平成27(ワ)11753 顧客情報の使用差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年3月15日 大阪地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-87802.txt

キーワード

判決文本文48,294 文字)

平成30年3月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第11753号顧客情報の使用差止等請求事件口頭弁論終結日平成29年12月26日判決原告株式会社アトレータ 同訴訟代理人弁護士小池康弘同安尾明裕被告 P1被告旭電機化成株式会社上記両名訴訟代理人弁護士森本純 主文 1 被告P1は,別紙「取引先情報目録」別紙①の番号82及び207記載の者に関する同別紙①記載の情報を,営業活動に使用し,又は第三者に開示・使用させてはならない。 2 被告旭電機化成株式会社は,別紙「取引先情報目録」別紙①の番号20 7記載の者に関する同別紙①記載の情報を,営業活動に使用し,又は第三者に開示・使用させてはならない。 3 被告P1は,原告に対し,被告旭電機化成株式会社と第4項の限度で連帯して,70万1250円及びこれに対する平成30年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告旭電機化成株式会社は,原告に対し,被告P1と連帯して,28万5050円及びこれに対する平成30年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,原告に生じた費用の8分の7,被告P1に生じた費用の8 分の7及び被告旭電機化成株式会社に生じた費用の20分の19を原告の負担とし, 原告に生じた費用の8分の1及び被告P1に生じた費用の8分の1を被告P1の負担(ただし,原告に生じた費用の20分の1については被告 機化成株式会社に生じた費用の20分の19を原告の負担とし, 原告に生じた費用の8分の1及び被告P1に生じた費用の8分の1を被告P1の負担(ただし,原告に生じた費用の20分の1については被告旭電機化成株式会社との連帯負担)とし,原告に生じた費用の20分の1及び被告旭電機化成株式会社に生じた費用の20分の1を被告旭電機化成株式会社の負担(ただし,原告に生じた費用の20分の1については被告P1との連帯負担)とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,別紙「取引先情報目録」別紙①ないし③記載の情報を,営業活動に使用し,又は第三者に開示・使用させてはならない。 2 被告らは,別紙「取引先情報目録」別紙①に記載の者並びに同別紙②及び③ の「(顧客が卸・販売店などの場合)顧客の販売先など」欄に記載の者に対し,自ら又は第三者をして,面会を求め,電話をし,郵便物を送付し又は電子メールを送信するなどして,採尿器具に関する売買契約の締結,同契約の締結の勧誘又はこれらに付随する営業活動をしてはならない。 3 被告らは,採尿器具に関する売買契約の締結をしようとして,被告P1又は 被告旭電機化成株式会社に対し,面会を求めてきたり,電話連絡をしてきたり,又は,電子メールを送信してきたりした別紙「取引先情報目録」別紙①に記載の者並びに同別紙②及び③の「(顧客が卸・販売店などの場合)顧客の販売先など」欄に記載の者に対し,採尿器具に関する売買契約の締結,同契約の締結の勧誘又はこれらに付随する営業活動をしてはならない。 4 被告らは,別紙「取引先情報目録」別紙①ないし③記載の情報が記載されたコンピュータファイルが保存されたフロッピーディスクやハードディスクなどの磁気記録媒体及びこれらを印字した紙媒体を廃棄せよ。 5 被告旭 ,別紙「取引先情報目録」別紙①ないし③記載の情報が記載されたコンピュータファイルが保存されたフロッピーディスクやハードディスクなどの磁気記録媒体及びこれらを印字した紙媒体を廃棄せよ。 5 被告旭電機化成株式会社は,文書または口頭で,「ハルンキットはピー・ポールⅡの改良版である」とか「原告の製造販売する採尿用具(ピー・ポールⅡ)が 生産中止になった」旨告知したり,流布したりしてはならない。 6 被告らは,原告に対し,連帯して440万円及び平成30年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 請求の要旨本件は,採尿器具を販売している会社である原告が,原告の元代表取締役である 被告P1(以下「被告P1」という。)及び被告P1が関与して採尿器具の販売を始めた被告旭電機化成株式会社(以下「被告旭電機化成」という。)に対し,以下の請求をする事案である。 (1) 営業の差止請求(以下,下記各請求を総称して「本件請求1」ということがある。) ア被告P1に対し,被告P1が,①原告との間における平成25年7月31日付けの合意による競業避止義務又は②退任取締役に信義則上求められる競業避止義務に違反して原告の顧客等に対する営業活動を行ったとして,上記競業避止義務違反に基づく営業自体の差止め(第1の2項及び3項)を請求する。 イ被告旭電機化成に対し,被告P1が上記競業避止義務を負っていること を知りながら被告P1の指導等に基づいて原告の顧客等に対する営業活動を行ったとして,営業権の侵害に基づく営業自体の差止め(第1の2項及び3項)を請求する。 (2) 営業秘密の使用差止請求及び廃棄請求(以下,下記各請求を総称して「本件請求2」ということがある。) ア被告P1に 侵害に基づく営業自体の差止め(第1の2項及び3項)を請求する。 (2) 営業秘密の使用差止請求及び廃棄請求(以下,下記各請求を総称して「本件請求2」ということがある。) ア被告P1に対し,被告P1が,①原告の営業秘密である顧客情報を被告旭電機化成に不正開示又は不正使用し(不正競争防止法2条1項7号),②原告との間における平成25年7月31日付けの合意による守秘義務に違反し,又は③退任取締役に信義則上求められる守秘義務に違反して,顧客情報を使用する形で原告の顧客等に対する営業活動を行ったとして,不正競争防止法3条1項及び2項,上 記守秘義務に基づく営業秘密の使用の差止め及び廃棄(第1の1項及び4項)を請 求する。 イ被告旭電機化成に対し,被告P1から不正開示を受けて取得した顧客情報を使用して原告の顧客等に対する営業活動を行った(不正競争防止法2条1項8号,9号)として,不正競争防止法3条1項及び2項に基づく営業秘密の使用の差止め及び廃棄(第1の1項及び4項)を請求する。 (3) 営業誹謗の差止請求(以下,下記請求を「本件請求3」ということがある。)被告旭電機化成に対し,原告が取り扱っていた採尿器具に関して虚偽の事実を原告の顧客等に告知したとして(不正競争防止法2条1項15号),不正競争防止法3条1項に基づく営業誹謗の差止め(第1の5項)を請求する。 (4) 損害賠償請求(以下,下記各請求を総称して「本件請求4」ということがある。)ア被告P1に対し,①上記(1)ア記載の競業避止義務違反,②上記(2)ア記載の営業秘密の不正開示・不正使用に係る不正競争防止法違反又は守秘義務違反,③上記(3)記載の営業誹謗に係る不正競争防止法違反又は同虚偽告知に係る一般不 法行為,④原告の取引先に類 (2)ア記載の営業秘密の不正開示・不正使用に係る不正競争防止法違反又は守秘義務違反,③上記(3)記載の営業誹謗に係る不正競争防止法違反又は同虚偽告知に係る一般不 法行為,④原告の取引先に類似競合商品取扱避止義務違反行為をさせたという債権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求(被告旭電機化成と連帯して損害金440万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成30年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求,第1の6項)をする。 イ被告旭電機化成に対し,①上記(1)イ記載の被告P1の競業避止義務違 反行為に係る営業権侵害の不法行為,②上記(2)イ記載の営業秘密の不正使用に係る不正競争防止法違反又は被告P1の守秘義務違反を利用して営業したことに係る一般不法行為,③上記(3)記載の営業誹謗に係る不正競争防止法違反又は同虚偽告知に係る一般不法行為,④被告P1が原告の取引先に類似競合商品取扱避止義務違反行為をさせたという債権侵害の不法行為の使用者責任に基づく損害賠償請求(被 告P1と連帯して損害金440万円及びこれに対する平成30年1月1日から支払 済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求,第1の6項)をする。 2 前提事実(1) 原告と被告P1の関係(争いのない事実,甲5の各号,弁論の全趣旨)原告は,採尿器具を開発,製造,販売する株式会社である。原告は,採尿器具に 係る特許権を有し,その実施品として,排出した尿をスティック状の容器に直接当てるという形で尿を採取するタイプの採尿器具であるピー・ポールⅡという商品名の採尿器具を販売していたが,同特許権は平成26年9月に存続期間満了により消滅した。被告P1は,製薬会社を退社した後,原告の設立当初からその代表取締役 イプの採尿器具であるピー・ポールⅡという商品名の採尿器具を販売していたが,同特許権は平成26年9月に存続期間満了により消滅した。被告P1は,製薬会社を退社した後,原告の設立当初からその代表取締役の地位にあったが,平成25年2月の株主総会で退任した。 原告は,被告P1が代表取締役を退任するまでの時点において,顧客名簿に相当する別紙「取引先情報目録」別紙①記載の情報(以下「原告の顧客名簿」という。)及び各顧客の購入履歴に関する同別紙②及び③記載の情報(以下「原告の顧客履歴」といい,原告の顧客名簿と併せて,それらに係る情報を「原告の顧客情報」という。)を保有していた。 (2) 被告P1が原告に差し入れた誓約書(甲1,以下「本件誓約書」という。)被告P1は,平成25年7月31日,原告に対し,「私は,貴社から退職慰労金を受領するにあたり,貴社に対し,以下の点をお約束致します。」との記載が前文にある本件誓約書を差し入れた。本件誓約書の1項及び2項には,以下のとおりの 規定がある。 1項退職慰労金は,私が貴社の社長として,設立から今日に至るまでの間,貴社の発展に尽力してきたことの対価として,受領致します。 従って,貴社の現在及び将来の営業活動を妨げる虞のある行為はもちろんのこと,貴社の将来の発展を妨げる虞のある行為は致しません。ただし事前に貴社より文書 にて合意を取得している場合はその限りではありません。 2項私が在任中に取得した貴社に関する情報は全てこれを秘密として取扱い,これを他に漏洩しません。また,いかなる方法で開示を受けたかにかかわらず,秘密として管理される知識,ノウハウ及びその他の情報に関しても同様に,これを他に漏洩しません。ただし事前に貴社より文書にて合意を取得している場合はその限 ,いかなる方法で開示を受けたかにかかわらず,秘密として管理される知識,ノウハウ及びその他の情報に関しても同様に,これを他に漏洩しません。ただし事前に貴社より文書にて合意を取得している場合はその限りではありません。 (3) 被告旭電機化成と被告P1の関係(争いのない事実,弁論の全趣旨)被告旭電機化成は,採尿器具を製造,販売する株式会社であり,平成26年10月又は同年11月頃から,排出した尿をスティック状の容器に直接当てるという形で尿を採取するタイプのハルンキットという商品名の採尿器具を販売している。被告旭電機化成の営業先には,原告の従前の顧客等が含まれていた。被告P1は,被 告旭電機化成の採尿器具の営業活動に関わっていた。 3 争点(1) 競業避止義務違反の有無(本件請求1及び4に関して,争点1)(2) 原告の顧客情報の開示・使用に関する争点ア営業秘密に係る不正競争行為の有無(本件請求2及び4に関して) (ア) 原告の顧客情報の営業秘密該当性の有無(争点2)(イ) 不正開示行為及び不正使用行為の有無(争点3)イ守秘義務違反の有無(本件請求2及び4に関して,争点4)(3) 営業誹謗行為ないし虚偽告知行為の有無(本件請求3及び4に関して,争点5) (4) 債権侵害行為の有無(本件請求4に関して,争点6)(5) 原告の損害額(本件請求4に関して,争点7) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(競業避止義務違反の有無)について(原告の主張) 被告P1は,原告の代表取締役から退任した後,原告の顧客等に対する営業活動 を行っているところ,これは,被告P1が以下のとおり負っていた原告の顧客等に対する営業活動を行わないとする競業避止義 被告P1は,原告の代表取締役から退任した後,原告の顧客等に対する営業活動 を行っているところ,これは,被告P1が以下のとおり負っていた原告の顧客等に対する営業活動を行わないとする競業避止義務に違反するものであった。 ア退任取締役としての競業避止義務契約によって緊密な関係に立った者は,当該契約終了後も,相手方が当該契約関係にあったことのために不当な不利益を被らないようにしなければならないから, 取締役は,当事者間の信頼関係を基礎とする委任契約終了後,すなわち,退任後,信義則上,会社と競争関係に立つ事業行為を回避しなければならない。したがって,被告P1は,原告の代表取締役から退任した後,原告の顧客等に対する営業活動を行わないとする競業避止義務を負っていた。 イ合意による競業避止義務 被告P1は,原告の代表取締役を退任後である平成25年7月31日,原告との間で,原告の顧客等に対する営業活動を行わないとする競業避止の合意をしており,このことは,被告P1が同日に原告に差し入れた本件誓約書の内容,本件誓約書を差し入れるに当たって行われた協議の内容,被告P1の言動などから明らかである。 そして,原告の顧客情報が営業秘密であり,被告P1が代表取締役としてこれを 熟知していたこと,支給された退職慰労金が原告の経営状態からすれば十分な額であったことなどに照らせば,上記合意は有効である。 (被告P1の主張)被告P1は,原告の代表取締役から退任した後,原告の顧客等に対する営業活動を行っているものの,被告P1は以下のとおり原告の顧客等に対する営業活動を行 わないとする競業避止義務を負っていなかったから,競業避止義務違反は生じない。 ア退任取締役としての競業避止義務原告の主張は争う。 は以下のとおり原告の顧客等に対する営業活動を行 わないとする競業避止義務を負っていなかったから,競業避止義務違反は生じない。 ア退任取締役としての競業避止義務原告の主張は争う。信義則上の競業避止義務が発生する根拠が不明である。 イ合意による競業避止義務被告P1は,平成25年7月31日,原告との間で,原告の顧客等に対する営業 活動を行わないとする競業避止の合意をしておらず,このことは,本件誓約書を差 し入れるに当たって行われた協議の内容などから明らかである。本件誓約書の記載は抽象的であり,原告が主張するような競業避止を定めたものではない。 仮に,被告P1と原告との間に競業避止の合意があったと評価されるとしても,制限される職種・期間が限定されておらず,支給された退職慰労金が僅か役員報酬3か月分相当額であったことなどに照らせば,上記合意は無効である。 (2) 争点2(原告の顧客情報の営業秘密該当性の有無)について(原告の主張)ア有用性・非公知性新型の採尿器具の販路を開拓したい事業者にとっては,新型の採尿器具を既に取り扱っている者に営業を掛けるのが効率的である。したがって,新型の採尿器具を 既に取り扱っている者のリストたる原告の顧客情報は,効率的な営業活動をするために有用であって,もとより非公知な情報である。 イ秘密管理性原告の顧客情報は電磁データとして存在するものであるところ,これが保有されているコンピュータは社内LANとは接続されておらず,起動させるためにはパス ワードを入力する必要があり,これにアクセスするためにもパスワードを入力する必要があったことなどに照らせば,原告の顧客情報は秘密として管理されていた。 そして,被告P1は,原告 るためにはパス ワードを入力する必要があり,これにアクセスするためにもパスワードを入力する必要があったことなどに照らせば,原告の顧客情報は秘密として管理されていた。 そして,被告P1は,原告の代表取締役であったから,原告の顧客情報が営業秘密であることを認識していた。したがって,原告の顧客情報には秘密管理性が認められる。 (被告らの主張)ア有用性・非公知性原告の顧客情報は,当該顧客に問い合わせるなどすれば容易に入手できるものであることなどに照らせば,公知であって,有用性を欠くものである。 イ秘密管理性 被告P1が原告の代表取締役であった当時は社内LANが構築されていなかった ことに照らせば,原告の顧客情報が保有されているコンピュータが社内LANとは接続されていなかったという事情は,秘密管理性を肯定するような有意なものではなく,その他原告が指摘する事情は,秘密管理性を肯定するに十分なものではない。 かえって,営業担当の契約社員が,自己が担当していない顧客の情報についてもアクセスすることができたこと,原告の顧客は,自己の納入価格について,原告から 守秘義務を掛けられていなかったことなどに照らせば,原告の顧客情報には秘密管理性が認められない。 (3) 争点3(不正開示行為及び不正使用行為の有無)について(原告の主張)ア被告P1による不正開示行為及び不正使用行為 被告P1は,原告の代表取締役として,原告の営業秘密である顧客情報を示されていたところ,被告P1が,以下のとおり,被告旭電機化成と共に,これに記録されている別紙「得意先番号一覧表」記載の原告の顧客等(以下「得意先番号●」〔「●」は数字〕というときは,別紙「得意先番号一覧表」の「得意先番号」又は「枝番番 おり,被告旭電機化成と共に,これに記録されている別紙「得意先番号一覧表」記載の原告の顧客等(以下「得意先番号●」〔「●」は数字〕というときは,別紙「得意先番号一覧表」の「得意先番号」又は「枝番番号」欄記載の番号に対応した「会社名」欄記載の原告の顧客等を指すこと とする。)に営業活動を行っていることに照らせば,被告P1が原告の顧客情報が記録された電磁データを持ち出し,被告旭電機化成にこれを開示するとともに,これを使用したことは明らかである。また,そうでないとしても,被告P1は,顧客情報を印刷した書類や顧客情報を記載したメモを持ち出し,又は記憶していた顧客情報を利用した。 (ア) 原告の主要な卸売先被告P1は,原告の主要な卸売先である得意先番号24,129,185及び245の各卸売業者に営業活動を行うとともに,自己が雇用していたP2(以下「P2」という。)に得意先番号24の販売先である得意先番号24-1への営業活動を行わせ,自ら,得意先番号185の販売先である185-1並びに得意先番号2 45の販売先である245-3及び245-10への営業活動を行った。 (イ) その他被告P1は,原告の直販先である得意先番号82及び207,原告の卸売先である得意先番号3及びその販売先である得意先番号3-1並びに卸売先である得意先番号45に営業活動を行った。 また,被告P1は,得意先番号239及び245-4への営業活動も行った。 イ被告旭電機化成による不正使用行為被告旭電機化成が,被告P1が競合会社である原告の代表取締役であったことを認識していたことなどに照らせば,被告旭電機化成は,被告P1による原告の顧客情報について不正開示行為が介在したことを知って,若しくは重大な過失によ 告P1が競合会社である原告の代表取締役であったことを認識していたことなどに照らせば,被告旭電機化成は,被告P1による原告の顧客情報について不正開示行為が介在したことを知って,若しくは重大な過失により知らないで取得した原告の顧客情報を使用して営業活動を行った。 仮に,被告旭電機化成が,被告P1による原告の顧客情報について不正開示行為が介在したことを知って,若しくは重大な過失により知らないで取得したとは認められないとしても,被告旭電機化成は,遅くとも,原告が被告らを相手方として申し立てた調停事件(大阪簡易裁判所平成27年(メ)第77号)において調停申立書が被告旭電機化成に送付された以降又は被告旭電機化成が答弁書を提出した以降 においては,被告P1による原告の顧客情報について不正開示行為が介在したことを知って,取得した原告の顧客情報を使用して営業活動を行った。 (被告らの主張)ア原告の顧客情報の開示及び使用被告P1は,原告の代表取締役を退任するに際し,原告の顧客情報が記録された 記憶媒体又はこれを印字した紙媒体を持ち出していないから,被告旭電機化成に原告の顧客情報を開示してなければ使用してもいない。これを被告旭電機化成の側からいえば,原告の顧客情報を使用していないということである。 そして,被告旭電機化成の以下のような実際の営業活動等は,このことを裏付けるものである。 (ア) 網羅的な営業活動等 被告旭電機化成は,尿検査を実施している病院等,医療器具卸業者等をインターネットでピックアップした上で顧客獲得のために網羅的な営業活動を行っており,原告の顧客情報を使用して営業活動をしたわけではない。そもそも,被告旭電機化成の商品であるハルンキットの目的・機能,構成は,原告の商品 ックアップした上で顧客獲得のために網羅的な営業活動を行っており,原告の顧客情報を使用して営業活動をしたわけではない。そもそも,被告旭電機化成の商品であるハルンキットの目的・機能,構成は,原告の商品であるピー・ポールⅡのそれらと大きく異なっており,被告旭電機化成と原告とでは営業活動の対象 先が異なってくる。 (イ) 個別の営業活動についてa 得意先番号3被告旭電機化成は,グループ会社の取引先をリストアップしたところ,被告旭電機化成の子会社が得意先番号3と取引関係にあったことから,得意先番号3に対す る営業活動を行った。 b 得意先番号3-1被告旭電機化成の代表取締役の子が大学である得意先番号3-1に通学しており,同大学がピー・ポールⅡを使用していたことを知ったことから,被告旭電機化成は,得意先番号3-1に対する営業活動を行った。 c 得意先番号24P2が得意先番号24の営業所長を務めていたことがあり,得意先番号24が得意先番号24-1にピー・ポールⅡを販売していたことを知っていたことから,被告旭電機化成は,得意先番号24に対する営業活動を行った。 d 得意先番号185 得意先番号185は関東地区における代表的な試薬取扱業者であったことから,被告旭電機化成は,得意先番号185に対する営業活動を行った。 e 得意先番号245被告P1と得意先番号245の代表取締役との間に個人的な親交があったことから,被告旭電機化成は,得意先番号245に対する営業活動を行った。 イ被告旭電機化成の悪意・重過失 被告旭電機化成は,被告P1が得意先番号207に電話を掛けていたということを認識していなかったことから,仮に,原告の顧客 動を行った。 イ被告旭電機化成の悪意・重過失 被告旭電機化成は,被告P1が得意先番号207に電話を掛けていたということを認識していなかったことから,仮に,原告の顧客情報を使用して営業活動を行うような形に結果的になっていたとしても,被告P1による原告の顧客情報について不正開示行為が介在したことを知って,若しくは重大な過失により知らないで取得した原告の顧客情報を使用して営業活動を行ったわけではない。 (4) 争点4(守秘義務違反の有無)について(原告の主張)被告P1は,原告の代表取締役から退任した後,被告旭電機化成に原告の顧客情報を開示しているところ,これは,被告P1が以下のとおり負っていた原告の顧客情報を外部に開示しないという守秘義務に違反するものであった。 ア退任取締役としての守秘義務契約によって緊密な関係に立った者は,当該契約終了後も,相手方が当該契約関係にあったことのために不当な不利益を被らないようにしなければならないから,取締役は,当事者間の信頼関係を基礎とする委任契約終了後,すなわち,退任後,信義則上,在任中知り得た会社の内部情報について守秘義務を負う。したがって, 被告P1は,原告の代表取締役から退任した後,原告の内部情報である原告の顧客情報を外部に開示しないという守秘義務を負っていた。 イ合意による守秘義務被告P1は,原告の代表取締役を退任後である平成25年7月31日,原告との間で,原告の顧客情報を外部に開示しないという守秘義務の合意をしており,この ことは,被告P1が同日に原告に差し入れた本件誓約書の内容などから明らかである。 (被告P1の主張)そもそも,上記(3)の(被告らの主張)のとおり,被告P1は,原告の代表 り,この ことは,被告P1が同日に原告に差し入れた本件誓約書の内容などから明らかである。 (被告P1の主張)そもそも,上記(3)の(被告らの主張)のとおり,被告P1は,原告の代表取締役から退任した後,被告旭電機化成に原告の顧客情報を開示していない。また,上 記(2)の(被告らの主張)のとおり,原告の顧客情報は不正競争防止法所定の営業 秘密ではなく,守秘義務の対象となることはないから,被告P1が原告の顧客情報を外部に開示しないという守秘義務を負うという原告の主張は前提を誤るものである。 いずれにせよ,被告P1は,以下のとおり,原告の顧客情報を外部に開示しないという守秘義務を負っていない。 ア退任取締役としての守秘義務原告の主張は争う。信義則上の守秘義務が発生する根拠が不明である。 イ合意による守秘義務被告P1は,平成25年7月31日,原告との間で,原告の顧客情報を外部に開示しないとする守秘義務の合意をしておらず,このことは,本件誓約書を差し入れ るに当たって行われた協議の内容などから明らかである。 (5) 争点5(営業誹謗行為ないし虚偽告知行為の有無)について(原告の主張)被告らは,得意先番号245に対し,原告の商品であるピー・ポールⅡの生産販売が中止され,取扱商品が被告旭電機化成の商品であるハルンキットに切り替わる, ハルンキットはピー・ポールⅡの改良版であるなどという虚偽の事実を,販売先に「新製品採尿用具の御案内」と題する書面(甲2)を配布させるなどして流布させた。 (被告らの主張)否認する。原告が主張する事実が,被告旭電機化成と得意先番号245が販売業 者と卸売業者の関係にあることと整合しないものであること,得意先番 るなどして流布させた。 (被告らの主張)否認する。原告が主張する事実が,被告旭電機化成と得意先番号245が販売業 者と卸売業者の関係にあることと整合しないものであること,得意先番号245が原告の商品を仕入れ続けていることなどに照らせば,被告らが,得意先番号245に対し,原告が主張する事実を流布させたとは考え難い。被告の商品であるハルンキットは,原告の商品であるピー・ポールⅡとの差別化を図ろうとした商品であるから,「改良版」とうたうことは虚偽ではない。 (6) 争点6(債権侵害行為の有無)について (原告の主張)原告は,被告P1が原告の代表取締役であった当時,得意先番号3,24及び185との間で販売特約店契約を締結しており,被告P1が,得意先番号3,24及び185に原告の商品ではないハルンキットを取り扱わせることは,債務不履行をさせるものであるから,被告P1には不法行為(債権侵害)が成立する。そして, 被告P1は,被告旭電機化成の部門長として,上記行為を行っているから,被告旭電機化成は,使用者責任を負う。 (被告らの主張)原告の主張は争う。 (7) 争点7(原告の損害額)について (原告の主張)ア被告P1関係(ア) 不正競争防止法(2条1項7号及び15号)違反を原因とするものa 合計440万円(不正競争防止法5条2項により原告の損害額と推定される利益の額が400万円及び弁護士費用40万円) b 取り分け得意先番号82及び207関係(a) 得意先番号82①不正競争防止法5条2項により原告の損害額と推定される利益の額は,被告P1が被告旭電機化成から受領している報酬の額50万円である。②原告の利益実績に照らせば, (a) 得意先番号82①不正競争防止法5条2項により原告の損害額と推定される利益の額は,被告P1が被告旭電機化成から受領している報酬の額50万円である。