平成11(行ウ)7 各給水条例無効確認等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年11月27日 甲府地方裁判所 地方自治
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判決文本文14,634 文字)

主文 1 原告らの訴えのうちα簡易水道事業給水条例及び施行規則に関する内規(平成10年4月1日以後の届出に適用されるもの)の無効確認請求に係る部分をいずれも却下する。 2 原告らの請求のうち前項掲記の請求を除く,その余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判原告らは,「①α簡易水道事業給水条例の別表第一(平成10年条例第24号による改正後のもの)並びにα簡易水道事業給水条例及び施行規則に関する内規(平成10年4月1日以後の届出に適用されるもの)は,いずれも無効であることを確認する。②別紙水道料金支払状況表中A欄記載の金額の各債務が存在しないことを,それぞれ該当する原告らと被告との間で確認する。③被告は同表中B欄記載の各金員を,それぞれ該当する原告らに支払え。④被告は同表中A欄記載の未払水道料金がある原告らに対する簡易水道の給水を停止してはならない。⑤訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め,被告は本件訴えのうちα簡易水道事業給水条例の別表第一(平成10年条例第24号による改正後のもの)の無効確認請求に係る部分については却下を求めたほか主文同旨の判決を求めた。 第2 事案の概要本件は,原告らが,被告の簡易水道事業給水条例の別表第一(平成10年条例第24号による改正後のもの。甲6の1。以下「本件別表」という。)並びにα簡易水道事業給水条例及び施行規則に関する内規(平成10年4月1日以後の届出に適用されるもの。甲7。以下「本件内規」という。)は,被告の住民基本台帳に登録していない別荘所有者を不当に差別するものであるとしてその無効確認(主位的には民事訴訟,予備的には行政訴訟による)を求めるとともに,本件別表が無効であることを前提として,本件別表の基本料金 帳に登録していない別荘所有者を不当に差別するものであるとしてその無効確認(主位的には民事訴訟,予備的には行政訴訟による)を求めるとともに,本件別表が無効であることを前提として,本件別表の基本料金(ただし,「基本料金」とは,特定の月内において,水道の使用量にかかわらず課せられる料金をいう。以下同じ。)と従前の基本料金との差額について,未払水道料金については債務不存在確認を,支払済みの水道料金相当額については不当利得の返還又は不法行為に基づく損害賠償を求めたほか,未払水道料金がある原告らについて,被告が簡易水道の給水を停止することの禁止を求めた事案である。 1 争いのない事実(1) 被告は,山梨県αにおいて簡易水道事業を営む地方公共団体である。 (2) 原告らは,いずれも住所地に住民登録を有するが,被告町内に別荘を所有し,被告との間で給水契約を締結している。 (3) 昭和63年以前,被告の住民は,町営簡易水道,簡易水道組合等から給水を受けていたが,昭和63年,被告はこれらの簡易水道組合等の資産を買い取り,β簡易水道事業を除く水道事業を町営水道に統合した。 (4) (3)の統合に際して,被告は,「α簡易水道事業給水条例」(昭和63年条例第8号。甲3。以下「本件条例」という。)を制定した。制定当時の水道料金は,別紙料金表1のとおりであった。 (5) 被告は,平成5年7月1日,本件条例の一部改正条例(平成5年条例第11号。甲4)を施行し,β簡易水道事業給水条例を廃止してβ簡易水道事業も町営水道に統合し,被告の簡易水道事業の給水区域を被告町内全域とするとともに,水道料金を別紙料金表2のとおりとし,さらに,新規加入者に対し課す加入金を定めた。 (6) 被告は,平成6年4月1日,本件条例の一部改正条例(平成6年条例第4号。甲5)を施行し,水道料金を別 もに,水道料金を別紙料金表2のとおりとし,さらに,新規加入者に対し課す加入金を定めた。 (6) 被告は,平成6年4月1日,本件条例の一部改正条例(平成6年条例第4号。甲5)を施行し,水道料金を別紙料金表3のとおりとした。 (7) 被告は,平成10年4月1日,本件条例の一部改正条例(平成10年条例第24号。甲6の1)を施行し,水道料金を本件別表(別紙料金表4)のとおりとするとともに,別紙内規のとおり本件内規を定め,水道の一時的な休止が認められる者から,別荘(被告の住民基本台帳に登録していない者。以下同じ。)を除いた。これにより,別荘は水道の一時的な休止が認められず,休止した後再開する場合には再度加入金を課せられることとなった。 (8) 平成10年4月1日以降の原告らの水道料金の支払状況は別紙水道料金支払状況表のとおりである。 (9) 被告は,平成11年7月12日付け,同月15日付け及び同月19日付けで,それぞれ未払水道料金がある者に給水停止を執行する旨の文書を送付した。 2 争点(1) 争点1-本案前の争点本件別表及び本件内規の無効確認の訴えは適法か否か。 (2) 争点2-本案の争点本件別表が水道の基本料金について別荘と別荘以外の住民とを区別し,別荘に対してより高額の基本料金を課していることは,憲法14条1項,水道法14条4項1号,4号,地方公営企業法21条2項に違反するか否か。 3 争点1について(1) 原告らの主張ア給水条例は,水道法上の供給規程(水道法14条1項)であって,附合契約の条項にほかならず,国民の権利義務を一方的に規制するものではないから法規とはいえない。 イ本件別表は,法令の形式を採っているものの,水道の基本料金の価格を具体的に規定し,原告ら個人の権利義務に直接変動を及ぼす内容のものであるから,その無効確認 るものではないから法規とはいえない。 イ本件別表は,法令の形式を採っているものの,水道の基本料金の価格を具体的に規定し,原告ら個人の権利義務に直接変動を及ぼす内容のものであるから,その無効確認請求は具体的な法的紛争として法律上の争訟に当たる。 また,本件内規は,法令でも供給規程でもなく,原告らを拘束しないが,水道供給の再開は被告により行われる以上,需用者である原告らは事実上本件内規に拘束されるから,法律上の争訟に当たる。 ウ水道の利用関係は非権力的給付行政であり,水道法は若干の契約の自由制限を設けているがその全体は契約原理の下にあり,事業者による行政処分を予定していないから,水道事業に関しては公法関係ではなく私法関係に属する。 さらに,原告らは,未払水道料金の債務不存在確認の訴えなどを提起することも可能ではあるが,水道料金債務は連続的に発生するのであるから,紛争の包括的・抜本的解決のため,その基となる条例の無効確認をする必要がある。 したがって,本件別表の無効確認の訴えは,民事訴訟による無効確認の訴えとして適法である。 エ仮に本件別表の無効確認の訴えが,民事訴訟による無効確認の訴えとして不適法であるとしても,本件別表は水道の基本料金の額を確定金額をもって規定していること,原告らの大部分の水道使用量は基本料金の範囲内に収まっていること,水道事業者が地方公共団体である場合の水道料金は,個々の給水契約により定まるのではなく,供給規程たる給水条例によって定まることなどからすれば,本件別表はその施行によって,他に個別的行政処分を要せず,直接の効果として別荘所有者たる原告らの水道料金債務に影響を与えるものであり,特定個人の具体的権利義務に影響を与える法令といえるから,抗告訴訟の対象たる処分に当たる。 また,原告らは,本件別表が無効であるこ として別荘所有者たる原告らの水道料金債務に影響を与えるものであり,特定個人の具体的権利義務に影響を与える法令といえるから,抗告訴訟の対象たる処分に当たる。 また,原告らは,本件別表が無効であることを前提として料金を支払う場合,給水停止の制裁を受ける可能性が高く,回復し難い重大な損害を被るおそれがあること,水道料金債務は継続して発生し,水道料金債務不存在確認の訴えなどによるのでは,後訴において再び本件別表の有効性が問題となるおそれがあり,原告らにとって本件別表の無効確認を求めるほか適切な救済手段はないことなどからすれば,抗告訴訟における無効等確認の原告適格(行政事件訴訟法36条)を有する。 したがって,本件別表の無効確認の訴えは,行政事件訴訟法に基づく抗告訴訟による無効等確認の訴え(行政事件訴訟法3条4項)として適法である。 (2) 被告の主張ア憲法94条及び地方自治法14条1項に基づいて制定された条例は,法規としての効力を有する。 