平成27年9月17日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(行コ)第110号政務調査費返還請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(行ウ)第209号)主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,Aに対し,3034円の返還を請求せよ。 3 被控訴人がAに対し3034円の不当利得返還の請求を怠る事実が違法であることを確認する。 第2 事案の概要 1 杉並区の住民である控訴人は,杉並区議会の議員であるA(以下「A議員」という。)に交付された平成24年度の政務調査費につき,その一部(具体的には,平成24年4月から平成25年3月までの事務所家賃の一部として支出された合計51万円の2分の1である25万5000円。以下「本件金員」という。)が法令等に基づかず違法に支出されており,杉並区はA議員に対して不当利得返還請求権を有しているにもかかわらず,杉並区長である被控訴人がその行使を怠っているとして,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,A議員に不当利得返還の請求をすることを求めるとともに,同項3号に基づき,A議員に不当利得返還の請求をすることを怠る事実が違法であることの確認を求めて本件訴訟を提起した。 その後,A議員は,本件金員を政務調査費に係る支出から除外し,同支出の合計額が192万3034円から166万8034円になったとして, 166万8034円と交付を受けた政務調査費192万円との差額である25万1966円について杉並区に返還したところ,控訴人は,なお3034円についてA議員が不当利得をしているとして,請求を減縮し,同額の返還請求をすること及びこれを怠る事実の違法確認を求め 額である25万1966円について杉並区に返還したところ,控訴人は,なお3034円についてA議員が不当利得をしているとして,請求を減縮し,同額の返還請求をすること及びこれを怠る事実の違法確認を求めている。 2 原審は,A議員が25万1966円を返還したことにより杉並区の不当利得返還請求権は消滅したとして,控訴人の請求を棄却した。 これに対し,控訴人が控訴を提起し,上記第1のとおりの判決を求めた。 3 関係法令等の定め,前提事実,争点及び当事者の主張は,次項において当審における控訴人の主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1項から3項までに記載のとおりであるから,これを引用する。 4 当審における控訴人の主張(1) 政務調査費に係る支出が交付金額に達した時点以降は当然に,政務調査費に係る支出をした場合であっても確定的に私費負担となるという考え方は不自然であるようにもみえるが,政務調査費制度については,その実態が,本来の趣旨から外れ,議員による濫用が容易に行われ,あるいは行われ得るものという認識を持って検討することが必要である。 そして,上記濫用を抑制しているのは,市民オンブズマンによる監視活動であるところ,その活動は,情報公開請求により開示された領収書等を劣悪な環境下で確認し,疑義があると現地調査を行うといったことを,個人が費用を負担し相当に時間を掛けて行っているものである。政務調査費に係る支出金額が増え,その全てについて監査する必要があるものとすれば,市民オンブズマンの負担は増加し,その監査の力を減衰させ,政務調査費の透明性を低下させることとなる。原審の判断は,このような結果を招来するものであり,誤りである。議員としても,最初から適正な支出を交付限度額一杯に計上すればいいだけであり,政務調査費と 政務調査費の透明性を低下させることとなる。原審の判断は,このような結果を招来するものであり,誤りである。議員としても,最初から適正な支出を交付限度額一杯に計上すればいいだけであり,政務調査費と して認められない支出を混在させたり,限度額到達後もそのような支出を延々と計上したりすることは,不要であるだけでなく,透明性を失わせるだけである。 (2) 被控訴人は,本件条例12条にいう「政務調査費による支出の総額」とは,本件訂正前報告書では192万3034円であり,本件訂正後報告書では166万8034円であるとするが,原判決は,前者が192万円で,後者が166万5000円と認定したものである。この原判決の認定では,3034円を政務調査費に繰上げ計上しなければ残余額がゼロとならないところ,被控訴人は繰上げ計上はしていないと主張しているのであるから,A議員はなお3034円を不当利得しているというべきである。 (3) 杉並区では,政務活動費について,平成27年度から,交付額の範囲内で収支報告をするよう努めるものとするとして,収支報告に係る事務の取扱いを変更した。これは,使途基準に反する支出を申告した議員にはその支出全額の返還を求めるべきであるという規範意識の現れであり,これに照らしても,A議員は更に3034円を杉並区に返還すべき義務があると解すべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,当審における控訴人の主張について次項のとおり判断するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 控訴人は,原審の判断は政務調査費の透明性を低下させるものであるとして,前記第2の4(1 判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 控訴人は,原審の判断は政務調査費の透明性を低下させるものであるとして,前記第2の4(1)のとおり主張する。 確かに,報告書に交付額よりも多い支出額の記載を認める場合におい て,支出の一部が取り消されたときは,当然に,取り消された部分の全額を返還させるものとする取扱いをすれば,議員において,条例に規定する使途基準に従った支出に当たるか否かをより慎重に検討して報告書の記載をするようになる可能性はあると見込まれる。しかし,本件条例,本件規則等杉並区の政務調査費に係る諸規定に上記のような取扱いを前提とするものがあるといえないことは,上記1で引用する原判決第3の3(2)ウに説示のとおりである。そして,上記使途基準に従った支出に当たるか否かは必ずしも一義的に明確であるとはいえず,上記のような取扱いは,場合により,議員に不測の負担を生じさせることもあるといえ,議員の調査研究活動の基盤の充実を図るという政務調査費制度の目的に反する面があり得ることをも考慮すれば,上記のような取扱いをしないことが直ちに違法であると解することはできず,本件金員につき上記のような取扱いをしないことを違法と解すべき特段の事情を認めるに足りる証拠はない。 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。 (2) 控訴人は,原審が認定した本件訂正後報告書における「政務調査費による支出の総額」が166万5000円であることを前提に,被控訴人が繰上げ計上の主張をしていない以上,A議員には3034円の不当利得が残存する旨主張する。 しかし,原判決第3の2の説示によれば,原審は,本件訂正後報告書により「政務調査費による支出の総額」が166万8034円に訂正さ ていない以上,A議員には3034円の不当利得が残存する旨主張する。 しかし,原判決第3の2の説示によれば,原審は,本件訂正後報告書により「政務調査費による支出の総額」が166万8034円に訂正されたものとして,A議員が25万1966円を返還したことにより杉並区の不当利得返還請求権が消滅した旨の認定判断をしていることは明らかである。 控訴人の上記主張は,前提を欠き,失当である。 (3) 控訴人は,杉並区が平成27年度から政務活動費についての収支報 告に係る事務の取扱いを変更したことを根拠に,A議員には3034円の返還義務がある旨主張する。 証拠(甲20)によれば,杉並区においては,平成24年法律第72号による改正後の地方自治法100条14項所定の政務活動費につき,その収支報告書の支出額の合計の記載について,交付額を超える支出額の計上は常識の範囲内で行うとされていたものを,平成27年度以降,交付額の範囲内で報告するよう努めるものとするとの取扱いに変更したことが認められる。しかし,政務調査費と政務活動費との相違を措くとしても,上記取扱いの変更により,交付額を超えて支出額を計上することが違法とまでされたものとは認められず,上記取扱いの変更をもってA議員に3034円の返還義務があるとする根拠とすることはできない。 控訴人の上記主張は,採用することができない。 第4 結論以上によれば,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部 裁判長裁判官夫 裁判官新谷晋司 裁判官伊藤正晴 判長 裁判官夫 裁判官新谷晋司 裁判官伊藤正晴
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