判決【被告人の表示省略】 主文 被告人を懲役12年に処する。 未決勾留日数中200日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1(訴因変更後の令和6年3月19日付け起訴状記載の公訴事実)故意に自動車事故を作出して、保険会社等から保険金支払の名目で金銭をだまし取ろうと考え、A、B、C、D、E、F、G及びHと共謀の上、令和2年9月13日午後1時26分頃、仙台市a 区bc 丁目d 番e 号先路上において、前記Bが運転する株式会社IJ店から賃借した自動車(以下「B車両」という。)を、前記Cが運転し、前記A、前記D及び前記Eが同乗する自動車(以下「C車両」という。)に故意に追突し、C車両を前方に押し出して被告人が運転し、前記F及び前記Gが同乗する自動車(以下「K車両」という。)に衝突させる自動車事故を作出した上 1 前記Bが、同日午後1時40分頃、同所において、B車両の賃借先である宮城県柴田郡(住所省略)株式会社IJ店従業員に対し、電話で、真実は、前記自動車事故は故意に作出したものであり、保険金の支払を受けられる場合ではないのに、あたかも不慮の自動車事故で過失によるものであるかのように装い、その旨の内容虚偽の事故報告を行い、情を知らない前記従業員をして、同日午後2時12分頃、B車両を被保険自動車として、株式会社IとL株式会社との間で締結している自動車保険契約に基づき、同社から委託を受けて、自動車事故の受付業務等を行う東京都文京区(住所省略)M株式会社東京支店担当者に対し、前記虚偽の事故報告をさせて、自動車事故を受付させ、同担当者をして、 仙台市f区(住所省略)L株式 けて、自動車事故の受付業務等を行う東京都文京区(住所省略)M株式会社東京支店担当者に対し、前記虚偽の事故報告をさせて、自動車事故を受付させ、同担当者をして、 仙台市f区(住所省略)L株式会社東北損害サービス部仙台損害サービス第一課に同報告内容が入力されたデータを送信させた上、同仙台損害サービス第一課担当者をして、福島県郡山市(住所省略)L株式会社東北損害サービス部郡山損害サービス課に連絡させ、前記仙台損害サービス第一課課長代理N及び前記郡山損害サービス課課長Oらをして、保険金支払のための所定の手続をさせるとともに、同月23日頃、前記Cが同郡山損害サービス課に対して「損害賠償に関する承諾書(免責証書(物損用))」を郵送してC車両に係る対物賠償保険の損害賠償費の支払を、被告人、前記C、前記A、前記D、前記E、前記F及び前記Gが、同日頃から令和3年4月13日頃までの間、「振込先連絡票」等を同郡山損害サービス課に郵送して対人賠償保険の休業損害、慰謝料、通院交通費、高速道路利用料の支払を、令和2年9月23日頃、前記Hが前記仙台損害サービス第一課担当者に、電話で、K車両に係る対物賠償保険の損害賠償費の支払をそれぞれ請求し、同仙台損害サービス第一課及び前記郡山損害サービス課の担当者を介し、前記N及び前記Oらに同請求が正当な保険金の支払請求であると誤信させて各保険金の支払を決定させ、よって、同社から、別表1記載のとおり、同月28日から令和3年4月15日までの間、19回にわたり、株式会社P銀行に開設された被告人名義の総合口座ほか8口座に合計630万2290円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 2 前記Cが、令和2年9月23日頃、前記1記載のC車両に係る対物賠償保険金の請求に当たり、真実は、前記自動車事故は故意に作出したもので 290円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 2 前記Cが、令和2年9月23日頃、前記1記載のC車両に係る対物賠償保険金の請求に当たり、真実は、前記自動車事故は故意に作出したものであり、対物賠償保険免責金の支払を受けられる場合でないのに、あたかも不慮の自動車事故であるかのように装い、前記郡山損害サービス課に対して「損害賠償に関する承諾書(免責証書(物損用))」を郵送して対物賠償保険免責金の支払を請求し、同日頃から同月24日頃にかけて、情を知らない同郡山損害サービス課担当者をして、対物賠償保険免責金5万円をB車両の自動車保険契約者である仙台市g区(住所省略)株式会社Iから前記Cに対して支払うことを依頼すると ともに、同社に対し、「免責金額お振り込みのお願い」及び前記「損害賠償に関する承諾書(免責証書(物損用))」をFAXで送信させ、同社従業員らをして、対物賠償保険免責金支払のための所定の手続をさせるとともに、同日頃、同社レンタル部部長Qに同請求が正当な対物賠償保険免責金の支払請求であると誤信させて対物賠償保険免責金の支払を決定させ、よって、同社から、同月25日、株式会社P銀行に開設された前記Cの旧姓であるR名義の総合口座に5万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 