平成27(ワ)306 鑑定報酬等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年3月29日 岐阜地方裁判所
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判決文本文21,331 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,27万3784円及びこれに対する平成26年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その3を原告の負担とし,その余は被告の負担とし,参加により生じた費用は,これを10分し,その3を原告補助参加人の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,37万3784円及びこれに対する平成26年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,訴外D(以下「D」という。)を被告人とする刑事事件(以下「本件刑事事件」という。)に関し,原告が,被告との間でDと面接等を行った上で精神鑑定書を作成する旨の準委任契約を締結し,これを作成したとして,被告に対し,鑑定報酬35万円(面接料15万円,鑑定書作成費20万円)及び交通費実費2万3784円の合計37万3784円及びこれに対する支払請求後である平成26年11月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨から明らかに認められる事実) 原告は,臨床心理士である。 被告は,弁護士であり,本件刑事事件におけるDの主任弁護人であり,同事件におけるDの弁護人で構成する弁護団(以下「本件弁護団」という。)の一員であった。また,E弁護士及びF弁護士も,本件弁護団の一員であった。 本件弁護団は,その構成弁護人全員が参加するメーリングリスト(以下「本件弁護団メーリングリスト」という。)を用いてメールのやり取りをし 及びF弁護士も,本件弁護団の一員であった。 本件弁護団は,その構成弁護人全員が参加するメーリングリスト(以下「本件弁護団メーリングリスト」という。)を用いてメールのやり取りをしていた。 被告は,平成26年(以下,特に断りのない限り同年のこととする。)5月25日,本件刑事事件を担当する中で,Dの「深い心の闇」の解明や治療のために,原告に連絡をし,助力を求め,原告もこれに応じる用意がある旨伝えた(乙10)。 被告は,8月上旬までは,本件刑事事件において,原告を鑑定人とし,鑑定事項をDの精神状態等とする旨の鑑定が裁判所に採用されることを前提として弁護活動をしており,原告と被告の間では,その前提で原告によるDとの面接の方法等について交渉がされていた(乙11)。 本件刑事事件において,裁判所は,同月8日,被告の求めた鑑定を行わない旨の判断をした(乙12)。 原告と被告は,同月11日から12日にかけて,今後の方針についてメールでのやり取りをし,原告がD及びその母親との面接を継続することとした。 このメールの中で,原告が被告に対して,費用について,交通費等の実費の他,面接料も請求したいと思っている旨,意見書等の資料作成が必要になった場合には別途費用が必要になる旨,面接料としては,1回1時間以内1万円,2時間以内1万5000円程度とする方法又は一審終了まですべての面接を15万円で行う方法のいずれかとする旨や,意見書作成費用について,「検査結果も少し盛り込み,コンパクトに纏めて(数十枚),10万円程度を考えています」との記載があった。 その後,原告は,D及びその母親との面接を継続するとともに,被告,E弁護士及びF弁護士との間で,本件刑事事件において原告が証人尋問を行うことや,原告が作 を考えています」との記載があった。 その後,原告は,D及びその母親との面接を継続するとともに,被告,E弁護士及びF弁護士との間で,本件刑事事件において原告が証人尋問を行うことや,原告が作成する書面についてメールのやり取りを行っていた。 原告は,10月26日,E弁護士に対して,「D情状鑑定書」という題名 のファイル(甲12の1)を添付したメールを送信した(以下,同メールに添付された鑑定書を「本件鑑定書初版」という。)(甲9の1,2)。 原告は,同月29日,E弁護士と打合せを行い,それを踏まえて,E弁護士に対して,本件鑑定書初版の内容を修正した,「D情状鑑定書修正版」という題名のファイルを添付したメールを送信したところ,E弁護士はその内容について微修正をした(以下,E弁護士が修正をした後の鑑定書(甲12の2)を「本件鑑定書修正版」という。)(甲9の1,2)。 原告は,同月31日,E弁護士に対し,合計37万3784円の費用(交通費2万3784円,面会(鑑定)料15万円,鑑定書作成費20万円)を請求したところ,E弁護士は,原告の費用請求に対して,Dの母親から了解が得られた旨返信した(甲9の2)。 しかし,その後,費用は原告に支払われていない。なお,これより前の面接のための交通費については,面接を行った直後あるいは数日後に支払われていた。また,本件鑑定書修正版は本件刑事事件において証拠として提出されることはなく,原告は同事件の証人として証言をしていない。 3 争点及びこれに対する当事者の主張 原被告間で締結された契約の内容及び締結時期(原告の主張)ア 8月17日,原告と被告との間で,本件刑事事件において,原告が,Dに対する面接を行った上,Dが抱える問題性や同問題 原被告間で締結された契約の内容及び締結時期(原告の主張)ア 8月17日,原告と被告との間で,本件刑事事件において,原告が,Dに対する面接を行った上,Dが抱える問題性や同問題への解決策について,臨床心理学的知見に基づく意見を述べる合意が成立した。この合意の内容には,面接に要する交通費等の実費に加えて面接料を15万円及び消費税とすることが含まれていた。また,この合意には,意見書等の書面の作成に関する内容は含まれていない。 イ 10月12日,原告と被告との間で,上記合意の内容の追加として,被告が原告に対して完成した鑑定書について評価的なことを述べることを控 えるとの条件の下,同月27日までに原告が証拠能力のある鑑定書を作成する旨の合意がなされた。