昭和36(オ)474 抵当権設定登記抹消請求

裁判年月日・裁判所
昭和38年8月8日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】- 1 - 主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人畠山国重、同中村生秀の上告理

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判決文本文2,731 文字)

- 1 - 主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人畠山国重、同中村生秀の上告理由第一点について。 論旨は訴外Dのためになされた本件建物の所有権移転請求権保全の仮登記及び所 有権取得の本登記に用いられた訴外E工業株式会社代表取締役F名義の委任状(甲 第三号証の二、同第四号証の三)は各偽造された文書であるから、民訴三二六条の 真正の推定を受くべきものではなく、又その推定は推定事実を疑うに足る程度の上 告人主張の反証を以つて覆しうるものであるに拘らず、原判決が右各委任状を真正 に成立したものであると推定したことは、経験則に違背し、法令の解釈を誤つたも のであると主張する。 しかし、原判決は右各委任状のF名下の印影が委任状に添付された印鑑証明書 (甲第二号証の二、同第四号証の二)の印影と対照し、Fの印顆により顕出された ものと認められるので、右各委任状は一応真正に成立したものと推定され、第一審 及原審証人D、同Gらの証言に照らして原審証人Fの証言は措信し難く、他に右推 定を覆えすに足る証拠のない旨を認定しているのであつて、その認定は首肯するに 足る。しかして、民訴三二六条の推定は法律上の推定であつて、この推定を覆えす ためには、単に推定事実が疑わしいという程度の反証では足らず、その事実の不存 在を確信せしめるに足る反対事実の証明を要すと解すべきであるから、原判決の右 認定には、所論のような違法はなく、論旨は独自の見解に立つて原判決を攻撃し又 は原審の裁量に属する証拠の取捨判断を非難するものであるから、採用できない。 同第二点について。 論旨は、右訴外会社が訴外Dに本件建物の売却を委ね、且つ、それに必要な委任 - 2 - 状を交付したのは、同 する証拠の取捨判断を非難するものであるから、採用できない。 同第二点について。 論旨は、右訴外会社が訴外Dに本件建物の売却を委ね、且つ、それに必要な委任 - 2 - 状を交付したのは、同会社の従業員に対する未払給料支払のため、本件建物売却の 代理権及びその代金の優先取得権を付与したに過ぎないのに、右建物の所有権を譲 渡したと認定した原判決には、法令の適用を誤つた違法があると主張するけれども、 原判決は、訴外Dは訴外会社サルベージ部門従業員代表者として、単に右会社から 本件建物売却の代理権を与えられたに過ぎないものではなく、本件建物を売却し、 その代金を右従業員に対する右会社の未払給料の支払に当てる趣旨で、右会社より 本件建物の提供を受け、一応その所有権を取得したもの、即ち、右のような制約の 下に右建物を信託的に譲り受けたものであることを認定しているのであつて、その 認定は挙示の証拠により首肯できないわけではない。論旨は、結局原審に委された 事実認定を争うに帰し、原判決には所論のような法令適用の違背はないから採用で きない。 同第三点について。 論旨は、原審判示において、本件権利関係は本登記のできる場合であることを認 めながら、仮登記もできる旨認定したことは、理由そご、理由不備の違法があると 主張するけれども、原判決は、訴外Dは前示の事情で、訴外会社より本件建物の所 有権を信託的に譲渡を受けたものであるから、同会社から交付された委任状、印鑑 証明書等により、訴外会社の所有名義から直接に買主に対して(Dへの移転登記を 省略して)所有権移転登記をしてもよいし、又事情によつては、一旦D名義に所有 権移転に関する仮登記もしくは本登記することを右会社より許されていた事実関係 を認定しているのであつて、その間、右認定に所論のような違法は認められない。 論旨は理由がな 事情によつては、一旦D名義に所有 権移転に関する仮登記もしくは本登記することを右会社より許されていた事実関係 を認定しているのであつて、その間、右認定に所論のような違法は認められない。 論旨は理由がない。 同第四点及第五点について。 論旨は、不動産登記法二条一号の仮登記は物権変動をすでに生じたが、登記申請 に必要な手続上の条件の具備しない場合のみに許され、同条二号の仮登記は物権変 - 3 - 動を未だ生じていない場合に、請求権を保全するために許さるるものであるところ、 本件権利関係は、すでに物権変動を生じたものであり、且つ、同条一号の条件に該 当しないものであるから、本登記をするはいざ知らず、同条一号及び二号のいずれ の仮登記も許されない場合であるに拘らず、原判決が、本件仮登記につき、元来右 同条一号の仮登記をしうる場合であつたのに、同条二号の仮登記をしたものである が、その仮登記は無効でなく、本登記の順位保全の効力を有すると判断したことは、 不動産登記法二条の解釈を誤まり、判例に違背すると主張する。 しかし、不動産の所有権を取得した者が所有権移転請求権保全の仮登記(不動産 登記法二条二号の仮登記)をしても、既に登記された以上その登記は順位保全の効 力を有するものと解すべきことは当裁判所の判例とするところである(昭和二八年 (オ)第一七八号同三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁)。右判 例を趣旨を異にする論旨引用の大正九年三月一二日の大審院判例は既に変更せられ たものと解すべきである。そして、論旨第二について説明したとおり、訴外Dは本 件建物の所有権を信託的に譲り受けた者であるから、同人が所有権移転請求権保全 の仮登記をしても有効といわざるをえない。本件の場合において、不動産登記法二 条一号の仮登記ができる場合にあたるかどうかを論じることは、判 権を信託的に譲り受けた者であるから、同人が所有権移転請求権保全 の仮登記をしても有効といわざるをえない。本件の場合において、不動産登記法二 条一号の仮登記ができる場合にあたるかどうかを論じることは、判決に影響のない 無用の論議である。原判決には、所論のような法令違反及び判例違反の違法はなく、 論旨はすべて理由がない。 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと おり判決する。 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 長 部 謹 吾 裁判官 入 江 俊 郎 裁判官 斎 藤 朔 郎

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