- 1 -主文 被告奈良県知事P1及び被告奈良県商工労働部長P2が,奈良県が被告P3協業組合に対し平成2年2月20日付けで貸し付けた16億円及び平成3年5月30日付けで貸し付けた4億円の各貸金債権について,(1)同組合に対する償還請求(2)別紙抵当権目録記載の抵当権の実行及び別紙保証人目録記載の各保証人に対する履行請求(3)強制執行の手続を各怠ることが違法であることを確認する。 原告らの被告P3協業組合に対する訴えのうち,奈良県に対し,15億0234万9000円の支払を求める請求に係る部分を却下する。 被告P3協業組合は,奈良県に対し,次の金員を支払え。 (1)2億6261万8066円及び8億8836万5000円に対する平成18年9月1日から支払済みまで年10.75%の割合による金員(2)5352万8095円及び1億9850万円に対する平成18年9月1日から支払済みまで年10.75%の割合による金員 原告らのその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,原告らに生じた費用の7分の4と被告P1,同P4,同P5,同P6に生じた費用の合計をすべて原告らの負担とし,原告らに生じた費用の7分の2と被告奈良県知事P1,同奈良県商工労働部長P2に生じた費用の合計を被告奈良県知事P1,同奈良県商工労働部長P2の負担とし,原告らに生じた費用の7分の1と被告P3協業組合に生じた費用の合計の2分の1を原告らの,その余を被告P3協業組合の負担とする。 事実及び理由 第1請求 被告奈良県知事P1及び被告奈良県商工労働部長P2が,奈良県が被告P3- 2 -協業組合に対し平成2年2月20日付けで貸し付けた16億円及び平成3年5月30日付けで貸し付けた4億円の各貸金債権について,(1)同組合に対する償還請求(2)別紙抵当権目録記載の抵当権の実 2 -協業組合に対し平成2年2月20日付けで貸し付けた16億円及び平成3年5月30日付けで貸し付けた4億円の各貸金債権について,(1)同組合に対する償還請求(2)別紙抵当権目録記載の抵当権の実行及び別紙保証人目録記載の各保証人に対する履行請求(3)強制執行の手続(4)同組合又はP7に対する増担保・代替担保の請求を各怠ることが違法であることを確認する。 被告P3協業組合は,奈良県に対し,15億0234万9000円並びに別表(表-1)の①ないし⑬及び同(表-2)の①ないし⑫の各約定償還金額欄記載の金額に対する各償還期限の翌日から支払済みまで年10.75%の割合による金員を支払え。 3(1)被告P1は,奈良県に対し,2億3830万1825円及びこれに対する平成14年10月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (2)被告P4は,奈良県に対し,411万2778円及びこれに対する平成14年10月13日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (3)被告P5は,奈良県に対し,2588万8572円及びこれに対する平成14年10月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (4)被告P6は,奈良県に対し,9000万6460円及びこれに対する平成14年10月11日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 事案の要旨本件は奈良県の住民である原告らが奈良県の被告P3協業組合以下被,,(「- 3 -」。)(「」。)告組合というに対する中小企業高度化資金以下高度化資金という,(「」。)の貸付けに係る貸付金について被告奈良県知事以下被告知事という及び同奈良県商工労働部長以下被告商工労働部長といい上記2名を被(「」, 高度化資金という,(「」。)の貸付けに係る貸付金について被告奈良県知事以下被告知事という及び同奈良県商工労働部長以下被告商工労働部長といい上記2名を被(「」,「告知事ら」と総称する)が,被告組合に対し約定どおりの償還を請求せず,。 抵当権の実行や保証人に対する請求等を怠った結果,奈良県に各償還金に対する利息相当額の損害が発生した旨主張して(1)被告知事らを相手方とし,て,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ)2。 42条の2第1項3号に基づき,怠る事実の違法確認を(2)同怠る事実,に係る相手方である被告組合に対し,同項4号後段に基づき,奈良県に代位して,償還期限が到来した貸付金の返還及び違約金の支払を(3)奈良県の,執行機関又は職員として,上記貸付けに係る貸付金の債権管理権限を有していた被告P1,同P4,同P5及び同P6(上記4名を総称して「被告P1ら」という)に対し,同じく同項4号後段に基づき,奈良県に代位して,債権の。 管理を怠ったことによる損害の賠償を,それぞれ求める事案である。 前提事実(証拠等を掲げたもののほかは,当事者間に争いがない)。 (1)当事者等ア原告らは,いずれも奈良県の住民である。 イ被告組合は,昭和63年1月28日,中小企業団体の組織に関する法律に基づき,奈良県内で化製業を営んでいた5事業主の事業を統合して設立された協業組合であり,P7はその代表者である。 ,,(,,,)なお化製業とはと畜場等から発生する残さい骨内臓脂皮等を原料として,油脂,飼料,肥料を製造する事業のことをいう。 ウ被告知事は,奈良県の事務を管理,執行する執行機関であり,被告P1は,平成3年11月28日から本件口頭弁論終結時に至るまで, 脂皮等を原料として,油脂,飼料,肥料を製造する事業のことをいう。 ウ被告知事は,奈良県の事務を管理,執行する執行機関であり,被告P1は,平成3年11月28日から本件口頭弁論終結時に至るまで,奈良県知事の職にある者である。 エ被告商工労働部長は,奈良県事務決裁規程(昭和36年3月31日奈良- 4 -県訓令甲第3号)により,後記(2)の貸付金の回収に関して専決権限を,,,,,有する者であり被告P6同P5及び同P4はそれぞれ下記の期間同商工労働部長の職にあった者である。 (ア)被告P6平成8年4月1日から平成11年3月31日まで(イ)被告P5平成11年4月1日から平成13年3月31日まで(ウ)被告P4平成13年4月1日から平成16年3月31日まで(2)奈良県の被告組合に対する高度化資金の貸付け(甲2,3,乙ロ2,3,12,弁論の全趣旨)ア奈良県は,被告組合に対し,奈良県中小企業高度化資金等貸付規則(昭。 「」。)和43年2月13日・奈良県規則第50号以下本件貸付規則というに基づき,高度化資金として,平成2年2月20日に16億円,平成3年5月30日に4億円をそれぞれ次の約定で貸し付けた(以下「本件各貸付け」といい,それぞれを特定するときは,奈良県の呼称に従い,平成2年の貸付けを「平成元年度貸付け,平成3年の貸付けを「平成2年度貸付」け」という。 。)(ア)償還方法a平成元年度貸付け16億円を平成5年11月30日から毎年11月30日限り9411万7000円ずつ(ただし,最終回は9412万8000円)1。 7回に分割して償還する。 b平成2年度貸付け4億円を平成7年2月27日から毎年2月27日限り2352万9000円ずつ(ただし,最終回は2353万6000円)17回に。 分割して償 0円)1。 7回に分割して償還する。 b平成2年度貸付け4億円を平成7年2月27日から毎年2月27日限り2352万9000円ずつ(ただし,最終回は2353万6000円)17回に。 分割して償還する。 (イ)被告組合は,上記分割償還を遅滞したときは,当該償還期日の翌日から現に償還を行う日までの日数に応じ,償還すべき金額につき年10. - 5 -75%の割合で計算した違約金を支払う。 (ウ)被告組合が上記分割償還を遅滞したときは,奈良県は,残債務の全部又は一部について即時の償還を請求することができる。 (エ)被告組合及びP7(被告組合の代表者兼担保提供者)は,抵当物件の価値が減少した場合において,奈良県から要求があったときは,一部弁済若しくは増担保又は代替担保(以下「増担保等」という)を提供し。 なければならない。 (),,(「」オなお本件各貸付けは被告組合の工場共同化事業以下本件事業という)に対するものであり,同事業は,構造改善高度化事業として。 特例措置の適用を受けたことから,貸付条件が優遇されて利率が無利子となっていた。 イ別紙保証人目録記載の4名(以下「本件各連帯保証人」という)は,。 本件各貸付けの日,奈良県に対し,本件各貸付けから生じる一切の債務について連帯保証した。 ウ本件各貸付けの実施に当たり,それぞれ,被告組合及び本件各連帯保証人の執行受諾文言のある抵当権設定金銭消費貸借契約公正証書(以下「契約公正証書」という)が作成された。 。 (3)担保権の設定(甲5ないし13)ア被告組合及びP7は,平成元年度貸付けを受ける際,奈良県のために,被告組合は別紙物件目録記載8(ただし,附属建物符号2を除く,9。)(1)ないし(10)の物件に,P7は同1ないし7の物件に,それぞれ別紙抵当権目録記載1の 度貸付けを受ける際,奈良県のために,被告組合は別紙物件目録記載8(ただし,附属建物符号2を除く,9。)(1)ないし(10)の物件に,P7は同1ないし7の物件に,それぞれ別紙抵当権目録記載1の抵当権を設定した。 イ被告組合及びP7は,平成2年度貸付けを受ける際,奈良県のために,被告組合は別紙物件目録記載8,9(1)ないし(15)の物件に,P7は同1ないし7の物件に,それぞれ別紙抵当権目録記載2の抵当権を設定した(以下,ア及びイを併せて「本件担保権」という。 ,。)- 6 -(4)貸付条件の変更(甲46の1ないし8,乙ロ4ないし11)被告組合は,平成5年度から平成12年度まで,毎年,別紙貸付条件変更一覧表記載のとおり,当該年度分の償還金額を零円とし,当該未償還分を翌年以降の償還予定額に均等に上乗せするよう償還方法の変更を申請し,奈良県はこれを承認した(以下,この償還方法の変更を「条件変更」といい,平成5年度から平成12年度までの条件変更を総称するときは「本件各条件,変更」という。 。)(5)償還期限の到来(乙ロ17,18,28ないし30)奈良県は,平成13年度以降は条件変更を承認せず,その結果,平成元年度貸付けは,平成13年11月30日,平成2年度貸付けは,平成14年2,。 月27日にそれぞれ最終の条件変更に係る第1回目の償還期日が到来したこれにつき,被告商工労働部長は,被告組合に対し,同年7月23日付けで,同年8月30日を納付期限とする督促を行い,以後,本件口頭弁論終結時に至るまで,当該年度分の償還期日が到来する都度,毎年これを加算して償還を督促した。 (6)被告組合の返済状況等(乙ロ31,32)被告組合は,奈良県に対し,別紙充当経過一覧表①②の「弁済日」欄記載の年月日に「弁済額」欄記載の各金額を償還し(合計38 これを加算して償還を督促した。 (6)被告組合の返済状況等(乙ロ31,32)被告組合は,奈良県に対し,別紙充当経過一覧表①②の「弁済日」欄記載の年月日に「弁済額」欄記載の各金額を償還し(合計382万円,奈良県)は,これをそれぞれ同表記載のとおり充当した。 (7)住民監査請求(甲1,2)原告らを含む奈良県の住民121名は,平成14年6月10日,奈良県監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づき,奈良県が本件各貸付けに係る債権の管理を怠っている事実を改めて必要な措置を講じるよう住民監査請求をした。 これに対し,奈良県監査委員は,本件各貸付けに係る債権の管理については現時点で直ちに違法不当に怠っているものとは認められないとして,上記- 7 -請求を棄却し,原告らに対し,同年8月6日付けで同監査結果を通知した。 (8)本件訴えの提起原告らは,同月30日,本件訴えを提起した。 地方公共団体の有する債権の管理に関する関係法令の定め(ただし,本件に関連する部分に限る)。 (1)地方自治法240条は,地方公共団体の長に対し,債権について,政令の定めるところにより,その督促,強制執行その他その保全及び取立てに関し必要な措置をとらなければならない旨義務づけるとともに(同条2項,政)令の定めるところにより,その徴収停止,履行期限の延長又は当該債権に係る債務の免除をすることができる旨規定している(同条3項。 )(2)これを受けて,地方自治法施行令は,次のとおり定めている。 ア地方公共団体の長は,債権について,履行期限までに履行しない者があるときは,期限を指定してこれを督促しなければならない(同施行令171条。 )イ督促をした後相当の期間を経過してもなお履行されないときは,担保が付され,又は保証人の保証がある債権については,担保の処分若しく 限を指定してこれを督促しなければならない(同施行令171条。 )イ督促をした後相当の期間を経過してもなお履行されないときは,担保が付され,又は保証人の保証がある債権については,担保の処分若しくは担保権の実行又は保証人に対する請求を,債務名義のある債権については,強制執行の手続をしなければならない(同施行令171条の2第1号及び2号。以下,これらの措置を「強制執行等」と総称する。 。)ただし,オの履行期限を延長する場合又はエの徴収停止の措置をとる場合その他特別の事情があると認める場合は,この限りでない(同ただし書。 )ウ地方公共団体の長は,債権について履行期限を繰り上げることができる理由が生じたときは,遅滞なく,債務者に対し,履行期限を繰り上げる旨の通知をしなければならない(同施行令171条の3本文。 )ただし,オの履行期限の延長をすることができる要件を備えている場合- 8 -その他特に支障があると認める場合は,この限りでない(同施行令171条の3ただし書。 )エ地方公共団体の長は,履行期限後相当の期間を経過してもなお完全に履行されていない債権について,①法人である債務者が事業を休止し,将来その事業を再開する見込みが全くなく,かつ,差し押さえることができる財産の価額が強制執行の費用を超えないと認められるとき,②債務者の所在が不明であり,かつ,差し押さえることができる財産の価額が強制執行の費用を超えないと認められるとき,③債権金額が少額で,取立てに要する費用に満たないと認められるときのいずれかに該当し,かつ,これを履行させることが著しく困難又は不適当であると認めるときは,以後(。 ,その保全及び取立てをしないことができる同施行令171条の5以下かかる措置を「徴収停止」という。 。)オ地方公共団体の長 せることが著しく困難又は不適当であると認めるときは,以後(。 ,その保全及び取立てをしないことができる同施行令171条の5以下かかる措置を「徴収停止」という。 。)オ地方公共団体の長は,債務者が当該債権の全部を一時に履行することが困難であり,かつ,その現に有する資産の状況により,履行期限を延長することが徴収上有利であると認められるときは,その履行期限を延長する特約をすることができる(同施行令171条の6第1項2号。 )カ債務者が無資力又はこれに近い状態にあるため履行延期の特約又は処分をした債権について,当初の履行期限から10年を経過した後において,なお,債務者が無資力又はこれに近い状態にあり,かつ,弁済することができる見込みがないと認められるときは,当該債権及びこれに係る損害賠償金等を免除することができる(同施行令171条の7第1項。 ),()。 この免除については地方公共団体の議会の議決を要しない同2項 争点 (1)債権の管理を怠った違法の有無(2)被告組合に対する貸付金等返還代位請求の可否(3)被告P1らに対する損害賠償代位請求の可否- 9 - 争点に関する当事者の主張(1)争点(1(債権の管理を怠った違法の有無)について)【原告らの主張】ア貸付自体のずさんさ(ア)本件各貸付けの経緯奈良県の同和行政は,昭和44年に同和対策事業特別措置法が施行されて以降,P8による暴力的糾弾等を背景として,行政が運動団体に屈服,追従,迎合,奉仕するという,他の行政分野にはない特徴をもって展開されてきた。本件各貸付けもまた「部落内にある化製工場の悪臭,が差別を助長する原因となっている」として,P8が差別解消名目で要,,,,求したものであり被告組合の設立から工場建設計画本件各貸付け本件各条件 けもまた「部落内にある化製工場の悪臭,が差別を助長する原因となっている」として,P8が差別解消名目で要,,,,求したものであり被告組合の設立から工場建設計画本件各貸付け本件各条件変更という一連の作業が,P8や企業に対する追随,迎合,奉仕という,奈良県当局の行政としての主体性を欠いた姿勢の中で行われてきたことは明白である。 (イ)被告組合の経営基盤のぜい弱さ被告組合は,そもそも合計20億円もの膨大な金額の貸付けを行う相手方としては余りにぜい弱であり,金銭の管理能力にも欠けていた。 すなわち,まず,被告組合は,被告組合代表者の個人営業であったP9を母体としてその従業員を引き継ぐ形でスタートしたが,P9時代の従業員はパート込みで17名,被告組合設立時は内14名がそのまま横滑りしており,P9も被告組合もいわゆる中小企業に属することは明らかである。また,税務申告等についても,加入していた社団法人P10(以下「P10」という)に任せっぱなしで,税理士に委任すること。 もなく,被告組合立ち上げ後も,財務状況の記帳管理がずさんなため,県の職員が再三赴いて指導するなど,その会計管理の実態はずさんであった。さらに,被告組合は,法律や定款で定められた総会や理事会を開- 10 -,。 いたこともなく貸付契約書で定められた事業報告書も提出していない理事長であるP7や会計責任者であるP11の実務能力についても相当程度の疑問が残るところであり,これらの事情にかんがみれば,被告組合は「町工場」の域を出るものではなく,この程度の企業体に20億円もの大金の貸付けをすること自体がずさんであるといっても過言ではない。 (ウ)過大な売上予測に基づくずさんな貸付け奈良県は,昭和63年8月に本件事業の経営診断を行い(以下「貸付前診断」という,化製業を取 の貸付けをすること自体がずさんであるといっても過言ではない。 (ウ)過大な売上予測に基づくずさんな貸付け奈良県は,昭和63年8月に本件事業の経営診断を行い(以下「貸付前診断」という,化製業を取り巻く経済環境について「円高による。),パーム油の輸入増加等により油脂分野における価格低下,需要低迷は著しく,今後も改善の兆しは少ない。肥料分野も農産物価格格安,農家の生産意欲の減退,米の減反などの諸要因が重なり,肥料需要の減退は一時的なものではないと考えられており,過渡期に入ったとされている。 さらに,農産物の貿易自由化圧力等から先行きの見通しは決して明るいとは考えられていない」と分析していた。また,被告組合自身も,昭和63年12月20日付け工場共同化事業実施計画書の中で,化製業の現状について「県内業者数は13企業であるが半数程度しか操業してい,ない,近年の円高の影響を受け輸入品との競合が激しく顕著な構造的不況業種である,油脂は植物性パーム油にシェアーを席巻され壊滅的になっていて油脂中心の経営は不可能な状況である」と分析していた。 これらの分析を素直に読めば,油脂も肥料も飼料も需要の見通しは悪く,新たな設備投資をするような状況ではないということであり,撤退が常識的な選択である。それにもかかわらず,償還の始まる平成5年度以降毎年12億円の売上げを予測して「償還計画は無理がない」などと結論付けているのは,全くの的外れであり,上記分析と整合性を欠くものである。 - 11 -(エ)以上のとおり,貸付計画及び償還計画が最初からずさんであったということは,奈良県の回収け怠行為の違法性を基礎付ける重大な間接事実であるとともに,奈良県に対し,より迅速で厳格な債権の回収を義務づけるものである。 イ本件各条件変更の適法性本件各条件変更は,次のとおり は,奈良県の回収け怠行為の違法性を基礎付ける重大な間接事実であるとともに,奈良県に対し,より迅速で厳格な債権の回収を義務づけるものである。 イ本件各条件変更の適法性本件各条件変更は,次のとおり,いずれも,地方自治法施行令171条の6第1項2号の要件を具備せず違法かつ無効である。 仮にそうでないとしても,奈良県において償還財源のねん出可能性を示すシミュレーション作業さえも放棄してしまった平成11年度には,上記要件を具備すると判断する根拠は完全に消滅しており,同年度以降の条件変更は違法である。 (ア)最初の条件変更の違法性奈良県商工労働部中小企業指導課(以下,奈良県商工労働部内の各課は,課名のみで表記する)は,平成5年11月,被告組合から条件変。 更の申請を受けて,被告組合の経営診断を行っているが,同診断結果によれば,被告組合が「仮に償還期日が延期されたとしても本件貸付金の返済が不可能な状況」にあったことは明らかである。すなわち,a平成5年3月期決算における売上高(6億7644万5000円)も,平成6年3月期決算の予測売上高(4億6057万8000円)も,貸付前の予測(12億3364万円)を大きく下回っており,そのかい離の程度,特に赤字の度合いを見ただけで,その後,被告組合が黒字に転換し,貸付金の返済を行うことが不可能な状態にあることは容易に判断できたはずである。 bまた,奈良県は,平成6年3月期の損益分岐点売上高を17億6972万8000円と分析しているが,実際の同月期の売上高は4億6560万2000円(26.3%)にすぎなかった。これは,被告組- 12 -合が利益を生み出すためには,実績の4倍近い売上高を確保する必要があることを意味するが,被告組合のような化製業の場合,動物残さいを原材料とする関係上,その発生量には限りが れは,被告組- 12 -合が利益を生み出すためには,実績の4倍近い売上高を確保する必要があることを意味するが,被告組合のような化製業の場合,動物残さいを原材料とする関係上,その発生量には限りがあり,売上高が爆発的に増加するということ自体想定できないから,限りなく不可能に近かったというべきである。 cさらに,奈良県は,税引後利益に減価償却費を加えた額を償還財源とみなしているが,これとて,平成6年3月期には,マイナス3763万5000円となってしまっており,償還財源は一銭も確保されていない。 d以上のような状況を踏まえ,奈良県自身,返済は到底不可能であると結論付けていた。 eなお,勧告事項として掲げられた,①売上高の増加を図ること,②変動費,具体的には原料仕入価格の引下げを図ること,③経営状況の計数的な把握ができる体制を確立することの3点についても,売上予測の正確性や,売上増,経費削減の見込みの現実性等を検討,検証した形跡は全くなく,上記勧告事項が実現することについての具体的な裏付けは何もなかった。 以上のような事情に照らすと,奈良県の判断が合理的な資料による裏付けを欠いていたことは明らかである。 (イ)次年度以降の条件変更の違法性奈良県は,貸付前の段階では,各期ごとの売上高を12億3364万円と予測していたが,平成5年3月期から平成12年3月期までの間の実際の売上高は,最高でも6億7644万5000円(平成5年3月期,最低で4億2480万4000円(平成12年3月期)と,当初)予測の35ないし50%程度にすぎなかった。また,奈良県が算出した各期ごとの損益分岐点売上高と実際の売上高の関係を見ても,被告組合- 13 -において各期ごとの赤字体質から脱却し,利益を確保しようとすれば,平成5年から平成8年までの各3月期で 奈良県が算出した各期ごとの損益分岐点売上高と実際の売上高の関係を見ても,被告組合- 13 -において各期ごとの赤字体質から脱却し,利益を確保しようとすれば,平成5年から平成8年までの各3月期で実績の2.5倍から5.5倍,平成10年3月期では実績の9倍,平成11年3月期も同じく8倍近い売上げを確保しなければならないことになり,これは現実的に不可能な数字である。さらに,償還財源という観点から見ても,平成6年3月期以降は,償還財源として確保された金額はマイナスが続いており,全く改善していない。このように,被告組合は平成5年度以降,通常の民間企業であれば資金ショートによる倒産の危険性が極めて大きい状況が続いていたにもかかわらず,奈良県は,かかる実態を直視せず,平成12年度分まで漫然と条件変更を行ってきたものであり,次年度以降の条件変更も地方自治法施行令171条の6第1項2号の要件を満たさず違法である。 