かかる合意には,鑑定書の作成手数料につき,コンパクトにまとめた場合で10万円とし,さらに詳細な鑑定書作成については,相当額の報酬が上積みされることも含まれている。 ウ同月13日,被告の履行補助者であるE弁護士と原告の間で,同月16日に原告が行うDとの面接について,交通費を支払う旨の合意がなされた。 (被告の主張)ア 8月17日,原告と被告との間で,原告が,Dの治療のために面接(鑑定のための面接とは区別される)を継続すること,費用については,実費に加えて面接料15万円及び消費税とすることが合意された。かかる合意の内容に鑑定書の作成は含まれていない。 イ同月18日,原告と被告との間で,上記アの合意とは別個の合意として,上記治療のための面接に加えて,本件刑事事件における鑑定のために,原告がDとの面接をした上,鑑定結果に基づく鑑定書の作成及び証人として証言をすることを内容とする合意がなされた。 同合意は,E弁護士が原告にメー 加えて,本件刑事事件における鑑定のために,原告がDとの面接をした上,鑑定結果に基づく鑑定書の作成及び証人として証言をすることを内容とする合意がなされた。 同合意は,E弁護士が原告にメールを送信したことによりなされているところ,同メールには鑑定書の作成と証人としての証言について記載されていないが,それらが合意内容になっていることは本件刑事事件の経過からすれば自明のことである。 ウ 10月13日,原告と被告との間で,上記両合意とは別個の合意として,同月27日までに原告が鑑定書を作成し,それに基づいて公判廷で証言する内容の合意がなされた。 かかる合意における鑑定書とは,客観的に専門家としての鑑定意見として評価するに足りるものを意味する。 また,同合意において,鑑定書作成費に関する取決めは存在していない。 エ原告が主張する,同月16日の面接の交通費の支払についての合意は, 原告とDの母親の代理人であるE弁護士との間でなされたものであり,原告と被告との間でなされた合意ではない。 原被告間で締結された契約の当事者は誰か(被告の主張)ア 8月17日に成立した合意は,医師の診療契約と全く同様に,契約当事者は当然に原告と治療対象者であるDである。被告も,合意の際,Dに意思確認をすれば同意するであろうと考えており,面接の継続を依頼するメールの中で,当事者がDであることを明示していたのであるから,被告がDの代理人であることは明らかである。 仮に合意の際に被告が代理権を有していなかったとしても,被告が同月18日にDと接見した際,Dが同合意について追認している。 そもそも,原告は,同月17日の合意成立以前から,鑑定書作成の報酬を含む鑑定費用等の支払をするの ていなかったとしても,被告が同月18日にDと接見した際,Dが同合意について追認している。 そもそも,原告は,同月17日の合意成立以前から,鑑定書作成の報酬を含む鑑定費用等の支払をするのが,被告ではなく,Dの母親であり,被告は費用の支払について,単に母親の代理人であることを明確に自覚していた。 イ同月18日に成立した合意は,被告が同日にDと接見をした際,同人から授権を受けた上で,E弁護士を通じて,Dが当事者であることを明示して原告にメールがなされたことにより成立したものであり,契約の当事者は原告とDであり,被告はDの代理人にすぎない。 ウ 10月13日に成立した合意の当事者は,上記ア及びイ記載の各合意と同じく,原告とDであり,被告はDの代理人であることは明らかである。 同合意に至る直前に原告と被告との間でなされたメールにおいても,Dが被告の依頼者というだけではなく原告の依頼者でもあることが前提とされており,原告もこのことは明確に自覚していた。 エ上E弁護士との間で締結されたものである。また,E弁護士はDの母親の代理人として合意を しており,同合意の当事者は,原告とDの母親である。 (原告の主張)被告の主張するいずれの事実も否認し,争う。いずれの合意の当事者も原告と被告である。 原告による債務の履行の有無(原告の主張)ア鑑定面接について原告は,7月16日を初回とし,9月25日までに19回,10月16日に20回目の鑑定面接を実施した。 イ鑑定書作成について原告は,10月27日までに書面作成まで済ませ,10月29日に被告の履行補助者であるE弁護士との打合せを経て内容をほぼ確定させると共に,E弁護士の求めに応 イ鑑定書作成について原告は,10月27日までに書面作成まで済ませ,10月29日に被告の履行補助者であるE弁護士との打合せを経て内容をほぼ確定させると共に,E弁護士の求めに応じて署名押印した1頁目を交付し,債務の履行を完了させた。 (被告の主張)ア鑑定面接について7月16日,18日,31日,8月6日,8日,19日に面接したことは認めるが,その余は不知。 また,原告のDとの面接は,鑑定のために資する面接及び治療にかなう面接であったとはいえないため,鑑定書の完成とは無関係に,面接料と交通費実費の請求権自体発生していない。 イ鑑定書作成について以下のとおり,原告は,専門家としての鑑定意見と評価するに足る鑑定書を作成しなかった。 原告は,10月26日にE弁護士に本件鑑定書初版のデータをメールで送信しているが,同鑑定書は,鑑定の基礎となるDと母親の面接記録 の多くが原告の誤解に基づく訂正を要するものである上,原告自身が暫定的なものであると認めており,この時点で鑑定書が未完成であることは明らかである。 原告自身,鑑定書の作成に着手したのは同月13日以降であり,他の仕事との関係から,本件の鑑定書の作成に専念できなかったことを認めており,この点からも,本件鑑定書初版は,完成した鑑定書とは程遠いものである。 原告とE弁護士は,同月29日,本件鑑定書初版を元に打合せを行ったが,原告は,その際E弁護士から伝えられた修正依頼についてその半分くらいしか修正をしなかった。そして,同日,予定されていた11月4日の証人尋問に向けた打合せは全くされなかった。 原告が被告に請求できる金額(原告の主張)ア面接料 の半分くらいしか修正をしなかった。そして,同日,予定されていた11月4日の証人尋問に向けた打合せは全くされなかった。 