平成23年3月24日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成21年(ワ)第2310号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年1月31日判決原告有限会社ビバテック同訴訟代理人弁護士南石知哉被告新世紀株式会社同訴訟代理人弁護士福田健次同大川 治 主文 1 被告は,別紙商品目録記載の商品を製造,販売している原告の行為が,別紙特許目録記載の特許権を侵害している旨を,第三者に対して告知し,又は流布してはならない。 2 被告は,原告に対し,1449万7993円及びこれに対する平成21年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 5 この判決は,第2項,第4項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,1457万7993円及びこれに対する平成21年3月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告に対し,被告が原告の取引先に対して別紙本件告知書面1,2記載の内容の「ご通知」と題する書面を送付した行為が不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当すると主張して,同法3条1項に基づき同行 被告に対し,被告が原告の取引先に対して別紙本件告知書面1,2記載の内容の「ご通知」と題する書面を送付した行為が不正競争防止法2条1項14号の不正競争に該当すると主張して,同法3条1項に基づき同行為の差止めを求めるほか,同行為により原告に生じた損害について,同法4条に基づき損害賠償として1457万7993円及び不正競争行為の後の日である平成21年3月7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求め,仮に同行為が不正競争防止法2条1項14号に該当する不正競争に該当しないとしても法律上保護される利益が侵害されたと主張して,民法709条に基づき上記同額の損害賠償の支払いを求め,さらには上記主張にかかる損害を確定金額で認定できない場合について名誉毀損を理由として1000万円の損害賠償を求めた事案である。 1 判断の基礎となる事実(末尾に証拠の掲記のない事実は争いがない。)(1) 当事者ア原告は,平成15年10月7日に設立された特例有限会社であり,別紙商品目録記載の歯ブラシ(以下,まとめて「原告商品」という。)の設計・製造・販売を業として営んでいる。 イ被告は,平成14年2月7日に設立された株式会社であり,「クルン」という商品名の歯ブラシの製造及び販売などを業として営んでいる。 ウ原告商品は,いずれも歯ブラシのブラシ部に360度環状にブラシ毛が装着された歯ブラシ(以下「360度歯ブラシ」という。)であり,被告商品である「クルン」も同様の360度歯ブラシであり,原告と被告とは競争関係にある。 (2) 被告の行為等ア被告は,平成20年4月28日ころ,原告の取引先である津田孝株式会社(以下「津田孝」という。),和光堂株式会社(以下「和光堂」という。) 及びコンビウェルネス株式会 (2) 被告の行為等ア被告は,平成20年4月28日ころ,原告の取引先である津田孝株式会社(以下「津田孝」という。),和光堂株式会社(以下「和光堂」という。) 及びコンビウェルネス株式会社(以下「コンビウェルネス」という。)に対し,別紙特許目録記載1ないし4の各特許(以下,同目録の記載に従い,順に「本件特許1」ないし「本件特許4」といい,また併せて「本件各特許」ともいう。また,その特許権を,「本件特許権1」ないし「本件特許権4」といい,また併せて「本件各特許権」ともいう。)を掲げ,原告商品である「デンタルΣ」が本件各特許に抵触することを知らせることを内容とする別紙本件告知書面1記載の内容の「ご通知」と題する書面を送付した(以下,かかる行為を「本件告知行為1」といい,その書面を「本件告知書面1」といい,その記載内容を「本件告知内容1」という。)。 イ本件告知行為1に対し,和光堂は,回答期限の猶予を被告に対して申し入れたが,コンビウェルネスは,権利者が被告と相違していることから回答する必要がない旨を被告に対して回答し,津田孝は,何らの対応も取らなかった。 ウ被告は,平成20年5月15日ころ,さらにコンビウェルネス及び津田孝に対し,別紙本件告知書面2記載の内容の「ご通知」と題する書面を送付した(以下,かかる行為を「本件告知行為2」といい,その書面を「本件告知書面2」といい,その記載内容を「本件告知内容2」という。また,本件告知行為1と本件告知行為2を併せて「本件各告知行為」,「本件告知書面1」と「本件告知書面2」を併せて「本件各告知書面」,本件告知内容1と本件告知内容2を併せて「本件各告知内容」という。)。 エ原告は,同年6月2日,当庁に対し,被告を債務者として,原告商品が本件各特許権を侵害している旨を第三者に対して告 知書面」,本件告知内容1と本件告知内容2を併せて「本件各告知内容」という。)。 エ原告は,同年6月2日,当庁に対し,被告を債務者として,原告商品が本件各特許権を侵害している旨を第三者に対して告知等してはならない旨の仮処分命令を求める申立てをなし,当庁は,同年7月25日,原告の申立てを認める仮処分決定(以下「本件仮処分決定」という。)を発令した(甲49,51)。 (3) 本件特許1 ア本件特許1(以下,本件特許1の請求項2に係る発明を「本件特許発明1」という。また,本件特許1に係る願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書1」という。)の概要は以下のとおりである(甲10の1)。 特許番号第3981290号出願日平成14年4月1日登録日平成19年7月6日発明の名称回転歯ブラシの製造方法及び製造装置特許請求の範囲【請求項2】「多数枚を重ねて回転ブラシを形成するブラシ単体の製造方法であって,多数の素線を束状に集合させてなる素線群を台座に設けた挿通孔から外方に一定量突出させる第1の工程と,この素線群の突出端の中央にエアを吹き込んで素線群を放射方向に開く第2の工程と,開かれた素線群を台座に固定した状態で素線群の中央部分を溶着する第3の工程と,溶着された中央部分の中心部を切除する第4の工程とからなる回転ブラシのブラシ単体の製造方法。」イ本件特許発明1の構成要件は,次のとおり分説するのが相当である。 A 多数枚を重ねて回転ブラシを形成するブラシ単体の製造方法であって,B 多数の素線を束状に集合させてなる素線群を台座に設けた挿通孔から外方に一定量突出させる第1の工程と,C1 この素線群の突出端の中央にエアを吹き込んでC るブラシ単体の製造方法であって,B 多数の素線を束状に集合させてなる素線群を台座に設けた挿通孔から外方に一定量突出させる第1の工程と,C1 この素線群の突出端の中央にエアを吹き込んでC2 素線群を放射方向に開く第2の工程と,D 開かれた素線群を台座に固定した状態で素線群の中央部分を溶着する第3の工程と, E 溶着された中央部分の中心部を切除する第4の工程F とからなる回転ブラシのブラシ単体の製造方法。 (4) 本件特許3ア本件特許3(以下,本件特許3の請求項1に係る発明を「本件特許発明3」という。また,本件特許3に係る願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書3」という。)の概要は以下のとおりである(甲12の1)。 特許番号第4037739号出願日平成14年1月28日登録日平成19年11月9日発明の名称ロール歯ブラシ特許請求の範囲【請求項1】「多数枚を重ねて回転歯ブラシを形成するブラシ単体であって,多数の素線を束状に集合させてなる素線群が,台座に設けた円形の挿通孔から外方に一定量突出され,この素線群の突出端の中央にコーンが差し込まれて素線群が放射方向に押し開かれ,押し開かれた素線群が台座に固定された状態で素線群の中心部分が,内周が挿通孔の上端周縁に位置する環状の溶着部に形成され,環状の溶着部の内周が,挿通孔の上端周縁の位置で円形に切断されて円形の挿通穴が形成されてなるロール歯ブラシ用のシート状のブラシ単体。」イ本件特許発明3の構成要件は,次のとおり分説するのが相当である。 L 多数枚を重ねて回転歯ブラシを形成するブラシ単体であって,M 多数の素線を束状に集合させてなる素線群が,台座に設けた円形の挿 本件特許発明3の構成要件は,次のとおり分説するのが相当である。 L 多数枚を重ねて回転歯ブラシを形成するブラシ単体であって,M 多数の素線を束状に集合させてなる素線群が,台座に設けた円形の挿通孔から外方に一定量突出され,N この素線群の突出端の中央にコーンが差し込まれて素線群が放射方 向に押し開かれ,O 押し開かれた素線群が台座に固定された状態で素線群の中心部分が,内周が挿通孔の上端周縁に位置する環状の溶着部に形成され,P 環状の溶着部の内周が,挿通孔の上端周縁の位置で円形に切断されて円形の挿通穴が形成されてなるQ ロール歯ブラシ用のシート状のブラシ単体。 (5) 原告商品のブラシ単体の製造方法原告商品のブラシ単体(360度歯ブラシのブラシ部に重ねて取り付けられている環状ブラシの単体をいう。以下同じ。)の製造方法(以下「原告商品製造方法」という。)は,以下のとおりである(別紙製造方法の「現在の羽」欄参照)。 Ⅰ 束状の素線群を台座に設けた挿通孔から上方に一定量を突出させ,Ⅱ この素線群の先端の中央の下方に尖った円錐ピンを押し込んで,素線を放射方向に開き,Ⅲ 開かれた放射部を保持し,Ⅳ 台座の下にあるカッターより素線群を切断して,放射部と脚部とを備えた素線体を形成し,Ⅴ その素線体の挿通孔内の部分を溶融・固化することにより,放射状の素線と,その中央の溶着部からなる中間体を形成し,Ⅵ その後,その溶着部の外周を溶融・固化して環状の基部を形成し,Ⅶ その基部の中央に円形の穴を形成するⅧ 360度歯ブラシ用のブラシ単体の製造方法 2 争点(1) 本件各告知内容は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を含んでいるか(争点1)(2) 原告商品製造方法は本件特許発明1の技術的範囲に属 0度歯ブラシ用のブラシ単体の製造方法 2 争点(1) 本件各告知内容は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を含んでいるか(争点1)(2) 原告商品製造方法は本件特許発明1の技術的範囲に属するか(争点2) (3) 原告商品のブラシ単体は本件特許発明3の技術的範囲に属するか(争点3)(4) 故意・過失の有無(争点4)(5) 損害の額(争点5)(6) 一般不法行為の成否(争点6)(7) 名誉毀損の成否(争点7)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件各告知内容は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を含んでいるか)について【原告の主張】(1) 虚偽の事実の内容本件各告知内容は,以下の点において虚偽である。 ア原告商品製造方法は,本件特許2及び本件特許4の各発明の技術的範囲に属さず,また後記争点2及び争点3の原告の主張のとおり,本件特許発明1及び本件特許発明3の各技術的範囲に属するものではなく,いずれも本件各特許に抵触するものではないにもかかわらず,本件各特許に抵触するものであるとしている点(以下「本件虚偽告知①」という。)イ被告は,本件各特許権に基づいて差止請求権等の権利を行使する権限を有していないにもかかわらず,かかる権限を有する者として,原告商品について権利を行使する意思があるとしている点(以下「本件虚偽告知②」といい,本件虚偽告知①と併せて「本件各虚偽告知」という。)(2) 営業上の信用を害するものであること本件各虚偽告知を含む本件各告知行為を受けた者は,原告商品を取り扱った場合には,権利者である被告から差止請求訴訟又は損害賠償請求訴訟などの訴訟を提起され,法的な紛争に巻き込まれることを懸念し,原告商品の取扱いを中止する可能性がある。 実際に本件でも,本件各告知行為の後 には,権利者である被告から差止請求訴訟又は損害賠償請求訴訟などの訴訟を提起され,法的な紛争に巻き込まれることを懸念し,原告商品の取扱いを中止する可能性がある。 実際に本件でも,本件各告知行為の後にコンビウェルネスとの取引が中止 され,和光堂との間で進んでいた販売先を拡大するための新規取引に関する交渉も打ち切られてしまった。かかる事実は,本件各虚偽告知が原告の営業上の信用を害するものであることの証左である。 したがって,本件各虚偽告知は,いずれも原告の営業上の信用を害するものである。 (3) 被告の主張について被告は,本件虚偽告知②について,その告知内容が虚偽だとしても,原告の営業に関する事実ではないと主張する。 しかし,不正競争防止法2条1項14号は,「営業上の信用を害する虚偽の事実」と規定しており,営業に関する事実について虚偽の事実を告知又は流布することを要件としてはいないのであるから,虚偽であった事実が直接に営業に関する事実ではなかったとしても,これによって営業上の信用を害すれば,上記不正競争行為に該当する。 本件虚偽告知②は,原告商品について差止請求権などの権利を行使し得るとして通知したものであり,原告商品を対象としているのであるから,原告の営業に関する事実である。 したがって,本件虚偽告知②も原告の営業上の信用を害するものである。 【被告の主張】(1) 本件虚偽告知①について後記争点2及び同3における被告の主張のとおり,原告商品製造方法は本件特許発明1及び同3の技術的範囲に属するので,原告商品の製造販売行為は,本件特許権1及び同3を侵害する行為であり,虚偽ではない。 原告は,もともと環状毛を製造する機械設備や技術はなく,被告との取引を停止してからは,有限会社松川精機(以下「松川精機」という 為は,本件特許権1及び同3を侵害する行為であり,虚偽ではない。 原告は,もともと環状毛を製造する機械設備や技術はなく,被告との取引を停止してからは,有限会社松川精機(以下「松川精機」という。)