平成11(ワ)138 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成15年2月25日 和歌山地方裁判所
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判決文本文28,907 文字)

主文 1 被告らは,原告に対し,各自1058万8023円及びこれに対する平成11年3月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告らは,原告に対し,各自1932万7662円及びこれに対する平成11年3月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は,被告らの負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 被告A(1) 原告の被告Aに対する請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は,原告の負担とする。 3 被告B(1) 原告の被告Bに対する請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は,原告の負担とする。 4 被告C(1) 原告の被告Cに対する請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は,原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は,株式会社阪和銀行(以下「阪和銀行」という。)が,D寝装株式会社(以下「D寝装」という。)に対して,平成6年3月30日に実行した3000万円の貸付け(以下「本件融資」という。)につき,その当時,阪和銀行の常務取締役であった被告らが,常務会において,本件融資が回収見込みに欠ける延滞先であるD寝装に対する貸付けであることを認識しながら,十分な担保を徴求することなく本件融資の実行を承認した点に善管注意義務違反ないし忠実義務違反(以下「善管注意義務等違反」という。)があり,被告らは,阪和銀行に対し,商法266条1項5号に基づき,連帯して本件融資につき回収不能となった1932万7662円の損害賠償義務を負うべきであるところ,原告が,阪和銀行からこの損害賠償請求権を譲り 被告らは,阪和銀行に対し,商法266条1項5号に基づき,連帯して本件融資につき回収不能となった1932万7662円の損害賠償義務を負うべきであるところ,原告が,阪和銀行からこの損害賠償請求権を譲り受けたとして,被告らに対し,各自前記1932万7662円及びこれに対する被告らへの本件訴状の各送達の日の翌日である平成11年3月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 これに対し,被告らは,善管注意義務等違反の成立及び損害の発生を否認し,争っている。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠(甲3ないし5,8ないし10,13,15,18,20,21の1・2,22,23,29・31の各1・2,32ないし34,丙16,18,調査嘱託の結果,被告A,同B及び同C各本人)及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる。 (1) 当事者等原告は,預金保険制度の運営のため,預金保険法に基づき設立された特別法人であり,不良債権回収に関する業務として,債務者の財産調査や債権取立て等を行っている。 阪和銀行は,株式会社興紀相互銀行が,平成元年2月1日,普通銀行に転換するとともに商号変更したものであるが,平成8年11月21日,大蔵大臣(当時)により預金払出業務を除く業務停止命令を受け,事実上倒産し,平成9年6月27日の定時株主総会において,平成10年1月26日に株式会社紀伊預金管理銀行に対し営業を全部譲渡し,原告にその余の資産を譲渡するとともに,同日をもって,解散することを決議した。 被告Aは,昭和63年6月29日から平成7年7月5日まで,阪和銀行の審査部及び国際部を担当する常務取締役であった。 被告Bは,平成4年6月26日から平成10年1月25日まで,人事部及び経理部を担当する常務取締役であった。 被告Cは, 平成7年7月5日まで,阪和銀行の審査部及び国際部を担当する常務取締役であった。 被告Bは,平成4年6月26日から平成10年1月25日まで,人事部及び経理部を担当する常務取締役であった。 被告Cは,平成4年6月26日から平成7年6月29日まで,総務部,検査部及び事務部を担当する専務取締役であった。 D寝装は,寝具販売等を目的とする株式会社であり,Eは,その代表取締役である。 D寝装は,阪和銀行を主たる取引銀行としており,その取扱店は,同行太田支店(以下「太田支店」という。)であった。 (2) 阪和銀行における融資業務等の決裁権限阪和銀行における融資に関する決裁権限は,貸出決裁権限規定(甲8)により,①営業店長の専決,②非役員審査部長の専決,③取締役審査部長の専決,④審査担当役員の専決によるものとそれぞれ区分されていた。 そして,同一債務者の貸出純債権額が5億円を超える場合,一債務者の貸出純債権額より担保不動産評価額の余力等を差し引いた実質与信額が1億円を超える場合,常務会に付議された債務者への実質与信額が前回の常務会審議決裁額より5000万円を超える場合等の融資については,常務会付議案件とされていた(甲10)。 また,重要な貸出並びに多額の借入及び保証については,取締役会付議事項とされていた(甲9)。 (3) 阪和銀行における常務会付議案件の貸出業務の手続阪和銀行においては,まず,顧客から融資の申込みを受けた営業店において貸出稟議書一式を作成し,営業店店長から本部審査部へ上申し,本部審査部において,まず,初審担当者が審査を行い所見を記した上,審査部長が融資の可否を判断し,融資可と判断された融資を融資担当取締役(本件融資当時は,被告A)に上申する。融資担当取締役は,当該融資を問題なしと判断した場合,これを常務会に付議する。そして,常務会にお 長が融資の可否を判断し,融資可と判断された融資を融資担当取締役(本件融資当時は,被告A)に上申する。融資担当取締役は,当該融資を問題なしと判断した場合,これを常務会に付議する。そして,常務会において,担当部が稟議書を整理した書面に基づき,常務会に出席した常務取締役以上の取締役が意見を交換し,最終的に取締役頭取が融資の可否を決定することとされていた。 (4) 本件融資前の阪和銀行とD寝装との取引状況阪和銀行は,D寝装に対し,平成2年10月18日(ただし,甲22には,同月20日との記載もある。),570万円を,利息年6.8パーセント,返済期につき,平成2年11月から平成7年10月まで毎月15日限り元金9万5000円及び利息を支払うとの約定で貸し付けた(以下「件外融資①」という。)。 阪和銀行は,D寝装に対し,平成2年12月20日,8890万円を,利息当初年6.5パーセントの変動金利,返済期につき,平成2年12月から平成27年11月まで毎月27日限り当初69万2044円の元利均等の支払との約定で貸し付けた(以下「件外融資②」という。)。 阪和銀行は,D寝装に対し,平成4年3月30日,2000万円を,利息年6.9パーセント,返済期につき,平成4年4月から平成14年3月まで毎月27日限り23万1187円を支払うとの約定で貸し付けた(以下「件外融資③」という。)。 D寝装の阪和銀行に対する貸金債務の元本残高は,平成5年3月31日当時,1億1029万6595円であった。 (5) 阪和銀行太田支店における行員不祥事の発覚阪和銀行は,D寝装に対し,平成6年1月13日到達の内容証明郵便(同月12日付け)により,件外融資②及び③にかかる未払利息合計207万6000円を同月20日までに支払わなければ,法的手続により一括請求するとの催告をした。 他方,Eは,阪和 日到達の内容証明郵便(同月12日付け)により,件外融資②及び③にかかる未払利息合計207万6000円を同月20日までに支払わなければ,法的手続により一括請求するとの催告をした。 他方,Eは,阪和銀行に対し,同行との取引において金銭を行員に預けた日と通帳に記帳された入金日との間に齟齬が見られると指摘し,抗議した。阪和銀行において調査したところ,太田支店の行員が顧客から預かった金銭を順次流用していたことが発覚した(以下「不祥事件」という。)。 