原告が被告に請求できる金額(原告の主張)ア面接料 15万0000円イ鑑定書作成費 20万0000円原告と被告の間では,コンパクトにまとめた場合で10万円とし,更に詳細な鑑定書作成については,相当額の報酬が上積みされることが合意されていた。そして,被告は,簡易な書面作成にとどまらず,証拠能力のある鑑定書作成を依頼し,原告はこれを完成させたのであるから,その作成費用は,控えめに見積もっても20万円が相当である。 ウ交通費 2万3784円原告が10月16日のDとの面接に要した交通費である。 (被告の主張)ア原告がDとの面接を繰り返していた事実は認められるが,原告のDとの面接は,鑑定のために資する面接及び治療にかなう面接であったとはいえないため,面接料と交通費実費の請求権自体発生しない。 イ作成費は発生しない。また,原告が請求する20万円という金額を裏付ける合意はない。 ウ10月16日の交通費の支払合意は,原告とDの母親との間でなされたものであり,原告が被告にその支払を請求することはできない。 第3 当裁判所の判断 原被告間で締結された契約の内容及び締結時期)について 事実経過前提事実及び証拠(甲16,乙24,原告本人,被告本人,後掲各証拠)によれば,以下の事実が認められるア原告と被告との間では,8月上旬までは,本件刑事事件において,原告を鑑定人とし,鑑定事項をDの精神状態等とする旨の鑑定が裁判所に採用されることを前提にして,原告によるDとの面接の方 れるア原告と被告との間では,8月上旬までは,本件刑事事件において,原告を鑑定人とし,鑑定事項をDの精神状態等とする旨の鑑定が裁判所に採用されることを前提にして,原告によるDとの面接の方法等について交渉がされていた。 同月8日,裁判所が,被告の求めた鑑定を行わない旨の判断をしたことを受けて,原告と被告は,同月11日から12日にかけて,今後の方針についてメールでのやり取りをし,原告がD及びその母親との面接を継続することとした(甲14)。 その際の,原告から被告に対するメールの中には,原告がDの精神状態等について私的鑑定を行うことを前提に,その完成度について,Dとその母親への面接の割合を1対3程度とし,最終弁論の前までを目安に原告が月に2回程度,岐阜から東京へ行くというイメージであるとして,「しっかりとした鑑定の5分の1くらいやれるでしょうか……。」との記載があった。また,費用について,交通費等の実費の他,面接料も請求したいと思っている旨,意見書等の資料作成が必要になった場合には別途費用が必 要になる旨,面接料としては,1回1時間以内1万円,2時間以内1万5000円程度とする方法又は一審終了まですべての面接を15万円で行う方法のいずれかとする旨や,意見書作成費用について,「検査結果も少し盛り込み,コンパクトに纏めて(数十枚),10万円程度を考えています」との記載があった。 イ被告は,同月17日,原告及び本件弁護団メーリングリストを宛先として次のようなメールを送信した。 Dの弟と話したところ,Dの親族は,私的鑑定を行い,それを本件刑事裁判の証拠とすることについて消極的であり,この点については意見が分かれているものの,Dに対する治療(とそのための診断)が必要なことに異存はないの ところ,Dの親族は,私的鑑定を行い,それを本件刑事裁判の証拠とすることについて消極的であり,この点については意見が分かれているものの,Dに対する治療(とそのための診断)が必要なことに異存はないので,「A先生の面接結果を刑事裁判の証拠にするかどうかは,一応の面接を終えた時点で,先生に意見書の作成をお願いし,さらには刑事裁判で証言して頂くことをお願いするかどうかを考えればいいと思います。つまり,当面は,刑事裁判の証拠にしないこともあり得るという前提で,A先生に面接をお願いしたいと思います。」,「A先生の面接結果を刑事裁判の証拠に用いることの是非は,今後の課題としたいと思います。」,「A先生上記のとおりですので,何卒よろしくお願いします。なお,費用ですが,交通費・宿泊費の実費のほか,面接の費用として,回数に関係なく,15万円+8%でお願いしたいと思います。念のため,仮に,面接時間(回数)が上記の金額では到底賄えないものになった場合は,改めてご相談させて頂くことでご了解下さるようお願いします。」(甲2)。 ウ被告は,同月18日,本件刑事事件の担当検察官に対して,原告とDとの1日当たり1時間の面会を求める申入れをした(乙25の3)。また,E弁護士は,同日,同検察官に対し,本件弁護団は原告に引き続き私的鑑定として面会を続けてもらうことにした旨伝えた上で,検察官に対してその旨伝えたことを本件弁護団メーリングリスト及び原告を宛先としてメー ル送信した(乙25の1)。 エ 9月12日,原告は,F弁護士からの,Dとの面会日程の問い合わせに対してその日程を回答するとともに,「なお,時間的制約から,正式な意見書は作成できません。証言ポイントをメモにしたくらいのものになるでしょう。」とも記載したメールを送信したところ,F弁護士 合わせに対してその日程を回答するとともに,「なお,時間的制約から,正式な意見書は作成できません。証言ポイントをメモにしたくらいのものになるでしょう。」とも記載したメールを送信したところ,F弁護士はこのメールに対して「承知しました。」と返信した(甲3)。 オ本件弁護団は,原告の証人尋問について,当初9月26日に行うことを予定していたが,その後10月17日に行うことを予定し,9月16日,これを原告に連絡した(甲17)。 カ E弁護士と原告の間で,10月9日から同月10日にかけて,以下の内容のメールのやり取りがなされた(甲4)。 E弁護士は,本件刑事事件の期日において,裁判所から,原告の証人尋問との関係で原告の作成する書面がいつごろ提出になるかを尋ねられたとして,同月14日には提出する必要があると思われるため準備するよう伝えた。 原告は,鑑定意見書ではなく,簡単な証言要旨として,現時点で主張したいことの要約を作成していることを伝えた。 E弁護士は,「弁護団でもお話しさせて頂いたのですが,ご作成いただく書面は鑑定意見書の形でお願いできないでしょうか。先生が実施してくださった検査の結果や面談の記録等も証言要旨の形ではなく,鑑定意見書の形で記載していただけますと,裁判官に与える印象もだいぶ異なるのではないかと思います。」,「最終版は直前でも大丈夫ですので何とぞどうぞよろしくお願い致します。」