平成2(行コ)163 損害賠償等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成3年10月30日 東京高等裁判所 住民訴訟
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【DRY-RUN】○ 主文 原判決中、昭和五九年分(ただし、同年一二月二七日分は除く。)の給与の支給に 関する損害賠償請求部分(遅延損害金の請求部分を含む。)を取り消し、本件訴え のうち、右請求にかかる部分を東京地方裁

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○ 主文原判決中、昭和五九年分(ただし、同年一二月二七日分は除く。)の給与の支給に関する損害賠償請求部分(遅延損害金の請求部分を含む。)を取り消し、本件訴えのうち、右請求にかかる部分を東京地方裁判所に差し戻す。控訴人の本件その余の控訴を棄却する。 前項にかかる控訴費用は控訴人の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 本件を東京地方裁判所に差し戻す。 3 訴訟費用は、第一、二審を通じて被控訴人らの負担とする。 二控訴の趣旨に対する答弁本件控訴をいずれも棄却する。 第二当事者双方の事実の主張は、本件監査請求の適法性につき当事者双方において次のとおり付加陳述したほかは、原判決事実摘示第二記載のとおりであり、証拠関係は原審記録中の証拠目録記載のとおりであるから、それぞれこれらを引用する。 (控訴人)住民監査請求において、一般的には、対象となる行為を個別的、具体的に摘示しなければならないとしても、当該行為等の性質、目的等に照らし一体と見てその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合は、これを個別的、具体的に摘示する必要はないものと解すべきである。そして、個別的、具体的に摘示することが要求されるときも、地方公共団体の財務会計行為について専門的知識を欠き、情報入手手段も著しく限られている住民に対し住民監査請求が認められている趣旨からして、その特定の程度は、監査請求により監査委員が何を監査しなければならないかを特定できる程度に特定していれば足りるものと解すべきであり、右特定の有無は、監査請求書の記載のみではなく、これに添付された事実を証する書面の記載、監査請求人が提出したその他の資料等を総合して判断しなければならない。また、監査請求において、監査委員は請求人に補正を求めることができるのであるか みではなく、これに添付された事実を証する書面の記載、監査請求人が提出したその他の資料等を総合して判断しなければならない。また、監査請求において、監査委員は請求人に補正を求めることができるのであるから、監査委員において特定していないと判断すれば、その補正を求めるべきである。 本件の監査請求については、まず、夏休み中の「レポート作成期間」は、やみ休暇として組織的に行われているものであり、また、「やみ」であるか否かは法的問題であるから、その性質、目的等に照らし一体と見て違法又は不当性を判断するのを相当とする場合に当たり、個別的、具体的に摘示する必要はないものというべきである。仮に特定が必要であるとしても、控訴人は、中野昭和小学校(以下「本件小学校」という。)の事務職員であるので、添付書類として、本件小学校の事務職員の氏名、各事務職員ごとの「研修日」及び「レポート作成期間」が記載されている書面並びにこの「レポート作成期間」に職務専念義務免除(職免)を認めたのは中野区教育委員会であることを記載した書面を提出したのであるから、その特定は十分である。また、「都民の日」についてやみ休暇を与えたのが本件小学校の校長である被控訴人Aであることを主張する書面も提出している。「挨拶回り」は、年末年始にそれぞれ一日ずつ認められるものであり、このような短期間において本件小学校に限るなら十分に個別的、具体的というべきである。 