また,奈良県は,平成10年度の経営診断を最後に改善策が奏功した場合に確保されるであろう償還財源を算出する「シミュレーション」を行っておらず,これは,平成11年度以降,数字上のつじつま合わせすらできないほどに被告組合の経営状態が悪化していたことを示している。したがって,被告知事らの主張を最大限しんしゃくしたとしても,同年度以降の条件変更は違法かつ無効であるといわざるを得ない。 ウ怠る事実の違法確認請求本件各貸付けについては,第1回目の償還時期が貸付けから3年後と定められていたが,その猶予期間内においても,奈良県は,毎決算期ごとに被告組合より事業報告書の提出を受け(契約公正証書15条,また,い),,()つでも被告組合の書類帳簿財産及び事業状態の調査をなす同14条ことが可能であったのであるから,第1回目の償還期日が到来する時 報告書の提出を受け(契約公正証書15条,また,い),,()つでも被告組合の書類帳簿財産及び事業状態の調査をなす同14条ことが可能であったのであるから,第1回目の償還期日が到来する時点で既に償還可能性につき十分検討した上で償還が見込めないと判断することは可能であったはずである。 - 14 -したがって,被告知事らとしては,次のとおり,償還猶予期間の経過後直ちにあらゆる努力を尽くし,被告組合の資産の散逸を防ぎ,あるいは,増担保等を要求するなどして,債権回収を図る義務があったにもかかわらずこれを違法に怠った。 (ア)被告組合に対する償還請求奈良県と被告組合との間では,第1回目の償還期日が到来しその償還がなかった時点で残債務の全部につき即時の償還を請求できる旨の合意がなされていたのであるから(契約公正証書4条1項,被告知事らと)しては,第1回償還期日の翌日,すなわち平成元年度貸付けについては平成5年12月1日,平成2年度貸付けについては平成7年2月28日の各時点で直ちに残債務の全部につき即時の償還を請求するとともに,違約金を請求し,債権全額の回収に努めるべきであった(履行期限を延長できる要件がなかったことは,前記のとおりである。 。)(イ)強制執行等a被告知事らが,第1回目の償還期日が到来しその償還がなかったにもかかわらず,何ら強制執行等を行わなかったことは,地方自治法240条2項,同法施行令171条の2に違反する。 b仮に本件各条件変更が有効であったとしても,平成元年度貸付けについては平成13年11月30日,平成2年度貸付けについては平成14年2月27日にそれぞれ償還期限が到来しており,同年7月23日には,納付期限を同年8月30日として地方自治法施行令171条の督促がなされているところ,同施行令171条の2本 貸付けについては平成14年2月27日にそれぞれ償還期限が到来しており,同年7月23日には,納付期限を同年8月30日として地方自治法施行令171条の督促がなされているところ,同施行令171条の2本文は,地方公共団体の長に対し,上記督促をした後相当の期間を経過してもなお履行されないときは強制執行等の措置をとることを義務づけている。 ここにいう「相当の期間」とは,強制執行等のより強固な回収手段を講じるための準備期間と解するのが相当であり,本件では,既に執- 15 -行力ある債務名義(契約公正証書)が作成されていること,被告組合の業態からして,季節,時期によって収益が大きく変動するものでは,,,ないこと奈良県は従前から経営診断や決算書の徴求を行っており改めて被告組合の資産状態を調査する必要はないこと,被告組合が一度も約定どおりの返済を行っていないことからすれば,せいぜい3か月程度と見るのが相当である。 そうすると,上記納付期限から3か月を経過してもなお被告組合からほとんど債務の償還がなされていないにもかかわらず,奈良県が何ら強制執行等の措置をとらなかったのは,地方自治法施行令171条の2に違反する。 c被告知事らは,後記のとおり,P12センター(以下「P12センター」という)から発生する動物残さいの処理に支障を生じるおそ。 れがあること,被告組合が操業を停止すると悪臭公害が再発するおそれがあることを理由に,同施行令171条の2ただし書の「その他特別の事情」があると主張するが,そもそも,強制執行にまつわる経済的妥当性以外の判断要素をその解釈に持ち込むことは法の趣旨を没却するものであるし,県外の処理施設での処理が可能であること,被告知事が化製業の許可権限等を有していること,事実上,化製業への新規参入が見込まれない現状にあること の解釈に持ち込むことは法の趣旨を没却するものであるし,県外の処理施設での処理が可能であること,被告知事が化製業の許可権限等を有していること,事実上,化製業への新規参入が見込まれない現状にあること,本件各連帯保証人の個人資産を差し押さえたり,住宅を強制競売に付しても,被告組合の工場の稼働に影響はないこと等の事情からすれば,被告知事らの主張はき憂にすぎない。 (ウ)増担保等の請求a契約公正証書8条は,担保提供者である被告組合及びP7に対し,本件担保権の価値が減少した場合,奈良県の要求に応じて,更に増担保等を提供することを義務づけている。奈良県の評価によれば,本件- 16 -担保権の価値は,平成2年の時点で約30億円であったのが平成12年の時点では約18億円とその価値が減少していたのであり,また,同時点での未償還額の合計19億9700万円に対し約2億円の担保。 ,,,割れの事実も判明していたしたがって奈良県としては同時点で被告組合及びP7に対し同条に基づいて増担保等の提供を請求できたはずである。むしろ,単に価値が減少したにとどまらず,約2億円もの担保割れの事実が判明した以上,地方自治法施行令171条の4第2項の法意に照らし,対象となるべき財産の存否等について調査し,増担保等の提供を請求する義務があったというべきである。 bこの点,被告知事らは,被告組合とP7について資産調査をしたが追加担保に徴求できる目的物を見いだすことができなかったなどと主張するが,実際には,P7から聞き取りをしただけで,それ以上の調査は何もしておらず,到底信用できない。ちなみに,平成12年1月当時,P7は,本件担保権の目的以外にも,①愛知県海部郡α所在の土地建物,②奈良市β×番10所在の土地建物を所有しており,ここに抵当権を設定するなどして 底信用できない。ちなみに,平成12年1月当時,P7は,本件担保権の目的以外にも,①愛知県海部郡α所在の土地建物,②奈良市β×番10所在の土地建物を所有しており,ここに抵当権を設定するなどしておけば,任意売却の際などには,先順位抵当権者の有無にかかわらず,幾ばくかの債権の回収は可能となったであろうと推測される。 cまた,増担保等は担保提供者の財産に限られるわけではなく,奈良県としては,被告組合及びP7の財産を調査するだけでなく,物上保証又は人的保証の追加に協力してくれそうな者の存否まで調査する必要があったのであり,これを怠った奈良県の不作為はやはり違法である。 【被告知事らの主張】ア貸付自体がずさんであるとの指摘について原告らは貸付前診断がずさんであったなどと主張するが,同診断におけ- 17 -る売上高予測が結果として実際の売上高と比較して大きなかい離を生じるに至った原因は,貸付後に生じた急激な円高により,食用油脂類の原料で比較的安価なパーム油の輸入量が急増し,これに食生活に係る国民のヘルシー指向の高まりがあいまったため,競合する被告組合の主要製品である動物性油脂の消費が縮小したことや,円高に加えて,急激な牛肉輸入関税率の引下げも実施されたことで国内の牛肉価格が低迷し,この影響を受けて飼料の材料となる肉骨粉の価格も低下を余儀なくされたことにあり,予測と結果のかい離のみをもって貸付前診断そのものがずさんであったというのは失当である。 イ本件各条件変更の適法性について奈良県は,被告組合から条件変更の申請を受ける都度,為替変動や化製業界を取り巻く経営環境,被告組合の経営状況と改善に向けた方向性等について経営診断を実施し,中小企業事業団(独立行政法人中小企業基盤整備機構の前身。以下「旧事業団」という)とも協議の上,条件変更を 業界を取り巻く経営環境,被告組合の経営状況と改善に向けた方向性等について経営診断を実施し,中小企業事業団(独立行政法人中小企業基盤整備機構の前身。以下「旧事業団」という)とも協議の上,条件変更を承。 認した。 本件各条件変更は,各経営診断の時点での為替変動等の外的要因,被告組合の経営努力,金融機関等の支援措置等について様々な角度から総合的に検討した結果に基づくものであって,その都度,事業の改善が将来的に見込まれたことから,条件変更に応じた方が貸付金の徴収上有利であると判断したものである。 特に償還期間が長く外部環境の影響を受けやすい本件各貸付けの対象事業にあっては,単年度変化だけでなく数年の推移が業況に与える影響をみる必要があり,近視眼的かつ拙速な債権管理手法によることは公益的政策的な貸付目的に相反することからも慎重な判断の下に実施された措置であって,本件各条件変更の判断に何ら違法性はない。 (ア)平成5年度から平成7年度までの条件変更について- 18 -化製業界を取り巻く経営環境は,為替相場が急激な円高傾向を示し,それによって安価なパーム油等の海外輸入製品との競合が激化し,食用動物性油脂の出荷単価の大幅なダウンを余儀なくされ,国内の食品原材料に対するヘルシー指向の高まりとあいまって食用動物性の油脂需要が減退しつつあった。また,食肉の輸入自由化に伴う国内畜産業の衰退化傾向が顕著となって飼料の原材料となる肉骨粉製品についても大きな需要の減少をもたらしていた時期であった。 このような外的環境によって,被告組合の売上高が平成4年度に比べ大幅に低下することが見込まれ,さらに,共同工場の建設段階や稼働当初のトラブル等,スタート時点のトラブルの影響もあいまって,第1回償還期に当たる平成5年度の償還額を確保することは不可能となったが,被告組 低下することが見込まれ,さらに,共同工場の建設段階や稼働当初のトラブル等,スタート時点のトラブルの影響もあいまって,第1回償還期に当たる平成5年度の償還額を確保することは不可能となったが,被告組合自身の体制やそれを取り巻く経営環境は最悪期を脱し徐々に快方に向かうと予測できた。 そこで,これらの状況を総合的に判断すれば,いったん条件変更を行い,しばらく被告組合の種々の改善対策による業績好転を見守りながら引き続き指導,支援を行っていくことが適当であると考え,この時点で直ちに滞納案件とするよりは,被告組合の業績回復が見込める状況がある以上,それを待って貸付金の回収を図ることが徴収上有利であると判断し,条件変更に応じた。 当該判断に至った理由としては,最終償還期限までの年限もかなりある中で,内的要因及び外的要因が良い形で推移することが期待できる状況を考慮したことにあり,具体的には次の点が挙げられる。 a被告組合の施設が関西随一の処理能力を有する施設として,寡占化が進むと見込まれる数年後においてもある程度安定した経営が可能になると考えられた。 b動物性油脂離れ等もブームによる一過性のもので,将来的に極端な- 19 -円高が改善されれば当初計画どおりの売上げが見込めると期待された。 c電力料金の見直し等の経費削減努力,理事長の個人資産の処分,組合に対し賃貸している理事長所有の工場敷地賃貸料を一時棚上げしたほか,将来的に残さい物の有料処理を念頭において産業廃棄物処理業の資格を取得するなどの経営努力がなされていた。 d平成5年度から6年度にかけて製品価格の引下げと売上高の減少がやや鈍化し,平成6年度の秋ごろから製品価格の下げ止まりの兆しが現れ,受注回復の見込みが出てきた。また,平成7年度において,中国へ出荷している飼料会社からも受注があり 品価格の引下げと売上高の減少がやや鈍化し,平成6年度の秋ごろから製品価格の下げ止まりの兆しが現れ,受注回復の見込みが出てきた。また,平成7年度において,中国へ出荷している飼料会社からも受注があり,新規取引先としての売上げの増加が期待された。 e本件各貸付けと協調して設備資金等が融資された関係金融機関から,貸付利率の緩和,元金返済の繰延措置等の貸付条件の変更に応じる姿勢が示されたことで,県を含めたこれら関係者が共同歩調をとって対応していくとの合意がなされた。 以上のような被告組合の経営改善努力や金融機関等からの継続的な支援措置を考慮すれば,競売等の強制的な債権回収を図るより被告組合の経営改善を見て貸付金を回収する方が徴収上有利であると判断したものであり,条件変更に何ら違法性はない。 