令和7(行ケ)9 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年10月30日 東京高等裁判所 棄却
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判決文本文34,206 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 (本判決で使用する略語は、別紙略語表のとおりである。)第1 【請求】本件各選挙区における各選挙をいずれも無効とする。 第2 【事案の概要】第2-1 本件は、令和7年7月20日に行われた参議院議員の通常選挙(本件選挙)について、本件各選挙区の選挙人である原告らが、本件定数配分規定は憲法に違反し無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の本件各選挙区における選挙も無効であるとして、公職選挙法204条の規定に基づき提起した選挙無効訴訟である。 第2-2 【前提事実】第2-2(1) 本件選挙は、令和7年7月20日、平成30年改正後の公職選挙法14条及び別表第3の定数配分規定(本件定数配分規定)の下での3度目の通常選挙として行われた(争いなし)。 第2-2(2) 原告らは、本件各選挙区の選挙人である(原告X1・東京都選挙区、原告X2・茨城県選挙区、原告X3・栃木県選挙区、原告X4・群馬県選挙区、原告X5・埼玉県選挙区、原告X6・千葉県選挙区、原告X7・神奈川県選挙区、原告X8・新潟県選挙区、原告X9・山梨県選挙区、原告X10・ 長野県選挙区、原告X11・静岡県選挙区)(争いなし)。 第2-2(3) 総務省自治行政局選挙部作成の令和7年7月25日付け「参議院選挙区別、人口、定数、較差」と題する書面によれば、本件選挙当日(同月20日)における最大較差は、最小の福井県選挙区を1とすると、最大の神奈川県選挙区の3. 127倍(概数は3.13倍)であった(乙1)。 第2-2(4) 本件各選挙区のその他の選挙区の較差の概数は、東京都選挙区は3.13倍、 の福井県選挙区を1とすると、最大の神奈川県選挙区の3. 127倍(概数は3.13倍)であった(乙1)。 第2-2(4) 本件各選挙区のその他の選挙区の較差の概数は、東京都選挙区は3.13倍、茨城県選挙区は1.92倍、栃木県選挙区は2.58倍、群馬県選挙区は2.55倍、埼玉県選挙区は2.49倍、千葉県選挙区は2.84倍、新潟県選挙区は2.93倍、山梨県選挙区は1.09倍、長野県選挙区は2.73倍、静岡県選挙区は2.40倍であった(乙1)。 第2-3 【争点】本件定数配分規定の合憲性第2-4 【原告らの主張の要旨】第2-4(1) 本件選挙の本件定数配分規定は、人口比例に基づいて定数配分しておらず、憲法56条2項、1条、前文1段1文冒頭に基づく人口比例選挙の要求に反しているので、この規定は憲法98条1項により無効である。よって、本件各選挙区における選挙は無効である。 第2-4(2) 令和5年最大判に基づく主張第2-4(2)ア令和5年最大判は次のような説示を行っている。 4県2合区を導入すること等を内容とする平成27年改正により、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は3倍程度まで縮小し、平成24年最大判等で指摘された著しい不平等状態はひとまず解消されたところ、 同改正がされてから令和4年選挙までの約7年間、同改正後の定数配分規定及び本件定数配分規定の下で上記の合区は維持され、選挙区間の最大較差は3倍程度で推移しており、有意な拡大傾向にあるともいえない。このような中で、立法府においては、較差の更なる是正を図る観点から、都道府県より広域の選挙区を設けるなどの方策について議論がされてきたところであり、こうした方策によって都道府県を各選挙区の単位とする現行の選挙制度の 府においては、較差の更なる是正を図る観点から、都道府県より広域の選挙区を設けるなどの方策について議論がされてきたところであり、こうした方策によって都道府県を各選挙区の単位とする現行の選挙制度の仕組みを更に見直すことも考えられる。 参議院議員の選挙制度と衆議院議員の選挙制度は、選出方法等に係るこれまでの変遷を経て同質的なものとなってきているところ、衆議院議員選挙については、投票価値の平等の要請に対する制度的な配慮として、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにする旨の区割りの基準が定められ、少なくとも長期間にわたり2倍以上の較差が放置されることはないような措置が講じられている(衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条、4条参照)。また、急速に変化する社会の情勢の下で、議員の長い任期を背景に、国政の運営における参議院の役割は大きなものとなってきている。そうすると、二院制に係る憲法の趣旨や、半数改選などの参議院の議員定数配分に当たり考慮を要する固有の要素を勘案しても、参議院議員選挙について直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいと解すべき理由は見いだし難い。 これまで人口の都市部への集中が生じており、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれるところ、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる選挙制度が民主政 治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であること等を考慮すると、較差の更なる是正を図ること等は喫緊の課題というべきである。 第2-4(2)イ令和5年最大判は、上記の文言を含み、「較差の更なる是正」との文言を9回、「選挙制度の仕組み自体の見直し」の文言を3回、「仕組みを更に見直す」と「選挙制度の抜本的見直し」の文言を各2回用いており、これらの文言を多数回用いていることに照らせば、同判決は、国会に 言を9回、「選挙制度の仕組み自体の見直し」の文言を3回、「仕組みを更に見直す」と「選挙制度の抜本的見直し」の文言を各2回用いており、これらの文言を多数回用いていることに照らせば、同判決は、国会に対し、強く較差の更なる是正、選挙制度の仕組み自体の抜本的見直しを求めているものと解される。 第2-4(2)ウしかるに、本件定数配分規定は、前回選挙(令和4年選挙)及び前々回選挙(令和元年選挙)と同一であり、国会は、令和5年最大判の要求にもかかわらず、これを無視し、本件選挙までに、自己の利益を優先させ、定数配分規定について、具体的に較差是正の措置(ただし、抜本的見直しを含む。)を講ずることを怠った。 第2-4(3) 憲法の文理解釈に基づく主張憲法前文1段2文は、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」と規定しているところ、憲法前文は、「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」と規定する憲法47条の解釈基準となるものである。憲法前文が少なくとも解釈基準であることは学説上争いがなく、判例もこれを認めており、政府もこれを自認している。 憲法前文1段2文は受託者の忠実義務、すなわち、受託者は受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない(信託法30条参照)との義務の趣旨も含むものと解される。そうすると、信託事務の処理その他の行為から生ずる利益に関する受託者(国民の代表者)の受益者(国民)に対する忠実義務が、投票価値の較差の変更を伴う定数配分規定の立法について、国会が広範な立法裁量権を有するか否かの憲法47条についての解釈基準になると解される。 令和5年 代表者)の受益者(国民)に対する忠実義務が、投票価値の較差の変更を伴う定数配分規定の立法について、国会が広範な立法裁量権を有するか否かの憲法47条についての解釈基準になると解される。 令和5年最大判(衆)は、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(憲法43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められているとした上で、選挙制度の合憲性は、これら諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されるとして、較差を伴った選挙区割規定を合憲であると判断した。しかし、当該判示は、憲法前文1段2文に基づき、国民(委託者)によって国政を信託された国民の代表者(受託者)が、国民(受益者)に対して負担する忠実義務に反して、憲法47条を解釈、適用するものであり、憲法47条、前文1段2文に違反する。 また、平成25年最大判(衆)は、国政たる(投票価値の較差の維持・変更を伴う)選挙区割規定の立法は、議員の「身分にも直接関わる事柄」、すなわち、国政(選挙区割規定の立法)から生ずる、当選、落選という国会議員個人の利益に直接関わる事柄であると解している。 そして、昭和51年最大判以来の判例は一貫して、各選挙区の選挙人数又は人口と配分議員定数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準とされるべきは当然であると判示している点は重要である。 そうすると、国民の代表者が、(投票価値の較差を伴う)選挙区割規定を立法することは、国民の代表者が、国民の利益より、自らの利益を優先させて自らの利益のために当該選挙区割規定の立法をした点で、国民の代表者は、憲法前文1項2文に定めるとおり信 を伴う)選挙区割規定を立法することは、国民の代表者が、国民の利益より、自らの利益を優先させて自らの利益のために当該選挙区割規定の立法をした点で、国民の代表者は、憲法前文1項2文に定めるとおり信託された国政の受託者として、国政の受益者(国民)に対する忠実義務に矛盾し、(憲法47条の解釈基準たる憲法前文1段2文に反して解釈された)憲法47条を適用するものであり、(憲法47条の解釈基準たる憲法前文1段2文に基づいて解釈、適用されるべき)憲法47条に違反する。 