令和3年3月23日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第20127号損害賠償請求本訴事件平成31年(ワ)第9638号貸金返還請求等反訴事件(以下,「第1反訴」という。)令和元年(ワ)第19525号請負代金等支払請求反訴事件(以下,「第2反訴」という。) 口頭弁論終結日令和2年12月8日判決 本訴原告(第1反訴被告兼第2反訴被告) 株式会社YH-Gカンパニー(以下「原告会社」という。) 本訴原告(第1反訴被告) A(以下「原告A」といい,原告会社と併せて「原告ら」という。) 上記2名訴訟代理人弁護士鈴木みき同井上裕貴 本訴被告株式会社アニバーサリー(以下「被告会社」という。) 本訴被告(第1反訴原告) B(以下「被告B」という。) 本訴被告(第1反訴原告) C (以下「被告C」という。) 本訴被告(第1反訴原告) D(以下「被告D」といい,被告B,被告Cと併せて「被告Bら」とい う。)上記4名訴訟代理人弁護士岡田洋介同長 谷 健太郎 本訴被告(第2反訴原告) E (以下「被告E」といい,被告会社,被告Bらと併せて「被告ら」という。)同訴訟代理人弁護士 郎 本訴被告(第2反訴原告) E (以下「被告E」といい,被告会社,被告Bらと併せて「被告ら」という。)同訴訟代理人弁護士司同福西信文 同訴訟復代理人弁護士原 悠太同中野和馬 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2(1) 原告Aは,被告Cに対し,301万0782円及びこれに対する令和元年 5月9日から支払済みまで年1割4分の割合による金員を支払え。 (2) 被告Cのその余の反訴請求をいずれも棄却する。 3(1) 原告会社は,被告Eに対し,571万1449円及びこれに対する令和元年7月30日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2) 被告Eのその余の反訴請求を棄却する。 4 被告Bの反訴請求をいずれも棄却する。 5 被告Dの反訴請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,本訴及び各反訴を通じて,これを100分し,その2を被告Eの,その1を被告Bの,その1を被告Cの,その1を被告Dの各負担とし,その余を原告らの負担とする。 7 この判決は,第2(1)項及び第3(1)項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 本訴(1) 被告らは,原告会社に対し,連帯して金4235万円及びこれに対する平成29年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告らは,原告Aに対し,連帯して金576万5177円及びこれに対する平成29年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告らは,原告Aに対し,連帯して金576万5177円及びこれに対する平成29年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第1反訴(1) 原告Aは,被告Cに対し,金512万9371円,及び内金402万9371円に対する平成29年11月1日から支払済みまで年1割4分の割合に よる金員を,内金110万円に対する平成30年8月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を,それぞれ支払え。 (2) 原告らは,連帯して,被告B,被告C及び被告Dら各自に対し,金110万円及びこれに対する平成30年8月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 第2反訴原告会社は,被告Eに対し,金909万0276円及びこれに対する令和元年7月30日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件の本訴は,生命保険の募集に関する業務等を目的とする会社である原告 会社及びその代表者である原告Aが,原告会社の従業員であった被告B,同C 及び同D並びに,原告会社の関係会社の業務委託先であった被告Eにおいて,被告Bらの在職中に被告会社を設立し,その後,原告Aに対し継続的に恐喝行為を行って,原告会社取扱いの保険契約を被告会社に移管する合意を強要し,顧客名簿のデータを搭載したパソコンを含む原告会社の備品及び原告Aの所有物を窃取し,原告会社の取引先である保険会社に対し原告会社の信用を毀損す る内容の告知を行う等して,原告会社に対し営業上の損害を与え,また,原告Aに対し財産的及び精神的損害を与えたが,これらの行為は,原告会社との関係では営業秘密の不正取得(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項4号,5 告会社に対し営業上の損害を与え,また,原告Aに対し財産的及び精神的損害を与えたが,これらの行為は,原告会社との関係では営業秘密の不正取得(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項4号,5号)及び信用毀損(同21号)の不正競争行為に当たり,また,原告会社及び原告Aとの関係では不法行為を構成する旨を主張して,原告会社が, 被告らに対し,不競法4条,民法709条,同法719条に基づき損害賠償金4235万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年11月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め(第1の1(1)),原告Aが,被告らに対し,民法709条,同法719条に基づき損害賠償金576万5177円及 びこれに対する不法行為の後の日である平成29年11月1日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める(前記第1の1(2))事案である。 第1反訴は,被告Bらが,各自,原告らによる本訴が不当訴訟に当たる旨を主張して,原告らに対し不法行為に基づく損害賠償金110万円及びこれに対 する平成30年8月6日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め(前記第1の2(2)),さらに,被告Cが,原告Aに対し,同原告を借主とする元金480万円の金銭消費貸借契約(以下「本件金銭消費貸借契約」といい,同契約に基づく貸付金を「本件貸金」という。)に基づく本件貸金の残金402万9371円 の返還及びこれに対する平成29年11月1日(上記契約所定の返済期限であ る平成29年10月31日の翌日)から支払済みまで上記契約所定の年1 )に基づく本件貸金の残金402万9371円 の返還及びこれに対する平成29年11月1日(上記契約所定の返済期限であ る平成29年10月31日の翌日)から支払済みまで上記契約所定の年1割4分の遅延損害金の支払を求めるとともに,原告Aによる貸付強要行為を内容とする不法行為に基づく損害賠償金110万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成30年8月6日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(前記第1 の2(1))事案である。 第2反訴は,被告Eが,原告会社との間で業務委託契約を締結していた旨を主張して,主位的に原告会社に対し,業務委託契約に基づく未払業務委託費909万0276円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分(平成29年法律第45号による改正前の商法514条。以 下同じ。)の割合による遅延損害金の支払を求め,仮に業務委託契約が不存在の場合には予備的に原告会社に対し,不当利得金の返還及びこれに対する反訴状送達の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。なお,枝番 号の記載を省略したものは,枝番号を含む(以下同様)。)(1) 当事者ア原告会社は,損害保険代理業,生命保険の募集に関する業務等を目的とする株式会社である。(甲1)イ原告Aは,原告会社の代表取締役であり,このほか,訴外YHイノベー ション株式会社(以下,「訴外イノベーション」という)の代表取締役でもある。 ウ被告会社は,平成29年9月20日に設立された,生命保険の募集に関する業務等を ほか,訴外YHイノベー ション株式会社(以下,「訴外イノベーション」という)の代表取締役でもある。 ウ被告会社は,平成29年9月20日に設立された,生命保険の募集に関する業務等を目的とする株式会社である。(甲2)エ被告Eは,被告会社の代表取締役であるが(甲4),被告会社の設立前で ある平成29年8月,原告会社又は訴外イノベーションと業務提携契約を 締結し(以下「本件業務委託契約」という。なお,被告Eが本件業務委託契約を締結したのが原告会社であるか訴外イノベーションであるかについては,後記3(11)のとおり,争いがある),原告会社の当時の本店所在地にあった事務所(以下「本件事務所」という。)内において業務を行っていた者である。 オ被告Bは,被告会社の取締役であるが,被告会社の設立前である平成29年2月1日から同年10月末頃まで,原告会社の従業員であった者である。(甲4,甲5,甲15)カ被告Cは,被告会社の従業員であるが,被告会社の設立前である平成29年3月1日から同年10月末頃まで,原告会社の従業員であった者であ る。(甲6,甲15)キ被告Dは,被告会社の従業員であるが,被告会社の設立前である平成27年6月1日から平成29年10月末頃まで,原告会社の従業員として,総務及び経理等を担当していた者である。(甲7,甲15)(2) 原告会社名義での外国車購入のためのオートクレジット契約書の作成 平成28年12月,ポルシェ社製の外国車であるパナメーラ(以下「本件外国車」という。)を購入する目的で,原告会社を借主,被告B及びF(被告Bの母。以下「訴外F」という。)を連帯保証人とするオートクレジット契約書(以下「本件オートクレジット契約書」と ラ(以下「本件外国車」という。)を購入する目的で,原告会社を借主,被告B及びF(被告Bの母。以下「訴外F」という。)を連帯保証人とするオートクレジット契約書(以下「本件オートクレジット契約書」という。)が作成され,原告会社,被告B及び訴外Fの印鑑登録証明書等の書面とともに,信販会社に提出され た。(甲32,乙2)(3) 原告Aによる被告Cからの借入れ及び弁済の状況等ア平成29年5月末頃までに,被告Cは,原告Aに対し,次の約定で金480万円を貸し付けた(本件金銭消費貸借契約)。 返還時期平成29年10月31日 返済方法借入元金融機関に直接振り込む方法による その他被告Cが本件貸金の原資の借入元である各借入金融機関に対し負担する利息を原告Aが負担する。 遅延損害金年14%イ被告Cは,平成29年8月14日から同年11月21日にかけて,別紙「借入金額・弁済額一覧表」の「借入金額」欄記載のとおり,原告Aに対 し,合計17万5000円を貸し付けた(以下「本件追加貸金」という。 なお,このほかに,平成29年11月17日において2万円,及び同年11月21日において更に1万円を貸し付けたか否かについては,後記3(8)のとおり,争いがある。)