平成23(行ケ)10314 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年3月22日 知的財産高等裁判所 3部 判決 審決取消
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平成24年3月22日判決言渡平成23年(行ケ)第10314号審決取消請求事件平成24年1月31日口頭弁論終結判決 原告株式会社ナカタ 原告株式会社安田製作所 上記両名訴訟代理人弁理士堀米和春同傳田正彦 被告株式会社カーボテック 訴訟代理人弁護士伊原友己同加古尊温訴訟代理人弁理士小林良平同市岡牧子同中村泰弘同谷口聡 主文 1 特許庁が無効2009-800227号事件について平成23年9月13日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求主文同旨第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯等(1) 原告らは,発明の名称を「炭化方法」とする発明について,平成7年9月29日に特許出願(特願平7-252462号)をし,平成14年10月25日に設定登録がされた(特許第3364065号。請求項の数7。以下,「本件特許」という。)。 (2) 被告は,平成21年10月30日付けで,特許庁に対し,本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された発明について無効審判(無効2009-800227。以下「本件審判」という。)を請求し,原告らは,平成2 成21年10月30日付けで,特許庁に対し,本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された発明について無効審判(無効2009-800227。以下「本件審判」という。)を請求し,原告らは,平成22年2月1日付けで訂正請求をした。これに対し,特許庁は,平成22年10月27日付けで,請求項1を引用する請求項5に係る訂正を除いて訂正を認めた上で,「特許第3364065号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。特許第3364065号の請求項3に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決をした(以下「本件第1審決」という。)。 (3) 原告らは,平成22年12月4日,本件第1審決中,「特許第3364065号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との部分の取消しを求めて,審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10378号)を提起し,平成23年3月3日特許庁に対して訂正審判(訂正2011-390025号。その後,特許法134条の3第4項の規定によりみなし取下げ)を請求した。 これに対し,知的財産高等裁判所は,平成23年3月18日,特許法181条2項により,本件第1審決中,「特許第3364065号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消すとの決定をした。 (4) 特許庁は,審理再開にあたり,平成23年4月14日付けで,原告らに対し,特許法134条の3第2項に規定する訂正を請求するための期間を指定する通知を した。これに対し,原告らは,平成23年4月26日に訂正請求書を提出した(以下,「本件訂正」といい,本件訂正後の明細書,特許請求の範囲及び図面を「本件明細書」という。)。 (5) 特許庁は,平成23年9月13日付けで,請求項1に係る訂正を認めた上で,「特許第33640 下,「本件訂正」といい,本件訂正後の明細書,特許請求の範囲及び図面を「本件明細書」という。)。 (5) 特許庁は,平成23年9月13日付けで,請求項1に係る訂正を認めた上で,「特許第3364065号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は同月26日原告らに送達された。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(以下「本件訂正発明」という。)。 