イ本件では,原告らが,被告の請求した水道料金のうち納付していない差額分の支払義務の不存在確認等を求めれば足りるから,その基となる法令そのもの,すなわち本件別表の無効確認を求める訴えの利益はない。 また,本件内規については,具体的な紛争が発生しておらず抽象的にその無効確認を求めることは不適法である。 ウ水道の利用関係は基本的には私法関係であり,原告らと被告との給水契約は飽くまで私法上の契約であるから,需用者たる原告らが被告に対し水道料金の支払義務を負うのは,給水契約を締結したことにより附合契約として料金等の契約内容に条例が適用されるからであって,条例によって直接その義務を課せられるものではなく,条例の規定が直接原告らの権利や義務に変動を及ぼすとはいえないから,本件別表は抗告訴訟の対象たる処分には当た 約内容に条例が適用されるからであって,条例によって直接その義務を課せられるものではなく,条例の規定が直接原告らの権利や義務に変動を及ぼすとはいえないから,本件別表は抗告訴訟の対象たる処分には当たらない。 また,原告らは,給水契約の一部無効の確認,又は基本料金について一定の金額を超えて債務の存在しないことの確認を民事訴訟で求めれば足りるから,抗告訴訟における原告適格(行政事件訴訟法36条)を欠く。 4 争点2について(1) 原告の主張ア水道料金については原価主義が適用されること(水道法14条4項1号,地方公営企業法21条2項),水道事業は地域独占により競争が排除され,需用者は当該水道を利用せざるを得ない立場にあり,水道料金が公共料金であることからすれば,需用者が誰であるかにより大幅な料金額の差別を行うためには誰もが納得するだけの合理的な根拠を要する。 イ現代の別荘は奢侈的な施設ではなく,別荘所有者は社会の中堅層に位置するものである上,別荘の水道使用は営利用ではなく,小口かつ家庭の生活用水としての使用であるから,被告が社会経済政策的観点から用途別料金体系を採用するのであれば,ホテル,保養施設等の営利・大口使用者よりも別荘をむしろ低額にすべきである。 ウ γ地区には多くのホテル,ペンション,学校寮,公園等の観光客が利用する大規模施設があり,これらについても季節によって水道の使用量に大きな変動があり,むしろこれらが夏期における水道使用量激増の最大の原因であるにもかかわらず,これらについては一般料金を適用するのに対し,被告の給水量全体の中でさしたる比重を占めない別荘だけ基本料金を割高にすることには合理性がない。 エ被告が主張する町民の年間水道料金の平均約6万円は,各種公共施設,各種法人の施設,ホテル,学校寮,会社保養所,牧場等も含めて たる比重を占めない別荘だけ基本料金を割高にすることには合理性がない。 エ被告が主張する町民の年間水道料金の平均約6万円は,各種公共施設,各種法人の施設,ホテル,学校寮,会社保養所,牧場等も含めて,これら大口需要者1施設と一般町民家庭の1件とを同視して,その水道料金を単純に総件数で除して得られたものである。しかしながら,別荘はおおむね水道メーターの口径が13ミリメートルの契約者(以下「13ミリ契約者」という。)であるから,町民の年間水道料金についても同じく13ミリ契約者について比較すべきである。この点,本件別表施行以前においては,町民の13ミリ契約者の年間水道料金は1件当たり3万9621円であったのに対し,別荘の年間水道料金は1件当たり3万8287円だったのであり,おおむね均衡が取れていたのである。したがって,別荘の水道料金負担が軽すぎるということはないし,むしろ水道使用量の少ない別荘は,実質的に一般町民と比較して既に過大な水道料金を負担していたのである。 オしたがって,本件別表は,何ら合理的理由なく別荘について一般家庭及び営利施設と比較して3・57倍という高額の基本料金を課しており,別荘とそれ以外との間に不合理な差別措置をとり,別荘を甚だしく不利益な地位に置くものであって,憲法14条1項,水道法14条4項1号,4号,地方公営企業法21条2項に違反する。 (2) 被告の主張ア水道料金体系は,当該市町村の水を巡る自然的,社会的諸条件やこれに対応する水道行政の実際,需用者の事業,将来的な見通しなどを総合的に勘案して決められるものであって,単なる金額の違いをもって不合理・不当な差別ということはできない。 