などと記載したメールを送信した。 原告は,これに対し,「書面について」と断った上,「前回,C先生から書面は「意見書」と言われておらず,私も口頭で「証言要旨的なも のなら纏められます」と言ったところ,それに対して何も意見されませんでした。ですから,そのような心づもりでおりました。 生から書面は「意見書」と言われておらず,私も口頭で「証言要旨的なも のなら纏められます」と言ったところ,それに対して何も意見されませんでした。ですから,そのような心づもりでおりました。「本鑑定が実施できなかったからしっかりと鑑定できない」と,鑑定請求の際に主張してきたこともあって,完成された意見書が出来上がると齟齬が生じるとも考えておりました。実際,鑑定時間の制約等から,実施すべき検査も聴き取りも限られ,しっかりした鑑定書(鑑定意見書)はできませんが。ただ,体裁を意見書のように纏めることはできます。分厚い意見書にはなりませんが,体裁を整えることで進めさせていきたいと考えます(証言要旨であっても,検査結果等は,当然載せるつもりでおりました)。」などと記載したメールを送信した。 E弁護士は,これに対し,「鑑定書(意見書)につきまして,面会時間等が制限される厳しい状況ではあるかと思いますが,検査や面接時間の不足のために十分な鑑定はできなかったという前提で鑑定意見書の作成をお願いできればと考えております。」などと記載したメールを送信した。 キカ記載のメールのやり取りの後,同月10日から同月13日にかけて,原告と被告との間で,以下の内容のメールのやり取りがなされた(甲5)。 被告は,「「鑑定意見書」の意味【補足】」との件名で,「私たちが,先生にご依頼申し上げたのも,私的「鑑定」であって,「証言」ではありません。仮に,検査や面接時間が不十分だったとしても,「鑑定書」を仕上げて頂かなければ,先生に何をお願いしたのか,分からなくなってしまいます。そして,「鑑定」とは,先生が行われた検査の記録,さらにはDさんとお母さんの面接の記録,つまりは,「客観的な事実」に基づいて,Dさんが自閉症スペクロラム障害で したのか,分からなくなってしまいます。そして,「鑑定」とは,先生が行われた検査の記録,さらにはDさんとお母さんの面接の記録,つまりは,「客観的な事実」に基づいて,Dさんが自閉症スペクロラム障害であり,具体的にはどのような問題に困難を来しているのか,その障害から回復する余地はあるのか,そのためには今後何が必要なのか,などについて,専門家の立場か ら,説得的に論じて頂くものを意味します。」,「10月初めに先生がDさんとの面会を予定されたとき,今集中して頂く必要があるのは,「書面としての」鑑定書(鑑定意見書)の作成であるとお伝えし,ご了解を得たはずです。ところが,「証言要旨」を文書化したものを「意見書」と考えておられるとすると,そもそも鑑定(すなわち,鑑定書の作成)をお願いした趣旨と大きく異なってきますので,どうか誤解なきようお願いします。先生にお願いしたいのは,鑑定書という書面の作成であって,先生の証言は,先生の鑑定書を証拠として採用するための補助的手続にすぎない,ということを,どうかご理解下さるようお願いします。」などと記載したメールを送信した。 原告は,正式な鑑定書の作成をすることは了解していないこと等を指摘した。 被告は,これに対し,鑑定書を仕上げて提出してもらうことが必要である旨繰り返し記載したメールを送信した。 その後,原告は,被告に対する不信感を示すとともに,書面作成を停止し,証言を辞退することを表明した。 かかる表明を受けて,被告は,10月12日,「たったひとつの解決法」として,11月4日の期日に原告の尋問をすること,その前提として,10月27日までに,Dに関する「鑑定結果について,客観的な裏付けがあり,かつ,文献的にも根拠があること(つまり,先生の単に主 法」として,11月4日の期日に原告の尋問をすること,その前提として,10月27日までに,Dに関する「鑑定結果について,客観的な裏付けがあり,かつ,文献的にも根拠があること(つまり,先生の単に主観的な意見ではないこと)を記した(そして,検察官,裁判官の批判的な尋問に耐えて証拠として採用される)鑑定書」を作成することを提案するメールを送信した。 原告は,この提案について,10月13日,「再考に値する」とした上で,10個の条件を付けて,それに対する返答により提案を受けるか判断すると返信した。条件の中には,「ハードな条件(一番は,精神的 な障壁です。あとは,27日までの期限で半分以上が出張で詰まっているという時間的切迫)で出来上がった意見書に対して,評価的なことを言ったり態度で示したりするのは,控えてください。」というもの(以下「本件条件」という。)があった。また,原告は,以後はE弁護士に連絡役になるよう求めた。 ク上記のメールを受けて,E弁護士は,原告に対し,同メールに対する被告及びE弁護士の回答を伝えるメールを送信した。本件条件については,被告の回答として,「了解しました」と記載されている。 原告は,同メールに対し,鑑定意見書を仕上げる旨表明し,10月16日にDと面会するための日帰り分の交通費を支払うよう依頼するメールをし,E弁護士は,同依頼を承知する旨返信した。(甲5) 8月17日の合意について8月17日に原告がDとの面接をすることを内容とする合意が成立したことについては当事者間に争いがないが,その面接の位置づけについて争いがあるため,以下検討する。 ア上記の認定事実及び証拠(甲2,14,原告本人,被告本人)によれば,原告と被告との間では,8月上旬までは, 者間に争いがないが,その面接の位置づけについて争いがあるため,以下検討する。 ア上記の認定事実及び証拠(甲2,14,原告本人,被告本人)によれば,原告と被告との間では,8月上旬までは,本件刑事事件において,原告を鑑定人とする鑑定が裁判所に採用されることを前提にして,原告によるDとの面接の方法等について交渉がなされていたところ,8月8日に裁判所が鑑定を採用しない旨の判断をしたことを踏まえて,同月11日から12日にかけて,原被告間で,控訴審での裁判所による鑑定を目指しながら私的鑑定を継続する方針で原告がDと面接を継続することとされ,その際,面接料に加え,意見書作成費用に関するやり取りがあったこと,被告は,同月17日に原告及び本件弁護団メーリングリスト宛てに,原告に対して意見書の作成及び本件刑事裁判における証言まで求めるか否かは留保した上で,Dに対する面接を継続することを依頼するメールを送信したこ と,これを受けて,原告は控訴審での裁判所による鑑定も見据えた私的鑑定を継続していく意思を有していたこと(原告本人),同月18日には,本件弁護団は原告に私的鑑定として面接を続けてもらうことを決定し,これを検察官にも伝えたことが認められる。 