に製造委託をしていたが,松川精機には環状毛の製造に係る技術力がなかったのであるから,原告をとおして環状毛の製造方法に係る情報提供がなされていたと 考えられる。そうすると,本件各告知行為時点では,松川精機が被告の採用していた製造方法,すなわち本件特許発明1及び3の技術的範囲に属する製造方法を採用していたという疑いを排除できない。 したがって,本件各告知行為のうち,原告が本件虚偽告知①とする点は,虚偽の事実ではない。 (2) 本件虚偽告知②についてア本件虚偽告知②の内容本件虚偽告知②については,次の2つの内容を含むものである。 ⅰ 被告が,本件各特許権について差止請求権等の権利を行使する権限を有していないにもかかわらず,かかる権限を有すると告知したことⅱ 被告が,原告商品について権利を行使する意思があると告知したことイ上記ⅰについて上記ⅰについては,被告が差止請求権等の権利を行使する権限を有していると告知した事実自体がない。 すなわち,本件告知書面1では,被告が訴外P1(以下「訴外P1」という。)等と共同で研究開発をしたこと及び「弊社一部取得特許」との記載があり,本件告知書面2では,「契約にて特許権を共有」,「共同研究開発者」の記載があるが,これらの記載は,いずれも「共同開発者である」,「被告が特許権の一部を共有している」旨を述べるものであり,おおむね事実である。 したがって,被告が「本件各特許の特許権者(共有者を含む。)または専用実施権者として登録されている」,あるいは当該登録された権利に基づいて,差止 いる」旨を述べるものであり,おおむね事実である。 したがって,被告が「本件各特許の特許権者(共有者を含む。)または専用実施権者として登録されている」,あるいは当該登録された権利に基づいて,差止請求権等の権利を行使する権限を有する旨の事実を告知したことはない。 ウ上記ⅱについて上記ⅱについては,基本的には,「貴社におきましても早急に調査され 賢明な処置を希望致します」(本件告知書面1),「販売中止を請求いたします」,「販売店舗等に報告させて頂きます」(本件告知書面2)というトーンであり,直ちに「権利行使」することを告知したものではない。その意味で,「権利を行使する意思がある」旨の事実を確定的に告知したものではない。 また,「権利を行使する意思がある」と告知することが「虚偽の事実」に該当することはない。すなわち,被告は,権利を行使する意思を有していたからこそ警告書等を発しているのであり,被告の内心において権利を行使する意思がある以上,その旨を告知することが虚偽の事実に該当することはない。 したがって,この点についても,被告が虚偽の事実を告知したことはない。 エ原告の営業上の信用を害するものではないこと仮に,本件虚偽告知②が虚偽の事実と評価されるとしても,その告知が原告の営業上の信用を直ちに害するものではない。なぜなら,被告が差止請求権等を有しておらず,客観的に権利行使ができないとしても,それによって,原告の営業上の信用自体は害されないからである。 2 争点2(原告商品製造方法は本件特許発明1の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1) 文言侵害が成立しないことア原告商品製造方法は,素線群に円錐ピンを押し込んで素線を放射方向に開くものであるのに対し,本件特許発明1は,素線群にエアを吹き込 ついて【原告の主張】(1) 文言侵害が成立しないことア原告商品製造方法は,素線群に円錐ピンを押し込んで素線を放射方向に開くものであるのに対し,本件特許発明1は,素線群にエアを吹き込んで放射方向に開く方法であり,原告商品製造方法は,本件特許発明1の構成要件C1を充足しない。 イまた,原告商品製造方法と本件特許発明1との間には,上記以外にも, 少なくとも次の相違点が存するので,均等侵害について論じるまでもなく,本件特許発明1の技術的範囲に属さない。 (ア) 原告商品製造方法では,中心部の円形の穴は,二次溶着(原告商品製造方法の工程Ⅵ以降)によって形成されるものであり,本件特許発明1のように切断によって切除されるものではない。 (イ) 本件特許発明1の「第3工程」における溶着は,中央の円形の穴の外側に環状の溶着部を形成するものであるが,原告商品製造方法の一次溶着(原告商品製造方法の工程Ⅴ)は,環状の溶着部を形成するものではない。 (ウ) 原告商品製造方法においては,素線群を切断した後に挿通孔内の部分を溶着しているが,本件特許発明1においては中心の穴の形成と素線群の切断を同時に行うため,素線群を台座に固定した状態で中央部分を溶着している。本件特許発明1においては,第1から第4の工程の順序や溶着範囲が重要であるが,原告商品製造方法においては順序も溶着範囲も異にしている。 (2) 均等侵害が成立しないこと被告は,原告商品製造方法が本件特許発明1と均等である旨主張するが,エアの吹き込みは,本件特許発明1の本質的部分である。すなわち,本件明細書1の段落【0002】,【0003】及び【0006】の記載によれば,エアの吹き込みは,本件特許発明1が解決しようとする課題である「素線同士の重なりをなくし,均一な厚さのブ ある。すなわち,本件明細書1の段落【0002】,【0003】及び【0006】の記載によれば,エアの吹き込みは,本件特許発明1が解決しようとする課題である「素線同士の重なりをなくし,均一な厚さのブラシ単体を製作すること」及び「量産化」の解決手法であり,まさに発明の本質的部分である。 本件特許発明1に係る特許請求の範囲においても,わざわざ「素線群の突出端の中央にエアを吹き込んで,素線群を放射方向に開く第2の工程」と記載されており,これはエアの吹き込みという手段によって上記課題が解決されるからに他ならない。 以上から,エアの吹き込みは,まさに本件特許発明1における本質的部分であり,均等侵害は成立しない。 (3) よって,原告商品製造方法は本件特許発明1の技術的範囲に属さない。 【被告の主張】原告商品製造方法は,本件特許発明1の構成要件C1を除いて,他の構成要件を全て充足しており,構成要件C1についての相違点があったとしても,次に検討するとおり,原告商品製造方法は本件特許発明1と均等なものであり,その技術的範囲に属する。 (1) 構成要件C1以外の要件を充足することについてア原告の主張(1)イ(ア)について原告は「二次溶着」の内容を明らかにしないが,原告商品のブラシ単体の中心部は切除によって形成されたとしか考えられない。 また,中心部の孔が二次溶着によって形成されるとしても,その過程は,結局のところ,中央部分を溶着してさらに中心部分に孔を形成するものであるから,実質的に「溶着された中央部分の中心部を切除」するものであり,構成要件Eを充足する。 イ原告の主張(1)イ(イ)について本件特許発明1の構成要件Dは,「中央の円形の穴の外側の環状の溶着部」と限定していないから,原告の主張は失当である。 ウ原告の り,構成要件Eを充足する。 イ原告の主張(1)イ(イ)について本件特許発明1の構成要件Dは,「中央の円形の穴の外側の環状の溶着部」と限定していないから,原告の主張は失当である。 ウ原告の主張(1)イ(ウ)について原告商品製造方法では,素線群を切断するという工程が加えられているかもしれないが,原告商品製造方法においても,素線群をカットした後に,当該素線群を台座に固定した状態,すなわち,「開かれた放射部を保持し」た状態で,素線群の中央部分を溶着するという工程(工程Ⅲ)を経ており,本件特許発明1の構成要件Dを充足する。原告の主張する「素線群の切断」という工程は,プラスアルファの要件に過ぎない。 (2) 構成要件C1を文言上充足しなくとも原告商品製造方法が本件特許発明1と均等なものであることア本質的部分でないことについて本件特許発明1は,均一な厚さのブラシ単体の製造を可能とし,しかも高度な熟練を要することなく製造することができるので,量産化を可能とし,しかも素線の重なりを少なくすることができたブラシ単体を高速度で効率良く製造することを目的とするものである(本件明細書1の段落【0044】)。 この目的を実現するブラシ単体を製造するに当たり,素線群を放射方向に開くこと自体は必要であるが,エアの吹き込みに限らず,別の手段を用いても同じ目的は達せられる。 したがって,本件特許発明1の構成要件C1は,発明の本質的部分ではない。 イ置換可能性について素線群を放射方向に開くことが第2工程の目的であるから,エアを用いても,円錐ピンを用いても,この目的は均しく達せられる。 ウ置換容易性について原告商品の製造時期には,本件特許発明1のエアを用いる手段と,円錐コーンを用いる本件特許2及び同3の手段は公開されていた。 円錐ピンを用いても,この目的は均しく達せられる。 ウ置換容易性について原告商品の製造時期には,本件特許発明1のエアを用いる手段と,円錐コーンを用いる本件特許2及び同3の手段は公開されていた。 したがって,当業者であれば,いずれの方法も容易に採用(置換)し得た。 3 争点3(原告商品のブラシ単体は本件特許発明3の技術的範囲に属するか)について【原告の主張】(1) 構成要件Lについて本件特許発明3は,「回転ブラシ」を形成するブラシ単体の製造方法で あるが,原告商品製造方法は柄部材の先端外周に固定される「360度歯ブラシ」に関するブラシ単体の製造方法であるから,原告商品製造方法によって製造される原告商品のブラシ単体は本件特許発明3の構成要件Lを充足しない。 (2) 構成要件Oについて原告商品製造方法は,「台座の下にあるカッターより素線群を切断して,放射部と脚部とを備えた素線体を形成」するが,本件特許発明3では,「押し開かれた素線群を台座に固定した状態で,素線群の中心部分を環状に溶着し,環状の溶着部の内側を前記挿通孔の上端周縁の位置で円形に切断」するため,「台座の下にあるカッターより素線群を切断」することもなければ,「放射部と脚部とを備えた素線体を形成」することもない。 また,原告商品製造方法では,「その素線体の挿通孔内の部分を溶融・固化することにより,放射状の素線と,その中央の溶着部からなる中間体」を介してブラシ単体が成形されるのであり,「環状の溶着部」は形成されない。 したがって,原告商品製造方法によって製造される原告商品のブラシ単体は,本件特許発明3の構成要件Oを充足しない。 (3) 構成要件Pについて原告商品製造方法では,「その溶着部の外周を溶融・固化して環状の基部を形成し,その基部の中央に される原告商品のブラシ単体は,本件特許発明3の構成要件Oを充足しない。 (3) 構成要件Pについて原告商品製造方法では,「その溶着部の外周を溶融・固化して環状の基部を形成し,その基部の中央に円形の穴を形成」しているのに対し,本件特許発明3では,「環状の溶着部の内側を前記挿通孔の上端周縁の位置で円形に切断」するので,溶着部の厚さが均一に仕上げられるものであり,素線群から切断すると同時に挿通孔を形成している。 したがって,原告商品製造方法によって製造される原告商品のブラシ単体は,本件特許発明3の構成要件Pを充足しない。 (4) 被告の主張について被告は,本件特許発明3が,いわゆるプロダクトバイプロセスクレームで あり,製造方法に係る記載は同発明の技術的範囲を画するものではないと主張するが,以下のとおり失当である。 ア本件特許3の出願時の請求項1の特許請求の範囲(以下「本件当初発明3」という。)は,以下のとおりであった。 「多数枚を重ねて回転歯ブラシを形成するブラシ単体であって,多数の素線が束状に集合されると共に,その素線が放射方向に押し開かれてなる素線群と,押し開かれた素線群が台座に固定された状態で,素線群の中心部分が環状に溶着されて溶着部が形成されると共に,環状の溶着部の内周が円形に切断されて円形の挿通孔が形成されてなるロール歯ブラシ用のブラシ単体。」イ本件特許3の出願人である訴外P1は,特許庁からの平成19年5月15日付け拒絶理由通知を受けて,平成19年8月30日付け手続補正書(以下,同補正書を「本件補正書」といい,本件補正書に係る補正を「本件補正」という。)において,本件当初発明3を本件特許発明3のように補正した上,特許査定を受けた。 本件補正書には,「引用例には,少なくとも上記構成要件である『素線 い,本件補正書に係る補正を「本件補正」という。)において,本件当初発明3を本件特許発明3のように補正した上,特許査定を受けた。 本件補正書には,「引用例には,少なくとも上記構成要件である『素線群の中心部分が,内周が挿通孔の上端周縁に位置する環状の溶着部に形成され』ること,及び,『環状の溶着部の内周が,挿通孔の上端修正の位置で円形に切断されて』いること,については記載も示唆もされていない」,「本願発明は,このように素線群1を台座の上に固定した状態で内周が挿通孔の上端周縁に位置する環状に溶着するとともに,同じく台座の上に固定した状態で溶着する部分の内側を挿通孔の上端周縁の位置で切断するので,溶着部(81)の厚さが均一に仕上げられる,という効果を奏するものである(〔0016〕など参照)。引用例からはこのような効果は期待できないもので,本願発明特有の効果である」との記載がある。 ウ上記出願経過のとおり,本件特許発明3においては,「挿通孔の上端周縁 を環状に溶着する」という製造方法によって特有の効果が得られるとされており,かかる引用例との製造方法における違いによって初めて特許査定されたのであり,少なくとも「内周の挿通孔の上端周縁に位置する環状の溶着部に形成され」,「挿通孔の上端周縁の位置で円形に切断されて円形の挿通穴が形成」されるという製造方法によって特定しなければ,物として特定することはできない。 エしたがって,かかる製造方法を構成要件から除外する被告の主張は失当である。 【被告の主張】(1) 本件特許発明3のクレームの解釈本件特許発明3は,いわゆるプロダクトバイプロセスクレームであり,製造方法によって発明を特定している。しかし,同発明は物(ブラシ単体)のクレームであり,その技術的範囲は,製造工程のいかんにかかわ 本件特許発明3は,いわゆるプロダクトバイプロセスクレームであり,製造方法によって発明を特定している。しかし,同発明は物(ブラシ単体)のクレームであり,その技術的範囲は,製造工程のいかんにかかわらず完成品の形状自体に及ぶべきものである。 そうすると,本件特許発明3の物としての構成要件は次のとおりとなる。 