令和4年3月24日判決言渡令和3年(行コ)第256号所得税及び復興特別所得税更正処分等取消請求控訴事件(原審東京地方裁判所令和元年(行ウ)第648号) 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 A税務署長が平成30年5月29日付けで控訴人Bに対してした控訴人Bの平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る更正処分のうち,納付すべき税額9884万9900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも令和元年7月5日付けでされた国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 3 A税務署長が平成30年6月12日付けで控訴人Cに対してした控訴人Cの平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る更正処分のうち,納付すべき税額9894万9900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも令和元年7月5日付けでされた国税不服審判所長の裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 第2 事案の概要1⑴ 本件は,控訴人らが,養母である亡Dから相続して取得した土地に借地権を設定した対価として受領した権利金に係る所得を分離課税の長期譲渡所得の金額に計上して平成27年分の所得税及び復興特別所得税(以下「本件所得税等」という。)の確定申告をしたところ,A税務署長から,租税特別措置法39条1項(平成30年法律第7号による改正前のもの)の適用により取 得費の額に加算される相続税額(以下「取得費加算額」という。)の計算に誤りがあるとして,控訴人Bにあっては平成30年5月29日付けで,控訴人Cにあっては同年6月12日付けで,それぞれ更正処分(以下「本件各 額に加算される相続税額(以下「取得費加算額」という。)の計算に誤りがあるとして,控訴人Bにあっては平成30年5月29日付けで,控訴人Cにあっては同年6月12日付けで,それぞれ更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を受けた(ただし,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分は,いずれも令和元年7月5日付けでされた国税不服審判所長の裁決により一部取り消されており,以下,本件各更正処分及び本件各賦課決定処分については,いずれも特に区別する必要がある場合を除き,上記裁決により一部取り消された後のものを指すものとする。また,本件各更正処分のうち,個別の控訴人に係る更正処分を指すときは「控訴人Bに対する更正処分」などといい,本件各賦課決定処分のうち,個別の控訴人に係る賦課決定処分を指すときは「控訴人Bに対する賦課決定処分」などという。そして,本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて「本件各更正処分等」という。)ことから,本件各更正処分の一部及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 ⑵ 原審は,控訴人らの請求をいずれも棄却したため,これを不服として控訴人らが本件控訴をした。 2 関係法令等の定め,前提事実,被控訴人の主張する本件各更正処分等の根拠及び適法性,争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,次項のとおり当審における控訴人の補充主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第 2 事案の概要」の1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。 以下,略称の使用は,特に断らない限り,原判決の例による。 3 当審における控訴人の補充主張⑴ 租税特別措置法施行令(措置令)25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入さ 用は,特に断らない限り,原判決の例による。 3 当審における控訴人の補充主張⑴ 租税特別措置法施行令(措置令)25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」との文言は,課税要件明確主義に反する。A税務署長が,本件各更正処分時には,「当該譲渡を した資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を「貸家建付地」×90%(いわゆる計算式B)を根拠としたにもかかわらず,審査請求時には,「貸家建付借地権」(いわゆる計算式C)が正しいと主張しているが,仮に,租税特別措置法(措置法)39条1項及び措置令25条の16第1項の文理,措置法39条1項の定め(本件特例)の制度趣旨及び改正経緯から,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」の意義が明らかになるのであれば,処分庁により複数の計算根拠が示されることはないはずである。 