Eは,太田支店支店長のFらに対し,不祥事件につき,4大新聞に謝罪広告を掲載するよう要求していた。 被告Cは,この不祥事件につき,平成6年2月17日,Eと面談した。 (6) 本件融資に関する常務会の開催及び本件融資の概要等平成6年3月30日ころ,阪和銀行において常務会(以下「本件常務会」という。)が開催され,本件融資について審議された。本件融資については,本件常務会参加者から反対意見が出されることなく,承認された(甲18はその議事録)。 阪和銀行は,D寝装に対し,平成6年3月30日,利息年5分,最終返済期限平成36年3月27日,平成6年4月から毎月27日に元利合計16万1000円を返済するとの約定で,3000万円を貸し付けた(本件融資。甲20はその金銭消費貸借契約証書)。また,Eは,本件融資に際し,同人所有にかかる別紙物件目録1記載の土地及び同目録2記載の建物(以下,一括して「本件土地建物」という。)に,D寝装を債務者として,阪和銀行のために極度額3000万円の根抵当権(以下「本件担保」という。)を設定した。 なお,阪和銀行は,D寝装に対し,本件融資と同時に,件外融資②及び③の残元金1億0735万1595円のうち1億0700万円につき,利息を当初年5分の変動金利,最終弁済期平成36年3月27日までの分割 なお,阪和銀行は,D寝装に対し,本件融資と同時に,件外融資②及び③の残元金1億0735万1595円のうち1億0700万円につき,利息を当初年5分の変動金利,最終弁済期平成36年3月27日までの分割弁済との約定による借換(以下「本件借換」という。)を実行した。 (7) 本件融資後の阪和銀行とD寝装との取引状況阪和銀行は,D寝装に対し,平成6年6月30日に400万円を手形貸付けの形式で,平成7年6月12日に770万円を証書貸付けの形式で,それぞれ貸し付けた。和歌山県信用保証協会は,阪和銀行に対し,これらの各貸付けにかかるD寝装の債務を連帯保証した。 D寝装は,平成7年10月27日の約定返済期日以降本件融資にかかる返済を遅滞するようになり,その後平成8年12月27日までに同年9月分までの利息分は支払ったものの元本の返済はせず,それ以後の支払を停止した。そのため,平成11年3月11日の本訴提起当時において,D寝装が阪和銀行に対し本件融資にかかる貸金債務について弁済した額は,67万2338円であり,その結果,同日時点における本件融資にかかる貸金債務元本の残額は,2932万7662円であった。 (8) 阪和銀行から原告への資産譲渡と原告によるD寝装からの本件融資にかかる貸付金の回収原告は,阪和銀行から,平成10年1月23日,同月26日現在で同行が有する債務不履行に基づく損害賠償請求権及び事務管理,不当利得,不法行為その他契約以外の原因に基づいて同行が有する権利(同日現在及びそれ以前における同行の役職員,融資先その他の関係者に対し責任追及する一切の権利を含む。また,既に権利が確定しているもののほか,同日においてその存在の確認又は内容の特定が未了であるものを含む。)等を2082億7869万3919円で買い受けた。 原告は,D寝装並びに平成元年2月2 含む。また,既に権利が確定しているもののほか,同日においてその存在の確認又は内容の特定が未了であるものを含む。)等を2082億7869万3919円で買い受けた。 原告は,D寝装並びに平成元年2月28日に阪和銀行との間でD寝装の同行に対する同行との取引に関して生じた債務一切を連帯保証するとの合意をしたE,G及びH(これらの連帯保証人を総称して,以下「Eら」という。)との間で,本件融資及び本件借換の回収交渉を行い,平成14年12月10日の本件口頭弁論期日までに,D寝装から本件融資にかかる貸金債務の弁済として1000万円の支払を受けた。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 本件融資の実行に当たり,被告らに善管注意義務違反等があったか。 (原告の主張)ア本件融資の違法性(ア) 回収見込みの欠如D寝装は,件外融資①にかかる貸金債務につき,平成5年4月の期日分まで約定の弁済をしており,同月15日当時,同貸金債権の残元金は285万円であった。 しかしながら,D寝装は,件外融資③にかかる貸金債務につき,一度も支払をしておらず,2000万円の貸金元金が未払となるとともに,未収利息は,平成5年4月30日当時150万0986円となっていた。 また,D寝装は,件外融資②にかかる貸金債務につき,平成4年3月27日の期日分まで約定分の弁済を行ったが,それ以後約1年間支払をせず,平成5年4月から未収利息の一部を支払うにとどまった。そのため,同貸金債権の残元本額は,平成5年4月当時で,8735万1595円であり,同月30日現在における未収利息は620万6749円であった。 すなわち,D寝装は,件外融資①ないし③のうち,和歌山県信用保証協会の保証が付いていた同融資①以外の貸金債務残元本合計1億0735万1595円について,平成4年4月27日分の期日から支払 であった。 すなわち,D寝装は,件外融資①ないし③のうち,和歌山県信用保証協会の保証が付いていた同融資①以外の貸金債務残元本合計1億0735万1595円について,平成4年4月27日分の期日から支払を遅滞していた。 そして,D寝装は,件外融資①の残元本285万円につき,平成5年5月27日,同額の信用保証協会保証付きの融資に借換を受けたものの,同年7月15日支払期日分から元金の約定返済を遅滞し,同年11月15日に1か月分の元利金を支払った後は,元利金とも支払を停止した。また,D寝装は,件外融資②にかかる貸金債務のうち,平成5年10月までに未収利息の一部に相当する合計389万円の支払をしていたが,件外融資③にかかる貸金債務については何ら支払をせず,さらに,同年11月以降,これらの貸金債務につき全く支払をしなくなった。 そこで,阪和銀行は,前提事実(5)のとおり,D寝装に対し,平成6年1月13日到達の内容証明郵便により,同月20日までに件外融資②及び③の未払利息合計207万6000円の支払を求めるとともに,これがされない場合には,法的手段に出る旨の催告をした。 これに加えて,D寝装は,本件融資の当時,直前1年間が黒字決算であったとはいえ,92万9996円の経常利益しか上げておらず,前期からの繰越損失が4388万7202円もあり,3795万円余の資本欠損の状態にあった。 以上の事実関係に照らすと,D寝装への追加融資は,およそ返済見込みに欠けるものであったというほかない。 しかしながら,阪和銀行は,前提事実(6)のとおり,D寝装に対し,平成6年3月30日,件外融資②及び③の残元金のうち1億0700万円につき,当時の変動金利利率年利5.375パーセントを下回る年5分の利息で,かつ,最終弁済期を平成36年3月27日とする長期分割の融資とする本件借換を 件外融資②及び③の残元金のうち1億0700万円につき,当時の変動金利利率年利5.375パーセントを下回る年5分の利息で,かつ,最終弁済期を平成36年3月27日とする長期分割の融資とする本件借換を実行した上,3000万円を利息年5パーセント,分割弁済の最終返済期日平成36年3月27日との約定で貸し付けるという本件融資を行った。 (イ) 不十分な担保の徴求本件融資当時,阪和銀行のD寝装に対する貸金債権を担保するため本件土地建物に設定されていた担保権は,第1順位の極度額5000万円,第2順位の極度額1000万円,第4順位の極度額5500万円,第6順位の極度額1800万円の根抵当権であり,和歌山県信用保証協会の第3順位の極度額2200万円及び第5順位の極度額200万円の各根抵当権,国民金融公庫(当時の名称)の第7順位の極度額2000万円の根抵当権が設定されていることも併せると,本件融資の際,本件土地建物は,担保余力を有しておらず,かえって,阪和銀行のD寝装に対する貸金債権元本のうち4000万円以上が無担保状態にあった。 しかしながら,阪和銀行は,D寝装に対する本件融資に当たり,担保余力のない本件土地建物に,本件担保の設定を受けるにとどまった。 (ウ) 小括以上のとおり,本件融資は,D寝装の経営状況及び支払状況に照らし,回収見込みに欠けるにもかかわらず,実質的に無担保でされた違法な融資取引である。 イ被告らの責任被告らは,阪和銀行の取締役として,同行に対し善管注意義務等を負うものであり,これを融資実行についてみると,法令,定款,同行内部規定を遵守するはもとより,貸付先の資産及び経営状態やその信用の程度を精査し,確実かつ十分な担保を徴求するなど貸付金回収のために万全の措置を講じる義務があるし,各取締役の業務執行を監視し,監督機関である取締役 するはもとより,貸付先の資産及び経営状態やその信用の程度を精査し,確実かつ十分な担保を徴求するなど貸付金回収のために万全の措置を講じる義務があるし,各取締役の業務執行を監視し,監督機関である取締役会を通じてこれを監督する義務があるところ,以下のようにその義務を怠った。 (ア) 被告Cの責任被告Cは,検査部担当の常務取締役として,不祥事件が発覚した後,太田支店のFらから報告を受けるとともに,多数の検査部職員を太田支店に派遣して不祥事件の調査に当たらせるなどしていたものであり,その過程において,D寝装の預金口座が,不祥事件に関係していたことを知り,かつ,この件について阪和銀行とD寝装との交渉が難航したことから,前提事実(5)のとおり,平成6年2月17日,Eと直接面談した。そして,被告Cは,不祥事件の内容等について,常務会が開催される都度,あるいは,日常会話の都度,他の役員にも報告していた。 このように,被告Cは,検査部担当の常務取締役として,不祥事件の詳細な内容について知悉しており,また,自らD寝装の代表取締役であるEとも折衝を行っていたことから,D寝装が不祥事件について謝罪広告の掲載を要求していたこと,そして,本件融資が,これに対する見返り融資であることを十分認識していた。 さらに,被告Cは,本件融資についての稟議書から,本件融資の貸付先であるD寝装が,平成4年4月以降,元利返済を遅滞している債務者であり,かつ,既存の担保物件には担保余力がなく,本件融資が全額与信による貸付けであることを認識していた。すなわち,被告Cは,本件融資が,回収不能となる危険性の高い違法な融資であることを認識しつつ,常務会において,本件融資の実行を承認し,その後も本件融資に異議を述べることなく,本件融資の実行を可能にした。この被告Cの本件融資の承認は,善管注 なる危険性の高い違法な融資であることを認識しつつ,常務会において,本件融資の実行を承認し,その後も本件融資に異議を述べることなく,本件融資の実行を可能にした。この被告Cの本件融資の承認は,善管注意義務等違反を構成するものである。 (イ) 被告Aの責任被告Aは,平成6年2月ころ,被告Cと阪和銀行取締役のIが,不祥事件に関連して,D寝装と交渉していることを知り,同年3月,Iから,太田支店から本件融資に関する稟申がされることを聞かされた。そして,同月下旬に当時審査部担当の常務取締役であった被告Aに回付された本件融資に関する稟議書類一式には,①本件融資が,D寝装が不祥事件に関連して阪和銀行に対し謝罪広告の掲載を要求したことに対する見返り融資であること,②D寝装が平成4年4月以降元利金の支払を遅滞し,平成5年10月には返済が完全に停止している状態であること,③既存の担保物件は担保割れの状態であり,本件融資は,無担保融資にほかならないこと,④本件融資を実行しても,D寝装には借換の予定される金融償還しか見込めないこと等,本件融資の違法性を基礎付ける事実が明記されているとともに,本店管理部においては,本件融資に反対する旨の意見が付されていた。被告Aは,この稟議書類一式から,本件融資が回収不能となる危険性が高い違法な融資であることを認識しながら,あえて本件融資を実行すべきであるとして,これを常務会に付議し,本件融資を実行させたものであり,この被告Aの行為は,善管注意義務等違反を構成するものである。 (ウ) 被告Bの責任被告Bは,人事部担当の常務取締役として,不祥事件が発覚した直後において,その発生を知り,本件融資に関する常務会が開催される前には,不祥事件にD寝装が関連していることを認識していた。また,それまでの常務会において,被告Cが,不祥事件に ,不祥事件が発覚した直後において,その発生を知り,本件融資に関する常務会が開催される前には,不祥事件にD寝装が関連していることを認識していた。また,それまでの常務会において,被告Cが,不祥事件に関する報告を行っていたことから,被告Bは,本件融資が,不祥事件に起因する見返り融資であることを認識していたものである。 そして,被告Bは,本件融資に関する常務会において配付された資料に,本件融資が本来なら常務会付議案件でないにもかかわらず常務会に付議された重要案件であること,既存の担保物件には担保余力がないこと,D寝装が平成5年7月期時点において債務超過の状態にあったことが記載されていたことから,本件融資が回収の見込みの小さい違法な見返り融資であることを認識していたにもかかわらず,常務会において,本件融資の実行を承認した。さらに,被告Bは,常務会の後に回付された本件融資に関する稟議書類一式に,上記の点に加えて,本件融資について管理部が反対していることも記載されていたことを認識しつつ,常務会付議案件議事録に承認印を押捺した。 このように,被告Bは,本件融資が,回収の裏付けのない違法な見返り融資であることを認識しながら,常務会においてその実行を承認し,その実行を可能にしたものであり,この被告Bの行為は,善管注意義務等違反を構成するものである。 仮に,被告Bが,本件融資の違法性ないし問題性を認識していなかったとしても,同被告は,前記のとおり,常務会において配付された資料及びその後回付された本件融資に関する稟議書類一式の記載から,本件融資の違法性ないし問題性を容易に認識し得たにもかかわらず,被告Aが承認していることのみをもって漫然と本件融資を承認したものであり,同被告の善管注意義務等違反は明らかである。 (被告らの主張)ア善管注意義務等違反の判 性を容易に認識し得たにもかかわらず,被告Aが承認していることのみをもって漫然と本件融資を承認したものであり,同被告の善管注意義務等違反は明らかである。 (被告らの主張)ア善管注意義務等違反の判断基準取締役の企業経営に関する判断は,不確実かつ流動的で複雑多様な諸要素を対象とした専門的,予測的,政策的な判断能力を必要とする総合的な判断であり,ある一定の時点で取るべき選択肢が1つであるなどといったことはあり得ない。そのため,取締役の経営に関する判断についての裁量はおのずと広範なものとならざるを得ない。 したがって,取締役の経営判断が,商法規定の善管注意義務等違反に該当するといえるためには,個々の取締役が置かれた個別具体的な状況を十分に考慮した上で,通常の企業人を基準として,裁量権の逸脱があったとまで評価できること,換言すれば,経営判断の前提となる事実の認識に不注意な誤りないし看過し難い過誤があったり,意思決定の過程ないし内容が著しく不合理であったといった事情が認められる場合に限られるというべきである。 イ本件融資における善管注意義務等違反の不存在以下の事実からすると,被告らにおいて本件融資を承認するという経営判断をしたことが善管注意義務等違反に当たらないことは,明らかである。 (ア) D寝装は,平成5年10月ころから,阪和銀行に対する利息の支払を停止していた。また,Eは,不祥事件発覚後,同行に対し,強硬に苦情を申し入れていた。これらの事実から,阪和銀行としては,現状のままでは,今後D寝装からの任意弁済をおよそ期待できない状況であると判断せざるを得なかった。このような状況の下で,一定額の貸出支援と既存債務の弁済条件の緩和により,D寝装からの任意弁済が再開され,取引が正常化するのであれば,利息の収入確保及び債権回収総額の増額という点で,阪 得なかった。このような状況の下で,一定額の貸出支援と既存債務の弁済条件の緩和により,D寝装からの任意弁済が再開され,取引が正常化するのであれば,利息の収入確保及び債権回収総額の増額という点で,阪和銀行にとって有利であると考えられた。特に,当時,利息収入の減額と収益低下の状態にあった阪和銀行にとって,取引の正常化による利息弁済の再開は,会社経営上ぜひとも実現させる必要のあるものであった。そして,D寝装は,現に,本件融資後阪和銀行が事実上倒産する平成8年10月まで,同行に対し,約定の返済を継続した。 (イ) 阪和銀行のD寝装に対する貸金債権は,いわゆる要注意先の債権として第2分類に位置付けられており,破綻懸念先ないし実質的破綻先の債権とは考えられていなかった。また,D寝装は,平成3年7月期及び平成5年7月期においては,黒字決算であった。 そして,同期以降本件融資までの7か月間についてみると,平均月商が781万2000円,営業利益が151万円となっており,売上及び営業利益が大幅に向上していた。したがって,本件融資が,D寝装からの回収見込みに欠けるものとはいうことはできない。このことは,本件融資の後,和歌山県信用保証協会が,複数回にわたりD寝装の貸金債務につき連帯保証していることに照らしても,明らかである。 