-- 主文 被告乙川は,原告らに対し,各3294万8695円及びこれに対する平成12年2月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らの被告乙川に対するその余の請求及び被告神奈川県に対する請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告らに生じた費用の10分の3と被告乙川に生じた費用の5分の3を被告乙川の負担とし,原告ら及び被告乙川に生じたその余の費用並びに被告神奈川県に生じた費用を原告らの負担とする。 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 被告らは,原告らに対し,連帯して各5000万円及びこれに対する平成12年2月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告らの負担とする。 仮執行宣言第2事案の概要本件は,原告らが,被告乙川が経営する認可外保育施設「丙保育ルーム(以下」「本件保育施設」という)に通園していた原告らの子である甲野一郎(以下「一。 郎というが平成12年2月18日に被告乙川の暴行によって死亡した事件以」。)(下「本件事件」という)について,(1)被告乙川に対し,被告乙川が殺意をも。 って一郎を死亡させたと主張し,民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求として,(2)被告神奈川県に対し,①神奈川県福祉部児童福祉課(以下「県児童福祉課」という)には,児童福祉法(以下,特に断りないの限りは平成12年2月。 18日の時点で施行されていた同法のことを指す)に基づき認可外保育施設に対。 -- する監督権限を有し,かつ,被告乙川が継続的に園児に対して暴行・虐待を加えていたことを十分認識し,又は認識し得たにもかかわらず,上記権限を行使せず閉鎖命令などの処分を怠った結果,本件事件を防ぐことがで る監督権限を有し,かつ,被告乙川が継続的に園児に対して暴行・虐待を加えていたことを十分認識し,又は認識し得たにもかかわらず,上記権限を行使せず閉鎖命令などの処分を怠った結果,本件事件を防ぐことができなかったという不作為の違法があると主張し,また,②被告神奈川県が設置,運営するα警察署(以下「α署」という)も個人の生命・身体・財産の保護のため強制捜査を行う権限がある。 ところ,既に本件保育施設で園児への虐待の疑いのある旨の通報を受け,別の園児が本件保育施設在園中に原因不明で死亡するという事故が起きていたにもかかわらず,適切な捜査の遂行及び被告乙川の逮捕,検挙を怠った結果,本件事件を防ぐことができなかったという不作為の違法があると主張し,国家賠償法1条1項に基づく国家賠償請求として,原告らそれぞれに生じた損害であるとする各7444万8789円の内各5000万円及びこれに対する不法行為の日である平成12年2月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 前提となる事実(1)原告甲野太郎(以下「原告太郎」という)と原告甲野花子(以下「原告。 花子」という)は,平成○年△月に入籍し,同年□月×日に同人らの第1子とし。 て一郎が誕生した。原告らは,平成12年1月3日から,一郎を本件保育施設に預けるようになった。なお,本件事件当時の一郎の年齢は約2歳であった(甲26,62。 )(2)被告乙川は,婚姻歴はないものの長男を出産し,平成10年ころ勤めていた会社を退職した後,平成11年2月1日ころ,神奈川県α市α東に所在するビル内において認可外保育施設である本件保育施設を開設した(甲29。 )(3)県児童福祉課の職務本件保育施設は,児童福祉法39条1項に規定する業務を目的とする施設であって,本件 市α東に所在するビル内において認可外保育施設である本件保育施設を開設した(甲29。 )(3)県児童福祉課の職務本件保育施設は,児童福祉法39条1項に規定する業務を目的とする施設であって,本件当時,神奈川県知事が,同法35条4項の認可を受けていない認可外保育施設に対し,同法59条所定の監督権限を有していた。 -- そして,本件当時,県児童福祉課が,保育所の認可,保育所の保育内容の指導,児童手当の支給といった児童福祉に関する事務一般を取り扱っており,その他認可外保育施設に関する事務も行っていた(甲17。 )(4)原告らは,一郎を,被告乙川の経営する本件保育施設に通園させていたところ,平成12年2月18日,被告乙川は,本件保育施設内で一郎に対し暴行を加え,一郎を死亡するに至らせた(甲30,31。 ) 争点 (1)被告乙川の殺意の有無について(2)県児童福祉課の不作為による不法行為について(3)α署の不作為による不法行為について(4)消滅時効の成否について(5)原告らの損害について 争点に対する当事者の主張(1)争点(1)(被告乙川の殺意の有無)について【原告らの主張】被告乙川は,一郎を乱暴に突き倒して,その後頭部を本件保育施設内の洗面所に向かう段付近の床に激しく衝突させるという暴行を加え,その結果,頭がい骨骨折を伴う頭部打撲等の傷害に基づく頭がい内損傷により一郎を死亡させた。その際,被告乙川が殺人の確定的故意をもって,一郎を殺害したがい然性が極めて濃厚である。すなわち,一郎は,被告乙川がAaに暴行を振るって死亡させた際に,本件保育施設に居合わせたものであり,被告乙川は,一郎にいずれAaの事件をしゃべら,。 れて事件が発覚することを恐れ口封じのために一郎を殺害したというべきであるこのことは,原告花子が,一 た際に,本件保育施設に居合わせたものであり,被告乙川は,一郎にいずれAaの事件をしゃべら,。 れて事件が発覚することを恐れ口封じのために一郎を殺害したというべきであるこのことは,原告花子が,一郎の異常な様子を見て救急車を呼んだ方がよいのではないかと何度も言っていたにもかかわらずこれを押し止め,さらには,近くにある小児科医を呼びに行く振りまでして119番通報を遅らせたという被告乙川の不自然かつ不可解な事後の行動によっても裏付けられている。 -- 【被告乙川の主張】一郎に対して,けがをさせたいという意識はなかった。一郎が,後頭部に受けたであろう衝撃は大きいものであったが,それとは正反対に,被告乙川の感情は「虚無」の状態であったのであり,したがって,原告らの主張,特に故意の存在については相入れないものである。 【被告神奈川県の主張】,。 被告乙川の不法行為についてはおおむね刑事確定記録のとおりであると認めるただし,被告乙川の「未必の故意」については,刑事確定記録により確認することができないため不知である。 (2)争点(2)(県児童福祉課の不作為による不法行為)について【原告らの主張】ア規制権限不行使と賠償責任県児童福祉課には,後記イに主張するように,認可外保育施設に対し事業停止命令及び閉鎖命令を発する権限があるところ,県児童福祉課は,本件保育施設で継続的,常習的に園児に対する虐待が行われていることをほとんど確信するまで認識していたにもかかわらず,上記権限を行使しなかった不作為の違法があり,上記権限を行使していれば本件事件を防ぐことができたのに,これを怠った結果本件事件を引き起こしたのであって,国家賠償法上の損害賠償責任を負う。 行政の規制権限の行使は,原則として行政庁の裁量に属するが,権限の不行使が著しく合理性を欠く場合に ができたのに,これを怠った結果本件事件を引き起こしたのであって,国家賠償法上の損害賠償責任を負う。 行政の規制権限の行使は,原則として行政庁の裁量に属するが,権限の不行使が著しく合理性を欠く場合には,権限行使が義務化してその不作為が違法行為となると解され,その要件としては,①国民の生命,健康に対する具体的な危険が切迫していること,②行政庁が上記危険を知っているか,又は容易に知り得る状態にあること,③行政庁が,規制権限を有し,かつこれを行使しなければ結果発生を防止し得ないこと,④国民がその規制権限の行使を要請し,期待し得る事情にあること,⑤行政庁が規制権限を行使すれば,容易に結果発生の防止をすることができることなどの事情から判断される。 -- イ県児童福祉課の権限及び作為義務(ア)事業停止,閉鎖命令を行う権限及び義務本件事件当時の児童福祉法59条1項及び3項は,都道府県知事において,児童の福祉のために必要があると認めるときは,認可外保育施設について,その設置者若しくは管理者に対し,必要と認める事項の報告を求め,又は当該職員をして,その施設に立ち入り,その施設の設備若しくは運営について必要な調査若しくは質問をさせることができ,さらには,都道府県児童福祉審議会の意見を聴いて,その事業の停止又は施設の閉鎖を命ずることができるという強力な権限を規定していた。 県児童福祉課は,認可外保育施設に関する事務を担当しており,上記立入調査権等の行使についてもその任に当たっていた。すなわち,県児童福祉課は,立入検査の結果,認可外保育施設が適正基準に合致しないことが判明した場合は,当該施設に対して,具体的事項に関して改善を求める行政指導を実施し,さらに,当時の児童福祉法上,県児童福祉審議会の意見を聴いた上で,認可外保育施設に対し,事業停止命令又は施 いことが判明した場合は,当該施設に対して,具体的事項に関して改善を求める行政指導を実施し,さらに,当時の児童福祉法上,県児童福祉審議会の意見を聴いた上で,認可外保育施設に対し,事業停止命令又は施設閉鎖命令を発することができるとされていた。この点,被告神奈川県は,昭和56年度の改正児童福祉法及びこれを受けた昭和56年7月2日児発第566号「無認可保育施設に対する指導監督の実施について」と題する通達並びに既に存在した「児童福祉施設最低基準(昭和23年12月29日厚生省令第6」3号)などに基づき,劣悪な認可外保育施設を排除する義務を負っていたものである。 しかしながら,本件において,被告神奈川県は,後述するように被告乙川が本件保育施設の園児に対し虐待等の加害行為を行っていたことを予見していたにもかかわらず,上記児童福祉法所定の手続に向けた作業には全く着手せず放置していたものであり,劣悪極まる本件保育施設を直ちに排除すべき法律上の義務及び園児の生命,身体の安全を守るために適正に前記権限を行使すべき法律上の義務を怠ったという不作為の違法がある。 (イ)県児童福祉課の事情聴取義務-- 県児童福祉課は,本件保育施設について複数の虐待情報を入手して第1回目の立入調査(以下「第1回立入調査」という)を行い,その結果虐待の存在について。 の濃厚な疑いを払しょくできなかった。このような場合,県児童福祉課としては,児童の福祉の保障という県の第一義的な行政責任を果たすために,最低限,外の園児,過去に通園していた児童の保護者,本件保育施設において働いているという外の保育者,近隣住民,園児の傷の治療に当たった医師等の本件保育施設や被告乙川についての情報を得られる可能性のある者から,事情を広く聴取するなどして,被告乙川による園児の扱いの実態をより深く把握す 外の保育者,近隣住民,園児の傷の治療に当たった医師等の本件保育施設や被告乙川についての情報を得られる可能性のある者から,事情を広く聴取するなどして,被告乙川による園児の扱いの実態をより深く把握するように努力すべき作為義務があったのにこれを怠った不作為の違法がある。 (ウ)県児童福祉課の警察との連携義務本件保育施設においては,短期間に重傷3件を含む6件もの虐待を疑うべき事案が集中して報告されている以上,当然本件保育施設内で犯罪が行われていると疑うべきであり,県児童福祉課は,警察と連携して,事実(特に被告乙川による園児の扱いの実態)を調査把握すべき作為義務も生じていた。 (エ)県児童福祉課の情報公表義務県児童福祉課としては「平成9年9月25日児発596号都道府県知事指定都,市市長中核市長あて厚生省児童家庭局長通達」に基づき,関係市町村長と連絡して,本件保育施設が実施している保育の内容に関する事項(既に把握していた「保育の体すらなさない極めて劣悪な内容の保育が行われていること」及び「虐待が常習的に行われている疑いもあること」などを含む)についての情報を一般に提供。 する義務も生じていたにもかかわらずこれを怠った過失がある。 ウ予見内容及び作為義務の内容県児童福祉課の権限の行使については,当然児童の福祉の確保のために必要か否かという観点から論じられるべきであり,予見可能性についても,児童一般の生命身体に対して危険が切迫していることについての予見可能性が問題とされるべきである。ここでいう予見の対象は,児童福祉法の趣旨などからは,本件保育施設にお-- いて園児が虐待により死亡するという結果までを予見することを求めるものではなく,園児の生命及び心身に重大な影響を及ぼす児童の福祉に著しく有害な虐待が繰り返し行われることへの予見でもっ お-- いて園児が虐待により死亡するという結果までを予見することを求めるものではなく,園児の生命及び心身に重大な影響を及ぼす児童の福祉に著しく有害な虐待が繰り返し行われることへの予見でもって足りるというべきである。 ①県児童福祉課は,本件保育施設について複数の虐待情報を入手し,平成11年7月19日第1回立入調査を行い,その結果,本件保育施設で虐待が行われていることについて濃厚な疑いを払しょくできなかったことはもちろん,少なくとも保育の質が最悪で,園児の傷害事故はいつ起きてもおかしくないことは明確に認識していたのであって,その時点で,本件保育施設において園児への虐待が常習的に行われていたという濃厚な疑いを有していたことは明らかである。 ②また,同年10月15日,Ba及びCaの母親らから,本件保育施設で同児らが受傷したという重大な情報がβ児童相談所(以下「児相」という)を通じて。 県児童福祉課に寄せられ,短期間にこのような重傷3件を含む6件もの虐待を疑うべき事案が本件保育施設に関して集中して寄せられたのであるから,この時点において,県児童福祉課は,本件保育施設において園児に対して常習的な虐待が行われていることについて,ほぼ確実という程度までの強い疑いを有していた。 ,,,,③同月26日県児童福祉課のD課長代理は本件保育施設に対し休園指導,(「」更には閉鎖命令をも辞さない構えで第2回目の立入調査以下第2回立入調査という)を行ったところ,その際の被告乙川の弁解内容が不自然であり,第1回。 立入調査において指示された点も全く改善されていなかったため,本件保育施設の休園を勧告した。さらに上記立入調査終了後,児相の職員が,α市立病院に立ち寄って,担当医師からBaのけがが両親によるものである可能性が薄くなったことを 点も全く改善されていなかったため,本件保育施設の休園を勧告した。さらに上記立入調査終了後,児相の職員が,α市立病院に立ち寄って,担当医師からBaのけがが両親によるものである可能性が薄くなったことを聞き,同職員はその旨県児童福祉課にも連絡しているのであるから,この時点で,県児童福祉課は,本件保育施設で継続的・常習的に園児への虐待が行われていることを,ほとんど確信するまでに認識していたことは明らかである。 ④さらに,同年12月21日,県児童福祉課の職員Eが,本件保育施設を訪問して,従前と変わらず保育者が被告乙川しかおらず,かつ,被告乙川が外の園児に-- 対して同人の長男が暴行するのを注意すらしないのを見て「いつまた幼児がけが,」,,を負うか分からないという強い危ぐも抱いた時点以降は県児童福祉課としては本件保育施設で継続的・常習的に園児への虐待が行われていることの認識はなおさら強固になったことは明白である。 ⑤小括したがって,遅くとも同年10月26日の段階で,更にはどんなに遅くとも同年12月21日の段階において,県児童福祉課には,被告乙川の暴行等の加害行為により本件保育施設の園児の生命・身体に危害が加えられる具体的危険が存在し,かつ,その危険の発生が切迫していたことについての認識があったか,少なくとも,それを容易に知りうる状態にあったというべきである。 仮に,県児童福祉課自身が得た情報だけでは予見できなかったとしても,近隣住民,本件保育施設利用者の保護者等から広く情報を収集するとともに,警察と連携して事実を調査把握するなど前記イ(イ)ないし(エ)の作為義務を尽くしていれば,平成11年12月21日の時点で,被告乙川による本件保育施設での暴行等の加害行為により本件保育施設の園児の生命・身体に危害が加えられる危険を予見することが )ないし(エ)の作為義務を尽くしていれば,平成11年12月21日の時点で,被告乙川による本件保育施設での暴行等の加害行為により本件保育施設の園児の生命・身体に危害が加えられる危険を予見することができたというべきである。 エ結果回避可能性について(ア)遅くとも同月21日の段階で,県児童福祉課が事業停止命令若しくは施設閉鎖命令を発し,又は少なくとも本件保育施設に常習的虐待疑惑があることを公示するなどして,保護者らに注意を喚起してさえいれば,原告らがその直後一郎を本件保育施設に通園させて被告乙川によって死に至らしめられることはなかったのである。 また,平成12年2月4日には,Aaが本件保育施設に預けられていた間に脳挫,(「」。)傷の障害を負いそのまま同日に死亡するという事件以下Aaの事件というが起きているが,この段階で,もし県児童福祉課が,常に本件保育施設を監督し,随時調査や指導を行っていれば,当然その直後にこの死亡事故を把握し,α署や病-- ,,,院等とも連絡を取り合って閉鎖命令や園児の保護者への警告その他適切な指導処置を行うことができたのは確実であり,そうであれば2週間も後の本件事件は防止できたことが明白である。 (イ)情報公表義務違反について平成9年に児童福祉法が改正されて市町村についての保育に関する情報提供の義務が規定された(同法48条の2。この法改正を受けて情報提供義務の具体的内)容について厚生省が発した通達(平成9年9月25日児発596号,以下「平成9年9月25日厚生省児童家庭局通達」という)に基づく「本件保育施設の保育の。 内容の公表義務」さえ被告神奈川県が履行していれば,園児の保護者らは,本件保育施設のような危険な保育施設に我が子を通園させることを直ちにやめることは明らかであり,わざわざ事 本件保育施設の保育の。 内容の公表義務」さえ被告神奈川県が履行していれば,園児の保護者らは,本件保育施設のような危険な保育施設に我が子を通園させることを直ちにやめることは明らかであり,わざわざ事業停止,施設閉鎖までしなくとも,本件結果は容易に回避できた。 オ補充性等について園児の保護者らは,業として本件保育施設を経営する被告乙川を,プロの保育士として信頼し,お金を払って子らを預けていたのであり,しかも,被告乙川がほかに大人のいない状況を選んで,かつ特にものを言えぬ年少の幼児のみを対象として虐待を加えた外,警察の捜査や県児童福祉課や被害児の両親らの調査,質問等に対しても,常にでたらめを述べて言い逃れをしていた以上,被告乙川による暴行,虐待の事実を,自ら突き止めて防止することはほとんど不可能に近かった。 他方,県児童福祉課は,上述のように立入調査の上,事業停止命令・施設閉鎖命令を発する権限も有しており,前述のごとく私人による防止は不可能である以上,県児童福祉課がこの権限を行使しなければ新たな幼児への虐待を防止し得なかったことも明らかである(補充性の充足。 )もちろん,原告らは,上記のような権限を有する県児童福祉課に対して,自らの幼い子らの生命身体を守るため,納税者としてもその権限行使を要請し,期待し得る状況にあったことも明白である(期待可能性の充足。 )-- カ以上より,本件において,県の児童福祉課が,どんなに遅くとも平成11年12月21日以降も,被告乙川に対して本件保育施設の事業停止命令を発せず,それどころか何らの監督もせず漫然と本件保育施設の運営を放置していたという不作為は,明らかな違法行為となるといわざるを得ない。 キ前記(2)に論じた被告神奈川県の各権限及び作為義務の存在を前提として,仮に,県児童福祉課において,本 本件保育施設の運営を放置していたという不作為は,明らかな違法行為となるといわざるを得ない。 キ前記(2)に論じた被告神奈川県の各権限及び作為義務の存在を前提として,仮に,県児童福祉課において,本件施設内で継続的,常習的に園児に対する虐待が行われていることまでは認識できなかったとしても,同課としては,以下の内容の危険性を予見し得たのであるから,本件保育施設に対し,事業停止又は閉鎖命令等を発すべきであったのにこれを怠った権限不行使の違法がある。 (ア)危険の切迫性及び予見内容について①遅くとも,平成11年12月21日の県児童福祉課のEの訪問の時点では,本件保育施設では,保育の質が極めて劣悪であり,いつまた園児が重大な傷害を負ってもおかしくないことは,被告神奈川県においても十分予見することは可能であったことが明らかである。 すなわち,児童福祉法により都道府県知事に対して第一義的にかつ強く要請されていた(認可外)保育園における幼児の生命,身体の安全の確保という義務との,関係において,県児童福祉課は,本件保育施設の保育の質が極めて劣悪であることにより園児の生命,身体に重大な危険が切迫していることは予見していたものである。 したがって,少なくともこの時点で,県児童福祉課は,児童福祉法の委任に基づき,そのような劣悪きわまる認可外保育施設につき,事業停止又は施設閉鎖命令を行使すべき作為義務を負っていたというべきであり,その作為義務さえ果たしていれば,本件事件は容易に防止し得たことも明白である。 ②本件での県児童福祉課の対応は,園児の生命や身体に対し危険が急迫しているような場面であったにもかかわらず,その行使すべき権限の行使を怠り,漫然と被告乙川による本件保育施設の継続を黙認し続けたことによって,その園児の生命-- への危険を現実化して が急迫しているような場面であったにもかかわらず,その行使すべき権限の行使を怠り,漫然と被告乙川による本件保育施設の継続を黙認し続けたことによって,その園児の生命-- への危険を現実化してしまった不作為の違法がある。すなわち,県児童福祉課は,通達に定められた最低基準すら守られず,第2回立入調査と改善指導にもかかわらず5か月経っても改善のかけらもみられない劣悪極まる本件保育施設を直ちに排除すべき法律上の義務の履行を怠った違法とともに,園児の生命,身体の安全を守るために適切に行使すべき法律上の権限行使を怠った違法も存在する。 (イ)結果回避可能性本件では県児童福祉課が把握した内容の「保育施設としての劣悪性」が直接の原因となって,一郎が死亡したわけではないが,被告神奈川県は,昭和56年度の改正児童福祉法等に基づき,劣悪な認可外保育施設を排除する義務を負っていたにもかかわらず,本件保育施設に対し2度にわたる立入調査と文書による指導を行ったが改善が認められず,本件保育施設は劣悪な認可外保育施設に該当していたにもかかわらず,上記法により明示に要求されていた「排除」にむけての対処を何一つせず漫然と放置した結果,本件事件を防げなかったものである。 仮に,被告神奈川県の違法な不作為がなく,本件保育施設の排除に向けて適切な対処をしていれば,本件事件は容易に防げたことが明らかである以上,結果回避可能性も,因果関係も認められる。 【被告神奈川県の主張】ア被告神奈川県の認可外保育施設に対する規制権限及び作為義務について(ア)事業停止,閉鎖命令について規制権限の存在についてはおおむね認めるが,県児童福祉課の不作為に係る原告らの主張は争う。 認可外保育施設は,児童福祉法上,例外的暫定的施設であって,昭和56年に児童福祉法が改正され,都道府県知事に認可 権限の存在についてはおおむね認めるが,県児童福祉課の不作為に係る原告らの主張は争う。 認可外保育施設は,児童福祉法上,例外的暫定的施設であって,昭和56年に児童福祉法が改正され,都道府県知事に認可外保育施設に対する報告徴収権,立入調査権及び事業停止命令又は施設閉鎖命令の処分を行う権限が付与されたが,認可を受けた保育施設に対するような改善勧告,改善命令(同法46条3項)などの権限は付与されず,あくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現できる行政指導が-- 中心であり,その指導監督権限は限定的なものであった。 本件事件当時の制度は,保育者が保育中の子供に加害行為を及ぼすという事態の発生は全く想定していなかったが,本件事件を契機に,平成13年11月に児童福祉法が改正され,認可外保育施設の監督をいわば「育成指導」から「懲罰指導」に転換し,認可外保育施設の届出制の創設や事業停止命令,閉鎖命令に加え勧告,公表等を監督手段として加えるなど,その強化を図ったものである。すなわち,本件事件当時,児童福祉法59条には,都道府県知事に認可外保育施設に対する,報告徴収,立入調査,事業停止命令及び施設閉鎖命令の各権限のあることは規定されたものの,その具体的な行使要件,行使手続は,児童福祉審議会への諮問を除き,平成13年の改正に至るまで全く定められられていなかった。 (イ)県児童福祉課の事情聴取義務の不存在原告は,県児童福祉課には広範な事情聴取を行うべき作為義務があったと主張するが,公務員の作為義務を認める前提として,当該公務員に権限が付与されていることが不可欠であるところ,児童福祉法59条ではそのような権限は存在せず,また前記報告徴収及び立入調査の権限は,施設設置者又は施設管理者に対してのものであり,園児やその保護者等の関係者にまで及ぶものではなく,か であるところ,児童福祉法59条ではそのような権限は存在せず,また前記報告徴収及び立入調査の権限は,施設設置者又は施設管理者に対してのものであり,園児やその保護者等の関係者にまで及ぶものではなく,かつ,これらの権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないこと(同法59条2項,34条の4第3項)からすれば,県児童福祉課の職員が,専ら傷害行為を行った者を発見することを目的として,関係者に対する事情聴取を行うことはできない,。 ,,し傷害行為を立件するための捜査を行うことはできないまた児童福祉法2条3条は,児童福祉に関する抽象的な趣旨や理念を規定しているが,これらの規定から直ちに広範な範囲に及ぶ関係者からの事情を聴取する権限を導き出すことは認められない。 (ウ)県児童福祉課の警察との連携義務の不存在児童福祉法59条1項の規定からは,警察と連携を図って事実を調査,把握すべき権限や,立入調査の内容を一般に提供するように努める権限がないことも,明ら-- かである。 (エ)県児童福祉課の情報公表義務の不存在さらに,認可外保育施設の運営状況その他児童福祉のために必要な事項を公表することを定める規定も当時存在せず,その権限は認められない。 原告らによれば,前記平成9年9月25日厚生省児童家庭局通達には,虐待が常習的に行われている疑いもあること等を含む事柄を一般的に情報提供すべき努力義務があったとされるが,同通達は施設内の事件,事故にかかる情報を一般的に提供するような内容を含むものではなく,原告らの主張には根拠がない上,そもそも園児らの負傷が,本件保育施設の保育中に発生したものかどうか,また,保育中に発生したとしても,それが園児の自過失によるものか,第三者の加害行為によるものか,当時得られた情報からでは十分な事実の確認 園児らの負傷が,本件保育施設の保育中に発生したものかどうか,また,保育中に発生したとしても,それが園児の自過失によるものか,第三者の加害行為によるものか,当時得られた情報からでは十分な事実の確認ができなかったのであるから,このような不確定な情報を一般的に情報提供することはできない。 イ予見可能性に対する反論①本件における特殊事情について被告乙川が逮捕されるまでの間,県児童福祉課が把握していたものは,刑事事件,,として捜査の結果把握された園児への一連の加害行為のごく一部に過ぎずさらに第三者の専門家である医師からも保護者からの虐待が示唆されるケースが含まれていたなど,捜査により明らかにされた事件の全ぼうに比べると極めて部分的かつ断片的な情報でしかなかった。したがって,被告乙川による犯罪行為を一般的に推察するに足りる情報が不足していたことに加えて,児童福祉法59条2項に定めるとおり,元来,立入調査の権限は,犯罪捜査のために認められたものではなく,犯罪行為の発見は調査の目的及び想定の外にあること,さらには,従来,保育施設の保育者による虐待という報告も皆無であったことから,被告乙川のような特異な人格の者による想定外の犯行は,十分な注意を払っていたとしても,見抜くことは不可能な状態であった。 ②丁保育所からの通報後,同時点での県児童福祉課の予見可能性-- 平成11年7月12日,県児童福祉課が児相などを通じて本件保育施設の近隣に所在する認可外保育施設である「丁保育所」の園長からの通報により本件保育施設に関して得た情報は,Faの負傷の件については本件保育施設による保育中に保育者の故意又は過失による可能性も否定できなかったが,その他の情報については直ちに虐待によるものとは判断することはできなかった。県児童福祉課は,当該時点において ついては本件保育施設による保育中に保育者の故意又は過失による可能性も否定できなかったが,その他の情報については直ちに虐待によるものとは判断することはできなかった。県児童福祉課は,当該時点においては,本件保育施設の保育体制に何らかの不備があるものととらえ,本件保育施設の状況等について具体的に調査を進め,指導の対象として厳しく改善を図る必要が認められたので,第1回立入調査を行うこととした。したがって,上記通報に対する対応としては妥当なものであって,この時点で県児童福祉課としては,被告乙川が本件保育施設の園児に対し傷害行為を行っていたこと及び園児の生命,身体に重大な危険が切迫していたと予見することはできない。 ③第1回立入調査後の時点での県児童福祉課の予見可能性第1回立入調査では,県児童福祉課の職員は,本件保育施設内の状況の把握に努め,Faのけがの件については,被告乙川より同児がけがをした旨の供述を直接得ることはできたものの,被告乙川は同児のけがが被告乙川の行為によるものであることを明確に否定し,さらに,同児の両親が保育料の支払をめぐるトラブルの意趣返しとして行ったかのような答弁をしたことが認められた。また,県児童福祉課には,園児の保護者らに質問権等の権限がなかった以上,その段階で被告乙川が本件保育施設の園児に対し傷害行為を行っていたことを認識し,さらに今後被告乙川の傷害行為により,園児の生命及び身体に重大な危険が迫っていることを予見することはできなかった。 なお,県児童福祉課は,被告乙川の保育園運営の未熟さを指摘し,当面の指導基準に沿って必要な指導を行っており,児童福祉法によって与えられた権限を適正かつ妥当に行使していたものである。 ④Ba及びCaの負傷に関する相談後の時点での県児童福祉課の予見可能性県児童福祉課は,平成11年10月1 指導を行っており,児童福祉法によって与えられた権限を適正かつ妥当に行使していたものである。 ④Ba及びCaの負傷に関する相談後の時点での県児童福祉課の予見可能性県児童福祉課は,平成11年10月15日,児相から本件保育施設に通園してい-- たBa及びCaらが負傷した件について報告を受けたが,その相談は,被告乙川が上記子供らに対し傷害を加えたという内容のものではなかったことに加え,○被a告乙川が,自ら児相に来所し,Baの骨折の原因がその両親による虐待の可能性があることをほのめかしたこと,○児相の職員は,前記子供らの両親及び被告乙川bと面談したα市立病院の担当医が上記○を肯定するような考えを持っていたことaを聴いたことなどの事情からすれば,この時点において,被告乙川が本件保育施設の園児に対し傷害行為を行っていたと断定すること,さらには,被告乙川の傷害行為により園児の生命身体に重大な危険が迫っていたことを予見することはできなかった。 また,県児童福祉課が,前記連絡を受け第2回立入調査を早期に実施することを,,,決定する対応をとったことは行政として迅速な対応であり本件保育施設に対し適正かつ妥当な権限を行使したといえる。 ⑤第2回立入調査後の時点での県児童福祉課の予見可能性県児童福祉課は,第2回立入調査時においては,Faの傷害の件に加え,Ba及びCaの件についての情報も得ていたが,○Faの件については,第1回立入調a査で得た情報以上のものはなかったこと,○Baの件については,実際には同児bに傷害を加えていた被告乙川が,自ら児相に来所して同児の両親による虐待の可能性をにおわせるような説明を行っていたこと,○同児の入院先の病院の医師が保c護者による加害行為を疑っていたこと,○被告乙川は,第2回立入調査において,d県児童 来所して同児の両親による虐待の可能性をにおわせるような説明を行っていたこと,○同児の入院先の病院の医師が保c護者による加害行為を疑っていたこと,○被告乙川は,第2回立入調査において,d県児童福祉課職員からの質問に対し「同児の保護者に通常の親子関係が認められ,ないこともあり安易に謝ったりしない方がよいとα市立病院の担当医師から言われた」と述べるなどの発言をしていたことなどを考え併せれば,この第2回立入調。 査を行った時点においても,被告乙川が本件保育施設の園児に対し加害行為を行っていたと断定すること及び被告乙川の傷害行為により園児の生命身体に重大な危険が迫っていることを予見することはできなかった。 また,県児童福祉課は,本件保育施設に対する第2回立入調査時には,行政指導-- としては最も重い措置である休園指導を行い,いったんは被告乙川を指導に従わせており,その後も,本件保育施設側の対応の変化に応じて適時適切な措置を図っている。 ⑥被告乙川からの本件保育施設の継続の連絡と県児童福祉課の職員の本件保育施設への立ち寄りの時点での県児童福祉課の予見可能性被告乙川が,本件保育施設を休園させる意思を撤回した後,県児童福祉課の職員が,本件保育施設に立ち寄ったのは行政上適切な対応であり,年度内3回目の立入調査実施を平成12年1月14日に通知したことは,行政上は適切な対応であり違法性も認められない。 被告乙川の一郎に対する致死行為は,事前に予定された計画的なものとの証拠もなく,極めて衝動的要素が強いものであり,被告乙川の外見,行動等から,原告花子から一郎を預かった直後,一瞬にして同人を死に至らせてしまうような凶悪な粗暴ぶりを疑うことはできず,さらに一郎を死亡させた後,瞬時に顔色を変えることなく母親を呼び出し医師を呼ぼうとし,一郎をかいがい から一郎を預かった直後,一瞬にして同人を死に至らせてしまうような凶悪な粗暴ぶりを疑うことはできず,さらに一郎を死亡させた後,瞬時に顔色を変えることなく母親を呼び出し医師を呼ぼうとし,一郎をかいがいしく介抱するなどのその際だった行動を前にしたとき,被告乙川の致死行為をあらかじめ予見することは何人にも不可能であり,県児童福祉課としても被告乙川の一郎に対する致死行為を予見することはできなかった。 ,,(「」。)また県児童福祉課が第3回目の立入調査以下第3回立入調査というの日程を決定した平成12年1月初旬の時点では,同課では,本件保育施設における新たな園児のけがの情報を得ていない上,従前の園児のけがが被告乙川の傷害行為であることを認定できる情報や証拠も存在せず,したがって,被告乙川の傷害若しくは殺害行為により,本件保育施設において,園児の生命身体に重大な危険が迫っていると認識しうる状況にはなかった。 ⑦小括よって,当時の状況を総合すると,原告らの主張するような被告乙川の犯行を推察する方策をとるべきであるといった作為義務は存在せず,かつ,当時の諸事情に-- おいては,被告乙川が本件保育施設の園児に対し傷害行為を行っていたこと,これにより園児の生命身体に重大な危険が迫っていたことを予見することは不可能であった。県児童福祉課は,一郎の死亡以前に聞いていたFa,Ca,Baのけがの原,,因を児童福祉法上の権限の範囲内においては究明することができなかったものの本件保育施設に対し適切かつ妥当に権限を行使していたことからすれば,県児童福祉課に同法上の権限不行使の違法があったと評価することはできず,この点において被告神奈川県が責めを負うべき点はない。 ウ結果回避可能性,補充性及び期待可能性について原告らは,自分たちの子らの 童福祉課に同法上の権限不行使の違法があったと評価することはできず,この点において被告神奈川県が責めを負うべき点はない。 ウ結果回避可能性,補充性及び期待可能性について原告らは,自分たちの子らの異変に気づいた時点で,原告ら自らの判断で転園又は退園させるなどの容易な手段により,本件事件の結果の回避は一応可能であったというべきであり補充性は認められない。また,本件においては,事業停止や施設閉鎖の行政処分について児童福祉審議会の意見を聴く前提を欠いており,結果回避可能性を論じる前提がない。 なお,原告らが主張するような各作為義務が,本件当時の神奈川県知事に発生していたとしても,一郎の死亡を回避するためには,少なくとも,同知事が児童福祉審議会の意見を聴いた上で,本件保育施設に対し事業停止又は施設閉鎖命令を発する必要があるが,前記各暴行が被告乙川の犯行と事実認定することは知事の権限の範囲内では不可能であったというべきであり,結果回避可能性を論ずる前提を欠くというべきである。原告らの主張は,本件事件がすべて明らかになった後の議論であって,当時において,被告神奈川県が各園児の保護者等の関係者に事情聴取すれば,神奈川県知事は,本件認可外保育施設について,事業停止命令又は施設閉鎖命令を発することができるとするのは飛躍した考えである。 エ本件保育施設の劣悪性と被告神奈川県の作為義務について(ア)予見可能性の不存在,,,県児童福祉課のEは平成11年12月21日に本件保育施設に立ち寄った際飽くまで,被告乙川が保育中に子供に手が行き届いていないために,子供同士のト-- ラブルや子供自身が室内を走り回ったりして自らけがをしてしまうことの危険性を把握したのであって,Eが「いつけがを負うかわからない」と考えたけがの内容。 は,決して被告乙川の意図 士のト-- ラブルや子供自身が室内を走り回ったりして自らけがをしてしまうことの危険性を把握したのであって,Eが「いつけがを負うかわからない」と考えたけがの内容。 は,決して被告乙川の意図的な加害行為によるけがを想定したものではない。 県児童福祉課としては,同日の時点で,本件保育施設において保育に当たっていた被告乙川の未熟な保育技術に起因する園児のけがが発生する可能性が一定程度存在することについては予見し得る状況にはあったとはいえ,それは単に子供同士のトラブル等に起因していることを指しているのであり,被告乙川の故意による加害行為による園児の死亡事故までが生じうる危険性を認識していたのではない。 (イ)結果回避可能性の不存在本件においては,保育施設の劣悪性が原因で一郎が死亡したものではなく,原告らが認めるように,被告乙川の特異な加害行為により死亡したものであるから,損害の原因たる被告乙川の加害行為との関係で,被告神奈川県の権限が論じられなければならない。すなわち,被告乙川の意図的な加害行為による死亡事件と,当時の児童福祉法59条によって神奈川県知事に付与されていた権限の不行使との間には,被告神奈川県としては被告乙川の加害行為を直接阻止する権限がないという点にかんがみれば,因果関係がないことは明らかである(また,本件においては,権限の不行使に著しい合理性を欠くことは認められないから,不作為をもってしてもこれを過失行為又は違法行為と構成することはできない。したがって,被告乙。)川の意図的な加害行為に対する関係では,被告神奈川県には,過失行為,更には結果回避可能性も相当因果関係も存在しないことが明らかである。 (3)争点(3)(α署の不作為による不法行為)について【原告らの主張】アα署の権限警察法2条1項及び警察官職務執行法 為,更には結果回避可能性も相当因果関係も存在しないことが明らかである。 (3)争点(3)(α署の不作為による不法行為)について【原告らの主張】アα署の権限警察法2条1項及び警察官職務執行法(以下「警職法」という)により,警察。 官には「個人の生命・身体・財産の保護」のため,強制捜査を行う権限があるこ,とはもとより,今日ではそれが責務であるとされているのであり,その権限不行使-- が違法である場合には,国家賠償法上の責任を問われることになるというべきである。そしてその場合も,前記3(2 【原告らの主張】アの①ないし⑤の要件に基づ)いて,α署の権限不行使の違法を論ずるべきである。 イα署の作為義務及び予見内容(ア)Faの事件の時点における作為義務及び予見内容平成11年4月ころ,α署は,Faの保護者からの被害届に基づき,被告乙川を事情聴取しているが,Faの傷が一見して大人から何度も顔を殴られたような傷であるのに対して被告乙川は不自然な弁解に終始していたにもかかわらず,それ以上県や児相等に連絡をして,本件保育施設において同種の被害が生じていないかどう,,かを確認するなどの捜査は一切せずにその後示談成立とみなして捜査を打ち切り全く何もせずに放置していた。 α署の担当者自身が,Faの負傷は本件保育施設に預けられていたときに受けたものであると判断し,その傷害の原因が自過失によるものか,ほかの園児その外の他人から受けたものなのかは特定できなかったというのであれば,なおさら現場にいたもう一人の成人であるには最低限事情を聞くべき作為義務は当然あったとGいうべきである。 (イ)丁保育所及び児相からの通報の時点における作為義務及び予見内容平成11年7月12日ころ,丁保育所の園長から,Faの負傷を具体的に示すなどし,本件保育施 務は当然あったとGいうべきである。 (イ)丁保育所及び児相からの通報の時点における作為義務及び予見内容平成11年7月12日ころ,丁保育所の園長から,Faの負傷を具体的に示すなどし,本件保育施設において複数の園児が継続的に虐待を受けているがい然性が高い旨の通報がα署にあり,さらに,同月14日ころ,やはり同園長から同様の通報を受けた児相のH指導課長からも,再度α署に同一の通報があった。 α署としては,Faの事件を継続捜査としてからわずか2か月の間に,Faやその他の複数の園児に対する虐待をうかがわせる通報があったのであるから,本件保育施設の園児が傷害を負うような事故が再発する危険性があることは上記時点では容易に予見できたことは明らかであり,県児童福祉課や外の病院,通報対象児童の保護者等に照会や事情聴取等を行うなど,実行も容易な継続捜査をすべき作為義務-- があった。 (ウ)Aaの事件の時点での作為義務及び予見内容さらに,平成12年2月4日に,本件保育施設在園中に容態が悪化したAaが,そのまま原因不明のまま同日死亡したことにより,死因に疑問を抱いた病院から,直ちにα署に通報がされている。α署は,この直後の同月7日に,被告乙川から電話で事情を聴取しているが,同月4日の死亡直前の本件保育施設でのAaの様子等については全く聴取しないままに捜査を打ち切り,本件事件までは何らの捜査も行わないまま漫然と放置した違法がある。 仮にその時点においてはAaの死因がはっきり分からなかったとしても,既に前年の4月にFaの保護者から被害届が出され,その後同年7月に2度もほかの虐待例について通報がされていた本件保育施設において,再び不審な死を遂げた園児が発生した以上,どんなに遅くとも,この平成12年2月4日の時点で,α署は,本件保育施設において継続的,常 に2度もほかの虐待例について通報がされていた本件保育施設において,再び不審な死を遂げた園児が発生した以上,どんなに遅くとも,この平成12年2月4日の時点で,α署は,本件保育施設において継続的,常習的に園児への虐待が行われていることを認識し,又は容易に認識しうる状況にあったというべきである。とすれば,α署には,少なくとも県児童福祉課に連絡して,外の暴行・虐待等の事実の有無を問い合わせる程度の,その時点でできる捜査をすべき作為義務があった。 ウ結果回避可能性等について(ア)α署と県児童福祉課が連携して本件の調査等にあたっていれば,遅くとも平成11年中には,被告乙川の余罪である幼児に対する傷害事件の少なくとも大半は,警察の継続捜査により判明していたはずで,そうなれば被告乙川に対し直ちに逮捕又は被疑者としての取調べが開始されたことは確実である。 そのような段階になれば,県児童福祉課としてもα署から情報を入手することが予想され,県児童福祉課としても緊急に本件保育施設に対し事業停止又は施設閉鎖命令を出すがい然性が高くなるといえるから,結局本件保育施設は少なくとも事業停止になり,原告らが一郎を本件保育施設に通わせることはなかった。 (イ)Aaが死亡した時点において,直ちにα署が本件保育施設に対する何らか-- の捜査を再開していれば,数多くの園児への傷害事件も直ちに容易に把握できたものであり,したがって,被告乙川の逮捕又は県児童福祉課との連携による事業停止,。 命令の発令とも結びついて被告乙川の本件犯行を防止し得たことは確実であった【被告神奈川県の主張】アα署の権限原告らの主張する規制権限の存在については認める。 しかし,原告らが本件で被告神奈川県の違法行為として指摘しているのは,一郎に対する警察の生命身体の直接の保護活動が不適切で 県の主張】アα署の権限原告らの主張する規制権限の存在については認める。 しかし,原告らが本件で被告神奈川県の違法行為として指摘しているのは,一郎に対する警察の生命身体の直接の保護活動が不適切であったということではなく,事後的,客観的にみると,それ以前から被告乙川の外の園児に対する傷害行為を犯罪として摘発していれば,一郎の生命が失われなかったというものである。 ところで,警察が行う犯罪捜査は,事実を解明し犯人を検挙し,適切な刑罰権を,,行使することによって将来の犯罪を防止するという公益を図るためのものであり犯罪捜査によって被害者等の特定の私人が受ける利益は,公益を図る過程で実現される事実上の利益であって,警察が個々の市民に対して,捜査をすべき法的義務を直接に負担しているものではない。 捜査機関の権限の不行使が,国家賠償法上違法であるかどうかは,犯罪等の加害行為がまさに行われ又は行われる危険性が切迫しているか否か,警察官において,そのような状況であることを知り,又は知ることができるか否か,その危険除去のための権限を行使することによって加害行為の結果を回避することができるか否かなどの事情を総合的に勘案して判断すべきである。 イ作為義務の不存在(ア)Faの事件の時点での作為義務及び予見内容について本件保育施設に通園していたFaが負傷した事件について,α署の警察官らは,Faの母親から被害届を受理し,同人の供述調書を作成し,被害者の被害部位及び被害発生場所である本件保育施設内の写真撮影を行って,被疑者となる可能性の高い被告乙川から事情を聴取し,初動捜査として行うべき捜査を行っている。上記初-- 動捜査の結果,被告乙川の供述を裏付ける回転いすや壊れた手押し車が発見されているのであり,客観的に被告乙川が苦しい言い訳をしていると判断す 初動捜査として行うべき捜査を行っている。上記初-- 動捜査の結果,被告乙川の供述を裏付ける回転いすや壊れた手押し車が発見されているのであり,客観的に被告乙川が苦しい言い訳をしていると判断することはできなかった。 Faの事件の被害者であるFaは幼児であって,被害状況を説明することができない者であるから,被告乙川の犯行の目撃者がいない同事件では,被告乙川が自白しない限り,傷害事件として立件することは困難である。被告乙川がFaの母であるFに5万円の見舞金を交付して同人がこれを受領し,その事実をα署に伝えてbいることは事実であり,このような事実は被害者側の処罰感情が和らいでいることを示す客観的な事実であるし,Faの事件は比較的軽微な傷害事件であり,上記のとおり収集された証拠では必ずしも刑事事件として立件できるものではなかったのであるから,捜査機関としては積極的に捜査を進めず,継続捜査としたものであった。 また,捜査機関の権限の不行使が国家賠償法上違法と問われるのは,犯罪等の加害行為が,まさに行われる危険が切迫しているか否かで判断すべきところ,Faの事件については,当時収集されていた証拠によれば,自過失又は外の園児の行為により発生した軽度の負傷事案と認められたもので,その後も同様の事件,事故が発生することは予想できないものであり,まして園児の死亡等の重大な結果を予測す,。 ることは到底不可能であったもので危険の切迫性及び予見可能性は認められないまた,上記時点においては,一郎はいまだ本件保育施設に入園していないのであるから,一郎に対する加害行為の危険性を予想すべきとの問題は存在しない。 仮にFaの事件が立件されたとしても,傷害の程度からすれば罰金ないし起訴猶,,予になる可能性が高く現にFaの事件については起訴されていないのであるか 行為の危険性を予想すべきとの問題は存在しない。 仮にFaの事件が立件されたとしても,傷害の程度からすれば罰金ないし起訴猶,,予になる可能性が高く現にFaの事件については起訴されていないのであるから被告乙川が本件事件を敢行しなかったかどうかは不明であり,因果関係があると認めることもできない。 (イ)丁保育所及び児相からの通報の時点での作為義務及び予見内容Faの事件については,適時適切な捜査が行われたのは前述のとおりであり,そ-- の他の情報についても犯罪と認められるものではなく,被害届等も提出されていなかったのであるから,α署の警察官が捜査をけ怠したと認めることはできない。児相及び丁保育所園長からの通報があったときにも,一郎はいまだ本件保育施設に入園していないのであるから,一郎に対する加害行為の危険性を予想すべきとの問題は存在せず,かつ,上記の通報内容等からしても,この時点において本件保育施設の園児に対する重篤な加害行為の危険を予見すべき状況は存在しない。 (ウ)Aaの事件の時点での作為義務及び予見内容α署では,病院からのAaの変死の通報を受け,直ちに,病院に捜査員を派遣して,医師から死因に関する事実の聴取を行い,死体の見分を行うとともに,家族からも事情を聴取して死因の解明に努めた。また,本件保育施設に関連する事実が判明した時点において,被告乙川から事情を聴取する必要を認め,同人にα署へ出頭を求め,その供述調書を作成している。さらに,証拠保全のために本件保育施設の実況見分を行い,死因が不明の変死事件であるため行政解剖を実施したが,その過程で頭蓋内の出血を認めたため慎重を期して司法解剖に切り替える措置をとったものであるが,その司法解剖によっても犯罪死であると認める証拠は得られず,病死の可能性も存在した。 このようにα署の警察 の過程で頭蓋内の出血を認めたため慎重を期して司法解剖に切り替える措置をとったものであるが,その司法解剖によっても犯罪死であると認める証拠は得られず,病死の可能性も存在した。 このようにα署の警察官は,初動捜査として尽くすべき措置を尽くしたが,犯罪死であることの証拠が得られなかった以上,この時点で,α署に,被告乙川を犯人として検挙すべき作為義務を認めることはできない。 ,,,仮にAaの事件の発生時点にほかの虐待事実が明らかになっていたとしてもAaの事件自体が犯罪行為によるものであるかどうかは不明だったのであるから,一郎に対して傷害が加えられる可能性があるとしても,α署において,直ちに生命に危険があると予見することができる状況ではなかった。まして,α署において把握されていた事件は,Faの事件だけであり,Aaの事件については,死因が不明であったのであるから,α署において一郎に対する生命の危険が切迫していると認識することは到底できなかった。 -- したがって,この時点でα署の警察官に作為義務は認められない。 また,病死の可能性があるAaの事件が発生したことをもって,原告が主張するように,Faの事件を再度捜査すべき事情を認めることはできない。 ウ結果回避可能性等について原告らは,警察についても,補充性,期待可能性,結果回避可能性が県児童福祉課と同様に認められると主張する。確かに,事後的,客観的にみれば,被告乙川が傷害事件を敢行していたことは明らかであり,一郎に対する傷害致死事件発生まで,。 ,,に警察が検挙していれば同事件は発生しなかったかにはみえるしかし捜査は刑事訴訟法等の厳格な規律の下に行われるものであり,単なる見込みでは強制処分を行うことはできないのであり,仮に警察が被害児童らに対する傷害事件などにより被告乙川を かったかにはみえるしかし捜査は刑事訴訟法等の厳格な規律の下に行われるものであり,単なる見込みでは強制処分を行うことはできないのであり,仮に警察が被害児童らに対する傷害事件などにより被告乙川を検挙したとしても,被告乙川には前科もなく,実刑判決を受けていたかどうかは明らかではない。