平成25(ワ)10955 不正競争行為差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年3月12日 大阪地方裁判所
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判決文本文28,040 文字)

-1- 平成27年3月12日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成25年(ワ)第10955号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成26年12月22日判決 原告株式会社成学社 訴訟代理人弁護士裵薫同金愛子 被告P1 (以下「被告P1」という。) 被告P2 (以下「被告P2」という。)被告ら訴訟代理人弁護士峯本耕治同岡林絵里子主文 1 被告P1は,平成27年8月8日まで,大阪市A1から半径2キロメートルの区域内において,学習塾を開設し,又は営業をしてはならない。 2 被告らは,原告に対し,各自992万3145円を支払え。 3 原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告と被告P1の間においては,原告に生じた費用の10分の2を被告P1の負担とし,その余は各自の負担とし,原告と被告P2の間においては,原告に生じた費用の10分の1を被告P2の負担とし,その余は各自の負担とする。 -2- 5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,平成27年8月8日まで,大阪市A1から半径2キロメートルの区域内において,学習塾を開設し,又は営業をしてはならない。 2 被告らは,別紙塾生目録記載の塾生管理情報を用いて,営業活動をしてはならない。 3 被告らは,別紙塾生目録記載の塾生管理情報を廃棄せよ。 4 被告P1は,第三者に対し,原告の教育システムでは成績が上がらない旨及び原告の教室が閉鎖される旨の虚偽の陳述をしてはならない。 5 被告らは,原告に対し,各自3498万7261円を支払え。 第2 事案の概要 1 訴訟物 の教育システムでは成績が上がらない旨及び原告の教室が閉鎖される旨の虚偽の陳述をしてはならない。 5 被告らは,原告に対し,各自3498万7261円を支払え。 第2 事案の概要 1 訴訟物本件は,原告の経営する学習塾に勤務していた被告P1が,(被告P2と共同で,)原告の教室の近隣で学習塾「Wゼミ」(以下「本件学習塾」という。)の営業を始めたことについて,原告が,被告らに対し,次の請求をする事案である。 (1) 被告P1に対しては原告と被告P1間の雇用契約上の競業避止義務に基づき,被告P2に対しては不法行為(民法709条)ないし信義則(民法1条2項)等に基づき,本件学習塾の営業の差止め(2) 被告P1が,原告の営業秘密に属する塾生管理情報の開示を受けていたところ,不正の利益を得る目的で,これを被告P2に開示し,被告らにおいて使用したものとして,被告らに対し,不正競争防止法2条1項4号等に規定する不正競争行為があるとして,同法3条に基づく塾生管理情報の使用の差止め及び廃棄(3) 被告P1が,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する不正競争防止法2条1項14号に規定する不正競争行為をしたとして,被告P1に対し,同法3条に基づく当該行為の差止め-3-(4) 被告らに対し,被告らの上記各行為によって,原告に生じた損害の賠償(債務不履行,不法行為ないし不正競争防止法4条の競合) 2 前提事実(証拠の掲記のないものは当事者間に争いがない)(1) 当事者等原告は,学習塾の経営等を目的とする株式会社である。原告は,近畿地方を中心に約200箇所の教室を有しており,全体で2万5000人を超える塾生が通塾している。原告のC1教室(以下「C1教室」という。)は,大阪市A1に所在している。 被告P1は,平成2 ,近畿地方を中心に約200箇所の教室を有しており,全体で2万5000人を超える塾生が通塾している。原告のC1教室(以下「C1教室」という。)は,大阪市A1に所在している。 被告P1は,平成20年12月24日付けで,非常勤講師として原告に採用され(甲2,8),平成21年4月4日付けで,原告の契約社員となり(甲9),平成25年8月8日をもって,原告を退職した者である(甲3)。 被告P2は,少なくとも名目上は,本件学習塾の経営者である(本件学習塾の実質上の経営者を誰とみるかは争いがある。以後の前提事実の事実摘示内についても同様である。)。本件学習塾は大阪市A2に設置されており,C1教室との距離は,直線距離にして約430メートルである(甲12)。 (2) 本件学習塾の開設と被告P1の関与被告P2は,平成25年7月頃から,自己の名義で教室に供する物件を賃借し,机を購入するなどして,本件学習塾の開設に向けた準備を行い(乙4,5,7,8),被告P1においては,同年8月12日から,入塾希望者に対する説明会を行った(被告P1本人)。 被告らは, 同年9月2日から,本件学習塾において,塾生に対する授業を開始した(乙23,被告P2本人,被告P1本人)。 (3) C1教室の塾生の退塾と,本件学習塾への入塾平成25年8月当時,C1教室には,93人の塾生がいたところ,本件学習塾が開設された頃に,66人が退塾した(弁論の全趣旨)。 この66人のうち,61人は,本件学習塾に入塾した(61人の限度では当事-4-者間に争いがない)。 (4) 被告P1に対する仮処分命令の申立てと発令原告は,被告P1に対して,主文第1項と同旨の裁判を求める仮地位仮処分を大阪地方裁判所に申し立て(当庁平成25年(ヨ)第20019号仮処分 (4) 被告P1に対する仮処分命令の申立てと発令原告は,被告P1に対して,主文第1項と同旨の裁判を求める仮地位仮処分を大阪地方裁判所に申し立て(当庁平成25年(ヨ)第20019号仮処分命令申立事件),同裁判所は,平成26年2月13日,この申立てを全部認容する決定をした(甲31)。 被告P1は,同決定に対し不服を申し立てず,同決定は確定した(当裁判所に顕著)。 3 争点(1) 被告P1が,雇用契約上の競業避止義務違反行為をしたか(2) 被告P2が,被告P1と共謀して本件学習塾を開設したものとして,原告に対する不法行為責任を負うか(3) 被告らが,本件学習塾の営業の差止めを受ける地位にあるか(4) 被告P1が,原告の営業秘密に属する塾生管理情報を持ち出し,これを被告P2に開示したか(5) 被告P1が,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為をしたか(6) 原告の被った損害額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1) (被告P1が,雇用契約上の競業避止義務違反行為をしたか)について【原告の主張】(1) 原告の就業規則ア原告は,非常勤講師Iに適用される平成18年9月1日改定の就業規則(甲4)及び契約社員II に適用される平成25年5月1日改定の就業規則(甲5)を定めていた(以下総称して「本件各就業規則」といい,個別には「本件非常勤講師就業規則」,「本件契約社員就業規則」という。)。 被告P1は,前提事実(1)のとおり,平成20年12月24日,原告との間で,-5-非常勤講師I としての雇用契約を締結して原告に採用され,平成21年4月4日,契約社員II として雇用契約を締結したから,本件各就業規則が適用される。 イ本件各就業規則には,いずれも,退職後2 非常勤講師I としての雇用契約を締結して原告に採用され,平成21年4月4日,契約社員II として雇用契約を締結したから,本件各就業規則が適用される。 イ本件各就業規則には,いずれも,退職後2年間は,原告で担当していた教室から半径2キロメートル以内で自塾を開設することを禁じる旨が定められている(本件非常勤講師就業規則55条,本件契約社就業規則57条。以下この規定を「本件規定」という。)。 本件各就業規則は改定されているものの,本件規定に関する定めは,原告の採用中に変更されたことはない。 (2) 本件規定の合理性ア原告は,関西地域で広く学習塾を経営する会社であり,設立以来,人的,物的資本を投下して指導内容及び指導方法についてノウハウを構築するとともに,塾生及びその保護者との間に信頼関係を形成したものであり,このようなノウハウや顧客情報という経営資源は,法的保護に値する。 そして,講師業務を行う原告の従業員は,原告が長年にわたって形成した独自のノウハウを利用して塾生を指導する者であり,原告のブランド力を背景として,塾生及びその保護者に大きい影響力をもつ。 イ学習塾を開業するためには,教室となるべき物件を確保し,教室整備に費用をかけ,広告等宣伝して塾生を募集する等,金銭的・人的・物的コストが必要である。のみならず,保護者は,信頼関係のない新規開設者に,子弟の教育を任せない。 しかし,講師が担当していた教室からほど近い場所で塾を開設する場合,講師は,上記のようなコストの投下や信頼関係の構築といった負担をせず,原告のブランド力を背景に形成され原告に帰属する上記信頼関係にただ乗りできる上に,信頼関係が破壊されることになる。 原告は,このような事態を防止するために,本件規定を設けたものであり,-6-その目的 ンド力を背景に形成され原告に帰属する上記信頼関係にただ乗りできる上に,信頼関係が破壊されることになる。 原告は,このような事態を防止するために,本件規定を設けたものであり,-6-その目的は合理的である。 ウ本件規定は,2年間という一定の期間に,担当していた教室(退職する直近1年の間に主に担当していた教室に限定する運用である。)から半径2キロメートルという一定地域において,自塾の開設及びそれに準ずる行為のみを規制対象としており,退職者がこうむる不利益は相当な範囲内にある。 エ以上より,本件規定は合理性を有し,被告P1は,本件規定の適用を受ける。 (3) 本件各就業規則の周知義務の履行ア原告は,平成21年12月16日,社内にグループウェア(企業内のネットワークを活用した情報共有のためのシステムソフトウェア)の「サイボウズ」を導入した。これ以前は,就業規則をクリアファイルに入れて各教室に備えており,上記導入後は,グループウェア内に本件各就業規則を掲示し,従業員であれば閲覧可能な状態にしており,また社内規定等(本件各就業規則はこれに含まれる。)は,グループウェアの「ファイル管理」内に掲載される旨を全職員に対し通達した。 イ被告P1は,原告の入社試験を受ける際,冬期講習教員採用要項を交付されているところ,同要項には,注意点として,各教室に備えられている就業規則を参照するよう記載されていた。 また,平成24年4月1日及び平成25年5月1日における本件契約社員就業規則の改定に際し,原告は,労働者の過半数を代表する者として,被告P1の意見を聴取したところ,いずれも同被告は意見がない旨を回答しており,被告P1は本件規定を含む本件各就業規則を熟知している。 (4) 被告P1の本件学習塾における地位被告P1は,前 P1の意見を聴取したところ,いずれも同被告は意見がない旨を回答しており,被告P1は本件規定を含む本件各就業規則を熟知している。 (4) 被告P1の本件学習塾における地位被告P1は,前提事実(1)(2)記載のとおり,本件学習塾を開設したものである。 すなわち,被告P1は,本件学習塾の説明会,講師採用(原告の講師であったP3のアルバイト採用),塾生の確保,塾生に対する講師業務(5教科全てを担当している。)などの学習塾の経営における重要部分を全て行っており,同被告-7-が,本件学習塾の実質的な経営者である。 被告P1は,自らが本件規定の適用を受けることから,法的責任を回避するため,被告P2と共謀し,同被告を形式的な代表者として,本件学習塾を開設したにすぎない。 (5) まとめ以上より,本件規定は合理性を有し,被告P1は,本件規定の適用を受けるところ,本件規定に定める義務に違反して,本件学習塾を開設した。 よって,原告は,原告と被告P1間に存在した雇用契約に基づく履行請求として,被告P1に対し,本件学習塾の営業(本件学習塾において講師業務をすることを含む。)の差止めを求めるとともに,債務不履行に基づく損害賠償として,原告に生じた後記損害の賠償を求める。 【被告P1の主張】(1) 本件規定に法的拘束力がないことア周知義務違反(労働基準法106条)被告P1は,本件各就業規則を一度も見せられたことがなく,認識していなかった。他の従業員も同様である。 したがって,原告は就業規則の周知義務を果たしておらず,本件各就業規則は,原告と被告P1の労働契約の内容とならない。 イ意見聴取義務違反(労働基準法90条)原告において,本件各就業規則の作成にあたって,意見聴取の手続がとられ を果たしておらず,本件各就業規則は,原告と被告P1の労働契約の内容とならない。 イ意見聴取義務違反(労働基準法90条)原告において,本件各就業規則の作成にあたって,意見聴取の手続がとられたことはない。 ウ本件規定の内容が広範に過ぎて無効であること本件規定のとおり,会社で指導を担当していた教室から半径2キロメートル以内で自塾を開設することを禁ずることとなると,被告P1の退職直前においてもC1教室のほかもう1か所(C2教室)を担当しているうえ,過去を含めると,15か所の教室を担当したことがあるのであって,これら全てから半径-8-2キロメートル以内で働けないのであれば,塾講師として稼業できなくなる。 また,このような一方的な不利益に対する代償措置は一切とられていない。 このような本件規定は,従業員に極めて広範な不利益を課すもので,労働者の不利益が必要かつ合理的制限を超えるものであり,無効である。 (2) 被告P1は,被告P2に雇用されているにすぎないこと後記2【被告P2の主張】記載のとおり,本件学習塾は被告P2が開設したものであり,被告P1は,被告P2に雇用されたにすぎない(乙9)。したがって,被告P1の本件学習塾における勤務は,本件規定や,誓約書(甲7)において禁止される業務態様に当たらない。 2 争点(2)(被告P2が,被告P1と共謀して本件学習塾を開設したものとして,原告に対する不法行為責任を負うか)について【原告の主張】(1) 被告らの共謀を示す事実ア本件学習塾の入塾説明会の態様と学習計画被告P1は,平成25年8月12日から16日まで,及び18日に,本件学習塾の入塾説明会を開き,本件学習塾における学習計画を説明した。また,本件学習塾において,被告P1は,5教科全ての授業を 画被告P1は,平成25年8月12日から16日まで,及び18日に,本件学習塾の入塾説明会を開き,本件学習塾における学習計画を説明した。また,本件学習塾において,被告P1は,5教科全ての授業を行っている。 イ講師の採用学習塾の開設にあたっては,数か月前から,講師等の求人を行うのが通常であるところ,被告P2は,そのような採用活動をしていない。むしろ,被告P1は,退職の直前である7月19日には,C1教室の保護者懇談において,原告を退職する旨及び別の塾で働く旨を説明している。 また,原告の従業員であるP3は,被告P1が原告において就業していたときの同僚であったところ,平成24年夏の段階で,被告P1から原告を退職して自塾を開設したいこと,その際には手伝ってほしいことなどを聞かされていた。平成25年8月には,P3は被告P1から本件学習塾の開設を知らされ,-9-9月より本件学習塾でアルバイトとして働くようになった。被告P2はP3と面識はなく,給与の支払も被告P1が直接手渡しにより行っている。 ウ開設当初の塾生の構成本件学習塾は塾生募集の広告等を行っていないにもかかわらず,C1教室から少なくとも62人の塾生が本件学習塾へ入塾している。これが単なる口コミの結果とは考え難い。 エ被告らの経歴被告P2は,高校卒業後,店舗経営に関する業務に従事しており,学習塾業界とは無縁であり,大学も卒業しておらず,25年前の家庭教師の経験はあるものの,塾講師の経験もない。 他方,被告P1は,昭和61年から平成13年まで,C3及びC4の2教室で,塾生約200人,講師約20人を擁する規模の「若葉塾」を経営した経験があり,平成18年12月から原告に採用されるまでは,P4の開設した学習塾「天高ゼミ」で教室長をしていた。 オ本 4の2教室で,塾生約200人,講師約20人を擁する規模の「若葉塾」を経営した経験があり,平成18年12月から原告に採用されるまでは,P4の開設した学習塾「天高ゼミ」で教室長をしていた。 