第2-4(4) 憲法が要求する人口比例選挙に係る主張第2-4(4)ア主権者の過半数論主権は国家の政治のあり方を最終的に決定する力であり、内閣総理大臣を指名することは、主権の行使に該当する。 憲法前文、1条、15条1項、43条1項は、国民に対し、主権者として、両議院の議員の選挙において投票することによって国の政治に参加することができる権利を保障している。選挙権の行使は、国民の主権の行使である。 人口比例選挙では、出席議員の過半数に投票した主権を有する有効投票者が、人口比例選挙で選出された国会議員を通じて、出席議員の過半数決で、(間接的に)内閣総理大臣を指名する。 しかるに、非人口比例選挙では、これが成り立たず、非人口比例選挙である我が国は、国民主権国家ではない。 第2-4(4)イ議員及び国民の1票の等価値論憲法56条2項の「両議院の議事」については、各院の各議員が、全員、1票(等価値)を投票する権利を有し、出席議員の過半数でこれを決する。同項の出席議員の過半数決の議決において、各議員は、全員、「主権」(憲法1条及び前文1段1文後段)を有する「全国民を代表する」(憲法43条1項)「国会における代表者」(憲法前文1段1文前段)である 項の出席議員の過半数決の議決において、各議員は、全員、「主権」(憲法1条及び前文1段1文後段)を有する「全国民を代表する」(憲法43条1項)「国会における代表者」(憲法前文1段1文前段)である。 出席議員の過半数決によって議事が決定されることが正当化され得るのは、各議員が選挙区割ごとに同じ人数の主権を有する有権者から選出されるからであり、これは人口比例選挙のみによって実現可能である。 第2-4(5) 合理的期間論判例は、投票価値の不均衡が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っている場合に、当該選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるとして当該定数配分規定が憲法に違反するに至っているか否かを審査する合理的期間論を示しているが、当該選挙の違憲性判断の基準時たる選挙投票日の時点で、選挙区の定数配分規定が、憲法の平等の要求に反している状態である場合、憲法98条1項の定めにより、当該選挙は違憲、無効であって、判例の合理的期間論は、同項の明文に正面から抵触するもので、無効である。 第2-5 【被告らの主張の要旨】 第2-5(1) 判断枠組み憲法は投票価値の平等を要求している一方、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるための選挙制度の仕組みの決定を国会の広範な裁量に委ねているから、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が定めた具体的な選挙制度がその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するものとはいえない。 ゆえ、国会が定めた具体的な選挙制度がその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するものとはいえない。 憲法が二院制を採用した趣旨は、立法を始めとする多くの事項について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ、参議院議員の任期をより長期とすること等によって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性及び継続性を確保しようとするところにあると解されるから、両議院がその構成を異なるものとし、それぞれが特色を持った議院として機能させるべく、それぞれの選挙区の構成等を異にすることは憲法上予定されていると解される。 つまり、憲法は、参議院については、多数決原理に基づく衆議院の行き過ぎを抑制する「良識の府」「再考の府」として機能させることを想定し、参議院議員の選挙制度については、人口比例のみでは適切に反映されない国民の意見を公正かつ効果的に国政に反映させるため、投票価値の平等のみならず、それ以外の諸要素についても十分考慮することを求め ていると解される。 そうすると、国会の定めた定数配分規定が憲法14条1項等の規定に違反して違憲と評価されるのは、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由を考慮しても、投票価値の平等の見地からみて違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態が生じており、かつ、当該選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超える場合に限られるものと解すべきである。 第2-5(2) 都道府県単位の選挙制度の意義都道府県は、その歴史、政治的・社会的な役割・機能、国民の帰属意識等に鑑みれば、長年にわたって、一つの行政単位としての歴史的、 と解すべきである。 第2-5(2) 都道府県単位の選挙制度の意義都道府県は、その歴史、政治的・社会的な役割・機能、国民の帰属意識等に鑑みれば、長年にわたって、一つの行政単位としての歴史的、政治的、経済的、社会的及び文化的な一体感が醸成されており、選挙制度の決定に際し、国会が考慮することのできる基本的な要素の一つである。 憲法の制定過程をみても、国会審議の中で、各都道府県を参議院の選挙区選出議員選挙の選挙区の単位とすることが取り上げられており、憲法は、参議院の選挙制度における国会の裁量権の行使として、選挙区を都道府県単位とする選挙制度を採用することを想定し、許容していた。 参議院創設以来、最大較差が5倍前後となる時期が続き、選挙区を都道府県単位とする選挙制度の見直しが必要となったが、都道府県単位の選挙区割りは、国民に定着し、世論調査でも都道府県単位で代表を選ぶべきとの意見も多く、当該選挙区割りを大きく変えることは、地域に縁故があり実情に通じた候補者に投票したいと考える国民の投票意識に悪影響を与えかねないから、都道府県単位を基本とする意義は十分 に尊重すべきである。 市町村単位の選挙区制度が採用されている衆議院と都道府県単位の選挙区制度が採用されている参議院とで、全体として各地方公共団体の特色を踏まえた多角的な民意の反映が可能となり二院制の趣旨にも沿うものである。参議院議員の任期が長いことも踏まえれば、民意の集約や国政への反映を継続的かつ安定的にするものである。 今日の地方の過疎化や疲弊、都市との較差を踏まえると地方に住む少数派の国民の意見も十分に国政に届くようにする定数配分規定を定める重要性が増しており、都道府県単位とすることは十分な理由がある。 第2-5(3) 最高裁判決と立法経緯投票価値の不均衡が 住む少数派の国民の意見も十分に国政に届くようにする定数配分規定を定める重要性が増しており、都道府県単位とすることは十分な理由がある。 第2-5(3) 最高裁判決と立法経緯投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていた旨判断した平成24年最大判及び平成26年最大判の趣旨に沿い、平成27年改正を行い、最大較差(人口)は2.97倍となり、指摘の不平等状態は解消され、平成29年最大判は合憲と判断した。 そして、平成30年改正を経て、本件定数配分規定が定められ、更なる是正を実現し、令和2年最大判及び令和5年最大判も合憲と判断しており、合区を維持しながら最大較差もわずかな変化にとどまっており、本件選挙時においても合憲性は維持されている。 第2-5(4) 選挙制度改革の困難と是正の取組参議院は3年ごとの半数改選や少ない定数など、投票価値の平等の要請に配慮した定数配分を行う際の制約がある。その中でも、国会は改革の努力を続け、平成27年改正により 合区を導入するなど、較差の是正を行った。しかし、合区には、対象となった両県の意見を集約する困難、人口が相対的に少ない側の県の意見反映の困難などの弊害の指摘があり、反対意見も強い。 このような困難が伴うも、国会は、平成30年改正を行い、選挙制度改革の決意を表明している。 さらに、国会は、令和2年最大判及び令和5年最大判など累次の判決を真摯に受け止め、参議院改革協議会等を設置し、議論を継続し、現時点では成案が得られてないものの、すべての会派が本件選挙後にも選挙制度の改革に関する議論を継続することを表明し、令和10年通常選挙に向けた制度改正を明示するなどしている。 令和5年最大判も、較差の更なる是正を図る観点から都道府県よりも広域の選挙区を設けるなどの方策 改革に関する議論を継続することを表明し、令和10年通常選挙に向けた制度改正を明示するなどしている。 令和5年最大判も、較差の更なる是正を図る観点から都道府県よりも広域の選挙区を設けるなどの方策によって現行の選挙制度の仕組みを更に見直すに当たり、合区対象県において投票率の低下等がみられる状況について、有権者において、都道府県ごとに地域の実情に通じた国会議員を選出するとの考え方がなお強いことをうかがわせ、代表民主制の下での国民の利害や意見を公正かつ効率的に国政に反映させる観点から慎重に検討すべき課題があることを示唆するものと考えられると指摘し、これに加えて、参議院の議員定数の見直しなどの方策を採ることにも様々な制約が想定されることも指摘し、これらの状況を踏まえ、種々の方策の実効性や課題等を慎重に見極めつつ、広く国民の理解も得ていく必要があると考えられることから、合理的な成案に達するにはなお一定の時間を要することが見込まれるとし、較差の拡大の防止 等にも配慮して合区を維持した経緯に鑑み、具体的な方策を新たに講ずるに至らなかったことを考慮しても、平成30年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡が違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとはいえないと判示している。 そして、合区を創生した平成27年改正後、本件選挙時に至るまで、合区対象県における投票率の低下等の弊害が継続しており、国民の利害や意見を公正かつ効率的に国政に反映させる観点からいえば、都道府県単位を基本とする選挙区を見直すことには慎重に検討すべき課題が依然として存在するといえ、国会が較差の拡大の是正のための検討等に時間を要したとしてもやむを得ないものである。 第2-5(5) 国会の裁量権の限界を超えないこと仮に違憲の問題が 討すべき課題が依然として存在するといえ、国会が較差の拡大の是正のための検討等に時間を要したとしてもやむを得ないものである。 