②原告の利益実績に照らせば,原告の1年分の利益相当額は●(省略)●である(別紙「内訳書」の 「ユーザー」欄の得意先番号82に対応する項参照)ところ,原告が得意先番号82から●(省略)●ことに照らせば,原告が販売機会を喪失したことによる損害額は●(省略)●である。 得意先番号82は,毎年ピー・ポールⅡを採用しており,得意先番号82がピー・ポールⅡからハルンキットに切り替えたのは,ハルンキットの特性を評価したか らではない。 (b) 得意先番号207①不正競争防止法5条2項により原告の損害額と推定される利益の額は,被告P1が被告旭電機化成から受領している報酬の額50万円である。②原告の利益実績に照らせば,原告の1年分の利益相当額である●(省略)●(別紙「内訳書」の「ユーザー」欄の得意先番号207に対応する項参照)が損害額である。 得意先番号207がピー・ポールⅡからハルンキットに切り替えたのは,ハルンキットの特性を評価したからではなく,ハルンキットがピー・ポールⅡに替わる商品であると誤解したからにすぎない。 (イ) 競業避止義務(合意〔甲1〕によるもの又は退任取締役に信義則上求められるもの)違反を原因とするもの 合計●(省略)●(逸失利益である別紙「内訳書」の「ユーザー」欄〔得意先番号185及び245-3は除く。〕に対応する「損害額」欄記載の損害額〔合計●(省略)●〕,得意先番号185に関する損害額〔●(省略)●〕及び得意先番号245-3に関する損害額〔●(省略)●〕並びに●(省略)●)(ウ) 守秘義務( 「損害額」欄記載の損害額〔合計●(省略)●〕,得意先番号185に関する損害額〔●(省略)●〕及び得意先番号245-3に関する損害額〔●(省略)●〕並びに●(省略)●)(ウ) 守秘義務(合意〔甲1〕によるもの又は退任取締役に信義則上求めら れるもの)違反を原因とするもの合計●(省略)●(逸失利益である別紙「内訳書」の「ユーザー」欄〔得意先番号185及び245-3は除く。〕に対応する「損害額」欄記載の損害額〔合計●(省略)●〕,得意先番号185に関する損害額〔●(省略)●〕及び得意先番号245-3に関する損害額〔●(省略)●〕並びに●(省略)●) (エ) 不法行為を原因とするものa 得意先番号245に対する虚偽事実の告知によるもの(a) 合計●(省略)●(逸失利益である別紙「内訳書」の「販売先」欄の得意先番号245に対応する「ユーザー」欄〔得意先番号245-3は除く。〕に対応する「損害額」欄記載の損害額〔合計●(省略)●〕及び得意先番号 245-3に関する損害額〔●(省略)●〕) (b) 取り分け得意先番号245-3関係原告の利益実績に照らせば,原告の●(省略)●である(別紙「内訳書」の「ユーザー」欄の得意先番号245-3に対応する項参照)ところ,原告が●(省略)●できていないことに照らせば,●(省略)●が損害額である。 b 債権侵害によるもの (a) 合計●(省略)●(逸失利益である別紙「内訳書」の「販売先」欄の得意先番号3及び24に各対応する「ユーザー」欄に対応する「損害額」欄記載の損害額〔合計●(省略)●〕及び得意先番号185に関する損害額〔●(省略)●〕)(b) 取り分け得意先番号185関係 得意 応する「ユーザー」欄に対応する「損害額」欄記載の損害額〔合計●(省略)●〕及び得意先番号185に関する損害額〔●(省略)●〕)(b) 取り分け得意先番号185関係 得意先番号185に対する債権侵害がなければ,得意先番号185が得意先番号185-1からハルンキットの注文を受けた分(●(省略)●)については,原告が受注できたはずである。原告の利益実績に照らせば,原告の1本当たりの利益相当額は●(省略)●である(別紙「内訳書」の「ユーザー」欄の得意先番号185に対応する項参照)から,●(省略)●が損害額である。 被告P1が主張する事実経過は否認する。 c 弁護士費用40万円イ被告旭電機化成関係(ア) 不正競争防止法(2条1項7号及び15号)違反を原因とするもの a 合計440万円(不正競争防止法5条2項により原告の損害額と推定される利益の額が400万円及び弁護士費用40万円)b 得意先番号207関係①被告旭電機化成は,1本当たりの利益額が15円であるハルンキットを●(省略)●販売しているので,不正競争防止法5条2項により原告の損害額と推定され る利益の額は●(省略)●である。②原告の利益実績に照らせば,原告の●(省 略)●(別紙「内訳書」の「ユーザー」欄の得意先番号207に対応する項参照)が損害額である。 得意先番号207がピー・ポールⅡからハルンキットに切り替えたのは,ハルンキットの特性を評価したからではなく,ハルンキットがピー・ポールⅡに替わる商品であると誤解したからにすぎない。 (イ) 被告P1の競業避止義務(合意〔甲1〕によるもの又は退任取締役に信義則上求められるもの)違反に関する共同不法行為によるもの合計●(省略)●( 商品であると誤解したからにすぎない。 (イ) 被告P1の競業避止義務(合意〔甲1〕によるもの又は退任取締役に信義則上求められるもの)違反に関する共同不法行為によるもの合計●(省略)●(逸失利益である別紙「内訳書」の「販売先」欄の得意先番号24に対応する「ユーザー」欄に対応する「損害額」欄記載の損害額〔●(省略)●〕及び得意先番号185に関する損害額〔●(省略)●〕) (ウ) 被告P1の守秘義務(合意〔甲1〕によるもの又は退任取締役に信義則上求められるもの)違反に関する共同不法行為によるもの合計●(省略)●(逸失利益である別紙「内訳書」の「ユーザー」欄〔得意先番号185及び245-3は除く。〕に対応する「損害額」欄記載の損害額〔●(省略)●〕,得意先番号185に関する損害額〔●(省略)●〕及び得意先番号24 5-3に関する損害額〔●(省略)●〕並びに弁護士費用40万円)(エ) 不法行為を原因とするものa 得意先番号245に対する虚偽事実の告知によるもの(a) 合計●(省略)●(逸失利益である別紙「内訳書」の「販売先」欄の得意先番号245に対応する「ユーザー」欄〔得意先番号245-3は除 く。〕に対応する「損害額」欄記載の損害額〔合計●(省略)●〕及び得意先番号245-3に関する損害額〔●(省略)●〕)(b) 取り分け得意先番号245-3関係原告の利益実績に照らせば,原告の●(省略)●である(別紙「内訳書」の「ユーザー」欄の得意先番号245-3に対応する項参照)ところ,原告が●(省略) ●できていないことに照らせば,●(省略)●が損害額である。 b 債権侵害によるもの(a) 合計●(省略)●(逸失利益 る項参照)ところ,原告が●(省略) ●できていないことに照らせば,●(省略)●が損害額である。 b 債権侵害によるもの(a) 合計●(省略)●(逸失利益である別紙「内訳書」の「販売先」欄の得意先番号3及び24に各対応する「ユーザー」欄に対応する「損害額」欄記載の損害額〔合計●(省略)●〕及び得意先番号185に関する損害額〔●(省略)●〕) (b) 取り分け得意先番号185関係得意先番号185に対する債権侵害がなければ,得意先番号185が得意先番号185-1からハルンキットの注文を受けた分(●(省略)●)については,原告が受注できたはずである。原告の利益実績に照らせば,原告の1本当たりの利益相当額は●(省略)●である(別紙「内訳書」の「ユーザー」欄の得意先番号185 に対応する項参照)から,●(省略)●が損害額である。 被告旭電機化成が主張する事実経過は否認する。 c 弁護士費用40万円(被告らの主張) ア否認ないし争う。 イ被告P1関係(ア) 不正競争防止法(2条1項8号,9号及び15号)違反を原因とするものa 得意先番号82関係 得意先番号82がピー・ポールⅡからハルンキットに切り替えたのは,ハルンキットの特性を評価したからであり,ハルンキットが紹介されていなかった場合に当然にピー・ポールⅡが採用されていたともいえないから,原告の顧客情報の使用との間に因果関係がない。また,得意先番号82がピー・ポールⅡを採用していたという情報は,採尿器具を取り扱う業界に入れば短期間で入手できるものであり,被 告旭電機化成が採尿器具を取り扱う業界への参入を検討してから3か月以上が経過 した時点で営業秘密として保護さ う情報は,採尿器具を取り扱う業界に入れば短期間で入手できるものであり,被 告旭電機化成が採尿器具を取り扱う業界への参入を検討してから3か月以上が経過 した時点で営業秘密として保護されるべきものではなくなるから,得意先番号82がピー・ポールⅡからハルンキットに切り替えたのが,原告の顧客情報の使用によるからであるとしても,これによる損害を賠償すべきとはいえない。 被告P1が被告旭電機化成から受領している報酬は定額であるから,ハルンキットを販売したことにより得た利益ではない b 得意先番号207関係得意先番号207がピー・ポールⅡからハルンキットに切り替えたのは,ハルンキットの特性を評価したからであるから,原告の顧客情報の使用との間に因果関係がなく,少なくとも覆滅割合としては90パーセントが相当である。 被告P1が被告旭電機化成から受領している報酬は定額であるから,ハルンキッ トを販売したことにより得た利益ではない。 (イ) 得意先番号245に対する虚偽事実の告知によるもの-取り分け得意先番号245-3関係原告は,●(省略)●販売できなかった本数が●(省略)●本である(●(省略)●である)と算定している。しかし,被告旭電機化成が実際に販売できた数量 が●(省略)●にすぎないことに照らせば,原告が販売できなかった本数が原告の主張するほどの数量ではないことは明らかである。 (ウ) 債権侵害によるもの-取り分け得意先番号185関係得意先番号185とは別個の卸売業者が得意先番号185-1との間でハルンキットに関する商談を成立させた。もっとも,得意先番号185-1が,得意先番号 185も卸売業者として入る形でハルンキットを購入することを希望したことから,得意先番号185も卸売 の間でハルンキットに関する商談を成立させた。もっとも,得意先番号185-1が,得意先番号 185も卸売業者として入る形でハルンキットを購入することを希望したことから,得意先番号185も卸売業者として入ることとなった。したがって,債権侵害と得意先番号185が卸売業者として入ることとなったこととの間に因果関係がない。 ハルンキットの販売を開始した前後における原告の利益実績が明らかにされていない以上,ハルンキットが販売されたことによる損害は立証されていない。 ウ被告旭電機化成関係 (ア) 不正競争防止法(2条1項8号,9号及び15号)違反を原因とするもの-得意先番号207関係①原告が失ったと主張する損害(●(省略)●)以上の損害が生じるはずがない。 ②得意先番号207がピー・ポールⅡからハルンキットに切り替えたのは,ハルンキットの特性を評価したからである。したがって,原告の顧客情報の使用との間に 因果関係がなく,少なくとも覆滅割合としては90パーセントが相当である。 ハルンキットを1本販売するに当たり15円の利益があることは認める。しかし,ハルンキットの販売本数は●(省略)●である。 (イ) 得意先番号245に対する虚偽事実の告知によるもの-取り分け得意先番号245-3関係 原告は,●(省略)●である(●(省略)●である)と算定している。しかし,被告旭電機化成が実際に販売できた数量が●(省略)●にすぎないことに照らせば,原告が販売できなかった本数が原告の主張するほどの数量ではないことは明らかである。 (ウ) 債権侵害によるもの-取り分け得意先番号185関係 得意先番号185とは別個の卸売業者が得意先番号185-1との間でハルンキットに関する商談を成立させた。も かである。 (ウ) 債権侵害によるもの-取り分け得意先番号185関係 得意先番号185とは別個の卸売業者が得意先番号185-1との間でハルンキットに関する商談を成立させた。もっとも,得意先番号185-1が,得意先番号185も卸売業者として入る形でハルンキットを購入することを希望したことから,得意先番号185も卸売業者として入ることとなった。したがって,債権侵害と得意先番号185が卸売業者として入ることとなったこととの間に因果関係がない。 ハルンキットの販売を開始した前後における原告の利益実績が明らかにされていない以上,ハルンキットが販売されたことによる損害は立証されていない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(競業避止義務違反の有無)について当裁判所は,本件誓約書(甲1)の内容及び作成経緯に照らし,被告P1が原告 の顧客等に対する営業活動を行わない競業避止義務を負っていたとは認められない ことから,被告P1には原告が主張するような競業避止義務違反は認められないと判断した。以下,詳述する。 (1) 合意による競業避止義務の有無及び内容ア本件誓約書の文言について原告は,被告P1が原告との間で原告の顧客等に対する営業活動を行わないとす る競業避止の合意をしたことを裏付ける大きな根拠として,本件誓約書(甲1)の1項本文の定めを指摘する。しかし,同項本文には,「貴社の現在及び将来の営業活動を妨げる虞のある行為はもちろんのこと,貴社の将来の発展を妨げる虞のある行為は致しません。」と,抽象的な文言があるだけであって,これだけでは競業避止義務までを定めたものかは直ちに明らかでない。したがって,この意義を明らか にするには,この作成経緯を検討する必要がある。 イ本件誓約 ,抽象的な文言があるだけであって,これだけでは競業避止義務までを定めたものかは直ちに明らかでない。したがって,この意義を明らか にするには,この作成経緯を検討する必要がある。 イ本件誓約書を差し入れるに当たって行われた協議の内容(ア) 事実経過(前提事実,後掲書証,甲47,48,乙11,証人P3,原告代表者本人,被告P1本人,弁論の全趣旨)a 被告P1は,製薬会社を退職後,原告の設立に加わり,その株式を 一部保有して代表取締役を務めてきたが,業績が芳しくないことから,原告の筆頭株主で取締役であったP4(以下「P4」という。)らは,平成25年2月の株主総会で原告を退任させる方針とした。