オ本件学習塾の所在地前提事実記載のとおり,本件学習塾は,C1教室から,直線距離にして400メートル余の地点にある物件で開設された学習塾である。 カ被告らが塾生募集の広告をしていないこと学習塾を開設するに当たっては,通常,数か月前から,塾生募集広告を投函したり,新聞の折り込み広告にして配布したりするところ,本件学習塾は,開設に至るまでに,このような広告活動を行っていない。 キ被告P1が仮処分決定後も本件学習塾で講師業務を行っていること被告らは,前提事実(4)記載の仮処分決定後,大阪市A3に本件学習塾の分室を開設し(開設前の本件学習塾を,C5教室と称している。),被告P1はそこで講師業務を行い,本件学習塾の所在地においては,成績入力などの講師業務を行っている。このことは,被告P1なしに本件学習塾が成立しないことを示-10-している。 (2) 評価通常,学習塾業界に転職,参入する際には,経験の有無,四大卒か,授業力があるか,気配りができるか,という条件が考慮されるが,被告P2は少なくとも気配り以外の条件を備えていないし,被告P1には,資金は見込めないものの講師業務に関して豊富な経験がある。 そして,上記のとおり,学習塾の経営における重要部分は全て被告P1が行っており,被告P1がいなければ本件学習塾の開設及び営業は到底不可能だったものであり,仮処分決定がされた後ですらも同様である。 被告P1は,自らの本件学習塾の経営行為が本件規定に違反することを熟知していたので,法的責任を回避するために,被告P2と共謀し 不可能だったものであり,仮処分決定がされた後ですらも同様である。 被告P1は,自らの本件学習塾の経営行為が本件規定に違反することを熟知していたので,法的責任を回避するために,被告P2と共謀し,被告P2を形式的な代表者としたものであり,被告P1が顧客たる塾生をC1教室から引き抜いた上で講師業務を行うことにつき,共謀があったものである。 (3) 被告P2の責任競業避止義務を負ってはいないものの,自由競争の範囲を逸脱した態様で競業行為を行った場合,その行為は不法行為となるところ,被告P2の上記行為は,まさに自由競争の範囲を逸脱するものであり,不法行為となる。 したがって,被告P2は,後記3のとおり,差止めの相手方になるとともに,原告のこうむった後記6の損害を賠償する責任を負う。 【被告P2の主張】(1) 本件学習塾は,被告P2によって主宰されるものであることア被告P2の本件学習塾開設の動機及び指導方針被告P2は,平成2年から店舗経営に関する会社で従業員として勤務していたが,いずれは独立して経営者に挑戦してみたいとの考えを有していた。同被告が学習塾開設を着想したのは,自身が大阪府立天王寺高校出身であり,同校出身の友人(P4)の携わる「天高ゼミ」の指導方法に感銘をうけたことによ-11-る。本件学習塾は,この指導方法を踏襲しており,被告P1のノウハウ,ひいては原告のノウハウを使用していない。 イ本件学習塾の資金を拠出し,管理するのは被告P2であること被告P2は,自ら資金を集め,物件や什器備品を準備したものであり,売上金の管理,給与の支払を含め,本件学習塾の経営の采配を行っており,実際の授業についても,同被告自身も自ら講師として指導に当たっている。 ウ被告P1が従業員にすぎないこと本 ものであり,売上金の管理,給与の支払を含め,本件学習塾の経営の采配を行っており,実際の授業についても,同被告自身も自ら講師として指導に当たっている。 ウ被告P1が従業員にすぎないこと本件学習塾における被告P1の担当部分は,開設当初はともかく,現在は全体の約3割にすぎない。あくまでも,被告P1は,被告P2に雇用される立場にすぎない。 (2) 被告らに共謀がないこと被告らは,C1教室からの塾生の獲得等につき,共謀したことはなく,次の事情からもこのことがいえる。 ア被告P2は,被告P1が競業避止義務を負うことを知らなかったこと被告P2は,自らリスクを取って起業したものであるところ,被告P1が本件規定の適用を受けることを知っていれば,リスクを冒すことはなかった。 イ本件学習塾の規模等本件学習塾は,机のみで51個,大きい教室は20人収容,小さい教室は16人収容を予定しており(残りの机は自習用),当初の塾生数は,十数人程度を見込んでおり,原告の塾生が数十名単位で移籍することなど想定していなかった。 なお,C1教室の多くの塾生が本件学習塾に移籍したのは,平成25年8月20日から22日にかけて,原告の従業員が,保護者らに対し,本件学習塾が営業できなくなるなどの脅迫電話をかけたことが原因である。 3 争点(3)(被告らが,本件学習塾の営業の差止めを受ける地位にあるか)について【原告の主張】-12-(1) 被告P1に対する差止請求被告P1は,前記1【原告の主張】に記載のとおり,本件規定に定める義務を履行する立場にあり,差止めを受ける地位にある(なお,後記4【原告の主張】に記載の不正競争行為に基づく差止めを受ける地位にもある。)。 (2) 被告P2に対する差止請求ア本件規定の目的 務を履行する立場にあり,差止めを受ける地位にある(なお,後記4【原告の主張】に記載の不正競争行為に基づく差止めを受ける地位にもある。)。 (2) 被告P2に対する差止請求ア本件規定の目的本件規定は,前記1【原告の主張】(1)に記載のとおりの目的で定められるものであるところ,本件規定による義務を負う原告の講師が,これを潜脱するために,第三者を形式的な代表者にして学習塾を開設した場合,第三者に対しても差止めを認めなければ,これを規定する意味がない。現に,被告P1において,仮処分決定を受けた後も,前記2【原告の主張】(1)キ記載のとおり,本件学習塾の営業を継続し,もって仮処分命令を潜脱し,原告独自のノウハウや顧客情報にただ乗りして,利益を上げている。 イ被告らの人格の同一性被告P2は,被告P1個人が有する塾経営のノウハウや,被告P1がC1教室に在籍中に得た原告独自のノウハウ及び顧客情報等を活用し,被告P1は,被告P2の資金をあてにしている。このように,被告らはお互い自分に欠けるものを補っていわば一体となり,本件学習塾の開設に及んだ。相互の存在がなければ本件学習塾の開設は不可能であったから,両者を切り離して責任を論ずることはできない。 ウ信義則上の義務ないし権利濫用公正な取引秩序を害し,信義誠実の原則(民法1条2項)に違反する行為は,民法の大原則に違反する。また,ある権利を有していても,その権利行使の態様が反社会的であれば,その効力は生じない。 被告P2が,学習塾を開設する権利自体を有していたとしても,本件学習塾を開設した態様に照らすと,職業選択の自由に名を借りた反社会的行為そのも-13-のであり,信義則に反し,権利の濫用として,その効力は認められない。 すなわち,本件規定の当事者ではない第 習塾を開設した態様に照らすと,職業選択の自由に名を借りた反社会的行為そのも-13-のであり,信義則に反し,権利の濫用として,その効力は認められない。 すなわち,本件規定の当事者ではない第三者であっても,信義則上,本件規定に基づく義務を負う者と共謀して,本件規定に定める義務の違反行為に及ぶことは,当然に禁止される。 エ結論よって,原告は,被告P2に対しても,差止請求権を行使できる。 【被告らの主張】(1) 被告P1について被告P1が差止めを受ける地位にあることは争う。 (2) 被告P2について前記2【被告P2の主張】(1)のとおり,本件学習塾の主宰者は,実質的にも被告P2自身であり,被告P1は,被告P2の被用者にすぎない。被告P2は,もとより原告となんらの契約関係になく,本件規定の適用を受ける余地はない。 本件学習塾には,開設当初である平成25年9月以降,原告を退塾してきた以外の入塾者も27人に上り,講師数も5人に増え,被告P1の授業割合は,全体の3割にとどまっている。 このような状況のもとにおいて,本件学習塾の営業差止が認められるとすれば,利害関係のない塾生に対する不測の損害を与えることになる。これは自由競争による利益や営業の自由を侵害する結果となり,元来被告P1が本件規定に基づき単独で負っている競業避止義務の射程として,容認できない。 