令和元年9月18日判決言渡同日判決原本交付裁判所書記官平成30年第30号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和元年8月5日判決 主文 1 被告Aは,原告に対し,110万円及びこれに対する平成29年1月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告Aに対するその余の請求及び被告Bに対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを6分し,その5を原告の,その余を被告Aの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して637万4000円及びこれに対する平成29年1月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,原告と同性婚の関係にあった被告A及び後に被告Aと婚姻した被告Bに対し,被告らが不貞行為を行った結果,原告と被告Aの同性の事実婚(内縁関係)が破綻したとして,共同不法行為に基づき,婚姻関係の解消に伴う費用等相当額337万4000円及び慰謝料300万円並びにこれらに対する不法行為 (最終不貞行為)の日の翌日である平成29年1月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認定することができる事実)原告は,昭和56年生まれの女性であり,被告Aは,昭和62年生まれの女 性である。 原告及び被告A(後記のとおり,平成30年8月に被告Bと婚姻する前の氏は「C」)は,平成21年3月から交際を開始し,平成22年2月から同居を開始した。そ まれの女 性である。 原告及び被告A(後記のとおり,平成30年8月に被告Bと婚姻する前の氏は「C」)は,平成21年3月から交際を開始し,平成22年2月から同居を開始した。その後,平成26年12月29日,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)ニューヨーク州において同州法に基づく婚姻として婚姻登録証明書を取得した。また,平成27年5月10日には,日本において結婚式を挙げ,披露宴も開催 した。(甲1,2,16,22,乙1)原告及び被告Aは,両者の間に子をもうけるため,被告Aが第三者からの精子提供を受けることとし,SNSを通じて精子提供者を募集したところ,被告B(昭和56年生まれ。当時の戸籍上の名は「D」,戸籍上の性は男性)がこれに応じることとなった。(乙1,2) 被告Aは,平成28年12月28日から平成29年1月3日まで,被告Bが住むE市に行き,被告Bのアパートに宿泊をした。 被告Aは,同月12日,原告と同居していたアパートを出て友人宅に宿泊するなどし,同月27日には,同アパートから荷物を搬出して原告との別居を開始した。(乙1) ⑹ 原告は,平成29年,F家庭裁判所に婚姻外関係解消調停を申し立てた(同庁同年(家イ)第1553号)。同年12月26日,原告及び被告Aは,前記米国においてされた婚姻を解消することを合意し,相互に必要な協力をし,当該婚姻の解消の手続をとるものとする旨の調停に代わる審判がされ,同審判は,平成30年1月31日,確定した。(甲3,4) ⑺ 被告Aは,同年8月9日,長女Gを出産した。(甲10)⑻ 被告らは,同月15日,婚姻をしたが,被告Bは,同月,性別適合手術を受け,同年11月27日には性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条の裁判が確定し,戸籍上 Gを出産した。(甲10)⑻ 被告らは,同月15日,婚姻をしたが,被告Bは,同月,性別適合手術を受け,同年11月27日には性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条の裁判が確定し,戸籍上の性別も女性となった。なお,被告らは,同年9月19日,離婚をした。(甲10,乙2) 2 争点及び当事者の主張 争点1 権利又は法律上保護される利益の有無(原告の主張)ア同性の事実婚は,以下の理由から,内縁関係としての法的保護を受け得る関係にある。 内縁関係は,そもそも明治民法下で婚姻に戸主の同意が必要であったことか ら生じた不都合を補うために考えられた法解釈であり,かかる趣旨は同性カップルの現状,すなわち,婚姻という形式を取りたくても,法の欠缺によって取ることができない状況とも合致する。本来,日本国民には双方当事者が成人であれば,憲法上,当事者間の意思の合致で婚姻できる権利があるべきであり,両性の合意という文言は,単にセクシャルマイノリティーを憲法策定時に想定していなかったからに すぎない。すなわち,現在の日本の同性カップルは,同性婚制度に関する法の欠缺により,生来あるはずの婚姻できる権利を奪われた状態にほかならない。これは個々の同性愛者自体が社会的及び経済的基盤の脆弱さを抱えてしまう一因となっているのであり,国がこのような差別的状況を法の欠缺により作り出すべきではない。 したがって,同性愛者も,内縁関係により異性愛者と同様の法律上の保護を受ける べきである。 内縁関係は,法律の解釈上導き出された概念であり,本来異性婚という限定的解釈が明示されたことはない。すなわち,相続を除いては,内縁関係という枠組みにより同性愛者の結婚する権利が認められるはずである。 仮に同性愛者間に き出された概念であり,本来異性婚という限定的解釈が明示されたことはない。すなわち,相続を除いては,内縁関係という枠組みにより同性愛者の結婚する権利が認められるはずである。 仮に同性愛者間に内縁関係としての法的保護を受け得る関係すら認められな い場合,国は立法者のみならず,司法までも,同性愛者の家族になりたい,カップルとして法的な保護を受けたいという憲法に根差すほどの人権を剥奪することになる。