「【請求項1】木材,穀物の殻もしくはコーヒー粕等の粒状の固体からなる可燃物あるいは該可燃物を含む材料を出発原料とし,該出発原料に水を添加し,もしくは添加しないで出発原料の水分量を所要量に調整し,該出発原料とベントナイトを含む無機質粘結材とを混練して原料の表面を該無機質粘結材で被覆して,該原料を,大気に開放された筒状の炉部を有する炭化炉の該炉部内を,該炉部の一端側にある投入口側から他端側にある排出口側へ送り,該原料の送り方向とは反対方向から,原料のガス成分に着火および燃焼させ,前記投入口側で原料を乾燥させ,前記排出口側で,前記無機質粘結材が被覆されていることにより可燃物の酸化を抑制しつつ焼成して,前記可燃物を炭化させることを特徴とする炭化方法。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,請求項1に係る訂正を認めた上で,本件訂正発明は,特開昭51-148701号公報(甲3。以下,「刊行物1」といい,刊行物1に記載された発明を「引用発明」という。)に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,無効にすべきものである,というものである。 審決が認定した引用発明の内容,同発明と本件訂正発明との一致点及び相違点は以下の 明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,無効にすべきものである,というものである。 審決が認定した引用発明の内容,同発明と本件訂正発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 (1) 引用発明の内容パルプ廃滓を出発原料とし,該出発原料を脱水したものにベントナイトを添加し,ロータリキルンへ装入し,熱風吹込温度を700℃又は800℃として,パルプ廃滓を炭化させる炭化方法。 (2) 一致点可燃物あるいは該可燃物を含む材料を出発原料とし,該出発原料に水を添加し,もしくは添加しないで出発原料の水分量を所要量に調整し,該出発原料とベントナイトを含む無機質粘結材とを混練して,投入口側で原料を乾燥させ,排出口側で,前記可燃物を炭化させることを特徴とする炭化方法。 (3) 相違点ア相違点1本件訂正発明においては,「原料の表面を該無機質粘結材で被覆し」と特定されているのに対し,引用発明においては,そのような特定がなされていない点。 イ相違点2本件訂正発明においては,「原料を,大気に開放された筒状の炉部を有する炭化炉の該炉部内を,該炉部の一端側にある投入口側から他端側にある排出口側へ送り,」と特定されているのに対し,引用発明では,そのような特定がなされていない点。 ウ相違点3本件訂正発明においては,「原料の送り方向とは反対方向から,原料のガス成分に着火および燃焼させ,」と特定されているのに対し,引用発明では,そのような特定がなされていない点。 エ相違点4可燃物を炭化させる工程が,本件訂正発明においては,「無機質粘結材が被覆されていることにより可燃物の酸化を抑制しつつ焼成して」と特定されているのに対し,引用発明では,そのような特定がなされていない点。 オ 化させる工程が,本件訂正発明においては,「無機質粘結材が被覆されていることにより可燃物の酸化を抑制しつつ焼成して」と特定されているのに対し,引用発明では,そのような特定がなされていない点。 オ相違点5 可燃物が,本件訂正発明においては,「木材,穀物の殻もしくはコーヒー粕等の粒状の固体からなる」と特定されているのに対し,引用発明においては,そのような特定がなされていない点。 第3 取消事由に関する当事者の主張 1 原告らの主張(1) 取消事由1(一致点の認定の誤り)審決には,本件訂正発明と引用発明との一致点の認定について,以下のとおり,誤りがある。すなわち,ア審決は,引用発明の「パルプ廃滓」は,本件訂正発明の「可燃物あるいは該可燃物を含む材料」に相当すると認定する。 しかし,引用発明の「パルプ廃滓」は水分を含む流動体であるのに対し,本件訂正発明の「可燃物あるいは該可燃物を含む材料」は,木材,穀物の殻もしくはコーヒー粕等の粒状の固体であり全く異なる。また,本件訂正発明において水を加えるのは,膨潤しジェル状となったベントナイトにより粒状の固体を被覆するためであり,粒状の固体の集合体に水を含ませたとしても,パルプ廃滓のような流動体にはならない。 したがって,審決の上記一致点の認定には誤りがある。 