L 多数枚を重ねて回転歯ブラシを形成するブラシ単体であって,X 前記ブラシ単体は,(ア) 放射方向に開かれた素線群と,Y (イ) 環状の溶着部と,Z (ウ) 環状の溶着部の内周に設けられた円形の挿通穴とを有する,Q ロール歯ブラシ用のシート状のブラシ単体(2) 原告商品のブラシ単体の構成原告商品のブラシ単体の構成は,次のとおりである。 l 複数枚を重ねて360度歯ブラシの回転ブラシを形成する毛状ブラシ材単体であって,x 同ブラシ単体は,放射状の素線と, y その中央の溶着部の外周を溶融・固化して形成された環状の基部と,z 同基部の中央に円形の孔を形成してq なる360度歯ブラシのブラシ単体(3) 原告商品のブラシ単体と本件特許発明3との対比上記のとおり,原告商品のブラシ単体は,本件特許発明3の構成要件であるL,X,Y,Z,Qの全てを充足しており(「環状の溶着部」と「環状の基部」は実質的に同じ構成である。),本件特許発明3の技術的範囲に属する。 4 争点4(故意・過失の有無)について【原告の主張】(1) 本件各告知行為のような特許権侵害に関する警告通知を行う場合には,当然,特許権侵害の有無について調査する義務がある。しかも,本件において,被告は,原告から,本件各告知行為を行う前に,営業妨害となることから取引先への通知は控えるよう警告を受けていた。 (2) しかるに,本件訴訟におけ について調査する義務がある。しかも,本件において,被告は,原告から,本件各告知行為を行う前に,営業妨害となることから取引先への通知は控えるよう警告を受けていた。 (2) しかるに,本件訴訟における被告の主張態度からすれば,被告は専門的な調査を何ら行っておらず,それにもかかわらず,「弁理士,専門職員各位の協力により考えられる各方面全てから検討調査した結果…弊社一部取得特許に抵触することが判明致しました。」とか,「弊社は弁理士及び専門職員の助言の基…販売中止を請求いたします。」などという内容の通知を行ったのであり,故意・過失があることは明らかである。 【被告の主張】(1) 原告商品製造方法は,少なくとも,本件特許4に係る発明の技術的範囲には属していないようである。しかし,一般に,部外者が製造方法を的確に把握することは困難であり,本件においても,原告は二次溶着工程の詳細を明らかにしない。 他方,原告商品の外観形状は,被告の製造販売する製品とほぼ同様のものであるから,被告が,原告商品が本件各特許権に抵触するものであると考え たとしてもおかしくはない。 しかも,上記争点2,3で主張したとおり,少なくとも原告商品製造方法及び原告商品のブラシ単体は,本件特許発明1及び同3の技術的範囲内にある。 (2) そうだとすると,被告が,本件特許1及び3を摘示して原告商品又は原告商品製造方法が同各特許に係る特許権に抵触する旨を告知する行為は,虚偽事実の告知行為には当たらないし,また,本件特許2及び4を摘示して同各特許に係る特許権に抵触する旨を告知した行為には,少なくとも故意・過失がない。 5 争点5(損害の額)について【原告の主張】被告による本件各告知行為の結果,原告とコンビウェルネス,和光堂及び豊産業株式会社(以下「豊産業」と した行為には,少なくとも故意・過失がない。 5 争点5(損害の額)について【原告の主張】被告による本件各告知行為の結果,原告とコンビウェルネス,和光堂及び豊産業株式会社(以下「豊産業」という。)との取引が影響を受けて後記(1)ないし(3)のとおり損害(逸失利益)を受けたほか,さらに後記(5)の対策費用,後記(6)の弁護士費用の損害を受け,その損害額の合計は1457万7993円である。 (1)コンビウェルネスとの取引における逸失利益(18万2347円)ア取引の経緯本件各告知行為の結果,原告は,平成20年5月26日,コンビウェルネスから,同年6月20日納入予定で受注していた取引をキャンセルされその後,同年8月10日まで,同社から取引を中止された。 イ損害額コンビウェルネスから取引を停止されたことによって原告が被った損害の額は,以下のとおり,18万2347円を下らない。 (ア) 過去1年間の売上高原告とコンビウェルネスとの間の原告商品に係る平成19年6月か ら平成20年5月の売上高は367万6617円(1か月当たりの平均売上金額は30万6384円)である。 (イ) 利益率原告商品の取引についての原告の利益率は,どんなに少なくとも,消費税を含む売上金額の30%を下らない。 (ウ) 逸失利益上記からすれば,被告の本件各告知行為がなければ,原告はコンビウェルネスからキャンセルされた平成20年6月納入分に加え,同年7月納入分も,同様に30万3912円の受注を受けることができたはずであるから,本件各告知行為の結果,コンビウェルネスとの取引における原告の逸失利益は,得られたはずの2か月分の売上金額60万7824円(30万3912円×2月)に利益率30%を乗じて得られる18万2347円を下らな 告知行為の結果,コンビウェルネスとの取引における原告の逸失利益は,得られたはずの2か月分の売上金額60万7824円(30万3912円×2月)に利益率30%を乗じて得られる18万2347円を下らない。 (2)和光堂との取引における逸失利益(999万1956円)ア取引の経緯(ア) 原告と和光堂との取引は,原告の商品を「和光堂ベビー歯ブラシ」という和光堂のブランドで販売する,いわゆるOEM取引であり,平成19年9月ころに開始した。同商品はヒット商品となり,原告の生産体制が追いつかなかったため,和光堂と協議の上,一旦,生産を停止して商品の組み立て工程を外部発注することとし,さらに,商品自体にも改良を加えて,再発売することとした。 (イ) 原告は,和光堂との間で平成20年9月を再発売予定時期として再発売に向けての協議を進め,同年5月13日には,和光堂に対し,歯ブラシの柄の部分の金型を製作するための見積りを提示する段階に至っていた。しかし,被告から和光堂に対し,同年4月28日ころに本件告知行為1がされたため,前記金型の見積書の提示に対する回答も得られず, 和光堂との間で進められていた再発売に関する協議は頓挫した。 (ウ) 原告は,平成20年11月になって和光堂から上記金型の発注を受けることができたが,商品の再発売自体は平成21年3月となった。 イ損害額和光堂との再発売の時期が半年間遅れたことによる原告の逸失利益は,以下のとおり,999万1956円を下らない。 (ア) 再発売後の売上高再発売後の和光堂との売上高は,平成21年2月から同年5月までの4か月間で合計2220万4350円であり,1か月当たりの平均売上金額は555万1087円である。 (イ) 利益率原告商品の取引についての原告の利益率 高は,平成21年2月から同年5月までの4か月間で合計2220万4350円であり,1か月当たりの平均売上金額は555万1087円である。 (イ) 利益率原告商品の取引についての原告の利益率は,どんなに少なくとも,消費税を含む売上金額の30%を下らない。 (ウ) 逸失利益被告の本件告知行為1がなければ,平成20年9月の商品入替時期に合わせて,和光堂との取引を再開できたはずである。したがって,被告の本件告知行為1のために,原告は本来予定された再発売時期から現実に再発売ができた6か月間相当分の取引機会を失ったことになる。 原告の和光堂に対する1か月当たりの平均売上金額売が555万1087円であるから,上記取引機会を失った期間にも,合計3330万6522円の売上高が見込まれ,これに利益率30%を乗じた999万1956円が原告の被告和光堂との取引における逸失利益となる。 (3)豊産業株式会社との取引における逸失利益(366万2780円)ア取引の経緯(ア) 原告は,豊産業と平成20年1月に基本契約を締結し,同社を経由して,ピップ株式会社(当時は,ピップトウキョウ株式会社)に原告商品 を販売しており,同社は,全国のドラッグストアに原告商品を卸していた。 しかし,被告による本件各告知行為がなされたことが同社の知るところとなり,同年5月で豊産業とピップトウキョウ株式会社間の新規営業は停止となり,経営統合予定で,新規営業が予定されていたピップフジモト株式会社との新規取引も中断した。 (イ) 豊産業との取引は,完全に停止したわけではなかったが,被告による本件各告知がなされたため,ピップ株式会社は積極的な営業は行わず,そのため新たに原告商品を導入する小売店はなくなり,返品も生じるようになった。その結果,取引量は大幅に減 けではなかったが,被告による本件各告知がなされたため,ピップ株式会社は積極的な営業は行わず,そのため新たに原告商品を導入する小売店はなくなり,返品も生じるようになった。その結果,取引量は大幅に減少した。 イ損害額上記経緯からすれば,本件各告知行為による原告の逸失利益は,以下のとおり,366万2780円を下らない。 (ア) 本件各告知行為前後の1か月当たりの平均売上金額本件各告知行為の前である平成20年2月から同年5月までの4か月間の売上高は934万4489円であり,1か月当たりの平均売上金額は233万6122円であったが,本件各告知行為の後である平成20年6月から同年12月までの7か月間の売上高は414万3593円であり,1か月当たりの平均売上金額は59万1941円であり,前者に比べて1か月当たり174万4181円減少している。 (イ) 利益率原告商品の取引についての原告の利益率は,どんなに少なくとも,消費税を含む売上金額の30%を下らない。 (ウ) 逸失利益上記取引の経緯からすれば,被告による本件各告知行為がなければ,原告は,平成20年6月以降も,少なくともそれ以前と同様の売上げが あったはずであるから,平成20年6月から同12月の間の期間の売上減少額は1220万9267円(174万4181円×7か月)を下らないものと見込まれ,またその間366万2780円の利益が得られたはずであるから,同額が原告の逸失利益となる。 なお,原告は,豊産業から取引を停止されたことの損害について,豊産業に対して訴訟を提起し,和解により1000万円を受領しているが,その一方で原告は,在庫として抱えていた取引価格360円の商品2万8939本を豊産業に対して引き渡しており,その本来の取引価格は 豊産業に対して訴訟を提起し,和解により1000万円を受領しているが,その一方で原告は,在庫として抱えていた取引価格360円の商品2万8939本を豊産業に対して引き渡しており,その本来の取引価格は1041万8040円であって,和解で受領した金額は正常な売買価格以下の金額にすぎない。 (4)競合商品の存在について被告は,原告の売上げが減少したことには,株式会社STBヒグチ(以下「STBヒグチ」という。)の商品の存在も影響していると主張するが,STBヒグチの競合商品は,本件各告知行為がされる3年以上前から販売されていた商品であり,そのころから積極的に宣伝もされてきている。 また,被告は,原告商品の売上げが徐々に減少していたように主張するが,平成20年では4月よりも5月の方が売上金額は伸びているし,そうであるのに本件各告知行為後である同年6月以降に大きく売上げが減少しているのであるから,本件で問題にしている売上減少が本件各告知行為の結果であることは明らかである。 (5)対応費用(24万0910円)ア原告は,被告の本件各告知行為により毀損された信用を回復するため,取引先に対して以下のような対応を迫られた。 (ア) 被告による本件各告知があったため,原告代表取締役社長P2(以下「P2社長」という。)及び事業部長P3(以下「P3事業部長」という。)が事情説明のために上京し,平成20年5月19日にコンビウェルネス を訪問し,また,P2社長は,同日宿泊して,翌20日に和光堂を訪問した。 (イ) P3事業部長は,同年6月12日,上京して,コンビウェルネスを訪問し,状況報告と今後の進め方について説明した。 (ウ) 同年8月7日には,P3事業部長と営業部長のP4(以下「P4営業部長」という。)が上京して,コンビウェルネスを 上京して,コンビウェルネスを訪問し,状況報告と今後の進め方について説明した。 (ウ) 同年8月7日には,P3事業部長と営業部長のP4(以下「P4営業部長」という。)が上京して,コンビウェルネスを訪問し,同年7月25日に得た本件仮処分決定に関する報告と今後の販売再開のための打ち合わせを行った。 イ原告は,上記対応のため,以下の合計24万0910円の費用を支出した。 (ア) 平成20年5月19日分及び20日分往路新幹線代金 2万8100円復路新幹線代金 2万7970円東京在来線代金 960円宿泊代金 7140円(イ) 平成20年6月12日分往復新幹線代金 3万0500円(ウ) 平成20年8月7日及び8日往復新幹線代金 5万2800円(2万6400円×2名)宿泊代金 1万3440円(6720円×2名)(エ) 人件費人件費は1人1日少なくとも1万円を下らないことから,対応に要した人件費は以下の合計金8万円を下らない。 5月19日分 2名30日分 1名6月12日分 1名 8月 7日分 2名8日分 2名合計延べ人数 8名(6)弁護士費用(50万円)原告は,本件の解決のために弁護士に委任をせざるを得ず,これに要した弁護士費用は,解決に仮処分などの手続を要したことを鑑みれば,少なくとも50万円を下らない。 【被告の主張】(1) コンビウェルネスとの取引における逸失利益について原告の主張する事実はいずれも知らない。 ただし,被告の本件各告知行為と,平成20年6月20日納入分の取引キャンセルの事実及び同年7 月に受注がなかったことの間に因果関係があるとする点については争う。本件告 する事実はいずれも知らない。 ただし,被告の本件各告知行為と,平成20年6月20日納入分の取引キャンセルの事実及び同年7 月に受注がなかったことの間に因果関係があるとする点については争う。本件告知行為1は,同年4月28日付けであり,これが原因であれば,同年5月納入分についてキャンセルがなされてしかるべきである。しかし,原告の主張によっても,キャンセルがなされたのは同年5月26日というのであるから,同年6月分がキャンセルされ,同年7月に発注がなかったことが,本件各告知行為と因果関係がある結果とはいえない。 原告商品の利益率が30%であるとの主張については,原告は原告商品を全て仕入・外注によって調達しており,かかる事業形態で30%もの利益率があるというのはにわかに信じ難い。 また,「利益」については,売上総利益から,原告商品の販売の増減によって増減する必要不可欠な経費を控除しなければならないところ,原告の主力事業は,まさに原告商品の販売であるから,広告宣伝費,荷造運賃,旅費交際費,接待交際費,通信費,租税公課その他,原告商品の販売の増加に伴って増加すると考えられる必要不可欠な経費を控除すべきである。 (2) 和光堂との取引における逸失利益について 原告の主張する事実はいずれも知らない。 ただし,被告の本件告知行為1と,原告と和光堂との間の再発売に関する協議が頓挫した事実との間に因果関係があるとする点については争う。原告の主張によっても,原告が見積書を提出したのは,平成20年5月13日であって,本件告知行為1よりも後のことである。しかも,それは見積書に留まるものであり,和光堂が当該見積を承認することが確定していたわけでもない。また,原告が同年11月に和光堂から発注を受けた金型が,同年5月13日に提出した見積における ある。しかも,それは見積書に留まるものであり,和光堂が当該見積を承認することが確定していたわけでもない。また,原告が同年11月に和光堂から発注を受けた金型が,同年5月13日に提出した見積における金型と同一であったかどうかも明らかでない。 さらに,和光堂との取引再開には,環状毛の長さ,歯ブラシの柄の形状・デザイン及び柄の材質を変更しなければならなかったのであり,そのためには和光堂と協議する必要があった。したがって,仮に本件告知行為1がなかったとしても,平成20年9月に再発売が可能であったとはいえない。逆に,原告は,本件仮処分決定を得た後,速やかに再発売への取り組みを再開することができたのであり,本件告知1があっても平成20年9月の再発売に間に合わせることができたとも考えられる。したがって,本件告知1によって同年9月に再発売ができなかったとはいえない。 なお,原告の利益率については,上記(1)のとおり争う。 (3) 豊産業との取引における逸失利益について原告の主張する事実はいずれも知らない。 ただし,被告の本件各告知と,ピップトウキョウ株式会社の新規営業が停止し,ピップフジモト株式会社の新規取引が中断した事実との間に因果関係があるとする点は争う。原告の主張によれば,豊産業との契約は平成20年1月ころのことであり,同年5月までわずか5か月間程度の取引がなされたに留まる。原告が,それ以降も同年2月ないし5月までの間の売上水準を維持できた保証はない。本件各告知行為の有無にかかわらず,競合他社との競争があり得たであろうし,品質その他原告商品に由来する事情による売上減 少もあり得たであろう。 なお,原告の利益率については,上記(1)のとおり争う。 また,原告は,豊産業から取引を停止されたことの損害について,豊産業に対して訴訟を提 する事情による売上減 少もあり得たであろう。 なお,原告の利益率については,上記(1)のとおり争う。 また,原告は,豊産業から取引を停止されたことの損害について,豊産業に対して訴訟を提起し,和解により1000万円を受領している。 (4) 競合商品の存在について平成17年8月ころから販売されていたSTBヒグチの360度歯ブラシのうち新ブランドの「たんぽぽの種」が平成19年11月以降,テレビCM等で広告宣伝され,平成20年1月からイトーヨーカ堂やセブンイレブン等でも販売されるようになっていた。その上,STBヒグチの上記歯ブラシは,定価が300円ないし400円の低価格商品であって,定価が1000円を超える原告商品に比較して価格競争力もある。 そもそも原告商品は,以上のような事情もあって平成19年2月から売上げが減少する傾向にあったのであるから,本件において,原告の売上減少と本件各告知行為との間に因果関係が認められるとしても,そのすべてが本件各告知行為と因果関係があるとは認められない。 (5) 対応費用についていずれも不知ないし争う。 (6) 弁護士費用について争う。 6 争点6(一般不法行為の成否)について【原告の主張】(1) 仮に本件各告知行為が不正競争防止法第2条1項14号に定める不正競争に該当しないとしても,被告は,本件各告知行為をするに先立って,原告訴訟代理人から原告の取引先に対する通知が原告の営業妨害となる旨の警告を受けていたのであり,それにもかかわらず,これを無視して,原告と取引先との取引関係を破壊することを目的として,原告の大口取引先3社に対して, 本件各告知行為を行ったのである。 (2) 被告の本件各告知行為は,故意又は重大な過失によって,原告の法律上保護される利益 引関係を破壊することを目的として,原告の大口取引先3社に対して, 本件各告知行為を行ったのである。 (2) 被告の本件各告知行為は,故意又は重大な過失によって,原告の法律上保護される利益を侵害するものであり,不法行為に該当する。 (3) 原告は,本件各告知行為により,前記5【原告の主張】欄記載の額の損害を受けた。 【被告の主張】(1) 一般不法行為が成立するかどうかは,結局のところ,本件各告知内容が虚偽の事実かどうかに関わるのであり,この点については,既に主張したとおり,本件各告知内容には虚偽の事実は存在しない。 (2) また,本件各告知内容は,調査を要求するなど,まずは穏当な方向性を志向したものである。 (3) そうすると,被告による本件各告知行為が,社会通念上,自由市場において許容される競争行為を逸脱する違法なものとまでは評価できない。 (4) 損害額については,前記5【被告の主張】のとおり争う。 7 争点7(名誉毀損の成否)について【原告の主張】(1) 仮に本件各告知行為が不正競争防止法第2条1項14号に定める不正競争に該当しないとしても,本件各告知行為は,原告の取引先に対して,原告商品の製造販売行為が本件各特許に抵触する旨を通知するものであり,かかる告知行為は原告の社会的評価を低下させるものである。 (2) 被告は,原告の取引先に通知を行っているが,当該通知は特定の者に対して行われたものではなく,不特定多数に対する流布の一環として行われたものである。現実にも,被告による本件各告知行為は,ピップ株式会社の知るところとなり,被告が通知を行っていない豊産業との取引量が大幅に減少した。 したがって,本件各告知行為は,原告の社会的評価を低下させる事実の「流 布」に該当する。 (3) 被告に過失がある ころとなり,被告が通知を行っていない豊産業との取引量が大幅に減少した。 したがって,本件各告知行為は,原告の社会的評価を低下させる事実の「流 布」に該当する。 (3) 被告に過失があることは,前記4【原告の主張】のとおりである。 (4) 被告の本件各告知行為によって,原告は,前記5【原告の主張】記載の額の損害を受けた。 仮に,本件各告知行為による売上金額の減少が確定的な数値をもって認められない場合には,営業上の信用毀損自体を損害として主張する。その額は,以下の事情からして1000万円を下らない。 ア本件各告知行為は,原告商品の製造・販売が本件各特許に抵触すること,特許権侵害については弁理士,専門職員により検討調査した結果であること,被告が特許権者ではないのに権利者と偽って販売の中止を請求していること,マスメディア等へ知らせる,法的手段を取る,販売店舗などに対し断固とした態度で臨むとしていることなど,その内容は,虚偽かつ恐喝的で,極めて悪質である。 イ被告は,原告からの事前の警告を無視して,原告にとって重要な取引先に対して,2度にわたって繰り返し通知しており,悪質といわざるを得ない。 ウ原告商品は,原告の唯一の販売商品であり,同商品の取引に対する悪影響は原告にとって死活問題となる。実際にも,被告の本件各告知行為後に原告商品の全体としての売上高は半分以下に激減し,会社存続の危機に直面した。 【被告の主張】全て争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件各告知内容は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を含んでいるか)について(1) 被告が原告の取引先に対して送付した「ご通知」と題する書面の内容は, 本件告知書面1,2のとおりであるが,本件告知書面1においては,本件各特許権の存在を指摘し でいるか)について(1) 被告が原告の取引先に対して送付した「ご通知」と題する書面の内容は, 本件告知書面1,2のとおりであるが,本件告知書面1においては,本件各特許権の存在を指摘した上,「上記文献を,弁理士,専門職員各位の協力により考えられる各方面全てから検討調査した結果,貴社におきまして販売される有限会社ビバテック製造『デンタルΣ』ブラシ構造及び製造方法が弊社一部取得特許に抵触することが判明致しました。」と記載しているのであるから,これらの記載によって,被告は,原告の取引先である津田孝,和光堂及びコンビウェルネスに対し,原告商品である『デンタルΣ』のブラシ構造,あるいはその製造方法が本件各特許権のいずれかの関係でその技術的範囲に属する旨を告知していると認められる(本件虚偽告知①に相当する。)。 そして,本件告知書面1には,上記記載に続け,原告に対して本件各特許権の侵害を通知したのに無視されたことや,原告の行為が許されないように表現する記載があることからすると,本件告知書面1により,原告が本件各特許権を違法に侵害している事実が告知されていることは明らかであり,さらには,原告の取引先である津田孝,和光堂及びコンビウェルネスにとって,原告商品を取り扱うことによって,自らも本件各特許権の侵害行為を犯すおそれがあることを告知されていると理解されるから,本件告知内容1には,原告の営業上の信用を害する事実が含まれていることは明らかである。 したがって,原告商品のブラシ単体,あるいはその製造方法のいずれにおいても,本件各特許権のいずれの技術的範囲に属さないのであれば,被告が上記記載部分を含む「ご通知」と題する書面を,原告の取引先である津田孝,和光堂及びコンビウェルネスに対して送付した本件告知行為1は,不正競争防止法2条1項1 の技術的範囲に属さないのであれば,被告が上記記載部分を含む「ご通知」と題する書面を,原告の取引先である津田孝,和光堂及びコンビウェルネスに対して送付した本件告知行為1は,不正競争防止法2条1項14号の「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を告知する不正競争に該当することになる。 (2) 本件告知書面1には,上記記載に続けて,「弊社は,特許抵触は確実と承知し御通知致しましたが,貴社におきましても早急に調査され賢明な処置を希望致します。」,「文書到着後14日以内に貴社又は,有限会社ビバテック社よ り適正且つ前進的内容の通知のない場合は特許法を無視しコピー商品を製造販売しそれを容認する行為と考え,マスメディア等に内容を知らせると同時に断固とした手段を考えております。」と記載して本件各特許権の侵害を理由とする特許権に基づく権利行使の可能性を示唆する記載があり,さらに本件告知書面2には,上記同様の本件特許権の侵害を直截に表現した記載はないものの,「弊社は弁理士及び専門職員の助言の基,貴社に対し360°型歯ブラシ(有限会社ビバテック社製造販売商品『デンタルΣ』)の販売中止を請求いたします。このまま,弊社の通知を無視し販売を続けられた場合,法的手段及び,販売店舗などに対し断固とした態度で臨むことをご承知下さい。」,「この文書送付日より10日以内に貴社及び有限会社ビバテック社より適切な対応(話し合い)がなくコピー商品を販売された場合,有限会社ビバテック社が過去ヨークマート社に対しての行動社風を含め販売店舗等に報告させて頂きます。」との記載があり,本件告知行為2が本件告知行為1に引き続き津田孝及びコンビウェルネスに対してされたことからすると,これも本件告知内容1と同様の本件各特許権の侵害を理由とする特許権に基づく権利行使の可能性を示唆す ,本件告知行為2が本件告知行為1に引き続き津田孝及びコンビウェルネスに対してされたことからすると,これも本件告知内容1と同様の本件各特許権の侵害を理由とする特許権に基づく権利行使の可能性を示唆する記載であるということができる(本件虚偽告知②に相当する。)。 (3) 被告は,この後者の権利行使の可能性を示唆する記載(本件虚偽告知②)が, 被告が,本件各特許権について差止請求権等の権利を行使する権限を有していないにもかかわらず,かかる権限を有すると告知したこと, 被告が,原告商品について権利を行使する意思があると告知したことの二つの内容を含むものであると分析した上,前者の点については,被告が本件各特許権について何らかの権利を有するから虚偽ではない旨主張し,後者の点については,「権利を行使する意思がある」旨の事実を確定的に告知したものではないし,「権利を行使する意思がある」と告知することが「虚偽の事実」に該当することはないと主張し,さらに被告が差止請求権等を有しておらず,客 観的に権利行使ができないとしても,それによって,原告の営業上の信用自体は害されないから不正競争防止法2条1項14号にいう「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」に該当しないように主張する。 しかしながら,被告が本件各告知書面中に示唆した,特定の行為を対象として本件特許権に基づく権利行使をする旨の意思表明は,これを受けた者にとって被告の単なる主観的な意思表明と受け止められるのではなく,当然,その前提として,被告が本件各特許権の権利者であるという事実のみならず,対象とされた特定の行為が本件特許権を侵害する行為であるとの事実が包含されているものと理解される。 (4) したがって,被告が原告の取引先に上記検討した本件各告知書面中の記載部分を含む書面を ず,対象とされた特定の行為が本件特許権を侵害する行為であるとの事実が包含されているものと理解される。 (4) したがって,被告が原告の取引先に上記検討した本件各告知書面中の記載部分を含む書面を送付した行為も,原告商品のブラシ単体,あるいはその製造方法いずれにおいても,本件各特許権のいずれの技術的範囲に属さないのであれば,上記(1)と同様に,不正競争防止法2条1項14号の「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を告知する不正競争に該当することになる。 (5) そこで,上記検討した告知内容が「虚偽の事実」であるか検討すべきところ,まず少なくとも原告商品製造方法が物の製造方法の特許である本件特許2及び同4に係る各発明の技術的範囲に属さないものであることを被告は積極的に争わず,むしろ自認しているものといえる。 