この点につき,原告は,D寝装が,貸借対照表上債務超過の状態にあったこと,本件融資について物的担保が十分でないことから,およそ,本件融資が回収を期待できない融資取引であったと主張する。 しかし,バブル経済崩壊後において,日本の多くの企業が時価ベースの貸借対照表上債務超過の状況に陥っていることは公知の事実であり,このような企業に対する金融機関の支援融資を善管注意義務等違反というのは非現実的であり,失当である。 (ウ) 不祥事件発覚後D寝 ースの貸借対照表上債務超過の状況に陥っていることは公知の事実であり,このような企業に対する金融機関の支援融資を善管注意義務等違反というのは非現実的であり,失当である。 (ウ) 不祥事件発覚後D寝装との間で折衝を行っていたI及びD寝装との取引を取り扱っていた太田支店からは,D寝装が,貸出支援後の経営改善と約定弁済の履行に並々ならぬ意欲を持っているとの意見が出されていた。 (エ) 本件融資については,阪和銀行管理部が将来の回収に不安が残るとして否決意見を述べた一方で,同行審査部においては,今後不祥事件に関する苦情を一切同行に持ち込まない旨の念書徴求を決裁条件として,融資自体は可とする意見を述べていた。 (オ) 阪和銀行は,平成5年8月に発生したJ副頭取射殺事件や関連子会社の支援問題等の影響により,平成6年3月当時,一般コア預金の伸び悩みや預金残高の減少といった深刻な経営上の問題に苦しんでいた。このような経営状況の下,仮に,不祥事件のように預金業務の根幹に関わる不祥事が露見すれば,阪和銀行にとって致命傷となりかねないおそれがあった。かかる観点にかんがみれば,前記(ア)のとおり,この事件に関して,強硬に苦情を申し入れていたE及びD寝装と和解できれば,望ましいという事情があった。そして,前記(エ)記載にかかる念書は,阪和銀行の顧問弁護士が作成したものであり,D寝装との和解につき,法律専門家のチェックを経ていたと認識していた。 (被告Bの主張)阪和銀行においては,担当役員制を採用しており,全取締役が全ての業務執行につき同等に責任を負担するという体制にはなかった。そして,被告Bは,融資担当の常務取締役ではなかった。 本件融資は,本来常務会の付議案件ではないが,本件常務会に付議されたものである。しかしながら,本件常務会において,担当役員から,どのよ なかった。そして,被告Bは,融資担当の常務取締役ではなかった。 本件融資は,本来常務会の付議案件ではないが,本件常務会に付議されたものである。しかしながら,本件常務会において,担当役員から,どのような事情で常務会に付議したのか,また,本件融資に特別の問題があるのか,といった説明はなかった。 そのため,被告Bにおいては,本件融資を承認するか否かについて,特別の注意を要するかどうかの判断資料がなかったのであり,被告Bが本件融資に反対しなかったからといって,これをもって,善管注意義務等違反があったということはできない。 (2) 善管注意義務等違反と損害との間の因果関係及び損害額(原告の主張)ア被告らの善管注意義務等違反によって,阪和銀行が被った損害は,本件融資にかかる元本相当額のうち回収不能となっている1932万7662円である。 イ(ア) 被告らは,本件融資にかかる3000万円のうち,D寝装の阪和銀行に対する既往の貸金債務及び未収利息に充当された873万9639円については,損害とはならないと主張する。 しかし,この873万9639円が本件融資にかかる3000万円から支出されたかどうか明らかでない以上,これを損害から控除することはできない。 また,回収された873万9639円は,本来,D寝装が契約上当然に支払うべき金銭であり,阪和銀行としては,本件融資をしなかったとしても,担保権の実行等により回収すべき状況にあったものであるから,本件融資と873万9639円の回収とは同質なものとはいえない。 さらに,本件融資は,30年後の弁済期という極めて長期かつ実質無担保の融資である上,利率が年5分と当時の調達コストを下回る低利であり,仮に約定どおり利息の支払を受けてもなお赤字が発生するような融資取引であったから,本件融資により,阪和銀行に生じる損害 つ実質無担保の融資である上,利率が年5分と当時の調達コストを下回る低利であり,仮に約定どおり利息の支払を受けてもなお赤字が発生するような融資取引であったから,本件融資により,阪和銀行に生じる損害は,貸付金額である3000万円を超えるものということができる。 そして,このような未収利息等の回収は,阪和銀行のD寝装に対する本件貸付前において不良債権化していた貸金債権を借り換えによって正常債権に見せかけるためにされたものというほかない。 以上からすれば,このような未収利息等の回収は,本件融資により発生した損害を実質的に填補するものとはいえないから,損害額から控除されるべきではない。 (イ) 被告らは,D寝装が,阪和銀行に対し,本件貸付後本訴提起までの間に,任意に弁済した合計1705万3255円につき,本件融資によって生じた損害から損益相殺されるべきであると主張する。 しかし,前記任意弁済金のうち,本件融資の元本債権に対する弁済として支払われた67万2338円についてはそうであるが,その余の貸金債務に対する弁済額を損害から控除すべきとする理由はない。 また,そもそも,損益相殺の対象とされるためには,本件融資と弁済との間の因果関係及び損害との間の同質性が必要であると解されるところ,D寝装が,本件貸付以降,阪和銀行に対し,弁済した金銭と本件融資との間に因果関係があるとは到底いえないし,同質性もない。 したがって,前記任意弁済金のうち,本件融資にかかる元本債権に対する弁済以外の金銭について,損害から控除されるべきではない。 (被告らの主張)ア D寝装は,本件融資を受けた後,その経営回復傾向が促進・安定化し,阪和銀行に対する約定の返済を再開した。このことから,D寝装が,本件貸付後において経営破綻するような経営状態でなかったことは明らかである。 そうする 融資を受けた後,その経営回復傾向が促進・安定化し,阪和銀行に対する約定の返済を再開した。このことから,D寝装が,本件貸付後において経営破綻するような経営状態でなかったことは明らかである。 そうすると,その後に生じた,D寝装の平成7年10月分以降の本件融資の元本部分の返済の遅滞及び平成8年10月分以降の利息支払の停止は,バブル経済崩壊後のわが国の経済不況の予想もしない長期化及び悪化が影響したものであると考えざるを得ない。また,D寝装の主たる取引銀行である阪和銀行が,前提事実(1)のとおり,平成8年11月21日,大蔵大臣による業務停止命令を受け,事実上倒産したことも,中小零細企業であったD寝装の経営に重大な悪影響を及ぼしたことは容易に想像できるところである。 したがって,本件融資に関する被告らの経営判断とD寝装の阪和銀行に対する支払停止により阪和銀行に生じた損害との間には,相当因果関係が欠落しているというほかない。 イ(ア) 本件融資が実行された際,本件融資にかかる3000万円の貸付金からD寝装の阪和銀行に対する従前の貸金債務及び未収利息に合計873万9639円が控除されており,阪和銀行からD寝装に現実に交付されたのは,残金2126万0361円のみである。したがって,本件融資によって阪和銀行に生じた損害が,この2126万0361円を超えることはあり得ない。 (イ) D寝装は,平成6年3月30日にされた本件融資及び本件借換により,阪和銀行に対し,従前停止していた毎月の約定弁済を再開し,平成8年12月27日までに,本件借換にかかる債務の弁済として,元利合計1331万8982円,本件融資にかかる債務の弁済として,元利合計373万4273円(その内訳は,利息分が306万1935円,元本分が67万2338円である。)を支払った。したがって,このD寝装 計1331万8982円,本件融資にかかる債務の弁済として,元利合計373万4273円(その内訳は,利息分が306万1935円,元本分が67万2338円である。)を支払った。したがって,このD寝装の阪和銀行に対する任意弁済金の合計1705万3255円については,損益相殺の法理により,本件融資の実行によって阪和銀行に生じた損害から控除されるべきである。 (ウ) そして,原告がD寝装から本訴提起後に支払を受けた1000万円についても,本件融資の実行によって阪和銀行に生じた損害から控除されるべきである。 (エ) 以上のとおり,本件融資により阪和銀行に発生した損害は,前記(ア)のとおり,2126万0361円にとどまるところ,前記(イ),(ウ)のとおり,D寝装が阪和銀行ないし原告に対して任意に支払った合計2705万3255円は,前記損害に填補されるべきものであり,その結果,前記損害は現存しないというべきである。 