主文 1 1審原告の控訴について 1審被告東横インは,1審原告に対し,原判決別紙ホテル目録A記載134のホテルの客室合計114室に設置した各受信設備について,平成24年3月14日到達の書面をもって1審原告が1審被告東横インにした, 放送受信契約者を1審被告東横イン,契約種別を衛星契約とする各放送受信契約の締結の申込みを各承諾せよ。 1審被告東横インは,前項の裁判が確定したときは,1審原告に対し,563万9580円を支払え。 2 1審被告らの控訴について 1審被告らの控訴をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも1審被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 1審原告 主位的請求主文1項同旨予備的請求ア原判決主文14項を次のとおり変更する。 イ 1審被告東横インは,1審原告に対し,563万9580円を支払え。 2 1審被告ら 原判決中,1審被告ら敗訴部分を取り消す。 上記部分に係る1審原告の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(以下において略称を用いるときは,別途定めるほか,原判決に同じ。) 1 本件は,1審原告において,1審被告らに対し,1審被告らがそれぞれ運 営するホテルの客室等合計3万4426か所に遅くとも平成24年1月までに設置した衛星受信機について,平成26年2月28日付け放送受信契約書(以下「本件放送受信契約書」という。)が提出されたことにより,1審原告と1審被告らとの間において,それぞれ放送受信契約が成立し,1審被告らが当該受信機の設置の月から放送受信料の支払義務を負うとして,平成24年1月から 平成26年1月までの期間における放送受信料合計19億293 の間において,それぞれ放送受信契約が成立し,1審被告らが当該受信機の設置の月から放送受信料の支払義務を負うとして,平成24年1月から 平成26年1月までの期間における放送受信料合計19億2932万1040円の支払を求める(以下「第1請求」という。)とともに1審被告東横インに対し,同1審被告が平成25年10月まで運営していたホテル「東横インa駅新幹線口」の客室114室に遅くとも平成24年1月までに設置した衛星受信機について,選択的に,①1審原告による放送受信契約の申込みが1審被告 東横インに到達した時点で,放送受信契約が成立したとして,平成24年1月から平成25年10月までの期間における放送受信料563万9580円の支払,又は,②1審被告東横インは放送受信契約を締結しないことにより,法律上の原因なく1審原告の損失により放送受信料相当額を利得しているとして,不当利得返還請求として上記同額の支払を求めた事案である。 原審は,1審原告の上記の請求を全部認容し,上記の各請求をいずれも棄却したところ,1審原告及び1審被告らが敗訴部分を不服としてそれぞれ控訴した。なお,1審原告は,当審において,上記に関する訴えを変更し,主位的に,1審被告東横インは,放送法64条1項に基づき,1審原告からの放送受信契約の申込みを承諾する義務があるとして,当該承諾の意思表示をする よう求めるとともに,これにより成立する放送受信契約に基づく放送受信料として563万9580円の支払を求め,予備的に,不当利得返還請求を維持した(以下「第2請求」という。)。 2 「争いのない事実等」は,原判決「事実及び理由」第2の1に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点 本件受信機A2について,1審原告は,1 いう。)。 2 「争いのない事実等」は,原判決「事実及び理由」第2の1に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 争点 本件受信機A2について,1審原告は,1審被告東横インに対し,放送受信契約承諾の意思表示を求めることができるか(主位的請求関係)。 本件受信機A2について,放送受信料相当額の不当利得返還義務が発生したか(予備的請求関係)。 規約2条2項,4項の有効性 本件放送受信契約書の提出により,平成24年1月から放送受信料を支払う旨の契約が成立したか。 本件申込書の法的効力ないし平成20年合意の存否1審原告の本件請求は,信義則違反ないし権利濫用であるか。 事業所割引の遡及適用の有無 なお,原審における争点(原判決「事実及び理由」第2の2)の⑵①(受信設備設置者が放送法64条1項に基づいて放送受信契約締結義務を負うかどうか)及び②(放送受信契約が1審原告の放送受信契約締結の申込みの到達により,申込みを受けた受信設備設置者の承諾の意思表示を得ることなく成立するものであるかどうか)に係る点については,当審において1審被告らが従前の 主張を撤回したことにより,争いがなくなった。 4 争点に関する当事者の主張本件受信機A2について,1審原告は,1審被告東横インに対し,放送受信契約承諾の意思表示を求めることができるか。 (1審原告の主張) 1審原告は,本件受信機A2について,放送法64条1項に基づく放送受信契約の締結を申し込む旨の平成24年3月14日付け書面を1審被告東横インに対し送付したので,同1審被告には,放送受信契約を承諾する義務が生じた。そして,その後,本件受信機A2の設置されたホテル「東横インa 駅新幹線口」の運営主体は別会社に変 付け書面を1審被告東横インに対し送付したので,同1審被告には,放送受信契約を承諾する義務が生じた。そして,その後,本件受信機A2の設置されたホテル「東横インa 駅新幹線口」の運営主体は別会社に変更されたが,それによって上記義務が消 滅することはないから,1審被告東横インは,依然として承諾する義務を負 っており,1審原告は,1審被告東横インに対し,放送受信契約締結の承諾の意思表示を求めることができる。 (1審被告東横インの主張)否認ないし争う。 本件受信機A2について,放送受信料相当額の不当利得返還義務が発生し たか。 (1審原告の主張)原判決「事実及び理由」第2のに記載のとおりであるから,これを引用する。 (1審被告東横インの主張) 受信設備の設置が終了した以上,1審被告東横インは,放送受信契約締結義務を負っていないのであるから,存在しない義務を免れたことによる利得など観念することはできないし,平成24年1月から平成25年10月までの期間,利用客等が放送を視聴したことにより1審被告東横インが現実に得た利益についての主張立証は何ら存しないから,不当利得は成立しない。 規約2条2項,4項の有効性(1審被告らの主張)放送法64条1項は,受信設備設置者に対し,受信設備設置者という「人」を単位として,1審原告との間で1件の放送受信契約を締結する義務を課したものであり,規約のうち,事業所等の住居以外の場所に設置された放送受 信設備(受信機)に関し,設置場所毎に放送受信契約を締結すべきものと定め,住居に設置された放送受信設備の場合(「人」を単位として契約を締結しなければならないと定める。)と差異を設けている部分(規約2条2項,4項)は,その場所に放送受信設備を設置した者に対 きものと定め,住居に設置された放送受信設備の場合(「人」を単位として契約を締結しなければならないと定める。)と差異を設けている部分(規約2条2項,4項)は,その場所に放送受信設備を設置した者に対して過重な負担を課すものであって,放送法64条1項に反し,違法無効である。 仮に,放送法64条1項がこのような規約の定めを許容していると解する ならば,住居とそれ以外の場所との間で,何ら合理的な理由のない差異を設けることを許容していることになるので,放送法64条1項の規定は,憲法14条に反する違憲無効なものというべきである。 (1審原告の主張)放送法施行規則23条2号は,放送受信契約の単位は規約において定める ものと規定し,これを受けて,1審原告は,総務大臣の認可を得て規約を制定しているのであるから,違法無効とされる点は存しない。1審被告らの主張は,要するに,ホテル等においては稼働状況等を考慮して放送受信契約が締結されるべきであるとの政策論ないし立法論に属するものにすぎない。 本件放送受信契約書の提出により,平成24年1月から放送受信料を支払 う旨の契約が成立したか。 (1審原告の主張)本件各受信機(本件受信機A2を除く。)については,1審被告らから本件放送受信契約書が提出されたことにより,平成26年2月28日,1審原告と1審被告らとの間に,それぞれ放送受信契約(支払方法を「継続振込(請 求書支払)」,支払コースを「12か月前払」とする衛星契約)が成立したから,規約5条1項に基づき,放送受信契約者として当該受信機の設置の月(遅くとも平成24年1月)からの放送受信料の支払義務が発生した。 (1審被告らの主張)1審原告と1審被告らとの間では,本件申込書(各ホテルの客室数の一 定割合に相当 該受信機の設置の月(遅くとも平成24年1月)からの放送受信料の支払義務が発生した。 (1審被告らの主張)1審原告と1審被告らとの間では,本件申込書(各ホテルの客室数の一 定割合に相当する契約件数につき放送受信料を支払うとするもの)によって放送受信契約が締結されているから,その後,本件放送受信契約書が新たに取り交わされるまでの間の法律関係は,原則として,本件申込書に規定された内容によって規律されるものである。そうでないとしても,本件申込書は,本件受信契約書と一体不可分のものとして理解すべきであるか ら,本件放送受信契約書を提出することによって成立した放送受信契約の 内容は,本件申込書1項及び2項で規定された内容と合致する限度で成立するにすぎない。いずれにせよ,本件申込書で定められた割合を超える部分については,1審被告らが本件放送受信契約書を提出しても,本件申込書の法的効力によって,放送受信料の支払義務が受信機の設置時に遡って発生することにはならない。 仮に,放送受信料支払義務を遡及的に発生させるのであれば,その旨の明示的な合意が必要となるところ,本件では,1審被告らは,本件申込書で定められた割合を超える部分については契約の成立を承諾しておらず,1審原告もそのことを熟知した状態で,本件放送受信契約書が取り交わされたのであるから,そのような合意が存しなかったことは明らかである。 本件申込書の法的効力ないし平成20年合意の存否この点に関する当事者の主張は,以下のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」第2の5に記載のとおりであるから,これを引用する。 (当審における1審被告らの主張)前記記載のとおり,本件放送受信契約書が新たに取り交わされるまで の間の1審原告と1審被告らの間の法 」第2の5に記載のとおりであるから,これを引用する。 (当審における1審被告らの主張)前記記載のとおり,本件放送受信契約書が新たに取り交わされるまで の間の1審原告と1審被告らの間の法律関係は,原則として,本件申込書に規定された契約内容によって規律されるものであり,又は,本件放送受信契約書を提出することによって成立した放送受信契約の内容は,本件申込書1項及び2項で規定された内容と合致する限度で成立するにすぎないから,いずれにせよ,本件申込書で定められた割合を超える部分について は,放送受信料の支払義務が受信機の設置時に遡って発生することにはならない。 仮に,放送受信料の支払義務が受信機の設置時に遡って発生すると解するとしても,以下のとおり,1審原告と1審被告らとの間では,本件申込書に定める割合を超える部分については,受信契約締結等義務を免除する との停止条件付きの免除合意(平成20年合意)が成立しているので,こ れにより,1審被告らの受信契約締結等義務は既に免除されている。さらに,仮に,免除合意までは成立していないとしても,下記カ記載の1審原告の対応に照らせば,受信料支払請求権が放棄されたと評価すべきである。 ア 1審原告と1審被告らとの間では,本件各ホテルの各客室等に設置された受信機の数の5%に当たる件数について放送受信契約を締結すれ ば足りるといった平成9年合意が成立し,それに基づいた運用が約10年もの長きにわたって行われていたのであるから,この事実自体が,1審原告と1審被告らとの間で,平成20年合意が成立していたことを強く推認させるものである。 