主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用及び参加費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告は,被告補助参加人らに対し,430万4950円及びこれに対する平成12年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を請求せよ。 (2) 訴訟費用及び参加費用は,被告の負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 本案前の答弁(1) 本件訴えを却下する。 (2) 主文2項同旨 3 請求の趣旨に対する答弁主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,南勢町(以下「町」という。)の住民である原告が,被告補助参加人丙(以下「参加人丙」という。)が町助役に就任するために町職員を退職するに際して勧奨退職による優遇措置を受け,被告が三重県市町村職員退職手当組合(以下「本件組合」という。)に対して特別負担金を支出したことは違法であり,被告補助参加人乙(以下「参加人乙」という。)は支出負担行為及び支出命令をした当該職員として損害賠償債務を負い,参加人丙は支出の実質的な相手方として不当利得返還債務を負うとして,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づき,被告に対し,被告補助参加人らに対し,430万4950円及びこれに対する民法所定の遅延損害金を請求するよう求めた事案である。 2 条例等(1) 三重県市町村職員退職手当組合支給条例(昭和37年11月1日条例第12号。以下「本件条例」という。乙24)第4条第1項「25年以上勤続して退職した者・・・に対する退職手当の額は,その者の給料月額に,その者の勤続期間を次の各号に区分して,当該各号に掲げる割合を乗じて得た額の合計額とする。 一 1年以上10以下の期間については,1年につき100分の125二 11年以上20以下の期間については,1年につき100 間を次の各号に区分して,当該各号に掲げる割合を乗じて得た額の合計額とする。 一 1年以上10以下の期間については,1年につき100分の125二 11年以上20以下の期間については,1年につき100分の137.5三 21年以上30以下の期間については,1年につき100分の150四 31年以上の期間については,1年につき100分の125」第5条第1項「定員の減少若しくは組織の改廃等のため過員若しくは廃職を生ずることにより退職した者であって任命権者が組合市町村の長の承認を得たもの,公務上の傷病若しくは死亡により退職した者又は25年以上勤務して退職した者(地方公務員法第28条の2第1項の規定により退職した者又は25年以上勤続して退職した者(地方公務員法第28条の2第1項の規定により退職した者(同法第28条の3第1項の期限若しくは同条第2項の規定により延長された期限の到来又は同法第28条の4第1項の任期若しくは同条第2項の規定により更新された任期の終了により退職した者を含む。)又はその者の非違によることなく勧奨を受けて退職した者であって任命権者が組合市町村の長の承認を得たものに限る。)に対する退職手当の額は,その者の給料月額にその者の勤続期間を次の各号に区分して,当該各号に掲げる割合に乗じて得た額の合計額とする。 一 1年以上10年以下の期間については,1年につき100分の150二 11年以上20年以下の期間については,1年につき100分の165三 21年以上30年以下の期間については,1年につき100分の180四 31年以上の期間については,1年につき100分の150」第5条の2「前条第1項の規定に該当する者のうち,組合市町村の職員の定年等に関する条例に規定する定年退職日から1年前までに退職した者であって,その勤続期間が25年以上であり つき100分の150」第5条の2「前条第1項の規定に該当する者のうち,組合市町村の職員の定年等に関する条例に規定する定年退職日から1年前までに退職した者であって,その勤続期間が25年以上であり,かつ,その年齢が退職の日において定められているその者に係る定年から10年を減じた年齢以上であるものに対する同項の規定の適用については,同項中「給料月額」とあるのは,「給料月額及び当該給料月額に退職の日において定められているその者に係る定年と退職の日に属する年度の末日におけるその者の年齢との差に相当する年数1年につき100分の2を乗じて得た額の合計額」とする。」