令和5年6月21日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和3年(ワ)第11398号商標権侵害行為差止等請求事件口頭弁論終結日令和5年3月24日判決 原告株式会社ピィアイシィ・バイオ同訴訟代理人弁護士萩原達也同訴訟復代理人弁護士折田忠仁同補佐人弁理士児玉道一同山岸敏郎 被告株式会社関東農産同訴訟代理人弁護士佐藤克也同佐藤康博 主文 1 被告は、別紙被告標章目録記載の各標章を、肥料の包装に付し、又は同標章を包装に付した肥料を販売し、若しくは販売のために展示してはならない。 2 被告は、別紙被告商品包装目録記載の包装袋を廃棄せよ。 3 被告は、原告に対し、680万2375円及びうち668万7598円に対する令和4年8月1日から支払済みまで、うち11万4777円に対する同年12月1日から支払済みまでそれぞれ年3分の割合による金員を支払え。 4 原告のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は、これを10分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 6 この判決は、第3項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文1、2項と同旨 2 被告は、原告に対し、7160万6687円及びうち6857万6035円に対する令和4年8月1日から支払済みまで、うち303万0652円に対する同年12月1日から支払済みまで、それぞれ年3分の割合による金員を支払え。 0万6687円及びうち6857万6035円に対する令和4年8月1日から支払済みまで,うち303万0652円に対する同年12月1日から支払済みまで,それぞれ年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、別紙商標権目録記載の商標権を有する原告が、被告が肥料を販売するに当たり、その包装に別紙被告標章目録記載の各標章を使用することが同商標権を侵害すると主張して、被告に対し、商標法37条、36条1項に基づき、同標 章の使用の差止め及び同法37条、36条2項に基づき同標章が付された別紙被告商品包装目録記載の包装の廃棄、民法709条、商標法38条1項1号に基づき7160万6687円及びうち6857万6035円に対する不法行為の後の日である令和4年8月1日から、うち300万0652円に対する不法行為の後の日である同年12月1日から支払済みまでそれぞれ民法所定の年3分の割 合による遅延損害金を請求する事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)ア原告は、肥料及び土壌改良資材の製造販売を事業目的の一つとする会社である。(争いなし) イ被告は、肥料及び土壌改良剤の製造販売と同種事業を事業目的の一つとする会社である。(争いなし)原告は、別紙商標権目録記載の商標権(以下、「本件商標権」といい、同商標権に係る商標を「本件商標」という。)を保有している。(甲1、2)被告は、遅くとも平成20年には別紙被告商品包装目録記載の包装(以下「本 件包装」という。)を用いて有機肥料(以下「被告商品」という。)の製造、販売、販売のための展示を開始し、現在もそれらを継続している。同包装には、 別紙被告標章目録記載1、2の標 「本 件包装」という。)を用いて有機肥料(以下「被告商品」という。)の製造、販売、販売のための展示を開始し、現在もそれらを継続している。同包装には、 別紙被告標章目録記載1、2の標章(以下、それぞれ「被告標章1」、「被告標章2」といい、両標章を併せて「被告各標章」という。)が付されている。(弁論の全趣旨) 3 争点被告各標章は本件商標に類似しているか(争点1) 被告各標章は商標として使用されていないか(争点2)損害の発生及びその額(争点3)被告は先使用により被告各標章を使用する権利を有しているか(争点4)商標権行使の権利濫用の成否(争点5) 4 争点に対する当事者の主張 被告各標章は本件商標に類似しているか(争点1)(原告の主張)本件商標と被告各標章は、書体等において若干異なる点はあるものの、共に「地力の素」という文字からなるから、外観において類似する。 呼称はいずれも「チリョクノモト」で一致する。 そして「地力の素」という文言は造語であり、異なる観念が生じるということもない。 よって、本件商標と被告各標章は類似する。 (被告の主張)商標の類否は、誤認混同を生じる恐れがあるか否かによって判断されるべき ところ、原告が本件商標を付して販売している商品と被告商品は誤認混同されるおそれはないから類似しない。 被告各標章は商標として使用されていないか(争点2)(被告の主張)ア広辞苑によれば、「地力」とは、「土地が作物を育てる能力。土地の生産力」 と説明されており、「素」とは、「物を作る原料。素材」との説明がされてい ることから、「地力の素」とは、「土地が作物を育てる能力の素材となるもの」と一般的に理解される。一般人が と説明されており、「素」とは、「物を作る原料。素材」との説明がされてい ることから、「地力の素」とは、「土地が作物を育てる能力の素材となるもの」と一般的に理解される。一般人が「地力」と「素」のそれぞれの言葉の意味を考えれば「地力の素」という言葉が作物を育成するのに適した土地にするためのもの(肥料又は土壌改良剤)であることは容易に理解でき、これを付された商品の効能の表示として認識することについて特別の支障はない。 被告商品には「プロボカシ」という名称が付されており、被告商品が有機肥料であることと「地力の素」という標章の観念の結び付きは強く、被告各標章に接した一般需要者は、「地力の素」という標章を「プロボカシ」という商品の効能を示すものと認識する。 