4 争点(4)(被告P1が,原告の営業秘密に属する塾生管理情報を持ち出し,これを被告P2に開示したか)について【原告の主張】(1) 本件情報原告は,C1教室における塾生の①氏名,②塾生の自宅電話,携帯電話番号及びメールアドレス,③保護者の氏名,住所,④保護者の電話番号,携帯電話番号-14-及びメールアドレス,⑤学校テス 報原告は,C1教室における塾生の①氏名,②塾生の自宅電話,携帯電話番号及びメールアドレス,③保護者の氏名,住所,④保護者の電話番号,携帯電話番号-14-及びメールアドレス,⑤学校テスト結果等の学校の成績,⑥原告における公開テスト等の学校外の成績,⑦受験校や入試の結果等の情報(以下「本件情報」という。)を保有していた(甲22,23にその具体的情報が記載されている)。 (2) 本件情報の営業秘密(不正競争防止法2条6項)該当性ア原告の情報管理システム原告は,各教室の塾生の氏名,学年,所属クラブ,電話番号,保護者氏名,住所,学費情報や延滞情報などの学費管理情報,学校通知表,学校テスト結果,原告における公開テスト結果,受験校名,受験科目などの情報を,基幹ソフトウェア「KONPAS」により管理しており,本件情報は,KONPAS内の情報の枢要部分である。 イ有用性この情報により,塾生や保護者に対して教材や講座の勧誘が可能となり,また,兄弟姉妹がいる塾生については,その兄弟姉妹に対する勧誘が可能になるなど,学習塾を経営するに当たり有用な営業上の情報である。 ウ秘密管理性KONPASを使用するためには,情報管理部門の部門長であることが必要であり,承認されたとしても,自らが担当する教室及び所属エリアの塾生の情報にしかアクセスできない。 原告は,個人情報管理規程(甲14)により,従業員に対し,個人情報保護法にいう個人情報への不正アクセス,使用の制限,漏えいの禁止を定めており,これに違反した者は懲戒処分となる。このように,原告は,個人情報である本件情報が不正に外部に流出することのないような措置を講じている。 エ非公知性原告は,その塾生の氏名等を公開しておらず,また本件情報は極めてプライベート このように,原告は,個人情報である本件情報が不正に外部に流出することのないような措置を講じている。 エ非公知性原告は,その塾生の氏名等を公開しておらず,また本件情報は極めてプライベートな内容を含んでおり,公然と知られていなかった。 オまとめ-15-したがって,本件情報は,有用性,秘密管理性,非公知性のいずれの要件も備える営業秘密である。 (3) 被告らの不正な本件情報の開示,使用被告P1は,C1教室の教室長であって,同被告のみが同教室のKONPASの利用権限を有するところ,同被告は,本件学習塾の開設に当たり,平成25年7月頃から同年8月8日までの間に,在籍する塾生についてのKONPAS内の情報が表示された画面を印刷し,その印刷物をC1教室から持ち出してこれを取得し,これを被告P2に開示し,被告らにおいて,本件学習塾への勧誘や宣伝などに本件情報を使用した。 上記被告P1の行為は,不正競争防止法2条1項4号又は7号に,被告P2の行為は,同項6,8号又は9号に該当する不正競争行為である。 (4) まとめよって,原告は,被告らに対し,不正競争防止法3条1項,2項に基づき,本件情報のうち請求の趣旨記載の情報について,同情報を用いた営業活動の差止めと同情報の廃棄を求め,同法4条に基づき,後記6に主張の損害の賠償を求める。 【被告らの主張】原告の主張を否認する。 被告P1は,原告の在職中にC1教室の教室長としてKONPASを利用することが認められていたことは事実であるが,KONPASの画面情報を印刷して持ち出したことはない。また,被告らは,そもそも原告の塾生に対する勧誘を行っていないし,原告のいう本件情報を使用した営業活動もしていない。 5 争点(5) (被告P1が,原告の営業 面情報を印刷して持ち出したことはない。また,被告らは,そもそも原告の塾生に対する勧誘を行っていないし,原告のいう本件情報を使用した営業活動もしていない。 5 争点(5) (被告P1が,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為をしたか)について【原告の主張】(1) 虚偽の事実告知被告P1は,平成25年8月9日,原告のC1教室に在籍していた中学3年生-16-の塾生に対し,原告のC1教室が閉鎖される旨及び原告の指導システムでは成績が上がらない旨の各発言をした。 この発言の際には,被告らは,本件学習塾の開業準備はほとんど終了していたと考えられ,原告と被告らは競争関係にあった。 (2) 原告がC1教室を閉鎖する予定はなかったうえ,原告のシステムでは成績が上がらないというのは根拠のない誹謗中傷であって,いずれも原告の信用を害するものであるが,被告P1の行為は,不正競争防止法2条1項14号にいう不正競争行為に当たる。 よって,原告は,被告P1に対し,不正競争防止法3条1項に基づき,当該行為の差止めを求める。 【被告P1の主張】原告の主張を否認する。被告P1は,原告主張のような事実の告知をしたことはない。 6 争点(6) (原告の被った損害額)について【原告の主張】(1) 原告からの退塾者数被告らの行為により,平成25年9月1日には62人,同年10月1日には4人の合計66人の塾生が原告から退塾した。その学年別の内訳は次のとおりである。 学年9月退塾者10月退塾者小学3年生 小学4年生 小学5年生 小学6年生 中学1年生 中学2年生 -17-中学3年生 者小学3年生 小学4年生 小学5年生 小学6年生 中学1年生 中学2年生 -17-中学3年生 原告の塾生は,高校受験が終了するまで在籍するのが通常であるから,原告は,退塾者が高校受験を終了するまで通塾した場合の得べかりし授業料等の売上げを失った。 この逸失売上げには,①前塾生が受講する通年授業の授業料,②夏季特別授業等の特別授業の授業料及び③通年の授業,特別授業向けに教材を販売した際の利益が含まれる。 (2) 通年授業で得られる利益ア平均授業料C1教室における各学年の受講科目数をもとにした1人当たりの月額の平均授業料及びこれに11か月分を乗じ,教材利益額を加算した,通年(3月から翌年2月まで)授業料は,次のとおりである。 学年月額平均授業料通年授業料小学3年生3000円3万5720円小学4年生1万0505円11万8342円小学5年生1万7172円19万1808円小学6年生1万7172円19万1423円中学1年生2万1943円24万7047円中学2年生2万7000円30万3767円中学3年生3万0810円34万7221円イ退塾者数による積算平成25年9月から平成26年2月までは,9月退塾者については6か月分,10月退塾者については5か月分の月額平均授業料を乗じた額(合計984万4860円)となり,平成26年3月以降,各退塾者が中学3年生の課程を終えるまでの損害は,通年の授業料に,前記(1)の退塾者の進級後の人数を乗じたものとなり,これら合計に,過去の実績に基づく退塾率(小学4年生につき3-18-9.5 ,各退塾者が中学3年生の課程を終えるまでの損害は,通年の授業料に,前記(1)の退塾者の進級後の人数を乗じたものとなり,これら合計に,過去の実績に基づく退塾率(小学4年生につき3-18-9.5%,小学5年生につき48.5%,小学6年生につき14.6%,中学1年生につき10.4%,中学2年生につき38.7%,中学3年生につき51.0%)による控除をした合計2177万0895円が,通年授業で得られる利益となる。 (3) 特別授業で得られる利益ア特別授業の費用原告では,夏期特別授業,夏期合宿(小学5年生,6年生,中学2年生,3年生を対象),冬期特別授業,春期講習会,正月大晦日特訓(中学3年生を対象),突破ゼミ(同)の特別授業を実施しているところ,これらの授業料の合計に,教材利益額を加えた年間利益は,次のとおりである。 学年月額平均授業料小学3年生2万3477円小学4年生4万9097円小学5年生9万4230円小学6年生9万4142円中学1年生8万9355円中学2年生12万9524円中学3年生23万5464円 イ退塾者数による積算前記(2)イと同様の積算をしたうえ,各特別授業の参加率の平均(小学3年生につき50.0%,小学4年生につき55.8%,小学5年生につき46.8%,小学6年生につき78.0%,中学1年生につき94.0%,中学2年生につき53.6%,中学3年生につき47.9%)を乗じた合計は,971万6366円であり,これが原告のこうむった損害となる。 (4) 経費の控除の可否-19-学習塾の経営において,変動費はほとんど発生せず,経費の大部分は,講師の人件費,教室の家賃,教室で使用する電気代や水道代などであるところ,被告らがC1教室 4) 経費の控除の可否-19-学習塾の経営において,変動費はほとんど発生せず,経費の大部分は,講師の人件費,教室の家賃,教室で使用する電気代や水道代などであるところ,被告らがC1教室の塾生を引き抜いた後も,同教室には塾生が残っているのであるから,教室の家賃や水道光熱費に変化はない。また,C1教室で提供する授業数にも変化はなく,講師の人数,すなわち人件費の変化もない。 よって,本件において控除すべき費用はない。 (5) 弁護士費用相当の損害金原告は,本訴の提起追行を弁護士に委任したところ,その費用は,上記損害額や本件事案に照らし,350万円を下ることはない。 (6) まとめよって,原告は,被告らに対し,被告P1に対しては債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償,被告P2に対しては不法行為に基づく損害賠償,若しくは被告らに対する不正競争防止法4条に基づく違反に基づく損害賠償として,上記(2),(3)及び(5)の合計3498万7261円の支払を求める。 【被告らの主張】(1) 本件学習塾への入塾者数原告から退塾して本件学習塾に入塾した者は61人であり,原告のいう66人のうち,小学5年生1人,中学1年生1人,同2年生2人,同3年生1人は,本件学習塾に入塾していない。 (2) 退塾者の高校進学までの授業料との相当因果関係がないこと原告は,ブランド力等を標榜する大手塾である以上は,一定期間の余裕があれば,被告P1 1人に代替する講師を確保し,正常な業務を回復してしかるべきである。先例と比較しても,本件において,退塾者の高校卒業までの授業料相当の損害との相当因果関係はない。 (3) 原告主張の退塾率が低いこと本件学習塾の設立の頃,C1教室には95人の塾生が在籍したところ 較しても,本件において,退塾者の高校卒業までの授業料相当の損害との相当因果関係はない。 (3) 原告主張の退塾率が低いこと本件学習塾の設立の頃,C1教室には95人の塾生が在籍したところ,本件学-20-習塾に入塾した塾生を除き34人がC1教室に在籍したことになるところ,この34人の塾生のうち,約1年後の平成26年8月においてC1教室に在籍する塾生はわずかに10人程度にすぎず,しかも,これらC1教室を退塾した塾生は,本件学習塾に入塾していない。この事実からしても,原告の主張する退塾率は,不当に低いものになっている。 (4) 経費を控除すべきこと逸失利益を算定するに当たり,経費を控除することは当然であるから,原告全体の利益率を乗じるべきである。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実に証拠(後掲各証拠のほか,全体につき,甲11,40,乙11,12,21~24,P5証人,被告P1本人,被告P2本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の各事実を認めることができる。 (1) 本件学習塾を開業するまでの被告らの経歴ア被告P1について(甲36)被告P1は,昭和60年に大阪府立天王寺高校を卒業し,昭和61年に若葉塾という進学塾を,大阪府藤井寺市内と高石市内で開業したが,平成13年にこれを廃業した。なお,このころ,被告P1は,株式投資の失敗により,多額の負債を負っていた。 被告P1は,平成15年頃から平成18年5月までの間,被告P2が営業部長をしていた株式会社トマトフードサービス(以下,「トマトフード社」という。)に就職したが,同年12月に,P4が開設した学習塾「天高ゼミ」に講師として勤務し,平成20年5月にこれを退職した。なお,P4は,「天高ゼミ」の開設までに,塾の経営に携わったことはなかっ 」という。)に就職したが,同年12月に,P4が開設した学習塾「天高ゼミ」に講師として勤務し,平成20年5月にこれを退職した。なお,P4は,「天高ゼミ」の開設までに,塾の経営に携わったことはなかった。 その後,被告P1は,前提事実記載のとおり,平成20年12月,原告に,非常勤講師として採用され,いくつかの教室で授業を担当し,平成21年4月-21-に,原告の契約社員となり,同時にC1教室の教室長となった。 イ被告P2について被告P2は,天王寺高校卒業後,トマトフード社において,飲食店や物販店の開店や人員募集などの支援業務などに従事していたが,平成23年12月に,同社を退職した。 被告P2は,被告P1及びP4と高校時代から友人関係にあり,平成19年か20年ころ,学習塾「天高ゼミ」を経営していたP4から,学習塾経営は感謝されるのでよい仕事である旨の話を聞き,学習塾経営に興味をもつこととなった。もっとも,被告P2は,それまでに学習塾の経営経験も,講師業務の経験もなかった。 同被告は,トマトフード社を退職後,動画投稿サイトの閲覧,書籍の検討,P4からの聞き取りなどにより,学習塾の講師業務の研究や開業準備をした。 (2) 本件学習塾の開業準備と,被告P1の原告の退職経緯ア被告P2の活動被告P2は,平成25年4月ころ,本件学習塾の開設を具体的に検討するようになり,被告P1に,講師の就職を打診するなどし,同年7月8日には,被告P1の住所地やC1教室にほど近い(C1教室からは直線距離で約430メートル先),大阪市A2 1階の店舗用物件を賃借した(甲12,乙4,5,7)。 同物件には,16人収容の教室と,20人収容の教室及び15人が着席できる自習スペースが設けられた(乙19)。被告P2は,学童用の机及び椅 1階の店舗用物件を賃借した(甲12,乙4,5,7)。 同物件には,16人収容の教室と,20人収容の教室及び15人が着席できる自習スペースが設けられた(乙19)。被告P2は,学童用の机及び椅子を51セット購入した(乙8)。 他方,被告P2は,被告P1のほかに具体的に経験のある講師のあてはなく,その募集活動はしなかったうえ,塾生募集の関係でも,実際に開業する9月までに,上記店舗に本件学習塾が存することの看板を設置したほかは,特段の広告手段は講じなかった。 -22-イ被告P1の活動及び原告退職の経緯被告P1は,上記のとおり,平成25年4月頃から,被告P2から学習塾を開業する話を聞いていたところ,同被告が,同年7月8日に,物件の賃貸借契約をした頃には,本件学習塾の講師をすることを決意した。 被告P1は,7月10日には,原告に対し退職届(甲3)を提出して,退職を申し出た。これを受け,同月14日,原告の取締役で,クラス指導部全般を統括していたP5は,被告P1と面談し,年度末まで勤務を続けるよう求めたが,同被告はこれを拒絶したため,P5は,慰留を断念し,退職の段取りを検討することとした。同月18日,原告の部長職にあったP6と被告P1との間で面談がもたれ,退職日の決定や,退職理由の説明について話合いがされた。 この際,被告P1の最終勤務日は8月8日とされ,その後に有給休暇を消化するものとされたが,退職理由を保護者にどのように説明するかについては,合意が得られなかった。 7月19日,被告P1は,原告に対し,原告提案の退職理由の説明や有給休暇の処理について納得していない旨の連絡をした(乙20)ため,P5は,同月23日に再度被告P1と面談し,この際に,退職日を8月8日とし,有給休暇は会社が買い取るものとされた。なお,原 の説明や有給休暇の処理について納得していない旨の連絡をした(乙20)ため,P5は,同月23日に再度被告P1と面談し,この際に,退職日を8月8日とし,有給休暇は会社が買い取るものとされた。なお,原告は,被告P1に対し,退職に当たって,退職者に秘密情報不保持の確認,退職後の秘密保持,開業に係る義務等を誓約させる誓約書(乙26)に署名押印を求めたが,被告P1は,これを拒否した。 被告P1は,7月19日以降,C1教室において行われる保護者面談の際に,原告を退職することを説明し始め,その後について質問した保護者には,本件学習塾が開設され,そこで講師をすることや,本件学習塾の方針等を説明した。 (3) 被告P1の原告退職後の被告らの活動及び原告の対応ア被告P1は,上記のとおり,原告を平成25年8月8日に退職したにもかかわらず,同月9日には,原告の中学3年生向けの合宿の出発の際に顔を出し,-23-原告を退職したことや,新たな塾を開くこと等を塾生や保護者に説明した。 