平成25年4月16日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成21年(行ウ)第3号業務災害保険給付決定取消等請求事件口頭弁論終結日平成25年2月12日判決主文 1 本件訴えのうち介護補償給付の支給決定の義務付けを求める部分を却下する。 2 A労働基準監督署長が原告に対し平成18年6月1日付けでした労働者災害補償保険法に基づく一時金支給決定を取り消す。 3 A労働基準監督署長は,原告に対し,原告がした障害給付の請求について,労働者災害補償保険法施行規則別表第一に定める障害等級第2級の2の2に対応する障害補償年金を支給する旨の決定をせよ。 4 原告のその余の請求を棄却する。 5 訴訟費用は被告の負担とする。事実及び理由第1 請求 1 主文第2項と同旨 2 A労働基準監督署長は,原告に対し,原告が請求した業務災害に関する保険給付について,障害補償年金及び介護補償給付の支給決定をせよ。 第2 事案の概要本件は,原告が,A市内の建設工事現場1階で,同工事現場12階から仮設用電線が頭上に落下した業務上の事故により生じた神経系統の機能の障害を理由に障害補償給付を請求したのに対し,A労働基準監督署長が,原告に残存する障害は労働者災害補償保険法施行規則別表第一に定める障害等級(以下「障害等級」という。)第12級の12に該当するとして,同等級に対応する障害補償一時金の支給決定(以下「本件処分」という。)をしたことに関し,原告において,本件処分には,障害等級を第1級又は第2級とすべきところを第12級の12に該当するとした違法があると主張して,被告を相手方として,本件処分の取消しを求めるとともに,A労働基準監督署長に対し障害補償年金及び介護補償給付の支給決定の義務付けを求めた事案である。 1 争 2に該当するとした違法があると主張して,被告を相手方として,本件処分の取消しを求めるとともに,A労働基準監督署長に対し障害補償年金及び介護補償給付の支給決定の義務付けを求めた事案である。 1 争いのない事実等以下の各事実は,当事者間に争いがないか,又は後掲各証拠により容易に認めることができる。 業務災害の発生(甲1,乙32。争いがない。)原告は,平成14年9月7日午後4時ころ,A市内の建設工事現場1階で業務に従事中,同工事現場12階(高さ約33メートル)から仮設用電線(重量約11.1キログラム)が頭上に落下した(以下「本件災害」という。)。 障害補償給付の請求及び本件処分(甲1,2。争いがない。)原告は,平成17年7月15日,A労働基準監督署長に対し,労働者災害補償保険法に基づく障害補償給付の支給を請求した。 A労働基準監督署長は,原告が本件災害後一貫して痛みを訴えている頚部から両肩にかけて残存する疼痛等につき,障害等級第12級の12(局部にがん固な神経症状を残すもの)に該当するとして,平成18年6月1日,本件処分をした。 審査請求等(甲3。争いがない。)原告は,平成18年8月1日,A労働者災害補償保険審査官に対し,原告に残存する障害は,障害等級第2級の2の2(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,随時介護を要するもの)に該当すると主張して,審査請求をした。 A労働者災害補償保険審査官は,平成19年7月12日,上記審査請求を棄却する決定をした。 再審査請求等(甲4。争いがない。)原告は,平成19年9月10日付けで,労働保険審査会に対し,原告に残存する障害は,障害等級第2級の2の2に該当すると主張して,再審査請求した。 労働保険審査会は,平成20年9月29日,上記再審査請求を棄却する 月10日付けで,労働保険審査会に対し,原告に残存する障害は,障害等級第2級の2の2に該当すると主張して,再審査請求した。 労働保険審査会は,平成20年9月29日,上記再審査請求を棄却する裁決をし,同裁決書は,同年10月1日に原告に送達された。 本件訴訟の提起(顕著な事実)原告は,平成21年3月30日,本件訴訟を提起した。 2 争点及び争点に関する当事者の主張 争点(義務付けを求める処分が特定されているか)(原告の主張)義務付けの訴えにおいて原告が求める「一定の処分」(行政事件訴訟法3条6項)は,裁判所が判断可能な程度に特定すれば足りる。 障害補償年金は,第1級から第7級までの障害等級に応じて支給される(労働者災害補償保険法15条)。また,介護補償給付は,第1級又は第2級の障害等級に該当する場合に支払われる(同法12条の8第4項,同法施行規則18条の3の2,別表第三)。そうすると,介護補償給付の支給決定が義務付けられるのは,障害等級が第1級又は第2級に該当する場合なので,原告が義務付けを求める障害補償年金及び介護補償給付の支給決定は,裁判所が判断可能な程度に特定されている。 (被告の主張)原告の義務付けの訴えは,支給を求める障害補償年金及び介護補償給付について,障害等級を特定しておらず,いかなる処分を求めるのか不明であり,訴訟物の特定を欠く。 