なお,平成5年度の経営診断の結果にある,到底返済は不可能である旨の記載は,今後の返済がすべて不可能であるという意味ではなく,当該診断において,平成5年度の売上高を予測し,償還財源となるキャッシュフローを勘案した結果「当該年度分の返済財源を確保することは,不可能である」という意味にすぎない。このことは,上記診断報告書において売上高の増加や変動費の削減,具体的には原材料仕入単価の低減等を図ることにより,翌期以降の返済を可能とするよう経営努力を勧告- 20 -していることからも明らかである。 (イ)平成8年度から平成10年度までの条件変更についてこの期間の被告組合を取り巻く経営環境は,急激な円高傾向が反転し円安に移行していた時期に当たり,被告組合の業績も回復基調にあったことから,奈良県としては経営改善を最重視し,当面の目標を売上げが拡大し,企業収益が好転することに置いたのであって,次の諸点を考慮して実施した各条件変更には何ら違法はない。 a平成7年度下 あったことから,奈良県としては経営改善を最重視し,当面の目標を売上げが拡大し,企業収益が好転することに置いたのであって,次の諸点を考慮して実施した各条件変更には何ら違法はない。 a平成7年度下期から為替相場は,急激な円高傾向が反転し,円安の様相を呈し始めていた。この影響により平成8年度からは被告組合製品の食用動物性油脂の出荷単価が回復してきており,業界全体として回復の兆しが現れてきた。 b被告組合が取引先に対して製品の値上げや原材料価格の値下げ交渉を継続していった結果,製品出荷単価については値上げが見込まれる状況にあった。また,平成8年度以降,緩やかな景気の回復と被告組合における生産数量の増加,取引単価の改善など明るい兆しにより売上高の増加が期待された。 c被告組合において,労務費,光熱水費,経費等各費用の抑制に努力の一端がうかがわれ,被告組合において材料仕入時における自己搬送,。 への転換を図り材料単価に含まれる運送コストの節減を図っているd主力製品について1kg当たり4ないし5円の単価上昇が見込まれた。 e平成9年度においても為替相場が段階的に円安傾向で安定化してきたため,これによって製品の出荷単価も上向いてきており,業績は前年度に比べ,やや回復の兆しが見られ,ほぼ全般的に生産量の増加が見込める状況に改善されつつあった。 f平成10年度上期は同様な円安傾向で安定化の様相を呈しており,- 21 -,。 製品の出荷単価も上向き業績の傾向は徐々に回復の兆しが見られたg被告組合において,製品単価の値上げや原材料仕入価格の値下げについて取引先に対し継続して協力に働きかけを行うほか,平成10年度の年央よりヘット製品について,これまで一体で供給してきたもの,,,を製品品質等により高価格製品のヘットAとの明確な区 げについて取引先に対し継続して協力に働きかけを行うほか,平成10年度の年央よりヘット製品について,これまで一体で供給してきたもの,,,を製品品質等により高価格製品のヘットAとの明確な区分を図り高品質製品の供給に力を注ぐよう努めていた。 h平成9年度には金融機関4行から金利の低減,未払利息の軽減及び金利の支払留保等の措置が講じられ,平成10年度にも同様の支援措置が講じられた。 なお,この期間の被告組合の売上高は,結果として当期の想定売上高には満たないが,各年度において徐々に増加しており,外部環境の影響を受けやすい事業の性質を考慮すれば,前年度売上実績を基本として為替や景気の動向を踏まえて経営改善策を検討し,その結果に基づいて引き続き経営の支援を継続するとした奈良県の判断は合理的である。 (ウ)平成11年度及び平成12年度の条件変更についてこの時期は,製品市況,原料相場の不安定な情勢で材料コストが増大し,再度の円高による海外競合製品の圧迫を背景に製品単価は下落に転じるなど厳しい経営環境にあり,原料単価の抑制を図るための経営戦略として生産調整を実施したこととあいまって,前年度に比して売上高等が大きく下回る予想となっていた。しかしながら,平成12年度以降にその効果としての収益確保が期待されたことから,次の諸点も考慮して各条件変更に応じたものであり,何ら違法性はない。 a被告組合において,売上高を伸ばすために取引先に対し,製品単価の値上げや原材料仕入価格の値下げについて強力に働きかけを行っていた。 b被告組合において,近隣府県からの新規取引による材料の確保に加- 22 -え,2ないし3件の製品販売取引の案件が進められている中,具体的数値の計画は未確定であるものの,被告組合の生産数量の試算によると現時の月産800ないし900 規取引による材料の確保に加- 22 -え,2ないし3件の製品販売取引の案件が進められている中,具体的数値の計画は未確定であるものの,被告組合の生産数量の試算によると現時の月産800ないし900トンがこれらの新規取引先の確保が図られることによって,1000ないし1200トン前後を見込めることになっていた。 c被告組合において,新規に植物性産業廃棄物(おから)の処理について,取引先の確保や効率的な処理方法等について検討中であった。 d被告組合において,コスト削減のため,電気,重油等の経費削減や原材料仕入れの自己搬送化の充実,人件費の引下げ等の合理化に取り組んでいた。 e金融機関において,一部の借入金について利率の見直し措置が図られ,また,債務免除措置の下に債務負担の軽減が図られた。 被告組合を取り巻く状況は依然厳しいとはいえ,継続した経営努力と支援措置から平成11年度の売上高は当初の想定売上高を上回り,当期利益の推移から赤字幅が億単位で縮小している状況に照らし業況好転の兆しがあると判断したことは,上記aないしeの事由と併せ考えるならば妥当であり,各条件変更時点の状況を総合的に検討し,経営指導を継続することで経営回復を待ち債権の回収を図ることとした奈良県の判断は合理的である。 ウ怠る事実の違法確認請求について(ア)被告組合に対する償還請求についてa原告らは,第1回目の償還期日が到来しその償還がなかった時点で残債務の全部につき即時の償還を請求すべきであった旨主張するが,履行遅滞が生じたことをもって直ちに地方自治法施行令171条の3の履行期限の繰上げを行うことは,債務者の期限の利益を喪失させる単なる手続上の措置にとどまらず,期限未到来の債務に対しても約定- 23 -上の違約金を発生させるとともに,強制的な債権回収措置の発動を予 行期限の繰上げを行うことは,債務者の期限の利益を喪失させる単なる手続上の措置にとどまらず,期限未到来の債務に対しても約定- 23 -上の違約金を発生させるとともに,強制的な債権回収措置の発動を予測させることとあいまって経営努力を続けている被告組合の償還意欲を喪失させかねないおそれがあった。 また,本件各貸付けは,後記のとおり,悪臭公害の防止とP12センターから排出される動物残さいの処理という公益的政策的な趣旨と目的をもって実施されたところであり,債権の管理回収に際しては,貸付けの際に追求された公益的政策的趣旨や目的を勘案する必要があるもので,もし,このような考慮をする必要がないとすれば,貸付けを公益的政策的目的で行いながら,債権の管理回収によってその目的に背ちする悪臭公害の再発や県内の食肉流通への支障を余儀なくされる場合を生じることになりかねない。 分割償還を遅滞したことをもって直ちに繰上請求を行うことは,公益的政策的な当初の目的をその時点で放棄することに等しく,したがって,当該措置をとるか否かについては,貸付けの趣旨,目的をも勘案して判断する必要があるところ,上記の事情によれば,本件は,履行期限の繰上げの措置をとるべきことの例外を定める地方自治法施行令171条の3ただし書の「その他特に支障があると認める場合」に該当する。 b既に償還期日の経過した償還金についても,奈良県が被告組合に対しその償還を求めて提訴すると,同被告に早晩財産の強制換価措置をとることを不退転の決意をもって告知することとなるが,これにより,,経営改善努力を続けている被告組合の意欲を阻害しかねずひいては意欲を失った同被告の操業によって公害が発生するか,又は同被告の操業停止によってP12センターから排出される残さい物の受入先がなくなり,食肉流通の円滑化に支 いる被告組合の意欲を阻害しかねずひいては意欲を失った同被告の操業によって公害が発生するか,又は同被告の操業停止によってP12センターから排出される残さい物の受入先がなくなり,食肉流通の円滑化に支障を生じるか,若しくは近代的設備を所有しない業者に流れるおそれもあるから,償還請求をしないこと- 24 -につき,地方自治法施行令171条の2ただし書の「その他特別の事情」が認められる。 (イ)強制執行等について,,a本件各貸付けは本件貸付規則に基づく高度化資金の融資であるが高度化資金は,旧事業団が各地方公共団体を通じて全国的に行っている制度融資であり,その趣旨目的は,単に中小企業者の体質強化を図るだけでなく,公害対策,都市過密対策や地域振興に貢献することも含まれている。 bこの点,被告組合は,動物残さいを原料として,飼料,油脂,肥料等の製造販売をしていた県内の中小企業者が設立した協業組合であるが,動物残さいを処理する化製工場から発生する悪臭は長年にわたって近隣地域の公害問題となっていたところであり,行政にとっても解決すべき重要課題であった。また,奈良県では,平成2年12月,それまで県内に散在していたと畜場が廃止され,県内唯一の衛生的な食肉加工処理施設を整備するP12センターが設置されたが,同センターから排出される動物残さいを適正に処理する施設としても被告組合。 ,の施設整備を図ることが必要不可欠でもあった被告組合が設立され高度化資金の導入によって,事業者の経営体質を強化し,設備を近代化したことによって,被告組合はP12センターから排出される動物残さいの最大の処理業者として操業しており,しかも,県内最大規模で化製工場を操業しているにもかかわらず,同地域の積年にわたる課。 ,,題であった公害問題は解決されているこのことは 出される動物残さいの最大の処理業者として操業しており,しかも,県内最大規模で化製工場を操業しているにもかかわらず,同地域の積年にわたる課。 ,,題であった公害問題は解決されているこのことは平成2年度以降近隣住民から悪臭に関する苦情が寄せられておらず,逆に近隣にたくさんの店舗や商業施設が立地するようになったことからも顕著である。 cこのように公害問題が解決された現状にもかかわらず,奈良県が現- 25 -時点で直ちに強制執行等に及んだ場合,被告組合は同所で化製事業をなしえなくなってしまい,そうすると,奈良県内にP12センターから排出される動物残さいを処理する業者がいない事態となるか,被告組合のような近代的施設を有しない事業者の処理によって悪臭公害を再発させる事態となることが避けられない。被告組合の事業改善努力の成果を待つことなく,直ちにこのような懸念のある措置に出ることは,中小企業者の体質強化と近隣の公害問題を解決することを企図した本件各貸付けの趣旨目的と背ちする措置となってしまうことが明らかである。 dしたがって,強制執行等を行わないことについて,地方自治法施行令171条の2ただし書の「その他特別の事情」がある。 ,,,,eまた本件各連帯保証人のうちP7は理事長P13は副理事長P14及びP15は被用者等として,いずれも被告組合の事業に参画している者であるが,奈良県が被告組合に対し償還請求をしていないにもかかわらず,被告組合の事業に参画しているこれらの保証人に対し償還請求をするとなると,これらの者の経営改善意欲を阻害するおそれがある。また,請求を受けた本件各連帯保証人から事前,事後の求償によって被告組合自身が請求を受けた場合と同様に経営改善意欲を阻害しかねない。 ひいては改善意欲を失った被告組合の操業に 阻害するおそれがある。また,請求を受けた本件各連帯保証人から事前,事後の求償によって被告組合自身が請求を受けた場合と同様に経営改善意欲を阻害しかねない。 ひいては改善意欲を失った被告組合の操業によって公害が発生するか,同被告の操業停止によってP12センターから排出される残さい物の受入先がなくなるか,又は近代的設備を所有しない業者に流れるおそれがある。 