イ被告商品を表す名称である「プロボカシ」という標章は、本件包装の表側 に、緑色の背景の下、最も大きなベイジュ色のゴシック文字で記載されており、被告商品の名称を示すものと容易に分かる位置に表示されている。被告各標章は、本件包装の表側の「プロボカシ」との記載のすぐ上、又は両側面の「プロボカシ」との記載のすぐ左に記載されており、その文字も「プロボカシ」より小さい文字で記載されていることからすると、一般需要者は、被 告各標章を独立した表示であると認識することはない。また、本件包装の下部には、被告の商号である「株式会社関東農産」との文字が目立つように表示されている。 ウ被告は、原告から令和3年2月8日付けで本件に関する通知を受け取るまで、約13年間にわたって、被告各標章が本件商標と同じであるとの指摘を 受けることはなく、本件商標を使用している原告の商品との誤認混同がされた例もない。 エ以上によれば、被告各標章は、被告商品である「プロボカシ」という 各標章が本件商標と同じであるとの指摘を 受けることはなく、本件商標を使用している原告の商品との誤認混同がされた例もない。 エ以上によれば、被告各標章は、被告商品である「プロボカシ」という名称を付した有機肥料の内容・効能を端的に記載したもの、あるいは、商品の宣伝のためのキャッチフレーズであることは明らかであり、商品の出所表示機 能・出所識別機能を果たす態様で用いられたものではない。 (原告の主張)「地力の素」は造語であって、肥料や土壌改良剤の分野に使用されたとしても、直ちに一義的な認識に到達するものではない。 本件包装では、「プロボカシ」という文言と並べて「地力の素」という文言が記載されているが、上位ブランドとサブブランドをそれぞれ字体、大きさ、色 彩等を変えて表示することは常識であり、一般需要者は、被告各標章も商標であると認識し、「プロボカシ」は「地力の素」のサブブランドであると認識し、被告各標章は商標として使用されているものといえる。 損害の発生及びその額について(争点3)(原告の主張) ア原告は、本件商標を付した土壌改良剤を販売しており、被告商品の令和4年7月末日までのその販売数量は5万9198袋である。原告が本件商標を付して販売している商品としては、細粒状の土壌改良剤(以下「原告商品(細粒)」という。)、粗粒状の土壌改良剤(以下「原告商品(粗粒)」という。)、粉状の土壌改良剤(以下「原告商品(粉状)」という。)、ペレ ット状の土壌改良剤・特殊肥料(以下「原告商品(ペレット)」という。 また、これと「原告商品(細粒)」、「原告商品(粗粒)」及び「原告商品(粉状)」を併せて「原告各商品」ということがある。)があり、原告各商品は被告商品と競合する。本件商標を付して販売して 」という。 また、これと「原告商品(細粒)」、「原告商品(粗粒)」及び「原告商品(粉状)」を併せて「原告各商品」ということがある。)があり、原告各商品は被告商品と競合する。本件商標を付して販売している原告各商品の一袋当たりの限界利益は別紙限界利益計算表(原告主張)記載のとおり、10 62.30円であるから、原告が同日までに被った損害は商標法38条1項1号により6288万6035円と推定される。弁護士費用相当損害金は569万円を下らないから、これらの合計は6857万6035円となる。 上記の商標法38項1項1号により推定される額を本件商標権が登 録された平成27年8月28日の翌月である同年9月から令和4年7月 末日までの83か月で除すると、1か月当たりの損害額は75万7663円となるから、同年8月1日から同年11月末日までの4か月間の損害は303万0652円となる。 イ被告が主張する原告が被告商品の販売数量と同数を販売することができなかった事情についてはいずれも否認ないし争う。 原告各商品は、土壌改良剤としての性質に加え、肥料としての性質・効能を有している。また、肥料と土壌改良剤とは、性質・効能について重なり合う部分があり、被告商品は肥料であるとともに土壌改良剤であるから、同様の性状を有する原告各商品と競合する。 原告各商品と被告商品の競合品は、肥料兼土壌改良剤である商品のみで あるところ、そのような市場は原告各商品と被告商品以外に存在するとしても限られる。 被告は、本件商標を付して被告商品を販売しているから、被告商品が「プロボカシ」のブランドのみで流通している事実はない。また、被告が被告商品を売るために格別の営業努力をしたことはない。 原告各商品では、「カナディアンフミ 販売しているから、被告商品が「プロボカシ」のブランドのみで流通している事実はない。また、被告が被告商品を売るために格別の営業努力をしたことはない。 原告各商品では、「カナディアンフミン」との表示はされているものの、「地力の素」と比べた大きさ、表示位置からして付随的なものにすぎず、原告各商品は「地力の素」という本件商標の下で流通していたといえる。 原告は、原告各商品をもっぱら業務用として販売しており、一般消費者を主たる対象としてはいない。原告各商品の販売価格について、8000 円台の販売価格は例外的かつ一時的な数字であり、また、2000円台の販売価格について、この程度の価格では、被告商品との競合及び代替関係は否定されない。 被告は、新規取引先が存在すること自体は認めており、被告商品が従前の取引先である卸売業者等のみではなく、それ以外の不特定多数の者に 販売されていることは明らかである。 (被告の主張)ア令和4年7月までの被告商品の販売数量は認め、その余は否認ないし争う。 原告が提出する限界利益に関する資料は信用できないし、限界利益の計算方法も不当である。 イ原告が、被告商品の販売数量と同数を販売することができなかった事情と して、以下の事情がある。 市場で競合しない原告各商品は、土壌改良剤であるところ、被告商品は特殊肥料であり、競合関係にない。被告商品の販売先は主に卸売業者であるのに対し、原告各商品の販売先は一般消費者であったことがうかがわれる。