令和3(ワ)31 国家賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年1月25日 徳島地方裁判所 棄却
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判決文本文20,304 文字)

1 令和5年1月25日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第31号 国家賠償請求事件口頭弁論終結日 令和4年10月31日判 決主 文51 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由第1 請求被告は、原告らに対し、それぞれ550万円及びこれに対する令和2年7月3101日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1 事案の要旨本件は、中華そば飲食店を経営する原告らが、被告に対し、徳島県知事が原告らの同意なく、新型コロナウイルス感染症の感染者の立ち寄り先として、原告王15王軒が経営する飲食店の店名を公表(以下「本件店名公表」という。)したことは違法であり、これにより、原告らの名誉・信用・営業の自由・財産権が侵害されたと主張し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ550万円及びこれに対する不法行為(本件店名公表)の日である令和2年7月31日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 202 前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア 原告王王軒は、中華そば飲食店の経営等を目的とする株式会社であり、徳島県a町において「王王軒本店」(以下「本件飲食店」という。)を営業して25いる(甲1の1、甲11)。 2 イ 原告三五八は、中華そば飲食店の経営等を目的とする株式会社であり、徳島県b町において「王王軒b店」を営業している(甲1の2、甲11)。 ⑵ 徳島県内20例目の新型コロナウイルス感染症の感染者の確認と公表ア 令和2年7月29日、徳島県立保 会社であり、徳島県b町において「王王軒b店」を営業している(甲1の2、甲11)。 ⑵ 徳島県内20例目の新型コロナウイルス感染症の感染者の確認と公表ア 令和2年7月29日、徳島県立保健製薬環境センターの検査により徳島県内20例目の新型コロナウイルス感染症の感染者(以下「本件感染者」とい5う。)が確認された。徳島保健所において本件感染者の行動歴の確認を行ったところ、本件感染者が、同月26日午後5時30分頃から午後5時50分頃までの間、友人8人と共に、本件飲食店に立ち寄り、食事をしていたことが判明した。 イ 被告は、令和2年7月30日、徳島県内において新たに4例(20例目~1023例目)の新型コロナウイルス感染症の感染者が確認されたことを発表した。このうち、県内20例目の新型コロナウイルス感染症の感染者(本件感染者)の概要については、以下のとおり発表した(甲2)。 年代 20代 性別 男性15 居住地 大阪府在住(徳島保健所管内に滞在中) 職業 大学生 症状・経過7月28日 37.8度の発熱、咳、頭痛、全身倦怠感、関節筋肉痛が出現。帰国者・接触者相談センターに相談。 207月29日 保健製薬環境センターによる検査の結果、新型コロナウイルス感染症と確定 行動歴7月24日 大阪府内から帰省7月26日 c町の体育館及びa町の飲食店に立ち寄り25⑶ 本件店名の公表3 徳島県知事(以下「被告知事」という。)は、令和2年7月31日午前10時頃から、定例記者会見(以下「本件記者会見」という。)を行い、本件感染者の同居の家族1名が新型コロナウイルスに感染したこと 徳島県知事(以下「被告知事」という。)は、令和2年7月31日午前10時頃から、定例記者会見(以下「本件記者会見」という。)を行い、本件感染者の同居の家族1名が新型コロナウイルスに感染したことなどを発表するとともに(県内25例目)、店名を公表することについて店側の同意が得られたとして、本件感染者が同月26日に立ち寄り飲食した徳島県a町の飲食店の店名が5「王王軒本店」であると発表した(本件店名公表。甲5の1)。 3 関係法令等本件に関連する法令及び厚生労働省の各都道府県衛生主管部等宛ての事務連絡の内容は別紙のとおりである。 4 争点10⑴ 本件店名公表に係る同意の有無(争点1)⑵ 本件店名公表の相当性・妥当性(争点2)⑶ 原告らの損害(争点3)5 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(本件店名公表に係る同意の有無)15(原告らの主張)原告王王軒の代表取締役であるAは、本件店名公表に同意していない。Aは、令和2年7月30日午前、徳島保健所の担当者から電話連絡を受け、本件感染者が本件飲食店を利用しており、本件飲食店の場所や店名が公表される可能性があることを突然告げられた。これに対し、Aは、公表は本当にや20めて欲しいと同担当者に伝えている。Aは、同担当者から、公表するかどうかは最終的には知事の判断となる旨を伝えられた際にも、「それならばしょうがない。」などと述べたことはない。 (被告の主張)徳島保健所の担当者は、令和2年7月30日午前、Aへ電話連絡し、本件25感染者が同月26日午後5時30分頃から同日午後5時50分頃までの間4 に本件飲食店を利用していたこと及び本件飲食店の店名を公表する可能性があることを伝えた。これに対して、Aが本 本件 感染者が同月26日午後5時30分頃から同日午後5時50分頃までの間 に本件飲食店を利用していたこと及び本件飲食店の店名を公表する可能性があることを伝えた。これに対して、Aが本件飲食店の店名を公表しないで欲しい旨述べたことから、同担当者は、Aに対し、公表に理解を得られるよう丁寧に繰り返し説明をした上、最後は被告知事の判断となる旨告げたところ、Aは「それならばしょうがない。」と述べたのであり、Aは、本件店名公 表について同意していた。 ⑵ 争点2(本件店名公表の相当性・妥当性)(原告らの主張)ア感染症法16条の定める要件を充たさないこと 感染症法16条1項は、情報公表の前提として、収集した感染症に関す る情報について分析を行う必要があること、公表する情報は、感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報並びに当該感染症の予防及び治療に必要な情報であることを規定している。ところが、本件において、被告がどのように情報の分析を行ったのか不明である上、本件飲食店で感染者が「発生」したものではなく、本件飲食店の店名は、感染症の発生状況、動 向及び原因に関する情報ではない。さらに、本件店名公表の時点においては、本件飲食店の従業員らの陰性が確認されており、本件飲食店の店名は、直ちに当該感染症の予防及び治療に必要な情報ともいえない。 加えて、同条2項は、情報を公表するに当たって、個人情報の保護に留意しなければならないと規定しているところ、本件店名公表は、付け足し のように興味本位での情報提供がされたにすぎず、極めて雑ぱくであり、個人情報の保護に留意していない。 イ本件店名公表が社会的相当性を著しく欠くこと 本件店名公表目的の相当性、公表の必要性・緊急 での情報提供がされたにすぎず、極めて雑ぱくであり、個人情報の保護に留意していない。 イ 本件店名公表が社会的相当性を著しく欠くこと 本件店名公表目的の相当性、公表の必要性・緊急性①本件店名公表が、本件感染者が本件飲食店に立ち寄ってから5日後に25行われていること、②本件店名公表が行われた際、被告において既に本件5 飲食店の従業員ら及び本件感染者と同行していた友人らの陰性が確認されており、追跡不可能な不特定の客が感染していた可能性がほとんどなかったこと、③本件飲食店で飲食をした者に対し検査をするよう告知するなどせず、単に追加の情報提供として、本件感染者が立ち寄った飲食店が「王王軒本店」であると述べたにすぎないことからすれば、本件店名公表は感5染拡大防止につながるものではなく、本件店名公表の目的に相当な理由は見いだせない。 また、本件感染者は本件飲食店で飲食しただけであり、本件飲食店での感染拡大の可能性が極めて低かったこと、現に本件飲食店での二次感染が生じていないことが明らかであったことからすれば、本件店名公表の必要10性はない。さらに、本件感染者の同行者である友人らの陽性も確認されておらず、いわゆるクラスター発生事案ではなかったのであるから、本件店名公表の緊急性もなかった。 本件店名公表の方法の相当性仮に、本件店名公表の目的が、本件飲食店に居合わせた他の追跡不可能15な不特定の客への注意喚起によって感染の拡大防止を図ることにあったのだとすれば、少なくとも、本件感染者が本件飲食店に居合わせた時間帯を積極的に公表し、同時間帯に本件飲食店に居合わせた客に対し、検査等を行うように呼びかけたりする必要がある。ところが、被告知事は、本件感染者が本件飲食店にいた時間帯を積極的に公表 に居合わせた時間帯を積極的に公表し、同時間帯に本件飲食店に居合わせた客に対し、検査等を行うように呼びかけたりする必要がある。ところが、被告知事は、本件感染者が本件飲食店にいた時間帯を積極的に公表せず、上記のような呼び20かけを行うこともしていない。また、本件飲食店の利用客が、その後の行動について自主的に判断するために必要な情報、すなわち本件感染者と同行していた友人らのPCR検査の状況・結果、本件飲食店従業員らの陰性確認等の各事実も公表していない。そうであれば、本件店名公表がその目的を達成するための方法として相当であったとはいえない。 25加えて、被告知事は、本件店名公表に当たって、不当な差別及び偏見に6 より原告らの営業への影響が出ないよう具体的な公表方法を検討すべき法的義務を負い、本件飲食店で二次感染は生じていないことなどを周知するとともに、本件店名公表が「王王軒」で飲食をすることを控えるような危険告知でない旨を明らかにすべきであったのに、本件飲食店の店名のみを公表したのであり、本件店名公表はその方法において相当性を欠く。 5以上のとおり、本件店名公表は、公表目的の正当性、公表の必要性・緊急性、公表方法の相当性のいずれも認められず、社会的相当性を著しく欠き、違法であることは明らかである。 (被告の主張)ア 感染症法16条に適合するものであること10本件店名公表は、感染症法16条1項に基づき被告が新型コロナウイルス感染症に関して県民等に向けて行う情報の公表の一環として、本件基本方針や令和2年7月28日付け事務連絡に則って行われたものである。 感染者が来訪した施設の所在や名称は、感染症法16条1項が定める公表対象情報に含まれ得るし、公表に当たり関係者の同意も必要とされない。ま1 28日付け事務連絡に則って行われたものである。 感染者が来訪した施設の所在や名称は、感染症法16条1項が定める公表対象情報に含まれ得るし、公表に当たり関係者の同意も必要とされない。ま15た、店名は同条2項が定める個人情報には当たらない。 イ 本件店名公表が社会的相当性を有すること本件店名公表が行われた当時、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、県民に対し、感染拡大防止の取組みを呼びかける必要性と緊急性が極めて高い状況にあった。被告知事は、そのような状況下で、本件飲食店における本20件感染者から他の客への感染の拡大が懸念されたことから、本件飲食店を利用していた不特定の追跡不可能な他の客へ注意喚起をし、感染の拡大防止を図るため、本件店名公表を行ったものである。被告知事は、本件記者会見において、本件飲食店の店名を公表するだけでなく、本件店名公表の意味の説明、対応窓口として設置しているコールセンターや保健所の帰国者・接触者25相談センターの紹介なども行っている。 7 したがって、本件店名公表が、感染症法が予定する相当な手段による情報の公表であったことは明らかであり、国家賠償法上何らの違法性も認められない。 ⑶ 争点3(原告らの損害)(原告らの主張)5ア 原告らが営むような零細飲食店にとって、新型コロナウイルス感染症に関する風評は営業継続に致命的な情報である。特に、全国的にみて新型コロナウイルス感染症の感染者数が少ない小さな町においては、新型コロナウイルス感染症の感染者が立ち寄ったというだけで、業績の悪化やそこで働く従業員やその家族へのあらぬ偏見や差別が生じかねない。そして、実際に、本件10店名公表により、原告らが経営する飲食店の客足はぴたりと止まり、売上は激 ち寄ったというだけで、業績の悪化やそこで働く従業員やその家族へのあらぬ偏見や差別が生じかねない。そして、実際に、本件 店名公表により、原告らが経営する飲食店の客足はぴたりと止まり、売上は激減した。また、インターネット上には、「王王軒に行けば感染するぞ」などの書き込みもされ、原告らの代表者は、客が店に来づらい心境になっているのではないかと感じ、苦しい思いを抱いた。本件店名公表により、原告らの名誉、信用、営業の自由及び財産権が侵害され、財産上の損害以外の無形の 損害が生じたのであり、被告は、原告らそれぞれに対し、慰謝料500万円及び弁護士費用50万円の賠償をすべきである。 イ原告三五八は、「王王軒b店」を経営しているところ、「王王軒」の店名が公表されることで、「王王軒本店」と同様の被害が生じることは明白である。 地元県民であっても、「王王軒本店」と「王王軒b店」を別法人が経営してい ると認識することはない。 (被告の主張)ア本件店名公表は情報提供にとどまり、原告らの営業の自由や財産権に何ら制約を加えるものではなく、営業の自由及び財産権に対する侵害は認められない。 イ原告らが主張する財産上の損害以外の無形の損害の具体的内容は不明で ある。原告王王軒の売上は、本件店名公表以前から、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けており、また、令和2年7月下旬からは、同感染症が徳島県内において急激に拡大する兆候を見せていたことからすれば、仮に、本件店名公表後、原告王王軒の売上の減少があったとしても、このことをもって、原告らが主張する無形の損害が生じたと認めることもできない。 ウ本件店名公表によって公表された店名は「a町の飲食店」である「王王軒本店」であり、原告三五八が経営 も、このことをもって、原告らが主張する無形の損害が生じたと認めることもできない。 5ウ 本件店名公表によって公表された店名は「a町の飲食店」である「王王軒本店」であり、原告三五八が経営する「王王軒b店」を指すものではないことは明確である。また、本件店名公表が、本件感染者と同じ店舗(同一の空間)で飲食をした可能性に着目してされたものであることは、公表の内容からして明らかで、誤認を生ずる可能性もないのであり、原告三五八は、本件10店名公表とは無関係である。 第3 当裁判所の判断1 認定事実前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 15⑴ 新型コロナウイルス感染症に係る社会情勢ア 日本国内においては、令和2年2月以降、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、安倍晋三内閣総理大臣は、同年4月7日、新型コロナウイルス感染症の全国的かつ急速なまん延による国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したとし、新型インフルエンザ等対策特20別措置法32条1項の規定に基づき、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言を発し、7都府県を緊急事態措置を実施すべき区域と定め、同月16日には、その区域を全都道府県に拡大した(弁論の全趣旨)。 イ 前記緊急事態宣言は、令和2年5月25日に解除されたが(新型インフルエンザ等対策特別措置法32条5項)、ほどなく、東京都や大阪府において25新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が増加に転じ、国が、同年6月19 9日に、都道府県境をまたぐ移動の自粛要請を解除すると、都市部での感染拡大が地方にも波及し始め、同年7月29日の時点において、1日の新規感染者数が愛知県、京都府、大阪府、福岡県などで過去最 9 9日に、都道府県境をまたぐ移動の自粛要請を解除すると、都市部での感染拡大が地方にも波及し始め、同年7月29日の時点において、1日の新規感染者数が愛知県、京都府、大阪府、福岡県などで過去最高を更新し、全国でも1200人を超えて過去最高となり、同月30日には東京都でも過去最高の367名の新規感染者が確認され、全国的な感染拡大傾向にあった(乙7、5弁論の全趣旨)。 ウ 徳島県においては、令和2年6月26日、同年4月21日以来の県内3例目の新型コロナウイルス感染症の新規感染者が確認され、さらに、同年7月9日までの2週間に4人の新規感染者が、同月27日からは連日新規感染者が確認され、同月29日には過去最高の5人の新規感染者が確認された(乙107、14、証人B[1頁])。 ⑵ 本件店名公表当時の新型コロナウイルス感染症に関する知見国立感染症研究所感染症疫学センターが作成した令和2年4月20日版「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」(以下「積極的疫学調査実施要領」という。)には以下のとおり記載されていた(乙13)。 15ア 「患者(確定例)」とは、「臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、かつ、検査により新型コロナウイルス感染症と診断された者」を指す。 イ 「患者(確定例)の感染可能期間」とは、発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を含めた新型コロナウイルス感染症を疑う症状を呈した220日前から隔離開始までの間、とする。 ウ 「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。 ・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者25・ 適切 者(確定例)」の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。 ・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者25・ 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護してい10 た者・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者・ その他:手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者5(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。 エ 積極的疫学調査の対象となるのは、「患者(確定例)」及び「濃厚接触者」であり、調査内容としては、基本情報、臨床情報、推定感染源、接触者等必要な情報を収集する。 10オ 調査対象とした「濃厚接触者」に対しては、「患者(確定例)」の感染可能期間の最終曝露日から14日間は健康状態に注意を払い、前向きのフォローアップとして、発熱や呼吸器症状、倦怠感等が現れた場合、医療機関受診前に、保健所へ連絡するように依頼する。 ⑶ 本件感染者の確認15ア 令和2年7月29日、徳島県立保健製薬環境センターによる検査の結果、徳島県内で20例目の新型コロナウイルス感染症の感染者(本件感染者)が確認された(甲2)。 イ 徳島保健所は、積極的疫学調査として、本件感染者の行動歴等の確認を行い、①本件感染者は、当時、大阪府在住の男子大学生であり、同月24日か20ら徳島県に帰省していたこと、②同月26日、徳島県内で開催されたバスケットボールの大会に参加し、その後、同大会に参加した友人8人と共に、本件飲食店を訪れ、午後5時30分頃から午後5時50分 20ら徳島県に帰省していたこと、②同月26日、徳島県内で開催されたバスケットボールの大会に参加し、その後、同大会に参加した友人8人と共に、本件飲食店を訪れ、午後5時30分頃から午後5時50分頃まで滞在したこと、③本件感染者が本件飲食店を訪れた際、本件飲食店はほぼ満席であり、本件感染者及びその友人らは、テーブル席又はカウンター席に2、3名ずつのグ25ループに分かれて着席し、マスクをせずに会話をし、食事をしていたこと、11 ④同月28日に37.8度の発熱をはじめとする症状が出現したことが判明した(甲2、乙4、B〔4、5頁〕)。 ⑷ 本件店名公表に向けた保健所の対応についてア 徳島保健所疾病対策担当主任主事のCは、令和2年7月30日午前8時55分頃、Aに電話連絡し、本件感染者が同月26日午後5時30分頃から同5日午後5時50分頃まで本件飲食店を利用していたこと、本件飲食店には一般客が出入りしており、感染拡大防止のため本件飲食店の場所や店名が公表される可能性があることを説明した。その際、Aは、新型コロナウイルス感染症の影響で売上げが落ちており、更に客が減ると経営が成り立たなくなる、従業員や家族のこともあり公表は止めて欲しいなどと述べたが、Cは、感染10拡大防止のために最終的には被告知事の判断で本件飲食店の場所、店名が公表される可能性がある旨を説明した。(甲3、9、A[4頁]、弁論の全趣旨)イ CとAは、同月30日午前10時頃、再び電話でやり取りを行い、Cは、Aから、本件飲食店の店内の状況や、従業員と本件感染者との接触状況、本件飲食店の座席や従業員の動線等の聞き取りを行った。その結果、本件飲食15店関係者6名のうち3名につき感染が懸念される状況にあったことが確認された。そのやり取りの際にも、A 染者との接触状況、本件飲食店の座席や従業員の動線等の聞き取りを行った。その結果、本件飲食15店関係者6名のうち3名につき感染が懸念される状況にあったことが確認された。そのやり取りの際にも、Aは、Cに対し、「どうしても公表になるのか」、「ただでさえ店の売上げがコロナで落ちているので心配している」などと述べたが、Cは、最終的には被告知事の判断で本件飲食店の場所、店名が公表される可能性があることを再度説明した。(甲3、A[6、7頁]、弁論20の全趣旨)ウ 徳島保健所副局長のDは、同日午前10時15分頃、本件感染者の行動歴、CがAから聴取した当時の本件飲食店の状況や、本件店名公表につきAの同意が得られたことなどを、徳島県保健福祉部に報告した(甲3、乙14、B[3、4頁])。 25エ A及び感染が懸念された本件飲食店の従業員ら2名は、同日午後2時頃、12 徳島保健所に赴き、ドライブスルー方式でPCR検査を受けた。その際、徳島保健所の職員は、Aに対し、本件飲食店の感染対策について聴き取り調査を行い、本件飲食店では、食事が終わった後のカウンターやテーブルを布巾で拭いていることなどを確認したため、カウンターやテーブルはアルコールで拭くことや手指消毒を行うべきことを指導した。なお、A及び上記従業員5ら2名については、同日午後10時頃、PCR検査の結果、陰性が確認された。(甲4、9、乙14、A[7頁])⑸ 本件店名公表に係る経緯ア 被告知事は、令和2年7月30日夕方の会見において、前提事実記載のとおり、本件感染者に関する発表をした。その際、行動歴として徳島県a町の10飲食店に立ち寄ったことは発表されたが、これが本件飲食店であることは明らかにされなかった。 イ 同日午後11時頃、徳島県立保健製薬環境 者に関する発表をした。その際、行動歴として徳島県a町の10飲食店に立ち寄ったことは発表されたが、これが本件飲食店であることは明らかにされなかった。 イ 同日午後11時頃、徳島県立保健製薬環境センターの検査により、本件感染者の同居家族について、県内25例目となる感染が確認された。