平成30(行コ)75 怠る事実の違法確認等(住民訴訟)請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成31年2月1日 大阪高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文7,428 文字)

平成31年2月1日判決言渡平成30年(行コ)第75号怠る事実の違法確認等(住民訴訟)請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成27年(行ウ)第16号) 主文 本件控訴をいずれも棄却する。 当審における訴訟費用(補助参加によって生じた訴訟費用を含む。)は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人が,A,B,C,D,E,F株式会社,株式会社G及び補助参加人に対し,各自5594万4000円の支払請求を怠ることが違法であることを確認する。 3 被控訴人は,A,B,C,D,E,F株式会社,株式会社G及び補助参加人に対し,各自5594万4000円及びこれに対する平成27年2月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。 第2 事案の概要 1 本件は,H市の住民である控訴人ら(原審においては,ほか2名の原審原告を含む。)が,H市の執行機関である被控訴人を相手方として,地方自治法242条の2第1項3号及び4号に基づき,次のとおりの請求をした事案である。 (1) H市の実施したH市立市民会館(以下「市民会館」という。)別館2階ホール増築他建築工事に係る事後審査型制限付一般競争入札(以下「本件入札」という。)において,本件入札に参加したF株式会社(以下「F」という。),株式会社G(以下「G」という。)及び補助参加人(以下,上記3社を「Fほか2社」という。)がFを受注予定者とする談合を行ったため,適正な競争入札が行われた場合の代金額に比して高額の請負契約(以下「本件原契約」という。)が締結され,H市がその差 額に相当する5594万4000円の損害を被ったことにより,Fほか 行ったため,適正な競争入札が行われた場合の代金額に比して高額の請負契約(以下「本件原契約」という。)が締結され,H市がその差 額に相当する5594万4000円の損害を被ったことにより,Fほか2社に対して,不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,被控訴人がその行使を違法に怠っているとして,被控訴人がFほか2社に対してそれぞれ上記損害賠償請求をしないことが違法であることの確認請求をするとともに,「怠る事実の相手方」であるFほか2社に対し,それぞれ上記損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を請求するよう求めた請求。 (2) H市長であるA,副市長であるB,H市職員であるC及びD(以下「D」,B及びCと併せて「Bら」という。)がFほか2社による談合を知り,あるいは知り得たにもかかわらず,本件入札を実施し,その結果,適正な一般競争入札が行われた場合の代金額に比して高額の本件原契約が締結され,H市がその差額に相当する5594万4000円の損害を被ったことにより,A及びBらに対して,不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,被控訴人がその行使を違法に怠っているとして,被控訴人がA及びBらに対してそれぞれ上記損害賠償請求をしないことが違法であることの確認請求をするとともに,「怠る事実の相手方」であるA及びBらに対し,それぞれ上記損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を請求するよう求めた請求。 (3) A,Bら及びH市職員であるEが追加で工事が必要となることを隠して,本件入札を行い,議会の議決を得て,本件原契約を締結したという一連の不法行為により,高額な本件原契約及びそれを変更する契約(以下「本件変更契約」という。)が締結され,H市が5594万4000円の損害を被ったことにより,A,Bら及びEに 原契約を締結したという一連の不法行為により,高額な本件原契約及びそれを変更する契約(以下「本件変更契約」という。)