ウ D寝装において,本件融資にかかる貸金債務の履行が確実といえる範囲については,損益相殺の法理ないしそれに類する法理により,その履行が確実といえる限度において,本件融資により阪和銀行に生じた損害から控除されるべきところ,前提事実(8)のとおり,D寝装は,原告に対し,本訴提起後,本件融資にかかる貸金債務の弁済をしており,その合計額は1000万円に達している。また,本件融資にかかる貸金債務を含むD寝装の原告(当初の債権者は阪和銀行)に対する貸金債務を担保するため,Eらが連帯保証しているし,本件土地建物のほか別紙物件目録3ないし6記載の土地建物に設定された根抵当権が存在する。してみると,D寝装若しくはEらによる任意弁済又は前記根抵当権の実行により,本件融資の回収不能に伴う損害が発生しない可能性は高いし,少なくとも本件訴訟について,阪和銀行の損 れた根抵当権が存在する。してみると,D寝装若しくはEらによる任意弁済又は前記根抵当権の実行により,本件融資の回収不能に伴う損害が発生しない可能性は高いし,少なくとも本件訴訟について,阪和銀行の損害発生の存否や内容は未確定であるというほかない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(被告らの善管注意義務等違反の有無)について(1) 証拠(甲16ないし19,21の1・2,22,23,丙16,18,調査嘱託の結果,被告A,B及びC各本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア D寝装の経営状況及び財務状況D寝装は,平成2年7月期決算において,売上1億7300万円,営業利益マイナス500万円,経常利益及び当期利益マイナス1200万円,自己資本マイナス3100万円,総借入金1億6000万円を,平成3年7月期決算において,売上9534万6000円,営業利益1208万5000円,支払利息989万2000円,経常利益及び当期利益238万1000円,自己資本マイナス2851万2000円,借入金1億6361万6000円を,平成4年7月期決算において,売上7343万3000円,営業利益マイナス338万3000円,支払利息720万1000円,経常利益及び当期利益マイナス1037万5000円,自己資本マイナス3888万7000円,借入金合計1億7635万4000円を,平成5年7月期において,売上8033万2473円,営業利益486万3681円,支払利息401万8449円,経常利益及び当期利益92万9996円,自己資本マイナス3795万7306円,短期借入金2717万9643円,長期借入金1億4273万7595円(借入金合計1億6991万7238円)を,それぞれ計上していた。 D寝装の平成5年8月以降平成6年2月までの7か月間の営業実績については 入金2717万9643円,長期借入金1億4273万7595円(借入金合計1億6991万7238円)を,それぞれ計上していた。 D寝装の平成5年8月以降平成6年2月までの7か月間の営業実績については,D寝装の資金繰表によれば,1か月平均の売上781万2000円,1か月の平均の営業利益151万円とされていた。これは,売上においては,平成5年7月期決算における1か月の平均の売上669万4000円を上回るものであったが,営業利益においては,本件融資実行後阪和銀行,株式会社第一勧業銀行(当時)及び国民金融公庫(当時)に対して負う全貸金債務の当初の1か月分の返済元利金163万7000円を下回るものであった。 阪和銀行は,D寝装の経営状況について,平成5年4月15日時点において,営業状態は依然として低迷し,業況は芳しくないと認識しており,平成6年3月17日時点においても,平成2年7月期をピークに売上が激減しており,これに店舗新築資金等のための多額の借入のため,利払すら困難な状態に陥っているとの認識を有していた。 イ D寝装の阪和銀行に対する既往の借入の弁済状況D寝装は,阪和銀行に対し,件外融資①につき,平成2年11月分から平成5年4月分まで約定どおり弁済し,残元金285万円につき,平成5年5月27日,同行から借換を受け,同年7月15日に1万6990円を,同年8月16日に1万6459円を,同年9月16日に1万5397円を,同年10月15日に1万6459円を,同年11月15日に1万5397円を,それぞれ利息として支払ったが,以後本件融資まで支払を停止していた。 D寝装は,阪和銀行に対し,件外融資②につき,平成2年12月27分から平成4年3月27日分まで約定どおり弁済したが,平成5年4月30日,同年5月31日,同年6月30日,同年7月30日,同年8月31日 D寝装は,阪和銀行に対し,件外融資②につき,平成2年12月27分から平成4年3月27日分まで約定どおり弁済したが,平成5年4月30日,同年5月31日,同年6月30日,同年7月30日,同年8月31日,同年9月30日にそれぞれ53万3000円ずつ,同年10月29日に69万2000円を,それぞれ利息として支払ったのみであり,元本については弁済をせず,さらに,同日以降本件借換により計算上全額回収とされるまで,何らの支払もしなかった。 D寝装は,阪和銀行に対し,件外融資③につき,本件借換により計算上全額回収とされるまで,一切の支払をしなかった。 阪和銀行は,上記のようにD寝装に対する既往債務の弁済状況が平成4年4月以降延滞していることにかんがみ,管理部の所管とするとともに,平成5年4月15日の時点で,同月以降の利息の支払の履行を徹底させ,1か月でも支払が遅れた場合には法的手続を取ることとし,元本回収についてはD寝装と再度交渉し,早急に回収を図ること,さらには,同年3月分までの未収利息についても放置しないとの方針で臨むこととしていた。 ウ本件融資の資金使途本件融資の資金使途は,D寝装の支払手形決済分として約1286万4000円,D寝装の他の金融機関からの借受金の返済として約850万円,阪和銀行のD寝装に対する未収利息の回収分として約863万6000円というものであった。 エ担保の設定状況本件融資に際し,本件土地建物につき,阪和銀行のために設定された本件担保は,極度額を3000万円とする8番根抵当権であった。 阪和銀行は,本件融資当時,本件土地建物を時価合計1億2823万8000円,担保評価額合計8695万5000円と評価していた。 本件土地建物には,本件融資以前において,阪和銀行のために極度額をそれぞれ5000万円の1番根抵当権,極度額を100 合計1億2823万8000円,担保評価額合計8695万5000円と評価していた。 本件土地建物には,本件融資以前において,阪和銀行のために極度額をそれぞれ5000万円の1番根抵当権,極度額を1000万円とする2番根抵当権,極度額を5500万円とする4番根抵当権及び極度額を1800万円とする6番根抵当権が設定されるとともに,和歌山県信用保証協会のために極度額を2200万円とする3番根抵当権及び極度額を200万円とする5番根抵当権並びに国民金融公庫のために極度額2000万円とする7番根抵当権が設定されていた。 そのため,本件土地建物は,本件融資実行前において,既に担保余力を超えた状態にあったものであり,阪和銀行においても,D寝装の同行に対する本件融資にかかる貸金債務を含む貸金債務全体につき,合計約7204万5000円については無担保融資であり,また,時価を前提としても3076万2000円につき無担保の状態であって,保全状態ははなはだ芳しくないと認識されていた。 オ本件融資に関する回収見込みについての阪和銀行の担当者らの認識太田支店長のFは,不祥事件がマスメディアに公表されることを避ける必要性があること,D寝装の融資の延滞が固定化しているものの,Eにおいて売上増加,経営の合理化を図る努力をするとの方針の提案があったことから,本件融資を本来なら取り上げるべき案件ではないものの,固定債権を流動化させ,回収に向かうべきであるとして,本件融資を阪和銀行本部に稟申した。また,太田支店においては,本件融資は,D寝装の決算状況より,借換の予定される金融償還となるものの,既往融資の利下げを含めた低利の支援として,債権回収の促進を図る意図を有していた。 D寝装との融資取引を所管していた阪和銀行本部の管理部においては,D寝装が長期延滞先であり,かつ,平成5 なるものの,既往融資の利下げを含めた低利の支援として,債権回収の促進を図る意図を有していた。 