また,仮に,措置令25条の16第1項2号の文言につき複数の解釈が可能であるならば,処分庁において,通達等の手法を用いて解釈基準を国民に対して明らかにする必要がある。 本件において,処分庁であるA税務署長は,審査請求の中で課税要件事実の変更がないにもかかわらず,通知した処分理由及び課税額を自ら変更する旨の主張をしたのであり,このことは,課税要件の内容が明確であるとの判断を左右するものではないという原判決の判断は,理由を示していないに等しく,原判決には,理由不備又は審理不尽の違法がある。 ⑵ 亡Dの相続に係る相続税(本件相続税)の調査を担当した東京国税局の職員(本件相続税調査担当職員)が,控訴人らの所得税に関する代理権限を有しない税理士が立ち会っているにもかかわらず,所得税に関する重大な情報を提供する行為は, 件相続税)の調査を担当した東京国税局の職員(本件相続税調査担当職員)が,控訴人らの所得税に関する代理権限を有しない税理士が立ち会っているにもかかわらず,所得税に関する重大な情報を提供する行為は,重大な守秘義務違反であり,その手続的瑕疵は大きい。 本件では,所得税の調査を担当したE税務署は,相続税の調査と控訴人らが借地権設定契約に関して受領した権利金に係る分離課税の長期譲渡所得(本件譲渡所得)の調査を同時に行うことを希望していたが,それぞれの調査の控訴人ら代理人税理士が異なるために,同時調査を回避した経緯がある上,本件相続税を担当する税理士(本件相続税担当税理士)に守秘義務が課されているとしても,担当外の税理士に対し,所得税に関する情報を提供するこ と自体,所得税等の適正かつ公平な賦課徴収及び税務行政の適正な執行確保が疑われる。 原審が説示するように,調査の手続が刑罰法規に触れ,公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等の重大な違法を帯び,何らの調査なしに更正処分をしたに等しい場合に限り,取消原因があると解するのは,質問検査権の手続の瑕疵について実質的に司法審査が及ばないことを意味するものであって相当ではない。 ⑶ 本件各更正処分には,行政手続法14条1項本文所定の理由の提示の不備の違法がある。上記のとおり,処分庁は,審査請求時に,自ら主張していた計算根拠を撤回しているところ,これは,処分時における計算方法が誤っていたことを自認したものであるから,そもそも提示された理由は行政庁が正しいと認識したものであるとの理由の提示の前提を欠いている。 また,処分理由の「本件各土地の相続税評価額に100分の90の割合を乗じた金額」について,なぜ100分の90なのか,なぜ100分の90を乗じるのかの理由が記載されて 理由の提示の前提を欠いている。 また,処分理由の「本件各土地の相続税評価額に100分の90の割合を乗じた金額」について,なぜ100分の90なのか,なぜ100分の90を乗じるのかの理由が記載されていないから,いかなる事実関係に基づいていかなる法規を適用して本件各更正処分がされたかを十分に知り得るものとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件各更正処分等はいずれも適法であり,控訴人らの請求は理由がないと判断する。その理由は,次項のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断⑴ 控訴人らは,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」との文言は,課税要件明確主義に反する旨主張するので,検討する。 ア課税要件明確主義は,法律又はその委任を受けた政令又は省令において,課税要件及び租税の賦課徴収の手続に関する定めをする場合に,その定めは一義的で明確でなければならないとする原則である。その趣旨は,不明確な定めをすることは,行政庁に対して一般的又は白紙的委任をするのと同じ結果になりかねず,納税者の経済活動における法的安定性と予測可能性を阻害しかねないため,それを避ける点にある。したがって,租税法においては,行政庁の自由裁量を認める規定を設けることは原則として許されず,不確定概念を用いることにも十分に慎重でなければならないと解される。 これを措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」についてみると,原判決も指摘するとおり,次に述べる理 に慎重でなければならないと解される。 これを措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」についてみると,原判決も指摘するとおり,次に述べる理由から,その規定が課税要件明確主義に反するということはできない。 