これに対し,被告P1は,同年1月頃,原告が保有する特許権の存続期間満了を視野に入れた経営再建策を提案し,これが聞き入れられないようなら自分と営業マンを含めて原告から退き,他に活路を求めてい きたいと申し入れた(甲7)が,P4らの方針は変わらなかった。そこで,被告P1は,同年2月13日頃,原告の販売協力業務受託者であったP2とP5(以下「P5」という。)に対し,被告P1が代表取締役を解任されたときには被告P1と行動を共にすることを誓約する旨の書面に署名押印するよう求める行動をとるなどした(甲6)が,結局,同月の原告の株主総会で代表取締役を退任し,代わって 原告代表者が代表取締役に就任した。 b 退任後,被告P1は,原告に対し,退職慰労金の支給及び原告の株式の買取り等を求めていた。そこで,同年7月3日,原告代表者が被告P1と面談したところ,被告P1は,退職慰労金の支給と株式の買取りの件のほか,検討中の採尿器具に関する特許出願の件を話し,原告代表者に対し,原告と被告P1は各自の採尿用容器の開発,生産及び販売 被告P1と面談したところ,被告P1は,退職慰労金の支給と株式の買取りの件のほか,検討中の採尿器具に関する特許出願の件を話し,原告代表者に対し,原告と被告P1は各自の採尿用容器の開発,生産及び販売に関して異議を述べない旨の覚書(甲13)を 示して,この合意を求めるとともに,特許を取得できた折には原告と生産委託等の契約を結ぶ希望を述べた(甲25)。 c これを受けて,同年7月27日,P4及び原告代表者と被告P1との面談が行われた。その面談において,P4は,被告P1に対し,あらかじめ作成した本件誓約書の文案を示しつつ,今後も友好関係を継続することが前提であると した上で,退職慰労金の支給,原告の株式の買取り及び被告P1が管理する原告所有車について,どうするのかを協議する必要があるとの見解を示し,本件誓約書も,被告P1が開発するものを原告が契約してウインウインの関係になることを前提に書いたものであると説明した(原告の準備書面(17)別紙1〔これは,上記面談を原告側で録音したもののデータを反訳したものである。〕の360以下,379以下, 432以下,529以下のP4の発言参照)。 これに対し,被告P1は,退職慰労金を支給してもらったり,原告の株式を買い取ってもらったりしたとしても,金銭的に苦しい状況であることから,新たな採尿器具の開発をした場合に原告が金銭的な支援をしてくれるのが望ましいが,支援は行わず,開発も禁止するというのでは受け入れられないとして,本件誓約書1項た だし書として前記の覚書(甲13)を取り交わすことを提案した(同別紙1の463以下,494以下,532以下,553以下,557以下の被告P1の発言参照)。 これを受けて,P4が,被告P1に対し,新しい商品も必要だから友好的な関係が必要で,被告P1が原告 (同別紙1の463以下,494以下,532以下,553以下,557以下の被告P1の発言参照)。 これを受けて,P4が,被告P1に対し,新しい商品も必要だから友好的な関係が必要で,被告P1が原告の利益と反することをするようなら対応をしないといけ ない,被告P1の求めについて自分たちの裁量で対応できる範囲なら何とかなるが, それを超えるようなら,取りあえず本件誓約書の内容について合意した上で,細かな点についてはその後に時間を掛けて協議していくことにするという提案をし(同別紙1の826以下,834以下のP4の発言参照),同日の面談は終了した。 d そして,同月31日,P4及び原告代表者と被告P1との面談が再度行われた。その面談の冒頭において原告の株式の買取りが行われた後,被告P1 が,本件誓約書を検討した上で,その1項ただし書として,被告P1が新製品を開発することについては問題がないことや,それを原告が独占的に利用することについての書面を作成しておかないと,本件誓約書に署名した後の保証が何もないことになって困るから,無条件で署名できないとの懸念を示し,上記の覚書(甲13)の修正版として,原告が被告P1による採尿用容器の開発等に関して異議を述べな いという内容に加え,被告P1が採尿用容器を発明した場合における開発支援,独占的販売等に関する協議の手順について定めた契約書(甲14)を取り交わすことを提案した(同別紙2〔これは,上記面談を原告側で録音したもののデータを反訳したものである。〕の182以下,262以下,363以下の被告P1の発言参照)。 これに対し,P4は,本件誓約書の内容であっても,原告と被告P1との間で被告P1が発明した採尿器具に関する協議が整わない場合については,被告P1は「フリー 3以下の被告P1の発言参照)。 これに対し,P4は,本件誓約書の内容であっても,原告と被告P1との間で被告P1が発明した採尿器具に関する協議が整わない場合については,被告P1は「フリーでどこでも行け」る(同別紙2の423のP4発言参照)が,できる限り一緒にやっていくのがいいという見解を示すとともに,本件誓約書と契約書(甲14)のような内容を同時に合意しようとなると時間が掛かるという見通しや,契約 書(甲14)について合意できることはないとの見通しを示した上で,それでも本件誓約書と何らかの合意書を協議して同時に合意することにするか,まずは本件誓約書についてのみ合意し,退職慰労金の支給及び被告P1が管理する原告所有車についての処理を終えた後,細かな点についてはその後に時間を掛けて協議していくことにするかについて決める必要があるという提案をした(同別紙2の378,4 17以下,692以下,762以下,1088以下,1097以下,1121以下 のP4の発言参照)。 これを受けて,被告P1は,P4に対し,なお1項ただし書に相当する文書をきちんとしておきたいとしつつも,原告と被告P1との間で被告P1が発明した採尿器具に関する協議が整わない場合には,原告以外の者に発明した採尿器具の話を持ち込んでも構わないということをP4に確認した上で,後者の案を選択する意向を 表明した(同別紙2の1172以下の被告P1の発言から1296以下のP4の発言に至るまでの双方の発言参照)。 その結果,被告P1は,同日,原告に対し,本件誓約書を差し入れ,その後,退職慰労金として150万円の支払(ただし,被告P1が管理する原告所有車を被告P1が買い取る代金50万円を控除した100万円の支払)を受けた(甲15)。 e を差し入れ,その後,退職慰労金として150万円の支払(ただし,被告P1が管理する原告所有車を被告P1が買い取る代金50万円を控除した100万円の支払)を受けた(甲15)。 e その後,被告P1は,同年9月4日に新たな採尿用容器の特許出願をし(甲65の1),同月10日付けの書面で,原告に対し,同出願に係る発明の売却条件についての協議を求めた(甲16)。そして,原告代表者の求め(甲72)を受けて,同年10月3日又は4日に被告P1が原告代表者と面談したところ,原告代表者は,被告P1が原告に新製品の開発を依頼し,それに対する報酬の支払 を受けるとの内容の合意書(甲36)を提示したが,結局,合意に至らなかった。 f その後,被告P1は,原告以外の会社に新商品の開発を提案し,最終的には被告旭電機化成に提案して,被告旭電機化成がこれを採用した。そして,被告P1は,KT企画という個人事業を立ち上げ,同じく原告を退職してKT企画に入社したP2と共に,被告旭電機化成の顧問として,同被告の「医療用検査用品 開発・市場開拓部門部門長」の名刺(甲3)を所持して,ハルンキットの営業活動を行った。 (イ) 本件誓約書の作成経緯を踏まえた合意の内容についてa 上記(ア)の認定事実のとおり,原告側は,被告P1から,被告P1が行う採尿用容器の開発に異議を述べない旨の覚書の作成を求められたのを受けて, 本件誓約書を作成して提示し,その説明の中で,友好関係を保つのが全ての前提で ある旨を明言し,一緒にやりたいとも述べていることからすると,本件誓約書の1項本文には,被告P1に原告以外での採尿器具の開発や販売をさせないとの趣旨を込めていたと認められる。また,被告P1も,金銭的に困窮する中で,本件誓約書の1 も述べていることからすると,本件誓約書の1項本文には,被告P1に原告以外での採尿器具の開発や販売をさせないとの趣旨を込めていたと認められる。また,被告P1も,金銭的に困窮する中で,本件誓約書の1項ただし書を定めた文書で被告P1が開発する新製品を原告が支援する保証がなければ,被告P1が採尿器具の開発,販売等をすることが禁止されるだけになる と懸念していたと認められることから,原告が想定した上記の1項本文の趣旨は理解していたと認められる。 しかし,上記(ア)の認定事実のとおり,被告P1が上記の懸念を示し,被告P1が開発する新製品を原告が支援する保証がないままでの本件誓約書への署名を拒む中で,原告側は,まず本件誓約書により友好関係の保持を合意した上で,詳細はそ の後に協議することを提案し,協議が調わない場合には他社に話を持ち込んでも構わない(フリーである)と説明している。そして,被告P1は,最終的に,そのことを確認した上で原告側の提案を受け入れて本件誓約書に署名したと認められる。 このような協議の経緯からすると,本件誓約書の1項本文の「貴社の現在及び将来の営業活動を妨げる虞のある行為はもちろんのこと,貴社の将来の発展を妨げる虞 のある行為は致しません。」というのは,被告P1が採尿器具の開発,販売等を行う場合には原則として原告と共同して行わなければならず,他社で開発,販売等することを禁止する旨の競業避止義務を定めたものであると解されるが,同時に,被告P1と原告が共同して開発,販売等を行う場合の具体的条件について協議が調わなかった場合は,被告P1が原告以外の者に発明した採尿器具の話を持ち込んでも 構わない旨を合意したと認めるのが相当であり,本件誓約書1項本文の競業避止義務もこのような一種の条件の下でのものであると認めるのが ,被告P1が原告以外の者に発明した採尿器具の話を持ち込んでも 構わない旨を合意したと認めるのが相当であり,本件誓約書1項本文の競業避止義務もこのような一種の条件の下でのものであると認めるのが相当である。 b これに対し,原告は,被告P1が,本件誓約書を差し入れるに当たって行われた協議において,原告の顧客等に対する営業活動を行うことができなくなるということを認識していたことをもって,被告P1がそうした認識どおりの合 意をしたと主張するが,本件誓約書1項に係る合意をそのような単純な内容と認め ることは,上記に照らして採用できない。 また,原告は,被告P1が,原告代理人に対し,被告旭電機化成には原告の顧客ではなく,新規の者に営業活動を掛けるよう指示していると述べたことは,本件誓約書を差し入れた結果,原告の顧客等に対する営業活動を行うことができなくなっていると認識していることの表れであると主張する。しかし,紛争の本人が相手方 の弁護士から直接追及を受けた場合に,様々な弁解をすることはしばしば見られることであるから,被告P1の上記言動をもって,直ちに被告P1が原告の顧客等に対する営業活動を行うことができないと認識していたとはいえない。 ウ本件における競業避止義務違反の有無以上を前提とすると,本件では,本件誓約書の作成後被告P1が新たな採尿用容 器に関する特許出願を行い,それを原告が開発することについて原告と被告P1との間で協議が持たれたが,結局,条件について合意できなかったのであるから,被告P1は競業避止義務を負うとは認められない。したがって,被告P1が被告旭電機化成と共に原告の顧客等に営業活動を行ったことが,合意された義務に違反するとは認められない。 (2) 退任取締役に は競業避止義務を負うとは認められない。したがって,被告P1が被告旭電機化成と共に原告の顧客等に営業活動を行ったことが,合意された義務に違反するとは認められない。 (2) 退任取締役に信義則上求められる競業避止義務の有無及び内容原告は,被告P1が原告の退任取締役であるということをもって,原告の顧客等に対する営業活動を行わないとする競業避止義務を負うと主張する。 しかし,委任契約上の義務は,契約終了すなわち退任とともに終了するのが原則であり,競業避止義務が職業選択の自由に対して強い制約となることに照らせば, 退任取締役が会社に対して競業避止義務を負うのは,個別の合意等に定めがあるような場合に限られると解するのが相当であり,そのような明確な定めがない場合に競業行為により何らかの責任を負うのは,不正競争防止法違反又は社会通念上自由競争の範囲を逸脱した不法行為が成立するような場合に限られるというべきである。 したがって,そのような限定もなしに原告の顧客等に対する営業活動を行わないと する競業避止義務を負わせることとなる原告の上記主張は採用できない。 2 争点2(原告の顧客情報の営業秘密該当性の有無)について当裁判所は,原告の顧客情報は,営業秘密の要件を満たすと判断した。以下,詳述する。 (1) 有用性・非公知性ア原告の顧客名簿は,各顧客の名称,連絡先,担当者等からなり,原告の 顧客履歴は顧客の購入履歴からなる。この点,原告が販売していた商品(ピー・ポールⅡ)は,紙コップに尿を排出してからこれを検尿容器に移すという形で尿を採取するという従来からある採尿器具とは異なり,排出した尿を検尿容器に直接当てるという形で尿を採取するという意味で新型の採尿器具である(争いのない事実,弁論の全 らこれを検尿容器に移すという形で尿を採取するという従来からある採尿器具とは異なり,排出した尿を検尿容器に直接当てるという形で尿を採取するという意味で新型の採尿器具である(争いのない事実,弁論の全趣旨)ところ,既に従来からある採尿器具ではなく新型の採尿器具を購入 している者は,従来からある採尿器具を購入している者と比べれば,新型の採尿器具を購入することへの心理的な抵抗感は小さいと考えられる。そうすると,原告の顧客情報は,新型の採尿器具を販売しようとする者にとって,手探りで顧客を開拓することになる場合と比べて,より成約に至る可能性がある者に営業活動を効率よく行うことを可能にするものであるから,有用な情報である。また,原告の顧客情 報,取り分け顧客履歴は,掛けるべき営業活動の規模,タイミングを検討する際の有用な情報である。 そして,原告の顧客情報は,原告が営業活動をする中で独自に蓄積していったものであり,原告の管理下以外では一般的に入手することができない状態にあることから,非公知性も認められる。 