以上のように、本件監査請求においては、少なくとも一部は特定されていたのであるから、監査委員としては、これら特定され、しかも他と区別して監査しうるものについては、右のように区別され、特定された範囲で監査しなければならないのであり、このように特定された範囲で監査する旨を監査請求人に告げ、さらに監査を求めるのであれば特定のための資料の提出を求めて補正 ついては、右のように区別され、特定された範囲で監査しなければならないのであり、このように特定された範囲で監査する旨を監査請求人に告げ、さらに監査を求めるのであれば特定のための資料の提出を求めて補正させればよく、監査請求全体を不適法とすることは許されない。 (被控訴人ら)住民監査請求をするにあたつては、その対象とする「財務会計上の行為又は怠る事実(当該行為等)」を具体的に特定しなければならない。本件監査請求の対象とされている行為は、中野区の学校勤務職員には、教育委員会及び各所属学校長から、研修、挨拶回り、レポート作成期間等と称する自宅研修日及び都民の日と開校記念日に与えられるやみ休暇があり、このようなやみ休暇により、職員が出勤しないのに出勤したとして給与を支出した行為と解されるが、右のような公金支出の違法又は不当性は、各職員に対する個々の給与の支出ごとにその出勤状況を調査して判断するほかないから、各公金の支出を他の支出と区別して特定認識しうるように、個別的、具体的に指摘しなければならず、そのためには、少なくとも、当該行為等の主体、その行われた年月日、これにかかる金額を明らかにしなければ、これらを他の行為等と区別して特定認識することはできない。ところが、本件監査請求においては、監査請求書及び補正書並びに添付書類を総合してみても、控訴人がいかなる行為を監査請求の対象としようとしているのか明らかではない。すなわち、仮に「当該行為等」が給与支出行為であるとしても、その支出行為者を具体的に誰と主張するのか明らかではないし、また、「当該行為等」が給与受領行為であるとしても、本件監査請求においては、誰の超過勤務手当受領行為を対象とするのか全く特定認識できない。さらに、「都民の日」、「開校記念日」、「挨拶回り」については、特定個人名の記載は全くない。 為であるとしても、本件監査請求においては、誰の超過勤務手当受領行為を対象とするのか全く特定認識できない。さらに、「都民の日」、「開校記念日」、「挨拶回り」については、特定個人名の記載は全くない。また、「当該行為等」の行われた年月日についても、どの日を「当該行為等」の日として監査の対象としようとするのか明らかではなく、その年月日は到底特定されているとはいえない。また、金額についても、特定記載されていない。このように、本件監査請求は、具体性のない不特定なものであることは明らかであり、行政の組織、制度を問題にしようとするものであるから、かかる請求は、地方自治法七五条所定の事務の監査請求をもつてなすべきである。また、控訴人は、中野区においては、やみ休暇が組織的に行われているので、一体と見て違法又は不当性を判断すべきであるとも主張するが、一体と見て違法又は不当性を判断することが許されるのは、対象行為が形式的に「複数」の行為でも、実質的に「一体と見て」単一の行為と評価しうる場合に限定されるもので、本件の場合はこれに当たらない。控訴人が主張するように「組織的に」行われているということは、事務の監査請求の対象とすることはできても、住民監査請求の対象とする理由にはならない。 ○ 理由一本件訴えは、中野区の住民である控訴人が、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、中野区に代位して、中野区長の相続人らに対し、昭和五九年八月から同六〇年八月までの間に、被控訴人Bがいわゆるやみ休暇を取り、実際は勤務していないにもかかわらず勤務したものとして中野区から受けた給与相当の金員の損害賠償を求める事案であり、当審における争点は、控訴人がした本件監査請求が請求の特定を欠き、不適法なものであり、したがつて、これを前提とする本件訴えも不適法なものであるか否かである。 相当の金員の損害賠償を求める事案であり、当審における争点は、控訴人がした本件監査請求が請求の特定を欠き、不適法なものであり、したがつて、これを前提とする本件訴えも不適法なものであるか否かである。 ニ 1地方自治法二四二条による住民監査請求は、同法七五条に基づく監査請求とは異なり、地方公共団体の長その他の財務会計職員の一定の具体的な違法若しくは不当な財務会計上の行為又は怠る行為(以下「当該行為等」という。)に限つて監査委員にその監査等を請求する権能を認めたものと解すべきである。