いうまでもなく,司法は人権の砦としての機能を有するのであり,本来法解釈上使われてきた内縁関係をもって,同性愛者の人権を保障すべきである。 パートナーシップ制度は,本訴が係属している間にも多くの自治体で採用さ れるようになり,24の自治体で採用されている。これは,国の立法の欠缺を各自 治体ができる範囲で補おうという試みの一つである。このような動きも,社会が同性の婚姻を認知できるようになり,又は社会の評価にかかわらず人権保障の一環として同性の婚姻を認めるべきであるという自治体の考え方の表れである。 イ原告及び被告Aは,9年間一緒の生活を共にするだけでなく,米国での婚姻登録及び日本での人前式により,よりオフィシャルな関係を求め,周囲にも表して いた。異性愛者と比して考えても,単なる同居ではなくパートナーとして添い遂げる思いを神や周囲の人たちに誓う儀式を行うことで,一般的には事実婚のカップルと認められるべきである。 被告A自身が作成していたブログも,「同性と家族です」というタイトルであり,単なる恋人同士ではないという認識の下に日々を綴っていた。また,老後のために 原告は被告Aを受取人とする保険契約を締結し,一生を共にすることを前提とした話をしていた。双方の家族にも相手をパートナーとして紹介し,被告A自身も会 の下に日々を綴っていた。また,老後のために 原告は被告Aを受取人とする保険契約を締結し,一生を共にすることを前提とした話をしていた。双方の家族にも相手をパートナーとして紹介し,被告A自身も会社でのパートナーシップ制度に基づくサービスを受けていた。そればかりでなく,被告Aは,原告と一緒に子を育てていくことを前提として被告Bと不妊治療を行っていた。 このような事情があれば,単なる同性の恋人同士にとどまらず,事実婚(内縁関係)としての保護を受けるべき外観は整っている。 (被告らの主張)ア男女の夫婦関係においては,不貞行為が裁判上の離婚原因となること等から,貞操義務が生じ,また,内縁関係においても,民法上これを保護する明文規定はな いが,婚姻に準ずる関係として一定の保護を認められ,貞操義務が生じてくる。しかしながら,同性婚については,現時点では,日本では法整備がされておらず,同性同士の内縁関係が適用された裁判例もない。同性婚についての離婚原因がまだ整備されていない段階であるため,同性の夫婦関係又は内縁関係についても,貞操義務が生じ,法的保護に値する段階にはない。 したがって,原告には「他人の権利又は法律上保護される利益」は認められない。 イ原告と被告Aとの生活実態からして,両者が内縁関係にあったとは認められない。 すなわち,原告と被告Aとの生活は9年間ではなく8年間である。また,原告は被告Aを受取人とする保険契約も締結したと主張するが,これを裏付ける契約書は提出されていない。 確かに,原告と被告Aは,米国での婚姻登録及び日本での人前式を行ったが,生活については,生活費をお互いに負担し合う関係にあり,それは婚姻登録及び人前式の前後で変わっていない。このような生活状況から判断 かに,原告と被告Aは,米国での婚姻登録及び日本での人前式を行ったが,生活については,生活費をお互いに負担し合う関係にあり,それは婚姻登録及び人前式の前後で変わっていない。このような生活状況から判断すると,従前同棲していた時と生活状況は変わっていないため,同性同士のカップルにすぎず,同性同士の夫婦関係又は内縁関係とは認められない。 ⑵ 争点2 不貞行為の有無(原告の主張)被告らは,平成28年12月28日から平成29年1月3日まで一緒に宿泊し,キスや挿入を伴う性行為を少なくとも2回した。 被告らは,挿入を伴っていないという事実をもって不貞行為はなかったと主張す る。しかしながら,そもそも,被告らの関係は,心の性に従うのであれば,ビアンカップルに少なくとも近い関係にあり,そうだとすれば,挿入は性行為の要素ではない。 異性婚の場合であっても,たとえ挿入がなかったとしても,数日間二人きりで過ごした事実やキスなどで不貞行為を認定した裁判例もあることからすると,仮に被 告らの主張するとおり,挿入を伴わないペッティングを行っていた場合でも不貞行為として貞操義務に反していたことは明らかである。特に本件の場合,被告Bについて,ホルモン療法の結果,勃起が困難であることが挿入しなかった理由にすぎないのであれば,不貞行為を否定するような要素は全くない。 (被告らの主張) ア被告らが挿入を伴う性行為を少なくとも2回したことは否認する。被告Bは, 性同一性障害(生物学的性別が男性で,性の自己意識が女性である事例)であり,男性としての行為に興味がない上,勃起不全で挿入行為もできない状態であった。 また,被告Bは,現在,性別適合手術を受け,男性器を切除していることからも,挿入を伴う性交渉に興味がないことは明 )であり,男性としての行為に興味がない上,勃起不全で挿入行為もできない状態であった。 また,被告Bは,現在,性別適合手術を受け,男性器を切除していることからも,挿入を伴う性交渉に興味がないことは明白である。 イ原告は,同性間の場合にはペッティングが不貞行為に該当し得ると主張して いるが,不貞行為は,肉体関係,すなわち挿入を伴う性交渉を指し,男女間の肉体関係を前提として不貞行為を定義付けている。原告の主張するような法的解釈は認められない。 ⑶ 争点3 被告Bの故意及び特段の事情の有無(原告の主張) ア故意被告Bは,原告及び被告Aが長年連れ添ったパートナーであり,米国で婚姻手続を取るような関係であることを認識している。被告Bが原告及び被告Aを単なる恋人同士として認識していたとの主張は,否認する。 イ特段の事情 最高裁判所平成31年2月19日第三小法廷判決(以下「平成31年判決」という。)は,夫婦の他方と不貞行為に及んだ第三者に対する慰謝料請求について,「当該第三者が,単に不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情のない限り,離婚に伴う慰謝料を請求する ことはできない。」