令和5年2月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第17104号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年12月5日判決原告株式会社マネースクエアHD同訴訟代理人弁護士伊藤真平井佑希丸田憲和牧野知彦同訴訟代理人弁理士石井明夫同補佐人弁理士佐野弘被告株式会社外為オンライン同訴訟代理人弁護士木村久也中島慧岡田紘明茨城雄志松原敦也 主文 1 被告は、原告に対し、2014万9093円及びこれに対する平成31年3月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを50分し、その49を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告は 用は、これを50分し、その49を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告は、原告に対し、11億9000万円及びこれに対する平成31年3月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、発明の名称を「金融商品取引管理装置、金融商品取引管理システム、金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法」とする発明に係る特 許(特許第6154978号。以下「本件特許」といい、本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である原告が、被告に対し、被告が外国為替取引管理方法である「iサイクル」(以下「被告サービス」という。)を別紙被告サーバ目録記載のサーバ(以下「被告サーバ」という。)からインターネット回線等を通じて顧客に提供したところ、被告サーバが本件特許の特許請求の 範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属するものであり、被告サーバの使用が本件発明の実施に当たると主張して、不法行為に基づき、11億9000万円(特許法102条1項、2項又は3項による損害金並びに弁護士費用及び弁理士費用。なお、同条1項又は3項による損害金との関係では、一部請求である。)及びこれに対する不法行為後の日である平成31 年3月4日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 なお、本件訴訟に先立ち、原告は、本件と同様に、被告サーバの使用が本件発明の実施に当たると主張して、被告に対し、被告サーバの使用の差止めを求めて訴えを提起したところ、第1審判決がこれを認容する判決を言い渡し 件訴訟に先立ち、原告は、本件と同様に、被告サーバの使用が本件発明の実施に当たると主張して、被告に対し、被告サーバの使用の差止めを求めて訴えを提起したところ、第1審判決がこれを認容する判決を言い渡した後、控訴 審判決が控訴を棄却する判決を言い渡し、同判決は、令和元年10月24日に確定した。このような経過を踏まえ、原告は、被告が侵害論を争うのは訴訟上の信義則に照らし許されない旨主張していたところ、当事者双方において、少なくとも充足論については争点としないことが確認された(第5回弁論準備手続調書参照)。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨に より認められる事実をいう。なお、以下において、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)⑴ 当事者等(甲4、5、19)ア原告は、外国為替取引業、外国為替取次業務等の事業を営む会社等の株式等を保有することにより、当該会社等の事業活動を支配又は管理するこ と等を目的とする株式会社である。 なお、原告は、本件特許が登録された日である平成29年6月9日から、後記⑶のとおり、被告が被告サーバの使用を終了した日である平成31年3月2日までの期間(以下「本件期間」という。)を通じて、金融商品取引業者としての登録を受けておらず、外国為替証拠金取引(以下「FX取 引」という。)業を営んでいなかった。 株式会社マネースクエア(以下「原告子会社」という。)は、FX取引等を事業内容とする株式会社であり、原告の完全子会社である。 イ被告は、外国為替に関する業務等を目的とする株式会社である。 ⑵ 本件特許権及び本件発明等(甲6) ア本件特許権原告は、以下の本件特許に係 であり、原告の完全子会社である。 イ被告は、外国為替に関する業務等を目的とする株式会社である。 ⑵ 本件特許権及び本件発明等(甲6) ア本件特許権原告は、以下の本件特許に係る本件特許権を有している(以下、本件特許の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書等」という。)。 発明の名称金融商品取引管理装置、金融商品取引管理システム、金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法 登録番号特許第6154978号出願日平成29年4月4日分割の表示特願2015-222090の分割原出願日平成26年5月1日優先日平成26年4月3日(以下「本件優先日」という。) 登録日平成29年6月9日 イ本件発明本件特許の特許請求の範囲の請求項1(本件発明)の記載は、以下のとおりである。 「相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための金融商品取引管理装置であって、 前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段と、前記買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段と を有する注文情報生成手段と、前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え、前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は、それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報であり、前記注文情報生成手段は、前記複数の売り注文情報を一の注文手続で生成 し、前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定 り、前記注文情報生成手段は、前記複数の売り注文情報を一の注文手続で生成 し、前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、前記注文情報生成手段は、前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて、前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格 だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを特徴とする金融商品取引管理装置。」ウ本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると、以下のとおりである。 A 相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための金融商 品取引管理装置であって、 B 前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段と、C 前記買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段と D を有する注文情報生成手段と、E 前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え、F 前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は、それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報であり、 G 前記注文情報生成手段は、前記複数の売り注文情報を一の注文手続で生成し、H 前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、前記注文情報生成手段は、前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて、 前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを特徴とするI 金融商品取引管 手段の前記検知の情報を受けて、 前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを特徴とするI 金融商品取引管理装置。 ⑶ 被告の行為(甲7、8、乙1) 被告は、業として、平成26年10月1日から平成31年3月2日まで、被告サーバからインターネット回線等を通じて、被告サービスを顧客に提供した。 ⑷ 前訴の経過等(甲1ないし3、乙7ないし9、49)ア原告は、平成29年7月19日、被告に対し、被告サーバは本件発明の技術的範囲に属し、被告サーバの使用が本件特許権を侵害すると主張して、被 告サーバの使用の差止めを求める訴訟(以下「前訴」という。)を提起した。 これに対し、被告は、前訴において、本件特許の無効理由として、特開2011-76511号公報(乙9。なお、前訴における乙4に当たる。以下「乙9文献」という。)に記載された発明(以下「乙9発明」という。)を主引例とする進歩性欠如、米国特許出願公開第2002/0194106号明細書(乙7。なお、前訴における乙3に当たる。以下「乙7文献」という。) に記載された発明(以下「乙7発明」という。)を主引例とする進歩性欠如、又は米国特許出願公開第2003/0167224号明細書(乙8。なお、前訴における乙6に当たる。以下「乙8文献」という。)に記載された発明(以下「乙8発明」という。)を主引例とする進歩性欠如等を理由とする特許無効の抗弁を主張していた。 イ前訴の第1審裁判所(東京地方裁判所平成29年(ワ)第24174号)は、平成30年10月24日、原告の請求を認容する判決を言い渡した(以下、同判決を「前訴の第1審判決」という。)。 前訴の第1審判決に 審裁判所(東京地方裁判所平成29年(ワ)第24174号)は、平成30年10月24日、原告の請求を認容する判決を言い渡した(以下、同判決を「前訴の第1審判決」という。)。 前訴の第1審判決に対して被告が控訴したところ、前訴の控訴審裁判所(知的財産高等裁判所平成30年(ネ)第10085号)は、令和元年10 月8日、被告の控訴を棄却する判決を言い渡し、同判決は、同月24日、確定した(以下、同判決を「前訴の控訴審判決」という。)。 ⑸ 先行文献(乙5ないし8)本件優先日である平成26年4月3日より前に、以下の公刊物が存在した。 ア発明の名称を「金融商品取引システム、プログラム」とする公開特許公報 (特開2013-232051、平成25年11月14日公開。乙5。以下、「乙5文献」といい、乙5文献に記載された発明を「乙5発明」という。)イ発明の名称を「金融商品取引管理装置、プログラム」とする公開特許公報(特開2011-238075、平成23年11月24日公開。乙6。以下、乙6に記載された発明を「乙6発明」という。) ウ発明の名称を「株式トレード指値注文カップルリンク(LOCK)」とす る米国特許出願公開第2002/0194106号明細書(2002年12月19日公開。(乙7文献))エ発明の名称を「取引注文の連続実行システム」とする米国特許出願公開第2003/0167224号明細書(2003年9月4日公開。 (乙8文献))⑹ FX取引の仕組み(乙2ないし4、66、67) ア FX取引の意義FX取引は、証拠金を預託し、差金決済(元本に相当する金銭の受渡しを行わず、買い付けの対価と売り付けの対価の差額の授受により決済することをいう。以下同じ。)により外国通貨の売買を行う金融 意義FX取引は、証拠金を預託し、差金決済(元本に相当する金銭の受渡しを行わず、買い付けの対価と売り付けの対価の差額の授受により決済することをいう。以下同じ。)により外国通貨の売買を行う金融取引であるため、総取引額の金銭の受渡しは必要とされず、売買(デリバティブ取引の当事者に なる(ポジションを持つ)という内容のものである。)の損益の受渡しのみで取引が完結する。そして、一般的に、ポジションを保有するための注文を「新規注文」と、保有したポジションを決済するための注文を「決済注文」と、それぞれいう。 イ FX取引における注文の種類 成行注文成行注文(「クイックトレード」ともいう。以下同じ。)は、あらかじめ注文の値段を指定せずに行う注文方法である。 指値注文、逆指値注文指値注文及び逆指値注文は、指定レートに到達した時点で自動的に注文 が成立する注文方法である。買い注文では、現在のレートより低いレートを指定し、そのレート以下になった時点で注文が成立するものが指値注文で、その逆が逆指値注文であり、売り注文では、現在のレートより高いレートを指定し、そのレート以上になった時点で注文が成立するものが指値注文で、その逆が逆指値注文である。 イフダン注文 イフダン注文(「イフダンオーダー」ともいう。以下同じ。)とは、買い又は売りの新規注文と、その注文が約定した場合に自動的に有効となる売り又は買いの決済注文をセットで発注する方法である。イフダン注文では、まず新規注文が有効な注文となり、これが約定すると同時に決済注文が有効な注文となる。 OCO注文OCO(オーシーオー)注文とは、2つの注文(指値注文、逆指値注文)を同時に出して 規注文が有効な注文となり、これが約定すると同時に決済注文が有効な注文となる。 OCO注文OCO(オーシーオー)注文とは、2つの注文(指値注文、逆指値注文)を同時に出しておき、一方が成立すると他方がキャンセルされる注文方法である。 「クイック+OCO」注文 「クイック+OCO」(クイックオーシーオー)注文は、クイックトレードとOCO注文をセットで発注する注文方法である。 「イフダン+OCO」注文「イフダン+OCO」(イフダンオーシーオー)注文は、イフダン注文とOCO注文をセットで発注する注文方法である。 2 争点⑴ 本件特許の無効理由の有無(争点1)ア乙5発明を主引例、乙6発明を副引例とする進歩性の欠如(無効理由1)イ乙5発明を主引例、乙7発明又は乙8を副引例とする進歩性の欠如(無効理由2) ⑵ 損害額等(争点2)ア特許法102条1項に基づく損害額等(争点2-1) 特許法102条1項の類推適用の可否(争点2-1-1)特許法102条1項に基づく損害額(争点2-1-2)イ特許法102条2項に基づく損害額等(争点2-2) 特許法102条2項の適用の可否(争点2-2-1) 特許法102条2項に基づく損害額(争点2-2-2)ウ特許法102条3項に基づく損害額等(争点2-3)⑶ 消滅時効の成否(争点3)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件特許の無効理由の有無)について (被告の主張)⑴ 進歩性の欠如についてア一致点及び相違点本件発明と乙5発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 1 争点1(本件特許の無効理由の有無)について (被告の主張)⑴ 進歩性の欠如についてア一致点及び相違点本件発明と乙5発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 一致点 相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための金融商品取引管理装置であって、前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段と、前記買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済 する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段とを有する注文情報生成手段と、前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え、 前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は、それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報であり、前記注文情報生成手段は、前記複数の売り注文情報を一の注文手続で生成し、前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の売り注文の うち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、 前記注文情報生成手段は、前記約定検知手段の前記検知の情報を受け、新たな売り注文方法を生成する金融商品取引管理装置相違点最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知した際に生 成される新たな売り注文情報に含まれる売り注文価格が、本件発明においては、「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い」のに対し、乙5発明においては、「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格」とされている点(すなわち、乙5発明は、所定価格だけ売り注文価格を上昇させるという処理を行わない点) 所定価格だけ高い」のに対し、乙5発明においては、「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格」とされている点(すなわち、乙5発明は、所定価格だけ売り注文価格を上昇させるという処理を行わない点) 原告の主張についてa 原告は、乙5発明のように、単に他の価格のペアと同様にリピートさせるために「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知」することと、本件発明のように「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたこと」に着目し、これを発注を繰り返す価格帯をシフトするこ との契機として捉えることとは、検知の目的やそれを受けた動作が全く異なり、技術思想として全く異なるものであるから、この点を両発明の一致点として把握すべきではないと主張する。 しかしながら、本件発明に係る特許請求の範囲には、「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると」と記載されている にすぎず、原告が述べる「検知の目的」は一切記載されていない。すなわち、特許請求の範囲には、「単に他の価格のペアと同様にリピートさせるために『最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知』すること」等を除外する旨の記載は存在せず、そのような構成も、本件発明の技術的範囲に含まれる。 そうすると、「検知の目的」が相違点を構成するという原告の主張は、 本件発明に係る特許請求の範囲の記載を離れたものであり、明らかに失当である。 b 原告は、コンピュータを用いた処理において、何かを検知するのは、それを受けて何かの処理を行うためであるから、検知から処理までの流れを有機的一体の構成として把握すべきであって、その一部のみを恣意 的に抜き出して技術思想を把握することは許されないなどと主張する。 しかしながら、「有 ためであるから、検知から処理までの流れを有機的一体の構成として把握すべきであって、その一部のみを恣意 的に抜き出して技術思想を把握することは許されないなどと主張する。 しかしながら、「有機的一体の構成」である場合とそうでない場合とで、コンピュータ上の処理としていかなる違いが生じるのか全く不明である。プログラム上は、単に「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知」した後に次の処理を行うという形で設計されるにす ぎず、この点に関して本件発明と乙5発明との間に違いはない。また、「有機的一体の構成」などという文言は、本件発明に係る特許請求の範囲には存在しないし、本件明細書等にもそのような記載はない。 イ相違点の容易想到性 乙5発明に乙6発明を組み合わせる構成について(無効理由1) a 乙5発明に乙6発明を組み合わせると、相違点に係る本件発明の構成に至ること⒜ 乙6発明の内容は、相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための金融商品取引管理装置であって、前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成 手段と、前記買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する売り注文を行うための売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段と、前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え、前記相場価格が変動して、前記約定検知手段において前記売り注文が約定されたことを検知すると、前記売り注 文の売り注文価格よりも更に所定価格(トレール幅情報)だけ高い売 り注文価格の情報を含む注文情報を生成することを特徴とする金融商品取引管理装置というものである。 そうすると、乙6発明は、相場価格が変動した場合に、新たに 格(トレール幅情報)だけ高い売 り注文価格の情報を含む注文情報を生成することを特徴とする金融商品取引管理装置というものである。 そうすると、乙6発明は、相場価格が変動した場合に、新たに生成される売り注文情報に含まれる売り注文価格を、相場価格の変動に応じて追従するように、従前のものより所定価格(トレール幅情報)だ け上昇させるという構成を備えている。 ⒝ 原告の主張についてⅰ 構成要件Hの「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」について(ⅰ) 原告は、乙6発明について、前訴の控訴審判決の判示を根拠と して、「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」(構成要件H)について、「最も高い売り注文価格の売り注文」の約定から「さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報」の生成に至るまでの一連の処理が、その全ての過程においてそれぞれ原因と結果の関係(因果関係)で結ばれて いる必要があると主張する。 しかしながら、前訴の控訴審判決は、原告が主張する文言解釈を全く述べておらず、むしろ、前訴の控訴審判決は、新たな注文情報が時間的にみて決済注文の約定の「のちに」生成されていることのみを認定して、決済注文の約定の検知に「基づいて」新 たな注文情報が生成されていると認定している。また、本件明細書等には、原告が主張する文言解釈の裏付けとなる記載は存在しない。 しかるに、乙6文献の実施例の構成は、「第一注文」(新規注文)が約定し(ステップS21)、「第二注文」(決済注文)が 約定すると(ステップS23)、「新たな注文情報群生成」(ス テップS27)が行われるというものである。 乙6文 プS23)、「新たな注文情報群生成」(ス テップS27)が行われるというものである。 乙6文献の【図4】 また、相場価格が注文情報群の生成時点における相場価格よりもトレール幅以上に上昇したかどうかが判断され(ステップS31)、この条件を満たす場合には、繰返し回数が最低繰返し 回数(トレールを行わずに取引する最低回数をいう。以下同じ。) に達しているかどうかが判断され(ステップS32)、この条件を満たす場合には、既存の注文情報群の注文価格にトレール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新たな注文情報が生成される(ステップS33)。 乙6文献の【図5】そして、乙6文献の段落【0101】の「態様2」に係る発明には、「相場価格の変動とほぼ同時に、ステップS33、S35の処理が行われる。」という態様が開示されている。そうすると、 相場価格の変動とほぼ同時にステップS33の処理を行うこと とした場合、次の構成となる。 ① 第一注文(新規注文)が約定し(ステップS21)、「第二注文」(決済注文)が約定すると(ステップS23)、「新たな注文情報群生成」(ステップS27)が行われるという処理が、繰返し回数が最低繰り返し回数に達するま で繰り返される。 ② 繰返し回数が最低繰返し回数に達すると、相場価格の変動とほぼ同時に、既存の注文情報群の注文価格にトレール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新たな注文情報が生成される。 なお、既存の注文情報 し回数が最低繰返し回数に達すると、相場価格の変動とほぼ同時に、既存の注文情報群の注文価格にトレール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新たな注文情報が生成される。 なお、既存の注文情報群の注文価格のトレール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新たな注文情報を生成するという処理は、「第二注文」(決済注文)の約定よりも後に行われる。また、FX取引の相場は、常に変動しているから、「相場価格の変動とほぼ同時に」とは、繰返し回数が最低繰返し回数に達した 時点とほぼ同時である。 したがって、乙6発明の段落【0101】の「態様2」に係る発明は、第二注文(決済注文)が約定すると、それとほぼ同時に、既存の注文情報群の注文価格にトレール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新たな注文情報を生成するという構成を備え ている。このように、乙6発明における新たな売り注文情報の生成は、既存の売り注文が約定された後に行われるものであるから、構成要件Hの「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」を充足する。 これに対して、原告は、乙6文献の段落【0101】の「態様 2」の記載に関して、何か特定の具体的な発明を認定すること は困難であると主張する。 しかしながら、乙6文献の段落【0101】には、相場価格が注文情報群の生成時点における相場価格よりもトレール幅以上に上昇したという条件が成就した場合に、ステップS33、S35の処理を行うという原則形態について、前者の条件を態様 1~3に変更してもよいことが記載されている一方で、条件が成就した場合に行われる処理の内容を変更することは、一切記載されていない。そうすると、乙6文献の段落【0101】の「態様2」に係る構成は、相場価格の変動とほぼ同時にステッ 載されている一方で、条件が成就した場合に行われる処理の内容を変更することは、一切記載されていない。そうすると、乙6文献の段落【0101】の「態様2」に係る構成は、相場価格の変動とほぼ同時にステップS33(及びS35)の処理(既存の注文情報群の注文価格にトレ ール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新たな注文情報を生成すること)を行う構成であることは明らかである。 (ⅱ) 仮に、乙6文献の段落【0101】の「態様2」の記載を考慮することなく乙6発明を認定したとしても、構成要件Hの「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」を充足する(予備 的主張)。すなわち、決済注文の約定と新たな注文情報の生成との間に、他の何らかの処理が介在していたとしても、新たな注文情報が時間的にみて決済注文の約定の「のちに」生成されていれば、構成要件Hの「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」を充足するところ、乙6文献に記載された実施例にお いては、「第二注文」(決済注文)が約定し、繰返し回数が最低繰返し回数に達した場合にのみ、「売り注文情報を生成する」という処理が行われるのであり、新たな注文情報は、時間的にみて決済注文の約定の「のちに」生成されるから、乙6発明は上記を充足する。 (ⅲ) また、仮に、原告が主張するように、前訴の控訴審判決の「基 づいて」という文言は、原因と結果の関係の存在を意味していると解したとしても、当該判示自体が、「『前記約定検知手段』の『前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定された』との『検知の情報』を受けたことに基づいて、『さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文 情報を生成する』構成」と述べていることに照らせば、原因と結果の関係が要求されるの 定された』との『検知の情報』を受けたことに基づいて、『さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文 情報を生成する』構成」と述べていることに照らせば、原因と結果の関係が要求されるのは、売り注文の約定が検知されるというステップと「さらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」というステップの間である。そうすると、前者から後者に至るまでの一連の流れを複数の過程 に細分化し、その個々の過程の全てがそれぞれ原因と結果の関係で結ばれている必要があると解することはできない。 そして、乙6発明において、ステップS33の処理は、「第二注文」(決済注文)の約定を条件とするものであり、「売り注文の約定」がなければ、「さらに所定価格だけ高い売り注文価格の 情報を含む売り注文情報」の生成という事象が発生しないのであるから、原因と結果の関係が存在する。 したがって、いずれにしても、乙6発明が、「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」(構成要件H)に係る構成を備えていることに変わりはない。 (ⅳ) さらに、仮に、原告の主張を前提としたとしても、乙6文献の段落【0101】の「態様2」に係る発明は、第二注文(決済注文)が約定すると、それとほぼ同時に、既存の注文情報群の注文価格にトレール幅情報を加えた額を注文価格情報とする新たな注文情報を生成するという構成を備えている。 したがって、売り注文の約定と売り注文よりも更に所定価格 だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報の生成との間の一連の処理が、その全ての過程においてそれぞれ原因と結果の関係で結ばれており、「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」(構成要件H)に係る構成を備えている。 ⅱ 最低繰返し回数の 一連の処理が、その全ての過程においてそれぞれ原因と結果の関係で結ばれており、「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」(構成要件H)に係る構成を備えている。 ⅱ 最低繰返し回数の存在は、乙6発明を乙5発明に組み合わせるに 当たって何ら障害にはならないこと原告は、乙6発明は1つのイフダン注文を繰り返す発明である一方で、乙5発明は複数のイフダン注文を行うものであり、このような乙5発明に「最低繰返し回数実行」の処理を組み合わせた場合に、どのイフダン注文について「最低繰返し回数実行」を判定すればよ いのか不明であると主張するとともに、最低繰返し回数の設定の仕方によっては、最後に最低繰返し回数に達するのが最も高い売り注文価格の売り注文とは限らないことが問題であると主張する。 しかしながら、最低繰返し回数をどのように設定するかは当業者が適宜設計すればよい事項にすぎず、乙5発明に乙6発明を組み合 わせるに当たって何ら障害となるものではない。すなわち、最低繰返し回数をどのように設定したとしても、最も高い売り注文価格の売り注文が約定した時点で最低繰返し回数に達すれば、それを受けて最も高い売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することになるため、構成要件 Hの構成を備えることは明らかである。 ⅲ 構成要件Hの「売り注文情報を生成する」について原告は、乙6文献の段落【0077】では、「新たな注文情報を生成する」ではなく「新たな注文情報とする」と記載されていることから、乙6文献には「新たな注文を生成する」という構成の開示 がないと主張する。 しかしながら、前訴の控訴審判決によれば、およそ売り注文の内容に関する情 る」と記載されていることから、乙6文献には「新たな注文を生成する」という構成の開示 がないと主張する。 しかしながら、前訴の控訴審判決によれば、およそ売り注文の内容に関する情報であれば、「売り注文情報」に該当する。