被告乙川は,α署員らが,本件保育施設で園児にけがが発生したことを認知する都度,事件関係者から事情聴取等の捜査を行っていることは十分に認識していたのであり,それにもかかわらず本件犯行に及んでいることからすると,仮に傷害事件で検挙されていれば本件犯行に及ばなかったと断定することはできず,警察によって検挙されなかったことと本件被害の発生との間には結果回避可能性,因果関係がないというべきである。 (4)争点(4 (消滅時効の成否)について)【被告乙川の主張】本件不法行為については,既に時効が経過している。 【原告らの主張】ア被告乙川は,原告らが事情を聞きに行ってもでたらめの説明をして責任を一切認めず,逮捕後の取調べ段階でも,当初は全面否認し,その後一部自白に転じたものの,自白内容は現実の犯行状況とは全く合致しておらず,あいまいな供述にとどまっていたものであり,さらに,刑事裁判の公判廷においては,この捜査段階でのあいまいな自白調書ですらも,検察官や警察官の暴行・脅迫・利益誘導により無-- 理やり記憶に反することを述べさせられたと主張して本件を完全に否認するに至った。このため,原告らは被告乙川の犯行状況はもとより,被告乙川の行為により一郎が死亡したということすら覚知できなかったものであり,早くても平成14年6,「」月3日の被告乙川の刑事被告事件の第1審判決言渡し以前には損害及び加害者を覚知し得なかったことは明らかであり,消滅時効の起算点は,どんなに 覚知できなかったものであり,早くても平成14年6,「」月3日の被告乙川の刑事被告事件の第1審判決言渡し以前には損害及び加害者を覚知し得なかったことは明らかであり,消滅時効の起算点は,どんなにさかのぼらせても,この平成14年6月3日より後であるというべきである。 イ仮に上記アの点はおくとしても,刑事控訴審判決言渡後の平成15年6月初めころ,被告乙川は刑事控訴審での弁護人であった者を介して原告らに謝罪の手紙を送っていたのであり,その中で被告乙川は,自ら一郎を死に至らしめたことについて自らの責任を自白し,深くおわびの念を吐露しており,時効の援用などは全くしておらず,これはまさに自らの行為の責任の承認にほかならない。 争点(5)(原告らの損害)について【原告らの主張】ア一郎本人の損害賠償請求権の相続(ア)慰謝料5000万円。 一郎は生後わずか2歳で何ら落ち度もなく,抵抗もできずに,Aa殺害の口封じのために確定的故意に基づいて殺されたのであって,そのほか被告乙川の本件犯行における諸情状を考量すると,その損害を慰謝するためには少なくとも5000万円が必要である。 (イ)逸失利益2355万0344円一郎は2歳で死亡しているので,就労始期を18歳,終期を67歳とすると18歳に達するまでの係数を差し引く必要がある。 67年-2年=65年に対応するライプニッツ係数は19.16118年-2年=16年に対応するライプニッツ係数は10.83819.161-10.838=8.323男子学歴計全年齢平均賃金は,565万9100円-- 生活費控除を50%として死亡による逸失利益は以下のとおりとなる。 565万9100円×(1-0.5)×8.323=2355万0344円(ウ)相続よって,原告らは(ア)と(イ)の合計額7355万0344円の を50%として死亡による逸失利益は以下のとおりとなる。 565万9100円×(1-0.5)×8.323=2355万0344円(ウ)相続よって,原告らは(ア)と(イ)の合計額7355万0344円の2の1である3677万5172円ずつ一郎の損害賠償請求権を相続した。 イ原告ら自身の損害(ア)慰謝料各自3000万円(イ)病院費用6万7180円(ウ)葬式費用157万2895円(エ)調査費用・損害賠償請求関連費用17万1160円本件では,被告乙川が暴行の故意すら否認して争っていたため,刑事裁判記録等。 ,,を謄写・調査しない限り賠償請求は困難であったまた被告神奈川県についてもいかなる権限を有し,また事前にどの程度の認識を有していたかなどに関し,刑事裁判の記録を謄写・検討しない限りその不作為に対する責任追及を行うことは到底不可能であった。よってこれらのために要した記録謄写料は相当因果関係にある損害といえる。 (オ)弁護士費用各自676万8000円弁護士費用は,それぞれ前記各自総額の1割程度が損害として認められるべきであり,結局各自676万8000円ずつが相当である。 ウ以上より,原告らの損害額の合計は,各自7444万8789円となるところ,被告らの債務は不真正連帯債務になるというべきである。 【被告神奈川県】不知ないし争う。 【被告乙川】現在,服役中であるため,収入がなく原告らの請求に答えることはできない。ま,,,た被告乙川自身には個人の財産もなく仮釈放や再就職の見通しの立たない現在-- 支払の約束をすることはできない。服役期間中は,毎年作業賞与金を送り,出所までの間に香花料を用意したい。 第3当裁判所の判断 各争点の判断の前提となる認定事実について証拠(枝番号を含む甲13~23,26,27, とはできない。服役期間中は,毎年作業賞与金を送り,出所までの間に香花料を用意したい。 第3当裁判所の判断 各争点の判断の前提となる認定事実について証拠(枝番号を含む甲13~23,26,27,29~31,35~47,51~55,57~63,乙A5~13,乙A20,乙A23,乙B1~5,証人J,証人I,証人Bb,原告甲野花子及び原告甲野太郎各本人尋問の結果,前提とな)る事実及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実を認めることができる(なお,認定に供した証拠の主要なものを以下の各認定事実の末尾に摘示する。 。)(1)当事者ア原告太郎と原告花子は,平成○年△月に入籍し,同年□月×日に一郎が同人らの第1子として誕生した。原告らにとって一郎はとても大切で宝物のような存在であり,原告らは一郎自身の性格を尊重し大切に育ててきた。原告らは,共働きだったこともあり,平成12年1月3日から,一郎を本件保育施設に預けるようになった。なお,本件事件当時の一郎の年齢は2歳月であった(甲26,62。 )イ被告乙川は,婚姻歴はないものの長男を出産し,平成10年ころ勤めていた会社を退社した後,平成11年2月1日ころ,神奈川県α市α東に所在するビル内において認可外保育施設である本件保育施設を開設した(甲29,30。 )ウ本件保育施設は,児童福祉法39条1項に規定する業務を目的とする施設であって,本件当時,神奈川県知事が,同法35条4項の認可を受けていない認可外保育施設に対し,児童福祉法59条所定の監督権限を有していた。 そして,本件当時,県児童福祉課が,保育所の認可,保育所の保育内容の指導,児童手当の支給といった児童福祉に関する事務一般を取り扱っており,その他認可外保育施設に関する事務も行っていた。認可外保育施設に対する立入調査は,児童福祉課長の決済 の認可,保育所の保育内容の指導,児童手当の支給といった児童福祉に関する事務一般を取り扱っており,その他認可外保育施設に関する事務も行っていた。認可外保育施設に対する立入調査は,児童福祉課長の決済に基づいて実施されていたが,現場レベルでは,課長代理のDが,同課の課員を指揮して立入調査を実施していた(甲17。 )-- (2)本件保育施設開設後以降丁保育所からの通報までの経緯についてア平成11年4月19日午後6時56分ころ,子であるFaを本件保育施設に預けていたFから「1歳の男の子を(本件保育施設に)預けたところ,体中がb,bアザだらけになっていた」旨の110番通報があった。通報を受けた警察官はFから事情聴取し,Faの治療を優先させるために,同人を救急車に乗せe会病院に搬送したところ,同児は顔面打撲挫創,頭部打撲,外傷性口内炎で1週間の加療を要すると診断された。α署は,Fから被害届を受理し,その段階では,被疑者をb,。 ,,特定することは困難であったことから被疑者不詳としたまたα署の警察官は被告乙川に対し出頭を求めて事情聴取をしたところ,被告乙川は,Faが立ち上がろうとして回転いすにつかまったため転倒して負傷した,外の園児が壊れた手押し車の車輪を振り回してFaに当たったため負傷したとの説明をした(乙5,弁B論の全趣旨。さらに,α署の警察官は,Faの負傷状況及び本件保育施設内の状)況を写真撮影するとともに,Fに医師の診断書をとって提出するように求め,後b日上記診断内容の診断書が提出された。 Gなお,同日,本件保育施設において,被告乙川からFaの保育を引き継いだは,Faの額に赤くなった擦過傷を見つけ,その傷はブランコから擦ったものであると思った。その後,Fが同児を本件保育施設に迎えに来たところ, ,本件保育施設において,被告乙川からFaの保育を引き継いだは,Faの額に赤くなった擦過傷を見つけ,その傷はブランコから擦ったものであると思った。その後,Fが同児を本件保育施設に迎えに来たところ,同人から上b記の傷を指摘されたGは,被告乙川から同児の受傷については何も聞いていなかったと述べた(甲39。 )α署が捜査を開始したところ,被告乙川が供述する回転いすや壊れた手押し車が発見され,また,Faの受傷について,幼いFa及び被告乙川の外には目撃者はいなく,事実の確定が困難であった。 イその後,一通りの捜査を終えたα署の警察官らは,被告乙川がFaの保護者と話し合う意向を示していたことから,その経緯を見守ることとした。そうしたところ,同月下旬ころ,被告乙川がFを謝罪のために訪れ,同人に対して菓子折りbと5万円を渡した。同人はこれを受け取るとともに,α署を訪れてその旨を伝え,-- 被告乙川も反省していると思うのでそれなりにお願いしますと話した。α署では,Fが被告乙川から見舞金又は示談金として同5万円を受領したと認識し,かつ,bFの処罰意思が和らいでいると考え,継続捜査という形にしたまま,Faの受傷b事件の捜査を事実上終了し,その後具体的な捜査を行わなかった。 ウ同年5月ころ,α市児童育成課の職員がタウン情報誌により本件保育施設の存在を知り,同課から県児童福祉課に対しその旨の報告があり,この時点で県児童福祉課は,本件保育施設の存在を認知した(甲17。 )エ同年6月6日午前9時ころから同日午後7時までの間に,被告乙川は,本件保育施設内で,園児であったK(当時1歳)に対し,その右上腕部に後方から前方に向かう強い外力を加えるなどの暴行を加え,同児に全治約50日間を要する右上腕顆状骨折の傷害を負わせた(甲30。 )同月28 育施設内で,園児であったK(当時1歳)に対し,その右上腕部に後方から前方に向かう強い外力を加えるなどの暴行を加え,同児に全治約50日間を要する右上腕顆状骨折の傷害を負わせた(甲30。 )同月28日午後5時から同月29日午前0時までの間に,被告乙川は,本件保育施設内で,園児であったL(当時1歳)に対し,その右上腕部に後方から前方に向かう強い外力を加えるなどの暴行を加え,同児に加療約50日間を要する右前腕両骨骨折の傷害を負わせた(甲30。 )同月29日午前7時30分ころから同日午後6時30分ころまでの間に,被告乙川は,本件保育施設内で,園児であったM(当時8か月)に対し,その左大腿部を踏みつけるなどの暴行を加え,同児に全治約6か月を要する左大腿骨骨折の傷害を負わせた(甲30。 )もっとも,これらの各傷害の発生については,本件事件発生後まで,K,L及びMの各保護者等から被告神奈川県の機関や神奈川県警察などに通報されることはなかった。 オ(ア)同年7月12日,本件保育施設の近隣に所在する認可外保育施設丁保育所のN園長から児相へ,本件保育施設から丁保育所へ移ってきた子供達が本件保育施設で被害を受けていたようなので虐待の通報をしたい旨の以下のとおりの連絡があった。 -- ①被害児童はFa(当時1歳2か月)であり,同年4月から同年6月まで本件保育施設に預けられたが,母親が同児童を迎えに行ったところ,顔がぼこぼこであっ。 ,,た本件保育施設側からは子供同士でやったという話があったが変なので診断書CT,顔の写真を添えてα署に届けた。医師の話では,子供同士の傷ではなく大人の平手打ちだとのことであった。②被害児童はOであり,同児の保護者が夜3時ころ迎えに行くと,子供の泣き声がしていた。本件保育施設内には保育者はおらず,買物袋を下げて経営者 ,子供同士の傷ではなく大人の平手打ちだとのことであった。②被害児童はOであり,同児の保護者が夜3時ころ迎えに行くと,子供の泣き声がしていた。本件保育施設内には保育者はおらず,買物袋を下げて経営者が帰ってきた(保育者が不在で,子供たちのみで夜間放置されている。③被害児童は,Pa,Pbであり,口止めされていて,口止めにお。)びえているとのことであった。 N園長は,α市役所及びα署の生活安全課に対しても,本件保育施設内で虐待が行われているのではないかと通報した(甲14,20,23。 )(イ)N園長からの上記連絡を受け,児相では,受理すべき相談案件かどうかを検討するために臨時受理会議を開き,その結果,児童福祉法25条通知(保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した者,),はこれを児童相談所等に通知しなければならないという義務に該当しないこと既に別の認可外保育施設に保護済みであること,被害者がe在住であること,警察,,に被害届済みであること認可外保育施設の監督は神奈川県の管轄であることから県児童福祉課に通知するということで処理することに決め,児相の案件としては受理しなかった(甲14,20,乙A5。 )(ウ)上記臨時会議を受けて,児相のH課長(以下「H課長」という)は,児。 相から県児童福祉課へ通知する法的な根拠はないものの,認可外保育施設で問題が起きているようであることから,これを監督している県児童福祉課に連絡するのが適切であると考え,県児童福祉課保育班長に対し,α市内の丁保育所という認可外保育施設の園長から,本件保育施設で4人の園児が虐待を受けているらしいとの通報があった旨の電話連絡をした。 その際,H課長からは,虐待を受けた可能性のある被害児童の名前と被害状況に-- ついての報 設の園長から,本件保育施設で4人の園児が虐待を受けているらしいとの通報があった旨の電話連絡をした。 その際,H課長からは,虐待を受けた可能性のある被害児童の名前と被害状況に-- ついての報告が行なわれ,これを受けて県児童福祉課保育班は,α市に本件保育施設の状況調査を依頼した(甲14,15,17。また,H課長は,N園長からの)通報内容をα署にも通報した。 カ同年7月14日,α市児童育成課のQから県児童福祉課保育班に対し,H課長の上記電話連絡と同趣旨の状況報告が行われた。上記報告内容は「丙保育ルー,ムに入所している児童4名が丁保育所に転園したが,その中の1名の子供の保護者が丙保育ルームにて虐待を受けたとしてその子供の写真を持参し,警察に行ったが取り合ってもらえないと丁保育所の施設長に告げ,丁保育所の施設長より児相に連絡した」旨のものであった(甲15,17。 。 )キ県児童福祉課では,H課長及びQからの上記報告を受けて,本件保育施設における園児に対する虐待の実態の有無等に関する調査を行うため,本件保育施設に対する立入調査を早期に実施する必要があると判断し,第1回立入調査を同月19日に実施することを同月14日付で決定し,本件保育施設などにその旨通知した。 ,,この第1回立入調査は一応新規把握施設調査という名目の下に行うこととしたが合わせて本件保育施設における幼児虐待に関する実態調査を行う予定であるとされた(甲15,17,乙A6。 )(3)県児童福祉課による第1回立入調査の状況及び結果についてア(ア)同月19日,県児童福祉課は,本件保育施設の第1回立入調査を実施した。この立入調査に参加したのは,県児童福祉課からR,E,α市児童育成課からQ,S,児相からT児童福祉司,d保険福祉事務所からUであった。 ),,(イ同立入 件保育施設の第1回立入調査を実施した。この立入調査に参加したのは,県児童福祉課からR,E,α市児童育成課からQ,S,児相からT児童福祉司,d保険福祉事務所からUであった。 ),,(イ同立入調査は同日午前10時から午前11時ころまでの間に行われたが県児童福祉課の職員らが本件保育施設を訪れてみると,本件保育施設には幼児が4人いることが確認され,被告乙川1人でこの4名の園児を保育していた。県児童福祉課の職員らは,立入調査に当たり,最初に被告乙川から保育日誌等の書類を提出させた上,調査票に基づいてその書類や施設内部をチェックして被告乙川に質問するという形で調査を行った。 -- (ウ)県児童福祉課の職員から被告乙川への質問は,まずRが認可外保育施設立入調査調書中の「児童数」欄から「災害対策」欄に関することを聞き,Eが「保育内容」欄以下の欄に関することを聞いたが,これに対し被告乙川は,利用者は現在5名おり,保育者も5名であること,2人の配置を目指しているが,現状では1人で見ていることが多く,調査時も保育時間は24時間体制をとっており,宿泊保育も行っていると述べた。また,被告乙川は,オープンしてから困ったこと本件保育施設の会員(保護者)とのトラブルとして,会員から施設利用後,利用者(園児)のおなかにアザができているとか,腕が動かなくなったとか言われ,月謝を払ってもらえなかったことがあったこと,本件保育施設ではそのようなけがが起こるようなことはなく,話合いの結果,月謝の半分は支払ってもらったこと,その家庭は母子家庭であり,週6日くらい利用していたが,親には付き合っている男性もおり,腕が動かなくなったのは精神的なものが影響しているように思われたが施設を疑われ脅迫までされたこと,この会員と仲のよい家庭も施設を利用しており,施設でのけがを いたが,親には付き合っている男性もおり,腕が動かなくなったのは精神的なものが影響しているように思われたが施設を疑われ脅迫までされたこと,この会員と仲のよい家庭も施設を利用しており,施設でのけがを疑われてそのことでトラブルとなり施設をやめてしまったことなどを述べた(甲14。 )(エ)その際,Rは,被告乙川に対し,丁保育所から連絡があった園児の虐待に関する事実確認を行ったところ,被告乙川は,幼児がけがをしていたことは全く気が付きませんでしたなどと話した。Eは,この被告乙川の発言について,保育者として幼児の行動については常に観察すべきであるのに,けがに気付かなかったのは被告乙川の怠慢であり不自然であると思い,同人に対し,入園者については健康状況を受入れ前後で確認しなくてはならないと述べた。 また,Eは,園児の健康診断が実施されていないことなどの問題点を挙げて,本件保育施設は認可外保育施設としての最低基準を満たしていないという趣旨の話をした上で,被告乙川に対し神奈川県の認可外保育施設の適正基準に関する資料を手渡した(甲18。 )(オ)Eは,この本件保育施設への第1回立入調査の印象として,被告乙川は2-- 8歳という年齢の割には言葉遣いが丁寧であり比較的しっかりした話し方をするように感じられ,28歳という若者が1人でよくここまで経営を立ち上げたなと感心すると同時に,例えば,乳児,幼児の区画を分けていなかったり,幼児の園内での状態をきちんと記録しておらず,避難訓練や食事を作る職員の検便等を全くしていないことなど,保育施設としての内実が極めて不十分で,保育に関する知識を持たない者が,十分な準備もなく保育施設を始め,安易に子供を預かっているのではないかという印象を持った。 また,この第1回立入調査については幼児虐待に関する明確な事実関係 不十分で,保育に関する知識を持たない者が,十分な準備もなく保育施設を始め,安易に子供を預かっているのではないかという印象を持った。 また,この第1回立入調査については幼児虐待に関する明確な事実関係の把握ができなかったが,Eは,上述のとおり被告乙川の保育の知識が不十分であること,本件保育施設の元園児の保護者からの苦情の件もあり,もっと本件保育施設についての状況を詳細に調査し虐待の有無に関する実態を明らかにする必要があると感じ,本件保育施設からの帰路,ほかの立入調査の参加者に対し「もう1回調査す,る必要があるね」と申し向けたところ,ほかの参加者も「そうですね」などと。 。 言っていた(甲17。 )立入調査に参加した神奈川県d保健福祉事務所のUも,このEの発言を聞いて,被告乙川自身は否定したものの,丙保育ルームの園内で虐待が行われていた疑いが払しょくできないので今後も継続調査が必要だということを話しているのだろうと思った。また,Uが「現時点では,保護者と園のどちらに責任があるか判断がつ,かないですね」という話をすると周囲の参加者も同調した。そして,当日の調査。 についてUは,上司に,今回の調査では虐待の有無については確認できなかったと報告した(甲18。 )(カ)今回の立入調査で,県児童福祉課は,本件保育施設の経営者である被告乙川に対し,保育に当たっては必ず複数の職員を配置すること,災害時の対応,避難路の確保,屋外での保育時間の導入等を指摘し,被告乙川も改善を約束した。 そして今後本件保育施設については県児童福祉課保育班が対応し,α市に情報収集に努めてもらうとともに,県児童福祉課として今年中にもう一度立入調査し,α-- 市,児相との連携をとりながら調査指導を続けることとした(甲14,15。 )イ同年8月23日午後5時ころから 集に努めてもらうとともに,県児童福祉課として今年中にもう一度立入調査し,α-- 市,児相との連携をとりながら調査指導を続けることとした(甲14,15。 )イ同年8月23日午後5時ころから同月24日午前0時までの間に,被告乙川は,本件保育施設において,Lに対し,その右上腕部に対し,横方向又は上下双方向から強い外力を加えるなどの暴行を加え,同児に加療約50日間を要する右上腕骨骨折の傷害を負わせた(甲30。もっとも,上記傷害の発生については,本件)事件発生後まで,Lの保護者等から被告神奈川県の機関や神奈川県警察などに通報されることはなかった。 ウ同年8月31日,県児童福祉課福祉課長名で,本件保育施設に対し,第1回立入調査の結果を送付し,行政指導としての改善を文書及び口頭で求めた。その内容は,文書指導として,①複数の保育士が確保できるような勤務体制をとること,②有資格保育者の確保に努めること,③災害の対策規定を設け,定期的(月1回),,,に避難訓練を実施しその記録簿を作成することの各指導を行い口頭指導として④園児の健康診断を実施すること,⑤職員の健康診断を実施すること,⑥調理及び調乳担当職員の検便を実施することなどの各指導を行った(甲14,15,17,乙A7。 )(4)Ba及びCaらに対する被告乙川の暴行と県児童福祉課及び児相の対応についてア(ア)同年9月6日,Ba(当時2歳)は本件保育施設に入所した(証人Bb調書1頁。 )なお,Baの母親はBbであり,Bbの勤務先の同僚であったCbの子がCaである。 (イ)同月11日午前8時過ぎ,BbはBaを本件保育施設に預けて出勤したところ,同日午前8時25分ころから同日午後6時ころまでの間,被告乙川は,本件保育施設又はその周辺地において,Baに対し,その右腕をひねるなどの暴 前8時過ぎ,BbはBaを本件保育施設に預けて出勤したところ,同日午前8時25分ころから同日午後6時ころまでの間,被告乙川は,本件保育施設又はその周辺地において,Baに対し,その右腕をひねるなどの暴行を加,(,,え同児に全治約5か月間を要する右上腕骨骨折の傷害を負わせた甲12 30。 )-- (ウ)同日午後6時ころ,被告乙川からBbに対し,Baが熱を出したので迎えに来るようにとの電話があった。午後7時ころ,Bbが,本件保育施設にBaを迎えに行ったところ,Baは玄関で靴を履く際に「痛い」と言い出し泣き始めた。BbがBaの様子を見に駆け寄ると,同児の右腕のひじから上の部分がはれて赤紫色になっていた。これを見た被告乙川は「どうしたんでしょうね,気がつきません,でした」と述べ,初めてBaの右腕の異常に気が付いたようなそぶりをした。B。 bは,Baが毒虫にでも刺され化のうしたのではないかと思い,被告乙川に対し虫,,「,に刺されたのではないかと質問したところ被告乙川はそうかもしれませんね炎症を起こしたので熱を出したのかもしれない」と述べた。そこでBbは,夫に。 電話して相談し,Baをα市立病院に連れていくこととした(以下Bbとその夫を併せて呼ぶときは「Bbら」という。 。)(エ)α市立病院の医師がBaを診察したところ,同児は骨折しており,入院することとなった。その後,さらに整形外科医のV医師が,Baを診察したところ,V医師は,Bbらに「どうしてこうなったか説明して」と怒りながら話し「骨。 ,は,誰かがねじったように折れている。親なのにどうしてこうなったのか分からなかったのか。何でもっと早くつれてこなかったのか」と述べた。Bbは,V医師。 の様子から,同医師が親としての自分たちの態度を責めており,自分たち うに折れている。親なのにどうしてこうなったのか分からなかったのか。何でもっと早くつれてこなかったのか」と述べた。Bbは,V医師。 の様子から,同医師が親としての自分たちの態度を責めており,自分たちがBaを虐待したのではないかと疑っているのかもしれないと思った。 (オ)その後,Bbらは被告乙川から事情を聞こうと考え,同人にBaの右腕は(,)。 骨折しており入院することになったと電話で連絡した甲12~14証人Bbイ同月12日,Bbらは,上記Baの骨折の件について,本件保育施設で被告乙川と面談した。 ,,,Bbが被告乙川に対しBaのけがの原因について心当たりがないか尋ねると被告乙川は思い当たらない,気が付かなかったと繰り返し,結局,同児の骨折の原因については分からなかった。なお,話合いの際,被告乙川からBbらに対し,Baへの見舞金の話が出たがBbらは断った(甲13。 )-- ウ同月14日,被告乙川からの提案で,Bbら及び被告乙川の3名でα市立病,。 院に赴きBaの担当医であるV医師及び看護師を交え話合いを行うことになったV医師からは,Baの骨折の状態は,ねじったように折れていて,だれか大人にやられたことが考えられること,階段から落ちたり,ソファーから落ちたことによって上記のような骨折が起こる可能性は否定できないが,その場合には骨折した時点で子供はひどく泣くだろうなどと述べ,結局この話合いでもBaの骨折の原因は分からなかった(甲13。 )エ同日,被告乙川は,児相を訪れ,同月11日にBaという園児の腕がはれて泣くので病院で診察してもらったら,人がねじ曲げたような骨折と言われ,親と本件保育施設との間でどちらの責任かでトラブルとなっている,どうしたらよいかと相談した。 