争点(介護補償給付の支給決定の義務付けを求めるにつき行政事件訴訟法37条の3第2項の「申請又は審査請求」が認められるか)(原告の主張)原告は障害補償給付の請求をしているところ,同請求には障害補償年金の請求が含まれている。そして,障害補償年金の受給者のうち一定の要件を充たす場合には,介護補償給付の支給が認められる(労働者災害補償保険法1 の請求をしているところ,同請求には障害補償年金の請求が含まれている。そして,障害補償年金の受給者のうち一定の要件を充たす場合には,介護補償給付の支給が認められる(労働者災害補償保険法12条の8第4項)。よって,原告は,障害補償年金の支給が認められた場合に備えて,黙示的に介護補償給付の請求をしている。 (被告の主張)原告は,介護補償給付の請求をしていないから,介護補償給付の支給決定の義務付けを求めるにつき,「申請」をしたという要件を欠く。 争点(本件処分の違法性)(原告の主張)原告は,本件災害により脳脊髄液漏出症(脳脊髄液減少症,低髄液圧症)に罹患し,これにより全身の痛みやしびれのために身体を動かすことができない四肢麻痺の状態に陥っている。原告は,食事,入浴,用便,更衣等に随時介護を要する状態であり,障害等級第2級の2の2に該当する。 これと異なり,原告の障害等級を第12級の12と認定した本件処分は違法である。 (被告の主張)脳脊髄液漏出症と認められるには起立性頭痛の症状が必要であるところ,原告には同症状は認められない。また,原告には,脳脊髄液漏出症に有効とされるブラッドパッチ療法による症状の改善が認められない。さらに,原告の脳槽シンチグラフィー画像は,厚生労働省の脳脊髄液漏出症に関する研究班が採用した脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準(後記第3の3カ)を充たさない。 仮に,原告が本件災害により脳脊髄液漏出症を発症していたとしても,原告に四肢麻痺が生じているとはいえないし,さらに四肢麻痺が生じていたとしても,それは脳脊髄液漏出症によるものではないから,本件災害との業務起因性がない。 よって,原告の障害等級を第12級の12とした本件処分は適法である。 第3 当裁判所の判断 1 争点 しても,それは脳脊髄液漏出症によるものではないから,本件災害との業務起因性がない。 よって,原告の障害等級を第12級の12とした本件処分は適法である。 第3 当裁判所の判断 1 争点(義務付けを求める処分が特定されているか)原告は,障害補償年金及び介護補償給付の支給決定の義務付けを求めているところ,介護補償給付の支給は,請求者の障害の程度が,障害等級第1級又は第2級に該当することが要件となっている(労働者災害補償保険法12条の8第4項,同法施行規則18条の3の2,別表第三)。また,原告は,再審査請求において,再審査請求の理由として,原告の障害等級が第2級に該当することを主張していた(甲4)。 そうすると,原告は,本件訴訟において,障害等級第1級又は第2級に応じた障害補償年金及び介護補償給付の支給決定の義務付けを求めているものと解される。 よって,原告が義務付けを求める支給決定の内容は,裁判所の審理,判断が可能な程度に特定されていると認められる。 2 争点(介護補償給付の支給決定の義務付けを求めるにつき行政事件訴訟法37条の3第2項の「申請又は審査請求」が認められるか)労働者災害補償保険法施行規則18条の3の5第1項は,障害補償年金を受ける権利を有する者が介護補償給付を請求する場合における当該請求は,当該障害補償年金の請求と同時に,又は請求をした後に行わなければならないとし,同2項及び3項は,介護補償給付の支給を受けようとする者は,所定の事項を記載した請求書を,所定の資料を添付して,所轄労働基準監督署長に提出しなければならないと規定している。 上記各規定に照らせば,障害補償年金の請求に,介護補償給付の請求が含まれると解することはできない。 そうすると,原告は,介護補償給付につき申請又は審査請求(行政事件訴訟 ばならないと規定している。 上記各規定に照らせば,障害補償年金の請求に,介護補償給付の請求が含まれると解することはできない。 そうすると,原告は,介護補償給付につき申請又は審査請求(行政事件訴訟法37条の3第2項)をしたとは認められない。 よって,原告の訴えのうち,介護補償給付の支給決定の義務付けを求める部分は,訴訟要件を欠き不適法である。 3 争点(本件処分の違法性) 認定事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,前記第2の1記載の各事実のほか,以下の各事実が認められる。 ア B病院での所見等(平成14年9月7日から同月9日まで。乙3の1)原告は,本件災害当日の平成14年9月7日,B病院を受診し,頭部・右手・左膝打撲,頚椎捻挫と診断された。頚部は痛みにより可動域が低下していたが,自動運動は可能であった。その他に特異な症状は確認されなかった。原告は,同日,一旦は帰宅したが,痛みが強く自制できない状態であったため,同月9日,B病院を受診し,頭部や頚部,腰部,手等の痛みを訴え,C病院への入院を希望した。