したがって,この点で既に本件各特許権すべての関係で特許権侵害の問題があるように表現した本件各告知内容は,いずれもその限りで虚偽の事実を含んでいるということができる。 そして,さらに後記2,3で検討するとおり,原告商品製造方法は本件特許発明1の,原告商品は本件特許発明3のいずれの技術的範囲にも属さないものであるから,結局,原告の取引先である津田孝,和光堂及びコンビウェルネスに対し「ご通知」と題する書面を送付した本件各告知は,いずれも,原告の「営業上の信用を害する虚偽の事実」を告知する行為であり,不正競 争防止法2条1項14号の不正競争に該当するものと認められる。 2 争点2(原告商品製造方法は本件特許発明1の技術的範囲に属するか)について原告商品製造方法は,前記判断の基礎となる事実(5)のとおりであり,同製造方法の工程Ⅱで円錐ピンが用いられている点において,本件特許発明1の構成要件C1の「エアを吹き込んで」という ついて原告商品製造方法は,前記判断の基礎となる事実(5)のとおりであり,同製造方法の工程Ⅱで円錐ピンが用いられている点において,本件特許発明1の構成要件C1の「エアを吹き込んで」という要件を充足しないことは当事者間に争いがない。 しかしながら被告は,同要件を充足しないとしても,原告商品製造方法は,本件特許発明1と均等なものであり,その技術的範囲に属すると主張する。 特許請求の範囲に記載された製造方法に,対象となる製造方法と異なる工程が存する場合であっても,①当該工程が特許発明の本質的部分ではなく,②当該工程を対象となる製造方法におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,③そのように置き換えることに,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が,対象となる製造方法によって製造した時点において容易に想到することができたものであり,④対象となる製造方法が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,⑤対象となる製造方法が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,当該対象となる製造方法は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である(最高裁第三小法廷平成10年2月24日判決・民集52巻1号113頁参照)。 そこで,上記要件に基づき検討する。 (1) 本質的部分かどうかについてア明細書の記載証拠(甲10の2)によれば,本件明細書1の「発明の詳細な説明」に は,以下の記載があることが認められる。 (ア) 発明が解決しようとする課題【0004】「そこで,本 明細書の記載証拠(甲10の2)によれば,本件明細書1の「発明の詳細な説明」に は,以下の記載があることが認められる。 (ア) 発明が解決しようとする課題【0004】「そこで,本発明は,回転歯ブラシを構成するブラシ単体を高度な熟練を要することなく,しかもできるだけ工程数少なく効率良く製造できるブラシ単体の製造方法とその装置を提供し,ひいては回転歯ブラシを量産化可能とする製造方法を提供することを目的とする。」(イ) 課題を解決する手段【0006】「以上の方法では,各工程を画一的に処理することが可能となり,高度な熟練を要することなく均一な厚さのブラシ単体の製作を可能とする。 素線群をノズルからのエアを用いて放射方向に開くことにより,ブラシ単体を構成する素線同士の重なりがほとんどなくなり,均一な厚さのブラシ単体の製作ができた。ブラシ単体の製作速度を早くした場合にも素線を傷付けるおそれが少なくなり,このため,素線群の開きを高速度で行うことが可能となって,ブラシ単体の高速度による効率良い製造を可能とする。放射方向に開いた素線群の中央部分を溶着後,溶着された中央部分の中心部を切除するので中心部の形状を均一に仕上げることが可能であり,均一なブラシ単体の製造ができる。また,素線群を放射方向に開く工程を,素線群の突出端の中央部にエアを吹き込んで行うことにより,素線群を開くのと中心部を切除するのとを同じ部材で行うことが可能となり,装置の簡素化及び操作系の簡素化を可能とした。そして,これにより回転歯ブラシの均質化及び量産化が可能となった。」【0007】「また,本発明にかかる回転ブラシのブラシ単体の製造装置は,多数枚 を重ねて回転ブラシを形成するためのブラシ単体の製造装置であって,多数の素線を束状に集合させてなる た。」【0007】「また,本発明にかかる回転ブラシのブラシ単体の製造装置は,多数枚 を重ねて回転ブラシを形成するためのブラシ単体の製造装置であって,多数の素線を束状に集合させてなる素線群を通す挿通孔を設けた台座と,素線群を掴んで台座の挿通孔から一定量突出させて保持するチャックと,素線群の突出端の中央にエアを吹き込んで素線群を放射方向に開くノズルと,開かれた素線群を台座に固定する押え体と,素線群を台座に固定した状態で素線群の中央部分を溶着する溶着機と,溶着機による溶着部分の中心部を切除する切除手段とを備えている。」(ウ) 発明の効果【0044】「以上のように,本発明によれば,均一な厚さのブラシ単体の製造を可能とし,しかも高度な熟練を要することなく製造することができるので,量産化を可能とし,しかも素線の重なりを少なくすることができたブラシ単体を高速度で効率良く製造することができ,回転歯ブラシの均質化及び量産化が可能となった。」イ検討本件明細書1の上記記載によれば,本件特許発明1は,高度な熟練を要することなく,均一な厚さのブラシ単体を効率よく製造できる製造方法を提供することを発明の解決しようとする課題とするものであり,発明の効果は,量産化を可能とし,しかも素線の重なりを少なくすることができたブラシ単体を高速度で効率良く製造することにあると認められる。 また,本件明細書1では,本件特許発明1における構成要件C1の「エアを吹き込んで」という方法につき,「素線群をノズルからのエアを用いて放射方向に開くことにより,ブラシ単体を構成する素線同士の重なりがほとんどなくなり,均一な厚さのブラシ単体の製作ができた」(段落【0006】)と記載されており,また,「ブラシ単体の製作速度を早くした場合にも 開くことにより,ブラシ単体を構成する素線同士の重なりがほとんどなくなり,均一な厚さのブラシ単体の製作ができた」(段落【0006】)と記載されており,また,「ブラシ単体の製作速度を早くした場合にも素線を傷付けるおそれが少なくなり,このため,素線群の開きを高 速度で行うことが可能となって,ブラシ単体の高速度による効率良い製造を可能とする」(同段落)と記載されている。 そうすると,エアを吹き込むという方法は,均一な厚さのブラシ単体を,高速度で効率よく製造するという本件特許発明1の課題及び作用効果に直結する構成と位置づけられており,まさに本件特許発明1の本質的部分というべきである。 (2) そうすると,本件特許発明1の構成要件C1におけるエアを用いる工程は,少なくとも均等侵害が成立するための要件である「本質的部分でないこと」を充たさないのであるから,その余の要件を検討するまでもなく,原告商品製造方法をもって本件特許発明1と均等なものということはできない。 したがって,原告商品製造方法は本件特許発明1の技術的範囲に属するとは認められない。 3 争点3(原告商品のブラシ単体は本件特許発明3の技術的範囲に属するか)について(1) 本件特許発明3における構成要件Pは,「押し開かれた素線群が台座に固定された状態で素線群の中心部分が,内周が挿通孔の上端周縁に位置する環状の溶着部に形成され」というものである。 (2) また,証拠(甲12の2)によれば,本件明細書3には,以下の記載があることが認められる。 ア発明が解決しようとする課題【0003】「ところで,以上のように製作される回転ブラシは,その環状部の厚みを均一とし,回転ブラシの毛足密度を均一とするのに熟練を要し,しかも,機械化の困難な工程を含むので,一貫した連続 題【0003】「ところで,以上のように製作される回転ブラシは,その環状部の厚みを均一とし,回転ブラシの毛足密度を均一とするのに熟練を要し,しかも,機械化の困難な工程を含むので,一貫した連続製造が困難で量産化が難しく製造コストも高くなる。」【0004】 「そこで,本発明は,以前に提案したものにさらに改良を加え,回転ブラシの毛足密度を均一として,プラークの除去及び歯茎のマッサージ効果に優れ,しかもコストの低減化が図れるロール歯ブラシ用のブラシ単体,ロール歯ブラシ用の回転ブラシ,ロール歯ブラシ及びその製造方法を提供することを目的とする。」【0006】「以上のようにして,毛足密度が均一でプラークの除去及び歯茎のマッサージ効果に優れたロール歯ブラシ用の回転ブラシが,連続的に効率良く低コストで得られる。 以上の製造方法においては,回転ブラシの毛足の先端を切り揃え,かつ仕上げ処理を行うことが好ましい。このようにすれば,より良い回転ブラシが得られる。」イ発明の実施の形態【0013】「先ず,図1のように,例えばナイロン等の熱可塑性樹脂製の素線1aを束状に集合させてなる素線群1が前記第1 及び第2のチャック31,32で掴まれ,これらの上動により素線群1が台座2の挿通孔2aから上方に一定量突出した状態で保持される。これらチャック31,32の動きについては後で詳述する。」【0014】「次に,図2のように,前記コーン4が下降し,その下端の円錐突部4aが素線群1の突出上端の中心に差し込まれて素線群1が放射方向に押し開かれる。これに続いて,図3のように,前記押え体5が下降して素線群1が押し開かれた状態で台座2上に固定される。 押え体5は例えば円筒形の下端面を有している。押え体5は放射方向に押し開かれた素線群1 かれる。これに続いて,図3のように,前記押え体5が下降して素線群1が押し開かれた状態で台座2上に固定される。 押え体5は例えば円筒形の下端面を有している。押え体5は放射方向に押し開かれた素線群1の中心部やや外側を押える。押え体5によっ て押えた状態で下向き円錐形の突部を有するコーン4を後退させ,溶着機6を挿入することができるように。押え体5の内側に溶着機の先端が入る空間の余地が残されている。押え体5は台座2との間に素線群を挟持し動かない程度にしっかり保持する。」【0015】「この後,図4のように,押し開かれた素線群1が押え体5により台座2に固定された状態で,前記コーン4が後退する。続いて前記溶着機6が素線群1の中心真上位置にまで移動して押え体5の内部に突入され,溶着機6の先端により押し開かれた素線群1の中心部周りが環状に溶着される。 溶着機は超音波を利用したものが好適に使用でき先端に円形の溶着具6aをそなえている。押え体5の内側において,台座2との間に押し開かれた素線群1を押し付け溶着する。溶着機6による溶着部81の内周は挿通孔2aの上端周縁2bに適合するようにするのが好ましい。」【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 (3) 上記のとおり,構成要件Pには「素線群の中心部分が,内周が挿通孔の上端周縁に位置する環状の溶着部に形成され」ることが定められており,また,発明の詳細な説明をみても,コーンによって押し開かれた素線群1の中心部周りが溶着機6によって環状に溶着され,その結果,環状の溶着部81が形成されることが示されている。 これに対し,原告商品の 発明の詳細な説明をみても,コーンによって押し開かれた素線群1の中心部周りが溶着機6によって環状に溶着され,その結果,環状の溶着部81が形成されることが示されている。 これに対し,原告商品のブラシ単体に係る原告商品製造方法は,前記判断の基礎となる事実(5)において認定したとおり,「台座の下にあるカッターより素線群を切断して,放射部と脚部とを備えた素線体を形成し」た上(行程Ⅳ),「その素線体の挿通孔内の部分を溶融・固化することにより,放射状の素線と,その中央の溶着部からなる中間体を形成」する(行程Ⅴ)のであるから,構成要件Pに定めるような環状の溶着部が形成されるとは認められない。 (4) したがって,原告商品のブラシ単体は,少なくとも構成要件Pにいう環状の溶着部が形成される工程を含んで製造される物とは認められないから,原告商品のブラシ単体は,その余の構成について判断するまでもなく,本件特許発明3の技術的範囲に属するものとは認められない。 (5) 被告の主張についてア被告は,本件特許発明3は物の発明であることから,特許請求の範囲の記載のうち物の特定に必要な構成要件さえ充足すれば,構成要件Pの非充足にかかわらず,原告商品のブラシ単体はその技術的範囲に属するとし, 本件特許発明3の構成要件Pの製造方法部分は,技術的範囲を限定する機能がないように主張する。 イ確かに,本件特許発明3は特許法2条3項1号の物の発明であるから,本来,製造方法によって,その技術的範囲が限定されるべきものではなく,また製造方法による限定を加えなくとも,物としての構成を特定することは可能である。 ウしかしながら,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件特許3に係る出願経過について,以下の事実が認められる。 (ア) 出願当初の請求項1の記載 物としての構成を特定することは可能である。 ウしかしながら,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件特許3に係る出願経過について,以下の事実が認められる。 (ア) 出願当初の請求項1の記載訴外P1は,平成14年11月14日,本件特許3に係る出願(特願2002-330721号)をした(甲97の1・3)。本件特許3の出願当初の請求項1の記載(本件当初発明3)は以下のようなものであった(甲97の5)。 「多数枚を重ねて回転歯ブラシを形成するブラシ単体であって,多数の素線が束状に集合されると共に,その素線が放射方向に押し開かれてなる素線群と,押し開かれた素線群が台座に固定された状態で,素線群の中心部分が環状に溶着されて溶着部が形成されると共に,環状の溶着部の内周が円形に切断されて円形の挿通孔が形成されてなるロール歯ブラシ用のシート状のブラシ単体。」