この相談の内容を受け,児相では,被告乙川の話から で診察してもらったら,人がねじ曲げたような骨折と言われ,親と本件保育施設との間でどちらの責任かでトラブルとなっている,どうしたらよいかと相談した。 この相談の内容を受け,児相では,被告乙川の話からは,保護者か本件保育施設かいずれによって園児にけがが生じたか分からないということであったので,いわゆる児童福祉法25条通知としての相談案件として受理することを決定した。そして,直ちに児相の職員のWに児童が入院しているというα市立病院に連絡させたところ,被告乙川のいう児童が入院しており,医師を交えて保護者との話合いをしたことを確認することができた(甲13,14,20,21,乙A8。 )オ同月16日,Wは,α市立病院を訪問し,Baの病状確認をするとともに,担当医であるV医師,婦長及び担当の看護師と協議した。V医師らから,Baの骨折は右上腕部骨折で右上腕をねじられて骨折したものと思われ,通常子供は自分で転んだりぶつけたりした場合でもこのような態様での骨折はしないものであって,外部から力が加わった可能性が高いこと,V医師がBbら及び被告乙川から事情を,,聴取したがV医師としてもどちらの要因で骨折したか分からないことなどを聞きそれを受けてWは,保護者による虐待の可能性もあり得ると考え,Bbらに児相に来るように働きかけることを病院に要請した。 これらの児相及び病院との協議の内容は,施設にも問題がある可能性もあると判-- 断されたため,同日,児相のH課長から県児相福祉課のD課長代理に連絡がされた(甲14,20,21。 )カ同月中旬ころ,前記児相からの連絡を受けて,県児童福祉課において,D課長代理から「Baちゃんという園児が右腕を骨折したということで,丙保育ルームと保護者との間で,どちらの責任で骨折が起きたのか争いになっている」との報。 , の連絡を受けて,県児童福祉課において,D課長代理から「Baちゃんという園児が右腕を骨折したということで,丙保育ルームと保護者との間で,どちらの責任で骨折が起きたのか争いになっている」との報。 ,,,,告があり同課内でもこの問題についてどう対処するか話し合い同月下旬ころ近いうちに第2回立入調査を実施するとの結論に至った(甲19。 )キ同月29日,児相の職員W及びXは,α市立病院を訪問し,病院と対応方法を協議した。Xは,上記協議の結果についてH課長に対し,同病院から説明を受けたことなどとして,①この時点で病院側は,Bbらが2歳児である同児に対し食事の際のしつけが厳しい傾向にあり,退院後すぐに自宅に帰してよいかどうか少し気になると述べるなど,Bbらの養育態度を問題視していたこと,②Bbは,同人の友人であるCbの子(Ca)も同じように本件保育施設でけがをさせられており,保育所に関してどこかに相談したいと言っていたこと,③以前にα市立病院を通じて同児の保護者から児相に相談をしにくるように要請したが,Bbらが児相に相談に来ないので,病院側からBbらに対して児相を紹介してもらった上で,Bbらに対し児相から連絡することが決まったことなどを報告した。 これらの児相及び病院との協議によれば,本件保育施設にも問題がある可能性が,(,あるため児相のH課長から県児童福祉課のD課長代理にも連絡がされた甲2021,乙A9。 )ク同年10月6日,α市保健福祉センターにて,県児童福祉課,α市児童育成課,児相の三者で,Baの問題について会議が開かれた。同会議において,児相のXから,Baの件について,これまでの経緯とともに,近いうちにBbらと接触する予定であるとの報告がされた。県児童福祉課のEからは,本件保育施設は問題が,。 多い施設なので県児 会議において,児相のXから,Baの件について,これまでの経緯とともに,近いうちにBbらと接触する予定であるとの報告がされた。県児童福祉課のEからは,本件保育施設は問題が,。 多い施設なので県児童福祉課でも近く立入調査をする予定であるとの話がされた(甲19,20,21。 )-- ケ同月7日,児相のXは,Bbらに連絡を取り,Caの保護者とともに児相に面談に来るように依頼した(甲20。 )コ(ア)同月15日,Bbが,Caの母親のCbとともに児相を訪れ,それぞれの子のけがについて説明した。 ,,Bbは①平成11年9月6日から同月11日まで本件保育施設を利用したこと②平成11年9月11日にBaがけがをしてそのままα市立病院へ入院となったこと,③同月11日午前8時30分,Baを本件保育施設に預け,午後7時ころ迎えに行った際,寝ていたBaを抱きかかえたところ右腕がはれており,虫さされかと思い被告乙川に確認したが分からないとの説明であったこと,④帰るときに靴を履く際,Baがいやがり,むずがって痛いと言うので,服を脱がせたところ,腕がはれており,被告乙川からα市立病院を紹介されて受診したこと,⑤当日の朝,Baは駅まで走っており,同児は手を動かしていたこと,⑥被告乙川はBaの腕のはれにつき気付かなかったというが,気付かないのはおかしいと思うこと,⑦病院で,V医師,被告乙川,Bbらで話合いがされたが,結局,骨折が起きた原因は分からなかったこと,⑧被告乙川から,治療費,入院費は払いますとの話があったが,被告乙川に心当たりがないのであれば,そのような申出をする必要はないのではないかということ,また,現に保育費用については1週間分を除き返還されたこと,⑨子供がけがをしたことについて被告乙川が気付かなかったというのはおかしいし,契約で子供を預 な申出をする必要はないのではないかということ,また,現に保育費用については1週間分を除き返還されたこと,⑨子供がけがをしたことについて被告乙川が気付かなかったというのはおかしいし,契約で子供を預かっているのだから,責任を持った保育をしてほしいということを述べた。 この時点で,Bbは,被告乙川がBaに対し暴力を振るっていたのではないかとも思っていたものの,自分の子がだれか大人の力によってけがさせられたということを考えるだけで嫌になってしまい,同児のけがが被告乙川によって骨折させられたに違いないとまでは児相に強く言ってはおらず,全体の相談のニュアンスとして,(,はとにかく本件保育施設を調べてほしいというものであった証人Bb調書2528,29頁。 )-- また,Cbは,①平成11年3月末から同年8月末ころまで本件保育施設を利用したこと,②最初の1か月は普通に過ぎていきCaも施設にだんだん慣れていったが,同年7月ころ,CbがCaを本件保育施設に迎えに行くと,唇がガサガサ,おなかがぺったんこになっている日が続いたこと,③Caが家に帰ると500㏄のペットボトルに入った飲物を一気に飲んだりするようなこともあったが,本件保育施設から渡された連絡帳には,水分の補給量や食事の摂取量は十分なものとして記載,,,されていたこと④同年8月3日午前7時15分ころCaを本件保育施設に預け午後4時30分ころにCbの母親がCaを迎えに行くと,顔に何か所も青あざがあったが,本件保育施設の保育者からは青あざについては何の連絡もなかったこと,⑤同日,Cbは午後6時30分ころ帰宅したが,そのとき,Caは布団の中でぐったりしていたこと,⑥Caにはあざがあり,頭に何か所も赤いはん点様の傷があったため,本件保育施設に連絡して同児に何があったのか確認したところ, 6時30分ころ帰宅したが,そのとき,Caは布団の中でぐったりしていたこと,⑥Caにはあざがあり,頭に何か所も赤いはん点様の傷があったため,本件保育施設に連絡して同児に何があったのか確認したところ,被告乙川「,」,は今日散歩に行った際3~4歳の男の子にスコップで殴られたと話しておりその日病院に行ってレントゲンを撮ったところ,医師の話では,骨には異常はないが,48時間様子を見るようにとの診断がされたこと,⑦その日以降,本件保育施設に行くとCaは熱を出すようになり,本件保育施設から迎えに来てほしいとの連絡があったこと,⑧お盆を過ぎたころ,夜中,Caの人差し指に血が付いていたの,,,で見てみると両耳から出血していたので翌朝α市立病院に連れていったところ医師から右の鼓膜が破れていると言われたこと,⑨病院へCaを連れていった際,同児はとてもおびえていて,怖い経験をしたようであり,話しかけても「はい」と蚊の鳴くような声でしか返事をしなかったこと,⑩以降,保護者に対する警戒心がうかがわれるようになり,ご飯も食べない状態で今までと様子が違ってしまい,今でも本件保育施設の前を通るとCaは嫌がること,⑪被告乙川に当時の様子を確認すると「気づかなかった」とのことだったが,保育者1名で1人か2人の子供を見ていて何も気づかなかったというのは,預かっている側の責任ではないか,自分たちはお金を払っているのだから,きちんと責任を持って保育してほしいということ-- を話した。Cbの方は,この面談で被告乙川がCaにけがをさせたのではないかと強く述べていた(証人Bb調書29頁)(イ)これに対し,児相のXは,本件保育施設については何か問題がある可能性があるので,神奈川県から指導してもらうこと,指導経過に関してはBb,Cb両名に連絡すること,子の た(証人Bb調書29頁)(イ)これに対し,児相のXは,本件保育施設については何か問題がある可能性があるので,神奈川県から指導してもらうこと,指導経過に関してはBb,Cb両名に連絡すること,子のことについて何か心配なことがあれば児相でも相談に応じ,。 ,,,ることなどを申し向けて面接を終えたXは面接を終えて本件保育施設では幼児に対する扱いがずさんであるか,極めて乱暴である可能性があり,本件保育施設の実態がどのようになっているか非常に気になるとの感想をもった(甲21。 )(ウ)そこで,Xは,Bb及びCbとの面談内容をH課長に報告したところ,H課長は,本件保育施設の状況から,園児のけがの原因は施設にあるのではないか,園児のけがが多発しているのは,施設の体制が悪いのではないかと考え,Wに面談内容を県児童福祉課に報告させることとした。 そこで,Wは,県児童福祉課のEに電話し「本日,b児童相談所でBaちゃん,の保護者のBbさんの面談を行った。また,Bbさんの同僚でCbさんという人がいるが,そのCbさんの子供であるCaちゃんが同じように丙保育ルームで虐待を受けた可能性があるとのことで,Bbさんと一緒に面談に訪れた」との報告を行。 った(甲19,20,21。 )サ同月19日,児相の所内会議で,Xから,Ba,Caの件について保護者との面談の結果の報告があり,Caの案件も相談案件として受理した上で,とりあえず動静を見守ることとした(甲20。 )シ同月21日,県児童福祉課は,本件保育施設に対する立入調査を同月26日に行うことを決定しその旨本件保育施設設置責任者である被告乙川に通知した甲,(15,乙A10。 )(5)第2回立入調査の状況及び12月21日のEの立ち寄りまでの経緯についてア(ア)同月26日,県児童福祉課から 旨本件保育施設設置責任者である被告乙川に通知した甲,(15,乙A10。 )(5)第2回立入調査の状況及び12月21日のEの立ち寄りまでの経緯についてア(ア)同月26日,県児童福祉課からD課長代理,Eら,α市児童育成課から-- Q,S,児相からX,d保険福祉事務所からUが参加し,本件保育施設に対する第2回立入調査が実施された。第2回立入調査に際し,事前に,D課長代理からEらに対し「丙保育ルームは短期間で余りに問題が多く発生している施設なので,通,,,常の立入調査のように施設の状況の調査施設などの改善状況の確認だけではなく施設に対し,休園指導を行う趣旨で立入調査を実施する」旨が伝えられた。 (イ)当日,児相から県児童福祉課に対し,今回の立入調査において児相がいかなる役割を果たせば良いか説明してほしいとの要請があったことから,D課長代理ら県児童福祉課の職員3名は,同立入調査に先立つ同日午前11時ころ児相を訪れた。D課長代理は,児相のXらに対し,本件保育施設が短期間に多くの問題を生じているとして,今回の立入調査においては,閉鎖命令も辞さないことを被告乙川に伝えるつもりであること,児相には,被告乙川に事態の重大性を認識してもらうため,Bb及びCbから相談を受けている経緯を伝えて,虐待の事実の有無を確認してほしいことなどを話した(甲19。 )(ウ)第2回立入調査は,同日午後1時30分ころに始まり,午後3時ころには終了したが,上記参加者らが本件保育施設を訪れると,被告乙川は憔悴(しょうす),,いして疲れているように見受けられ勤務していた保育者は被告乙川1人であり施設内にいる園児は被告乙川の長男1人であった。 (エ)最初にD課長代理は,被告乙川に対し,前回の立入調査の際に県が指導した事項の改善状況及び入所児童の保護 れ勤務していた保育者は被告乙川1人であり施設内にいる園児は被告乙川の長男1人であった。 (エ)最初にD課長代理は,被告乙川に対し,前回の立入調査の際に県が指導した事項の改善状況及び入所児童の保護者と問題となっていることについて,施設責任者としての考えを聞かせてほしいと切り出した。また,この後に児相のXから,BaとCaの件について,児相が両名の保護者と行った面談の状況について,被告乙川に説明が行われた。 これに対し,被告乙川は,前回の立入調査の際に県児童福祉課等から指摘された事項について,現況は入所児童数は月極1名一時預かり1~2名であるが,10月以降有資格者の保育士を雇い,利用者2名のときは保育者2名で対応し,夜間について閉園している状況であること,本件保育施設の今後の見通しについては,金銭-- 的には苦しい状況で何とか対策を講じなければならないと思っているが,閉園するにしても費用がかかるし,今日も見学希望の連絡も入っているのでこのまま続ける意向があること,被告乙川自身も保育士の資格を取りたいと思っていることなどを述べた(甲14,15。 )(オ)次に,D課長代理は「Baちゃんという園児が腕を骨折しておりますが,心当たりはありませんか」との話をしたところ,被告乙川は,①Baの骨折に関。 しては,病院に連れていって初めて分かったものであること,②Baは,2,3日前から熱を出して体調が悪かったこと,当日の朝本件保育施設に来たときにも同児の母親からはれていたとのはなしもあり当日熱があったこと,③母親が迎えに来た,,「」ときにはBaはフロアーに寝ていて自分で起き上がったが靴を履くとき痛いと言って泣いていたこと,④そこで腕がはれていることに気づき救急にて病院に連れていったこと,⑤日中はBaが泣いていなかったことは,商店 Baはフロアーに寝ていて自分で起き上がったが靴を履くとき痛いと言って泣いていたこと,④そこで腕がはれていることに気づき救急にて病院に連れていったこと,⑤日中はBaが泣いていなかったことは,商店街の人たちも見て知っており,けがをしていれば泣いたと思うがそういったこともなかったこと,⑥病院にてBbら同席にてBaの担当医から説明を受けた際,同児のけがは転んでできるものではないので心当たりはないかと問われたが,両親とも何も分からないと答えており,原因は分からないものの,説明の後,被告乙川は残されて,担当医からお金を払うとか謝りを入れるといったことはしないようにと言われたこと,⑦Baの件では,市役所に相談に行ったこともあること,⑧Baの骨折に気付かなかったこと自体については責任を感じていることなどと答えた(甲14,18,19,20。 )(カ)D課長代理は,被告乙川に対し「Caちゃんのけがの件はどうなのか」,。 などと尋ねたところ,被告乙川は「Caちゃんの頭の傷は,公園で3~4歳の男の子にスコップで殴られてできたものです。私は,Caちゃんの様子をずっと見ていたわけではなく,気付いたときには,殴られる瞬間だった」などと答えていた。 。 また,Caが耳から出血したことについて,被告乙川は「自分は全く気付かなか,ったんです。たしか,中耳炎がひどくなって起きたんですよね」などと全く心当。 -- たりがないように答えていた。 (キ)このような被告乙川の回答を聞いて,Eは,保育者である以上常時預かっている子供がどのような状況であるかを観察するのが基本であり,被告乙川が気付かなかったというのは不自然であると感じた。そこで,被告乙川に対し「預かり,中の園児がけがをしているというのに,あなたはそれに全く気付かなかったと言っていますが,保育者な 本であり,被告乙川が気付かなかったというのは不自然であると感じた。そこで,被告乙川に対し「預かり,中の園児がけがをしているというのに,あなたはそれに全く気付かなかったと言っていますが,保育者ならば,常に子供の状況をきちんと観察しなければいけないで。 ,,しょうそれなのに子供がけがをしていたことに全く気づかなかったというのはおかしいんじゃないですか。毎日,子供を預かるときには,子供の様子をきちんと見て,保育中の様子についてもきちんと観察した上で,保護者に伝える義務があるでしょう」などと述べると,被告乙川は「はあ,そうですかね」などと答えた。 。 。 Eは,前回から気になっていた被告乙川が自分の長男を外の子供と一緒に保育していることについて「園長の子供を外の子供と一緒に保育している状況というの,は,園長の子供にストレスがたまることになるのではないか,私生活と職場の区別がはっきりしないことも子供のストレスの原因となるのではないか」などと被告。 乙川に申し向けると,同人は「ええ,まあ」などとあいまいに答えていた。 。 (ク)さらに,D課長代理が被告乙川に対し,けがをした園児の保護者との関係について「保護者の方と話合いの場を持って,場合によっては,弁護士の方に相,談して,きちんと解決してください」と言うと,被告乙川も「私自身も,園内で。 子供がけがをしてしまったことに対する責任は感じているので,弁護士の先生に相談して対処し,その上で,保護者と話し合いたい」と述べる一方で,病院の医師。 から,けがをした園児の保護者も通常の親子関係が感じられないなど,安易に謝ったり金銭の支払はしない方がよいと言われたと述べた。 (ケ)その後,D課長代理は,被告乙川に対し「児童も1人しかおらず経営面,も苦しいので,休園されたらいかがですか」などと本件保育 ど,安易に謝ったり金銭の支払はしない方がよいと言われたと述べた。 (ケ)その後,D課長代理は,被告乙川に対し「児童も1人しかおらず経営面,も苦しいので,休園されたらいかがですか」などと本件保育施設の休園を指導し。 たところ,被告乙川は「休園するにもお金がかかりますから「保育所に関して。」は,経営的には厳しいがこのまま続けたい」などと述べてて,重ねてD課長代理。 -- が休園を勧めたにもかかわらず休園を渋っていた。α市児童育成課のQらは,立入調査の最後の方で,被告乙川に対し「事態の重大性を認識してほしい。これ以上,に大きくなることは防ぎたいと思っている」と述べ,幼児が本件保育施設でけが。 をしていること自体が大きな問題となっていることについて再認識を求めた(甲19,20,22。 )イ同日,児相のXは,立入調査の後,α市立病院に行って,V医師,婦長,看護師と,Baの骨折が治ってきたので,退院後の対応について協議した。 担当看護師の話では,保護者も大分落ち着いてきたようで,専門的なアドバイスを聞くことができるような状態になったということであり,病院側の一致した意見として,Baを家に帰しても問題はないということになった。 Xはその旨H課長に報告し,退院後は同児の様子を見ることとした。また,児相から県児童福祉課へその旨連絡がされた(甲20,22。 )ウ同月27日,被告乙川から,県児童福祉課へ,現在の入所児童数が1名の状況なので,その入所児童が退園した際に一時保育園を休園するとの申出がされるとともに,個々のケースについては,市の法律相談を活用して対処したいとの連絡があった(甲15,19。 )エ同年11月2日,児相内でBa,Caの件をどう処理するかについて所内会議が開かれた。県児童福祉課からは,被告乙川から本件保育施設を休園 談を活用して対処したいとの連絡があった(甲15,19。 )エ同年11月2日,児相内でBa,Caの件をどう処理するかについて所内会議が開かれた。県児童福祉課からは,被告乙川から本件保育施設を休園する旨の申入れを受けたとの連絡があったので,上記案件を終了することもできたが,Bbの仕事の関係で,Baの夜間保育が続く可能性もあって今後の監督に不安が残るとして,児相では継続案件とすることとした(甲20。 )オ同月4日,Bbらが児相を訪れたので,XはBbらに第2回立入調査の結果について報告した。その際,被告乙川にBaのけがの原因を尋ねたが心当たりがないということであった旨を伝えるとともに,Baのけがについての対応は,被告乙川からBbらに連絡が入ることになっており,連絡が入らなかった場合には,Bbらから児相に連絡を入れてもらうことを依頼した(甲22。 )-- カ同月29日,県児童福祉課は,本件保育施設に対し,上記の第2回立入調査の結果につき,①Baの件に関しては,保護者と十分に話し合い,場合によっては弁護士等の専門家に相談する等解決に向けて努力すること,②平成11年8月31日付で通知した最低基準にかかわる部分の改善(保育者の常時2名配置,有資格者の確保)が図られておらず,保育を継続することは困難であるため,保育施設の今後の運営に関しては検討することを内容とする行政指導を文書指導の形式で通知した(甲15,20,乙A11。 )キ(ア)同年12月3日ころ,被告乙川は,県児童福祉課に対し,①Baの骨折についてBbらにe弁護士会あっせん仲裁センターへ申立てをしてもらうように通知したこと,②Caのけがについても同様にe弁護士会あっせん仲裁センターへ申立てをしてもらうように通知したこと,③平日と土曜に分けて新たに有資格者2名を雇い入れたこと ーへ申立てをしてもらうように通知したこと,②Caのけがについても同様にe弁護士会あっせん仲裁センターへ申立てをしてもらうように通知したこと,③平日と土曜に分けて新たに有資格者2名を雇い入れたこと,④同月から,無資格者1名を雇い本件保育施設を運営していること,⑤夜間の営業については自粛するとともに,当時の残っていた園児の信頼も厚く同児が転園をためらっていることから継続して本件保育施設の経営を続けることを記載した旨の手紙を送付した(甲15,19,乙A12。 )(イ)この被告乙川からの連絡を受けて,県児童福祉課のEは,本件保育施設の運営を継続するのであれば,行政側が今後きちんと監督しなければならないと思うとともに,行政側が継続して本件保育施設のチェックをしていけばどこかに問題が見つかるだろうから,その場合には,改めて本件保育施設の休園の申入れもしやすくなるであろうと考えた。 これに対し,県児童福祉課内では,本件保育施設に対し再度立入調査を実施するという意見もあったが,E自身は,こまめに本件保育施設の様子を見に行くのもいいのではないかと思い,D課長代理に「丙保育ルームが営業を継続するなら,その分行政側からの監視をしっかりやるしかないので,別の施設に立入調査をする機会があったら,その際に,丙保育ルームにも立ち寄るようにします」と提案したと。 ころ,D課長代理もこれを了承した(甲15,19。 )-- ク(ア)同月21日午後4時30分ころ,Eは,別の施設に対する立入調査を実施した後,現場が本件保育施設の近くであったことから,同施設を訪れて30分ほど施設内で被告乙川と立ち話をした。 被告乙川は,Eに対し,本件保育施設の状況等について,園児4名を1名の保育士がみていること,普段は有資格保育士がもう1名勤務していること,Baの件については, ほど施設内で被告乙川と立ち話をした。 被告乙川は,Eに対し,本件保育施設の状況等について,園児4名を1名の保育士がみていること,普段は有資格保育士がもう1名勤務していること,Baの件については,e弁護士会のあっせん仲裁センターにて話合いの期日待ちであること,Caの件については,同児の耳からの出血については全く知らないことで,保護者から十分話を聞いて話し合っていくこと,入園の問い合わせも多く,今後も本件保育施設の運営を継続させていく意向があり,立入調査等での指摘事項を改善していくことなどを述べた。 (イ)Eが立ち寄った際,本件保育施設のフロア内で,被告乙川の長男と外の園児とがおもちゃの取り合をしてけんかとなっており,被告乙川の長男が別のおもちゃを投げつけたところ,これが全く別の園児に当たり,その子が泣き出し,被告乙川は,おもちゃが当たって泣いている子供を抱いてなだめていたが,被告乙川の長男に対しては全く注意などをしていなかった。 (ウ)これを見て,Eは,被告乙川がいまだに園児をきちんと観察することができていないから,いつまた預かり幼児がけがをしてもおかしくないのではないかと思った。また,Eは,その日,本件保育施設には保育者として被告乙川しかいなかったが,たまたま別の保育者が来ていないというのはおかしいのではないか,本当は,きちんと保育者を雇っていないのではないかとの疑いをもった。 (エ)Eは,同日本件保育施設に立ち寄った際の意見として,被告乙川の長男が,,一緒に保育されている状況が望ましくないこと常時職員が複数いるわけではなく被告乙川の長男の観察も不十分であるので,今後も監視していかなくてはならない施設であることなどを挙げた(甲19。 ),,,,(オ)なお第2回立入調査の後同日までの間県児童福祉課及び児相等には 長男の観察も不十分であるので,今後も監視していかなくてはならない施設であることなどを挙げた(甲19。 ),,,,(オ)なお第2回立入調査の後同日までの間県児童福祉課及び児相等には本件保育施設で虐待が行われたことをうかがわせるような情報は何ら寄せられなか-- った。 (6)第3回立入調査通知後から被告乙川逮捕等に至る経緯についてア平成12年1月14日,県児童福祉課は,同年2月29日に第3回立入調査をすることを被告乙川に通知した(甲15,乙A13。この第3回立入調査に先)立ち,D課長代理は,課員に対し「問題のある丙保育ルームが運営を継続する以,上,行政側として,保育指導の徹底を図ること,Baちゃん等,丙保育ルームの施設内でけがをした児童の問題の解決状況を確認すること」の2点を行うようにと。 の指示を行った(甲19。 ),,イ(ア)同年2月4日午前9時ころから同日午後4時ころまでの間被告乙川は本件保育施設内で園児であるAa(当時1歳)の頭部を平面様の鈍体に数回打ち付,,,けるなどの暴行を加え同児に頭部打撲の傷害を負わせ同日午後6時45分ころα市内に所在するc中央病院において,上記傷害に基づくびまん性脳ざ傷により死亡させた(甲30。 )(イ)同日,α署は,同病院の医師からの通報により,Aaの変死事件を認知した。