令和6(わ)1006 殺人、死体遺棄

裁判年月日・裁判所
令和7年7月11日 横浜地方裁判所
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判決文本文3,368 文字)

主文 1 被告人Xを懲役13年に処する。 被告人Xに対し、未決勾留日数中250日をその刑に算入する。 2 被告人Yを懲役15年に処する。 被告人Yに対し、未決勾留日数中250日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人両名は、A、B及びCと共謀の上第1 令和5年12月15日午後8時45分頃から同月16日午前2時35分頃までの間に、東京都大田区(住所省略)A方居室内において、D(当時46歳)に対し、殺意をもって、睡眠薬を混入させたコーヒー飲料を飲ませて眠らせた上、Dの頸部を結束バンドで絞め付け、よって、その頃、同所において、Dを絞頸による窒息により死亡させて殺害した。 第2 その頃から同日午前4時15分頃までの間に、Dの死体をスーツケースに入れて自動車に積載するなどして同所から東京都大田区(住所省略)付近の多摩川河川敷まで運搬した上、同スーツケースを多摩川に投棄し、もって死体を遺棄した。 (量刑の理由) 1 本件は、被告人両名が、A(被告人Xの元妻・B及びCの母親)、B(被告人XとAの娘・本件当時の被告人Yの交際相手)及びC(被告人XとAの息子・Bの兄)と共謀の上、Bの元交際相手であり動画配信者の被害者を殺害しようと考え、被害者をA方に呼び出して睡眠薬で眠らせ、結束バンドで首を絞めて殺害し、死体をスーツケースに入れて多摩川に遺棄したという事案である。 2 本件犯行全体についてみると、本件犯行においては、共犯者らが知恵を出し合い、少なくとも犯行時点までに、前記のような殺害方法、死体遺棄の方法、役割分担等を事前に話し合い、犯行に必要なスーツケース等の道具を買いそろえるな どの準備をしている。このような話合いや準備は、被害者の死亡結果発生の危険性を高めるものであり、この点において本件は悪質 等を事前に話し合い、犯行に必要なスーツケース等の道具を買いそろえるな どの準備をしている。このような話合いや準備は、被害者の死亡結果発生の危険性を高めるものであり、この点において本件は悪質性の高い事案といえる。 本件の経緯をみると、被害者のBに対する脅迫行為、Bとの交際時に生じた金銭トラブル、BやBの家族を中傷するような内容の配信等における被害者の言動等が、Bの生活環境や精神状態に影響を与え、そのことが被告人らに本件犯行を決意させる原因の一端となったことは否定できない。しかし、Bと被害者の交際時における金銭トラブルは、必ずしもどちらか一方に非があるとはいえない交際当事者同士の問題であるし、被害者もBの求める金額の一部を弁済するなどの行動もとっていた。また、配信については、Bは、被害者が配信者であることや配信の内容等についても知った上で交際していたという経緯がある。さらに、本件犯行の前頃には、被害者は、BやBの家族にはこれ以上関わらない旨の意思を表明していた。このような事情も併せて考えると、本件の経緯において、被害者に落ち度があったとまでは評価できない。 以上を前提として同種事案の量刑傾向も踏まえて考えると、前科のない人物が本件犯行に共同正犯として関与した場合、その刑期は、最短でも懲役10年前後を下回らないといえるが、他方で、最長でも有期懲役刑の上限を大きく超えるような重いものとまではいえない。 3 そこで、そのような刑期の幅の大枠を踏まえ、以下、被告人らの個別事情について更に検討する。 (1) 被告人Xは、本件に至る経緯において、他の共犯者に対し、犯行をやめるよう直前まで働き掛けるなど、共犯者らが殺害行為に及ぼうとすることにブレーキをかけようと何度も試みていた。また、被告人Xは、Bを含む他の共犯者とは離れて暮らしていたと 他の共犯者に対し、犯行をやめるよう直前まで働き掛けるなど、共犯者らが殺害行為に及ぼうとすることにブレーキをかけようと何度も試みていた。