と判示している。 この点,本件では,被告Bは,原告及び被告Aとの間で養育する子をもうけるため,自らの遺伝子を性別変更前に残すために,被告Aと知り合ったのである。もっとも,被告Bは,性別変更を予定しており,それゆえに自らが子を認知することは予定していなかった。そのような状況下にあっては,自らの判断において認知しな い子を育てる両親の関係を壊すことは,当該子の養育基盤を自ら破壊することとな り,それゆえに自らが子を認知することは予定していなかった。そのような状況下にあっては,自らの判断において認知しな い子を育てる両親の関係を壊すことは,当該子の養育基盤を自ら破壊することとな るのであるから,これに介入することは特に許すべきでなく,前記特段の事情があるといえる。 また,被告Bは,3人での話合いの当時,自分は2番目でも構わない,原告及び被告Aの関係に介入するつもりはない旨の発言をしている。しかし,被告Bは,関係解消時に,結果的には原告が購入せざるを得なかったマンションの運用について まで口を出している上,原告がポリアモリー(複数のパートナーとの間で関係を持つことを認めること)ではなく,したがって「(原告と被告Bの)両方が好き」とした被告Aを受け入れることができなかったことを知っていて前記発言をしているのであり,結果的に真偽は不明であるが性行為をしたとすれば,原告が被告Aとの関係を解消すると分かっていて前記発言をしていることになる。そうすると,原告 らの関係に介入するつもりはない旨の前記発言をにわかに信用することはできず,この点でも前記特段の事情があるといえる。 (被告Bの主張)ア故意被告Bは,原告と被告Aとは同性同士であり同性婚が認められていないことは認 識しており,原告と被告Aとの間に,特別に法的な権利義務関係が生じる関係であるとの認識はなかった。したがって,被告Bに故意は認められない。 イ特段の事情原告は,被告らが法律上の婚姻をしていること,被告Aとの関係が継続していたこと,被告Aとの間に子がいること,原告の購入した不動産についても関与しよう としたことが平成31年判決にいう「不当な干渉」に当たると主張する。 しかし,原告も認めるとおり,原告と被告Aは,一旦は復 被告Aとの間に子がいること,原告の購入した不動産についても関与しよう としたことが平成31年判決にいう「不当な干渉」に当たると主張する。 しかし,原告も認めるとおり,原告と被告Aは,一旦は復縁を相互に模索していた。また,被告Bは,原告と被告Aの今後のことは二人で決めてほしいと述べている上,被告Aは,「自分は二人が好きなので選べない。」,「どうしていいのか分からない。」と話し出すなど,原告とも被告Bとも関係を継続できないかどうかを提案 している。このような中,被告Aが考えを翻して被告Bを選んだのであって,被告 Bが原告と被告Aとの関係に対して不当に干渉した事実はない。 ⑷ 争点4 損害(原告の主張)ア財産的損害 原告は,将来の子の親としての立場で不妊治療の費用を被告Aと折半するこ ととし,人工授精の費用として50万円を負担した(80万円を支払った後,被告Bから30万円の支払を受けた。)。 米国以外の国又はニューヨーク州外で離婚をした場合,同州での離婚手続には承認手続が必要であり,その場合の同州への渡航,滞在及び弁護士費用は少なくとも100万円は下らない。 また,現在の調停に代わる審判が承認されない場合は,離婚に係る滞在費用が最も安いグアム州でも約1週間の滞在を要するため,その費用及び弁護士費用も100万円を下らない。 イ慰謝料 内縁関係における貞操義務を保護する程度については,同性であるか異性で あるかにより違いはない以上,貞操義務違反によって生じる精神的苦痛及び離婚に伴う精神的苦痛も,同性であっても異性の場合と異なるところはない。 被告らは,原告及び被告Aは関係の解消に合意しており,被告らの不貞行為と内縁関係の解消との間には因果関係がないと主張する。 離婚に伴う精神的苦痛も,同性であっても異性の場合と異なるところはない。 被告らは,原告及び被告Aは関係の解消に合意しており,被告らの不貞行為と内縁関係の解消との間には因果関係がないと主張する。 しかし,被告Aは少なくとも被告Bとの関係を持つ前までは,原告と共に新しい 家で生活し,子が生まれれば共に育てようという話をしており,これらの計画を変更する旨の提案は一切していなかった。3人での話合いの際にも,被告Aは原告との関係を継続しようと考えていたのであり,関係の継続が難しいと思うようになったのは,原告が被告らの不貞行為に怒り,被告Aがその反応に対し,内縁関係の継続はもはや難しいと考えたからにほかならない。このような場合,不貞行為と内縁 関係解消との間には因果関係があると判断するのが通常である。 原告及び被告Aは,日本では法制化されていないものの,異性間で認められる婚姻という形式によってお互い結び付きたいという意思が強かったからこそ,日本での人前式だけではなく,あえて費用と時間を掛けて米国に渡航してまで法律上の婚姻を選んだ。また,被告Bは,そのような原告及び被告Aの関係を事前に熟知しており,その関係継続を前提として精子提供に同意した。精子提供方法は人工授 精であり,原告が被告らの肉体関係について同意したことは一切ない。むしろ,原告は,被告Bを信頼していたからこそ,被告Aを安心して被告Bの下に送り出していたのであり,それを堂々と裏切ったことによる精神的苦痛は甚大である。それだけでなく,被告らは,原告に対し,「日本では同性婚は法制化されていない。」,「訴訟で解決しようとしても無駄だ。」として,被告らに対して不貞行為を訴え出る原 告をあざ笑うかのような言動を示している。本来は法律の不整備が原因であるとはいえ 性婚は法制化されていない。」,「訴訟で解決しようとしても無駄だ。」として,被告らに対して不貞行為を訴え出る原 告をあざ笑うかのような言動を示している。本来は法律の不整備が原因であるとはいえ,それを悪用するような被告らの言動に原告は更に傷付いている。 