したがつて、住民監査請求においては、その対象とする当該行為等を、他の事項から区別して特定認識できるように個別的、具体的に摘示することが必要であり、当該行為等が複数である場合は、当該行為等の性質、目的等に照らしこれらを一体と見てその違法又は不当性を判断するのを相当とする場合を除いて、各行為等を他の行為等と区別して特定認識できるように個別的、具体的に摘示することを要するものであり、右の特定の有無は、監査請求書のみならず、これに添付された事実を証する書面の記載や監査請求人が提出したその他の資料等を総合勘酌して判断すべきものである(最高裁判所平成二年六月五日第三小法廷判決・民集四四巻四号七一九頁参照)。 2 これを本件についてみると、成立に争いがない甲第八、第二〇号証によれば、本件の監査請求書(中野区職員に対する措置請求書。期限内に提出された補正書の記載を含む。)には、冒頭に「中野区の学校勤務の職員及び区長、中野区教員委員会」と括弧書し、「請求の主旨」として、中野区の学校勤務職員には、学校の夏休みや冬休みに教育委員会ぐるみで与えられる「研修」、「挨拶回り」、「レポート作成期間」等と称する自宅研修日、都民の日や開校記念日に各所属の学校長が世間の「常識」に従つて与えるやみ休暇 は、学校の夏休みや冬休みに教育委員会ぐるみで与えられる「研修」、「挨拶回り」、「レポート作成期間」等と称する自宅研修日、都民の日や開校記念日に各所属の学校長が世間の「常識」に従つて与えるやみ休暇があること、出勤簿上は右の研修とレポート作成期間は「研修」と表示し、挨拶回りと都民の日等は出勤しないのに出勤扱いで押印することになつていること等の記載があり、「措置要求(中野区の学校勤務の職員及び区長中野区教員委員会と事務局)」として、これらが根拠のないやみ休暇であるなら、一年前に遡つて給与の返還を求めるとともに区教委ぐるみのこの「犯罪」について区長を始め区としての厳正な処置を求める等の記載がされていることが認められ、これらの記載のみからすると、本件監査請求は、中野区の学校全部の事務職員の過去一年間分の自宅研修日等のやみ休暇を問題とするものと見え、そうだとすると、それぞれの事務職員がいつ何日間のやみ休暇等をとつたかが不明であつて、包括的で不特定にすぎるものということができる。 しかしながら、原本の存在と成立に争いがない甲第一三ないし第一七号証によれば、控訴人は、本件監査請求にあたり、夏休み期間中(七月二一日から八月三一日まで)九ないし一〇日を研修日とすること等が記載されている「『学校勤務職員』の夏季休業中の勤務について」と題する書面、昭和五九年八月四日及び七日に「職場の人間関係」なる講演を研修として聴講させ、その後右テーマについてのレポート作成期間(八ないし九日間)は職免扱いとするようにとの各小、中学校長宛の中野区教育委員会学校教育部長である被控訴人Cの「学校に勤務する区職員に対する研修の実施について」と題する書面、右研修受講日及びレポート作成期間は職免扱いとし、出勤簿には「研修」と表示するようにとの各小、中学校長宛の中野区教育委員会学務課長 の「学校に勤務する区職員に対する研修の実施について」と題する書面、右研修受講日及びレポート作成期間は職免扱いとし、出勤簿には「研修」と表示するようにとの各小、中学校長宛の中野区教育委員会学務課長である被控訴人Dの「区職員の研修について」と題する書面及び中野区のこれら「レポート研修」はやみ夏休みであるとして糾弾する新聞記事のほか、被控訴人Bを含む本件小学校の各職員について昭和五九年七月二一日から同年八月三一日までの間の出勤日、出勤しない理由ないし根拠(年休あるいは研修等)を日毎に記載した「昭和五九年度夏季休暇及び勤ム(務)表」を提出したことが認められ、また、前記甲第二〇号証によれば、控訴人は、「措置請求の補正について」なる書面に、実際には出勤しなかつた職員が出勤簿上出勤になつているのを、本件小学校に勤務している控訴人自身が見たこと、及び控訴人は被控訴人A(本件小学校校長)から、都民の日については自分が世間の常識に従つて与えたと聞いたことを記載して提出したことが認められる。これらの事実によれば、被控訴人Bに支給された給与のうち、昭和五九年の夏休み期間中の研修関係分(研修日及びその後に与えられるレポート作成期間)及び同年一〇月一日(この日が都民の日であることは、改めて特定するまでもない。)