同通報を受けて,α署刑事課強行犯係のI警部補らは,同病院に赴いたが,死亡したAaには,外傷もなく同病院では死因は分からなかった(乙B5。 )(ウ)同日,Aaが本件保育施設に通園していたことを知ったI警部補らは,被告乙川に対し,α署への出頭を求め捜査員が事情聴取したところ,被告乙川は,Aaが死亡した経緯について,①Aaは,平成11年の11月末ころから本件保育施設に通園していたが,入園当 ったI警部補らは,被告乙川に対し,α署への出頭を求め捜査員が事情聴取したところ,被告乙川は,Aaが死亡した経緯について,①Aaは,平成11年の11月末ころから本件保育施設に通園していたが,入園当初から,元気がなく,体が弱く,どちらかといえばおとなしい性格であったこと,②事件当日,Aaが登園したのは午前9時30分ころであり,登園時の体温は36.8℃で,2,3日前から風邪気味であり,持参の風,,,邪薬1回分を預かったこと③Aaは顔色が悪く胸元でぜいぜいと息をしており午前中には多量の下痢をし,食事を与えてもほとんどとらず寝ていたこと,④Aaは午後になって内臓の腐ったようなゲップをするようになり,被告乙川はそのにおいが亡父が死亡する前にしていたゲップと同じであったためAaの異変に気づき,-- 午後3時~4時ころに体温を測ったところ35.2℃であったこと,⑤そこで,被告乙川はAaの母親に迎えに来るように連絡し,午後6時ころ同児の母親が迎えに来たが,このとき,Aaは,自力で起きあがり,コップに差したストローでジュースを飲んだこと,⑥その後,同児の母親がAaを抱きかかえた途端,Aaの首が後ろにガクンと力尽きたので,同児の母親とともに病院に連れて行ったことなどを述べた(甲37,乙B1。 )(エ)他方,α署の警察官は,Aaの母親であるAbに事情を聴取したところ,Abは,①Aaが死亡した当日の同児の体調で気になったことは,食べ物が消化されていないようなにおいの口臭があったことであり,その原因は前日の夜に食べ過ぎたことではないかと考えられること,②本件保育施設には,いつもと同様にAa,,,,を連れていき本件保育施設内には被告乙川の長男と一郎がいたこと③Abは被告乙川に対し,Aaが朝食を食べていないこと,風邪薬を昼に飲ませるよ ②本件保育施設には,いつもと同様にAa,,,,を連れていき本件保育施設内には被告乙川の長男と一郎がいたこと③Abは被告乙川に対し,Aaが朝食を食べていないこと,風邪薬を昼に飲ませるようにと伝え,Aaを本件保育施設に預けたこと,④同日午後4時ころ,被告乙川からAbの携帯電話に電話があり,被告乙川は,Abに対し,Aaが下痢をしていて,体温が35℃であることを告げたが,特に早めに迎えに来るようにとは言わなかったこと,⑤同日午後5時50分ころ,Abが,本件保育施設にAaを迎えに行くと,Aaは呼びかけに全く反応せず,薄目をあけたまま,全く身動きしなかったこと,⑥AbがすぐにAaを病院に連れていこうとしたところ,被告乙川は,Aaにジュースを飲ませることを提案して,Aaのまくら元でコップをもって何かゴソゴソやっていたが,Aaが上体を起こしたり,ジュースを飲んでいる様子には見えなかったこと,⑦その後,Abは,Aaを抱きかかえて本件保育施設の玄関の方に歩き出したところ,Aaの頭が急にガクッと後ろに倒れ,全身の力が抜けたように急に重くなったこと,⑧Abは,Aaを自動車に乗せて,c中央病院に連れていったことなどを述べた(乙B5,甲52。 )(オ)同月5日午後0時40分から同日午後1時30分までの間,g大学法医学教室においてAaに対し,行政解剖が行われたが,Aaの頭部に外傷性の皮下出血-- 及び硬膜下出血が認められ,病死以外の何らかの犯罪による死亡も考えられたことから,司法解剖に切り替えられた。 Aaの死体の外部所見は,身長81㎝,体重11キロ,体格中等であり,全身の皮色は蒼白で,死斑は体幹部背面,上下肢背面に赤紫色に出現し,指圧にて退消せず,硬直は全関節に強であった。眼瞼眼球結膜は蒼白で,溢血点はなく,角膜は透明,どう孔は透見でき ロ,体格中等であり,全身の皮色は蒼白で,死斑は体幹部背面,上下肢背面に赤紫色に出現し,指圧にて退消せず,硬直は全関節に強であった。眼瞼眼球結膜は蒼白で,溢血点はなく,角膜は透明,どう孔は透見でき,左右ともに6㎜,舌先は歯列の内側で,外部所見では外傷は認められなかった。解剖所見は,頭皮,骨膜下の出血と一致した硬膜下に硬膜に付着する一程度の薄い軽度な両側性の出血(硬膜下出血)を認め,同硬膜下出血部に相当する脳表面には,くも膜下出血等の異常は認められなかった。 解剖の結果によれば,死因は不詳で同時点で検索中であり,死亡推定時間は同月4日午後6時45分,成傷器の種類は,頭皮,骨膜下の出血は平たんな鈍体によると推定されるとのことであった(甲51。 )解剖を担当したg大学法医学教室講師のY医師の話では,頭部の出血も,直ちにそれが死因とは断定することはできず,より精査しなければ何ともいえないということで,結局司法解剖によっても,その時点では死因は分からないということにな,,。 りこのため病院において組織検査をするなどして死因を究明することとなったまた,Aaは,風邪気味であったことのほか,ぜん息などにより度々通院もしていたようであることに加えて,上記解剖で発見された後頭部の出血に関し,新しい出血と古い出血のこん跡があったようであった。同医師が,Abに対し「Aa君,が,今回のことのみならず,以前にもどこかに頭をぶつけたなどの出血の原因となることに心当たりはありますか」と尋ねたところ「何日か前に,Aaが丙保育。 ,ルームから帰ってきて,あお向けに寝かせると『痛い』と言って泣いたことがあ,り体を調べてみたら頭部にタンコブがあるので,綾瀬の病院に連れていきました。 病院でレントゲンも撮ったのですが『異常はない。10日ほどで治るでしょう』,。 とい と『痛い』と言って泣いたことがあ,り体を調べてみたら頭部にタンコブがあるので,綾瀬の病院に連れていきました。 病院でレントゲンも撮ったのですが『異常はない。10日ほどで治るでしょう』,。 ということでした」という話をしていた。I警部補もAbに対して事情聴取した。 ところ,同趣旨の回答を得た(甲38,55,乙B5。 )-- (カ)同月5日の午前中から,α署の警察官らは,被告乙川の立会の下,本件保育施設について,実況見分を行った(乙B5。 )(キ)同月7日,Aaの頭部にタンコブがあった旨の上記Abの発言を受けて,α署の警察官は,その事実を確認するために,本件保育施設でのAaの保育日誌を調べたところ,平成12年1月24日の欄に「登園チェック後頭部タンコブあ,お向けに寝っころがると,タンコブが痛いようでうつぶせで寝ていました」との。 記載が確認された。そのため,この点を確認するためI警部補は被告乙川に電話をした。 被告乙川は,I警部補からの同電話に対し,Aaのタンコブについてはいつできたかは分からないこと,日中預かっているので自宅でできたタンコブでなければ,。 ,,本件保育施設でできたと考えられることなどを答えたこれに対してI警部補は被告乙川に対し,上記保育日誌の記載によれば,24日の朝に本件保育施設の保育者がAaのタンコブについて気づいたとなると,同児の母親は前日の夜に気づいたことになるが,保育日誌を見ると1月21日から23日までの記載がないがどうしたのかと尋ねたところ,被告乙川は,今出先であるから本件保育施設に帰ってからまた電話をする旨回答し,程なくして,被告乙川からI警部補に対し電話があり,保育日誌の記載がないのは記載漏れの可能性があること,Aaのけがについては,やはりいつできたのか分からないことなどを述べた(甲 た電話をする旨回答し,程なくして,被告乙川からI警部補に対し電話があり,保育日誌の記載がないのは記載漏れの可能性があること,Aaのけがについては,やはりいつできたのか分からないことなどを述べた(甲55。 )(ク)被告乙川は,以前本件保育施設で保育者として働いていたZに対し,同年1月27日の時点でZが退職していたにもかかわらず,Aaが死亡した2月4日にZに電話し,同日に同人が,本件保育施設で働いていたことにしてほしいと依頼した。この被告乙川の依頼をZは了承し,後日Zが本件保育施設を訪れると,被告乙川は,Zに対し,Aaが死亡した経緯について上記(ウ)と同趣旨の話を聞かせ,「もし警察に聞かれたら,2月4日に私と一緒にいたことにして,また,Aa君の容体についても私が今話したように答えてください」と依頼し,Zが本件保育施。 設から帰る際に,ティッシュペーパーにくるんだ1万円札を同人に手渡した。 -- (ケ)同年2月中旬ころ,α署の警察官が,Zの自宅を尋ねてきて同人から事情を聴取したが,Zは,被告乙川から依頼されたとおりの内容の供述をし,さらにその後同年2月から3月ころにかけて,同じ警察官がZの自宅を訪れ,今度は本件保育施設で一郎も死亡したと話してZから事情を聴取したが,同人は前回と同様に被告乙川に依頼されたとおりの供述をした。 (コ)同年6月ころ,別の警察官がZの自宅を訪れAaの件について事情を聴取したところ,Zは同様に被告乙川の依頼どおりの供述をしたが,警察官に調書を録るので翌日にα署に来るように依頼されて怖くなり,翌日α署で被告乙川から虚偽の供述を依頼されたことを供述し,さらに検察官の取調べに対し,被告乙川から1万円の謝礼を受けたことを供述した(甲38,甲54。 )(サ)Aaの解剖を行った医師は,Aaの死因の鑑定を継続していた 偽の供述を依頼されたことを供述し,さらに検察官の取調べに対し,被告乙川から1万円の謝礼を受けたことを供述した(甲38,甲54。 )(サ)Aaの解剖を行った医師は,Aaの死因の鑑定を継続していたところ,同年7月下旬,同児の脳梁等の組織に出血を認め,これにより頭部打撲による脳損傷が死因であると判断し,その後も必要な検査等を行った上,びまん性脳損傷を死因とする判断を行った(甲30,60。 )ウ同年2月18日午前7時35分ころ,被告乙川は,本件保育施設内で,園児(),,である一郎当時2歳に対しその後頭部を床面に打ち付けるなどの暴行を加えよって,頭がい骨骨折を伴う頭部打撲等の傷害を加え,同日午後7時52分ころ,b市内に所在するf大学病院において,前記傷害に基づく頭がい内損傷により死亡させた(甲30,31。 )エ(ア)同月29日,県児童福祉課は,本件保育施設に対し3回目の立入調査を実施した。なお,この時点では,丙保育ルームの園児2名が死亡していたことは,県児童福祉課は把握しておらず,当日,被告乙川の側からそのような園児2名の死亡に関する話は全くされなかった。 (イ)この立入調査終了後,Qから閉鎖命令は出さないのかという質問があったが,Eは,本件保育施設のような無認可保育施設に対する閉鎖命令については当時まだ前例がなく,同命令を出す際には神奈川県児童福祉審議会の意見を聴かなけれ-- ばならず,現場担当者のレベルで出せるものではなかったことから「閉鎖命令を,するには,虐待のはっきりした証拠がなければならないし,審議会にかける必要があるので難しいですね」と答えた(甲19。 。 )オ同年3月3日ころ,α署から,児相及び県児童福祉課に対し,本件保育施設で2件の死亡事故があったので捜査に協力してほしいとの照会がされた。そ 必要があるので難しいですね」と答えた(甲19。 。 )オ同年3月3日ころ,α署から,児相及び県児童福祉課に対し,本件保育施設で2件の死亡事故があったので捜査に協力してほしいとの照会がされた。そして同日,児相のH課長は,県児童福祉課のEに対し,本件保育施設で2名の死者が出たこと,警察が児相へ来たことなどを連絡した(甲19,20,46,47。 )カ同月7日,児相は,BaとCaに関する相談案件の終了を決定した。その理由は,Baの件は,平成11年11月4日のXと同児両親との面談以降,同児の両親らが児相と連絡を取らなくなったことから児相の援助がいらなくなったと考えられたこと,かつ,α署から事件性のある死亡事故が本件保育施設で起きたとの話が,,,あったことから本件保育施設側の虐待のおそれが強まったことからでありまた,,Caの件については同年11月に児相からCbに呼出しをかけたにもかかわらず同人はこれに応ぜず児相と接触する意思がないと考えられたことからであった(甲20)キ同年4月10日,第3回立入調査の結果に基づいて,県児童福祉課長は,本件保育施設に対し,①保育中に園児にけがのないように十分留意すること,②避難訓練の実施記録を整備することを口頭指導の形式で指導した(乙A14。 )ク同年6月9日,県児童福祉課の職員は,α署を訪問し,本件保育施設での園児の死亡事故の概要を聴取した(甲58の2。 )ケ同日午後1時30分ころから同日午後4時ころまで,県児童福祉課の職員らは休園指導を行う目的で,本件保育施設に対し4回目の立入調査を実施した。この立入調査の終了後,県児童福祉課の内部で今後の本件保育施設に対する対応について協議が行われ,その結果,本件保育施設が休園指導に応じないのであれば,施設閉鎖命令を出すなどの手段に出るしかないとの意 の立入調査の終了後,県児童福祉課の内部で今後の本件保育施設に対する対応について協議が行われ,その結果,本件保育施設が休園指導に応じないのであれば,施設閉鎖命令を出すなどの手段に出るしかないとの意見が大半を占めるようになった(甲19,20,58の2)-- コ同月27日,α署の警察官は,被告乙川を任意同行し,その後裁判官に対して被告乙川の一郎についての傷害致死容疑の逮捕状を請求し,逮捕状発布後の同日午後9時過ぎ,被告乙川は通常逮捕された。被告乙川は,一郎に対する傷害致死事件について,一部自白するも,その後は発生当日に警察官に話したとおりであると,(,,)。 のみ供述し雑談には応じるものの容疑を否認した甲58の2同の3乙B5サ被告乙川の逮捕後に,本件保育施設に通っていた園児の保護者から被害申告がされたり,園児の保護者の聞き込み捜査を行った結果,α署は,同月28日,上記(2)エ及び同(3)イの被告乙川からのLに対する傷害容疑事件を(甲44,同月)29日に,上記(2)エの被告乙川からのMに対する傷害容疑事件を(甲45,同)年7月2日に,上記(2)エの被告乙川からのKに対する傷害容疑事件を(甲43,)それぞれ認知した。 ,,。 被告乙川は同年8月8日Aaに対する傷害致死罪の被疑者として逮捕されたさらに,その後,α署は,被告乙川をK,L,Mに対する各傷害罪の被疑者として改めて逮捕した外,Fa,O,Caに対する傷害事件を含めて横浜地方検察庁に書類送致し,さらに,立件には至らなかった20名に及ぶ本件保育施設の園児に対する傷害,暴行容疑の事案に係る関係書類を横浜地方検察庁へ被告乙川の情状資料として送付した(乙B5。 )シ同年7月18日,被告乙川は,一郎に対する傷害致死事件で起訴された(甲58の3。 )ス平成14年 暴行容疑の事案に係る関係書類を横浜地方検察庁へ被告乙川の情状資料として送付した(乙B5。 )シ同年7月18日,被告乙川は,一郎に対する傷害致死事件で起訴された(甲58の3。 )ス平成14年6月3日,被告乙川は,横浜地方裁判所において,Aa及び一郎に対する各傷害致死(上記イ,ウ)並びにK,L(2件,M及びBaに対する各)傷害(上記(2)エ,同(3)イ,同(4)ア)の行為について,犯罪の証明があったとして懲役20年の有罪判決の宣告を受けた(甲30。 )セ平成15年12月6日原告らは本件訴訟を横浜地方裁判所に提起した顕,,(著な事実。 ) 争点(1)(被告乙川の殺意の有無)について-- (1)前記1(6)ウの認定事実によれば,平成12年2月18日午前7時35分ころ,被告乙川は,本件保育施設内で一郎に対し,後頭部を床面に打ち付けるなどの暴行を加え,よって,頭がい骨骨折を伴う頭部打撲等の傷害を加え,一郎を頭がい内損傷により死亡させた事実が認められるところ,原告らは,被告乙川がAaを死亡させたことの口封じのために一郎を確定的故意をもって殺害したがい然性が濃厚である旨主張するのに対し,被告乙川は原告らの同主張を否認しているので,一郎に対する殺意の有無について検討する。 (2)証拠(甲26~28,30,31,37,62,63,乙A20,原告花子及び原告太郎各本人尋問の結果,前記1の認定事実及び弁論の全趣旨を総合す)れば以下の事実を認めることができる。 ア原告らは,平成12年1月3日から,一郎を本件保育施設に預けるようになったところ,一郎は同月下旬ころから本件保育施設のある商店街にさしかかると体をこわばらせ原告花子に抱きつくようになり,そのころから本件保育施設に近づくと「こわい」と言うようになった。 原告らは,一郎が たところ,一郎は同月下旬ころから本件保育施設のある商店街にさしかかると体をこわばらせ原告花子に抱きつくようになり,そのころから本件保育施設に近づくと「こわい」と言うようになった。 原告らは,一郎がまだ片言でしか言葉を話すことができなかったことから,本当に「こわい」という言葉の意味を理解した上で言っているのか分からず,同年2月初旬ころ,原告花子が本件保育施設への連絡帳に一郎が「こわい」と言うようになったので何か心当たりがないかと記載したところ,被告乙川は,全く心当たりはないと否定していたが,そのことを気にしているようであった(甲26,62。 )同月4日,Aaが本件保育施設内で死亡の原因となる被告乙川からの暴行を受けた際,一郎は本件保育施設内に居合わせた(甲37。 )イ原告花子は,同月18日午前7時10分ころ,一郎を連れて自宅を出発し本件保育施設へ向かい,同日午前7時30分すぎに本件保育施設に到着し,被告乙川に一郎を預けた。その際,被告乙川は,再び一郎が「こわい」と言っていることを持ち出し「なぜでしょうね」などと言って,ひどく気にしてショックを受けて,。 いるようだったので,原告花子は「さあ,かゆいことも痛いと言ってしまう年齢,-- ですから」と言って慰めた(甲26,62。 。 )ウ原告花子から一郎を預かった直後の同日午前7時35分ころ,被告乙川は,一郎に対し,両肩辺りを突き押すなどして後頭部を床面に打ち付けるなどの暴行を加え,よって,一郎に頭がい骨骨折を伴う頭部打撲等の傷害を加えた。 一郎は頭を床に打ち付けた後,よだれを流したりして動かなくなり,それを見た被告乙川は,まだ原告花子が遠くに行っていないと思い原告花子を呼び戻すこととした(甲30,31。 。 )エ原告花子は,一郎を被告乙川に預けた後トイレに立ち寄っていたとこ て動かなくなり,それを見た被告乙川は,まだ原告花子が遠くに行っていないと思い原告花子を呼び戻すこととした(甲30,31。 。 )エ原告花子は,一郎を被告乙川に預けた後トイレに立ち寄っていたところ,原告花子の携帯電話に被告乙川から着信があり,被告乙川から「一ちゃんが引きつけを起こしているのですぐに来てください」との連絡があった。 。 原告花子があわてて本件保育施設に戻ると,一郎は部屋に入ってすぐ右にあるカウンターテーブルの脇に倒れていた。原告花子が一郎に呼びかけ,背中を何度もなでてみても,一郎の目は焦点が定まらず普通の状態ではなかった。 被告乙川は「一ちゃんのことを後ろから抱きかかえたら,ぐうっとのけぞって,わーっと戻してしまったので横に寝かせています」と説明した(甲62。 。 )オ原告花子は,心配となり被告乙川に救急車を呼んだ方がいいのではないかと相談したところ,同人は,一郎はただ疲れているだけであり心配であれば本件保育施設を早退して後で病院に連れていってはどうかと述べて,救急車は必要ないという態度をとった。 原告花子がさらに不安を募らせていたので,被告乙川は近所の小児科の医師を呼んだ方が救急車より早いと述べて,本件保育施設を出ていった(甲62。 )なお,本件保育施設から北西に約100メートルで徒歩2~3分のところに所在する戊山小児科医院の戊山医師は,当日の午前7時30分から午前8時の間に同医院のインターホンやブザーは鳴っておらず,来客はなかったと供述している(甲28。 )カ被告乙川が出ていった後,原告花子は原告太郎に携帯電話をかけて相談した-- ところ,救急車を呼んだ方が良いということになり,原告花子が119番通報しよ,「。」うとした際にちょうど被告乙川が戻ってきて小児科の先生はいませんでしたなどと述べる 相談した-- ところ,救急車を呼んだ方が良いということになり,原告花子が119番通報しよ,「。」うとした際にちょうど被告乙川が戻ってきて小児科の先生はいませんでしたなどと述べるとともに,原告花子が119番に通報して救急隊員に本件保育施設の住所を教える際に口添えをした(第13回口頭弁論における原告花子尋問調書14頁。なお,この間被告乙川が外出していたのは,約5分程度であり,本件保育施)設と上記戊山小児科医院との往復時間とほぼ一致する(甲28。 )救急車を待っている間,一郎は口から泡を吹き息も絶え絶えとなったので,被告乙川の発案で,一郎に対し人工呼吸をすることとし,まず被告乙川がマニュアルどおりの人工呼吸を一郎に行い,さらに原告花子が人工呼吸を行った(第13回口頭弁論における原告花子尋問調書14,15頁)キその後,救急車が到着し,一郎はいったんα市立病院に運ばれたが,手の施しようがないということで,さらに救急車でf大学病院の救命救急センターに運ばれた。同病院の医師からは,一郎は,頭がい骨が陥没し,くも膜下出血もあり自力呼吸ができない状態であること,交通事故くらいの衝撃がないとこのようなけがは生じないこと,もう延命治療しかできないことなどを告げられ,原告らはやむなく延命治療の中止を申し出て,同月18日午後7時52分,一郎は上記病院において死亡した。 ク同日午後7時55分ころ,f大学救命救急センターから一郎の死亡について通報を受けたα署は,横浜地方検察庁検察官の指揮を受けて司法解剖が適切である,,,と判断し同月19日横浜地方裁判所裁判官から鑑定処分許可状の発布を受けてf大学医学部法医学教室の某教授に鑑定嘱託を行い,同日午前11時10分からf大学において一郎の司法解剖を行った。 司法解剖の結果,一郎の死亡原因は, 浜地方裁判所裁判官から鑑定処分許可状の発布を受けてf大学医学部法医学教室の某教授に鑑定嘱託を行い,同日午前11時10分からf大学において一郎の司法解剖を行った。 司法解剖の結果,一郎の死亡原因は,頭がい骨骨折を伴う頭部打撲傷に基づく頭,,,. . がい内損傷と考えられ創傷の部位程度については①後頭部中央に75×45㎝大の打撲傷,②頭頂部頭部中央に3.0×3.0㎝大の打撲傷,③頭がい骨骨,,,,折④急性脳硬膜下出血⑤外傷性くも膜下出血⑥小脳ざ傷⑦高度の脳しゅ脹-- ⑧脳ヘルニアで,上記①~⑧は総合して致命傷であり,これは鈍器ないし鈍体で強く打撲されることによって生じたものと考えられるというものであった(弁論の全趣旨。 )(3)検討上記認定事実をもとに,被告乙川の一郎に対する殺意の有無について検討すアると,一郎の死亡に係る創傷の部位は,頭部という人体の枢要部位に対するものであり,上記認定事実ウの犯行態様からすれば,被告乙川としても一郎の頭部に何らかの創傷が生じることは認識し得たと推測され,かつ,その創傷の程度は上記認定事実クのとおりであり,上記①~⑧は総合して致命傷で,これは鈍器ないし鈍体で強く打撲されることによって生じたものであることが認められ,被告乙川の一郎の身体に対する攻撃の意思は相当程度のものであったと推測される。もっとも,被告乙川の犯行態様にかんがみると,その有形力の行使により頭部に創傷が生じる可能性は認識し得たものの,殊更に頭部を攻撃する意思の下に上記犯行を行ったとは推認し難い。 イまた,被告乙川の犯行の態様は上記認定事実(2)ウのとおり,素手で両肩辺りを突き押すなどして後頭部を床面に打ち付けるなどの暴行を加えたというものであり,その犯行態様自体は素手による単発の有形力の行使による 被告乙川の犯行の態様は上記認定事実(2)ウのとおり,素手で両肩辺りを突き押すなどして後頭部を床面に打ち付けるなどの暴行を加えたというものであり,その犯行態様自体は素手による単発の有形力の行使によるものであり,執ようなものではなく,死亡の結果を必然的に起こさせるものとまではいえないのであって,上記暴行が成人の女性が2歳児に対して行ったものであるという体力差等を考慮したとしても,当該犯行から致命傷に至る創傷が生じたことは,被告乙川にとっても意外なものであった可能性は否定できない。 さらに,本件保育施設内には,被告乙川の外にいなかったことからすれば,一郎に対する暴行後,真実被告乙川に殺意があれば一郎を放置して死亡させることもできたにもかかわらず,被告乙川は,よだれを流したりして動かなくなっている一郎を見るや,直ちに原告花子を呼び戻したことからしても,被告乙川が一郎を死亡させる意図を有していたことには疑問がある。 -- ウまた,原告らは,被告乙川が一郎をAa殺害の事実の口封じのために殺害したものであり,殺人の動機があると主張する。確かに,上記認定事実ア及びイによれば,Aaが被告乙川により殺害された当日一郎は居合わせたものであり,かつ,その前後から一郎が「こわい」と述べており,そのことを,本件事件当日,被告乙川自身が気にしていたなどの事情が存在するが,原告らの同主張は,確たる証拠が存在せず,推論の域を出ないものといわざるを得ないから,被告乙川に一郎殺害への明確な動機があったと認定することはできない。 エ加えて,上記認定事実(2)オ及びカによれば,被告乙川は,原告花子が119番の救急隊員に本件保育施設内の住所を教える際に口添えをしていること,救急車を待つ間,被告乙川の発案で被告乙川自身が人工呼吸を行っていることなど一郎の救命に向けた行動 ,被告乙川は,原告花子が119番の救急隊員に本件保育施設内の住所を教える際に口添えをしていること,救急車を待つ間,被告乙川の発案で被告乙川自身が人工呼吸を行っていることなど一郎の救命に向けた行動をとっている事実が認められ,これらの事実からしても被告乙川の一郎に対する殺意を認定するには疑問がある(なお,原告らは被告乙川が故意に救急車を呼ぶのを遅らせ小児科に行く振りをしたと主張し,その根拠として戊山Aa子医師の供述を挙げるが,被告乙川が戊山小児科医院の往復にかかる時間と同程度の時間で外出し戻ってきている事実等にもかんがみると,同医師の供述にかかわらず,被告乙川が原告らの主張するような遅延工作を行ったとまで認めるのは困難である。 。)オ以上の事情を総合考慮すると,被告乙川が一郎に対して,殺意をもって暴行を行ったことが高度のがい然性をもって証明されているとはいえず,そのほか本件全証拠によっても,被告乙川の殺意を認めることはできないから,原告らの主張を採用することはできない。 