イ 1審原告による平成9年合意の見直しの提言は,放送受信契約締結率 をいずれは100%に高めたいといった趣旨にすぎなかった。そ 0年合意が成立していたことを強く推認させるものである。 イ 1審原告による平成9年合意の見直しの提言は,放送受信契約締結率 をいずれは100%に高めたいといった趣旨にすぎなかった。そして,1審原告が,放送受信料負担の急増による経営圧迫を避けるための激変緩和措置を望む1審被告らとの間で,締結率を100%まで高めていく合意をするためには,全数契約に至るまでの間,一定の範囲で受信契約締結等義務を免除して,1審被告らの放送受信料支払の負担を軽減する 方策を採ることこそが合理的な対応であった。 ウ放送法64条2項の規定は,既に1審原告との間で放送受信契約を締結して放送受信料支払義務を負っている放送受信契約者から徴収すべき放送受信料の免除を禁止した規定であって,未だ放送受信契約を締結していない者との間で放送受信契約の締結を要しない旨の合意をする ことは禁止されておらず,これをも禁止の対象とすることは,罰則規定のある同法64条2項の規定の拡大解釈に当たり,罪刑法定主義に照らして,およそ許されない。仮に,それが禁じられていたとしても,だからといって,1審原告が放送法に反する対応を取らなかったとは限らない。 エ 1審原告は,建前と本音を使い分けており,本件申込書3項及び5項 の規定は,1審原告が会計検査院,国会,マスコミ等に対して,1審被告らとの間においても放送受信契約に基づく全数契約を行っているといった対外的な説明を可能とするために設けられたにすぎない。 オ本件申込書の中に,定められた割合を超える部分の放送受信料の後日支払に関する記載は一切ないが,そのことは,これらを免除する意思を 黙示的に示していると見るのが自然かつ合理的である。1審原告の bが送信した電子メールには,「約800万 分の放送受信料の後日支払に関する記載は一切ないが,そのことは,これらを免除する意思を 黙示的に示していると見るのが自然かつ合理的である。1審原告の bが送信した電子メールには,「約800万円の負担減となります。」との記載があるが,文言上,これが債務の消滅を意味するものであったことは明らかである。 カ本件申込書が提出された後,1審原告は,本件申込書の定める放送受 信契約締結率に従って請求書を作成しており,それを超える受信料の支払を1審被告らに一切求めなかった。このような1審原告の対応からすれば,1審原告において,本件申込書で定められた割合を超える放送受信契約の締結を1審被告らに対して求める意思は皆無であったというほかなく,平成20年合意が成立していたことを裏付けている。 キ平成20年合意で定められた内容は,平成22年据え置き合意及び平成23年据え置き合意によって一部変更されたものの,1審被告らは,これに従って,締結すべき放送受信契約を全て締結し,平成26年2月,本件放送受信契約書を提出して締結率100%を実現することによって,その条件を全て成就させたのであるから,本件申込書で定められた 割合を超える部分の放送受信契約締結等義務は,全て免除された。 1審原告の本件請求は,信義則違反ないし権利濫用であるか。 (1審被告らの主張)以下のとおり,1審原告の本件請求は,信義則違反ないし権利濫用として許されないというべきである。 ア 1審原告は,これまで長年にわたり,広い地域で,機関・施設の種類を 問わず,受信機が設置されていることが明らかで,調査を行えば容易に把握できるにもかかわらず,放送受信契約を締結せず,放送受信料の徴収も行わないといったように,放送受信料の 関・施設の種類を 問わず,受信機が設置されていることが明らかで,調査を行えば容易に把握できるにもかかわらず,放送受信契約を締結せず,放送受信料の徴収も行わないといったように,放送受信料の免除と同様の運用を行ってきた。 そのような運用を続けてきた1審原告が主導して,本件申込書の内容で合意を求めてきたのであるから,仮に,その合意が法的な受信料支払義務の 免除に当たらないとしても,本件申込書に記載された割合を超える受信機について受信契約を締結し,あるいは放送受信料を支払う必要がないものと期待するのは合理的であり,ましてや,将来,過去に遡って受信料を支払う必要がないと理解するのは当然である。我が国唯一の公共放送を一手に担うといった公的な存在である1審原告の長年の言動ないし取扱いを 信頼するのは当然であって,このような1審被告らの期待は,法的保護に値するものである。 イ放送受信契約締結率を上げていく方針を採ってからも,1審原告は,受信料を実質免除することに関して幅広い裁量を有しており,全国旅館生活衛生同業組合等の団体との間においては,団体員との間の放送受信契約締 結の取次ぎや放送受信料委託業務の委託契約を締結することにより,実質的な放送受信料の減額を認める取扱いをしており,委託契約への参加率や取次率が極めて低率であっても,これらに関係なく委託料を定めて,大幅な受信料の割引を行っている。それにもかかわらず,1審被告らに対しては,これらの委託契約の締結を合理的な理由なく拒絶して,本件請求を行 うといった,極めて恣意的かつ差別的な取扱いを行っている。 (1審原告の主張)1審原告において,本件申込書で定められた割合を超える受信設備について,放送受信契約を締結しなくても構わないといった合意をしたことはなく, 的かつ差別的な取扱いを行っている。 (1審原告の主張)1審原告において,本件申込書で定められた割合を超える受信設備について,放送受信契約を締結しなくても構わないといった合意をしたことはなく,1審被告らに対しても,全数の放送受信契約を締結させるように繰り返し働 きかけてきた。そもそも,1審被告らは,本件申込書に定められた割合の放 送受信契約の締結すら遵守していなかったものであるし,1審原告は,平成24年1月に本件各受信機の設置の事実を確認し,同年3月14日付け書面により,これらについて放送受信契約の締結を申し込んだのであるから,少なくともそれ以降は,1審被告らは,本件各受信機について受信料支払義務を負う可能性があることを明確に認識していたのであり,受信料不払につい ての期待が生じる余地はなかった。