イかかる事実経過からすれば,被告は,当初から本件刑事事件に原告の関与を求め,原告もそれに応じてきたといえるのであり,裁判所の判断によりその関与の形態の変化はあったものの,原被告間において,原告によるDとの面接が,本件刑事事件とは無関係に行われ得ると認識されていたとは考え難い。 ウこの点,被告は,8月17日における合意内容は鑑定のための面接とは区別される治療のための面接であると主張する。 しかし,8月17日における被告のメールは,本件弁護団としては本件刑事事件 この点,被告は,8月17日における合意内容は鑑定のための面接とは区別される治療のための面接であると主張する。 しかし,8月17日における被告のメールは,本件弁護団としては本件刑事事件において原告に私的鑑定を依頼してそれを証拠申請する方針であったところ,Dの親族がそのことに消極的な姿勢を示していることから,この時点では原告に引き続きの面接の依頼のみを依頼する趣旨で記載されたものと解され,Dの親族等の調整がつくなどすれば,原告による面接結果を本件刑事事件における証拠にすることが当然想定されているものであり,同メール中の「刑事裁判の証拠にしないこともあり得る」という表現は,この趣旨を表したものと解される。また,同メールを受けた原告も,自分が依頼されていることについて,「弁護人依頼の私的鑑定」ととらえていることが窺われ(甲8),原告及び被告は,同日時点において,原告とDとの面接を本件刑事事件と無関係の治療行為ととらえているとはいえない。そして,被告としても,同月12日時点において本件刑事事件における私的鑑定としての面接の継続の方針を確認しておきながら,同月17日に突如,本件刑事事件と無関係の治療行為を依頼するとは考え難いのであって,被告の同主張は採用できない。 エ以上より,8月17日の合意(以下「本件契約」という。)は,本件刑事事件における私的鑑定の一環として,原告がDとの面接を行うとの内容であったと認められる。そして,上記によれば,費用に関しては,交通費・宿泊費の実費及び面接費用15万円に消費税8パーセントを加えた額の支払合意があったと認められる。 8月18日の合意についてア被告は,8月18日,治療のための面接に加えて,原告が本件刑事事件における鑑定のためにDを面接すること,鑑定書 えた額の支払合意があったと認められる。 8月18日の合意についてア被告は,8月18日,治療のための面接に加えて,原告が本件刑事事件における鑑定のためにDを面接すること,鑑定書を作成すること及び証人として証言することが合意されたと主張する。 イしかし,上記エ記載のとおり,同月17日時点において,原告と被告との間で,既に本件刑事事件の私的鑑定としての面接の合意がされているといえ,同月18日に新たな合意がなされたとは認められない。 なお,被告は,E弁護士が同日に本件弁護団メーリングリストに送信した,本件刑事事件の検察官に対して私的鑑定として面接を続けてもらうことにした旨伝えたことを報告するメールが,被告が同日原告に対して送信したメールに引用されていた事実(乙25の1)を指摘して,同日における新たな契約の成立を主張するが,同メールは,E弁護士に対する返信のメールが原告にも参考送付されているものにすぎないし,その文面からも原告に対して新たな契約の締結を申し込んでいるものとは認められないから,被告の同主張は採用できない。 10月13日の合意についてア原告と被告及びE弁護士の間における10月10日から同月13日までのメールのやり取り(上記において,原告と被告との間で,同月13日までに,本件条件を付した上で,原告が同月27日までに鑑定書を作成する旨の合意がなされたことについて当事者間に争いはない。なお,この合意について,原告は同月12日に合意ができた旨主張している が,上記のメールのやり取りは一連のものであるが,最終的に合意が成立したのは同月13日と認められる。 イまた,上記の認定事実によれば,原告は,8月17日以降,意見書等の書面の作成や証人尋問まで求められる のやり取りは一連のものであるが,最終的に合意が成立したのは同月13日と認められる。 イまた,上記の認定事実によれば,原告は,8月17日以降,意見書等の書面の作成や証人尋問まで求められるか否かについて留保された状態でDと面接を行い,その後,原告と被告及び本件弁護団の弁護士との間で,鑑定結果をどのような形で証拠化するかについてやり取りがなされ,原告の鑑定結果の証拠化についての最終的な合意として,上記ア記載の合意がなされている。かかる経緯からすれば,上記アの合意は,本件契約の存在を前提に,同契約に基づいて原告が履行する債務の内容を追加ないし明確化するものとしてなされたものというべきであって,同契約と離れて別個独立の契約関係を発生させるなどするものと評価することはできない。 ウ 10月13日の合意に当たっては,原告と被告との間で鑑定書作成の費用については取り決めがなされていない。しかし,同日の合意は本件契約に基づくものであるから,この時点での契約内容を検討すると,原被告間で費用についてやり取りがなされたのは,8月11日から12日にかけてのメールの中で,被告から意見書作成の場合の支払額の目途を尋ねられた原告が「コンパクトに纏めて(数十枚),10万円程度」と答えたのみであり,その後これを変更する旨のやり取りがあったとは認められないから,費用については上記の支払合意があったと認められる。 交通費の合意について上記のとおり,原告は,10月13日,E弁護士に対して,同月16日にDと面会するための日帰り分の交通費(以下「本件交通費」という。)を支払うよう依頼するメールを送信し,E弁護士はこれを承諾している。 