。 ウ原告Aは,別紙「借入金額・弁済額一覧表」の「年月日」欄記載の各日 付において,「振込み」欄記載の各金額を振り込み,また,被告Cに対し,「現金」欄及び「保険手数料」欄記載の各金額を支払った。 なお,前記「借入金額・弁済額一覧表」の「現金」欄記載の各金額並びに「振込み」欄記載のうち,平成29年11月1日付け,同月11日付け,平成30年1月5日付け,同年4月4日付け,同月27日 なお,前記「借入金額・弁済額一覧表」の「現金」欄記載の各金額並びに「振込み」欄記載のうち,平成29年11月1日付け,同月11日付け,平成30年1月5日付け,同年4月4日付け,同月27日付け及び同年6 月25日付けの各5万円の合計60万円については,原告Aと被告Cとの間で「軍資金」という名目で支払われたものである(以下,この名目で支払われた金員を「本件軍資金」という。)。また,「保険手数料」記載の各金額は,原告Aが単独で担当していた顧客につき,被告Cとの共同担当に変更した後に,当該顧客の保険契約に係る担当者のインセンティブ報酬の一 部を分配したものである(以下,この趣旨で分配された金員を「本件インセンティブ報酬分配金」という。)。この本件軍資金及び本件インセンティブ報酬分配金の支払が弁済の趣旨でなされたものか否かについては,後記3(8)のとおり,争いがある。)。 (4) 平成29年9月以降の経緯 ア被告Bらは,平成29年9月25日,本件事務所内において,被告E同 席の下,原告Aとの間で,前記(2)の本件外国車の購入の経緯や前記(3)の被告Cからの借入れ及び返済の状況等について協議する機会を持った。その後も,同様の趣旨の協議が定期的になされた。 イ被告Cは,知人の伝手をたどり原告Aの長女に対し連絡をとって,本件貸金の返済の関係で,同人の協力を得るべく面会を求め,平成29年9月 28日,被告Cは,被告Bに同行してもらって,川崎市内の飲食店で上記長女のほか,原告Aの妻と義兄(以下,併せて「原告Aの家族・親族」という。)と面会した。 ウ平成29年10月2日から同月26日の作成日付で,同月30日をもって退職したい旨が記載された被告Bら作成名義の退職届が作成され,その せて「原告Aの家族・親族」という。)と面会した。 ウ平成29年10月2日から同月26日の作成日付で,同月30日をもって退職したい旨が記載された被告Bら作成名義の退職届が作成され,その 後に,被告Bらが原告会社を退職し,被告Bは被告会社の代表取締役に,被告C及び被告Dは被告会社の従業員となった。(甲4,甲15,弁論の全趣旨)エ平成29年10月31日頃,原告会社の本件事務所内で使用されていた備品(机,ソファ,パソコン,電子レンジ,冷蔵庫,傘立て等)が持ち 出されて,被告会社の事務所内に移された。(甲14,弁論の全趣旨)オ平成29年10月から同年11月にかけて,原告会社及び被告会社は,原告会社が保険代理店となっていた生命保険契約の一部を被告会社の管理に移すことで合意した(以下,この合意を「本件移管合意」という。)旨を内容とする覚書を作成し,各生命保険会社との間で,本件移管合意に沿 って,移管合意書への署名押印を行うなどして,関係する手続を進めた。 (甲20)カ被告Bは,平成29年11月頃,オリックス生命保険株式会社(以下「オリックス生命」という。)の担当者に対し,前記(2)の本件外国車に係る本件オートクレジット契約書の連帯保証人欄の記載は,被告Bの承 諾なしに作成されたものであり,偽造である旨を述べた。 2 争点(1) 被告らによる不正競争行為の成否(争点1)ア営業秘密不正取得行為(不競法2条1項4号,5号)の成否(争点1-1)イ信用毀損行為(不競法2条1項21号)の成否(争点1-2) (2) 被告らによる脅迫等の行為・窃取行為の有無(争点2)(3) 被告らの故意・過失(争点3)(4) 被告らの共同不法行為の成 (不競法2条1項21号)の成否(争点1-2) (2) 被告らによる脅迫等の行為・窃取行為の有無(争点2)(3) 被告らの故意・過失(争点3)(4) 被告らの共同不法行為の成否(争点4)(5) 被告らによる不法行為等と相当因果関係のある損害及びその額(争点5)(6) 原告らによる本訴提起を内容とする不法行為の成否(争点6) (7) 原告Aの被告Cに対する既弁済額等(争点7)(8) 原告Aによる貸付強要行為等を内容とする不法行為の成否(争点8)(9) 原告Aによる不法行為と相当因果関係のある損害及びその額(争点9)(10) 原告会社と被告Eの間の業務委託契約の有無・内容等(争点10)(11) 被告Eの原告会社に対する不当利得返還請求権の成否(争点11) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1-1(営業秘密不正取得行為(不競法2条1項4号,5号)の成否)[原告会社の主張]被告らは,次のとおり,原告会社の「営業秘密」に当たる情報を脅迫行為又は窃取行為という不正な方法で取得し,また,不正取得した当該情報を使 用し,開示した。 ア原告会社は,保険契約の顧客情報が記載された各保険申込書控え(以下「本件申込書控」という。)並びに顧客情報に係る電磁的記録(以下,本件申込書控に記載された情報と当該電磁的記録を併せて「本件顧客情報」という。)及び原告会社の経理,人事等に関する電磁的記録(以下,「本件人 事経理情報」という。)が保存されていたパソコン(以下「本件パソコン」 という。)を事務所内で管理していた。 そして,本件顧客情報及び本件人事経理情報のいずれにおいても,アクセス制限がなされており,客観的に れていたパソコン(以下「本件パソコン」 という。)を事務所内で管理していた。 そして,本件顧客情報及び本件人事経理情報のいずれにおいても,アクセス制限がなされており,客観的に営業秘密であると認識できる状況にあったこと,原告会社の従業員らが秘密保持に関し誓約していたこと,個人情報取扱規程を備え置き,従業員らに配布もしていたことなどから,「営業 秘密」の要件である秘密管理性を満たし,また,有用性及び非公知性も満たすものであった。 イ被告らは,後記(3)のとおり,原告Aを脅迫して,本件申込書控や本件パソコンなどを喝取し,又は窃取することにより,本件顧客情報及び本件人事経理情報を取得した。 [被告らの主張]次のとおり,本件顧客情報及び本件人事経理情報はいずれも「営業秘密」に当たらないし,被告らは,本件申込書控や本件パソコンを喝取も窃取もしていない。 ア本件顧客情報について,「営業秘密」の要件のうち有用性と非公知性を満 たすことは争わないが,次のとおり,秘密管理性は満たさない。すなわち,本件申込書控えが保管されていた棚は施錠できるものではあったが,開錠された状態になっていることも多く,従業員の一部が常時,鍵を利用していたものであり,また,電磁的記録については当該保険契約の担当者であれば保険会社のサーバーにアクセスすることによりいつでも取得できる ものであった。 また,本件人事経理情報については,持ち出しの対象となったパソコンには,きわめて機密性の低い情報しか保存されておらず,営業秘密には当たらない。 イ被告らは,後記(3)のとおり,原告Aの了承を得て,備品を譲り受けたに すぎない。 (2) 争点1-2(信用毀損行為(不競法2 おらず,営業秘密には当たらない。 イ被告らは,後記(3)のとおり,原告Aの了承を得て,備品を譲り受けたに すぎない。 (2) 争点1-2(信用毀損行為(不競法2条1項21号)の成否)[原告会社の主張]ア被告会社は,生命保険の募集に関する業務を目的とし,原告会社と同様,保険会社と保険加入者との契約の締結を媒介することにより保険会社から得られる手数料を事業収入としており,両社は,営業上顧客を共通にし ている以上,競争関係にある。 イ被告会社の役員である被告Bは,オリックス生命の担当者に対し,本件オートクレジット契約書の連帯保証人欄の記載は,原告Aにより,被告Bの承諾なしに作成されたものであり,偽造である旨を告知した。 しかし,上記契約書は,原告Aが,当時の代表取締役であった訴外Fの 指示に従い,被告Bの承諾のもと,代理署名をしたものである。そして,原告Aには,被告Bを連帯保証人とする旨の動機や利益が全く存在しなかったのであるから,被告Bの上記告知内容は虚偽である。被告Bの上記告知行為は,オリックス生命の原告会社に対する信用を毀損させ,原告会社とオリックス生命との間の保険代理店契約を解消させることによって,原 告会社の取扱いとなっていたオリックス生命の保険契約を被告会社に移管させ,オリックス生命からの手数料収入を被告会社が取得するために行われたものである。 ウそうすると,被告会社の役員である被告Bが,オリックス生命の担当者に対し,前記のとおり虚偽の事実を伝えたことは,原告会社の信用を著し く毀損する行為であり,不正競争行為(不競法2条1項21号)に該当する。 [被告らの主張]ア被告Bのオリックス生命の担当者に対する告知行為は たことは,原告会社の信用を著し く毀損する行為であり,不正競争行為(不競法2条1項21号)に該当する。 [被告らの主張]ア被告Bのオリックス生命の担当者に対する告知行為は,原告Aを貶めるなどの意図で行われたものではない。被告Eが,被告Bらが退職等する経 緯を伝えたところ,訴外オリックスの担当者から本件オートクレジット契 約書が原告Aによって勝手に作成されたとの話があるが本当かとの質問を受けたため,被告Bが,自らの記憶に従ってこれを認める旨の回答をしたにすぎない。 イ被告Bが回答した事実は,虚偽の事実ではない。すなわち,原告Aは,平成28年12月14日,本件外国車の売買契約及びオートクレジット契 約を締結した際に,被告Bに無断で同人の名前や住所等を記入し,原告会社において保管されていた同人の実印を捺印し,同人を連帯保証人とする本件オートクレジット契約書を偽造したものである。このことは,本件オートクレジット契約書の連帯保証人欄に記入された文字が,被告Bではなく原告Aの筆跡による文字であること,被告Bの実印が捺印されているも のの,同実印は原告Aが自由にこれを使用できる状態にあったこと,前記連帯保証人欄の記載は,住所に誤記があり,年収が事実と異なるなど,被告Bによるものではあり得ない内容であること,前記連帯保証人欄に記入された携帯電話番号は,原告Aが使用する携帯電話番号であることに加え,本件外国車の使用目的・使用実態や当時の被告Bの原告Aへの貸付けの返 済状況から,被告Bが連帯保証人になることを承諾するような状況になかったことからも明らかである。 (3) 争点2(被告らによる脅迫等の行為・窃取行為の有無)[原告らの主張]ア被告らは,次のとおり,原 証人になることを承諾するような状況になかったことからも明らかである。 (3) 争点2(被告らによる脅迫等の行為・窃取行為の有無)[原告らの主張]ア被告らは,次のとおり,原告会社の代表者である原告Aに対し,脅迫行 為(恐喝行為を含む。以下同様。)を行った。 (ア) 被告E,被告B及び被告Cは,平成29年9月25日,本件事務所内の一室に,原告Aを呼び出した上,一方的に,被告Bら,訴外G及び同Fが原告会社を退職し,被告Eは業務委託契約を解約した上で,新たに設立した被告会社に移籍する旨伝え,さらに,従前の対応と180度異 なる威圧的な態度で,かつ執拗に,①支払期日の到来していない被告B らに対する給与等の前払いをすること,②保険契約の締結を媒介した際に被告Bらが原告会社から取得するコミッションの率を上げること,③原告会社が取り扱っている保険契約を被告会社に移管すること,④原告Aが,原告会社を受取人とする生命保険に加入することを要求した。