D寝装との融資取引を所管していた阪和銀行本部の管理部においては,D寝装が長期延滞先であり,かつ,平成5年5月14日以降元本の弁済を猶予し,利息のみしか支払っていない状況であること,保全状況が不良であり,返済財源も認められないことに照らし,たとえ不祥事件に関するEの苦情を解決する目的があるとしても,本件融資には賛成できないと否決の意見を稟議書に記載した。また,同部においては,本件融資を実行した場合には,返済につき現状利益償還はなく,やはり借換の予定される金融償還となるとの見通しを有していた。 同行本部の審査部においては,本件融資の回収見込みについて触れることなく,Eから不祥事件につき今後一切の苦情を持ち込まない旨の念書を徴求することを決裁条件として,本件融資を是認する旨の意見を稟議書に記載した。 (2)ア以上のとおり,D寝装は,平成2年7月期決算以降平成5年7月期決算に至るまで,その売上は低落傾向にあり,また,平成4年7月期,平成5年7月期と資本欠損額が3700万円を超えていた。また,経常利益及び当期利益は,決算報告上,平成2年7月期及び平成4年7月期は赤字であり,決算報告上92万9966円の黒字となっている平成5年7月期においても,借入金の合計が1億6991万7238円であるのに対し支払利息がその約2.36パーセントにすぎない401万8449円であることに照らすと,粉飾決算によって経常利益及び当期利益を計上したものであり,実際には赤字決算となっていたことは明らかである。また,D寝装の平成5年8月から平成6年2月までの間の7か月間の営業実績が,粉飾決算などの事情がなく前記(1)アのとおりだとしても,1か月平均の営業利益は本件融資後におけるD たことは明らかである。また,D寝装の平成5年8月から平成6年2月までの間の7か月間の営業実績が,粉飾決算などの事情がなく前記(1)アのとおりだとしても,1か月平均の営業利益は本件融資後におけるD寝装の阪和銀行等に対する全貸金債務の1か月当たりの返済金額を下回るものであった。そして,D寝装は,前記(1)イ認定のとおり,阪和銀行に対する既往の貸金債務である件外融資①ないし③に関して,件外融資②につき平成4年4月分から約定どおりの支払をしておらず,件外融資③につき最初の返済期である同月分から支払をせず,件外融資①についても借換がされた後から元本の弁済をせず,さらに,平成5年11月15日に利息を支払った以降は完全に支払を停止していたから,新規に融資をした場合に,任意の支払により全額を回収できる見込みは極めて低いものであった。 このようなD寝装の経営状況,財務状況及び弁済状況の下で,本件融資の担保物件である本件土地建物につき時価を前提としても実質的に全額無担保となるような本件担保を設定したのみで他に担保を徴求することなく行われた本件融資は,客観的に見れば,回収可能性に欠けるものであったというほかない。 イそして,前提事実(1),(3),証拠(甲19,丙18,被告A,同B及び同C各本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (ア) 被告Aについて被告Aは,審査部担当の常務取締役であり,融資審査を担当する者として,前記(1)認定の事実関係を太田支店から送付された稟議書一式(甲19)により認識していた。 (イ) 被告C及び同Bについて被告C及び同Bは,本件常務会において配付された本件融資に関する資料の要旨(甲19の3枚目)により,D寝装が,概ね前記(1)ア認定のとおりの決算報告(ただし,借入金合計については記載されていなかった。) C及び同Bは,本件常務会において配付された本件融資に関する資料の要旨(甲19の3枚目)により,D寝装が,概ね前記(1)ア認定のとおりの決算報告(ただし,借入金合計については記載されていなかった。)を行っており,平成2年7月期を境に売上が激減し,多額の借入があるため利息の支払すら困難な状況にあったこと,担保余力がマイナス7204万5000円,時価余力で3076万2000円にすぎず,本件融資が実質的に無担保融資であることを認識していた。 以上によれば,被告らは,本件融資が客観的な回収可能性に欠けるものであることを少なくとも認識可能であったということができるから,被告Aにおいて,本件融資を本件常務会に稟申するとともに,同常務会においてこれを承認したこと,また,被告C及び同Bにおいて,本件常務会においてこれを承認したことは,阪和銀行の取締役としての善管注意義務等違反を構成するものといわざるを得ない。 (3) 前記説示に反する被告らの主張に対する判断ア被告らは,D寝装が平成5年10月以降,阪和銀行に対する利息の支払を停止し,また,Eが不祥事件発覚後,阪和銀行に対し,強硬に苦情を申し入れていた状況において,D寝装の任意弁済を促し,取引を正常化するためには,一定額の貸出支援が必要であったことが,被告らの経営判断につき善管注意義務等違反がなかったことの根拠の1つであると主張する。そして,前提事実(7)のとおり,D寝装は,本件融資及び本件借換が実行された後,平成7年9月分までの元利金を弁済し,平成8年12月まで同年9月分までの利息を支払っており,本件融資後,任意の弁済を再開したことが認められる。 しかし,証拠(丙5,被告A本人)によれば,阪和銀行管理部の方針として,支援の結果生じた利益から債権を回収することを予定するため,貸出支援は,誠意ある債務者 ,任意の弁済を再開したことが認められる。 しかし,証拠(丙5,被告A本人)によれば,阪和銀行管理部の方針として,支援の結果生じた利益から債権を回収することを予定するため,貸出支援は,誠意ある債務者に対して案件に応じて行われるものとされていたことが認められる。そして,前記(1)ア,オ認定のとおり,D寝装は,決算報告上,利益が生じていたとしても年間約100万円ないし200万円程度であり,太田支店及び同行管理部においても,かかる決算状況から,本件融資に対する返済が借換が予定される金融償還となると予見していたものである。以上の事実に照らすと,本件融資は,到底貸出支援が予定する貸出先の利益から償還することを企図したものということはできず,本件融資は,阪和銀行管理部の貸出支援の方針に反するものといわざるを得ない。このように,自らの定めた方針に反して行われた本件融資は,いわゆる経営判断の範疇の外にあるというべきであるから,被告らの主張は採用できない。 イ被告らは,①阪和銀行のD寝装に対する貸金債権は,要注意先の債権として第2分類に位置づけられていたものであり,破綻懸念先ないし実質的破綻先の債権とは考えられていなかったこと,②D寝装が平成3年7月期及び平成5年7月期において黒字決算であったこと,③平成5年8月から平成6年2月までの7か月間における売上及び営業利益が向上していたこと,④本件融資後においても和歌山県信用保証協会が複数回にわたりD寝装に対し連帯保証していることに照らすと,本件融資の回収可能性は低いものではなかったと主張する。そして,前記(1)ア認定のとおり,D寝装は,平成3年7月期及び平成5年7月期において,黒字の決算報告をし,また,D寝装の資金繰表によれば,平成5年8月から平成6年2月までの間の売上及び営業利益が平成5年7月期決算にお 定のとおり,D寝装は,平成3年7月期及び平成5年7月期において,黒字の決算報告をし,また,D寝装の資金繰表によれば,平成5年8月から平成6年2月までの間の売上及び営業利益が平成5年7月期決算における売上及び営業利益の1か月平均の数値を上回っていたとされている。また,前提事実(7)及び証拠(甲16,19,23,丙16,18,調査嘱託の結果,被告A本人)によれば,本件融資前において,阪和銀行のD寝装に対する債権は,大蔵省(当時)の分類によれば,第2分類に位置づけられていたこと,D寝装が,阪和銀行から,平成6年6月30日に400万円,平成7年6月12日に770万円をそれぞれ借り入れた際,和歌山県信用保証協会が,D寝装と保証委託契約を締結の上,同社の上記各貸金債務を担保するために,阪和銀行との間で連帯保証契約を締結したことが認められる。 しかし,前記(2)ア説示のとおり,D寝装の平成5年7月期の黒字決算は,粉飾決算によるものであり,実際には赤字であったことは明らかである。そして,この事実に照らすと,前記(1)ア認定のD寝装の資金繰表による同社の平成5年8月から平成6年2月までの利益についてもにわかに信用することはできないし,仮に,D寝装が,資金繰表どおりの売上,営業利益を上げていたとしても,この間上昇していたとされている利益は,支払利息控除前の営業利益にすぎず,本件融資の元本回収の可能性の指標となるものではないから,いずれにしても採用できない。 