平成25年3月7日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第21532号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成25年1月22日判決 静岡県富士宮市〈以下略〉 原告朝霧ヨーグル豚販売協同組合 訴訟代理人弁護士森本紘章 同 西尾亮平 同 松戸大介 同 山岸哲平 埼玉県深谷市〈以下略〉 被告A埼玉県児玉郡〈以下略〉 被告株式会社小林畜産 被告ら訴訟代理人弁護士正野建樹 同 正野寛樹 被告ら訴訟代理人弁理士伊藤捷雄 主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して,723万9915円及びこれに対する被告Aについては平成23年5月12日から,被告株式会社小林畜産については同月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その3を被告らの負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決の第1項は,仮に執行することができる。 告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その3を被告らの負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決の第1項は,仮に執行することができる。 - 2 -事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して,2611万7650円及びこれに対する被告Aについては平成23年5月12日から,被告株式会社小林畜産については同月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,「ヨーグルトン」の標準文字からなる商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である原告が,被告らが本件商標と類似の標章である別紙標章目録1及び2記載の各標章(以下「被告各標章」と総称し,それぞれを「被告標章1」,「被告標章2」という。)を付した商品の譲渡等をした行為が,原告の商標権の侵害行為に当たる旨主張して,被告らに対し,商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。 2 争いのない事実等(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者ア原告は,組合員の取り扱う乳酸発酵飼料で飼育された豚の共同購入,共同加工,販売等を目的とする協同組合である。 イ被告Aは,養豚業を営む者である。 ウ被告株式会社小林畜産(以下「被告小林畜産」という。)は,総合食肉の卸売及び小売販売等を目的とする株式会社である。 (2) 原告の商標権原告は,次のとおりの商標権(以下「本件商標権」という。)を有している。 登録番号商標登録第4722030号出願日平成14年10月10日- 3 -設定登録日平成15年10月31日移転登録日 う。)を有している。 登録番号商標登録第4722030号出願日平成14年10月10日- 3 -設定登録日平成15年10月31日移転登録日平成16年7月9日指定商品第29類「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」登録商標(本件商標) ヨーグルトン(標準文字)(3) 被告各標章に係る特許庁における手続の経緯等ア(ア) 被告各標章は,本件商標と類似する。 (イ) 豚肉は,本件商標権の指定商品である「食肉」又は「肉製品」に含まれる。 イ以下に述べる経緯により,被告各標章は商標登録がされた後,その商標登録を無効とする旨の審決の確定により,当該商標登録が抹消された。 (ア)a 被告Aは,平成17年3月14日,被告標章1(標準文字)について,下記の商品を指定商品とする商標登録出願をし,平成18年1月13日,商標登録第4920741号として商標権の設定登録を受けた(甲26の2)。 記第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」b 原告は,平成18年4月6日,被告標章1が,本件商標と類似し,- 4 -その指定商品が本件商標の指定商品と同一又は類似するので,商標法4条1項11号に該当すること,被告標章1がその指定商品中の「食用油脂,乳 18年4月6日,被告標章1が,本件商標と類似し,- 4 -その指定商品が本件商標の指定商品と同一又は類似するので,商標法4条1項11号に該当すること,被告標章1がその指定商品中の「食用油脂,乳製品」について同項16号に該当することを理由に,被告標章1の商標登録に対する登録異議の申立て(異議2006-90139号事件)をした。 特許庁は,同年10月24日,上記登録異議事件について,被告標章1は,本件商標と非類似の商標であって,商標法4条1項11号に該当せず,また,同項16号にも該当しないとして,「登録第4920741号商標の商標登録を維持する。」との決定(以下「別件決定」という。)をし,別件決定は,同年11月13日,確定した(甲26の2,乙1)。 (イ) 被告Aは,平成18年12月20日,被告標章2について,下記の商品を指定商品とする商標登録出願をし,平成19年8月31日,商標登録第5074465号として商標権の設定登録を受けた(甲27の2)。 記第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」(ウ)a 原告は,平成21年11月20日,被告標章1は,本件商標と類似し,「食用油脂,乳製品」を除く指定商品が本件商標の指定商品と同一であるので,その指定商品についての商標登録は,商標法4条1項11号に該当する無効理由があること,被告標章1は,同項16号に該当する無効理由があることを理由に,被告に対し,被告標章1の- 5 -商標登録の無効審判請求(無効2009-890126号事件)をした(甲5の する無効理由があること,被告標章1は,同項16号に該当する無効理由があることを理由に,被告に対し,被告標章1の- 5 -商標登録の無効審判請求(無効2009-890126号事件)をした(甲5の1)。 