以上からすると,原告の精神的損害に対する慰謝料は300万円を下らない。 ウ弁護士費用原告は,これまでに,協議,調停,訴訟にそれぞれ16万2000円,5万40 00円,10万8000円の弁護士費用を支払っている。さらに,弁護士報酬は受け取った金額の1割であるから,550万円(300万円+50万円+100万円+100万円)×1割=55万円となる。 エ以上によれば,原告の損害は,合計で637万4000円となる。 (被告らの主張) 不知又は否認する。原告の主張する損害は,不貞行為との間に相当因果関係が認められない。 なお,原告は,被告らが関係を継続することについて原告が受け入れ難かったことが内縁関係解消に至った理由であると主張する。しかし,原告と被告Aは,二人でやり直し,被告Bとは連絡を取らない方向で話合いを進めていたが,最終的に, 原告と被告Aは,関係を解消することで合意し,引っ越しの日程や荷物についても 原告の許可を得て進めていた。よって,原告と被告Aの関係が解消したのは,被告らの不貞行為や被告らが関係の継続を希望したことが原因ではない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,証拠(甲8,9,22,乙1,2,原告本人,被告ら本人)及び弁論 の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 原告と被告Aは,平成21年1月頃にレズビアンを対象にしたクラブのイベントで知り合い,同年3月から交際を開始した。その後,原告と 人)及び弁論 の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 原告と被告Aは,平成21年1月頃にレズビアンを対象にしたクラブのイベントで知り合い,同年3月から交際を開始した。その後,原告と被告Aは,平成22年2月からH市で同居を開始した。当初は被告Aが大学生であったため,収入のあった原告が主として生活費を負担していたが,同年4月,被告Aが就職をしたの に伴い,同程度の生活費を負担するようになった。 被告Aが同年7月に会社を退職し,平成23年4月から大学院に通うようになってからは,再び原告の方が生活費を多く負担するようになり,代わりに被告Aは家事全般を負担していた。 被告Aは,平成25年7月,東京都内の勤務先に就職したが,原告及び被告Aは, 同年8月,原告の仕事の関係でI市に引っ越した。引っ越し後は,被告Aも原告と同程度の生活費を負担するようになったが,なお,家事については被告Aが全般を負担していた。 原告及び被告Aは,平成26年3月頃から,結婚について具体的な話合いを始めた。原告及び被告Aは,それぞれの親にカミングアウト(自己の性的指向等を 打ち明けること)をして,お互いをパートナーとして紹介した。 さらに,原告及び被告Aは,同年12月29日,米国ニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得し,同州内で結婚式を挙げた。また,平成27年5月10日には,日本においても,被告Aの母校である大学のキャンパスで結婚式を挙げ,披露宴も開催した(原告及び被告Aの一部の親族も参加している。)。 被告Aは,子を持つことを希望していたことから,原告と話し合い,被告A が第三者からの精子提供による人工授精を受けることで妊娠・出産をし,原告と育てることを計画した。 被告Aは,平成27年7月,SNS( ことを希望していたことから,原告と話し合い,被告A が第三者からの精子提供による人工授精を受けることで妊娠・出産をし,原告と育てることを計画した。 被告Aは,平成27年7月,SNS(ミクシィ)を通じて精子提供者としての被告Bに出会い,原告にも被告Bを紹介した。原告は,第三者の精子提供に要する費用の一部を負担することに同意し,被告Aを通じて80万円を支出した。 被告Aは,当初,人工授精を受けることを予定していたが,被告Bの精子の状態が良くないことから,人工授精ではなく顕微授精が必要なことが判明した(そのための追加費用も必要となったが,これについては被告Bが負担し,被告Bは,原告に対して30万円を支払った。)。被告Aは,顕微授精のため被告Bが居住していたE市に行くこともあった。 その結果,被告Aは,平成28年9月に妊娠したことが判明したものの,同年10月22日,流産をした。原告は,被告Aの流産手術には付添いをしたが,その後の術後検診の際は,職場への説明の問題があるとして付添いをしなかった(ただし,原告は,自分の親等の場合であれば職場に説明の上,付添いをする旨述べていた。)。 原告は,被告Aが流産した後も,被告Bが引き続き精子提供を続けてくれる とのことであったため,将来的に子をもうけ,育てるための場所として物件の購入の検討を開始した。 原告は,平成28年11月には,被告Aとともにマンションの内見に行き,価格3680万円のマンションを原告単独名義で購入することとし,同年12月10日には,正式な契約を締結し,手付金として100万円を支払った。なお,被告Aは, 同日はJ県に旅行に行っており(被告Aは,この際にも被告Bと面会している。),契約の締結には立ち会っていない。 被告Aは,医療 結し,手付金として100万円を支払った。なお,被告Aは, 同日はJ県に旅行に行っており(被告Aは,この際にも被告Bと面会している。),契約の締結には立ち会っていない。 被告Aは,医療機関を利用するのではなく,被告B本人からシリンジ法での精子提供を受けることに挑戦したいと考え,平成28年12月28日,E市の被告B宅に行ったまま,同年中は原告の下に戻らず(被告Aは,原告に対しては,自身 の体調不良で帰れない旨の連絡をしていたが,それだけでなく,原告との関係が悪 くなっており,帰りたくなかったことも滞在を延長した理由であった。),被告Bのアパートに宿泊し,結果的に戻ってきたのは,平成29年1月3日であった。 