なお,原告が主張する顧客情報の中には,原告の直接の顧客ではなく,ピー・ポールⅡの販売店が同商品を販売した顧客の情報も含まれており,そのような顧客の情報は販売店が原始的に取得した情報である。しかし,販売店の顧客であっても,ピー・ポールⅡのユーザーであることに変わりはないから,その情報を原告が販売店と並んで保有している以上,原告もその顧客情報の保有者というに妨げないとい うべきである。 イこれに対し,被告らは,原告の顧客情報は,当該顧客に問い合わせるなどすれば容易に入手できるものであるから,公知であって,有用性を欠くものであると主張する。 確かに,原告の顧客の中には,原告の顧客情報にあるような情 は,原告の顧客情報は,当該顧客に問い合わせるなどすれば容易に入手できるものであるから,公知であって,有用性を欠くものであると主張する。 確かに,原告の顧客の中には,原告の顧客情報にあるような情報について尋ねられれば回答するという対応を取る者もいるであろう。しかし,原告の顧客情報の有 用性は,上記アのとおり,より成約に至る可能性がある者に営業活動を効率よく行うことを可能にするというところにあるのであって,当該顧客にまで到達すればその顧客から個別の情報を入手できるとしても,そもそもどの顧客が原告の顧客であるかを営業前に知ることが困難なのであるから,被告らの指摘する事情をもって新型の採尿器具を採用する原告の顧客情報の有用性や非公知性が否定されるものでは ない。また,原告の顧客のうちの大学や健康診断実施機関等は,採尿検査を行う機関として公知ではあるが,それらが原告の顧客であるか否かが営業前に知られているとは認められないから,それによっても有用性や非公知性は否定されない。 したがって,原告の顧客情報に有用性・非公知性がないかのようにいう被告らの主張は採用できない。 (2) 秘密管理性ア当該情報が「秘密として管理されている」というためには,当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるようにするための措置をとっていることが必要であるが,本件では,問題にされている被告P1が,原告の代表取締役という自ら秘密管理を行う立場にあった者であることを考慮する必 要がある。 イ証拠(後掲書証,原告代表者本人,被告P1本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告P1が代表取締役を務めていた当時,原告の事務所は大阪のみにあり,そこには被告P1と経理担当のパート社 原告代表者本人,被告P1本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告P1が代表取締役を務めていた当時,原告の事務所は大阪のみにあり,そこには被告P1と経理担当のパート社員がおり,被告P1は西日本地域 の営業を担当していた。このほか原告には,P2とP5が,「販売協力に関する業 務委託契約書」(甲22及び23)により,愛知県と東京都の各自宅を拠点として,中日本,東日本の営業を担当していた。 (イ) 原告の顧客情報は,大阪の事務所のコンピュータで,「クイックブックスPRO3」というソフトにより,電磁データとして管理されており,このコンピュータを起動させるためにはパスワードを入力する必要があったほか,顧客情 報の電子データにアクセスするためにも別のパスワードを入力する必要があった(甲28,54及び62)。また,原告では,歩合給の算定のために,月々の売上げに関する原告の全データの詳細が,P2及びP5にメールで送信されていた。 (ウ) 被告P1が代表取締役として作成し,P2及びP5と取り交わした上記の「販売協力に関する業務委託契約書」には,「受託者は,本契約の履行によ り知り得た本商品にかかる機密事項または委託者の企業秘密を本契約終了後といえども第三者に開示,漏洩しない。」との条項が置かれていた(甲22及び23)。 ウ以上からすると,被告P1は,原告の代表取締役として,顧客情報が記録されたファイルにパスワードを設定する措置を自ら採っていたということができる。また,被告P1は,顧客情報に接するP2ら業務受託者との契約書中で,原告 の企業秘密の漏洩を禁じているところ,被告P1が代表取締役であったことからすると,この企業秘密の中には前記のような有用性と非公知性を有する原告の顧客情報を含むこ 務受託者との契約書中で,原告 の企業秘密の漏洩を禁じているところ,被告P1が代表取締役であったことからすると,この企業秘密の中には前記のような有用性と非公知性を有する原告の顧客情報を含むことを想定していたと推認される。これらからすると,被告P1は,自ら原告の顧客情報を秘密とする措置を採っていたと認められる上,代表取締役の退任後,本件誓約書の2項で,在任中に取得した原告に関する情報を漏洩しない旨を約 しているから,原告の顧客情報の秘密管理性を認めるのが相当である。 また,被告P1が自らこのような措置を採り,また本件誓約書でも秘密保持を約していることからすると,被告P1については,代表取締役として記憶した顧客情報についても,秘密管理が及んでいたと認めるのが相当である。 エこれに対し,被告らは,①営業担当の契約社員が,自己が担当していな い顧客の情報についてもアクセスすることができたこと,②原告の顧客は,自己の 納入価格について,原告から守秘義務を掛けられていなかったことなどに照らせば,原告の顧客情報には秘密管理性が認められないと主張する。 しかし,①について見ると,P2及びP5に対しては,契約書で原告の企業秘密の漏洩を禁止しているのであるから,同人らが自己の担当以外の顧客の情報にアクセスできていたとしても,秘密管理性に欠けるところはないというべきである。ま た,②についてみると,確かに原告が顧客に守秘義務を掛けていたとは認められないが,どの顧客が原告の顧客であるかが一般に知られていたとは認められないから,顧客に到達すればその顧客に係る情報を教えてもらえるとしても,その顧客に係る情報の秘密管理性に欠けるところはないというべきである。 また,被告P1は,ピー・ポールⅡは特許権で保護されていたから ,顧客に到達すればその顧客に係る情報を教えてもらえるとしても,その顧客に係る情報の秘密管理性に欠けるところはないというべきである。 また,被告P1は,ピー・ポールⅡは特許権で保護されていたから,顧客情報が 営業秘密であるという意識がなかったと陳述する(乙11)。しかし,被告P1は,原告の顧客情報の電子ファイルにパスワードを設定する措置を採っていたのであるし,企業の代表取締役たる者が自社の顧客情報を企業秘密でないと考えていたとはおよそ信じ難いことであるから,上記の被告P1の陳述は信用できない。 3 争点3(不正開示行為及び不正使用行為の有無)について 当裁判所は,原告の主張する被告P1による不正開示行為・不正使用行為,被告旭電機化成による不正使用行為のうち,被告P1による得意先番号82及び得意先番号207に対する不正開示行為・不正使用行為,被告旭電機化成による得意先番号207に対する不正使用行為の限度で認めることができると判断した。以下,詳述する。 (1) 原告の顧客情報が記録された記憶媒体又はこれを印字した紙媒体の開示及び使用原告は,被告P1が,原告の顧客情報が記録された記憶媒体又はこれを印字した紙媒体を持ち出したと主張する。 しかし,そのことをうかがわせる証拠はない。原告は,被告P1が自ら「クイッ クブックスPRO3」を操作して,原告の顧客情報を用いて請求書を発行していた と主張し,その旨の証拠(甲21)を提出するが,代表取締役で営業も担当している被告P1が請求書を発行することは業務上当然の行為であるから,それをもって顧客情報が記録された記憶媒体等を持ち出したと推認することはできない。また,原告は,被告P1が退任後に原告の顧客に対して営業活動を行ったことも根拠として主張する 上当然の行為であるから,それをもって顧客情報が記録された記憶媒体等を持ち出したと推認することはできない。また,原告は,被告P1が退任後に原告の顧客に対して営業活動を行ったことも根拠として主張するが,被告P1は代表取締役兼営業担当者として,主要な顧客の情報の概 要を記憶していたと認めるのが自然であるから,この点も被告P1が,顧客情報が記録された記憶媒体等を持ち出したと推認させるものではない。 したがって,被告P1及び被告旭電機化成において,原告の顧客情報が記録された記憶媒体又はこれを印字した紙媒体を不正開示ないし不正使用したとは認められない。 (2) 被告P1の記憶に残る原告の顧客情報の開示及び使用ア前記のとおり,被告P1は原告の代表取締役であり,自ら営業も担当していたから,少なくとも主要な顧客についての情報の概要は記憶していたと推認される。そして,被告P1との関係では,このような記憶情報についても秘密管理性があると認められることは前記のとおりであり,また,それらの情報は,被告P1 が原告の業務を遂行する過程で接したものであるから,原告から「示された」ものであると認めるのが相当である。したがって,被告P1が,記憶中の原告の顧客情報を不正目的で開示し,又は使用した場合には,営業秘密の不正開示・不正使用を構成するというべきである。 しかし同時に,被告P1が,原告の顧客との様々な関係から,原告の顧客である ことを離れた個人的な情報としても当該顧客の情報を保有している場合があり得るのであって,そのような個人的な情報を使用した場合まで,営業秘密の不正開示・不正使用ということはできない。また,被告らが原告の顧客に対して営業活動をしたとしても,網羅的な営業方法の結果,その対象者の中に原告の顧客が含まれていた 情報を使用した場合まで,営業秘密の不正開示・不正使用ということはできない。また,被告らが原告の顧客に対して営業活動をしたとしても,網羅的な営業方法の結果,その対象者の中に原告の顧客が含まれていたにすぎない場合には,やはり営業秘密の不正開示・不正使用ということはできな い。したがって,被告らが営業対象としたと原告が主張する個々の顧客ごとに,被 告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるといえるのか,そうではなく,被告らが主張するような網羅的な営業活動の結果によるものであるとか,被告P1と原告の従前の顧客との間の個人的な関係等によるものであるなどといえるのかを個別に判断する必要がある。 なお,被告らは,①被告旭電機化成の商品であるハルンキットは,原告の商品で あるピー・ポールⅡと差別化を図った商品であることから,顧客を開拓するに当たって,原告の顧客情報を使用しようとするはずなどない,②採尿器具の需要者は限られているから,原告の顧客情報を使用しなくても,顧客を開拓することはできるなどとして,原告の従前の顧客への営業の掛け方の実態を検討するまでもなく,原告の顧客情報を開示及び使用したとは認められないと主張する。確かに,被告旭電 機化成の商品であるハルンキットは,構成等について,原告の商品であるピー・ポールⅡと差異があることは認められる(乙1,弁論の全趣旨)。しかし,結局はピー・ポールⅡと同じく排出した尿をスティック状の容器に直接当てるという形で尿を採取するタイプの採尿器具であり,需要者として想定される者が同じであることに照らせば,原告の顧客情報は,顧客を開拓するに当たって有用なものである。し たがって,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を使用したくなるという動機がおよそ生じないと される者が同じであることに照らせば,原告の顧客情報は,顧客を開拓するに当たって有用なものである。し たがって,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を使用したくなるという動機がおよそ生じないとは考え難いから,被告らの上記①の主張は採用できない。また,確かに,顧客を開拓するに当たってどの者に営業を掛けるべきかの検討の難易度は,需要者の多寡によって左右され得るから,その意味で,被告らの上記②で指摘する事情は,原告の顧客等の有用性の評価を低下させるものにはなり得る。しかし,そ うであるからといって,上記検討に際して,原告の顧客情報の有用性が完全に否定されるわけではないから,被告らの上記②の主張も採用できない。 以下,上記の観点から検討する。 イ被告旭電機化成による営業活動被告旭電機化成の営業担当者である証人P3は,被告旭電機化成は,インターネ ットで検索するなどして,大学等の尿検査を実施している機関や医療器具の卸売業 者等をピックアップした上で,営業担当者が分担して網羅的に営業するという方法を採ったと証言する。この点に関する直接の裏付けはないが,同証人の証言によれば,被告旭電機化成は,本来はプラスチック成形品を製造する会社であり,病院関係ではフードプロセッサーやブレンダーも扱っていたこと,今回のハルンキットは,これまで手掛けなかった分野の商品であるが,プラスチック成形品である点で同じ であることや,年間の尿検査の検体数が多く,従来型の採尿器具を含めた市場規模が大きいことから,相応の市場調査の結果を得た上で参入を決めたことが認められる。このような参入動機からすると,被告旭電機化成がハルンキットの営業を行うに当たり,従来型の採尿器具のユーザーも含めて幅広く営業対象としたというのは合理的であり,パンフレ 入を決めたことが認められる。このような参入動機からすると,被告旭電機化成がハルンキットの営業を行うに当たり,従来型の採尿器具のユーザーも含めて幅広く営業対象としたというのは合理的であり,パンフレット等を合計1万部以上作成したこと(乙3,4)とも整 合的である。これらからすると,証人P3の上記証言は信用することができるから,被告旭電機化成は網羅的な営業方法を採っていたと認められる。したがって,単に被告旭電機化成が原告の顧客に対して営業活動をしたからといって,被告P1による原告の顧客情報の開示が介在していると推認することはできない。 そうすると,被告P1が原告の顧客情報を使用し,これを被告旭電機化成に開示 したと認められるためには,個別の顧客についてそのような事情が認められるか否かを検討する必要があるというべきである。 