原告各商品の うち、「地力の素カナディアンフミンHNC」ではなく「地力の素」のみの記載がある商品は原告商品(ペレット)のみであるから、仮に市場の競合が認められるとしてもその対象は同商品に限られる。 市場における競合品の存在 ナディアンフミンHNC」ではなく「地力の素」のみの記載がある商品は原告商品(ペレット)のみであるから、仮に市場の競合が認められるとしてもその対象は同商品に限られる。 市場における競合品の存在原告の主張によれば、平成26年から平成30年の各年の特殊肥料全体 の生産量中に占める被告商品の割合は最大でも0.0026%にすぎず、被告商品の市場占有率は極めて低い。特殊肥料の分野には多数の競合品があるのであるから、被告商品の販売によって原告の商品の販売数量が減少したということはいえない。 被告の営業努力 被告は「プロボカシ」の名称で商標登録を受けており、被告商品には同名称を付して同ブランド名での販売に注力している。 原告各商品の特徴原告各商品のうち、原告商品(細粒)、原告商品(粗粒)、原告商品(粉状)の商品は、「カナディアンフミン」との記載がある袋でカナダを思わせ る写真、絵を表面に記載して販売している。これらの商品に「地力の素」 との記載もあるが、原告が「カナディアンフミン」というブランド名を印象付けるデザインで販売していることは明らかである。被告のプロボカシという名称は、米ぬかボカシ肥料から由来しており、原告の「カナディアンフミン」は、カナダ産のフミンから由来したものであると考えられる。 被告と原告が特徴付けようと考えるブランド名は全く異なるものである。 商品の販売方法原告各商品の主たる販売方法は、インターネットを通じた一般消費者に対する小売販売である。他方で、被告商品の主たる販売先は肥料の卸売業者や農協、大規模農家など既存の顧客である。被告は、商品を販売する際には各店舗に赴きサンプルを配布し、また商品の効能や含有物等について 丁寧に説明をし、商品について納得してもらった 料の卸売業者や農協、大規模農家など既存の顧客である。被告は、商品を販売する際には各店舗に赴きサンプルを配布し、また商品の効能や含有物等について 丁寧に説明をし、商品について納得してもらった上で買い取ってもらっている。被告商品の購入者は従前から取引がある業者を中心に、本件商標とは関係なく、被告商品の効能等の良さ等を判断基準として購入を決意している。 また、前記販売先の違いから被告商品の一袋当たりの販売価格は100 0円台であるのに対し、原告各商品の一袋当たりの販売価格は2000円台以上のものがほとんどであり、高いものは8000円というものもあり、被告商品と原告各商品の関連性はない。 既存顧客被告は、平成元年に設立した会社であり、被告は、従前から取引のある 卸売業者等に商品を販売してきた。商標が登録されるより前から取引関係があった業者との取引においては、原告各商品と被告商品を誤認混同する可能性は皆無であるから、当該取引における販売数量については、少なくとも商標権侵害により販売できなかった商品とはいえない。平成27年6月から翌年5月までの間に、被告商品は8090袋販売されたが、当年度 に被告と初めて取引関係に入った業者は3社にすぎず、その取引数量も3 3袋にすぎない。そのため、その他の8057袋については、誤認混同のおそれは一切なく、損害の算定から除外されるべきである。 被告は先使用により被告各標章を使用する権利を有しているか(争点4)(被告の主張)ア被告は、「地力の素」という標章を遅くとも平成20年から現在まで使用 し続けている。被告は、本件商標の存在を知らずに同標章の使用を続けており、不正競争の目的はない。 イ被告の「地力の素」との標章は、被告の標章として周知である。 平成20年から現在まで使用 し続けている。被告は、本件商標の存在を知らずに同標章の使用を続けており、不正競争の目的はない。 イ被告の「地力の素」との標章は、被告の標章として周知である。 被告は、原告が本件商標の出願をした平成27年3月16日まで、少なくとも約7年間、「地力の素」の標章を20キログラムの有機肥料を入れた袋 の表面に付して販売し、使用し続けていた。被告は、被告商品を全国的に主に卸売業者に対して販売している。卸売業者等のホームページには写真付きで被告商品が紹介されているため、ホームページにアクセスできるものは容易に「地力の素」との記載がある被告商品に接することができる。被告は、平成20年から平成27年までの間に、「地力の素」が付されている被告商 品を合計で5万9445個販売し、サンプルとして2504個を提供した。 また、被告は、宣伝広告として、平成21年度から平成26年度までの間に「地力の素」との記載がある被告商品に関するパンフレットを合計3万0500枚作成して配布した。その他にも、「地力の素」の記載がある被告商品の写真を付した紙製の製品案内を作成し、ホームページにも「地力の素」の記 載がある被告商品の写真を掲載して商品の宣伝をしている。実際に、被告の取引先の間では、取引先が作成した陳述書の記載のとおり、「地力の素プロボカシ」の名称は広く知られている。 (原告の主張)被告の主張については不知ないし争う。 被告は、周知性の根拠として販売実績を主張しているが、市場シェア等は 示しておらず、周知性を基礎付ける程度の販売実績であることを示せていない。被告商品の市場シェアは、最大でもわずか0.0026%であり、市場シェアを根拠に周知性が認められることはありえない。 被告 しておらず、周知性を基礎付ける程度の販売実績であることを示せていない。被告商品の市場シェアは、最大でもわずか0.0026%であり、市場シェアを根拠に周知性が認められることはありえない。 被告は、取引先が作成した陳述書を提出しているが、わずか5通の陳述書を提出したにすぎず、その内容も定型で信用性に乏しいものであり、周知性 の根拠になるものではない。 