また,原告は,同日,被告標章2についても上記と同様に同項11号及び16号に該当する無効理由があることを理由に,被告標章2の商標登録の無効審判請求(無効2009-890127号事件)をした(甲5の2)。 b 特許庁は,平成22年6月2日,無効2009-890126号事件について,被告標章1は,本件商標と類似し,「食用油脂,乳製品」を除く指定商品が本件商標の指定商品と同一であるので,商標法4条1項11号に該当し,一方,被告標章1は同項16号に該当しないとして,「登録第4920741号の指定商品中「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」についての登録を無効とする。その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。」との審決(以下「別件審決1」という。)をした(甲5の1)。 また,特許庁は,同月7日,無効2009-890127号事件について,被告標章2は,本件商標と類似し,「食用油脂,乳製品」を除く指定商品が本件商標の指定商品と同一であるので,商標法4条1項11号に該当し,かつ,同項16号にも該当するが,一方で,「食用油脂,乳製品」の指定商品については,被告標章2は同項16号に該当しないとして,「登録第5074465号の指定商品中「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油 ,被告標章2は同項16号に該当しないとして,「登録第5074465号の指定商品中「食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープ- 6 -のもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」についての登録を無効とする。その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。」との審決(以下「別件審決2」という。)をした(甲5の2)。 (エ) 被告Aは,平成22年7月9日,別件審決1(審判請求不成立とした部分を除く。以下同じ。)の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10215号事件。以下「別件審決取消訴訟1」という。)を,同月16日,別件審決2(審判請求不成立とした部分を除く。以下同じ。)の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成22年(行ケ)第10226号事件。以下「別件審決取消訴訟2」という。)を提起した。被告Aは,同年10月4日付けで,被告各標章の商標権の指定商品のうち,「第29類食用油脂,乳製品,豚肉以外の食肉,豚肉以外の食肉を使用した肉製品」について放棄し,当該放棄に係る指定商品の登録の抹消(一部抹消)がされた(甲26の2,27の2)。 知的財産高等裁判所は,同年11月30日,別件審決取消訴訟1及び2において,いずれも,被告Aの請求を棄却する旨の判決(以下,それぞれを「別件判決1」,「別件判決2」という。)を言い渡した。 被告Aは,別件判決1及び2についてそれぞれ上告及び上告受理の申立て(別件判決1につき平成23年(行ツ)第73号,同年(行ヒ)第76号事件。別件判決2につき同年(行ツ)第74号,同年(行ヒ)第77号事件)をし 件判決1及び2についてそれぞれ上告及び上告受理の申立て(別件判決1につき平成23年(行ツ)第73号,同年(行ヒ)第76号事件。別件判決2につき同年(行ツ)第74号,同年(行ヒ)第77号事件)をしたが,最高裁判所は,平成23年3月24日,いずれについても,上告を棄却し,事件を上告審として受理しない旨の決定をした(甲6の1,2)。これにより,別件審決1及び2は確定し,同月31日,被告各標章の商標登録が抹消された。 (4) 被告らの行為- 7 -ア被告Aは,自らが飼育した豚を被告小林畜産に販売し,被告小林畜産は,被告Aから仕入れた豚をと殺解体して「枝肉」(皮をはぎ,内臓・頭・尾・四肢の端部を取り去った骨付きの肉)とし,この枝肉を脱骨し,部位ごとに分けて「精肉」としている(乙25,28)。 イ被告小林畜産は,自社のホームページ上で,被告Aから仕入れた豚を加工した精肉の商品に関する広告に,被告各標章を表示した上で,「「ハーブヨーグルトン」は,ハーブ入り発酵リキッド飼料を食べて育った新しい豚肉です。」,「高品質で安全・安心な「ハーブヨーグルトン」をぜひご賞味下さい。」などと掲載した(甲7の3枚目)。 被告小林畜産は,遅くとも平成20年1月27日から平成23年1月31日までの間,スーパーマーケットチェーン「オーケーストア」を展開・運営するオーケー株式会社(以下「オーケー」という。)に対し,被告標章2を付して小売することを条件に,上記豚の精肉の卸売をし,オーケーストアの各店舗では,上記豚の精肉を更に加工してパック包装し,このパック包装に被告標章2を付した商品を店頭で販売していた(乙25,30)。 3 争点本件の争点は,①被告らの過失の推定(商標法39条において準用する特許法103条)を覆すべき事情の有無等(争点1),②被告ら 標章2を付した商品を店頭で販売していた(乙25,30)。 3 争点本件の争点は,①被告らの過失の推定(商標法39条において準用する特許法103条)を覆すべき事情の有無等(争点1),②被告らが賠償すべき原告の損害額(争点2)である。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(過失の推定を覆すべき事情の有無等)について(1) 被告らの主張ア被告らの被告各標章の使用行為については,以下のとおり,被告Aにおいては本件商標権侵害に係る過失の推定(商標法39条で準用する特許法103条)を覆すべき事情があり,また,被告小林畜産においては,そも- 8 -そも過失が推定されないから,被告らは無過失である。 (ア) ①被告標章1の商標登録について,原告が被告標章1と本件商標と類似するとして登録異議の申立てをしたので,被告Aが意見書を提出して意見を述べたところ,特許庁は,被告標章1と本件商標は非類似であると判断し,被告標章1の商標登録を維持する旨の別件決定をしたこと,②被告標章1の商標登録出願前に行われた弁理士による調査の結果,過去の特許庁の登録例では,食品関係で前段に「ハーブ」を付けた既登録例が多数あり,その中で,「ハーブ△△△△」という登録例に対し,後段の「△△△△」が同一の登録例も多数発見されたこと,③被告標章2についても,その商標登録出願前に,同様の調査を行った結果,同一又は類似のものが発見されなかったこと,④「商標登録有効確認の訴え」というような商標登録の有効性を保証する制度が存在しないことによれば,被告Aにおいて,被告各標章の使用が本件商標との関係で,商標権侵害にならないかどうかを十分に調査検討すべき義務を尽くしたものといえる。 このように被告Aにおいては,被告各標章の使用が本件商標権を侵害していないかどうかの調 使用が本件商標との関係で,商標権侵害にならないかどうかを十分に調査検討すべき義務を尽くしたものといえる。 このように被告Aにおいては,被告各標章の使用が本件商標権を侵害していないかどうかの調査検討を十分に行っており,もはやこれ以上の手段は採りえない状況であったといえるから,過失の推定を覆すべき事情がある。 そうでなければ,特許庁の審査は全く当てにならず,商標登録制度そのものの崩壊を意味し,また,法的安定性や経済的安定性を著しく損なうこととなり,そこまで被告Aに過失責任を負わせることは酷である。 (イ) 被告小林畜産は,被告各標章の単なる使用者であって,被告Aが取得した被告各標章の商標登録の有効性について調査確認すべき義務を負うことはないから,被告小林畜産においては,そもそも過失が推定されない。 - 9 -(ウ) したがって,被告らは,被告らの被告各標章の使用行為について無過失である。 イまた,仮に被告らに過失が認められるとしても,被告標章1の商標登録を無効とする別件審決1の謄本が被告Aに送達された平成22年6月17日以降の被告各標章の使用行為に限られるというべきである。 (2) 原告の主張ア被告らが被告標章1について主張する事情は,被告らの過失の推定を覆すべき事情に当たらない。 (ア) 登録異議申立制度は,商標登録を行った特許庁自身に登録処分の是非を再考させる行政的制度であるのに対し,商標登録の無効審判制度は,当事者間の具体的紛争の解決を目的とする制度であり,両制度は,その趣旨目的が異なる。登録異議申立制度は,一種の情報提供制度であるため,商標登録を維持する旨の決定(以下「登録維持決定」という。)に対して不服申立てができず,登録維持決定に一事不再理効が認められないので,登録維持決定がされた後においても,無効 情報提供制度であるため,商標登録を維持する旨の決定(以下「登録維持決定」という。)に対して不服申立てができず,登録維持決定に一事不再理効が認められないので,登録維持決定がされた後においても,無効審判請求により同一主張,同一事実のもとでも商標登録が無効とされることがあることは,あらかじめ商標法が予定しているところである。 このように登録異議申立制度は,特許庁に判断の再考を促す機会とはなるものの,当事者対立構造や不服申立てによる十分かつ慎重な審理の機会が確保されている制度ではなく,そのような役割を専ら商標登録の無効審判請求に委ねている商標法の構造に鑑みれば,登録維持決定は,その後の無効審判請求により覆される可能性のあることを内包し,当該商標登録の有効性を担保するものでないから,被告Aにおいて,別件決定の存在をもって被告標章1の商標登録の有効性を信じたとしても,そのことは過失の推定を覆すべき事情とはならない。 (イ) 被告らが被告標章1の事前の調査資料として提出する乙2の1な- 10 -いし7及び乙3は,いずれも被告標章1の商標登録の出願日(平成17年3月14日)より前に作成されたものではなく(乙2の1の作成日付は2009年(平成21年)11月13日,乙3の4頁目の「ハーブテラス」の商標の出願日は平成20年3月17日である。),これらの資料は,被告らの事前の調査を裏付けるものではない。 また,仮に被告らが主張するように被告A又はその依頼を受けた弁理士が過去の商標登録例について調査を行っていたとしても,商標の類似判断に当たっては,称呼,外観,観念及び取引の実情を考慮して,各商標ごとに個別に判断されるべきものであるから,過去の特許庁における類似商標登録例が,被告標章1が本件商標と非類似であることを保証するものではないし,拒絶査定 外観,観念及び取引の実情を考慮して,各商標ごとに個別に判断されるべきものであるから,過去の特許庁における類似商標登録例が,被告標章1が本件商標と非類似であることを保証するものではないし,拒絶査定例を含めて総合的に評価することなしに,過去の類似商標登録例の存在それ自体が単独で基礎事情として考慮されることはない。本件においては,少なくとも,「ハーブ△△△△」と「△△△△」という登録例が存在するという事実だけでなく,「ハーブ△△△△」と「△△△△」の拒絶査定例についても調査を行い,登録例と拒絶査定例とで判断が異なった事情等を考察した上で,本件の具体的事情に照らして検討をしたのでなければ,商標の類似性判断の調査としては片面的・非合理的であり,不十分である。 さらに,弁理士の調査や意見を信用したからといって,被告らが被告標章1が本件商標と類似しないと判断したことに相当の理由があるということはできない。 (ウ) 以上のとおり,被告らが被告標章1について主張する前記(ア)及び(イ)の事情は,被告らの過失の推定を覆すべき事情に当たらない。 イ被告標章2は,被告標章1と同様に,「ヨーグルトン」の文字を構成に含むものであるが,被告標章2の商標登録出願に当たり,被告Aが被告標章1とは別途調査を行ったことを裏付ける証拠は提出されておらず,被告- 11 -標章2についても十分な調査は行われていない。 したがって,被告標章2の使用行為について,被告らの過失の推定を覆すべき事情は存在しない。 2 争点2(原告の損害額)について(1) 原告の主張ア被告らの不法行為責任被告らは,遅くとも平成20年1月27日から平成23年5月2日までの間,本件商標と類似する被告各標章を被告小林畜産のホームページ上で展示し,商品としての豚肉の広告をするとと 被告らの不法行為責任被告らは,遅くとも平成20年1月27日から平成23年5月2日までの間,本件商標と類似する被告各標章を被告小林畜産のホームページ上で展示し,商品としての豚肉の広告をするとともに,豚肉のパッケージに被告標章2が付された商品が実際に販売されていたものであり,かかる被告らの行為は,本件商標に類似する商標の使用(商標法37条1号)に当たり,本件商標権の侵害とみなす行為に該当する。 