さらに,和歌山県信用保証協会が,D寝装の阪和銀行に対する本件融資後の借入について,D寝装のために連帯保証したとの点についても,前記のとおり,D寝装が,平成5年7月期の決算において粉飾決算をしていたことに照らすと,本件融資が回収可能性に欠けるという前記認定を覆すには足りないというべきである。 そして, たとの点についても,前記のとおり,D寝装が,平成5年7月期の決算において粉飾決算をしていたことに照らすと,本件融資が回収可能性に欠けるという前記認定を覆すには足りないというべきである。 そして,阪和銀行のD寝装に対する貸金債権の分類が,本件融資前において大蔵省の分類で第2分類とされていたとの事実も,これだけで,本件融資が回収可能性に欠けるとの前記認定を覆すには足りない。 以上により,本件融資の回収可能性が低いものではなかったとの被告らの主張は採用できない。 ウまた,被告らは,D寝装が貸出支援である本件融資後の経営改善と約定弁済の履行に並々ならぬ意欲を持っていたことをもって,本件融資が回収不可能なものではなかったとも主張するが,前記(1)認定の事実及び前記(2)ア説示に照らすと,D寝装ないしEの主観的な決意表明だけで本件融資の回収可能性が欠けるとする前記認定を覆すものでないことは明らかである。 エ被告らは,前記(1)オ認定のとおり,阪和銀行審査部が,稟議において,D寝装ないしEが今後不祥事件に関する苦情を一切同行に持ち込まない旨の念書徴求を決裁条件として,本件融資自体を承認する旨の意見を述べたことを,被告らが本件融資を是認したことの経営判断が善管注意義務等違反を構成しないことの根拠の1つとして主張する。 しかし,前提事実(3)のとおり,阪和銀行においては,審査部(ただし,D寝装については,前記(1)イ,オ認定のとおり,管理部の所管とされていたため,本件融資については,管理部も稟議に際し,意見を述べており,その内容は,本件融資を否決すべきというものであった。)において融資可能と判断された融資取引について,さらに,融資担当の取締役である被告A,さらには,常務会がその適否を検討し,判断するという手続が採用されている。この貸出業務の手続構造 ものであった。)において融資可能と判断された融資取引について,さらに,融資担当の取締役である被告A,さらには,常務会がその適否を検討し,判断するという手続が採用されている。この貸出業務の手続構造に照らすと,そもそも,下部の審査機関である審査部において融資可能と判断されたことのみをもって,融資担当取締役ないし常務会の構成員というより上部機関として融資の審査をすべき被告らの善管注意義務等違反の有無の判断に当たり,被告らの有利な事実として斟酌することは背理であるといわざるを得ない。したがって,かかる事実を被告らが善管注意義務等違反をしていないことの根拠とすることはできない。 また,前記(1)イ,オ認定のとおり,D寝装と阪和銀行との融資取引については,本件融資当時,同行審査部ではなく管理部が所管しており,同部は本件融資を否決すべきであるとの意見を稟議書に記載していたこと,同行審査部の前記意見は,本件融資の回収可能性について触れることなく,専ら不祥事件に関する苦情の解決という見地に基づくものであることが容易に推測されることに照らすと,仮に同行審査部の前記意見をもって被告らの有利に斟酌することができるとしても,これをもって,被告らの本件融資の稟申ないし承認につき善管注意義務等違反があるとした前記認定判断を覆すには足らないというべきである。 したがって,被告らの主張は採用できない。 オ被告らは,①本件融資当時の阪和銀行の預金残高減少等の経営難の状況においては,EないしD寝装により不祥事件が露見することを避けるため,D寝装と和解する必要があった,②本件融資の決裁条件として,不祥事件について苦情を持ち込ませないよう念書を徴求することに関連し,阪和銀行の顧問弁護士という法律専門家が念書の案を作成していたことから,本件融資を含むD寝装と阪和銀行との和解 の決裁条件として,不祥事件について苦情を持ち込ませないよう念書を徴求することに関連し,阪和銀行の顧問弁護士という法律専門家が念書の案を作成していたことから,本件融資を含むD寝装と阪和銀行との和解についてかかる法律専門家のチェックを経ていたと認識していたことを,被告らの善管注意義務等違反を否定する根拠の1つとして主張している。 しかし,不祥事を隠蔽するという融資の目的自体の相当性はおくとしても,回収可能性に欠ける融資は,預金者保護の観点から,到底是認することはできないというべきである。 また,本件融資に関連して,弁護士がEないしD寝装からの不祥事件に関する苦情を持ち込まない旨の念書を作成したことをもって,弁護士が本件融資の適否や本件融資の実行が善管注意義務等違反の問題を生ぜしめるかという点まで判断をしているわけではないことは見やすい道理であるから,このような事実をもって,被告らの善管注意義務等違反を否定する根拠とすることはできないというべきである。 したがって,被告らの主張は,採用の限りでない。 カ被告Bは,阪和銀行が担当役員制を採用しているところ,前提事実(1)のとおり,同被告は融資担当の取締役ではなかったこと,本件融資は本来常務会付議案件ではないこと,本件常務会において本件融資に関する問題点等について特に説明がされなかったため,同被告において,本件融資を承認するに当たり,特別の注意を要するかどうかの判断材料がなかったことを理由として,同被告が本件常務会において本件融資に反対しなかったことが善管注意義務等違反に当たるとはいえないと主張する。 しかし,前記(2)イ(イ)認定のとおり,被告Bは,本件常務会において配付された本件融資に関する資料の要旨から,D寝装の決算報告の概要,同社は平成2年7月期を境に売上が激減しており,多額の借財によ しかし,前記(2)イ(イ)認定のとおり,被告Bは,本件常務会において配付された本件融資に関する資料の要旨から,D寝装の決算報告の概要,同社は平成2年7月期を境に売上が激減しており,多額の借財による利息の支払すら困難な状況にあったこと,本件融資が実質的に無担保融資であったことを認識していたものである。以上によれば,たとえ,被告Bが,融資担当の取締役でなく,また,本件融資が本来常務会付議案件でない上,本件常務会において本件融資の問題点について特段の説明がされなかったとしても,被告Bにおいて,本件融資が回収可能性に多大な疑問のある融資取引であることを十分に認識できたということができるから,これらの事実をもって,被告Bの善管注意義務等違反を認めた前記認定判断を覆すには足らないというべきである(なお,この点は,同じく融資担当取締役ではなかった被告Cにおいても,妥当する。)。 2 争点(2)(因果関係及び損害額)について(1)ア被告らが,本件融資を本件常務会において稟申ないし承認したこと自体が,善管注意義務等違反を構成することからすれば,かかる善管注意義務等違反によってされた本件融資の貸付額から従前の債務の弁済に充当された分を除く新たに貸し付けられた金額が,本件融資によって生じた損害になるというべきである。 これを本件についてみると,前提事実(6),証拠(甲19,22,丙18,被告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,平成6年3月30日に本件融資(3000万円)及び本件借換(1億0700万円)が実行された(貸付総額1億3700万円)一方,同日当時の件外融資②及び③の貸金残元金合計1億0735万1595円,件外融資①についての同日当時の未収利息6万8048円,件外融資③についての同日当時の未収利息200万4820円,件外融資②についての同日当時 融資②及び③の貸金残元金合計1億0735万1595円,件外融資①についての同日当時の未収利息6万8048円,件外融資③についての同日当時の未収利息200万4820円,件外融資②についての同日当時の未収利息631万5176円以上合計1億1573万9639円の返済があったと帳簿上処理され,本件融資及び本件借換の合計から前記返済合計を差し引いた2126万0361円がD寝装に支払われたこと,並びに阪和銀行では,本件融資に際し,貸付金3000万円のうち,約860万円余りをD寝装に対する従前の貸金の返済に充て,残りの約2100万円余りをD寝装に対して現実に交付することが予定されていたことが認められる。 