また、被告人Xは、Bを含む他の共犯者とは離れて暮らしていたところ、被害者の配信等における言動によってBが精神的に追い詰められ、自殺未遂をしていること、警察や弁護士に相談するなど他の手段は既に講じており、被害者との話合いも難しいため、Bを守るためには被害者を殺害するしかない旨をB及び被告人Yから聞かされ、本件犯行に加わることになった。 被告人Xが被告人Yらから聞いた話の内容(Bの精神状態)からすれば、被告人Xが我が子を思う親心から本件犯行に加わったという心情自体は理解できる。さらに、結果的・客観的にみれば、被告人Xが被害者の殺害に向けたBやAの行動に巻き込まれたという側面があったことも否定できない。このような事情は、被告人Xの量刑を考える上で、被告人Xにとって有利に働く事情と考えられる。 他方で、被告人Xは、被害者を殺害するという話合いのなかで、犯行方法等についてアイデアを提供し、犯行当日には、被害者を結束バンドで拘束したり、死体を運搬したりしている。また、被告人Xは、本件犯行に関わらないことを選択できたにもかかわらず、結局のところ、自らの意思で被害者の殺害に向けた共犯者らの行動に同調し、被害者を死亡させた直接の原因行為である絞首行為についても自らの意思で行っており、その意思決定には厳しい非難が加えられるべきである。 (2) 被告人Yは、犯行に必要な道具の準備を積極的に行ったほか、被告人Xと同様、被害者を結束バンドで拘束し、共犯者らと河川敷まで遺体を運んだ上、実際に川に入って死体を運搬・投棄するという重要な役割を積極的に担っている。また、被告人Xと比べると、被告人Yは、本件犯行を止めるような行 者を結束バンドで拘束し、共犯者らと河川敷まで遺体を運んだ上、実際に川に入って死体を運搬・投棄するという重要な役割を積極的に担っている。また、被告人Xと比べると、被告人Yは、本件犯行を止めるような行動には出ていない。 むしろ、被告人Yは、Bとともに、被告人Xを本件犯行に引き入れており、被告人Xが犯行の中止を進言した際も、被害者を殺すしかないなどと被告人Xを説得していたことからすれば、被告人Yの責任は被告人Xに比べて重い。なお、前述のとおり、被告人Xは、被害者の死亡の直接的な原因となった絞首行為を行っているが、これは、被害者を殺害するという目的に向けた一連の行動のなかで、被害者が目を覚ましたという偶然の事情によりとっさに行動しただけのものであり、そのような行為に及んだか否かの違いが被告人Yと被告人Xの責任の違いに大きく影響するものではない。 他方で、被告人Yは、被害者がBに対する脅迫事件で逮捕された頃からBと同居するようになったところ、Bからは、被害者について、前記被害者の言動に加 え、Bが被害者から性的被害を受けていたこと、被害者がBの性的写真を所持していること等の話を聞かされていた。また、被告人Yは、Bの自殺未遂や精神状態を目の当たりにしていたことも相まって、Bの意思を酌み、Bを守るため、本件犯行に関与するようになった。このような、交際相手を守りたいという心情自体は理解できる。しかし、このような事情を踏まえても、被告人Yの責任は被告人Xに比べて重く、その差は、刑期にして2年程度であると考えられる。 (3) そうすると、被告人両名には、いずれもその動機に理解できる点があること、本件の経緯全体としてみても被告人両名が主導的に被害者の殺害に向けて行動したとまではいえないこと等からすれば、共犯者全体の中で最も重い責任を負うべき立場に いずれもその動機に理解できる点があること、本件の経緯全体としてみても被告人両名が主導的に被害者の殺害に向けて行動したとまではいえないこと等からすれば、共犯者全体の中で最も重い責任を負うべき立場には位置付けらない。その上で、被告人Xには前記のとおり個別に酌むべき事情が認められること、被告人両名がそれぞれ反省と謝罪の意思を示していること等も考慮し、主文の刑が相当であると判断した。 (求刑被告人Xについて懲役16年、被告人Yについて懲役18年)令和7年7月11日横浜地方裁判所第5刑事部 裁判長裁判官佐藤卓生 裁判官岩見貴博 裁判官安藤幸歩

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