また,8月12日から16日,及び18日に,本件学習塾の所在地において,来訪者に入塾説明を行った。 イ原告は,8月17日から19日にかけて,C1教室の教室長が交代することのお知らせを塾生に配布したところ,同月22日ころに,塾生から「P1塾」に行くとの情報を得た。P5は,同月23日,被告P1と面会し,被告P1がC1教室の近傍に塾を開くこと,被告P1の想定以上に原告を退塾する者が見込まれること等を聞いた。 8月23日頃から,実際に保護者からの退塾届の提出がみられるようになり,月末にかけて,多数の退塾届の提出がされた。 (4) 本件学習塾の開設当時の状況平成25年9月2日,本件学習塾はその営業を開始した。本件学習塾はWゼミと称し,その特色は,クラス授業 り,月末にかけて,多数の退塾届の提出がされた。 (4) 本件学習塾の開設当時の状況平成25年9月2日,本件学習塾はその営業を開始した。本件学習塾はWゼミと称し,その特色は,クラス授業と個別指導を組み合わせて提供するというものであった。当初は,主に被告P2が個別指導を担当し,被告P1がクラス授業の大部分を担当していた。また,被告P1は,原告に勤務していた当時の同僚であったP3を非常勤講師として招き,アルバイトをさせていた。 原告は,本訴提起と同日(平成25年10月24日)に,前提事実(4)記載の仮処分を申し立て,平成26年2月13日にその決定を得たが,被告らは,この決定後には,本件学習塾の分室(C6教室)を設置し,被告P1が同教室で授業を行うほか,本件学習塾の所在地にも勤務するなどして,被告P1の本件学習塾への関与を継続している(甲32~35)。 (5) 原告における本件各就業規則の周知状況等原告は,職種ごとに就業規則を制定しており(甲4,5),採用の際には,各教室に備える就業規則に従って勤務するよう記載した採用要項を応募者に配布していた(甲18)。 また,原告は,職員の採用に当たり,就業規則に従うこと,経営・教務理念を-24-遵守し,子供たちの人権と人格を尊重し体罰を加えないこと,在職後及び退職後も,在職中に知った塾生の名簿等の事項を他に漏らしたり,自己の営利目的に使用したりしないこと,退職後2年間は,就業規則に定める競業避止義務を遵守し,原告の指定する地域内において学習塾の独立開業をしないことを内容とする誓約書に署名押印することを求めている(甲6,24~27)ところ,被告P1も,原告に採用されるに当たり,これに署名押印した(甲7)。 平成21年12月以降は,原告の就業規則は,原告に導 とする誓約書に署名押印することを求めている(甲6,24~27)ところ,被告P1も,原告に採用されるに当たり,これに署名押印した(甲7)。 平成21年12月以降は,原告の就業規則は,原告に導入されたグループウェアに掲載され,職員はこれを閲覧できる状態になっていた(甲17,19)。 平成24年3月及び平成25年3月に,本件各就業規則が変更された際には,被告P1自身が,C1教室の従業員代表として,特に意見がない旨の意見書を原告に提出した(甲20,21)。 2 争点(1)(被告P1が,雇用契約上の競業避止義務違反行為をしたか)について(1) 本件規定の効力ア就業規則としての有効性前記1(4)によると,原告においては,少なくとも被告P1の採用以前に,就業規則が有効に制定され,従業員に対する周知の措置も十分に採られていたものと認められる。 イ本件規定が,職業選択の自由(憲法22条1項)に反しない合理的なものかどうか本件規定は,原告を退職した後2年間は,会社で指導を担当していた教室から半径2キロメートル以内に自塾を開設することを禁ずるものである。 学習塾業界においては,何よりも収益の柱は,塾生の確保である。そして,需要者は,サービス提供主体の選別に当たり,ブランド,教材,費用,合格実績等のほか,講師の指導力もそれなりに大きく考慮するものと考えられ,現に担当する講師との間に信頼関係が生じている場合には,その講師が近傍で独立しようとする場合には,これに追従することは容易に想定される。他方,上記-25-信頼関係は,当該講師が純粋に個人的に構築したものではなく,企業たる学習塾と塾生との関係を踏まえて成立するものであり,当該学習塾が投下した資本の上に成り立つものである。したがって,本件規定は上記投下資本の回 は,当該講師が純粋に個人的に構築したものではなく,企業たる学習塾と塾生との関係を踏まえて成立するものであり,当該学習塾が投下した資本の上に成り立つものである。したがって,本件規定は上記投下資本の回収の機会を保護するための合理的なものであって,合理的な範囲で退職後の競業を禁止することは許容されるというべきである。 本件規定の制限が合理的な範囲かどうかを検討すると,本件規定においては,退職後,2年間に限り,会社で指導を担当していた教室(退職時に所属していた教室をいうものと理解される。)から半径2キロメートル以内(小中学生にとって通塾に適さない程度の距離と思われる。)の限度で,自塾を開設することのみを禁ずるものであって,上記圏外で開業することはもちろん,上記圏内であっても,競合他社において勤務することは禁じられていないこと,従業員の講師業務としての経験をいかして継続して講師業務を行うことは本件規定に所定の地理的,時間的範囲及び態様以外ではなんら制約されないことからすると,本件規定が合理性を欠いて無効であるということはできない。また,以上によると,特段の代償措置が講じられていなかったとしても,上記合理性の判断に影響を及ぼすことはないというべきである。 なお,被告P1は,労働契約の当初から本件各就業規則の存在及び内容を知らなかったと主張し,同被告はその旨の陳述をするが,上記に認定した経緯に照らしその主張を採用することはできないし,そもそも合理性を有する就業規則が拘束力を有する前提としては,当該事業場における周知があればよく,労働者が具体的内容に同意したうえで労働契約を締結することまでは必要とされないから,失当である。 ウまとめ以上によると,本件規定は,被告P1に対し,規範的拘束力を有するものというべきである。 (2) 容に同意したうえで労働契約を締結することまでは必要とされないから,失当である。 ウまとめ以上によると,本件規定は,被告P1に対し,規範的拘束力を有するものというべきである。 (2) 本件学習塾の業態が,本件規定の適用を受けるものといえるか-26-ア本件学習塾の実態につき,原告は,少なくとも被告P1が被告P2と共同経営するものと主張するのに対し,被告らは,被告P2が主宰するものであって,被告P1は,被告P2に雇用されているにすぎないから,被告P1は自塾を開業したものでなく,本件規定の適用がない旨主張するので検討する。 イ前記1の認定によると,本件学習塾における物件の賃貸や什器備品の購入に資本を投下したのは被告P2であるが,そのことのみでは,単なる出資者であることを示すに過ぎない。 また,被告P2は,本件学習塾において,個別指導は担当していると述べており,その意味において,被告P2が,まったくの形式的な存在であるとまではいえないが,むしろ,前記1の認定によると,被告P2には塾経営の経験はなく,塾における授業内容の決定や塾の運営は,被告P1なくしては行えなかったと考えられる。 しかも,前記1に認定のとおり,被告P2は,被告P1のほかに具体的に講師を募集していない。この点につき,被告P2は,被告P1が本件学習塾への転職に応じなければ,浪人生であった被告P2の子に講師をさせるつもりであったというが,現実味に乏しい。また,被告P2自身の講師としての研究も,塾講師の経験がない割には,動画投稿サイトを閲覧するといった場当たり的ともいえる程度のものにすぎない。散らし配布などの塾生獲得のための広告手段も講じていない。 被告P1を抜きにして,そのような学習塾が塾生を獲得できるとは考えにくいことからすると,被告P2は, ともいえる程度のものにすぎない。散らし配布などの塾生獲得のための広告手段も講じていない。 被告P1を抜きにして,そのような学習塾が塾生を獲得できるとは考えにくいことからすると,被告P2は,当初から,被告P1が講師業務及びC1教室からの塾生の移籍を含めた塾生募集について中心的な役割を果たすことを期待していたとみるべきであるし,被告P1もまた,この期待に応じることを当然の前提としていたというべきである。 