(イ) 拒絶理由通知の内容特許庁審査官は,平成19年5月15日,本件当初発明3は,特願2001-307672号を先の出願として,特許法29条の2の規定により,特許を受けることができない旨の拒絶理由を発した(甲97の9)。 同拒絶理由に係る拒絶理由通知書には以下の記載がある。 「先の出願1の願書に最初に添付された明細書又は図面には,ロール歯ブラシ用の回転ブラシにおいて,台座に設けた挿通孔から突出させた 素線群の突出端の中央にコーンを差し込んで放射方向に押し開き,押し開かれた前記素線群を台座に固定して中心部分を環状に溶着して挿通孔を形成することにより製造されたシート状のブラシ単体を備えたものが記載されている。」(ウ) 出願人による補正訴外P1は,平成19年8月30日,手続補正書(本件補正書)を提出して,本件当初発明3の内容を本件特許 のブラシ単体を備えたものが記載されている。」(ウ) 出願人による補正訴外P1は,平成19年8月30日,手続補正書(本件補正書)を提出して,本件当初発明3の内容を本件特許発明3のように補正するなどし(本件補正),これにより平成19年9月19日に特許査定を受けた(甲97の4・11)。 訴外P1は,本件補正に係る同日付けの意見書(以下「本件意見書」という。)において,以下のように述べた(甲97の11)。 「本願の請求項1の発明は,前記のとおり…であるところ,引用例には,少なくとも上記の構成要件である『素線群の中心部分が,内周が挿通孔の上端周縁に位置する環状の溶着部に形成され』ること,及び,『環状の溶着部の内周が,挿通孔の上端周縁の位置で円形に切断されて』いること,については記載も示唆もされていない。」「本願発明は,このように素線群1を台座の上に固定した状態で内周が挿通孔の上端周縁に位置する環状に溶着するとともに,同じく台座の上に固定した状態で溶着する部分の内側を挿通孔の上端周縁の位置で切断するので,溶着部(81)の厚さが均一に仕上げられる,という効果を奏するものである(〔0016〕など参照)。 引用例からはこのような効果は期待できないもので,本願発明特有の効果である。 以上のとおり,本願発明は引用例に記載された発明であるとはいえないので特許法第29条の2に該当するものではない。」エ以上のとおり,本件特許3の出願から特許査定に至る経緯をみると,訴 外P1は,拒絶査定を免れるため,本件補正において,ブラシ単体の製造工程について具体的に特定した記載を特許請求の範囲に盛り込んだ上,かかる製造工程によって製造されたが故に,「溶着部の厚さが均一に仕上げられる」という従来のブラシ単体にはない いて,ブラシ単体の製造工程について具体的に特定した記載を特許請求の範囲に盛り込んだ上,かかる製造工程によって製造されたが故に,「溶着部の厚さが均一に仕上げられる」という従来のブラシ単体にはない新規な効果が期待できる旨強調していることが認められる。 そうすると,これによって従来のブラシ単体と差異が生ずるのかどうかは不明であるものの,少なくとも,特許庁審査官は,かかる意見を考慮に入れて特許査定をしたものと認められるから,本件特許発明3の技術的範囲を定める上では,構成要件Pを無視することは許されず,むしろ同構成要件は,本件特許発明の技術的範囲を限定する機能を有しているものと解すべきである。 オしたがって,本件特許発明3の技術的範囲を定めるに当たり,これを無視すべきようにいう被告の主張は失当であり,採用できない。 4 差止請求について以上検討してきたところによれば,被告のした本件各告知行為は不正競争防止法2条1項14号に該当し,弁論の全趣旨によれば,被告が同様の行為を繰り返すおそれがあることが認められるから,原告の被告に対する,別紙商品目録記載の商品を製造,販売している原告の行為が,別紙特許目録記載の特許権を侵害している旨を,第三者に対して,告知し,又は流布してはならない旨求める請求には理由がある。 5 争点4(故意・過失の有無)(1) 上記認定してきたとおり,被告は,原告商品のブラシ単体,あるいはその製造方法が本件各特許権の技術的範囲に属することを前提に本件各告知行為をしたものであるが,その当時,そのように判断するに至った根拠は明らかにされておらず,またその経緯を認めるに足りる証拠もない。 しかも,被告は,本件各告知書面中において,弁理士等の専門家の協力に より原告商品が本件各特許権に抵触することが判 った根拠は明らかにされておらず,またその経緯を認めるに足りる証拠もない。 しかも,被告は,本件各告知書面中において,弁理士等の専門家の協力に より原告商品が本件各特許権に抵触することが判明したなど,原告商品が本件各特許権の侵害品であることが専門家の判断によって裏付けられたかのような記載しているにもかからず,本件において,現実に専門家に依頼して,その旨の検討をした事実についての具体的な立証を全くしないのであるから,専門家の協力を得たという記載部分でさえ虚偽であった可能性を否定できない。 (2) 被告は,原告との従前の取引経緯から原告が本件各特許権を侵害していた可能性に言及して本件各告知行為によって原告に損害を与えたことについて無過失である旨主張しているが,被告のいうところは,結局のところ侵害の可能性をいうにとどまっていて,それ以上のものではなく,かえって証拠(甲28~甲31,甲34,甲37~甲39.甲40の1・2,甲51,原告代表者)及び弁論の全趣旨により認められる取引の経緯からは,被告が原告との取引が打ち切られたことに関連したトラブルを巡って,原告に圧力をかけて交渉を有利に進めるために,原告の警告にもかかわらず,具体的根拠のないまま,本件各告知行為に踏み切ったことさえ認められるところである。 (3) そうすると,被告は,本件各告知行為という不正競争防止法2条1項14号に該当する不正競争をするに当たり,それが原告の営業そのものに深刻な影響を与え重大な損害をもたらすことは容易に予見できていたにも関わらず,その点に配慮することなく,むしろ損害を与えることを意図していた疑いさえあると認められるのであるから,原告に損害を与えたことについて過失があることはむしろ明らかであり,被告は,原告に生じた損害を賠償する責任を免れないというべ しろ損害を与えることを意図していた疑いさえあると認められるのであるから,原告に損害を与えたことについて過失があることはむしろ明らかであり,被告は,原告に生じた損害を賠償する責任を免れないというべきである。 6 争点5(損害の額)について【逸失利益】被告のした本件各告知行為の結果,各取引先との関係で原告に生じた逸失利益について,各取引先別に検討する。 (1) コンビウェルネスとの取引における逸失利益ア後掲各証拠のほか,証拠(甲51,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告とコンビウェルネスとの取引の経緯につき,以下の事実が認められる。 (ア) 原告とコンビウェルネスとの平成19年6月から平成20年5月までの取引金額(請求書の発行日を基準とする。以下同じ。)は,多い月で50万円を超え,少ない月で15万円台の金額となるがおおむね安定しており,その合計金額は367万6617円であり,1か月当たりの平均売上金額は30万6384円であった(甲43,53~63)。 (イ) コンビウェルネスは,平成20年4月28日ころ,被告から本件告知行為1を受け,これに対して権利者が被告と相違していることから回答する必要がない旨を回答したところ,さらに同年5月15日ころ,被告から本件告知行為2を受けた。 (ウ) 原告は,同月19日,原告代表者のP2社長及びP3事業部長をコンビウェルネスに訪問させ,本件各告知内容についての事情説明をさせたが,コンビウェルネスは,同月26日,原告に対し,同年6月20日納入予定の原告商品の発注(30万3912円〔消費税込み〕)を取り消し,その後しばらく原告に対する発注を控えた(甲43)。 (エ) 原告は,平成20年6月2日,当庁に対し,被告を債務者として,本件と同内容の陳述流布の差止めを求める仮処分を申 消費税込み〕)を取り消し,その後しばらく原告に対する発注を控えた(甲43)。 (エ) 原告は,平成20年6月2日,当庁に対し,被告を債務者として,本件と同内容の陳述流布の差止めを求める仮処分を申立て,P3事業部長をして同月12日,コンビウェルネスに訪問させて,本件告知行為を巡るその後の経過を報告した。 (オ) 原告は,同年7月25日,上記仮処分命令申立事件について仮処分決定の発令を受け,同年8月7日,P3事業部長とP4営業部長をして,コンビウェルネスに訪問させ,その旨報告した。 (カ) コンビウェルネスは,同年8月10日から,従前どおりの発注を原告 に対してするようになった。 イ以上認定の経緯によれば,原告とコンビウェルネスは,本件各告知行為がなされるまでの間,安定した取引を継続していたが,本件各告知行為の結果,既発注の取引を取り消した上,原告による事情説明にもかかわらず取引を控え,結局,被告の行為の違法性を裁判所が実質的に認めた本件仮処分決定の発令があった後,ようやく取引を正常なものに戻したという経緯が認められる。したがって,コンビウェルネスが平成20年5月26日に同年6月20日納入予定の原告商品の発注(30万3912円〔消費税込み〕)を取り消し,その後しばらく原告に対する発注を控えた結果,原告に生じた損害は,本件各告知行為と因果関係のある損害ということができる。 ウところで,原告とコンビウェルネスとの取引実績は,上記ア(ア)で認定したとおりであって1か月当たりの平均売上金額は30万6384円であり,コンビウェルネスが取り消した平成20年6月分の発注額も30万3912円であるから,本件各告知行為がなければ同年7月分も同額の取引があったと推認できる。したがって,本件各告知行為の結果,減少したと認められる原告と が取り消した平成20年6月分の発注額も30万3912円であるから,本件各告知行為がなければ同年7月分も同額の取引があったと推認できる。したがって,本件各告知行為の結果,減少したと認められる原告とコンビウェルネスとの間の取引の金額は,30万3912円に2か月(平成成20年6月分と同年7月分)を乗じた額である60万7824円をもって認定するのが相当である。 エそうすると,原告のコンビウェルネスとの取引における逸失利益は,上記認定の売上減少額に原告商品の利益率を乗じて得られるが,以下に検討するとおり,その利益率は,原告が主張する30%を下らないものと認められる。 (ア) 証拠(甲98の3,甲101の1~6,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,原告商品のうち,原告商品目録記載9及び10の商品(「Sigma360」及び「Sigma360 mini」)を豊産業に対して,1本当た り360円で販売していたこと,これら商品の製造原価は,別紙原告商品の製造原価のとおり,「Sigma360」につき220.8円,「Sigma360 mini」につき211.8円であったことが認められる(かかる製造原価の算出根拠となる金額は,いずれも見積書に記載された金額であり,現実に発注した金額は不明であるが,通常,見積書を超える金額で発注することはないと考えられるから,実際の製造原価が上記製造原価を超えることはないものと認められる。)。 したがって,これらの原告商品の利益率は,約40%と認められる。 (イ) 被告は,原告の主力事業は原告商品の販売にあるのだから,広告宣伝費,荷造運賃,旅費交際費,接待交際費,通信費,租税公課その他,原告商品の販売の増加に伴って増加する必要不可欠な経費を控除すべきと主張する。 確かに,原告の主力事業は原告 あるのだから,広告宣伝費,荷造運賃,旅費交際費,接待交際費,通信費,租税公課その他,原告商品の販売の増加に伴って増加する必要不可欠な経費を控除すべきと主張する。 確かに,原告の主力事業は原告商品の販売にあると認められるが,かといって,被告が主張した上記費目が全て原告商品の販売の増減によって変動するとは認められない。被告が主張する上記費目のうち,荷造運賃については,原告商品の販売の増減によって変動するものと考えられるが,証拠(甲103~甲109)によれば,荷造運賃は,対売上費との関係で1.4%程度であることが認められ,上記で認定した利益率(約40%)に大きく影響するものとはいえない。 (ウ) また,証拠(甲102の1・2・4・5)によれば,原告商品のうち,上記「Sigma360」及び「Sigma360 mini」の小売価格はいずれも840円(消費税込み)であるのに対し,原告がコンビウェルネスに対して販売した「介護用360度歯ブラシ」の小売価格は1029円(消費税込み),原告が和光堂に対して販売した「和光堂ベビー歯ブラシ」の小売価格は1050円(消費税込み)であることが認められ,いずれも「Sigma360」及び「Sigma360 mini」よりも小売価格が高いことが認められる。 そうすると,原告がコンビウェルネスに対して販売した「介護用360度歯ブラシ」や和光堂に対して販売した「和光堂ベビー歯ブラシ」は,豊産業に対して販売した「Sigma360」及び「Sigma360 mini」よりも利益率が大きいと推認するのが相当である。 (エ) 以上総合すると,原告商品の利益率は,いずれの商品であっても,少なくとも原告が主張する30%を下回らないと認められる。 オまとめ以上検討したところをまとめると,原告のコンビウェルネ (エ) 以上総合すると,原告商品の利益率は,いずれの商品であっても,少なくとも原告が主張する30%を下回らないと認められる。 オまとめ以上検討したところをまとめると,原告のコンビウェルネスとの取引における逸失利益は,上記認定の売上減少額60万7842円に利益率30%を乗じた額である18万2347円と認められる(なお,原告とコンビウェルネスとの取引は,上記認定のとおり,本件各告知行為後,特許権侵害の疑いが払しょくされる本件仮処分決定が得られるまでの間,一時的に控えられていたにすぎないと認められるから,被告のいう原告商品との競合商品の存在は,上記逸失利益の認定に影響するものではない。)。 (2) 和光堂との取引における逸失利益ア後掲各証拠のほか,証拠(甲51,甲100の1・2,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告と和光堂との取引の経緯につき,以下の事実が認められる。 (ア) 原告は,平成19年9月ころから,和光堂との間で,原告の商品を「和光堂ベビー歯ブラシ」という和光堂のブランドで販売する,いわゆるOEM取引をしていた(甲64)。