そして,原告がメールの相手方を被告からE弁護士に変更することを要請し,E,それに引き続き本件交 本件交通費」という。)を支払うよう依頼するメールを送信し,E弁護士はこれを承諾している。 そして,原告がメールの相手方を被告からE弁護士に変更することを要請し,E,それに引き続き本件交通費に関するやり取りがなされたこと(甲5), して原告が求めた面会に関する費用であること(甲5),本件契約は当初より交通費実費を被告が原告に支払う内容であり(上記エ参照),本件交通費は,その一部であると認められることからすれば,本件交通費の支払についての合意に関して,E弁護士は,被告の履行補助者とみるべきであり,同合意は原告と被告との間で締結されたと認められる。 したがって,原被告間において,10月13日,被告が原告に対し本件交通費を支払う合意が成立したと認められる。 以上より,原被告間においては,8月17日に本件契約が成立し,10月13日に原告の債務として鑑定書を作成することが追加ないし明確化され,同日,本件交通費の支払合意がなされたと認められる。 原被告間で締結された契約の当事者は誰か)について被告は,被告はDの代理人にすぎず,原被告間で締結された契約の効果はDに帰属し,同契約の当事者は原告とDであるとし,被告がDから代理権の授与を受けた上で自己が代理人であることを原告に示した(顕名をした)上で契約を締結した旨,仮に契約時点においてDからの代理権の授与の事実がなかったとしてもDが追認した旨を主張する。また,本件交通費の支払合意の当事者は原告とDの母親であると主張する。そこで以下,本件契約及び10月13日における本件交通費の支払合意について,これらの主張が認められるか検討する。 なお,被告は,8月17日の合意の際,被告が,Dに意思確認をすれば同意をするであろうと考えていたことを理由に合意の効果 3日における本件交通費の支払合意について,これらの主張が認められるか検討する。 なお,被告は,8月17日の合意の際,被告が,Dに意思確認をすれば同意をするであろうと考えていたことを理由に合意の効果がDに帰属するとも主張するが,そのような被告の内心のみによって契約の帰属先が変わることはありえず,同主張は失当である。 本件契約についてア代理権の授与について 上述のとおり,本件契約が締結されたのは8月17日であり,その内容は,原告が私的鑑定の一環としてDとの面接を継続するというもので あり,同契約に至る経緯として,原告及び被告が,当初本件刑事事件において原告を鑑定人とする裁判所による鑑定を目指していたが,同月8日に裁判所が鑑定を採用しない旨の判断を示したことを踏まえて,原告と被告との間で,同月11日から12日にかけてその後の方針が検討されたことが認められる。 そして,証拠(甲18)によれば,8月8日から同月17日までの間に,被告をはじめ本件弁護団所属の弁護士はDと接見をしていないことが認められ,とすれば,被告及び本件弁護団が,裁判所による鑑定から私的鑑定への変更という大幅な弁護方針の転換をし,被告が原告に私的鑑定としての面接の継続を依頼するに当たって,Dの意思が介在していないことは明らかである。したがって,被告が,本件契約に先立って,Dから代理権の授与を受けた事実は認められない。また,本件に顕れた全証拠によっても,Dが本件契約を被告が代理して行うことについて追認した事実は認めがたい。 イ顕名についてまた,上記認定事実によれば,本件契約に関する8月17日の被告のメールにおいて,被告がDの代理人であることを示している表現はなく,同月11日及び12日のメールのや イ顕名についてまた,上記認定事実によれば,本件契約に関する8月17日の被告のメールにおいて,被告がDの代理人であることを示している表現はなく,同月11日及び12日のメールのやり取りにおいても,被告から,被告がDの代理人であることが示されたとは認められない。 この点,被告は,8月17日の被告のメールにおける,「結論から言えば,Dさんに対する治療(とそのための診断)が必要なことに異存はないので,A先生に引き続き面接をお願いしたい,とのことです。」との部分から,依頼者が被告でないことは明らかであると主張する。しかし,被告が原告と契約するにあたって,Dないしその親族の意向を確認したり,その了承が条件であったとしても,直ちに本件契約の依頼者が被告でないことになるわけではないから,同部分によって依頼者が被告でないことは明 らかとはいえず,同部分を含め,同メール全体によっても依頼者がDであると明示されているとはいえず(甲2),かかる表現をもって,顕名があったということはできない。 ウ小括以上より,本件契約においては,代理権の授与及び顕名のいずれの事実も認められないため,本件契約の効果がDに帰属するとはいえない。 なお,被告は,8月18日及び10月13日に,8月17日とは別個独立の合意が成立していることを前提に,両日の合意の効果がDに帰属する旨主張するが,上記1記載のとおり,両日において本件契約と離れて別個独立の契約関係を発生させるなどする合意が成立したとは認められないため,被告の同主張は前提を欠き採用できない。 本件交通費の支払合意について本件交通費の支払合意については,その代理権の授与,顕名等,Dの母親が契約の当事者になることを基礎づける事実について 同主張は前提を欠き採用できない。 本件交通費の支払合意について本件交通費の支払合意については,その代理権の授与,顕名等,Dの母親が契約の当事者になることを基礎づける事実について被告から具体的な主張がない。また,本件交通費の支払は本件契約の履行の一環であるといえ,その当事者は本件契約と同一であると考えるべきである。また,Dの母親は,原告の行う面接等に関する資金を出捐しているとは認められるものの,このことのみによって,契約の当事者ということはできず,その他に契約の当事者とみるべき事情も存在しない。 したがって,本件交通費の支払合意の効果がDないしその母親に帰属するとはいえない。 契約当事者について以上より,本件契約及び本件交通費の支払合意のいずれもその効果はD及びその母親には帰属せず,いずれについても,その契約当事者は原告と被告であると認められる。 原告による債務の履行の有無)について 本件契約において原告が負う債務は,本件刑事事件における私的鑑定としてDと面接をすること及び鑑定書を作成することであるため,以下両債務の履行の有無について検討する。 