第18条第1項「組合市町村は,前条に規定する負担金のほか,次の各号に定める金額を,特別負担金として組合の指定する期日までに組合に納付しなければならない。 一その属する職員が・・・第5条第1項(定員の減少若しくは組織の改廃等のため過員若しくは廃職を生ずることにより退職した場合又は25年以上勤続し,その者の非違によることなく勧奨を受けて退職した場合に限る。)・・・の規定によって,組合から退職手当の支給を受けることとなるときは,当該職員に支給する退職手当の額から,当該職員について自己都合による退職の場合の第3条又は第4条の規定により計算した額を差引いた額に相当する金額二第14条第2項の規定を基礎として計算した退職手当の額より,同条第1項各号の規定を基礎として計算した退職手当の額を差引いた額に相当する金額」附則(昭和46年9月8日一部改正)4項「昭和60年3月31日以前に在職する職員が,職員として10年以上勤続し,年齢50才以上で,定年に達した日以後その者の非違によることなく退職した場合又はその者の非違によることなく勧奨を受けて退職した場合には,第5条の規定にかかわらず,当分の間同条 して10年以上勤続し,年齢50才以上で,定年に達した日以後その者の非違によることなく退職した場合又はその者の非違によることなく勧奨を受けて退職した場合には,第5条の規定にかかわらず,当分の間同条の規定を適用する。」(2) 南勢町職員退職優遇措置要綱(平成11年5月当時の南勢町の内規。以下「本件要綱」という。乙7)。 「この項は,職員の新陳代謝を図り,合理的な職員構成を積極的に維持することにより,町行政の能率的な運営を促進するため,事業及び勧奨に応じて退職する職員の優遇措置について必要な事項を定めるものとする。 (適用職員)1項昭和60年3月31日以前に在職する職員で,本町職員として10年以上勤続し,年齢50歳以上で長の募集又は勧奨に応じ退職する者(定年に達する者を除く。)とする。 (優遇措置)2項退職手当(1) 前項の該当者には,三重県市町村職員退職手当組合退職手当支給条例(昭和37年条例第12号)第5条に定める退職手当を支給する。 (2) 特別昇給イ前項の該当者の内,58歳以下の者で勤続期間が20年以上の者にあっては3号給(定期昇給等含む)を・・・特別に昇給させることができるものとする。 (退職の申出期間)3項退職の募集は,毎年1月5日に行うものとし,この要綱による優遇措置を受けて退職しようとする者は同年1月5日から31日までの間に退職の申出を行うものとする。 ただし,募集期間以外に退職の申出があった場合で特別な事情があると認められる者についてはこの限りではない。 (退職発令日)4項この要綱による退職の発令は,3月31日とする。 ただし,特別な事情があると認められる者についてはこの限りではない。 (勤続期間の計算)5項勤続期間の計算については,退職手当条例の定めるところによる。」 3 争いのない事実等(1) 原告は る。 ただし,特別な事情があると認められる者についてはこの限りではない。 (勤続期間の計算)5項勤続期間の計算については,退職手当条例の定めるところによる。」 3 争いのない事実等(1) 原告は町の住民である。 (2) 参加人乙は,平成11年4月,南勢町長に就任した者である。 (3) 参加人丙は,平成11年5月31日,町技術参事兼総務課長を退職し,同年6月1日,町助役に就任した者である。 (4) 参加人丙は,本件組合から,平成11年6月30日に本件要綱2項による加算分を含む退職金3074万2688円を,平成12年1月31日に給与改定により1万9186円(合計3076万1874円)を受け取った(乙15)。 (5) 被告は,本件条例18条1項に基づき,本件組合に対し,参加人丙の退職手当に関する特別負担金として,平成11年6月28日ころに430万2265円の,平成12年2月1日ころに2685円の各支出負担行為及び支出命令をし,それぞれ平成11年7月6日及び平成12年2月7日に支出された(乙12,13。以下「本件各支出」という。)。 (6)ア原告は,平成15年1月31日,町監査委員E及びFに対して,法242条1項に基づき,本件各支出につき,必要な措置を取るよう請求した(甲2。以下「本件監査請求」という。)。 イ町監査委員は,平成15年2月20日,本件監査請求が,「法242条2項の規定による期間経過済の請求であり,しかも1年を経過したことについての「正当な理由」あるときと認められない」との理由で,監査請求を却下した(甲3)。 (7) 原告は,平成15年3月19日,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著である。)。 4 争点(1) 本件監査請求に法242条2項ただし書の「正当な理由」があるか。 (2) 本件各支出の違法性(3) 参加人丙が法242条の2 19日,本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著である。)。 4 争点(1) 本件監査請求に法242条2項ただし書の「正当な理由」があるか。 (2) 本件各支出の違法性(3) 参加人丙が法242条の2第1項4号の「相手方」に当たるか。 5 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(「正当な理由」の有無)について(原告の主張)ア被告から参加人丙に本件要綱2項に従って退職手当が加算されたことは,町広報等に掲載されておらず,秘密裡に行われたから,一住民である原告が知り得る余地はなかった。 イそうしたところ,原告は,平成15年1月中旬ころ,参加人丙に対する退職手当が加算されたことを内部告発により知ることとなり,同月28日,被告に事実の有無を確認したところ,その事実があることが判明した。 そして,原告は,被告に事実の有無を確認してからわずか3日後,内部告発で知ったときから起算しても15日程度で,本件監査請求を行っているから,法242条2項ただし書の「正当な理由」の要件を満たしている。 ウ被告及び参加人らの主張イに対する反論原告において,特別負担金の支出は知り得ても,それが参加人丙に関するものであることは知り得なかった。 平成11年度一般会計補正予算案,「議会だより・なんせい(平成11年11月1日発行)」,「広報なんせい(平成11年10月号)」には,当該退職手当特別負担金の支出が,参加人丙の退職勧奨に関するものであることの記載はない。 平成11年度一般会計特別会計決算には,退職手当組合特別負担金が含まれることの記載すらない。 「広報なんせい(平成11年7月号)」には,参加人丙が技術参事兼総務部長を退職したか,勧奨退職となったかについての記載はない。 (被告及び参加人らの主張)ア本件監査請求は,参加人丙の退職発令から3年8か月も経過した後になさ 7月号)」には,参加人丙が技術参事兼総務部長を退職したか,勧奨退職となったかについての記載はない。 (被告及び参加人らの主張)ア本件監査請求は,参加人丙の退職発令から3年8か月も経過した後になされたもので,監査請求期間を徒過した不適法なものであるから,本件訴えは却下されるべきである。 イ原告は,本件各支出が秘密裡に行われたため,知り得なかったとして,法242条2項ただし書の「正当な理由」があると主張する。 しかし,本件各支出は,次のとおり,秘密裡になされたとはいえず,原告の主張は理由がない。 (ア) 被告は,平成11年9月20日,町議会に,平成11年度一般会計補正予算案を上程したが,その中で,参加人丙ほか3名の勧奨手当に係る退職手当組合特別負担金1966万3000円を計上している。 (イ) 町の全戸に配布されている「議会だより・なんせい(平成11年11月1日発行)」には,平成11年9月定例議会で決まった事項が掲載されているが,この中で,補正予算の歳出の主なものの筆頭に,退職手当組合特別負担金(勧奨分)1966万3000円が挙げられている。 (ウ) 「広報なんせい(平成11年10月号)」には,同年9月定例議会で,一般会計予算に1億1477万2000円を追加補正している旨の記事が掲載されている。 (エ) 平成12年12月22日,町議会において,平成11年度一般会計特別会計決算の承認がなされているが,その中で,参加人丙ほか3名の勧奨手当に係る退職手当組合特別負担金を含む1億2262万6354円が計上されている。 (オ) 参加人丙が,町技術参与を退職し,助役に就任したことは,議会で報告されて承認議決が得られており,また,「広報なんせい(平成11年7月号)」にも掲載されている。 ウこれに対して,原告は,特別負担金の支出は知り得ても,それが参加 し,助役に就任したことは,議会で報告されて承認議決が得られており,また,「広報なんせい(平成11年7月号)」にも掲載されている。 ウこれに対して,原告は,特別負担金の支出は知り得ても,それが参加人丙に関するものであることは知り得ないと主張する。 しかし,参加人丙が平成11年5月末に退職したことは周知の事実である。 