B病院の主治医は,同日,傷病名を「頭部,頚部,背部,腰部,右手,左膝挫傷」とするC病院宛ての診療情報提供書を作成した。 イ C病院での所見等(平成14年9月9日から同月21日まで。乙3の2[以下頁数のみ記す。]) 原告は,平成14年9月9日,C病院を受診し,頚部挫傷,腰背部挫傷,頭部打撲,右手・左膝挫傷と診断され,入院した。原告は,入院時,全身に打ち身による痛みを訴えていたが,痛みは自制内であり,ゆっくりと行動すれば,日常生活動作(ADL)や歩行に問題はなかった。 (1,9,11頁) 原告は,同月10日午後2時ころ,頚部に重い感じはあるが,両上肢に異常はなく,自制内ではあるが頭痛があると訴え,脳外科の ば,日常生活動作(ADL)や歩行に問題はなかった。 (1,9,11頁) 原告は,同月10日午後2時ころ,頚部に重い感じはあるが,両上肢に異常はなく,自制内ではあるが頭痛があると訴え,脳外科の受診を希望した。また,歩行はゆっくりであればスムーズに行えるが,時々,カクッと膝の力が抜けるような気がすると訴えた。(11頁)原告は,同日午後8時ころ,頭痛や吐き気,末梢部のしびれはないが,頚部痛は変わらず,歩行時に左膝の力が抜けたようになると訴え,看護師は,歩行器使用を促した。(11頁) 原告は,同月11日,頭痛を訴えたが,同日午後8時ころには,頭部及び頚部の痛みはないと述べた。原告は,同日歩行器を使用していた(3,11頁) 原告は,同月12日,終日頚部痛を訴え,頭部及び頚部のMRI検査を施行された。その結果,脳内には病変は確認されなかったが,頚椎には脊椎管狭窄,一部に椎間板突出が確認された。原告は,歩行時に右下肢の脱力感を訴え,歩行器を使用しても安定しないことから車椅子を使用した。(3,6,12頁) 同月13日,原告の頚部痛及び下肢の脱力感は変わらないままであった。(12頁) 原告は,同月14日,頚部痛を訴えて薬を服用するも徐々に痛みが増すと訴えた。また,しびれの訴えはなかったが,左下肢の脱力感は変わらないままであった。(12頁) 同月15日,原告の頚部痛や左下肢脱力感は変わらないままであった。 徒手筋力検査の結果は,5(正常)であった。(13頁) 原告は,同月16日から同月21日に希望で退院するまでの間,おおむね下肢の脱力感が持続し,頚部痛も自制内で変化がなかった。(13,14頁)ウ D病院での所見等(平成14年9月27日から平成17年7月4日まで。 乙3の3[以下頁数のみを記す。]) ,おおむね下肢の脱力感が持続し,頚部痛も自制内で変化がなかった。(13,14頁)ウ D病院での所見等(平成14年9月27日から平成17年7月4日まで。 乙3の3[以下頁数のみを記す。]) 原告は,平成14年9月27日,D病院を受診し,頚部挫傷,右示指亀裂骨折,左膝挫傷と診断され,入院した。原告は,頚部に常に痛みがあり,歩行時に左膝が抜けるような感じになるので歩きにくいと訴えた。 (1,18,19頁) 原告は,同月28日から同年11月9日に退院するまでの間,頚部,肩部,背部,腰部にかけて痛みを訴え,同月6日には自制不可の痛みを訴えた。また,左下肢の脱力を訴え,松葉杖を使用せず,手すりにつかまるなどして自力歩行することもあったが,松葉杖を使用して歩行することもあり,その際,力が抜けて左膝が折れることがあった。ただ,原告が四肢のしびれを訴えた形跡はない。(19ないし22頁) 原告は,同月12日,歩行困難な状態であり,頚部に可動域制限が認められた。(4頁) 原告は,同年12月4日,視覚的評価スケール(VisualAnalogueScale)で,10点満点中8点とされ,少ししか良くなっていないと述べた。また,MRI検査を施行された結果,左第5・第6頚椎,右第4ないし第7頚椎に圧迫所見が確認された。左膝の自発痛はなかったが,膝折れ症状の疑いがあった。(7頁) 原告は,同月18日,左膝のMRI検査を施行されたが,異常は確認されず,外傷後末梢神経障害と診断された。また,大腿四頭筋,前㴪骨筋,拇趾伸筋についての徒手筋力検査の結果は,いずれも5(正常)であった。(1,9頁) 原告は,平成15年1月以降も,頚部,肩,背部,腰部,膝の痛み,下肢のしびれ,膝折れがあり,松葉杖やステッキを使用する状態が続いた。( 検査の結果は,いずれも5(正常)であった。(1,9頁) 原告は,平成15年1月以降も,頚部,肩,背部,腰部,膝の痛み,下肢のしびれ,膝折れがあり,松葉杖やステッキを使用する状態が続いた。(31ないし39頁) 同年3月25日時点の原告の握力は,右51.5キログラム,左52キログラムであった。(39頁) 同月29日,原告の徒手筋力検査の結果は,左右とも,僧帽筋及び三角筋は4(良好。若干の抵抗を加えても重力に打ち勝って運動できる状態。),上腕二頭筋及び上腕三頭筋は5(正常)であった。(41頁) 原告は,同日,頚椎MRI検査を施行され,第5・第6頚椎に突出が確認された。(41頁) 同年4月18日時点の原告の握力は,右50キログラム,左49キログラムであった。