面接について証拠(甲12,乙2の5)によれば,原告は,本件刑事事件における私的鑑定として,20回(本件契約締結以後の期間において15回)Dと面接をしたことが認められる。 被告は,これらの面接は,鑑定に資するものではなく,債務の履行があったとはいえないと主張する。しかし,上記面接が鑑定として行われたことは証拠(甲12)上明らかである一方,被告は,原告による面接が債務の履行といえないことを事実に基づいて具体的に主張しておらず,同主張は採用できない。 鑑定書の作成についてア ことは証拠(甲12)上明らかである一方,被告は,原告による面接が債務の履行といえないことを事実に基づいて具体的に主張しておらず,同主張は採用できない。 鑑定書の作成についてア前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 原告は,10月26日,E弁護士に対して,本件鑑定書初版のデータを添付したメールを送信した(甲9の1)。 同月27日,原告とE弁護士は,Dの意見を確認した上で内容を再検討することとし,E弁護士は,同月28日にDと接見した(甲9の1)。 E弁護士と原告は,同月29日,打合せを行い,E弁護士が原告に対してDが削除を希望する部分を伝えるなどした。原告はその場で,内容の訂正はしないが,弁護士が誤字脱字等を修正することを前提とした鑑定書を作成し,E弁護士に署名捺印をした1ページ目を交付した(原告本人)。そこで作成された鑑定書は,Dからの修正の希望があった箇所のうち,半分程度しか修正をしていなかった(乙9,原告本人)。 原告は,同日,E弁護士に対して,上記打合せ時に作成した鑑定書の データを添付したメールを送信し,E弁護士が固有名詞に係る微修正をして本件鑑定書修正版が作成された(甲9の1,原告本人)。 被告は,E打合せの報告を受け,同日,E弁護士に対し,「最終的には,明日,お母さんのご意見を踏まえた上で,Dさんと相談して,①A先生の情状鑑定書を証拠請求するのか,②A先生の証人尋問を実施するのか,を決めることになります。」,「A先生の情状鑑定書や証人尋問を行うことは,Dさんの弁護にとって,自殺行為に等しい暴挙だと思います。」などと記載したメールを送信した(乙8)。 E弁護士は,同月30日,Dと接 。」,「A先生の情状鑑定書や証人尋問を行うことは,Dさんの弁護にとって,自殺行為に等しい暴挙だと思います。」などと記載したメールを送信した(乙8)。 E弁護士は,同月30日,Dと接見し,本件鑑定書修正版を示したが,Dは鑑定書の提出について否定的であった(原告本人,被告本人)。 原告は,同日,E弁護士に対して,Dから修正の希望があった箇所をすべて希望通りに修正してもよい旨メールで伝えた(原告本人)。 E弁護士は,同日深夜頃,原告に電話で,すべての作業が終わったので費用を請求するよう要請し,原告は,同月31日午前1時42分頃,メールでE弁護士に対し,鑑定書作成費を含む,本件契約に関する費用合計37万3784円の支払を請求した(甲9の2,原告本人)。 原告は,同月30日,Dに対して,「明日弁護士から説得・誘導があると思いますが,お母さんや私を信じるかどちらかを選択してください。 午前でDさんが証言してほしいと答えると,C弁護士は午後に説得に行くと思います。その時は面会拒否もできますし,一人だけ解任届けを出すこともできます。」「もうC弁護士に利用されないでくださいね。」などと記載された電報を送った(乙5)。 E弁護士は,同日,Dと接見をしたところ,Dから,上記電報を示された(原告本人)。 E弁護士は,同日,原告に対して,原告の作成した鑑定書を証拠とし て提出しないこと及び原告の証人尋問を実施しないことを連絡した(乙24,被告本人)。また,上記記載の原告の費用請求に対して,Dの母親から了解が得られた旨返信した(甲9の2)。 イ以下,原告が鑑定書を作成する債務を履行したといえるか検討する。 原告は,10月29日,E弁護士との打合せの場で,本件鑑定書 の母親から了解が得られた旨返信した(甲9の2)。 イ以下,原告が鑑定書を作成する債務を履行したといえるか検討する。 原告は,10月29日,E弁護士との打合せの場で,本件鑑定書修正単にE弁護士が誤字脱字等を修正したものであるから,原告は,同時点において,本件鑑定書修正版と同内容の鑑定書を作成していたと認められる。そして,本件鑑定書修正版は,全55ページにわたり,Dとの面接の内容,心理検査の結果,本件についての考察等が記載されており,その体裁も含めて,一応,鑑定書として完成したものといい得るものである。 もっとも,原告自身,本件鑑定書修正版は,通常の鑑定の際のものに比べれば量的にも質的にも足りない旨述べている(原告本人)。しかし,上記1の認定事実のとおり,私的鑑定という方向性が決められた8月11日及び同月12日に原被告間でなされたメールのやり取りにおいて被告が「満足のいく時間を掛けた鑑定はそもそも不可能」と記載し,原告が「しっかりとした鑑定の5分の1くらいやれるでしょうか」と記載するなど,本件契約においては,時間的,距離的制約などから十分な鑑定ができないことが前提とされていた。そして,本件契約締結以後,被告ないし本件弁護団が想定していた書面を原告が作成していなかったことや,本来予定されていた証人尋問期日の二度にわたる延期等を経て,10月13日,最終的に本件条件を付した上,期限を同月27日として,原告が鑑定書を作成することが合意されている。 刑事事件における私的鑑定書に求められる水準は,個々の事案の内容や当事者の意向等によって異なり得るものであるところ,上記の事情か らすれば,原告の負う債務は,限られた時間内でできる限りの鑑定書を作成すべきというものだったのであり,この意味で 案の内容や当事者の意向等によって異なり得るものであるところ,上記の事情か らすれば,原告の負う債務は,限られた時間内でできる限りの鑑定書を作成すべきというものだったのであり,この意味で,本件鑑定書修正版は,本件における合意内容に沿った水準の鑑定書であるといえる。 10月29日の時点で本件鑑定書修正版について,それ以上の内容の修正をしないものと考えていたと認められる。 