イ審決は,引用発明の「出発原料を脱水したものにベントナイトを添加し」は,本件訂正発明の「出発原料とベントナイトを含む無機質粘結材とを混練して」に相当すると認定する。 しかし,引用発明は,パルプ廃滓を使用した固形燃料を製造する発明であり,パルプ廃滓にベントナイトが練り込まれる必要がある。これに対し,本件訂正発明は,無機質粘結材で覆われた炭を製造する発明であり,ベントナイトをバインダとして添加したり,練り込ん を製造する発明であり,パルプ廃滓にベントナイトが練り込まれる必要がある。これに対し,本件訂正発明は,無機質粘結材で覆われた炭を製造する発明であり,ベントナイトをバインダとして添加したり,練り込んだりすることはない。 したがって,審決の上記一致点の認定には誤りがある。 (2) 取消事由2(相違点1,4に係る容易想到性判断の誤り) 審決は,本件訂正発明の「被覆」とは,被覆されることによって,炭化炉内に酸素が供給された状態であっても酸化を抑制して炭化させることができる程度に原料の表面を覆っていることが必要である反面,原料のガス成分に着火および燃焼させることができる程度には原料の表面を覆わない部分が存在することを意味するところ,引用発明においても,ケーキ状に脱水したパルプ廃滓にベントナイトを添加し,混練したものは,ベントナイトがバインダとして作用するとともに,脱水したパルプ廃滓の表面に一部存在しており,これにより酸化を抑制しつつ焼成することが記載されているとして,相違点1及び4は実質的な相違点ではない,と判断する。 しかし,審決の上記判断には誤りがある。すなわち,引用発明は,無機物の被覆効果ではなく,バインダを入れて粒度を上げることにより炭化物の収率を上げる発明である。このことは,刊行物1の実施例1(バインダを用いていないもの)や実施例2(バインダとして無機物である水ガラスを用いているもの)よりも,実施例3(バインダとして有機物であるでんぷんのりを用いているもの)の方が,炭化物の微粉化を避け,比較的そろった粒状物となり,炭化率が高いことからも明らかである(そもそも,刊行物1の実施例1のデータには誤りがあること,実施例1ないし3は,熱風吹込温度,炉内滞留時間が異なることからすれば,審決が,実施例1及び2のデータのみを比較して, とからも明らかである(そもそも,刊行物1の実施例1のデータには誤りがあること,実施例1ないし3は,熱風吹込温度,炉内滞留時間が異なることからすれば,審決が,実施例1及び2のデータのみを比較して,引用発明においても無機物により酸化を抑制しつつ焼成する炭化が認められると認定したことにも誤りがある。)。これに対し,本件訂正発明の出発原料は,粒状固体であり,ベントナイトを添加しても,固体内部に練り込まれず,バインダとして機能しないものであって,原料表面のみを被覆し,酸化を抑制するものである。 また,審決は,原料表面にベントナイトが点在する状態を「一部存在」と称して,これが「被覆」に相当すると認定,判断するが,点在と被覆では技術的意義が異なる。すなわち,引用発明に係る炭化物は,出発原料であるパルプ廃滓のほとんどが外気に露出した状態となっており,揮発成分の気相燃焼の後,表面燃焼が進行するのに対し,本件訂正発明に係る炭化物は,表面が不燃物であるベントナイトにより 被覆された難燃性の炭化物であり,全く技術思想が異なる。 さらに,本件訂正発明は,無機質粘結材によって被覆し,酸化を抑制しつつ焼成して可燃物を好適に炭化させる方法であって,引用発明と比較して極めて有利な作用効果を有する。 したがって,審決の相違点1及び4は実質的な相違点ではないとの認定,判断には,誤りがある。 2 被告の反論(1) 取消事由1(一致点の認定の誤り)に対してア原告らは,引用発明の「パルプ廃滓」は,水分を含む流動体であるのに対し,本件訂正発明の「可燃物あるいは該可燃物を含む材料」は,木材,穀物の殻もしくはコーヒー粕等の粒状の固体であり,引用発明の「パルプ廃滓」が本件訂正発明の「可燃物あるいは該可燃物を含む材料」に相当するとした審決の認定には誤りがある 該可燃物を含む材料」は,木材,穀物の殻もしくはコーヒー粕等の粒状の固体であり,引用発明の「パルプ廃滓」が本件訂正発明の「可燃物あるいは該可燃物を含む材料」に相当するとした審決の認定には誤りがあると主張する。 しかし,上記原告らの主張は失当である。すなわち,刊行物1には,「パルプ廃滓は,予め圧搾プレスしてケーキ状に脱水したもの」,「炭化処理の工程において,パルプ廃滓中の揮発分,水分,その他の溶解成分が除去される」との記載があり,パルプ廃滓中には,炭化工程では除去されない固体状のものが含まれている。