第2-5(5) 国会の裁量権の限界を超えないこと仮に違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったとの評価がされるとしても、本件選挙までの期間内に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の範囲を超えるものとはいえない。 平成27年改正及び平成30年改正を経て本件定数配分規定が定められ、令和2年及び令和5年最大判でも合憲の判断が示されている。 本件選挙時の最大較差は3.13倍であり、累次の最高裁判決の事案において合憲とされた最大較差を大幅に下回っている。したがって、国会が、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態になったと認識し得た時期(始期)が、本件選挙までに開始していたとはいえない。加えて、較差の更なる是正等のための困難は既に主張したとおりであり、相応に長 期間を要することはやむを得ないものである。 第2-5(6) 結論以上のとおり、本件選挙当時において、本件定数配分規定の下における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたとはいえず、また、万一、そのような違憲状態に至っていたと判断されたとしても、本件選挙までの期間内にその是正がされなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものともいえない。 したがって、本件定数配分規定が憲法の規定に違反する無効なものとはいえないから、本件選挙は有効である。 第3 当裁判所の判断第3-1 【認定事実】前提事実、当裁判所に顕著な事実、証拠(乙3、9、10、11〔枝番を含む。〕のほか、後掲の証拠)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 第3-1(1) 参議院の議員定数 認定事実】前提事実、当裁判所に顕著な事実、証拠(乙3、9、10、11〔枝番を含む。〕のほか、後掲の証拠)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 第3-1(1) 参議院の議員定数及び選挙制度等参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)は、参議院議員の選挙について、参議院議員250人を全国選出議員100人と地方選出議員150人とに区分し、全国選出議員については、全都道府県の区域を通じて選出されるものとする一方、地方選出議員については、その選挙区及び各選挙区における議員定数を別表で定め、都道府県を単位とする選挙区において選出されるものとした。そして、選挙区ごとの議員定数については、憲法46条が参議院議員につき3年ごとにその半数を改選すると定めていることに応じて、各選挙区に おいてその選出議員の半数が改選されることとなるよう、定数を偶数として最小2人を配分する方針の下に、各選挙区の人口に比例する形で、2人ないし8人の偶数の議員定数を配分した。 昭和25年に制定された公職選挙法の定数配分規定は、上記の参議院議員選挙法の議員定数配分規定をそのまま引き継いだものであり、その後に沖縄県選挙区の議員定数2人が付加されたほかは、平成6年改正まで、上記定数配分規定に変更はなかった。なお、昭和57年改正により、参議院議員252人は各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議員100人と都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙区選出議員152人とに区分されることになったが、この選挙区選出議員は、従来の地方選出議員の名称が変更されたものである。 第3-1(2) 平成21年最大判までの推移等第3-1(2)ア参議院議員選挙法制定当時の最大較差(人口)は2.62倍であったが、人口変動により次第に拡大 が変更されたものである。 第3-1(2) 平成21年最大判までの推移等第3-1(2)ア参議院議員選挙法制定当時の最大較差(人口)は2.62倍であったが、人口変動により次第に拡大を続け、平成4年選挙当時の最大較差が6.59倍に達した後、平成6年改正における7選挙区の定数を8増8減とする措置により、平成2年10月実施の国勢調査結果による最大較差(人口)は4.81倍に縮小した。その後、平成12年改正による3選挙区の定数を6減とする措置及び平成18年改正による4選挙区の定数を4増4減とする措置の前後を通じて、平成7年から平成19年までに行われた各通常選挙当時の最大較差は5倍前後で推移した。 第3-1(2)イこの間に行われた通常選挙につき、①平成4年選挙に関す る平成8年最大判は、違憲状態・合憲の判断をしたが、②平成10年最大判、平成12年最大判は、平成6年改正後の定数配分規定の下で行われた2回の通常選挙につき、違憲状態に至っていたとはいえない旨判示した。その後、③平成16年最大判及び平成18年最大判は平成12年改正後の定数配分規定の下で行われた2回の通常選挙につき、平成21年最大判は平成18年改正後の定数配分規定の下で行われた平成19年選挙につき、いずれも、違憲状態にあったか否かについては明示的に判断しなかったものの、結論において当該各定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえない旨の判断を示した。 もっとも、平成18年最大判においては、投票価値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会における不断の努力が望まれる旨の、平成21年最大判においては、当時の較差が投票価値の平等という観点からはなお大きな不平等が存する状態であって、最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙 て国会における不断の努力が望まれる旨の、平成21年最大判においては、当時の較差が投票価値の平等という観点からはなお大きな不平等が存する状態であって、最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる旨の指摘がそれぞれされるなど、最大較差が5倍前後で常態化する中で、較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより厳格な評価がされるようになっていた。 第3-1(3) 平成24年最大判(平成22年選挙)平成24年最大判は、最大較差5.00倍の平成22年選挙について、結論において違憲状態・合憲の判断をしたものであるが、以下の説示をしている。 ア衆議院と参議院のそれぞれの選挙制度は、これまでの改正 等により結果として同質的な選挙制度となってきているということができる。このような選挙制度の変遷とともに、急速に変化する社会の情勢の下で、議員の長い任期を背景に国政の運営における参議院の役割はこれまでにも増して大きくなってきているということができる。加えて、衆議院については、選挙区間の人口較差が2倍未満となることを基本とする旨の区割りの基準が定められている。これらの事情に照らすと、参議院についても、二院制に係る憲法の趣旨との調和の下に、更に適切に民意が反映されるよう投票価値の平等の要請について十分に配慮することが求められるところである。 イ参議院は衆議院とともに国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する責務を負っていることは明らかであり、参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。昭和58年最大判は、参議院議員の選挙制度において都道府県を選挙区の単位として各選挙区の定数を定める仕組みにつき、都道府県が歴 ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い。昭和58年最大判は、参議院議員の選挙制度において都道府県を選挙区の単位として各選挙区の定数を定める仕組みにつき、都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有し、政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ることに照らし、都道府県を構成する住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味しようとしたものと解することができると指摘している。都道府県が地方における一つのまとまりを有する行政等の単位であるという点は今日においても変わりはなく、この指摘もその限度においては相応の合理性を有していたといい得るが、これを参議院議員の選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はなく、むしろ、都道府県を選挙区の単位として固定 する結果、その間の人口較差に起因して投票価値の大きな不平等状態が長期にわたって継続していると認められる状況の下では、上記の仕組み自体を見直すことが必要になるものといわなければならない。 ウ現行の選挙制度は、限られた総定数の枠内で、半数改選という憲法上の要請を踏まえた偶数配分を前提に、都道府県を単位として各選挙区の定数を定めるという仕組みを採っているが、人口の都市部への集中による都道府県間の人口較差の拡大が続き、総定数を増やす方法を採ることにも制約がある中で、このような都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の実現を図るという要求に応えていくことは、もはや著しく困難な状況に至っているものというべきである。 エ参議院議員の選挙制度については、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現 というべきである。 エ参議院議員の選挙制度については、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる前記の不平等状態を解消する必要がある。 第3-1(4) 平成24年改正平成24年最大判の言渡し後、平成24年11月に選挙区選出議員について4選挙区で定数を4増4減とすることを内容とする平成24年改正が行われた。 