もっとも,上記認定事実を総合すれば,被告乙川が,一郎に対し,傷害の故意を有していたことは,優に認めることができる。 争点(2)(県児童福祉課の不作為による不法行為)について(1)原告らは,被告神奈川県(県児童福祉課)は,児童福祉法59条3項の規定により,県児童福祉審議会の意見を聴き,事業停止又は施設閉鎖を命じる権限が-- あるところ,本件保育施設内で被告乙川により園児が虐待されていたことを予見し得たにもかかわらず,上記権限の行使に向けた作業には全く着手せず放置したもの,,であり劣悪極まる本件保育施設を直ちに排除すべき法律上の義務及び園児の生命身体の安全を守るために適正に同権限を行使すべき法律上の義務を怠ったという不作為の違法がある旨主張する。 とこ たもの,,であり劣悪極まる本件保育施設を直ちに排除すべき法律上の義務及び園児の生命身体の安全を守るために適正に同権限を行使すべき法律上の義務を怠ったという不作為の違法がある旨主張する。 ところで,国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である(最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決・民集43巻10号1169頁,最高裁平成7年6月23日第二小法廷判決・民集49巻6号1600頁,最高裁平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁,最高裁平成16年10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁参照。 )そこで以下,本件において県児童福祉課に当時与えられていた権限の内容,その権限を定めた法令の趣旨,目的やその権限の性質等について検討する。 (2)県児童福祉課の本件事件当時の権限等についてア証拠(枝番号を含む。甲17,18,乙A1~3,15,23,24,証人J)及び前記1(1)ウに認定した事実を総合すれば,以下の事実等を認定することができる。 (ア)事業停止又は閉鎖命令について児童福祉法は,児童の福祉の保障を行政運営の第一義的な目的とし(同法3a条,国及び地方公共団体は,児童の保護者とともに児童を心身ともに健やかに育)成する責任を負う(同法2条)旨規定しているところ,同法は,市町村が,保護者の労働や疾病等により保育に欠ける乳幼児の保育を実施すべきことを定め(同法2),,,,4条都道府県は命令の定めるところにより児童福祉施設を設 旨規定しているところ,同法は,市町村が,保護者の労働や疾病等により保育に欠ける乳幼児の保育を実施すべきことを定め(同法2),,,,4条都道府県は命令の定めるところにより児童福祉施設を設置し市町村は-- 都道府県知事に届け出て,国,都道府県及び市町村以外の者は,都道府県知事の認可を得て児童福祉施設を設置することができる(同法35条2,3,4項)と規定。 ,している児童福祉施設としての保育所は市町村等が自ら設置する公立保育施設と民間が設置して市町村から保育の委託を受けて運営する認可保育施設に大別される。これらの保育施設の運営については,同法45条に基づいて政令で定める児童福祉施設最低基準(昭和23年12月29日厚生省令第63号,以下「最低基準」という)を満たすことが定められている。 。 しかしながら,昭和50年ころから,主に大都市部を中心に共働き家庭の増b加,核家族化などを背景に保育需要が増大し,公立保育施設及び認可保育施設の設立が追いつかなくなり,個人や企業等が保育を業として行うことについて何ら規制等がない法的な空白領域が存在したため,各地で自然発生的に認可を受けずに業として保育を行う認可外保育施設(無認可保育施設)が発生した。このような認可外保育施設の中には,夜間子供を預かる「ベビーホテル」と称される施設があり特に問題が多かったことから,劣悪な保育環境で乳幼児を預かる保育施設が社会問題となった(乙A15,23。 )こうしたことを背景に,昭和56年に児童福祉法が改正され,同法59条1c項は,都道府県知事は,児童の福祉のために必要があると認めるときは,認可外保育施設について,その施設の設置者若しくは管理者に対し,必要と認める事項の報告を求め,又は当該職員をして,その施設に立ち入り,その施設の設備若しくは運営に のために必要があると認めるときは,認可外保育施設について,その施設の設置者若しくは管理者に対し,必要と認める事項の報告を求め,又は当該職員をして,その施設に立ち入り,その施設の設備若しくは運営について必要な調査若しくは質問をさせることができると規定し,さらに同条3項において,都道府県知事は,認可外保育施設について,都道府県児童福祉審議会の意見を聴き,その事業停止又は施設の閉鎖命令を命ずることができると規定された。 もっとも,これらの都道府県知事の,認可外保育施設に対する報告徴収権,立入調査権及び事業停止命令又は施設閉鎖命令は同条の「できる」という文言から明らかなように,上記権限の行使は都道府県知事に一定の裁量が認められているととも-- に,報告徴収権及び立入調査権については同条2項が準用する同法34条の4第3項によれば,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないと規定されていた。 また,上記児童福祉法の改正により都道府県知事に報告徴収権及び立入調査d権が付与されたことに伴い,認可外保育施設に対する指導の基本方針として,厚生省児童家庭局長より「無認可保育施設に対する指導監督の実施について」と題する通達が,各都道府県知事及び各指定都市市長あてに発せられた(昭和56年7月2日児発第566号厚生省児童家庭局長通知,以下「56年通達」という。この5)6年通達の基本方針は,認可外保育施設に対して前記最低基準を直ちに適用することは影響が大きいと考えられるので,当面の対策として最低基準とは別に認可外保育施設の指導基準を定め(以下「当面の指導基準」という,少なくともこれに。)適合するように指導するとともに,適合しない施設については,事業停止又は施設閉鎖の措置を講ずることとした。そして,その指導基準についての考え方は,劣悪な認可 導基準」という,少なくともこれに。)適合するように指導するとともに,適合しない施設については,事業停止又は施設閉鎖の措置を講ずることとした。そして,その指導基準についての考え方は,劣悪な認可外保育施設を排除するための当面の基準であって,当該指導基準に適合する認可外保育施設を制度的に認める趣旨ではなく,当面の指導監督の指針として児童の安全確保の観点から必要最小限度の基準を定めたものであり,その指導内容は専ら保育従事者の数,資格や施設の構造設備に関することを基本に指導することとされた(乙A2。 )さらに平成元年になり,依然として劣悪な保育環境にあるベビーホテル等にeおいて乳幼児の死亡事故の発生がみられ,施設の管理運営及び処遇上の問題から乳幼児の心身両面にわたる健全な発育が阻害されている事例が見受けられるとして,乳幼児の処遇面の指導の強化を図る目的で厚生省児童家庭局母子福祉課長から無,「認可保育施設に対する指導監督の強化について」と題する通達(平成元年6月19,「」。)日児福16号厚生省児童家庭局母子福祉課長通知以下平成元年通達というが各都道府県,各指定都市民生主管部(局)長あてに発せられた(乙A3。 )このように,児童福祉法上は,公立又は認可の保育所を前提としており,こf-- れらの保育所の充実により認可外保育施設が不要となることが保育行政の将来像であり基本方向ではあったが,前記56年通達などに表れているように,認可保育施設が不十分な状況にあっては,認可外保育施設の存続を認めないと,保育を要する児童の保育の場が決定的に不足することとなり,社会的に影響が大きいので,認可外保育施設の存在を暫定的に認めることにしたものであった。そして,児童福祉法59条は,認可外保育施設において保育を受ける児童の心身両面にわた 決定的に不足することとなり,社会的に影響が大きいので,認可外保育施設の存在を暫定的に認めることにしたものであった。そして,児童福祉法59条は,認可外保育施設において保育を受ける児童の心身両面にわたる健全な発育を阻害しないように,認可外保育施設の適正な管理運営を図ることを目的としており,56年通達にいう「当面の指導基準」は,認可外保育施設が具備すべき条件を示したものであったといえる(乙A23。 )56年通達は,当面の指導基準に適合しない認可外保育施設に対しては,放置すれば事業停止又は施設閉鎖の対象となることを示した上で,行政指導として改善又は移転の勧告を行うとし,猶予期間内に改善又は移転が行われず,その後も改善等の見通しがない場合には,児童福祉法59条3項の規定により児童福祉審議会の意見を聞き,事業の停止又は施設の閉鎖を命ずることとし,その際事業停止又は施設閉鎖命令の処分を行おうとする場合には,当該施設の設置者に弁明の機会を与えるとともに,当分の間,厚生省(当時)と協議するものと規定していた(乙A2。 )このように,本件事件当時,児童福祉法59条の各権限は,56年通達に定gめる当面の指導基準及び平成元年通達に適合しない施設に対する行使を専ら念頭においていたと評価することができ,そのような当面の指導基準に適合しない施設については,ひとまず改善,移転などの行政指導を行った上で,改善等の見込みが認められない場合に,厚生省と協議をし,当該施設の設置者に弁明の機会を与え,さらに児童福祉審議会の意見を聴取した上で,事業停止又は施設の閉鎖命令を命ずるなどの対応が予定されていたことが認められる。 本件事故前後当時,被告神奈川県においては,神奈川県知事は,認可外保育h施設に対する児童福祉法59条所定の監督処分の事務を県児童福祉課に処理させていたとこ の対応が予定されていたことが認められる。 本件事故前後当時,被告神奈川県においては,神奈川県知事は,認可外保育h施設に対する児童福祉法59条所定の監督処分の事務を県児童福祉課に処理させていたところ,県児童福祉課は,56年通達及び平成元年通達を基に,これらをさら-- に具体化した基準を作成してこれに基づき,認可外保育施設が適正基準に合致しているかを確認していた(甲1,17,18。 )県児童福祉課が所管していた認可外保育施設及び公立保育施設の総数は平成12年4月1日の時点で384施設であり,これらの施設の園児は3万3235人であった。また,同年6月1日の時点で県児童福祉課が把握していた認可外保育施設は193施設で,これらの施設の園児は4296人であった。平成11年4月1日から平成12年7月31日までに,被告神奈川県が把握していた県内の保育施設に児童を預けている保護者側から県児童福祉課に対して,保育施設に対し何らかの苦情が直接持ち込まれたケースは,本件保育施設以外には1件もなく,その他市町村から県児童福祉課に寄せられる相談内容は,当該施設長の資格の有無などであり,施設内での児童のけがや事故に関する相談が寄せられたことはなかった(甲16。 ),,,iこのように本件当時被告神奈川県においては児童福祉法上の立入調査権事業停止命令及び閉鎖命令等の権限の行使は,当該認可外保育施設が最低基準を満たしていない場合に行使することを念頭に置いていたということができるが,児童福祉法は,国及び地方公共団体は,児童を心身ともに健やかに育成すべき責任があると規定しているところ(2条,本件のように保育施設内において保育者が園児)を虐待していたような場合には,児童の生命身体の安全の確保という児童の福祉のために必要があるといえることから,都道府県知 ると規定しているところ(2条,本件のように保育施設内において保育者が園児)を虐待していたような場合には,児童の生命身体の安全の確保という児童の福祉のために必要があるといえることから,都道府県知事は,上記gの手続を経た上で,当該施設に対して同法59条3項の事業の停止又は施設の閉鎖を命ずる権限を有していたというべきである(なお,本件事件後の平成13年11月30日になって,本件事件のような認可外保育施設での事故等に対応するために児童福祉法が改正され認可外保育施設に対する監督の強化として,①従来から規定されている事業停止等の命令権限に加えて,改善勧告及びこれに従わない場合の公表等を規定するとともに(平成13年改正児童福祉法59条3項,4項,都道府県知事は,児童の生)命又は身体の安全を確保するために緊急を要する場合で,あらかじめ都道府県児童福祉審議会の意見を聴くいとまがないときは,当該手続を経ないで事業停止又は閉-- 鎖命令をすることができる(同条6項)と規定されるに至った(乙A1。 )。)(イ)県児童福祉課の事情聴取義務原告は,本件保育施設について複数の虐待情報を入手し,本件保育施設への立入調査を行っても,虐待の存在についての濃厚な疑いを払拭することができなかったのであるから,被告神奈川県としては,児童の福祉の保障という県の第一義的な行政責任を果たすために,最低限ほかの園児や過去に通園していた園児の保護者など本件保育施設や被告乙川についての情報を得られる可能性のあるものから,事情を広く聴取すべきであったと主張する。 しかしながら,行政権の行使には法規に基づく根拠が必要であるのが原則であるところ,本件当時,県児童福祉課の職員に認められていた権限は,児童福祉法59条1項に基づいて,認可外保育施設設置者若しくは管理者に対し,必要な 政権の行使には法規に基づく根拠が必要であるのが原則であるところ,本件当時,県児童福祉課の職員に認められていた権限は,児童福祉法59条1項に基づいて,認可外保育施設設置者若しくは管理者に対し,必要な事項の報告を求め,又は当該施設に立ち入り,その施設の設備若しくは運営について必要な調査及び質問を聴取することができると規定しているのみであって,原告らの主張するような広範な事情聴取権限は認められていなかったというべきである。 したがって,原告らの主張はその前提を欠くものであるから,採用することはできない。 さらに,前記1で認定のとおり,①県児童福祉課は,平成11年7月19日の第,,1回立入調査の結果本件保育施設における園児虐待の有無については確認できずかえって,被告乙川は,園児の保護者に問題があるとの趣旨の発言もしており,この時点で事実関係を直ちに確認できる状況にはなかったこと,②被告乙川に対し,本件保育施設の運営の改善等を指示し,被告乙川から改善の約束を得た上,平成11年内に再度本件保育施設への立入調査を実施することにするなどし,園児虐待の有無の点も含めて,α市,児相との連携をとりながら本件保育施設への調査指導を続けることにしたこと,③その後に発生したBaの傷害の件について,担当医師においても,本件保育施設での虐待か保護者による虐待か不明であると述べていたこと,④県児童福祉課は,同年10月26日,本件保育施設に対する第2回立入調査-- ,,,を実施したが被告乙川はBa及びCaに対する虐待の事実を否定するとともに保護者に問題がある旨の発言などをしており,県児童福祉課等において,虐待の事実の有無につき直ちに判断ができなかったこと,⑤Baの件については,児相がその解決についてかかわってきたが,同年11月4日のBaの両親と児相のXと 発言などをしており,県児童福祉課等において,虐待の事実の有無につき直ちに判断ができなかったこと,⑤Baの件については,児相がその解決についてかかわってきたが,同年11月4日のBaの両親と児相のXとの面談を最後にして,同両親から児相に対する連絡がなくなっており,また,Caの件については,同年11月に児相からCaの母であるCbに呼出しをかけたにもかかわらず,同人はこれに応じないという状況であったこと,⑥県児童福祉課は,本件,,保育施設における保育指導の徹底園児虐待の有無の点の解決状況の確認等のため平成12年1月14日,被告乙川に対し,同年2月29日に第3回立入調査を実施することを通知していたことなどが認められ,県児童福祉課としては,必ずしも明らかとはいえない本件保育施設における園児虐待の有無という犯罪の嫌疑の有無にも係わる事項につき,α市及び児相と連携しながら,被害を受けたとする園児の保護者等の関係者のプライバシーにも配慮しながら慎重に調査を進めようとしていたものといえ,この点においても,県児童福祉課につき,関係者に対する事情聴取義務違反があったとは認め難く,本件全証拠によっても同義務違反を認めることができない。 (ウ)県児童福祉課の警察との連携義務原告らは,県児童福祉課は,警察と連携して,被告乙川の本件保育施設の園児に対する対応を調査把握すべき作為義務があったと主張する。 行政権の行使について一定の作為義務を負わせる前提として,行政権の行使には法律による根拠規定を要することが原則であるが,証拠(乙A21)及び前記(ア)で認定した事実等によれば,同義務に関して,本件事件当時の児童福祉法等の関係法規には規定されておらず,本件事件後の平成13年3月29日厚生労働省雇用均等・児童家庭局長による「認可外保育施設に対する指導監督の実施について れば,同義務に関して,本件事件当時の児童福祉法等の関係法規には規定されておらず,本件事件後の平成13年3月29日厚生労働省雇用均等・児童家庭局長による「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」と題する通達(平成13年3月29日雇児発第177号厚生労働省雇用均等・児童福家庭局長通知)の留意事項13により「施設内で犯罪があると思料される場合は,警-- 察と連携を図ること」と初めて規定されたものであった。 。 したがって,本件当時において,県児童福祉課が警察と連携を図るべき明文上の根拠,義務は存在していなかったのであり,原告らの主張は採用することはできない。 仮に,児童福祉法の趣旨,目的からすれば,本件保育施設内において犯罪があると認められるときには,警察に通報しその連携を図るべきことが望まれる場合があるとしても,単に可能性として犯罪があると思料されるのみでは足らず,当該保育施設の園児に対する犯罪が行われる危険性及びその予見可能性などの具体的事情に照らして判断すべきであり,一般的,抽象的に県児童福祉課に警察との連携義務があると解することはできないというべきである。 (エ)県児童福祉課の情報公表義務原告らは「平成9年9月25日児発596号各都道府県知事指定都市市長,中核市長あて厚生省児童家庭局長通達」に基づき,県児童福祉課には,関係市町村長と連絡して,本件保育施設が実施している保育の内容に関する事項についての情報を一般に提供する義務が生じていたと主張する。 証拠(甲32)によれば「児童福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う関,係政令の整備に関する政令などの試行について(平成9年9月25日児発596」号厚生省児童家庭局長通達)によって,都道府県,指定都市及び中核市は,認可外保育施設について,改正された児童福祉法24条5項 政令の整備に関する政令などの試行について(平成9年9月25日児発596」号厚生省児童家庭局長通達)によって,都道府県,指定都市及び中核市は,認可外保育施設について,改正された児童福祉法24条5項の規定により地域住民に対して市町村が情報提供を行うべき事項として①各保育所の名称位置及び設置者設,,(),,置者と運営者が異なる場合にはそれらの両方②各保育所の施設及び設備の状況③各保育所の運営の状況,④保育料,⑤保育所への入所手続,⑥市町村の保育の概況とし,改正された同法48条の2の規定により保育所が情報提供に努める事項として,1日の過ごし方,年間行事予定,当該保育所の保育方針,職員の状況,その他当該保育が実施している保育の内容に関する事項をいうと規定されていることが認められる。 -- しかしながら,その文言上からは,原告らの主張するように「保育の体すらな,さない極めて劣悪な内容の保育が行われていること」及び「虐待が常習的に行われている疑いもあること」などの事項が含まれていると解することはできない。 仮に,上記通達において情報提供を努めるべき事項に,原告主張のような事実が含まれるとしても,単なる可能性又は疑いにとどまる事項を,公表すべき義務があると解することは困難であるから,原告らの主張を採用することはできない。 (3)前記(2)に認定したとおりの本件事件当時における児童福祉法の趣旨,目的やその権限の性質によれば,被告神奈川県(県児童福祉課)の児童福祉法59条に基づく事業停止又は施設閉鎖の権限の不行使が違法か否かを判断するに当たっては,①被告乙川が本件保育施設の園児に対しその生命又は身体に対する重大な危害を加える危険性が存在し,その危険が切迫していたか否か,②被告神奈川県(県児童福祉課)において上記危険の存在及び切迫性を ては,①被告乙川が本件保育施設の園児に対しその生命又は身体に対する重大な危害を加える危険性が存在し,その危険が切迫していたか否か,②被告神奈川県(県児童福祉課)において上記危険の存在及び切迫性を予見し又は予見し得たか否か,③被告神奈川県が,認可外保育施設に対し本件当時の児童福祉法の法規に規定されていた規制権限をどのように行使していたか,④上記危険回避の可能性の有無等の事情を総合し,被告神奈川県の事業停止又は施設閉鎖命令の権限不行使が著しく不合理と認められる場合には,違法と評価されると解するべきである。 (4)本件保育施設の園児の生命身体に対し重大な危害が加えられる危険の存在及びその切迫性について前記1(2)エ,同(3)イ,同(4)ア,同(6)イの各認定事実によれば,被告乙川は,本件保育施設内において,園児に対し暴行を加え重篤な傷害を故意に負わせていたものであって,これらの各暴行は平成11年6月から平成12年2月までの8か月間にわたり複数の園児に対して行われたものであることが認められる。また,前記1(6)サに認定した事実によれば,被告乙川逮捕後,α署は,Fa,O,Caに対する傷害事件を含めて横浜地方検察庁に書類を送致し,さらに,立件には至らなかった20名に及ぶ本件保育施設の園児に対する傷害,暴行容疑事案に係る関係資料を横浜地方検察庁へ被告乙川の情状資料として送付した事実が認められるところ,-- これらの事実からすれば,被告乙川が本件保育施設の園児に対し,常習的に暴行行為を行っていたと認定することができる。 したがって,本件事件発生時までに被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対して重大な危害が加えられる危険性が存在したことが認められるというべきであり,さらには,その危険が切迫していたと認めることができる。 (5) でに被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対して重大な危害が加えられる危険性が存在したことが認められるというべきであり,さらには,その危険が切迫していたと認めることができる。 (5)県児童福祉課の予見可能性についてア第1回立入調査の時点における予見可能性の有無(ア)原告らは,県児童福祉課は,本件保育施設での虐待情報を得て,平成11年7月19日第1回立入調査を行ったのであって,その時点で,本件保育施設において,被告乙川が園児に対し虐待が常習的に行われていたという疑いを有していたことは明らかである旨主張する。 (イ)ところで,前記の公務員の規制権限の不行使の違法性を論ずる要件としての危険の存在及びその危険の切迫性に対する予見可能性は,一般的抽象的なものでは足りず,具体的,現実的なものであることを要するところ,さらに本件に即していえば,被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対し重大な危害が加えられる危険性が存在しその危険が切迫性していたことを,県児童福祉課の職員において,高度のがい然性をもって認識し得る状況にあった場合には,上記危険性を具体的に予見し又は予見し得たと評価することができたものというべきである。 (ウ)そして,前記1(2)オ,カによれば,平成11年7月12日に本件保育施設の近隣に所在する丁保育所のN園長から児相に対し,本件保育施設から丁保育所へ移ってきた園児が被害を受けているので虐待の通報をしたい旨の連絡があったこと,児相のH課長は,N園長からの報告を受けてα署に被害届の有無を確認すると,,,ともに県児童福祉課に対しα市内の丁保育所という認可外保育施設の園長から本件保育施設で4人の園児が虐待を受けているらしいとの通報があった旨の電話連絡をしたこと,同月14日,α市児童育成課のQから「丙保育ル 県児童福祉課に対しα市内の丁保育所という認可外保育施設の園長から本件保育施設で4人の園児が虐待を受けているらしいとの通報があった旨の電話連絡をしたこと,同月14日,α市児童育成課のQから「丙保育ルームに入所している児童4名が丁保育所に転園したが,その中の1名の子供の保護者が丙保育ルーム-- にて虐待を受けその子供の写真を持参し,警察に行ったが取り合ってもらえないと丁保育所の施設長に告げ,丁保育所の施設長より児相に連絡した」との連絡があ。 ったこと,これらを受けて,県児童福祉課は,本件保育施設における園児に対する虐待の実態の有無等に関する調査を行うため,本件保育施設に対する立入調査を早,,期に実施する必要があると判断し立入調査を行うことを同月14日付けで決定し,,同月19日に第1回立入調査を行ったことなどの事実が認められ県児童福祉課は上記児相及びα市児童育成課からの連絡に基づき,虐待の可能性を考慮して本件保育施設に対する第1回立入調査を行ったものであった。 ところで,丁保育所は,本件保育施設と場所的に競合する同業者であり,そのため,丁保育所からの通報内容は直ちにそのまま信頼するに足りるものとはいえず,かつ,その内容も前記1(2)オ(ア)に認定したとおり,Fa以外の通報内容は,本件保育施設における園児に対する虐待行為に関するものではなく,α市及び児相からの連絡も,この丁保育所のN園長からの通報の伝聞に過ぎなかったが,丁保育所からの通報内容が園児に対する虐待という看過できない内容であったことからすれば,県児童福祉課が,本件保育施設において虐待が行われている可能性を考慮して早期に本件保育施設に対する第1回立入調査を行ったことは適切であったというべきである。 