イ αには,地形的に水源から各需用者への給水に多額の費用がかかること,住民に対して別荘の比率が高く,特にγ地区では際立っていること,旧 る金額の違いをもって不合理・不当な差別ということはできない。 イ αには,地形的に水源から各需用者への給水に多額の費用がかかること,住民に対して別荘の比率が高く,特にγ地区では際立っていること,旧簡易水道組合から引き継いだ施設は,同組合員が事業費を負担し,地区の共同財産を処分したり,労力奉仕するなどの協力をして作られたものであり,この点では営業者たる住民も同様であることから,歴史的に一般家庭と営業者たる住民の基本料金に区別を設けてこなかったこと,施設が老朽化するなど水道設備の整備が必要なことなど,水を巡る自然的,社会的諸条件が存在する。 ウ別荘は,年間を通しての水道使用量は少ないが,季節によっては住民と同様に水道を使用するため,その最大使用量に応じた水と設備を一年中確保しておく必要があり,基本料金を割高にすることにより,年間を通した負担額を別荘以外の住民と均等にする必要がある。 エ別荘では,おおむね水道料金が基本料金内に納まっており,使用量による調整が困難であるから,別荘以外の需用者の1件当たりの年間水道料金の平均約6万円に合わせて別荘の基本料金を改定する必要があったのであり,このような改定は水道事業者である被告の裁量の範囲内である。 オ比較の対象を一般町民住宅だけとしなかったのは,特殊な使用形態である別荘と一般町民住宅を同視することができないからである。 カしたがって,本件別表の水道料金は,別荘とそれ以外とを不合理に差別するものではなく,憲法14条1項に違反しない。また,水道法14条4項1号,4号,地方公営企業法21条2項は,地方公共団体が簡易水道事業を経営する場合に直接適用される法規ではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1について(1) 給水契約は,水道事業者(簡易水道事業者を含む。以下同じ。)と多数の水道需用者との間の 体が簡易水道事業を経営する場合に直接適用される法規ではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1について(1) 給水契約は,水道事業者(簡易水道事業者を含む。以下同じ。)と多数の水道需用者との間の契約を迅速かつ効率よく処理するとともに,需用者相互間の水道利用関係を公平にするため,契約内容を定型的に定める必要があるが,この点水道法は水道事業者に料金,給水装置工事の費用の負担区分その他の供給条件について,供給規程を定めることを要求しており(水道法14条1項),このような供給規程はいわゆる約款として,個々の給水契約を介して契約内容となり水道事業者と需用者を拘束することとなる。 ところで,水道需用者としては,当該供給規程のうち料金の算定基準を定めた部分が憲法及びその他の法令等に抵触するとして争う場合,具体的に発生した個々の水道料金について債務不存在確認を求めるなどして,その訴えの中で約款たる供給規程の効力を争うこともできるが,給水契約という継続的供給契約においては,日々料金債務が発生しているのであるから,個々の水道料金について債務不存在確認を求めることは迂遠であり,より抜本的な紛争解決のためには,約款たる供給規程自体の無効確認を求めることも許されるものと解される。 これを水道事業者が地方公共団体である場合についてみれば,水道料金は公の施設の利用について徴収する使用料(地方自治法225条)に当たることから,地方自治法228条により条例で定める必要があるものの,このようにして定められた条例は,地方公共団体以外の水道事業者が定める供給規程と何ら異ならず,その実質は単なる約款にすぎないから,条例であることをもって,その無効確認の訴えが法律上の争訟(裁判所法3条1項)に当たらないということはできない。 そして,給水契約において,水道事業者である地方 その実質は単なる約款にすぎないから,条例であることをもって,その無効確認の訴えが法律上の争訟(裁判所法3条1項)に当たらないということはできない。 そして,給水契約において,水道事業者である地方公共団体は,私法上の契約における一方当事者にすぎず,その行為は何ら権力的作用を有するものではないから,民事訴訟により約款たる条例の効力を争うことが許されるものと解される。 