しかるに、乙6文献の段落【0077】で想定されている動作は、新たに第一注文情報及び第二注文情報を生成した上で元の情報と置き換えるというものであることは明らかであるから、乙6文献には、「売り 注文情報」を生成するという構成が開示されている。なお、原告は、「変更」と「生成」とは異なる概念であると主張するようであるが、情報の変更は、新たな情報を生成した上で元の情報と置き換えることであるから、情報の変更を行うに当たり、新たな情報の生成が行われることは当然である。 ⅳ 本件発明及び乙6発明をそれぞれ「シフト機能」及び「トレール機能」と抽象化して比較することは誤りであること原告は、本件発明は「シフト機能」に係る発明であり、乙6発明は「トレール機能」に係る発明であるとした上で、乙6発明のトレール機能に係る発明は、相場価格の変動という約定とは異なる要素 を契機として、未約定の注文情報の注文価格情報を変更するものであるから、乙5発明に乙6発明を組み合わせても本件発明に至ることはないと主張する。 しかしながら、抽象的に「シフト機能」と「トレール機能」の構成の違いを議論することに意味はない。 ⒞ したがって、乙5発明に乙6発明を組み合わせると、前記相違点に係る構成となる。 b 乙5発明に乙6発明を組み合わせる動機付けについて⒜ 以下のとおり、当業者には、乙5発明に乙6発明を組み合わせる動機付けが存在した。 ⅰ 乙5発明及 なる。 b 乙5発明に乙6発明を組み合わせる動機付けについて⒜ 以下のとおり、当業者には、乙5発明に乙6発明を組み合わせる動機付けが存在した。 ⅰ 乙5発明及び乙6発明は、その属する技術分野及び発明の課題が 完全に同一である上、各引用文献に記載されたFX取引の管理装置の構成の大部分が共通している。 そうすると、乙5文献及び乙6文献の記載に接した当業者において、乙5発明に乙6発明を組み合わせることについての強い動機付けが存在したことは、明らかである。 ⅱ 乙5文献の段落【0155】には、イフダン注文を繰り返すシステムにおいて、注文の属性情報としてトレール幅情報を設け、相場価格がトレール幅情報以上に上昇又は下落した際に、注文価格をトレール幅情報の価格分だけ上昇又は下落させることにより、注文価格を相場価格に追従させるという技術思想が記載されている一方 で、乙6文献にも、イフダン注文を繰り返すシステムにおいて、注文の属性情報としてトレール幅情報を設け、相場価格がトレール幅情報以上に上昇又は下落した際や、相場価格の変動とほぼ同時に、注文価格をトレール幅情報の価格分だけ上昇又は下落させることにより、注文価格を相場価格に追従させるという構成が記載されて いる。 そうすると、乙5文献には、乙6発明を組み合わせることについての示唆が存在するから、当業者において、乙5発明に乙6発明を組み合わせることについての強い動機付けが存在したことは、明らかである。 ⒝ 原告の主張についてⅰ 原告は、技術分野の共通性について、同一の技術分野に属するからといって組合せの動機付けがあるとは限らないと主張する。 しかしながら、被告は、同一の ⒝ 原告の主張についてⅰ 原告は、技術分野の共通性について、同一の技術分野に属するからといって組合せの動機付けがあるとは限らないと主張する。 しかしながら、被告は、同一の技術分野に属することのみをもって組合せの動機付けがあると主張しているわけではない。 ⅱ 原告は、ある価格帯の中で複数のイフダン注文を行うことでトラ ップを仕掛け、細かい利益を繰り返し得るという乙5発明と、1組のイフダン注文を繰り返す中で、相場変動に応じて注文価格を変更する乙6発明とでは、解決課題が異なると主張する。 しかしながら、前記⒜ⅰのとおり、乙5発明の課題と乙6発明の課題は、完全に同一のものであって、原告の主張は、乙5発明と乙 6発明の課題が異なることではなく、同一の課題を解決するための手段が異なることを指摘するにすぎない。また、原告は、乙5発明の課題について主張しているものの、乙5文献には原告が述べるような記載は一切存在していない。 さらに、原告は、乙6発明の課題について、乙6発明は、1組の トレール注文を繰り返すのみであって、乙5発明のように等しい値幅で複数のイフダン注文のトラップを仕掛けるという技術思想はなく、売り注文が決済する前に相場価格が下落に転じてしまうおそれがあるという課題を解決するものではないとも主張する。 しかしながら、そもそも、乙6発明に、乙5発明のように異なる 価格で複数のイフダン注文を行いトラップを仕掛けるというような技術思想が記載されていれば、乙6発明は本件発明と全く同じ構成を有することになるため、乙5発明と組み合わせる必要すらない。 副引例中に対象となる発明の構成の一部が記載されていないことは当然であり、このことは、当該副引例発明を主引例発明に組み合 わせる動機 有することになるため、乙5発明と組み合わせる必要すらない。 副引例中に対象となる発明の構成の一部が記載されていないことは当然であり、このことは、当該副引例発明を主引例発明に組み合 わせる動機付けを否定する理由にはならない。加えて、乙5文献には、売り注文が決済する前に相場価格が下落に転じてしまうおそれがあるという課題は一切記載されておらず、そのような記載が乙6文献に存在しないことは、乙5発明に乙6発明を組み合わせる動機付けを否定する理由とはならない。 ⅲ 原告は、管理装置の構成の共通性について、いずれも原告の出願 に係る金融商品取引装置である以上、基本的な構成が共通するのは当然であると主張する。 しかしながら、当業者からすれば、管理装置の構成が全く異なる引用例同士を組み合わせるよりも、管理装置の構成がその大部分において共通している引用例同士を組み合わせる方がはるかに容易 であるから、この点が乙5発明に乙6発明を組み合わせる動機付けの根拠となることは明らかである。特に、本件においては、各引用文献に記載されたFX取引の管理装置の構成は極めて類似しているのであるから、当業者が両文献に記載された発明の組合せを試みることは当然である。 ⅳ 原告は、乙5文献の段落【0155】の記載に基づく被告の主張に対して、トレール機能は、本件発明のシフト機能とは全く別の発明であるから、トレール機能との組合せが示唆されていることを指摘したところで、本件発明に至る動機付けとは無関係であると主張する。 しかしながら、前記⒜ⅱのとおり、被告は、乙5文献と乙6文献のいずれにも全く同一の技術思想が記載されている以上、両者を組み合わせることについての強い動機付けが存在したと主張しているのである。これに対し、 ながら、前記⒜ⅱのとおり、被告は、乙5文献と乙6文献のいずれにも全く同一の技術思想が記載されている以上、両者を組み合わせることについての強い動機付けが存在したと主張しているのである。これに対し、原告は、乙5文献と乙6文献の関係ではなく、乙5文献の段落【0155】と本件発明の相違点を主張して いるにすぎず、乙5発明に乙6発明を組み合わせることの動機付けがあることを否定する理由になっていない。 また、原告は、トレール機能には様々なバリエーションが考えられるから、乙5文献の段落【0155】の記載によっても乙6発明のような態様のトレール機能との組合せが示唆されているとはい えないと主張する。 しかしながら、乙5文献の段落【0155】には、抽象的に「トレール機能」という用語が記載されているわけではなく、「属性情報としてトレール幅情報を設け、相場価格がトレール幅情報以上に上昇又は下落した際に、各注文情報・・・をトレール幅情報の価格分上昇又は下落させる構成」という、乙6文献に記載されているも のと同一の構成が記載されている。 さらに、原告は、被告の主位的主張を前提とすれば、具体的態様の異なるトレール機能を組み合わせることになり、乙5発明と乙6発明とを組み合わせる動機付けはないと主張する。 しかしながら、主引例である乙5の段落【0155】と副引例で ある乙6のいずれにも、イフダン注文を繰り返すシステムにおいて、注文の属性情報としてトレール幅情報を設け、相場価格がトレール幅情報以上に上昇又は下落した際に、注文価格をトレール幅情報の価格分だけ上昇又は下落させることにより、注文価格を相場価格に追従させるという、全く同一の技術思想が記載されているところ、 乙6文献の段落【0101】の態様2は、「注文の属性情 レール幅情報の価格分だけ上昇又は下落させることにより、注文価格を相場価格に追従させるという、全く同一の技術思想が記載されているところ、 乙6文献の段落【0101】の態様2は、「注文の属性情報としてトレール幅情報を設け、相場価格がトレール幅情報以上に上昇又は下落した際に、注文価格をトレール幅情報の価格分だけ上昇又は下落させる」という構成の変形例のうちの一つとして記載されているのであるから、当業者が乙5発明に乙6文献の段落【0101】の 態様2の構成を組み合わせることは極めて容易である。 乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせる構成について(無効理由2)a 乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせると、相違点に係る本件発明の構成に至ること ⒜ 乙7発明の内容は、相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取 引を行うためのLOCK(指値注文カップルリンク)管理モジュールであって、前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報(注文①、③、⑤)を生成する買い注文情報生成手段と、前記買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する売り注文を行うための売り注文情報(注文②、④、⑥)を生成する売り注 文情報生成手段とを有するソフトウェアインターフェースと、前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知するソフトウェアインターフェースとを備え、前記相場価格が変動して、前記ソフトウェアインターフェースにおいて、前記売り注文(注文②、④)が約定されたことを検知すると、前記ソフトウェアインターフェースは、買い注文情報 (注文③、⑤)、前記売り注文(注文②、④)の売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報(注文④、⑥)を、先行する注 トウェアインターフェースは、買い注文情報 (注文③、⑤)、前記売り注文(注文②、④)の売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報(注文④、⑥)を、先行する注文の約定を受けて、順次、生成することを特徴とするLOCK管理モジュールというものである。 また、乙8発明の内容は、相場価格の変動に応じて継続的に金融商 品の取引を行うための自動取引管理システムに使用される装置であって、前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段と、前記買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する売り注文を行うための売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段とを有する注文情報生成手 段と、前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え、前記相場価格が変動して、前記約定検知手段において、前記売り注文が約定されたことを検知すると、前記約定検知手段は、買い注文情報、前記売り注文の売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を、先行する注文の約定を 受けて、順次、生成することを特徴とする自動取引管理システムに使 用される装置というものである。 そうすると、乙7発明及び乙8発明は、いずれも、買い注文と売り注文を繰り返すシステムにおいて、新たに生成される売り注文の価格を、相場価格の変動に応じて追従していくように、従前のものより所定価格だけ上昇させるという構成を備えている。 ⒝ 原告の主張についてⅰ 原告は、乙5発明と乙7発明又は乙8発明の組合せにおいて、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知することを受けて前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文 ⒝ 原告の主張についてⅰ 原告は、乙5発明と乙7発明又は乙8発明の組合せにおいて、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知することを受けて前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を 生成するという技術思想が開示されていないと主張する。 しかしながら、乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせれば、複数の買い注文と売り注文を繰り返すシステムにおいて、最も高い売り注文価格の売り注文を含む複数の売り注文のいずれかが約定されたことを検知すると、新たな売り注文を従前のものより所 定価格だけ上昇させて生成するという相違点に係る本件発明の構成に至るのであるから、乙5発明、乙7発明及び乙8発明が「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知する」ことに着目したものであるかどうかは無関係である。 ⅱ 原告は、乙5発明の複数のイフダン注文のうち、どれについて乙 7発明や乙8発明の構成を組み合わせるのか不明であると主張する。 しかしながら、被告は、乙5発明の複数のイフダン注文の全てについて、乙7発明や乙8発明の構成を組み合わせることを主張するものである。 ⒞ したがって、乙5発明について、「前記相場価格が変動して、前記 約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知」した場合に、「前記約定検知手段の前記検知の情報を受け、前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」という構成に替えて、乙7発明又は乙8発明の「前記売り注文の売り注文価格よりもさらに 所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する 注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」という構成に替えて、乙7発明又は乙8発明の「前記売り注文の売り注文価格よりもさらに 所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」という構成を組み合わせれば、本件発明の「前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、前記注文情報生成手段は、前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて、前記複数 の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」という構成に至ることになる。 b⒜ 乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせる動機付けについて 以下のとおり、当業者には、乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせる動機付けが存在した。 ⅰ 乙5発明、乙7発明及び乙8発明は、いずれも、ユーザに利便性の高い指値注文を行わせることのできる金融商品取引システムを提供することを課題・目的とする。 ⅱ 乙5文献の段落【0155】には、イフダン注文を繰り返すシステムにおいて、注文の属性情報としてトレール幅情報を設け、相場価格がトレール幅情報以上に上昇又は下落した際に、注文価格をトレール幅情報の価格分だけ上昇又は下落させることにより、注文価格を相場価格に追従させるという技術思想が記載されている一方 で、乙7発明及び乙8発明も、買い注文と売り注文を繰り返すシス テムにおいて、新たに生成される売り注文の価格を、相場価格の変動に応じて追従していくように、従前のものより所定額だけ上昇させるという構成を備えており、乙5文献に記載された構成と同一の目的を有する。 て、新たに生成される売り注文の価格を、相場価格の変動に応じて追従していくように、従前のものより所定額だけ上昇させるという構成を備えており、乙5文献に記載された構成と同一の目的を有する。 そうすると、乙5文献には、乙7発明及び乙8発明を組み合わせ ることについての示唆が存在するから、当業者が、乙5発明に乙7発明及び乙8発明の構成を適用することは、容易に想到可能であった。 ⒝ 原告の主張についてⅰ 原告は、技術分野の共通性について、同一の技術分野に属するか らといって動機付けがあるとは限らないと主張する。 しかしながら、被告は、同一の技術分野に属することのみをもって組合せの動機付けがあると主張しているわけではない。 ⅱ 原告は、ある価格帯の中で複数のイフダン注文を行うことでトラップを仕掛け、細かい利益を繰り返し得るという乙5発明と、価格 帯という概念自体がなく、1組のイフダン注文を繰り返す中で、相場変動に応じて注文価格を変更する乙7発明や乙8発明とでは、解決課題が異なり、また、乙5文献の段落【0155】の記載によって、乙7発明や乙8発明との組合せが生じるものではないと主張する。 しかしながら、乙5発明、乙7発明及び乙8発明は、いずれも、ユーザに利便性の高い指値注文を行わせることのできる金融商品取引システムを提供することを課題・目的とするものであり、いずれも、共通の課題・目的を有するから、乙5文献には乙7発明及び乙8発明を組み合わせることについての示唆が存在する。そのため、 原告の主張は、乙5発明と乙7発明及び乙8発明の課題が異なるこ とではなく、同一の課題を解決するための手段が異なることを指摘するにすぎない。 ⅲ 原告は、乙5文献の段落【01 、 原告の主張は、乙5発明と乙7発明及び乙8発明の課題が異なるこ とではなく、同一の課題を解決するための手段が異なることを指摘するにすぎない。 ⅲ 原告は、乙5文献の段落【0155】の記載に基づく被告の主張に対して、トレール機能との組合せが示唆されているとしたところで、トレール機能とは異なるシフト機能に係る発明である本件発明 に至る動機付けがあることにはならないと主張する。 しかしながら、原告の主張の趣旨は不明といわざるを得ず、前記⒜ⅱのとおり、被告は、乙7発明及び乙8発明は、乙5文献の段落【0155】に記載された構成と同一の目的を有するから、乙5文献には、乙7発明及び乙8発明を組み合わせることについての示唆 が存在すると主張するものである。 ⅳ 原告は、乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせた場合、乙5発明において複数のトラップを仕掛けることとした技術的意義も、乙7発明や乙8発明において注文価格を変更することとした技術的意義も失わせると主張する。 しかしながら、乙5発明の課題は、「金融商品の指値注文において、システムを利用するユーザが煩雑な入力作業を行うことなく、複数の指値注文を簡易な操作で発注できて、ユーザに利便性の高い指値注文を行わせることのできる金融商品取引システムを提供すること」であり、乙7発明や乙8発明のように注文価格を変動させ ることは、むしろ、乙5発明の上記課題の解決に資することになる。 そもそも、乙5発明においては、ある価格帯に等間隔に仕掛けたトラップにつき、その価格帯を維持することも、その価格帯を等間隔に維持することも必須の構成とはされておらず、当初設定した価格帯を外れることも、注文価格の価格差が均等とならないことも問 題とされないのであるから、ある価 を維持することも、その価格帯を等間隔に維持することも必須の構成とはされておらず、当初設定した価格帯を外れることも、注文価格の価格差が均等とならないことも問 題とされないのであるから、ある価格帯に等間隔に仕掛けたトラッ プについて、ばらばらに価格変動が生じてしまうことによって、乙5発明の技術的意義が失われることにはならない。 また、原告は、乙5発明に乙7発明及び乙8発明を組み合わせた場合に、いかなる理由でその技術的意義が失われると主張するのか一切述べておらず、その主張は趣旨不明であるといわざるを得ない。 さらに、乙7発明及び乙8発明の技術的意義は、買い注文と売り注文を繰り返すシステムにおいて、新たに生成される売り注文の価格を、相場価格の変動に応じて追従していくように、従前のものより所定額だけ上昇させることにあるところ、乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせた場合には、複数のイフダン注文のうち約 定した注文について、相場価格の変動に応じて、新たな売り注文の価格を所定価格だけ上昇させる構成となるのであって、それにより乙7発明及び乙8発明の技術的意義が失われることにはならない。 ⑵ 被告の主張は、訴訟上の信義則に反するものではなく、時機に後れたものでもないこと ア原告は、前訴の控訴審判決を理由として、被告による特許無効の抗弁が、訴訟上の信義則に反し、又は、時機に後れたものであり訴訟の完結を遅延させるものとして民訴法157条1項により、却下されるべきであると主張する。 イ被告の主張が訴訟上の信義則に反するものではないこと 被告が本件訴訟において無効理由1及び2を主張することは、以下の事情を踏まえれば、訴訟上の信義則に反するものではない。 前訴と本件訴訟とでは、訴訟 訴訟上の信義則に反するものではないこと 被告が本件訴訟において無効理由1及び2を主張することは、以下の事情を踏まえれば、訴訟上の信義則に反するものではない。 前訴と本件訴訟とでは、訴訟物が異なるのであって、被告は、前訴とは異なる引用例に基づき、新たな無効理由に基づいて特許無効の抗弁を主張しているのであるから、本件訴訟における無効の抗弁の主張は、前訴の控 訴審判決と何ら抵触するものではない。 被告は、前訴の控訴審の口頭弁論終結日に先立って、被告サーバの運用を停止しており、前訴においては、差止判決によって被告にもたらされる不利益は乏しかったのに対し、本件訴訟においては、原告から、60億円を超える損害賠償請求の一部請求として、11億9000万円及び遅延損害金という極めて高額の損害賠償を請求されているのであるから、前訴よ りも本件訴訟の方が、被告にもたらされる利害がはるかに大きい。そうすると、本件のように前訴・後訴間で経済的価値を全く異にする請求に関して争いがある場合に、後訴において信義則でもって主張制限を行うことは、被告に対し不測の不利益を及ぼすものであり、既判力が判決主文中の判断に限り生じるとされた趣旨にも反するものであって、許されない。 そもそも、前訴で敗訴した原告が再び後訴を提起した場合には、被告における応訴の煩を回避する必要性が高いのに対し、前訴で勝訴した原告が再訴を提起した場合には、あえて自らの請求を前訴と後訴とに分割したのは原告自身であり、その訴訟追行の負担は原告自身が負うべきであるし、被告は再訴された訴訟において防御活動を行うという受け身の立場にあ るにすぎないところ、本件はこの場合に当たる。 無効理由1は、前訴の控訴審判決が示した構成要件 負うべきであるし、被告は再訴された訴訟において防御活動を行うという受け身の立場にあ るにすぎないところ、本件はこの場合に当たる。 無効理由1は、前訴の控訴審判決が示した構成要件Hの文言解釈(前訴において被告が否定した文言解釈)を前提とするものであり、被告が、前訴において提出することには支障が存在した。 これに対し、原告は、被告が、前訴において、買い注文やその約定が介 在しても構成要件Hを充足するという解釈を前提とする予備的主張を行っていたとして、被告が前訴において無効理由1を提出することに支障はなかったなどと主張する。しかしながら、被告は、前訴において、被告サーバの客観的構成を前提とすると、構成要件Hの充足性及び無効論に係る前訴の第1審判決の判断が両立しないことを指摘したにすぎず、予備的主 張をしたわけではない。また、無効理由1が前提とする構成要件Hの文言 解釈を示したのは、前訴の第1審判決ではなく、前訴の控訴審判決である。 そうすると、原告の上記主張は失当である。 被告は、前訴の控訴審判決を踏まえて、組合せの動機付けが明確に認められる公知文献を探索し、その結果、乙5文献及び乙6文献を発見するに至ったのであり、無効理由1及び2を前訴の口頭弁論終結時までに提出す ることは、合理的に期待することができなかったというべきである。 ウ被告の主張に民訴法157条1項の適用がないこと民訴法157条1項により攻撃防御方法が却下されるための要件は、①攻撃防御方法が時機に後れて提出されたこと、②時機に後れたことが当事者の故意又は重大な過失に基づくこと、③その攻撃防御方法を審理すれば、訴訟 の完結が遅延することである。 しかしながら、被告は、本件訴訟の初期段階において特許 たこと、②時機に後れたことが当事者の故意又は重大な過失に基づくこと、③その攻撃防御方法を審理すれば、訴訟 の完結が遅延することである。 しかしながら、被告は、本件訴訟の初期段階において特許無効の抗弁を主張しているのであり、被告による特許無効の抗弁が時機に後れるものでないことは明らかであるから、上記①の要件を満たさない。また、特許無効の抗弁が時機に後れるものでない以上、上記②の要件を満たさない。さらに、特 許無効の抗弁を提出した段階において、実質的な審理はされておらず、訴訟を完結できる段階に至っていないのであるから、上記③の要件も満たさない。 なお、原告は、前訴を含めて全体的にみた場合に、被告の特許無効の抗弁が時機に後れた攻撃防御方法に当たるという趣旨で主張しているとも考えられるところ、上記①の要件は、同一手続内での具体的な提出可能性を問題 とするものであるから、前訴の審理経過は、同項の適用の有無とは無関係である。 (原告の主張)⑴ 進歩性の欠如についてア一致点及び相違点 本件発明と乙5発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 一致点相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための金融商品取引管理装置であって、前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段と、 前記買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段とを有する注文情報生成手段と、前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備 え、前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は、それぞれ等しい を有する注文情報生成手段と、前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備 え、前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は、それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報であり、前記注文情報生成手段は、前記複数の売り注文情報を一の注文手続で生成する 金融商品取引管理装置 相違点本件発明では、「前記約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、・・・前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だ け高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」(構成要件H)のに対し、乙5発明では「前記約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」にとどまり、「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注 文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注 文情報を生成」しない点 被告の主張についてa 被告は、「前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、前記注文情報生成手段は、前記約定検知手段の前記検知 の情報を受けて、新たな売り注文情報を生成する」点を一致点に取り込んで主張している。 しかしながら、乙5発明は、トラップリピートイフダン注文(イフダン注文を一定の価格帯で複数行い、複数のイフダン注文のうちの1組が約定したら、再び当該約定したペアと同じ価格のイフダン注文を行うと いう取引を 乙5発明は、トラップリピートイフダン注文(イフダン注文を一定の価格帯で複数行い、複数のイフダン注文のうちの1組が約定したら、再び当該約定したペアと同じ価格のイフダン注文を行うと いう取引をいう。以下同じ。)に関する発明であり、そのうちのどの価格の売り注文が約定しても、当該価格のイフダン注文をリピートするものであり、そのうちの最も高い価格のペアの売り注文が約定した場合もリピートするが、これは他の価格のペアと全く同様の処理が行われているにすぎないにもかかわらず、被告は、この点を捉えて「最も高い売り 注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、前記注文情報生成手段は、前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて、新たな売り注文情報を生成する」と主張するものである。これに対し、本件発明は、「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知する」ということが、相場価格がそこまで上昇しているということを意味しているとい うことに着目し、この「最も高い売り注文価格の売り注文」の約定を契機として発注を繰り返す価格帯をシフトさせることとしているものである。 このような両発明の技術思想の相違に照らせば、乙5発明のように、単に他の価格のペアと同様にリピートさせるために「最も高い売り注文 価格の売り注文が約定されたことを検知」することと、本件発明のよう に「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたこと」に着目し、これを発注を繰り返す価格帯をシフトすることの契機として捉えることとは、検知の目的やそれを受けた動作が全く異なり、技術思想として全く異なるものであるから、この点を両発明の一致点とすべきではない。 b 被告は、「検知の目的」が相違点を構成するという原告の主張が失当 であると主張する。 作が全く異なり、技術思想として全く異なるものであるから、この点を両発明の一致点とすべきではない。 b 被告は、「検知の目的」が相違点を構成するという原告の主張が失当 であると主張する。 しかしながら、本件発明では、「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知する」ことで「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」という処理を行うということは、構成要 件Hに明確に規定されている。すなわち、コンピュータを用いた処理において、何かを検知するのは、それを受けて何かの処理を行うためであるから、検知から処理までの流れを有機的一体の構成と把握すべきであって、被告の主張は、その一部のみを恣意的に抜き出して技術思想を把握するものであり、失当である。 イ相違点の容易想到性 乙5発明に乙6発明を組み合わせる構成について(無効理由1)a 乙5発明に乙6発明を組み合わせても、相違点に係る本件発明の構成に至らないこと⒜ 乙6発明は、本件発明の「シフト機能」とは異なる「トレール機能」 を実現するものであるから、乙5発明に乙6発明を組み合わせても、本件発明の構成に至らない。 すなわち、本件明細書等に開示された「シフト機能」とは、既存の決済注文を約定させた後、新たに新規注文や決済注文が発注される際に、相場変動に対応して先に発注済みの注文の価格・価格帯とは異な る価格・価格帯にシフトさせた状態で、新たな注文を発注させる態様 の注文形態である。これに対して、「トレール機能」とは、既存の注文が約定したか否かではなく、相場価格の変動が所定のトレール幅に達したか否かを契機とするものであ 新たな注文を発注させる態様 の注文形態である。これに対して、「トレール機能」とは、既存の注文が約定したか否かではなく、相場価格の変動が所定のトレール幅に達したか否かを契機とするものである上、処理内容としても未約定であるペアの注文情報の注文価格を変更するというものである。 そうすると、本件発明の「シフト機能」と乙6発明の「トレール機 能」とは、構成やそれによって得られる作用効果も異なる別の技術思想に基づいた全く別の発明であるから、乙5発明に乙6発明を組み合わせたところで、トレール機能を備えた発明に至るにすぎず、本件発明の構成に至ることはない。 ⒝ 被告の主張について ⅰ 構成要件Hの「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」について被告は、構成要件Hの「前記約定検知手段の情報を受けて」について、新たな注文情報が時間的に見て決済注文の約定の「のちに」作成されていれば、これを充足すると主張する。 