裁判所
昭和41年6月24日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 広島高等裁判所 松江支部 昭和36(ネ)90
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主文 原判決中、上告人敗訴の部分を破棄し、右部分につき、本件を広島高等裁判所松江支部に差し戻す。理由 上告代理人多田紀の上告理由第一点および第三点について。原告(上告人)の本訴請求は、原告は訴外Dに対し本件軽二輪自動車を代金一八万五、〇〇〇円、分割払の約定で売り渡し、これをDに引き渡したが、代金完済までは、物件の所有権を売主に留保しておいたものであるところ、右訴外人は、その代金完済前にこれを被告(被上告人)に質入した。被告は、右物件の所有権が未だ原告に留保されていることを知つてこれを質受したものでありながら、あえてこれを善意の第三者に売却し、もつて原告をして右物件の所有権を喪失せしめ、右物件の時価である金一二万円相当の損害を蒙らしめた。よつて、原告は被告に対し右損害金一二万円とこれに対する遅延損害金の支払を求めるというのである。原判決は、原告の前記主張事実のうち、原告の受けた損害額の点を除いてこれを認め、損害額につき、「本件割賦売買における所有権留保は、法律的には停止条件付の所有権移転ということができる。然し事を実質的にみるならば、所有は買主に移り、ただ売買物件により売買代金を優先的に担保させる意味を持つものということができる。したがつて、代金完済前第三者たる控訴人(被告)が右軽自動車を処分したことにより売主たる被控訴人(原告)の蒙る損害は、担保権の毀損された場合と同じく、処分時における自動車価額とそれによつて担保される未払代金とのいずれか小なるものの範囲に止まる、ということができる(右の如き場合においては、買主が他に資産を有しているかどうかは、損害の有無および額と関係がない。)。」と判示した上、未払代金額が二万五、六五〇円である旨を認定して、右金額をもつて原告が被告の本件物件の処分 場合においては、買主が他に資産を有しているかどうかは、損害の有無および額と関係がない。)。 おける自動車価額とそれによつて担保される未払代金とのいずれか小なるものの範囲に止まる、ということができる(右の如き場合においては、買主が他に資産を有しているかどうかは、損害の有無および額と関係がない。)。」と判示した上、未払代金額が二万五、六五〇円である旨を認定して、右金額をもつて原告が被告の本件物件の処分 場合においては、買主が他に資産を有しているかどうかは、損害の有無および額と関係がない。)。」と判示した上、未払代金額が二万五、六五〇円である旨を認定して、右金額をもつて原告が被告の本件物件の処分により蒙つた損害額である旨判示したものであるこ- 1 -とは判文上明らかである。しかしながら、物件の所有者がその所有権を喪失せしめられることによつて蒙る損害額は、物件喪失時における物件の時価であるのが原則であるから、何らかの事情により、右損害額が減額されるべきであるならば、その十分な理由を示す必要があるところ、かりに原判決説示の理由が結論として損害額減額の理由に当るとしても、原判決はそのいわゆる担保の内容を知るに足るべき原告と訴外D間の契約内容を判示していないから、これによつては、損害額減額の理由の説示として不備といわざるをえない。原判決はこの点において破棄を免れず、論旨は理由がある。よつて、その余の上告理由に対する判断を省略し、民訴法四〇七条に従い、本件を原審広島高等裁判所松江支部に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。裁判官山田作之助は、退官につき評議に関与しない。最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官奥野健一裁判官草鹿浅之介裁判官城戸芳彦裁判官石田和外- 2 -
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