(44頁) 原告は,同年5月14日,頭痛,第2指から第5指にかけてのしびれ,左膝痛を訴えた。(48頁) 原告は,同年6月11日,左膝の脱力感を訴えた。また,同日の徒手筋力検査では,大腿四頭筋,前㴪骨筋及び拇趾伸筋のいずれも,右5(正常),左4(良好),膝蓋腱反射とアキレス腱反射は左右とも3(やや良好。抵抗を与えなければ重力に抗して完全に運動ができる状態。)であったが,左は力の入れ方が不自然であった。(52,53頁) 原告は,同年7月12日,腰痛のため日常生活動作(ADL)も不自由と訴えた。(58頁) 同年8月29日,原告の徒手筋力検査の結果は,膝蓋腱反射及びアキレス腱反射は左が3(やや良好)であった(右は不明である。)。(61頁) 原告は,同年9月4日,腰椎MRI検査を施行された結果,ヘルニア像が認められ,腰部挫傷と診断された。同日時点の原告の握力は,右46キログラム,左43キログラム,徒手筋力検査の結果は,大腿四頭筋が右5,左 ,同年9月4日,腰椎MRI検査を施行された結果,ヘルニア像が認められ,腰部挫傷と診断された。同日時点の原告の握力は,右46キログラム,左43キログラム,徒手筋力検査の結果は,大腿四頭筋が右5,左4,屈筋が左右ともに5,前㴪骨筋及び拇趾伸筋は力が入らず震えて,測定結果は不明であった。(62,63,103頁) 原告は,同年10月24日,左足のしびれと頚部痛を訴えた。同日時点の原告の握力は,右48キログラム,左52キログラムで,右上肢の温覚が弱かった。徒手筋力検査の結果は,上腕二頭筋及び上腕三頭筋は左右共に5(正常)であった。(68頁) 原告は,同年11月14日,頚部,背部,腰背部に痛み,左膝伸展に伴う膝蓋骨の痛みを訴えた。右前腕の温覚が鈍く,両側にしびれがあった。(70頁) 原告は,同年12月5日,頚部,背部,腰背部に痛みを訴えた。両手に震えが見られるが,しびれの有無はっきりしない状態であった。握力は,右38.5キロ,左40キロであり,ロフストランド杖を右側に使用していた。(73頁) 同月26日,原告の両手の振戦が軽減した。(76頁) 平成16年1月30日,原告の左下肢にジストニア(筋の持続的な収縮による不随意運動)を疑われる症状があり,原告は,頚部,背部の痛みは変わらず,左顔面に痙攣があると訴えた。(80頁) 原告は,同年3月12日,頚部から背部にかけて痛みが増強していると訴えた。(85頁) 同年4月16日時点の原告の握力は,右30キログラム,左37.5キログラムであった。原告は,頚部から背部にかけての痛み,腰部のしびれを訴えた。(88頁) 原告は,同年5月28日,2週間前にリハビリしていて,頚部がパキッと音が鳴り,頚部痛,両手のしびれが増強したと述べ,腰部,両足底部,両手のしびれ けての痛み,腰部のしびれを訴えた。(88頁) 原告は,同年5月28日,2週間前にリハビリしていて,頚部がパキッと音が鳴り,頚部痛,両手のしびれが増強したと述べ,腰部,両足底部,両手のしびれ,左膝の裏側の感覚異常を訴えた。原告は,スプーンで食事し,コップも重く持てない状態であると述べた。(91頁) 原告は,同年6月16日,全身の痛みと両手のしびれを訴えた。(92頁) 原告は,同月19日,四肢にしびれを訴え,ロフストランド杖で自力歩行可能であるが,不安定であった。両上肢とも知覚は失われていないが,手指にジストニアが見られた。MRI検査の結果,左頚椎に圧迫所見が認められたが,異常陰影はなかった。(93頁) 同月30日時点の原告の握力は,右7キログラム,左12.5キログラムで,手指の関節痛があった。(95頁) 原告は,同年7月23日,ロフストランド杖1本で何とか自力歩行可能な状態であるが,左膝の装具を希望する旨申し出た。そして,左膝神経病性関節症,右母指対立不全と診断された。(77,95,96頁) 原告は,同年9月8日,腰部硬膜外ブラッドパッチを施行された。施行直後は,後頭部から背部への痛みがなくなったが,しびれは変わらず,その後も,顕著な症状の改善は見られなかった。(117ないし119,127ないし129頁) 原告は,同月15日,頚部硬膜外ブラッドパッチを再度施行されたが,顕著な症状の改善は見られなかった。(119ないし123,130,131頁) 原告は,その後も症状が改善せず,頚部,背部,腰部の痛み,両手のしびれ,振戦,左膝の折れ,知覚異常の状態が継続した。(100ないし102,108ないし112頁) 原告は,平成17年4月16日,両下肢を独力で動かせず,独力で起立,歩行ができ の痛み,両手のしびれ,振戦,左膝の折れ,知覚異常の状態が継続した。(100ないし102,108ないし112頁) 原告は,平成17年4月16日,両下肢を独力で動かせず,独力で起立,歩行ができない状態で,両手の握力は0キログラムであった。(112頁) 原告は,同年7月4日,痛みのため歩行できず,立ち上がりや移乗動作も独力では不可能な状態であった。握力,ピンチ力(物をつまむ力)はいずれも0キログラムで,母指・示指,母指・中指でのつまみ動作は可能であるが,力は弱くわずかに触れている程度である。手指にわずかな力を入れるだけで,頚部に痛みがあると訴えた。