第3-1(5) 平成25年選挙及び平成26年最大判第3-1(5)ア平成25年選挙が、同年7月21日、平成24年改正後の定数配分規定の下で行われた。同選挙当時の最大較差は4. 77倍であった。 第3-1(5)イ平成26年最大判は、平成25年選挙について、結論において、平成24年最大判と同様、違憲状態・合憲の判断をしたものである。 すなわち、平成24年改正による上記4増4減の措置は、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持して一部の選挙区の定数を増減するにとどまり、現に最大較差については上記の改正の前後を通じてなお5倍前後の水準が続いていたのであるから、同法による上記措置を経た後も、違憲状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって上記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。 第3-1(6) 平成27年改正平成27年改正は、選挙区選出議員の選挙区及び定数について、鳥取県及び を内容とする立法的措置によって上記の不平等状態が解消される必要がある旨を指摘した。 第3-1(6) 平成27年改正平成27年改正は、選挙区選出議員の選挙区及び定数について、鳥取県及び島根県、徳島県及び高知県をそれぞれ合区して定数各2人の選挙区とするとともに、3選挙区の定数を2人ずつ減員し、5選挙区の定数を2人ずつ増員することなどを内容とするものであり、平成27年改正法附則7条には、平成31年に行われる通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員1人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとするとの規定が置かれた。 平成27年改正の結果、平成22年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく最大較差(人口)は2.97倍となった。 第3-1(7) 平成28年選挙及び平成29年最大判第3-1(7)ア平成28年選挙が、同年7月10日、平成27年改正後の定数配分規定の下で行われた。同選挙当時の最大較差は3. 08倍であった。同選挙において、別紙投票率等のとおり、合区の対象となった4県のうち島根県を除く3県では、投票率が低下して当時における過去最低の投票率となったほか、無効投票率が全国平均を上回り、高知県での無効投票率は全国最高となった。なお、平成25年選挙においては、無効投票率が全国平均を上回っていたのは、上記4県のうち高知県のみであった。 第3-1(7)イ平成29年最大判は、平成28年選挙につき、結論的に違憲状態にあったとはいえないとの判断をした。 すなわち、平成27年改正につき、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、参議院創設以来初めての合区を行うことにより、長期間にわたり投票価値の大きな 状態にあったとはいえないとの判断をした。 すなわち、平成27年改正につき、単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、参議院創設以来初めての合区を行うことにより、長期間にわたり投票価値の大きな較差が継続する要因となっていた都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを見直すことをも内容とするものであり、これによって、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた最大較差は2.97倍(選挙当時は3.08倍)まで縮小するに至ったのであるから、平成24年最大判等の趣旨に沿って較差の是正を図ったものとみることができるとし、また、平成27年改正法附則において上記第3-1(6)のとおり規定され、今後における較差の更なる是正に向けての方向性と立法 府の決意が示されるとともに、再び大きな較差を生じさせることのないよう配慮されているものということができるというものである。 第3-1(8) 平成28年選挙後から平成30年改正までの推移等第3-1(8)ア全国知事会は、平成28年7月29日、平成28年選挙において投票率の著しい低下等の様々な弊害が顕在化したなどとして、合区の早急な解消を求める決議を行った。また、全国都道府県議会議長会や全国市長会等においても、合区の早急な解消に向けた決議等が行われた。 第3-1(8)イ平成29年2月、参議院の各会派代表による参議院改革協議会が設置され、同年4月、同協議会の下に参議院選挙制度改革について集中的に調査を行う「選挙制度に関する専門委員会」が設けられた。同委員会は、参議院選挙制度改革に対する考え方について、一票の較差、選挙制度の枠組みとそれに基づく議員定数の在り方、選挙区の枠組み等について協議を行った上で、選挙区選出議員について、全ての都道府県から少なくとも1人の議員が選出される都道府県 について、一票の較差、選挙制度の枠組みとそれに基づく議員定数の在り方、選挙区の枠組み等について協議を行った上で、選挙区選出議員について、全ての都道府県から少なくとも1人の議員が選出される都道府県を単位とする選挙区とすること、一部合区を含む都道府県を単位とする選挙区とすること、又はブロック選挙区制とすることの各案について検討を行ったほか、選挙区選出議員及び比例代表選出議員の二本立てとしない場合を含めた選挙制度の在り方等についても議論を行った。しかしながら、これらの議論を経た上で各会派から示された選挙制度改革の具体的な方向性についての意見の内容は、選挙区の単位、合区の存廃、議員定数の増減等の点において大きな隔たりがある状況であった。 第3-1(8)ウ平成30年6月、参議院改革協議会において、自由民主党 から、選挙区の単位を都道府県とすること及び平成27年改正による4県2合区は維持した上で、選挙区選出議員の定数を2人増員して埼玉県選挙区に配分するとともに、比例代表選出議員の定数を4人増員し、政党等が優先的に当選人となるべき候補者を定めることができる特定枠制度を導入するとの案が示された。その後、協議が行われるなどしたものの、各会派間に意見の隔たりがある状況であったため、各会派が参議院に法律案を提出し、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会において議論が進められることとなり、上記の自由民主党の提案内容に沿った法律案のほか、現在の選挙区選出議員の選挙及び比例代表選出議員の選挙に代えてブロック選挙区制を導入することを内容とする法律案等が提出された。 第3-1(8)エ最終的には、同年7月11日、上記の自由民主党の提案に沿った内容の平成30年改正が可決成立した。なお、上記特別委員会において、「今後の参議院選挙制 する法律案等が提出された。 第3-1(8)エ最終的には、同年7月11日、上記の自由民主党の提案に沿った内容の平成30年改正が可決成立した。なお、上記特別委員会において、「今後の参議院選挙制度改革については、憲法の趣旨にのっとり、参議院の役割及び在り方を踏まえ引き続き検討を行うこと」との附帯決議がされた。 平成30年改正の結果、平成27年10月実施の国勢調査結果による日本国民人口に基づく最大較差(人口)は2.99倍となった(本件定数配分規定)。 第3-1(9) 令和元年選挙及び令和2年最大判第3-1(9)ア令和元年選挙が、同年7月21日、本件定数配分規定の下で行われた。同選挙当時の最大較差は3.00倍であった。 同選挙において、別紙投票率等のとおり、合区の対象となった徳島県での投票率は全国最低となり、鳥取県及び島根県の 投票率もそれぞれ過去最低となった。また、合区の対象となった4県での無効投票率はいずれも全国平均を上回り、徳島県では全国最高となった。 第3-1(9)イ令和2年最大判は、以下のように説示し、結論的には、本件定数配分規定の下で行われた令和元年選挙につき違憲状態にあったとは認められないと判断した。 すなわち、立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められているところ、平成30年改正において、こうした取組が大きな進展を見せているとはいえないとしながらも、平成30年改正につき、数十年間にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を3倍程度まで縮小させた平成27年改正における方向性を維持するよう配慮したものであるということができ、また、参議院 がらも、平成30年改正につき、数十年間にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を3倍程度まで縮小させた平成27年改正における方向性を維持するよう配慮したものであるということができ、また、参議院選挙制度の改革に際しては、事柄の性質上慎重な考慮を要することに鑑み、その実現は漸進的にならざるを得ない面があることからすると、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできないなどというものである。 第3-1(10) 令和元年選挙後から令和4年選挙前までの推移等令和元年選挙の後も、全国知事会等において、合区の解消を求める決議等が行われた。 令和3年5月、参議院の各会派代表による参議院改革協議会が改めて設置され、参議院の組織及び運営の改革に関する検討項目の一つとして、較差の是正を含む選挙制度改革につ いての議論がされた。合区については、何らかの形で解消することを目指す意見が多かったものの、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを維持するか、ブロック選挙区制とするか、議員の総定数を増やすか等の点について意見の隔たりがあり、最終的に、参議院選挙制度改革の具体的な方向性についての各会派の意見が一致するには至らなかった。令和4年5月及び同年6月に開かれた参議院憲法審査会における参議院選挙制度改革をめぐる議論の状況も、上記と同様であった。 第3-1(11) 令和4年選挙及び令和5年最大判第3-1(11)ア令和4年選挙が、同年7月10日、本件定数配分規定の下での2回目の通常選挙として行われた。