分として各支給された分については、本件監査請求は、特定性に欠けるところはないというべきである。 3 これに対し、右以外の部分については、右に認定したような具体的な記載は見当たらない。なお、昭和六〇年八月分の給与の支払いについては、本件監査請求は、過去一年分の違法給与の支払いによる損害の賠償等を求めて昭和六〇年八月五日に提起されたものであり、訴状添付の「返還請求内訳」によれば、同年の夏季休暇での最初の「欠勤日」は同年八月九日というのであるから、本件監査請求の 与の支払いによる損害の賠償等を求めて昭和六〇年八月五日に提起されたものであり、訴状添付の「返還請求内訳」によれば、同年の夏季休暇での最初の「欠勤日」は同年八月九日というのであるから、本件監査請求の対象になつていないことは明らかであつて、この点ですでに控訴人の訴えは不適法である。また、「挨拶回り」については、前記甲第二〇号証の記載により冬休み期間中であることは窺われるものの、具体的にいつを指すものであるかを明らかにする資料が全くないので、これについても、特定に欠けるものといわざるをえない(なお、「開校記念日」については、本訴で請求していない。)。 4 被控訴人らは、控訴人において給与支出行為を問題とするのであれば、誰のどの支出行為を監査の請求の対象にしているかを明らかにすべきであるのに、これが明らかでないと主張するが、専門家ではない一住民に対して監査委員に住民監査請求をする権能を与えている地方自治法の趣旨、及び支出命令権者を特定することは部外者にとつてはしばしば非常に困難である(法律に詳しい者にとつてすら、難解である。)ことを考えると、本件監査請求の対象とされる行為が特定されている以上は、支出行為者を特定して挙げていないからといつて、これが不適法であるとするのは相当ではないものというべきである。また、返還を求める金額を明示していないのは控訴人ら主張のとおりであるが、これは、日数さえ特定されれば、被控訴人Bの給与から算出されるものであり、監査委員が右給与を確定することは容易なことであるから、これをもつて、本件監査請求の対象が不特定であるとするのもまた相当ではない。 その他、被控訴人らは本件監査請求が特定性に欠ける理由を種々主張するが、被控訴人Bに対する昭和五九年八月の研修関係分及び一〇月一日の給与の支払い分(以下これらを併せて「昭和五九年 た相当ではない。 その他、被控訴人らは本件監査請求が特定性に欠ける理由を種々主張するが、被控訴人Bに対する昭和五九年八月の研修関係分及び一〇月一日の給与の支払い分(以下これらを併せて「昭和五九年の支払い分」という。 なお、前記説示のとおり、同年一二月二七日分〔挨拶回り分〕は含まれない。)については特定していると解すべきことは2に説示したとおりである。 5 以上説示したとおり、本件監査請求は、昭和五九年支払い分に関しては具体的に特定されていたものというべきであるから、中野区監査委員はこの部分について監査すべきであつたというべきである。なお、念のため次の点を付け加えておく。 前記のとおり、本件監査請求書においては、中野区の学校勤務職員の受けた研修関係日等にかかる給与全体を監査請求の対象としているかのように読めないでもないが、控訴人が提出した添付書類を斟酌すると、被控訴人Bの昭和五九年の支払い分については具体的に特定されており、しかもこれは他と区別して監査しうるものであるから、監査委員会はこの部分につき監査を実施すべきであつたのであり、仮に一部のみ監査することが控訴人の請求の趣旨に合致するかに疑問を持つたのであれば、控訴人にその旨を確かめれば足りたはずである。ところが、成立に争いがない甲第一九、第二一号証によれば、中野区監査委員は、控訴人に対し、本件監査請求には、事実を証する書面の添付(地方自治法二四二条一項)がないので補正するようにと通知を出したのみで請求の特定性には全く触れず、控訴人の意図を確かめることもしないまま、事実を証する書面の添付がないこと等を理由として本件監査請求を不適法として却下したものであることが認められる(少なくとも昭和五九年支払い分については、事実を証する書面があることは前記認定から明らかである。)から、控訴人は、昭和五 等を理由として本件監査請求を不適法として却下したものであることが認められる(少なくとも昭和五九年支払い分については、事実を証する書面があることは前記認定から明らかである。)