仮に原告が作成したと主張するパンフレットが全て配布されたとしても、年平均4800枚強であり、その費用も年平均約4万8000円にすぎないから、周知性の根拠になるものではない。ホームページへの掲載についても、どれほどの取引者、需要者の目を引いたのかという点は全く不明である。 商標権行使の権利濫用の成否(争点5)(被告の主張)原告は、「地力の素カナディアンフミンHNC」という標章も商標登録している。このことから、原告は、「地力の素」との語句は有機肥料の効能を一般的に示すものにすぎず、商標登録が困難であると考えていたものと推測で きる。原告が「地力の素カナディアンフミン」ではなく、「地力の素」という名称を付した商品は1種類にすぎない。 被告は、「地力の素」と記載した被告商品を10数年にわたって販売しており、同製品について顧客誘引力を有している。 「地力の素」という表示は、被告商品の販売によって平成25年6月の時 点で日本中の卸売業者や消費者に広く知れ渡っていたことから、本件商標権については商標法4条1項10号に係る無効事由があり、また、同商標は商品の効能を普通に表示するもの(同法3条1項3号)として無効事由があったため、無効審判によって無効とされる可能性があった。そこで、原告は、商標登録から5年の除斥期間(同法47条)を待って、被告から多額の金 能を普通に表示するもの(同法3条1項3号)として無効事由があったため、無効審判によって無効とされる可能性があった。そこで、原告は、商標登録から5年の除斥期間(同法47条)を待って、被告から多額の金銭 を取得する目的で本件訴訟を提起した。 上記の事情を考慮すると、「地力の素」に化体された利益は、原告ではなく被告に帰属しているとみるべきであるから、原告には本件商標に基づく権利行使を保護する利益はなく、原告による本件商標権に基づく権利行使は権利の濫用である。 (原告の主張) 被告の主張は否認ないし争う。 商標権侵害の責任を追及するのは商標権者として当然のことである。本件では商標権の権利濫用でしばしば言及される他者の周知商標の剽窃的取得もない。 第3 当裁判所の判断 1 被告各標章は本件商標に類似しているか(争点1)について本件商標と被告各標章は、いずれも「地力の素」という文字列を各文字についてほぼ同じ大きさで横書きしてなるものである。本件商標と被告各標章の書体は異なり、本件商標と被告標章1は色も異なるものの、文字列としては同じであることなどから、その外観は類似している。本件商標と被告各標章の称呼はいずれ も「チリョクノモト」であり同一である。観念について、「地力」とは「土地が作物を育てる能力。土地の生産力」を意味し(広辞苑第7版。甲3)、「素」という漢字は、「物を作る原料、素材」といった意味を有している(甲4)。もっとも、「地力の素」という語が一般に使用される語として知られていることを認めるに足りず、また、「地力」や「素」の上記の意味によれば、これらの語が「の」によ り接続された場合に一義的にその内容が理解できるものになるとはいえない。これらからすると、「地力の素」について るに足りず、また、「地力」や「素」の上記の意味によれば、これらの語が「の」によ り接続された場合に一義的にその内容が理解できるものになるとはいえない。これらからすると、「地力の素」について、土地が作物を育てる能力に関連する何らかの物質を連想させるものとはいえるものの、特定の観念を有するものとまではいえない。そして、このことは、「地力の素」という同じ文字列から成る本件商標と被告各標章で同じである。 本件商標と被告各標章について、文字列としては同じであるところ、それにも かかわらず本件商標と被告各標章が類似しないとされるような取引の実情があるとは認められない。被告は、原告各商品と被告商品の出所の誤認混同がない旨主張するが、原告は本件商標を現在販売している商品以外の商品にも使用し得るのであるから、原告各商品という具体的な商品との対比において被告商品の出所の誤認混同が直ちに問題となるわけではなく、被告主張の事情が本件商標と被告 各標章が類似しないとされる根拠になるとはいえない。 これらの事実からすると、本件商標と被告各標章は類似するといえる。 2 被告各標章は商標として使用されていないか(争点2)について本件包装の表の上部の中央には、本件包装において最も大きな文字で、緑の背景に白抜きの横書きで「プロボカシ」と記載され、その左上に「プロボカシ」 より小さく白抜きの横書きで「地力の素」という文字列の被告標章1が記載されている。また、本件包装の左右の側面には、黒字で「地力の素」という文字列の被告標章2が横書きで記載され、一文字弱程度の間を空けて、「地力の素」よりやや大きな緑色の文字で「プロボカシ」と横書きで記載されている。 上記のとおりの本件包装には、「地力の素」の文字列と「プロボカシ」の文 され、一文字弱程度の間を空けて、「地力の素」よりやや大きな緑色の文字で「プロボカシ」と横書きで記載されている。 上記のとおりの本件包装には、「地力の素」の文字列と「プロボカシ」の文 字列が間をあけるなどして記載されているところ、「プロボカシ」の語は、それが造語であると認められることから自他識別機能を有するものといえる。他方、前記1のとおり、「地力の素」という語句自体は、土地が作物を育てる能力に関する物質を連想させるものではあるが、一般に使用される語として知られたものとはいえず、また、一義的にその内容が理解できるものであるとはいえない。 そうすると、「地力の素」に接した取引者、需要者は、この語自体から「肥料」、「土壌改良剤」といった特定の観念を理解することはなく、また、商品の効能、用途等を説明したものであると理解するとは限らない。このことに本件包装における上記記載態様に照らして「地力の素」が「プロボカシ」に関する効能等を説明するものとは限られないことなどを考慮すると、被告各標章は、いずれ も自他識別に係る機能を有する標章として使用されていると認められる。 