右側にロフストランド杖,左側に介助者の肩を借りて歩行しようとするも,腰の痛みが強く足を踏み出すこともできない状態であった。同日,症状固定と診断された。(103,114,115頁)エ E病院での検査結果等 原告は,平成15年12月22日,E病院で,筋電図検査を受けた。 検査に当たった同病院のF医師は,両上肢に下位運動神経障害は認められないと診断した。(乙2・9丁表) F医師は,D病院の医師として,平成16年4月21日,A労働基準監督署長に対し,MRI検査上,腰部椎間板ヘルニアは認められないとの意見書を提出した。(乙2・141丁表裏) 原告は,平成18年2月20日から同年3月10日まで,E病院に検査入院した。同年2月20日に原告を診察した同病院のG医師は,左口角部に痙攣又は不随意運動があること,握力は右が0キログラム,左が0.2キログラムであることを確認した。(乙42・7頁)検査に当たった同病院のH医師は,神経学的所見として,四肢麻痺がある,四肢の全ての筋において5分の3程度の筋力低下がある,筋萎縮や繊維束攣縮は認められない,両前腕及び左下腿に知覚低下,時 ・7頁)検査に当たった同病院のH医師は,神経学的所見として,四肢麻痺がある,四肢の全ての筋において5分の3程度の筋力低下がある,筋萎縮や繊維束攣縮は認められない,両前腕及び左下腿に知覚低下,時に知覚異常がある,腱反射は正常であるが,左膝蓋腱反射にやや亢進の疑いがあると診断した。他方,MRI検査,脳血流検査,筋電図検査の結果は,第5・第6頚椎,第3・第4腰椎に軽度の椎間板ヘルニアを認める以外に異常所見は認められず,同医師は,四肢麻痺,両上肢,左下肢の感覚低下,感覚異常の原因となる器質的病変は認められないと診断した。(乙2・11丁裏)また,脳神経外科から紹介を受けて原告を診断した同病院のF医師及びI医師は,神経学的所見を裏付ける器質的な病態を確認できないと回答した。(乙42・15,17頁)なお,平成18年3月10日,原告には,左膝蓋腱反射に亢進,右膝蓋腱反射,左右アキレス腱反射にやや亢進が認められ,両手に知覚鈍麻が認められた。(乙42・20頁)オ脳槽シンチグラフィー検査原告は,平成18年12月18日,C病院で,脳槽シンチグラフィー検査(腰椎穿刺により脊髄腔内に注入した放射性同位元素であるラジオアイソトープ[RI]の分布状況を画像化し,髄液の流れを確認する検査)を受けた(乙14の1ないし6)。 カ脳脊髄液漏出症の主な診断基準等 国際頭痛学会が発表した国際頭痛分類のうち特発性低髄液圧性頭痛(髄液漏れの原因が不明なもの)の診断基準は,別紙1のとおりである(乙7)。 Mokri博士は,脳脊髄液漏出症について,①起立性頭痛,②髄液圧の低下,③ガドリニウム造影剤による硬膜の増強効果のうち,3つすべてを満たすもの及び2つを満たすものの4つの病型に分類できることを発表した(甲17・23頁,乙31・11頁)。 ①起立性頭痛,②髄液圧の低下,③ガドリニウム造影剤による硬膜の増強効果のうち,3つすべてを満たすもの及び2つを満たすものの4つの病型に分類できることを発表した(甲17・23頁,乙31・11頁)。 日本神経外傷学会(現日本脳神経外傷学会)は,脳脊髄液減少症の診断基準を作成するため,頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会を設置し,同部会は,別紙2の外傷に伴う低髄液圧症候群の診断基準を発表した(乙9)。 篠永正道医師を委員長とする脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会は,別紙3の診断基準を作成した(甲16)。 厚生労働省の研究班である「脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究班」(以下「厚生労働省研究班」という。)は,厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業として,脳脊髄液漏出症の研究を行い,平成23年10月ころ,中間報告を発表した。同中間報告では,暫定的なものとして,別紙4の診断基準(以下「厚生労働省中間報告基準」という。)が発表された。日本脳神経外科学会等8つの学会が同基準を了承・承認した。(甲22,乙33) 検討ア原告は脳脊髄液漏出症を発症しているか 脳脊髄液漏出症の診断基準脳脊髄液漏出症は,その病態等が未だ解明されておらず,診断基準についても,従来,様々なものが提唱され,医学界における統一的な基準が存在しない状況であった(前記カないし)。そのような状況下で,厚生労働省研究班は,脳脊髄液漏出症の科学的根拠に基づく診断基準を作成することを目的として研究を行い(乙33・本文1頁),その研究結果として,厚生労働省中間報告基準を発表した(前記カ)。 このような経緯にかんがみれば,脳脊髄液漏出症の発症の有無を検討するについては,まずは厚生労働省中間報告基準に則って判断をす ,その研究結果として,厚生労働省中間報告基準を発表した(前記カ)。 