これを受け、徳島県保健福祉部において協議が行われ、新型コロナウイルス感染症が15急拡大の兆しを見せていること、本件飲食店における本件感染者から他の客への感染の可能性が考えられるが、注意喚起をする手段が本件飲食店の店名を公表する以外にないこと、徳島保健所からは、Aが店名公表につき同意している旨の報告を受けていたことを総合して判断し、本件店名公表を行うことが決定された。(乙14、B[9~11頁])20ウ 徳島県保健福祉部のBは、同月31日午前9時過ぎ頃、被告知事に対し、保健福祉部内において本件店名公表を行うことを決定したこと、Aは本件店名公表につき被告知事の判断ならばしょうがないと述べており、本件店名公表につき同意を得ている旨を報告した(乙3、B[12~15頁])。 エ被告知事は、同日午前10時頃、定例記者会見(本件記者会見)を開き、25新型コロナウイルス感染症に関し、本件感染者の同居の家族1名の新型コ13 ロナウイルス感染症の感染確認(25例目)及びその症状の経過について説明するとともに、県民の不安に答えるため設置されたコールセンターの紹介、感染を心配する場合には保健所に設置されている帰国者・接触者相談センターに相談してもらいたい旨の呼び掛けを行った。また、それまでに県が発表した本件感染者を含む3名(20例目、22例目及び23例目)5の新型コロナウイルス感染症の感染者に関して、25例目の感染者を除くその他の同居家族 い旨の呼び掛けを行った。また、それまでに県が発表した本件感染者を含む3名(20例目、22例目及び23例目) の新型コロナウイルス感染症の感染者に関して、25例目の感染者を除くその他の同居家族らについては、PCR検査の陰性が確認されたことなどを発表するとともに、県民に対し、基本的な感染防止対策の徹底を呼び掛けた。 被告知事は、上記の説明の最後に、「なお、この際、追加の情報提供をさ せていただきたいと思います。昨日30日に発表をさせていただきました県内20例目の方に関しまして、26日の日曜日に立ち寄られたa町の飲食店、このお名前でありますが、同意をいただけました。「王王軒本店」であります。」と述べて、本件店名公表をした。 被告知事は、上記説明後に行われた質疑の中で、本件感染者が本件飲食 店に立ち寄った時間は、同年7月26日午後5時30分から同日午後5時50分までの20分間であること、同行していた友人8人のPCR検査については調整中であること、本件感染者が本件飲食店に立ち寄った際に、本件飲食店に多数の客がおり、居合わせた客らに感染に対する注意を促す必要があったことから、本件飲食店に対し、店名の公表の同意を求めたこ となどを説明した。 (以上、甲5の1)オ徳島新聞は、同月31日10時17分頃、被告が、本件感染者の同居家族が新型コロナウイルスに感染したと発表したこと、被告知事が、定例会見において本件感染者が同月26日に飲食をした飲食店の店名が「王王軒本店」 であると明らかにした旨の記事を同新聞のWEB版に掲載した(甲6)。 ⑹ 本件店名公表後の経緯ア Aは、公表の同意が得られたとして本件店名公表が行われたことを知り、令和2年7月31日午後4時17分頃、徳島 新聞のWEB版に掲載した(甲6)。 14 ⑹ 本件店名公表後の経緯ア Aは、公表の同意が得られたとして本件店名公表が行われたことを知り、令和2年7月31日午後4時17分頃、徳島保健所に電話連絡し、本件店名公表に同意していない旨主張するとともに、本件飲食店の従業員のPCR検査の結果が陰性であったことを公表してほしい、同意が得られていないこと5について知事から謝罪してもらいたいなどと述べた(甲3)。 イ 本件感染者と共に本件飲食店を訪れた友人8人のうち7人については、同日から同年8月1日にかけてPCR検査が実施され、7人全員が陰性であることが確認され、同月9日までに同人らの健康観察が終了した。 2 争点1(本件店名公表に係る同意の有無)について10⑴ Aは、令和2年7月30日午前、徳島保健所のCから電話連絡を受けた際、本件感染者来店の事実及び感染拡大防止のため被告知事による店名公表がされるかもしれない旨を告げられたことから、Cに対し、店名を公表されると経営が成り立たなくなるので止めてほしいと被告知事に伝えることを依頼し、店名公表は被告知事の権限であるとの説明に対しても、絶対に公表は止めるよう15伝えてほしいと最後まで繰り返しお願いをしていたのであって、被告が主張するような、被告知事の判断ならばしょうがないなどと述べた事実はない旨供述する(A[3、4、17頁])。 しかし、認定事実⑷ア、イのとおり、AとCとの間では、Aが、新型コロナウイルス感染症の影響で本件飲食店の売上げが落ちており、更に客が減ると経20営が成り立たなくなるなどとして、店名公表は止めてほしいと繰り返し要求したのに対して、Cが店名公表は被告知事の判断で行われるものである旨繰り返し説明していたことが認められるところ、 減ると経20営が成り立たなくなるなどとして、店名公表は止めてほしいと繰り返し要求したのに対して、Cが店名公表は被告知事の判断で行われるものである旨繰り返し説明していたことが認められるところ、このようなやり取りの経過に照らせば、Aが、被告知事の判断でされるものであればやむを得ないがそれでも店名公表は止めてもらいたいなどと述べた可能性は十分に考えられる。また、本件25店名公表に先立って厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部から15 発出された令和2年7月28日付け事務連絡においては、不特定多数と接する場所の名称等の公表に関しては、関係者の同意を必要とするものではないことが明示されており、同意に係る情報の伝達に関与した徳島保健所及び徳島県保健福祉部の各職員において、Aから店名公表に関する同意を得ることが必須のものと捉えていたとも考えられず、これらの者において、Aから聴取した内容5について、あえて虚偽の報告を行う動機があったとも考えられない。そうであれば、Aは、Cをして、本件店名公表もやむを得ないと表明したものと捉えられるような言動に及んだものと推認できる。 ⑵ もっとも、前記のとおり、Aは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて売上げが減少し、店名が公表されれば、風評被害により死活問題となりかねな10いと考え、Cに対し、本件店名公表を止めるよう繰り返し懇願していたのであって、Cから最後は知事の判断になる旨の説明を受け、それであればしょうがないなどと述べたとしても、その趣旨は、本件店名公表には同意しないが、被告知事がその権限に基づいて本件飲食店の店名を公表するというのであれば、原告王王軒としては、その権限には抗いきれないという諦めの心境を吐露する15ことにあったことは明らかである。そうであれば、Aが、 事がその権限に基づいて本件飲食店の店名を公表するというのであれば、原告王王軒としては、その権限には抗いきれないという諦めの心境を吐露する15ことにあったことは明らかである。そうであれば、Aが、本件店名公表もやむを得ないかのような言動に及んだとしても、そのような言動をもって、被告知事による本件店名公表に同意したものと評価することはできない。 ⑶ したがって、本件店名公表が、Aによる同意があったことを理由に適法であるということはできない。 203 争点2(本件店名公表の相当性・妥当性)について⑴ 感染症法16条の定める要件についてア 原告らは、本件店名公表が、感染症法16条1項の要件を充たしていない旨主張する。しかし、感染症法16条を踏まえて発出された基本方針及び令和2年7月28日付け事務連絡においては、感染者が他者に当該感染症を感25染させる可能性がある時期の行動歴等の情報については、感染症のまん延防16 止のために必要な範囲で公表する必要があり、感染者に接触した可能性のある者を把握できていない場合には、当該感染者の感染経路に鑑みて、感染者と接触した可能性のある者を把握するため及び感染症をまん延させないための適切な行動等を個人がとれるようにするために必要な情報を公表することとされており、これは、感染症法16条の趣旨を具体化したものとして5合理的であり、その内容は新型コロナウイルス感染症についても妥当するということができる。 イ そして、被告知事は、本件感染者が滞在し、食事をした本件飲食店の店名を公表しているところ、①令和2年7月28日に発熱症状が出現した本件感染者が本件飲食店を訪れたのは同月26日であり、新型コロナウイルス感染10症の症状の発生の日から2日前という同感染症の感染可能期間 表しているところ、①令和2年7月28日に発熱症状が出現した本件感染者が本件飲食店を訪れたのは同月26日であり、新型コロナウイルス感染10症の症状の発生の日から2日前という同感染症の感染可能期間内であったこと(認定事実⑵、⑶)、②本件感染者が訪れた際、本件飲食店はほぼ満席であり、本件感染者とその友人らは、テーブル席又はカウンター席に2、3人ずつのグループに分かれて着席し、マスクをせずに会話をし、食事をしていたこと(認定事実⑶イ)、③本件感染者の同居家族の感染が確認されたこと15(認定事実イ、エ)、④本件感染者と共に本件飲食店に立ち寄った友人8人のPCR検査が未了であったこと(認定事実エ)からすれば、本件店名公表時においては、本件飲食店において本件感染者に接触した可能性のある者を把握できておらず、本件感染者から不特定多数の客への感染拡大の危険性が疑われる状況にあったといえる。そうすると、本件感染者が本件飲20食店に滞在した時期に、同所に居合わせた不特定多数の客の注意を喚起し、本件感染者と接触した可能性のある者を把握したり、本件感染者と接触した可能性があることを認識した者が自主的に新型コロナウイルス感染症をまん延させないための適切な行動をとり得るようにするためには、本件店名公表の必要性は高く、その情報を公表することは、感染症法16条1項の趣旨25に沿ったものであったということができる。 17 ウ 原告は、本件店名公表が個人情報の保護に留意していない旨主張するが、そもそも営業中の店名が個人情報に該当するとはいい難い上、不特定多数の客に対する注意喚起をして感染拡大の防止を図るためには店名公表が不可欠であったことに鑑みると、その公表が個人情報の保護に留意していないものであるとはいえない。 5⑵ 本 い上、不特定多数の客に対する注意喚起をして感染拡大の防止を図るためには店名公表が不可欠であったことに鑑みると、その公表が個人情報の保護に留意していないものであるとはいえない。 5⑵ 本件店名公表の社会的相当性ア もっとも、感染症法16条1項の趣旨に沿った情報の公表であったとしても、その公表によって、関係者の法的利益を侵害するおそれがあることは否定できないのであって、その公表の目的、公表の必要性、公表の方法等の諸事情に照らし、その公表が社会通念上相当性を欠くと評価される場合には、10国家賠償法上違法になることもあり得るというべきである。 イ 本件店名公表目的の相当性、公表の必要性・緊急性について本件店名公表の目的は、本件感染者の立ち寄り先を広く県民に情報提供することによって、その当時本件飲食店内に居合わせた不特定多数の客(本件感染者に接触した可能性のある者)に対し、感染可能性の注意喚起をし、こ15れらの客からの更なる感染の拡大を防止することにあったと認められる(認定事実⑸イ)。 そして、本件店名公表当時、日本全国において新型コロナウイルス感染症の感染者数が急増しており、徳島県においても令和2年7月27日からは連日新規感染者が確認され、同月29日には過去最高の5人の新規感染者が確20認されるなど、感染の急拡大が懸念されていた状況にあり(認定事実⑴)、被告において、県内における感染の連鎖を止め、感染の制御と収束を図ることが急務であったことを考慮すれば、本件店名公表の目的は正当なものであったといえる。また、有効に感染拡大防止を図るためには、可及的に速やかな公表が求められることは明らかであるから、同月31日時点における本件店25名公表の必要性・緊急性もあったというべきである。 18 る。また、有効に感染拡大防止を図るためには、可及的に速やかな公表が求められることは明らかであるから、同月31日時点における本件店 名公表の必要性・緊急性もあったというべきである。 