そして,被告らには故意又は過失があるから,被告らは,原告に対し,本件商標権侵害の不法行為(共同不法行為)に基づく損害賠償義務を負う。 イ商標法38条3項に基づく損害額商標法38条3項によれば,原告は,被告らに対し,本件商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額(使用料相当額)を自己が受けた損害の額として,その賠償を請求することができる。 (ア) 本件商標の使用料a 原告は,組合員に対し,本件商標を付した豚肉を,枝肉1㎏当たり31.5円(消費税込み)の本件商標の使用料を上乗せして販売している。 また,ブランド豚において,ブランドの使用料対価を枝肉1㎏当たり30円に設定している例が他にもあり(甲21,22),枝肉1㎏当たり30円は,ブランド豚の使用料対価として特段不合理ではない。 - 12 -したがって,被告らの本件商標権侵害行為により受けた原告の使用料相当額の損害額は,枝肉1㎏当たり31.5円で算定されるべきである。 b 甲10の3(原告作成の年度事業計画)には,「30円(豚舎新築特別賦課金分10円,運搬処分分10円は共同購入単価に含む。)」との記載がある。甲10の3は,本件商標の使用料について経費算入項目(豚舎新築特別賦課金分,運搬処分分)を併せて説明することで,本件商標の使用料が低廉であることを組合員に理解 同購入単価に含む。)」との記載がある。甲10の3は,本件商標の使用料について経費算入項目(豚舎新築特別賦課金分,運搬処分分)を併せて説明することで,本件商標の使用料が低廉であることを組合員に理解してもらうために作成された内部資料である。 この点に関し,被告らは,甲10の3は,「朝霧ヨーグル豚」の文字からなる原告の登録商標(以下「朝霧ヨーグル豚商標」という。)に関する資料であり,本件商標に関するものではない旨主張する。 しかし,原告は,朝霧ヨーグル豚商標と並行して本件商標を使用しており,本件商標と朝霧ヨーグル豚商標は,別個独立に使用されているわけではないし,朝霧ヨーグル豚商標を使用する際に,「ヨーグルトン豚」とルビを振ることによって,本件商標が併記されている。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 (イ) 被告各標章を使用した豚肉の販売数量被告Aは,年間3000頭の豚を被告小林畜産に出荷し,被告小林畜産は,被告Aから仕入れた豚の豚肉に被告各商標を使用して,オーケー(オーケーストア分)及びオーケー以外(甲18,19記載の飲食店への提供分等)に販売している。 (ウ) 小括農林水産省の食肉流通統計(甲8)によると,平成21年度における豚肉の「年間枝肉生産量」を「と畜頭数」で除した豚1頭当たりの平均枝肉生産量は約77.2㎏である。 - 13 -そうすると,平成20年1月27日から平成23年5月2日までの間の被告らの被告各標章の使用に対する本件商標の使用料相当額は,2374万3319円となり,同額が商標法38条3項に基づく原告の損害額である。 【計算式】(3000頭×77kg×31.5円)×(3年+96日÷365日)=2374万3319円(エ) 被告らの主張についてa 被告らは,被告小林畜産が被告A 基づく原告の損害額である。 【計算式】(3000頭×77kg×31.5円)×(3年+96日÷365日)=2374万3319円(エ) 被告らの主張についてa 被告らは,被告小林畜産が被告Aから仕入れた豚を精肉にして販売しているのはオーケーのみであり,平成20年1月1日から平成23年1月31日までの間のオーケーに対する精肉の納品重量は,オーケー作成の乙30の「仕入重量」欄に記載のとおりである旨主張する。 しかし,乙30は,被告ら及び本件訴訟に関して重大な利害関係を有するオーケーによって作成された資料であり,取引のために日々の業務において作成された資料ではなく,本件訴訟に提出するために,被告小林畜産の依頼によってわざわざ作成された資料であるのに,その内容を裏付ける客観的な証拠は全く提出されていないから,信用することができない。 また,甲18及び19に照らすと,被告小林畜産は,被告各標章を付した豚肉をオーケー以外の小売店や飲食店等にも販売していたはずである。 したがって,被告らの上記主張は失当である。 b 被告らは,平成20年1月27日から平成23年1月31日までの間のオーケーに対する豚の精肉の販売量を50万3618.9kgとし,これに上記期間中の東京・大宮・横浜の三市場における豚枝肉の相場平均価格428.6円を乗じ,さらに,本件商標の寄与率0.5%を乗じて算出した使用料相当額を主張する。 - 14 -しかし,枝肉の相場平均価格は,被告Aが被告小林畜産に対して販売したとされる価格であって,オーケーに対する販売価格ではない点,豚肉のような生鮮食品は,消費者が商品の出所を判断するに当たってはパッケージに貼付されている標章によるところがほとんどであるため,本件商標が果たす役割は非常に大きいにもかかわらず,本件商標の寄 点,豚肉のような生鮮食品は,消費者が商品の出所を判断するに当たってはパッケージに貼付されている標章によるところがほとんどであるため,本件商標が果たす役割は非常に大きいにもかかわらず,本件商標の寄与率を0.5%としている点において,被告らの上記主張は,不合理である。 ウ弁護士費用原告の弁護士費用相当額の損害額は,前記ア(ウ)の1割に相当する237万4331円を下らない。 エまとめ以上によれば,原告は,被告らに対し,本件商標権侵害の不法行為(共同不法行為)に基づく損害賠償として2611万7650円(前記イ(ウ)及びウの合計額)及びこれに対する訴状送達の日(被告Aについては平成23年5月12日,被告小林畜産については同月13日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。 (2) 被告らの主張ア被告各標章の使用期間について被告らによる被告各標章の使用期間は,平成20年1月27日から平成23年1月31日までであり,被告らは,同年2月1日以降,被告各標章を使用していない。 