3 被告人が、同月13日午後1時48分頃、K車両を被保険自動車として被告人とS株式会社との間で締結している自動車保険契約に基づき、同社から委託を受けて自動車事故受付業務等を行う大阪府豊中市(住所省略)T株式会社大阪事故受付部担当者に対し、電話で、真実は、前記自動車事故は、故意に作出したものであり、医療保険金の支払を受けられる場合ではないのに、あたかも不慮の自動車事故で過失によるものであるかのように装い、その旨の内容虚偽の事故報告を行い 、真実は、前記自動車事故は、故意に作出したものであり、医療保険金の支払を受けられる場合ではないのに、あたかも不慮の自動車事故で過失によるものであるかのように装い、その旨の内容虚偽の事故報告を行い、情を知らない同担当者に前記自動車事故の受付をさせ、同担当者をして、同報告内容を記載した「自動車事故受付票」をS株式会社仙台第二保険金お支払センター経由で、福島県郡山市(住所省略)同社東北損害サポート部郡山保険金お支払センター宛てに送信させ、同郡山保険金お支払センター課長Uらをして、保険金支払のための所定の手続をさせるとともに、被告人、前記G、前記Fが、同月28日頃から同年10月2日頃までの間、「自動車保険金請求書兼一括払用委任状」等を同郡山保険金お支払センターに郵送して医療保険金の支払をそれぞれ請求し、同郡山保険金お支払センター担当者を介し、前記Uに同請求が正当な医療保険金の支払請求であると誤信させて医療保険金の支払を決定させ、よって、同社から、別表2記載のとおり、同年9月30日から同年10月6日までの間、3回にわたり、前記P銀行に開設された被告人名義の総合口座ほか2口座に合計30万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。 第2(令和6年2月13日付け起訴状記載の公訴事実)令和5年4月24日午前4時33分頃、普通乗用自動車を運転し、仙台市g区h 字ij 番先の信号機により交通整理の行われている交差点を宮城郡k 方面から同区l 方面に向かい直進するに当たり、同交差点の対面信号機が赤色の灯火信号を表示していたとしてもこれを無視して進行しようと考え、同信号機が赤色の灯火信号を表示していたのに、これを殊更に無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約96ないし100キロメートルで進行したことにより、折から左方道 視して進行しようと考え、同信号機が赤色の灯火信号を表示していたのに、これを殊更に無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約96ないし100キロメートルで進行したことにより、折から左方道路から信号に従って進行してきたV(当時61歳)運転の普通乗用自動車(軽四)右側部に自車前部を衝突させ、よって、同人に外傷性心破裂の傷害を負わせ、同日午前8時10分頃、同区(住所省略)独立行政法人Wにおいて、同人を前記傷害により死亡させた。 (証拠の標目)【省略】(事実認定の補足説明) 1 争点判示第2の事実のうち、被告人が、判示の日時場所において自動車を運転し、交差点の対面信号機が赤色を表示していたのに時速96ないし100キロメートルで進行したことにより、被害者運転の自動車に自車を衝突させ、被害者に判示の傷害を負わせて死亡させたことについて当事者間に争いはなく、証拠上も容易に認められる。 本件の争点は、被告人が赤色信号を殊更に無視したか否かである。すなわち、被告人は、本件事故現場である交差点(以下「本件交差点」という。)の2つ前のX交差点を通過する前、同交差点の対面信号機が黄色であることに気が付いたが、安全に止まれないと思い、同交差点を赤色信号で通過したところ、同乗者の発言などから、同交差点の交差道路にパトカーが停車していたことに気付き、追跡されるのではないかとパニックになるとともに、後方を振り返って確認するなどし ていたため、直前まで本件交差点の赤色信号に気が付かず進入してしまった旨供述し、弁護人も、同供述に基づき、被告人は赤色信号を殊更に無視したのではない旨主張する。 2 当裁判所の判断(1) 被告人は、X交差点を時速約86キロメートルで通過しつつ加速した上、X交差点から次のY橋北たもとの交差点(以下「北た は赤色信号を殊更に無視したのではない旨主張する。 2 当裁判所の判断(1) 被告人は、X交差点を時速約86キロメートルで通過しつつ加速した上、X交差点から次のY橋北たもとの交差点(以下「北たもと交差点」という。)