しかしながら、前訴の控訴審判決は、検知の情報を受けたことに基づいてシフトが生じると解釈した上で、被告サーバのように、売り注文の約定の後に成行の買い注文の発注と約定が介在しても、検知の情報を受けたことに基づいてシフトが生じていると評価できると判断しているのであって、時間的に「のち」であれば、間にど んな処理が介在してもよいと解釈しているわけではない。そして、被告が主張する処理においては、トレールは第二注文の約定とは原因と結果の関係に立たない「相場価格の変動」という別の因果の経過に基づいて生じているのであるから、このような関係に立つ被告主張の処理において、トレール処理が第二注文の約定に基づいて行 われているとは評価できない。 ⅱ 乙6文献の段落【0101】の「態 生じているのであるから、このような関係に立つ被告主張の処理において、トレール処理が第二注文の約定に基づいて行 われているとは評価できない。 ⅱ 乙6文献の段落【0101】の「態様2」について被告は、乙6文献の【0101】の「態様2」に係る発明を副引例と主張している。 しかしながら、乙6文献の【0101】の「態様2」には、「相場価格の変動とほぼ同時に、ステップS33、S35の処理が行わ れる。」と記載されているのみであって、特定の具体的な発明を認定することが困難である。また、上記記載からすれば、いくつかの意味が想定されるが、そのいずれのように「態様2」を理解したとしても、「相場価格の変動」を契機としてトレール処理を行う態様であって、売り注文の約定を契機とするものでないことは明らかで あるし、まして本件発明のように最も高い売り注文価格の売り注文の約定に着目して何らかの処理を行うというものではない。 ⅲ 最低繰返し回数実行と乙5発明との組合せについて被告が主張する構成は、トレール処理に最低繰返し回数実行の判定処理を組み合わせることを前提とするものである。 しかしながら、乙6発明は、1つのイフダン注文を繰り返す発明であるが、乙5発明は複数のイフダン注文を行うものであり、このような乙5発明に「最低繰返し回数実行」の処理を組み合わせた場合に、どのイフダン注文について「最低繰返し回数実行」を判定するのがよいのか不明である。そうすると、仮に被告が主張するよう に、最低繰返し回数実行の判定処理を前提とした処理を乙5発明に組み合わせることができたとしても、本件発明に至るものではない。 ⅳ 構成要件Hの「売り注文情報を生成する」について被告は、乙6文献の【0077 行の判定処理を前提とした処理を乙5発明に組み合わせることができたとしても、本件発明に至るものではない。 ⅳ 構成要件Hの「売り注文情報を生成する」について被告は、乙6文献の【0077】にトレール機能に係る処理に際して、「新たな・・・注文情報・・・とする」と記載されているこ とをもって、乙6発明においても新たな注文情報が生成されている と主張する。 しかしながら、上記において、「新たな注文情報を生成する」ではなく「新たな注文情報とする」と記載されていることからすれば、新たに注文情報が生成されているわけではないことは明らかである。このように、本件発明では、「新たな注文を生成」するのに対 し、乙6発明では、新たな注文を生成することはないから、乙6文献には「新たな注文を生成する」という開示がない。 ⅴ 予備的主張について被告は、乙6文献の【0101】の「態様2」を考慮することなく乙6発明を認定したとしても、乙6発明は、構成要件Hに係る構 成を備えていると主張する。 しかしながら、被告の上記主張も、第二注文の約定から見て時間的に「のちに」相場価格が変動してトレールが生じることをもって、構成要件Hの「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて」に当たると主張するものであるが、その主張が失当であることは、前記 ⅰと同様である。 また、被告の上記主張は、トレール処理に最低繰返し回数実行の判定処理を組み合わせることを前提とするところ、乙5発明のように複数のイフダン注文を行う発明に、被告主張の処理を組み合わせた場合に、どのイフダン注文から「最低繰返し回数実行」を判定す ればよいのか不明であることは、前記ⅲと同様である。 さら のイフダン注文を行う発明に、被告主張の処理を組み合わせた場合に、どのイフダン注文から「最低繰返し回数実行」を判定す ればよいのか不明であることは、前記ⅲと同様である。 さらに、被告の上記主張は、トレール機能に係る処理に際して、約定の注文情報の注文価格情報を変更することをもって新たな注文情報が生成されていると主張するものであるが、そのような注文価格情報の変更は、形式的にも実質的にも、構成要件Hの「さらに 所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成 する」に当たらないことは、前記ⅳと同様である。 b 乙5発明に乙6発明を組み合わせる動機付けについて以下のとおり、乙5発明に乙6発明を組み合わせる動機付けに係る被告の主張は、理由がない。 ⒜ 被告は、乙5発明と乙6発明の技術分野、発明の課題及び管理装置 の構成の大部分が共通していることを動機付けの理由として挙げる。 しかしながら、同一の技術分野に属するからといって、動機付けがあるとは限らない。 また、両発明の課題について、ある価格帯の中で複数のイフダン注文を行うことでトラップを仕掛け、細かい利益を繰り返し得るという 乙5発明と、1組のイフダン注文を繰り返す中で相場変動に応じて注文価格を変更する乙6発明とでは、解決課題は全く異なる。すなわち、乙5発明は、1組のイフダン注文で大きな利益を得ようとすれば、買い注文と売り注文との間の利幅を大きくせざるを得なくなり、売り注文が決済する前に相場価格が下落に転じてしまうおそれがあるとい う課題を、特定の価格帯に等しい値幅で複数のイフダン注文のトラップを仕掛けて細かい利益を繰り返し得るという手段を採用して課題を解決しているものである。これに対して、乙6発明は、1組のトレー う課題を、特定の価格帯に等しい値幅で複数のイフダン注文のトラップを仕掛けて細かい利益を繰り返し得るという手段を採用して課題を解決しているものである。これに対して、乙6発明は、1組のトレール注文を繰り返すのみであって、乙5発明のように等しい値幅で複数のイフダン注文のトラップを仕掛けるという技術思想はなく、売り 注文が決済する前に相場価格が下落に転じてしまうおそれがあるという課題を解決するものではない。それどころか、トレールの具体的な態様によっては、売り注文価格を高値側にトレールさせてしまうことで、売り注文が決済する前に相場価格が下落に転じてしまうという課題を助長するおそれすらある。このように、乙5発明と乙6発明と は、一般的、抽象的な範囲において課題が共通するとしても、具体的 解決手段との関係においてその課題とするところを比較すれば、両発明の課題は全く異なっている。 さらに、管理装置の構成の共通性について、いずれも原告の出願に係る金融商品取引管理装置である以上、基本的な構成が共通するのは当然のことであり、そのような金融商品取引管理装置が、どのような 情報を受けて、どのように処理を行い、それによってどのような課題をどのように解決するのかという技術思想は、乙5発明と乙6発明とで全く異なる。 ⒝ 被告は、乙5文献の段落【0155】に、注文属性情報としてトレール幅情報を設けることが記載されていることを指摘し、乙6発明を 組み合わせることにつき、強い動機付けが存在すると主張する。 しかしながら、トレール機能は、本件発明のシフト機能とは全く別の発明であるから、乙5文献にトレール機能との組合せが示唆されたとしても、本件発明に至る動機付けとは無関係である。 また、被告は、主位的には乙6文献の【0 ール機能は、本件発明のシフト機能とは全く別の発明であるから、乙5文献にトレール機能との組合せが示唆されたとしても、本件発明に至る動機付けとは無関係である。 また、被告は、主位的には乙6文献の【0101】の「態様2」(相 場価格とほぼ同時にトレールが生じる態様)を乙6発明として主張するものであるところ、乙5文献の【0155】で示唆されているのは、乙6文献の【0101】の態様2とは具体的な態様の異なるトレール機能との組合せにすぎないから、被告の主張を前提とすれば、益々乙5発明と乙6発明との組合せの動機付けがないことは明らかである。 乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせる構成について(無効理由2)a 乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせても、相違点に係る本件発明の構成に至らないこと⒜ 乙7発明及び乙8発明は、乙6発明と同様に、1組のイフダン注文 を繰り返す発明であり、最も高い売り注文という概念はない。また、 主引例発明である乙5発明も、最も高い売り注文価格の売り注文が約定するという点に着目した発明ではない。 そうすると、このような乙5発明と乙7発明又は乙8発明を組み合わせても、「前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて、前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ 高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」という本件発明の構成に至ることはない。 ⒝ 被告の主張について被告は、乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせると、本件発明の構成に至るなどと主張する。 しかしながら、乙5発明は、特定の価格帯の中に複数のイフダン注文を行うものであるのに対し、乙7発明や乙8発明は1つのイフダン注文を繰り 、本件発明の構成に至るなどと主張する。 しかしながら、乙5発明は、特定の価格帯の中に複数のイフダン注文を行うものであるのに対し、乙7発明や乙8発明は1つのイフダン注文を繰り返すものであり、これらの発明を組み合わせた場合に、乙5発明の複数のイフダン注文のうち、どれについて乙7発明や乙8発明の構成を組み合わせることになるのかは不明といわざるを得ない。 また、本件発明は、「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知する」ことを受けて「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」ものであるところ、前記⒜のとおり、乙5発明、乙7発明及び乙8発明のいずれも、「最も高い売り注文価 格の売り注文が約定されたことを検知する」ことに着目しているものではない。そうすると、これらの発明を組み合わせて、形式的には最も高い売り注文が約定した場合にシフトが生じる構成に至ったとしても、「最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知する」ことを受けて「前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格 よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文 情報を生成する」という技術思想が開示されているということにはならない。 b 乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせる動機付けについて⒜ 乙5発明は、一定の価格帯を前提として、そこに複数のイフダン注文によるトラップを仕掛けるというものであり、そのような価格帯自 体が観念できない乙7発明や乙8発明を組み合わせる動機付けは存在しない。 むしろ、複数のイフダン注文によるトラップを仕掛けるという乙5発明において、乙7発明や乙8発明のように勝手に 価格帯自 体が観念できない乙7発明や乙8発明を組み合わせる動機付けは存在しない。 むしろ、複数のイフダン注文によるトラップを仕掛けるという乙5発明において、乙7発明や乙8発明のように勝手に注文価格を変動されてしまうと、ユーザが設定した所定の価格帯が勝手に変更されてし まうことになるから、乙5発明に乙7発明や乙8発明を組み合わせることには、阻害要因がある。 ⒝ 被告の主張についてⅰ 被告は、乙5発明、乙7発明及び乙8発明について、技術分野や発明の課題が共通すると主張する。 しかしながら、同一の技術分野に属するからといって動機付けがあるとは限らないし、乙5発明と乙7発明及び乙8発明では解決課題は全く異なっている。 ⅱ 被告は、乙5文献の段落【0155】にトレールに関する記述があると主張する。 しかしながら、トレール機能との組合せが示唆されているとしたところで、トレール機能とは異なるシフト機能に係る発明である本件発明に至る動機付けがあることにはならない。 ⑵ 被告の主張は、訴訟上の信義則に反し又は時機に後れたものとして、却下されるべきであること ア被告が主張する無効理由は、いずれも、前訴の口頭弁論終結時までに提出 することができたものである上に、実質的には、前訴における無効理由と同様のものである。そうすると、無効理由に係る被告の主張は、訴訟上の信義則に反するものとして民訴法2条1項により、又は時機に後れたものとして同法157条1項により、却下されるべきである。 イこれに対し、被告は、無効理由1の主張は、前訴の控訴審判決が示した構 成要件Hの解釈を前提とするものであり、前訴において提出することに支障があったなどと主張する。 しかしながら、構成要件 に対し、被告は、無効理由1の主張は、前訴の控訴審判決が示した構 成要件Hの解釈を前提とするものであり、前訴において提出することに支障があったなどと主張する。 しかしながら、構成要件Hの解釈及び充足性は、前訴においても主要な争点となっていたのであり、被告も、前訴において、被告サーバが構成要件Hを充足するという解釈を前提とする予備的主張を行っていたのであるから、 前訴において同様の無効理由を主張することにつき、何らの支障がなかったことは明らかである。 なお、被告は、上記主張につき、予備的主張ではないなどと主張するが、いずれにしても、被告が、前訴において、買い注文やその約定が介在しても構成要件Hを充足するという解釈を前提とした無効理由を主張することが できたことは明らかである。 ウまた、被告は、無効理由2について、前訴の控訴審判決が示した構成要件Hの解釈を前提とした主張をしておらず、前訴における被告の主張と実質的に同一の主張を繰り返しているにすぎない上に、前訴において主張することに何らの支障もなかったものである。 2 争点2-1(特許法102条1項に基づく損害額等)について⑴ 争点2-1-1(特許法102条1項の類推適用の可否)について(原告の主張)ア特許法102条1項の文言に照らせば、同項は、「物」が「譲渡」された場合を典型例として想定しているといえる。 これに対して、本件では、特許発明に係る金融商品取引管理装置を業とし て「使用」したことによる利益が問題となるのであって、金融商品取引管理装置自体が譲渡されたわけではない。しかしながら、同項の根拠は、侵害者による侵害品の譲渡がなかったとするならば、その分特許権者の製品を譲渡することができたという 題となるのであって、金融商品取引管理装置自体が譲渡されたわけではない。しかしながら、同項の根拠は、侵害者による侵害品の譲渡がなかったとするならば、その分特許権者の製品を譲渡することができたという社会的経験則が認められるという点にあるのであって、このことは、物を譲渡する場合と本件のようなシステムの使用の場合 とで異なるものではない。 そして、原告も被告も、顧客に対してFX取引を提供しているのであって、仮に被告が顧客に対してFX取引を提供しなければ、その分原告が顧客に対してFX取引を提供することができたということについては、物の譲渡の場合と同様の社会的経験則が認められる。 また、原告や被告が得る利益は、いずれも顧客がサーバを使用して取引を行うことによって生じる利益であって、1取引当たりの単位利益が観念し得る点においても、物の譲渡の場合と共通している。 そうすると、本件のように、被告が被告サーバを業として使用し、原告の顧客を奪ったことによって原告が被った損害については、同項が類推適用さ れるべきである。 イ被告は、本件期間において、原告が金融商品取引業を営んでいなかったことを指摘するところ、これは、ホールディング会社である原告自身がFX取引業を営んでいなかったことを指摘するものであって、全くの形式論である。 すなわち、原告の完全子会社であり、FX取引業の事業会社である原告子会 社は、本件期間を通じて、金融商品取引業の登録を受け、FX取引業を営んでいたのであり(以下、原告子会社が顧客に提供しているFX取引に係るサービスを「原告サービス」ということがある。)、完全親子会社の関係にある以上、完全子会社が被った損害は、そのまま完全親会社の被った損害ということができる。そして、原告の 提供しているFX取引に係るサービスを「原告サービス」ということがある。)、完全親子会社の関係にある以上、完全子会社が被った損害は、そのまま完全親会社の被った損害ということができる。そして、原告の完全子会社である原告子会社がFX取引業 を営み、その被った損害が特許法102条1項を類推適用して算定できるの であれば、完全親会社である原告も同額を自己の損害として請求することができると解すべきである。 また、原告と原告子会社との間では、●(省略)●ライセンス契約(以下「原告ライセンス契約」という。)が締結されている(甲24、27)。すなわち、原告ライセンス契約においては、原告の保有する特許権や特許出願 中の発明に関し、通常実施権又は仮通常実施権を許諾しているところ、●(省略)●このような事情に照らせば、被告の特許権侵害行為によって、●(省略)●被告と原告とで利益を食い合う関係にあることから、同項の類推適用が認められるべきである。 (被告の主張)ア侵害の行為を組成した物の取引を伴わない「使用」という実施行為については、特許法102条1項を類推適用する余地はないこと特許法102条1項は、「その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したとき」に適用される規定であり、実施行為が「使用」の場合に同項が適用 されないことは明らかであるところ、原告は、本件について、同項が類推適用されるべきであると主張する。 しかしながら、仮に譲渡以外の実施行為について同項の類推適用が認められる場合があったとしても、同項は、「特許権者・・・がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額」に、侵害者 が「譲渡した物の数量」を乗じるという算定式を採用している以上、同項に基づいて損害 は、「特許権者・・・がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額」に、侵害者 が「譲渡した物の数量」を乗じるという算定式を採用している以上、同項に基づいて損害額を算定するためには、侵害の行為を組成した物の取引が行われていることが必要である。そうすると、同項の文言及び趣旨に照らせば、侵害の行為を組成した物の取引を伴わない「使用」という実施行為については、同項を類推適用する余地はない。 そして、被告は、被告サーバを使用して顧客との間でFX取引を行ってい るにすぎず、被告サーバという物を取引したわけではない。したがって、本件は、同項が想定する適用場面とは根本的に異なっているから、同項を類推適用することはできない。 イ原告は、本件期間において、FX取引業を営んでいなかったばかりか、金融商品取引業者としての登録を受けておらず、FX取引を業として行うこと はできなかったため、特許法102条1項に基づいて損害額を算定することはできないこと 「特許権者・・・がその侵害の行為がなければ販売することができた物」が存在しないこと特許法102条1項は、特許権者又は専用実施権者(以下「特許権者等」 という。)の製品の販売数量の減少による逸失利益の損害額の算定方法について定めた規定であり、このような同項の文言及びその趣旨に照らすと、仮に同項について類推適用できる場合があるとしても、それは特許権者等自身によって販売等がなされている場合に限られるというべきである。すなわち、特許権者等自身による販売等がない場合には、同項適用の前提と しての特許権者等の販売数量減少による逸失利益の発生を観念することができないのであるから、特許権者等自身による販売等が認められる ち、特許権者等自身による販売等がない場合には、同項適用の前提と しての特許権者等の販売数量減少による逸失利益の発生を観念することができないのであるから、特許権者等自身による販売等が認められることは、同項の適用に際して、必須の要件である。 本件についてみると、原告は、本件期間において、FX取引業を営んでいなかったばかりか、金融商品取引業者としての登録を受けておらず、F X取引を業として行うことはできなかった。そうすると、本件において、原告のいう「特許権侵害行為がなければ提供することができた原告サービス」というものは存在せず、その「取引当たりの単位利益の額」も存在しないのであるから、同項に基づいて損害額を算定することはできない。 原告は、特許法102条1項の「実施の能力」を一切有していなかった こと 特許法102条1項は、特許権者の「実施の能力」の限度で、特許権者が受けた損害の額とすることができると規定する。 しかるに、原告は、本件期間において、金融商品取引業者としての登録を受けておらず、FX取引を業として行うことができなかったのであるから、同項の「実施の能力」を一切有していなかった。そうすると、この意 味においても、同項に基づいて損害額を算定することはできない。 原告の主張についてa 原告と原告子会社の関係は、特許法102条1項の適用又は類推適用(併せて、単に「適用」という。以下、本項において同じ。)を何ら基礎付けるものではないこと ⒜ 仮に原告子会社に何らかの「販売数量減少による逸失利益」が生じていたとしても、原告が特許法102条1項に基づいて損害賠償を請求できる根拠とはならないこと原告は、原告サー ⒜ 仮に原告子会社に何らかの「販売数量減少による逸失利益」が生じていたとしても、原告が特許法102条1項に基づいて損害賠償を請求できる根拠とはならないこと原告は、原告サービスを行っているのが原告の完全子会社である原告子会社である以上、原告も原告子会社と同額の損害を請求すること ができると主張する。 しかしながら、特許権者である原告自身がFX取引を業として行っていない以上、本件において特許法102条1項の適用が否定されることは、同項の文言及びその趣旨からすれば、明らかである。 また、仮に原告子会社が損害を被っているという原告の主張を前提 としても、原告と原告子会社とは法人格が異なる以上、原告がこれによって直接損害を被るわけではないし、両者の資産を一体視して原告子会社の損害を原告の損害とすることもできない。とりわけ、原告は、金融商品取引業の登録を有しないのであるから、原告が、原告子会社を通じて、FX取引業を行い、売上げを得ていたと評価する余地はな い。 そうすると、仮に原告子会社に逸失利益が生じていたとしても、原告が同項に基づいて損害賠償を請求できる根拠とはなり得ない。 ⒝ 原告は、「特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に関する主張立証を行っていないこと原告は、原告子会社のサービスである「原告サービス」の具体的内 容を何ら主張立証していないほか、原告子会社において本件発明の技術的範囲に属するサービスを提供していたことについて、一切主張立証していない。 そうすると、特許法102条1項所定の「その侵害の行為がなければ販売することができた物」につい 明の技術的範囲に属するサービスを提供していたことについて、一切主張立証していない。 そうすると、特許法102条1項所定の「その侵害の行為がなければ販売することができた物」について、特許発明の実施品であること を要すると解するのであれば、本件について同項が適用される余地はない。 また、「その侵害の行為がなければ販売することができた物」について、侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者等の製品で足りるという見解に立ったとしても、原告は「原告サービス」の具体的内 容について何ら主張しておらず、原告サービスと被告サービスとが競合関係に立つことについても、一切主張立証していない。 そして、上記のような競合関係の存在は、同項を適用する上で必要となるところ、その主張立証がない以上、本件について同項を適用することはできない。 b 原告ライセンス契約の存在は、本件について特許法102条1項の適用を基礎付ける事情とはなり得ないこと⒜ 実施料収入の減少は、販売数量減少による逸失利益に係る損害額の算定方法を定める特許法102条1項の適用を基礎付けるものではないこと 原告は、原告と原告子会社との間で原告ライセンス契約が締結され ているとして、●(省略)●と主張する。 しかしながら、原告の上記主張は、●(省略)●のであるから、販売数量減少による逸失利益に係る損害額の算定方法を定める同項が適用されることを基礎付ける事情とはなり得ない。なぜならば、仮に原告が原告子会社から実施料収入を得ていたとしても、原告子会社が 得る利益と原告が得る実施料収入は同額ではなく、両者を同視することはできないからである。 そう なぜならば、仮に原告が原告子会社から実施料収入を得ていたとしても、原告子会社が 得る利益と原告が得る実施料収入は同額ではなく、両者を同視することはできないからである。 そうすると、仮に原告ライセンス契約に基づいて原告に逸失利益が存在するとしても、特許法102条1項に基づく損害額が認められるべき理由はない。 ⒝ 原告ライセンス契約において、●(省略)●原告子会社は本件発明を実施していないことそもそも、●(省略)●原告子会社は本件発明を実施していないから、原告の上記主張は、その前提を欠く。 ●(省略)● また、原告は、原告子会社において本件発明の技術的範囲に属するサービスを提供していることを主張立証していないのであるから、原告の主張は、その前提を欠くものである。 ウ小括したがって、本件においては、特許法102条1項に基づいて損害額を算 定することはできないから、同項に係る原告の主張は、失当である。 ⑵ 争点2-1-2(特許法102条1項に基づく損害額)について(原告の主張)ア特許法102条1項を類推適用するに当たっては、被告サーバを使用して行われた取引数に、特許権侵害行為がなければ提供することができた原告サ ービスの取引当たりの単位利益を乗じて得た額を、原告が受けた損害とみな すべきである。 イ被告サーバを使用した取引総量2017年度及び2018年度における被告サーバを使用した取引総量は、2億1495万0600ロットである(甲12)。他方で、被告が本件特許権を侵害していた本件期間は1年9か月(1.75年)である。 このうち、被告サーバを使用した被告サー バを使用した取引総量は、2億1495万0600ロットである(甲12)。他方で、被告が本件特許権を侵害していた本件期間は1年9か月(1.75年)である。 このうち、被告サーバを使用した被告サービスが占める割合は、少なく見積もっても5%は下らない。 そうすると、本件期間における被告サービスを使用した取引数量は、940万4089ロット(2億1495万0600(ロット)×1.75/2(年)×0.05の小数点第一位以下で四捨五入)を下らない。 被告の主張についてa 被告は、売り注文を新規注文、買い注文を決済注文とする取引は、本件発明と無関係であって、損害額算定の基礎から除くべきであると主張する。 しかしながら、被告が主張するような取引も、特許侵害品である被告 サーバを使用して行われる取引であって「自己の特許権・・・を侵害した者が譲渡した物の数量」(ただし、類推適用が問題となる本件では、「譲渡した物の数量」ではなく「提供した取引の数量」をいう。)であることに変わりはないから、当該取引数量分を損害額算定の基礎から除くべきではない。 b 被告は、2個以下の新規買い注文しか生成されない取引については、本件発明の技術的範囲に含まれないから、損害額算定の基礎から除くべきであると主張する。 しかしながら、被告が主張するような取引も、特許侵害品である被告サーバを使用して行われる取引であることに変わりはないから、当該取 引数量分を損害額算定の基礎から除くべきではない。 c 被告は、被告サーバを使用して行われる取引のうち、売り注文が相場価格の上昇に追従する取引以外は、本件発明の技術的範囲に含まれず、損害額算定の基礎から除くべきであると主張する。 c 被告は、被告サーバを使用して行われる取引のうち、売り注文が相場価格の上昇に追従する取引以外は、本件発明の技術的範囲に含まれず、損害額算定の基礎から除くべきであると主張する。 しかしながら、そもそも、本件発明では、シフトが生じる注文以外の注文についても、「複数の買い注文情報」、「複数の売り注文情報」と して構成要件で規定されているのであって、これらの注文を除外すべきであるという被告の主張は、その前提において誤っている。 また、被告が主張するような取引も、特許侵害品である被告サーバを使用して行われる取引であることに変わりはないから、当該取引数量分を損害額算定の基礎から除くべきではない。 ウ原告の単位利益額原告サービスを使用した取引1ロット当たりの単位利益額は、手数料について1ロット当たり約180円、トレーディング損益について約460円である。 なお、トレーディング損益とは、①顧客がFX取引業者と店頭取引を行っ た際に、FX取引業者が銀行等との間で、顧客との取引に対応する取引(以下「カバー取引」ということがある。)を行うことで得られる収入及び②FX取引業者が店頭取引の場合に、顧客が外貨を買う場合と売る場合とで売買レートに差を設けていることによって得られる収入(以下「スプレッド収入」ということがある。)から成るものである。 エ限界利益額原告サービスはサーバを通じて提供されるものであるところ、同サーバを使用するためには、原材料費や運送費等を要しないから、原告サーバを使用するために直接関連して追加的に必要となった経費は観念できない。 そうすると、特許法102条1項の限界利益を算定するに当たって控除す 材料費や運送費等を要しないから、原告サーバを使用するために直接関連して追加的に必要となった経費は観念できない。 そうすると、特許法102条1項の限界利益を算定するに当たって控除す べき経費の額はゼロである。 オ特許法102条1項に基づく逸失利益額したがって、特許法102条1項に基づき逸失利益額を算定すると、以下のとおりとなる。 手数料収入相当の損害額180(円/ロット)×940万4089(ロット)=16億9273 万6020円 トレーディング損益相当の損害額460(円/ロット)×940万4089(ロット)=43億2588万0940円合計 16億9273万6020(円)+43億2588万0940(円)=60億1861万6960円以上によれば、特許法102条1項を類推適用することに基づいて損害を算出すると、その損害は60億1861万6960円を下らない。 カ弁護士費用及び弁理士費用 原告は、被告が本件特許権の侵害に及んだことにより、本件訴訟提起を余儀なくされたものであり、本件訴訟が特許権侵害訴訟という専門性が高く、弁護士及び弁理士に依頼するのでなければ、訴訟を追行することが著しく困難な類型の訴訟であることに照らせば、原告が被った被告による不法行為と相当因果関係が認められる弁護士費用及び弁理士費用相当の損害額は、1億 円を下らない。 キ消費税相当額原告は、特許法102条1項又は2項に基づいて算出される逸失利益額のうち、10億円を請求するところ、これに対する消費税相当額(8%)並びに弁護士費用及び弁理士費用相当額である1億円に対する消費税相当額(1 2条1項又は2項に基づいて算出される逸失利益額のうち、10億円を請求するところ、これに対する消費税相当額(8%)並びに弁護士費用及び弁理士費用相当額である1億円に対する消費税相当額(1 0%)は、それぞれ8000万円及び1000万円である。 ク小括以上によれば、原告は、被告に対し、11億9000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成31年3月4日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張) ア被告サービスに係る取引数量の全体を損害賠償の算定の基礎とする原告の主張は誤りであること特許発明の構成要件の一部に相当する部分だけを用いる行為は、実施行為である「使用」に該当しないところ、以下のとおり、被告サービスには本件発明の構成要件を1つ又は複数を充足しない態様の取引も含まれているか ら、その取引数量の全体を損害額算定の基礎とすることはできない。 買い注文を決済注文とする取引形態は、本件発明の技術的範囲に含まれないこと本件発明は、新規の買い注文の約定によって保有したポジションを、売り注文の約定によって決済するという取引を前提とするものである。 これに対して、被告サービスには、新規注文として買い注文を行い、その決済注文として売り注文を行う取引もあるが、これとは逆に、新規注文として売り注文を行い、決済注文として買い注文を行う取引もある。後者の取引が本件発明と無関係であることは明らかであるから、買い注文を決済注文とする取引形態に関しては、損害額算定の基礎から除外する必要が ある。 