同選挙当時の最大較差は3.03倍であった。同選挙において、別紙投票率等のとおり、合区の対象となった鳥取県での投票率は、令和元年選挙時を更に下回って過去最低を更新し、また、徳島県での投票 われた。同選挙当時の最大較差は3.03倍であった。同選挙において、別紙投票率等のとおり、合区の対象となった鳥取県での投票率は、令和元年選挙時を更に下回って過去最低を更新し、また、徳島県での投票率は、令和元年選挙時より上昇したものの、なお全国最低であった。合区の対象となった4県での無効投票率は、いずれも全国平均を上回った。 第3-1(11)イ令和5年最大判は、以下のように説示し、結論的に、本件定数配分規定の下で行われた令和4年選挙についても、令和2年最大判に引き続き、違憲状態にあったとは認められないと判断した。 (ア)二院制に係る憲法の趣旨や、半数改選などの参議院の議員定数配分に当たり考慮を要する固有の要素を勘案しても、参議院議員選挙について直ちに投票価値の平等の要請が後退してもよいと解すべき理由は見いだし難い。したがって、立法府 においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが引き続き求められているというべきである(令和2年最大判参照)。 (イ)この観点からみると、本件選挙までの間、参議院議員の選挙制度の改革につき各会派の間で一定の議論がされたものの、較差の更なる是正のための法改正の見通しが立つに至っていないのはもとより、その実現に向けた具体的な検討が進展しているともいい難い。 しかしながら、4県2合区を導入すること等を内容とする平成27年改正により、数十年間にもわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は3倍程度まで縮小し、平成24年最大判等で指摘された著しい不平等状態はひとまず解消されたところ、同改正がされてから本件選挙までの約7年間、同改正 もわたり5倍前後で推移してきた選挙区間の最大較差は3倍程度まで縮小し、平成24年最大判等で指摘された著しい不平等状態はひとまず解消されたところ、同改正がされてから本件選挙までの約7年間、同改正後の定数配分規定及び本件定数配分規定の下で上記の合区は維持され、選挙区間の最大較差は3倍程度で推移しており、有意な拡大傾向にあるともいえない。 (ウ)このような中で、立法府においては、較差の更なる是正を図る観点から、都道府県より広域の選挙区を設けるなどの方策について議論がされてきたところであり、こうした方策によって都道府県を各選挙区の単位とする現行の選挙制度の仕組みを更に見直すことも考えられる。もっとも、合区の導入後に、その対象となった4県において、投票率の低下や無効投票率の上昇が続けてみられること等を勘案すると、有権者において、都道府県ごとに地域の実情に通じた国会議員を選出す るとの考え方がなお強く、これが選挙に対する関心や投票行動に影響を与えていることがうかがわれる。このような状況は、上記の仕組みを更に見直すに当たり、代表民主制の下で国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる観点から慎重に検討すべき課題があることを示唆するものと考えられる。 そうすると、立法府が上記是正に向けた取組を進めていくには、更に議論を積み重ねる中で種々の方策の実効性や課題等を慎重に見極めつつ、広く国民の理解も得ていく必要があると考えられ、合理的な成案に達するにはなお一定の時間を要することが見込まれる。 以上に述べたような状況の下、立法府が、参議院議員の選挙制度の改革に向けた議論を継続する中で、較差の拡大の防止等にも配慮して4県2合区を含む本件定数配分規定を維持したという経緯に鑑みれば、立法府が、較差の更なる是正を図る 、立法府が、参議院議員の選挙制度の改革に向けた議論を継続する中で、較差の拡大の防止等にも配慮して4県2合区を含む本件定数配分規定を維持したという経緯に鑑みれば、立法府が、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくための具体的な方策を新たに講ずるに至らなかったことを考慮しても、本件選挙当時の選挙区間の最大較差が示す投票価値の不均衡が、憲法の投票価値の平等の要求に反するものであったということはできない。 (エ)なお、これまで人口の都市部への集中が生じており、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれるところ、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させる選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であること等を考慮すると、較差の更なる是正を図ること等は喫緊の課題というべきである。立法府においては、より適切な民意 の反映が可能となるよう、社会の情勢の変化や上記課題等をも踏まえながら、現行の選挙制度の仕組みの抜本的な見直しも含め、較差の更なる是正等の方策について具体的に検討した上で、広く国民の理解も得られるような立法的措置を講じていくことが求められる。 第3-1(12) 令和4年選挙後の参議院の動向等第3-1(12)ア全国知事会は、令和4年選挙後、令和4年7月28日、都道府県単位による代表が国政に参加できる選挙制度とすべく、合区の確実な解消を強く求める旨の意見を表明する決議を行い、その後も、令和5年7月26日及び令和6年8月2日に合区の確実な解消を強く求める意見を表明する決議を行った(乙38の1~3)。 第3-1(12)イ参議院は、令和4年選挙後、選挙制度の在り方や参議院の組織及び運営について協議、議論するために、令和4年11月に、改めて、参議院改革協議会(本 議を行った(乙38の1~3)。 第3-1(12)イ参議院は、令和4年選挙後、選挙制度の在り方や参議院の組織及び運営について協議、議論するために、令和4年11月に、改めて、参議院改革協議会(本件協議会)を設置し、本件協議会は、同年12月16日、選挙制度の調査、検討のため、本件協議会の下に、各会派の代表者からなる選挙制度に関する専門委員会を設置した。同専門委員会は、令和5年2月から令和6年6月までの間に16回開催され、参考人による意見陳述、各会派による意見表明、各委員間での意見交換が行われた。その中で鳥取県及び高知県の各知事からの意見聴取が実施された。鳥取県知事は「鳥取県の投票率は、かつては1番、2番を争っているところであり、隣の島根県もそうであった。ところが、合区を導入した途端に今では平均以下の32位になっている。これは、民主政治に対する信頼を県民が失いかけているということにほかならない。こんな 選挙なら行かない方がいい、そう思うようになり始めており、残念ながらそういうことである。無効投票も合区を入れた途端に白票が増えている。」などの意見を述べた。高知県知事は「こうした投票率の低下、無効投票の増大の大きな要因は、やはり1県1代表ではないという合区制度に起因をした県民の関心の低下、あるいは、失望というものが大きいのではないかと推察している。」などの意見を述べた。 こうした意見聴取なども踏まえ、各会派による意見表明及び意見交換を経て、同専門委員会の委員長は、現行の合区の弊害については多くの会派において共通認識としてあり、合区を解消すべきとの意見が大勢となっているものの、具体的な選挙制度の仕組みについては、都道府県単位の選挙区選出議員選挙及び全国比例代表選出議員選挙を維持すべきとの意見とブロック選挙区制を導入すべきと を解消すべきとの意見が大勢となっているものの、具体的な選挙制度の仕組みについては、都道府県単位の選挙区選出議員選挙及び全国比例代表選出議員選挙を維持すべきとの意見とブロック選挙区制を導入すべきとの意見の大きく2つに分かれる状況にあり、現時点では意見の集約が難しいとの認識を示し、同専門委員会は、令和6年6月7日、協議結果を記載した報告書を本件協議会に提出した。 本件協議会は、意見交換、各会派による意見表明を経て、令和7年6月18日に報告書を取りまとめ、参議院議長に提出した。同報告書では、議論の整理として、参議院議員選挙制度について、投票価値の平等については、最高裁判決においても較差是正が求められているところ、その是正の取組は参議院の機能・役割との調整を図る必要があるとの意見や、投票価値の平等を一層追求しなければならないとの意見があったこと、現行の合区の弊害は多くの会派の共通認識としてあり、合区の不合理を解消すべきとの意見が大勢であり、令 和10年通常選挙までに合区を解消すべきとの意見があったこと、具体的な選挙制度の枠組みについては、各会派の考え方に異同があり、都道府県単位の選挙区選出議員選挙及び全国比例代表選出議員選挙を維持すべきとの意見とブロック選挙区制を導入すべきとの意見が示され、現時点では意見の集約が困難であることなどのまとめがなされた。その上で、今後の協議の進め方について、令和10年通常選挙に向けて、令和7年選挙後、新たな会派構成の下でも協議の場を設け、工程案を共有しつつ、具体的な参議院改革について結論を出し、選挙制度改革の方向性を見いだすべく協議が引き継いでいかれることを切望するとされた。(乙26)第3-1(12)ウ参議院憲法審査会において、令和4年選挙後に、複数回にわたって、参議院の在り方並びに一票 度改革の方向性を見いだすべく協議が引き継いでいかれることを切望するとされた。(乙26)第3-1(12)ウ参議院憲法審査会において、令和4年選挙後に、複数回にわたって、参議院の在り方並びに一票の較差及び合区の解消を主たる議題として意見表明がなされ、合区対象4県の知事又は副知事も参考人として合区による投票率の低下や無効票の増加等の状況を踏まえた意見を述べるなどして、審議が続けられたが、具体的な選挙制度の枠組みに関する方向性の一致が見られる状況にはなかった。この中で、島根県知事は「島根県の投票率は、合区前は60%を超えまして6回連続全国1位でありましたけれども、令和4年の選挙では約56%となりまして、投票率は4.5ポイント低下いたしております。この間の全国平均の低下は0.6ポイントでございますので著しく低下しているという状況で、全国トップでありました投票率は、令和4年では全国4位となっております。参議院の、参議院選挙における島根県民の直接的な政治参加が低下しているという状況でございます。