なお,原告は10月30日にE弁護士に対し,本件鑑定書修正版を更に修正する意向を示している(上記が,それは,鑑定書が全く証拠提出されなくなることを避けるため,その内容をDないし本件弁護団の希望に沿うものに変更する意向を示したものにすぎないから(原告本人),鑑定書が完成していないことを前提とするものでもなければ,鑑定書が完成していないことを示すものでもない。 さらに,被告が同月29日にE弁護士に対して送ったメールでは,原告の作成した鑑定書を証拠として提出し得ることを前提とする表現がされているといえること,E弁護士が,同月31日に,原告からの費用請求に対して,了承する返信をしたことは,被告及びE弁護士において,当該時点で本件鑑定書修正版が完成したと評価するに値するものと認識していたことを示す事情である。 以上によれば,原告は10月29日に本件鑑定書修正版の基となる鑑定書を作成し,E弁護士に署名捺印をした1ページ目を交付したことをもって鑑定書を作成する債務を履行したというべきである。 なお,結果として原告が作成した鑑定書は,本件刑事事件において証拠として提出されていないが,鑑定書を完成させることと,完成した鑑定書を証拠として提出することは無関係である。また,被告は,本件鑑定書修正版が証拠提出され が作成した鑑定書は,本件刑事事件において証拠として提出されていないが,鑑定書を完成させることと,完成した鑑定書を証拠として提出することは無関係である。また,被告は,本件鑑定書修正版が証拠提出されなかった経緯として,原告が10月30日にDに電報を送り,これにDが激怒したことや,同電報を見たDの母親が 費用の支払を拒んだことを指摘するが,上記のとおり,10月29日に作成された本件鑑定書修正版の基となる鑑定書を作成し,E弁護士に署名捺印をした1ページ目を交付したことをもって原告は債務を履行したというべきであり,その後の事情が,鑑定書が完成したとの評価を否定するものではない。 被告は,本件鑑定書初版には,訂正を要すべき点が多くあり,本件鑑定書修正版においても,Dの希望した修正箇所を半分程度しか修正しなかった点を指摘して鑑定書は未完成であると主張する。しかし,鑑定書の内容については,作成者がその責任において決定するものであり,原告の作成する鑑定書において,鑑定の対象者であるDの意見であったとしても,それを採用するか否かについては原告に決定権があるというべきであり,被告の主張は採用できない。 また,被告は,原告が鑑定書の作成に着手したのが10月13日以降であることを指摘し,鑑定書は未完成であると主張する。しかし,同主張は,8月18日の時点で原告が鑑定書作成債務を負っていたことを前提とするものであるところ,前提事実,上記及び証拠(甲5)によれば,原告は10月13日に鑑定書の作成を合意する以前においては,鑑定書と呼び得る文書を作成することを予定していなかったと認められ,かかる原告の認識も前提とした上で同日の合意はなされたのであって,被告の上記主張は前提を欠くものである。 さらに,被告は,同月2 び得る文書を作成することを予定していなかったと認められ,かかる原告の認識も前提とした上で同日の合意はなされたのであって,被告の上記主張は前提を欠くものである。 さらに,被告は,同月29日に原告とE弁護士が打合せをした際,11月4日の期日における証人尋問に向けた打合せがなされていないことは,鑑定書が完成していなかったからである旨主張する。しかし,証人尋問に向けた打合せがなされていないことが,必ずしも鑑定書が未完成だったことを示す事情であるとはいえず,被告の上記主張も採用できない。 面接料について上記のとおり,原告は本件契約上の債務を履行しているといえるため,約定どおり,被告に対して15万円の面接料の支払を請求できる。 なお,本件契約においては,消費税8パーセントの支払合意もあったが,原告は割引であるとして請求していない。 鑑定書作成費ア鑑定書作成費用については,上記めて(数十枚),10万円程度」との支払合意があったのみである。 イ原告は,当初想定されていたものより詳細な鑑定書作成が求められ,そのような内容の鑑定書を作成させ,原告からの20万円の請求をE弁護士が了承したとして,20万円の支払を求めている。 しかし,原告は他の刑事事件においては,100ページ前後の鑑定書を作成して,その費用を30万円から35万円としているとのことであり(原告本人),本件鑑定書修正版がそれと同等の鑑定書でないことは原告自身認めるところである。もっとも,通常の場合に比べた本件鑑定書修正版の鑑定書としての質や,適正な費用は証拠上明らかではない。 また,E弁護士が原告からの鑑定書作成費用20万円の請求を了承している事実も,その了承前後のやり取りに照 に比べた本件鑑定書修正版の鑑定書としての質や,適正な費用は証拠上明らかではない。 また,E弁護士が原告からの鑑定書作成費用20万円の請求を了承している事実も,その了承前後のやり取りに照らすと,原告と被告との関係で同費用に関する合意の存在を推認するものであるということはできない。 以上からすれば,原被告間には,鑑定書作成費用について,上記アに記載した以上の取り決めは認められず,本件鑑定書修正版のページ数が,原告が「コンパクト」にまとめた場合として示した数十枚の範囲にあることも踏まえると,原告が本件契約における鑑定書作成の対価として被告に対して請求できるのは10万円であると認めるのが相当である。 交通費 証拠(甲9の2,12の2)によれば,原告主張のとおりの交通費が発生したと認められるから,原告は被告に対して,交通費実費として,2万3784円を請求できる。 小括以上より,原告が被告に対して請求できる金額は,合計27万3784円である。 5 結論以上によれば,原告の請求は,27万3784円及びこれに対する平成26年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を認める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官武藤真紀子 裁判官島田尚人 裁判官石黒史岳

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