したがって,原告らの訴えのうち本件別表の無効確認請求に係る部分は,民事訴訟による無効確認の訴えとして適法である(なお,原告らの行政訴訟による本件別表の無効確認請求は,そもそも民事訴訟による無効確認請求ができないとされた場合の予備的な請求であるから,本件では判断しない。)。 (2) 本件内規は,被告の簡易水道事業における内部規則にすぎず直接需用者を拘束するものではないが,本件内規によって別荘は給水停止が認められないという効果が及ぶのであるから,本件内規も供給規程の一部として給水契約の内容になるものと解される。そうすると,本件内規の無効確認の訴えも,本件別表の無効確認の訴えと同様に法律上の争訟(裁判所法3条1項)に当たり,民事訴訟によりその効力を争い得るものといえる(したがって,本件別表同様,原告らの行政訴訟による本件内規の無効確認請求については,本件では判断しない。)。 しかしながら,本件別表がこれによって原告らに具体的な水道料金債務が発生しているのとは異なり,原告らは被告に対し具体的に給水の一時休止を求めたわけではないので,原告らの権利又は法的地位に対する不安ないし危険はいまだ抽象的なものにすぎず,本件内規の無効確認については判決によって解決すべきほどに紛争が成熟しているとはいえない。 したがって,本件訴えのうち本件内規の無効確認請求に係る部分は,民事訴訟における確認の利 なものにすぎず,本件内規の無効確認については判決によって解決すべきほどに紛争が成熟しているとはいえない。 したがって,本件訴えのうち本件内規の無効確認請求に係る部分は,民事訴訟における確認の利益を欠くから,不適法として却下すべきである。 2 争点2について(1) 水道事業者である地方公共団体と水道需用者との間の給水契約は,私人間の契約と異ならず権力的作用を有するものではないから,これに憲法の規定が直接適用されることはない。 しかしながら,条例によって定められた水道料金の算定基準が憲法に違反するような場合には,民法1条,90条等により当該給水契約の一部が無効となり,これに基づく水道料金債権が発生しないこととなる。 ところで,憲法14条1項は国民に対し「法の下の平等」を保障するが,ここで「平等」とは絶対的な平等を要求するものではなく,事柄の性質に応じて合理的な理由のある区別取扱いをすることは許容しているものと解される。 この点,本件別表は,被告の簡易水道事業における1か月当たりの基本料金について,別荘をそれ以外に比べて,13ミリ契約者では月額3600円,水道メーターの口径が20ミリメートルの契約者(以下「20ミリ契約者」という。)では月額5500円,水道メーターの口径が25ミリメートルの契約者(以下「25ミリ契約者」という。)では月額1万2500円,高額に設定しているが,このような区別取扱いに合理的な理由があるか否かについて,以下検討する。 なお,原告らは本件別表について,憲法14条1項違反以外にも,水道法14条4項1号,4号,地方公営企業法21条2項違反についても主張しているが,水道法14条4項1号,4号は地方公共団体以外の水道事業者が供給条件を変更する際の認可の基準についての規定であり,また地方公営企業法はその適用範囲から簡易水 21条2項違反についても主張しているが,水道法14条4項1号,4号は地方公共団体以外の水道事業者が供給条件を変更する際の認可の基準についての規定であり,また地方公営企業法はその適用範囲から簡易水道事業を除いていること(同法2条1項1号)からして,これらの規定が本件に直接適用されることはなく,憲法14条1項違反の判断に際してこれらの規定の趣旨についてもしんしゃくすれば足りる。 (2) 各項末尾に掲記した証拠によれば,以下の事実が認められる。 ア平成8年度の被告の簡易水道事業においては,給水契約者全体のうち用途が一般及び公共(以下これらを「別荘以外」という。)の件数は3028件であるのに対し,別荘の件数は1324件であり,別荘が給水契約者全体の約30・4パーセントを占める。ところが,年間の水道使用量は別荘以外が113万1541立方メートルであるのに対し,別荘が5万6109立方メートルであり,別荘の年間水道使用量は被告の簡易水道事業における年間水道使用量の約4・7パーセントを占めるにすぎない(乙23の1)。 