そして,前記1(3)アで認定した事実によれば,県児童福祉課職員が,第1回 いて虐待が行われている可能性を考慮して早期に本件保育施設に対する第1回立入調査を行ったことは適切であったというべきである。 そして,前記1(3)アで認定した事実によれば,県児童福祉課職員が,第1回立入調査に際し,丁保育所から連絡があった園児の虐待に関する事実確認を行ったところ,被告乙川は,幼児がけがをしていたことは全く気がつきませんでしたなどと虐待を否定する趣旨の発言をしていたこと,さらに,被告乙川は,利用者が園児のけがを口実にして月謝を払ってもらえないトラブルがあったことなど巧みに虐待行,,,為を隠蔽する発言をしていたことこの立入調査に同行したEは本件保育施設は保育施設としての内実が極めて不十分で,保育に関する知識を持たない者が,十分な準備もなく保育施設を始め,安易に子供を預かっているのではないかという印象を持ったものの,この第1回立入調査については幼児虐待に関する明確な事実関係-- の把握ができなかったこと,Eは本件保育施設について状況を詳細に調査し虐待の有無に関する実態を明らかにする必要があると感じ,本件保育施設からの帰路,同立入調査の他の参加者に対し「もう1回調査する必要があるね」と申し向けたと。 ころ,外の参加者も「そうですね」などと言っていたこと,立入調査に同行した。 Uも,このEの発言を聞いて,被告乙川自身は否定したものの,丙保育ルームの園内で虐待が行われた疑いが払しょくできないので今後も継続調査が必要だということを話しているのだろうと思ったこと,他方で,Uが「現時点では,保護者と園,のどちらに責任があるか判断がつかないですね」という話をすると周囲の参加者も同調していたこと,当日の調査についてUは,今回の調査では虐待の有無については確認できなかったと上司に報告したことなどの事実が認められる。 これらの事実 つかないですね」という話をすると周囲の参加者も同調していたこと,当日の調査についてUは,今回の調査では虐待の有無については確認できなかったと上司に報告したことなどの事実が認められる。 これらの事実からすれば,県児童福祉課は,第1回立入調査終了後においても,被告乙川の丁寧でしっかりした話し方や言葉及び虐待を巧みに否定する弁解により,丁保育所のN園長が通報するような本件保育施設での虐待の事実の有無について明確となる証拠又は情報等を得ることができず,同事実の有無を確認することが,,できなかったのでものでありこのような虐待を裏付ける証拠又は情報がない以上被告乙川の弁解の内容が不自然であり虚偽であるとまで判断することは著しく困難であったというべきである。 したがって,第1回立入調査の時点で,県児童福祉課が,被告乙川が本件保育施設において園児に対し暴行,虐待を行っていることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったということはできないのであって,被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対し重大な危害が加えられる危険性を具体的に予見し又は予見し得たと認定することはできず,本件全証拠によってもこれを認めることはできない。 よって,原告らの上記主張を採用することはできない。 イBa及びCaの母親らからの情報提供があった時点における予見可能性の有無-- (ア)原告らは,平成11年10月15日,Baの母であるBb及びCaの母であるCbから児相に対し本件保育施設で同児らが受傷したという重大な情報が寄せられた時点において,県児童福祉課は,本件保育施設において園児に対して常習的な虐待が行われていることについて,ほぼ確実という程度までの強い疑いを有していたことは明白である旨主張する。 (イ)前記1(4)の認定事実によれば,①平成11年 件保育施設において園児に対して常習的な虐待が行われていることについて,ほぼ確実という程度までの強い疑いを有していたことは明白である旨主張する。 (イ)前記1(4)の認定事実によれば,①平成11年9月14日に被告乙川が児相を訪れ,同月11日にBaという園児の腕がはれα市立病院で見てもらったところ,人がねじ曲げたような骨折であると言われ,本件保育施設と保護者との間でどちらの責任かでトラブルとなっているとの相談が寄せられたこと,②同月16日,児相のWは,α市立病院を訪問し,Baの病状について確認するとともに,Baの担当医のV医師らと協議したところ,V医師から,Baの骨折は右上腕部骨折で右,,上腕をねじられて骨折したものと思われ外部から力が加わった可能性が高いことV医師が,Bbら及び被告乙川から事情を聴取したが,V医師としてもどちらの要因で骨折したか分からないことなどを聞き,これらの児相及び病院との協議の内容から,本件保育施設にも問題がある可能性もあると判断されたため,児相から県児童福祉課に連絡がされたこと,③同月中旬ころ,上記児相からの連絡を受け,県児童福祉課においては,同月下旬ころ,近いうちに第2回立入調査を実施するとの結論に至ったこと,④同月29日,児相の職員らは,α市立病院を訪問し,病院と対応方法を協議したが,その際,○同時点で病院側は,Bbらが2歳児である同児aに対し食事の際のしつけが厳しい傾向にあり,退院後すぐに自宅に帰してよいかどうか少し気になると述べるなど両親の養育態度を問題視していたこと,○Bbは,b友人であるCbの子のCaも同じように本件保育施設でけがをさせられており,保育所に関してどこかに相談したいと言っていたこと,○病院側に,保護者に対しcて児相を紹介した上で,保護者に児相から連絡するようにすることなどが話 aも同じように本件保育施設でけがをさせられており,保育所に関してどこかに相談したいと言っていたこと,○病院側に,保護者に対しcて児相を紹介した上で,保護者に児相から連絡するようにすることなどが話し合われ,この協議の内容は,児相から県児童福祉課にも連絡されたことなどの事実が認められる。 -- ,,,これらの事実からすれば県児童福祉課は同月16日の児相からの報告により本件保育施設内で園児のBaが骨折した旨の事実を把握し,さらに同月29日児相と病院との協議の結果からCaが本件保育施設内でけがをしていた事実を把握し,Baの骨折は,右上腕部骨折であって右上腕をねじられて骨折したものと思われ,外部から力が加わった可能性が高いことなどの本件保育施設での虐待の可能性のある事実を認識していたことが認められる。 しかしながら,県児童福祉課が児相からBaの負傷の報告を聞いた時点では,Baの骨折の原因は,Baを診察し,被告乙川及びBbら双方から話を聞いたV医師をしても,どちらによるものか不明であったものであり,被告乙川の故意又は過失によるけがの可能性,両親らによる暴行の可能性等がそれぞれ考えられたところ,その後,上記に認定したとおり,第三者である病院側は,Bbらの同児に対する看護状況から同人らの養育態度を問題視し,この時点ではBbらによる養育上の問題の可能性も強いと判断し,その旨が,児相を介して県児童福祉課にも報告がされていた事実が認められる。 ところで,一般に,中立的な第三者から提供される情報は信用性が高く,殊に公益性,専門性の高い職業である医師からの情報は信用性があると通常認識されているところ,これらの事情からすれば,上記の9月16日の児相からの報告の時点では,県児童福祉課としても,被告乙川の暴行によってBaがけがをしたという疑いは可能性 の情報は信用性があると通常認識されているところ,これらの事情からすれば,上記の9月16日の児相からの報告の時点では,県児童福祉課としても,被告乙川の暴行によってBaがけがをしたという疑いは可能性の一つとして有していたものの,第三者であるα市立病院の医師からの情報の内容に基づいて判断すれば,その疑いの程度は必ずしも高いものとはいえなかったといわざるを得ない。 また,前記1(4)コに認定した事実によれば,同年10月15日,Bb及びCbが児相を訪れ,同人らの子が本件保育施設内でけがをした旨説明しているが,その際,BbとしてはBaのけがが被告乙川による可能性もあると考えつつも,自分の子供が他人にけがをさせられたとは考えたくないので,同児のけがが被告乙川によるものであると強く言わずに,とにかく本件保育施設を調べてほしいと述べるにと-- どまったこと,この時点では,Bbらによる養育上の問題からBaがけがをした可能性が強いと第三者であるα市立病院の医師らにおいても考えられていたこと,Bb及びCbと面接したXからの報告を受けその内容を県児童福祉課に連絡させたH課長は,本件保育施設に虐待があったと判断したというよりは,本件保育施設の施設体制が悪いために園児がけがをするのではないかと考えたこと,以上のとおり認められ,これらの事情からすれば,Bbらが児相を訪れて本件保育施設について相談したからといって,県児童福祉課において,被告乙川を相当程度に疑うに足りるだけの証拠を得ることができたと評価することはできないというべきである。 したがって,上記時点において,県児童福祉課が,被告乙川が本件保育施設において園児に対し暴行,虐待を行っていることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったということはできないのであって,被告乙川の暴行により本件保育施設の園 児童福祉課が,被告乙川が本件保育施設において園児に対し暴行,虐待を行っていることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったということはできないのであって,被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対し重大な危害が加えられる危険性を具体的に予見し又は予見し得たと認定することはできず,本件全証拠によってもこれを認めることができない。 また,このように県児童福祉課としては,上記危険性を認識し得なかったのであるから,原告らの主張するような警察と連携を図るべきであるという作為義務を論ずる前提を欠くというべきである。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 ウ第2回立入調査終了後の時点における予見可能性について(ア)原告らは,平成11年10月26日に県児童福祉課が本件保育施設に対し休園指導を行った第2回立入調査終了後の時点で,同課が,本件保育施設で継続的・常習的に園児への虐待が行われていることを,ほとんど確信するまでに認識していたことは明らかであると主張する。 (イ)前記1(5)ア(ア)及び(イ)の認定事実によれば,同月26日,県児童福祉課らは,本件保育施設に対する第2回立入調査を実施したが,その際,D課長代理から「丙保育ルームは短期間で余りに問題が多く発生している施設なので,通常の,-- 立入調査のように施設の状況の調査,施設などの改善状況の確認だけではなく,施設に対し,休園指導を行う趣旨で実施する」旨がEらに伝えられたこと,同日,。 県児童福祉課は,児相に対し,Ba及びCaの相談の経緯を被告乙川に伝え,本件保育施設での虐待の事実の有無を確認して欲しいと指示したことなどの事実が認められる。これらの事実からすれば,第2回立入調査を行うに当たり,県児童福祉課としては専ら本件保育施設が短期間で園児がけがをする 育施設での虐待の事実の有無を確認して欲しいと指示したことなどの事実が認められる。これらの事実からすれば,第2回立入調査を行うに当たり,県児童福祉課としては専ら本件保育施設が短期間で園児がけがをするという問題が多発している施設であることを認識していたが,それは本件保育施設内においてけがをする園児が発生しているという意味で問題であると認識していたというべきであって,同課として本件保育施設において虐待が行われている可能性が高いとの認識を有していたわけではなく,そのけがの原因として,本件保育施設の管理運営自体の問題,園児の保護者による可能性の問題,そして,被告乙川の故意又は過失による加害行為による可能性がそれぞれ想定されていたと評価することができる。 しかしながら,前記1(5)ア(オ)及び(カ)の認定事実によれば,D課長代理からのBaの骨折についての質問に対し,被告乙川は,Baの骨折については病院に行くまで気付かず心当たりもないこと,同児の骨折に気付かなかったこと自体については責任を感じていること,骨折の原因は分からないが,担当医から同児の両親に対してお金を払うとか謝りを入れるといったことはしないようにと言われたことなどを述べたこと,さらに,D課長代理からのCaの傷害についての質問に対し,被告乙川は,同児の頭部の傷は公園で3~4歳の男の子にスコップで殴られてできたもので,自分が気付いたときは殴られる瞬間だったこと,Caが耳から出血したことについては全く気付かず,中耳炎がひどくなったのではないかと心当たりがないように答えていたこと,このような被告乙川の回答を聞いて,Eは,保育者である以上,常時預かっている子供がどのような状況であるかを観察するのが基本であり,被告乙川が気付かなかったというのは不自然であると感じ,被告乙川に対し,保育中の様子につい 答を聞いて,Eは,保育者である以上,常時預かっている子供がどのような状況であるかを観察するのが基本であり,被告乙川が気付かなかったというのは不自然であると感じ,被告乙川に対し,保育中の様子についてもきちんと観察した上で,保護者に伝える義務があると述べたことなどの事実が認められる。 -- これらの事実からすれば,県児童福祉課は,上記Ba及びCaのけがの件について,被告乙川に問い質すも,被告乙川による虐待をうかがわせるような供述を引き出すことはできなかったものであるところ,本件は保育施設内という密室において十分に話すことができない幼児に対して暴行が振るわれた可能性があるという事象であり,その性質上目撃者などの存在も考えられないことから被告乙川の供述の信用性が重要となるが,当時の県児童福祉課としては,被告乙川の供述の信用性を疑うに足りる的確な証拠を得ることができなかったものであり,県児童福祉課において,依然として上記園児らのけがの原因が不明なままであったことはやむを得なかったものといわざるを得ない。 そして,上記認定事実によれば,被告乙川の回答を聞いたEの認識としても,被告乙川の弁解の内容自体が不自然であるというものではなく,同人が本来保育を行うものとして園児をきちんと観察すべきであり,それを怠っていたことが本来あるべき保育としては不自然であるとの印象を持ったというにすぎないものであった。 加えて,被告乙川の供述内容は虚偽であったもので,結果的に見れば,不合理な点があることが認められるが,本件当時の状況においてみれば,必ずしも被告乙川の供述が外の証拠などと符合しないわけではなく,また,被告乙川は,Baのけがについて病院からBbらにお金を払うとか謝ったりしないように言われたと供述していたところ,この時点では,保護者による暴行の可能性も否 外の証拠などと符合しないわけではなく,また,被告乙川は,Baのけがについて病院からBbらにお金を払うとか謝ったりしないように言われたと供述していたところ,この時点では,保護者による暴行の可能性も否定できないとのα市立病院の医師の見解と上記供述は矛盾するものではなかったこと,さらに,被告乙川の供述と相反するBbの上記の供述内容は,Bb自身がこの時点ではBaのけがの原因について疑われており,その供述を直ちに信用することができなかったことなどの事情からすれば,県児童福祉課において,被告乙川の供述が虚偽であると看破することは困難な状況にあったといわざるを得ない。 これらの事情からすれば,第2回立入調査を行った時点においても,県児童福祉課としては,被告乙川が本件保育施設の園児に対し,暴行,虐待を行っていたことを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったとはいえないというべきであ-- る。 もっとも,前記1(5)イの認定事実によれば,第2回立入調査後,児相のXがα市立病院の医師と協議した結果,病院側の一致した意見として,BaをBbらのところへ帰しても問題はないということになったことが認められる。 しかしながら,上記協議の内容は,この時点での病院の見解としては,Bbらも大分落ち着いてきたようで専門的なアドバイスを聞くことができるような状態になったため,Baを家に帰しても問題はないというものであり,それは専ら保護者の心理状況,監督保護状況が改善されたことについてのものであり,その内容から直ちにBbらの養育上の問題からBaがけがをしたという可能性が完全に否定されたものということはできない。 (ウ)したがって,県児童福祉課が,被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対する重大な危害が加えられる危険性を,具体的,現実的に予見し又は予見し 否定されたものということはできない。 (ウ)したがって,県児童福祉課が,被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対する重大な危害が加えられる危険性を,具体的,現実的に予見し又は予見し得たと認定することは困難であり,本件全証拠によってもこれを認めることができない。 そして,このような県児童福祉課の認識状況からすれば,県児童福祉課が警察との連携を図らなかったからといって,直ちに国家賠償法上その不作為が違法であるということはできない。 。 したがって,前記原告らの主張を採用することはできない。 エ平成11年12月21日に県児童福祉課のEが本件保育施設を訪問した時点での予見可能性について(ア)原告らは,同日にEが本件保育施設に立ち寄り「いつまた幼児がけがを負うか分からない」という強い危惧を抱いた時点より後は,なおさら被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対する重大な危害が加えられる危険性の認識が強固になったことは明白であったと主張する。 (イ)前記1(5)キ,クの認定事実によれば,県児童福祉課のEは,同月3日の被告乙川からの本件保育施設継続の連絡を受けて,今後も行政側が本件保育施設を監-- 視しなければならないと思い,同月21日,本件保育施設に立ち寄り,本件保育施設での保育状況を確認した事実が認められる。 同日,Eが本件保育施設を確認した際,被告乙川が,被告乙川の長男が投げたおもちゃが園児に当たった行為を目撃したにもかかわらず,長男に対して注意していなかったことから,Eは,被告乙川が子供をきちんと観察することができないが故に,本件保育施設内で園児がいつまたけがをしてもおかしくないと認識したことが認められる。 原告らは,このEの認識は本件保育施設で虐待が行われていることを県児童福祉課が把握していたことを裏付け いが故に,本件保育施設内で園児がいつまたけがをしてもおかしくないと認識したことが認められる。 原告らは,このEの認識は本件保育施設で虐待が行われていることを県児童福祉課が把握していたことを裏付ける事実であると主張するが,Eが本件保育施設内で園児がいつまたけがをしてもおかしくないと認識した理由は,専ら本件保育施設の保育状況又は設備の管理状況の不良を内容とするものであり,この認識から直ちに被告乙川が園児に対して暴行,虐待などの加害行為を行っていると判断することはできないというべきである。 したがって,この時点において,県児童福祉課が,被告乙川が本件保育施設において園児に対し暴行,虐待を行っていることを高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったとはいえないのであって,被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対し重大な危害が加えられる危険性を,具体的,現実的に予見し又は予見し得たということはできず,本件全証拠によってもこれを認めることができない。 また,前記ウで認定した時点と比較しても,その後県児童福祉課に本件保育施設について虐待をうかがわせる情報がなんら寄せられていないことからすれば,Eが本件保育施設に立ち寄ったときにおいて,被告乙川による暴行の予見可能性が高まったということはできない。 さらに,県児童福祉課の上記認識状況からすれば,原告らが主張するように,上記時点において県児童福祉課には警察と連携して本件保育施設を調査すべきであったとの作為義務を認めることもできない。 -- したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (6)被告神奈川県が,認可外保育施設に対し本件当時の児童福祉法の法規に規定されていた権限をどのように行使していたかについてア前記1(2)ないし(6)に認定した事実によれば,①県児童福祉課は同 (6)被告神奈川県が,認可外保育施設に対し本件当時の児童福祉法の法規に規定されていた権限をどのように行使していたかについてア前記1(2)ないし(6)に認定した事実によれば,①県児童福祉課は同年7月14日に,児相及びα市児童育成課を通じて,丁保育所の園長によって寄せられた本件保育施設での虐待をうかがわせる情報を入手した後,速やかに同月19日本件保育施設に対し第1回立入調査を行い事実関係を確認していること,②県児童福祉課は,この第1回立入調査後,当面の指導基準及び県児童福祉課で作成した指導基準に基づき改善を行政指導していること,③同年9月16日,児相からの本件保育施設内においてBaが骨折したとの報告を受けて,県児童福祉課は,児相及びα市立病院と連携をはかりつつ,第2回立入調査を同年10月26日に行い,事実関係を調査するとともに,行政指導として被告乙川に対し,本件保育施設の休園を重ねて指導していること,④その結果,被告乙川もいったんは休園を受け入れたこと,⑤同年12月3日,被告乙川から本件保育施設の経営継続の連絡を聞いた後,同月21日には,県児童福祉課のEが本件保育施設内の状況を確認しに行っていること,⑥上記⑤のEの報告を受けて,平成12年1月14日,県児童福祉課は,第3回立入調査を行うことを通知したことなどの事実が認められる。 イこれらの事実経過に照らせば,県児童福祉課としては,本件保育施設に関する情報が寄せられるたびに,比較的短期間内のうちに児童福祉法59条1項に基づく立入調査を行い,その情報について事実関係を確認するとともに,当時の指導基準等に照らし改善を繰り返し要求し,改善が認められない場合には行政指導としては重い休園指導を重ねて指導していたことが認められる。県児童福祉課の上記措置は,結果的に見れば,本件保育施設において継続 基準等に照らし改善を繰り返し要求し,改善が認められない場合には行政指導としては重い休園指導を重ねて指導していたことが認められる。県児童福祉課の上記措置は,結果的に見れば,本件保育施設において継続していた被告乙川の園児に対する暴行,虐待を防止するに足りるものではなく,その内容及び時期において必ずしも十分なものであったとはいえないが,前記(5)認定の県児童福祉課職員の被告乙川の暴行,虐待についての認識状況下では,やむを得ないものであり,その目的及び-- 手続において一応の合理性を有するものといえる。 (7)小括以上からすれば,本件においては,被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対し重大な危害が加えられる危険性が存在し,かつ,その危険が切迫していたということはできるものの,県児童福祉課としては,被告乙川が暴行,虐待を行っていたと高度のがい然性をもって認識し得る状況にあったとはいえず,上記危険性を本件事件発生時までの原告らの主張する各時点において,具体的に予見し又は予見し得なかったものである。また,本件当時の児童福祉法59条3項の規定では,県知事が児童福祉施設の事業停止又は施設の閉鎖を命ずるためには県児童福祉審議会の意見聴取をすることが必要とされており,本件保育施設について虐待が行われていることを理由に事業停止又は施設閉鎖命令をするには,県知事において被告乙川による園児に対する虐待を相当程度に疑うに足りる疎明資料を上記意見聴取の手続において提示することが要求されるというべきところ,本件事件当時までに県児童福祉課は未だこのような疎明資料を得るには至っていなかったというのである。これらの事情からすると,本件当時の児童福祉法の趣旨,目的やその権限の性質に照らし,同課が本件保育施設に対する事業停止又は施設閉鎖命令の権限を行 な疎明資料を得るには至っていなかったというのである。これらの事情からすると,本件当時の児童福祉法の趣旨,目的やその権限の性質に照らし,同課が本件保育施設に対する事業停止又は施設閉鎖命令の権限を行使しなかったことが著しく不合理であったとまでいうことはできず,その不行使に国家賠償法上の違法性を認めることはできない。 したがって,原告らの前記主張は,採用することができない。 (8)劣悪な保育施設に対する事業停止又は施設閉鎖を命ずるべき義務違反について原告らは,県児童福祉課の規制権限の存在を前提とした上で,平成11年12月21日のEによる現認の時点では,本件保育施設では,保育の質が極めて劣悪であり,いつまた園児が重大な傷害を負ってもおかしくないことは,被告神奈川県においても十分予見可能であり,このような劣悪極まる本件保育施設に対して事業の停止又は施設の閉鎖を命じる作為義務を負っており,同義務を果たしていれば,本件-- 事件は容易に防止し得た旨主張する。 しかしながら,本件における一郎の死亡は,被告乙川の暴行の結果生じたものであり,国家賠償法上の違法行為を論ずる前提としての予見可能性は,この発生した当該結果を惹起した加害行為等につき論ぜられるべきであり,本件の県児童福祉課の違法性を論ずる要件としての予見可能性の内容は,少なくとも被告乙川の暴行により本件保育施設の園児の生命身体に対し重大な危害が加えられる危険性を具体的に予見し又は予見し得たか否かであることと解するべきである。 したがって,原告らの主張は前提を異にしており採用することはできない。 (9)以上より,県児童福祉課の規制権限の不行使を理由とする原告らの被告神奈川県に対する請求は,その余の争点について判断するまでもなく理由がない。 争点(3)(α署の不作為による不法行為)について 9)以上より,県児童福祉課の規制権限の不行使を理由とする原告らの被告神奈川県に対する請求は,その余の争点について判断するまでもなく理由がない。 