被告らは,同年1月31日に豚肉の包装パックに被告標章2を使用することを中止し,同年2月1日以降は,豚肉の包装パックに被告標章2の「ハーブヨーグルトン」の文字を「井田さん家の豚」の文字に置き換え,「井田さん家の豚」の文字を削除した構成の標章(以下「井田さん家の豚標章」- 15 -という。乙4の1,2)を使用している。 イ商標法38条3項に基づく損害額の主張に対し(ア) 本件商標の使用料について原告の組合員に対する本件商標の使用料が枝肉1kg当たり30円であるとの原告の主張は,否認する。 原告が根拠とする甲10の3には,「組合手数料」と記載され,商標の使用料との記載は一切ない。かかる 原告の組合員に対する本件商標の使用料が枝肉1kg当たり30円であるとの原告の主張は,否認する。 原告が根拠とする甲10の3には,「組合手数料」と記載され,商標の使用料との記載は一切ない。かかる組合手数料には,「豚舎新築特別賦課金分」や「運搬処分分」といった費用も計上されており,もはや商標の使用料とは異なるものとなっている。また,そもそも甲10の3は,朝霧ヨーグル豚商標に関する資料であり,本件商標とは無関係である。 (イ) 使用料相当額の算定方法について商標法38条3項の使用料相当額の算定方法は,販売量と単価と使用料率を乗じて損害を算定すべきである。 a 販売量被告小林畜産は,オーケーストアの店頭で販売に供された豚肉について被告標章2を使用したのであるから,使用料相当額算定の基礎となる販売量は,実際に店頭で販売に供された豚肉の量を基準とすべきである。 被告小林畜産は,被告Aから仕入れた豚をと殺解体して「枝肉」とし,この枝肉を脱骨し,部位ごとに分けて「精肉」とした上で,オーケーに対し,被告標章2を付して小売することを条件に販売し,さらに,オーケーは,オーケーストアの各店舗で,納品された精肉から油脂分を取り,主としてミンチ肉にまわす雑肉を分離し,残った部位をスライスして薄肉化させた上で,グラム数を計量してパック包装し,このパック包装したものに被告標章2を付して店頭で販売していた。 被告Aの被告小林畜産に対する豚の販売価格は,当該豚の枝肉に1㎏- 16 -当たりの流通単価を乗じた価格であり,被告小林畜産のオーケーに対する豚肉の販売価格は,納品した精肉の重量に単価を乗じた価格である。このように被告小林畜産がオーケーに納品した豚肉の重量は,枝肉を精肉化する過程で枝肉の70%に減少する(なお,オーケーがオーケーストアの各店 販売価格は,納品した精肉の重量に単価を乗じた価格である。このように被告小林畜産がオーケーに納品した豚肉の重量は,枝肉を精肉化する過程で枝肉の70%に減少する(なお,オーケーがオーケーストアの各店舗で販売する豚肉の重量は,精肉を薄肉化する過程で精肉の70%に減少する。)。 そして,被告小林畜産がオーケーに対し平成20年1月1日から平成23年1月31日までの間に「ハーブヨーグルトン」用の精肉として販売した重量は,オーケー作成の乙30記載のとおりである。 また,乙18記載の平成20年1月28日及び30日に納入された豚の枝肉の数量3357㎏の70%に相当する2349.9㎏が,被告小林畜産が同年1月27日から同月31日までの間にオーケーに対し販売した精肉の重量となる。 そうすると,被告小林畜産がオーケーに対し平成20年1月27日から平成23年1月31日までの間に販売した上記精肉の重量は,合計50万4318.9kgである。 【計算式】 (129,402.8kg(平成20年分)-6,829.1kg(平成20年1月分)+2,349.9kg)+182,037.3kg(平成21年分)+182,024kg(平成22年分)+15,334kg(平成23年1月分)=504,318.9kgb 単価単価は,被告標章2の使用期間中の三市場(東京・大宮・横浜)の枝肉相場価格の平均価格1㎏当たり428.6円(乙7)である。 c 使用料率①原告は,実際の商品取引においては,朝霧ヨーグル豚商標を使用- 17 -し,本件商標を使用しておらず,もっぱらウェブサイトなどで本件商標を使用しているのみであることから,本件商標の顧客吸引力は極めて弱いこと,②被告標章2の使用を中止した平成23年1月31日以前と井田さん家の豚標章の使用を開始した同年2月以降 ブサイトなどで本件商標を使用しているのみであることから,本件商標の顧客吸引力は極めて弱いこと,②被告標章2の使用を中止した平成23年1月31日以前と井田さん家の豚標章の使用を開始した同年2月以降において,被告小林畜産の豚肉の販売量に変動はなく,むしろ同年2月以降の方が販売数量が増加しているのであるから,被告標章2が被告小林畜産の豚肉の販売に寄与した寄与率は,極めて少ないか,全くなかったこと,③被告標章2を使用した商品と本件商標を使用した商品は,その品質,販売地域,販売拠点及び販売元を異にし,実際の取引において競合したことはなく,被告標章2を使用した商品がなければ,本件商標を使用した商品が売れたという相互補完関係はみられないこと,④被告標章2を使用した商品の販売元がオーケーストアという量販店であったことが上記商品の売れ行きに大きく寄与していること,⑤顧客が被告標章2を本件商標と間違えて商品を購入した事実は存在せず,顧客が間違えることを期待して被告標章2を使用したものでもないこと,⑥オーケーストアでは,毎月内部で試食会を開いて被告らの豚肉を含む豚肉を社員が試食し,その味について合格したもののみが,店頭で販売されることになっており,被告らの豚肉は,この厳しい食味検査に合格することによって,初めて店頭に並べられており,単に「ハーブヨーグルトン」という商品名の商品であるから販売されているのではないことなどを総合すれば,本件商標の使用料率は,0. 5%を超えることはない。 d 小括以上によれば,被告らの被告各標章の使用に対する本件商標の使用料相当額は,108万0755円となる。 【計算式】 504,318.9kg×428.6円×0.005=- 18 -1,080,755円ウ弁護士費用の主張に対し原告の主張は争う。 第 料相当額は,108万0755円となる。 