同様のことは,同月28日にも行われ,それ以降も毎週,月曜日と木曜日 に行われた。 (イ) 被告Eは原告Aに対し,平成29年9月下旬から同年11月下旬にかけて,原告Aとの通話の中で同人に対する脅迫行為を行い,また,SNSのメッセージ送信による脅迫行為にも及んだ。 (ウ) 被告Cは,原告Aの長女の名前をフェイスブックで検索して同人を発 見し,面会の約束を取り付け,平成29年9月28日,被告Bも同行の上で,上記長女及び原告Aの妻と飲食店内で面会し,同人らに対し,原告Aの借金を返済するよう脅迫した。その後も,被告C及び被告Eは,上記長女の勤務する会社に架電をし,同人が金銭を借り入れようとするまで,前記要求を続けた。 面会し,同人らに対し,原告Aの借金を返済するよう脅迫した。その後も,被告C及び被告Eは,上記長女の勤務する会社に架電をし,同人が金銭を借り入れようとするまで,前記要求を続けた。 (エ) 被告Eは,平成29年10月中旬頃,原告Aに架電し,原告会社からの備品の持ち出しに応じるよう脅迫した。 (オ) 原告Aは,被告E,被告B及び被告Cらによる連日にわたる執拗な脅迫行為に耐えきれず,同年10月中旬頃,前記内容の生命保険に加入した。また,同じ頃から,原告Aは,心労で通院するようになり,平成2 9年10月下旬にはうつ病と診断された。さらに,原告Aは,被告E,被告B及び被告Cからの執拗な脅迫行為とそれに起因する精神疾患の影響から,同人らに対し逆らうことができない状況に陥り,同年10月から11月にかけて,同人らによる更なる脅迫行為から免れたい一心で,順次,保険会社から郵送され,または保険会社担当者が持参した移管合 意書に,署名押印をした。 イ原告Aは,原告会社の事務所内で原告会社の備品に,多数のピンク色の付箋が貼ってあるのを発見し,「3段の棚」以外の持出しを拒否する趣旨で付箋を剥がしたが,被告らは,平成29年10月31日,被告会社の依頼を受けた運送業者により,原告会社の備品(冷蔵庫,応接セット,本件申込書控,本件パソコンなど)を運び出させて,これらを窃取した。 [被告らの主張]ア被告らが原告Aに対してした行為は,次のとおり,脅迫等の行為には当たらない。 すなわち,原告Aとしては,使途不明の金員を,原告会社の従業員に消費者金融で借りさせてその返済をしないこと,原告Aが被告Bを無断で連 帯保証人として原告会社名義で契約して本件外国車を私的に利用してい ,原告Aとしては,使途不明の金員を,原告会社の従業員に消費者金融で借りさせてその返済をしないこと,原告Aが被告Bを無断で連 帯保証人として原告会社名義で契約して本件外国車を私的に利用していたこと,及び被告Eに対するコミッション報酬の未払があったことなどについての重大な責任があり,これらが発覚した以上,一定の追及を被告らから受けることは必然であって,一定限度では原告Aはこれを甘受すべき法的義務があったものというべきである。そして,原告Aの原告会社にお ける立場が「代表者」として被告らよりも上であったことなども勘案すれば,原告らの主張する被告Eらの行為が脅迫等の行為にあたるものと評価することは行き過ぎである。また,移管合意書については,そもそも保険契約の担当者が他の代理店に移籍する際にはそれに伴い担当していた保険契約の移管がなされるのが保険代理店間における当然の慣習とされて おり,本件でも同慣習に従って移管がなされたにすぎない。さらに,原告Aが様々な違法行為に及んでいたことから,被告らが退職することもやむを得ず,これに伴い被告らが担当している顧客が移管されるのも当然やむを得ないとの認識を前提に,移管がなされたにすぎない。 イ原告会社の備品の持ち出しについては,原告Aが行った上記各行為の責 任の重大さからすれば,同人において備品を被告らに譲り渡すことを了承 したことは何ら不自然なことではない。そうすると,被告らは原告Aの了承を得て備品を譲り受けたに過ぎず,窃取行為をしたものとはいえない。 (4) 争点3(被告らの故意・過失)[原告らの主張]被告らが,原告会社の事務所内における勤務中に,被告会社の設立を計画 していたこと,被告会社の事業資金等を獲得する必要性があったこと 点3(被告らの故意・過失)[原告らの主張]被告らが,原告会社の事務所内における勤務中に,被告会社の設立を計画 していたこと,被告会社の事業資金等を獲得する必要性があったこと,保険代理店における顧客情報及び保険会社からの信用の重要性を知り得る立場にあったこと,保険会社から得られる手数料が保険代理店の主たる収入となることを知っていたこと,本件盗難品を持ち去ることによる原告会社の事業に与える影響の大きさを認識していたこと,脅迫等の行為,窃取行為及び信用 毀損行為が,刑法上違法な行為であること,被告会社が,本件盗難品を使用し,事業を継続していることからすれば,被告らには,原告会社に対する不正競争行為及び不法行為並びに原告Aに対する不法行為につき,故意又は重過失が認められる。 [被告らの主張] 原告らの上記主張は争う。 (5) 争点4(被告らの共同不法行為の成否)[原告らの主張]被告らによる一連の脅迫等の行為及び窃取行為は,当初から被告らの共謀の上でなされたものである。 [被告らの主張]原告らの上記主張は争う。 (6) 争点5(被告らによる不法行為等と相当因果関係のある損害及びその額)[原告らの主張]ア原告会社の損害 4235万円 原告会社は,被告らの不正競争行為によって,本件顧客情報に係る逸失 利益500万円,信用毀損行為に係る無形的損害300万円の各損害を被った。また,原告会社は,被告らの不法行為によって,上記の損害に加え,原告会社が媒介した保険契約に係る手数料収入の一部2500万円,業務妨害による逸失利益500万円,事務所内の備品の窃取による50万円の各損害を被った(以上の合計額 法行為によって,上記の損害に加え,原告会社が媒介した保険契約に係る手数料収入の一部2500万円,業務妨害による逸失利益500万円,事務所内の備品の窃取による50万円の各損害を被った(以上の合計額3850万円)。 このほか,原告会社は,被告らの行為により被った被害の救済のため,弁護士に委任する必要が生じ,弁護士費用相当額の損害を被った。その損害額は,原告会社に生じた全損害の合計額の1割相当額(385万円)であるから,原告会社の損害額は,合計4235万円である。 イ原告Aの損害 576万5177円 原告Aは,被告らの不法行為によって,うつ病に罹患し,これに係る治療費,通院費及び交通費4万1070円の損害,500万円を下らない精神的損害,本件盗難品を窃取されたことによる20万円の損害を被った(以上の合計額524万1070円)。このほか,原告Aは,被告らの行為により被った被害の救済のため,弁護士に委任する必要が生じ,弁護士費 用相当額の損害(上記損害合計額の1割相当の52万4107円)を被ったから,原告Aの損害額は,合計576万5177円である。 [被告らの主張]原告らの上記主張は争う。 (7) 争点6(原告らによる本訴提起を内容とする不法行為の成否) [被告Bらの主張]本訴は,原告らが,被告らの脅迫等の行為や窃取行為を主張して,被告らに対し損害賠償を求めるものであるところ,同脅迫等の行為や窃取行為がないことは本件各証拠から明らかであって,本訴請求が事実的,法律的根拠を欠くことは明らかである。そして,原告らもそのことを認識していたもので あるから,原告らによる本訴提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく 相当性を欠くものであって,不法 的根拠を欠くことは明らかである。そして,原告らもそのことを認識していたもので あるから,原告らによる本訴提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく 相当性を欠くものであって,不法行為に当たる。 [原告らの主張]被告Bらの上記主張は争う。 (8) 争点7(原告Aの被告Cに対する既弁済額等)[原告Aの主張] ア原告Aは,被告Cに対し,別紙「借入金額・弁済額一覧表」の「年月日」欄各記載の年月日に,「振込み」欄,「現金」欄,及び「保険手数料」欄各記載の金額を弁済した。 なお,本件軍資金及び本件インセンティブ報酬分配金は,いずれも本件金銭消費貸借契約に基づく本件貸金の返済として支払われたものである。 イ被告Cは,別紙「借入金額・弁済額一覧表」の「借入金額」欄に記載された各金額とは別に貸し付けた金員がある旨を主張するが,かかる貸金については否認する。 ウ原告Aが被告Cから借り入れた金銭及びこれに対する返済額は,いずれも別紙「借入金額・弁済額一覧表」記載のとおりであり,原告Aの被告C に対する残債務額は,100万4052円である。 [被告Cの主張]ア本件軍資金は,弁済の趣旨で支払われたものではない。被告Cは,原告Aから,同人に代わって消費者金融から借入れを行ったことのへの謝礼と被告Cの営業活動の資金を援助する趣旨の金員として,「軍資金」名目で月 額10万円を支払う旨の説明を受けていた。 また,本件インセンティブ報酬分配金は,原告Aが,見込み客に対する営業活動を被告Cに行わせ,契約を獲得できた際には,見込み客を開拓した原告Aの貢献と契約を獲得した被告C自身の営業活動による貢献とを勘案して両者で分配しているとい 配金は,原告Aが,見込み客に対する営業活動を被告Cに行わせ,契約を獲得できた際には,見込み客を開拓した原告Aの貢献と契約を獲得した被告C自身の営業活動による貢献とを勘案して両者で分配しているというだけのことであり,本件貸金の返済と 何ら関連性を有しない。 イ被告Cは,別紙「借入金額・弁済額一覧表」の「借入金額」欄に記載された各金額とは別に,原告Aに対し,平成29年11月17日において2万円,及び同月11月21日において更に1万円を貸し付けた。 ウ原告Aが被告Cから借り入れた金銭の額は別紙「借入金額・弁済額一覧表」の「借入金額」欄記載の総合計に前記イのとおり3万円を加算した額 であり,これに対する原告Aの返済額は,同一覧表の「振込」欄記載の総合計から前記アのとおり軍資金として支払われた金額(合計30万円)を控除した額である。 なお,本件金銭消費貸借契約においては,被告Cが本件貸金の原資の借入元である各借入元金融機関に対し負担する利息を原告Aが負担すると されていることから,本件貸金の残額は少なくとも反訴状の請求額(402万9371円)である。 (9) 争点8(原告Aによる貸付強要行為等を内容とする不法行為の成否)[被告Cの主張]原告Aは,無知な新入社員であった被告Cの立場に付け込んで,自らの弟 のために金策をしているように装い,借入元金融機関に虚偽の事実を記入した書類を提示するよう強要し,本来,被告Cが借入可能な金額以上の金銭を借りさせた。また,原告Aは,被告Cが紹介した友人にも同様の手口で多額の金銭を消費者金融等から借りさせた挙句,原告Aに交付させ,その後,税務調査で銀行口座にある資金を利用できないなど虚偽を繰り返して述べるな どして返済 被告Cが紹介した友人にも同様の手口で多額の金銭を消費者金融等から借りさせた挙句,原告Aに交付させ,その後,税務調査で銀行口座にある資金を利用できないなど虚偽を繰り返して述べるな どして返済を怠り,原告会社の他の従業員に知られないように口止めを画策するなどした。このように,原告Aの行為は極めて悪質であり,これらの一連の行為は不法行為を構成する。 [原告Aの主張]被告Cの上記主張は争う。 (10) 争点9(原告Aによる不法行為と相当因果関係のある損害及びその額) [被告Bらの主張]ア被告Bらの損害各110万円原告らの本訴提起により,被告Bら各自に生じた損害は,それぞれ慰謝料100万円及び弁護士費用10万円の合計110万円を下らない。 イ被告Cの損害 110万円 原告Aの違法な貸付強要行為等により被告Cが受けた精神的損害は100万円を下らず,この点に関する弁護士費用相当額は10万円を下らない。 [原告Aの主張]被告Bらの上記主張は争う。 (11) 争点10(原告会社と被告Eの間の業務委託契約の有無・内容等) [被告Eの主張]ア本件業務委託契約の当事者及び内容(ア) 被告Eと原告会社は,平成29年8月,被告Eの担当した顧客が原告会社を保険代理店として保険契約を締結した場合に,原告会社から被告Eに対し,報酬として,保険会社から原告会社に対し支払われた手数料 額(消費税込み)の80%の金額(以下「本件コミッション報酬」といい,コミッション報酬の前記手数料額に占める割合を「本件コミッション報酬の割合」という。)を支払うことを内容とする本件業務委託契約を締結した。 (イ 金額(以下「本件コミッション報酬」といい,コミッション報酬の前記手数料額に占める割合を「本件コミッション報酬の割合」という。)を支払うことを内容とする本件業務委託契約を締結した。 (イ) その後,本件コミッション報酬の割合は,平成29年8月分及び同年 9月分の手数料額について90%に変更されたが,同年10月分については80%のままであった。また,本件業務委託契約の期間は平成29年10月末までであったが,同年11月分についてコミッション報酬割合を98%と変更した上で,黙示的に更新された。 イ本件業務委託契約に基づき被告Eに支払われるべき報酬の額 (ア) 被告Eの担当した顧客が原告会社を保険代理店として保険契約を締結 したことにより,保険会社から原告会社に対し支払われた手数料の額は,平成29年10月分が593万2606円(内訳は,三井住友海上あいおい生命保険株式会社(以下「三井住友海上あいおい生命」という。)25万円,オリックス生命52万1498円,アクサ生命保険株式会社(以下「アクサ生命」という。)130万円,東京海上日動あんしん生命保険 株式会社(以下「東京海上日動あんしん生命」という。)386万1108円),同年11月分が374万5752円(内訳は,オリックス生命31万2599円,アクサ生命180万円,東京海上日動あんしん生命163万3153円)である。 (イ) 前記(ア)の各手数料額に,前記ア(イ)の本件コミッション報酬の割合を 乗じると,次の計算式のとおり,被告Eに支払われるべき本件コミッション報酬(平成29年10月分及び同年11月分)の金額は909万0276円となる。 (計算式)593万2606円×1.08×0.8+374万5752円×1.08 支払われるべき本件コミッション報酬(平成29年10月分及び同年11月分)の金額は909万0276円となる。 (計算式)593万2606円×1.08×0.8+374万5752円×1.08×0.98=909万0276円 [原告会社の主張]ア本件業務委託契約の当事者及び内容(ア) 被告Eとの間で本件業務委託契約を締結したのは,原告会社ではなく,訴外イノベーションである。原告Aが,保険代理店である原告会社が個人の保険募集人である被告Eと完全成果報酬型の業務委託契約を締結す ることは金融庁の要請に反することとなる一方,原告会社が法人である訴外イノベーションとの間で業務委託契約を締結し,訴外イノベーションと被告Eとの間で業務委託契約を締結すれば,前記要請に反することにならないとの認識の下で,訴外イノベーションを介在させたものであり,現に,被告Eへの本件コミッション報酬は訴外イノベーションから 支払われている。 また,本件コミッション報酬の金額算定の基礎となる手数料額は,消費税分を含まない金額である。 (イ) 本件コミッション報酬の割合は80%であり,以降,変更されていない。 イ本件業務委託契約に基づき被告Eに支払われるべき報酬の額 (ア) 被告Eの担当した顧客が原告会社を保険代理店として保険契約を締結したことにより,保険会社から原告会社に対し支払われた手数料の額(消費税分を含まない。)は,平成29年10月分については,472万2911円(内訳は,三井住友海上あいおい生命4941円,オリックス生命49万2869円,アクサ生命保険65万円,東京海上日動あんしん 生命)357万5101円)であり,同年11月分については,保険契 (内訳は,三井住友海上あいおい生命4941円,オリックス生命49万2869円,アクサ生命保険65万円,東京海上日動あんしん 生命)357万5101円)であり,同年11月分については,保険契約の申込日が,被告Eと訴外イノベーションとの契約の終了日である平成29年10月30日よりも後のものについては,本件コミッション報酬の算定の基礎に含ませるべきではないから,30万5550円(東京海上日動あんしん生命のみ)である。 (イ) 前記(ア)の各手数料額に,前記ア(イ)の本件コミッション報酬の割合を乗じると,次の計算式のとおり,被告Eに支払われるべき本件コミッション報酬(平成29年10月分及び同年11月分)の金額は538万7118円となる。 (計算式)(472万2911円+30万5550円)×1.08 ×0.8=434万4590円(ウ) 平成29年8月分及び同年9月分として支払われるべき本件コミッション報酬の額は合計784万8347円(内訳は,平成29年8月分599万8214円,同年9月分185万0133円)であったところ,訴外イノベーションは,被告Eに対し,平成29年10月26日に65 0万円,同年11月27日に201万5266円の合計851万526 6円を支払っており,66万6919円の過払となっている。そこで,前記(イ)の金額からこれを控除すべきである。 (12) 争点11(被告Eの原告会社に対する不当利得返還請求権の成否)[被告Eの主張]仮に,被告Eと原告会社の間において,本件業務委託契約が存在しないと すれば,原告会社は,法律上の原因がないのに,本件業務委託契約に基づく本件コミッション報酬相当額の利得を得ており,この利得と被告Eの 被告Eと原告会社の間において,本件業務委託契約が存在しないと すれば,原告会社は,法律上の原因がないのに,本件業務委託契約に基づく本件コミッション報酬相当額の利得を得ており,この利得と被告Eの損失との間に相当因果関係があることは明らかである。したがって,被告Eは原告会社に対し,不当利得返還請求権を有する。 [原告会社の主張] 被告Eの上記主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2の1の前提事実及び各掲記の証拠並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 原告会社及び訴外イノベーションについて原告会社は,従前は「有限会社B保険事務所」との商号で,訴外Fを代表者として,損害保険の代理店業務を中心に行っていたが,平成26年(2014年)夏頃,他の保険代理店に吸収されそうになったことから,訴外イノベーションを経営していた原告Aの協力を求め,その後,協議を経て,原告 会社を現在の商号に変更して,訴外イノベーションと業務委託契約を締結し,原告会社として,損害保険と生命保険の双方の代理店業務に力を入れて経営をしていくこととなった。かかる経緯で,原告Aが,原告会社の代表者として,実務を中心的に取り仕切るようになった。そして訴外イノベーションが行っていた生命保険に係る保険代理店の業務についても,原告会社が行うよ うになる一方,訴外イノベーションは,教育研修事業,コンサルティング事 業等を担当することとなった。(弁論の全趣旨)(2) 原告Aの被告D及び被告Bからの借入れ及び返済状況ア被告Dは,原告Aから誘われて,平成27年6月頃,原告会社に入社し,交通費等の経費処理,給与計算,営業の際に提示する定型の資料作成等の庶務全般 の被告D及び被告Bからの借入れ及び返済状況ア被告Dは,原告Aから誘われて,平成27年6月頃,原告会社に入社し,交通費等の経費処理,給与計算,営業の際に提示する定型の資料作成等の庶務全般の業務を担当していたところ,同年11月ないし12月頃,原告 Aから,以前の取引先への返済資金を用意する必要があるとして,被告Dの名義で金融業者から借り入れた資金を原資にして,原告Aに貸し付けるよう依頼された。この際,原告Aは,被告Dに対し,原告Aにおいて前記金融業者への返済を行い,平成28年3月までには完済できる旨を説明した。被告Dは,原告Aの頼みを断ることにより解雇されることを恐れたこ と,原告Aから平成28年2月又は3月に多額の手数料収入が入るあてがある旨の説明を聞いていたことから,原告Aの前記依頼に応じることとした。そして,原告Aの運転する自動車で,複数の金融機関を周って,総額240万円を被告Dの名義で借り入れ,同じ機会に引き出した被告Dの預貯金30万円を合わせた270万円を,原告Aに対し手渡して,同金額を 貸し付けた。しかしながら,平成28年3月までに返済は終了せず,被告Dが何度も催促した後の平成29年2月になって,ようやく返済がなされた。また,平成29年3月頃,被告Dは,原告Aから短期間での高額の利息支払を条件に出資の勧誘をされ,50万円を渡したところ,約束された利息支払はなく,上記50万円の元本についても,約束よりも2か月遅れ て漸く返済された。(乙22)イ被告Bは,平成27年12月頃から,母である訴外Fが当時代表者を務めていた原告会社に将来入社することを前提に,定期的に,原告会社の事務所に出社するようになっていたところ,平成28年9月頃,原告Aから,事業の運転資金の不足を補うために資金を用意す が当時代表者を務めていた原告会社に将来入社することを前提に,定期的に,原告会社の事務所に出社するようになっていたところ,平成28年9月頃,原告Aから,事業の運転資金の不足を補うために資金を用意する必要があるとして,被 告Bの名義で金融業者から借り入れた資金を原資にして,原告Aに貸し付 けるよう依頼された。この際,原告Aは,被告Bに対し,原告Aにおいて前記金融業者への返済を行い,3か月後の同年12月には完済できる旨を説明した。被告Bは,訴外Fが原告Aの世話になっていたと認識しており,原告Aの頼みを断り難かったこと,原告Aの返済能力を信用していたことから,原告Aの前記依頼に応じることとした。そして,原告Aの運転する 自動車で,複数の消費者金融業者を周って,総額220万円を被告Bの名義で借り入れて,原告Aに対し,そのまま車内で手渡して,同金額を貸し付けた。しかしながら,同年12月までに返済は終了せず,被告Bが何度も催促した後の平成29年3月になって,ようやく返済がなされた。(乙1,乙20,被告B本人) (3) 原告Aの被告Cからの借入れの経緯及び返済状況等ア被告Cは,平成29年3月1日,原告会社に入社し,原告Aから直接指導を受けていたところ,同年5月頃,原告Aから,親族(弟)の負債を返済する必要があるが,原告A自身の名義で金融業者から借入れをすることができないため,被告Cの名義で金融業者から金員を借り入れ,これを原 告Aに貸し付けるよう依頼された。この際,原告Aは,被告Cに対し,原告Aにおいて前記金融業者への返済を行い,3か月以内に完済すること,被告Cの協力への御礼及びその営業活動への援助金として,「軍資金」という名目で,被告Cに毎月10万円を支払うことなどを説明した。