被告Aは,同日,戻るなり,原告に対し,不動産の売買契約の解約の可否等について尋ねた。原告が手付金の没収や違約金について答えると,被告Aは,「私は原告のことが好きだけど,被告Bのことも好きになった。両方と付き合っていき たいんだけど。」などと言った。 そのため,原告は,被告らの事情を把握したいと考え,同月4日,原告及び被告ら(被告Bについては電話で)は,3人で話合いを行った。 原告が被告Bに対し,被告らがこれまでに性的関係を持ったか否かについて尋ねると,被告Bは,ペッティング(挿入を除いた性行為)といった行為を中心に行っ たことについては認め,原告の「セックスしたわけなんですか。」との質問に対しても,「まあ,あの,うん,そういう風に言えばそうですね。」,「もちろん,思いとどまった時ももちろんあったから,1回目は何かそういう雰囲気になっても思いとどまって,やってないです。やらなかったんですけど,次の時に,多分流産した時かな。」,「その時は,なんかもう,見てられなくて。」などと述べた。 ,1回目は何かそういう雰囲気になっても思いとどまって,やってないです。やらなかったんですけど,次の時に,多分流産した時かな。」,「その時は,なんかもう,見てられなくて。」などと述べた。 他方,被告Aは,「二人(原告及び被告B)とも好きなので選べない。」,「どうしていいのか分からない。」などと言っていた。被告Bは,原告と被告Aが別れるのであれば被告Aとの関係を継続したいが,原告がよければ2番目(原告と被告Aが関係を継続したまま被告Bも被告Aと関わっていくこと)でもよいこと,今後,原告,被告A及びその子が住む家に訪問したいことなどを述べていたが,最終的には, 原告と被告Aの今後の関係は,二人で決めてほしいという意向であったため,一旦は原告と被告Aの決定に委ねるということで3人での話合いを終わりにした。 その後,原告と被告Aは,取りあえずは被告Aが被告Bに対して連絡を取らないことを約束して同居を継続することとした。 その後も原告と被告Aは同居していたものの,被告Aは,原告ではなく,被 告Bを選ぶこととし,その旨原告に伝えた。そして,被告Aは,平成29年1月1 2日に原告と同居していたアパートを出て友人宅に宿泊するようになり,同月27日,同アパートから荷物を搬出し,K県に引っ越して原告との別居を開始した。 被告Aは,平成29年8月頃,被告Bに連絡を取り,原告と別れた旨を告げた。その後,被告らは,不妊治療を開始し,被告Aは,平成30年8月に長女を出産した。 2 争点1(権利又は法律上保護される利益の有無)について 同性のカップル間の関係が内縁関係(事実婚)としての保護を受け得るか否か内縁関係は婚姻関係に準じるものとして保護されるべき生活関係に当たると解される(最高裁判所昭和33年4月11 ついて 同性のカップル間の関係が内縁関係(事実婚)としての保護を受け得るか否か内縁関係は婚姻関係に準じるものとして保護されるべき生活関係に当たると解される(最高裁判所昭和33年4月11日判決・民集12巻5号789頁参照)とこ ろ,現在の我が国においては,法律上男女間での婚姻しか認められていないことから,これまでの判例・学説上も,内縁関係は当然に男女間を前提とするものと解されてきたところである。 しかしながら,近時,価値観や生活形態が多様化し,婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況となっている。世界的に見ても,同性のカップル間の婚姻 を法律上も認める制度を採用する国が存在するし,法律上の婚姻までは認めないとしても,同性のカップル間の関係を公的に認証する制度を採用する国もかなりの数に上っていること,日本国内においても,このような制度を採用する地方自治体が現れてきていること(甲13)は,公知の事実でもある。かかる社会情勢を踏まえると,同性のカップルであっても,その実態に応じて,一定の法的保護を与える必 要性は高いということができる(婚姻届を提出することができるのに自らの意思により提出していない事実婚の場合と比べて,法律上婚姻届を提出したくても法律上それができない同性婚の場合に,およそ一切の法的保護を否定することについて合理的な理由は見いだし難い。)。また,憲法24条1項が「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し」としているのも,憲法制定当時は同性婚が想定されていなかった からにすぎず,およそ同性婚を否定する趣旨とまでは解されないから,前記のとお り解することが憲法に反するとも認められない。 そうすると,法律上同性婚を認めるか否かは別論,同性のカップルであっても,その実態を見て内縁関係と同 趣旨とまでは解されないから,前記のとお り解することが憲法に反するとも認められない。 そうすると,法律上同性婚を認めるか否かは別論,同性のカップルであっても,その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては,それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ,不法行為法上の保護を受け得ると解するのが相当である(なお,現行法上,婚姻が男女間に限られて いることからすると,婚姻関係に準じる内縁関係(事実婚)自体は,少なくとも現時点においては,飽くまで男女間の関係に限られると解するのが相当であり,同性婚を内縁関係(事実婚)そのものと見ることはできないというべきである。)。 原告と被告Aが内縁関係と同視できる生活関係にあったか否かそこで,更に進んで,原告と被告Aが,内縁関係と同視できる生活関係にあった と認められるか否かについて検討すると,認定事実のとおり,原告及び被告Aは,平成22年2月から同棲を開始し,原告が不貞行為があったと主張する平成28年の年末から平成29年の年始までに約7年間の同棲生活を行っていたのであるから,比較的長い期間の共同生活の事実があると認められる。