このような経緯にかんがみれば,脳脊髄液漏出症の発症の有無を検討するについては,まずは厚生労働省中間報告基準に則って判断をすることが適切であると解される。ただし,同基準は,脳脊髄液漏れが確実な症例を診断するための厳格な基準であり,その周辺病態の取り扱いに関しては更なる検討が必要とされたことに十分留意する必要がある(乙33・本文5頁)。 原告に関する検討a まず,原告の脳槽シンチグラフィー画像を検討するに,RI注入3時間後の背面像の腰部に,左側のみに飛び出した像が認められる(乙14の4,証人J3,4頁)。 よって,原告には「非対称性のRI異常集積」が認められ,厚生労働省中間報告基準によれば,脳脊髄液漏出症の「疑」所見が認められる。 b 次に,RI注入24時間後の画像を見ると,円蓋部のRI集積が遅延していること(頭部向きの流れが弱いこと)が認められる(甲17・34ないし39頁,乙14の6,乙4・10,11頁,証人J12,14頁)。 この点について,K病院のL医師は,円蓋部のRI集積遅延の原因は脊柱管の狭窄による髄液の通過障害であると指摘するが(乙4・11頁),原告の脊柱管狭窄の程度は軽度であり,髄液の通過障害が起こるとは考え難い(甲18・13,14頁,乙31・28頁)。 よって,原告には,脳脊髄液漏出症の「疑」所見に加えて,「脳脊髄液循環不全」が認められるので,脳脊髄液漏出症の「強疑」所見となる。 c さらに,RI注入30分後の画像を見ると,膀胱内の位置にRIの像が認められる(乙14の1)。 厚生労働省中間報告基準では,RI注入後2時間半以内の「膀胱内RI集積」は,参考所見にとどめ,単独では異常所見とはしないとされているが,上記abと 内の位置にRIの像が認められる(乙14の1)。 厚生労働省中間報告基準では,RI注入後2時間半以内の「膀胱内RI集積」は,参考所見にとどめ,単独では異常所見とはしないとされているが,上記abと併せて考えると,少なくとも本件における「早期膀胱内RI集積」の所見は,原告が脳脊髄液漏出症を発症していることを裏付けるものと見ることができる。 d 以上によれば,厚生労働省中間報告基準に従うと,原告のRIシンチグラフィー画像には,「非対称性RI異常集積」と「脳脊髄液循環不全」が認められるので,原告には脳脊髄液漏出の「強疑」所見があり,原告は脳脊髄液漏出症の「疑」があると判断される。これと「早期膀胱内RI集積」の所見を併せて考えると,原告は脳脊髄液漏出症を発症している蓋然性が高いというべきである。 被告の主張に対する検討a 被告は,原告の脳槽シンチグラフィー画像は対称性のRI集積を示していると主張し,腰部の片側のみに突出する像が描出された原因として,硬膜外へのRI注入,硬膜下へのRI注入又は穿刺部からの脳脊髄液の漏出の可能性を指摘し,M病院のN医師(乙31)及びL医師(乙34)も,同様の意見を述べる。 しかし,厚生労働省中間報告基準は,「腰部両側対称性の集積(クリスマスツリー所見等)」を参考所見にとどめる理由として,上記3点を指摘しているが,原告に認められる非対称性のRI異常集積に関して,その点を考慮すべきとはしていない。これは,厚生労働省研究班が,硬膜外へのRI注入,硬膜下へのRI注入及び穿刺部からの脳脊髄液の漏出は,すべて穿刺部である腰部において生じるものであり,しかも,非対称性の漏出を惹起しない(対称性の漏出を惹起する)と解釈したことを意味している。よって,被告の上記主張は採用できない。 b また,被告は,厚生労 刺部である腰部において生じるものであり,しかも,非対称性の漏出を惹起しない(対称性の漏出を惹起する)と解釈したことを意味している。よって,被告の上記主張は採用できない。 b また,被告は,厚生労働省中間報告基準において,起立性頭痛が脳脊髄液漏出症の前提であり,必須の要件であると主張する。 確かに,脳脊髄液が漏出する状態で,臥位から立位に移行すると,頭の位置が漏出部位より相対的に高くなり,脳脊髄液の漏出が増加するため,頭蓋内から脊髄腔に向かい脳脊髄液が移動し,脳組織も下方に変位することで頭痛が生じると一般に説明されている(乙33・本文57頁等)。また,厚生労働省研究班の総括研究報告書では,「座位または立位により発生,あるいは増悪する頭痛を主訴とする患者」を研究対象患者としている(乙33・本文2頁)。 しかし,厚生労働省研究班が起立性頭痛のある患者を研究対象としたのは,起立性頭痛のある者は,脳脊髄液漏出の疑いが強いと推測されるからにすぎず,起立性頭痛を脳脊髄液漏出の要件としているとは解されない。また,同研究班が脳脊髄液漏出症の科学的根拠に基づく診断基準を作成することを目的として研究を行い,画像判定基準・画像診断基準を発表したことにかんがみれば(乙33・本文1頁),起立性頭痛という患者の主訴を診断の要件にしたとは解されない。さらに,脳脊髄液漏出症が起立性頭痛を必ず伴うものでない点は,N医師(乙31・42頁)及びL医師(乙34・4頁)ともに認めている。 よって,厚生労働省中間報告基準は,起立性頭痛を脳脊髄液漏出症の前提又は必須の要件としていないというべきであり,被告の上記主張は採用できない。 