イ措置令25条の16第1項2号の文言の意味は,その上位にある措置法39条1項(本件特例)の趣旨を踏まえて解釈されるべきところ,措置法39条1項は,相続又は遺贈による財産を取得した個人で相続税の課税を受けた者が,被相続人の死亡の日の翌日からその相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年間に,その課税対象となった相続財産を譲渡した場合において,その者に課された相続税額のうち当該譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を,その資産の譲渡所得の計算上,その資産の取得費に加算して控除することを定めた規定である。 本件特例の定めは,例えば,相続人が相続税の納税のため,相続開始時点から近接した時期に相続財産を処分しなければならない場合に,相続税と譲渡に係る所得税とが相次いで課されることによる納税者の負担の調整を図るため,譲渡をした相続財産に対応する部分の相続税相当額を,そ の譲渡所得の金額の計算上,取得費に加算することを認める特例として,政策的に設けられたものである。 なお,平成5年度税制改正においては,取得費に加算して控除することができる金額が,その者が相続したすべての土地等に対応する相続税に相当する金額とされていたが,譲渡をしていない土地等に対応する相続税額までをも譲渡をした土地等に係る譲渡所得の金額の計算上,取得費に加算して優遇するのは不合理であるとして,平成26年度税制改正により,相続財産である土地等の一部を譲渡した場合は,その者に課 る相続税額までをも譲渡をした土地等に係る譲渡所得の金額の計算上,取得費に加算して優遇するのは不合理であるとして,平成26年度税制改正により,相続財産である土地等の一部を譲渡した場合は,その者に課された相続税額のうち,譲渡した資産に対応する部分の金額(政令で定めるところにより計算した金額)とする旨の改正がされたという経緯がある。 そして,措置法39条1項を受けて,措置令25条の16第1項柱書は,本文において,措置法39条1項に規定する譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額は,同項1号に掲げる相続税額に同項2号に掲げる割合を乗じて計算した金額とする旨を定めた上で,同項1号は,上記の「相続税額」として,当該譲渡をした資産の取得の原因となった相続又は遺贈に係る当該取得をした者の相続税額で,当該譲渡の日に属する年分の所得税の納税義務の成立するときにおいて確定するものを,同項2号は,上記の割合として,同項1号に掲げる相続税額に係る同号に規定する者についての相続税法に規定する課税価格のうちに当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額の占める割合を,それぞれ規定している。 このような措置法39条1項(本件特例)の趣旨や,改正の経緯に照らすと,措置法39条1項を受けた政令である措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」とは,相続税の課税価格の計算の基礎に算入された価額のうち,当該譲渡をした相続財産に対応する部分の価額を意味することは,一義的で明確で あるといえるから,その文言が,課税要件明確主義に反するということはできない。 ウ本件では,原判決も指摘するとおり,措置令25条の16第1項1号の「当該譲渡をした資産」が本件各借地権 あるといえるから,その文言が,課税要件明確主義に反するということはできない。 ウ本件では,原判決も指摘するとおり,措置令25条の16第1項1号の「当該譲渡をした資産」が本件各借地権であることは明らかである。また,原判決前提事実イで指摘するとおり,本件各土地は,いずれも本件相続の開始の時及び本件各借地権設定契約の締結時において,評価通達(財産評価通達)27所定の借地権の割合が90%の地域にあるものであったことからすると,本件借地権設定契約によって譲渡されたものとみなされる本件各借地権は,本件各土地の権利の90%相当分に当たるということができる。これに,原判決前提事実エのとおり,本件相続税の減額更正において,本件各土地の相続税評価額は,いずれも評価通達26に定める貸家建付地として評価されたことを前提にされたものであることを踏まえると,本件各更正処分が,本件譲渡所得に係る措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」を,貸家建付地としての本件各土地の評価額に,借地権割合である90%を乗じた金額としたことは相当である。 エこの点,控訴人らは,処分庁により複数の計算根拠が示されること自体が,措置令25条の16第1項2号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」の文言が課税要件明確主義に反することを示している旨主張する。 