取引開始時点において2個以下の新規買い注文しか生成されない取引は、本件発明の技術的範囲に含まれないこと 文とする取引形態に関しては、損害額算定の基礎から除外する必要が ある。 取引開始時点において2個以下の新規買い注文しか生成されない取引は、本件発明の技術的範囲に含まれないこと本件発明は、複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成部(構成要件B)と、複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成部とを有す る注文情報生成部(構成要件C)を備え、複数の売り注文情報に含まれる 売り注文価格の情報がそれぞれ等しい値幅で価格が異なっていること(構成要件F)を前提としている。 これに対して、被告サービスにおいては、取引開始時点において新規買い注文が1個又は2個しか発注されない場合もある。 まず、取引開始時点において新規買い注文が1個しか発注されない場合 には、当該新規買い注文の約定によって保有したポジションを決済する決済指値注文及び決済差逆指値注文は、それぞれ1個ずつしか生成されない。 そのため、当該取引においては、「複数の買い注文情報」が生成されていない上に、複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報が、「それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報」(構成要件F)を有することはない。 また、取引開始時点において新規買い注文が2個しか発注されない場合にも、決済指値注文及び決済逆指値注文はそれぞれ2個ずつしか生成されないため、決済指値注文又は決済逆指値注文について、値幅はそれぞれ1つずつしか存在しない。他方、「それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報」(構成要件F)とは、値幅が2つ以上存在することが当然の前提とされて いる。そのため、新規買い注文が2個しか発注しか発注されない場合も、複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報が「それぞれ等しい 件F)とは、値幅が2つ以上存在することが当然の前提とされて いる。そのため、新規買い注文が2個しか発注しか発注されない場合も、複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報が「それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報」(構成要件F)を有することはない。 したがって、取引開始時点において2個以下の新規買い注文しか生成されない取引については、本件発明の技術的範囲に含まれる余地はないため、 損害額算定の基礎から除外する必要がある。 売り注文が相場価格の上昇に追従する取引(最も高い売り注文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報の生成)以外は、本件発明の技術的範囲に含まれないこと本件発明は、複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文 が約定すると、注文情報生成部が、複数の売り注文のうち最も高い売り注 文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報を生成する(構成要件H)という構成を有している。 これに対して、被告サービスにおいて、最も高い売り注文価格の決済売り注文が約定し、最も高い売り注文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報が生成されるのは、相場価格が上昇を続け、最も高い買い注文 に対する決済売り注文の指値に到達した場合に限られる。為替相場の上昇局面においては、このように複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定することもあるが、実際の取引においては、相場価格が必ずしも上昇するわけではなく、一定の価格帯で停滞することもあれば、相場価格が下落する場合もある。そして、相場価格が停滞又は下落する局 面においても被告サービスでは取引が継続して行われるが、このような局面においては、「複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の 価格が下落する場合もある。そして、相場価格が停滞又は下落する局 面においても被告サービスでは取引が継続して行われるが、このような局面においては、「複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定」(構成要件H)して本件発明が所期する相場価格への追従(最も高い売り注文価格よりも更に高い注文価格の売り注文情報の生成)が発生することはない。 したがって、被告サービスによって行われる取引のうち、売り注文が相場価格の上昇に追従する取引(最も高い売り注文価格よりも更に高い注文価格の売り注文情報の生成)以外は、本件発明の技術的範囲に含まれる余地はないため、損害額算定の基礎から除外する必要がある。 なお、実質的にみても、本件発明の構成のうち、構成要件Hに係る構成 以外は、乙5文献に開示されているように、公知技術であったのであり、構成要件Hに該当しない取引は、単に公知技術を使用しているにすぎないから、このような取引に基づく利益を損害額算定の基礎に含めることはできない。 イ消費税相当額について 原告は、特許法102条1項による損害に対する消費税相当額(8%)並 びに弁護士費用及び弁理士費用相当額に対する消費税相当額(10%)を請求している。 しかしながら、同項は、特許権者等において侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額に基づいて損害額を算定するものであるところ、仮に原告が消費税を受領したとしても、当該消費税は結 局納税されるため、最終的に原告に帰属する利益となるものではないから、当該消費税を「単位数量当たりの利益の額」に算入することはできない。この点につき、原告は、別途、消費税相当額の利益を受けられたことを全く明ら ため、最終的に原告に帰属する利益となるものではないから、当該消費税を「単位数量当たりの利益の額」に算入することはできない。この点につき、原告は、別途、消費税相当額の利益を受けられたことを全く明らかにしていない。 また、弁護士費用及び弁理士費用については、諸般の事情を斟酌して相当 と認められる額の範囲内に限り不法行為と相当因果関係に立つ損害と認められるものであって、これに更に消費税相当額を加算する理由はない。 3 争点2-2(特許法102条2項に基づく損害額等)について⑴ 争点2-2-1(特許法102条2項の適用の可否)について(原告の主張) 被告は、特許法102条2項について、本件において適用がないと主張する。 しかしながら、事業会社として被告サービスと市場において競合するFX取引業を営む原告子会社には、被告による特許権侵害行為がなかったならば利益を得ることができたという事情が認められる。そして、完全子会社が得る利益は、そのまま完全親会社の利益ということができるから、原告にも上記事情が認められる。 また、原告と原告子会社との間では、●(省略)●被告と原告とで利益を食い合う関係にあることから、同項の適用が認められるべきである。 したがって、本件においては、同項の適用又は類推適用が認められる。 (被告の主張)ア特許法102条2項の適用に際し、知的財産高等裁判所平成24年(ネ) 第10015号平成25年2月1日特別部判決(以下「平成25年判決」と いう。)は、「特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情」が必要であると判示している。そして、同項が推定の対象とする損害の種類は、特許権者等の販売利益等の減少による逸失利益であるから、同項適用の 侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情」が必要であると判示している。そして、同項が推定の対象とする損害の種類は、特許権者等の販売利益等の減少による逸失利益であるから、同項適用の前提事情が存在するというためには、原告自身に販売利益等の減少による逸失利益が生じたことを主張立証する必 要がある。 本件についてみると、原告は、本件期間において、本件発明を実施していなかったというにとどまらず、FX取引業自体を営んでいなかった上、金融商品取引業者としての登録を受けておらず、FX取引を業として行うことができなかった。そのため、平成25年判決にいう「特許権侵害行為がなかっ たならば利益が得られたであろうという事情」は存在しない。 したがって、同項は、本件に適用されないから、同項に係る原告の主張は、失当である。 イ原告の主張について 原告には「被告による特許権侵害行為がなかったならば利益を得ること ができたという事情」が認められないから、特許法102条2項の規定は適用又は類推適用(併せて、単に「適用」という。以下、本項において同じ。)されないことa 仮に原告子会社に何らかの逸失利益が生じていたとしても、原告が特許法102条2項に基づいて損害賠償を請求できる根拠とはならない こと原告は、完全子会社が得る利益は、そのまま完全親会社の利益といえるとして、被告による特許権侵害行為がなければ利益を得ることができたという事情が認められると主張する。 しかしながら、前記2⑴(被告の主張)イaと同様に、仮に原告子 会社において特許法102条2項の「特許権侵害行為がなかったならば 利益を得ることができたという事情」が認められたとしても しながら、前記2⑴(被告の主張)イaと同様に、仮に原告子 会社において特許法102条2項の「特許権侵害行為がなかったならば 利益を得ることができたという事情」が認められたとしても、原告と原告子会社は別の法人格を有する以上、両者の資産を一体視することはできないし、原告子会社の逸失利益がそのまま原告の逸失利益になるわけではない。とりわけ、金融商品取引業を行うことを禁止されていた原告において、FX取引業による売上げの減少による逸失利益があったと評 価する余地はない。 そのため、仮に原告子会社に何らかの逸失利益が生じていたとしても、原告自身について「特許権侵害行為がなかったならば利益を得ることができたという事情」が存在していることにはならない。 b 原告において、原告サービスについて何らその具体的内容が特定され ていないところ、被告サービスの提供によって原告サービスの売上げが減少するか否かは全く不明であり、そのため、「特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情」は認められないこと前記2⑴(被告の主張)イaのとおり、原告は、原告サービスについて何らその具体的内容を主張立証しておらず、原告子会社が本件発明 の技術的範囲に属するサービスを提供していたことを一切主張立証していない。 そうすると、特許法102条2項を適用する前提として、特許権者等による自己実施が必要であると解するのであれば、本件において同項が適用される余地はない。 また、平成25年判決のように「特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情」があれば同項を適用できると解したとしても、本件においては、原告子会社が顧客に提供しているFX また、平成25年判決のように「特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情」があれば同項を適用できると解したとしても、本件においては、原告子会社が顧客に提供しているFX取引は様々であるところ、そのうち、どれが原告サービスに当たるのかすら、全く特定されていない。さらに、原告は、原告サービスが被告サービス と競合関係に立つことについて、一切主張立証を行っていない。 そうすると、被告サービスの提供によって、原告サービスの売上げが減少したか否かは全く不明であるから、同項適用の前提となる「特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情」の存在は認められない。 原告ライセンス契約の存在は、特許法102条2項を適用する根拠とな らないこと原告は、特許法102条1項の場合と同様に、●(省略)●同条2項の適用が認められるべきであると主張する。 しかしながら、原告による上記主張は、●(省略)●のであるから、特許権者等の販売利益等の減少による逸失利益に係る損害額の算定方法を 定める同項が、本件において類推適用も含めて適用されることを何ら基礎付ける事情とはなり得ない。 そうすると、原告ライセンス契約の存在は、同項を適用する根拠とはならない。仮に、原告ライセンス契約に基づいて原告に逸失利益が存在するとしても、同項に基づく損害額が認められるべき理由はない。 ⑵ 争点2-2-2(特許法102条2項に基づく損害額)について(原告の主張)アトレーディング損益 甲12の「トレーディング損益」が被告におけるカバー取引による収益及びスプレッド収益に対応する。 そして、平 て(原告の主張)アトレーディング損益 甲12の「トレーディング損益」が被告におけるカバー取引による収益及びスプレッド収益に対応する。 そして、平成30年3月期及び平成31年3月期の2年間における被告のトレーディング損益の合計は、84億5000万円である(甲12)。 他方で、被告が本件特許権を侵害していた本件期間は1年9か月(1.75年)である。このうち、被告サーバを使用した被告サービスが占める割合は、少なく見積もっても5%は下らない。 そうすると、本件期間において、被告が被告サーバを使用して得たトレ ーディング損益は、3億6968万7500円(=84億5000万(円)×1.75/2(年)×0.05)となる。 なお、被告サービスに係る全取引数量を損害額算定の基準とすべきことについては、前記2⑵(原告の主張)イのとおりである。 被告は、被告サーバを使用した取引によるトレーディング損益を観念す ることができないと主張する。 しかしながら、トレーディング損益の額は、全取引数量に占める被告サービスの取引数量が占める割合で按分することによって算出することができるから、被告の主張は、トレーディング損益の割り振りの問題にすぎず、特許法102条2項の侵害利益を算出する上で議論する必要はない。 また、被告は、トレーディング損益は、同項の侵害利益に当たらないと主張する。しかしながら、被告がいうところの相殺もカバー取引も、顧客との取引が行われた際に、相場変動によるリスクを軽減するために行われるものであって、顧客との取引と密接不可分の取引であり、いずれの利益も被告の侵害行為(被告サーバを使用した取引の提供)により被告 客との取引が行われた際に、相場変動によるリスクを軽減するために行われるものであって、顧客との取引と密接不可分の取引であり、いずれの利益も被告の侵害行為(被告サーバを使用した取引の提供)により被告が得た 利益にほかならない。そして、被告が主張するトレーディング損益は、この相殺による利益とカバー取引による利益の双方を含むものであるから、被告サーバを使用して行われた取引のトレーディング損益全体が、本件における同項の侵害利益に該当する。 イ手数料収入 甲12の「手数料収入」が被告における手数料収入に対応する。そして、本件期間において、被告が顧客から手数料を取得していたサービスは被告サービスのみであるから 、平成30年3月期及び平成31年3月期に被告が得た手数料収入である2億6200万円は、全て被告サーバを使用した被告サービスによるものである。 そうすると、本件期間において、被告が被告サービスを使用して得た手 数料収入は、2億2925万円(=2億6200万(円)×1.75/2(年))となる。 なお、被告サービスに係る全取引数量を損害額算定の基準とすべきことについては、前記2⑵(原告の主張)イのとおりである。 被告は、本件発明が、決済注文をシフトさせることを規定したものであ るという前提に立った上で、本件期間を通じて、決済注文が約定した際の手数料を無料にしていたとして、決済をシフトさせる取引によって得られる手数料収入は存在しないと主張する。 しかしながら、乙25では、平成28年1月4日より決済手数料を無料とするキャンペーンが開始されたことが説明されているのみであり、本件 期間において、決済手数料が無料とされていたことは何ら示 しかしながら、乙25では、平成28年1月4日より決済手数料を無料とするキャンペーンが開始されたことが説明されているのみであり、本件 期間において、決済手数料が無料とされていたことは何ら示されていない。 また、本件発明は、シフトが生じる注文以外の注文についても、「複数の買い注文情報」、「複数の売り注文情報」として構成要件で規定されているのであって、そのうちの特定の注文に係る手数料を徴収していないとしても、特許権侵害品である被告サーバを使用して行われる取引から手数 料収入を得ていることに変わりはない。 ウ限界利益額 被告サーバの使用について、そのために直接関連して追加的に必要となった経費は観念できないから、特許法102条2項の限界利益を算定するに当たって控除すべき経費の額はゼロである。 そうすると、被告が本件特許権を侵害することによって得た限界利益額は、5億9893万7500円(=3億6968万7500(円)+2億2925万(円))を下らない。 したがって、同項を適用することに基づいて損害を算出すると、その損害は5億9893万7500円を下らない。 被告の主張について a 経費について⒜ 経費額の立証がないこと被告は、システム利用料、広告宣伝費及び販売促進費が、限界利益を算定するに当たって経費として控除されるべきであると主張するが、その具体的な額について、何ら立証がない。 ⒝ システム利用料について被告は、価格表(乙26)を示して、被告が取引件数に応じたシステム使用料を支払っていると主張する。 しかしながら、上記価格表は、被告も属するグループ企業の作成に係る価格表(2009年2月時点)であ 被告は、価格表(乙26)を示して、被告が取引件数に応じたシステム使用料を支払っていると主張する。 しかしながら、上記価格表は、被告も属するグループ企業の作成に係る価格表(2009年2月時点)であって、同じグループに属する 被告が、本件期間において、同価格表に従った金額のシステム使用料を支払っていたことは、何ら示されていない。 仮に、形式的に被告からシステム利用料が支払われていたとしても、それは実質的な意味の経費ではなく、同じグループ企業内で利益を移転しただけのことであるから、限界利益の算出に当たって、当該金額 を経費として控除すべきではない。 ⒞ 広告宣伝費について広告宣伝費は、被告サーバを使用して顧客に対して1回取引を提供する都度必要となる経費ではないから、侵害行為に直接関連して追加的に必要となった経費とはいえない。また、乙27、28以外の広告 宣伝の内容についても、何ら明らかではない。 ⒟ 販売促進費について販売促進費も、被告サーバを使用して顧客に対して1回取引を提供する都度必要となる経費ではないから、侵害行為に関連して追加的に必要となった経費とはいえない。 また、乙27からは実際にセミナーが開催されたのかすら明らかで はないし、被告サービスに関するセミナーは2回のみ開催されたとされるにとどまる。さらに、乙28についても同様であり、実際にセミナーが開催されたのかどうかも、セミナーの内容自体も、明らかではない。 b 寄与度について ⒜ 本件発明の技術的価値について被告は、本件発明の技術的価値が乏しいと主張するものの、その内容は、無効論における被告の主張と同様であり b 寄与度について ⒜ 本件発明の技術的価値について被告は、本件発明の技術的価値が乏しいと主張するものの、その内容は、無効論における被告の主張と同様であり、理由がない。 また、被告の広告宣伝(甲7の1)においては、被告サービスが本件発明の特徴を売りにした取引方法であることが端的に示されてい る。 さらに、被告は、注文価格を相場価格に追従させる構成を備えつつ、本件発明の技術的範囲に属さない取引方法を採用しているFX取引業者は多数存在すると主張する。しかしながら、証拠(乙39ないし48)によっても、このうちいずれがシフト機能を有するサービスで あるのかは明らかではない。仮に、これらがシフト機能を有するサービスであったとしても、それがどのような処理に従って行われるものであるのか、本件発明の技術的範囲に属するのか否かも明らかではない。 したがって、被告が指摘する事情は、寄与度減額を認める理由には ならない。 ⒝ 本件発明以外の発明の実施について被告は、被告サーバでは、本件発明以外にも被告の各発明も実施されていたと主張する。 しかしながら、被告サーバが被告の各発明の技術的範囲に属するか 否かは明らかではない上、仮に他の特許発明が実施されていたとして も、そのことから本件発明の寄与度が低いとはいえない。 また、下記に掲げる被告発明1、3、5は、いずれも被告の広告宣伝(甲7の1)で述べられている被告サービスの特徴と無関係であることは一見して明らかである。さらに、下記に掲げる被告発明2、4は、本件発明のように、相場価格と注文価格とを比較してシフトが生 伝(甲7の1)で述べられている被告サービスの特徴と無関係であることは一見して明らかである。さらに、下記に掲げる被告発明2、4は、本件発明のように、相場価格と注文価格とを比較してシフトが生 じるわけではないから、被告サーバが被告発明2、4の技術的範囲に属さないことは明らかである。 c 覆滅事由について⒜ 競合サービスについて被告が主張する競合サービスについては、前記b⒜のとおり、各サ ービスがシフト機能を有するサービスか、シフト機能を有するサービスであったとして、それがどのような処理に従って行われるものであるのか、本件発明を侵害しないものであるのかなどは、いずれも明らかではない上に、これらの各サービスの市場シェア等も明らかではないから、これらの各サービスが存在することをもって、覆滅事由が存 在するとはいえない。 ⒝ 被告の営業努力について被告は、被告サービスを含む被告のサービスを拡販するため、多額の広告宣伝費、販売促進費を費やしてきたなどと主張する。 しかしながら、被告が費やしたとされる広告宣伝費、販売促進費が、 被告サービスの広告宣伝や販売促進に用いられたものであるか否かや、その具体的内容及び金額等も明らかではない上に、広告宣伝費、販売促進費を費やすというのは、およそ営利会社であれば当然の営業努力であり、これをもって、格別の営業努力とは到底いえない。 エ弁護士費用及び弁理士費用 原告は、被告が本件特許権の侵害に及んだことにより、本件訴訟の提起を 余儀なくされたものであり、本件訴訟が特許権侵害訴訟という専門性が高く、弁護士及び弁理士に依頼するのでなければ、訴訟を追行することが著しく困難な類 害に及んだことにより、本件訴訟の提起を 余儀なくされたものであり、本件訴訟が特許権侵害訴訟という専門性が高く、弁護士及び弁理士に依頼するのでなければ、訴訟を追行することが著しく困難な類型の訴訟であることに照らせば、原告が被った被告による不法行為と相当因果関係が認められる弁護士費用及び弁理士費用相当の損害額は、1億円を下らない。 オ消費税相当額原告は、特許法102条1項又は2項に基づいて算出される逸失利益額のうち、10億円を請求するところ、これに対する消費税相当額(8%)並びに弁護士及び弁理士費用相当額である1億円に対する消費税相当額(10%)は、それぞれ8000万円及び1000万円である。 被告は、知的財産高等裁判所平成29年(ネ)第10094号、同30年(ネ)第10003号同年8月29日判決を指摘して、被告が受領した消費税をもって原告の損害額と推定することはできないと主張する。 しかしながら、同判決は、単に消費税相当額の利益を受けたか否かが証拠上明らかではなかったために、消費税相当額の損害を認定しなかったに すぎない。 また、被告は、トレーディング損益については、消費税の課税対象ではないと主張する。しかしながら、ここでの問題は、原告が受領する損害賠償金が「その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるもの」(消費税基本通達5-2-5)に当たり消費税が課税されるという点であるか ら、被告自身が消費税を受領しているかどうかは問題とならない。 カ小括以上によれば、原告は、被告に対し、11億9000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成31年3月4日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張) ア被告サー 告は、被告に対し、11億9000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成31年3月4日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張) ア被告サービスに係る取引数量の全体を損害賠償の算定の基礎とする原告の主張は誤りであること原告は、特許法102条2項に基づく損害額の算定についても、被告サービスに係る取引数量の全体をその算定の基礎としている。しかしながら、前記2⑵(被告の主張)アのとおり、被告サービスには本件特許権を全く侵害 しない態様の取引も含まれるのであるから、被告サービスに係る取引数量の全体を損害額算定の基礎とする原告の主張には、理由がない。 イトレーディング損益は、特許法102条2項所定の「侵害の行為により」受けた利益に該当しないこと原告は、特許法102条2項に関して、被告のトレーディング損益を、損 害額の算定において考慮している。 しかしながら、一般に、FX取引業者の収入は、手数料収入とトレーディング損益(顧客取引とカバー取引との差額)によって構成されるものであり、そもそも、原告がいう「スプレッド収入」を収益として計上している金融機関は存在しない。 また、被告は、多数の顧客の注文(被告サービス以外を含む全ての注文)を一定数量や一定時間で合算し、売り注文と買い注文を相殺した後、差分数量のみについてカバー取引を行っているため、被告サーバを使用した取引によるトレーディング損益というものは、そもそも観念することができない。 そして、被告のトレーディング損益は、本件特許権の侵害行為によって得 られた利益ではないから、同項に基づく損害額の算定の基礎には含まれない。 すなわち、同項は、侵害者が「その侵害の行為によ そして、被告のトレーディング損益は、本件特許権の侵害行為によって得 られた利益ではないから、同項に基づく損害額の算定の基礎には含まれない。 すなわち、同項は、侵害者が「その侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額」を特許権者等の損害の額と推定する規定であるところ、原告によれば、本件における被告の侵害行為は、被告サービスを被告サーバからインターネット回線等を通じて、顧客に提供する行為ということである。 そのため、仮に原告の主張を前提としても、本件における同項の「侵害の行 為により」受けた利益の額は、上記侵害行為により受けた利益の額が基準となるはずである。他方で、原告が主張するトレーディング損益とは、顧客取引(FX取引業者が顧客との間で行う取引)とカバー取引(FX取引業者が顧客との取引により発生する為替変動リスクを回避するために他の金融機関と行う取引)の差額を指すものである。 しかるに、被告において、カバー取引は、多数の顧客の注文(被告サービス以外を含む全ての注文)を一定数量や一定時間で合算し、売り注文と買い注文を相殺した後、差分数量のみについて行っているところ、被告におけるカバー取引は被告サービスとは全く異なる注文方法によるものであるし、顧客取引とカバー取引とは何ら連動していない。すなわち、顧客との関係は、 顧客にFX取引サービスを提供して手数料収入を得ることで尽きているのであり、被告が他の金融機関との間で行うカバー取引は、顧客との取引とは別個独立であり、それ自体で完結した取引である。したがって、カバー取引に基づく収入を損害額算定の基礎に含めることは、明らかに不当である。 このように、被告は、カバー取引を行うことによって初めてトレーディン グ損益を得ているの 。したがって、カバー取引に基づく収入を損害額算定の基礎に含めることは、明らかに不当である。 このように、被告は、カバー取引を行うことによって初めてトレーディン グ損益を得ているのであるから、トレーディング損益は、原告が主張するところの「侵害の行為」により受けた利益には当たらない。 したがって、被告のトレーディング損益を同項に基づく損害額算定の基礎に含めることはできない。 ウ本件特許権を侵害する態様で行われる取引について、被告は手数料収入を 得ていないこと原告は、被告の手数料収入について、被告サーバを使用した被告サービスによるものを損害額算定の基礎として主張する。 しかしながら、本件発明は、売り注文を決済注文とする取引において、最も高い注文価格を含む売り注文(決済注文)が約定した場合に、最も高い売 り注文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報を生成するという 処理を規定したものであるところ、被告は、本件期間を通じて、決済注文が約定した際の手数料を無料としているから(乙25)、上記取引によって得られる手数料収入は存在しない。 エ控除すべき経費が存在すること原告は、被告サーバの使用について、控除すべき経費の額はゼロであると 主張する。 しかしながら、少なくとも、以下の経費は、いずれも、被告サーバの使用に直接関連して追加的に必要となった経費に該当するものであり、特許法102条2項の限界利益を算定するに当たって控除すべき経費に該当する。 システム使用料 被告は、被告サービスを顧客に提供するに当たり、取引件数に応じてシステム使用料を支払っている(乙26)。したがって、システム使用料は、被告サーバの システム使用料 被告は、被告サービスを顧客に提供するに当たり、取引件数に応じてシステム使用料を支払っている(乙26)。したがって、システム使用料は、被告サーバの使用に直接関連して追加的に必要となった経費に当たる。 広告宣伝費被告は、被告サービスを提供するに当たり、著名人のアンバサダーへの 起用、各種マネー誌への広告出稿、書籍とのタイアップ企画、ウェブ広告の展開、テレビCMの展開等、各種媒体を通じた広告宣伝を行っていた(乙27、28)。これらの広告宣伝のために要した費用は、被告サーバの使用に直接関連して追加的に必要となった経費に当たる。 販売促進費 被告は、被告サービスを提供するに当たり、被告サービスに関する無料の対面セミナー等を行ってきた(乙27、28)。これらのセミナー等のために要した費用は、被告サーバの使用に直接関連して追加的に必要となった経費に当たる。 オ被告の利益に対する本件発明の貢献に応じた損害額の減額がなされるべ きこと 被告の利益に対する本件発明の貢献は極めて乏しいこと本件発明は、従来技術と多くの点において共通しており、単なる従来技術を組み合わせたものにすぎず、本件発明の技術的重要性又は技術的価値は極めて乏しい。 また、本件発明は、複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売 り注文が約定すると、複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報を生成するという極めて限定的な構成のみをその対象とするものである。そして、現在においても、注文価格を相場価格に追従させる構成を備えつつ、本件発明の技術的範囲に属さない取引方 注文価格の売り注文情報を生成するという極めて限定的な構成のみをその対象とするものである。そして、現在においても、注文価格を相場価格に追従させる構成を備えつつ、本件発明の技術的範囲に属さない取引方法を採用しているFX取引業者は、多数存在する。このように、 相場追従機能を採用するとしても、本件発明に係る構成を用いる必然性は全くなく、その他の様々な選択肢を取り得るのであるから、このような観点からしても、本件発明の技術的価値が乏しいことは明らかである。 したがって、このような技術的価値の乏しい本件発明による被告の利益に対する貢献の程度は、ゼロに等しい。 被告サービスにおいては、本件発明以外に被告の発明も実施されていたこと仮に本件発明が被告サービスの売上げに寄与していると解するのであれば、被告サービスにおいて実施されていた下記の各発明も被告サービスの売上げに貢献しているということになるはずであるから、当該各発明の 寄与率により被告の利益の額を按分すべきである。 ①被告発明1(乙29)出願年月日:平成26年1月27日出願番号:特願第2014-12450号登録年月日:平成30年1月26日 登録番号:特許第6279914号 発明の名称:金融情報処理装置、金融情報処理方法、およびプログラム②被告発明2(乙30)出願年月日:平成26年5月28日出願番号:特願第2014-110510号登録年月日:平成28年4月15日 登録番号:特許第5918806号発明の名称:金融情報処理装置、金融情報処理方法、およびプログラム -110510号登録年月日:平成28年4月15日 登録番号:特許第5918806号発明の名称:金融情報処理装置、金融情報処理方法、およびプログラム③被告発明3(乙31)出願年月日:平成28年2月3日出願番号:特願第2016-18810号 登録年月日:令和2年2月27日登録番号:特許第6667306号発明の名称:金融情報処理装置、金融情報処理方法、およびプログラム④被告発明4(乙35)出願年月日:平成28年3月14日 出願番号:特願第2016-49233号登録年月日:平成30年8月10日登録番号:特許第6383747号発明の名称:金融情報処理装置、金融情報処理方法、およびプログラム⑤被告発明5(乙36) 出願年月日:平成28年9月5日出願番号:特願第2016-172521号登録年月日:令和2年8月5日登録番号:特許第6745172号発明の名称:金融情報処理装置、金融情報処理方法、およびプログラム カ特許法102条2項の推定を覆滅する事由が存在すること 競合サービスが多数存在したこと特許法102条2項の推定を覆滅する事由として、被告サービスと競合する他のFX取引サービスが多数存在していた。 すなわち、被告サービスは、市場における需要者によって、他のFX取引業者が提供するサービスと共に、「リピート系注文」に分類されるもの と一般に認識されていた。そして、本件期間において、被告サービスと競合する他のFX取引サービ おける需要者によって、他のFX取引業者が提供するサービスと共に、「リピート系注文」に分類されるもの と一般に認識されていた。そして、本件期間において、被告サービスと競合する他のFX取引サービス(リピート系注文)として、以下のものが存在した。 No.業者名サービス名サービス開始時期① 株式会社アイネット証券ループイフダン2013年10月② ワイジェイFX株式会社(2014年3月1日に社名変更する以前は、株式会社サイバーエージェントFX)リピートトレール注文2013年12月③ 株式会社ジャパンネット銀行連続IFDOCO注文2013年12月④ ひまわり証券株式会社ループ・イフダン2014年7月⑤ 被告サイクル注文2014年10月⑥ 株式会社FXブロードネット(2014年12月1日に社名変更する以前は株式会社FXトレーディングシステムズ)トラッキングトレード2014年10月⑦ インヴァスト証券株式会社トライオートFX2014年11月⑧ 株式会社ライブスター証券iサイクル注文2015年1月 ⑨ 株式会社マネーパートナーズ連続予約注文2015年4月⑩ 東岳証券株式会社トレンドフォローイフダン2016年11月⑪ マネックス証券株式会社オートレール2017年1月⑫ 東岳証券株式会社オートレンジトレーディング2017年5月 なお、上記のうち、①②④⑥⑦⑧⑩⑪⑫のサービスは、いずれもコンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、相場価格の変動に追従し、相場価格を反映した注文発注を行う点において、本件発明と共通するものである。 以上のと 、いずれもコンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、相場価格の変動に追従し、相場価格を反映した注文発注を行う点において、本件発明と共通するものである。 以上のとおり、仮に被告が被告サービスを提供していなかったとしても、顧客は、それに替えて、競合企業のFX取引サービスを利用していた可能性が高い。 被告による格別の営業努力があったこと特許法102条2項の推定を覆滅する事由として、被告による格別の営 業努力が存在した。 すなわち、被告は、被告サービスを含む被告のサービスを拡販するため、格別の営業努力を尽くしたのであり、このような努力の甲斐があって、被告サービスは、厳しい市場競争の中でも、相当の市場シェアを獲得していた。 キ消費税相当額について原告は、特許法102条2項による損害に対する消費税相当額(8%)並びに弁護士費用及び弁理士費用相当額に対する消費税相当額(10%)を請求している。 しかしながら、同項は、侵害者が受けた「利益」の額をもって特許権者等 が受けた損害の額と推定するものであるところ、被告が手数料収入について 受領した消費税は結局納税されるため、最終的に被告に帰属する「利益」となるものではないから、同項の文言上、被告が受領した消費税をもって原告の損害額と推定することはできない(知的財産高等裁判所平成29年(ネ)第10094号、同30年(ネ)第10003号同年8月29日判決参照)。 さらに、トレーディング損益に関しては、そもそも消費税の課税対象ではな く、被告も消費税の徴収を行っていない。 また、弁護士費用及び弁理士費用については、諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内に限り不法行為と相当因果関係に そもそも消費税の課税対象ではな く、被告も消費税の徴収を行っていない。 また、弁護士費用及び弁理士費用については、諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内に限り不法行為と相当因果関係に立つ損害と認められるものであって、これに更に消費税相当額を加算する理由はない。 4 争点2-3(特許法102条3項に基づく損害額等)について (原告の主張)⑴ 取引高に基づく損害額(以下、当該原告の主張を「3項損害主張①」という。)ア被告サービスに係る取引高被告サービスにおいて売上高に相当するのは、被告が顧客との間で行うFX取引の取引高であるから、これを基準として、損害額を算定すべきである。 そして、2017年度及び2018年度における被告の総取引高は、245兆3980億円である(甲13)。他方で、本件期間は、1年9か月(1. 75年)である。このうち、被告の総取引高に占める被告サービスの取引高の割合は、5%を下らない。 そうすると、本件期間における被告サービスに係る取引高は、10兆73 61億6250万円(=245兆3980億(円)×1.75/2(年)×0.05)である。 イ実施料率 特許法102条3項に基づく損害額の算定において、実施に対し受けるべき料率は、①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、 それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れ つつ、②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、 重要性、他のものによる代替可能性、③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである。 上記①についてコンピュータテクノロジーに関する特許権のロイヤリティ料率の平均値は、正味売上げの3.1%、プログラム著作物のロイヤリティ料率は、同6.3%である(甲26)。 上記②、③について 上記②、③については、前記3⑵(原告の主張)ウb(寄与度について)、同c(覆滅事由について)において指摘した事柄が当てはまる。 特に、本件発明は、複数注文によるトラップをかけるとともに、相場に自動で追従する取引を実現するという、従来技術にはない特徴を有するものであって、その発明自体の価値は高い。そして、被告の広告宣伝(甲7 の1、8の1、2)では、上記特徴が被告サービスの最大の特徴点であるとして、大々的に紹介されているのであるから、被告サービスにおける売上げ及び利益への貢献は、極めて大きい。 また、侵害の態様としても、被告サービスは他のサービスと共に原告の特許権を侵害していたのであるから、このような競合他社の特許発明を蔑 ろにした被告の侵害態様は、極めて悪質である。 上記④について特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき、実施に対し受けるべき料率は、通常の実施料率に比べて自ずと高額になるし、まして、競合他社であり、繰り返し原告の特許権の侵害に及んでいる被告に対する実 施料率としては、なおさら高額となるのは明らかである。 本件の実施料率 し、まして、競合他社であり、繰り返し原告の特許権の侵害に及んでいる被告に対する実 施料率としては、なおさら高額となるのは明らかである。 本件の実施料率前記ないしを踏まえると、本件発明の実施に対し、原告が受けるべき実施料率は、取引高の5%を下らない。 ウ損害額したがって、本件において、特許法102条3項に基づいて算出される損 害額は、5368億0812万5000円(=10兆7361億6250万(円)×0.05)となる。 ⑵ 取引回数に応じた損害額(以下、当該原告の主張を「3項損害主張②」という。)ア被告サービスの取引回数 本件発明は、金融商品取引監視装置に関するものであり、本件では、その技術的範囲に属する被告サーバを「使用」したことによる損害賠償が問題となっているのであるから、被告サーバを「使用」した回数に当たる被告サービスの取引回数に応じて損害額を算定することも考えられる。 そして、前記⑴アのとおり、本件期間における被告サービスに係る取引高 は、10兆7361億6250万円である。また、被告サービスでは、1000通貨単位から取引が可能であるとされているから(甲7の1)、1ドル110円と仮定すると、1取引当たり11万円(1000ドル)の取引が行われる。 そうすると、本件期間における被告サービスの取引回数は、9760万1 477回(=10兆7361億6250万(円)÷11万(円/回))となる。 イ実施料被告サーバを用いて、1回(11万円分)の取引が行われることに対して、原告が受けるべき実施料の額は、100円を下回らない。 ウ損害額 したがっ 料被告サーバを用いて、1回(11万円分)の取引が行われることに対して、原告が受けるべき実施料の額は、100円を下回らない。 ウ損害額 したがって、取引回数に応じて特許法102条3項に基づく損害額を計算すると、97億6014万7700円(=100(円/回)×9760万1477(回))となる。 ⑶ 手数料収入及びトレーディング損益に応じた損害(以下、当該原告の主張を「3項損害主張③」という。) ア手数料収入が特許法102条3項に基づく損害額算定のロイヤリティべ―スとなることについては争いがない。 これに対し、被告は、本件発明の構成要件を充足しない態様の取引による手数料収入は、ロイヤリティベースに含まれないと主張する。 しかしながら、被告が本件発明の構成要件を充足しない態様の取引であ ると主張するもののうち、シフトが生じるもの以外の取引については、これらの取引も本件発明の構成要件において、「複数の買い注文情報」、「複数の売り注文情報」として規定されているのであって、構成要件を充足する態様の取引である。 また、被告が本件発明の構成要件を充足しない態様の取引であると主張 するもののうち、新規注文が2個以下の取引については、新規注文が2個以下の取引であっても、侵害品である被告サーバを使用して行われる取引である上、被告サーバを使用して行われる取引のほとんどは本件特許権を侵害するものであるから、その中にごく一部、例外的な取引が含まれているとしても、これを損害額の算定において控除すべきではない。 そもそも、被告の上記主張は、特定の注文だけを本件発明の構成要件に当てはめようとしている点で誤りである。 いるとしても、これを損害額の算定において控除すべきではない。 そもそも、被告の上記主張は、特定の注文だけを本件発明の構成要件に当てはめようとしている点で誤りである。 また、トレーディング損益も、特許法102条3項に基づく損害額算定のロイヤリティベースとなる。 これに対し、被告は、カバー取引について、顧客との取引とは別個独立 のそれ自体で完結した取引であるとして、トレーディング損益は本件にお ける損害賠償の対象とならないと主張する。 しかしながら、前記3⑵(原告の主張)アのとおり、被告がいうところの相殺もカバー取引も、顧客との取引が行われたことに応じて生じる、顧客との取引と密接不可分の取引である。また、カバー取引は、顧客に売る通貨の仕入れ行為に相当するものであるところ、特許侵害品が仕入れ販 売されている場合に、卸売業者との取引は顧客との取引ではないとして特許権侵害とは無関係であるとはせずに、仕入販売の場合の利益額は、卸業者からの仕入金額と顧客への販売金額の差額で算出することが一般的であり、本件では、これが被告の主張する「顧客取引の売買損益とカバー取引の売買損益との差額」に当たる。したがって、被告の上記主張は理由が ない。 イ実施料率以下の各事情からすると、本件において手数料収入及びトレーディング損益に乗じるべき実施料率としては、33%ないし50%が相当である。 売上げではなく、利益である手数料収入やトレーディング損益をロイヤ リティベースとして捉える場合、金額の点だけを考えたとしても、同じ実施料額とするためには、利益に乗じる実施料率を高率とせざるを得ない。 原告ライセンス契約(甲24、27)では ヤ リティベースとして捉える場合、金額の点だけを考えたとしても、同じ実施料額とするためには、利益に乗じる実施料率を高率とせざるを得ない。 原告ライセンス契約(甲24、27)では、●(省略)●これに対し、被告サービスという特定のサービスから得られる手数料収入及びトレーディング損益をロイヤリティベースとするのであれば、その分実施料率が 高率となって然るべきである。 ライセンス契約において重要なのは、許諾される知的財産権の数ではなく、必要な知的財産権が須く許諾されることである。 これを本件についてみると、本件特許権それ自体は1つの特許権であるとしても、その許諾がされなければ、被告は被告サービスを顧客に提供す ることができなかったのであるから、本件特許権は、それ自体単独で被告 サービスを営むために必要な知的財産権であって、許諾対象となる特許権の数が1つであることは、原告ライセンス契約の実施料率よりも低廉に収まることを意味しない。 原告ライセンス契約の実施料率は、原告の完全子会社である原告子会社との関係において、事前に定められたものであるのに対し、本件で問題と なる実施料相当額は、原告の競合他社に当たる被告との間で、かつ、既に特許権侵害が行われた後に、事後的に定められるべきものである。 (被告の主張)⑴ 損害額算定の基礎となる「侵害品の売上高」についてア FX取引の取引高は、特許法102条3項の損害額算定の基礎とはならな いこと(3項損害主張①について)原告は、被告サービスにおいて売上高に相当するのは、被告が顧客との間で行うFX取引の取引高であるから、これを基準として損害額が算定されるべきと主張する。 しかしな について)原告は、被告サービスにおいて売上高に相当するのは、被告が顧客との間で行うFX取引の取引高であるから、これを基準として損害額が算定されるべきと主張する。 しかしながら、以下のとおり、原告が主張するFX取引の取引高は、特許 法102条3項に基づく損害に当たって基準となる売上高とは異なる概念であって、「侵害品の売上高」ではないから、FX取引の取引高は、同項の損害額算定の基礎とはならない。 FX取引の取引高は、「侵害品の売上高」ではないこと売上高は、損益計算書に記載される項目の一つであり、商品・製品の販 売又は役務の給付による収益を意味する(乙64、乙65)。また、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則72条1項では、「売上高は、売上高を示す名称を付した科目をもって掲記しなければならない。」とされ、同条2項では、「前項の売上高の記載については、顧客との契約から生じる収益及びそれ以外の収益に区分して記載するものとする。」と されている。 他方で、被告のFX取引の取引高は、被告の顧客が被告との間で店頭FX取引を行った際の取引数量を円換算したものであり、被告の収益を示すものではない。すなわち、FX取引における取引高は、FX取引業者が得た収益の金額を示すものではなく、明らかに売上高とは異なる概念である。 FX取引の取引高を基準として実施料相当額を算定することは不合理 であることFX取引の取引高は、FX取引業者の収益とは異なる数値であるから、これを基礎として実施料相当額を算定することは不合理である。実際にも、原告が主張する売上高及び実施料相当額が極めて高額になってしまうという結果自体、上記不合理性を示すもの とは異なる数値であるから、これを基礎として実施料相当額を算定することは不合理である。実際にも、原告が主張する売上高及び実施料相当額が極めて高額になってしまうという結果自体、上記不合理性を示すものである。その上、ライセンス契約 において、取引高をライセンス料算定の基礎として用いるという慣行も存在しない。 イ被告サービスの取引回数は、特許法102条3項の損害額算定の基礎とはならないこと(3項損害主張②について)原告は、被告サービスの取引回数に応じて損害額を算定することを主張す る。 しかしながら、特許法102条3項による損害額の算定方法については、「原則として、侵害品の売上高を基準とし、そこに、実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。」とされている。そうすると、被告サービスの取引回数が同項の損害額算定の基礎とならないことは明らかである。 また、被告は、本件における損害額の算定に必要となる「侵害品の売上高」に相当する金額の詳細を明らかにしており、これを用いることにより、同項による損害額の算定は可能である。このような観点からしても、上記のような原則から離れて、被告サービスの取引回数に応じて損害額を算定する必要はない。 しかも、仮に、被告サービスの取引回数を基準として実施料相当額を算出 しようとすると、そこに乗じる「実施に対し受けるべき料率」を合理的に定めることが極めて困難となる。原告自身も、その主張する被告サービスの取引回数を基準とした場合の相当実施料率の合理性について、何ら具体的な説明を行うことができていない。 したがって、被告サービスの取引回数を同項の損害額算定の基礎とする原 告の主張は不合理であり、理由がない。 実施料率の合理性について、何ら具体的な説明を行うことができていない。 したがって、被告サービスの取引回数を同項の損害額算定の基礎とする原 告の主張は不合理であり、理由がない。 ウ本件発明の構成要件を充足しない態様の取引による手数料収入は、本件における「侵害品の売上高」に含まれないこと原告は、被告が被告サーバを使用する行為が本件特許権を侵害するとし、被告サービスに係る全取引が損害額算定の基礎に含まれると主張する。 しかしながら、被告サービスに係る取引には、本件発明の構成要件を充足しない態様の取引が数多く含まれており、そのような取引による売上高については、本件における「侵害品の売上高」に含まれない。 すなわち、前記2⑵(被告の主張)ア及び3⑵(被告の主張)アのとおり、①買い注文を決済注文とする取引、②取引開始時点において2個以下の新規 買い注文しか生成されない取引、③売り注文が相場価格の上昇に追従する取引(最も高い売り注文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報の生成)以外の取引は、いずれも本件発明の技術的範囲に含まれないから、これらについては、損害額算定の基礎から除外する必要がある。 エトレーディング損益は、被告サービスに係る売上げではなく、本件におけ る損害賠償の対象とならないことトレーディング損益は、顧客取引の売買損益とカバー取引の売買損益との差額と、顧客取引のスワップ損益とカバー取引のスワップ損益との差額の2つから構成されるところ、カバー取引とは、FX取引業者が顧客との取引により発生する為替変動リスクを回避するために他の金融機関と行う取引の ことを意味する。そして、被告と顧客との間の関係は、被告が顧客に対して FX取引サ 、FX取引業者が顧客との取引により発生する為替変動リスクを回避するために他の金融機関と行う取引の ことを意味する。そして、被告と顧客との間の関係は、被告が顧客に対して FX取引サービスを提供することで尽きており、被告が他の金融機関との間で行うカバー取引は、顧客との取引とは別個独立であり、それ自体で完結した取引である。また、被告がカバー取引を行う際には、被告サーバとは別個のサーバを用いている。 そうすると、被告は、被告サービスに係る取引を顧客との間で行った後、 自らの経営判断に基づいて、多数の顧客の注文を一定数量や一定時間で合算し、売り注文と買い注文を相殺した後、差分数量のみについて、被告サーバとは別個のサーバを用いて、他の金融機関との間でカバー取引を行っているのであるから、カバー取引に係るトレーディング損益は、被告サービスに基づく売上げではない。 したがって、本件発明と無関係のカバー取引に係るトレーディング損益は、特許法102条3項の損害賠償の対象とはならない。 オ手数料収入及びトレーディング損益の具体的金額について 手数料収入の具体的金額について被告サービスに係る手数料収入について、①本件期間(平成29年6月 9日から平成31年3月2日まで)における手数料収入の合計額と、②本件期間から消滅時効に係る期間を除いた期間(平成29年7月9日から平成31年3月2日まで)における手数料収入の合計額は、それぞれ、表1、表2のとおりである。 表1 手数料収入の合計額A列●(省略)●B列●(省略)●C列0円 D列0円 表2 手数料収入の合計額A列●(省略)●B列●(省略)●C列0円 計額A列●(省略)●B列●(省略)●C列0円 D列0円 表2 手数料収入の合計額A列●(省略)●B列●(省略)●C列0円D列0円 なお、各表のA列ないしD列に記載された手数料収入の内容は、以下のとおりである。 A列:各期間における被告・顧客間で行われた被告サービスに係るFX取引のうちの、新規注文を買い注文、決済注文を売り注文とするFX取引による手数料収入B列:A列に係るFX取引のうちの、取引開始時点において3個以上の新規注文を生成する取引による手数料収入 C列:A列に係るFX取引のうちの、売り注文が相場価格の上昇に追従する取引(最も高い売り注文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報の生成)による手数料収入D列:A列に係るFX取引のうちの、B列(新規注文が3個以上)に係るFX取引であり、かつ、C取引(相場追従)に係るFX取引である FX取引による手数料収入 トレーディング損益の具体的金額について顧客による注文とカバー取引とは何ら連動しておらず、両者の間に対応関係があるわけでもないから、1取引当たりのトレーディング損益は存在しないが、便宜的に、被告の該当期間における全取引数量に占める割合を 算出すると、①本件期間(平成29年6月9日から平成31年3月2日まで)におけるトレーディング損益の合計額と、②本件期間から消滅時効に係る期間を除いた期間(平成29年7月9日から平成31年3月2日まで)におけるトレーディング損益の合計額は、それぞれ、表3、表4のとおりである。 表3 トレーディング損益の合計額A列 除いた期間(平成29年7月9日から平成31年3月2日まで)におけるトレーディング損益の合計額は、それぞれ、表3、表4のとおりである。 表3 トレーディング損益の合計額A列●(省略)●B列●(省略)●C列●(省略)●D列●(省略)● 表4 トレーディング損益の合計額A列●(省略)●B列●(省略)●C列●(省略)●D列●(省略)● なお、各表のA列ないしD列は、前記において整理した態様と同様の取引に係るトレーディング損益を示すものである。 ⑵ 相当実施料率についてア特許法102条3項に基づく損害額の算定において、実施に対し受けるべき料率は、①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それ が明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきであ る。 そして、以下の事情に照らせば、本件における相当実施料率は、0.5%を上回ることはない。 なお、トレーディング損益については、そもそも損害賠償の対象とならないが、仮に損害賠償の対象とされるのであれば、トレーディング損益に係る カバー取引は本件発明の機能とは全く無関係の取引であるから、トレーディング損益に対する本件発明の貢献はゼロに等しいとされなければならない。 イ上記①について原告は、調査研究報告書の一部(甲26)を参照し とは全く無関係の取引であるから、トレーディング損益に対する本件発明の貢献はゼロに等しいとされなければならない。 イ上記①について原告は、調査研究報告書の一部(甲26)を参照して、コンピュータテクノロジーに関する特許権のロイヤリティ率や、プログラム著作物のロイヤリ ティ料率に関する主張をする。 しかしながら、特許権と著作権とはその保護対象が異なり、その市場価値も異なるから、本件において、著作物のロイヤリティ料率は無関係である。 また、上記調査研究報告書の他の部分(乙74)においては、「コンピュータテクノロジー」に係るロイヤリティ料率に関するアンケート結果の詳細 として、全体の半数は3%未満の実施料率である上、全体の16.7%が「1%未満」であるとされているほか、実施料率が「0.5%」の例が存在することも示されている。 したがって、原告が依拠する文献(甲26、乙74)によれば、本件における相当実施料率は、原告が主張する5%を大きく下回るというべきである。 ウ上記②について 本件発明の技術的価値は、極めて乏しいこと前記3⑵(被告の主張)オのとおり、本件発明の技術的重要性、技術的価値は極めて乏しい。 本件発明と代替性が認められる競合サービスが存在していたこと前記3⑵(被告の主張)カのとおり、本件発明と代替性が認められる 競合サービスが多数存在していた。そして、これらのサービスの存在は、本件発明についてその原出願日以前から、代替技術が多数存在し、本件発明の効果が何ら真新しいものではないことを裏付けるものであって、本件発明の技術的価値を強く否定する事情となる。 エ上記③について ついてその原出願日以前から、代替技術が多数存在し、本件発明の効果が何ら真新しいものではないことを裏付けるものであって、本件発明の技術的価値を強く否定する事情となる。 エ上記③について 被告の売上げや利益に対する本件発明の貢献は極めて小さいこと原告は、被告の広告(甲7の1、8の1、2)において、複数注文によるトラップをかけるとともに、相場に自動で追従する点が被告サービスの最大の特徴であるとして、当該特徴が大々的に紹介されていると主張する。 しかしながら、上記は、原告の極めて主観的な評価にすぎないし、本件 発明が被告の売上げや利益にどの程度貢献したのかは全く不明であって、原告の主張はおよそ根拠のない推測であるというほかない。 むしろ、前記3⑵(被告の主張)オのとおり、仮に本件発明が被告サービスの売上げに寄与していると解するのであれば、被告サービスにおいて実施されていた他の発明の貢献も考慮すべきであり、被告の売上げや利 益に対する本件発明の貢献は相対的にみて極めて小さいものとなる。 被告による実施態様は何ら悪質でないこと原告は、被告の侵害態様は極めて悪質であるなどと主張する。 しかしながら、被告が被告サービスとは別に顧客に提供していたサービスは、本件訴訟には全く無関係のものであるから、何ら原告の主張を裏付け るものではない。 また、被告サーバが本件発明の技術的範囲に属することになったのは、被告サーバの運用開始日(平成26年10月1日)から約2年半も経過した平成29年4月4日に、原告が事後的に特許請求の範囲の記載を被告サーバの構成に合わせる形で、本件特許について分割出願したためである。 そのため 運用開始日(平成26年10月1日)から約2年半も経過した平成29年4月4日に、原告が事後的に特許請求の範囲の記載を被告サーバの構成に合わせる形で、本件特許について分割出願したためである。 そのため、仮に被告による特許権侵害が認められるとしても、原告から悪 質であるなどと誹りを受ける理由は何ら存在しない。ましてや、被告は、前訴の控訴審の口頭弁論終結日(令和元年7月18日)に先立って、平成31年3月2日の時点で、自発的に、被告サーバの運用を停止している。 したがって、被告による実施態様は何ら悪質なものではない。 オ上記④について 原告は、被告が繰り返し原告の特許権の侵害に及んでいると主張する。しかしながら、原告の上記主張が具体的に何を指しているのか不明である。むしろ、被告は、前訴の控訴審の口頭弁論終結日に先立って被告サーバの運用を自発的に停止している。また、仮に本件特許権の侵害が認められるとしても、その期間は最大でも1年9か月であり、長期間にわたって被告が侵害に 及んだという事情もない。 そして、仮に一般論として、特許権侵害をした者に対する事後的な実施料率という観点が考慮されるとしても、前記エのとおり、被告サーバが本件発明の技術的範囲に属することになった経緯を踏まえると、被告による本件特許権の侵害が認められた場合であっても、被告の帰責性は極めて小さい。 また、原告は、原告及び被告が競合他社であることを指摘する。しかしながら、原告は、被告と異なり、FX取引業を行っていなかったのであるから、原告及び被告は競合他社ではない。また、この点を措くとしても、原告が参照する調査研究報告書(甲26)の平均値には、国内同業他社へのライセンスであることが既に織り込み済みであるから ったのであるから、原告及び被告は競合他社ではない。また、この点を措くとしても、原告が参照する調査研究報告書(甲26)の平均値には、国内同業他社へのライセンスであることが既に織り込み済みであるから、更に競合他社であることを考 慮することは、当該事実を二重に評価することとなり不適切である。 したがって、原告が主張する各事情を踏まえても、本件における相当実施料率を増加させる必要はない。 カ原告ライセンス契約の実施料率について(3項損害主張③について)特許権及び商標等通常実施契約書(甲27)によれば、原告ライセンス契約の実施料率は●(省略)●であるとされる。 しかしながら、原告ライセンス契約は、●(省略)●また、原告ライセンス契約においては、●(省略)●そのため、原告ライセンス契約の実施料率に依拠することは相当ではない。 さらに、原告ライセンス契約は、●(省略)●そのため、単一の特許権が問題となっている本件訴訟に原告ライセンス契約の実施料率を当てはめる のであれば、本件の実施料率は、同契約の実施料率よりもはるかに低廉なものとされなければならない。 なお、原告は、原告ライセンス契約に倣うのであれば、●(省略)●などと主張するものの、本件においては、被告が行っていた全てのサービスについての特許権侵害が主張されているわけではないから、原告の上記主張は明 らかに誤っている。 5 争点3(消滅時効の成否)について(被告の主張)原告は、平成27年2月19日、被告に対し、本件特許権とは別の特許権に基づいて、被告サービスに使用されているサーバ等の使用の差止めを求める特許権侵害 訴訟を提起し(乙49の1。東京地裁平成27年(ワ)第4461号)、その後、平成28年6月29日 は別の特許権に基づいて、被告サービスに使用されているサーバ等の使用の差止めを求める特許権侵害 訴訟を提起し(乙49の1。東京地裁平成27年(ワ)第4461号)、その後、平成28年6月29日には、本件特許権とは別の特許権に基づき、被告サービスに使用されているサーバの使用の差止めを求める特許権侵害訴訟を提起している(乙49の2。東京地裁平成28年(ワ)第21346号)。さらに、原告は、被告サーバの運用開始日(平成26年10月1日)から約2年半も経過した平成29年4 月4日に、特許請求の範囲の記載を被告サーバの構成に合わせる形で、本件特許に 係る出願を分割出願により行った上で、同年7月19日には、本件特許権に基づき、被告サービスに使用されているサーバの使用の差止めを求める特許権侵害訴訟(前訴)を提起している(乙49の3。東京地裁平成29年(ワ)第24174号)。 以上の事実経過によれば、原告が、遅くとも同年7月8日の時点で、被告による被告サーバの使用や被告サーバの構成について把握していたことは、明らかである。 そして、本件訴訟の提起日は、令和2年7月9日であるから、平成29年7月8日以前の不法行為に基づく損害賠償請求権については、消滅時効が完成している。 したがって、被告は、上記消滅時効を援用する。 (原告の主張)被告は、原告が、遅くとも平成29年7月8日の時点で、被告による被告サーバ の使用や被告サーバの構成について把握していたことは明らかであると主張する。 しかしながら、前訴の提起時点では、本件発明の構成要件との対比をする上で必要な被告サーバの内部処理(特にシフト機能に係る内部処理)は明らかになっておらず、これが明らかになったのは、甲11号証(前訴における乙12)が提出された平成30年3月2 構成要件との対比をする上で必要な被告サーバの内部処理(特にシフト機能に係る内部処理)は明らかになっておらず、これが明らかになったのは、甲11号証(前訴における乙12)が提出された平成30年3月27日である。 そうすると、どんなに早くとも同日までは、原告が「損害及び加害者を知った時」(民法724条)とはいえないから、本件訴訟が提起された令和2年7月9日の時点において、消滅時効は完成していない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の内容 ⑴ 本件明細書等には、次のとおりの記載があることが認められる。(甲6)ア技術分野「本発明は、取引の管理及び支援を行う技術に関する。本発明は、例えば、外国為替等の金融商品の取引を管理及び支援する装置等に適用することができる。」(段落【0001】) イ背景技術 「外国為替等の金融商品の取引方法として、成行注文(注文発注時点の相場価格で取引を行う注文形態)や指値注文(相場価格が予め指定された価格になった時点で取引を行う形態)等が知られている。