ウ個別の顧客ごとの検討(ア) 得意先番号3及び得意先番号3-1証拠(被告P1本人,証人P3)によれば,被告旭電機化成は,自己やその子会 社の取引先の中で採尿器具を取り扱っている者についても,網羅的な営業活動を行うに当たっての営業先としてピックアップしており,得意先番号3はそこでピックアップされた取引先の中の一つであることが認められる。したがって,得意先番号3への営業活動は,被告旭電機化成による網羅的な営業活動によるものであって,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであると はいえない。 次に,証拠(被告P1本人,証人P3)によれば,被告旭電機化成は,代表取締役の子が大学である得意先番号3-1に在籍していたこともあって,得意先番号3-1が採尿器具を取り扱っていることを把握したことから,得意先番号3-1に営業活動を掛けたことが認められる。した ,代表取締役の子が大学である得意先番号3-1に在籍していたこともあって,得意先番号3-1が採尿器具を取り扱っていることを把握したことから,得意先番号3-1に営業活動を掛けたことが認められる。したがって,得意先番号3-1への営業活動は,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであると はいえない。 (イ) 得意先番号24及び得意先番号24-1原告の主張を前提とすると,得意先番号24-1に営業活動をしてきたのは,P2であるところ,証拠(証人P3)によれば,P2は,得意先番号24-1を販売先としている卸売業者である得意先番号24の元営業所長であったことが認められ る。そうすると,P2が得意先番号24-1に営業活動をしたのが,得意先番号24及び得意先番号24-1が採尿器具を取り扱っていることを記憶していたことによるものであることを否定できない以上,得意先番号24及び得意先番号24-1への営業活動は,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるとはいえない。 (ウ) 得意先番号45原告は,営業秘密の使用が行われたことの主たる証拠として,得意先番号45の担当者作成の回答書(甲9の1)を指摘するところ,そこには,被告旭電機化成が,得意先番号45に対し,得意先番号45が原告の商品であるピー・ポールⅡを使用していることを把握した上で営業活動を行ったかのような記載もある。しかし,上 記回答書で原告が設定した質問は,「働きかけは,御社がピー・ポールⅡを使用または納入(販売)しているのを前提とするものでしたか」という評価の微妙な事項を交えたものである上,これに対する回答も「はい」という内容にとどまり,被告旭電機化成と得意先番号45との間の具体的なやり取 たは納入(販売)しているのを前提とするものでしたか」という評価の微妙な事項を交えたものである上,これに対する回答も「はい」という内容にとどまり,被告旭電機化成と得意先番号45との間の具体的なやり取りが判然としないから,被告旭電機化成が,得意先番号45に対し,得意先番号45が原告の商品であるピー・ ポールⅡを使用していることを把握した上で営業活動を行ったとまでは認定できな い。したがって,得意先番号45への営業活動は,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるとはいえない。 (エ) 得意先番号82弁論の全趣旨(被告第7準備書面3頁)によれば,被告P1が得意先番号82に営業活動を行ったと認められる。そして,被告らと得意先番号82との間の個人的 な関係等も認められない以上,得意先番号82への営業活動は,被告P1の記憶に残る原告の顧客名簿を使用したことによるものであるといえる。もっとも,甲4によっても,得意先番号82の顧客履歴までを用いて営業活動を行ったとは認められないから,被告P1の記憶に残る原告の顧客履歴を使用したことによるものであるとはいえない。 他方,被告旭電機化成については,会社として得意先番号82に対する営業活動をしたことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,被告らは,別の検査業者から見積りを依頼されて提出したところ,正式な取引段階になって初めて購入者が得意先番号82であることを知ったと主張しており(被告第7準備書面3頁),この内容の具体性に照らすとこの主張を直ちに排斥することはできない。したがって,被 告旭電機化成については,被告P1から得意先番号82の情報の開示を受けて,これを使用したとは認められない。 (オ) 得意先番号129原告は,営業 排斥することはできない。したがって,被 告旭電機化成については,被告P1から得意先番号82の情報の開示を受けて,これを使用したとは認められない。 (オ) 得意先番号129原告は,営業秘密の使用が行われたことの主たる証拠として,得意先番号129の担当者作成の回答書(甲11)を指摘するところ,そこには,被告旭電機化成が, 得意先番号129に対し,得意先番号129が原告の商品であるピー・ポールⅡを使用していることを把握した上で営業活動を行ったかのような記載もある。しかし,上記(ウ)と同様の理由に加え,得意先番号129は試薬関係の卸売業者である(被告P1本人)から,前記のような被告旭電機化成の網羅的な営業方法からすると,被告P1からの教示なしに営業対象とした可能性も十分にある。そうすると,被告 旭電機化成が,得意先番号129に対し,得意先番号129が原告の商品であるピ ー・ポールⅡを使用していることを把握した上で営業活動を行ったとは認定できない。したがって,得意先番号129への営業活動は,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるとはいえない。 (カ) 得意先番号185及び得意先番号185-1証拠(被告P1本人)によれば,被告P1は,原告に在籍する前の製薬会社の時 代から,得意先番号185と取引上の付合いがあったことが認められる(この点について,甲76では,得意先番号185は原告が在籍していた製薬会社との取引関係がなかったとされているが,被告P1との付合いの有無を直接確認するものではなく,これをもっては直ちに上記認定を左右しない。)。この点に照らせば,得意先番号185への営業活動は,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使 用したことによるものである するものではなく,これをもっては直ちに上記認定を左右しない。)。この点に照らせば,得意先番号185への営業活動は,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使 用したことによるものであるとはいえない。そして,卸売業者である得意先番号185への営業活動が,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるといえない以上,得意先番号185と同行営業した先であるとされる得意先番号185-1についても,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるとはいえない。 (キ) 得意先番号207証拠(甲63)によれば,被告P1は,得意先番号207に対し,得意先番号207が原告の商品であるピー・ポールⅡを使用していることを把握した上で,個別の営業活動を行っていたと認められる。そして,前記のような被告旭電機化成の網羅的な営業方法からすると,営業先を選定する段階で営業先がピー・ポールⅡを使 用しているか否かまでのことを把握できないと考えられるから,得意先番号207への営業活動は,被告P1の記憶に残る原告の顧客名簿を開示及び使用したことによるものであると認めるのが相当である。そして,証拠(甲63)によれば,被告旭電機化成は,このような被告P1の営業活動を受けて,得意先番号207との取引を開始したと認められるところ,証人P3の証言によれば,同人らが被告P1と 同行営業するときには,被告P1から,訪問先が原告の顧客であることは聞いてい たと認められ,これからすると,上記の得意先番号207と取引を開始するときにも,被告P1から同様に聞いていたものと推認される。そうすると,被告旭電機化成は,被告P1から,得意先番号207について,被告P1が,原告の顧客と知りつつ営業を行った 号207と取引を開始するときにも,被告P1から同様に聞いていたものと推認される。そうすると,被告旭電機化成は,被告P1から,得意先番号207について,被告P1が,原告の顧客と知りつつ営業を行ったことを認識した上で,自身の営業活動を行ったのであるから,被告P1から得意先番号207の情報の不正開示を受け,それを使用したことについ て重過失があるというべきである。 他方,甲63には,被告P1が価格交渉を行ったことをうかがわせる記載があるものの,その記載は括弧書にとどまる上,具体的な交渉経過までは明らかではなく,得意先番号207の購入履歴等の顧客履歴を用いて営業活動をしたとまでは認定できないから,被告P1の記憶に残る原告の顧客履歴を使用したことによるものであ るとはいえない。 (ク) 得意先番号239証拠(甲4)には,被告旭電機化成が得意先番号239に対し得意先番号239がピー・ポールⅡを使用していることを把握した上で営業活動をしたという記載がある。しかし,それによれば,被告旭電機化成は,原告の得意先番号239関係で の販売店の得意先番号98を介さずに,直接に得意先番号239に対して営業活動を行ったとされているところ,得意先番号239は大学であるから,前記の被告旭電機化成の網羅的な営業方法からすると,被告P1からの教示なしに営業対象とした可能性も十分にある。そうすると,得意先番号239への営業活動が,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであると認めるに 足りる証拠はない。 (ケ) 得意先番号245,245-3,245-4,245-10証拠(被告P1本人,証人P3)によれば,被告P1は,得意先番号245の代表取締役と個人的に懇意にしており,一緒に旅行するような間柄 (ケ) 得意先番号245,245-3,245-4,245-10証拠(被告P1本人,証人P3)によれば,被告P1は,得意先番号245の代表取締役と個人的に懇意にしており,一緒に旅行するような間柄であり,その関係で,被告P1は得意先番号245に営業活動を行ったと認められる。このことから すると,被告P1が有していた得意先番号245に関する情報は,原告の顧客情報 であるにとどまらず,被告P1個人の情報にもなっていたというべきである。したがって,得意先番号245への営業活動は,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるとはいえない。そして,卸売業者である得意先番号245への営業活動が,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるといえない以上,得意先番号245から紹介を受 けてハルンキットを購入することしたとされる得意先番号245-3,245-10との関係でも,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるとはいえない。 なお,証拠(甲4)には,被告P1が得意先番号245-4に対して得意先番号245-4がピー・ポールⅡを使用していることを把握した上で営業活動をし,得 意先番号245作成の見積を提示した旨の記載がある。しかし,同得意先が得意先番号245の顧客である以上,上記の得意先番号245-3等と同じく,得意先番号245-4への営業活動が,被告P1の記憶に残る原告の顧客情報を開示及び使用したことによるものであるとはいえない。 (3) 小括 以上のとおり,被告P1については,得意先番号82及び207との関係で,原告の顧客名簿に関する不正競争防止法2条1項7号所定の不正開示行為及び不正使用行為に該当すると認められる。 小括 以上のとおり,被告P1については,得意先番号82及び207との関係で,原告の顧客名簿に関する不正競争防止法2条1項7号所定の不正開示行為及び不正使用行為に該当すると認められる。また,被告旭電機化成については,得意先番号207との関係で,不正競争防止法2条1項8号所定の不正使用行為に該当すると認められる。なお,原告は,被告旭電機化成について,不正競争防止法2条1項9号 所定の不正使用行為も主張するが,上記のほかにそれを認めるに足りる証拠はない。 4 争点4(守秘義務違反の有無)について被告P1は,本件誓約書において,原告に対し,在任中に取得した原告に関する情報を秘密として扱い,漏洩しない旨を合意したと認められるところ,前記のとおり,被告P1は代表取締役であったことからすると,この対象に原告の顧客情報が 含まれることは理解していたと認めるのが相当である。 しかし,これにより不正競争防止法によるよりも秘密として保持すべき範囲を広げる合意をしたとは解されないから,結局,被告P1がこれに違反した範囲は,争点3で判断した範囲と同様となる。また,このことは,原告が主張する信義則上の守秘義務を認める場合でも同様である。 5 争点5(営業誹謗行為ないし虚偽告知行為の有無)について 当裁判所は,原告の主張する虚偽告知行為は,得意先番号245-3及び得意先番号245-10との関係の限度で認められると判断するとともに,同行為は不正競争防止法2条1項15号所定の営業誹謗行為に該当するとは認められないが,一般不法行為を構成すると判断した。以下,詳述する。 (1) 甲2書面の配布について まず,原告は,被告らが,卸売業者である得意先番号245に,ハルンキットについて「これまで販売して参りま 不法行為を構成すると判断した。以下,詳述する。 (1) 甲2書面の配布について まず,原告は,被告らが,卸売業者である得意先番号245に,ハルンキットについて「これまで販売して参りました採尿用具の改良版として,新製品を販売することになりました」と記載した書面(甲2)を,販売先に配布させたとした上で,この書面の記載は,①ハルンキットがピー・ポールⅡに及ばない点があるにもかかわらず,ハルンキットを「これまで販売して参りました採尿用具の改良版」である とうたう点,②ピー・ポールⅡが廃番になるわけではないにもかかわらず,ピー・ポールⅡが廃番になってハルンキットに切り替わる旨をうたう点で,営業誹謗ないし虚偽の事実の告知に該当すると主張する。 しかし,①についてみると,尿沈渣検鏡に用いる尿沈渣標本を作製するためには,原則として10ミリリットルの尿量が必要であるとされている(乙2)ところ,ハ ルンキットは,6ミリリットルの尿が採取できれば尿沈渣標本を作製することができるとされており(乙5),従来の採尿器具から性能を向上していると評価できる部分がある。もっとも,ハルンキットについては,問題点が多々あるというユーザーの指摘もある(甲63及び80等)が,そのような問題点があるとしても,上記のような改良点がある以上,上記書面の記載内容が虚偽であるとはいえない。 次に,②についてみると,原告の主張は,新製品が発売されれば旧製品は廃番に なるのが一般的であることを前提として,「改良版」との記載がピー・ポールⅡが廃盤になることを意味するというものであるところ,機能を向上させた新製品が発売されても旧製品の販売が継続されることは日常的にあることであるから,「改良版」との記載が原告の主張するようなことを意味するとは認められ とを意味するというものであるところ,機能を向上させた新製品が発売されても旧製品の販売が継続されることは日常的にあることであるから,「改良版」との記載が原告の主張するようなことを意味するとは認められない。 したがって,原告の上記主張は採用できない。 (2) ピー・ポールⅡの製造販売が終了する旨の告知についてア次に,原告は,被告旭電機化成が,卸売業者である得意先番号245に,ピー・ポールⅡの製造販売が終了していないにもかかわらず終了した旨を,販売先である得意先番号245-3,245-4,245-10に説明させたとして,これが営業誹謗ないし虚偽の事実の告知に該当すると主張する。 まず,原告は,得意先番号245-10の関係では,自己の主張に沿う証拠として,得意先番号245-10の取締役作成の書面(甲8)を提出する。上記書面の内容は,反対尋問を経ていないものであるものの,「私どもとしては,ピー・ポールⅡを使用したかったので,『ピー・ポールはないのですか』と尋ねましたが,得意先番号245からは,『前のピー・ポールは作っていない』とのことでした。在 庫の有無も確認したのですが,それもないとのことでした」と具体的なものであり,信用性を肯定して差し支えないと考えられるものである。この点,原告の担当者作成の書面(甲33)も,得意先番号245の代表者から聞き取ったとされる内容として,甲2について,被告P1から指示されたもので,「この前ちょっとおわびしたけど,ちょっと向こうの意向が強すぎたなということで,これから改めてやろう と思ってます。」との発言があったとするなど相応の具体性を備えており,これもまた信用性を肯定して差し支えないと考えられる。これらによれば,得意先番号245に対して被告P1が強く働きかけたと推認され,こ 思ってます。」との発言があったとするなど相応の具体性を備えており,これもまた信用性を肯定して差し支えないと考えられる。これらによれば,得意先番号245に対して被告P1が強く働きかけたと推認され,この事情は,ピー・ポールⅡの製造販売が終了したという虚偽の事実を販売先に告知することに特段のメリットのない卸売業者である得意先番号245が,甲8書面にあるような対応を取ること の自然さを裏付けるものである。したがって,得意先番号245-10の関係では, 原告が主張する説明があったと認められる。これに対し,被告らは,被告旭電機化成と得意先番号245との関係等を指摘して,被告らが上記のような説明をさせるはずがないなどと主張するが,被告旭電機化成としては,ハルンキットの販路を拡大したいはずであり,上記のような説明をさせるはずがないなどとはいえないから,被告らの主張は採用できない。 次に,原告は,得意先番号245-3の関係では,自己の主張に沿う証拠として,得意先番号245-3の担当者作成の書面(甲10の1)を提出する。確かに,上記書面の内容は,質問に対して「はい」か「いいえ」で回答する簡単なものにとどまる。しかし,上記のとおり,甲33からうかがわれる被告P1による得意先番号245に対する働き掛けの強さや,得意先番号245が現に得意先番号245-1 0に同様の説明を行っていることに照らせば,甲10の1書面にも信用性が認められる。したがって,得意先番号245-3の関係でも,被告P1の意を受けたP2(甲10の2)の求めにより,原告が主張する説明があったと認められる。これに対する被告らの主張が採用できないことは,上記と同様である。 他方,原告は,得意先番号245-4の関係では,自己の主張に沿う証拠として, 原告代表者作成の報 る説明があったと認められる。これに対する被告らの主張が採用できないことは,上記と同様である。 他方,原告は,得意先番号245-4の関係では,自己の主張に沿う証拠として, 原告代表者作成の報告書(甲4)を提出する。しかし,上記書面には,「今回,新たにハルンキットを開発したので,ハルンキットを採用して頂けないか」という記載があるにとどまり,そもそも原告の主張を裏付ける証拠ではない。したがって,得意先番号245-4の関係では,原告が主張する説明があったとは認められない。 イそうすると,被告P1は,得意先番号245-3及び得意先番号245 -10の関係についてのみ,得意先番号245に虚偽の事実を告知させた(得意先番号245が虚偽の事実を主体的に告知する理由が見いだし難い以上,被告P1の強い求めによるものであると認めるのが相当である。)ことになる。そして,ピー・ポールⅡの製造販売が終了したとの告知内容は,虚偽であると認められる。 しかし,商品の製造販売が終了する理由としては一般に様々な事情が考えられ, 例えば営業方針の変更ということも考えられるから,その旨の告知によって直ちに 原告の営業上の信用が害されるとは認め難い。したがって,被告旭電機化成の行為が不正競争防止法2条1項15号の営業誹謗行為に該当するとは認められない。 もっとも,被告P1がピー・ポールⅡの製造販売が終了した旨の虚偽の事実を告知して原告の顧客を奪った行為は,営業活動として許容される範囲を逸脱しているというべきであるから,不法行為を構成すると認められ,また,この被告P1の行 為は被告旭電機化成の営業活動として行われたのであるから,被告旭電機化成の不法行為をも構成するというべきである。 6 争点6(債権侵害行為の成否)について当裁判 また,この被告P1の行 為は被告旭電機化成の営業活動として行われたのであるから,被告旭電機化成の不法行為をも構成するというべきである。 6 争点6(債権侵害行為の成否)について当裁判所は,得意先番号185との関係を始めとして原告が主張する全ての得意先との関係において被告らの不法行為(債権侵害)を認めることができないと判断 した。以下,詳述する。 (1) 証拠(甲17ないし19)によれば,被告P1が原告の代表取締役であった当時の原告と得意先番号3,24及び185との間の販売特約店契約書では,それらの特約店は,「本商品(注:ピー・ポールⅡのこと)と競業又は類似する他社商品を取扱う場合には,事前にアトレータと協議を行い,その了承を得なければな らない。」との約定が定められていたと認められる。 原告は,この約定に関して,被告P1が,上記の得意先の販売に原告の承諾なしにピー・ポールⅡと競合する被告旭電機化成のハルンキットを取り扱う債務不履行を行わせたことが,債権侵害の不法行為を構成すると主張する。 (2) 上記の得意先はいずれもピー・ポールⅡを取り扱っていた販売店であるか ら,被告P1がハルンキットの取扱いを求める行為は,自社商品の営業活動として行われたものと認められる。そして,他社商品の取引先に対して自社商品の利点等を説明して営業活動を行うことは,営業の自由として保障されるべきものであることからすると,相手方に類似競合品販売避止義務に違反して自社商品の取扱いをさせたことが違法とされるには,相手方が類似競合品販売避止義務を負っていること を知りながら,社会通念上自由競争の範囲を逸脱した手段で,相手方を裏切らせて 同義務に違反させたことを要すると解するのが相当である。 (3) これを踏まえて検討す を負っていること を知りながら,社会通念上自由競争の範囲を逸脱した手段で,相手方を裏切らせて 同義務に違反させたことを要すると解するのが相当である。 (3) これを踏まえて検討するに,まず,得意先番号3及び24についてみると,被告旭電機化成が,得意先番号3又は24に対し,上記に該当するような行為をしたと認めるに足りる証拠はない。 (4) 次に,得意先番号185について検討する。 ア証拠(甲4,35,61,81,乙15)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告P1と旭電機化成の従業員のP6らは,平成26年10月ないし11月頃,卸売業者である得意先番号185に対し,ハルンキットの取扱いを求め,取り扱わない場合には販売先に対して直接営業活動を行うとも述べたことから, 得意先番号185は,ピー・ポールⅡの販売先への営業活動はしないことを条件にこれに応じた。 (イ) 他方,得意先番号185とは別個の卸売業者(以下「S社」という。)は,平成27年5月頃,得意先番号185がピー・ポールⅡを販売していた得意先番号185-1に対し,ハルンキットの営業活動を開始し,同年7月には見 積書を提出するなどした。 (ウ) 他方,被告P1は,同年11月ないし12月頃,得意先番号185に対し,同行営業をするという形での販売協力を求めたところ,得意先番号185がピー・ポールⅡの販売先に対するハルンキットの営業はしないとして直ちに応じなかったことから,強引に協力を迫り,その結果得意先番号185-1への同行営 業をすることができた。 (エ) 得意先番号185-1は,同年末頃,ハルンキットを購入するものの,二社購買を行う方針とし,S社と得意先番号185からハルンキットを購入することとした。そのため, 業をすることができた。 (エ) 得意先番号185-1は,同年末頃,ハルンキットを購入するものの,二社購買を行う方針とし,S社と得意先番号185からハルンキットを購入することとした。そのため,S社は平成28年2月以降,得意先番号185-1に対してハルンキットを販売し,得意先番号185も,得意先番号185-1からの求 めがあったことから,ハルンキットの販売をした(なお,原告は得意先番号185 -1とS社との取引を否認し,その証拠として甲83を指摘するが,そこでは,得意先番号185-1の担当者は,原告からの照会に対し,得意先番号185以外の販売店との取引の有無は不明であると回答しているにとどまるから,乙15の信用性を覆すに足りるものではない。)。 イ被告P1は,原告の代表取締役として得意先番号185との販売特約店 契約を締結したのであるから,得意先番号185が原告に対して類似競合商品取扱避止義務を負っていることを認識していたと認められるところ,以上の事実によれば,その被告P1が,ピー・ポールⅡの販売先への営業を拒む得意先番号185を強引に同行営業させたのであるから,得意先番号185を教唆して類似競合商品取扱避止義務に違反させたものといえる。しかし,得意先番号185-1に対しては, 先にS社もハルンキットの営業を行っており,同得意先がハルンキットの採用を決めたのはS社の営業の成果によるものであることも十分に考えられる。そして,得意先番号185が得意先番号185-1に対して現実にハルンキットの販売を行うについては,得意先番号185-1の意向によるところが大きかったのであるから,結局において,得意先番号185が類似競合商品取扱避止義務に違反してハルンキ ットを販売するに至ったことが,被告P1による自由 ,得意先番号185-1の意向によるところが大きかったのであるから,結局において,得意先番号185が類似競合商品取扱避止義務に違反してハルンキ ットを販売するに至ったことが,被告P1による自由競争の範囲を逸脱した行為によって生じたものと認めることはできない。 そうすると,被告P1の行為が債権侵害の不法行為を構成するとは認められず,仮にそうでないとしても,被告P1の行為と原告による得意先番号185-1への販売利益の喪失との間に相当因果関係を認めることはできない。 7 差止請求等(本件請求1ないし3)の可否(1) 営業自体の差止請求(本件請求1)いずれの被告に対する請求についても,上記1のとおり,原告が差止請求権の発生根拠と主張する被告P1の競業避止義務が認められない以上,理由がない。 (2) 営業秘密の使用差止請求及び廃棄請求(本件請求2) ア被告P1に対する請求 (ア) 不正競争防止法3条に基づくものa まず,原告の顧客情報のうち,被告P1の記憶にあって現に開示及び使用したもの(別紙「取引先情報目録」別紙①の番号82及び207記載の者に関する同①記載の情報)については,記憶から失われたと認めるに足りるだけの証拠もない以上,被告P1が記憶としてなお保有していると認められる。他方,原告 の顧客情報のうちその余のものについては,前記争点3で検討した得意先については不正開示又は不正使用がされたとは認められず,それ以外の得意先については,被告P1が具体的にどの得意先について記憶しているのか明らかでない。 したがって,被告P1に対する営業秘密の使用差止請求については,別紙「取引先情報目録」別紙①の番号82及び207記載の者に関する同①記載の情報の使用 を差し止める限度でのみ か明らかでない。 したがって,被告P1に対する営業秘密の使用差止請求については,別紙「取引先情報目録」別紙①の番号82及び207記載の者に関する同①記載の情報の使用 を差し止める限度でのみ理由がある。 