また,放送受信契約締結の取次ぎや放送受信料委託業務の委託契約は,放送受信料の減免等ではないから,1審被告らは,自らの関係する組合が委託先とならなかったことへの不満を述べているにすぎず,信義則ないし権利濫用法理を適用すべき事情は存しない。 事業所割引の遡及適用の有無 この点に関する当事者の主張は,以下のとおり加えるほかは,原判決「事実及び理由」第2の6に記載のとおりであるから,これを引用する。 (当審における1審被告らの補充主張)事業所割引の適用は,受信機設置月に遡る旨の明文規定がなくても,規約5条の5第1項を合理的に解釈すれば,放送受信契約の成立時に支払うべき 受信手数料,すなわち,受信機の設置月からの受信手数料を適用対象としているというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件受信機A2について,1審原告は,1審被告東横インに対し,放送受信契約承諾の意思表示 信機の設置月からの受信手数料を適用対象としているというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件受信機A2について,1審原告は,1審被告東横インに対し,放送受信契約承諾の意思表示を求めることができるか)について 放送法64条1項は,受信設備設置者に対し放送受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,1審原告からの放送受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には,1審原告がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって放送受信契約が成立するものと解される(最高裁平成26年(オ)第1130号,同年(受)第1440号,第 1441号同29年12月6日大法廷判決・民集71巻10号1817頁参照)。 もっとも,本件受信機A2の受信設備設置者であった1審被告東横インは,平成24年3月14日付け書面により1審原告からの放送受信契約の申込みを受けたが,その後,ホテルの経営主体の変更に伴い,現時点では受信設備設置者ではなくなっていることから,本件においては,過去の受信設備設置者に対しても,承諾の意思表示を命 ずることができるかが問題となる。 そこで検討するに,判決により承諾の意思表示を命じた場合には,「受信設備を設置した月からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約」が,上記判決の確定のときに成立すると解すべきであるから,受信料の支払義務は,上記判決の確定時以降に発生する分に限られることなく,受信設備を設置した月から生 ずることになるというべきである。そして,そもそも受信設備をいったん設置した以上は,その時点において,受信契約(受信設備を設置した月からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約)を締結しなければならない法的義務が既に発生しているのである もそも受信設備をいったん設置した以上は,その時点において,受信契約(受信設備を設置した月からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約)を締結しなければならない法的義務が既に発生しているのであるから(放送法64条1項),その後,受信設備を廃止したとしても,既に発生した義務がこれにより消滅すると解するのは相当でない。 そうすると,このように既に発生し,消滅していない義務に基づき,判決により承諾の意思表示を命ずることは,受信設備を廃止せずに受信を継続していた場合と何ら変わりがないというべきであるから,現時点では受信設備設置者ではなくなっている者に対しても,承諾の意思表示を命ずることができると解すべきである。 これを本件について見ると,本件受信機A2を設置した1審被告東横インには,その時点で受信契約を締結すべき義務が発生したのであるから,その後,当該受信設備を第三者に譲渡した場合であっても,いったん発生した義務は消滅せず,当該義務が残存するものであり,受信設備の設置後,1審原告において,受信契約締結の申込みをし,これに対する承諾の意思表示を求める以上は,この ような請求は許容されるものと解するのが相当である。このように解さなけれ ば,例えば,1審原告が受信設備設置者に対して放送受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を求める訴訟を提起しても,弁論終結前に受信設備の廃止や第三者への譲渡を行うことによって,判決によって承諾を命ずることができなくなるということになって,受信設備を設置していた者は,その廃止等の時点までに発生していた放送受信料の支払を免れ得ることになり,適正・公平な受信料徴 収のために受信契約の締結を強制する旨を定めた放送法64条の趣旨が著しく損なわれることになるのは明らかであるから,このような観 していた放送受信料の支払を免れ得ることになり,適正・公平な受信料徴 収のために受信契約の締結を強制する旨を定めた放送法64条の趣旨が著しく損なわれることになるのは明らかであるから,このような観点に照らしても,上記解釈は正当性を有する。また,放送法64条1項が,受信契約承諾請求権の発生要件として,「受信設備を設置した者」と規定していて「受信している者」と規定していないことも,そのような解釈を裏付けるものと考えられる。 したがって,1審原告は,1審被告東横インに対し,本件受信機A2について,放送受信契約承諾の意思表示を求めることができる。 2 争点3(規約2条2項,4項の有効性)について この点については,以下の補正をほかは,原判決「事,及びのとおりであるから,これを引用する。 ア 43頁14行目の「平成」を「昭和」と改める。 