主文 被告人を懲役4年6月に処する。 未決勾留日数中230日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,Bらと共謀の上,株式会社Cの名称で,「器の経済理論」を提唱し,同社の代理店等になった者らをして会員を募り,会員となった者が指定された商品購入費名目の入会費及び買い支えなどと称する新規入会費の支払いを続ける限り,会員として高額の配当を受けることができるとのシステムで金銭を受け入れていたところ,真実は,買い支えを続けても後順位会員を常に入会させなければ,先順位会員は配当を受けられない上,会員から受け入れた入会費等は,先順位者への配当,Cの経費名目の出費及び被告人らの個人的用途に費消され,他に収益が得られる見込みもなく,上記システムは破たんし会員に対して約定どおりの配当金の支払いができなくなっていたのに,これらの事実を秘し,会員になれば,短期間のうちに拠出金の10倍以上の特別販売費等名目での配当を受けることが可能であるかの如く装い,3万円コース及び30万円コースの各商品購入費名下に金員を詐取しようと企て,別紙犯罪事実一覧表記載のとおり,平成10年7月上旬ころから同年9月25日ころまでの間,前後49回にわたり,福島県a郡b町c字d○番地D方ほか43か所において,Dほか54名に対し,被告人又は情を知らないEらにおいて,「器の経済理論に基づくCのシステムでは,会員は,指定した買い支えを行うことを条件として,必ず配当を受けることができます。会員は,既に数万人を超え,多くの人に認知されています。会員は,買い支えを続ける限り,当社の会員のご案内というパンフレットに記載されたとおり7回目までの配当を必ず行います。 たとえ,買い支えをし す。会員は,既に数万人を超え,多くの人に認知されています。会員は,買い支えを続ける限り,当社の会員のご案内というパンフレットに記載されたとおり7回目までの配当を必ず行います。 たとえ,買い支えをしなくても,入会時の拠出金よりも多くの配当を受けることができます」などと嘘を言い,上記Dほか54名をしてその旨誤信させ,よって,同人らから,同年7月14日から同年10月8日までの間,前後81回にわたり,東京都千代田区e○丁目○番地株式会社F銀行e支店に開設した株式会社C名義の普通預金口座に,現金合計2581万3500円を振込送金させ,もって人を欺いて金員を交付させた。 (証拠)省略(事実認定の補足説明) 1 被告人及び弁護人は,「株式会社Cでは,自己の直下の後順位に2名の会員がつかない限り特別販売費等の支払いはしないこととなっており,会員に対してもそのような説明をしていて,定期に定額の金銭の支払いをすることを約束したことはない。したがって,Cが経済的に破綻することはあり得ず,また,「器の経済理論」は,一定数の会員が集まった時点で事業を展開することを目的としたものであって,金銭を騙し取るといったつもりは全くなかった」などと主張し,本件各事実について詐欺罪は成立しない旨主張している。 2(1) しかし,関係各証拠によれば,①BらCの幹部,Cの代理店として活動していた者,本件被害者らは皆異口同音に,被告人が,Cのシステムでは,自ら新規会員を勧誘しなくても,会員になってその後の買い支え等を行えば,定期的に金銭の支払いを受けることができ,当初支出した金銭よりはるかに多額の金銭を受け取ることができる旨説明をしていた,といった趣旨の供述をしていること,②Cで作成していた「会員のご案内」なるパンフレットには,一見して,10日ごとに金銭の支払いが受けられ,合計で に多額の金銭を受け取ることができる旨説明をしていた,といった趣旨の供述をしていること,②Cで作成していた「会員のご案内」なるパンフレットには,一見して,10日ごとに金銭の支払いが受けられ,合計では出資した金額以上の支払いを受けられるかのような記載がなされていること,③Cで使用されていた会員管理のためのコンピューターのプログラムは,これが導入された当初は自己の直下に2名の会員がつかない限り特別販売費などの支払いがなされないものであったが,その後,被告人の依頼により直下に2名の会員がついたか否かにかかわらず支払いを開始するものに変更がなされ,本件犯行当時には,会員に対して10日ごとの支払い日に支払うべき支払額を算出するといった内容のものとなっていたこと,④平成10年5月に会員に対する支払いが滞った際,会員に対し被告人の主張するようなシステムの内容について改めて説明することなく,予定通りの支払日に金銭の支払いをなすよう指示していること(なお,被告人及び弁護人は,支払いが滞ったのはCの財政が破綻し資金繰りがつかなくなっていたためではなく,会員に対する支払いを管理していたコンピューターの不具合によるものである旨主張しているが,Bらの供述によれば,そのような事実があったことは認められない)などの事実が認められる。