同商品は,当初の想定を超えて売上げを伸ばし,原告の生産体制では対応できなくなったことから,和光堂と協議の上,一旦,生産を停止し,外部発注を含めて生産体制を見直すとともに,商品自体にも改良を加えて,再発売することとした。 (イ) 原告は,和光堂との間でドラッグストアの商品入替時期である平成20年9月を再発売予定時期として再発売に向けての協議を進め,同年5 月13日には,和光堂に対し,デザインを変更した歯ブラシの柄の部分の金型を製作するための見積りを提示する段階となっていた。 (ウ) しかし,同年4月28日ころに被告から和光堂に対して本件告知行為1がなされ,P2社長自らが同年5月2 ンを変更した歯ブラシの柄の部分の金型を製作するための見積りを提示する段階となっていた。 (ウ) しかし,同年4月28日ころに被告から和光堂に対して本件告知行為1がなされ,P2社長自らが同年5月20日に事情説明に和光堂を訪れたが,和光堂は前記金型の見積書の提示に対する回答をなさず,原告との間で進めていた再発売に関する協議を事実上中断した。 (エ) その後,原告は,同年7月25日,当庁より本件仮処分決定を得ることができ,同年11月には和光堂から上記金型の発注を受けるなど,和光堂との間での再発売に向けての協議が再開された。 (オ) しかし,ドラッグストアの商品入替時期は3月と9月であり,当初予定した9月の商品入替時期に再発売することができないことから,原告商品の現実の再発売時期は平成21年3月にずれ込み,原告は,同年2月から和光堂に対し,同年3月の再発売に向けて原告商品の再発売を開始した。 (カ) 再発売後の原告と和光堂との間の取引額の推移は,平成21年2月が464万7280円,同年3月が801万3600円,同年4月が534万2400円,同年5月が420万71400円の合計2220万4350円であり,1か月当たりの平均売上金額は555万1087円である(甲67~70:ただし,サンプル販売に係る5万6070円〔甲67の2〕は計算に入れていない。)。 イ以上認定の経緯によれば,被告によって本件告知行為1がされた当時,原告と和光堂との間では,上記ア認定の経緯で中断していた取引の再開に向けて準備が続けられていたというのであり,そうであったのに,本件告知行為1後,再発売に向けて必要な金型見積の協議が中断したというのであるから,最終的に原告と和光堂との取引は再開しているものの,本件告知行為1によって,準備行為が中断する時期が生じ,その結果, 件告知行為1後,再発売に向けて必要な金型見積の協議が中断したというのであるから,最終的に原告と和光堂との取引は再開しているものの,本件告知行為1によって,準備行為が中断する時期が生じ,その結果,原告が販 売機会を喪失したことは否定できないというべきである。 そして,原告商品がドラッグストアで取り扱う商品であるという性質上,ドラッグストアにおける商品入替時期の問題など,その商慣習に影響を受けることはやむを得ないから,入替時期という要因さえなければ,もっと早い時期に再発売は可能であったと推認できるものの,現実には,当初予定していた9月の再発売時期を逃し,翌年3月の再発売となった以上,この期間中に現実に販売機会を逃すことによる原告の逸失利益は,被告のした本件告知行為1と因果関係があるというべきである。 ウこれに対し,被告は,もともと平成20年9月に原告の再発売ができたとは限らないように主張するが,上記認定のとおり当初の再販売時期はドラッグストアの商品入替時期である9月を予定していたことが認められ,これを争う被告の主張は根拠のない想像に基づくものといわなければならない。 また被告は,本件告知行為1の影響があったとしても,再発売はもっと早い時期にできたのではないかとして,平成20年4月ころから,原告商品との競合品であるSTBヒグチの「たんぽぽの種」と称する商品の宣伝広告が盛んに行われるようになっていたことや,同年7月には,原告商品と競合品であるSTBヒグチの商品が全国のセブンイレブンで販売されるようになった状況から,原告が再発売を先送りした可能性さえ主張する。 しかし,そのような市場の状況が事実であるとしても,それに基づいてする被告の推認根拠ははっきりしないし,また本件における逸失利益の認定は,後記するとおり,取引再開後 送りした可能性さえ主張する。 しかし,そのような市場の状況が事実であるとしても,それに基づいてする被告の推認根拠ははっきりしないし,また本件における逸失利益の認定は,後記するとおり,取引再開後に現実に得られた売上額に基づいて,これを時期的に前倒しにして認定するにとどまるのであるから,いずれにしても,ドラッグストアの現実の商慣習によって原告商品の再発売時期が遅れたとする上記認定を左右する事実関係があるものとは認められない。 エところで原告と和光堂との再発売後の取引実績は,上記ア(カ)で認定した とおりであって1か月当たりの平均売上金額は555万1087円である。 そして,原告の和光堂に対する売上げは,本件告知行為1によって,平成20年9月分から平成21年2月分までの6か月分相当の期間で妨げられたと認められるから,この期間の売上減少額は,再発売後である平成21年2月から5月までの4か月間の月平均売上金額(555万1087円)に6か月を乗じた額(3330万6522円)をもって認定するのが相当である。 オまとめ以上検討したところをまとめると,原告商品の利益率が30%を下らないことは上記(1)エのとおりであるから,原告の和光堂との取引における逸失利益は,上記認定の売上減少額3330万6522円に利益率30%を乗じた額である999万1956円と認められる。 (3) 豊産業との取引における逸失利益ア後掲各証拠のほか,証拠(甲51,甲98の2・3,甲99の1~6,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告と豊産業との取引の経緯につき,以下の事実が認められる。 (ア) 原告と豊産業は,平成20年1月16日,原告商品のうち,「Sigma360」及び「Sigma360 mini」を対象とする売買基本契約を締結し,同契約にお つき,以下の事実が認められる。 (ア) 原告と豊産業は,平成20年1月16日,原告商品のうち,「Sigma360」及び「Sigma360 mini」を対象とする売買基本契約を締結し,同契約において,豊産業は,原告に対し,平成20年1月1日から同年12月31日までの間の年間最低仕入数量を10万本と約していた。 この基本契約は,豊産業が,原告から仕入れた上記商品を,その当時のピップトウキョウ株式会社(平成20年5月1日からはピップフジモト株式会社と経営統合して設立されたピップ株式会社。)を経由して全国のドラッグストア(マツモトキヨシ)に販売することを前提に締結されたものであり,上記年間最低仕入数量も,その当時の豊産業がピップトウキョウ株式会社の担当部長から年間20万本の販売が可能である と説明を受けて定められたものである。 (イ) 上記基本契約締結後,豊産業は,原告から仕入れた原告商品をピップトウキョウ株式会社に卸売りして販売していたが,本件各告知行為がされた事実がピップ株式会社の役員の知るところとなり,平成20年5月ころ,ピップ株式会社から豊産業に対して上記商品について特許権侵害の係争があることを理由として仕入れを控えると通知され,その後,ピップ株式会社からの受注数量が減少したそして豊産業は,上記商品をピップ株式会社の専売品とする約定をしていたことから,同社以外に卸売りをすることができず,同社からの受注数量が減少するに伴い,原告に対する発注数量も減少するとことなった。 (ウ) 他方,原告が,豊産業,ピップ株式会社を通じて原告商品の販路とすることを予定していたドラッグストアは,ピップ株式会社が原告商品の取り扱いを控えた以降,STBヒグチの商品を扱うようになり,これによって原告は原告商品の販路を拡大する機会を失った 原告商品の販路とすることを予定していたドラッグストアは,ピップ株式会社が原告商品の取り扱いを控えた以降,STBヒグチの商品を扱うようになり,これによって原告は原告商品の販路を拡大する機会を失った。 (エ) 原告と豊産業との間の原告商品に係る平成20年2月から同年12月までの取引金額は別紙豊産業取引金額一覧表のとおりである(甲71~甲81)。なお,平成20年6月以降は返品が発生しており,特に同年10月は総計でマイナスとなっているが,これは返品数量が発注数量を上回った結果生じたものである。 (オ) 原告は,平成21年12月24日,豊産業が最低仕入数量の約定に違反したとして,債務不履行に基づく損害賠償として1963万4868円の支払いを求める訴訟(当庁平成21年(ワ)19869号:以下「別件訴訟」という。)を提起した(甲98の1)。 これに対して豊産業は,その最低仕入数量の仕入れができなかったのは,原告商品に特許権侵害の疑いがあることを理由にピップ株式会社が 積極的に扱うことを拒否したからであるなどと主張して争った。 (カ) 別件訴訟は,平成22年6月1日,原告が在庫として保有している上記商品(2万8939本)を豊産業に引き渡し,豊産業が原告に対して1000万円を支払うこと等を内容とする和解により終局した(甲98の4)。なお,豊産業に引き渡された在庫商品の価格は正常取引価格では合計1041万8040円であった。 イ本件各告知行為は,豊産業あるいはピップ株式会社に対してされたものではないが,上記認定の事実によれば,ピップ株式会社は本件告知行為の情報を得た上で,豊産業に対して特許権侵害の係争があることを理由に発注を控える旨伝えていること,その結果,豊産業のピップ株式会社に対する売上げが減少し,そのため原告の豊産業に対する1か 件告知行為の情報を得た上で,豊産業に対して特許権侵害の係争があることを理由に発注を控える旨伝えていること,その結果,豊産業のピップ株式会社に対する売上げが減少し,そのため原告の豊産業に対する1か月当たりの売上げも,本件各告知行為がなされた平成20年5月分を境に明らかに減少するばかりか,返品さえ発生しているというのであるから,以上の事実関係によれば,原告の豊産業に対する売上金額が減少した原因は,本件各告知行為がされたことにあると優に認めることができる。 そして,本件各告知行為のような書面を,その製造業者の取引先である卸売会社に対して送付した場合,書面に記載された事実が業界内に伝播し,その結果,取引を差し控える取引先が増加して,告知者が直接告知した以外の取引先との関係でも影響が生じることは通常予見可能な事実であると認められるから,被告のした本件各告知行為と原告の豊産業に対する売上減少との間には因果関係を認めることができ,被告は,その結果原告に生じた損害を賠償する責任を免れないというべきである。 ウところで原告と豊産業との取引実績については,前記ア(エ)で認定したとおり,平成20年2月から同5月までの4か月間の売上金額合計が934万4489円,同期間の1か月当たりの平均売上金額は233万6122円であったのに,本件各告知行為後である同年6月から同年12月までの 7か月間の売上金額合計は414万3593円,同期間の1か月当たりの平均売上金額は59万1941円にとどまっていたものと認められる。 以上の事実に加え,上記認定のとおり,本件各告知行為がされなければ,原告商品は,ピップトウキョウ株式会社とピップフジモト株式会社が経営統合して設立されたピップ株式会社からドラッグストア(マツモトキヨシ)に卸売されて,より販路が拡大した可 各告知行為がされなければ,原告商品は,ピップトウキョウ株式会社とピップフジモト株式会社が経営統合して設立されたピップ株式会社からドラッグストア(マツモトキヨシ)に卸売されて,より販路が拡大した可能性もあることが認められるから,少なくとも本件各告知行為前の4か月の平均的売上げは,その後の7か月間も維持できたものと推認できる。 エしたがって,本件各告知行為の結果もたらされた原告の豊産業に対する売上減少額は,平成20年5月までの一か月当たりの平均売上金額233万6122円と同年6月から同年12月までの間の1か月当たりの平均売上金額59万1941円との差額174万4181円に7か月を乗じた1220万円9267円と認められる。 オまた,原告商品の利益率が30%を下らないことは上記(1)エのとおりであるから,原告の豊産業との取引における逸失利益は,上記認定の売上減少額1220万9267円に原告商品の利益率30%を乗じて得られる366万2780円であると認められる。 カ被告は,原告商品の売上げの減少には,STBヒグチの競合商品の存在が影響している旨主張するところ,確かに証拠(乙5ないし乙7,乙8の3,4,乙9,乙12,乙13,乙16,17)及び弁論の全趣旨によれば,① STBヒグチは,平成17年8月ころから360度歯ブラシの販売を開始してドラッグストア等に販路を拡大してきたこと,②平成19年11月8日に発売された360度歯ブラシの新商品「たんぽぽの種」は,平成20年1月からは,イトーヨーカドー,ケーヨー及びイズミヤにおいて販売されたこと,③同商品は,さらに同年7月中旬ころからは,一部を除く全国のセブンイレブン(約7000店舗)において販売が開始され, 相当の人気商品となっていたこと,④STBヒグチの360度歯ブラシは,原告商 商品は,さらに同年7月中旬ころからは,一部を除く全国のセブンイレブン(約7000店舗)において販売が開始され, 相当の人気商品となっていたこと,④STBヒグチの360度歯ブラシは,原告商品の半額程度の価格であること,以上の事実が認められ,これらの事実によれば,原告商品が本件各告知行為の問題もなく販売が継続していても,STBヒグチの商品の存在によってかなり影響を受けていたであろうことが認められる。 しかしながら,こと豊産業との取引については,もともと原告は,豊産業ひいてはピップ株式会社がドラッグストア(マツモトキヨシ)に原告商品を販売することを計画して豊産業と契約を締結していたのであり,ピップ株式会社(その当時はピップトウキョウ株式会社)にも,その具体的計画があったからこそ,豊産業に売上見込みを年間20万本と告げ,これを踏まえて豊産業は年間10万本の最低仕入数量が現実に達成できるものと考えて原告に約していたものと認められる。