が締結され,H市が5594万4000円の損害を被ったことにより,A,Bら及びEに対して,不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもかかわらず,被控訴人がその行使を違法に怠っているとして,被控訴人がA,Bら及びEに対してそれぞれ上記損害賠償請求をしないことが違法であることの確認請求をするとともに,「怠る事実の相手方」であるA,Bら及びEに対し,それぞれ上記損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を請求するよう求めた請求。 (4) 原判決は,控訴人ら(ほか2名の原審原告を含む。)の前記(1)~(3)の請求 をいずれも棄却した。 控訴人らは控訴し,控訴人らの請求を全部認容するよう求めた。 2 前提事実原判決「事実及び理由」第2の2を引用する。 3 争点原判決「事実及び理由」第2の3を引用する。 4 争点に関する当事者の主張原判決「事実及び理由」第2の4を引用する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実原判決「事実及び理由」第3の1を引用する。 2 争点①(Fほか2社による談合の有無)について(1) 原判決の引用原判決「事実及び理由」第3の2を引用する。 (2) 付加説明ア控訴人らの主張控訴人らは,本件入札結果は,いずれもH市内に本店を有する,かねてより交流の深いFほか2社のみが応札し,そのうちの2社が予定価格を超えた価格で応札し,残り1社が予定価格100%で応札しているという3社が談合しなければ起こりえないものであることからすると,談合が行われたことは明らかであると主張する。 また,控訴人らは,A及びBらにおいて,本件要綱8条の適用又は同条の趣旨に 応札しているという3社が談合しなければ起こりえないものであることからすると,談合が行われたことは明らかであると主張する。 また,控訴人らは,A及びBらにおいて,本件要綱8条の適用又は同条の趣旨に基づき本件入札の執行を中止すべきであったのにそのまま続行したことは,A及びBらが談合に加担していたことを示すものであると主張する。 イ検討(ア) 原判決理由説示のとおり,本件入札の入札参加資格要件(総合評定値)を満たす者は,Fほか2社を含む市内業者5社の他に,市外業者が86社もあったこ とが認められるところ,本件入札に市外業者が入札することが困難であったとか,Fほか2社において本件入札に市外業者が参加しないことを認識していたなどという事情は認め難い。したがって,結果的に本件入札に応札したのがH市内に本店を有するFほか2社のみであったからといって,そのことが直ちに本件入札における談合を裏付けるものとはいえない。 (イ) 本件入札当時,東日本大震災に係る復旧・復興事業等の影響や景気状況の変動により,建築関係の人件費や資材価格が急騰したことによって,入札の不調あるいは不落が相次ぐ状況にあったことは,引用に係る原判決理由説示のとおりである。このような状況の下では,入札参加希望者が資材価格等の高騰を考慮して積算した見積価格が入札実施者の設定した予定価格を上回り,入札参加希望者において,予定価格が経済の実勢を反映していないため予定価格以下では応札しづらいと判断する事態が生じることも十分あり得る。 補助参加人は,このような場合,入札参加希望者において,入札への参加を辞退せず,あえて予定価格を上回る金額で応札することは,公共工事における予定価格が人件費や資材価格の高騰等を合理的に見込んでいないことを入札実施者に対し表明するという点にお において,入札への参加を辞退せず,あえて予定価格を上回る金額で応札することは,公共工事における予定価格が人件費や資材価格の高騰等を合理的に見込んでいないことを入札実施者に対し表明するという点において,一定の意義を有するものである旨主張するところ,現に入札が成立した案件でも予定価格を超える価格での応札者がいた事例のあること(丙1~4)からしても,この主張自体は不自然なものとはいえず,補助参加人が予定価格を超える価格で応札したことが,本件入札における談合を裏付けるものとはいえない。 また,入札参加希望者において,積算した見積価格が予定価格と拮抗している場合,現実の応札を期待するものの,一方で収益性の確保を図る必要性があることから,予定価格と同額での落札を求め,それを下回る価格で入札に参加する者が出現したならば落札を断念するという選択をすることにも,経済的見地からの十分な合理性があるといえるから,Fの落札率が予定価格の100パーセントであることが不自然であるとはいえず,本件入札における談合を裏付けるものとはいえない。 (ウ) 原判決理由説示のとおり,H市競争入札心得(甲15)11条1項は,事前に公表された予定価格を超える入札をした者は失格となると定めてはいるものの,その者が参加したことを遡って否定する趣旨の定めをしていないことからすると,本件入札における参加者は,Fほか2社の3者であったと認められるから,本件要綱8条の入札の執行を中止すべき要件には該当しない。 本件要綱8条の趣旨は,競争性の担保や価格の有利性の確保等にあるものと考えられるところ,本件入札の入札者は3名であり,入札の時点において競争性の担保や価格の有利性の確保の趣旨に反するものではなく,開札の結果,有効な入札者が1名であったことが判明したにすぎない。したがっ られるところ,本件入札の入札者は3名であり,入札の時点において競争性の担保や価格の有利性の確保の趣旨に反するものではなく,開札の結果,有効な入札者が1名であったことが判明したにすぎない。したがって,A及びBらにおいて,本件要綱8条又は同条の趣旨により本件入札の執行を中止すべきであったとはいえない。 A及びBらにおいて本件入札の執行を中止しなかったことが,本件入札における談合や加担を裏付けるものとはいえない。 (エ) 以上のとおりであるから,控訴人らの主張は採用できない。 3 争点④(本件原契約に本件追加工事を含めずに本件入札を行い,議会の議決を得て同契約を締結した行為の違法性の有無)について(1) 原判決の引用原判決「事実及び理由」第3の3を引用する。 (2) 付加説明ア遡及適用範囲の検討義務について(ア) 控訴人らの主張Eは,平成26年3月下旬,I(設計業務受託業者)を通じて大阪府建築主事から本館の本件遡求適用部分の指摘を受けていたのに,建築関係法令について慎重に検討する義務を怠り,日確検(指定確認検査機関)からの脱法的指南を鵜呑みにして,安易な方法を選択したうえ,生活安全課及び契約課に適時に報告する義務を怠った。 (イ) 検討 a 原判決理由説示のとおり,本件入札の実施時点においては,大阪府の指定確認検査機関である日確検が,遡及適用範囲につき排煙区画工事のみとなる見込みであるとの見解を示し,一級建築士が所属する設計会社であるIにおいても,日確検の上記見解を踏まえて,本件遡及適用部分に係る本件追加工事は不要であることを前提として,本件追加工事を含まない設計内訳書(乙27)を作成し,建築営繕課に提出していたことが認められる。 そうすると,Eが,当初の段階において,大阪府建築主事 る本件追加工事は不要であることを前提として,本件追加工事を含まない設計内訳書(乙27)を作成し,建築営繕課に提出していたことが認められる。 そうすると,Eが,当初の段階において,大阪府建築主事からIを介して本館の本件遡求適用部分の指摘を受けていたことを考慮しても,本件入札の実施時点において,本件追加工事が必要となることを認識していたとは認められないし,認識することが可能であったとは認められない。 b 本件工事のように,建築基準法3条2項所定の既存不適格建築物を増改築するに際しては,当該増改築が,同条3項3号又は4号による建築関係法令の遡及適用の対象となるか否かについて,慎重な調査及び検討をすべきであるといえる。 しかし,増改築の対象となる本件ホール等は市民会館の別館に所在するのに対し,本件遡及適用部分は市民会館の本館に所在するのであるから,本件工事に伴う本館についての遡及適用範囲については,必ずしも明白であったとはいえず,現に大阪府の指定確認検査機関である日確検は,本件入札の実施時点では,本館の遡及適用範囲について,排煙区画工事のみとなり,本件遡及適用部分は対象とならない見込みであるとの見解を示していたのである。証拠(乙26,原審証人E)によると,日確検の上記見解は,本件遡及適用範囲を縮減させるため,市民会館の設備,構造面に精通したIが,改修の必要とされる遡及適用に係る工事を次期の改修工事の際に盛り込むことなどの提案をするなどして協議を重ねれば,大阪府建築主事が示した遡及適用範囲の大半が不要となるという趣旨のものであるが,上記見解が,建築関係法令に適合しない脱法的なものであったとは認められない。 そうすると,上記見解に依拠したEが,遡及適用範囲についての慎重な調査及び検討義務を怠ったとは認められない。 c 本件 建築関係法令に適合しない脱法的なものであったとは認められない。 そうすると,上記見解に依拠したEが,遡及適用範囲についての慎重な調査及び検討義務を怠ったとは認められない。 c 本件入札の実施時点においては,Iのみならず日確検においても,本件追加工事が不要となる見込みであるとの見解を示していたのであるから,Eが今後においても日確検が上記見解を維持し,大阪府建築主事から指摘を受けた遡及適用範囲の縮減が見込まれると考えたことについて,特段不合理な点は認められない。