イ 50頁6行目の「定め,」の後に「総務大臣は,その認可について電波監理審議会に諮問しなければならないものとされている(同法177条1項2号)。また,」を加え,同12行目の「規約が総務大臣の認可を受けたものであることからすれば」を次のとおり改め,同15行目の「及び3項」を削 る。 「放送法には,放送受信契約の条項についての総務大臣の認可の基準を定めた規定がないとはいえ,総務大臣の認可や電波監理審議会への諮問といった手続を踏まえて定められる内容が,放送受信契約の締結強制の趣旨に照らして適正なものであり,受信設備設置者間の公平が図られていること が求められる仕組みとなっているのであるから」 1審被告らは,放送法64条1項が規約2条2項,4項の定めを許容しているのであれば,住居とそれ以外の場所との間で,何ら合理的な理由のない差異を設けることを許 ているのであるから」 1審被告らは,放送法64条1項が規約2条2項,4項の定めを許容しているのであれば,住居とそれ以外の場所との間で,何ら合理的な理由のない差異を設けることを許容していることになるので,放送法64条1項の規定は,憲法14条に反する違憲無効なものである旨主張する。 しかしながら, もの)において説示のとおり,放送法は,放送受信契約の内容が,適正かつ公平な受信料徴収の目的にかなうものとなる仕組みを整えているのであって,このことも考え併せれば,規約において,住居とそれ以外の場所とで,放送受信契約の単位を異にしていることも,その性質に応じた合理的な区別であると解し得るから(なお,住居以外の場所に設置する受信機については,規 約5条の5が事業所契約に関する特例を定めて,受信料負担の軽減にも一定の配慮をしている。),1審被告らの上記主張は採用できない。 3 争点4(本件放送受信契約書の提出により,平成24年1月から放送受信料を支払う旨の契約が成立したか)について1審原告は,1審被告らが本件放送受信契約書を提出したことにより,規約 5条1項に基づき,受信機の設置時からの放送受信料の支払義務が発生した旨主張し,原判決も同旨の認定をするところ,確かに,本件放送受信契約書には,「放送法,規約により,放送受信契約を締結します」との1審原告宛の文言が印字されているのであるから(乙46),規約5条1項に従い,受信機の設置の月から放送受信料を支払う旨の合意が成立しているようにも見える。 しかし,他方,これが1審原告に提出されたのは,平成24年1月以降の放送受信料の支払義務の有無が争われている本件訴訟の係属中であって,平成26年2月に本件放送受信契約書を提出した後も,1審被告らは,本件申込書 方,これが1審原告に提出されたのは,平成24年1月以降の放送受信料の支払義務の有無が争われている本件訴訟の係属中であって,平成26年2月に本件放送受信契約書を提出した後も,1審被告らは,本件申込書ないし平成20年合意の効力を理由として,それ以前の期間の放送受信料の支払義務を争い続けているのであるから,1審被告らは,受信機の設置の月からの 放送受信料を支払う意思で本件放送受信契約書を提出したものとは考えられず, そのことは,本件放送受信契約書の提出を受けて,従前の予備的請求部分(放送受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を求めるもの)を取り下げた1審原告においても認識していたというべきである。 そして,このような経緯にかんがみると,受信機の設置時からの放送受信料の支払義務の点に関しては,本件訴訟において1審被告らがそのような義務を 負わないと主張する理由(そのうち,現時点で主張が維持されているのは争点5(本件申込書の法的効力ないし平成20年合意の存否))に関して裁判所の判断を求めるといった留保付きの放送受信契約を締結することについて,当事者双方の意思が合致したものと見るのが相当である。したがって,争点5についての判断に先行して,本件放送受信契約書の提出によって,受信機の設置月以 降の受信料債権を支払う義務が当然に発生したということはできない。 4 争点5(本件申込書の法的効力ないし平成20年合意の存否)について当裁判所は,本件申込書は1審被告らが主張するような法的効力を有するものではなく,停止条件付きで受信契約締結等義務を免除するといった平成20年合意も成立していないものと判断する。その理由は,以下のとおり補 原判決「事実及び理由」第3の3記載のとおりであるから,これを引用する。 ア 締結等義務を免除するといった平成20年合意も成立していないものと判断する。その理由は,以下のとおり補 原判決「事実及び理由」第3の3記載のとおりであるから,これを引用する。 ア 52頁21行目の「甲61」の前に「甲4の1,」を加える。 イ 57頁15行目の「同年」を「平成19年」と改める。 ウ 58頁15行目の「宛ての」の前の「に」を削る。 エ 65頁17行目末尾の後に改行して以下のとおり加える。 「チ 1審原告は,平成24年3月14日付け書面をもって,1審被告らにおいては,本件申込書に記載された内容をも実施しておらず,もはや本件申込書による契約締結を期すことが困難な状況になっているとして,全ての本件各受信機について放送受信契約の締結の申込みを行っ た。」 オ 66頁1行目の「強制しており」から3行目の「いうべきである」までを「強制して,事業運営の財源を受信設備設置者から支払われる放送受信料によって賄うこととしている」と改める。 カ 68頁21行目冒頭から23行目末尾までを削る。 当審における1審被告らの主張について ア 1審被告らは,本件放送受信契約書が新たに取り交わされるまでの間の法律関係は,原則として,本件申込書に規定された契約内容によって規律されるものであり,又は,本件放送受信契約書を提出することによって成立した放送受信契約の内容は,本件申込書1項及び2項で規定された内容と合致する限度で成立するにすぎないから,いずれにせよ,本件申込書で 定められた割合を超える部分については,放送受信料の支払義務が受信機の設置時に遡って発生することにはならない旨主張する。 