争点(3)(α署の不作為による不法行為)について(1)ア原告らは,被告神奈川県が設置,運営するα署の警察官が,後述する各時点において,個人の生命,身体,財産の保護のために適切に強制捜査を行う権限を行使していれば,被告乙川により一郎が殺害されることは防げたのであり,この点において被告神奈川県には権限不行使の違法があり,国家賠償法上の責任を負う旨主張する。 イ犯罪の捜査は,事実関係を解明して,犯人を検挙し,適切な刑罰権を行使することによって将来の犯罪の発生を予防することなど,直接的には,国家及び社会の秩序維持という公益を図るために行われるものであって,犯罪の被害者の被侵害利益ないし損害の回復を目的とするものではなく,被害者が捜査によって受ける利益自体は,公益上の見地に立って行われる捜査によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず,法律上保護される利益ではない(最高裁平成2年2月20日第三小法廷判決・裁判集(民事)159号161頁,最高裁平成17年4月21日第一小法廷判決・裁判集(民事)216号579頁参照。 )しかしながら,警察法2条1項は「警察は,個人の生命,身体及び財産の保護,に任じ,犯罪の予防,鎮圧及び捜査,被疑者の逮捕,交通の取締りその他公共の安-- 全と秩序の維持に当ることをもってその責務とする」と規定しており,また,警。 「,,職法はその1条1項においてこの法律は警察官が警察法に規定する個人の生命身体及び財産の保護,犯罪の予防,公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために,必要な手段を定めることを目的とする」とし,同法2。 条以下におい 察官が警察法に規定する個人の生命身体及び財産の保護,犯罪の予防,公安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために,必要な手段を定めることを目的とする」とし,同法2。 条以下において,その行使し得る手段を規定している。したがって,警察官は特定,,の私人が犯罪等の危険にさらされている場合においてその危険を除去するために同法5条に基づいて関係者に必要な警告を発したり,その行為を制止することができるほか,法律上許容される範囲内で,警察法2条1項所定の職務に関し,その危険を除去するために,必要かつ相当な措置を執る一般的な権限を有していることは明らかである。そして,警察官による犯罪捜査は,これらの犯罪等の危険除去等のための権限行使と重なる場合があることもまた明らかであって,①犯罪等の加害行為が特定個人に対しまさに行われ,又は行われる危険が切迫しており,②警察官においてそのような状況であることを予見し又は予見でき,③上記危険除去のための権限行使が容易であり,④その権限を行使することによって加害行為の結果を回避することが可能であったにもかかわらず,警察官があえて同権限を行使せずに放置していたといえるような場合には,上記権限の不行使は著しく不合理であると認められ,その不行使により被害を受けた者との関係において,警察官の権限不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である。 (2)Faの受傷事件の時点での作為義務について原告らは,平成11年4月ころ,α署はFaの保護者からの被害届に基づき被告乙川を事情聴取したが,Faの傷が一見して大人から何度も顔を殴られたような傷であるのに対し,被告乙川は不自然な弁解に終始していたにもかかわらず,その以上県や児相等に連絡をして,本件保育施設において同種の被害が生じていないかど 傷が一見して大人から何度も顔を殴られたような傷であるのに対し,被告乙川は不自然な弁解に終始していたにもかかわらず,その以上県や児相等に連絡をして,本件保育施設において同種の被害が生じていないかどうかを確認するなどの捜査を一切せずに捜査を打ち切り,全く何もせず放置したものであり,α署には作為義務の違反があったと主張する。 しかしながら,前記1(2)ア及びイによれば,平成11年4月19日,子である-- Faを本件保育施設に預けていたFから「1歳の男の子を(本件保育施設に)預bけたところ,体中がアザだらけになっていた」旨の110番通報があり,通報を受けた警察官は,Fから事情聴取したこと,Faは,救急車で搬送された病院で,b顔面打撲挫創,頭部打撲,外傷性口内炎で1週間の加療を要するとの診断をうけたこと,α署においては,F,被告乙川から事情聴取をしたところ,被告乙川は,bFaの受傷した原因につき,いすに顔を打ちつけた,一緒にいた園児に木製の手押し車の車輪で顔を殴られたなどと供述しており,同供述にある回転いすや壊れた手押し車が発見されたこと,Faの受傷について,幼いFa及び被告乙川の外には目撃者はいなく,事実の確定が困難であったこと,α署では,Faの受傷について捜bb査を続けていたところ同月下旬Fがα署を訪れ署員に対し被告乙川がF,,,,のもとに謝罪に来て菓子折りとともに5万円を渡されたことなどを伝え,Fの処b罰意思が和らいだと考えたことから,α署では,Faの受傷に係る捜査についての緊急性は強くないと判断し,事実上終了させたことが認められる。 以上によれば,α署としては,Faの受傷につき初動捜査としてF及び被告乙b川からの事情聴取,被告乙川の供述にある回転いす及び手押し車の確認をするなどしており,F 実上終了させたことが認められる。 以上によれば,α署としては,Faの受傷につき初動捜査としてF及び被告乙b川からの事情聴取,被告乙川の供述にある回転いす及び手押し車の確認をするなどしており,Faの受傷が比較的軽傷であったことや外に目撃者がおらず事実の確定,,が困難であったことFの処罰意思が和らいでいると考えたものであったところbこのような状況において,α署において,本件保育施設において,更に園児に対する虐待が行われる危険性が切迫していると予見し,又は予見し得たとはいえるものではなく,原告らの上記主張は採用することができない。 (3)丁保育所及び児相からの通報の時点での作為義務について原告らは,平成11年7月12日ころ,丁保育所の園長からFaの事件を具体的に示して本件保育施設において園児が継続的に虐待を受けているがい然性が高い旨の通報がα署に入り,さらに,同月14日ころ,やはり同園長から同じ通報を受けた児相のH課長からも,再度α署に同一の通報があり,Faの事件を継続捜査としてからわずか2か月の間に,別の3件の虐待をうかがわせる通報があったのである-- から,本件保育施設の園児が傷害を負うような事故が再発する危険性があることは容易に予想できたことが明らかであったなどと主張する。 しかしながら,前記1(2)オによれば,平成11年7月12日,丁保育所のN園長から児相,α市役所及びα署に対し,Faの受傷やその他の園児につき本件保育施設において虐待が行われているのではないかとの通報がされ,また,これを受けた児相からα署にも,同月14日に再度同一の通報がされたことが認められるが,Faの受傷については上記(2)のとおりα署ではすでに捜査が開始されており,また,他の園児については,保護者が夜3時ころに迎えに行くと子供の泣き声がしてお 再度同一の通報がされたことが認められるが,Faの受傷については上記(2)のとおりα署ではすでに捜査が開始されており,また,他の園児については,保護者が夜3時ころに迎えに行くと子供の泣き声がしており,本件保育施設内には保育者がいなかった,園児が口止めにおびえているとい,,ったものであってこれらの園児に対する暴行があったというようなものではなくこのような事実等をもって,α署において,本件保育施設内において,更に園児に対する虐待が行われる危険性が切迫していると予見し,又は予見し得たといえるものではなく,原告らの上記主張は採用することができない。 (4)Aaの事件の時点以降の作為義務についてア原告らは,平成12年2月4日に,本件保育施設在園中に容態が悪化したAaが死亡したことにより,死因に疑問を抱いた病院から,直ちにα署に通報がなされているにもかかわらず,被告乙川から同日のAa死亡直前の本件保育施設でのAaの様子等については全く聴取しないままに捜査を打ち切り,本件事件までは何らの捜査も行わないまま,漫然と放置した違法がある旨主張する。 イ前記3(4)に認定したとおり,被告乙川が常習的に本件保育施設内の園児に対し暴行等の虐待を行っていた事実が認められるところ,Aaが死亡した同月4日,,から一郎が死亡した同月18日の時点において本件保育施設に通園していたのはAa及び被告乙川の長男を除けば,一郎の外2名であったことからすれば(乙20の末尾に添付されてる保育日誌参照,被告乙川が,一郎を含む園児に対しその生)命身体に危害を加えるおそれがある加害行為を行う危険性が存在し,その危険は切迫していたと認めることができる。 -- ウ次に,α署において,Aaが死亡した時点で,上記イの危険の存在及びその切迫性を予見することが可能であったか否か 為を行う危険性が存在し,その危険は切迫していたと認めることができる。 -- ウ次に,α署において,Aaが死亡した時点で,上記イの危険の存在及びその切迫性を予見することが可能であったか否かについて検討する。 前記1(6)イの事実によれば,Aaには,解剖の結果,硬膜下出血が認められ,また,その成傷器の種類として,頭皮,骨膜下の出血は平たんな鈍体によると推定,。 されるとありその死因が犯罪によるものである可能性も考えられる状況にあったしかしながら,Aaが死亡した同月4日から一郎が死亡した同月18日の時点では,α署としては,Aaの死因が被告乙川などの本件保育施設の保育者による可能性をも疑いつつも,被告乙川がZを通じて偽装工作をするなどしたことにより,被疑者を特定することができなかったというだけでなく,Aaの死因についても,司法解剖の結果にもかかわらず,直ちに上記成傷器による硬膜下出血と認定することはできず,Aaは,風邪気味で喘息などで通院していたこと,新しい出血と古い出血が認められたことなどの事実から,病死の可能性もあり得たのであり,この時点ではAaの死因はなお不明であったといわざるを得なかった。このようにAaの死因が不明であった以上,α署がAaの死亡事件を犯罪として立件するためには,さらに捜査を継続する必要があったということができる。そして,上記古い出血について,I警部補は,Aaが死亡する以前に頭部にタンコブができていたとのAbの供述を受けて,被告乙川にこの点について事情を聴取したところ,被告乙川は心当たりがないと述べてこの点を否定していた。 本件は,保育施設という密室において,十分に話すことができない幼児に対して暴行が加えられたという事件であり,他の目撃者などの存在も考えられないことから,被告乙川の供述の信用性の有無が重要である た。 本件は,保育施設という密室において,十分に話すことができない幼児に対して暴行が加えられたという事件であり,他の目撃者などの存在も考えられないことから,被告乙川の供述の信用性の有無が重要であるところ,この時点でα署は被告乙川の上記供述を覆すに足りる情報等は把握していなかったのであって,その結果,被告乙川によるAa致死の犯行の容疑を裏付けるに足りる証拠を十分に収集することはできなかった。このようなことからα署が被告乙川を検挙するに足りる証拠を得るには,前記1(6)ウのとおり,その後のAaの死因についての鑑定の結果を待たざるを得なかったものであり,その最終的な結果が出たのは同年7月下旬であっ-- た。 警察権限の行使により,当該被疑者を逮捕等の刑事手続により検挙エそして,するためには,当該被疑者について犯罪を行ったと思料される単純な可能性が認められるだけでは足りず,当該被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由,ひい()()。 てはそれを裏付ける相応の証拠疎明資料が必要である刑訴法199条1項Aaの事件について,前記1(2)(6)に認定したα署の捜査の経緯からすれば,α署としては刑事訴訟法等の手続の範囲において,適切に捜査権の行使を行ったと評価できるところ,このような捜査によっても,原告らの主張する時点においては,被告乙川をAaに対する傷害致死の嫌疑で検挙するための相当の理由及びこれを裏付けるに足りる相応の証拠をα署としては収集できていなかったのであるから,被告乙川を検挙することができなかったのは誠にやむを得ないというべきである。 このように上記時点においては,α署としてはAaの死亡が被告乙川の加害行為によることの相当の疑いを持つことができなかったのであるから,被告乙川が本件保育施設の一郎を含む園児に対して暴行な きである。 このように上記時点においては,α署としてはAaの死亡が被告乙川の加害行為によることの相当の疑いを持つことができなかったのであるから,被告乙川が本件保育施設の一郎を含む園児に対して暴行などの加害行為を行っていることを具体的。 ,,に予見することは困難であったというべきであるそして本件全証拠によってもα署においてこの具体的な予見をすることができたと認めることができない。 したがって,α署が本件事件以前に被告乙川を検挙等しなかったという権限不行使について国家賠償法上の違法性を認めることはできない。 オもっとも,原告らは,仮にAa死亡直後の時点においてはその死因がはっきり分からなかったとしても,既に前年の4月に園児の保護者から被害届が出され,その後同年7月に2度も外の虐待例についても通報がされていた本件保育施設において,不審な死を遂げた園児が発生した以上,α署としては,少なくとも県児童福祉課には連絡して,ほかの暴行・虐待等の事実の有無を問い合わせるなどのその時点でできる捜査をすべき作為義務があった旨主張する。 しかしながら,前述のように,Faの受傷事件についての被告乙川の関与は不明であったこと,N園長からのFaの件以外の通報に係る事実は直ちに犯罪に該当す-- るといえるものではなかったこと,Aaの死因もこの時点では不明であり,さらにそれが犯罪によるものであると判断することはできず,被告乙川が本件保育施設の園児に対して暴行などの加害行為を行っていることを予見することができなかったことなどの事情からすれば,α署において上記の時点で県児童福祉課と連携をとらなかったとしても,その不行使は,なおその与えられた捜査権限の裁量の範囲内のものというべきであるから,原告らの上記主張は採用することができない。 (5)以上より,α署の権限不行 童福祉課と連携をとらなかったとしても,その不行使は,なおその与えられた捜査権限の裁量の範囲内のものというべきであるから,原告らの上記主張は採用することができない。 (5)以上より,α署の権限不行使を理由とする原告らの被告神奈川県に対する請求は,その余の争点について判断するまでもなく理由がない。 争点(4 (消滅時効の成否)について)(1)前記2のとおり,被告乙川は,傷害の故意をもって一郎に暴行を加え,一郎を死亡するに至らせたものであり,一郎及び原告らに対して不法行為責任を負うものであるところ,被告乙川は,本件の不法行為については,既に時効が経過している旨述べ,原告らの請求に対して抗弁として消滅時効の成立を主張するので検討する。 (2)証拠(甲29,30,58の3,乙B5,原告花子及び原告太郎各本人尋問の結果,前記1(6)コないしセで認定した事実及び弁論の全趣旨によれば以下)の事実が認められる。 ア平成12年6月27日,α署は,被告乙川を任意同行し,その後裁判官に対して被告乙川について一郎に対する傷害致死容疑の逮捕状を請求し,逮捕状発布後同日午後9時過ぎ,被告乙川は通常逮捕された。被告乙川は,一郎に対する傷害致死事件について,一部自白したが,その後は発生当日に警察官に話したとおりであるとのみ供述し,雑談には応じるものの否認している状態であった(甲58の3,乙B5。 )イ平成12年7月18日,被告乙川は,一郎に対する傷害致死事件で起訴された(甲58の3。 )ウ被告乙川は,一郎等に対する傷害致死等の刑事被告事件の第1回公判廷にお-- ける罪状認否において,一郎に対する起訴事実につき,同児の両肩付近をついて仰向けに転倒させて死亡させたことを認めたものの,犯行の場所,暴行の程度及び動機について起訴事実の一部を否認し -- ける罪状認否において,一郎に対する起訴事実につき,同児の両肩付近をついて仰向けに転倒させて死亡させたことを認めたものの,犯行の場所,暴行の程度及び動機について起訴事実の一部を否認した。 さらに,同事件の公判廷において,被告乙川は「上がりかまちに一郎ちゃんの,後頭部を打ち付けてはいない」など供述を変遷させ,捜査段階での自白の任意性を争うなど明確に犯意を否定し,被告乙川の弁護人も暴行又は傷害の故意が認められ(,,)。 ず同起訴事実については無罪である旨主張した甲29甲30弁論の全趣旨エ原告らは,被告乙川のこのような逮捕から判決に至るまでの言動を見て,だれも目撃者がいないこのような密室での犯罪では,被告乙川が供述しなければ,同被告が有罪とならないのではないかと考えるようになった(第10回口頭弁論における原告花子尋問調書24頁,第10回口頭弁論における原告太郎尋問調書10頁。 )オ平成14年6月3日,横浜地方裁判所において,被告乙川は,Aa及び一郎に対する各傷害致死並びにK,L(2件,M及びBaに対する各傷害行為につい)て,犯罪の証明があったとして懲役20年の有罪判決の宣告を受けた(甲30。 )この結果を知った原告らは,一郎の死亡が被告乙川の暴行によるものであることに間違いないと,ようやく確信するに至った(第10回口頭弁論における原告太郎尋問調書10頁。 )カ平成15年12月6日原告らは本件訴訟を横浜地方裁判所に提起した顕,,(著な事実。 )(3)ところで,民法724条は不法行為の消滅時効の起算点として「被害者,又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」と規定し,ここで言う「加害者を知った」とは,加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に損害及び加害者を知った時を意 「被害者,又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」と規定し,ここで言う「加害者を知った」とは,加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味するものと解される(最高裁昭和48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁,最高裁平成14年1月29日第三小法廷判決・民集56巻1号218頁参照。 )-- 上記(2)の認定事実によれば,被告乙川は捜査段階において,雑談には応じるものの一郎に対する傷害致死容疑を否認していたものであり,その後刑事第1回公判廷における罪状認否において被告乙川の暴行により一郎が死亡するに至ったことを認めはしたものの,犯行の場所,暴行の程度及び動機について起訴事実の一部を否認していたものである。 さらに,上記認定事実によれば,その後,被告乙川は,公判廷における供述を変,,,遷させ暴行の態様及び犯意を明確に否定し最終的には無罪を主張したのでありその結果原告らは,一郎の死亡が被告乙川による暴行によるものかどうかを疑いを抱くようになったことが認められる。 ,,これらの事情からすると原告らが被告乙川に対する刑事第1審判決言渡し前に被告乙川を一郎に対する暴行の加害者であると主張して,被告乙川に対し損害賠償請求をすることは事実上できなかったというべきであり,平成14年6月3日横浜地方裁判所において言い渡された同第1審判決により,被告乙川が一郎に対する傷害致死事件についても有罪とされた時点において,原告らは,被告乙川が一郎に対する暴行の加害者であることを,損害賠償請求が可能な程度にこれを知ったと認めるのが相当である。 (4)したがって,原告らの被告乙川に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の時効の起算点は,早くとも平成14年6月3日というべきであ 損害賠償請求が可能な程度にこれを知ったと認めるのが相当である。 (4)したがって,原告らの被告乙川に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の時効の起算点は,早くとも平成14年6月3日というべきであり,本訴が提起された日までに3年間の消滅時効期間が経過していないから,被告乙川の上記主張を採用することはできない。 争点(5 (原告らの損害)について)(1)一郎の損害についてア一郎の逸失利益について一郎は,平成○年△月□日生まれであり,平成12年2月18日に約2歳で死亡した(前記1(1) 。 )一郎が死亡した時点である平成12年の賃金センサスによる男性労働者学歴計の-- 年収額は,560万6000円であり,一郎の就労可能年数は,18歳から67歳までと認められるから,ライップニッツ方式により中間利息を控除することとし,死亡時から稼働期間終期までの係数(67年-2年=65年に対応する係数19. 1610)から,死亡時から稼働期間始期までの係数(18年-2年=16年に対応する係数10.8377)を控除した係数によることとする。また生活費については50%を控除するのが相当である。 したがって,一郎の死亡による逸失利益の損害は次のとおり2333万0210円(円未満四捨五入)であると認められる。 (計算式)560万6000円×(1-0.5)×(19.1610-10.8377)=2333万0210円イ一郎の慰謝料について一郎は,何ら落ち度がないにもかかわらず,理不尽にも被告乙川の虐待,暴行によって頭がい骨陥没,くも膜下出血などにより自力呼吸ができない状態に陥り,その結果,尊い生命を2年という短い期間で無理やりに奪われたものであり,その無念さは察するに余りある。 その他,本件証拠によって認められる諸事情をも併せ考慮すると,一郎が死亡に ができない状態に陥り,その結果,尊い生命を2年という短い期間で無理やりに奪われたものであり,その無念さは察するに余りある。 その他,本件証拠によって認められる諸事情をも併せ考慮すると,一郎が死亡により受けた精神的苦痛を慰謝するには,2500万円を相当と認める。 ウ原告らは,一郎の上記の損害の合計である4833万0210円の損害賠償請求権を2分の1の割合で相続した。 (2)原告ら自身の損害ア原告ら自身の慰謝料について原告らは,一郎を宝物のように大切に育て,その成長を楽しみにしていたのであり(前記1(1) ,被告乙川の犯罪行為によって,突然一方的に一郎を失った原告)らの精神的苦痛を慰謝するには,慰謝料として各500万円を認めるのが相当である。 イ病院費用等について-- 原告らは,一郎が被告乙川の暴行により病院に搬送された結果合計6万7180円の損害を被ったと主張する。 証拠(甲2の1,甲2の2の1ないし3)によれば,原告らは,被告乙川の暴行後,一郎が搬送されたα市立病院に,①外来診療費として1万4855円,②転送先のf大学病院に入院医療費として3万2325円を支払い,③同病院から死体検案書を受ける際の文書料として2万円を支払っている事実が認められる。 これらの費用のうち①及び②については一郎に対する治療に必要かつ相当な実費であり,また,③の文書料は,損害賠償請求等の費用として必要かつ相当なものといえるから,病院費用等の合計6万7180円は相当因果関係ある損害というべきであり,原告らは各自半額ずつその費用を負担し,病院費用等として,各3万3590円の損害を被ったものと認められる。 ウ葬儀費用について原告らは,葬儀費用として157万2895円を要した旨主張するが,被告乙川の不法行為と相当因果関係ある葬儀費用の損害としては1 各3万3590円の損害を被ったものと認められる。 ウ葬儀費用について原告らは,葬儀費用として157万2895円を要した旨主張するが,被告乙川の不法行為と相当因果関係ある葬儀費用の損害としては150万円と認めるのが相当であり,原告らは,各自半額ずつその費用を負担し,葬儀費用として各75万円の損害を被ったと認められる。 エ原告らは,調査費用,損害賠償請求関連費用として刑事裁判記録の謄写料17万1160円を請求する。しかし,上記刑事裁判記録の謄写記録は,主として一郎以外の被害児童に関する記録及び被告神奈川県に関する記録が多く含まれている,,ことからすれば被告乙川の一郎に対する不法行為及びその損害を立証するために上記刑事裁判記録の謄写が必要かつ相当なものとまで認めることは困難であるから,原告らの上記調査費用,損害賠償請求関連費用としての刑事裁判記録の謄写料は,相当因果関係ある損害と認めることはできないというべきである。 (3)一郎の父母である原告らは,上記(1)に認定した一郎に生じた損害合計4833万0210円の損害賠償請求権を2分の1の割合で相続したと認められるので,上記相続による損害額は各2416万5105円となり,上記(2)認定の原告-- ら自身の損害額の合計は各578万3590円となる。 (4)弁護士費用について本件事案の内容等にかんがみれば,原告らに生じた弁護士費用の損害としては,原告らそれぞれにつき300万円と認めるのが相当である。 (5)損害総額以上によれば,原告らが被告乙川の不法行為によって被った損害の合計額は,各3294万8695円となる。 第4 結論 よって,原告らの被告乙川に対する請求は,各3294万8695円及びこれに対する不法行為の日である平成12年2月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割 3294万8695円となる。 第4 結論 よって,原告らの被告乙川に対する請求は,各3294万8695円及びこれに対する不法行為の日である平成12年2月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却し,原告らの被告神奈川県に対する請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第5民事部裁判長裁判官三木勇次裁判官本多知成裁判官小西圭一
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