したがって,本件各連帯保証人に対して償還請求をしないことについても,地方自治法施行令171条の2ただし書の「その他特別の事情」が認められる。 - 26 -(ウ)増担保等の請求についてa平成11年度以前は,被告知事らはそもそも担保割れの懸念を抱いていなかった。 b担保割れの懸念を抱いた後は,被告組合とP7について資産調査を実施したが,奈良県が調査した限り,増担保等に徴求できる目的物を見いだすことはできなかった。なお,原告らが指摘する物件は,既に処分されているか,又は他の債権者のために先順位の担保権が設定されており,担保余力は見込めない。 cそもそも目的物も特定せずに何か担保に追加できるものはないかと問い合わせることに実益があるとは考えられないし,まして,増担保等を提供すべき義務を負わない第三者に対し,対象物も特定しない増担保等の請求をしたところで実効性を期し難いこと明白である。 (2)争点(2(被告組合に対する貸付金等返還代位請求の可否)について)【原告らの主張】ア前記のとおり,本件各条件変更は,地方自治法171条の6第1項2号の要件を満たさず無効である。 イ本件各貸付けの当初の約定による償還期限及び約定償還金額は,別表(表-1,2)のとおりであり,一部償還額(合計382万円)を本件口頭弁論終結時までに償還期限が到来した15億0616万9000円に充当するとなお15億0 約定による償還期限及び約定償還金額は,別表(表-1,2)のとおりであり,一部償還額(合計382万円)を本件口頭弁論終結時までに償還期限が到来した15億0616万9000円に充当するとなお15億0234万9000円が未払である。 ウよって,原告らは,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,奈良県に代位して,被告組合に対し,貸金返還請求権に基づいて残元金15億()()0234万9000円並びに別表表-1の①ないし⑬及び同表-2の①ないし⑫の各約定償還金額欄記載の金額に対する各償還期限の翌日から支払済みまで年10.75%の割合による遅延損害金の支払を求める。 【被告組合の主張】- 27 -ア本件各条件変更は,被告組合が奈良県の担当者に対し事前に十分な事情説明をし,求められた資料,財務内容等をすべて明らかにした上で合意したものであるから,何ら違法性はなく有効である。 イまた,貸主である奈良県は,本件各貸付けについて,地方自治法171条の3ただし書の「特に支障があると認める場合」に該当するとして償還,,期限の繰上げをしていないし既に償還期日が経過した償還金についても地方自治法171条の2ただし書の「特別の事情」があるとして償還を請求していない。 ウよって,原告らの請求は失当である。 (3)争点(3(被告P1らに対する損害賠償代位請求の可否)について)【原告らの主張】ア被告組合が約定どおり償還を行わないことにより,本件各貸付けの残元金である15億0234万9000円に対し各償還期日から本件訴えを提起した平成14年8月30日まで民法所定年5%の割合による利息相当額の損害が奈良県に生じている。 イところで,被告P1は奈良県知事の職にあり,被告P4,同P5,同P6はいずれも奈良県商工労働部長の職にあったところ,本件各 日まで民法所定年5%の割合による利息相当額の損害が奈良県に生じている。 イところで,被告P1は奈良県知事の職にあり,被告P4,同P5,同P6はいずれも奈良県商工労働部長の職にあったところ,本件各貸付けの違法な回収け怠行為は,奈良県に対する善管注意義務違反を構成するとともに,不作為による不法行為に該当するから,上記4名は,それぞれ在任期間に応じ,①被告P1は平成3年11月28日から本件口頭弁論終結時まで県知事の職にあるから全部について,②被告P4は上記損害の内平成13年4月1日から平成14年8月30日までの間に償還期日を迎えた分について,③被告P5は平成11年4月1日から平成13年3月31日までの間に償還期日を迎えた分について,④被告P6は平成8年4月1日から平成11年3月31までの間に償還期日を迎えた部分について上記損害を賠償すべき責任がある(計算は別紙損害賠償額計算表記載のとお- 28 -り。 。)ウまた,被告P1らが本件各貸付けの回収という重大な案件について単独で判断を下すことは考えられないから,被告P1らの行為(不作為)は共同不法行為に当たり,各自の責任は不真正連帯債務の関係にある。 エしたがって,原告らは,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,,,,奈良県に代位して民法709条の損害賠償として①被告P1に対し2億3830万1825円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成14年10月11日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金,②被告P4に対し,411万2778円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成14年10月13日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金,③被告P5に対し,2588万8572円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成14年10月11日から支払 の日の翌日である平成14年10月13日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金,③被告P5に対し,2588万8572円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成14年10月11日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金,④被告P6に対し,9000万6460円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成14年10月11日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払を求める。 【被告P1らの主張】ア奈良県は資金を投資したり,利息付きで運用したりする営利団体ではないから,仮に債権の行使を怠る事実があったとしても,債務が履行されていないというだけで奈良県の利益状態に不利益な変化が生じているとはいえず,債権の実質的価値が下落した場合に初めてその下落分に相当する価額の損害が肯定されるにすぎない。 原告らは,被告P1らに本件各貸付けの債権回収を怠る事実があったと主張するが,債権の実質的価値が下落したこと,すなわち,債権回収を怠らなければ回収し得たであろう額や,同額に比べて現時点における回収可能額が実際に減少したことの主張立証はない。 イ本件各条件変更が適法かつ有効であることは前記のとおりであり,そう- 29 -すると,平成13年11月30日(平成元年度貸付分)及び平成14年2月27日(平成2年度貸付分)までは,いずれの償還額についても償還請求できる根拠も回収すべき義務もない。 ウ平成13年11月30日(平成元年度貸付分)及び平成14年2月27日(平成2年度貸付分)に償還期限が到来した分については,被告P4において,平成14年7月23日に同年8月30日を期限とする督促を行ったが,原告らが本件訴えを提起した平成14年8月30日の時点では,上記督促からまだ1か月強しかたっておらず,地方自治法施行令171条の2の「相当の期間 月23日に同年8月30日を期限とする督促を行ったが,原告らが本件訴えを提起した平成14年8月30日の時点では,上記督促からまだ1か月強しかたっておらず,地方自治法施行令171条の2の「相当の期間」を経過したとはいえない。 エ仮に本件各条件変更をしなかったとしても,被告組合に対しその運営資金から当該年度の分割償還額を償還させることが不可能であったことは,奈良県が各年度に実施した経営診断で確認されている。 オ抵当権に基づく競売については,前記のとおり,現時点でもなお,抵当権に基づく競売申立てをしないことについて,地方自治法施行令171条の2ただし書の「その他特別の事情」がある。 なお,抵当権に基づく競売手続は,履行期を経過しなければそもそも申立てすることができない。また,地方自治法施行令171条の2本文によれば,履行期後に督促をし,相当期間を経過した後でなければ申立てをすべきものとはならないし,申立てをしたからといって,直ちに換価して優先弁済を受けることができるものではない。競売を実行した場合の回収額も現時点では不明である。 これらの点からも,平成5年度以降当初約定にかかる各償還期日に償還額を回収できたことを前提とする原告らの請求は失当である。 カ仮に何らかの方法で奈良県が一部の償還額を回収できた場合においても,奈良県と旧事業団との間においては,貸付資金を奈良県が旧事業団から借り入れた割合(80分の54)に応じて回収した償還金の中から奈良- 30 -県が旧事業団に償還するものとされているから,上記割合に該当する額については奈良県が運用する余地はなかった。さらに,本件各条件変更については,旧事業団が承認し,奈良県に対し同様の条件変更を行ってきたことから,上記割合に該当する額については,本件各条件変更によっても奈良県に何ら損害は発生し 地はなかった。さらに,本件各条件変更については,旧事業団が承認し,奈良県に対し同様の条件変更を行ってきたことから,上記割合に該当する額については,本件各条件変更によっても奈良県に何ら損害は発生していない。 第3争点に対する判断 事実経過等(,,,前記第2の2の事実に証拠甲1ないし34の1ないし35ないし2526の1ないし3,31ないし39,42,43の1・2,45,46の1な,,,,,,,,いし8 65の1ないし7 68ないし70 ,,,,,,,乙イ1 乙ロ1ないし33証人P16同P17同P11同P18,,),被告組合代表者P7被告本人P5同P2及び弁論の全趣旨を総合すると次の事実が認められる。 (1)高度化事業制度についてア高度化事業制度は,中小企業者が共同して経営体質の改善,環境対策への対応を図るために工場団地・卸団地,ショッピングセンター等を建設する事業や,第三セクターや商工会等が地域の中小企業者を支援する事業(以下「高度化事業」と総称する)に対し,旧事業団と都道府県とが一。 体となって資金の貸付けを行う制度である。 中小企業者の体質強化に止まらず,公害対策,都市過密対策及び地域振興等への貢献など政策性の高い事業に対する貸付制度であることから,貸付条件が長期・低利と優遇されること,貸付けを行うに当たっては,専門的な立場からコンサルティング(診断助言)が実施されること,都道府県が窓口となり,都道府県と旧事業団が協調して貸付けが行われること,各種税制の特例措置が認められていることなどの特徴を有している。 イ本件貸付規則に基づく高度化資金の貸付けは,奈良県が旧事業団から財- 31 -源貸付けを受けて直接融資を実施する方式であり こと,各種税制の特例措置が認められていることなどの特徴を有している。 イ本件貸付規則に基づく高度化資金の貸付けは,奈良県が旧事業団から財- 31 -源貸付けを受けて直接融資を実施する方式であり,同方式による貸付手続の流れは,おおむね次のとおりである。 (ア)高度化事業を実施しようとする中小企業者は,あらかじめ都道府県に相談し,都道府県は,高度化事業の進め方,留意点等について助言する(事前助言。 )(イ)組合は,事業計画を作成の上,診断申込みを都道府県の診断担当課に提出する(診断申込み。 )(ウ)都道府県は,事業計画等について調査・分析し,その問題点及び具体的対応等について診断・助言をし,組合は,診断報告があった場合には計画を修正し,都道府県に対応策を提出する(診断助言。 )(),()。 エ組合は借入申請書を都道府県の貸付担当課に提出する借入申請(オ)都道府県は,貸付けが適当と判断した場合には,旧事業団と協議した上,貸付けを決定する(貸付決定。 )(カ)組合は,施設設置完了後,資金交付請求書を上記担当課に提出する(資金交付請求。 )(キ)都道府県と組合は,金銭消費貸借契約を締結し,担保物件を設定し,損害保険契約を締結し,質権の設定を行う(金銭消費貸借契約等の締結。 )(ク)都道府県は,施設の設置状況等を確認した後,資金を交付する(貸付金交付。 )(ケ)組合は,施設設置の完了届を都道府県の貸付担当課へ提出し,都道府県は,事業費の支払状況を検査する(支払完了検査。 )ウ本件各貸付けに係る高度化資金(構造改善高度化事業)の貸付条件は,旧事業団の内規により,次のとおり定められている。 (ア)旧事業団の奈良県に対する貸付条件a利率無利子- 32 -b貸付金の額所要資金の80分の54以内(イ)奈良県の被告 の貸付条件は,旧事業団の内規により,次のとおり定められている。 (ア)旧事業団の奈良県に対する貸付条件a利率無利子- 32 -b貸付金の額所要資金の80分の54以内(イ)奈良県の被告組合に対する貸付条件a利率無利子b償還期限(据置期間)20年以内(3年以内)c貸付金の額設置資金又は取得資金の100分の80以内エ貸付条件を変更する場合の手続は,旧事業団の内規により,次のとおり定められている。 (ア)旧事業団は,都道府県が貸付けの相手方に対して,災害,経済事情の著しい変動,その他特別の事情により貸付金の償還が著しく困難であると認めて当該貸付けの相手方に対し,貸付条件の変更をする場合において,当該貸付けの相手方に係る旧事業団の貸付けの貸付条件の変更を希望するときは,当該都道府県から貸付条件変更申請書の提出を受ける。 (イ)旧事業団は(ア)の貸付条件変更申請書の内容を検討した結果,都,道府県がその貸付けの相手方に対して貸付金の償還が著しく困難と認めたことについて十分な理由があると判断した場合であって,当該都道府県が当該貸付けの相手方に対する貸付条件の変更をしたときは,当該貸付条件の変更に係る旧事業団の都道府県に対する貸付条件を変更することができる。 オ償還の免除をする場合の手続は,旧事業団の内規により,次のとおり定められている。 (ア)旧事業団は,都道府県が旧事業団と履行延期の特約をした債務で旧事業団に対する当初の償還期限(当初の償還期限後に履行延期の特約をした場合には,最初に履行延期の特約をした日)から10年を経過したものに係る都道府県の貸付けの相手方について,なお無資力又はこれに近い状態にあり,かつ,弁済することができることとなる見込みがないと認めて当該貸付けの相手方に対する債権並びにこれらに係る利息及 したものに係る都道府県の貸付けの相手方について,なお無資力又はこれに近い状態にあり,かつ,弁済することができることとなる見込みがないと認めて当該貸付けの相手方に対する債権並びにこれらに係る利息及び違- 33 -約金(都道府県の債権等)を免除する場合において,当該貸付けの相手方に係る旧事業団の債権並びにこれらに係る利息及び違約金(旧事業団の債権等)の免除を希望するときは,当該都道府県から償還免除申請書の提出を受ける。 (イ)旧事業団は(ア)の償還免除申請書の内容について検討した結果,,都道府県がその貸付けの相手方について,なお無資力又はこれに近い状態にあり,かつ,弁済することとなる見込みがないと認めたことについて十分な理由があると判断した場合であって,当該都道府県が当該貸付けの相手方に対する都道府県の債権等の免除をしたときは,当該免除に係る旧事業団の債権等を免除することができる。 カ奈良県における高度化資金の回収に係る事務分掌等は,次のとおりである。 (ア)平成12年度までは,高度化資金に関する事務のうち,貸付け及び償還に関する事務は,商工労働部内の金融課が所管し,貸付先に係る経営診断や指導に関する事務は,中小企業指導課(平成12年度は中小企業振興課)が所管していた。平成13年度以降は,県の機構改革により,すべての事務を中小企業課が所管している。 なお,中小企業指導課(中小企業課)には,経営診断の専門職が置かれている。 (イ)高度化資金の回収は,債権管理に関する事務として,本来,知事の職務権限に服するが,このうち,貸付条件変更等の簡易な事務は,奈良県事務決裁規程により,部長専決事項とされている。 (2)本件各貸付けに至る経緯ア奈良県内の同和地区では,従前から,中小の事業者が化製業を営んでいたが,いずれも経営基盤が弱く設備が不 事務は,奈良県事務決裁規程により,部長専決事項とされている。 (2)本件各貸付けに至る経緯ア奈良県内の同和地区では,従前から,中小の事業者が化製業を営んでいたが,いずれも経営基盤が弱く設備が不十分であったため,その生産過程において発生する臭気や汚水等を原因とする公害が長年にわたり周辺地域- 34 -住民の悩みとなっていた。 イ上記臭気や汚水等の改善は,公害対策としても同和対策としても奈良県の重要な課題になっていたが,個々の事業者に改善を求めても限界がある,,,,ことから奈良県は事業者の経営の合理化施設の近代化を図りながら同時に臭気公害を解消する方策として,高度化事業制度を利用して,事業者が組合を結成し,最新の設備を備えた工場を共同設置することを検討していた。 ウそして,昭和60年12月,P9ほか4名の事業者が,P8やP10の支援を受ける形で,奈良県に対し高度化事業制度の適用を要望し,本件事業がスタートした。 その後,奈良県と各事業者との協議により,工場建設用地はP9の敷地を借用し,総事業費は約25億円に収めること,総事業費の内16億円又は20億円を高度化資金で賄い,その余は,市中金融機関と自己資金とで賄うこと等が決定され,昭和63年1月14日には,P7を理事長とする被告組合の設立が認可された。 エ奈良県は,昭和63年8月,旧事業団と共同で,被告組合の経営診断を実施した(貸付前診断。 )その診断結果は,本件事業の展望について,①化製業は著しい構造不況に陥っており今後も改善の兆しは少ないが極度の臭気公害と生,,「」「鮮原材料の安定的確保」という最大の問題を克服すれば,生き残りを図ることが可能である,②そのためには,まず,悪臭公害の発生源である零細企業を統合するとともに,高度な生産設備と公害防 ,「」「鮮原材料の安定的確保」という最大の問題を克服すれば,生き残りを図ることが可能である,②そのためには,まず,悪臭公害の発生源である零細企業を統合するとともに,高度な生産設備と公害防止施設を備えた近代的工場の建設が必要不可欠である,③また,公害問題が解決されれば,企業にとって問題のない立地環境であるから,今後は逆に地域が活性化することが期待できるし,現在建設中のP12センターにも至近距離であることから,同センターから排出される食肉残廃物の処理が可能となるなど- 35 -の波及効果も期待できるなどと指摘し,また,償還計画については,平成元年度貸付けの第1回目の償還期日を迎える平成5年度以降,毎年12億3364万円の売上高が確保できると予測し(組合員5名の過去3年間の売上高の合計が約10億円から12億円あることを前提に算出したもの,各年度において,前期からの繰越額を度外視してもなお要償還額。)を上回る償還財源が確保でき,貸付額が16億円の場合と20億円の場合のいずれであっても,無理のない計画であると結論付けていた。 オ以上の経過を踏まえ,奈良県は,本件各貸付けを適当と判断し,旧事業,,団とも協議の上総事業費の80%に相当する20億円の貸付けを決定し平成2年2月20日に16億円,平成3年5月30日に4億円の2回に分けて実行した。 なお,貸付総額20億円のうち,80分の54に該当する13億5000万円は,旧事業団からの借入金で賄われた(以下「旧事業団貸付分」という。 。)(3)最初の条件変更の経緯ア被告組合の事業は,新しく導入した機械が正常に稼働しなかったり,人身事故が発生するなどのトラブルに見舞われた結果,操業開始が平成4年4月にずれ込んだことや,貸付後の急激な円高や経済情勢の変化の影響により,出荷単価 ,新しく導入した機械が正常に稼働しなかったり,人身事故が発生するなどのトラブルに見舞われた結果,操業開始が平成4年4月にずれ込んだことや,貸付後の急激な円高や経済情勢の変化の影響により,出荷単価が減少したり,燃料費が高騰したことから,貸付時の予測に反して売上高が伸び悩み,平成5年3月期の売上高は6億7644万5000円(貸付前診断時の予測売上高12億3364万円の54.8%,奈良県が算出した同月期の損益分岐点売上高約17億2316万9000円の39.2%)に止まった。 このため,被告組合は,償還財源が確保できず,平成元年度貸付けの第1回目の償還日(平成5年11月30日)に先立つ同年9月30日,奈良県に対し,初回分の償還金額を零円とし,当該未償還分を翌年以降の償還- 36 -予定額に均等に上乗せするよう償還方法の変更を申請した。申請理由は,主に次の2点であった。 (ア)被告組合の主力製品である油脂については,円高傾向が続く中で,パーム油など油脂の競合品が安価に輸入されるようになり,被告組合製品の出荷単価が大幅にダウンした。また,飼料については,食肉の輸入自由化が進む中で国内畜産業衰退による需要の減少という状況があり,売上高が低迷している。被告組合としては,販売先との製品値上げ交渉はもちろんのこと,原材料の仕入価格の値下げ交渉や電力等の契約見直し等製造原価削減に努力したが,今期においては償還財源が確保できない見込みである。 (イ)組合経理の面において,帳簿類の整備が十分でなかったことから,長期にわたる綿密な資金運用計画が立てられなかったため,当初計画以上に借入金が膨らんだ。 イ上記条件変更の申請を受けて,奈良県は,中小企業指導課において被告組合の経営診断を実施し,被告組合の事業の現状と今後の見通し等について,要旨,次のとおり分析し 当初計画以上に借入金が膨らんだ。 イ上記条件変更の申請を受けて,奈良県は,中小企業指導課において被告組合の経営診断を実施し,被告組合の事業の現状と今後の見通し等について,要旨,次のとおり分析した。 (ア)被告組合を取り巻く経営環境a工業統計に見る動物油脂市場の伸び率は,昭和60年を100%とした場合,平成元年から60%程度の横ばいである。 b製品価格は主に牛肉価格に左右されるが,牛肉の関税率引下げや円高に伴い,牛肉(骨付き)輸入単価が大幅な低下傾向にある。 c競合製品である植物油脂も昭和60年比70%程度で推移しているが,パーム油は徐々に輸入量が上昇する傾向にある。 daないしcを総合すると,当業界をとりまく環境は非常に厳しい。 e急激な円高は,被告組合のコストダウン努力を上回る。 (イ)被告組合の経営状況- 37 -a財務比率分析(a)収益性売上高水準が低く,収益性が回復する見通しが立たない。特に減価償却費の負担が収益を悪化させている。 (b)安全性固定資産の大部分を長期借入金で賄っている。売上高に対する支払利息比率が高率であり,経営を悪化させる大きな原因となっている。 (c)生産性売上高の減少に伴い,従業員一人当たりの年間生産高及び加工高が減少している。加工高対人件費比率は上昇しており,今後人件費の取扱いが課題となる。 (d)総括ほとんどの比率において前期に対して悪化することが予想され,依然赤字基調を脱することができていない。 b損益分岐点分析被告組合の損益分岐点売上高は,17億7000万円弱である。一方,償還財源としてのキャッシュフローはマイナス4261万4000円であり,到底返済は不可能である。 (ウ)勧告すべき事項a売上高の増加を図ること売上高を回復させ利益を生める体質にするためには,新規取引先の としてのキャッシュフローはマイナス4261万4000円であり,到底返済は不可能である。 (ウ)勧告すべき事項a売上高の増加を図ること売上高を回復させ利益を生める体質にするためには,新規取引先の開拓が急務である。そのためには,新規の用途開発(洗浄剤としての油脂の利用等)が必要である。 b変動費比率を下げること原材料仕入価格を引き下げ,少なくとも平成4年度並の変動費比率- 38 -は確保すべきである。 c経営状況の計数的な把握ができる体制を確保すること経営状況を合理的・計数的に把握できる体制作りがいまだ不十分である。今後一層の努力をすべきである。 