以上によれば,D寝装に交付された上記2126万0361円は,本件融資に基づき,阪和銀行からD寝装に対し現実に交付され,本件融資からこの交付額を差し引いた残金873万9639円は,既往の貸金債務及び未収利息の返済に充てられたものと認めることができる。したがって,被告らの善管注意義務等違反によって,阪和銀行に生じた当初の損害額は,この2126万0361円である。 イそして,前提事実(7),(8)のとおり,D寝装は,阪和銀行に対し,平成11年3月11日までに,本件融資にかかる貸金債務の元本につき,67万2338円を弁済し,その後,D寝装は,原告に対し,平成14年12月10日の本件口頭弁論期日までに,本件融資にかかる貸金債務の元本につき,1000万円を弁済したから,この弁済額合計1067万2338円の限度で,上記損害が填補されたということができる。 したがって,前記ア説示の損害の現時点における残額は,当初の損害額から上記弁済額を控除した1058万8023円である。 (2) 前記説示に反する原告及び被告らの主張に対する判断ア原告の主張に対する判断原告は 前記ア説示の損害の現時点における残額は,当初の損害額から上記弁済額を控除した1058万8023円である。 (2) 前記説示に反する原告及び被告らの主張に対する判断ア原告の主張に対する判断原告は,本件融資にかかる貸付金3000万円全額を本件融資の実行によって生じた損害とみるべきであり,D寝装の阪和銀行に対する既往の貸金債務及び未収利息に充当された873万9639円について,本件融資にかかる金銭から支出されたものか明らかでないし,本件融資と上記金銭の充当とは同質性に欠けるから,損害から控除すべきではないと主張する。 しかし,前記1(1)ア,イ認定のとおり,D寝装は,阪和銀行に対する返済を本件融資に至るまで停止していた上,その財務状態は良好なものとはいえなかったことからすると,D寝装が,本件融資にかかる貸付金以外から,873万9639円を支払ったとは到底考えられない。そうすると,この回収金額の部分は,本件融資により帳簿上回収されたという単なる借換とみるほかなく,現実に金銭が交付されたものとみることはできないから,本件融資により阪和銀行に生じた損害とみることもできない。 イ被告らの主張に対する判断(ア) 被告らは,D寝装は,本件融資の後,その経営が回復し,阪和銀行に対する約定の弁済を同行が経営破綻するまでしていたのであり,本件融資の回収が不能となったのは,いわゆるバブル経済の崩壊や主たる取引銀行である阪和銀行経営破綻によるものであるから,本件融資の稟申,承認及び実行と阪和銀行に生じた損害との間に因果関係は存在しないと主張する。 しかし,前記(1)ア説示のとおり,被告らが本件融資を稟申ないし承認したことが善管注意義務等違反を構成し,これに基づき,本件融資が実行されたことにより,阪和銀行において,同行がD寝装に新たに貸し付けた金額に相当す )ア説示のとおり,被告らが本件融資を稟申ないし承認したことが善管注意義務等違反を構成し,これに基づき,本件融資が実行されたことにより,阪和銀行において,同行がD寝装に新たに貸し付けた金額に相当する損害が発生したと解されることからすれば,D寝装のその後の支払によりその損害が填補されることは別として,その後の支払停止の原因は,因果関係の有無に消長を来さないというべきである。よって,被告らの主張は採用できない。 (イ) 被告らは,D寝装が,本件融資以降平成8年12月27日までに本件融資の元金67万2338円(前記(1)イ説示のとおり,損害から控除されている。)のほか,本件融資の利息306万1935円及び本件借換にかかる貸金債務の弁済として元利合計1331万8982円を弁済したから,これらの弁済金についても,損益相殺の法理により,損害から控除されるべきであると主張する。 しかし,本件融資が実行されなかったとしても,阪和銀行において,D寝装が本件融資後に弁済した元利金を得ることができなかったかどうかは必ずしも明らかではない。かえって,前記1(1)エ認定のとおり,本件土地建物の阪和銀行における担保評価額が8695万5000円であり,同土地建物に阪和銀行のために極度額5000万円の1番抵当権及び極度額1000万円の2番抵当権が設定されていたことに照らすと,本件融資の実行によらず直ちに本件土地建物の競売申立てをした場合に,阪和銀行は,D寝装の上記支払額を超える6000万円の回収をすることができた可能性があったということができる。また,本件全証拠によるも,本件融資の時点で将来D寝装がどの程度弁済するかについて明確な予測がされていたとの事情は認められない。以上の事実にかんがみると,本件融資の実行とその後の本件融資に関する利息の支払及び本件借換について 件融資の時点で将来D寝装がどの程度弁済するかについて明確な予測がされていたとの事情は認められない。以上の事実にかんがみると,本件融資の実行とその後の本件融資に関する利息の支払及び本件借換についての元利金の支払との間に相当因果関係はないというべきである。したがって,これらの支払を損益相殺の法理により,損害から控除することもできないといわざるを得ないから,被告らの主張は採用できない。 (ウ) 被告らは,前提事実(8)のとおり,D寝装は,原告に対し,本訴提起後,本件融資にかかる貸金債務のうち1000万円を弁済していること,また,本件融資にかかる貸金債務を含むD寝装の原告(当初債権者阪和銀行)に対する貸金債務を担保するため,Eらが連帯保証しているし,本件担保を含む別紙物件目録1ないし6記載の土地建物を対象とする不動産担保も存在するから,本件融資による損害が発生しない可能性が高いか,少なくとも損害発生の存否や内容が未確定であると主張する。 しかし,前記(1)ア説示のとおり,被告らの善管注意義務等違反による損害は,本件融資の実行により発生し,その額は確定し,その後のD寝装ないしEらの弁済は,損害の填補にすぎないことに照らすと,上記事実をもって,損害が発生していない又は損害発生の存否ないし内容が未確定であるということはできない。 また,D寝装ないし連帯保証人らの弁済の継続又は担保物件からの回収が,債務が履行されたのと同視し得る程度に確実であるということができる場合には,これを損害から控除することができるとしても,証拠(甲31の1・2,32,33)によれば,原告とD寝装及びEらは,当庁平成13年(ワ)第91号事件の平成13年12月14日の口頭弁論期日において,D寝装及びEらが,原告との間で本件融資(残額1932万7662円)及び本件借換(残額 ,原告とD寝装及びEらは,当庁平成13年(ワ)第91号事件の平成13年12月14日の口頭弁論期日において,D寝装及びEらが,原告との間で本件融資(残額1932万7662円)及び本件借換(残額7875万1998円)にかかる元本残金合計9807万9660円を分割で支払うことを主たる内容とする裁判上の和解をしていること,本件土地建物を含む別紙物件目録1ないし6記載の各土地建物につき,上記各債務の担保として,原告(当初抵当権者阪和銀行)のために根抵当権がそれぞれ設定されていたことが認められる。そうすると,D寝装及びEらは,本件融資以外にも,原告に対し,少なくとも本件借換の元本にかかる9807万9660円の支払義務を負っているのであるから,到底,本件融資にかかる弁済を継続することが確実であるということはできないし,原告が,前記各土地建物に設定された根抵当権の存在によって,本件融資にかかる貸金債権の一部を回収できることが確実であるということもできない。したがって,上記事実が存在するからといって,本件融資による損害が発生しないとか未確定であるということはできず,被告らの主張は採用できない。 3 結論以上の次第で,原告の被告らに対する本件請求は,原告が,被告らに対し,商法266条1項5号に基づき,各自前記損害1058万8023円及びこれに対する被告らに対し本件訴状が送達された日の翌日であることが記録上明らかな平成11年3月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度で本件請求を認容し,その余は理由がないからこれを棄却して,主文のとおり判決する。 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正裁判官間史恵裁判官成田 がないからこれを棄却して,主文のとおり判決する。 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正裁判官間史恵裁判官成田晋司

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