しかしながら,既に説示したとおり,措置法39条1項の趣旨及び改正の経緯や,これを受けた措置令25条の16第1項2号の文言を踏まえれば,同号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」の意味は,一義的に明らかであるし,資産の譲渡の対象とみなされる本件各借地権の評価についても,前記ウで説示したとおり,合理性を有 号の「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」の意味は,一義的に明らかであるし,資産の譲渡の対象とみなされる本件各借地権の評価についても,前記ウで説示したとおり,合理性を有する評価通達を適切に適用すれば,本件各更正処分と同様の結論を導き 出すことができると認められる。そうすると,課税庁が,課税処分を検討する過程で,本件各更正処分と異なる見解を示したことがあるからといって,そのことをもって「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」の文言が課税要件明確主義に反するということはできない。 ⑵ 控訴人らは,本件相続税調査担当職員が,控訴人らの所得税に関する代理権限を有しない税理士が立ち会っているにもかかわらず,所得税に関する重大な情報を提供する行為は,重大な守秘義務違反であり,その手続的瑕疵は大きいから,本件各課税処分等は違法となる旨主張する。 しかしながら,当審が引用する原判決が説示するとおり,税務調査の手続の瑕疵が当該税務調査を基礎とした更正処分に与える影響については,税務調査の手続の単なる瑕疵は更正処分の効力に影響を及ぼさないものと解すべきであり,調査の手続が刑罰法規に触れ,公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び,何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものとの評価を受ける場合に限り,その処分に取消原因があるものと解するのが相当である。 本件においては,本件相続税調査担当職員が,相続税の調査の結果,相続税が減額となること,譲渡所得について修正申告が必要であること,及びその理由と修正申告が必要な額について説明したことは当事者間に争いがなく,加算税や延滞税等が課されないと説明をしたか否かについてのみ争いがある。 当審が引用する原 いて修正申告が必要であること,及びその理由と修正申告が必要な額について説明したことは当事者間に争いがなく,加算税や延滞税等が課されないと説明をしたか否かについてのみ争いがある。 当審が引用する原判決が説示するとおり,本件特例に基づく譲渡所得の計算における取得費の加算額は,相続財産の評価額や相続税の課税価格及び相続税額といった相続税に係る課税内容を基に計算されるものであるところ,本件相続税額等に増減があれば,本件譲渡所得等の計算における取得費の加算額についても変動が生じ,これにより必然的に控訴人らの本件譲渡所得等に係る税額にも変動が生じ得るものであり,このことは税務に関する専門家 である税理士にとって明らかな事項である。これに加え,控訴人らも,本件相続税調査担当職員が説明を行う際に,所得税に関わる話題に及んでも,本件相続税担当税理士が立ち会うことに異議を述べず,これに同意していたとうかがわれることも考慮すると,本件相続税調査担当職員が,本件相続税担当税理士の面前で,控訴人らに対し,税務調査の結果,控訴人らの相続税が減額となることに加え,控訴人らの平成27年分の所得税及び復興特別所得税(本件所得税等)について修正申告が必要であること等を説明したことが,本件相続税担当税理士との関係で「秘密」(国税通則法126条及び国家公務員法100条1項)を漏らしたことに該当するとは認め難い。 また,本件相続税調査担当職員による上記の説明は控訴人らに対してされたものであるが,本件相続税担当税理士はその場に立ち会っていたのであるから,本件相続税担当税理士には,税理士法上,自らの税理士業務に関して知り得た秘密を守る義務が課せられており,本件相続税調査担当職員による説明により知った内容も,その対象に含まれると解されることを考慮すると,本件説明 税理士には,税理士法上,自らの税理士業務に関して知り得た秘密を守る義務が課せられており,本件相続税調査担当職員による説明により知った内容も,その対象に含まれると解されることを考慮すると,本件説明により,直ちに所得税等の適正かつ公平な賦課徴収手続や税務行政の適正な執行の確保が阻害されたということはできない。 以上の検討によれば,本件相続税に関する調査について,調査の手続が刑罰法規に触れ,公序良俗に反し又は社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたるような重大な違法があったとは到底認められないから,本件各更正処分に取消原因があるということはできない。 これに反する控訴人らの主張を採用することはできない。 ⑶ 控訴人らは,本件各更正処分には,行政手続法14条1項本文所定の理由の提示の不備の違法がある旨主張する。 