本件入札の実施時までに,Eが生活安全課や契約課に対し,本件追加工事の必要性に関する情報を提供することがより適切であったといえるとしても,Eにおいて,控訴人らが主張するような報告義務を怠ったとは認められない。 d 以上のとおりであるから,控訴人らの主張は採用できない。 イ本件議会に対する報告義務について(ア) 控訴人らの主張本件議会が開催された時点において,本件工事と同時に本件追加工事を実施する必要性があることが明らかであったのに,A,Bら及びEは,その必要性についての本件議会に対する報告義務を故意又は過失により怠り,本件議会における適正な審議を妨げるという違法行為をした。 (イ) 検討a 本件議会が開催された時点において,本件工事は,本件追加工事と同時に実施されるのでなければ,建築関係法令に適合しないものであり,そのことについてA,Bら及びEは認識していたことが認められる。そこで,本件工事のみに係る本件原契約締結議案の可決を求め,本件追加工事が予定されていることについての説明をしなかったことの相当性について,次に検討をする。 b 市民会館を建築関係法令に適合した建築物とするために必要な本件追加工事を実施するための方法としては,本件原契約の れていることについての説明をしなかったことの相当性について,次に検討をする。 b 市民会館を建築関係法令に適合した建築物とするために必要な本件追加工事を実施するための方法としては,本件原契約の締結に係る本件議会の議決を得た後,改めて本件原契約変更に係るH市議会の議決を経て,本件原契約を変更するという現に採用された方法のほか,考えられる選択肢として,①本件追加工事のみ一般競争入札を実施する方法と②本件工事に係る工事請負仮契約を解除し,本件追加工事を含めて改めて一般競争入札に付する方法があったこと,しかし,上記①の 方法については,本館と別館とが同一敷地内で互いに隣接し,内部は扉等でつながっているなど密接な関連性を有するため,別々の業者に工事を行わせるのは不合理かつ非現実的であり,また,上記②の方法については,新たに一般競争入札を実施するとなれば,市民会館を予定どおり平成26年12月に開館することができず,市民の年末年始の利用等に影響が出ること等から,この方法を採用することも難しかったこと,以上は原判決が適切に説示するところである。 したがって,H市長において,本件追加工事が必要であることが明らかになった後に,まず本件原契約に係るH市議会の議決を得て本件原契約を締結したことには,相応の合理的理由があったものと認めることができる。 c 以上のとおり,本件追加工事を実施するためには,Fとの間で本件原契約を締結した後に,改めて本件原契約を変更する方法によることが合理的であったといえる。そして,本件追加工事の内容等については,予算措置を含めて,本件議会とは別に,議会運営委員会及び特別議会における審理及び議決を求める予定とされており,B,D及びEは,本件原契約締結に係る議決を得た後,同日中に議会運営委員会において本件追加工事が必要と て,本件議会とは別に,議会運営委員会及び特別議会における審理及び議決を求める予定とされており,B,D及びEは,本件原契約締結に係る議決を得た後,同日中に議会運営委員会において本件追加工事が必要となるとの報告をし,本件追加工事に係る補正予算に加え,本件変更契約締結に関しても,特別議会における議決を得ている。以上の経過に照らすと,A,Bら及びEは,議会運営委員会及び特別議会において本件変更契約の必要性に係る事情を十分に説明して,適時にH市議会の議決を得ることを念頭において行動していたと認められるのであり,同人らが,本件追加工事の必要性について,H市議会に対する説明を回避しようとしたとは認められない。 d 以上によれば,A,Bら及びEが,本件追加工事の必要性について本件議会に対する報告義務を故意または過失により怠り,本件議会における適正な審議を妨げる違法行為をしたと認めることはできず,控訴人らの主張は採用できない。 第4 結論控訴人らの請求はいずれも理由がないから棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当であって,本件控訴はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官山下郁夫 裁判官杉江佳治 裁判官後藤慶一郎

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