3 損害の発生及びその額(争点3)についてア原告は、商標法38条1項1号に基づき損害額を主張するところ、被告は、原告各商品と被告商品は競合しないことなどを挙げて、損害の発生や本件における同号の適用を争う。 イ原告は、「地力の素」の標章を包装に付すなどして、原告商品(細粒)(2 0kg)、原告商品(粗粒)(20kg)、原告商品(粉状)(20kg)、原告商品(ペレット)(15kg)を販売している。 原告商品(細粒)、原告商品(粗粒)、原告商品(粉状)は、いずれも、「土壌改良材」として、一般社団法人有機JAS資材評価協議会により「有機JA 、原告商品(ペレット)(15kg)を販売している。 原告商品(細粒)、原告商品(粗粒)、原告商品(粉状)は、いずれも、「土壌改良材」として、一般社団法人有機JAS資材評価協議会により「有機JAS規格別表1」に適合していることが確認された商品として販売されてい る。原告商品(ペレット)は、「土壌改良材・特殊肥料」として販売され、「高濃度腐植質(フルボ酸・腐植酸)に加えて堆肥由来の有機炭素も多く含まれます。堆肥の併用が不要で、これだけで土づくりが完了します。」と説明されて販売されている。また、原告各商品について、「地力の素は、天然100%の有機土壌改良材です。天然腐植物質がおとろえた土の力を短時間で回復さ せます。」と説明されて、販売されている。(この項につき、乙2、弁論の全趣旨)。 ウ被告は、被告商品を販売しているところ、本件包装には、「有機JAS適合」、「N3、P3.4、K1.7(分析例)」などの記載がある。被告商品は、「厳選された生薬系植物原料を使用し、独自技術でじっくりと発酵させ た新しいタイプのペレット肥料です。」と説明され、日本肥糧検定協会による「肥料成分分析例」として、チッソが3.0%、リンサンが3.4%、カリが1.7%、炭素率が14であることや、「日本の伝統食品である味噌・醤油のように、発酵微生物によりゆっくりとした発酵過程をとり、作物にやさしい肥料成分の形態になっています。」とか、「標準施肥量(袋/10アー ル)」として、例えば葉菜類について、「基肥の目安」として「5~20袋」、 「追肥の目安」として「3~10袋」などと記載され、被告商品の説明としては、「肥料」の他に「菌体肥料」、「有機肥料」などと記載されているものもある。(この項につき、甲5~13、38)。 エ肥料とは、 肥の目安」として「3~10袋」などと記載され、被告商品の説明としては、「肥料」の他に「菌体肥料」、「有機肥料」などと記載されているものもある。(この項につき、甲5~13、38)。 エ肥料とは、「土地の生産力を維持増進し作物の生長を促進させるため、普通は耕土に施す物質。窒素・リン酸・カリをその三要素という。成分、性質、 施肥形態などのちがいから有機質肥料・無機質肥料、直接肥料・間接肥料、速効性肥料・緩効性肥料などに分ける。広義には土壌改良資材も含む。」(広辞苑・第七版)とされ、土壌改良剤とは、「広義には土壌改良資材の一つで、土壌を耕作に適する状態に改良するために施用する化学製剤。狭義には合成高分子化合物で、土壌の物理的性質の改良を目的としたものをいう。」(同) とされ、土壌改良資材とは、「土壌の肥沃度を増進し、作物の生産性を高めるために施用する資材の総称。」(同)とされている。 肥料の品質の確保等に関する法律2条1項は、「この法律において「肥料」とは、植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土地に施される物及び植物の栄養に供する ことを目的として植物に施される物をいう。」と規定し、同条2項は、「この法律において「特殊肥料」とは、農林水産大臣の指定する米ぬか、堆肥その他の肥料をいい、「普通肥料」とは、特殊肥料以外の肥料をいう。」と規定する。 地力増進法11条1項は、「農林水産大臣は、植物の栽培に資するため土 壌の性質に変化をもたらすことを目的として土地に施される物(肥料の品質の確保等に関する法律(昭和25年法律第127号)第2条第1項に規定する肥料にあっては、植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことと併せて土壌に化学 (肥料の品質の確保等に関する法律(昭和25年法律第127号)第2条第1項に規定する肥料にあっては、植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことと併せて土壌に化学的変化以外の変化をもたらすことを目的として土地に施される物に限る。以下「土壌改良資材」と いう。)のうち、その消費者が購入に際し品質を識別することが著しく困難 であり、かつ、地力の増進上その品質を識別することが特に必要であるためその品質に関する表示の適正化を図る必要があるものとして政令で定める種類のものについて、その種類ごとに、次に掲げる事項につき表示の基準となるべき事項を定め、これを告示するものとする。・・・」と規定し、地力増進法施行令は、同項に定める土壌改良資材として、「泥炭、バークたい肥、腐 植酸質資材、木炭、けいそう土焼成粒、ゼオライト」など12の資材を挙げる。 オこれらからすると、一般的に、少なくとも広義には、土壌改良剤の概念と肥料の概念は一部重なる部分がある。原告は、土壌改良剤又は土壌改良剤・特殊肥料として原告各商品を販売している。被告商品は肥料として販売され ている。商標法38条1項については、その趣旨から、商標権者の商品と侵害品が市場において侵害者の侵害行為がなければ販売等することができたという競合関係にあればその適用が認められると解されるところ、原告各商品と被告商品は、いずれも作物を生産する者により、作物の生産性を高めるために土壌に対して施されるものであり、市場を共通にし、その効能、用途 に少なくとも重なる部分があるといえることから、原告各商品と被告商品は市場において競合関係にあり、被告各標章を付した被告商品の販売によって原告に損害が発生し、また、その損害額の算定に当たり、商標法3 に少なくとも重なる部分があるといえることから、原告各商品と被告商品は市場において競合関係にあり、被告各標章を付した被告商品の販売によって原告に損害が発生し、また、その損害額の算定に当たり、商標法38条1項が適用されると解される。 