【計算式】 504,318.9kg×428.6円×0.005=- 18 -1,080,755円ウ弁護士費用の主張に対し原告の主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(過失の推定を覆すべき事情の有無等)について(1) 前記争いのない事実等と証拠(甲7,乙4の1,2,25,30)及び弁論の全趣旨によれば,①被告小林畜産は,自社のホームページ上において,被告Aから仕入れた豚を加工した豚肉(精肉)の商品(商品名「ハーブヨーグルトン」)に関する広告に被告各標章を表示していたこと,②被告小林畜産は,平成20年1月27日から平成23年1月31日までの間,オーケーに対し,被告標章2を付して小売することを条件に,上記精肉の卸売をし,オーケーが経営するオーケーストアの各店舗では,上記精肉を更に加工してパック包装し,このパック包装に被告標章2を付した商品を「ハーブヨーグルトン」の商品名で販売していたこと,③被告Aは,被告小林畜産に対し,被告各標章の使用を許諾し,被告標章2を付した商品がオーケーストアで販売されることを了承していたこと,④被告各標章は,本件商標と類似し,被告Aから仕入れた豚を加工した精肉の商品及びオーケーストアで販売される上記精肉を更に加工した豚肉の商品は,本件商標権の指定商品中の「食肉」又は「精肉」に含まれることが認められる。 上記①ないし④の事実を総合すれば,被告らは,平成20年1月27日から平成23年1月31日までの間,共同して,本件商標に類似する被告各標章を被告小林畜産が被告Aから仕入れた豚を加工した豚肉の商品に関する広告に付して展示し,オーケーが上記商品をオーケーストアで販売する際にその包装に被告標章2を表示させることによって被告各標章を使用したことが認められ, 告Aから仕入れた豚を加工した豚肉の商品に関する広告に付して展示し,オーケーが上記商品をオーケーストアで販売する際にその包装に被告標章2を表示させることによって被告各標章を使用したことが認められ,かかる被告らの行為は,原告の有する本件商標権の侵害とみなす行為(商標法37条1号)に該当するというべきである。 - 19 -そして,被告らにおいては,商標法39条において準用する特許法103条により,本件商標権の侵害行為について過失があったものと推定される。 (2) これに対し被告らは,被告Aにおいては,被告各標章の使用が本件商標権の侵害にならないかどうかを十分に調査検討すべき義務を尽くしているから,過失の推定を覆すべき事情があり,また,被告小林畜産においては,被告各標章の単なる使用者であって,被告Aが取得した被告各標章の商標登録の有効性について調査確認すべき義務を負うことはなく,そもそも過失が推定されないから,被告らは,被告各標章の使用行為について無過失である旨主張する。 しかしながら,被告らの主張は,以下のとおり理由がない。 ア被告らは,①被告標章1の商標登録について,原告が被告標章1と本件商標が類似するとして登録異議の申立てをしたので,被告Aが意見書を提出して意見を述べたところ,特許庁は,被告標章1と本件商標は非類似であると判断し,被告標章1の商標登録を維持する旨の別件決定をしたこと,②被告標章1の商標登録出願前に行われた弁理士による調査の結果,過去の特許庁の登録例では,食品関係で前段に「ハーブ」を付けた既登録例が多数あり,その中で,「ハーブ△△△△」という登録例に対し,後段の「△△△△」が同一の登録例も多数発見されたこと,③被告標章2についても,その商標登録出願前に,同様の調査を行った結果,同一又は類似のものが発見されな ,「ハーブ△△△△」という登録例に対し,後段の「△△△△」が同一の登録例も多数発見されたこと,③被告標章2についても,その商標登録出願前に,同様の調査を行った結果,同一又は類似のものが発見されなかったこと,④「商標登録有効確認の訴え」というような商標登録の有効性を保証する制度が存在しないことによれば,被告Aにおいて,被告各標章の使用が本件商標との関係で,商標権侵害にならないかどうかを十分に調査検討すべき義務を尽くした旨主張する。 しかしながら,登録異議の申立制度(商標法43条の2)は,商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために,登録異議の申立てがあった場合に,特許庁が自ら登録処分の適否を審理し,瑕疵ある- 20 -場合にはその是正を図るというものであって,無効審判制度のように,特許庁が行った登録処分の是非をめぐる当事者間の争いを解決することを目的とするものではないこと,登録商標を維持すべき旨の決定(登録維持決定)に対しては不服を申し立てることができず(同法43条の3第5項),登録維持決定に対して不服がある異議申立人において,登録異議の申立理由と同一の理由で無効審判請求(同法46条)をすることができることに照らすならば,被告Aにおいて,被告標章1と本件商標は非類似であると判断した別件決定を信頼したからといって過失の推定を覆すべき相当な理由があるということはできない。 また,被告ら主張の被告各標章の商標登録出願前の弁理士の調査については,その内容を具体的に裏付ける証拠は提出されておらず,いかなる調査が行われたのか不明であるといわざるを得ない(なお,乙2の1及び乙3については,被告ら自らが被告標章1の商標登録後の別件審決取消訴訟1の審理の段階で調査したものである旨主張している。)。仮に被告A又はその依頼を受 明であるといわざるを得ない(なお,乙2の1及び乙3については,被告ら自らが被告標章1の商標登録後の別件審決取消訴訟1の審理の段階で調査したものである旨主張している。)。仮に被告A又はその依頼を受けた弁理士が被告標章1の商標登録出願前に上記②で主張するような登録例があることを調査確認したとしても,そのような登録例があることから直ちに被告標章1と本件商標とが非類似であるとの結論を導き出せるものではなく,両者の類否判断に当たっては別件審決1に係る無効審判請求の審理で原告が主張したような本件商標の使用に係る取引の実情等(甲5の1の別紙審決書の写し)をも踏まえた調査検討を行う必要があるというべきであるから,被告Aにおける調査検討が十分であったものとは認められない。 したがって,被告らの上記主張は,その余の点について検討するまでもなく,理由がない。 イ次に,被告らは,被告小林畜産においては,被告各標章の単なる使用者であって,被告Aが取得した被告各標章の商標登録の有効性について調査- 21 -確認すべき義務を負うことはなく,そもそも過失が推定されない旨主張する。 