また,本件明細書には,可燃物の形状に関わらず,本件訂正発明は適用できる旨記載されており,固体の形状には特段の技術的意義はない。 したがって,審決の上記認定に誤りはなく,原告らの上記主張は失当である。 イ原告らは,引用発明は,パルプ廃滓にベントナイトが練り込まれる必要があるのに対し,本件訂正発明は,無機質粘結材で覆われた炭を製造する発明であり,ベントナイトをバインダとして添加したり,練り込んだりすることはないから,引用発明の「出発原料を脱水したものにベントナイトを添加し」は,本件訂正発明の「出発原料とベントナイトを含む無機質粘結材とを混練して」に相当するとした,審決の認定には誤りがあると主張する。 しかし,パルプ廃滓にベントナイトを含む無機質粘結材を添加することにより,パルプ廃滓に含有される固形物とベントナイトを含む無機質粘結材が混練されるのは当然である。 したがって,審決の上記認定に誤りはない。 (2) 取消事由2(相違点1,4に係る容易想到性判断の誤り)に対して原告らは,引用発明は,無機物の被覆効果ではなく,バインダを入れて粒度を上げることにより炭化物の収率を上げる発明であるのに対し,本件訂正発明は,ベントナイトを添加し 易想到性判断の誤り)に対して原告らは,引用発明は,無機物の被覆効果ではなく,バインダを入れて粒度を上げることにより炭化物の収率を上げる発明であるのに対し,本件訂正発明は,ベントナイトを添加しても,固体内部に練り込まれず,バインダとして機能しないものであって,原料表面のみを被覆し,酸化を抑制するものであるから,相違点1及び4は実質的な相違点ではないとの審決の判断には誤りがあると主張する。 しかし,原告らの上記主張は,失当である。すなわち,刊行物1には,パルプ廃滓にベントナイト等を添加した方が炭化物の収率が良いことが記載されており(炭化物の収率を向上させることを目的として,炭化物の微粉化を避け,比較的そろった粒状物を得ることは記載されていない。),かかる記載からは,添加したベントナイトがバインダとしての機能と共に酸化抑制機能も奏しているものと理解することができる。また,刊行物1には,木材等の固体状のもの等によってなるパルプ廃滓にベントナイトを所要量混練した上で,これをロータリーキルンで炭化処理すると,好適に炭化ができるとの本件訂正発明の技術思想がすべて開示されている。 したがって,審決の上記認定に誤りはなく,原告らの上記主張は失当である。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,審決の相違点1及び4に係る容易想到性判断には誤りがあり,これを取り消すべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 事実認定(1) 本件訂正発明ア本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりである。 イまた,本件明細書には,以下の記載がある。 「【0002】【従来の技術】従来,炭焼きのように可燃物を炭化するには,閉塞性のある燃焼空間内に可燃物をプールし,ガス成分を燃焼させている。この方法は,いわば閉 明細書には,以下の記載がある。 「【0002】【従来の技術】従来,炭焼きのように可燃物を炭化するには,閉塞性のある燃焼空間内に可燃物をプールし,ガス成分を燃焼させている。この方法は,いわば閉塞式の炭化炉であり,炭化炉内への酸素の供給量を抑制することで,炭化した可燃物がさらに酸化して灰にならないようにすると共に,閉塞式のため,炭化炉内の温度を高温に維持でき,ガス成分を木材の芯等の可燃物にかかる内部からも抜き出すことができ,可燃物を効率良く炭化させることができるのである。ところで,本願出願人は,背景技術として,「可燃物あるいは可燃物を含む物を出発原料とし,該原料の表面をベントナイト等の無機質粘結材で被覆して焼成すると,可燃物を酸化雰囲気で焼成しても灰になるまで燃焼せずに炭化させることができる」という炭化物の製造方法を提案している。この方法によれば,可燃成分が無機質粘結材の微粒子で被覆されることによって酸化が抑制されるためと推察される。この効果は,無機質粘結材と水溶性糖類を同時に被覆するときに,さらに向上する。 