被告Cは,従前の 記金融業者への返済を行い,3か月以内に完済すること,被告Cの協力への御礼及びその営業活動への援助金として,「軍資金」という名目で,被告Cに毎月10万円を支払うことなどを説明した。被告Cは,従前の関係から原告Aの頼みを断り難かったこと,原告Aの返済能力を信 用していたことから,原告Aの前記依頼に応じて,前記第2(3)アのとおり,本件金銭消費貸借契約を締結することとし,本件貸金の原資を得るため,原告Aの指示の下,複数の消費者金融業者から,合計480万円を借り入れた。(乙7,乙18,乙21,被告C本人)その後,原告Aは,被告Cに対し,前記のとおり「軍資金」との名目で 合計60万円を支払った。 イその後,被告Cは,平成29年5月から6月頃,原告Aから,更に資金を用意する必要があるため,前記アと同様の方法で原告Aに貸付けをしてくれる知人の紹介を依頼された。その際,原告Aは,被告Cに対し,協力してくれる知人には謝礼を支払うこと,被告Cには,保険契約の見込み客を紹介することなどを説明した。 被告Cは,前記アと同様に,原告Aの依頼に応じることとし,友人を紹介し,当該友人は原告Aに対し,合計290万円を貸し付けた。被告Cは,原告Aから他にも知人の紹介をするよう依頼され,これに応じて他の知人を紹介した。(乙7の15頁,乙9,乙21)原告Aは,上記に基づき,被告Cに対し,原告Aが単独で担当していた 顧客を被告Cとの共同担当に変更するなどし,前記のとおり保険手数料として合計60万円余りを支払った。(本件インセンティブ報酬分配金)ウ平成29年7月,被告Cは,当時の交際相手から強く勧められたこともあって,原告Aに対し,本件金銭消費貸借契約に係る契約書の作成を求め,同契 りを支払った。(本件インセンティブ報酬分配金)ウ平成29年7月,被告Cは,当時の交際相手から強く勧められたこともあって,原告Aに対し,本件金銭消費貸借契約に係る契約書の作成を求め,同契約書を作成した。なお,返済期限については,原告Aからの要望によ り,同年10月末と記載した。(乙7の38頁,乙8,乙21)エその後,平成29年8月に,被告Cは前記ウの友人から原告Aの支払が滞っている旨の連絡を受けるようになり,また,被告Cにおいても,同年8月か9月頃から,原告Aからの月額10万円の本件軍資金の支払がされなくなった。被告Cが,原告Aに連絡をとったところ,原告Aからは,前 記友人からの借入れの関係では,税務署の調査の関係で一時的に支払えないだけで,翌週には支払う旨の弁解がされた。(乙7の46頁,乙21)オ原告Aは,平成元年5月9日の返済の後は,被告C名義でなされた金融業者からの借入れに対する返済をしなくなった。(乙21)(4) 本件オートクレジット契約書の作成等 ア平成28年12月,本件外国車を購入する目的で,原告会社を借主,訴 外F及び被告Bを連帯保証人とする本件オートクレジット契約書が作成され,原告会社,訴外F及び被告Bの印鑑登録証明書等の書面とともに,信販会社に提出された。(甲32,乙2)前記契約書の連帯保証人欄には,被告Bの氏名,住所,電話番号,年収,勤続年数などが手書きで記載されているところ,その筆跡は被告Bの筆跡 とは類似せず,他方で,原告Aの筆跡と類似している。また,「携帯電話」の番号として記載されたものは,原告Aの使用している携帯電話の番号であった。(甲32,乙2,乙15ないし17,弁論の全趣旨)また,前記契約書に押印さ 跡と類似している。また,「携帯電話」の番号として記載されたものは,原告Aの使用している携帯電話の番号であった。(甲32,乙2,乙15ないし17,弁論の全趣旨)また,前記契約書に押印された印影は,被告B所持に係る実印によるものではあるところ,当時,被告Bの実印は,事務所内で用いる事務機器な どのリース契約など,業務上必要な契約締結の際に連帯保証人となることがあったことから,原告会社の事務所内において管理されていた。また,被告Bは原告Aから頼まれて,前記実印に係る印鑑登録証明書を取得したことがあった。(乙20,被告B本人)イ前記アの本件オートクレジット契約書による借入金を原資に,本件外国 車が購入され,原告Aが専らこれを使用した。(弁論の全趣旨)ウ生命保険会社からの事情聴取への対応平成29年9月頃,被告Bは,原告Aの使用する本件外国車が,原告会社の名義で購入されたものであること,当該購入資金の借入れが被告Bを連帯保証人としてなされていたことを認識するに至り,原告Aに抗議し, 連帯保証人から外すよう強く求めた。(乙20,被告B本人)その後,平成29年11月頃,被告Bは,オリックス生命の担当者から,面談を求められ,前記アのオートクレジット契約書について,被告Bが連帯保証人となることに係る被告Bの承諾がなかったことの確認を求められたため,被告Bに無断で記入及び押印がなされた旨を回答した。(乙20, 被告B本人) (5) 被告Eを一方当事者とする本件業務委託契約の締結被告Eは,平成29年7月頃,前の稼働先から離れて,自ら保険代理店を立ち上げるか,他の会社に就職するかを検討していたところ,懇意にしていた原告Aから原告会社に来ることを勧誘 委託契約の締結被告Eは,平成29年7月頃,前の稼働先から離れて,自ら保険代理店を立ち上げるか,他の会社に就職するかを検討していたところ,懇意にしていた原告Aから原告会社に来ることを勧誘された。被告Eは,当時は原告Aを信頼していたこともあり,この申出を受けることにした。その後,被告Eと 原告Aとの間で,入社条件に係る協議がなされ,被告Eが,コミッション報酬の割合を80%とすることのほか,特に同報酬の支払時期につき翌月払いとすることを強く求めたところ,最終的に原告Aはこれを了承した。他方,被告Eは,原告Aから,前記報酬の振込につき,名目上は訴外イノベーションからの振込みとすることを求められ,これを了承した。かかる経緯を経て, 本件業務委託契約が締結され,平成29年8月から,被告Eは原告会社での業務を開始した。(乙ロ9,被告E本人)なお,被告Eの勧誘により締結された保険契約が,原告会社を保険代理店とする契約として取り扱われることで,保険会社から原告会社に対して支払われた手数料の額は,平成29年10月分が合計548万1901円,同年 11月分が165万7410円となる(乙ロ4,弁論の全趣旨)。 (6) 原告Aと被告らの関係の悪化等ア原告Aと被告Bらの関係悪化(ア) 前記(3)エのとおり,被告Cは,平成29年8月頃,本件軍資金の支払や本件貸金に係る返済が滞っていたことにより不安感を抱いていたこ とから,被告D及び被告Bに相談したところ,同被告らが被告Cと同様の依頼を原告Aから受け,返済の関係で被告Bと揉めた経験があること,被告Bら以外の原告会社の従業員にも同様の経験をした者がいることなどを聞かされた。このような中で,被告Bらは,原告Aに対し不信感,不満感を抱くに至った。 ,返済の関係で被告Bと揉めた経験があること,被告Bら以外の原告会社の従業員にも同様の経験をした者がいることなどを聞かされた。このような中で,被告Bらは,原告Aに対し不信感,不満感を抱くに至った。そして,同年9月頃,被告Bが,前記(4)ウのと おり,原告Aの使用する本件外国車が,原告会社の名義で購入されたも のであること,当該購入資金の借入れが被告Bを連帯保証人としてなされていたことを認識し,この事実が被告C,被告D等,原告会社の従業員にも伝わる中で,被告Bらは原告Aに対する不信感,不満感を一層強めた。(乙20,乙21,被告B本人,被告C本人)(イ) そして,前記第2の1(4)アのとおり,被告B及び被告Cは,平成29 年9月25日,原告会社の本件事務所内において,被告E同席の下で,原告Aとの間で,協議をした。この際に,原告Aは,本件金銭消費貸借契約締結の依頼に際してなされた,弟のための金策という説明や,税務署の調査のために支払ができないという弁解が,全て虚偽である旨を告白し,被告Cに謝罪した。また,原告Aは,本件外国車の件については, 被告Bを連帯保証人から外す手続きを取ること,原告Aに何らかの事故があって,被告Bが連帯保証人として返済することにならないよう備えるために,原告Aが生命保険に加入することなどを申し出た。これに対し,被告B及び被告Cは,原告Aに対し,原告会社を退職し,新たな会社を設立して保険代理店業務を続けていく旨を告げた。(乙21) イ原告Aと被告Eの関係悪化被告Eは,原告会社での業務を開始した後,程なくして,前記(2),(3)のとおり,原告Aが原告会社の従業員である被告Bらから借入れをしていた事実や前記(4)のとおりオートクレジット契約書の偽造に係る事 告Eは,原告会社での業務を開始した後,程なくして,前記(2),(3)のとおり,原告Aが原告会社の従業員である被告Bらから借入れをしていた事実や前記(4)のとおりオートクレジット契約書の偽造に係る事実を知るに至った。そして,平成29年9月27日頃,被告Eは,事前に原告A と約束していた条件とは異なり,同年8月分のコミッション報酬が支払われなかったことから,直ちに原告Aに連絡して抗議したが,原告Aは「翌々月払いと思っていた」旨を回答した。(乙ロ9)上記以降,被告Eも原告Aに対し,不信感及び不満感を強く抱くようになり,原告会社の本件事務所内において定期的に行われた原告Aとの協議 の機会に,被告Bや被告Cとともに,語気を強めて,原告Aを非難し,謝 罪や具体的な対応を求めたことがあった。このほか,被告EはSNSや電話を通じて,原告Aに対し,速やかに自らのコミッション報酬の件や被告Cの本件貸金の件等についての具体的な対応を求めた。被告Eは,原告Aが,前記の具体的な対応をとることを了承したかのような言動をとりつつも,結局果たされない事態が生じたときに,原告Aを強い語調で非難した こともあった。(甲11,甲19)ウ被告C及び被告Bの原告Aの家族・親族との面会前記アの原告Aとの協議を経て,被告Cは,原告Aの返済能力に係る不安を強めたことから,情報収集等の目的で,知人の伝手をたどって原告Aの娘の連絡先を入手の上,同人に連絡をとり,川崎駅構内の飲食店で面会 する約束を取り付け。平成29年9月28日に,被告Bに同行してもらって,原告Aの家族・親族と面会した。(乙10,乙21,被告C本人)この際に,被告Cは,原告Aの家族・親族に対し,本件金銭消費貸借契約に係る事実を述べ,窮状を 日に,被告Bに同行してもらって,原告Aの家族・親族と面会した。(乙10,乙21,被告C本人)この際に,被告Cは,原告Aの家族・親族に対し,本件金銭消費貸借契約に係る事実を述べ,窮状を訴えたほか,返済への協力を求めた。他方,原告Aの家族・親族からは,原告Aが保険の契約を勝手に解約して解約返 戻金を持ち逃げしたことや原告Aに貸した300万円が未だに返済されていないことなど,原告Aの家族・親族自身が原告Aにより被害をこうむっている旨の話が出された。(甲19,甲24,乙20,乙21)(7) 被告Bらの退職等前記第2の1(4)のとおり,平成29年10月30日をもって退職したい 旨が記載された,被告Bら名義の退職届が作成された。その後,被告Bらは,原告会社を退職し,被告Bは被告会社の代表取締役に,被告C及び被告Dは被告会社の従業員となった。(甲4,甲15,乙20ないし22)(8) 保険契約の移管についてア保険契約の移管手続は,保険契約を獲得した担当者が他の保険代理店に 移籍する場合に選択される手続であり,これを原則的な取り扱いとする保 険代理店が存在する。(乙12ないし14)イ本件移管合意に基づく移管手続は,原告会社の従業員であった担当者らが退職して,被告会社に就職することに伴うものであり,その当否について関係者間で疑問が呈されたことはなく,原告Aにおいても,特に異議を述べたことはなく,保険会社から届けられた移管合意書に署名押印した。 (乙4の67頁,乙20,乙22)(9) 原告会社の事務所にあった備品等の持ち出しア被告Bは,前記(6)アのとおり,原告Aに対する不信感・不満感から原告会社を退社しようと決意し,同様に原告会社を退社予定の従業 2)(9) 原告会社の事務所にあった備品等の持ち出しア被告Bは,前記(6)アのとおり,原告Aに対する不信感・不満感から原告会社を退社しようと決意し,同様に原告会社を退社予定の従業員ら(被告C,被告D)及び被告Eらと新しい会社を立ち上げようと企図し,被告会 社を設立した。これを受けて,平成29年10月頃から,被告Eが中心となって,被告会社の新たな事務所の開設に向けて準備が始められた。(甲19,弁論の全趣旨)この頃,前記(6)イのとおり,被告Eは,原告Aに対し,未払のコミッション報酬や被告Cへの返済等の件について対処を求めたが,具体的な日時 や金額を決めても,原告Aがそれに一旦は応じるような言動をしつつも,結局は対処しないという状況であった。そのため,被告Eは,被告B,被告C等の原告会社の従業員らの不満を抑えるためにも,原告会社で使用されていた備品等を被告会社の新しい事務所で使用できるように持ち出すことに承諾するよう促した上,持ち出しを希望する備品等に付箋を付して, 原告Aに確認を求めた。(甲19,乙4,弁論の全趣旨)イ原告Aは,被告Eからの前記アの申し出があった後,被告Dに対し,パソコンのデータのバックアップをとることなどを依頼したことはあったが,前記の持ち出し自体について,被告Eに対し,異議を唱えたことはなかった。(乙4の61・62頁,乙22,弁論の全趣旨) ウその後,平成29年10月末から11月頃,被告Eにおいて手配した運 送業者が,原告会社の事務所内で使用されていた備品等のうち,持ち出し自体につき特段の異議を唱えられなかったものを運び出し,被告会社の事務所内に搬入した。この際,搬入されたものには,本件保険申込書の控えや本件パソコンも含まれてい 使用されていた備品等のうち,持ち出し自体につき特段の異議を唱えられなかったものを運び出し,被告会社の事務所内に搬入した。この際,搬入されたものには,本件保険申込書の控えや本件パソコンも含まれていた。(甲14,弁論の全趣旨)(10) 本件顧客情報及び本件人事経理情報の管理状況等 ア本件申込書控は,原告会社の従業員らが担当者となって獲得した本件契約の顧客に記載された保険契約の申込書の控えであるところ,これらは原告会社において,施錠可能な棚の中で保管され,この鍵は原告Aと庶務担当の被告Dが保持していた。もっとも,前記の棚は,被告Dの出社時間中は,常に開錠されており,原告会社の従業員であれば,誰でも閲覧可能な 状態であった。(乙22,弁論の全趣旨)イ本件申込書控に記載された顧客情報の一部については,これに係る電磁的記録が作成されて本件パソコン内に保存されていた。そして,当該電磁的記録にはパスワードがかけられており,そのパスワードは,基本的には原告A及び被告Dのみが知っていたが,当該情報の対象である保険契約を 担当する各従業員もアクセスすることができた。(乙22,弁論の全趣旨)ウ本件パソコン内には,前記の顧客情報に係る電磁的記録のほか,庶務担当の被告Dが業務に使用する交通費処理や給与計算に用いる電磁的記録も保存されていた。(弁論の全趣旨)(11) コミッション報酬の割合をめぐる被告Eと原告Aの協議等 ア前記(6)イのとおり,平成29年8月分のコミッション報酬の支払の関係で,被告Eが,原告Aに抗議し,両者間で協議がなされている中で,本件コミッション報酬の割合について,被告Eから原告Aに対し,報酬割合を98%とする旨の要望が出されたが,これに対し,原告Aは対応を弁護士 被告Eが,原告Aに抗議し,両者間で協議がなされている中で,本件コミッション報酬の割合について,被告Eから原告Aに対し,報酬割合を98%とする旨の要望が出されたが,これに対し,原告Aは対応を弁護士に依頼し,その旨を被告Dに連絡した。(乙ロ3) イしかしながら,原告A又はその依頼を受けた弁護士と被告Eとの間で, コミッション報酬の割合について当初の80%から変更する旨の合意が確定的になされた形跡は見当たらない。(弁論の全趣旨) 2 争点1-1(営業秘密不正取得行為(不競法2条1項4号,5号)の成否)について(1) 原告らは,被告らにおいては,原告会社使用に係るパソコン内に保存され ていた本件顧客情報及び本件人事経理情報という営業秘密を,脅迫等の行為又は窃取行為により不正に取得した旨を主張する。 アそこで検討するに,原告ら主張に係る本件顧客情報及び本件人事経理情報が,不競法所定の「営業秘密」に該当するか否かが問題となるところ,同「営業秘密」に該当するためには,当該情報について,①秘密として管 理されていること(秘密管理性),②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性),及び③公然と知られていないものであること(非公知性)の各要件を満たす必要があるものというべきである(同法2条6項)。 これを本件についてみるに,前記1(10)のとおり,本件顧客情報は,本 件申込書控記載の顧客情報及びその一部の情報を電磁的記録の形にして本件パソコン内に保存したもので構成されているところ,本件顧客情報の基となった本件申込書控は,原告会社の営業時間中,施錠されていない書棚で保管され,従業員であれば閲覧可能な状態になっていたものであり,本件各証拠をみても,その閲覧を禁止する旨 ところ,本件顧客情報の基となった本件申込書控は,原告会社の営業時間中,施錠されていない書棚で保管され,従業員であれば閲覧可能な状態になっていたものであり,本件各証拠をみても,その閲覧を禁止する旨が原告会社内において明確に 告知されていた形跡は見当たらない。また,本件パソコン内の電磁的記録にはパスワードが付されていたとはいえ,原告会社の各営業担当者においては,自らの担当する顧客に係る情報に特段の制限を受けることなくアクセスすることができる状態であったものである。これらによれば,本件顧客情報に係る情報については,アクセスが制限されていた程度は緩く,ア クセスした者が秘密として客観的に認識できた状態であったとも直ちに は言い難いものである。 以上によれば,本件顧客情報については,少なくとも上記①の秘密管理性の要件を欠くものといわざるを得ない。 また,本件人事経理情報については,本件各証拠をみても,そもそもその具体的内容が明らかになっておらず,上記②の有用性及び上記③の非公 知性の各要件を充足することを的確に認めるに足りる証拠が見当たらないほか,本件事実関係において,上記①の秘密管理性の要件の充足を肯定するに足りる事情も見当たらない。 したがって,原告ら主張に係る本件顧客情報及び本件人事経理情報が,不正競争防止法所定の「営業秘密」に該当するとは認められない。 なお,原告らは,本件顧客情報につき秘密管理性が認められる旨を主張し,被告Bらの誓約書(甲5ないし7),原告会社に備え付けられた個人情報取扱規程(甲9)を提出する。しかしながら,これらの書面の性質・内容を勘案しても,これらの書面自体から直ちに本件顧客情報に係る秘密管理性を肯定できるわけではなく,その要件充足性は,本件顧 た個人情報取扱規程(甲9)を提出する。しかしながら,これらの書面の性質・内容を勘案しても,これらの書面自体から直ちに本件顧客情報に係る秘密管理性を肯定できるわけではなく,その要件充足性は,本件顧客情報に係る 管理の実態に鑑みて判断すべきところ,上記説示のとおりの管理状況からすれば,その秘密管理性が認められるということはできない。 以上によれば,原告らの上記主張は,採用することができない。 イなお,営業秘密の不正取得の有無(被告らの脅迫等の行為又は窃取行為の有無)についても,後記4のとおり,被告らの脅迫等の行為又は窃取行 為のいずれも認められない以上,被告らが前記各情報を不正に取得したとも認められない。 (2) したがって,被告らにおいて,営業秘密不正取得行為を内容とする不正競争行為をしたものとは認められない。 3 争点1-2(信用毀損行為(不競法2条1項21号)の成否)について (1) 前記1(4)アの認定事実によれば,本件オートクレジット契約書の連帯保 証人欄への被告Bとの署名押印は,その押印部分が被告Bの印章によるものではあるものの,原告Aが被告Bに無断で行ったものと認められるものであり,偽造されたものといわざるを得ない。そうすると,被告Bが,オリックス生命の聴取に対し上記に沿う旨の内容を告知したとしても,同告知行為に係るその内容は,「虚偽の事実」に当たらないというべきである。 (2) これに対し,原告らは,前記連帯保証人欄への署名部分が被告Bの直筆ではないにしても,被告Bの了承を得て署名押印がなされたものであって,偽造したものではない旨を主張し,原告Aの陳述書における陳述(甲34)及び当事者尋問における供述にはこれに沿う部分がある。 しかしながら,本件オー 了承を得て署名押印がなされたものであって,偽造したものではない旨を主張し,原告Aの陳述書における陳述(甲34)及び当事者尋問における供述にはこれに沿う部分がある。 しかしながら,本件オートクレジット契約書の連帯保証人欄について,あ えて被告Bの自筆によらずに署名部分を作成する理由を見出しがたいこと,本件オートクレジット契約は,原告Aに使用させる社用車として高級外車を購入するための契約に係るものであるところ,前記1(2)イのとおり,原告Aの被告Bに対する返済が遅滞している状況下において,このような契約に係る債務の連帯保証人になることを被告Bが甘受すべき理由が見当たらないこ となどからすれば,上記連帯保証人欄への署名押印に係る原告Aの陳述・供述内容は不合理かつ不自然と言わざるを得ず,上記(1)の認定に沿う内容の被告Bの陳述書における陳述(乙20)及び当事者尋問における供述に比して,その信用性が低いものというべきである。そして,他に原告らの上記主張を裏付ける的確な証拠はなく,原告らの前記主張は採用することができない。 (3) したがって,被告Bによる前記告知行為は,信用毀損行為には当たるとはいえず,原告ら主張に係る被告らの信用毀損行為を内容とする不正競争行為は認められない。 4 争点2(被告らによる脅迫等の行為・窃取行為の有無),争点3(被告らの故意・過失)及び争点4(被告らの共同不法行為の成否)について (1) 事案に鑑み,まず,被告らによる脅迫等の行為・窃取行為の有無(争点2) につき検討するに,前記1(8),(9)で認定した事実関係からすれば,保険契約の移管合意,事務所内備品の持ち出しへの許可については,いずれも原告Aの了解の下でなされたものであると評価するのが相当である。そ 検討するに,前記1(8),(9)で認定した事実関係からすれば,保険契約の移管合意,事務所内備品の持ち出しへの許可については,いずれも原告Aの了解の下でなされたものであると評価するのが相当である。そして,前記1(1)ないし(5)のとおりの,本件の事実経過,従前の人間関係等を総合考慮すれば,原告Aにおいては,いずれも,従前の経緯に鑑みて被告らの求め に応じることを甘受したものとみるのが相当であり,原告Aにおいて,被告らに対して抵抗することが著しく困難な状況において上記のとおり了解することを余儀なくされたとまで認めるには足りないというべきである。