本件学習塾をC1教室の近傍に設置したのも,C1教室からの退塾者が出ることを期待したものと推認される。 -27-ウまた,現実にも,被告P1は,原告の退職前から,本件学習塾を開設することを保護者にほのめかしていたものであるし,退職後直ちに,本件学習塾のために勤務し,かつ,退職の翌日には,わざわざ合宿に出発する塾生の前で退職のあいさつをするなど,本件学習塾の塾生獲得のための活動と評価できる行動をしているうえ(そうであるからこそ,C1教室の退塾者66人のうち61人を本件学習塾の塾生として獲得することができたものである。),本件学習塾において,当初は,講師業務としては経験が要求されるクラス授業の大部分を担当し,仮処分決定を受けた後も実質的に本件学習塾において講師業務を続けるなどしており,これらの事情からすると,本件学習塾の運営に当初から不可欠の存在であったというべきであって,本来代替性を有する単なる労働者の地位にあったと評価することはできない。 エ被告P1は,就業時には,本件規定と同旨の競業避止義務を定める誓約書(甲7)に署名押印し,競業禁止を誓約させる退職時の誓約書(乙26)への署名押印を拒否していることからも,本件規定そのもの,又はこれに類する規定が原告で定められていたことの認識は有していたものと考えられるところ,これ ,競業禁止を誓約させる退職時の誓約書(乙26)への署名押印を拒否していることからも,本件規定そのもの,又はこれに類する規定が原告で定められていたことの認識は有していたものと考えられるところ,これを回避する方策として,被告P2との雇用契約(乙9)を締結したものと考えられる。 結局,上記の本件学習塾の実態からすると,本件学習塾は,被告P1が,講師業務のノウハウ及び経験を提供し,被告P2が資金を提供する,共同運営であったと評価すべきである。 そして,本件規定は,単に退職者が学習塾の全ての任務を担当することのみを指して「開業すること」を想定しているのではなく,このような形態も想定していることは,その目的からして明らかであるし,このように解したとしても不当な拡張解釈とはいえない。 オ以上によると,被告P1は,被告P2と共同して,本件学習塾を開設したものというべきであって,このような態様による本件学習塾の開設は,本件規定-28-が禁止する態様に該当するものというべきである。 (3) まとめしたがって,被告P1は,本件規定に違反した雇用契約上の債務不履行があるところ,その履行請求として,当該行為の差止めを受ける地位にあり,また後記の損害を賠償すべき義務を負う。 3 争点(2)(被告P2が,被告P1と共謀して本件学習塾を開設したものとして,原告に対する不法行為責任を負うか)について前記1の認定及び前記2の説示のとおり,被告P2は,被告P1が本来本件規定によって禁止される競業行為を行うことを期待し,被告P1もこれに応え,その結果,C1教室の退塾者66人のうち61人を本件学習塾の塾生として獲得することができたものというべきである。このことからすると,被告P2は,被告P1の競業禁止規定違反行為に加担し,自由競争秩序に の結果,C1教室の退塾者66人のうち61人を本件学習塾の塾生として獲得することができたものというべきである。このことからすると,被告P2は,被告P1の競業禁止規定違反行為に加担し,自由競争秩序に反する態様で本件学習塾を開設したものとして,不法行為責任を負う。被告らに共謀がなく,被告P2は不法行為責任を負わないとする被告らの主張は採用の限りでない。 被告らは,原告の退塾者が続出したのは,原告の保護者に対する脅迫的な電話が原因であるとか,本件学習塾のシステムが優れているからであり,自由競争の結果であるとか主張するが,本件においては,被告らが本件学習塾を開設したこと自体に結果との相当因果関係を認めるべきことは論を待たないのであって,失当である。 4 争点(3)(被告らが,本件学習塾の営業の差止めを受ける地位にあるか)について(1) 被告P1について被告P1が,雇用契約上の債務の履行として,差止めを受ける地位にあることは前記2のとおりである。 (2) 被告P2について被告P2は,原告と何らかの契約関係にはあるものではないから,契約上の競業避止義務を負うことはない。また,原告が,本件規定の区域内において,学習塾を設置することについて排他的権利を有するものではないから,被告P2が,-29-競業避止義務を負う被告P1に加担した不法行為があるとしても,そのことによって差止請求の相手方となる地位が発生するとの実体法上の根拠はない。確かに,被告P2が,被告P1の競業避止義務違反の結果である塾生の移籍の利益を事実上享受していることは原告指摘のとおりであるが,現行法上,そのような結果の是正は損害賠償に委ねられているというべきであるから,民法上の一般条項を根拠に,原告がそのような差止請求権を有するということはできない。 とは原告指摘のとおりであるが,現行法上,そのような結果の是正は損害賠償に委ねられているというべきであるから,民法上の一般条項を根拠に,原告がそのような差止請求権を有するということはできない。 したがって,被告P2に対し,本件学習塾の営業の禁止を求める請求は理由がない。 5 争点(4)(被告P1が,原告の営業秘密に属する塾生管理情報を持ち出し,これを被告P2に開示したか)についてこの点につき,原告は,被告P1が,本件学習塾の開設に当たり,平成25年7月頃から同年8月8日までの間に,在籍する塾生についてのKONPAS内の情報が表示された画面を印刷し,その紙面をC1教室から持ち出してこれを取得したと主張するが,これを認めるに足りる直接の証拠はなく,本件学習塾の宣伝(甲35)等に用いられた塾生の成績向上データの記載等から,被告P1が上記持ち出し行為をしたものと推認することもできない。 したがって,被告P1に,不正競争防止法上の営業秘密不正取得,開示行為があったものとすることはできず,被告らに不正競争防止法2条1項4号等に該当する行為があることを前提とする原告の差止請求及び損害賠償請求は,いずれも理由がない。 6 争点(5)(被告P1が,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為をしたか)原告は,被告P1に原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知する行為があったと主張するが,証拠(甲40,P5証人)によっては直ちにこれを認めるに足りず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 また,差止請求をするには,現在,当該不正競争行為が継続し,又はそのおそれ-30-があることが必要であるが,被告P1が,現時点において,原告についての営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又はそのおそれがあるとうかがわせる事情も 不正競争行為が継続し,又はそのおそれ-30-があることが必要であるが,被告P1が,現時点において,原告についての営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又はそのおそれがあるとうかがわせる事情も認められない。 したがって,被告P1に不正競争防止法2条1項14号に該当する行為があることを前提とする原告の差止請求は,理由がない。 7 争点(6)(原告の被った損害額)(1) 被告らの行為と相当因果関係のある退塾者数原告は,66人がC1教室を退塾し,本件学習塾に入塾したと主張し,被告らは,このうち次の表の61人が本件学習塾に入塾したことは争わないところ,これ以外の5人が,本件学習塾に入塾したと認めるに足りる証拠はなく,またこれら5人の原告からの退塾と,被告らの競業行為ないし不法行為とに相当因果関係を認めることはできない。 学年9月退塾者10月退塾者小学3年生 小学4年生 小学5年生 小学6年生 中学1年生 中学2年生 中学3年生 弁論の全趣旨によると,上記5人は,いずれも原告を9月1日限り退塾したものと認められるから,被告らの行為によって原告を退塾し,本件学習塾に入塾した塾生の学年別の人数は,上の表のとおりと認められる。 (2) 相当因果関係を有する損害の範囲原告は,所定の退塾率を乗じた上,上記退塾者の全員が中学3年生の課程を終えるまでの授業料相当の損害の発生を主張し,その旨の証拠(甲13,43)を-31-提出する。 しかし,もともと学習塾業界が厳しい競争にさらされていることは原告も認めるとおりであること,本件規定により競業が禁止されるのは2年間であること,退塾理由についての被 -31-提出する。 しかし,もともと学習塾業界が厳しい競争にさらされていることは原告も認めるとおりであること,本件規定により競業が禁止されるのは2年間であること,退塾理由についての被告P1の寄与等を考慮すると,原告主張の期間全ての授業料相当の損害と,被告らの行為との間に相当因果関係があるとすることはできない。 他方,前記認定のとおり,被告P1が,C1教室の責任者の地位にあったこと,原告に在職中及び退職直後から,C1教室の塾生に対する勧誘活動又はそれに類する活動をしていたこと,仮処分の前後を通じ本件学習塾への実質的関与を継続し塾生の復帰を妨げていることなどの本件学習塾の開設に至る経緯等のほか,現時点においても,C1教室の塾生数は33人と,約3分の1程度までしか回復していないこと(P5証人)が認められる。 これらの事情を総合考慮すると,本件においては,退塾者に関する年度末(平成26年2月)までの特別授業を含む授業料相当額及び退塾者の進級後の数に退塾率を乗じた人数についての新年度の夏期講習より前の分(平成26年3月から7月まで分)の特別授業を含む授業料相当額について,被告らの行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 また,C1教室は,被告らの行為後も営業を継続しているところ,原告の業態に照らすと,経費中の固定費の比率は高いものと考えられ,塾生数の変化による経費の変動はさほど大きくないと推認されるから,3割の経費控除をするものとする。 上記の認定,判断に沿わない原告及び被告らの各主張はいずれも採用しない。 (3) 授業料相当額ア通年授業の授業料証拠(甲13,43)及び弁論の全趣旨によると,C1教室における,各学年の受講科目数をもとにした1人当たりの月額の平均授業料に教材利益 しない。 (3) 授業料相当額ア通年授業の授業料証拠(甲13,43)及び弁論の全趣旨によると,C1教室における,各学年の受講科目数をもとにした1人当たりの月額の平均授業料に教材利益額を-32-加算した,通年(3月から翌年2月まで)授業料は,次のとおりと認められ,この認定に反する証拠はない。 学年月額平均授業料小学3年生3000円小学4年生1万0505円小学5年生1万7172円小学6年生1万7172円中学1年生2万1943円中学2年生2万7000円中学3年生3万0810円イ平成26年2月までの通年授業の損害前記(1)において認定した退塾者数に,上記アの通年授業料と,所定月数(9月退塾者は6か月,10月退塾者は5か月)を乗じた金額は,次のとおりである(合計910万1310円)。 学年9月退塾者10月退塾者小学3年生3万6000円 小学4年生6万3030円 小学5年生 小学6年生41万2128円34万3440円中学1年生184万3212円 中学2年生178万2000円 中学3年生462万1500円 ウ平成26年3月から同年7月までの通常授業の損害前記(1)において認定した退塾者数の進級後の学年を想定し,次のとおりと認められる退塾率(甲43)から,在籍率(1から退塾率を引いた数)を乗じ,-33-四捨五入した想定在籍者数は,次のとおりである。 学年進級者数退塾率想定在籍数小学4年生 39.5% 小学5年生 48.5% 小学6年生 14.6% 中学1年生 10.4% 中学2年生 想定在籍数 小学4年生 39.5% 小学5年生 48.5% 小学6年生 14.6% 中学1年生 10.4% 中学2年生 38.7% 中学3年生 51.0% 上記想定在籍数に、3月から7月まで5か月間分のアの通年授業料を乗じた金額は次のとおりである(合計289万1640円)。 学年進級者数 小学4年生5万2525円 小学5年生8万5860円 小学6年生 中学1年生76万8005円 中学2年生121万5000円 中学3年生77万0250円 エ特別授業の想定参加者証拠(甲13,43)及び弁論の全趣旨によると、平成25年9月から、平成26年7月までの間に、C1教室において行われる特別授業は、順に①突破ゼミ(10月実施、中学3年生対象)、②正月大晦日特訓(12月、1月実施、中学3年生対象)、③冬期特別授業(12月、1月実施)、④春期講習会(3月実施)であり、過去の実績に照らしたそれぞれの特別授業の参加率は、次のとおりと認められるから、これを乗じた想定参加人数(四捨五入)は次のとおりとなる。 (ア) 突破ゼミ-34- 参加率想定参加人数中学3年生47.0% (イ) 正月大晦日特訓 参加率想定参加人数中学3年生43.9% (ウ) 冬期講習学年参加率想定参加人数 小学3年生50.0% 小学4年生66.7% 小学5年生75.0% 小学6年生83.3% 中学1年生96.3% 中学2年生62.5% 中学3年生57.6% (エ) 春期講習( 小学5年生75.0% 小学6年生83.3% 中学1年生96.3% 中学2年生62.5% 中学3年生57.6% (エ) 春期講習(想定在籍者に参加率を乗ずる)学年参加率想定参加人数小学4年生50.0% 小学5年生66.7% 小学6年生75.0% 中学1年生91.7% 中学2年生85.2% 中学3年生52.5% オ特別授業の授業料証拠(甲13,43)によると,特別授業の授業料に教材利益を加算した金額は,次のとおりと認められる。 -35-(ア) 突破ゼミ2万8000円(イ) 正月大晦日特訓1万2000円(ウ) 冬期講習小学3年生8477円小学4年生1万2871円小学5年生1万4699円小学6年生1万4699円中学1年生2万7143円中学2年生2万7143円中学3年生5万2786円(エ) 春期講習小学4年生3357円小学5年生1万0356円小学6年生1万0356円中学1年生1万4353円中学2年生1万6522円中学3年生2万5620円カ特別授業の損害エの想定参加人数が特別授業を受けたとした場合の特別授業の授業料合計額は,次のとおりである(合計218万2972円)。 突破ゼミ 33万6000円正月大晦日特訓 13万2000円冬期講習 140万6105円春期講習 30万8867円-36-(4) 弁護士費用相当の損害本件において,原告は,弁護士費用相当の 2000円冬期講習 140万6105円春期講習 30万8867円-36-(4) 弁護士費用相当の損害本件において,原告は,弁護士費用相当の損害の賠償も求めているところ,被告P1に対しては,債務不履行に基づく損害賠償(金銭債務)を請求するものであるから,本件において弁護士費用相当の損害賠償を被告P1に負担させることはできない。そして,そうである以上,被告P2の行為に起因する損害も,被告P1の債務不履行により生ずる損害を前提としており,仮に原告が本訴の提起追行に際し弁護士費用を支出したとしても,これを不法行為と相当因果関係のある損害と認めることはできない。したがって,原告の,弁護士費用相当額の支払請求は,理由がないものと判断する。 (5) まとめ以上によると,上記(3)のイ,ウ,カの授業料等合計1417万5922円から経費3割を控除した992万3145円が,被告らの行為と相当因果関係のある損害と認められ,被告らは,これを各自支払うべき義務を負う。 第5 結論上記のとおりであるから,原告の,被告P1に対する,本件規定の範囲内での講師業務行為の差止めを求める請求及び被告らに対し上記の限度で損害賠償を求める請求は理由があり,その余は理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判官 松阿彌 隆 -37-裁判官 林 松阿彌隆 裁判官 林啓治郎 裁判長 裁判官山田陽三は転勤のため署名押印することができない。 裁判官松阿彌隆 (別紙)塾生目録 クラス 学年 学籍番号 生徒氏名 保護者氏名 退塾 本件学習塾へ(以下省略)

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