から、控訴人は、昭和五九年支払い分については、監査委員において適法な監査請求につき期限内に監査しなかつたものとして本件訴えを提起することができるものというべきである。 三以上の次第で、本件訴えのうち、昭和五九年支払い分に関する部分については、その監査請求が特定に欠け不適法であるとはいえないが、その余の部分については適法な監査請求を経ていない不適法な訴えというべきである。 よつて、原判決のうち、昭和五九年支払い分に関する部分について監査請求が特定性に欠け不適法であることを理由に訴えを却下した部分は不当であるから、これを取り消し、原判決は、その余の争点については全く判断をしていないので、民訴法三八八条にしたがつてこれを原裁判所に差し戻すこととし、原判決のうち本件訴えのその余の部分を却下した部分は相当であるから、この部分に対する本件控訴を棄却することとし、後者の部分についての控訴費用について同法九五条、八九条を適用して控訴人の負担とすることとして、主文のとおり判決する。 (裁判官上谷清滿田明彦高須要子)(原裁判等の表示)○ 主文一本件訴えを却下する。 二訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 中野区に対し、被告Eは、金七万八四二六円及びこれに対する昭和六〇年一〇月一八日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を、被告F、同G及び同Hは、各金二万六一四二円ずつ及びこれに対するいずれも昭和六〇年一〇月一八日から支払済みに至るまで各年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。 2 中野区に対し、被告I、同C、同D、同A 、同G及び同Hは、各金二万六一四二円ずつ及びこれに対するいずれも昭和六〇年一〇月一八日から支払済みに至るまで各年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。 2 中野区に対し、被告I、同C、同D、同A及び同Bは、各自金一五万六八五二円及びこれに対する被告Cについては昭和六〇年一〇月一八日から、その他の各被告についてはいずれも同年一〇月一七日から、各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。 3 中野区に対し、被告Jは、金一〇万四〇〇円及びこれに対する昭和六〇年一〇月一七日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 二請求の趣旨に対する答弁 1 本案前の答弁主文同旨 2 本案に対する答弁(一) 原告の請求をいずれも棄却する。 (二) 訴訟費用は原告の負担とする。 第二当事者の主張一原告の請求原因 1 原告は中野区の住民であり、亡Kは昭和五四年度以降中野区長の職に、被告Iは同年度以降中野区教育委員会教育長の職に、同Cは同五八年度以降同委員会学校教育部長の職に、同Dは同年度以降同委員会学務課長の職に、同Aは同五九年度以降中野区立中野昭和小学校長の職に、同Jは同五八年度以降同六〇年三月まで同校教頭の職に、同Bは同五七年度以降同校事務職員の職に、それぞれあつたものである。 2 (一)被告Bは、昭和五九年八月一〇日、一三日、一七日、二〇日、二二日及び二七日の計六日間(いずれも平日であるので一日七時間五五分勤務)並びに同月一一日及び一八日の二日間(いずれも土曜日であるので一日四時間二五分勤務)、いずれも実際は勤務しなかつたのに、勤務をしたものとして中野区から給与の支払(六万九六〇八円分相当)を受けた。 (二) また、被告Bは、昭和五九年一〇月一日、一二月二七日及び同六〇年一月四日の計三日間(い も実際は勤務しなかつたのに、勤務をしたものとして中野区から給与の支払(六万九六〇八円分相当)を受けた。 (二) また、被告Bは、昭和五九年一〇月一日、一二月二七日及び同六〇年一月四日の計三日間(いずれも平日であるので一日七時間五五分勤務)、いずれも実際は勤務しなかつたのに、勤務をしたものとして中野区から給与の支払(三万七九二円分相当)を受けた。 (三) 更に、被告Bは、昭和六〇年八月一二日、一四日、一六日及び一九日の四日間(いずれも平日であるので一日七時間五五分勤務)、同月一〇日(土曜日であるので四時間二五分勤務)並びに同月九日、二二日及び二三日の各午後の四時間、いずれも実際は勤務しなかつたのに、勤務をしたものとして中野区から給与の支払(五万六四五二円分相当)を受けた。 3 Kは、中野区長として、学校の事務職員には法律上認められていない自宅研修日を認め、また出勤しなかつた日を出勤扱いとする違法な制度をそのまま認め、被告Bに対して右のとおり本来支給してはならない給与を違法に支給し、中野区に右給与額に相当する損害を与えた。 被告I、同C及び同Dはいずれも中野区教育委員会の職員として、また被告A及び同Jは中野昭和小学校の校長あるいは教頭として、本件のような給与の支給が違法なものであることを知りながら、Kの右の違法な給与の支給に関し、積極的にこれに加担し、あるいはこれを黙認放置してきた(ただし、被告Jについては、前記2の(一)及び(二)の昭和五九年度分の給与の支給行為に限る。)ものであり、共同不法行為者として、中野区に対して右損害の賠償義務を負う者である。 被告Bは、自ら違法であることを知りながら、Kから右給与の支給を受けていたものであり、同じく中野区に対して右損害の賠償義務を負う者である。 4 原告は、昭和六〇年八月五日、中野区監査委員に対して右 。 被告Bは、自ら違法であることを知りながら、Kから右給与の支給を受けていたものであり、同じく中野区に対して右損害の賠償義務を負う者である。 4 原告は、昭和六〇年八月五日、中野区監査委員に対して右の給与の違法支給による損害を回復するための是正措置を求める監査請求を行つたが、同年九月一三日、右監査請求は却下された。 5 Kは昭和六一年四月二三日に死亡し、その妻である被告E並びにいずれもその子である被告F、同G及び同Hが、それぞれ法定相続分に従つてKの中野区に対する前記損害賠償債務を相続した。 6 よつて、原告は、地方自治法二四二条の二第一項の規定により、中野区に代位して、被告らに対し右各損害の賠償とその賠償金に対する本件訴状送達日以降完済に至るまでの間の民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。 二被告の本案前の主張 1 本件について原告が行つた監査請求では、中野区長及び中野区教育委員会教育長の職にある者がその監査請求の対象となる行為の行為者として掲げられているかには読み取れるものの、それ以外の被告C、同D、同A、同J及び同Bはその行為者として摘示されていない。したがつて、これらの被告に対する本件訴えは、監査請求前置の要件を欠く不適法なものである。 2 また、右の監査請求は、申立てに必要な事実の証明に関する資料が添付されておらず、あるいは本来監査請求の対象にならない研修という人事管理上の事項をその対象としていることを理由に、不適法として却下されている。そうすると、本件では、右監査請求に係る事実について監査委員の手による監査が行われていないこととなるから、この点からしても、本件訴えは、監査請求前置の要件を欠く不適法なものというべきである。 3 更に、右の監査請求は、中野区学校勤務職員の過去一年間にわたる給与に係る公金の支出を対象 いこととなるから、この点からしても、本件訴えは、監査請求前置の要件を欠く不適法なものというべきである。 3 更に、右の監査請求は、中野区学校勤務職員の過去一年間にわたる給与に係る公金の支出を対象とするものであるから、その公金の支出は、膨大な回数にのぼるものであるにもかかわらず、その監査請求書には、極めて抽象的な記載しかなく、また、これに添付されている事実を証する書面も不十分なものである。したがつて、右監査請求は、研修というような制度それ自体の違法又は不当性を指摘しているものに過ぎず、各公金の支出を他の支出と区別して特定認識し得る程度に個別的、具体的に指摘しているとは到底認められないから、請求の特定を欠く不適法な請求というべきである。そうすると、右監査請求を却下した中野区監査委員の措置は適法であり、本件訴えは、監査請求前置の要件を欠く不適法なものである。 三請求原因に対する被告の認否及び反論 1 請求原因1の事実は認める。 2 同2及び3の各事実は否認する。 中野区教育委員会は、その管理する区立小、中学校に配属されている学校職員について、小、中学校の夏期休業期間中はその本来的業務が極端に減少することから、この期間中に、講師の講演を聞いたうえで八日から九日間をかけてレポートを作成、提出させるという内容の研修を行つている。