なお,助役は地方公共団体の常勤の職員と兼ねることはできない(法166条2項,141条2項)。 また,参加人丙の生年月日が議会において報告され,平成11年6月3日付けの中日新聞伊勢志摩版にも「前助役の後任に,前町参事兼総務課長の丙氏(58)=同町C=が就任した。」と記事が掲載されていたことからすると,60歳の定年前に退職したことは明らかであるし,平成11年9月議会において特別負担金の予算案が上程されているのだから,時期的にみて,参加人丙に関する特別負担金が含まれていると考えるのが相当である。 エしたがって,原告が相当の注意をもってすれば,参加人丙が勧奨退職を受けたことは平成11年度中に知り得たはずである。 (2) 争点(2)(本件各支出の違法性)について(原告の主張)ア本件条例は退職の申出期間や発令日を一切規定しておらず,それらは,本件要綱で規定されているにすぎない。 しかし,本件条例の趣旨からすると,退職の申出期間や発令日を各市町村の自主的な措置に委ねたとみるべきではなく,現行の公務員制度を前提とする限り,退職発令日を原則として3月31日とする趣旨と解すべきである。 もちろん,一定の合理的例外は認めざるを得ないが,再就職の時期,とりわけ特別職公務員である助役に就任することは,その合理的例外に当たらないと考える。 イ本件要綱の趣旨は,職員構成の高齢化を防ぐため,高齢の職員にその意思に基づいて退職してもらい,後進の者をより責 わけ特別職公務員である助役に就任することは,その合理的例外に当たらないと考える。 イ本件要綱の趣旨は,職員構成の高齢化を防ぐため,高齢の職員にその意思に基づいて退職してもらい,後進の者をより責任と権限のある地位に就かせて労働意欲を高め,人件費の不相当な増大を抑えるための,人事刷新のための制度である。 ところで,参加人丙が退職した平成11年5月ころは,現職職員が死亡や退職により減少する傾向にあり,議員からは職員の中途採用さえ要望される状況にあった。したがって,人事刷新などという余裕はなく,むしろ,職員の退職は困る状況にあった。 他方,参加人丙の勧奨退職は,被告が同人を助役に選任するためのものであり,後進者の労働意欲を高めるためでないことはもちろん,人件費の不相当な増大を抑えるためのものではなかった。むしろ,参加人丙の退職手当に関する特別負担金の支払により,人件費の増大を招来したのである。 確かに,助役就任のための退職の場合を,勧奨退職から除外する旨の規定はないが,それは規定上の不備にすぎないのであって,勧奨退職の対象とすることを許容する趣旨と解すべきではない。むしろ,国家公務員退職手当法の運用方針に,選挙の立候補の場合について勧奨退職として取り扱わない旨の規定があることからすると,助役の就任の場合も同様に取り扱うべきである。 ウ参加人丙は,平成11年1月5日から同月31日までの間に被告からの募集に応じて退職を申し出ず,同年5月20日に助役就任を目的とすることが明らかな被告からの退職勧奨に応じたのであって,落ち度がないとはいえない。 エ被告及び参加人らは,本人の健康上の理由や家庭の事情とともに,再就職の時期を本件要綱4項の「特別な事情」として認められるべきと主張する。 確かに,前2者は認められてよく,再就職の時期についても民間企業に再 及び参加人らは,本人の健康上の理由や家庭の事情とともに,再就職の時期を本件要綱4項の「特別な事情」として認められるべきと主張する。 確かに,前2者は認められてよく,再就職の時期についても民間企業に再就職するのであれば,純粋に個人的な事情であり認められてもよい。 しかし,一般職と特別職の区別があるとはいえ,また,一時町職員を退職しなければならないとはいえ,参加人丙が再就職するのは同じ地方公共団体である町であり,選任につき議会の同意が必要であるとしても,参加人丙を助役に選任するのは退職時にも町長であった被告である。勧奨退職者が民間企業に再就職する時期については,被告は詳しくは知り得ず,特別な事情を認めやすいが,同じ町に就職する以上,被告はその間の事情を詳しく知っている。しかも,町の内規にすぎない本件要綱4項の「特別な事情」を被告自身がありと認めるのであり,そこには何らの公平性,第三者性は担保されていない。 オ本件要綱が本件の参加人丙の勧奨退職に適用される限度では,その運用が本件条例に違反することは明らかであるから,本件各支出は違法である。 (被告及び参加人らの主張)ア(ア) 被告は,平成8年7月9日,参加人丙を含む本件要綱の適用職員に対して,本件要綱や内規等の書類を交付しており,定年前に退職すれば,退職金の支給において優遇されることを知らせている。 