【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来の閉塞式の炭化炉では,木材等の大型の可燃物から炭を作る際には有効であるが,可燃物を炭化炉内に一旦プールするため,時間的な効率が悪かった。従って,大量の炭化物を工業的に生産するには適さないという課題があった。また,可燃物をプールしてガスを燃焼させるため,炭化炉内が高温になり,炉の内壁をセラミック等の耐熱材で形成する必要があり,工業的に利用できる炭化炉を製作するコストおよび保守するコストが高くなってしまうという課題があった。 【0004】そこで,本発明の目的は,可燃物から炭化物を工業的に効率良く生産することが可能である炭化炉を提供することにある。さらに,炭化炉自体 保守するコストが高くなってしまうという課題があった。 【0004】そこで,本発明の目的は,可燃物から炭化物を工業的に効率良く生産することが可能である炭化炉を提供することにある。さらに,炭化炉自体の製作コストおよび保守コストを低減することにもある。」 「【0010】【発明の実施の形態】・・・10は炉部であり,表面を無機質粘結材で被覆した可燃物或いは可燃物を含む材料を原料とし,その原料の可燃物を炭化させて炭化物を連続的に効率良く生産するために,両端が開放された筒状に形成されている。従来の閉塞式の炭化炉とは異なり,筒状の炉部10の両端は開放しており,いわば開放式の炭化炉である。・・・」「【0012】・・・炉部10の一端側にある投入口12側で原料が乾燥され,中途部で着火され,他端側にある排出口14までの間でガスが燃焼されて,最終的に炭化物が排出口14から排出されるのである。・・・」「【0013】・・・このバーナー16で炎を炉部10内へ放射して,原料の主にガス成分を燃焼させる。・・・」「【0018】・・・また,原料のガス成分が盛んに燃焼される部分では,かき上げ羽根35により原料をかき上げてかき混ぜることで,原料に空気を十分に当てて均一に燃焼させることができる。・・・」「【0021】・・・前記原料の可燃物は,ベントナイト等の無機質粘結材で被覆されており,酸化が抑制されているため,ガス化した燃焼物は燃えるが,炭素の酸化は抑制される。・・・」「【0022】・・・その炭化物は酸化が抑制されているため,排出されると急激に温度が奪われ,排出された直後に火が消え,効率良く粒状の粒炭というべき炭化物を生産することができる。・・・」「【0024】・・・無機質粘結材としては,耐火粘土,ベントナイト,特殊粘土等のいわゆる粘土質粘結材 ,排出された直後に火が消え,効率良く粒状の粒炭というべき炭化物を生産することができる。・・・」「【0024】・・・無機質粘結材としては,耐火粘土,ベントナイト,特殊粘土等のいわゆる粘土質粘結材が好ましく,とりわけベントナイトの酸化抑制効果が大きい。・・・なお,原料に無機質粘結材を被覆するには,コーヒー粕のように原料に水分が含まれている場合は新たに水分を添加することなく,もみ殻のように水分を含んでいない場合は新たに水分を添加し,単に混練すればよい。被膜は薄くても十分な酸化抑制効果がある。・・・」 「【0026】【発明の効果】本発明にかかる炭化方法によれば,木材,穀物の殻もしくはコーヒー粕等の粒状の固体からなる可燃物あるいは該可燃物を含む材料の表面を無機質粘結材で被覆したものを原料とし,該原料を,大気に開放された筒状の炉部を有する炭化炉の該炉部内を,該炉部の一端側にある投入口側から他端側にある排出口側へ送り,該原料の送り方向とは反対方向から,原料のガス成分に着火および燃焼させ,前記投入口側で原料を乾燥させ,前記排出口側で焼成するようにしているので,前記無機質粘結材が被覆されていることにより可燃物の酸化を抑制しつつ焼成して可燃物を好適に炭化させることができる。」(2) 刊行物1の記載刊行物1(甲3)には,以下の記載がある。 「特許請求の範囲ロータリキルンにて炭化処理して粒状化したパルプ廃滓をコークス代用成分として配合使用したことを特徴とする豆炭,煉炭等の固形燃料。」「発明の詳細な説明本発明は,パルプ廃滓の粒状炭化物をコークス代用成分として配合使用した豆炭,煉炭等の固形燃料に関する。 本発明の目的は,ヘドロ公害の源としてその処理に困難をきわめている製紙工場のパルプ廃滓の無公害化処理,特に有効的な2次利用を兼 をコークス代用成分として配合使用した豆炭,煉炭等の固形燃料に関する。 本発明の目的は,ヘドロ公害の源としてその処理に困難をきわめている製紙工場のパルプ廃滓の無公害化処理,特に有効的な2次利用を兼ねた工業的処理を行うことである。 