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主文 本件控訴を棄却する。当審の訴訟費用は被告人の負担とする。理由 本件控訴趣意は記録にある弁護人谷口義弘作成の控訴趣意書記載のとおりであるからこれを引用する。所論は(一)窃取とは財物の支配者が知らない間にその支配を排除して、その財物を自己の支配内に移すことをいうのであるが被告人は判示有限会社AB工場内の事務所に居合わせた者に搬出することを告知して、右工場から公然と判示電動機等を自己の支配内に移し搬出したのであつて、窃取したのではない。(二)窃盗罪の故意には、犯罪構成要件たる事実の認識の外不法領得の意思を要するが、被告人は判示電動機等が判示Cの所有であることを知らず、右会社の所有であると信じ、同会社に対する債権について弁済期に弁済しないときはいかなる処置を取られても何ら異議を申さない旨の判示会社の責任者Dよりの特約に基き、判示物件を取りはずし搬出したのであつて、不法領得の意思によつたのではない。(三)しからずとするも、被告人の右搬出は自己の債権確保のための自救行為としてなされたもので違法性はない。しかるに原判決が右所為が窃盗罪を構成するとし、且つ自救行為であるという被告人及び弁護人の主張に対し、右物件はCの所有に属し、被告人はこれを知りながらあえて搬出したのであるから、右搬出は右会社に対する債権確保のための自救行為として許さるべきものではないとしたのは、事実を誤認し且つ法令の適用を誤つたものであるという趣旨である。よつて判断すると、一、 窃盗罪は他人の占有する財物を、占有者の意思に反し、自己又は第三者の占有に移すことによつて成立しその占有の移転が公然に行われると、隠秘に行われるとを問わないのであり、この趣旨は最高裁判所の判例の示すところである。(昭和三二年九月五日第一 思に反し、自己又は第三者の占有に移すことによつて成立しその占有の移転が公然に行われると、隠秘に行われるとを問わないのであり、この趣旨は最高裁判所の判例の示すところである。 は他人の占有する財物を、占有者の意思に反し、自己又は第三者の占有に移すことによつて成立しその占有の移転が公然に行われると、隠秘に行われるとを問わないのであり、この趣旨は最高裁判所の判例の示すところである。(昭和三二年九月五日第一 思に反し、自己又は第三者の占有に移すことによつて成立しその占有の移転が公然に行われると、隠秘に行われるとを問わないのであり、この趣旨は最高裁判所の判例の示すところである。(昭和三二年九月五日第一小法廷決定、集第二巻第九号二一四三頁参照)原判決挙示の証拠に、当審における受命裁判官のFに対する証人尋問調書を総合すると、判示電動機五台、グラインダー一台及び横切用金具は、Cの所有に属し、同人からDに貸与され、それを同人が実質上経営する有限会社A(代表取締役E)が判示工場において占有使用していたもので、昭和三二年一〇月頃同会社が経営不振に陥り、営業停止の状態となり、右工場に居住する工員Fが事実上保管していたところ、被告人は判示の昭和三三年二月二一日頃、右工場に赴き、判示機械類の取りはずしにがかつたので、F夫妻、工員Gらが、右機械類はCの物であるといつて持ち去ることを制止したのに、これを無視して顧みないので、Fが付近交番にそのことを申告に行つている間にこれらを取りはずし、持つて行つた三輪自動車に積み込み、帰来した同人が抗議すると「お前らには迷惑をかけない」と言つて持ち去つたことが明らかである。これによると被告人はFの占有保管にかかる判示物件を、その意思に反し、右三輪自動車に積み込むことによつて、自己の占有に移したことが明らかであつて、これが窃取に当ることはいうまでもない。二、 窃盗罪の成立するには、不法領得の意思の存在が必要であることは所論のとおりである。そしてその意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであることは最高裁判所の判例とするところである。(昭和二六年七月一三日第二小法廷判決、集五巻一四三七頁参照)原判決挙示の証拠にDから被告人(H名義)に対する証写(弁第三 し又は処分する意思をいうのであることは最高裁判所の判例とするところである。(昭和二六年七月一三日第二小法廷判決、集五巻一四三七頁参照)原判決挙示の証拠にDから被告人(H名義)に対する証写(弁第三号)、被告人(同上名義)からE宛内容証明郵便写(弁第四号証)押収されている有限会社Aから被告人(同上名義)宛の通知書、被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書並びに当審における前記Fに対する証人尋問調書を総合すると、被告人は有限会社Aに対し、昭和三三年二月一五日に限り支払いを受くべき金七〇、〇〇〇円の債権を有し、前記Dは被告人に対し「右期日に支払わないときは、いかなる処置を取られるとも異存がない」旨を記載した書面を作成交付し、同月中旬に内金二〇、〇〇〇円を支払つたのみで、同月一七日急死し、右会社は解散し、Eが、清算人となつたが、工員の給料支払いに窮し、右工場に存する右会社所有の機械類が売却されるような状況であり、被告人は、これを買受けたと称する者が取りはずしにかかつているのを目撃して、放置すると自己の債権回収が不能になると考え、判示同月二一日右五〇、〇〇〇円の債権確保のための緊急手段として、判示機械類を前記のごとく自己の支配内に移し、これを肩書住居に持ち運び、同年三月一五日付をもつてEに対し、同月一九日までに右五〇〇〇〇円を支払うべく、もし右期日までに支払いがないときは、右物件を処分する旨を通告したこと、Aからは同月一八日右物件がCの所有であるという通知があつたが、被告人は同月二三日これを四五、〇〇〇円<要旨>で売却処分したことが認められる。 