このようなこ の投票率を招くような合区という制度が国民主権、民主主義に資するものなのかどうかということについて大いに疑問を感ずるところであります。」などの意見を述べた。徳島県副知事は「合区は投票率の低下のみならず無効票の増加も招いているということで、本来選挙制度がより多くの国民の皆さんが政治に関心を持っていただくという制度であるべきですけれども、この合区によって真逆の状況を起こしてしまっているということは、まさに民主主義の根幹を揺るがす重大な問題だというふうに認識をしております。」などの意見を述べた。(乙27)第3-1(13) 本件選挙令和7年7月20日、本件定数配分規定の下での3回目の通常選挙として本件選挙が行われた。同 問題だというふうに認識をしております。」などの意見を述べた。(乙27)第3-1(13) 本件選挙令和7年7月20日、本件定数配分規定の下での3回目の通常選挙として本件選挙が行われた。同選挙当時の選挙区間の最大較差は3.13倍であった。 本件選挙における較差3倍以上の3選挙区(東京都選挙区、神奈川県選挙区、宮城県選挙区)の有権者数(選挙人数)の合計は2117万0060人であり、全有権者数(全選挙人数)1億0359万1806人の20.4%を占めていた(乙1)。 別紙投票率等のとおり、本件選挙における合区対象4県については、投票率については、島根県のみが全国平均を上回り、下回った他の3県のうち徳島県は全国で最も低かった。 無効投票率については、高知県のみが全国平均を下回り、上回った他の3県のうち徳島県が最も高く、鳥取県が3番目に高かった(乙2)。 本件選挙における徳島県・高知県選挙区の立候補者は、い ずれも高知県に縁故を持つ者で、徳島県に縁故を持つ者はおらず、鳥取県・島根県選挙区の立候補者は、1名を除き島根県に縁故を持つ者で、鳥取県に縁故を持つ立候補者はいなかった(乙4)。 第3-2 【判断枠組み】第3-2(1) 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求していると解される。他方、憲法は、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねているのであって、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が 平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法に違反するとはいえない。 憲法が二院制を採用し衆議院と参議院の権限及び議員の任期等に差異を設けている趣旨は、それぞれの議院に特色のある機能を発揮させることによって、国会を公正かつ効果的に国民を代表する機関たらしめようとするところにあると解される。第3-1(1)においてみた参議院議員の選挙制度の仕組みは、このような観点から、参議院議員について、全国選出議員(昭和57年改正後は比例代表選出議員)と地方選出議員(同改正後は選挙区選出議員)に分け、前者については全国 (全都道府県)の区域を通じて選挙するものとし、後者については都道府県を各選挙区の単位としたものである。昭和22年の参議院議員選挙法及び昭和25年の公職選挙法の制定当時において、このような選挙制度の仕組みを定めたことが、国会の有する裁量権の合理的な行使の範囲を超えるものであったということはできない。しかしながら、社会的、経済的変化の激しい時代にあって不断に生ずる人口変動の結果、上記の仕組みの下で投票価値の著しい不平等状態が生じ、かつ、それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが、国会の裁量権の限界を超えると判断される場合には、当該定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。 第3-2(2) 憲法は、二院制の下で、一定の事項について衆議院の優越を認める反面、参議院議員につ ると判断される場合には、当該定数配分規定が憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。 第3-2(2) 憲法は、二院制の下で、一定の事項について衆議院の優越を認める反面、参議院議員につき任期を6年の長期とし、解散もなく、選挙は3年ごとにその半数について行うことを定めている(46条等)。その趣旨は、立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えつつ、参議院議員の任期をより長期とすること等によって、多角的かつ長期的な視点からの民意を反映させ、衆議院との権限の抑制、均衡を図り、国政の運営の安定性、継続性を確保しようとしたものと解される。そして、いかなる具体的な選挙制度によって、上記の憲法の趣旨を実現し、投票価値の平等の要請と調和させていくかは、二院制の下における参議院の性格や機能及び衆議院との異同をどのように位置付け、これをそれぞれの選挙制度にいかに反映させていくかという点を含め、国会の合理的な裁量に委ねられており、参議院議員 につき衆議院議員とは異なる選挙制度を採用し、国民各層の多様な意見を反映させて、参議院に衆議院と異なる独自の機能を発揮させようとすることも、選挙制度の仕組みを定めるに当たって国会に委ねられた裁量権の合理的行使として是認し得るものと考えられる。 また、具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり、一定の地域の住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味する観点から、政治的に一つのまとまりを有する単位である都道府県の意義や実体等を一つの要素として考慮すること自体が否定されるべきものであるとはいえず、投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏まえた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。 (以 定されるべきものであるとはいえず、投票価値の平等の要請との調和が保たれる限りにおいて、このような要素を踏まえた選挙制度を構築することが直ちに国会の合理的な裁量を超えるものとは解されない。 (以上の趣旨は、平成29年最大判、令和2年最大判及び令和5年最大判においても示されているとおりである。)第3-2(3) 原告らは、本件選挙の本件定数配分規定は、人口比例に基づいて定数配分しておらず、憲法56条2項、1条、前文1段1文冒頭に基づく人口比例選挙の要求に反していると主張するが、原告らが指摘する憲法の諸規定によっても、上記のとおり、憲法は、国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映させるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねているのであって、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであると解すべきであるから、上記枠組みを超える限度で 採用することはできない。 第3-3【本件選挙における最大較差の状況】第3-3(1)令和7年7月20日に実施された本件選挙は、平成30年改正(4県2合区を維持しつつ選挙区選出議員を2増とするもの)に係る本件定数配分規定の下で3度目の通常選挙として行われたものである。この間の最大較差の推移をみると、本件定数配分規定下の最初の通常選挙である令和元年選挙時が3.00倍、2度目の通常選挙である令和4年選挙時が3. 03倍、そして今回の本件選挙時が3.13倍となっている。 令和元年選挙から令和4年選挙の間の変化(3.00倍→3. 03倍)は、微増にとどまるものであって「有意な拡大傾向がみられるとはいえない」という評価も可能であっ の本件選挙時が3.13倍となっている。 令和元年選挙から令和4年選挙の間の変化(3.00倍→3. 03倍)は、微増にとどまるものであって「有意な拡大傾向がみられるとはいえない」という評価も可能であったが、令和4年選挙から本件選挙の間の変化(3.03倍→3.13倍)は、もはや微増にとどまるものとはいい難く、顕著な変化とまではいえないにせよ、看過し難い拡大傾向が生じているというべきである。 第3-3(2)投票価値の平等の要請が、本質的には1人1票を前提とする多数決原理により国の重要政策を決定するという代表民主制の理念によるものであることを考えると、上記のように3倍を超えてなお明らかな拡大傾向を生じている本件選挙当時の状況は、これを是正することが他の憲法上の要請等との兼ね合いから困難であるとか、議論の整理と利害関係の調整のための真摯な検討の途上にあるといった事情が認められない限り、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態(違憲状態)にあったとの評価も考えられるところである。このような観点から、以下で更に検討する。 第3-4【この間の裁判所と国会との対話(キャッチボール)について】 上記第3-3(2)で述べた事情を考える前提として、過去に遡って、裁判所と国会との対話(キャッチボール)の歴史を概観しておく(前記第3-1 の認定と内容的には重複するが、対話の流れが分かるようになるべく要約して示す。)。 第3-4(1)現在に至る議論の出発点となったのは、平成24年最大判であると考えられる。前述のとおり、同判決は、最大較差5. 00倍の平成22年選挙を違憲状態・合憲と判断したものであるが、「都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の実現を図るという要求に応えていくことは、もはや著しく困 較差5. 00倍の平成22年選挙を違憲状態・合憲と判断したものであるが、「都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の実現を図るという要求に応えていくことは、もはや著しく困難な状況に至っている」として「現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ」「る必要がある」と具体的な課題を示したものである。 