本発明の次の目的は,ほとんどただ同然に入手できるパルプ廃滓の炭化処理したものをコークス代用成分として使用することで,非常に安価な,そして,着火性と火もちが良く無害な固形燃料を提供することである。」(1頁左下欄8行~末行)「パルプ廃滓は,予め圧搾プレス処理してケーキ状に脱水したものをロータリキルンへ装入するのが好ましい。」(右下欄16行~18行)「炉に装入されたパルプ廃滓の脱水ケーキは,高温多湿雰囲気化で乾燥-炭化反 応が進み,炉内滞留時間と熱風吹込温度で適切に管理される。 煉炭,豆炭におけるコークス代用成分として利用する場合,炭化物粒度は大きすぎても小さすぎてもいけないが,炉内操業条件として熱風吹込温度を600~1000℃程度とし,炉内滞留時間を60~120分の範囲に維持すると,例えば粒径1㎜以上の炭化物が比較的容易に得られ,30~70%の収率で表面不活性な炭化物が得られる。得られた炭化物を目的に応じて種々の粒度にふるい分けすればよい。 本発明のように煉炭,豆炭用のコークス代用成分として使用するには,100メッシュ程度の粒度のものを選択するのが好ましい。 炭化物の微粉化を避け,比較的そろった粒状物を得るためには,およびその収率を向上させるため,パルプ廃滓に予め0.5~3.0%程度バインダを添加すると有効的である。バインダとしては,水ガラス,でんぷんのり,ベントナイト,セメント,トバモライトなどがある。 次に,実際の炭化処理により得られた成分について記する。 実施例1は,ロータリキルンへ装入した 的である。バインダとしては,水ガラス,でんぷんのり,ベントナイト,セメント,トバモライトなどがある。 次に,実際の炭化処理により得られた成分について記する。 実施例1は,ロータリキルンへ装入したパルプ廃滓を,熱風吹込温度を900℃とし,炉内滞留時間を120分に設定した条件下で炭化処理した場合である。 実施例2は,ロータリキルンへ装入したパルプ廃滓を,熱風吹込温度を800℃とし,炉内滞留時間を90分とした場合である。 実施例3は,ロータリキルンへ装入したパルプ廃滓を,熱風吹込温度を700℃とし,炉内滞留時間を60分とした場合である。 それぞれの結果は以下の表-1,表-2の通りである。表-1は炭化物の組成を表わし,表-2は炭化物の粒度を示している。(2頁左上欄1行~右上欄16行)(表-1)成分項目炭素(%)水分(%)灰分(%)備考実施例1 1%以下 実施例2 〃 水ガラス2%実施例3 〃 でんぷんのり1%(表-2)粒度(%) 項目 メッシュ以上1~10メッシュ以上10~28メッシュ以上28~50メッシュ以上50~100メッシュ以上 メッシュ以下実施例10.513.2 38.817.6実施例23.317.323.821.1 14.5実施例34.5 18.617.76.2 2 判断上記本件明細書によれば,従来の閉塞式の炭化炉においては,時間的な効率が悪いこと(木材等の大型の可燃物から炭を作る際に,可燃物を炭化炉内に一旦プールすることによる効率の低下),及び炭化炉の製作コスト及び保守コストが高い ば,従来の閉塞式の炭化炉においては,時間的な効率が悪いこと(木材等の大型の可燃物から炭を作る際に,可燃物を炭化炉内に一旦プールすることによる効率の低下),及び炭化炉の製作コスト及び保守コストが高いこと(可燃物をプールしてガスを燃焼させるため,炭化炉内が高温になり,炉の内壁をセラミック等の耐熱材で形成する必要があることによるコストの増加)との課題があったところ,本件訂正発明は,上記課題を解決するため,出発原料とベントナイトを含む無機質粘結材とを混練して原料の表面を該無機質粘結材で被覆し,原料のガス成分に着火及び燃焼させ,無機質粘結材が被覆されていることにより可燃物の酸化を抑制しつつ焼成して,可燃物を炭化させるものとした発明である。本件明細書によれば,本件訂正発明における炭化方法は,炭化炉内への酸素の供給を抑制することにより,酸化を抑制して炭化する従来の炭化方法とは異なり,炭化炉内には酸素が供給されるものの,ベントナイトを含む無機質粘結材で原料を被覆した状態とし,主として原料のガス成分を燃焼させることによって原料の可燃物を炭化させるものであると認められる。 