しかして,被告らが原告Aに対し,脅迫行為や窃取行為に当たると評価される違法行為をしたことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,原告らの主張に係る被告らの脅迫等の行為や窃取行為はいずれも認められない。そうである以上,争点3(被告らの故意・過失)及び争点4(被告らの共同不法行為の成否)について判断するまでもなく,原告らが主張する被告らの原告Aに対する不法行為は成立しないというべきである。 (2) 原告らは,被告E,被告B及び被告Cの原告Aに対する言動に加え,被告 C及び被告Bにおいて,前記1(6)ウのとおり,原告Aの家族・親族に面会を求めたこと等によって,原告Aが心理的に追い詰められ,被告らに抵抗することが著しく困難な状況にあった旨を主張する。 しかしながら,前記1(1)ないし(5)のとおりの,本件の事実経過,従前の人間関係等からすれば,原告らが主張するように,被告Eが原告Aに対し辛 辣な言葉を執拗に投げかけてきたとしても,また,部下の立場にあった被告Bや被告Cから原告Aが非難・中傷する言動を受けたとしても,原告Aにおいて合理的な判断が困難となるほどの が原告Aに対し辛 辣な言葉を執拗に投げかけてきたとしても,また,部下の立場にあった被告Bや被告Cから原告Aが非難・中傷する言動を受けたとしても,原告Aにおいて合理的な判断が困難となるほどの心理状態にまで至ったものとは認めるに足りない。さらに,被告C及び被告Bにおいて,原告Aの家族・親族に面会を求めたこと等についても,前記1(6)ウのとおり,被告C及び同Bに対す る原告Aの家族・親族の対応状況を見る限り,全体として同人らに恐怖心を 抱かせるようなものではなかったことがうかがわれるし,これを受けて,原告Aが合理的な判断が困難となるほどの心理状態にまで至ったものと認めるに足りる具体的な事情も見当たらない。 そうすると,原告Aの主観的な捉え方はともかく,客観的な見地からみて,原告Aが心理的に追い詰められ,被告らに抵抗することが著しく困難な状況 にあったとは認められず,原告らの前記主張は採用できない。 5 争点6(原告らによる本訴提起を内容とする不法行為の成否)について訴えの提起は,提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど,裁判制度の趣旨 目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り,相手方に対する違法な行為となるというべきである(最高裁昭和63年1月26日第3小法廷判決・民集42巻1号1頁)。 これを本件についてみるに,確かに,前記2ないし4のとおり,原告らが本訴において主張した権利または法律関係は理由がないものというべきである。 しかし他方,前記1(6)のとおり,原告Aと被告らとの関係が悪化しており,被告らにおいて原告Aを厳しく非難する言動 が本訴において主張した権利または法律関係は理由がないものというべきである。 しかし他方,前記1(6)のとおり,原告Aと被告らとの関係が悪化しており,被告らにおいて原告Aを厳しく非難する言動が繰り返されたことなどにも鑑みれば,被害感情を抱いた原告Aにおいて,自らの認識に従って,被害回復を企図すること自体は不自然ではないというべきである。このような観点からすれば,原告A及び同人が代表者を務める原告会社において,事実的,法律的根拠を欠 くものであることを知りながら,本訴をあえて提起したとまでは認め難く,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとまではいえないというほかない。 したがって,原告らによる本訴提起が,被告らに対する違法な行為となるとはいえず,原告らによる本訴提起を内容とする不法行為が成立するとはいえな い。 6 争点7(原告Aの被告Cに対する既弁済額等)(1) 弁済額原告Aから被告Cに対し,本件貸金に対する弁済として,276万9164円(本件軍資金及び本件インセンティブ報酬分配金以外の合計額)が支払われたことについては,当事者間で争いがない。しかして,原告Aは,同人 から被告Cに対して支払われた本件軍資金及び本件インセンティブ報酬分配金についても,本件貸金に対する弁済である旨主張する。 しかしながら,前記1(3)によれば,本件貸金に対する弁済は,原告Aが借入元金融機関に直接振り込む方法によるものとされ,また,本件金銭消費貸借契約の締結に際し,原告Aが御礼等の趣旨で軍資金を支払う旨を被告Cに 申し出(本件軍資金),さらに,知人の紹介の依頼に際し,原告Aが御礼等の趣旨で見込み客を紹介する旨を被告Cに申し出たというのである(本件インセンティブ報酬分配 旨で軍資金を支払う旨を被告Cに 申し出(本件軍資金),さらに,知人の紹介の依頼に際し,原告Aが御礼等の趣旨で見込み客を紹介する旨を被告Cに申し出たというのである(本件インセンティブ報酬分配金)。このように,本件貸金に対する弁済分と,本件軍資金及び本件インセンティブ報酬分配金の支払とは,当初から性質の異なる支払であるとして区別され,前記第2の1(3)によれば,実際にも,軍資金,保 険手数料としてそれに見合う支払がされているものと評価することができる。 そうすると,本件軍資金及び本件インセンティブ報酬分配金については,いずれも弁済とは異なる趣旨でなされたものと認められ,これらが本件貸金に対する弁済の趣旨で支払われたとは認められない。 以上によれば,原告Aの上記主張は採用することができない。 (2) 本件追加貸金の金額前記第2の1(3)イのとおり,被告Cの原告Aに対する本件追加貸金の金額は,17万5000円の限度では当事者間で争いがないところ,被告Cは,これに加えて,原告Aに対し,平成29年11月17日において2万円,及び同月11月21日において更に1万円を貸し付けた旨を主張する。 この点,被告Cの上記主張は,被告Cが,消費者金融業者からの借入れや 返済のために利用する同人名義のカードを原告Aに預けていたところ,原告Aが,上記の各日に,同カードを利用して上記借入れをしたとして,これを前提に,被告Cが原告Aに各借入額と同額を貸し付けたものと主張する趣旨であると解される。しかし,本件各証拠をみても,原告Aが,上記の各日の時点で,上記カードを所持していたと的確に認めるに足りるものは見当たら ず,むしろ,原告Aは,当事者尋問において,平成29年10月末までに同カードを被告C 各証拠をみても,原告Aが,上記の各日の時点で,上記カードを所持していたと的確に認めるに足りるものは見当たら ず,むしろ,原告Aは,当事者尋問において,平成29年10月末までに同カードを被告Cに返却した旨を供述し,被告Cも,当事者尋問において,概ねこれに沿う供述をしている。そうすると,原告Aが,上記の各日に,同カードを利用して上記借入れをしたとまでは認められず,被告Cの主張はその前提を欠くものとして採用できない。 (3) 本件貸金の残額ア被告Cは,本件貸金の貸付けの後にされた,本件追加貸金(別口債務)の存在について,具体的に主張しているところ,原告Aにおいても,17万5000円の限度でこれを認め,弁済の充当順序について,本件貸金から充当すべきなどの主張はしていない。これを前提として,各債務の額や 発生経緯等に照らすと,本件貸金の残額を算定するに当たっては,原告Aによる前記(1)の弁済額を,まず前記(2)の本件追加貸金に充当し,次にその残額を本件貸金(元金)に充当する方法によることが相当である。 また,本件貸金の遅延損害金については,前記第2の1(3)アのとおり,年1割4分の遅延損害金の定めがあるところ(なお,原告は,返済期限翌 日の平成29年11月1日から支払済みまでの遅延損害金の支払についても請求している。),本件貸金の返済期限である平成29年10月31日より後になされた弁済については,まず発生済みの本件貸金の遅延損害金に充当し,次にその残額を本件追加貸金(ただし,本件追加貸金以後の弁済の場合),本件貸金(元金)の順で充当する方法によることが相当である。 イなお,被告Cは,本件貸金の原資の各借入元金融機関に対して負担する 利息を原告Aが負担すべき旨の合意が 場合),本件貸金(元金)の順で充当する方法によることが相当である。 イなお,被告Cは,本件貸金の原資の各借入元金融機関に対して負担する 利息を原告Aが負担すべき旨の合意があったとして,前記(1)の弁済額の一部については利息債務への弁済であるとの旨の主張をする。しかし,被告Cにおいて,いつの時点でいかなる金額の利息債務が存在し,弁済額のうちいくらが前記利息債務の弁済に充てられたか等についての具体的な主張立証がされているとはいえず,本件貸付金の残額を算定するに際して, 被告Cの上記主張を考慮することはできないといわざるを得ない。 ウそこで,まずは,返済期限である平成29年10月31日時点での本件貸金の残額を計算すると,別紙本件貸金残額計算表のとおり,434万6836円となる。そして,同年11月1日以降,年1割4分の割合で遅延損害金が発生することから,上記のとおり,以降の弁済額は,まずは遅延 損害金の返済に充て,その残余の額を本件貸金の返済に充てることとし,また,平成29年11月20日及び21日の本件追加貸金以後になされた弁済額については,まずは遅延損害金の返済に,次いで,上記本件追加貸金の返済に充て,その残余の額を本件貸金の返済に充てる方法で,本件貸金の残金を計算すると,別紙本件貸金残額計算表のとおり,最後の弁済が なされた令和元年5月9日時点で,301万0782円となる(なお,この時点での遅延損害金残金及び本件追加貸金の残金はいずれも0円である)。 7 争点8(原告Aによる貸付強要行為を内容とする不法行為の成否)について被告Cが原告Aとの間で本件金銭消費貸借契約を締結するまでの経緯は前記 1(3)のとおりであり,同経緯においては,原告会社の代表者である原告Aが,新入社員で 容とする不法行為の成否)について被告Cが原告Aとの間で本件金銭消費貸借契約を締結するまでの経緯は前記 1(3)のとおりであり,同経緯においては,原告会社の代表者である原告Aが,新入社員であった被告Cに対し虚偽の事実を申し向けて借入れを求め,被告Cに金策の方法として消費者金融業者を利用させ,被告Cの友人を紹介させているなど不適切な点が複数見られる。 しかし,本件各証拠を見ても,被告Cの意思が封じられ貸付けが強要された といえる行為態様のような具体的事情を認めるに足りるものはなく,上記の不 適切な点を前提としてもなお,原告Aの行為をもって,貸付強要という法的に違法性を帯びる行為と評価できるとまでは言い難いから,原告Aによる貸付強要行為を内容とする不法行為があったものとは認められない。 8 争点10(原告会社と被告Eの間の業務委託契約の有無・内容等)について(1) 契約当事者について ア被告Eが訴外イノベーション又は原告会社との間で本件業務委託契約を締結したことについては当事者間で争いがないが,原告会社は,被告Eにおいては訴外イノベーションを委託者として上記契約を締結した旨主張し,被告Eは,同人においては原告会社を委託者として上記契約を締結した旨主張する。 そこで検討するに,本件各証拠を見ても,本件業務委託契約に係る契約書等の書面や,その委託者を明らかにする書面が存するとは認められないが,他方,前記1(1),(5)認定の同契約に係る業務の内容等や関係者の関与の態様等を見ると,本件業務委託契約は,被告Eが,損害保険・生命保険につき顧客を開拓・勧誘するという受託業務を行い,これに基づき締結 された保険契約が,原告会社を保険代理店とする契約とされ,これに基づき,保険会社から原告会 約は,被告Eが,損害保険・生命保険につき顧客を開拓・勧誘するという受託業務を行い,これに基づき締結 された保険契約が,原告会社を保険代理店とする契約とされ,これに基づき,保険会社から原告会社に対して手数料が支払われ,これを原資として,名目上は,訴外イノベーションから被告Eに対する本件コミッション報酬が支払われるものである。