イこのうち特に13ミリ契約者についてみれば,別荘以外の件数は2721件であるのに対し,別荘の件数は1280件であり,別荘が全体の約32・0パーセントを占めるが,水道使用量は別荘以外が年間67万8094立方メートルであるのに対し,別荘は年間5万1037立方メートルであり,別荘が全体の約7・0パーセントを占めるにすぎない(乙23の1)。 ウ被告の簡易水道事業における一年度中の最大配水量(一年度中で水道使用量が最も多かった日の水道使用量)と最小配水量(一年度中で水道使用量が最も少なかった日の水道使用量)は,平成7年ないし平成11年度の平均でみると,中央地区では最大配水量が約2538立方メートル,最小配水量が約942立方メートル(その差約 水量(一年度中で水道使用量が最も少なかった日の水道使用量)は,平成7年ないし平成11年度の平均でみると,中央地区では最大配水量が約2538立方メートル,最小配水量が約942立方メートル(その差約2・7倍)であり,γ地区では最大配水量が約1489立方メートル,最小配水量が約433立方メートル(その差約3・4倍)であり,β地区では最大配水量が1516立方メートル,最小配水量が375立方メートル(その差約4・0倍)であった(乙26ないし28)。 エ β地区には,一般町民住宅,企業の保養所等もあるが,その大部分は別荘が占めている(甲27,28の1,2,乙29の1)。 オ平成8年度の被告の簡易水道事業において,水道料金が年間を通して基本料金内で収まっている者は,別荘以外では3028件のうち586件であり,その比率は約19・4パーセントであるのに対し,別荘では1324件のうち955件であり,その比率は約72・1パーセントとなる(乙33)。 カ平成8年度において,被告の簡易水道事業には大口需要者(水道の使用口径にかかわらず水道料金を年間50万円以上支払っている需用者。以下同じ。)が29件あり(ただし,このうち13ミリ契約者は3件。),大口需要者の年間水道使用量の合計は24万1574立方メートルで,被告における総水道使用量が上記アのとおり118万7650立方メートルであるからその比率は約20パーセントとなり,大口需要者が一年度中で水道を最も多く使用する月の使用量(2万7369立方メートル)と最も少なく使用する月の使用量(1万6774立方メートル)の差は1万0595立方メートルであり,その差は約1・6倍となる(乙23の1,乙32の1,2,乙33)。 キ乙23号証の1の数値を基に単純に基本水量の合計及び超過水量の合計をそれぞれ別荘及び別荘以外の件数で 0595立方メートルであり,その差は約1・6倍となる(乙23の1,乙32の1,2,乙33)。 キ乙23号証の1の数値を基に単純に基本水量の合計及び超過水量の合計をそれぞれ別荘及び別荘以外の件数で除して,1件当たりの水道使用量を計算し,これに本件別表をあてはめて1件当たりの年間水道料金を計算すると,13ミリ契約者では別荘以外が約4万1402円となるのに対し,別荘が約6万2194円となり,20ミリ契約者では別荘以外が約14万9969円となるのに対し,別荘が9万4156円となり,25ミリ契約者では別荘以外が約10万4014円となるのに対し,別荘が17万6240円となり,給水契約者全体では別荘以外が約6万3022円となるのに対し,別荘が約6万3504円となる(乙23の1。なお,原告らの平成13年6月8日付け準備書面(8)別紙参照)。 (3) 本件別表が採用する料金体系について水道事業における料金体系には,大別して,口径別料金体系に代表されるような個々のサービスに対応する原価をもとに料金を設定する個別原価主義と,用途別料金体系に代表されるような需用者の負担能力又は需用者がそのサービスについて認める価値をもとに料金を設定する負担力主義又は価値基準に基づく料金設定とがある。このうち,用途別料金体系は,需用者の負担力や水道のサービスについて認める価値の差とその用途を基準に価格を設定するもので,非必需的,副次的用水に高額の料金を課すとともに,生活用水の低額化を図るという水道事業の公共性を重視した政策的要素を含んだ料金体系である(甲13参照)。水道事業者としては,水道料金の客観的公平性を重視すれば,口径別料金体系のみを採用することが望ましいが,当該水道事業の置かれた自然的・社会的状況等の特殊事情に応じて,政策的に用途別料金体系を口径別料金体系に適宜 ては,水道料金の客観的公平性を重視すれば,口径別料金体系のみを採用することが望ましいが,当該水道事業の置かれた自然的・社会的状況等の特殊事情に応じて,政策的に用途別料金体系を口径別料金体系に適宜組み合わせて採用することも合理性を逸脱しない範囲内では許されるものといえる。 