても、契約条項や予算の支出方法の工夫により、そういった支障には十分対応できる、③仮に組織委員会が一体のものとみていた場合には、 全体を通じての金額を削減するため、計画業務の金額を削減する方向で検討するはずであるが、計画業務についての予算の大枠を確保する上で依頼した見積り金額をより高くするようにと要求し いた場合には、 全体を通じての金額を削減するため、計画業務の金額を削減する方向で検討するはずであるが、計画業務についての予算の大枠を確保する上で依頼した見積り金額をより高くするようにと要求したものもあるなどと主張する。しかしながら、①②③については、いずれも組織委員会が本件計画業務、本件実施業務及び本件本大会業務を一体のものとみていた事実と十分両立する事実であり、前記イの認定を左右す るものとはいえない。なお、③については、弁護人が指摘する事実に関する経緯を詳細に見ると、計画業務の発注を担当する部署が、組織委員会内での予算の大枠を確保するために各事業者から見積書の提出を受けていた中で、特定の事業者の提出した見積額が他の事業者と比較して低額に過ぎたことからその増額を求めたに過ぎないと認められるから、弁護人が指摘するように、計画業務の発注に関し、全体を 通じた金額削減の意識が働いていなかったことを示す事実とは言い難いし、予定価格を算定するために事業者に依頼した見積書については反対に、見積額の減額を求めた事実も認められる。以上によれば、弁護人の指摘にはいずれも理由がない。 これに加え、弁護人は、新型コロナウイルスによる大会延期に伴う業務や暑さ対策の業務等については、本件基本合意時点では予測できていなかったのであ るから、本件基本合意の対象として一定の取引分野には含まれない旨主張する。しかしながら、これまでの検討に照らせば、各事業者は、各会場案件の計画業務及び特段の事情がない限り同業務の受注事業者が負担するものと考えられていた業務について、本件基本合意をしたというべきである。弁護人が指摘する業務は、いずれも、当該会場案件における計画業務の受注事業者が負担するものであったと認める ことができ、この点でも弁護人の主 業務について、本件基本合意をしたというべきである。弁護人が指摘する業務は、いずれも、当該会場案件における計画業務の受注事業者が負担するものであったと認める ことができ、この点でも弁護人の主張には理由がない。 さらに、弁護人は、ボクシングに係る会場案件(別表番号18(別表省略))については、テストイベント計画業務の入札が不調に終わり、被告会社に同業務が随意契約により発注されるなど発注の経緯が他の会場案件と異なっていること、Hから受注するのが望ましいと考えられていたEは、同会場案件の受注を望まない旨Hに伝えていたこと等を指摘し、合意の対象に含まれていない旨主張してい る。 しかしながら、前述したとおり、各事業者の従業者は、Hらとの面談等を通じて、Hが、会場案件に応じて受注が望ましいと考えている事業者がいることを伝えられ、自らが受注を希望しない競技に係る会場案件についても、Hが各事業者に対し受注希望等を聴取していることが分かった。そうすると、各事業者は、仮に自らが受注 を希望しない競技に係る会場案件であったとしても、これに係る他の各事業者の受注希望の有無等も踏まえた上で、Hらが受注希望の聴取等をしており、その過程でHの意向が示されていると認識していたと認められる。 以上に照らせば、ボクシングに係るものを含む全ての会場案件は、関係事業者7社が、他の事業者の入札行動等を予測し、それと協調する入札行動等を行う意思を 形成するに当たって、その受注希望の有無等に関わらず、いわば不可分一体のものとなっていたというべきであり、本件基本合意の対象であったと認めることができる。弁護人の主張には理由がない。 5 以上に照らせば、「罪となるべき事実」記載のとおり、被告会社は、他の事業者と本件基本合意をすることや、これに り、本件基本合意の対象であったと認めることができる。弁護人の主張には理由がない。 5 以上に照らせば、「罪となるべき事実」記載のとおり、被告会社は、他の事業者と本件基本合意をすることや、これに従った個別調整行為により、相互にその 事業活動を拘束、遂行し、他の事業者と共同して、別表記載(別表省略)の各会場案件における計画業務、実施業務及び本大会業務の受注という一定の取引分野における競争を実質的に制限したと認められ、不当な取引制限罪が成立するというべきである。 