この平成24年最大判は、これに先立つ平成16年最大判、平成18年最大判及び平成21年最大判において5倍前後の最大較差が生じていた各通常選挙につき違憲状態の判断が示されてこなかったところ、最大較差の数値において大きな変化が生じたとはいえない流れの中で、違憲状態の判断に踏み込んでいる点においても、また、単に「現行制度の見直し自体を改正する必要性」を指摘するにとどまらず、その見直しの対象を「都道府県単位の仕組み」と明示している点においても、いわゆる司法積極主義のスタンスに基づく注目すべき説示を含むものであり、その後の議論に道筋をつける重要なターニングポイントとなった。 第3-4(2)このような司法の立場からの投げかけに対し、国会は、「4 県2合区を含む10増10減」を骨格とする平成27年改正で応えることとなった。この改正で導入されることとなった合区制は、昭和22年制定の参議院議員選挙法及びその後の公職選挙法を通じて一貫して引き継がれてきた、地方選出議員ないし選挙区選出議員の選挙区を「都道府県単位」とする仕組みに、部分的にではあるものの修正を加えるものであった。これによって、人口(選挙人名簿登録者数)の少ない鳥取県、島根県、徳島県及び高知県の4県で実質的に4人の定数の削減を実現することが可能となり、これを含む10増10減という過去に例を見ない大改正を行うことで、数十年にわたっ 名簿登録者数)の少ない鳥取県、島根県、徳島県及び高知県の4県で実質的に4人の定数の削減を実現することが可能となり、これを含む10増10減という過去に例を見ない大改正を行うことで、数十年にわたって5倍前後で推移してきた最大較差(人口)を2.97倍にまで縮小させた。 このように、平成27年改正は、「選挙区を都道府県単位とする仕組み自体の見直し」に言及した平成24年最大判の投げかけを受け止めて制度改正を実現するとともに、投票価値の不均衡を示す最大較差の数字上でも大きな改善の成果を示したものであった。加えて、その附則(7条)には、平成31年に行われる通常選挙に向けて選挙制度の抜本的見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得るものとするとの検討条項が置かれ、今後における較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示された。 第3-4(3)この平成27年改正後の平成28年選挙(最大較差3.08倍)に関し、平成29年最大判は、平成27年改正による較差の縮小及び附則に示された更なる是正に向けての立法府の決意を評価し、違憲状態は解消されたという趣旨の判断を示した。 第3-4(4)その後、国会では、平成27年改正法附則7条を受けた検討が引き続き行われたが、選挙区の単位、合区の存廃、議員定数の増減等の点において各会派に大きな隔たりがある状況で、上記附則にうたわれた「選挙制度の抜本的見直し」には至らず、結局、平成30年改正は、4県2合区を維持しつつ埼玉県選挙区の定数を2人増やすという微修正にとどまった。 第3-4(5)そして、この平成30年改正に係る本件定数配分規定の下で実施された令和元年選挙(最大較差3.00)及び令和4年選挙(同3.03)につき、令和2年最大判及び令和5年最大判は、いずれも、各選挙当 そして、この平成30年改正に係る本件定数配分規定の下で実施された令和元年選挙(最大較差3.00)及び令和4年選挙(同3.03)につき、令和2年最大判及び令和5年最大判は、いずれも、各選挙当時に上記の較差が生じていたことをもって違憲状態にあったとはいえないとの判断を示しつつも、令和2年最大判においては「立法府においては、今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれる中で、較差の更なる是正を図るとともに、これを再び拡大させずに持続していくために必要となる方策等について議論し、取組を進めることが求められている」との説示が、令和5年最大判においては「今後も不断に人口変動が生ずることが見込まれるところ・・・較差の更なる是正を図ること等は喫緊の課題というべきである。・・・現行の選挙制度の仕組みの抜本的な見直しも含め、較差の更なる是正等の方策について具体的に検討した上で、広く国民の理解も得られるような立法的措置を講じていくことが求められる」との付言がされていることは前記認定のとおりである。すなわち、両判決は、平成30年改正に係る本件定数配分規定の下での約3倍という最大較差の数値に安住してよいと判断しているものではなく、国会の継続的な対応を求める明確なメッセージを発信したものといえる。 第3-4(6)しかし、その後の国会の動きは、本件協議会や参議院憲法審査会での検討、審議等は精力的に行われてきたものの、少なくとも定数配分規定の改正という目に見える形での是正の成果を見せることができないまま、むしろ最大較差の拡大傾向が進行している状態で、本件選挙を迎えることになったものである。 第3-4(7)以上をまとめると、選挙区を都道府県単位とする仕組み自体の見直しに言及した平成24年最大判を受けて、平成27年改正が合区制を導 態で、本件選挙を迎えることになったものである。 第3-4(7)以上をまとめると、選挙区を都道府県単位とする仕組み自体の見直しに言及した平成24年最大判を受けて、平成27年改正が合区制を導入し、長らく5倍前後で推移していた最大較差を約3倍程度に縮小させたという流れまでは、裁判所と国会の対話(キャッチボール)は一応円滑に進んでいたと解される。しかし、その後の国会の動きをみると、平成27年改正法附則の検討条項(平成31年に行われる通常選挙に向けて選挙制度の抜本的見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得るものとする)で示した決意とは裏腹に、平成30年改正は微修正にとどまり、令和2年最大判及び令和5年最大判が示したメッセージに応える具体的な成果も示すことはできていない。 第3-5【平成27年改正後の取組の停滞の原因について】第3-5(1)上記第3-4 で示したとおり、平成27年改正以降、投票価値の不均衡の更なる是正と選挙制度の抜本的な見直しに向けた取組の動きは突然減速してしまったように見える。そこで、以下では、その原因を明らかにし、司法の立場において言及が可能な範囲で、今後の議論の筋道を見通してみたい。 第3-5(2)平成27年改正以後の状況において、決定的に重要な論点となったのは、合区制に対する評価、より端的に言えば、合区 対象県における投票率の低下、無効投票率の上昇等の弊害の顕在化、合区の解消を求める声の拡大であったといえる(前記第3-1(7)ア、(8)ア、イ、(9)ア、(10)、(11)ア、(12)ア~ウ参照)。 第3-5(2)アまず、合区制導入後の合区対象県における投票率の低下及び無効投票率の上昇は、別紙投票率等のとおりであり、統計数字上もはっきりと表れている。その背景には、合区対 ~ウ参照)。 第3-5(2)アまず、合区制導入後の合区対象県における投票率の低下及び無効投票率の上昇は、別紙投票率等のとおりであり、統計数字上もはっきりと表れている。その背景には、合区対象県の有権者の間で、全国的には都道府県を単位とする選挙区制が基本的に維持されていながら、自分たちの所属する県だけが参議院に代表を送ることのできる仕組みを保障されていないことに対する不満、地域社会の過疎化と疲弊が進む中で政治的にも置き去りにされていく疎外感があるものと推測される。このような形で、合区制を採用した選挙制度に対する不信感、不公平感が醸成されているとすれば、投票価値の不平等とは別の形で、代表民主制の正統性を傷つけかねないと解される。これは、国会の裁量に委ねられる政策的な当否の問題にとどまらない、憲法上の疑義をも生じさせているといえる。 なお、上記のような合区対象県における投票率の低下及び無効投票率の上昇は、制度開始直後の平成28年選挙、令和元年選挙だけでなく、その後の令和4年選挙、令和7年選挙においても継続しており、これが制度改正に伴う一過性の拒絶反応にすぎないという評価は当たらないものと解される。 第3-5(2)イ合区制に対しては、導入当初から、全国知事会、全国市町村長会等の地方政治のレベルで強い反発があったところであるが、その後、上記アのような弊害が顕在化していく中で、地方 政治レベルにとどまらず、国会においても、参議院改革協議会等での議論を通じて、合区の解消を求める声が次第に多数を占めるようになった。そうした中、令和4年11月に本件協議会が設置され、その下に設置された専門委員会において延べ16回に及ぶ精力的な調査、検討が行われ、各会派からの意見表明及び意見交換も経て、徐々に議論が集約されていった た中、令和4年11月に本件協議会が設置され、その下に設置された専門委員会において延べ16回に及ぶ精力的な調査、検討が行われ、各会派からの意見表明及び意見交換も経て、徐々に議論が集約されていったところ、令和6年6月7日に提出された専門委員会報告書において、「投票率の低下等の弊害のある合区を解消すべきとの意見が大勢」という認識が示されるに至った。ただし、合区解消後の具体的な選挙制度の枠組みについては、都道府県単位の選挙区を維持すべきとの意見とブロック選挙区制を導入すべきとの意見に分かれる状況で、これを受けて令和7年6月18日に取りまとめられた本件協議会の報告書は、「令和10年通常選挙に向けて、本年の通常選挙後、新たな会派構成の下でも協議の場を速やかに設けていただき、工程案を共有しつつ、具体的な参議院改革について結論を出し、選挙制度改革の方向性を見出すべき協議が引き継いでいかれることを切望する」というものであった。 第3-5(2)ウなお、本件協議会及びその下に設置された専門委員会において、合区制の対象県の拡大という選択肢が取り上げられなかったのは、飛び地合区にしないよう隣接県との合区を検討する場合には、人口規模の異なる選挙区を合区とせざるを得ず、相対的に小さな人口規模の県に居住する国民の利害や意見を反映することが一段と困難となるなど、対象県に居住する国民とそうでない国民との間の差が看過できないものと考えたことによるものといえる。 そうすると、合区制は、現状の4県2合区の下でも拡大し続けている較差に対処する方策として、必ずしも有効とはいえないものであり、全国47都道府県の中で最も人口減少が進んだ4県のみを不公平に取り扱う、いびつで中途半端な制度という印象を与えるものとなっていると考えざるを得ない。 第3- 、必ずしも有効とはいえないものであり、全国47都道府県の中で最も人口減少が進んだ4県のみを不公平に取り扱う、いびつで中途半端な制度という印象を与えるものとなっていると考えざるを得ない。 