【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告人の上告理由について。 原審は、上告人が、訴外D建設株式会社において代金
主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告人の上告理由について。 原審は、上告人が、訴外D建設株式会社において代金を支払う資力がないもので ある事情を知りながら、Eをして被上告人から本件パネルを買い受けさせ、被上告 人にその代金相当額の損害を与えた旨を認定しているのであつて、この点の認定判 断は、原判決挙示の証拠に照らして肯認することができないものではない。そして、 原審の確定した事実関係のもとにおいて、上告人が被上告人に対し不法行為による 損害賠償責任を負うものであるとした原審の判断は、正当として是認することがで きる。原審の認定判断に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の専権に属 する証拠の取捨判断および事実の認定を非難するか、または、原判決を正解しない で誤つた前提に立脚してその違法をいうものであつて、採用することができない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官岩田誠の意見があるほ か、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 裁判官岩田誠の意見は、次のとおりである。 株式会社の取締役がその職務を行なうにつき第三者に損害を与えた場合に、右取 締役が、直接第三者に対する関係において悪意または重大な過失があり、かつ、第 三者にいわゆる直接損害を与えたものであるときは、その取締役は、商法二六六条 ノ三第一項の規定に基づき、右第三者に対し損害賠償の責に任ずべきであり、右規 定に基づく責任のほか、民法七〇九条の規定に基づく一般の不法行為責任を負うも のではないと解すべきである。その理由は、最高裁昭和三九年(オ)第一一七五号 同四四年一一月二六日大法廷判決・民集二三巻一一号二一八二頁以下に示した私の - 1 - 意見のとおりである。 本件において、原審の確定した べきである。その理由は、最高裁昭和三九年(オ)第一一七五号 同四四年一一月二六日大法廷判決・民集二三巻一一号二一八二頁以下に示した私の - 1 - 意見のとおりである。 本件において、原審の確定したところによれば、上告人は、訴外D建設株式会社 の代表取締役であるところ、同会社において代金を支払う資力がないものである事 情を知りながら、訴外Eをして同会社のために被上告人から建築工事用パネルを買 い受けさせ、被上告人にその代金額八二万二四〇〇円相当の損害を与えたというの であつて、上告人は、右会社のためその職務を行なうにつき、故意により第三者で ある被上告人に損害を与えたものにほかならないと解される。したがつて、右事実 関係のもとにおいて、民法七〇九条の規定を適用し、上告人が被上告人に右損害を 賠償すべき責任を負うものであるとして、被上告人の請求の一部を認容した原審の 判断には、右各規定の解釈適用を誤つた違法があるといわなければならない。 しかし、原審の確定した右事実関係によれば、直接被上告人に対する関係におい て上告人に悪意が存在し、被上告人の被つた損害はいわゆる直接損害にあたること が明らかであり、被上告人が上告人に対し本訴請求の原因として主張するところは 正に、商法二六六条ノ三第一項の規定に基づく、損害賠償請求権の成立要件を充た す事実である。したがつて、被上告人の本訴請求に対しては、不法行為責任に関す る特則である右規定を適用してこれを認容することも、妨げられないものというべ きである。したがつて、右損害の残額七二万二四〇〇円およびこれに対する訴状送 達の日の翌日以降年五分の割合による遅延損害金の支払を命じた原判決の結論は、 右の趣旨により正当とすることができるから、本件上告を棄却するのが相当である。 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 五分の割合による遅延損害金の支払を命じた原判決の結論は、 右の趣旨により正当とすることができるから、本件上告を棄却するのが相当である。 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 岩 田 誠 裁判官 大 隅 健 一 郎 裁判官 藤 林 益 三 裁判官 下 田 武 三 - 2 - 裁判官 岸 盛 一 - 3 -
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