にかけてカーブした道路の第1車線を進行しながらウィンカーを出して前方の車両を追い越し、更に第1車線に戻り、以後時速約96ないし100キロメートルの高速度で本件交差点に至っている。このような運転状況からすれば、被告人は基本的に前方を見て運転していたと推認できる。このことに加え、被告人運転車両がX交差点を通過した時点で、本件交差点の対面信号機は赤色を表示していたところ、北たもと交差点から本件交差点までの道路が一直線に伸びていて見通しが良い上、薄暗い時間帯で信号の灯火が見えやすく、前方を見て運転していれば本件交差点の赤色信号に気付かないことは考え難い状況であったことを踏まえると、被告人は、遅くとも北たもと交差点付近においては、本件交差点の対面信号機が赤色であることを認識していたと認められる。 それにもかかわらず、被告人は、北たもと交差点から本件交差点にかけての約5秒間、減速することなく、時速約96ないし100キロメートルという高速度で進行したのであるから、およそ赤色信号に従う意思がなかったと推認できる。 加えて、被告人は、本件事故直前にも、X交差点の対面信号機が黄色であることを同交差点の相当程度前で認識していたと認められるのに、ブレーキを掛けることなく、赤色に変わってから約3秒後に同交差点に進入している。このことからすれば、被告人が、本件事故直前においても、赤色信号を無視する運転をしていたといえる。このことは、被告人が、本件交差点に至る際に、およそ赤色信号に従う意思がなかったことと整合するものであり、前記推認を補強 人が、本件事故直前においても、赤色信号を無視する運転をしていたといえる。このことは、被告人が、本件交差点に至る際に、およそ赤色信号に従う意思がなかったことと整合するものであり、前記推認を補強 する。 (2) これに対し、被告人は、前記のとおり供述するが、X交差点通過後の被告人の運転状況からすると、パニック状態となり、後方を振り返って確認するなどしていたため、本件交差点の赤色信号に直前まで気づかなかったというのは、不自然である。また、パトカーが近づいてくる様子が全くない中で、運転者である被告人が、ミラーを確認するだけでなく、後方を直接目視しながら進行したということ自体、不自然との感が否めず、同乗者2名を含む3名全員が衝突直前まで、見通しのよい場所にある赤色信号に全く気付かなかったというのも、かなり不自然である。 そうすると、被告人の前記公判供述は信用することができず、前記⑴の推認を妨げない。したがって、他に弁護人が指摘する点を踏まえて検討しても、被告人はおよそ赤色信号に従う意思がなかったものと認められ、赤色信号を殊更に無視したといえる。 (法令の適用)【省略】(量刑の理由)量刑の中心となる本件危険運転致死についてみると、被告人は、一般道において、制限速度を大幅に超えた高速度で自動車を走行させ、赤色信号を無視して交差点内に進入しているのであって、事故を発生させる危険が極めて高い犯行態様というほかない。被害者が自ら防ぐことのできない事故によって命を奪われたという結果は重く、遺族からは悲痛な思いが述べられているところ、慰謝の措置は全くされておらず、今後の見通しも立っていない。被告人は、速度超過等を理由として違反者講習を受けて交通法規に対する意識を改める機会があったにもかかわらず、その経験を活かしていないばかりか、 の措置は全くされておらず、今後の見通しも立っていない。被告人は、速度超過等を理由として違反者講習を受けて交通法規に対する意識を改める機会があったにもかかわらず、その経験を活かしていないばかりか、警察官の追跡から逃れたいなどという身勝手な動機で本件犯行に及んだのであるから、交通法規を軽視する姿勢は明らかである。 本件詐欺についてみると、被害額は合計約665万円に上るところ、被告人は、 事故を作出するために、自動車を運転する役目を担うなど重要な役割を果たしている。また、被告人は、首謀者からの誘いを断り切れなかったとはいえ、警察に捕まらないから大丈夫だという言葉を受けて安易に加担しており、犯罪行為に対する抵抗感が乏しい。 以上によれば、本件危険運転致死の犯情はかなり悪く、同種事案(信号殊更無視、処断罪と同一又は同種の罪1件)の中でも重い部類に属するといえる上、本件詐欺の犯情も相応に悪い。そうすると、被告人が、詐欺の犯行を認めて反省の気持ちを示すとともに、本件危険運転致死の被害者遺族に対して謝罪の言葉を述べていること、被告人に前科がないことなどの一般情状を考慮しても、被告人に対しては主文のとおりの刑に処することが相当であると判断した。 (求刑懲役15年)令和6年12月17日仙台地方裁判所第2刑事部 裁判長裁判官須田雄一 裁判官小林礼子 裁判官髙橋祐梨子【別表1及び別表2省略】
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