これに対し、原告らは、①本件店名公表は、本件感染者が本件飲食店に立ち寄ってから5日も経過した後に行われていること、②本件飲食店においてクラスターは発生していない上、本件店名公表が行われた際、既に本件飲食店の従業員ら及び本件感染者と本件飲食店を利用していた友人らの陰性が確認されており、他の不特定の客が感染していた可能性はほとんどなく、実 際に二次感染は生じていないこと、③本件記者会見においては、本件飲食店で飲食した者に対し検査をするよう告知するなどせず、単に追加の情報提供として、本件感染者が立ち寄った飲食店が「王王軒本店」であると述べたにすぎず、本件店名公表が感染拡大防止につながるものではなく、本件店名公表にも正当な目的は見いだせず、公表の必要性・緊急性も認められないと主 張する。 しかし、①本件店名公表が行われた時期が、本件感染者が本件飲食店に立ち寄ってから5日後であったとしても、新型コロナウイルス感染症の潜伏期間や無症状感染の可能性を考慮すると、同時点から感染可能性がある者を適切に把握・管理し、感染の連鎖を止める必要性が否定されるものではない。 また、②積極的疫学調査実施要領においては、新型コロナウイルス感染症の患者が感染可能期間に接触した者のうち、手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で必要な感染予防策なしで15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する。)が追跡調査の対象とすべき「濃厚接触者」に挙げられていたところ (認定事実1⑵)、本件感染者は 分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する。)が追跡調査の対象とすべき「濃厚接触者」に挙げられていたところ (認定事実1⑵)、本件感染者は、ほぼ満席であった本件飲食店に20分ほど滞在し、マスクをせずに会話をしていたというのであるから(認定事実⑶イ)、本件飲食店の従業員らの陰性が確認されていたとしても(なお、本件店名公表当時、本件感染者の友人らの陰性は判明していない。)、本件飲食店において他の追跡不可能な客が感染していた可能性を否定することはできな い。さらに、③本件記者会見において、被告知事は、まずは本件店名を単に 公表するだけではあったものの、記者からの質疑に対して、即時に本件感染者が本件飲食店に立ち寄った時間帯を明示しており、本件記者会見において、その時間帯を説明することは当初から予定されていたと考えられるし、本件店名を公表する目的についても、本件感染者が本件飲食店に立ち寄った際に、本件飲食店に多数の客がおり、居合わせた客らに対する注意を促す必要があ った旨明示しており(認定事実⑸エ)、本件店名公表の目的が、感染の拡大を防止することにあったことは明らかである。 以上によれば、原告らの主張はいずれも採用できない。 ウ本件店名公表の方法の相当性について当時の徳島県においては、新型コロナウイルス感染症の感染者がそれまで ほとんど確認されておらず(認定事実⑴ウ)、未知のウイルスである新型コロナウイルス感染症に対する警戒感が非常に強く、本件店名公表が、県民の過剰な反応を惹起し、本件店舗の関係者に甚大な風評被害といった不利益を及ぼすおそれがあったことは否定できず、そうであれば、感染拡大防止のために必要な店名公表であったとしても、その公表に際して 県民の過剰な反応を惹起し、本件店舗の関係者に甚大な風評被害といった不利益を及ぼすおそれがあったことは否定できず、そうであれば、感染拡大防止のために必要な店名公表であったとしても、その公表に際しては、慎重な配慮が 求められ、本件店名公表の趣旨を誤認させることのないよう、正確な情報を客観的かつ中立的に公表すべきであったといえる。 これを本件店名公表についてみると、その内容は、新型コロナウイルス感染症の感染者が、本件飲食店に20分程度立ち寄って食事をしたという客観的かつ中立的な事実を述べるものにすぎず、本件飲食店の感染対策の不備等 の問題点を指摘し、あるいは示唆するなどして本件飲食店の名誉や信用等を毀損するものでも、本件飲食店を利用すると新型コロナウイルス感染症に感染する危険性があると誤認させたりするものでもないことは明らかであって、そのような客観的かつ中立的な情報を提供することに加えて、原告らに生じ得る何らかの風評被害を防ぐための具体的な措置を行うことが求めら れていたとまではいえない。 また、本件店名公表は、本件記者会見において、被告知事による「なお、この際、追加の情報提供をさせていただきたいと思います。」との発言に続けてされたものであり、あたかも、公表の必要性が高くない情報を付加的に公表したにすぎないようにも見えなくはない。しかし、被告知事は、本件店名公表に引き続いて行われた記者の質疑において、本件感染者の立ち寄り時 刻、滞在時間、25例目となった同居親族との関係、原告に対して公表の同意を求めた理由等についても即時に回答しており、公表内容やその方法については、感染症の予防及び治療に必要な情報を提供するため、事前に被告において相応の検討がされていたことが明らかであって、本件店名公表が、単に付加的 ついても即時に回答しており、公表内容やその方法については、感染症の予防及び治療に必要な情報を提供するため、事前に被告において相応の検討がされていたことが明らかであって、本件店名公表が、単に付加的に興味本位でされたものであるなどと評価することはできない。 10以上によれば、本件店名公表の方法についても、相当性を欠くということはできない。 ⑶ 小括以上を総合すると、本件店名公表は、公表の目的の正当性、公表の必要性・緊急性、公表の方法の相当性のいずれも認められ、これが違法であるとはいえ15ない。 第4 結論以上の次第で、原告らの請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。 徳島地方裁判所第2民事部20 裁判長裁判官 島 戸 真25 21 裁判官 原 田 宗 輔 5 裁判官 松 田 祐 紀 1022 (別 紙)関 係 法 令 等 第1 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」5という。