従来、これらの注文形態、例えば指値注文による取引を、コンピュータシステムを用いて行う発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、この発明において は、予め設定された価格をポジションとする金融商品の注文を発注し、金融商品の相場価格がこの価格に至ったときにその注文を約定させることで取引を行わせる。」(段落【0002】)ウ先行技術文献「【特許文献1】 特開2006-99787号公報」(段落【0003】) エ発明が解決しようとする課題 「ここで、金融商品の価格は、常に不規則に変動しており、正確に予測することは実質的に不可能である。し 787号公報」(段落【0003】) エ発明が解決しようとする課題 「ここで、金融商品の価格は、常に不規則に変動しており、正確に予測することは実質的に不可能である。しかし、上記特許文献1においては、発注される注文情報の価格は一定であるため、人手によって行う取引であれば得る可能性のある利益が得られなくなるという問題もある。」(段落【000 4】)「本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、多くの利益を得る機会を提供できる金融商品取引管理装置、金融商品取引管理システム、金融商品取引管理システムにおける取引管理方法を提供することを課題としている。」(段落【0 005】)オ課題を解決するための手段「かかる課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための金融商品取引管理装置であって、前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する 買い注文情報生成手段と、前記買い注文の約定によって保有したポジション を、約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段とを有する注文情報生成手段と、前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え、前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は、それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報であり、前記注文情報生成手段は、前記複数の売り注文情報を一の注 文手続で生成し、前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、前記注文情報生成手段は、前記約定検知手段の 文手続で生成し、前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、前記注文情報生成手段は、前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて、前記複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりもさらに所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを特 徴とする。」(段落【0006】)カ発明の効果「本発明によれば、相場価格の変動により、元の第一注文価格や元の第二注文価格よりも相場価格の変動方向側に新たな第一注文価格の第一注文情報や新たな第二注文価格の第二注文情報を生成し、相場価格を反映した注文 の発注を行うことができる。これにより、コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、多くの利益を得る機会を提供できる。」(段落【0018】)キ発明を実施するための形態 発明の実施の形態1 「[システム構成]図1は、この実施の形態1の金融商品取引管理システムのシステム構成図及び機能ブロック図である。同図に示すとおり、金融商品取引管理システム1Aは、金融商品取引管理装置1と、n個(n≧1)のクライアント端末21~2nとを備えており、金融商品取引管理装置1とクライアント端 末21~2nは、WAN(WideAreaNetwork)としてのインターネット3 を介して相互に交信可能である。この実施の形態1の金融商品取引管理システム1Aは、金融商品として外国為替を取扱う。」(段落【0021】) 【図1】 「金融商品取引管理装置1は、金融商品の取扱業者が管理し運用す 」(段落【0021】) 【図1】 「金融商品取引管理装置1は、金融商品の取扱業者が管理し運用するサーバコンピュータであり、・・・」(段落【0022】)「図1に示す通り、金融商品取引管理装置1は、上述した各種プログラムとハードウェア資源とに基づいて実現される機能手段としてのデータ 処理部10、及び、データ処理部10にて処理される各種データが記録さ れるデータベース18を有する。データ処理部10は金融商品取引管理装置1において用いる各種データの生成、加工等の処理を行うものであり、更に、同じく機能手段としてのフロントページ配信部11、「注文情報受付手段」としての注文入力受付部12、入出金情報生成部13、「約定情報生成手段」としての約定情報生成部14、口座情報生成部15、「注文 情報生成手段」としての注文情報生成部16、データベース(DB)接続基底部17、「相場価格情報管理手段」としての価格情報受信管理部19を有している。」(段落【0025】)「注文情報生成部16は、注文入力受付部12が処理した情報に基づいて、成立した金融商品の注文に関する情報を生成する。ここでの注文には、 いわゆる成行注文、指値注文、逆指値注文に加え、イフダンオーダーも含まれる。」(段落【0028】)「金融商品取引管理システム1Aを利用する顧客は、クライアント端末2を用いて金融商品取引管理装置1にアクセスする。金融商品取引管理装置1のフロントページ配信部11は、アクセスのあったクライアント端末 2の表示部22に、当該売買の条件を入力するための入力画面を表示させる。顧客は、この入力画面に注文内容を入力する(ステップS1)。なお、入 ージ配信部11は、アクセスのあったクライアント端末 2の表示部22に、当該売買の条件を入力するための入力画面を表示させる。顧客は、この入力画面に注文内容を入力する(ステップS1)。なお、入力画面の構成については後述する。」(段落【0041】)「顧客が操作部21の操作により承認ボタン(図示せず)をクリックすると、金融商品取引管理装置1の注文情報生成部16はステップS1にて 入力されたデータに基づいて注文情報を生成する(ステップS8)。具体的には、上記手順において入力された複数のデータを、注文価格を単位としてまとめ、各情報の単位に、シーケンス番号テーブル184に記録された注文にシーケンス番号を付与することで各注文情報を形成する。なおこのとき、シーケンス番号テーブル184には、注文情報に使用されたシー ケンス番号を未使用の番号と識別するための情報が付与される。一回のス テップS8の手順にて生成される複数の注文情報は、同一種類の金融商品を第一の価格について指値注文する注文情報、及び第二の価格について指値注文する注文情報から成る注文情報群(以下単に「注文情報群」と称する。)を形成する。」(段落【0050】)「 [「いったんスルー」注文と「決済トレール注文」の処理手順の原理] 図4~図7は、この実施の形態1の金融商品取引管理装置1における、「いったんスルー注文」において取引が行われる際の処理手順の原理を模式的に示す概念図、図8~図12は、この実施の形態1の金融商品取引管理装置1における「決済トレール注文」において取引が行われる際の処理手順の原理を模式的に示す概念図である。」(段落【0054】) 【図7】 いて取引が行われる際の処理手順の原理を模式的に示す概念図である。」(段落【0054】) 【図7】 「ここで、「いったんスルー注文」とは、それぞれの新規注文を、新規注文を約定させる基準となる価格として設定された「第一注文価格」としての新規注文価格に対し、相場価格が、新規注文価格を超えて下落(又は上昇)したのちに再度新規注文価格に一致した後に約定するように設定された注文形態をいう(以下単に「いったんスルー注文」と記載する。本明 細書において同じ。)。また、「決済トレール注文」とは、それぞれの決済注文を、決済注文を約定させる基準となる価格として設定された「第二注文価格」としての決済注文価格に対し、相場価格が、決済注文価格を超えて上昇(又は下落)したのちに再度決済注文価格に一致した後に約定する注文であって、第二注文はトレール幅情報に基づいて第二注文価格が上 昇(又は下落)するように設定された注文形態をいう(以下単に「決済トレール注文」と記載する。本明細書において同じ。)。」(段落【0055】)「このように、「いったんスルー注文」においては、新規注文は、相場価格61が、想定買いレート51を超えて下落(又は上昇)したのちに再 度想定買いレート51に一致した後に約定するように設定されているので、下落相場が上昇相場に転ずる価格や(又は、上昇相場が下落相場に転ずる価格)に近い価格で取引を行える可能性が高くなり、含み損を抱えにくくする可能性を持たせることができる。」(段落【0064】)「また、「いったんスルー注文」においては、トレール幅情報を設けず、 相場価格61が想定買いレート51よりも大きく下落しても新規注文の約定価 性を持たせることができる。」(段落【0064】)「また、「いったんスルー注文」においては、トレール幅情報を設けず、 相場価格61が想定買いレート51よりも大きく下落しても新規注文の約定価格である想定買いレート51を下落方向に変更することを行わないので、新規注文のポジションの取得による含み損の発生を抑止させることができる。これにより、金融商品取引管理装置1及び金融商品取引管理システム1Aに用いて行う金融商品の取引において、相場価格61の変動 に伴う不利益の発生を抑止すると共に、多くの利益を得る機会を提供できる。」(段落【0065】) 【図12】 「このように「決済トレール注文」においては、決済注文は、相場価格62が、想定売りレート54を超えて上昇(又は下落)したのちに再度想定売りレート54に至った後に約定するように設定されているので、上昇 相場が下落相場に転ずる価格や、下落相場が上昇相場に転ずる価格に近い価格で取引を行える可能性が高くなり、取引により大きな利益を得られる可能性を持たせることができる。また、決済注文は、相場価格62と発注後の決済の基準となる価格である想定売りレート54との値幅が所定のトレール幅以上になった場合に、トレール情報に基づいて、相場価格62 が上昇方向(又は下落方向)に移動されるように設定されるので、相場が 大きく変動した場合における利益を大きく確保することを可能にする。これにより、コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、多くの利益を得る機会を提供できる。」(段落【0076】)「[シフト機能]金融商品取引管理装置1や金融商品取引管理システム1Aにおいて、既に ータシステムを用いて行う金融商品の取引において、多くの利益を得る機会を提供できる。」(段落【0076】)「[シフト機能]金融商品取引管理装置1や金融商品取引管理システム1Aにおいて、既に 発注した新規注文と決済注文をそれぞれ約定させたのち、「シフト機能」による処理を併用した取引を行うことも可能である。この「シフト機能」による注文は、上述した、「いったんスルー注文」や「決済トレール注文」や、各種のイフダン注文(例えば後述する「リピートイフダン注文」や「トラップリピートイフダン注文」)等に基づいて、新規注文と決済注文が少 なくとも1回ずつ約定したのちに、更に新規注文や決済注文が発注される際に、先に発注済の注文の価格や価格帯とは異なる価格や価格帯にシフトさせた状態で、新たな注文を発注させる態様の注文形態である。この「シフト機能」の詳細は後述する。」(段落【0078】)「図13においては、売買希望通貨ペア選択ボタン401にて「USド ル/日本円(日本円でUSドルを売買する)」を選択し、注文金額入力欄402に「10万ドル」が入力され、スタート価格入力欄に「100.50円」が入力され、注文種類選択欄404において「第一注文が新規の買いの指値注文」が選択され、トラップ本数入力欄405に「1」本が入力され、利益金額入力欄407に「50000円」が入力され、トラップ値 幅入力欄406に「0.20円」が入力され、いったんスルー選択欄408及び決済トレール選択欄409aが選択された状態(チェックが入力された状態)で、トレール幅入力欄409bに「0.20」円が選択され、シフト機能選択欄410が未選択の状態、ストップロス選択欄411aが選択された状態で、ストップロス価格入力欄411bに「98.00」円 が入力された状態 欄409bに「0.20」円が選択され、シフト機能選択欄410が未選択の状態、ストップロス選択欄411aが選択された状態で、ストップロス価格入力欄411bに「98.00」円 が入力された状態が示されている。」(段落【0085】) 【図13】 「図14は、注文情報生成部16によって生成されて注文テーブル18 1に記録された、注文情報群を模式的に示した図である。なお、同図に示す態様のテーブルは、フロントページ配信部11によってクライアント端末2の表示部22にも画像表示される。」(段落【0092】)「図14に示す通り、注文情報群1810Aは、第一の価格について逆指値注文をする、「第一順位の注文情報」としての新規注文情報1810 1、第二の価格について逆指値注文をする「第二順位の注文情報」を形成する、「第一の決済注文情報」としての決済注文情報18102、及び、「第二順位の注文情報」を形成する、「第二の決済注文情報」としてのストップロス注文情報18103から成る。ここで、「第一順位の注文情報」は、約定の順序としての優先順位の高い注文情報であり、「第二順位の注 文情報」は、約定の順序としての優先順位の低い注文情報である。」(段 落【0093】) 【図14】 発明の実施の形態2「図23乃至図33に、この発明の実施の形態2を示す。」(段落【0118】) 【図23】 【図33】 「この実施の形態2の金融商品取引管理システムに 【図23】 【図33】 「この実施の形態2の金融商品取引管理システムにおいては、「いったんスルー注文」と「決済トレール注文」とを、「トラップリピートイフダン注文」と組み合わせた状態を示す。この「トラップリピートイフダン注文」とは、同一の金融商品の、それぞれ異なる価格において発注された、 複数の第一注文、及び、複数の第二注文の、注文と発注とを繰り返し行うように設定する注文をいう。」(段落【0119】) 発明の実施の形態3「この実施の形態3の金融商品取引管理システムにおいては、「いったんスルー注文」と「決済トレール注文」とを、「らくトラ」による注文と 組み合わせ、さらに「シフト機能」を行わせる状態を示す。この「らくトラ」による注文とは、顧客の入力等に基づいて上限価格と下限価格を設定し、この上限価格と下限価格との間に、複数の第一注文、及び/又は、複数の第二注文を設定する注文形態をいう。」(段落【0138】)「以下、この実施の形態3における構成と具体的処理内容を示す。ここ では、「第一注文」をイフダン注文の新規注文、「第二注文」をイフダン注文の決済注文として発注し、実施の形態2と同様の「トラップリピートイフダン注文」として取引を行わせ、さらに「シフト機能」を行わせる構成に基づいて説明する。」(段落【0139】)「ここで、シフト機能について説明する。」(段落【0143】) 「例えば、この実施の形態3において、実施の形態2の図33と同じ状態、即ち、新規注文B1、B2、B3、B4、B5と決済注文S1、S2、S3、S4、S5とがそれぞれ約定した状態を考える。このとき、入力画面4 、この実施の形態3において、実施の形態2の図33と同じ状態、即ち、新規注文B1、B2、B3、B4、B5と決済注文S1、S2、S3、S4、S5とがそれぞれ約定した状態を考える。このとき、入力画面40において、図34に示すように、シフト機能選択欄429にチェックが入った状態で注文情報群1810Bの生成が行われた場合、注文情報 生成部16は、決済注文S1、S2、S3が約定した価格である1ドル= 102.40円を基準として、注文情報群1810Bの新規注文B1、B2、B3、B4、B5及び決済注文S1、S2、S3、S4、S5の取引価格をそれぞれシフトさせる。」(段落【0144】)「具体的には、例えば、図35に示す、(シフトされる前の)新規注文B1、B2、B3、B4、B5や決済注文S1、S2、S3、S4、S5 を発注させる新規注文情報18111、~18115や決済注文情報18116~18120(図24参照)が生成された際の相場価格64が、図35の点P1に示す、1ドル=99.50円であり、決済注文S1、S2、S3が約定した際の相場価格64が、点P2に示す1ドル=102.40円であった場合を考える。このとき、注文情報生成部16は、相場価格と それぞれの注文との上下関係と価格差が等しくなる状態で、新規注文情報18111、~18115や決済注文情報18116~18120の注文価格情報181Gをシフトさせる。例えば、図35に示す、新規注文B5は、点P1の相場価格64に対して、(1ドル=)99.50円—(1ドル=)99.20円=(1ドル)0.30円下方に位置するので、シフト後 は、点P2に示す、相場価格の(1ドル=)102.40円よりも(1ドル=)0.30円下方である、(1ドル=)102.10円にシフトさせる。そして、 ル)0.30円下方に位置するので、シフト後 は、点P2に示す、相場価格の(1ドル=)102.40円よりも(1ドル=)0.30円下方である、(1ドル=)102.10円にシフトさせる。そして、新たに生成される新規注文情報18115の注文価格情報181Gも、(1ドル=)102.10円に設定される。他の新規注文B1、B2、B3、B4や決済注文S1、S2、S3、S4、S5も、同様の処 理が行われる。」(段落【0145】) 【図35】 「このようにして、シフト機能を用いて生成された新たな新規注文B1、B2、B3、B4、B5や新たな決済注文S1、S2、S3、S4、S5は、元の新規注文B1、B2、B3、B4、B5や元の決済注文S1、S2、S3、S4、S5が、新規注文B1、B2、B3、B4、B5同士の 値幅や元の決済注文S1、S2、S3、S4、S5同士の値幅、特定の新規注文(例えばB1)と対応する特定の決済注文(例えばS1)との価格差を維持した状態で上方(又は下方)の価格帯にシフトする。図35においては、新規注文の上限価格と下限価格の間の元の価格帯Q1が、新規注文情報18111、~18115や決済注文情報18116~18120 (図24参照)が生成された際の相場価格64との関係を維持した状態で、 新たな価格帯Q2にシフトした状態を示している。」(段落【0146】)「このようにして、シフト機能によって新たな注文価格情報181Gが設定された、新たな新規注文情報18111、18112、18113、18114、18115と、新たな決済注文情報18116、18117、18118、18119、18120を含む新たな注文情 81Gが設定された、新たな新規注文情報18111、18112、18113、18114、18115と、新たな決済注文情報18116、18117、18118、18119、18120を含む新たな注文情報群1810B が生成される。そして、元の注文情報群1810Bを構成するそれぞれの注文情報18111~18121はキャンセルされる。」(段落【0147】)⑵ 本件特許の特許請求の範囲の記載及び前記⑴の本件明細書等の記載によれば、本件発明は、外国為替等の金融商品の取引に係る金融商品取引管理装置等 において、コンピュータシステムを使用することによって、多くの利益が得られる機会を提供できる取引管理方法を提供することを課題とする発明である。 そして、上記各記載によれば、本件発明は、複数の売り注文価格がそれぞれ等しい値幅で異なるようにした上で、複数の売り注文価格の情報を含む売り注文情報を一の注文手続で生成し、その後相場価格が変動して、複数の売り注文の うち最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、当該検知の情報を受けて、複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することによって、元の売り注文価格よりも相場価格が変動した高値側に新たな売り注文価格の売り注文情報を生成する構成を採用し、もって上記課題を解決するもので ある。 2 争点1(本件特許の無効理由の有無)について⑴ 乙5文献の記載乙5文献には、次のとおりの記載があることが認められる(乙5)。 「しかし、引用文献1においては、複数の指値注文を発注する際に指値注文 を個別に行わねばならず、指値注文を行うユーザにとって注文の操作が煩雑に なるという問題がある 5)。 「しかし、引用文献1においては、複数の指値注文を発注する際に指値注文 を個別に行わねばならず、指値注文を行うユーザにとって注文の操作が煩雑に なるという問題がある。また、引用文献2及び引用文献3に記載の発明においては、指値注文を発注する際、コンピュータ端末のマウスやキーボード等により、数値を入力することで指値注文を発注しなければならず、指値注文を行うユーザにとって注文時の入力作業に要する労力が課題になるという問題がある。」(段落【0004】) 「本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、金融商品の指値注文において、システムを利用するユーザが煩雑な入力作業を行うことなく、複数の指値注文を簡易な操作で発注できて、ユーザに利便性の高い指値注文を行わせることのできる金融商品取引システムを提供することを課題としている。」(段落【0005】) 「上述の金融商品取引システム1Aにおいては、金融商品の指値取引が行われる際、一の予約注文によって、同一種類の複数の金融商品の指値注文を同時に複数発注することができる。」(段落【0056】)「第一形態注文においては、複数のイフダン注文が同時に発注されるが、そのイフダン注文の第一注文(新規注文)同士、及び第二注文(決済注文)同士 がすべて均等な価格差であり、それぞれの価格のポジションが等しい状態で発注され、それぞれのイフダン注文は新規注文と決済注文とがそれぞれ約定すると、新たに同じ新規注文と決済注文とがそれぞれ発注されることを繰り返す(以下、この注文形態を「トラップリピートイフダン注文」と称する。)。この実施の形態においては、トラップリピートイフダン注文の全ての第一注文 (新規注文)が発注価格帯内において発注されるように構成されている(即ち、 「トラップリピートイフダン注文」と称する。)。この実施の形態においては、トラップリピートイフダン注文の全ての第一注文 (新規注文)が発注価格帯内において発注されるように構成されている(即ち、第二注文が発注価格帯において発注されているか否かの確認は行わない)(以下、この注文形態を「らくトラ注文」と称する(「らくトラ」は商標)。)。」(【段落0074】)「そして、第一形態注文入力画面33には、らくトラ注文の設定に必要な項 目が表示される。・・・発注価格帯の上限価格と下限価格とが数値で表示され、 上限価格や下限価格を数値入力で修正可能な発注価格帯入力欄332が表示されている。この他に、第一形態注文入力画面33には、同時に発注される新規注文の注文個数や決済注文の注文個数を入力する注文個数入力欄(図示せず)、及び/又は、新規注文同士の値幅や決済注文同士の値幅を入力する値幅入力欄(図示せず)、ストップロス価格を入力するストップロス価格入力欄(図 示せず)が表示される。」(段落【0075】)「注文内容確認画面34には、入力され発注が準備されたらくトラ注文の内容が表示される(ステップS6)。同図には、それぞれ5つの第一注文(新規注文)と第二注文(決済注文)の発注が準備された状態が示されている。」(段落【0077】) 「[第一形態注文(らくトラ注文)の概要]以下、このように発注された第一形態注文について概説する。」(段落【0080】「図11は、注文情報生成部16によって生成されて注文テーブル181に記録された、注文情報群を模式的に示す図である。これらの注文情報群は、上 述した、注文発注装置2の発注によって生成されたものである。」(段落【0081】)「図11に示したように、注文テーブル181に 、注文情報群を模式的に示す図である。これらの注文情報群は、上 述した、注文発注装置2の発注によって生成されたものである。」(段落【0081】)「図11に示したように、注文テーブル181には、複数のポジション・ペアに対応する注文情報群が記録される。ポジション・ペアの数は、第一形態注文入力画面33(図8)で注文個数入力欄(図示せず)に入力された注文個数 情報の数値、又は、発注価格帯の数値を値幅入力欄(図示せず)に入力された数値で割った値のうちの整数値と同じ個数に等しく設定される。この実施の形態では、トラップ本数(すなわち注文個数)は、「5」に設定される。従って、図11では、5種類の注文情報群50A1、50A2、・・・50A5が、注文テーブル181に記録されている。」(段落【0082】) 「注文情報生成部16は、注文発注装置2から送信された、発注価格帯の値 を注文個数入力欄(図示せず)に入力された値で割った値や、値幅入力欄(図示せず)に入力された値に基づいて、下限価格である1ドル当たり107.5円を基準として、全ての注文情報群50A1、50A2、・・・50A5の、全ての第一注文51A1、・・・、51A5及び全ての第二注文51B1、・・・、51B5の注文価格181Gを設定する。」(段落【0086】) 「トラップリピートイフダン注文による指値注文の受け付け処理が完了した時点t1に、約定情報生成部14は、一巡目の注文(すなわち、図11において、注文番号181bが1000~1014の注文)のうち、第一注文51A1~51A5に関する有効/無効情報181o1の値を、それぞれ"無効"から"有効"に変更する。これにより、第一注文51A1~51A5の買い指 値注文が、発注される。」(段落【0093】)「こ ~51A5に関する有効/無効情報181o1の値を、それぞれ"無効"から"有効"に変更する。これにより、第一注文51A1~51A5の買い指 値注文が、発注される。」(段落【0093】)「このとき、二巡目の注文(すなわち、注文番号181bが1015以降の注文、図示せず)に関しては、有効/無効情報181o1が"無効"に設定された状態に維持される。加えて、一巡目の注文のうち、第二注文51B1~51B5及び第三注文C1~51C5についても、有効/無効情報181o1が "無効"に設定された状態に維持される。」(段落【0094】)「図13の例では、時点t1において、米国ドルの相場購入価格71が、1ドル当たり107.00円である。米国ドルの相場価格が徐々に上昇して1ドル当たり107.50円になったとき(図12AのステップS21参照)。このとき、約定情報生成部14は、この第一注文51A5を約定させるための処 理を行う(図13のステップS22参照)。」(段落【0095】)「具体的には、第一注文51A5に基づく注文が約定すると、約定情報生成部14は、第一注文51A5に対応する状態情報181o2を、未約定を示す"無"から約定済を示す"有"に変更する(図11参照)。後述の各約定処理においても、中央管理装置1は、同様の処理を行う。」(段落【0096】) 「さらに、第一注文51A5が約定したとき、約定情報生成部14は、図1 1に示す、第二注文51B5及び第三注文C5の有効/無効情報181o1を、無効から有効に変更する(図12AのステップS23参照)。」(段落【0098】) 【図12A】 のステップS23参照)。」(段落【0098】) 【図12A】 【図13】 「(変形例3)上記実施の形態においては、更に、タッチパネル21にトレール幅情報入力欄を表示すると共に、中央管理装置1において、第一注文51D、51H及び第二注文51E、51Jの属性情報としてトレール幅情報を設け、相場価格がトレール幅情報以上に上昇又は下落した際に、各注文情報51A~51Fの注文 価格情報181hをトレール幅情報の価格分上昇又は下落させる構成としてもよい。」(段落【0155】)⑵ 乙5発明の内容ア上記⑴の記載によれば、乙5発明は、金融商品の指値注文において、システムを利用するユーザが煩雑な入力作業を行うことなく、複数の指値注文を 簡易な操作で発注できて、ユーザに利便性の高い指値注文を行わせることのできる金融商品取引システムを提供することを課題とし、指値注文の際に、一つの予約注文によって、複数のイフダン注文を発注するに際し、新規注文同士及び決済注文同士が全て均等な価格差であり、それぞれのイフダン注文は新規注文及び決済注文が約定すると、新たに同じ新規注文と決済注文の発 注を繰り返すという、トラップリピートイフダン注文に係る構成を有するものと認められる。 イそうすると、乙5発明の内容は、以下のとおりであると認めるのが相当である。 5A 相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための中央管 理装置であって、5B 前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段と、5C 前記買い注文の約 動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための中央管 理装置であって、5B 前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段と、5C 前記買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報 生成手段と 5D を有する注文情報生成部と、5E 前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え、5F 前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は、それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報であり、 5G 前記注文情報生成手段は、前記複数の売り注文情報を一の注文手続で生成し、5H 前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の売り注文のうち、いずれかの売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、前記注文情報生成部は、前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて、前 記複数の売り注文のうち、上記約定した売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することを特徴とする5I 中央管理装置。 ⑶ 対比ア本件発明と乙5発明を比較すると、一致点及び相違点は以下のとおりであ る。 一致点相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための金融商品取引管理装置であって、前記金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買 い注文情報生成手段と、前記買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段とを有する注文情報生成手段と、 前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え 前記 り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段とを有する注文情報生成手段と、 前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを備え 前記複数の売り注文情報に含まれる売り注文価格の情報は、それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報であり、前記注文情報生成手段は、前記複数の売り注文情報を一の注文手続で生成ことを特徴とする金融商品取引管理装置 相違点① 売り注文が約定されたことを検知した際に生成される新たな売り注文情報に含まれる売り注文価格が、本件発明においては、約定に係る売り注文価格よりも更に所定価格だけ高いのに対し、乙5発明においては、約定に係る売り注文価格と同じ価格とされている点(以下「相違点1」 という。)② 本件発明は、検知の対象となる約定に係る売り注文を「前記複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文」に特定しているのに対し、乙5発明は、検知の対象となる約定に係る売り注文が、複数の売り注文のうちのいずれかの売り注文価格の売り注文である点(以下「相 違点2」という。)イ被告は、本件発明と乙5発明との相違点は、相違点1に限られており、相違点2については、本件発明と乙5発明との間で一致していると主張する。 しかしながら、本件発明は、複数の売り注文のうち、最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを受けて、複数の売り注文のうち最も高い売 り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するものである。これに対し、乙5発明は、複数のイフダン注文のうち、約定した新規注文及び決済注文と、同じ新規注文及び決済注文の発注を繰り返すというものである。