そうすると,本件訂正発明における「原料の表面を該無機質粘結材で被覆し」における「被覆」とは,原料の表面の一部分に無機質粘結材が存在する程度では足りず,炭化炉内に酸素が供給された状態であっても酸化を抑制して炭化させることができる程度に原料の表面を覆うが,他方,原料に着火でき,原料のガス成分を燃焼できる程度を超えるほどには原料の表面を覆わないことを意味するものと解される。 これに対し,上記刊行物1の記載によれば,引用発明は,ロータリーキルンにて炭化処理して粒状化したパルプ廃滓をコークス代用成分として配合使用した豆炭,煉炭等の固形燃料に関する発明であり,①パルプ廃滓は,予め圧搾プ 上記刊行物1の記載によれば,引用発明は,ロータリーキルンにて炭化処理して粒状化したパルプ廃滓をコークス代用成分として配合使用した豆炭,煉炭等の固形燃料に関する発明であり,①パルプ廃滓は,予め圧搾プレス処理してケーキ状に脱水したものをロータリキルンへ装入するのが好ましいこと,②ベントナイト等のバインダを添加しなくても,所定の収率で炭化物が得られるが,炭化物の微粉化を避け,比較的そろった粒状物を得るため,及びその収率を向上させるため,パルプ廃滓に予め0.5~3.0%程度,水ガラス,でんぷんのり,ベントナイト等のバインダを添加すると有効的であること,③生成される粒状炭化物の結晶構造は多孔質であり,空気を豊富に含有することから,燃焼時にその含有空気が寄与して不完全燃焼のおそれがないことが認められる。以上によれば,引用発明は,炭化した際の微粉化を避け,比較的そろった粒状物を得るため,水ガラス,でんぷんのり,ベントナイト等をバインダとして添加するものであり,微粉化が避けられる結果,収率の向上が図られるものと理解することができる。したがって,引用発明において,原料であるパルプ廃滓とベントナイト等のバインダが混練された結果,パルプ廃滓の表面にベントナイト等が一部存在しているとしても,ベントナイト等を用いてパルプ廃滓を被覆することにより,炭化炉内に酸素が供給された状態であっても酸化を抑制して炭化させることができる程度に原料の表面を覆っていると認めることはできない。 上記のとおり,引用発明は,脱水したパルプ廃滓の表面をベントナイト等で被覆しなくても酸化が抑制され炭化することができるものであり,本件訂正発明の上記炭化方法とは,その技術的意義を異にする。したがって,本件訂正発明の相違点1 及び4に係る構成は,実質的な相違点とはいえないとした審決の判 れ炭化することができるものであり,本件訂正発明の上記炭化方法とは,その技術的意義を異にする。したがって,本件訂正発明の相違点1 及び4に係る構成は,実質的な相違点とはいえないとした審決の判断には,誤りがあり,また,本件訂正発明の相違点1及び4に係る構成に至ることが容易であるということもできない。 これに対し,被告は,刊行物1には,パルプ廃滓にベントナイト等を添加した方が炭化物の収率が良いことが記載されており,かかる記載から,添加したベントナイトの機能としては,バインダとしての機能と共に酸化抑制機能も奏しているものと理解することができると主張する。しかし,被告の上記主張は失当である。すなわち,刊行物1には,ベントナイト等を用いて出発原料を被覆することは記載も示唆もされていない。なお,刊行物1においては,実施例1(バインダを用いないもの)に比べ,実施例2(無機物である水ガラスをバインダとして用いたもの)の方が炭化物の収率はよくなっているものの,実施例1及び2における炭化の条件(熱風吹込温度及び炉内滞留時間)が異なる上,実施例2よりも実施例3(有機物であるでんぷんのりをバインダとして用いたもの)の方が炭化物の収率がよくなっており,かかる実施例から,刊行物1には無機質粘結材を用いて原料を被覆することにより酸化を抑制することが開示されているとはいえない。 以上によれば,相違点1及び4は実質的な相違点とはいえないとして,本件訂正発明は,引用発明等から容易想到であるとした,審決の判断には誤りがある。 3 結論以上のとおりであり,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求には理由がある。その他,被告は,縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 主文 いて判断するまでもなく,原告らの請求には理由がある。その他,被告は,縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官知野明

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