b 営業秘密の廃棄請求については,被告P1が,原告の顧客情報が記録された記憶媒体又はこれを印字した紙媒体を持ち出したとは認められない以上,理由がない。 (イ) 守秘義務違反に基づくもの 顧客情報に係る不正競争防止法3条に基づく差止請求と合意上又は信義則上の守秘義務に基づく差止請求とは選択的併合の関係にあると解されるところ,上記4及び(ア)で述べたところからすると,仮に守秘義務に基づく差止請求権が認められるとしても,その範囲は(ア)で認められる範囲を超えないというべきであるから,本請求については判断の必要がないというべきである。 イ被告旭電機化成に対する請求まず,原告の顧客情報のうち,被告P1の記憶にあって現に開示されて使用したもの(別紙「取引先情報目録」別紙①の番号207記載の者に関する同①記載の情報)については,被告旭電機化成がその保有を失ったと認めるに足りるだけの証拠もない以上,被告旭電機化成がなお保有していると認められる。他方,原告の顧客 情報のうちその余のものについては,被告P1から不正開示を受けたということが 認められない以上,そもそも被告旭電機化成にその使用の差止めを請求することはできない。 したがって,被告旭電機化成に対する営業秘密の使用差止請求については,別紙「取引先情報目録」別紙①の番号207記載の者に関する同①記載の情報の使用を差し止める限度で理由がある。また,営業秘密の廃棄請求については,被告旭電機 化成が,原告の顧客情報が記録された記憶媒体 「取引先情報目録」別紙①の番号207記載の者に関する同①記載の情報の使用を差し止める限度で理由がある。また,営業秘密の廃棄請求については,被告旭電機 化成が,原告の顧客情報が記録された記憶媒体又はこれを印字した紙媒体を保有しているとは認められない以上,理由がない。 (3) 営業誹謗行為の差止請求(本件請求3)上記5のとおり,被告旭電機化成による不正競争防止法2条1項15号の営業誹謗行為が認められない以上,被告旭電機化成に対する不正競争防止法3条に基づく 差止請求は理由がない。なお,被告旭電機化成について不法行為は成立するが,不法行為に基づく差止請求は認められない。 8 争点7(原告の損害額)について(1) 被告P1の得意先番号82関係の不正使用行為による損害額ア不正競争防止法5条2項による算定 原告は,被告P1が被告旭電機化成から受け取っている報酬は,被告P1が得意先番号82の関係の不正使用行為をしたことにより受けた利益であるとして,不正競争防止法5条2項による算定に基づく主張をする。 しかし,証拠(乙14の1ないし3)によれば,被告P1が被告旭電機化成から受け取っている報酬は定額であることが認められる。したがって,被告P1が被告 旭電機化成から受け取っている報酬は,被告P1が行った職務の内容によって左右される性質のものではないから,被告P1が得意先番号82の関係の不正使用行為をしたことにより受けた利益であるとはいえない。したがって,原告の上記主張は採用できない。 イ民法709条による算定 (ア) 証拠(甲49の13の1及び2,50の13の1及び2,51の16 の1及び2,52)によれば,得意先番号82との関係においては,●(省略)●算出したピ による算定 (ア) 証拠(甲49の13の1及び2,50の13の1及び2,51の16 の1及び2,52)によれば,得意先番号82との関係においては,●(省略)●算出したピー・ポールⅡの1本当たりの販売利益が●(省略)●,平成24年から平成26年の3年間におけるピー・ポールⅡの1年当たりの平均納入本数が●(省略)●であることから,平成24年から平成26年の3年間におけるピー・ポールⅡの1年当たりの平均販売利益が●(省略)●であることが認められる。そして, 甲63によれば,原告が,被告P1が原告の顧客情報を使用して得意先番号82に営業活動をしたことにより,得意先番号82が被告旭電機化成の商品であるハルンキットを購入するようになったため,得意先番号82から,●(省略)●と認められるから,この間の逸失利益は●(省略)●である。 (イ) これに対し,被告P1は,①被告P1が不正使用した得意先番号82 に関する情報は,被告旭電機化成が業界の情報に通じていく過程で公知の情報として入手することが可能なものであるから,営業秘密として保護される期間は3か月間である,②得意先番号82は,ピー・ポールⅡが備えていないハルンキットの特性を評価して,ハルンキットを購入することとしたにすぎないなどとして,不正使用行為による損害として認めるべきものはないと主張する。 しかし,①についてみると,被告P1が得意先番号82に営業をするまでに同得意先が原告の顧客であることを公知の情報として入手することが可能であったと認めるに足りる証拠はなく,また,その後の短期間に明らかになったはずであると認めるに足りる証拠もないから,被告P1の上記①の主張は採用できない。また,②についてみると,得意先番号82が,ピー・ポールⅡが備えてい る証拠はなく,また,その後の短期間に明らかになったはずであると認めるに足りる証拠もないから,被告P1の上記①の主張は採用できない。また,②についてみると,得意先番号82が,ピー・ポールⅡが備えていないハルンキット の特性を評価して,ハルンキットを購入したのであったとしても,それも結局のところ,被告P1が原告の顧客であった得意先番号82に不正使用行為をしたことがきっかけとなっている以上,被告P1が原告の顧客であった得意先番号82に不正使用行為をしたことにより,得意先番号82から●(省略)●こととに間に相当因果関係があることは明らかであるから,被告P1の上記②の主張も採用できない。 (2) 被告らの得意先番号207関係の営業秘密侵害行為による損害額 被告らは,共同して不正競争行為(被告P1による不正開示行為及び不正使用行為並びに被告旭電機化成による不正使用行為)をしているから,連帯して損害を賠償する義務を負う。 ア被告旭電機化成による損害額(ア) 不正競争防止法5条2項による算定 a ハルンキットの1本当たりの販売利益が15円であることについては,当事者間に争いがない。そして,証拠(乙13の1及び2)によれば,被告らの不正競争行為により販売されたハルンキットは,合計●(省略)●である(なお,原告は,これが●(省略)●であると主張するが,これを裏付ける証拠はない。)。 そうすると,被告旭電機化成が得意先番号207の関係の不正使用行為をしたこと により受けた利益の額は,●(省略)●であると認められる。 b これに対し,被告旭電機化成は,①原告が主張する販売喪失した本数及び原告の商品の利益額を超える形で原告に損害が生じるはずがない,②得意先番号207は,ピー・ポールⅡが備 ●であると認められる。 b これに対し,被告旭電機化成は,①原告が主張する販売喪失した本数及び原告の商品の利益額を超える形で原告に損害が生じるはずがない,②得意先番号207は,ピー・ポールⅡが備えていないハルンキットの特性を評価して,ハルンキットを購入することとしたにすぎないとして,不正使用行為による損害とし て認めるべきものはないと主張する。 まず,①についてみると,原告と得意先番号207との取引が継続していれば,原告は,同得意先がその年に必要とする数量の販売をすることができたはずであり,被告旭電機化成が販売した数量はそのような数量であると推認されるから,その数量が原告の従前の実績を上回るものであるとしても,原告は被告が受注したのと同 じだけの数量を受注することができたはずであると考えられる。また,原告の得意先番号207に対する販売実績を見ると,平成24年には●(省略)●を(甲49の12の1及び2),平成26年には●(省略)●を(甲51の15)それぞれ納入しており,被告が販売した●(省略)●を販売する能力もあったと認められる。 したがって,①のうち販売数量をいう点は理由がない。他方,原告の得意先番号2 07との関係における利益単価は,平成24年も平成26年も●(省略)●であり (甲49の12の1及び2,52の1,51の15),他の得意先との関係においても平成24年から平成26年の3年間は得意先ごとに利益単価は変動していないこと(甲49ないし53〔枝番を含む〕)に照らせば,原告が得意先番号207との取引を継続していた場合の●(省略)●における同得意先との関係における利益単価も,平成24年及び平成26年と変わらずに●(省略)●になっていたと推認 される。したがって,●(省略)●(●(省略)●)を超える利 いた場合の●(省略)●における同得意先との関係における利益単価も,平成24年及び平成26年と変わらずに●(省略)●になっていたと推認 される。したがって,●(省略)●(●(省略)●)を超える利益は,覆滅されると認められる。次に,上記②の主張については,上記(1)イ(イ)のとおり採用できない。 以上によれば,原告の損害額は,●(省略)●である。 (イ) 民法709条による算定 原告が主張する損害額(●(省略)●)は,上記(ア)で認定された損害額を上回る関係にはないから,判断は不要である。 イ被告P1による損害額(ア) 不正競争防止法5条2項による算定原告は,被告P1が被告旭電機化成から受け取っている報酬は,被告P1が得意 先番号207の関係の不正開示行為及び不正使用行為をしたことにより受けた利益であるとして,不正競争防止法5条2項による算定に基づく主張をする。 しかし,上記(1)アと同様の理由により,原告の主張は採用できない。 (イ) 民法709条による算定原告が主張する損害(●(省略)●)は,販売喪失の逸失利益であり,上記ア (ア)で認定された損害と別個の損害を主張するものではなく,その額は,上記ア(ア)で認定された損害額を上回る関係にはないから,判断は不要である。 ウ小括以上によれば,被告らの不正競争行為による原告の損害は,●(省略)●である。 (3) 得意先番号245-3関係の虚偽告知行為による損害額(なお,得意先番 号245-10関係の虚偽告知行為は,損害賠償請求の対象になっていない。) 原告は,別紙「内訳書」の「ユーザー」欄の得意先番号245-3に対応する項のとおり,得意先番号245-3との関係における平成24年から平成26年 ,損害賠償請求の対象になっていない。) 原告は,別紙「内訳書」の「ユーザー」欄の得意先番号245-3に対応する項のとおり,得意先番号245-3との関係における平成24年から平成26年の年平均利益額が●(省略)●(「ピー・ポールⅡ袋ナシ〔売価●(省略)●〕」,「ピー・ポールⅡ袋ナシ〔売価●(省略)●〕」,「ピー・ポールⅡ袋ナシと袋」の各項に対応する「平均値」欄のうち「利益額」欄記載の利益額の合計)であると ころ,原告は得意先番号245-3から●(省略)●にわたって得意先番号245を通じた受注ができなかったことから,損害額は●(省略)●であると主張する。 まず,原告は,受注できなかったピー・ポールⅡの本数を●(省略)●(別紙「内訳書」の「ユーザー」欄の得意先番号245-3に対応する項の「平均値」欄のうち「納入本数」欄記載の納入本数の合計に●(省略)●),袋の個数を●(省 略)●(別紙「内訳書」の「ユーザー」欄の得意先番号245-3に対応する項のうち「ピー・ポールⅡ袋ナシ+袋」の項の「平均値」欄のうち「納入本数」欄記載の納入本数に●(省略)●)であると見積もっている。しかし,原告に替わって得意先番号245-3から受注を受けていた形になる被告旭電機化成の販売実績は,ハルンキット●(省略)●であり(弁論の全趣旨),この本数は得意先番号245 -3がその期間に必要とした数量の全てであると考えられるから,この被告旭電機化成の販売実績以上に受注できたとは認められない。そして,原告は,ピー・ポールⅡについては,●(省略)●とし(甲50の3の1ないし3,51の3の1及び2,52の2),袋については,●(省略)●としていた(甲49の2の4,50の3の4及び5,51の3の3及び4,52の2)ことに照らせば,●(省略)●, 甲50の3の1ないし3,51の3の1及び2,52の2),袋については,●(省略)●としていた(甲49の2の4,50の3の4及び5,51の3の3及び4,52の2)ことに照らせば,●(省略)●, ●(省略)●が損害額であると認定するのが相当である。 以上より,被告らは連帯して●(省略)●を賠償する義務を負う。 (4) 認容額の計算ア損害額上記で認定したとおり,被告P1の単独不法行為による損害の額は上記(1)のと おり●(省略)●,被告P1と被告旭電機化成の共同不法行為による損害の額は上 記(2),(3)のとおり●(省略)●である。 イ弁護士費用相当額認容額を始めとする本件に現れた一切の事情を考慮すると,被告P1の単独不法行為と相当因果関係に立つ弁護士費用の損害額は●(省略)●,被告P1と被告旭電機化成の共同不法行為と相当因果関係に立つ弁護士費用の損害額は●(省略)● と認めるのが相当である。 ウ認容額上記アの損害額に上記イの弁護士費用相当額を加算した認容額は,被告P1については70万1250円,被告旭電機化成については28万5050円(ただし,28万5050円の限度で連帯責任)となる。 第4 結論以上の次第で,原告の請求は,上記第3の7及び8認定の限度で理由があるから,その限度で認容することとし,その余は理由がないからいずれも棄却することとする。なお,仮執行宣言については,申立てがないことに鑑み,これを付さないこととする。よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 髙松宏之 裁判官 野上誠一 裁判官 大門宏一郎 (別紙)取引先情報目録 1 顧客名簿「得意先」「フリガナ」「会社名」「氏名」「敬称」「担当者」「電話」「ファックス」「〒」「都道府県」「市町村」「番地1」「番地2」「請求先」などの項目分けがなされ,当該項目行に続き●(省略)●にわたって,顧客の情報が記載されている名簿(別紙①)。 2 顧客情報前項の顧客情報記載の顧客ごとの「購入実績」「購入時期」「購入本数」「購入単価」「購入金額」「(顧客が卸・販売店などの場合)顧客の販売先」等に関する情報(別紙②③参照) 以下,別紙●(省略)●

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る