そのため、乙5発明は、検知の 文情報を生成するものである。これに対し、乙5発明は、複数のイフダン注文のうち、約定した新規注文及び決済注文と、同じ新規注文及び決済注文の発注を繰り返すというものである。そのため、乙5発明は、検知の対象となる約定に係る売り注文が、複数の売り注文のうちのいずれかの売り注文価格 の売り注文であるにすぎず、検知の対象となる約定に係る売り注文を「最も 高い売り注文価格の売り注文」に特定しているわけではない。 そうすると、本件発明と乙5発明との間では、検知の対象となる約定に係る注文を「最も高い売り注文価格の売り注文」に特定しているか否かという点において相違すると認めるのが相当である。したがって、被告の主張は、採用することができない。 ⑷ 相違点の容易想到性ア乙5発明と乙6発明との組合せについて(無効理由1)被告は、乙5発明に乙6発明を組み合わせることにより、当業者が相違点に係る構成に想到することは容易であったと主張する。そこで、以下検討する。 乙6文献には、以下の記載等が存在する。 「・・・引用文献1に記載の発明においては、イフダンオーダーの指値注文に対応できないという問題がある。また、・・・顧客が複数のイフダンオーダーを個別に注文していかねばならず、顧客の注文手続が煩雑になるという問題がある。」(段落【0004】) 「本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、金融商品の指値注文において、システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく複数のイフダンオーダーを行うことができ、システムを利用する顧客の利便性を高めることができる金融商品取引管理装置を提供することを課題としている。」(段落【0005】) 「請求項3に記載の発明によ ーダーを行うことができ、システムを利用する顧客の利便性を高めることができる金融商品取引管理装置を提供することを課題としている。」(段落【0005】) 「請求項3に記載の発明によれば、第一注文情報及び第二注文情報は、属性情報として、相場価格の変動に追従して予め設定された特定の価格を変動させる場合における特定の価格の変動の単位情報としてのトレール幅情報を備え、約定情報生成手段は、最初の注文情報群が生成された際の相場価格と現在の相場価格との差がトレール幅情報以上となった場合、第一注文情報 における一の価格及び第二注文情報における他の価格を変更させることに より、時間の経過に伴って相場価格の変動する価格帯が変化した場合であっても、変化した後の価格帯においてイフダンオーダーによる取引を継続させることができる。これにより、イフダンオーダーを複数回自動的に繰り返すことで取引を行う構成において、イフダンオーダーを実現するための第一注文情報と第二注文情報とからなる価格帯を、取引相場の実情に即して変動可 能に構成できて、指値注文を行う顧客にとって一層利便性の高い取引システムを形成できる。」(段落【0016】)「上述の金融商品取引管理装置1においては、金融商品の指値取引が行われる際、一の予約注文によって、同一種類の複数の金融商品の指値注文を複数のイフダンオーダーによって行うことができる。」(段落【0040】) 「[取引手順(第一注文が買い注文の場合)]次に、この実施の形態の金融商品取引管理システム1Aにおけるイフダンオーダーによる指値注文の取引手順について説明する。・・・」(段落【0041】)「顧客が操作部21の操作により承認ボタン(図示せず)をクリックする と、 ステム1Aにおけるイフダンオーダーによる指値注文の取引手順について説明する。・・・」(段落【0041】)「顧客が操作部21の操作により承認ボタン(図示せず)をクリックする と、金融商品取引管理装置1の注文情報生成部16はステップS1にて入力されたデータに基づいて注文情報を生成する(ステップS8)。具体的には、上記手順において入力された複数のデータを、注文価格を単位としてまとめ、各情報の単位に、シーケンス番号テーブル184に記録された注文にシーケンス番号を付与することで各注文情報を形成する。・・・一回のステップS 8の手順にて形成される複数の注文情報は、同一種類の複数の金融商品を二つの価格(即ち、第一注文の価格と第二注文の価格)で一定の商品数ごとに指値注文する注文情報群(以下単に「注文情報群」と称する。)を複数回生成する。なお、注文情報群は一つずつ順に形成され、最大で利益金額指定欄44dに入力された数だけ形成されることになる(詳しくは後述する)。」 (段落【0058】) 「注文処理が完了すると、注文情報生成部16はまず最初の注文情報群(以下「第一の注文情報群」と称する。)を生成する。なお、この生成された時点において、注文情報群に含まれる、第一順位の注文情報としての第一注文情報50Aは有効な注文情報(顧客から正式に依頼されて発注された状態の指値注文のこと。本明細書において同じ。)として生成されているが、同じ 注文情報群に含まれる、第二順位の注文情報としての第二注文情報は、「待機」の注文情報(顧客から正式に依頼されているが、まだ発注前の状態の注文情報のこと。本明細書において同じ。)として生成されている。」(段落【0060】)「[第一注文情報、第二注文情報に基づく約定、 報(顧客から正式に依頼されているが、まだ発注前の状態の注文情報のこと。本明細書において同じ。)として生成されている。」(段落【0060】)「[第一注文情報、第二注文情報に基づく約定、及び注文情報群生成の基 本手順]」(段落【0065】)「注文処理の完了後、金融商品取引管理装置1の価格情報受信部19は為替相場の情報取得を継続する。そして、相場価格と特定ポジションの注文価格とが一致すると、約定情報生成部14が当該ポジションの注文を約定させる(ステップS21)。」(段落【0066】) 「図10に、この実施の形態の金融商品取引管理システム1Aにおける、指値注文に基づく約定を模式的に表したタイムチャートを示す。例えば、同図に示す通り、イフダンオーダーによる指値注文の注文処理が完了した時点t1での米国ドルの相場購入価格72が1ドル94.49円であったとする。 指値注文完了後に米国ドルの相場価格が下がり、相場購入価格71が1ドル 94.77円になった時点t2において、約定情報生成部14は第一注文情報51Aを約定させる処理を行う。」(段落【0067】)「次に、第一注文情報51Aに基づく指値注文が約定すると、約定情報生成部14は、第一の注文情報群における第二注文情報51Bを「待機」の注文情報から「有効」な注文情報に変更する(ステップS22)。即ち、図1 1の(b)に示す、第二注文情報51Bの有効/待機情報51aを「待機」 の状態から「有効」の状態に変換する。・・・」(段落【0069】)「この後、図10に示すように、米国ドルの相場購入価格が上昇し、特定時点t3において米国ドルの相場購入価格71が1ドル94.21円になると、約定情報生成部14は第二注文情報5 069】)「この後、図10に示すように、米国ドルの相場購入価格が上昇し、特定時点t3において米国ドルの相場購入価格71が1ドル94.21円になると、約定情報生成部14は第二注文情報51Bに基づく指値注文を約定させる処理を行う(ステップS23)。そして、約定情報生成部14はデータベ ース18中の対応するデータを書き換える。これにより、顧客はt2時点の買い注文とt3時点の売り注文の差額分の利益を得られることになる。」(段落【0070】) 【図10】 「第二注文情報51Bに基づく指値注文が約定し、第一注文と第二注文が 全て約定していない場合(ステップS24の"No")口座情報生成部15が再度顧客口座情報テーブル182の当該顧客の証拠金情報を取得する。そして、注文入力受付部12は、再度、取得された証拠金情報と顧客の注文総額とを対比し、証拠金の額が注文総額以上であるか否かを確認する(ステップS25)。証拠金の額が注文総額を下回る場合(ステップS26の"Ye s")には、注文総額以上になるまで処理は保留され、証拠金の額が注文総額以上である場合(ステップS26の"No")、注文情報生成部16は新たな注文情報群(以下「第二の注文情報群」と称する。)を生成する(ステップS27)。ここで、第二の注文情報群における第一注文情報及び第二注文情報(いずれも図示せず)は、基本的に、第一の注文情報群における第一 注文情報51A及び第二注文情報51Bと同じ属性情報を有するが、これらの第一注文情報51A及び第二注文情報51Bにおけるリピート回数情報51bの「1回」が「2回」に変わっている点のみが相違する。・・・注文情報生 及び第二注文情報51Bと同じ属性情報を有するが、これらの第一注文情報51A及び第二注文情報51Bにおけるリピート回数情報51bの「1回」が「2回」に変わっている点のみが相違する。・・・注文情報生成部16は、ステップS9と同様に、生成された第二の注文情報群を注文テーブル181に記録する(ステップS28)。ステップS26におい て第二の注文情報群が生成されると、フロントページ配信部11はクライアント端末2の表示部22に、第二成立注文表示画面50Bに代えて、第二の注文情報群の第一注文情報に基づく第一成立注文表示画面(図示せず)を表示させる。そして、ステップS21以降の処理が繰り返される。」(段落【0071】) 【図4】 「当該処理は、利益金額指定欄44dに入力されたポジションの個数分の注文情報群が形成され、また、ステップS21、S23の処理が入力されたポジションの個数分繰り返されるまで継続し(ステップS24の"No")、 これによって、図10に示す時点t4、t5、・・・の処理が行われる。そ して、ステップS21、S23による、約定を行う処理が複数回(即ち上記入力されたポジションの個数分)繰り返された後(ステップS24の"Yes")、全ての処理手順が終了する。」(段落【0072】)「[トレール幅情報による価格の変更処理]」(段落【0074】)「相場価格が大きく変動した場合を考える。例えば、図10の時点t6に おいて、相場価格が、第一の注文情報群が生成された時点t1の相場価格である94.49円よりも、トレール幅入力欄44jに入力されたトレー 格が大きく変動した場合を考える。例えば、図10の時点t6に おいて、相場価格が、第一の注文情報群が生成された時点t1の相場価格である94.49円よりも、トレール幅入力欄44jに入力されたトレール幅(即ち、第一注文情報51A及び第二注文情報51Bにおけるトレール幅情報51d)分、即ち95.19円まで上昇した場合を考える。」(段落【0075】) 「この場合、約定情報生成部14は、現在の相場価格(95.19円)と、第一の注文情報群が生成された時点の相場価格(即ち94.49円)の差額が、第一注文情報51A及び第二注文情報51Bのトレール幅情報51d(0.70円)以上であるか否かを確認する。この差額がトレール幅情報51d(0.70円)以上である場合(ステップS31の"Yes")、約定 情報生成部14は、注文情報群(ここでは第3の注文情報群50C)における、未約定の第一注文情報及び第二注文情報のリピート回数情報51bが、最低リピート回数入力欄44kに入力された最低リピート回数(この実施の形態では2回以上)以上か否かを確認する。このリピート回数情報51bが最低リピート回数入力欄44kに入力されたリピート回数以上である場合 は(ステップS32の"Yes")、約定情報生成部14は、注文情報群(ここでは第三の注文情報群50C)における第一注文情報、及び第二注文情報の価格を変更する(ステップS33)。」(段落【0076】) 【図5】 「即ち、約定情報生成部14は、図12に示す通り、第一注文情報51Aの注文価格情報51e(94.21円)にトレール幅情報51d(0.70円)を加えた額(即ち 【図5】 「即ち、約定情報生成部14は、図12に示す通り、第一注文情報51Aの注文価格情報51e(94.21円)にトレール幅情報51d(0.70円)を加えた額(即ち94.91円)を注文価格情報51eとする新たな第一注文情報51C、及び、第一注文情報51B[被告注:「第二注文51B」の誤記であると解される。]の注文価格情報51f(94.77円)にトレ ール幅情報51d(0.70円)を加えた額(即ち95.47円)を注文価 格情報51fとする新たな第二注文情報51Dとする。この、新たな第一注文情報51C及び新たな第二注文情報51Dにおいて、リピート回数情報51bは、再び「1回」になっている。なお、この第一注文情報51C及び第二注文情報51Dは、注文価格情報以外の属性情報は、元の第一注文情報51A、第二注文情報51Bの属性情報と同じである。」(段落【0077】) 「また、現在の相場価格と、第一の注文情報群が生成された時点の相場価格の差額がトレール幅情報51d未満である場合(ステップS31の"No")、及び、注文情報群における、未約定の第一注文情報及び第二注文情報のリピート回数情報51bが、最低リピート回数入力欄44kに入力された最低リピート回数未満である場合(ステップS32の"No")は、ステッ プS33~S35の手順は行われない。」(段落【0078】)「そして、約定情報生成部14は、第一注文情報の売買種類情報51g(図11、図12参照)が買い注文を示す情報であり、かつ、変更後の第一注文情報及び第二注文情報の注文価格情報が、変更前の第一注文情報51A及び第二注文情報51Bの注文価格情報51e、51fよりも高い場合(ステッ プS34の"Yes")、ストッ つ、変更後の第一注文情報及び第二注文情報の注文価格情報が、変更前の第一注文情報51A及び第二注文情報51Bの注文価格情報51e、51fよりも高い場合(ステッ プS34の"Yes")、ストップロス価格を変更する(ステップS35)。 具体的には、変更前の第一注文情報51A及び第二注文情報51Bのストップロス価格情報51hにトレール幅情報51d(0.70円)を加えた価格(即ち93.70円)を新たな第一注文情報51C及び第二注文情報51Dのストップロス価格情報51hとする。」(段落【0079】) 「そして、これらの手順ののち、ステップS33の手順にて変更された第一注文情報、及び第二注文情報の注文価格情報51e、また、ステップS35の手順において変更されたストップロス価格情報51hに基づいて、以降のステップS21~S28の手順が繰り返される。」(段落【0080】)「以上、この実施の形態においては、注文情報生成部16は、一の売買注 文申込情報に基づいて、同一種類の金融商品を、一の価格について買い(売 り)の指値注文をする第一注文情報、及び、他の価格について売り(買い)の指値注文をする第二注文情報からなる注文情報群を複数回生成し、注文テーブル181には注文情報群が記録され、約定情報生成部14は、価格情報受信部19が取得した相場価格が一の価格以下(以上)になった場合、注文テーブル181に記録された注文情報群を形成する個々の注文情報のうち 第一注文情報に基づいて金融商品の約定を行い、約定の後、価格情報受信部19が取得した相場価格が他の価格以上(以下)になった場合、注文テーブル181に記録された注文情報群を形成する個々の注文情報のうち第二注文情報に基づいて金融商品の約定を行う処理を複数回繰り返すことにより が取得した相場価格が他の価格以上(以下)になった場合、注文テーブル181に記録された注文情報群を形成する個々の注文情報のうち第二注文情報に基づいて金融商品の約定を行う処理を複数回繰り返すことにより、金融商品を売買する際、クライアント端末2側で一の注文手続きを行うこと で、コンピュータシステム上でイフダンオーダーによる取引を自動的に複数回繰り返して行わせることを実現できる。・・・」【0093】「この実施の形態においては、第一注文情報51A及び第二注文情報51Bは、属性情報として、相場価格の変動に追従して予め設定された特定の価格を変動させる場合における特定の価格の変動の単位情報としてのトレー ル幅情報51dを備え、約定情報生成部14は、最初の注文情報群が生成された際の相場価格と現在の相場価格との差がトレール幅情報51d以上となった場合、第一注文情報51Aにおける注文価格情報51e及び第二注文情報51Bにおける注文価格情報51eを変更させることにより、時間の経過に伴って相場価格の変動する価格帯が変化した場合であっても、変化した 後の価格帯においてイフダンオーダーによる取引を継続させることができる。これにより、イフダンオーダーを複数回自動的に繰り返すことで取引を行う構成において、イフダンオーダーを実現するための第一注文情報51Aと第二注文情報51Bとからなる価格帯を、取引相場の実情に即して変動可能に構成できて、指値注文を行う顧客にとって一層利便性の高い取引システ ムを形成できる。」(段落【0094】) 「また、上記実施の形態においては、相場価格の上昇又は下落に伴う第一注文の注文価格情報51e、第二注文の注文価格情報51f、ストップロス価格情報51hを、現在の相場価格と、第一の注文 「また、上記実施の形態においては、相場価格の上昇又は下落に伴う第一注文の注文価格情報51e、第二注文の注文価格情報51f、ストップロス価格情報51hを、現在の相場価格と、第一の注文情報群が生成された時点の相場価格の差額が、第一注文情報51A及び第二注文情報51Bのトレール幅情報51d(0.70円)以上となった場合にステップS33、S35 の処理を行う構成としたが、この差額の算出の基準となる数値や算出方法はどのようなものであってもよい。例えば、以下態様1~態様3に示す態様の何れかによるものであってもよい。 (態様1)トレール幅情報とは別にトレール発動価格幅情報を設定し(ただしトレール幅情報の価格幅よりもトレール発動価格幅の価格幅の 方が大きい)、イフダンオーダーによる指値注文の注文処理が完了した時点(例えば図10の時点t1)の相場価格と現在の相場価格との価格差がトレール発動価格幅以上になったときにはじめてステップS33、S35の処理を行う。 (態様2)相場価格の変動とほぼ同時に、ステップS33、S35の処理が 行われる。 (態様3)イフダンオーダーによる指値注文の注文処理が完了した時点の相場価格ではなく、第一注文情報や第二注文情報の注文価格情報と現在の相場価格との対比を行い、それら同士の価格差がトレール発動価格幅以上になったときにはじめてステップS33、S35 の処理を行う。」(段落【0101】) 相違点に係る構成の容易想到性a 前記の明細書の記載(段落【0076】ないし【0078】及び図5のS32)には、相場価格がトレール幅以上に上昇した場合において、「第一注文及び第二注文情報のリピート回数が最低繰返し回数以上で ある」ときは、「トレール幅情報を加えた額を注 078】及び図5のS32)には、相場価格がトレール幅以上に上昇した場合において、「第一注文及び第二注文情報のリピート回数が最低繰返し回数以上で ある」ときは、「トレール幅情報を加えた額を注文価格情報」とする新 たな注文情報を生成することが記載されている。そして、上記「リピート回数」とは、買い注文の約定した後に前記買い注文を決済するための「売り注文の約定を検知した回数」であるといえる。 そうすると、乙6文献には、「相場価格が変動したときに売り注文の約定を検知した回数が最低繰返し回数以上である場合に、売り注文の売 り注文価格よりも更に所定価格(トレール幅情報)だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成する」ことが記載されているものと認められる。 b 上記認定事実によれば、乙6発明は、売り注文の約定を検知した回数が最低繰返し回数以上である場合に、売り注文の売り注文価格よりも更 に所定価格(トレール幅情報)だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成するものである。そうすると、乙6発明における「売り注文の約定」の検知とは、その文言どおり、単に、売り注文の約定を検知するものであって、「最も高い売り注文価格の売り注文」の約定を検知するものとはいえない。したがって、仮に乙5発明に乙6発明を組み 合わせることができたとしても、本件発明の構成には至らないというべきである。 c 上記によれば、その余の点につき判断するまでもなく、容易想到性を認めることはできないものの、本件事案に鑑み、念のため、乙5発明と乙6発明の組合せの動機付けにつき、以下検討する。 被告は、①乙5発明と乙6発明は、その属する技術分野及び発明の課題が完全に同一である上、乙5文献及び乙6文献に記載されたFX め、乙5発明と乙6発明の組合せの動機付けにつき、以下検討する。 被告は、①乙5発明と乙6発明は、その属する技術分野及び発明の課題が完全に同一である上、乙5文献及び乙6文献に記載されたFX取引の管理装置の構成の大部分が共通している、②乙5文献の段落【0155】には、イフダン注文を繰り返すシステムにおいて、注文の属性情報としてトレール幅情報を設け、相場価格がトレール幅情報以上に上昇又 は下落した際に、注文価格をトレール幅情報の価格分だけ上昇又は下落 させることにより、注文価格を相場価格に追従させるという技術思想が記載されている一方、乙6文献にも、イフダン注文を繰り返すシステムにおいて、注文の属性情報としてトレール幅情報を設け、相場価格がトレール幅情報以上に上昇又は下落した際、注文価格をトレール幅情報の価格分だけ上昇又は下落させることにより、注文価格を相場価格に追従 させるという構成が記載されているから、乙5発明に乙6発明を組み合わせる動機付けがあると主張する。 そこで検討すると、乙5発明では、想定した一定の価格帯に複数のイフダン注文を設定して、同じ価格帯においてイフダン注文を繰り返すものといえるところ、乙5文献の段落【0155】には、相場価格がトレ ール幅以上に変動した場合には、想定した価格帯に含まれる全ての注文価格情報をトレール幅だけ上昇又は下落させることが記載されていることからすると、乙5発明は、想定した一定の価格帯においてイフダン注文を繰り返すことを前提としたものであって、段落【0155】の記載は、相場価格がトレール幅以上に変動した場合に、一組のイフダン注 文の価格にとどまらず、前記価格帯に着目して当該価格帯全体のイフダン注文の価格を相場価格の変動に追従して変更すること 5】の記載は、相場価格がトレール幅以上に変動した場合に、一組のイフダン注 文の価格にとどまらず、前記価格帯に着目して当該価格帯全体のイフダン注文の価格を相場価格の変動に追従して変更することを意味するものと解するのが相当である。 これに対し、乙6発明は、上記において説示したとおり、一定の価格帯を想定するものではなく、相場価格の変動に追従して一組のイフダン 注文の価格を変更するものである。 そうすると、乙5発明と乙6発明は、いずれも金融商品の取引に係る技術分野に属することを踏まえても、一定の価格帯を想定するか否かという点において、技術思想を異にするものであり、これらを相互に組み合わせる動機付けがあるということはできない。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 d 小括以上によれば、乙5発明は乙6発明と組み合わせるための動機付けを欠くものと認められ、仮に両者を組み合わせることができたとしても、本件発明の構成には至らないことからすると、本件発明は、進歩性を欠くものと認めることはできない。 イ乙5発明と乙7発明又は乙8発明との組合せについて(無効理由2)被告は、乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせることにより、当業者が相違点に係る構成に想到することは容易であったと主張する。そこで、以下、検討する。 a 乙7発明 乙7文献には、以下の記載等が存在する。 「この発明は、株式、オプション、商品、債券、および大部分の型式のエクイティおよび証券の売買に適合する。この発明は、個人投資家、証券ブローカ、および証券をトレードするその他の人のための有用なアプリケーションを有する。」(段落[0004]) 分の型式のエクイティおよび証券の売買に適合する。この発明は、個人投資家、証券ブローカ、および証券をトレードするその他の人のための有用なアプリケーションを有する。」(段落[0004]) 「指値注文カップルリンク(LOCK)発明は、・・・LOCKは、投資家が注文を発行しなければならない現在の処理を、先ずオープンポジションを確立し、次にポジションをクローズアウトするように、簡素化する。」(段落[0012])「現在の方法:第2の注文を発行する前に、第1の注文が完了したこと を確認するための時間遅れを必要とする2つの個別の注文。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――注文株式量買値――――――――――――――――――――――――――――――――――――#1 買い-XYZ 100 56 トランザクションが完了したことが確認されると、その後、新たな注文が発行される。 #2 売り-XYZ 100 57―――――――――――――――――――――――――――――――――――」(段落[0013])「ロック方法:第1の注文は、第2の注文を構築するための情報を含んでいる。したがって、第1の注文の実行が、第2の注文を自動的に生成す る。投資家は、1つの注文を発行するだけで良い。」(段落[0014])「図3は、LOCK発明および処理のロジック実行および変換を示す。 図3の右側は、LOCK処理のパート1を実行するために使用される投資家の入力要求を表す。買い/売り指示2は、パート1の買いから、パート2の売り11に切り替わる。例は、注文が、100XYZを買うことを明 示しているのであれば、パ を実行するために使用される投資家の入力要求を表す。買い/売り指示2は、パート1の買いから、パート2の売り11に切り替わる。例は、注文が、100XYZを買うことを明 示しているのであれば、パート1は、買い、その後、パート2において売り注文に切り替わるであろう。・・・」(段落[0080])「代替実施形態は、この処理を再度自動的に繰り返すオプションと、買値/売値を上げまたは下げる追加のオプションと、を挿入することを含む。 図6および図7は、この方法に、サイクル数と、インクリメントオプショ ンとを加えることによるLOCK方法の代替実施形態を図示する。図6は、処理を繰り返すために必要な追加情報を図示する。図7は、LOCK管理モジュール12に再び入るための方法を図示する。「サイクル数」44の追加によって、投資家は、より多くの利益を得ることを望んで、LOCK処理に自動的に再び入ることができるようになるであろう。2つのサイク ルを指定する例は、1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い、1株あたり51ドルで売り、50ドルで買い戻し、51ドルで再び売ることを意味するであろう。この投資処理によって、個人投資家は、毎日の小さな株価変動を活用することが可能となるであろう。」(段落[0085]) 「別のオプションは、各サイクルの価格インクリメント45を上げるこ とであろう。投資家は、上昇している株価を利用するためにこの処理を利用するであろう。例は、1ドルのLOCK価格、サイクル数3、および、0.50ドルのインクリメントで、50.00ドルで100株のXYZを買うことを指定する。これは、50.00ドルで100株のXYZを買い(※注文①)、51.00ドルで売り(※注文②)、51.50ドルで 0.50ドルのインクリメントで、50.00ドルで100株のXYZを買うことを指定する。これは、50.00ドルで100株のXYZを買い(※注文①)、51.00ドルで売り(※注文②)、51.50ドルで買 い戻し(※注文③)、52.50ドルで売り(※注文④)、52.00ドルで買い戻し(※注文⑤)、53.00ドルで売る(※注文⑥)と解釈するであろう。」(段落[0086]。ただし※部分は追記したものである。)「LOCK処理は、投資家が、処理中いつでもLOCK注文をキャンセルできるようにするオプションを含み得る。たとえば、投資家は、LOC K注文のパート1で購入された株式を保持し、その後、LOCK注文の売り側(パート2)をキャンセルするように決定し得る。株式銘柄5および株の量6は、パート1およびパート2において同じままである。代替実施形態は、パート2において半分を売り、その後パート2を繰り返し、増加した価格で後半を売るように、量を変更でき得る。」(段落[0089]) 【図6】 【図7】 b 乙8発明乙8文献には、以下の記載等が存在する。 「本発明の第1の目的は、明示的かつ/または自動的に取引注文の数を入力するための取引システムを提供することである指定された基準に基づいて特定の順序で実行され、所与のパターン情報に基づいて単一の注文 入力から複数の取引注文を配置する能力を投資家に提供する。」(段落[0029])「簡潔に言えば、本発明は、証券の複数の買い注文または売り注文を実行したい順序で投資家に提供し、前 入力から複数の取引注文を配置する能力を投資家に提供する。」(段落[0029])「簡潔に言えば、本発明は、証券の複数の買い注文または売り注文を実行したい順序で投資家に提供し、前の注文が完了した場合にのみ次の注文が実行されるようにする。また、シーケンスパスを選択すると、同じレベ ルの他の(選択されていない)パスのすべてのオーダーを取り消す複数のシーケンスパスも提供される。また、投資家は、特定のパターン情報に基づいて単一の注文入力から複数の取引注文を行うこともできる。」(段落[0035])「自動取引では、次の注文は前の注文が完了するまでのみ実行されるこ とが保証される。換言すれば、図2の場合、マイクロソフトの100株は、価格$60.00で購入されるまで、価格$62.00で販売されず、マイクロソフトの在庫が販売されるまで、50のIBMの在庫は価格$110.00で購入されない。」(段落[0039])「システムの取引には、株式市場における株式の売買、株式市場におけ るミューチュアルファンドの取引、オプション取引市場におけるオプションの取引、債券取引市場における債券の取引、商品市場における取引商品、取引不動産取引市場における不動産の売買、証券市場における証券の取引、または取引が行われる他の種類の市場取引のような取引を含むが、これらに限定されない。」(段落[0056]) 「このシステムは、与えられたパターン基準に基づいて1つの注文入力 から複数の取引注文を行う方法を提供します。たとえば、マイクロソフトの100株を$60.00で購入し、同じ数量のマイクロソフトの100. 00株を61.00で売り、投資家は上記の取引パターンを50回繰り返したいとする。上の例のすべ 供します。たとえば、マイクロソフトの100株を$60.00で購入し、同じ数量のマイクロソフトの100. 00株を61.00で売り、投資家は上記の取引パターンを50回繰り返したいとする。上の例のすべての注文は、単一注文入力によって置くことができる。」(段落[0058]) 「図11を参照すると、本発明の自動取引システムの概略図は、特定の株を購入する単一の入力注文125、この例ではMSFT(マイクロソフト社)を$60.00で購入する121を示し、次いで$2.00ドルの利益を有する(この例では、$62.00($60.00+$2.00=$62.00))同じ株を販売する122、最後の販売価格よりも$1. 00低い価格(この例では$61.00($62.00-$1.00=$61.00))で購入する123であって、これに続いて、124が$63. 00で販売する。このプロセスが継続することによって、株価が上昇しても最終買い価格に戻らなくても取引を行うことができるようになる。」(段落[0145]) 【図11】 相違点に係る構成の容易想到性a 前記の記載によれば、乙7発明は、相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うためのLOCK管理モジュールであって、金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報(注文①、③、⑤)を生成する買い注文情報生成手段と、買い注文の約定によって保有したポ ジションを、約定によって決済する売り注文を行うための売り注文情報(注文②、④、⑥)を生成する売り注文情報生成手段とを有するソフトウェアインターフェースと、相場価格が変動して、上記ソフトウェアインターフェースが、上記売り注文(②、④)が約定さ ための売り注文情報(注文②、④、⑥)を生成する売り注文情報生成手段とを有するソフトウェアインターフェースと、相場価格が変動して、上記ソフトウェアインターフェースが、上記売り注文(②、④)が約定されたことを検知すると、上記ソフトウェアインターフェースは、買い注文情報(注文③、 ⑤)、前記売り注文(注文②、④)の売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報(注文④、⑥)を、先行する注文の約定を受けて、順次、生成することを特徴とするLOCK管理モジュールであることが認められる。 また、乙8発明は、相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引 を行うための自動取引管理システムに使用される装置であって、金融商品の買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段と、買い注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する売り注文を行うための売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段とを有する注文情報生成手段と、買い注文及び売り注文 の約定を検知する約定検知手段とを備え、相場価格が変動し、上記約定検知手段が、売り注文が約定されたことを検知すると、上記約定検知手段は、売り注文の売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を、先行する注文の約定を受けて、順次、生成することを特徴とする自動取引管理システムに使用される装置で あることが認められる。 