c さらに,被告は,原告がブラッドパッチによる症状の改善がないと主張する。 しかし,このような被告の主張は,ブラッドパッチによる症 いというべきであり,被告の上記主張は採用できない。 c さらに,被告は,原告がブラッドパッチによる症状の改善がないと主張する。 しかし,このような被告の主張は,ブラッドパッチによる症状の改善があれば脳脊髄液漏出症と診断し,改善がなければ同症と診断しないという考え方が問題視され,厚生労働省研究班の研究が進められたことと相反するものである(乙33・本文14頁)。また,そもそもブラッドパッチで治癒しない症例が確認されている(同・本文59頁)。 よって,被告の上記主張は採用できない。 小括以上によれば,原告は脳脊髄液漏出症を発症していると認められる。 イ本件災害と脳脊髄液漏出症との間に因果関係があるか上記のとおり,原告は,脳脊髄液漏出症を発症していると認められるところ,脳脊髄液漏出が外傷により生じ得ること(乙33・本文57,110ないし115頁),重量約11.1キログラムの電線が約33メートル上から原告の頭上に落下したという本件災害の態様(前記第2の1),本件災害から原告が平成18年12月18日にC病院で脳槽シンチグラフィー検査を施行されるまでの症状経過(前記アないしエ)等に照らせば,原告は,本件災害により脳脊髄液漏出症を発症したと認めることができる。 ウ原告の症状と脳脊髄液漏出症との間に因果関係があるか 原告に関する検討原告は,本件災害により脳脊髄液漏出症を発症し,症状固定と診断された平成17年7月4日時点で,独力で四肢を動かすことができず,両手の握力は0キログラムで,食事,入浴,用便,更衣等について,妻の介護を要する状態にあった(前記ウ,甲10,15,25,原告本人)。 そして,これらの症状が原告に生じた原因は,後記のとおり,本件災害以外にはうかがわれず,本件災害により発症した脳 介護を要する状態にあった(前記ウ,甲10,15,25,原告本人)。 そして,これらの症状が原告に生じた原因は,後記のとおり,本件災害以外にはうかがわれず,本件災害により発症した脳脊髄液漏出症が原因となって上記症状が生じていると認められる。 なお,確かに,脳脊髄液の漏出と原告の症状との因果関係を科学的に証明することはできない。しかし,中枢神経系にはリンパ管が存在しないから,脳脊髄液を介した代謝産物や有害物質の排除が中枢神経系の正常な機能を保つための重要な役割を担っていること(乙4・12頁),脳脊髄液が中枢神経系を危険にさらす外力を吸収分散させる緩衝器として働き,中枢神経系を物理的に保護していると考えられること,脳脊髄液の量の変化が頭蓋及び脊柱管の収容能力を調整していると考えられること等に照らせば,脳脊髄液の恒常的な漏出が神経系統の機能に著しい障害を惹起する可能性は十分考えられる。現に,原告には本件災害3日後から左下肢の脱力による歩行障害が生じ(前記イ),その後も,知覚異常,握力・筋力低下,振戦が確認され(前記ウエ),これらの症状は,原告の神経系統の機能に障害が生じていることを裏付けるものである。 そうすると,原告は,脳脊髄液の恒常的な漏出という「せき髄症状のため」に,「生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について,随時介護を要する」状態にあると認められる。 よって,原告は,「神経系統の機能に著しい障害を残し,随時介護を要する」状態にあり,その障害等級は第2級の2の2に該当すると認められる。 被告の主張に対する検討a 被告は,脳脊髄液漏出症によって四肢麻痺や重篤な四肢運動障害を呈する症例は確認されていないと主張する。 しかし,脳脊髄液漏出症の病態等が未だ完全に解明されていないこと,脳脊髄液漏出症を 検討a 被告は,脳脊髄液漏出症によって四肢麻痺や重篤な四肢運動障害を呈する症例は確認されていないと主張する。 しかし,脳脊髄液漏出症の病態等が未だ完全に解明されていないこと,脳脊髄液漏出症を発症している患者に,歩行困難,上肢のしびれ,顔面非対称,排尿障害等の神経系統の障害に由来すると推察される各症状が確認されていること(乙33・本文3,4頁)に照らせば,現に原告と同様の症例が報告されていないことのみをもって,原告の症状と脳脊髄液漏出症の因果関係を否定するのは相当でない。よって,被告の上記主張は採用できない。 b また,被告は,原告に四肢麻痺が発症していることを裏付ける他覚的所見がないと主張する。 