アそこで、商標法38条1項1号所定の原告が販売していた商品に係る単 位数量当たりの利益の額について検討する。 原告は、原告各商品について、別紙限界利益計算表(原告主張)の「数量(袋)」欄記載の数量を販売し、その売上げは「原告商品の売上金額」欄記載のとおりであり、製造原価は「原告商品の製造原価」欄記載のとおりであり、製造原価以外の変動経費を含む限界利益算定に当たって控除すべ き経費は「控除すべき経費」欄記載のとおりであると主張する。 別紙限界利益計算表(原告主張)の「数量(袋)」欄、「原告商品の売上金額」欄、「原告商品の製造原価」欄記載の値は、原告が提出した売上げ等の明細(甲25から28、30から32)記載の売上げ、販売数量、原価の各合計額と一致する。同明細記載の値は、それらの明細の体裁からも原告がシステム上で機械的に管理しているものであると認められる。そ して、販売数量と売上げについての値について、不自然なところを認めるに足りず、それらの値は信用できる。もっとも、同明細のうち、別紙除外品一覧表記載の商品は、各商品の単価がその余の商品の単価と乖離しており、原告各商品とは異なる商品を計上したものであると推認できるものであって、これらの商品については限界利益の算定から除外するのが 相当である。 上記の明細記載の原価について検討する。原告各商品のうち、別紙除外品一覧表記載の商品以外の各商品の原価の額は、概ね一定額又はそれに近い額になっている。また、原告は、原価につ 相当である。 上記の明細記載の原価について検討する。原告各商品のうち、別紙除外品一覧表記載の商品以外の各商品の原価の額は、概ね一定額又はそれに近い額になっている。また、原告は、原価について、原告代表者の陳述書及びその添付資料(甲34)を提出する。 原告代表者の上記陳述書には、原価計算に当たって原告が支出した費用を積算して原価を算定する過程が記載されているところ、被告は、輸入作業量について、原告各商品について東京港を利用する場合と常陸那珂港を利用する場合があり、前者の方が後者よりも費用が高いにもかかわらず、同陳述書では後者を利用する前提で費用を計上しており不当であると主 張する。しかし、同陳述書は、裏付け資料(ただし、全費用について資料が添付されているわけではない。)を示しつつ、費用を積算した額を示しているが、前記の明細に記載された原価の額は同陳述書で積算して計算した原価の額を上回るものである。そして、利用する港の違いによる経費の額の差は、25.2トン当たり3万2000円であり(甲34の添付資料 6参照)、これを20kg当たりに換算すると、差額は25円となる。仮に 原告各商品の全てについて東京港を利用したと仮定し、同陳述書で積算された原価に同差額を加算しても、前記明細記載の原価を上回るものではない(そもそも同明細記載の原価の値は総じて同陳述書記載の額よりも高く、また、一定ではないことからすると、同明細記載の原価は、利用される港による経費の違い等、同陳述書で積算されるコストについて、個別の事情 を反映させた値であることもうかがえないではない。)。 また、被告は、原告が原価計算に当たって固定の為替レートを用いて原価計算をしていることが不当であると主張する。しかし、原告が為替レートとして採用 反映させた値であることもうかがえないではない。)。 また、被告は、原告が原価計算に当たって固定の為替レートを用いて原価計算をしていることが不当であると主張する。しかし、原告が為替レートとして採用した120円は、平成27年から令和3年までの間の実際の為替レートに比して概ね円安といえるレートであることが認められる(甲 34、弁論の全趣旨)。現実の為替レートを用いて原価を計算すると、原告各商品の原価は原告が主張するよりも安く算定されることになることがうかがえ、被告主張の事情が原告各商品の原価が前記の明細記載の原価を上回ることをうかがわせる事情であるとはいえない。 その他、原告各商品につき控除すべき経費の額が、別紙限界利益計算表 (原告主張)記載の「控除すべき経費」欄記載の額から、別紙除外品一覧表記載の原価の額を控除した額を上回ると認めるに足りる事情はない。 以上によれば、利益の算定に当たって控除されるべき経費の額は、別紙限界利益計算表(原告主張)記載の経費の額から別紙除外品一覧表記載の原価の額を控除した額を越えないと認める。 以上を前提にすると、原告各商品の平成27(2015)年5月から令和4(2022)年4月までの合計売上金額は別紙限界利益計算表(原告主張)記載の売上金額の合計額(3億3452万6020円)から、別紙除外品一覧表記載の売上金額の合計額(1627万6900円)を控除した3億1824万9120円となり、控除すべき経費の合計は、別紙限界 利益計算表(原告主張)記載の控除すべき経費の合計額(1億8195万 4569円)から別紙除外品一覧表記載の各商品の原価合計の合計額(941万1429円)を控除した、1億7254万3140円となる。したがって、原告各商品の平成27年5月から令和4年4月ま 4569円)から別紙除外品一覧表記載の各商品の原価合計の合計額(941万1429円)を控除した、1億7254万3140円となる。したがって、原告各商品の平成27年5月から令和4年4月までの利益は、その差である1億4570万5980円となる。原告各商品の重量の合計は、次のとおり、別紙限界利益計算表(原告主張)記載の各数量から別紙 除外品一覧表記載の各数量を控除した数量に各商品の重量を乗じたものを合算した、283万6020kgとなる。 