しかしながら,1審原告と1審被告らとの間の法律関係を本件申込書によって規 定められた割合を超える部分については,放送受信料の支払義務が受信機の設置時に遡って発生することにはならない旨主張する。 しかしながら,1審原告と1審被告らとの間の法律関係を本件申込書によって規律するというのも,結局は,各時点で放送受信契約を締結すべき受信機の台数を合意によって確定させたという趣旨と解されるから,実質 的には,放送法上許容されていない受信契約締結等義務の免除をいうのと異なるものではない。そして,本件申込書は,1審原告と1審被告らとの綿密な交渉の結果,作成されるに至ったものであるから,1審原告と1審被告らとの間の合意内容の解釈に当たっては,その形式や記載内容を重視すべきと考えられるところ,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3 ウにおいて説示するとおり,①本件申込書は,1審被告らが1審原告に宛てて差し入れるといった形式を取っていること,②本件申込書には,1審原告が免除等の何らかの法的義務を負担するといった記載は一切ないばかりか,かえって放送法や規約の定めを尊重する旨の記載がされていることが認められるし,③本件申込書作成当時の1審原告を取り巻く状況から すると,1審被告らに対して,放送法や規約と抵触するような取扱いをあ えて認めるべき動機や必要性があったとは考え難いから,本件申込書によって,1審原告が格別の法的義務を負うものと認めることはできない。 よって,1審被告らの上記主張は採用できない。 イ 1審被告らは,1審原告との間では平成9年合意が存在し,それに基づいた運用が約10年もの長きにわたって行われていたことが,平成20年 合意が成立していたことを推認させる旨主張する。 しかし,平成9年の時点と平成20年の時点では,1審原告を巡る状況も大きく異なっており,放送受信契約の にわたって行われていたことが,平成20年 合意が成立していたことを推認させる旨主張する。 しかし,平成9年の時点と平成20年の時点では,1審原告を巡る状況も大きく異なっており,放送受信契約の適正化が強く求められていた平成20年の時点では,受信契約締結等義務の免除ということが,より一層想定困難な状況にあったというべきであるから,平成9年頃の出来事が平成 20年合意の存在を推認させるとはいえない。そもそも,平成9年合意なるものについても,半年ごとに見直し交渉を行うことが前提だったのであって,確たる合意であったと評価することは困難であるし,ホテルに設置された受信機の5%を超える部分について,放送受信契約の締結も放送受信料の支払も要しないといったことが積極的に合意されていたと認める にも足りない。 よって,1審被告らの上記主張は採用できない。 ウ 1審被告らは,放送受信契約締結率を将来的に100%にするため,1審原告において,一定の範囲で受信契約締結等義務を免除することは合理的な対応であった旨主張する。 しかし,1審原告は,ホテルに設置された受信機全数について放送受信契約を締結することを強く求め,1審被告らがこれに応じない場合には,法的措置も辞さないといった強い態度で臨んでいたのであるから,1審原告において,放送受信契約締結率を向上させるために,放送法上許容されていない受信契約締結等義務の免除といった格別の便宜を1審被告らに 図る必要があったとは認め難いところである。1審原告を取り巻く当時の 状況の中で,受信契約等締結義務を免除する意向があったと認めることが困難であることは,(補正後のもの)の説示するとおりであって,1審被告らの上記主張は採用できない。 エ 1審被告らは, 状況の中で,受信契約等締結義務を免除する意向があったと認めることが困難であることは,(補正後のもの)の説示するとおりであって,1審被告らの上記主張は採用できない。 エ 1審被告らは,放送法上,未だ放送受信契約を締結していない者との間 で放送受信契約の締結を要しない旨の合意をすることは禁止されていないし,仮に,それが禁じられているとしても,1審原告がそのような対応を取らなかったということを意味するものではない旨主張する。 しかし,放送法64条1項は,受信設備設置者に対して放送受信契約の締結を強制する旨を定めており,その例外規定は何ら設けられていない。 また,1審原告が事業運営の財源を受信設備設置者から支払われる受信料によって賄うこととしているのは,1審原告が公共的性格を有することをその財源の面から特徴付けるものであって,特定の個人,団体又は国家機関等から財政面での支配や影響が1審原告に及ぶことのないようにし,現実に1審原告の放送を受信するか否かを問わず,受信設備を設置すること により1審原告の放送を受信することのできる環境にある者に広く公平に負担を求めるためと解される。したがって,このような趣旨に照らせば,未だ放送受信契約を締結していない者との間で放送受信契約の締結を要しない旨の合意をすることも放送法上許容されていないことは明らかである。そして,このように,未だ放送受信契約を締結していない者との間 で放送受信契約の締結を要しない旨の合意をすることが放送法に反するものである以上,仮に,それが行われるとするならば,相当強い動機や必要性が存することが前提になると解されるが,そのようなものがうかがえないことは前記ウ説示のとおりである。 よって,1審被告らの上記主張は採用できない。 オ るとするならば,相当強い動機や必要性が存することが前提になると解されるが,そのようなものがうかがえないことは前記ウ説示のとおりである。 よって,1審被告らの上記主張は採用できない。 オ 1審被告らは,本件申込書3項及び5項の規定は,1審原告が対外的な 説明を容易とするために設けられたものにすぎない旨主張する。 しかし,b が「対外的な説明」と述べていた本件申込書案3項については,最終的な本件申込書の文言には盛り込まれなかったことは,引用に係エ(補正後のもの)の説示のとおりであるし,前記アにおいて説示したとおり,1審原告と1審被告らとの間 の合意内容を解釈するに当たっては,本件申込書の具体的な記載文言を重視すべきと考えられるところ,1審被告らの主張内容によっても,1審原告との間で,本件申込書3項及び5項の文言が当事者の間では効力を有しない仮装の規定であることを確認・合意したなどの事情は何らうかがわれない。