〇〇〇円の債権確保のための緊急手段として、判示機械類を前記のごとく自己の支配内に移し、これを肩書住居に持ち運び、同年三月一五日付をもつてEに対し、同月一九日までに右五〇〇〇〇円を支払うべく、もし右期日までに支払いがないときは、右物件を処分する旨を通告したこと、Aからは同月一八日右物件がCの所有であるという通知があつたが、被告人は同月二三日これを四五、〇〇〇円<要旨>で売却処分したことが認められる。以上によると被告人は、一定の時期までに自己の債権に対する弁済があれ</要旨>ば右物件を返還すべく、弁済がないときはこれを自己のために売却する意思を有していたのであり、従つてたとえ弁済があれば返還する によると被告人は、一定の時期までに自己の債権に対する弁済があれ</要旨>ば右物件を返還すべく、弁済がないときはこれを自己のために売却する意思を有していたのであり、従つてたとえ弁済があれば返還する意思があつたとしても、右物件の経済的価値を排他的に自己に収得する意思を有していたことを否定し得ないということができ、すなわち不法領得の意思があつたという外はない。ところで前記「三月一五日まで支払わないときは、いかなる処置を取られても異存がない」旨の文言は、この種の用語が一般社会における取引上、抽象的に債務の履行の確実性を保証し、万一不履行のときは、いかなる法的手段に訴えられてもやむをえないという趣旨に使用されることは経験則上明らかであり、記録を調べても右文言が判示物件を前記債務の担保又は代物弁済として引渡すとか又はそれらの趣旨で任意引き上げられるのもやむをえないとして、これを承諾したとかの具体性を有していたとすべき根拠はなく、それは一般的用語の趣旨で使用されたと認められる。そして記録によると、被告人は判示物件を取りはずして搬出する際にはそれがCのものであるという、Fらの言を信ぜず、右会社のものであると信じていたと認めるのを相当とするが、そのいずれにせよ、被告人が判示物件を自己の支配内に移したのは、所論のように右会社又はDの承諾の上とは認めることができないし、被告人が当時右承諾を得たと信じていたとすることはできない。又たとえ被告人とDとの間に右債権担保又は代物弁済の趣旨で判示物件を引渡すべき旨の特約が結ばれていたとしても、その一事をもつて本件占有侵奪が窃盗罪を構成しないとするには足りない。 あると信じていたと認めるのを相当とするが、そのいずれにせよ、被告人が判示物件を自己の支配内に移したのは、所論のように右会社又はDの承諾の上とは認めることができないし、被告人が当時右承諾を得たと信じていたとすることはできない。又たとえ被告人とDとの間に右債権担保又は代物弁済の趣旨で判示物件を引渡すべき旨の特約が結ばれていたとしても、その一事をもつて本件占有侵奪が窃盗罪を構成しないとするには足りない。(最高裁判所昭和三一年(あ)第三九八一号同三五年四月二六日第三小法廷判決参照)三、 次に被告人が判示物件を自己の支配内に移したのは、放置すると右会社に が窃盗罪を構成しないとするには足りない。(最高裁判所昭和三一年(あ)第三九八一号同三五年四月二六日第三小法廷判決参照)三、 次に被告人が判示物件を自己の支配内に移したのは、放置すると右会社に対する五〇〇〇〇円の債権の回収が不能となるおそれがあると判断したので、右債権を緊急的に確保するためであつたことは前記のとおりであるが、かかる場合法治国民としては法律の定める手続によつてその債権保全を計るべく、いわゆる自救行為としてみずから実力をもつて自己の債権保全を計りよつて他人の権利を侵害することは、法の許容するところではないと解するのを相当とする。そしてこのことは、Dの前記書面によつて、判示物件を前記債権の担保又は代物弁済として引渡すべき旨の特約が、右会社と被告人との間に成立したと否とによつて異にすることはないと解すべきである。従つて原判決が本件物件を自救行為と認めなかつたのは結局正当である。四、 以上要するに、その挙示の証拠により判示窃盗の事実を認め、これに対し刑法第二三五条を適用した原判決には所論のような事実誤認も法令適用の誤りもないということができるから、論旨は理由がないので、刑事訴訟法第三九六条、第一八一条により主文のとおり判決をする。(裁判長裁判官小川武夫裁判官瞿曇・・裁判官柳田俊雄)
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