原告商品(細粒) 20kg×(3万7603袋-22袋)=75万1620kg原告商品(粗粒) 20kg×(9万6579袋-186袋) =192万7860kg原告商品(粉状) 20kg×(1852袋-4袋)=3万6960kg原告商品(ペレット) 15kg×7972袋 =11万9580kg合計 283万6020kg 被告商品は一袋当たり20kgの商品であるから、これに対応する原告各商品の20kg当たりの利益は、次のとおり1027円になる。 1億4570万5980円÷283万6020kg×20kg=1027円イ本件商標登録日から令和4年7月末日までの被告商品(1袋20kg)の 販売数量が5万9198袋を下らないことについては争いがなく、同年8月から同年11月までの販売数量は、1016袋であると認められる(乙76)。 ア被告は、被告が販売した商品について、原告に販売することができないとする事情(商標法38条1項1号かっこ書)があると主張する 同年11月までの販売数量は、1016袋であると認められる(乙76)。 ア被告は、被告が販売した商品について、原告に販売することができないとする事情(商標法38条1項1号かっこ書)があると主張する。 イ前記イのとおり、原告各商品は「土壌改良剤」又は「土壌改良剤・特殊 肥料」(土壌改良剤ではなく、土壌改良剤・特殊肥料として販売されたもの は原告各商品のうちの約4%)として販売されており、被告商品は「肥料」、「菌体肥料」、「有機肥料」として販売されている。原告各商品と被告商品は、その効能、用途において重なる部分があり、競合する部分があったとはいえる(前記ウ)。もっとも、被告商品は、分析例としてではあるが、肥料の3要素の割合や施肥量なども表示されるなどして、肥料として販売されてい たのに対し、原告各商品は、土壌改良剤又は土壌改良剤・特殊肥料として販売されていて、肥料の3要素の割合が示されるなどしていたことを認めるに足りない。 ウ関係する市場について、特殊肥料に限っても、その生産量は、平成26年から平成30年まで、各年について686万トン(68億6000万kg) を下ることはない(甲21の2)。 本件で問題とされた期間において、原告各商品の販売数量(袋数)が最も多く、また、原告商品(ベレット)の販売量が最も多い令和3年において、原告商品(細粒)、原告商品(粗粒)及び原告商品(粉状)の販売の合計は約480トンであり、原告商品(ペレット)の販売は約90トンである(別紙限 界利益計算表(原告主張)参照)。また、被告商品の年間の販売数量が最も多い令和元年8月から令和2年7月までにおいて、被告商品の販売の合計は約200トンである(乙69)。 これらによれば、原告各商品と被告商品の競合市場における両商品の 、被告商品の年間の販売数量が最も多い令和元年8月から令和2年7月までにおいて、被告商品の販売の合計は約200トンである(乙69)。 これらによれば、原告各商品と被告商品の競合市場における両商品のマーケットシェアは、いずれも極めて低い。そして、その市場におけるマーケッ トシェアなどに照らしても、「地力の素」が原告の商標として著名であったといった事情も認めるに足りない。 エ被告商品においては、前記2のとおり、本件包装において「プロボカシ」が大きく商品名として記載されており、本件包装における記載の態様によれば、「プロボカシ」が、出所についての相当の識別力を有する部分であった。 他方、上記ウのとおり、「地力の素」が原告の商標として著名であったとい った事情を認めるに足りない。 オ上記によれば、原告各商品と被告商品は、競合する部分があったとはいえるものの、関係する市場規模はそれら商品の販売量に比べて極めて大きいものであった(上記ウ)。そして、本件商標が著名であったといえない一方、被告商品においては他に出所識別のための標章が付されていた(上記ウ、エ)。 また、原告各商品が土壌改良剤又は土壌改良剤・特殊肥料として販売されていたのに対し、被告商品は肥料として販売されていた(上記イ)。これらの事情によれば、肥料である被告商品を購入した者のうち、本件包装に被告各標章が付されていることによって「土壌改良剤」、「土壌改良剤・特殊肥料」である原告各商品に代えて被告商品を購入したといえる者の割合は相当に 低いと認められる。したがって、被告商品に本件各標章が付されたことによる原告各商品の販売数量の減少への影響は相当に限られたものであったと認めることが相当であり、被告が販売した6万0214袋の90%について、原告は原告各商 って、被告商品に本件各標章が付されたことによる原告各商品の販売数量の減少への影響は相当に限られたものであったと認めることが相当であり、被告が販売した6万0214袋の90%について、原告は原告各商品を販売することができなかったものと認めるのが相当である。 他方、被告は、被告商品を従前から取引のある卸売業者に販売してきたことや原告各商品と被告商品の販売方法が異なることを指摘するが、原告主張の事情は、最終的な需要者であるこれらの商品の使用者において被告商品について出所の誤認混同がある場合に原告の商品を購入しないことになることを基礎付ける事情ではなく、これらが、商標法38条1項1号に 基づく損害額の算定において、原告各商品を販売することができないとする事情であるとは認められない。また、原告各商品は、一般に被告商品の約2倍~3倍程度の金額で販売されており(甲25から28、30から32、乙65から70)、原告各商品と被告商品の販売価格帯には一定の差があったが、その差自体は相当に大きいものとはいえず、原告各商品が土壌改良剤又 は土壌改良剤・特殊肥料として販売されていたのに対し、被告商品は肥料と して販売されていたなど前記に説示したところとは別にこの価格帯の差が直ちに原告各商品を販売することができないとする事情になるとは認められない。 カ原告の販売実績に照らせば、上記オで販売することができないとされたものを除く数量については、原告の販売実績に照らしても原告の販売能力の範 囲内であると認められる。 