そうすると,これらの規定が第三者の目を意識したものであったと しても,1審被告らとの関係で意味を有しないものであるというのは,1審被告らの一方的な理解にすぎないというべきであって,1審被告らの上記主張は採用できない。 カ 1審被告らは,本件申込書の中に,定められた割合を超える部分の放送受信料の後日支払に関する記載が一切ないのは,これらを免除する意思を 黙示的に示したと見るべきであり,b の電子メールの「約800万円の負担減となります。」との記載も,これを裏付けている旨主張する。 しかし,本件申込書の中に,定められた割合を超える部分の放送受信料の支払に関する記載がないのは,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3に説示するとおり,単に,本件申込書では,そのことについて定 めなかったものと ,定められた割合を超える部分の放送受信料の支払に関する記載がないのは,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3に説示するとおり,単に,本件申込書では,そのことについて定 めなかったものと見るのが素直な解釈である。放送法64条1項により,受信設備設置者は,放送受信契約の締結義務を負うのであるから,それが法的に免除されたことを認めるためには,具体的かつ明確な意思表示が求められるというべきであって,本件申込書に記載がないというだけで免除の事実を認めることはできない。 また,1審被告らが本件申込書に規定された割合に従って放送受信契約 を締結する一方,1審原告が本件申込書に規定された割合を超える部分の受信機について,特段の措置を講じないことによって,結果的に,それらの受信機に係る放送受信料の支払をしなくても済むといった事態が生じることは,当然あり得ることであり,b のメール文の「負担減」という文言も,まさにそのような認識に基づくものと考えられる。しかし,それはあ くまでも,放送受信料の支払を事実上免れることになるであろうとの見通しを示したものにすぎず,その時点で,法的な支払義務を確定的に免除することとは意味合いが全く異なるし,b 個人のメール文の記載が,双方による文言調整を経て作成された本件申込書の内容に優先するともいえない。 よって,1審被告らの主張は採用できない。 キ 1審被告らは,本件申込書が提出された後の1審原告の対応は,平成20年合意が成立していたことを裏付けるものといえるし,仮に,免除合意までは認められなくても,受信料支払請求権が放棄されたと評価できる旨主張する。 しかし,1審被告らが本件申込書に従って放送受信契約の締結台数を増 加させていく旨を約したのであるから,1審原告とし は認められなくても,受信料支払請求権が放棄されたと評価できる旨主張する。 しかし,1審被告らが本件申込書に従って放送受信契約の締結台数を増 加させていく旨を約したのであるから,1審原告としては,それにより全数契約が実現することを期待して,本件申込書に規定された割合を超える部分の受信機について,当面,何らかの措置を講じることは控えて,本件申込書の内容に沿って請求書の送付等を行うというのは,通常の対応ということができるから,そのことに特段の意味を見出すことは困難である。 そうすると,特段の措置を講じなかったからといって,平成20年合意の存在が推認されるということはできないし,受信料支払請求権が放棄されたと認めることもできない(なお,平成20年合意の存在が認められない以上,平成22年据え置き合意や平成23年据え置き合意の成否について検討する必要はないが,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3(補 正後のもの)に認定する1審原告と1審被告らとの交渉経過からすると, 本件申込書の内容は,1審原告にとって最低限の受入れ可能な内容であって,この内容を下回ることは許容困難であったと考えられること,本件申込書6項には,本件申込書の合意内容を変更する場合には,1審被告東横インと1審原告の双方が署名(又は記名)捺印した文書によらなければ効力を生じない旨の規定があるにもかかわらず,本件申込書の規定する割合 を変更するために新たに改訂文書を差し入れるという話にはなっていないこと,1審原告は,平成24年3月には,本件申込書による契約締結を実現することが困難な状況になっているとして,本件各受信機について放送受信契約の締結を求めていること(引用に係る原判決「事実及び理由」第からすると,これらの据え置き合意が 成立してい 締結を実現することが困難な状況になっているとして,本件各受信機について放送受信契約の締結を求めていること(引用に係る原判決「事実及び理由」第からすると,これらの据え置き合意が 成立していたとも認められない。)。 小括前記3において,受信機の設置時からの放送受信料の支払義務の点に関しては,争点5に関して裁判所の判断を求めるといった留保付きの放送受信契約を締結することについて,当事者双方の意思が合致したものと見るのが相 当であると判示したところであるが,以上によれば,本件申込書ないしそれに基づく合意により,受信設備設置時に遡っての放送受信料債権の発生が阻止されるとも,受信契約締結等義務が免除されていたとも認めることはできないから,結局,本件放送受信契約書を提出したことにより,規約5条1項の規定どおり,1審被告らは,平成24年1月以降の放送受信料の支払義務 を負うと認めるのが相当である。 5 争点6(1審原告の本件請求は,信義則違反ないし権利濫用であるか)について1審被告らは,①長年の受信料免除的な運用,②他の業者の取扱いとの不公平,③本件申込書を巡るやり取り等を指摘して,1審原告の本件請求は,権利 濫用ないし信義則違反である旨主張する。 しかし,①については,1審原告は,引用に係る原判決「事実及び理由」第(補正後のもの)のとおり,会計検査院やマスメディア,世論,国会における指摘や批判等を踏まえて,放送法の趣旨に沿って,放送受信契約の適正化に本格的に取り組むことにしたのであるから,1審原告の本件請求も,まさにそのような取組みの一環と理解することができる。