そして,原告会社は保険代理店としての業務を行っているが,訴外イノベーションは保険代理店としての業務を行ってお らず,上記保険契約の保険代理店ともされておらず,保険会社から手数料が支払われる主体ともなっていない。その他,本件各証拠を見ても,関係者において,訴外イノベーションを介在させる客観的合理性を基礎付けるに足りる事実や,訴外イノベーションを介在させることにつき共通認識を有していたことを認めるに足りる具体的形跡は見当たらない。 以上からすれば,被告Eにおいては,訴外イノベーションとの間ででは なく,原告会社を委託者として同社との間で本件業務委託契約を締結したものと認められる。 イこれに対し,原告会社は,金融庁の要請に反しないようにするとの認識の下で,保険代理店である原告会社と個人の保険募集人である被告Eとの間に訴外イノベーションを介在させたこと,被告Eに対し本件コミッショ ン報酬を支払っているのは訴外イノベーションであることなどを挙げて,本件業務委託契約の委託者は訴外イノベーションである旨主張する。 しかしながら,金融庁の要請に形式的に反しないように外形を整えたとういう原告会社における上記認識自体,上記要請を実質的に潜脱するものであって,その内容からして,訴外イノベーションを介在させる客観的合 理性を基礎付けるに足りるものとは考え難い。また,本件各証拠を う原告会社における上記認識自体,上記要請を実質的に潜脱するものであって,その内容からして,訴外イノベーションを介在させる客観的合 理性を基礎付けるに足りるものとは考え難い。また,本件各証拠を見ても,そもそも原告会社における上記認識が,被告Eに対し説明され双方の共通認識となっていたことを認めるに足りる具体的形跡は見当たらない。さらに,被告Eに対し本件コミッション報酬を支払っているのが訴外イノベーションであることを前提としても,上記のとおり,その支払原資は,飽く まで保険会社から保険代理店である原告会社に支払われた手数料であり,これと関係なく支払が行われるものではない。これらに上記説示を併せれば,訴外イノベーションは,本件業務委託契約の委託者としての立場でではなく,代表者を共通にする原告会社からの依頼に基づき,被告Eに対し,上記手数料を基礎に本件コミッション報酬の割合を乗じて,本件コミッシ ョン報酬を支払うことを単に担当していたにすぎないと評価せざるを得ないものである。 以上によれば,原告会社の上記主張は採用することができない。 (2) 本件コミッション報酬の額の算定方法についてア消費税相当分の扱い 本件コミッション報酬の額の算定においては,保険会社から原告会社に 支払われた手数料額が基礎となるものであるが,同手数料額に本件コミッション報酬の割合を乗じたものに,更に消費税相当分を加算すべきことについては,当事者間で争いがないといえる(前記第2の3(11)参照)。 なお,被告Eは,保険会社から原告会社に支払われた手数料額としても,消費税相当分を含めた額を計上し,その額に,本件コミッション報酬の割 合を乗ずるべきである旨主張し,保険会社から原告会社への手数料支払に 告Eは,保険会社から原告会社に支払われた手数料額としても,消費税相当分を含めた額を計上し,その額に,本件コミッション報酬の割 合を乗ずるべきである旨主張し,保険会社から原告会社への手数料支払に係る書面(乙ロ5)を提出する。 しかし,上記書面は,保険会社と保険代理店である原告会社との間の書面であって,その記載内容から直ちに原告会社とその業務委託先である被告Eの間の合意内容が導かれるものではないところ,本件各証拠を見ても, 原告会社と被告Eとの間で,上記手数料額としても消費税相当分を含めた額とする旨の合意をしたことを認めるに足りるものはない。 したがって,被告Eの上記主張は採用することができない。 イ本件コミッション報酬の割合本件コミッション報酬の割合については,本件業務委託契約締結の当初 において80%とされていたことについては,当事者間に争いがないといえる(前記第2の3(11)参照)。 なお,被告Eは,その後に,平成29年11月分の手数料に対する本件コミッション報酬の割合を98%に変更する旨の合意がなされた旨主張し,原告A作成に係る書面(乙ロ7)を提出する。 しかし,上記書面の内容を踏まえても,前記1(11)のとおり,被告Eが上記変更を強く要望して,原告Aが検討していた経緯は認められるものの,それにとどまり,原告Aにおいて,上記変更を承諾したと認めるに足りる具体的な言動があったとは認められず,また,原告Aにおいて,当初の80%から98%という大幅な変更を認めるだけの合理的な理由も特段見 当たらない。これらに照らせば,当事者間において,本件コミッション報 酬の割合を98%に変更する旨の合意がなされたものとは認めるに足りないというほかない。 したがって,被告Eの上記主張 当たらない。これらに照らせば,当事者間において,本件コミッション報 酬の割合を98%に変更する旨の合意がなされたものとは認めるに足りないというほかない。 したがって,被告Eの上記主張は採用することができない。 ウ以上に基づき,弁論の全趣旨により認定される当事者間の合意に照らして検討すれば,本件業務委託契約に基づく平成29年10月分及び同年1 1月分の手数料に係る本件コミッション報酬の額については,①保険会社から原告会社に支払われた手数料額として,消費税相当分を含めない額に,②本件コミッション報酬の割合である80%を乗じたものに,③更に消費税相当分を加算して算定することとなるというべきである。 (3) 被告Eに支払われるべき本件コミッション報酬の額について アそこで,前記(1)ウの方法により,被告Eに支払われるべき本件コミッション報酬の額を算定するに,前記1(5)のとおり,被告Eの勧誘により締結された保険契約が,原告会社を保険代理店とする契約として取り扱われることで,保険会社から原告会社に対して支払われた手数料の額(消費税を含めた額)は,平成29年10月分が合計548万1901円,同年11 月分が165万7410円であることから,次の計算式により,平成29年10月分及び同年11月分の手数料に係る本件コミッション報酬の額は,571万1449円となる。 (計算式)(548万1901円+165万7410円)÷1.08×80%×1.08=571万1449円(1円未満四捨五入) イこれに対し,原告会社は,被告Eと原告会社の本件業務委託契約が平成29年10月30日で終了していることを前提に,平成29年11月分の手数料のうち,一部については,本件コミッション報酬の算定の基礎 イこれに対し,原告会社は,被告Eと原告会社の本件業務委託契約が平成29年10月30日で終了していることを前提に,平成29年11月分の手数料のうち,一部については,本件コミッション報酬の算定の基礎とすべきではない旨を主張し,これに沿う証拠として被告E名義の退職届(甲18)を提出する。 しかしながら,前記書面の作成の経緯や趣旨は必ずしも明らかではなく, また,本件各証拠によれば,保険会社は,被告Eの勧誘により原告会社を保険代理店とする保険契約が締結されたとの認識の下,原告会社に手数料の支払を行っており,原告会社もその趣旨において保険会社から同支払を受けているものと認められる。これらに照らせば,本件業務契約が平成29年10月30日で終了していたとはいえず,平成29年11月分として 原告会社が保険会社から支払を受けた手数料全部を本件コミッション報酬の額の算定の基礎とすべきである。 また,原告会社は,平成29年8月分及び同年9月分のコミッション報酬につき,被告Eへの過払が生じており,この金額が控除されるべき旨も主張する。 しかしながら,前記のとおり,被告Eは,本件業務委託契約に基づく平成29年10月分及び同年11月分の手数料に係る本件コミッション報酬請求権に基づく請求をしているのであって,仮に原告会社の主張するとおり,被告Eへの過払が生じていたとしても,上記請求権の帰趨に直ちに影響を与えるものではないことからすれば,原告会社の前記主張は,前記 アの結論を左右しないものというほかない。 9 争点11(被告Eの原告会社に対する不当利得返還請求権の成否)被告Eの原告会社に対する不当利得返還請求は,上記8の本件業務委託契約に基づく請求の予備的請求である。しかして,上記説示のとおり,上記8 1(被告Eの原告会社に対する不当利得返還請求権の成否)被告Eの原告会社に対する不当利得返還請求は,上記8の本件業務委託契約に基づく請求の予備的請求である。しかして,上記説示のとおり,上記8の本件業務委託契約に基づく請求については,その一部についてのみ理由があると したものであるから,その予備的請求である被告Eの原告会社に対する不当利得返還請求について更に検討することとする。 上記請求については,被告Eが本件業務委託契約に基づき原告会社に請求することができる額(上記8に説示した額)の限度においては,原告会社はこれを被告Eに支払うべき筋合いであり,原告会社がこれを保持できる理由はない といえ,被告Eの原告会社に対する不当利得返還請求も肯定することができる。 しかし,他方,これを超過した額の部分については,原告会社はこれを被告Eに支払う必要はなく,保険業務を実際に行った原告会社が,保険会社から支払われた保険手数料を保持することについて法律上の原因がないとはいえず,原告会社の当該保険手数料の保持について,被告Eの損失により原告会社の利得が生じたという関係にあるともいえないから,被告Eの原告会社に対する不当 利得返還請求を肯定することができない。 したがって,被告Eの原告会社に対する不当利得返還請求権は,被告Eが本件業務委託契約に基づき原告会社に請求することができる額(上記8に説示した額)の限度において認められるにすぎず,これを超える額の部分については,認められないというべきである(なお,このように,上記8に説示した額につ いては,主位的請求によって既に理由があるとされる以上,更に進んで予備的請求によっても理由があるとする必要はないものである。)。 10 結論以上のとおり, 被告Cは,本件金 示した額につ いては,主位的請求によって既に理由があるとされる以上,更に進んで予備的請求によっても理由があるとする必要はないものである。)。 10 結論以上のとおり, 被告Cは,本件金銭消費貸借契約に基づき,原告Aに対し,本件貸金の残額301万0782円の返還を請求することができ,また,被告 Eは,本件業務委託契約に基づき,原告会社に対し,本件コミッション報酬の未払分571万1449円の支払を請求することができる。 よって,被告Cの反訴請求は原告Aに対する主文第2(1)項の限度で理由があるからその限度で認容し,被告Eの反訴請求は主文第3(1)項の限度で理由があるからその限度で認容し,原告らの請求,被告らのその余の反訴請求はいず れも理由がないからこれらを全て棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官田中孝一 裁判官横山真通 裁判官奥俊彦 (別紙「借入金額・弁済額一覧表」省略)(別紙本件貸金残額計算表省略)
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