原告がその請求原因2の(一)及び(三)で被告Bが勤務しなかつたと主張する日は、いずれも被告Bが右の勤務場所を離れて行う研修に参加していたものである。 また、原告がその請求原因2の(二)で被告Bが勤務しなかつたと主張する昭和五九年一〇月一日は、東京都条例によつて「都民の日」と定められている日であつて区立学校の休業日とされている。この都民の日には、児童、生徒は登校せず、教員、学校職員も勤務しないのが通例となつている。また、同年一 月一日は、東京都条例によつて「都民の日」と定められている日であつて区立学校の休業日とされている。この都民の日には、児童、生徒は登校せず、教員、学校職員も勤務しないのが通例となつている。また、同年一二月二七日及び同六〇年一月四日については、中野区教育委員会では、学校職員がこれらの日を教育委員会事務局など職務上関係のある部局等への挨拶回りの日として利用することを認めてきている。したがつて、当日学校職員が勤務先の学校で勤務しなかつたからといつて、これを欠勤とみるのは当を得ないものである。 3 同4の事実は認める。 第三証拠(省略)○ 理由一まず、本件について原告の行つた監査請求の内容をみると、本件の監査請求書(甲一)及びその補正書(甲二〇)には、その監査請求の対象に関して、次のような内容の記載がなされている。 すなわち、「中野区の学校勤務の職員には、学校の夏休みや都民の日等に、『研修』、『挨拶回り』、『自宅研修日』等と称するやみ休暇があるので、これがもし法的根拠のない『やみ休暇』であるなら、一年前にさかのぼつて給与の返還を求める等の厳正な措置を求める。」というものである。 もつとも、右監査請求書に添付して提出された資料(甲一四、同一五)によれば、原告は、より具体的に、中野区教育委員会が昭和五九年八月に、学校職員を対象として、講師の講演を受講させたうえで八日から九日間をかけてレポートを作成させ、その期間を「職免」扱いとする形の研修を行つていることを、その監査請求における問題点として指摘していることがうかがえないでもない。しかしながら、右の各資料を総合しても、原告が右監査請求において、具体的に中野区のどの職員が行つたどのような行為を財務会計上の違法行為ととらえて、その是正等の措置を求めようとするものであるかは、なお明らかなものとはいえない。 総合しても、原告が右監査請求において、具体的に中野区のどの職員が行つたどのような行為を財務会計上の違法行為ととらえて、その是正等の措置を求めようとするものであるかは、なお明らかなものとはいえない。 二ところで、地方自治法二四二条一項は、住民に対し、地方公共団体の執行機関又は職員による一定の具体的な財務会計上の行為又は怠る事実に限つて、その監査と非違の防止、是正の措置とを監査委員に請求する権能を認めたものであつて、それ以上に、一定の期間にわたる行為等を包括して、これを具体的に特定することなく、監査委員に監査を求める等の権能までを認めたものではないと解するのが相当である。 したがつて、住民監査請求においては、監査請求の対象とする行為を他の事項から区別して特定認識できるように個別的、具体的に摘示することを要するものというべきであり、監査請求の対象が右の程度に具体的に摘示されていないと認められるときは、当該監査請求は、請求の特定を欠くものとして不適法となるものと考えられる。 これを本件についてみると、前記のような監査請求書等の記載からは、監査請求の対象となる行為の具体的な行為者はもちろん、その行為の内容や日時等も特定されているものといえないことは明らかである。そうすると、本件監査請求は、請求の特定を欠く不適法なものとせざるを得ない。 三したがつて、本件訴えは、適法な住民監査請求手続を経ていないこととなるから、その余の点について判断するまでもなく、不適法な訴えとして却下を免れないものというべきである。よつて、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 主文 事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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