また,原告及び被告Aは,同性婚が法律上認められている米国ニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得した上, 日本国内での結婚式・披露宴も行い,その関係を周囲の親しい人に明らかにすること(いわゆるカミングアウト)などもしている。さらに,原告は二人(さらに,将来的には二人の間の子)が住むためのマンションの購入を進め,他方,被告Aは,二人の間で育てる子を妊娠すべく,第三者からの精子提供を受けるなどしていることなどに照らすと,お互いを将来的なパートナーとする意思も有していると認めら れるのであって,これらの事実関係に照 ,二人の間で育てる子を妊娠すべく,第三者からの精子提供を受けるなどしていることなどに照らすと,お互いを将来的なパートナーとする意思も有していると認めら れるのであって,これらの事実関係に照らすと,原告及び被告Aは,日本では法律上の婚姻が認められていないために正式な婚姻届の提出をすることはできず,生殖上の理由から二人双方と血のつながった子をもうけることはできないという限界はあるものの,それ以外の面では,男女間の婚姻と何ら変わらない実態を有しているということができ,内縁関係と同視できる生活関係にあったと認めることができる (被告らは,原告が締結したという保険契約を裏付ける証拠が提出されていないこ とや,婚姻登録及び結婚式の前後で生活費の分担状況に変わりがないことなどを主張するが,これらを踏まえても,前記の認定は左右されない。)。 3 争点2(不貞行為の有無)について原告は,被告らが平成28年12月28日から平成29年1月3日まで一緒に宿泊し,キスや挿入を伴う性行為(不貞行為)を行ったと主張する。 これに対し,被告らは,被告Bは性同一性障害であった上,勃起不能であったから,挿入を伴う性行為は行っていないと主張する。 そこで検討するに,同月4日に原告及び被告らで話合いを行った際,原告が被告らに対し,セックスしたのか否かを確認したのに対し,被告Bは,「そういう風に言えばそうですね。」と述べ,「もちろん,思いとどまった時 ももちろんあったから,1回目は何かそういう雰囲気になっても思いとどまって,やってないです。やらなかったんですけど,次の時に,多分流産した時かな。」,「その時は,なんかもう,見てられなくて。」などと述べているのであって,セックスを明確に否定しない被告Bの返答からすると,被告らは,被告 す。やらなかったんですけど,次の時に,多分流産した時かな。」,「その時は,なんかもう,見てられなくて。」などと述べているのであって,セックスを明確に否定しない被告Bの返答からすると,被告らは,被告Aが流産した後に,少なくとも1回は性行為を行ったという原告の推認が明らかに誤りであるとま では認められない。 しかしながら,被告Bは,男性機能障害(勃起不能)及び性同一性障害であったことから,挿入を伴う性行為はできなかったと供述している。この点,被告Bが男性機能障害であったことを裏付ける客観的な証拠は提出されていないけれども,被告らはシリンジ法(採取した精液をシリンジにより膣内に注入すること)により妊 娠を試みていることBの前記供述が一概に虚偽であるとまではいえない。性同一性障害についても,被告Bは,後日女性への性別適合手術を受けていること(前提度性行為への抵抗があるかは明らかでないものの,性行為を行っていないことを推認させる事実であるといえ,これらの点を踏まえると,被告Bの前記返答のみをも って,被告らが挿入を伴う性行為を行ったと認めるにはなお十分でないといわざる を得ない。 もっとも,挿入を伴う性行為は行っていないという被告らの主張を容れるとしても,不貞行為は,挿入を伴う性行為がその典型例ではあるものの,前記のとおり,内縁関係に準じて認められる原告の法的保護に値する利益が侵害されているか否かが本件の不法行為の成否を左右すると解する以上,必ずしも挿入を伴う性 行為を不貞行為の不可欠な要素とするものではないと解するのが相当であり,かかる解釈に立つ以上,被告らが被告B宅で数日間を共にし,被告Bも認めるキスやペッティング(挿入を除いた性行為)をしたことだけであっても,前記の利益を侵害するものとして不貞行 解するのが相当であり,かかる解釈に立つ以上,被告らが被告B宅で数日間を共にし,被告Bも認めるキスやペッティング(挿入を除いた性行為)をしたことだけであっても,前記の利益を侵害するものとして不貞行為に当たることは明らかである。この点に関する被告らの主張は採用することができない。 4 争点3(被告Bの故意及び特段の事情の有無)について 故意について被告Bは,原告と被告Aが同性であり,同性婚は認められないことを認識しており,原告と被告Aの間に特別に法的な権利義務関係が生じていることの認識はなかったと主張する。 しかしながら,前記のとおり,同性のカップルの間であっても,内縁関係と同視できる生活関係にあったと認められる場合には,法的保護に値する利益が認められるのであって,その基礎となる事実関係を認識している場合には,故意があるというに妨げないというべきである。そして,本件において,被告Bは,原告本人とも会っている(ばかりでなく,被告Aを通じて,両者が交際・同棲 している状況や,今後,被告Aが出産した子は,基本的には原告と被告Aが育てていく意向であることなどを聞かされ,その詳細を十分に認識した上で精子提供をすることに同意していたと認められる(被告B本人・5~6頁)から,その認識をもって,原告と被告Aの関係が内縁関係と同視できる生活関係に当たるとの基礎事実の認識に欠けるところはなく,不法行為の故意があると認められる。 