この点,上記(2)の事実によれば,被告の簡易水道事業においては,契約者全体に対して別荘の比率が際立って高い上,別荘の使用は夏期等に集中することが容易に推認でき,この時期には別荘も一般住民と同程度の水道を使用するのであるから,別荘が被告の簡易水道事業における夏期等の一時的な水道使用量の増加の一因となっていることは疑いない。そうすると,別荘全体の年間を通した水道の使用量は契約者全体の5パーセント前後であるものの,その使用量を基に水道料金を算出するならば,別荘が一時的に使用する水量及びそれに見合った給水施設のかなりの割合を別荘以外の住民が年間を通して実質的に負担することとなり,かえって別荘と別荘以外の住民との公平が図られないこととなる。そして,別荘の水道使用量は年間を通じておおむね基本水量内に収まっているのであるから,別荘に年間を通じて平均して相応な水道料金を負担させる方法として,基本料金を別荘以外の住民に比べて高額にして調整することも,水道事業者の政策的料金体系として許されないものではない。 ところで,原告らは,水道料金について別荘も相応の負担をするとの前提のもと,その際には別荘にとっても一般家庭と同様に水道は生活用水にすぎないから,同じ口径を使用する別荘と別荘以外の一般住民との均衡を図るべきである旨主張する。この点,水が人の生活にとって欠かせないものであること,別荘の利用には通常営利性が伴わないこと,別荘の中には定住者と変わらないような利用をしている者もいるであろ との均衡を図るべきである旨主張する。この点,水が人の生活にとって欠かせないものであること,別荘の利用には通常営利性が伴わないこと,別荘の中には定住者と変わらないような利用をしている者もいるであろうことなどを考慮しても,大多数の別荘所有者は他に生活の本拠地を持つ者であり,別荘が生活に必要不可欠なものではないという意味で別荘使用とは多分に非必需的要素を含んでいるものと評し得るから,当該地域を生活の本拠地とする一般住民とは水道使用の性質もおのずから差異があるといえ,必ずしも同じ口径を使用する別荘と一般住民との均衡を図る必要はなく,水道事業者が政策的に別荘の水道料金を一般住民に比べて高額に設定しても,それが合理的な範囲内に止まる限りは不当な差別には当たらないものといえる。 さらに,原告らは,被告が用途別料金体系を採用するならば,営業的に水道を使用する者とそれ以外の者とを分けて水道料金を設定すべきである旨主張する。この点確かに被告がそのような水道料金体系を採用することも一つの政策としてはありうるが,被告においては,旧簡易水道組合時代に営業者たる住民と一般住民の分け隔てなく住民が物的・人的に水道施設の創設に貢献してきたという歴史を踏まえ,この施設を引き継いだ被告においてもこれまで営業者と一般住民とで水道料金の区別をしていないというのであって,このような歴史的由来に基づき営業者とそれ以外とを区別しないとの被告の政策が一概に不合理ということもできない。 もっとも,別荘が最も集中するβは,昭和60年に山梨県が直轄事業により別荘地の誘致を計画し開発した団地であり,被告が同県の要請を受けてその給水を引き受けた経緯もある(争いがない。)から,上記歴史的由来を過度に強調することは相当でなく,別荘とそれ以外の住民との間の調和を図っていくことが望ましいことはい り,被告が同県の要請を受けてその給水を引き受けた経緯もある(争いがない。)から,上記歴史的由来を過度に強調することは相当でなく,別荘とそれ以外の住民との間の調和を図っていくことが望ましいことはいうまでもない。 (4) 13ミリ契約者について上記(2)ア,イのとおり,別荘の大多数は13ミリ契約者であるが,この点,被告は,本件別表の13ミリ契約者である別荘の基本料金を決めるに当たり,契約口径を問わず別荘以外の水道需用者の年間水道料金が1件当たり平均約6万円になることから,これを目安にしたというものの,使用口径によっては水道料金に大きな差がある上,別荘以外には大口需要者など水道料金が高額になる者も含まれるのであるから,被告の簡易水道事業における住民の平均的な水道料金を算出する方法としてこのような方法が妥当か否かについてはなお検討の余地はあろう。 