よって、「罪となるべき事実」記載のとおりの事実を認めることができる。 (量刑の理由) 1 本件は、東京2020大会に関する入札について、関係事業者7社の従業者らが、発注者である組織委員会の幹部職員や、その意を受けた関係事業者の従業者らを通じるなどして、談合したという事案である。 2⑴ 国内外から注目を集め大規模に開催された東京2020大会の準備・運営に関する事案で、合意等の対象となった契約等の規模は委託先事業者に対して支払 われた実績額で合計約437億円と多額に及んでいる。また、本件には東京2020大会等大規模スポーツイベントの運営等を行うことのできる事業者の多くが参加しており、本件計画業務の入札に参加した全事業者11社、本件計画業務を受注するに至った事業者9社のうち7社を占める。これら複数の大手事業者を含む関係事業者7社の多数の従業者が関与して行われたものであることに照らしても、大規模 な入札談合事案と言える。そして、受注予定事業者以外の事業者が応札を行った例はあるものの、結果として、本件合意の対象となった全26の各会場案件のうち、24において受注予定事業者が受注するに至り、更にそのうち16については、受注が望ましいとされた事業者 業者が応札を行った例はあるものの、結果として、本件合意の対象となった全26の各会場案件のうち、24において受注予定事業者が受注するに至り、更にそのうち16については、受注が望ましいとされた事業者のみが入札に参加して必要書類を提出するに至ったこと等を考慮すれば、結果として公正かつ自由な競争を阻害した程度も大きいと言う べきである。 ⑵ 被告人B1は、前記組織委員会幹部職員との面談等を通じて、同職員において競技大会が行われる会場案件ごとに、受注が適切と考えている事業者がいること等を認識した上で、被告会社として東京2020大会に関係する業務を受注するため、同職員の意向に沿った入札等の行動をとろうと考え、本件に加担するに至った。 従業者として被告会社の利益を図るためとはいえ、安易な選択と言わざるを得ず、非難は免れない。結果として、被告会社は、2つの会場案件について受注予定事業者となって一連の業務を受注し、その売上額も、証拠上、前記2つの会場案件のみに関すると認められる費目に限ってみても、20億円を下らない。 3⑴ しかしながら、本件における合意の内容は、判示のとおり基本的に受注予 定事業者のみが入札を行うこと等にとどまり、受注予定事業者に確実に受注させる ため入札参加の有無や入札価格等について情報交換がされた事実までは認められず、競争を制限する程度は、必ずしも強くはない。 ⑵ さらに、関係事業者7社の中でも最大手の事業者以外の事業者としては、発注者である組織委員会の幹部職員のほか、当該最大手事業者の意向に一定程度気を配りつつ、事業活動を行わざるを得ない状況が生じていた事情が認められる。被告 人B1としても、そのような状況下において、東京2020大会に関係する業務を受注するため、前記職員等関係者からの働き掛け りつつ、事業活動を行わざるを得ない状況が生じていた事情が認められる。被告 人B1としても、そのような状況下において、東京2020大会に関係する業務を受注するため、前記職員等関係者からの働き掛けを契機に本件に加担するに至った面があることは否定できず、以上の経緯は、被告会社及び被告人B1の刑責を考えるにあたって一定程度考慮すべきである。 4 その上で、被告人B1及び被告会社には前科前歴がなく、被告人B1は、捜 査段階から事実経過について供述した上で、被告会社代表者と共に、仮に本件が談合に当たるというのであれば反省すると供述していること、被告人B1については前述のとおり個人的な利得を目的として本件に加担したものではないこと等の事情も認められる。 5 以上の事情を総合考慮し、主文のとおり、被告会社及び被告人B1に対して 主文のとおり刑を定め、被告人B1に対しては、刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑被告会社につき罰金2億円、被告人B1につき懲役1年6月)令和6年7月11日東京地方裁判所刑事第16部 裁判長裁判官安永健次 裁判官花田隆光 裁判官足立洋平

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