b 上記認定事実によれば、乙7発明及び乙8発明は、1組のイフダン注文を繰り返すという注文方法に係る発明であり、いずれも売り注文の約定を検知するものであって、「最も高い売り注文価格の売り注文」の約定を検知する構成を有しているとはいえない。そうすると、仮に乙5発明に乙 繰り返すという注文方法に係る発明であり、いずれも売り注文の約定を検知するものであって、「最も高い売り注文価格の売り注文」の約定を検知する構成を有しているとはいえない。そうすると、仮に乙5発明に乙7発明及び乙8発明を組み合わせることができたとしても、本件 発明の構成には至らないというべきである 。 c 上記によれば、その余の点につき判断するまでもなく、容易想到性を認めることはできないものの、本件事案に鑑み、念のため、乙5発明と乙7発明又は乙8発明の組合せの動機付けにつき、以下検討する。 被告は、①乙5発明、乙7発明及び乙8発明は、いずれも、ユーザに 利便性の高い指値注文を行わせることのできる金融商品取引システムを提供するという課題や目的を有する、②乙5文献の段落【0155】には、イフダン注文を繰り返すシステムにおいて、注文の属性情報としてトレール幅情報を設け、相場価格がトレール幅情報以上に上昇又は下落した際に、注文価格をトレール幅情報の価格分だけ上昇又は下落させ ることにより、注文価格を相場価格に追従させるという技術思想が記載されている一方、乙7発明及び乙8発明も、買い注文と売り注文を繰り返すシステムにおいて、新たに生成される売り注文の価格を、相場価格の変動に応じて追従していくように、従前のものより所定額だけ上昇させるという構成を備えており、乙5文献に記載された構成と同一の目的 を有するから、乙5発明に乙7発明又は乙8発明を組み合わせる動機付けがあると主張する。 しかしながら、前記アcで説示したところと同様に、乙5発明は、想定した一定の価格帯においてイフダン注文を繰り返すことを前提としたものであるのに対し、乙7発明及び乙8発明は、いずれも一定の価 格帯を想定することを前提とするものでは と同様に、乙5発明は、想定した一定の価格帯においてイフダン注文を繰り返すことを前提としたものであるのに対し、乙7発明及び乙8発明は、いずれも一定の価 格帯を想定することを前提とするものではない。 そうすると、乙5発明と乙7発明及び乙8発明は、一定の価格帯を前提とするか否かにおいて技術思想を異にするものであるから、いずれも金融商品の取引に係る技術分野に属することなどを踏まえても、組合せの動機付けがあるとはいえない。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 d 小括以上によれば、乙5発明は乙7発明又は乙8発明と組み合わせるための動機付けを欠くものと認められ、仮に両者を組み合わせることができたとしても、本件発明の構成には至らないことからすると、本件発明は、進歩性を欠くものと認めることはできない。 ⑸ 特許無効の抗弁が却下されるべきとする原告の主張について原告は、無効理由に係る被告の主張は、前訴の口頭弁論終結時までに提出することができたものであり、実質的には、前訴における無効理由と同様のものであるから、訴訟上の信義則に反するものとして民訴法2条1項に基づき、又は時機に後れたものであり訴訟の完結を遅延させるものとして同法157条 1項に基づき、却下されるべきであると主張する。 しかしながら、無効理由に係る被告の主張が採用できないことは、上記において説示したとおりであり、原告の主張は、本件の結論を左右するものではない。 念のため付言するに、前訴と後訴は、被告サーバが本件特許権を侵害するこ とを請求の原因とする点において共通するものの、前訴と後訴は、飽くまで異なる訴訟物に基づく異なる訴えであるから、特許権侵害訴訟一般に当該後訴において無効主張が制限される運用が実務上定着して とを請求の原因とする点において共通するものの、前訴と後訴は、飽くまで異なる訴訟物に基づく異なる訴えであるから、特許権侵害訴訟一般に当該後訴において無効主張が制限される運用が実務上定着していれば格別、被告提出に係る後訴に係る無効理由の提出時期に照らし、後訴における無効理由に係る主張は、時機に後れたものとはいえず、その内容を踏まえても、実質上の蒸し返し であるとして訴訟法上の信義則に反するものともいえず、原告の主張は、採用 することができない。 3 争点2-1-1(特許法102条1項の類推適用の可否)について⑴ 特許法102条1項1号は、特許権の排他的独占的効力に鑑み、特許者又は専用実施権者(以下「特許権者等」という。)においてその侵害の行為により売上げが減少した数量が、権利者の実施能力の限度で侵害者の譲渡数量に等し くなるものと擬制して、侵害者の譲渡数量に権利者の単位数量当たりの利益額を乗じた額を、権利者の実施能力に応じた額の限度で損害額と推定するものである。そうすると、特許権者等がその特許発明を実施していない場合には、特許権者等においてその侵害の行為により売上げが減少した数量を認めることはできず、上記の推定をする前提を欠くことになる。 したがって、特許権者等がその特許発明を実施していない場合には、特許法102条1項の規定は適用又は類推適用されないと解するのが相当である。 これを本件についてみると、前提事実によれば、原告は、本件期間を通じて金融商品取引業者としての登録を受けていないため実施の能力すらなく、FX取引業を営んでいなかったことが認められる。 上記認定事実によれば、原告は本件発明を実施していないことが認められることからすると、特許法102条1項の規定は適用又は類推適用されない く、FX取引業を営んでいなかったことが認められる。 上記認定事実によれば、原告は本件発明を実施していないことが認められることからすると、特許法102条1項の規定は適用又は類推適用されないものといえる。 これに対し、原告は、特許法102条1項が直接適用されるのは、規定上は物が譲渡された場合であるものの、被告が被告サーバを業として使用した結果、 原告の顧客を奪ったことによって原告が被った損害については、同項が類推適用されるべきである旨主張する。しかしながら、特許法102条1項が特許権の排他的独占的効力に鑑みて特許権者等の売上げ減少による逸失利益の額を推定するものであることは、上記において説示したとおりである。そうすると、原告が本件発明を実施していない以上、原告の主張は、上記結論を左右するも のとはいえない。 また、原告は、原告の完全子会社である原告子会社が原告サービスを提供し、原告と完全親子会社の関係にある以上、完全子会社が被った損害は、そのまま完全親会社の被った損害といえる旨主張するとともに、原告は、原告と原告子会社との間で原告ライセンス契約を締結しているところ、●(省略)●という関係があるから、特許法102条1項が類推適用されるべきである旨主張する。 しかしながら、原告と原告子会社は、飽くまで別法人であるから、完全子会社が被った損害がそのまま完全親会社の被った損害とするのは相当ではない。 また、証拠(甲24、27)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、●(省略)●仮に、上記関係が認められたとしても、特許法102条1項が特許権者等の売上げ減少による逸失利益の額を推定する規定であることに鑑みると、●(省 略)●特許法102条1項の趣旨目的に鑑み、相当ではない。 したがって、原告の主張 許法102条1項が特許権者等の売上げ減少による逸失利益の額を推定する規定であることに鑑みると、●(省 略)●特許法102条1項の趣旨目的に鑑み、相当ではない。 したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。 ⑶ 以上によれば、その余について判断するまでもなく、特許法102条1項の規定は適用又は類推適用されるものではない。 4 争点2-2-1(特許法102条2項の適用の可否)について ⑴ 原告と原告子会社との間では、原告ライセンス契約が締結されており、●(省略)●として、特許法102条2項の適用が認められるべきであると主張する。 しかしながら、上記3及びにおいて説示したとおり、証拠(甲24、27)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件期間を通じて金融商品取引業者としての登録を受けていないため実施の能力すらなく、FX取引業を営んでいなか ったのであり、また、●(省略)●が認められる。そうすると、●(省略)●原告の主張は、前提を欠く。 仮に、●(省略)●としても、原告の主張を採用することができない理由は、次のとおりである。 特許法102条2項は、特許権の排他的独占的効力に鑑み、特許権者等にお いてその侵害の行為により売上げが減少した逸失利益の額と、侵害者が侵害行 為により受ける利益の額とが等しくなるとの経験則に基づき、当該利益の額を特許者等の売上げ減少による逸失利益の額と推定するものである。しかしながら、●(省略)●場合には、上記の推定をする前提を欠くことになる。 そうすると、●(省略)●場合には、特許法102条2項の規定は適用又は類推適用されないと解するのが相当である。 したがって、仮に●(省略)●特許法102条2項の規定は適用又は類推適用されないものといえる。 略)●場合には、特許法102条2項の規定は適用又は類推適用されないと解するのが相当である。 したがって、仮に●(省略)●特許法102条2項の規定は適用又は類推適用されないものといえる。 これに対し、原告は、上記のとおり、特許法102条2項の適用が認められるべきであると主張するものの、特許法102条2項が特許権者等の売上げ減少による逸失利益の額を推定する規定であることからすると、●(省略)●売 上げ減少による逸失利益の額まで推定するのは、特許法102条の趣旨目的に鑑み、相当ではない。 以上によれば、原告の主張は、採用することができない。 これに対し、原告は、原告の完全子会社である原告子会社が原告サービスを提供し、原告子会社には、被告による特許権侵害行為がなかったならば利益を 得ることができたという事情が認められ、完全子会社が得られる利益は、そのまま完全親会社の利益ということができるから、特許法102条2項の適用が認められるべきであると主張する。 しかしながら、上記3において説示したところと同様に、原告と原告子会社は、飽くまで別法人であるから、完全子会社が得られる利益がそのまま完全 親会社の利益とするのは相当ではない。 したがって、原告の主張は、採用することができない。 ⑷ 以上によれば、その余について判断するまでもなく、特許法102条2項の規定は適用又は類推適用されるものではない。 5 争点3(消滅時効の成否)について 本件事案に鑑み、損害額算定の前提として、争点3を先に判断する。 ⑴ 平成29年法律第44号による改正前の民法724条前段の「損害及び加害者を知った時」とは、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれを知った時を意味し ⑴ 平成29年法律第44号による改正前の民法724条前段の「損害及び加害者を知った時」とは、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれを知った時を意味し、そのためには、違法行為による損害の発生及び加害者を現実に了知したことを要すると解される。そうすると、物の生産、使用、譲渡等による特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求にお いては、被害者である特許権者が、加害者による当該物の使用の事実及び損害発生の事実を認識したことに加えて、当該物が当該特許権に係る特許発明の技術的範囲に属すると判断するに足りる事実をも認識することが必要であるというべきである。 ⑵ 前提事実、証拠(乙49)及び当裁判所に顕著な事実によれば、①原告は、 平成27年2月19日、被告に対し、本件特許権とは別の特許権に基づき、被告サーバを用いた被告サービス等の提供の差止めを求める訴訟を提起し、さらに、原告は、平成28年6月29日、被告に対し、本件特許権とは別の特許権に基づき、被告サービスに使用されている被告サーバの使用の差止めを求める訴訟を提起したこと、②原告は、平成27年7月19日、被告に対し、本件特 許権に基づき、被告サービスに使用されている被告サーバの使用の差止めを求める前訴を提起したところ、原告が、事実的、法律的根拠を欠くことを知りながらあえて前訴を提起したなどの事情をうかがうことはできないこと、③前訴の第1審裁判所は、平成30年10月24日、被告サーバの使用は本件発明の技術的範囲に属すると判断して、原告の請求を認容する判決(前訴の第1審判 決)を言い渡し、さらに、前訴の控訴審裁判所も、令和元年10月8日、被告サーバの使用は本件発明の技術的範囲に属すると判断して、被告の控訴を棄却する判決を言い渡し 認容する判決(前訴の第1審判 決)を言い渡し、さらに、前訴の控訴審裁判所も、令和元年10月8日、被告サーバの使用は本件発明の技術的範囲に属すると判断して、被告の控訴を棄却する判決を言い渡し、同判決は、同月24日、確定したこと、④原告は、令和2年7月9日、本件訴訟を提起し、被告は、令和4年12月5日、本件の第2回口頭弁論期日において、原告に対し、平成29年7月8日以前の不法行為に 基づく損害賠償請求権について、消滅時効を援用する意思表示をしたこと、以 上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、原告は、被告サーバが本件発明の技術的範囲に属すると主張し、平成27年7月19日、その差止めを求めて前訴を提起したところ、原告が、事実的、法律的根拠を欠くことを知りながらあえて前訴を提起したなどの事情をうかがうことはできず、その後、第1審裁判所、控訴審裁判所 とも、原告の主張を認め、当該差止めを認容する判決が、令和元年10月24日、確定したことが認められる。 これらの事情の下においては、原告は、遅くとも平成29年7月8日までには、被告による被告サーバの使用の事実及び損害発生の事実を認識したことに加えて、被告サーバが本件発明の技術的範囲に属すると判断するに足りる事実 をも認識していたものと認めるのが相当である。 これに対し、原告は、前訴の提起時点では、被告サーバの内部処理は明らかになっておらず、これが明らかになったのは、平成30年3月27日であるなどと主張するものの、原告自身が、被告サーバが本件発明の技術的範囲に属すると主張して前訴を提起した事実のほか、上記認定に係る同種訴訟の事実経過 を踏まえると、原告は、少なくとも平成29年7月8日までには、被告サーバが本件発明の技術的範囲に属すると 術的範囲に属すると主張して前訴を提起した事実のほか、上記認定に係る同種訴訟の事実経過 を踏まえると、原告は、少なくとも平成29年7月8日までには、被告サーバが本件発明の技術的範囲に属すると判断するに足りる事実をも認識していたものと認めるのが相当である。したがって、原告の主張は、採用することができない。 ⑶ 以上によれば、平成29年7月8日以前の不法行為に基づく損害賠償請求権 は、時効によって消滅したものと認められる。 6 争点2-3(特許法102条3項に基づく損害額等)について⑴ 実施料相当額の算定について特許法102条3項は、特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定であって、同項による損害は、原則として、侵害品の売 上高を基準とし、そこに、実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきであ る。そして、平成10年法律第51号による改正により、「通常受けるべき金銭の額」という同項の規定のうち「通常」の部分が削除された経緯に照らせば、同項に基づく損害の算定に当たっては、必ずしも特許権についての実施許諾契約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく、特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき、実施に対し受けるべき料率は、むしろ、 通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうことを考慮すべきである。 したがって、実施に対し受けるべき料率は、①当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、③当該特許発明を当該製品に用 いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との つつ、②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、③当該特許発明を当該製品に用 いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである(知的財産高等裁判所平成30年第10063号令和元年6月7日特別部判決参照)。 ⑵ 侵害品の売上高について ア上記にいう「侵害品の売上高」につき、原告は、被告サーバを使用したFX取引の取引高(3項損害主張①)、被告サーバを使用したFX取引の取引回数(3項損害主張②)、被告サーバを使用したFX取引による手数料収入及びトレーディング損益(3項損害主張③)であると主張する。 そこで検討すると、前提事実、証拠(甲27、乙66、67)及び弁論の 全趣旨によれば、①FX取引は、証拠金を預託し、差金決済(元本に相当する金銭の受渡しを行わず、買い付けの対価と売り付けの対価の差額の授受により決済することをいう。)により外国通貨の売買を行う金融取引であるため、総取引額の金銭の受渡しは必要とされず、売買の損益の受渡しのみで取引が完結すること、②被告は、被告サーバを介してFX取引管理方法に係る 被告サービスを提供し、これによって顧客から手数料収入を得ていたこと、 ③顧客とFX業者が直接取引を行うFX取引では、FX取引による顧客の利益は、FX取引におけるFX業者の損失となるため、そのリスクをヘッジするために、FX業者は、顧客の注文に応じて、他の金融機関に対し同様の注文を行う取引(以下「カバー取引」という。)を行っており、被告は、FX取引を行う際に、被告サービスを含めた多数の顧客の注文を一定数量や一定 時間で合算し、売り注 じて、他の金融機関に対し同様の注文を行う取引(以下「カバー取引」という。)を行っており、被告は、FX取引を行う際に、被告サービスを含めた多数の顧客の注文を一定数量や一定 時間で合算し、売り注文と買い注文を相殺した後、差分数量について他の金融機関とカバー取引を行うことによりトレーディング損益を得ていたこと、④原告ライセンス契約においては、●(省略)●と定められていたこと、以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、差金決済その他のFX取引の内容及び実施料率に 係る取引の実情等を踏まえると、特許法102条3項に基づく実施料相当額算定の前提となる「侵害品の売上高」は、FX取引に関する手数料収入及びトレーディング損益であると認めるのが相当である。 これに対し、被告は、トレーディング損益については、被告サーバを用いた顧客との取引とは別個独立の取引によって得られるものであるから、「侵 害品の売上高」には含まれない旨主張する。しかしながら、カバー取引は、当該FX取引のリスクヘッジのために行われるものであるから、被告がカバー取引により得ているトレーディング損益は、被告サーバを使用した顧客との当該FX取引と密接不可分の関係にあり、●(省略)●トレーディング損益も、上記にいう「侵害品の売上高」に含めるものとするのが相当である。 そして、この場合に、トレーディング損益は、被告の全取引数量に占める被告サービスを用いた取引数量を按分することにより、算定するのが相当である。 したがって、原告及び被告の各主張は、上記認定に抵触する限度で、いずれも採用することができない。 イ本件発明の構成要件を充足しない取引を除外すべきとの被告の主張につ いて 被告は、①買い注 、上記認定に抵触する限度で、いずれも採用することができない。 イ本件発明の構成要件を充足しない取引を除外すべきとの被告の主張につ いて 被告は、①買い注文を決済注文とする取引(以下「取引①」という。)②取引開始時点において2個以下の新規買い注文しか生成されない取引(以下「取引②」という。)、③売り注文が相場価格の上昇に追従する取引(最も高い売り注文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報を 生成した取引をいう。)以外の取引(以下「取引③」という。)は、いずれも本件発明の技術的範囲に含まれないから、これらの各取引は、損害額算定の基礎から除外する必要があると主張する。 取引①についてa 本件特許において、特許請求の範囲の請求項3は、次のとおり記載さ れていることが認められる。 相場価格の変動に応じて継続的に金融商品の取引を行うための金融商品取引管理装置であって、前記金融商品の売り注文を行うための複数の売り注文情報を生成する売り注文情報生成手段と、 前記売り注文の約定によって保有したポジションを、約定によって決済する買い注文を行うための複数の買い注文情報を生成する買い注文情報生成手段とを有する注文情報生成手段と、前記買い注文及び前記売り注文の約定を検知する約定検知手段とを 備え、前記複数の買い注文情報に含まれる買い注文価格の情報は、それぞれ等しい値幅で価格が異なる情報であり、前記注文情報生成手段は、前記複数の買い注文情報を一の注文手続で生成し、 前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の買い注文 のうち、最も低い買い注文価格の買い注文が約定されたことを検知すると、前記注文情報生成手段は、前記約定 し、 前記相場価格が変動して、前記約定検知手段が、前記複数の買い注文 のうち、最も低い買い注文価格の買い注文が約定されたことを検知すると、前記注文情報生成手段は、前記約定検知手段の前記検知の情報を受けて、前記複数の買い注文のうち最も低い買い注文価格よりもさらに所定価格だけ低い買い注文価格の情報を含む買い注文情報を生成すること を特徴とする金融商品取引管理装置b 取引①の除外の可否上記認定事実によれば、本件特許においては、売り注文を決済注文とする本件発明と、買い注文を決済注文とする取引①とは、表裏の関係として明確に区分して規定されていることを踏まえると、本件発明に係る 実施料を算定するに当たっては、取引①に係る収入は、損害額算定の基礎から除外するのが相当である。 なお、弁論の全趣旨及び当裁判所に顕著な事実によれば、原告は、被告サーバが本件特許の請求項3を侵害すると主張し、本件訴訟係属中、取引①に係る損害賠償の支払を求めて別訴を提起していることが認め られる。 取引②及び取引③について証拠(甲7ないし9)及び弁論の全趣旨によれば、被告サーバを用いた取引は、顧客が「想定変動幅、ポジション方向、対象資産」を設定した上、被告サーバは、複数の買い注文情報を前提とした買い注文情報を生成し、 相場価格が上昇した場合には、売り注文の価格を変更するものであることが認められる。そうすると、上記取引は、被告サーバにおいて、複数の買い注文情報を生成させ、相場価格が上昇すれば売り注文の価格を変更させることを意図するのといえる。 これを被告サーバを用いた取引②及び取引③についてみると、当該各取 引は、結果としては、その内容が本件発明による取引に係るものとは異な るものの せることを意図するのといえる。 これを被告サーバを用いた取引②及び取引③についてみると、当該各取 引は、結果としては、その内容が本件発明による取引に係るものとは異な るものの、いずれの取引においても、複数の買い注文情報が生成されて相場価格が上昇したときは、本来売り注文の価格を変動させることを意図したものであったことが認められる。 これらの事情を踏まえると、取引②及び取引③は、特許法102条3項に基づく実施料相当額算定の前提となる「侵害品の売上高」に含まれると するのが相当である。もっとも、被告サーバを使用した取引のうち、結果としてその内容が本件発明による取引に至らなかったもの(取引②及び取引③)については、実施料率の算定において考慮するのが相当である。 したがって、被告の主張は、採用することができない。 ウ本件における侵害品の売上高について 証拠(乙63の2、73の2)及び弁論の全趣旨によれば、本件期間から、消滅時効に係る期間を除いた平成29年7月9日から平成31年3月2日までの期間における被告サービスの手数料収入の合計額は、●(省略)●であり、また、同期間におけるトレーディング損益の合計額は、被告の全取引数量に占める被告サーバを使用した取引数量で按分すると、●(省略)●で あることが認められる。 そうすると、特許法102条3項に基づく実施料相当額算定の前提となる「侵害品の売上高」は、上記手数料収入及びトレーディング損益の合計額である●(省略)●と認められる。 ⑶ 実施料率について ア実施許諾契約における実施料率等証拠(甲27)及び弁論の全趣旨によれば、原告ライセンス契約においては、●(省略)●ことが認められる。 しかしながら、●(省 について ア実施許諾契約における実施料率等証拠(甲27)及び弁論の全趣旨によれば、原告ライセンス契約においては、●(省略)●ことが認められる。 しかしながら、●(省略)●ことは、上記において説示したとおりである。 そして、原告ライセンス契約は、本件特許が登録された平成29年6月9日 より前の平成26年10月1日に締結されており、しかも、原告と原告の完 全子会社である原告子会社との間で締結されたものである。 これらの事情を踏まえると、本件特許の実施料率の算定に当たっては、上記●(省略)●の実施料率を直ちに斟酌するのは相当とはいえない。 他方、証拠(甲26、乙74)によれば、株式会社帝国データバンクによる平成22年3月付けの「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在 り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~本編」においては、コンピュータテクノロジーの実施料率の平均値は、正味販売高の3.1%とされていることが認められる。 イ本件発明の技術内容や重要性 本件発明は、複数の売り注文価格がそれぞれ等しい値幅で異なるように した上で、複数の売り注文価格の情報を含む売り注文情報を一の注文手続で生成し、その後相場価格が変動して、複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格の売り注文が約定されたことを検知すると、当該検知の情報を受けて、複数の売り注文のうち最も高い売り注文価格よりも更に所定価格だけ高い売り注文価格の情報を含む売り注文情報を生成することによっ て、元の売り注文価格よりも相場価格が変動した高値側に新たな売り注文価格の売り注文情報を生成する構成を採用するものである。このような構成により、本件発明は、コンピュータシ 生成することによっ て、元の売り注文価格よりも相場価格が変動した高値側に新たな売り注文価格の売り注文情報を生成する構成を採用するものである。このような構成により、本件発明は、コンピュータシステムを用いて行う金融商品の取引において、相場価格の変動に合わせて注文価格を追従させることにより多くの利益を得る機会を提供するという点において、相応の技術的価値を 有するものと認められる。 証拠(甲7の1、8の1)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、被告サービスの広告宣伝において、被告サービスについて、予め指定した変動幅の中で、一定間隔の値幅で複数のイフダン+OCO注文を一度に同時発注し、決済注文成立後、相場の変動に合わせて変動幅を追従させ、相場変動 に追従した新たな条件の注文をシステムが自動的に繰返し発注する連続 注文機能であって、トラップリピートイフダン注文に係る被告の別のサービスでは、想定した変動幅から相場が外れた場合、利益を逸失する場合があるのに対して、相場の上昇又は下落の変動に合わせて、自動追従して注文を繰り返すため、利益を追求することが期待できる注文方法であることを説明していることが認められる。 そうすると、被告は、相場価格の変動に合わせて注文価格を追従させるという本件発明の技術内容を被告サービスの特徴の一つとして広告宣伝していたことが認められる。 弁論の全趣旨によれば、本件期間から消滅時効に係る期間を除いた期間(平成29年7月9日から平成31年3月2日まで)において、被告と顧 客との間で行われた被告サービスに係るFX取引のうちの、新規注文を買い注文、決済注文を売り注文とし、売り注文が相場価格の上昇に追従する取引(最も高い売り注文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報の生成) われた被告サービスに係るFX取引のうちの、新規注文を買い注文、決済注文を売り注文とし、売り注文が相場価格の上昇に追従する取引(最も高い売り注文価格よりも更に高い売り注文価格の売り注文情報の生成)に対応する新規買い注文に係る手数料収入は、●(省略)●であることが認められる。 そうすると、上記手数料収入は、上記期間における被告サービスにおける手数料収入の合計額●(省略)●にとどまり、被告サービスによる取引のうち売り注文が相場価格の上昇に追従する取引(本件発明の構成要件を充足する態様での取引)の割合は、実際には●(省略)●にも満たないものと認められる。したがって、本件発明による被告サービスの売上げへの 貢献は、上記割合をも斟酌するのが相当である。 上記のとおりの本件発明の技術内容や重要性に照らせば、これを実施することは、被告にとって、相応に売上げや利益に貢献するものであるといえる。 ウ侵害の態様 前提事実によれば、被告は、業として、平成26年10月1日から平成3 1年3月2日まで、被告サーバを使用していたこと、原告が、平成26年5月1日を原出願とする出願につき分割出願をして本件特許が平成29年6月9日に登録されたため、被告サーバが本件発明の技術的範囲に属することになったこと、以上の事実が認められる。当該認定事実を踏まえると、被告による本件発明に係る侵害の態様が、極めて悪質であるとまで認めることは できない。 エその他の事情前提事実によれば、原告は、本件期間を通じて、金融商品取引業者としての登録を受けておらず、FX取引業を営んでいなかったこと、原告の完全子会社である原告子会社は、FX取引等を事業内容とする株式会社であること が認められ 本件期間を通じて、金融商品取引業者としての登録を受けておらず、FX取引業を営んでいなかったこと、原告の完全子会社である原告子会社は、FX取引等を事業内容とする株式会社であること が認められる。 そうすると、原告自身は被告との間で競合関係がないとしても、原告の完全子会社である原告子会社と被告との間では潜在的な競合関係が認められるから、仮に、原告が、被告に対し、本件発明の実施を許諾するとすれば、その実施料は相応に高額になったものといえる。 オ実施料率の算定上記認定に係る本件発明の技術内容や重要性、侵害の態様その他の本件に現れた諸事情を総合考慮して、特許法102条4項の趣旨に鑑み、合理的な料率を定めると、実施に対し受けるべき料率は、●(省略)●であると認めるのが相当である。 ⑷ 損害額ア特許法102条3項に基づく損害額したがって、特許法102条3項に基づく損害額は、次の計算式のとおり、●(省略)●となる(小数点第一位で四捨五入)。 (計算式) ●(省略)● イ弁護士費用及び弁理士費用本件事案の内容、難易度、審理経過及び認容額等に鑑みると、これと相当因果関係があると認められる弁理士費用及び弁理士費用相当損害額は、●(省略)●の限度で認めるのが相当である。 ウ合計額 以上によれば、本件の損害額は、2014万9093円●(省略)●となる。 7 その他その他に、原告及び被告各提出に係る準備書面及び証拠を最後に改めて十分に検討しても、原告及び被告の各主張は、上記において説示したところを踏まえる と、上記判断を左右するものとはいえず、上記判断とは異なる当事者双方の主張は、その限度においてい を最後に改めて十分に検討しても、原告及び被告の各主張は、上記において説示したところを踏まえると、上記判断を左右するものとはいえず、上記判断とは異なる当事者双方の主張は、その限度においていずれも採用することができない。 第5 結論 よって、原告の請求は、主文の限度で理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法61条、64条本文を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 古賀千尋 裁判官 國井陽平 (別紙)被告サーバ目録 「iサイクル注文」という名称で提供されていたFX取引管理方法(被告サービス)に使用されていたサーバ 以上
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