しかしながら,被告小林畜産は,業として豚肉の商品の販売を行い,その商品について被告各標章を使用している以上,その使用行為が他人の商標権を侵害するか否かを調査確認すべき義務を負うものと解すべきであるから,被告らの上記主張は,採用することができない。 (3)ア以上によれば,被告らには,本件商標権の侵害行為についての過失の推定を覆すべき事情の存在は認められず,過失があるというべきである。 イこれに対し被告らは,仮に被告らに過失が認められるとしても,被告標章1の商標登録を無効とする別件審決1の謄本が被告Aに送達された平成22年6月17日以降の被告各標章の使用行為に限られるべき 。 イこれに対し被告らは,仮に被告らに過失が認められるとしても,被告標章1の商標登録を無効とする別件審決1の謄本が被告Aに送達された平成22年6月17日以降の被告各標章の使用行為に限られるべきである旨主張する。 しかしながら,前記(2)ア及びイで述べたのと同様の理由により,被告らの上記主張は採用することができない。 2 争点2(原告の損害額)について(1) 商標法38条3項に基づく損害額原告は,被告らの本件商標権侵害行為に対する原告の使用料相当額の損害額(商標法38条3項)は,被告らが平成20年1月27日から平成23年5月2日までの間に被告各標章を付して販売した豚肉についてその加工前の枝肉の重量に1㎏当たり31.5円の使用料を乗じた合計2374万3319円である旨主張する。 ア被告各標章を使用した豚肉の販売期間(ア) 被告小林畜産が,平成20年1月27日から平成23年1月31日までの間,オーケーに対し,被告標章2を付して小売することを条件に,上記精肉の卸売をし,オーケーが経営するオーケーストアの各店舗では,上記精肉を更に加工してパック包装し,このパック包装に被告標章- 22 -2を付した商品を「ハーブヨーグルトン」の商品名で販売していたことは,前記1(1)認定のとおりである。 したがって,被告らが被告標章2を使用した豚肉の販売期間は,上記の平成20年1月27日から平成23年1月31日までの間であると認められる。 (イ) この点に関し,原告は,被告らが被告各標章を付した豚肉を平成23年2月1日以降も販売し,また,被告らはオーケー以外にも被告各標章を付した豚肉を販売していた旨主張する。 しかしながら,被告らがオーケー以外に「ハーブヨーグルトン」の商品名の豚肉を販売していたことを認めるに足りる証拠はない。 被告らはオーケー以外にも被告各標章を付した豚肉を販売していた旨主張する。 しかしながら,被告らがオーケー以外に「ハーブヨーグルトン」の商品名の豚肉を販売していたことを認めるに足りる証拠はない。もっとも,甲18(全国商工団体連合会のウェブサイトの記事)及び甲19(ウェブサイトのブログ記事)には,「ハーブヨーグルトン」を用いたメニューを提供している飲食店が存在することをうかがわせる記載があるが,「ハーブヨーグルトン」の仕入先についての記載はなく,甲18及び19は,被告らが上記飲食店に対し「ハーブヨーグルトン」を販売していたことを裏付けることにはならない。 また,被告らが平成23年2月1日以降もオーケーが被告小林畜産から仕入れた豚肉をオーケーストアで販売する際にその包装に被告標章2を表示させていたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,証拠(乙4の1,2,25)及び弁論の全趣旨によれば,被告小林畜産は,平成23年2月1日から,オーケーに卸売をする豚肉の商品名を「ハーブヨーグルトン」から新商品名の「井田さん家の豚」に変更し,同日以降,オーケーストアの各店舗では,豚肉のパック包装に井田さん家の豚標章を付した商品が販売されていることが認められる。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ被告標章2を使用した豚肉の数量- 23 -(ア) 証拠(乙29の1ないし5,30)及び弁論の全趣旨を総合すれば,被告小林畜産がオーケーに対し被告標章2を付して小売することを条件に販売をした豚肉(精肉)の重量は,乙30の「仕入れ重量」の「総計」欄記載のとおり,平成20年1月分ないし12月分が12万9402.8㎏(このうち,同年1月分が6829.1㎏),平成21年1月分ないし12月分が18万2037.3㎏,平成22年1月分ないし 「総計」欄記載のとおり,平成20年1月分ないし12月分が12万9402.8㎏(このうち,同年1月分が6829.1㎏),平成21年1月分ないし12月分が18万2037.3㎏,平成22年1月分ないし12月分が18万2024kg,平成23年1月分が1万5334㎏(以上,合計50万8781.1㎏)であることが認められる。 以上によれば,被告らが被告標章2を使用した販売期間(平成20年1月27日から平成23年1月31日まで)に対応する豚肉(精肉)の重量は,合計50万3070.4kg(ただし,平成20年1月27日から同月31日までの分は同年1月分の日割計算)であることが認められる。 【計算式】 (129,402.8kg-6,829.1kg+6,829.1kg×5日/31日)+182,037.3kg+182,024kg+15,334kg=503,070.4kg(小数点第2位以下切り捨て)(イ) これに対し原告は,乙30は,本件訴訟に関し利害関係のあるオーケーが被告小林畜産の依頼により作成した資料であり,その内容を裏付ける客観的な証拠が提出されていないから,信用することはできない旨主張する。 しかしながら,乙30の記載内容が具体的かつ詳細であること,乙30は,オーケーが被告小林畜産発行の納品書(乙29の1ないし5はその一部)等に基づいて作成されたことがうかがわれることに照らすと,原告の上記主張は採用することができない。他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。 - 24 -ウ使用料相当額について(ア) 証拠(甲10,11,13ないし16,31,32,乙11,12,21ないし23,25(枝番のあるものはいずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められ,これに反する証拠はない。 