特段の事情について ア平成31年判決は,夫婦の他方と不貞行為に及んだ第三者に対して離婚に伴う慰謝料を請求するためには特段の事情が必要であるとするところ,当該判示は,内縁関係(事実婚)を破綻させた第三者に対し,破綻に係る慰謝料を請求する場合,更には本件のような場合 第三者に対して離婚に伴う慰謝料を請求するためには特段の事情が必要であるとするところ,当該判示は,内縁関係(事実婚)を破綻させた第三者に対し,破綻に係る慰謝料を請求する場合,更には本件のような場合にも妥当すると解するのが相当である。 イそこで,本件について,被告Bが原告と被告Aの関係を破綻させることを意 図して,その関係に対する不当な干渉をするなどして原告と被告Aの関係を破綻のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情が認められるか否かについて検討するに,そもそも,被告Bが被告Aとのつながりを持つに至ったのは,被告Aが原告との間で子を育てていきたいとの考えから第三者による精子提供を求め,被告Bがそれに応じたからであって,被告B自身も,被告Aが被告Bから提供を受けた 精子で妊娠・出産した子について,将来的にその子の成長を見ていければ望ましいという程度の意思は有しているものの,少なくとも原告を排してまでその子に関わっていく意思を有していたとは認められない(乙2,被告B本人・6頁)のであって,被告Bが当初から原告と被告Aの関係を破綻させることを意図していたとは認められない。そのような中,被告らが本件の不貞行為に至ったのは,被告Aが,原 告との間で育てていく子をもうけたいという気持ちもある半面,被告Aが流産した際の原告の対応等から,原告との共同生活を今後も続けていくことに対する消極的な気持ちを抱くに至り,被告Bとの関係を求めたことによると推認されるのであって,被告Bというよりはむしろ被告Aが本件の不貞行為について主たる責任を負う立場にあると認めるのが相当である。 さらに,本件の不貞行為が発覚した後の被告Bの対応について見ても,被告Bは,平成29年1月4日の話合いの中で,被告Aとの関係を継続したいという意向は述 う立場にあると認めるのが相当である。 さらに,本件の不貞行為が発覚した後の被告Bの対応について見ても,被告Bは,平成29年1月4日の話合いの中で,被告Aとの関係を継続したいという意向は述べているものの,最終的には,原告と被告Aの決めたことに従うとしたため,今後のことは原告と被告Aで決めるということで話合いが終わっている。そして,被告Aは,一旦は被告Bと連絡を取らない旨原告との間で約束をし,原告と被告Aの関 係を継続することとしている。それにもかかわらず,結局,被告A が原告との別居を開始するに至ったのは,被告Aが被告Bを捨てて原告と二人での生活を継続することを決意することができなかったことによるものであって,この間,被告Bが原告や被告Aに対し,何らかの働き掛けを行っていたことを認めるに足りる証拠はない。結果的に被告らは婚姻にまで至っているが,これも,同年8月に被告Aが被告Bに対して連絡を取ったことによりその関係が再開されたことによ るものであって,被告Bが原告及び被告Aの関係を破綻させることを意図していたことを推認させるものとまでは認められない。 なお,原告は,被告Aが出産した子を認知することを予定していなかった被告Bが原告と被告Aの関係を壊すことは,未成年者の養育基盤を自ら破壊することになるから,これに介入することは特に許すべきではないと主張するが,この点は,平 成31年判決の判示に照らし,特段の事情を基礎付ける事情とはならないというべきである。また,原告は,被告Bの三者間での話合いにおける発言は信用できないことやマンションについて被告Bが言及したこと等を取り上げ,これらも特段の事情を基礎付ける事実となると主張するけれども,三者間での関係を継続することでも構わない旨の被告Bの発言が虚偽であると きないことやマンションについて被告Bが言及したこと等を取り上げ,これらも特段の事情を基礎付ける事実となると主張するけれども,三者間での関係を継続することでも構わない旨の被告Bの発言が虚偽であるとまではいえない(むしろこれは,被告 Bの真意であると認められる。)し,マンションについての発言も飽くまで被告Bの意見にすぎず,これらが原告と被告Aとの関係に対する不当な干渉に当たり,特段の事情を基礎付けるものとは認められないから,原告の当該主張を採用することはできない。 ウこれらの事情を併せ鑑みると,被告Bについて,原告と被告Aの関係を破綻 させることを意図して,その関係に対する不当な干渉をするなどしたとはいえず,前記特段の事情があるとは認められない。 5 争点4(損害)について財産的損害原告は,本件の不貞行為に係る財産的損害として,①不妊治療の費用(50万円) 及び②米国ニューヨーク州での離婚手続に要する費用(200万円)を請求する。 しかしながら,①不妊治療の費用は,本件の不貞行為前に原告が支出したものであるから,本件と相当因果関係のある損害とは認められない。 また,②離婚手続に要する費用については,その額を裏付ける立証は何らされていない上,日本での同性婚関係を解消することになったとしても,原告及び被告Aは,差し当たり米国ではなく日本で生活していく予定をしていることにも照らすと, あえて多額の費用を掛けてまで,既にしたニューヨーク州での婚姻登録を抹消しなければならない必然性はないというべきであるから,本件の不貞行為から通常生ずべき損害とは認められない。なお,被告Aについては,原告との間で米国においてされた婚姻を解消することを合意し,相互に必要な協力をして当該婚姻の解消の手続を取る旨の調停 ら,本件の不貞行為から通常生ずべき損害とは認められない。なお,被告Aについては,原告との間で米国においてされた婚姻を解消することを合意し,相互に必要な協力をして当該婚姻の解消の手続を取る旨の調停に代わる審判がされている(前提事実⑹)ものの,これをもって 直ちに不法行為法上,原告が同手続を取るのに要する費用全額を被告Aに請求できる根拠とはならない。