また,三重県市町村職員職員共済組合は,各組合員にライフプランガイドブックを配付しているが,その冊子には退職手当支給率一覧表が掲載されている。 したがって,定年前に退職すれば,退職金の支給において優遇されることは職員なら誰もが知っていることであり,あえて掲示板に掲示したり,チラシを配る必要がないほど,優遇措置は職員に周知されている。 (イ) 被告は,平成11年5月10日,参加人丙に対して口頭で退職 ることは職員なら誰もが知っていることであり,あえて掲示板に掲示したり,チラシを配る必要がないほど,優遇措置は職員に周知されている。 (イ) 被告は,平成11年5月10日,参加人丙に対して口頭で退職を勧奨し,参加人丙は,同月20日,これに応じることとし,同月31日に退職した。 イ原告の主張アに対して参加人丙の退職発令は,平成11年5月31日付けであるが,本件要綱4項ただし書によれば,特別な事情がある場合は,3月31日付けでなくてもよいと明記されている。特別な事情には,健康上の理由や家庭の事情,再就職の時期の問題等が含まれる。 しかるに,参加人丙の場合は,参加人乙が平成11年4月の町長選挙で当選し,空席となっていた助役への就任を打診されていたという事情があったのであり,これは上記特別な事情に当たる。 ウ原告の主張イに対して(ア) 勧奨退職は,人事の刷新,行政能率の維持,向上等を図る目的のため,任命権者又はその委任を受けた者によって職員本人の自発的な退職意思を形成させるための慫慂行為である。 参加人丙は,退職当時,町参事兼総務課長の地位にあった。参加人丙が勧奨退職を拒否していれば,定年退職まで参事のまま町一般職員として稼働できたはずである。他方,参加人丙が助役に就任しなくても,他の誰かが助役に就任し,助役の給料は支払わなければならなかったはずである。 参加人丙は,定年退職を待たずに退職し,一般職員ではトップの地位である参事のポストを去った。その後,技術参事の席は空席であり,人件費削減及び組織の合理化という目的は達している。 (イ) 原告は,参事から助役に昇格しただけだから,人事刷新等の効果はないと主張するが,一般職員としての地位と助役としての地位とは切り離して考えるべきである。 助役は特別職公務員で,就任については議会の同意が必要であり, ら助役に昇格しただけだから,人事刷新等の効果はないと主張するが,一般職員としての地位と助役としての地位とは切り離して考えるべきである。 助役は特別職公務員で,就任については議会の同意が必要であり,任期は4年である。任期中であっても町長は,助役を一方的に解任できる。助役の職務は,町長を補佐し,補助機関たる職員の担当する事務を監督したり,特別な場合は町長の職務代理を行う。 これに対して,一般職員は,就任について議会の同意は不要であり,任期の定めはない。また,相当重い懲戒事由がないと免職されない。その職務は,上司の命を受けて事務又は技術を担当することである。 このように,助役は,一般職の公務員とは異なる性格を持っているので,連続的に考えることはできないし,助役に就任したからといって,勧奨退職金の支給をしないのは不公平である。 (ウ) 国家公務員退職手当法の運用方針にも,「退職の主たる理由が選挙に立候補するためのものであることが明らかである場合には,勧奨退職として取り扱わない」と規定されているが,助役の就任のためである場合は,除外されていない。 本件条例においても,勧奨退職の要件は,「その者の非違によることなく勧奨を受けて退職した者であって任命権者が組合市町村の長の承認を得たもの」とし(5条1項),その他に除外要件は定めていない。 (エ) したがって,町職員が町を退職し助役に就任した場合でも,勧奨退職の対象となることは明らかである。 (3) 争点(3)(参加人丙が「相手方」に当たるか)について(原告の主張)被告は,本件組合を経由して,参加人丙に退職手当を支出した。これは,形式的には被告の本件組合に対する支出であるが,被告には本件組合に対する特別負担金の支払が義務付けられており(本件条例18条1項),実質的,経済的に見れば,被告が参加人丙に支出 を支出した。これは,形式的には被告の本件組合に対する支出であるが,被告には本件組合に対する特別負担金の支払が義務付けられており(本件条例18条1項),実質的,経済的に見れば,被告が参加人丙に支出したことにほかならない。 そうすると,参加人丙は,法242条の2第1項4号に定められた「相手方」に当たる。 (被告及び参加人らの主張)法242条の2第1項4号の「相手方」とは,「地方公共団体が有する実体法上の請求権を履行する義務がある者」(最高裁昭和53年6月23日第3小法廷判決,判時897号54頁)を意味する。そして,実体法上の請求権とは,損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を指す。 本件で,被告が特別負担金につき支出負担行為及び支出命令をした相手方は,本件組合であって,参加人丙ではない。参加人丙に対する退職手当は,町から提出された資料に基づきながらも,本件組合の主体的な判断で支出されている。 原告は,被告の特別負担金に関する支出負担行為及び支出命令が違法であると主張しているから,不当利得返還請求の相手方は本件組合とすべきであって,原告は相手方を誤っている。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(「正当な理由」の有無)について(1) 上記争いのない事実等,証拠(甲2,3,6,7,乙1ないし6,11,12,13,15,16,21,証人G)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア参加人丙は,平成11年5月10日に退職勧奨を受け,同月31日,町技術参事兼総務課長を退職し,同年6月1日,町助役に就任した(乙11,16)。 イ被告は,本件条例18条1項に基づき,本件組合に対し,参加人丙の退職手当に関する特別負担金として,平成11年6月28日ころに430万2265円の支出負担行為及び支出命令を,平成12年2月1日ころに2685円の支出負 8条1項に基づき,本件組合に対し,参加人丙の退職手当に関する特別負担金として,平成11年6月28日ころに430万2265円の支出負担行為及び支出命令を,平成12年2月1日ころに2685円の支出負担行為及び支出命令をし,それぞれ平成11年7月6日及び平成12年2月7日に支出された(本件各支出)。 ウ(ア) 平成11年5月28日に開催された同年第6回町議会(第5回臨時会)において,昭和16年3月3日生まれの参加人丙を助役に選任することが報告され,町議会はこれに同意した(乙5)。 (イ) 平成11年6月3日付けの中日新聞伊勢志摩版には,「前助役の後任に,前町参事兼総務課長の丙氏(58)=同町C=が就任した。」との記事が掲載された(乙21)。 (ウ) 町内で配布されている「広報なんせい(平成11年7月号)」に,参加人丙が助役に就任する記事が掲載された(乙6)。 (エ) 被告は,平成11年9月20日,同年第9回町議会(第3回定例会)に,平成11年度一般会計補正予算案を上程したが,その中には,総務費内総務管理費内一般管理費として「負担金・補助金及び交付金,金額1966万3000円」との記載があり,説明欄に「退職手当組合特別負担金1966万3000円」との記載があった(乙1)。 (オ) 「広報なんせい(平成11年10月号)」には,平成11年第9回町議会(第3回定例会)で,一般会計の補正予算として歳入歳出それぞれ1億1477万2000円が追加された旨の記事が掲載された(乙3)。 (カ) 町内で配布されている「町議会だより・なんせい(平成11年11月1日発行)」には,同年9月の定例議会で決まったこととして,補正予算の歳出の主なものの中で,「退職手当組合特別負担金(勧奨分)1966万3000円」との記載があった(乙2)。 (キ) 平成12年12月22日,町議 は,同年9月の定例議会で決まったこととして,補正予算の歳出の主なものの中で,「退職手当組合特別負担金(勧奨分)1966万3000円」との記載があった(乙2)。 (キ) 平成12年12月22日,町議会において,平成11年度一般会計特別会計決算の承認がなされたが,その中で,総務費内総務管理費内一般管理費として「負担金・補助金及び交付金,支出済額1億2262万6354円」との記載があった(乙4)。 エ Gは,平成15年1月中旬ころ,町職員から,参加人丙が助役に就任した際に退職勧奨手当を受け取っていると聞いた。そこで,Gは,勤務先の上司である原告にその旨を伝えた。 原告及びGは,同月28日ころ,被告と面談して,参加人丙に対する退職勧奨の有無を確認したところ,被告はこれが事実であると回答した。 オそこで,原告は,平成15年1月31日に本件監査請求をしたが,監査委員は,同年2月20日,監査請求期間を徒過しているとして却下した。 カ原告は,平成15年3月19日,本件訴訟を提起した。 (2) 以上の認定事実を前提とすると,本件各支出から1年を経過して本件監査請求がなされており,法242条1項本文の要件を満たさない。 そこで,原告が本件監査請求まで1年を経過したことに「正当な理由」(同項ただし書)があるかについて検討する。 ところで,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて住民監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,法242条2項ただし書にいう正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべ り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである(最高裁判所平成14年9月12日第1小法廷判決,民集56巻7号1481号参照)。 これを本件においてみるに,原告は,平成11年6月3日には,中日新聞伊勢志摩版により参加人丙が定年退職前の同年5月31日までに町の一般職員を退職して町の助役となったことを知ることができ,また,同年11月末日までには,町議会だより・なんせい(平成11年11月号)により被告が本件組合に特別負担金として合計1966万3000円を支出しようとしていることを知ることができたとは認められる。しかし,これらの認識からは,その時期に他の町職員の勧奨退職によりその特別負担金が支出されたと考える余地もあり(実際その時期に他の町職員が退職したことはその特別負担金の額と参加人丙の勧奨退職による退職金の割増分との比較からも窺える。),原告が特別負担金が支出されたことを知り得た平成11年11月末日ころの時点においては,原告において相当の注意力をもって調査しても客観的にみて監査請求をする程度に当該行為である本件各支出の存在及び内容を知ることができなかったというべきである。 原告が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて監査請求をする程度に当該行為である本件各支出の存在及び内容を知ることができたと解されるのは,早くとも原告がGから「町職員から参加人丙が助役に就任した際に退職勧奨手当を受け取っていると聞いた。」と伝えられた平成15年1月中旬ころである。 そして,それから原告が約2週間で本件監査請求をしていることからすると,相当な期間内に監査請求がされたということができる。 (3) よって,本 ると聞いた。」と伝えられた平成15年1月中旬ころである。 そして,それから原告が約2週間で本件監査請求をしていることからすると,相当な期間内に監査請求がされたということができる。 (3) よって,本件訴訟は,適法な本件監査請求を経たものというべきである。 2 争点(2)(本件各支出の違法性)について(1) 上記争いのない事実等,証拠(乙7,9の2,10ないし13,15ないし20,24,28ないし33)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア参加人丙は,昭和16年3月3日に生まれ,昭和34年9月1日に町一般職員に採用された。参加人丙の定年退職日は,平成13年3月31日であった(「南勢町職員の定年等に関する条例」(昭和59年6月28日条例第10号)2条,3条)。 参加人丙は,平成11年4月当時,町技術参事兼総務課長の職にあったところ,被告から助役就任の打診を受け,定年退職前であったが,これに応じることにした。 そこで,被告は,平成11年5月10日,参加人丙に対して正式に退職を勧奨し,参加人丙は,同月20日にこれを応諾した。 イ被告は,平成11年5月31日,「南勢町職員の給与に関する条例」(昭和32年10月7日条例第13号)4条4項及び「職員の初任給,昇格,昇給等の基準に関する規則」(昭和45年3月23日規則第7号)35条に基づき,内規である本件要綱2項(2)イに従って,参加人丙を3号給,特別に昇給させた。 これにより,参加人丙は,8級22号給(給料月額46万9300円)から8級25号給(同48万0700円)になった(「南勢町の職員の給与に関する条例の一部を改正する条例」(平成10年条例第20号)附則3項,「最高号給等を受ける職員の給料の切替え等に関する規則」(平成10年12月24日規則第11号)1条別表ア)。 ウ参加人丙は,平 関する条例の一部を改正する条例」(平成10年条例第20号)附則3項,「最高号給等を受ける職員の給料の切替え等に関する規則」(平成10年12月24日規則第11号)1条別表ア)。 