昭和49(オ)797 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
昭和50年7月14日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 昭和48(ネ)1572
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判決文本文2,865 文字)

主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人齋藤尚志の上告状及び上告理由書記載の上告理由について原審の適法に確定したところによれば、(一)被上告人a町の町長である訴外D(以下「D」という。)は、昭和四四年三月ごろ自己の金融業者に対する借金の返済に腐心した末、同人が代表取締役で休業中のE観光開発株式会社(以下「E観光開発」という。)名義で約束手形を振り出し、町長の公印を不正に使用して被上告人名義で裏書したうえ、右手形の割引による金策を考えるに至つた、(二)横浜市内に居住する一審被告F(以下「F」という。)は、同年三月末ごろ知人である訴外Gを介して前記Dよりいずれも振出人E観光開発、第一裏書人a町、支払場所H信用金庫本店の金額一五〇万円の約束手形二通と金額一〇〇万円の約束手形一通の割引を依頼されたので、みずから右各手形の第二裏書人欄に署名押印したうえ、そのころ以前に数回手形を割引いて貰つたことがあり、同じく横浜市内に居住する上告人方に赴いて上告人にその割引を依頼した、(三)ところが、上告人は、右各手形の振出人たるE観光開発の代表者と第一裏書人たるa町の町長が同一人であり、かつFがこれを所持していることに疑念をいだき、Fにその理由を質したところ、Fは、「本件手形は、いずれもE観光開発がa町から町有地の払下を受けた際、その代金としてa町に差し入れたもので、その後、自分が施行したa町の河川工事の代金としてこれを受領したものである。」と虚偽の事実を告げたが、上告人はその言を信用せず、同人に対し右手形の原因関係についてのDの確認書を要求した、(四)上告人は、翌日みずからDに電話して同人よりFの言にそう趣旨の回答を得たが、その後Fの要請でDが作成した被上告人の町長 言を信用せず、同人に対し右手形の原因関係についてのDの確認書を要求した、(四)上告人は、翌日みずからDに電話して同人よりFの言にそう趣旨の回答を得たが、その後Fの要請でDが作成した被上告人の町長名義の確認書をFから受け取つたうえ、- 1 -本件手形がいずれも被上告人によつて適法に裏書交付されたものと誤信し、同年四月五日ごろ前記一〇〇万円の手形につき割引金八五万円をFに交付し、更に上告人は、振出人・第一裏書人・支払場所が右手形と同一の金額五〇万円の約束手形につき、前回同様それが被上告人によつて適法に裏書交付されたものと誤信し、なんらの調査をすることなく、割引金として、同年五月七日三〇万円、同月一三日一三万六〇〇〇円をFに交付したところ、右各手形はいずれも取引解約後の事由により支払を拒絶されたため、上告人は合計一二八万六〇〇〇円の損害を被つた、というのである。 Fに交付し、更に上告人は、振出人・第一裏書人・支払場所が右手形と同一の金額五〇万円の約束手形につき、前回同様それが被上告人によつて適法に裏書交付されたものと誤信し、なんらの調査をすることなく、割引金として、同年五月七日三〇万円、同月一三日一三万六〇〇〇円をFに交付したところ、右各手形はいずれも取引解約後の事由により支払を拒絶されたため、上告人は合計一二八万六〇〇〇円の損害を被つた、というのである。ところで、地方公共団体の長のした行為が、その行為の外形から見てその職務行為に属するものと認められる場合には、民法四四条一項の類推適用により、当該地方公共団体は右行為により相手方の被つた損害の賠償責任を負うものというべきところ(最高裁昭和三四年(オ)第一〇二七号同三七年九月七日第二小法廷判決・民集一六巻九号一八八八頁、同昭和三九年(オ)第四三六号同四一年六月二一日第三小法廷判決・民集二〇巻五号一〇五二頁参照)、地方公共団体の長のした行為が、その行為の外形から見てその職務行為に属するものと認められる場合であつても、相手方において、右行為がその職務行為に属さないことを知つていたか、又はこれを知らないことにつき重大な過失のあつたときは、当該地方公共団体は相手方に対して損害賠償の責任を負わないものと解するのが相当である。これを本件についてみるに、地方公共団体である被上告人が町有地払下 を知らないことにつき重大な過失のあつたときは、当該地方公共団体は相手方に対して損害賠償の責任を負わないものと解するのが相当である。これを本件についてみるに、地方公共団体である被上告人が町有地払下の代金として約束手形の交付を受け、更に業者であるFに対する河川工事代金の支払方法としてこれを裏書交付するというが如きは極めて異例であり、まして本件のように手形の振出人であるE観光開発の代表者と第一裏書人である被上告人の町長が同一人のDであることにより右手形の原因関係に疑念を生ぜしめる場合にあつては、かかる手形を割引によつて取得しようとした上告人としては、少くとも被上告人の会計- 2 -事務担当の収入役、出納員など、疑念の対象であるD以外の者について、被上告人が真に右手形を取得し、これをFに裏書交付したものであるか否かを問い合わせるべきであり、しかもそのことは容易になしうることであるし、またそうすることによつてたやすくその実情が判明したであろうと解されるところ、上告人は、前記のような疑念をもちながらただD本人に電話で手形の原因関係を問い合わせ、かつFからDの作成した前記確認書を受け取つただけで、右手形の取得及び裏書が被上告人によつて適法にされたものと軽信してその割引の依頼に応じたというのであり、また、上告人において前記のような調査をしてもなお手形の原因関係の真相が判明しなかつたことにつきなんらの主張・立証がないのであるから、上告人は、Dのした右手形の裏書交付が被上告人の町長としての職務行為に属さないことを知らなかつたことにつき重大な過失があつたといわなければならず、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。 て適法にされたものと軽信してその割引の依頼に応じたというのであり、また、上告人において前記のような調査をしてもなお手形の原因関係の真相が判明しなかつたことにつきなんらの主張・立証がないのであるから、上告人は、Dのした右手形の裏書交付が被上告人の町長としての職務行為に属さないことを知らなかつたことにつき重大な過失があつたといわなければならず、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の なければならず、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官吉田豊裁判官岡原昌男裁判官小川信雄裁判官大塚喜一郎- 3 -

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