確かに,労働者災害補償保険法施行規則別表第一は,障害等級第2級2の2について,「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,随時介護を要するもの」と規定し,労働省労働基準局長通知(障害等級認定基準〔労働者災害補償保険法〕・昭和50年9月30日基発第565号)は,「せき髄の障害」について,「せき髄症状のため,生命維持に必要な身のまわり処理の動作について,随時介護を要するもの」が障害等級第2級の2の2に該当するとし,その例として,「中等度の四肢麻痺が認められるもの」,「軽度の四肢麻痺であって,食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの」,「中等度の対麻痺であって,食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの」を列挙し,「原則として,脳の身体性機能障害と同様に身体的所見及びMRI,CT等によって裏付けることのできる麻痺の範囲と程度により障害等級を認定することとなる」としている。 しかし,上記通達は,「せき髄損傷が生じた場合の障害等級の認定」について定めたものであり,厚生労働省中間報告基準が発表された現在,原告 範囲と程度により障害等級を認定することとなる」としている。 しかし,上記通達は,「せき髄損傷が生じた場合の障害等級の認定」について定めたものであり,厚生労働省中間報告基準が発表された現在,原告のように,脊髄自体が損傷されていない場合に,上記通達が列挙した例を形式的に適用するのは相当でない。 原告が本件災害により脳脊髄液漏出症を発症し,これにより「随時介護を要する」状態になったことが認められる以上,原告の障害等級を第2級の2の2と認定するについて,原告に四肢麻痺が発症していることを要件とするのは相当でないというべきである。 よって,上記通達をもって,原告に四肢麻痺が発症していることを裏付ける他覚的所見を要求する被告の主張は失当である。 c さらに,被告は,原告が本件災害前から脊柱管狭窄症を患っていたこと,本件災害から約1年8か月経過したころから原告の症状が急激に悪化したこと,リハビリ治療中の無理な頚部の動きをもたらす手技が実施されたことを理由に,本件災害により脊柱管狭窄症が徐々に悪化し,リハビリにより頚部に外力が加わることで脊柱管狭窄症がさらに増悪し,運動障害が悪化した可能性を主張する。 しかし,まず,原告には脊柱管狭窄の素因があるが,狭窄の程度は軽度であり,これ自体で運動障害が生じるおそれは低いというのであるから(乙43の1・8頁),当該素因が存在することを理由に,本件災害と原告の症状の因果関係を否定するのは相当でない。また,原告の脊柱管狭窄症が悪化したこと及び原告の脊柱管狭窄症を悪化させるようなリハビリが実施されたことを認めるに足りる証拠はない。むしろ,O大学のP医師は,平成14年12月4日から平成18年2月28日にかけて撮影された頚部のMRI画像を比較しても,同期間において頚椎の狭窄が進行したと判断することは 認めるに足りる証拠はない。むしろ,O大学のP医師は,平成14年12月4日から平成18年2月28日にかけて撮影された頚部のMRI画像を比較しても,同期間において頚椎の狭窄が進行したと判断することはできないと結論付けている(乙43の1・13,20頁)。したがって,仮にリハビリの実施により頚部に負荷が加わったとしても,それが原告に重篤な症状をもたらす大きな要因になったとは認め難い。 エまとめ以上によれば,原告は,脳脊髄液の恒常的な漏出という「せき髄症状のため」に,「生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について,随時介護を要する」状態にあると認められ,その障害等級は第2級の2の2(神経系統の機能に著しい障害を残し,随時介護を要するもの)に該当すると認めることができる。 そうすると,原告に残存する障害を障害等級第12級の12(局部にがん固な神経症状を残すもの)に該当するとした本件処分は違法であり,A労働基準監督署長は,原告に対し,原告が行った障害補償給付の請求について,障害等級第2級の2の2に対応する障害補償年金を支給する旨の決定をすべきことが明らかであると認められる。 第4 結論以上によれば,本件訴えのうち介護補償給付の支給決定の義務付けを求める部分は不適法であるからこれを却下し,本件処分の取消しを求める請求は理由があるからこれを認容し,障害補償年金の支給決定の義務付けを求める請求は,障害等級第2級の2の2に対応する障害補償年金の支給決定の義務付けを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余(障害等級第1級に対応する障害補償年金の支給決定の義務付けを求める部分)は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。和歌山地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官髙 主文 障害補償年金の支給決定の義務付けを求める部分)は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 理由 和歌山地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官髙橋善久 裁判官永野公規 裁判官森本健
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