しかしながら,当審が引用する原判決が説示するとおり,行政手続法14条1項本文において,行政庁が不利益処分をする場合にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその 権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解されるところ,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきものと解するのが相当である(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)。 また,提示すべき理由の内容及 係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきものと解するのが相当である(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)。 また,提示すべき理由の内容及び程度は,特段の理由のない限り,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分がされたのかを,処分の相手方においてその記載自体から了知し得るものでなければならず,単に処分の根拠規定の該当条項を示すだけでは,それによって当該規定の適用の原因となった具体的な事実関係をも当然に知り得るような例外の場合を除いては,法の要求する理由の提示として十分ではないといわなければならない(最高裁昭和45年(行ツ)第36号同49年4月25日第一小法廷判決・民集28巻3号405頁参照)。 これを本件についてみると,原判決が説示するとおり,本件各更正処分等に係る通知書(甲2の1,2)には,本件各更正処分等の処分の理由として,①Fビル及びGビル(本件各建物)の譲渡並びにFビルの敷地及びGビルの敷地に設定された借地権(本件各借地権)の設定による分離課税の長期譲渡所得の金額は,総収入金額から取得費の額を差し引いた金額であること,②取得費の額は,資産の取得に要した金額と,措置法39条及び措置令25条の16の規定に基づき取得費に加算される相続税額との合計額であること,③措置法39条及び措置令25条の16の規定に基づき取得費に加算される相続税額は,本件相続に係る相続税の額に,本件相続に係る相続税の課税価 格のうち譲渡した資産の課税価額である相続税評価額の占める割合を乗じて算出した金額であること,④相続税評価額は,本件各借地権に係る土地の相続税評価額の100分の90の割合に相当する金額に,2分の1の割合を乗じた後の金額であることなどが,相続税の課税価 る割合を乗じて算出した金額であること,④相続税評価額は,本件各借地権に係る土地の相続税評価額の100分の90の割合に相当する金額に,2分の1の割合を乗じた後の金額であることなどが,相続税の課税価格,相続税額の説明を含め,具体的な金額とともに記載されているのであるから,提示された理由は,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分がされたのかを,処分の相手方においてその記載自体から了知し得る程度のものとなっていると認められる。 この点,控訴人らは,処分行政庁が審査請求時に処分時と異なる算定方式を主張したため,提示された理由は行政庁が正しいと認識したものであるとの理由の提示の前提を欠いている旨主張する。 しかしながら,本件各更正処分等の理由として,提示された理由が法の要求する程度を満たすことは既に指摘したとおりであるし,控訴人らは,上記の理由の提示を踏まえ,自らが正しいと考える算定方式を主張することは何ら妨げられず,現に妨げられてもいないから,本件各更正処分等に係る通知書に記載された処分の理由は,行政庁の恣意を抑制するとともに,納税者に対して不服申立ての便宜を図るという理由付記の趣旨に反するとは認められない。 また,控訴人らは,処分理由の「本件各土地の相続税評価額に100分の90の割合を乗じた金額」について,なぜ100分の90なのか,なぜ100分の90を乗じるのかの理由が記載されていないことを問題とするが,本件各更正処分等に係る通知書にある「相続税評価額は,本件各借地権に係る土地の相続税評価額の100分の90の割合に相当する金額に,2分の1の割合を乗じた後の金額」であるとの理由の提示があれば,相続税評価額の計算過程の概要が明らかになり,該当する評価通達の適用を念頭に置いていることも想起し得て,それに対する不服の申立 金額に,2分の1の割合を乗じた後の金額」であるとの理由の提示があれば,相続税評価額の計算過程の概要が明らかになり,該当する評価通達の適用を念頭に置いていることも想起し得て,それに対する不服の申立ては可能であるから,その「1 00分の90の割合」の根拠まで明示する必要はないというべきである。 以上の説示に反する控訴人らの主張を採用することはできない。 3 まとめ以上によれば,控訴人らの当審における主張を踏まえても,本件各更正処分は適法であり,これを前提とする本件賦課決定処分も適法であるとの判断は左右されない。 第4 結論よって,控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第24民事部 裁判長裁判官中山孝雄 裁判官遠藤東路 裁判官日暮直子(別紙省略)
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