また,被告Bが原告らの同州での婚姻登録の事実を知っていたか否かは明らかでないところ(被告B本人・14頁),仮に知っていたとすればその登録抹消手続に要する費用が特別損害となる余地はあるけれども,その額が原告の主張するとおり少なくとも200万円にも上ることに加え,それでもなお原告 及び被告Aが婚姻登録を抹消することについてまで,被告Bが予見しており又は予見することが可能であったとは認められない。 したがって,原告が主張する前記の財産的損害について,被告らが賠償義務を負うとは認められない。 慰謝料 ア被告Aについて,原告及び被告Aは,同性であることによる法律上及び生殖上の障害を除けば,ほぼ男女間の内縁関係と変わりない実態を備えている。 この点,被告Aは,流産後の原告の対応(術後検診に付き添わなかったこと(認定)などから,原告が自分を家族として見てくれていないのではないか という不信感も感じ,原告との関係を今後も続けていくかについて消極的な考えも 抱いていたところであり,このような点を踏まえると,原告と被告Aとの関係が本件の不貞行為前は完全に円満であったとまでは認められないけれども,被告Aも,少なくとも表面上は,原告との共同生活の解消を求めるなどの行動に及ぶことはなく,平成28年の年末の時点でも,仮に子を授かれば,その子は原告と育てていく意向を有してい 認められないけれども,被告Aも,少なくとも表面上は,原告との共同生活の解消を求めるなどの行動に及ぶことはなく,平成28年の年末の時点でも,仮に子を授かれば,その子は原告と育てていく意向を有していたのであり(被告A本人・28頁。なお,被告Aは,前記の流産に 関する点以外にも,原告との考え方の違いがあり,喧嘩から別れ話に至ることもあったと述べるものの,これは円満な夫婦関係でもあり得ることであり,これをもって両者の関係が円満でなかったとは認められず,原告及び被告Aの関係が既に破綻していたとは認められないことも明らかである。),だからこそ,原告も,被告Aが被告Bと人工授精を行うものと信頼して,被告Aが被告Bの下に行くことを認めて いたのである。しかるに,本件の不貞行為の結果,このような関係が破綻し,解消に至っているのであるから,原告としては,当該破綻について大きな精神的苦痛を被ったと推認される。 これに対し,被告Aは,原告と被告Aとの関係解消については原告も合意しており,被告らの不貞行為や被告らが関係の継続を希望したことが原因ではないと主張 するけれども,原告は,被告らの不貞行為や関係継続の意向を踏まえ,やむなく合意せざるを得なかったにすぎないから,当該合意の事実をもって不貞行為との相当因果関係を否定する被告Aの主張は到底採用することができない。 もっとも,原告と被告Aとの関係は,日本の法律上認められている男女間の婚姻やこれに準ずる内縁関係とは異なり,現在の法律上では認められていない同性婚の 関係であることからすると,少なくとも現時点では,その関係に基づき原告に認められる法的保護に値する利益の程度は,法律婚や内縁関係において認められるのとはおのずから差異があるといわざるを得ず,そのほか,本件の一切の事情を踏まえると, も現時点では,その関係に基づき原告に認められる法的保護に値する利益の程度は,法律婚や内縁関係において認められるのとはおのずから差異があるといわざるを得ず,そのほか,本件の一切の事情を踏まえると,原告の精神的苦痛を慰謝するに足りる額としては,100万円を認めるのが相当である。 イ被告Bについて 被告Bについては,前記で述べたとおり,平成31年判決にいう特段の事情があるとは認められないから,被告Bは,原告に対し,同性婚の破綻に係る慰謝料の支払義務は負わない(平成31年判決も指摘するとおり,不貞行為自体を理由とする不法行為責任を負うべき場合があるとしても,本件において,被告らが原告に対し,本件における慰謝料の根拠(不貞慰謝料か離婚慰謝料か)について求釈明を したのに対し,原告は,原告準備書面2において離婚慰謝料に係る前記特段の事情があるとの回答しかしておらず,同準備書面3においても離婚についての精神的苦痛を求めるとしていることに照らすと,原告がいわゆる不貞慰謝料を請求しているとは解されない。なお,原告は,同準備書面において,貞操義務違反によって生じる精神的苦痛に係る慰謝料を請求するとも主張しているが,貞操義務は夫婦(内縁 を含む。)間において生ずるものであり(民法752条),本件でいえば原告と被告Aとの間において,内縁関係に準じて認められる余地があるにすぎないものであるから,第三者である被告Bとの関係では,前記のとおり被告Bに特段の事情が認められず,強い違法性があるとまではいえない以上,原告の被告Bに対する貞操義務違反に係る慰謝料請求も認め難いというべきである。)。 弁護士費用原告は,これまでの協議,調停及び本件訴訟に係る弁護士費用(報酬)として合計87万4000円の損害を主張する 義務違反に係る慰謝料請求も認め難いというべきである。)。 弁護士費用原告は,これまでの協議,調停及び本件訴訟に係る弁護士費用(報酬)として合計87万4000円の損害を主張するが,協議及び調停については,必ずしも法律専門家である弁護士に依頼する必要性が高いとまでは認められず,本件の不貞行為との相当因果関係は認められない。他方,本件訴訟については,前記で認定し た慰謝料額の1割である10万円を認めるのが相当である。 第4 結論よって,原告の請求は,主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し(なお,遅延損害金の起算点は,原告が主張する本件の最終不貞行為の日(被告らが被告Bのアパートで共に過ごした最終日)の翌日である平成29年1月4日とする。),そ の余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 宇都宮地方裁判所真岡支部 裁判官中畑洋輔
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