ウ上記診断結果を踏まえ,奈良県は,被告組合は非常に厳しい経営環境に置かれており,現状では,償還財源の確保が事実上困難な状況にあるが,他方で,第2の5(1【被告知事らの主張】イ(ア)aないしeのとお)り,被告組合の業績回復を見込める状況があり,現時点で直ちに滞納案件とするよりは,業績回復を待って貸付金の回収を図る方が徴収上有利であると判断し,旧事業団貸付分につき旧事業団の承認を得た上,平成6年2月18日付けで被告組合に対し条件変更を承認する旨通知した。 (4)次年度以降の条件変更の経緯,,ア被告組合の売上高は平成6年3月期から平成12年3月期にかけても次のとおり,4億円台から5億円台の間に止まった。 (ア)平成5年度(平成6年3月期)4億6560万2000円(イ)平成6年度(平成7年3月期)4億3768万5000円(ウ)平成7年度(平成8年3月期)4億5331万1000円(エ)平成8年度(平成9年3月期)5億4512万6000円(オ)平成9年度(平成10年3月期)5億7643万7000円(カ)平成10年度(平成11年3月期)4億9820万円(キ 0円(エ)平成8年度(平成9年3月期)5億4512万6000円(オ)平成9年度(平成10年3月期)5億7643万7000円(カ)平成10年度(平成11年3月期)4億9820万円(キ)平成11年度(平成12年3月期)4億2480万4000円上記各売上高は,いずれも,貸付前診断時の予測売上高12億3364万円の34.4%ないし46.7%,奈良県が算出した各年度における損益分岐点売上高の約10%ないし25%に止まり,償還財源が全く確保できない状態が続いていた。 イこのように業績が一向に好転しない中,被告組合は,平成6年度から平- 39 -成12年度まで,毎年(3)アと同様に,初回分の償還金額を零円とし,当該未償還分を翌年以降の償還予定額に均等に上乗せするよう償還方法の変更を申請した。各年度の申請理由は,おおむね次のとおりであった。 (ア)平成6年度及び同7年度a円相場の高騰が続いたこと,パーム油等の植物性油脂の競合品が安価で輸入されたことから,主力製品である動物性油脂の出荷単価が下落した。 b食肉の輸入自由化が進む中で,国内畜産業の衰退により飼料・肥料の需要が引き続き減少しており,売上高が依然として低迷している。 (イ)平成8年度円相場が円安基調で推移し,動物性油脂の出荷単価は上昇したが,依然としてパーム油等の植物性油脂の競合品が安価で輸入されていること,飼料・肥料の需要が引き続き減少していることから売上高が低迷している。 (ウ)平成9年度突然の工場機械設備の不調により大幅な修復作業を余儀なくされ,その費用として約1億円を支払うこととなった。 (エ)平成10年度,,上記修復作業につき操業を続けながらの修復方法を採用したたため3ないし4割の減産体制を強いられた。 (オ)平成11年度a原料の発生量が減少し相場 を支払うこととなった。 (エ)平成10年度,,上記修復作業につき操業を続けながらの修復方法を採用したたため3ないし4割の減産体制を強いられた。 (オ)平成11年度a原料の発生量が減少し相場が不安定な状況にある。 b製品単価の下落により売上高が減少している。 c生産設備の継続的な修繕を要する。 (カ)平成12年度a原料の発生量が減少し相場が不安定な状況にある。 - 40 -b飼料原料・油脂等の製品価格は低迷を続けている。 c主要取引先が民事再生法の申立てを行い,売掛金が回収不能となる事態が発生した。 ウ奈良県は,平成5年度以降,毎年,中小企業指導課において経営診断を実施しており,その結果は,おおむね,①為替相場の変動,国内畜産業界の不振,海外競合品との競争激化等により,構造的・慢性的な業界不振が続いており,依然として厳しい経営環境にあること,②金融機関に対する金利負担が拡大しており,金融機関に対する債務の軽減が重大な課題であること,③非効率的な生産状況を改善する必要があること,④短期的な運転資金の確保が困難な状況にあること等の問題点を指摘する一方で,業界の経営悪化により同業他者の転廃業が相次いで寡占化が進み,今後,生産量の拡大と製品単価の上昇が期待できるとも指摘していた。 エこの間,関係金融機関は,被告組合に対し,償還の猶予や利息の軽減措置等の協力に応じる姿勢を見せており,平成9年度からは,実際に上記協力が得られたほか,奈良市からも利子補給による支援を受けていた。 オ結局,奈良県は,第2の5(1【被告知事らの主張】イ(ア)ないし)(ウ)記載のとおり,各年度ごとに,被告組合の業績回復を待って貸付金の回収を図る方が徴収上有利であると判断し,旧事業団貸付分につき旧事業団の承認を得た上で条件変更を承認した。 カな ア)ないし)(ウ)記載のとおり,各年度ごとに,被告組合の業績回復を待って貸付金の回収を図る方が徴収上有利であると判断し,旧事業団貸付分につき旧事業団の承認を得た上で条件変更を承認した。 カなお,被告組合は,別紙充当経過一覧表①②記載のとおり,平成10年3月2日に200万円,平成11年2月26日に100万円の合計300,。 万円を償還しこれらはいずれも平成2年度貸付けの残元金に充当された(5)平成13年度以降の奈良県の対応ア被告組合は,平成13年度も条件変更の申請をしたが,国内牛のBSE問題が発生して肉骨粉の市場価値がなくなったため,平成12年度の売上げは3億4566万1879円まで落ち込み(平成13年度以降は1億円- 41 -台にまで激減した,もはや業績回復の見通しが立たない状態にあった。 。)そのため,奈良県は,貸付条件の変更を行っても徴収上有利であると判断できず,条件変更を承認しなかった。 イその結果,平成元年度貸付けについては平成13年11月30日,平成2年度貸付けについては平成14年2月27日に,それぞれ最初の償還期日が到来した。 ウ奈良県は,被告組合に対し,平成14年7月23日付け,平成15年4月15日付け,平成16年4月20日付け,平成17年4月27日付け,平成18年5月17日付けで,それぞれ,償還期日が到来した償還金につき,納付期限を指定して納付を催告した。 エこれに対し,被告組合は,別紙充当経過一覧表①②記載のとおり,平成15年度に30万円,平成16年度に52万円の合計82万円のみを償還し,前者は平成元年度貸付けの違約金に,後者は同貸付けの残元金にそれぞれ充当された。 オ奈良県監査委員は,平成14年度以降,毎年,奈良県に対し,地方自治法199条4項による定例監査の結果,高度化資金の償還未済金の発生 貸付けの違約金に,後者は同貸付けの残元金にそれぞれ充当された。 オ奈良県監査委員は,平成14年度以降,毎年,奈良県に対し,地方自治法199条4項による定例監査の結果,高度化資金の償還未済金の発生・増加を指摘し,貸付制度の趣旨に沿い,厳正な指導と対応を行い,債権の保全及び回収に一層努めるよう促していた。 カまた,平成17年度に実施された県の包括外部監査の結果報告書は,本件事業の現状について,要旨次のとおり分析した上で,なお債権回収を促していた。 (ア)本件各貸付けは,小規模零細の県内化製業者により設立された協業組合に対し,関連施設の共同化と設備の近代化を目的とした最新鋭工場の建設費用として高度化資金を貸し付けたもので,工場には最新の公害対策設備も備えられていたことから,悪臭公害の解消という大きな効果もあり,また,同時期に開設されたP12センターからの動物残さいの処- 42 -理もスムーズに進められることから,県域における食肉の流通円滑化にも貢献するものであった。 (イ)しかし,貸付後において生じた急激な円高による食用油脂類の原料で比較的安価なパーム油の輸入量の急増は予想を超える状況があり,動物性油脂の消費を急激に縮小させたほか,急激な牛肉輸入関税率の引き下げも実施されたことで,国内牛肉価格の低迷により飼料の原料となる肉骨粉の価格も下落したため,経営成績は極端に悪化している。 (ウ)回収を進めていくには困難な状況ではあるが,今後も引き続き回収努力を行うべきである。 キしかし,奈良県は,ウの督促に際し,担当部課の職員が被告組合を訪問して,前年度の決算書を徴求し,経営状況等を聴取したのみで,地方自治法施行令171条の3の履行期限の繰上げや,同171条の2の強制執行等の債権回収をしなかった。 (6)被告組合及び償還義務者の資産状況等ア 年度の決算書を徴求し,経営状況等を聴取したのみで,地方自治法施行令171条の3の履行期限の繰上げや,同171条の2の強制執行等の債権回収をしなかった。 (6)被告組合及び償還義務者の資産状況等アP7は,別紙物件目録記載1ないし7の土地を所有し,奈良県は,同土地上に,本件各貸付けを被担保債権とする順位1番の抵当権の設定を受けている。 P7は,ほかに,大和郡山市γ×番所在の土地及び奈良市β×番10所在の土地建物(同人の自宅)をも所有しているが,これらについては,いずれも他の金融機関が総額7800万円ないし2億7000万円に上る担保権の設定を受けている。 イ被告組合は,本件口頭弁論終結時において,別紙物件目録記載8の建物()(),,,及び同9 ないし の機械器具を所有し奈良県はそれぞれ本件各貸付けの担保として,上記建物に順位1番の抵当権,上記機械器具に工場抵当法に基づく抵当権の設定を受けている。これらの資産価値については,貸借対照表上は,平成9年度(平成10年3月期)から平成15- 43 -()()年度平成15年3月期まで毎年30億円内建物が8億8900万円前後の価値があるものとして計上されているが,他方で,平成15年度には約26億8700万円の減価償却が計上されている。 ウ本件各連帯保証人の償還能力は明らかでない。 (7)P12センターの状況被告組合とほぼ同時期の平成4年度に操業を開始したP12センターは,動物残さいの供給源として期待されたが,同センターの操業開始後の処理実績は,当初の計画を下回ることが多く,平成14年度には,操業開始一年目の実績をも下回っていた。 争点(1(債権の管理を怠った違法の有無)について)(1)原告らは,被告知事らが,前記1(3)ないし(5)のとおり,被告組 ことが多く,平成14年度には,操業開始一年目の実績をも下回っていた。 争点(1(債権の管理を怠った違法の有無)について)(1)原告らは,被告知事らが,前記1(3)ないし(5)のとおり,被告組合に対し,当初契約に係る各第1回目の償還期日が到来しその償還がなかった時点で直ちに残債務全部の償還を請求せず,また,相当期間経過後も強制執行等の措置をとらず,増担保等も請求しなかったことが,地方自治法242条1項所定の「財産の管理を怠る事実」に該当すると主張する。 (2)地方公共団体が有する債権の管理について定める地方自治法240条,地方自治法施行令171条から171条の7までの規定によれば,客観的に存在する債権を理由もなく放置したり免除したりすることは許されず,原則として,地方公共団体の長にその行使又は不行使についての裁量はないというべきである(最高裁平成16年4月23日第二小法廷判決・民集58巻4号892頁。 ),,,しかし債権については地方自治法施行令171条の6第1項によれば地方公共団体の長は①債務者が無資力又はこれに近い状態にあるとき1,(号,②債務者が当該債務の全部を一時に履行することが困難であり,か)つ,その現に有する資産の状況により,履行期限を延長することが徴収上有利であると認められるとき(2号,③その他一定の事由がある場合(3)- 44 -号から5号まで)においては,その履行期限を延長する特約又は処分をすることができ,この場合において,当該債権の金額を適宜分割して履行期限を。 ,,定めることを妨げないとされているまた同施行令171条の3によれば地方公共団体の長は,債権について履行期限を繰り上げることができる理由が生じたときは,遅滞なく,債務者に対し,履行期限を繰り上げる旨の通知をしなけれ とされているまた同施行令171条の3によれば地方公共団体の長は,債権について履行期限を繰り上げることができる理由が生じたときは,遅滞なく,債務者に対し,履行期限を繰り上げる旨の通知をしなければならないが,同施行令171条の6第1項各号の一に該当する,。 場合その他特に支障があると認める場合はこの限りではないとされているしたがって,上記法定の事由がある場合においては,履行期限を延長する特約をすることが許されるし,また,履行期限の繰上げ及びこれを前提とする履行の請求等をしなかったとしても,違法なものということはできない。 (3)これを本件についてみるに,化製業が構造不況業種であることから,被告組合の厳しい経営状態が続くであろうことは,貸付前から十分予測されていたこと,現に,被告組合の売上高は,貸付前の予測売上高や奈良県が算出し,。 た損益分岐点売上高を大きく下回り続けたことは前記認定のとおりであるしかしながら,他方で,前記のとおり,①本件各貸付けの実施に当たっては,専門的な見地からの経営診断やこれに基づく助言指導,担保物件の設定など,債権回収の可能性を検討し,また,損失を軽減するための手続がとられていること,②経営診断の結果,償還財源を確保できるだけの売上高が見込まれ,償還計画は無理のない計画であるとされており,設立前の組合員の業績に基づく算定方法も合理的であること(これが虚偽の報告や明らかに誤った前提に基づくことを示す証拠はない,③本件各貸付けについ。)ては,最終的に旧事業団の承認が得られており,民間金融機関との協調融資も実現していること,④操業開始後売上げが伸び悩んだことについては,新しく導入された機械が稼働しないなどのトラブルが発生したことや,急激な円高や経済情勢の変化など,貸付時には予測できなかった事情が多分 現していること,④操業開始後売上げが伸び悩んだことについては,新しく導入された機械が稼働しないなどのトラブルが発生したことや,急激な円高や経済情勢の変化など,貸付時には予測できなかった事情が多分に影響していることなどの事情を考え合わせれば,必ずしも,本件各貸付けが当- 45 -初から償還可能性を全く考慮せずに実施されたものであるということはできない。 加えて,⑤本件各条件変更を承認するに当たっては,その都度,専門的な見地からの経営診断が実施されており,かつ,その診断は,被告組合の経営状況やこれを取り巻く環境,円高傾向の継続,競合品であるパーム油輸入量の増大,動物性油脂の消費量の減少,牛肉関税率の低下,食肉価格の低下などの市場・経済の動向をも踏まえた上でなされていること,⑥各経営診断の結果は,いずれも厳しい経営環境を指摘しながらも,なお,生産量の拡大と製品単価の上昇が見込まれ,長期的には償還財源が確保できる可能性を示唆していたこと,⑦本件各条件変更については,いずれも旧事業団の了解が得られていたこと,⑧本件各貸付けは民間金融機関との協調融資であり,これらの金融機関から償還の猶予や利息の軽減措置等の協力が得られていたほか,奈良市から利子補給による支援も受けていたこと等の事情を考え,,合わせれば当初契約に係る各第1回目の償還期日が到来した時点において「債務者が当該債務の全部を一時に履行することが困難であり,かつ,その現に有する資産の状況により,履行期限を延長することが徴収上有利」であったものと認めることができ,直ちに残債務全部の償還を請求せず,被告組合の業績回復を待って貸付金の回収を図る方が徴収上有利であると判断して,条件変更を承認したことが,違法なものとまでいうことはできない。そして,上記説示したところに照らせば,その 還を請求せず,被告組合の業績回復を待って貸付金の回収を図る方が徴収上有利であると判断して,条件変更を承認したことが,違法なものとまでいうことはできない。そして,上記説示したところに照らせば,その後,平成12年度まで条件変更を承認し,変更後の各第1回目の償還期日まで残債務全部の即時償還を請求しなかったことについても同様というべきである。 (4)しかしながら,平成13年度以降にあっては,奈良県自身がもはや貸付条件を変更しても徴収上有利であるとの判断ができず,条件変更を承認しなかったこと,特に平成14年度以降は,奈良県監査委員から厳正な指導と対応を行い,債権の保全及び回収に一層努めるよう促されていたことは前記のと- 46 -おりであるし,平成5年度から8年間にわたり毎年条件変更を承認して履行期限の繰延べをしてきたにもかかわらず,売上高が貸付当初の予測や損益分岐点を大きく下回り続けたばかりか,かえって,国内牛のBSE問題の影響等から売上げが激減し,償還財源が全く確保できていなかった状況にかんがみれば,もはや,正常な形での債権回収が到底期待できない状況にあったことは,明らかであったというべきである。 (5)被告知事らは,本件については,地方自治法施行令171条の2ただし書の「その他特別の事情があると認める場合,171条の3ただし書の「そ」の他特に支障があると認める場合」に該当する事由があるとして,①本件各貸付けに高度の政策性・公益性があること,②同施行令171条の2,3の措置をとった場合には,被告組合の経営改善意欲が低下するおそれがあること,③被告組合が操業停止に陥った場合,臭気公害が再発したり,奈良県内の食肉処理が滞るなどの弊害が生じるおそれがあることなどを指摘する。 しかしながら,①被告らの主張する政策性・公益性は,主として貸 ③被告組合が操業停止に陥った場合,臭気公害が再発したり,奈良県内の食肉処理が滞るなどの弊害が生じるおそれがあることなどを指摘する。 しかしながら,①被告らの主張する政策性・公益性は,主として貸付けを実施すること自体及びその対象選定や条件設定において考慮されるものであって,それらの局面においては,それぞれの根拠規定ないし制度目的に応じた裁量的判断が許されるとしても,貸付けとしていったん設定された条件について後にこれを変更するなどの債権の管理に関する事項については,前記のとおり法定されているのであって,それにもかかわらず,貸付目的の政策性・公益性を理由に履行期限の繰上げや強制執行等を行わないことを認めるとすれば,貸付けと補助金との区別を不明確にするのみならず,法令上,強制執行が功を奏しないと認められる場合に限り徴収停止の措置をとることができ(地方自治法施行令171条の5,また,債務者が無資力又はこれ)に近い状態にあること(同施行令171条の6第1項1号)を理由に履行期限を延長した場合に限り,議会の議決を得ることなく債権を免除できる(地- 47 -方自治法96条1項10号,同施行令171条の7第3項)ものとされていることを無意味にしてしまう点でも相当でない。さらに,②正常な債権回収が到底期待できない状況にありながら,なお,被告組合の経営改善努力を考慮して,履行期限の繰上げや強制執行等を行わないのは失当であるし,③前記認定のP12センターの状況や化製業の構造不況の実態等の事情を踏まえれば,仮に被告組合が操業停止に陥ったとしても,直ちに被告知事らが指摘するような弊害が生じる具体的なおそれがあるとは認められない。 したがって,上記被告知事らの主張はいずれも採用できない。 (6)なお,増担保等の請求をしないことが財産管理上違法となるのは, 知事らが指摘するような弊害が生じる具体的なおそれがあるとは認められない。 したがって,上記被告知事らの主張はいずれも採用できない。 (6)なお,増担保等の請求をしないことが財産管理上違法となるのは,既存担保の価値が被担保債権額を明らかに下回っており,かつ,担保提供者がほか,,に剰余価値のある目的物を所有していたにもかかわらずこれを調査したり徴求しなかったような場合であると解すべきところ,本件においては,少なくとも,担保提供者である被告組合やP7が,本件担保権の目的物以外に剰余価値のある目的物を所有していたことを認めるに足りる証拠はない。 また,増担保等の設定は,将来の履行を担保するためになされるものであり,既に回収段階に入った場合には,むしろ,当該目的物に対する強制執行によって直ちに債権回収を図るべきであるから,平成13年度以降,増担保等を請求しなかったことが違法であるとはいえない。 (7)以上によれば,被告知事らが,本件各貸付けについて,被告組合に対する償還請求,本件担保権の実行,強制執行の手続,本件各連帯保証人に対する履行請求を各怠ることは違法であるというべきであり,原告らの請求はその限度において理由がある。 争点(2(被告組合に対する貸付金等返還代位請求の可否)について)(1)地方公共団体の住民が当該地方公共団体の締結した契約に基づく債務の履行をその相手方に対して求める代位請求住民訴訟は,地方自治法242条の2第1項4号所定のいずれの請求にも当たらない不適法な訴えであるから- 48 -(最高裁判所平成14年10月15日第三小法廷判決・集民208号157頁参照,原告らの被告組合に対する訴えのうち,奈良県に対し,約定償還)金15億0234万9000円の支払を求める請求に係る部分は却下を免れない。 (2)これに対し,原告ら 判決・集民208号157頁参照,原告らの被告組合に対する訴えのうち,奈良県に対し,約定償還)金15億0234万9000円の支払を求める請求に係る部分は却下を免れない。 (2)これに対し,原告らの被告組合に対する請求のうち,別表(表-1)の①ないし⑬及び同(表-2)の①ないし⑫の各約定償還金額欄記載の金額に対する各償還期限の翌日から支払済みまで約定の年10.75%の割合による金員の支払を求める部分は,地方自治法242条の2第1項4号所定の「損害賠償の請求」に当たるから,適法な訴えである。 しかしながら,本件各条件変更が適法であることは,前記のとおりであるし(もっとも,仮に違法であったとしても,被告組合との関係で直ちに効力を失うかどうかは別の問題である,平成13年度以降,履行期限の繰上。)げをしないことが違法であったとしても,被告組合との関係では直接影響を及ぼさないというべきであるから,原告らが代位請求できるのは,本件口頭弁論終結時において既に償還期限が到来した分(平成12年度になされた条件変更を前提に,平成13年度から平成17年度までの間に償還期限が到来した分)に対する違約金の請求に限られるというべきである。 (3(1(2)によれば,原告らの被告組合に対する請求で理由があるのは,))次の部分となる(計算は別紙充当経過一覧表①②のとおり。 。)ア平成元年度貸付分平成18年8月31日現在の違約金残高2億6261万8066円及び延滞元金残高8億8836万5000円に対する平成18年9月1日から支払済みまで年10.75%の割合による違約金の支払を求める部分イ平成2年度貸付分平成18年8月31日現在の違約金残高5352万8095円及び延滞元金残高1億9850万円に対する平成18年9月1日から支払済みまで- 49 -年10. 金の支払を求める部分イ平成2年度貸付分平成18年8月31日現在の違約金残高5352万8095円及び延滞元金残高1億9850万円に対する平成18年9月1日から支払済みまで- 49 -年10.75%の割合による違約金の支払を求める部分 争点(3(被告P1らに対する損害賠償代位請求の可否)について)原告らが主張する損害は,被告組合が本件各貸付けにつき貸付当初の約定どおりに償還できることを前提としており,これが可能であった場合に初めて発生するものであるというべきところ,これを認めるに足りる証拠は全くないから,本件損害賠償代位請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 結論 以上の次第で,原告らの本件請求は,①被告知事らが本件各貸付けに係る債権について,被告組合に対する償還請求,本件担保権の実行,強制執行の手,,続本件各連帯保証人に対する履行請求を各怠ることが違法であることの確認②被告組合に対し,奈良県に平成元年度貸付分の違約金残高2億6261万8066円及び延滞元金残高8億8836万5000円に対する平成18年9月1日から支払済みまでの年10.75%の割合による違約金,平成2年度貸付分の違約金残高5352万8095円及び延滞元金残高1億9850万円に対する平成18年9月1日から支払済みまで年10.75%の割合による違約金の各支払を求める限度で理由があるから認容し,原告らの被告組合に対する訴えのうち,奈良県に対し15億0234万9000円の支払を求める請求に係る部分は不適法であるから却下し,その余の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。なお,仮執行の宣言については相当でないからこれを付さない。 奈良地方裁判所民事部裁判長裁判官坂倉充信裁判官齋藤憲次- 50 - から棄却することとして,主文のとおり判決する。なお,仮執行の宣言については相当でないからこれを付さない。 奈良地方裁判所民事部裁判長裁判官坂倉充信裁判官齋藤憲次- 50 -裁判官寺田利彦
▼ クリックして全文を表示