そして,それ以前の状 況が,1審被告らの主張するような受信料免除的な運用ということができるかは措くとして,仮に,免除的な運用がさ 件請求も,まさにそのような取組みの一環と理解することができる。そして,それ以前の状 況が,1審被告らの主張するような受信料免除的な運用ということができるかは措くとして,仮に,免除的な運用がされていたとしても,そのような運用は,に説示したとおり,放送法の趣旨に反するとして是正すべきものであったといえるから,法律の趣旨に沿わない運用が一定期間継続したとしても,そのような状態が更に続くことへの期待が法的保護に値するとはいえず,この ような事情をもって権利濫用や信義則違反を基礎付けることは困難である。 また,②についても,1審原告が,各都道府県のホテル,旅館等の団体と締結している業務委託は,放送受信料の一括収納等に関し,収納された放送受信料額の一定割合を委託料として支払うものであると認められるから,その法的性質が放送受信料の免除や割引ではないことは,引用に係る原判決「事実及び らとそれらの団体との間で,放送受信料の支払に関する不公平な取扱いが存しているということはできない。 ③についても,1審原告としては,放送受信契約の適正化を進める中で,1審被告らに対してもホテルに設置された受信機全数についての放送受信契約 の締結を強く求め,契約件数の急激な増加がホテル経営にもたらす影響を懸念する1審被告東横インとの間で交渉を重ねた結果,本件申込書が差し入れられるに至ったものであって,これらのやり取りの際に,1審原告が欺罔行為等の何らかの不当な手段を用いたといった事情はおよそ見当たらない。そして,本件申込書により,これに記載された割合を超える部分の受信契約締結等義務が 免除されたと1審被告らが認識していたとしても,法的にはそのようなものと 評価できないことは前記4に説示するとおりであって,そうであれば,結果的 を超える部分の受信契約締結等義務が 免除されたと1審被告らが認識していたとしても,法的にはそのようなものと 評価できないことは前記4に説示するとおりであって,そうであれば,結果的には,大企業である1審被告東横インが,本件申込書の法的評価を誤ったというにすぎないのであるから,一般条項を用いて救済すべき必要性が高いとはいえない。 さらに,1審被告らは,平成22年10月以降,本件申込書で定められたと おりに契約率を引き上げることを怠っており(平成22年据え置き合意及び平成23年据え置き合意の成立が認められないことは,前記4及び引用に係,1審原告は,このような状況を受けて,平成24年3月14日付け書面をもって,1審被告らに対して,全ての受信機についての放送受信契約の締結を要求するに至った ものであるしソ,タ,チ(補正後のもの)参照),同年7月に提起された本件訴訟において1審原告が請求する放送受信料は,同年1月以降に発生した分にすぎず,相当以前の過去に遡って多額の放送受信料をまとめて請求しているわけではない。これらの事情からしても,1審原告の対応に背信的な点があると見ることはできない。 以上によれば,1審原告の本件請求が信義則違反ないし権利濫用であると認めることはできない。 6 争点7(事業所割引の遡及適用の有無)についてこの点に関する当裁判所の判断は,原判決「事実及び理由」第3の4記載のとおりであるから,これを引用する。 1審被告らは,規約5条の5第1項を合理的に解釈すれば,事業所割引の適用は,受信機の設置月からの受信手数料を対象としている旨主張する。 しかし,規約5条の5第1項は,「同一敷地内に設置した受信機すべてについて必要な放送受信契約を締結」していることや「所定の手続き」 適用は,受信機の設置月からの受信手数料を対象としている旨主張する。 しかし,規約5条の5第1項は,「同一敷地内に設置した受信機すべてについて必要な放送受信契約を締結」していることや「所定の手続き」をその要件としているのであるから,本件受信放送契約書を提出する前の1審被告 らは,実体的にも手続的にも,事業所割引の適用要件を充たしていなかった ことになるのであって,その期間の放送受信料を減額することができないことは,同項の文理解釈上も明らかというべきである。 よって,1審被告らの上記主張は採用できない。 7 まとめ以上によれば,①1審被告らは,それぞれ運営するホテルの客室等合計3万 4426か所に設置した衛星受信機について,平成24年1月から平成26年1月までの期間における放送受信料合計19億2932万1040円の支払義務を負い(そのるから,これを引用する。),また,②1審被告東横インは,ホテル「東横インa 駅新幹線口」の客室114室に設置していた本件受信機A2について,1審 原告からの受信契約の申込みに対し承諾すべき義務を負い,承諾の意思表示を命ずる判決が確定した場合,受信設備を設置した平成24年1月から平成25年10月までの受信料563万9580円の支払義務を負うこととなる。 第4 結論よって,1審原告の第1請求はすべて理由があり,これを認容した原判決は 相当であって,1審被告らの控訴は理由がないから棄却することとし,1審原告の当審における第2請求の主位的請求も理由があるから,これを認容することとして(なお,原判決主文14項は,1審原告が当審において訴えを変更し,新たに追加された主位的請求が認容されることにより,当然にその効力を失った。),主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第4 主文 て(なお,原判決主文14項は,1審原告が当審において訴えを変更し,新たに追加された主位的請求が認容されることにより,当然にその効力を失った。),主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官今岡健 裁判官橋爪信
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