しかしながら,上記(2)キのとおり,本件別表に基づく13ミリ契約者である別荘の年間水道料金は,一応は別荘以外の水道需用者全体の年間水道料金の平均と同程度に収まる上,別荘以外の13ミリ契約者と比較しても年間水道料金の差はおよそ2万円前後に収まると考えられるから,本件別表の13ミリ契約者である別荘の基本料金は,上記(3)のような別荘誘致の経緯等を考慮に入れても被告の簡易水道事業の特殊性,別荘の水道使用の特殊性に照らしてなお合理的な範囲内にあるものといえる。 したがって,本件別表が13ミリ契約者について別荘の基本料金をそれ以外と比べて高額に設定していることは,憲法14条1項に違反する不当な差別には当たらない。 (5) 20ミリ契約者及び25ミリ契約者についてさらに,20ミリ契約者及び25ミリ契約者である別荘について検討すると,上記(2)キのとおり,別荘以外よりも別荘の年間水道料金が安くなると考え い。 (5) 20ミリ契約者及び25ミリ契約者についてさらに,20ミリ契約者及び25ミリ契約者である別荘について検討すると,上記(2)キのとおり,別荘以外よりも別荘の年間水道料金が安くなると考えられる20ミリ契約者についてはいうまでもなく,別荘以外よりも別荘の年間水道料金がかなり高額となると考えられる25ミリ契約者についても,その契約口径からして通常の生活用水としての水道使用とは考えられず,上記(3)のような被告の簡易水道事業の特殊性,別荘の水道使用の特殊性も合わせて考慮すれば,なお合理的な範囲内にあるものといえる。 したがって,本件別表が20ミリ契約者及び25ミリ契約者について別荘の基本料金をそれ以外と比べて高額に設定していることも,憲法14条1項に違反する不当な差別には当たらない。 3 給水停止の禁止についてところで,本件では,未払水道料金がある原告らが給水停止の禁止を求め,その理由として,本件別表は憲法14条1項,水道法14条4項1号,4号,地方公営企業法21条2項に違反するから,本件別表の定める基本料金と従前の基本料金との差額を支払わないことは水道法15条3項の「料金を支払わないとき」に当たらないこと,その他被告が原告らの給水を停止するにつき正当な理由はないこと,被告は原告らに対して未払水道料金請求訴訟を提起すれば足りるにもかかわらず,あえて給水停止という措置を執ることは,比例原則違反ないし権利濫用に当たることなどを主張している。 この点,給水契約における水の継続的供給と水道料金の支払とは,双務契約における対価的牽連関係にあり,水道事業者は需用者に料金不払があるときは給水を停止することができるものと解され,水道法15条3項はこれを明確にした規定といえ,この理は水道事業者が地方公共団体である場合であっても異ならない。 ,水道事業者は需用者に料金不払があるときは給水を停止することができるものと解され,水道法15条3項はこれを明確にした規定といえ,この理は水道事業者が地方公共団体である場合であっても異ならない。 そして,一般論として,水道需用者が料金を支払わない個々具体的な事情によっては,水道事業者の給水停止が比例原則違反ないし権利の濫用に当たり許されない場合があるとしても,原告らは本件別表が憲法14条1項,水道法14条4項1号,4号,地方公営企業法21条2項に違反することを前提に水道料金の一部を支払わないにすぎないから,上記のとおりこれらの主張がいずれも理由がないことが明らかとなった以上,被告が水道法15条3項,本件条例31条1号に基づいて給水停止をすることが比例原則違反ないし権利の濫用に当たるとはいえず,これを将来にわたって禁止することはできない。 4 結論以上の次第であって,本件訴えのうち本件内規の無効確認請求に係る部分は不適法であるから,これを却下することとし,その他,原告らの本件別表の無効確認請求,被告に対する未払水道料金の債務不存在確認請求及び支払済みの水道料金相当額の不当利得返還請求又は不法行為に基づく損害賠償請求並びに未払水道料金がある原告らの給水停止の禁止請求は,その余の点を判断するまでもなく理由がないから,いずれもこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所第1民事部裁判長裁判官矢崎正彦裁判官萩本修裁判官知野明

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