a 原告は,養豚業者 16,31,32,乙11,12,21ないし23,25(枝番のあるものはいずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められ,これに反する証拠はない。 a 原告は,養豚業者から原告の指導による飼料(乳酸菌発酵飼料)で飼育した豚を購入し,これを加工した豚肉(商品名「朝霧ヨーグル豚」に係る枝肉)を組合員に販売し,その際,組合員に対し,原告の有する本件商標権及び朝霧ヨーグル豚商標の商標権(設定登録平成17年5月27日)の使用を許諾している。 甲10の3(原告作成の「5年度事業計画」(自:平成18年4月1日,至:平成19年3月31日)と題する書面)には,「1.朝霧ヨーグル豚共同購入業務」として,①「市場の差別化を図り品質を高く保持するため,朝霧ヨーグル豚を食味良く健康で安全な地域ブランドとして育てるために本組合で独占共同購入を行う。・・・組合手数料も引き続き30円(豚舎新築特別賦課金分10円,運搬処分分10円は共同購入単価に含む)とする。(但し,豚舎新築特別賦課金より5円を研究費分に回す)」,②「豚肉枝肉」について「共同購入単価(kg)460円」,「組合員への販売単価(kg)475円」との記載がある。 b 原告は,そのウェブサイトにおいて,「朝霧ヨーグル豚(ヨーグルトン)」,「朝霧ヨーグル豚」,「ヨーグル豚」などの表示をして,「朝霧ヨーグル豚」の商品名の豚肉(以下「豚肉「朝霧ヨーグル豚」」という。)に関する宣伝広告を行い(甲16,乙13の2等),豚肉「朝霧ヨーグル豚」の取扱店舗として,静岡県富士宮市,富士市,沼津市及びその近郊の合計19店舗を掲載し(乙11),さらには,豚肉「朝- 25 -霧ヨーグル豚」のインターネットによる通信販売を行っている。 また,原告は,東京都,千葉県等で開催されるイベント(甲16 びその近郊の合計19店舗を掲載し(乙11),さらには,豚肉「朝- 25 -霧ヨーグル豚」のインターネットによる通信販売を行っている。 また,原告は,東京都,千葉県等で開催されるイベント(甲16等)に参加して,豚肉「朝霧ヨーグル豚」の宣伝活動も行っていた。 c オーケーストアは,東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県,宮城県等に合計60数店舗(乙12)あり,この中の東京都,千葉県,埼玉県等の各店舗で,被告標章2を使用した豚肉(商品名「ハーブヨーグルトン」)を取り扱っていた。なお,静岡県内には,オーケーストアの店舗は存在しなかった。 (イ) 前記(ア)の認定事実によれば,①原告は,その組合員に対し,豚肉「朝霧ヨーグル豚」に係る枝肉を販売し,組合員が豚肉「朝霧ヨーグル豚」に本件商標及び朝霧ヨーグル豚商標の双方を使用することを許諾していること,②原告は,その組合員に対し,原告が組合員に販売する豚肉「朝霧ヨーグル豚」に係る枝肉の販売単価(475円/㎏)と原告が養豚業者から購入する上記枝肉の購入単価(460円/㎏)との差額は15円であると説明しており,この中には上記①の許諾の対価分が含まれていること,③本件商標を使用した豚肉「朝霧ヨーグル豚」の取扱店舗の所在地が主として静岡県内であるのに対し,被告標章2を使用した豚肉(商品名「ハーブヨーグルトン」)を取り扱っていたオーケーストアの店舗の所在地は,東京都,千葉県,埼玉県等であり,静岡県には,オーケーストアの店舗がなかったこと,④原告が,豚肉「朝霧ヨーグル豚」のインターネットによる通信販売を行い,また,東京都,千葉県等で開催されるイベントに参加して,その宣伝活動を行っていたことが認められる。 これらの事実に加えて,本件商標及び被告各標章の各使用態様,本件訴訟に至る経緯等本件に現れた諸般の事情 京都,千葉県等で開催されるイベントに参加して,その宣伝活動を行っていたことが認められる。 これらの事実に加えて,本件商標及び被告各標章の各使用態様,本件訴訟に至る経緯等本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると,被告らが原告に対して支払うべき本件商標権の使用料相当額は,被告らが被告標- 26 -章2を使用した豚肉(精肉)1㎏当たり13円と認めるのが相当である。 これに反する原告及び被告らの主張は,いずれも採用することができない。 エ小括以上によれば,被告らの本件商標権の侵害行為に対する原告の使用料相当額の損害額は,653万9915円と認められる。 [計算式] 50万3070.4kg(前記イ(ア))×13円(前記ウ(イ))=653万9915円(2) 弁護士費用本件事案の性質・内容,本件訴訟に至る経過,本件審理の経過等諸般の事情に鑑みれば,被告らの本件商標権侵害と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害額は,70万円と認めるのが相当である。 (3) まとめ以上によれば,原告は,被告らに対し,本件商標権侵害の不法行為(共同不法行為)に基づく損害賠償として723万9915円(前記(1)エ及び(2)の合計額)及びこれに対する被告Aについては平成23年5月12日(訴状送達の日)から,被告小林畜産については同月13日(訴状送達の日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。 3 結論以上の次第であるから,原告の請求は,被告らに対し,連帯して,723万9915円及びこれに対する被告Aについては平成23年5月12日から,被告小林畜産については同月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容することとし,その余は理由 する被告Aについては平成23年5月12日から,被告小林畜産については同月13日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容することとし,その余は理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 主文 理由 事実 争点 判断 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官上田真史 裁判官石神有吾 (別紙)標章目録 「ハーブヨーグルトン」
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