令和3年法律第5号による改正前のもの)(定義等)6条 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。 10(2項から7項は省略) 条 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。 10(2項から7項は省略)8項 この法律において「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、第3章から第7章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあ15るものとして政令で定めるものをいう。 (指定感染症に対するこの法律の準用)7条 指定感染症については、1年以内の政令で定める期間に限り、政令で定めるところにより次条、第3章から第7章まで、第10章、第12章及び第13章の規定の全部又は一部を準用する。 20(情報の公表)16条 厚生労働大臣及び都道府県知事は、第12条から前条までの規定により収集した感染症に関する情報について分析を行い、感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報並びに当該感染症の予防及び治療に必要な情報を新聞、放送、インターネットその他適切な方法により積極的に公表しなければ25ならない。 23 2項 前項の情報を公表するに当たっては、個人情報の保護に留意しなければならない。 第2 新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令(廃止前のもの)(新型コロナウイルス感染症の指定)51条 新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和2年1月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。 次条及び第3条(同条の表を除く。)において単に「新型コロ ルス(令和2年1月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。 次条及び第3条(同条の表を除く。)において単に「新型コロナウイルス感染症」という。)を感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以10下「法」という。)第6条第8項の指定感染症として定める。 第3 厚生労働省健康局結核感染症課令和2年2月27日事務連絡「一類感染症が国内で発生した場合における情報の公表に係る基本方針」(抜粋。甲7[3~7頁]。 15以下「本件基本方針」という。) 1 公表の目的について感染症のまん延を防止し、感染症による健康リスクが個人や社会に与える影響を最小限にするためには、感染症の発生状況等に関する情報を積極的に公表20する必要がある。 なお、当該情報の公表に当たっては、感染者等に対して不当な差別及び偏見が生じないように、個人情報の保護に留意しなければならない。 2 公表する情報について原則として、以下の情報を公表することとする。 25(⑴、⑵は省略)24 ⑶ 感染者の行動歴等の情報感染者が他者に当該感染症を感染させる可能性がある時期の行動歴等の情報については、感染症のまん延防止のために必要な範囲で公表する必要がある。 他方、他者に当該感染症を感染させる可能性がない時期の行動歴等につい5ては、感染症のまん延防止に資するものではないことから、公表する必要はない。 したがって、感染者が他者に当該感染者を感染させる可能性がある時期の行動歴等について、以下のとおり公表を行うこととする。なお、公表に当たっては、公表による社会的な影響についても十 ない。 したがって、感染者が他者に当該感染者を感染させる可能性がある時期の行動歴等について、以下のとおり公表を行うこととする。なお、公表に当たっては、公表による社会的な影響についても十分に配慮し、誤った情報が広10まることのないように丁寧な説明に努めることとする。 ① 感染者に接触した可能性のある者を把握できている場合公衆衛生上の対策に関する情報について公表することとする。 ② 感染者に接触した可能性のある者を把握できていない場合当該感染者の感染経路(接触感染、飛沫感染又は空気感染等)等に鑑み15て、感染者と接触した可能性のある者を把握するため及び感染症をまん延させないための適切な行動等を個人がとれるようにするために必要な情報を公表することとする。 また、その際には誤った情報が広まることのないように、感染者の症状、他者へ感染させる可能性がある接触の有無等の正確な情報を発信するこ20ととする。 (3は省略) 第4 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部令和2年7月28日事務連絡「新型コロナウイルス感染症が発生した場合における情報の公表について25(補足)」(抜粋。甲7。以下「令和2年7月28日付け事務連絡」という。)25 基本方針においては、感染者に接触した可能性のある者を把握できていない場合に、感染者と接触した可能性のある者を把握するため及び感染症をまん延させないための適切な行動等を個人がとれるようにするため、「不特定多数と接する場所の名称」、「他者に感染させうる行動・接触の有無」等を公表すること等をお5示ししているところ、当該公表については次のとおりの取扱いであるので、ご了知いただけますようにお願いし 定多数と接する場所の名称」、「他者に感染させうる行動・接触の有無」等を公表すること等をお5示ししているところ、当該公表については次のとおりの取扱いであるので、ご了知いただけますようにお願いします。 ・ 当該公表は、場所の名称を公表する場合を含め、関係者の同意を必要とするものではないこと。なお、感染者等に対して不当な差別及び偏見が生じないように、個人情報の保護に留意する必要があること。 10以 上

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