そうであれば,本件各告知行為がなければ,競合商品が存在していたとしても,豊産業とピップ株式会社との取引は拡大していたはずであり,その結果,豊産業を介した原告商品の販路は確実に大きくなっていたと合理的に推認できるから,そのような販路が確立する以前である本件各告知行為前の売上金額が平均的に推移することを前提とする原告主張の損害額の主張は合理的な主張であり,被告が主張する競合商品の存在をしんしゃくしても,上記の損害額の認定は左右されないというべきである。 キところで,上記ア(オ),(カ)のとおり,原告は,本件各告知行為の影響を受けて取引が減少したことを理由に豊産業に対して訴訟を提起し,その訴訟において和解をして,在庫商品(2万8939本)を引き渡すのと引き替えに1000万円を受領しているから,被告は,この 行為の影響を受けて取引が減少したことを理由に豊産業に対して訴訟を提起し,その訴訟において和解をして,在庫商品(2万8939本)を引き渡すのと引き替えに1000万円を受領しているから,被告は,この和解金の受領が損害額の認定に影響するように主張する。 しかしながら,証拠(甲98の1)及び弁論の全趣旨によれば,豊産業は,原告との間で年間10万本を最低仕入数量として仕入れる債務を負っ ていたが,平成20年において3万2144本しか原告商品を仕入れず,そのため6万7856本の仕入債務が未履行になっていたと認められるから,上記和解によって2万8939本の在庫商品による仕入れが実質的になされたとしても,豊産業の原告に対する仕入債務は本数でなお3万8917本分残っていたことになる。そして,この仕入未了の原告商品の本数に,上記和解から算出される商品単価345.5円(1000万円/2万8939本)を乗ずると,豊産業の未履行となっている仕入債務は金額換算で1344万5823円と認定されることになるが,これは上記認定にかかる売上減少額1220万9267円をなお上回っているものである。 ところで,裁判所が上記認定した売上減少額は,現実の売上げを基礎として認定したものであり,ここでいう豊産業の原告の仕入債務とは関係がないものであるが,豊産業が原告に支払った和解金額が1000万円にとどまり,その未履行の仕入債務が金額換算で認定に係る売上減少額を上回るものであるから,豊産業の原告に対する1000万円の和解金の支払は,原告に対する自らの仕入債務の一部に充当されるにすぎないのであり,上記認定した本件各告知行為の結果減少したと認められる売上げに充当される関係に立つものといえないということになる。 したがって,原告が豊産業との和解により1000万円を受領 れるにすぎないのであり,上記認定した本件各告知行為の結果減少したと認められる売上げに充当される関係に立つものといえないということになる。 したがって,原告が豊産業との和解により1000万円を受領したことが損害額の認定に影響するようにいう被告の主張は理由がなく採用できない。 (4) 各取引先との関係における逸失利益のまとめ以上検討したところを総合すると,本件各告知行為による原告の逸失利益の総額は1383万7083円であると認められる。 【対応費用】(1) 事実認定証拠(甲44~48,51,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,以 下の事実が認められる。 ア原告代表者のP2社長及びP3事業部長は,平成20年5月19日,上京してコンビウェルネスを訪問して本件各告知行為について事情を説明し,さらにP2社長は同日宿泊した上,翌20日に和光堂を訪問して同じく本件各告知行為についての事情を説明した。 原告は,上記出張のために,交通費として合計5万7030円(往復の新幹線運賃5万6070円,東京在来線運賃960円),宿泊費として7140円の金額を支払った。 イ P3事業部長は,同年6月12日,コンビウェルネスを訪問し,本件告知行為を巡る状況を報告して,その後の取引の進め方について協議した。 原告は,上記出張のために,交通費として往復の新幹線運賃3万0500円を支払った。 ウ P3事業部長とP4営業部長は,被告に対して本件各告知行為と同様の行為の差止めを命じた本件仮処分決定が発令されたことを報告するため,同年8月7日,コンビウェルネスを訪問した。 原告は,そのための交通費として,合計5万2800円(往復新幹線運賃5万2800円(2万6400円×2名),宿泊費合計1万3440円(6720円×2名)を支払った。 ンビウェルネスを訪問した。 原告は,そのための交通費として,合計5万2800円(往復新幹線運賃5万2800円(2万6400円×2名),宿泊費合計1万3440円(6720円×2名)を支払った。 (2) 検討前記1ないし3で認定したとおり,被告は,原告商品が本件各特許に抵触する旨の虚偽の告知を原告の取引先に対してしたのであり,そのような場合,原告が取引先に対して事情を説明しなければならない状況になることは,通常予見できる範囲内の事柄である。そうすると,原告が本件各告知行為に係る事情説明として取引先に出張した出張費用等については,本件各告知と因果関係があるというべきである。なお,当該出張の際に,原告が別の用件を済ませたとしても,当該出張の主たる目的が上記事情説明にあるならば,因 果関係は否定できないというべきである。 本件においては,前記(1)で認定した出張の主たる目的は本件各告知行為の事情説明にあるといえるから,そのために支払った前記(1)の交通費及び宿泊費は,いずれも本件各告知行為と因果関係のある損害と認められる。 原告は,これに加えて,人件費として1人1日当たり1万円の損害を主張しているが,出張した者は社長か,管理職の者であり,出張に伴い追加して人件費が発生したとは認められないから,この部分の請求については認めることができない。 以上検討したところによれば,対応費用支出による損害額は,16万0910円と認定するのが相当である。 【弁護士費用】本件事案の内容や認容額などを考慮すると,被告による本件各告知行為と因果関係のある弁護士費用相当額の損害は,少なくとも50万円を下らないと認められる。 7 損害賠償請求のまとめ(1) 以上検討してきたところによれば,被告のした本件各告知行 よる本件各告知行為と因果関係のある弁護士費用相当額の損害は,少なくとも50万円を下らないと認められる。 7 損害賠償請求のまとめ(1) 以上検討してきたところによれば,被告のした本件各告知行為によって原告に損害が発生したことにつき少なくとも被告に過失があること,その損害額は合計1449万7993円であると認められるから,原告の被告に対する損害賠償請求は,同額及びこれに対する不正競争行為の後の日である平成21年3月7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の損害賠償請求の限度で理由があり,その余は理由がない。 (2) なお,原告は,予備的に一般不法行為に基づく損害賠償(争点6)を請求し,さらに損害額が確定金額で認定できない場合について名誉毀損による損害賠償(争点7)を請求しているが,一般不法行為に基づく損害額は,上記認定額を超えるものではないし,また損害額を確定金額により認定できているので あるから名誉毀損による損害について判断する必要はないことになる。 第5 結論よって,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条ただし書き,61条を,仮執行宣言につき同法259条1項を適用して主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官森崎英二 裁判官北岡裕章 裁判官山下隼人 (別紙)商品目録 商品名JANコード 1 デンタルシグマふつうブルー【4560188700032】 2 デンタルシグマふつうピンク【4560188700018】 品目録 商品名JANコード 1 デンタルシグマふつうブルー【4560188700032】 2 デンタルシグマふつうピンク【4560188700018】 3 デンタルシグマやわらかブルー【4560188700049】 4 デンタルシグマやわらかピンク【4560188700025】シグマミニふつう【4560188700087】 6 シグマミニやわらか【4560188700070】 7 口腔ケアブラシ S【4560188700186】 8 口腔ケアブラシ SS【4560188700193】 9 Sigma360【4560188700209】Sigma360 mini【4560188700216】 11 和光堂ベビー歯ブラシ【4987244147936】 12 介護用360 度歯ブラシブルー【4972990101271】 13 介護用360 度歯ブラシピンク【4972990101288】 (別紙)特許目録 1 特許第3981290号 2 特許第4037653号 3 特許第4037739号 4 特許第4040754号以上 (別紙)本件告知書面1 「私どもはロール歯ブラシを製造販売する新世紀株式会社(以下弊社と示す)と申します。 弊社は,平成10年より友人であるP1等と共同でロール歯ブラシ及び円筒形歯ブラシに使用する丸ブラシ素子(放射線状に糸束が開き中心部に容着コア部を有し小孔をもつディスク状ブラシ)の研究開発を続け昨年末,苦節10年の末,4項の文献が日本国により特許と認められました。 筒形歯ブラシに使用する丸ブラシ素子(放射線状に糸束が開き中心部に容着コア部を有し小孔をもつディスク状ブラシ)の研究開発を続け昨年末,苦節10年の末,4項の文献が日本国により特許と認められました。 下記にその文献番号,名称を記載致します。 ①特許公開2000-083736(平成10年6月22日出願)名称=歯ブラシ及びその製造方法。(特許第40407654号)②特許公開2003-219911(平成14年1月28日出願)名称=回転ブラシの製造方法と装置(特許第40407653号)③特許公開2003-220080(平成14年1月28日出願)名称=ロール歯ブラシ(特許第4037739号)④特許公開2003-289947(平成14年4月1日出願)名称=回転歯ブラシの製造方法及び製造装置(特許第3981290号)前記特許法の簡単な内容は,①において,ロール歯ブラシの構造及び形状を示し(商品特許)②,③,④,において放射方向に素線群が開く丸ブラシ単体の製造方法が各種照会(判決注:原文ママ)されております。(詳しくは特許庁ホームページを参照下さい)上記文献を,弁理士,専門職員各位の協力により考えられる各方面全てから検討調査した結果,貴社におきまして販売される有限会社ビバテック製造『デンタルΣ』ブラシ構造及び製造方法が弊社一部取得特許に抵触することが判明致しました。弊社としましては,話し合いによる解決を考え, 数回に亘り有限会社ビバテック社に対し書面にて通知いたしましたが一切の返答を頂けず無視された状態において特許抵触商品(コピー商品)を製造販売されております。 弊社としましては,善意の第三者である関係各位殿にこのような御通知は恐縮と思いましたが,特許法を無視しコピー商品を製造販売する行為は物 特許抵触商品(コピー商品)を製造販売されております。 弊社としましては,善意の第三者である関係各位殿にこのような御通知は恐縮と思いましたが,特許法を無視しコピー商品を製造販売する行為は物作りを提唱する日本国において許される行為ではないと考えます。 弊社は,特許抵触は確実と承知し御通知致しましたが,貴社におきましても早急に調査され賢明な処置を希望致します。 歯ブラシは生活必需品であり,マスメディア等の注目度が高くエンドユーザーによる貴社への信頼失墜も大と考えます。 お手数ではありますが,文書到着後14日以内に貴社又は,有限会社ビバテック社より適正且つ前進的内容の通知のない場合は特許法を無視しコピー商品を製造販売しそれを容認する行為と考え,マスメディア等に内容を知らせると同時に断固とした手段を考えております。 貴社の聡明なる決断を期待しております,宜しくお願い申し上げます。 追伸,コピー商品製造販売の事実がある以上,一切の営業妨害及び,営業誹謗行為にはならないと確信しております。 ご用命があれば,貴社が納得されるまで製造機械詳細を特許法に基き説明解説致します。」 (別紙)本件告知書面2 「さて,新世紀株式会社(以下,弊社と示す)からの平成20年4月28日送付文書『ご通知』に対する回答が,お願いした日時までになかったことを大変残念に思います。 他の送付企業殿からは適切な質問及び対応を頂き,当方としましては説明などさせて頂きました。 しかるに,貴社の社風からか一切歯牙にかけない高慢な態度は,物作りを提唱する日本国において発明者及び,特許法を軽視し侮蔑する行為と承知しました。 よって,弊社は弁理士及 せて頂きました。 しかるに,貴社の社風からか一切歯牙にかけない高慢な態度は,物作りを提唱する日本国において発明者及び,特許法を軽視し侮蔑する行為と承知しました。 よって,弊社は弁理士及び専門職員の助言の基,貴社に対し360°型歯ブラシ(有限会社ビバテック社製造販売商品『デンタルΣ』)の販売中止を請求いたします。 このまま,弊社の通知を無視し販売を続けられた場合,法的手段及び,販売店舗などに対し断固とした態度で臨むことをご承知下さい。これは,貴社の特許問題に対する対応の不備が原因であり,虚偽の風説と為計を用いるほか,威力を用いた請求ではなく業務妨害には抵触しないと承知しております。 この文書送付日より10日以内に貴社及び有限会社ビバテック社より適切な対応(話し合い)がなくコピー商品を販売された場合,有限会社ビバテック社が過去ヨークマート社に対しての行動社風を含め販売店舗等に報告させて頂きます。 以上追伸,前文書において報告致しましたが,P1氏と新世紀株式会社は契約にて特許権を共有しております,共同研究開発者でありP1氏承知の上対応しております。」 (別紙)豊産業取引金額一覧表 年月金額(消費税込み)H20.2250万9080円H20.3324万8246円H20.4150万2940円H20.5208万4223円H20.691万4488円H20.742万5339円H20.832万2081円H20.9143万1114円H20.10▲26万5965円H20.1174万2385円H20.1257万4151円 ▲26万5965円H20.1174万2385円H20.1257万4151円
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