そうすると,被告人がCの事業に関し,会員に対して,特別販売費等の名目で,定期に定額の金銭の支払いを約束していた事実は優に認められるところである。 (2) 被告人は,前記のように会員に対して定期に定額の支払いをすることを約束したことはなく,後順位の会員がついた時点で支払いをする旨説明していた旨供述しているが,共犯者や関係者の供述と全く矛盾している上,そもそも,被告人が主張するような内容の約定で,不特定の人間に対し,たやすく金銭の出資を募る の会員がついた時点で支払いをする旨説明していた旨供述しているが,共犯者や関係者の供述と全く矛盾している上,そもそも,被告人が主張するような内容の約定で,不特定の人間に対し,たやすく金銭の出資を募ることができたとは考え難いことからして,被告人の弁解は到底信用できない。 3 そうすると,本件犯行当時,Cのシステムが経済的に破綻しており,会員に支払うべき金銭が調達できない状態になっていたことも明白であるというべきであり,これに加えて,被告人自身,開催したセミナー等でCのシステムを多数の人間に説明して,会員になるよう勧誘活動を行っていたこと,支払いが遅滞した際も,コンピューターにウィルスが入ったなどと事実と異なる説明をしていたこと,C社員らに対し,会員に対しては金がないとは言うなといった趣旨の発言をしていたことなどからすれば,被告人が詐欺罪の犯意を有していたことも明らかに認められる。 4 その他,被告人及び弁護人は詐欺罪が成立しない旨縷々主張しているが,いずれも本件各事実について詐欺罪の成立を妨げるようなものではなく,被告人が本件各事実について詐欺罪の罪責を負うことは明らかである。 (量刑理由)本件は,被告人が,Cの幹部らと共謀の上,被告人が考案したという「器の経済理論」なるものを提唱し,会員になれば短期間に拠出金以上の配当金が確実に得られるなどと虚偽の事実を述べて宣伝を行い,入会金名下に55名の被害者から,総額2500万円余りの金員を騙し取ったという事案である。 Cの行っていた事業は,実質的にはいわゆるねずみ講と同様のものであり,その構造上,いずれ破綻することは明白であるのに,被告人らは,詳細なパンフレットを準備したり,あるいは被告人自ら各地でセミナーを開催し,「器の経済理論」なるまやかしの理論をまことしやかに提唱して,会員になれば短期間 れ破綻することは明白であるのに,被告人らは,詳細なパンフレットを準備したり,あるいは被告人自ら各地でセミナーを開催し,「器の経済理論」なるまやかしの理論をまことしやかに提唱して,会員になれば短期間に高額の配当を受け取ることができるなどとして会員を募集し,多額の金員を取得していたものであって,犯行は巧妙な計画に基づくものである。また,Cの組織は,全国各地に代理店総数47か所,営業所総数のべ370か所にのぼっており,公訴事実にかかる分だけでも被害金額は2500万円を越え,被害者の数も55名にのぼるなど,大規模かつ組織的な犯行である。本件と同種の悪徳経済事犯がこれまでにも度々社会問題となっており,被告人自身も「ネットワークビジネス」などと称する同様の事業に関与していた経験があるなど,本件犯行は模倣性が非常に強く,社会的影響も大きい。 さらに,被告人は,Cのワンマン経営者として犯行を全面的に主導してきたものであり,犯行の過程でCの資金から相当額の利得を得ていたことも窺われる上,本件犯行を全面的に否認し,不合理な弁解に終始しているなど反省の情も全く認められない。 被害者らの中には,自らが会員になるだけでなく,知人や親族をCへ入会するよう勧誘した者もおり,その結果周囲との人間関係に不調をきたすに至るなど,金銭的な面以外の被害結果も決して軽視できるものではなく,処罰感情も厳しいところ,被告人による慰謝の措置もなんらなされていない。 以上からすれば,被告人の刑事責任は重大であり,これまで前科前歴のないことといった,被告人のために斟酌すべき事情を最大限考慮しても,主文のとおりの実刑に処するのが相当である。 (検察官中村融,私選弁護人片平幸夫各出席)(求刑-懲役5年)平成14年2月28日横浜地方裁判所第2刑事部 しても,主文のとおりの実刑に処するのが相当である。 (検察官中村融,私選弁護人片平幸夫各出席)(求刑-懲役5年)平成14年2月28日横浜地方裁判所第2刑事部裁判長裁判官矢村宏 裁判官柳澤直人 裁判官石井芳明※別紙犯罪事実一覧表省略
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