第3-5(3)現在の問題状況の整理 以上に述べたところを総括して、現在の問題状況を整理しておきたい。 第3-5(3)ア本来、国会において合区制の導入を決断した当初から、合区対象県からの反発等のネガティブな反応もある程度は想定されたものと解される。しかし、投票価値の不均衡を解消するためには、都道府県単位の選挙制度を完全には維持できなくなっているという認識(それは平成24年最大判のメッセージでもあった。)に基づき、一定のデメリットは覚悟の上で、憲法違反を回避するための政策判断として、制度改正を実現させたものと考えられる。 しかし、合区制を採用した普通選挙が4回を数える過程で、合区対象県における投票率の低下及び無効投票率の上昇は看過できない弊害として顕在化し、これを背景として、合区制の解消を求める声は、地方政治の場でも国会の議論でも大勢を占めるに至り、もはや合区制を維持することは、政治的に不可能になっているのみならず、投票価値の不均衡とは別の憲法上の疑義をも生じさせていると解される。 第3-5(3)イ他方、平成27年改正による4県2合区の導入が較差の是正に大きく寄与して、それ以前の違憲状態の解消を実現できたこと(平成29年最大判)は、画期的成果であった。また、 平成30年改正後の本件定数配分規定の下での選挙に関する令和2年最大判及び令和5年最大判が、各選挙当時の較差の違憲状態を否定する結論を導く理由の一つとして、「合区の解消を望む意見も存在する中で合区を維持したこと」を挙げているように、投票価値の平等の実現 和2年最大判及び令和5年最大判が、各選挙当時の較差の違憲状態を否定する結論を導く理由の一つとして、「合区の解消を望む意見も存在する中で合区を維持したこと」を挙げているように、投票価値の平等の実現という観点からみると、「都道府県単位」を前提とする選挙区に一部ではあるが修正を加える合区制を導入したことが、大きな前進であったことは紛れもない事実である。単純に合区制を解消して従来の都道府県単位の選挙区に戻るだけでは、投票価値の平等の要請に応えられないことは明らかである。 第3-5(3)ウ平成27年改正以降、投票価値の不均衡の更なる是正と選挙制度の抜本的な見直しに向けた取組の動きが突然減速してしまった根本的な原因は、上記ア、イのジレンマにあったと理解される。平成24年最大判の投げかけを受けて、国会が合区制の導入という形で回答(平成27年改正)を示したのは、司法と立法府の対話(キャッチボール)の在り方として評価すべきものではあったが、合区制の弊害の顕在化等のその後の推移から、合区制の解消に向けて軌道修正をせざるを得ない状況に立ち至ったことは、やむを得ない成り行きであった。現状は、そのような試行錯誤を経て、いわば議論が「振出しに戻った」局面であると解される。 そして、上記アのような問題状況が決定的に明らかとなり、国会内において「合区を解消すべきとの意見が大勢」と整理されたのは、本件協議会の報告書が取りまとめられた令和7年6月の頃(本件選挙の直前)であったと認められる。平成30年改正からこのような議論の集約までに約7年を要してい るが、この間の合区制に対する評価は、合区制の下での選挙を重ねる中で徐々に固まっていったと解される上、合区によって違憲状態の解消をようやく実現できたという流れの中で、少なくとも当初の数年間は、 るが、この間の合区制に対する評価は、合区制の下での選挙を重ねる中で徐々に固まっていったと解される上、合区によって違憲状態の解消をようやく実現できたという流れの中で、少なくとも当初の数年間は、合区自体の解消が現実的な選択肢になりにくかったのもやむを得ない経過であったと解される。本件協議会の報告書が、令和10年の通常選挙に向けて具体的な検討を進めることとしているのは上記のとおりであるが、上記のような事情を総合的に考慮すると、これを単純な結論の先延ばしのように評価するのは適切でないというべきである。 第3-6【現状の課題と今後の議論の筋道】 上記第3-5 で述べた問題状況を前提に、現状の課題に対する今後の議論の筋道を見通してみたい(もちろん、選挙制度を具体的にどのようなものにするかの決定を行うのは国会であり、当裁判所は、制度設計者としてではなく、憲法上の観点からの言及をするものである。)。 第3-6(1)まず、上述の整理に従って現状の課題を端的に示すと、合区制を維持することはもはや不可能と考えざるを得ない一方、これまで合区制の成果によって違憲状態の回避が可能となっていた現実を踏まえ、新たな抜本的な制度の見直しが求められているということである。 第3-6(2)そして、上記課題に取り組むために最も重要となる視点をここで確認しておくと、「都道府県を各選挙区の単位とする仕組みを維持しながら投票価値の平等の要求に応えていくことはもはや著しく困難な状況に至って」おり、「現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ」「る必 要がある」とした平成24年最大判の基本的な認識は、現状においても、そのまま妥当しているということである。 そもそも、このような平成24年最大判の要請に沿って選挙 措置を講じ」「る必 要がある」とした平成24年最大判の基本的な認識は、現状においても、そのまま妥当しているということである。 そもそも、このような平成24年最大判の要請に沿って選挙制度の見直しを進めるための方策は、合区制が唯一絶対の手法だったわけではない。現に、本件協議会の下に設置された専門委員会の報告書では、ブロック選挙区制導入という具体的な選択肢も示されているところである。なお、上記報告書には、都道府県単位の選挙区制を維持すべきとの意見も並記されているが、これを前提に弥縫策的な手当て(若干の定員の増減など)をしても、将来にわたって投票価値の平等の要請に応えていくことは著しく困難と考えざるを得ない。それこそが平成24年最大判の示したメッセージだったはずである。 第3-6(3)上記の点に関連して、被告らは、都道府県単位の選挙制度の意義を強調し、そのような観点から本件定数配分規定の合理性を基礎づけようとする主張を展開している。確かに、都道府県が歴史的にも政治的、経済的、社会的にも独自の意義と実体を有し、政治的に一つのまとまりを有する単位として捉え得ることに照らし、都道府県を構成する住民の意思を集約的に反映させるという意義ないし機能を加味しようとする選挙区制度の設計にも、相応の合理性があるといい得るが、参議院議員の選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請があるわけではなく、むしろ、都道府県を選挙区の単位として固定する結果、その間の人口較差に起因して投票価値の大きな不平等状態が長期にわたって継続していると認められる状況の下では、上記の仕組み自体を見直すことが不 可欠になっているというべきである。このことは、既に平成24年最大判が明らかにしているとおりであり、都道府県単位の選挙制度の意義を強 められる状況の下では、上記の仕組み自体を見直すことが不 可欠になっているというべきである。このことは、既に平成24年最大判が明らかにしているとおりであり、都道府県単位の選挙制度の意義を強調すれば、最大較差3倍を相当程度超えるような投票価値の不均衡を正当化できるなどという幻想を抱くべきではない。 第3-6(4)次に、被告らは、憲法は参議院について多数決原理に基づく衆議院の行き過ぎを抑制する機能を想定しており、参議院議員の選挙制度については人口比例のみでは適切に反映されない国民の意見を反映させるため、投票価値の平等以外の諸要素についても考慮することが求められている旨主張する。 しかし、例えば、衆議院が政策決定機関、参議院が助言・監視機関といった明確な役割分担が存在することを前提とした議論であれば、参議院議員選挙に求められる投票価値の平等は衆議院とは異質なものという立論も成り立ち得るが、我が国の憲法は、立法を始めとする多くの事柄について参議院にも衆議院とほぼ等しい権限を与えており、衆議院だけでなく参議院にも相応の民主的基盤がなければ、代表民主制の正統性を維持することは困難である。この点も、平成24年最大判が指摘するとおりである。 第3-6(5)以上に述べたとおり、参議院議員選挙における投票価値の不均衡の是正と選挙制度の抜本的な見直しの議論が振出しに戻ってしまったのはやむを得ないことであるが、そのスタートラインは、平成24年最大判の問題提起にあることを改めて確認する必要がある。そこで整理済みとなっている議論を蒸し返し、結論を更に先延ばしにするようなことがあれば、違憲の判断も免れないと考えられる。そのデッドラインは、 本件協議会の報告書に明記された令和10年通常選挙までということになろう。 第3 し返し、結論を更に先延ばしにするようなことがあれば、違憲の判断も免れないと考えられる。そのデッドラインは、 本件協議会の報告書に明記された令和10年通常選挙までということになろう。 第3-7【本件定数配分規定の合憲性について】 上記第3-3 で述べたとおり、令和4年選挙から本件選挙の間の最大較差の拡大(3.03倍→3.13倍)は、投票価値の平等の要請の重要性に照らして看過し難いレベルに達しているというべきであるが、この間の推移は、上記第3-5(3)ウに要約したとおりであり、令和4年11月に設置された本件協議会が令和7年6月に報告書を取りまとめ、ようやく問題状況が整理され、本件選挙が行われた同年7月の時点では、上記報告書を踏まえた具体的な検討がこれから始まるという状況であったと考えられる。 このような経緯を踏まえると、本件選挙当時に生じていた較差が違憲の問題を生じかねない程度のものであったかどうかを判断するには時期尚早といわざるを得ず、仮に、違憲状態という評価があり得るとしても、これまでに述べてきたところによれば、本件選挙までの期間内に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えているとはいえないと解される。 よって、本件選挙当時、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。 第4 結論よって、原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第10民事部 裁判長裁判官宮坂昌利 裁判官 宮坂昌利 裁判官 西村修 裁判官 小島清二 (別紙省略)

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