ウ参加人丙は,平成11年5月31日,町技術参事兼総務課長を退職し,同年6月1日,町助役に就任した。 エ参加人丙は,平成11年6月30日及び平成12年1月31日,本件組合から退職手当として合計3076万1874円(下記①,②,③を乗じた金額)を受け取った。 被告は,本件組合に対して,本件条例18条1項1号に基づき,参加人丙の退職手当に関する特別負担金として合計430万4950円(下記①,③を乗じた金額から①,④を乗じた金額を差し引いた金額)を支払った。 ①48万1000円(「最高号給等を受ける職員の給料の切替え等に関する規則」(平成11年12月24日規則第17号)1条別表イによる改訂後の8級25号給の給料月額)②1+0.02×1=1.02(本件条例5条の2により算出された割合)③(1.50×10+1.65×10+1.80×10+1.50×5)×1.10=62.7(本件条例5条1項,附則10項,12項により算出された割合)④1.25×10+1.375×10+1.50×10+1.25×10=53.75(本件条例4条1項により算出された割合)(2) 以上の認定事実を前提に検討するに,参加人丙は助役就任を目的に含んで退職勧奨を受け,退職したものではあるが,参加人丙は25年以上勤続し,被告の退職勧奨を受けて,定年退職日の1年以上前に退職したものであるから,本件組合は参加人丙に対し本件条例5条1項及び5条の2に規定された額の退職手当を支払う義務があり,被告は,本件組合に対し,本件条例18条1項所定の特別負担金を支払う義務があったというべきである。 なぜならば,本件条例に 対し本件条例5条1項及び5条の2に規定された額の退職手当を支払う義務があり,被告は,本件組合に対し,本件条例18条1項所定の特別負担金を支払う義務があったというべきである。 なぜならば,本件条例には,町職員を退職後に助役に就任する場合を勧奨退職の対象から除外する定めはないし,助役は特別職公務員で,就任について議会の同意が必要で,4年の任期中であっても町長は助役を一方的に解任できるという事情もあるうえ,助役就任を目的に含んだ参加人丙の勧奨退職であっても,一般職の後進の昇進の道が開け町職員の人事の刷新に寄与したことは,かかる目的を含まない他の場合(退職後,民間企業に再就職する場合等)と何ら異なるところはないからである。 被告及び参加人らの主張によれば,技術参事の席は空席のままとのことであるが,そうであるとしても,一般職の後進の昇進の可能性が生じ人事の刷新に寄与していることに変わりはないし,全体としてみれば人件費の節約にもつながっているということができる。 この点,原告は,「本件条例の趣旨からして退職発令日は原則として3月31日と解すべきである。」と主張する。しかし,本件条例にかかる規定はないし,また,同日の退職が人事異動や配置の面で地方公共団体にとって都合がよい点が多いと推測されるものの,同日以外であっても,地方公共団体にとって勧奨退職によって受ける利益が現実に存在するから,同日以外の退職発令が本件条例の趣旨を損なうとは必ずしも解されない。内規である本件要項4項本文で「この要綱による退職の発令は,3月31日とする。」とはあるが,そのただし書で「特別な事情があると認められる者についてはこの限りではない。」とされており,助役就任が常に3月31日の近くでなされるとは限らないから,助役就任の目的がこの「特別な事情」に当たらないとはいえない。 また 別な事情があると認められる者についてはこの限りではない。」とされており,助役就任が常に3月31日の近くでなされるとは限らないから,助役就任の目的がこの「特別な事情」に当たらないとはいえない。 また,原告は,「町では職員が不足し,人事刷新などという余裕はなかった。」と主張する。確かに,当時の町議会では,町一般職員が不足するのではないかとの指摘がなされているが(乙5,7頁ないし9頁),現実に退職勧奨をすれば町行政に直ちに支障を来すほどに職員が不足していたかどうかは不明といわざるを得ない。 (3) そうすると,本件各支出は,本件条例に基づいた適法なものというべきである。 3 結論以上によれば,原告の請求は理由がないからこれを棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事第1部裁判長裁判官内田計一裁判官上野泰史裁判官後藤誠(別表省略)
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