そして、同損害に係る弁護士費用相当損害金は10%が相当である。 そうすると、原告の損害は、次のとおり、合計680万2375円になる。 令和4年7月まで1027円×5万9198袋×(1-90%) て、同損害に係る弁護士費用相当損害金は10%が相当である。 そうすると、原告の損害は、次のとおり、合計680万2375円になる。 令和4年7月まで1027円×5万9198袋×(1-90%)×(1+10%) =668万7598円令和4年8月から11月まで1027円×1016袋×(1-90%)×(1+10%)=11万4777円 4 被告は先使用により被告各標章を使用する権利を有しているか(争点4)につ いて証拠及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 ア被告は、遅くとも平成20年11月頃から被告各標章が付された本件包装と基本的に同じデザインの包装を用いて肥料の販売を行っており、現在まで販売を継続してきた。(乙4、弁論の全趣旨) イ被告は、平成25年6月から平成26年5月にかけては、北海道、岩手県、宮城県、福島県、山形県、茨城県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、長野県、静岡県、富山県、滋賀県、熊本県の会社や研究所等に被告商品を販売した。(乙7、9)ウ被告は、平成20年から本件商標が出願された平成27年までの間、被告 商品を合計5万9445袋(年平均7400袋。平成27年には年間805 6袋。)販売した。(乙8、35)エ被告は、平成22年から平成29年までの間に、本件包装がデザインされたパンフレットを合計3万8500枚作成して配布した。被告のホームページにおいては、被告商品の紹介がされ、そこには本件包装を付した被告商品が掲載されていた。(乙17~25、30、31) 上記の事実に照らせば、被告商品は、一定の数量が販売されていたと認められる。 しかし、前記3ウで認定したとおり、我が国においては、特殊肥料に限 載されていた。(乙17~25、30、31) 上記の事実に照らせば、被告商品は、一定の数量が販売されていたと認められる。 しかし、前記3ウで認定したとおり、我が国においては、特殊肥料に限っても平成26年から平成30年まで、その生産量は年間686万トンを下ることはなく、本件商標が出願された平成27年以前においても、これに類する量 の特殊肥料が生産されていたことが推認される。肥料である被告商品と同種の商品の市場規模に比べると、被告商品の販売規模は極めて小さく、広告も小規模といえるものである。被告が提出した、被告各標章が周知である旨記載された5通の陳述書も、被告と利害関係のある被告の取引先が作成したものであり、その記載内容も抽象的に「地力の素プロボカシ」が広く利用されている、広 く流布されていると記載されているにすぎないものであることから、それらによって、直ちに、被告各標章が被告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認めるに足りない。その他、ホームページで紹介されているなど被告が主張する事実関係があったとしても、そのことが被告各標章が被告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたことの根拠に 直ちになるものではない。 これらの事情を考慮すると、被告各標章が、被告商品を示すものとして需要者の間に広く認識されていたとは認められず、被告の主張には理由がない。 5 商標権行使の権利濫用の成否(争点5)について被告は、「地力の素」との表示は、被告商品の販売によって周知であり、本件商 標権には商標法4条1項10号所定の無効事由があったと主張するが、前記4の とおり、「地力の素」が被告の標章として周知であったとは認められず、この点についての被告の主張には理由がない。また、 権には商標法4条1項10号所定の無効事由があったと主張するが、前記4の とおり、「地力の素」が被告の標章として周知であったとは認められず、この点についての被告の主張には理由がない。また、「地力の素」との表示が、有機肥料の効能を一般的に示したものといえないことは、前記1で説示したとおりである。 被告が主張するその余の事情は、いずれも権利の濫用を認めるに足りる事情であるとはいえない。 よって、原告による本件商標権に基づく権利行使が権利の濫用に当たるとはいえない。 第4 結論以上のとおりであって、原告の損害賠償の請求は、680万2375円及びうち668万7598円に対する令和4年8月1日から支払済みまで、うち11万 4777円に対する同年12月1日から支払済みまでそれぞれ年3分の割合による遅延損害金を請求する限度で理由がある。また、被告商品の販売は原告の商標権の侵害に当たるところ、被告は被告商品の販売を継続しているから被告各標章を付した包装を用いた肥料の販売の差止め及び被告各標章を付した包装袋の廃棄を認める必要性も認められる。また、主文1項2項については仮執行宣言は 相当でないためこれを付さないこととし、主文3項については仮執行宣言を付すこととする。よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官仲田憲史 裁判官佐伯良子は、差支えにつき署名押印することができない。 裁判長裁判官柴田義明 (別紙)被告標章目録 ( 裁判長裁判官柴田義明 主文 (別紙)被告標章目録 (別紙)被告商品包装目録 (別紙)商標権目録 登録番号第5788047号 出願日平成27年3月16日 登録日平成27年8月28日 商標 商品及び役務の区分 第1類 指定商品 土壌改良剤,肥料
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