平成19(行ウ)339 固定資産評価審査決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年3月6日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文8,164 文字)

主文 小平市固定資産評価審査委員会が原告らに対してそれぞれ平成18年11月21日付けでした別紙物件目録記載1ないし9の各土地について固定資産課税台帳に登録された同18年度の価格に係る審査の申出に対する決定をいずれも取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求小平市固定資産評価審査委員会が原告らに対してそれぞれ平成18年11月21日付けでした別紙物件目録記載1ないし9の各土地について固定資産課税台帳に登録された同18年度の価格に係る審査の申出に対する決定のうち,同各土地の価格が同目録記載の各原告ら主張額を超える部分の審査の申出を棄却した部分をいずれも取り消す。 第2事案の概要本件は,別紙物件目録記載1ないし9の各土地(ただし,地積の記載は,登記記録上のものである。以下,これらの各土地を併せて「本件各土地」といい,個別には,同目録記載の番号により特定して「本件土地1」等という。)の共有者である原告らが,本件各土地に係る平成18年度の固定資産税の課税標準として小平市長が決定し固定資産課税台帳に登録した価格を不服とし,小平市固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ,同委員会がこれを棄却する旨の決定をしたため,被告に対し,同決定の取消しを求める事案である。 前提事実本件の前提となる事実は,次のとおりである。いずれも証拠等により容易に認めることのできる事実であるが,括弧内に認定根拠を付記している。 (1)原告らは,いずれも本件各土地の共有者であり(本件土地1及び本件土地2についての共有持分は原告らが各3分の1であり,本件土地3から本件土地9までについては,登記記録上及び固定資産課税台帳上は,平成▲年ころに死亡した原告らの母親である被相続人Aの所有名義となっているが,原告らは 有持分は原告らが各3分の1であり,本件土地3から本件土地9までについては,登記記録上及び固定資産課税台帳上は,平成▲年ころに死亡した原告らの母親である被相続人Aの所有名義となっているが,原告らはこれらを他の相続人と共に相続し,現に共有している。),本件各土地に係る固定資産税の納税義務者である。(甲1の1ないし9,2及び3の各1及び2,5の1及び2,24)(2)本件各土地は,いずれも公図が現況と相違するいわゆる地図混乱地域に位置する。(甲4,23の1ないし23)(3)小平市長は,本件各土地について,平成18年度の固定資産税の課税標準価格を下記のとおり決定してこれらを固定資産課税台帳に登録し(以下,これらの登録価格を併せて「本件各登録価格」という。),平成18年5月1日付けで本件各登録価格に係る納税通知書を原告らに交付した。 なお,固定資産税について固定資産の価格は「適正な時価」をいうものと規定され(地方税法341条5号),市町村長は,同法388条1項に基づく固定資産評価基準(昭和38年自治省告示158号。以下「評価基準」という。)によって固定資産の価格を決定しなければならないと規定されている(同法403条1項)ところ,本件において,小平市長は,評価基準及びこれに基づいて定められた小平市固定資産(土地)評価事務実施要領によっ て本件各登録価格を決定したものである。また,小平市税条例施行規則(昭和35年小平市規則第8号)24条は,「土地又は家屋に対する固定資産税の納税義務者は,賦課期日現在において登記簿に登録されているその土地又は家屋の地目及び地積又は種類,構造及び床面積が事実と相違する場合においては,1月31日までに土地については第44号様式の土地使用状況申告書により家屋については第45号様式の家屋使用状況申告書により市長に申 目及び地積又は種類,構造及び床面積が事実と相違する場合においては,1月31日までに土地については第44号様式の土地使用状況申告書により家屋については第45号様式の家屋使用状況申告書により市長に申告しなければならない。」と規定するところ,原告らは,本件各土地の各地積を個別に特定して記載した土地使用状況申告書は提出していない。 (甲2及び3の各1及び2,5の1及び2)記不動産登記簿に登記固定資産課税台帳に本件土地平成18年度の価格されている地積登録された地積 42.97m42.97m571万8318円 89.25m89.25m1187万7122円 48.19m48.19m641万2980円 49.58m49.58m659万7957円 62.80m62.80m835万7235円 42.97m42.97m571万8318円 148.16m148.16m1971万6688円 52.00m52.00m692万0004円 95.00m95.00m1264万2315円 (4)原告らは,本件各登録価格を不服として,平成18年6月23日付けで小 平市固定資産評価審査委員会に対しそれぞれ審査の申出をしたところ,同委員会は,同年11月21日,これらをいずれも棄却する旨の決定(以下,併せて「本件各決定」という。)をした。(甲5の1及び2,17)(5)原告らは,平成19年5月28日,本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実) 争点及びこれに関する当事者の主張の要旨本件の争点は,本件各土地の地積が不動産登記簿に登記されている地積と同一であることを基にする本件各登録価格が,「適正な時価」(地方税法341条5号)に当 争点及びこれに関する当事者の主張の要旨本件の争点は,本件各土地の地積が不動産登記簿に登記されている地積と同一であることを基にする本件各登録価格が,「適正な時価」(地方税法341条5号)に当たるか否かであり,これに関する当事者の主張の要旨は次のとおりである。 (1)被告の主張ア評価基準において,各筆の土地の評価額を求める場合に用いる地積は,登記簿に登記されている土地については,原則として登記簿に登記されている地積(以下「登記地積」という。)によるものとされているが,登記地積が現況の地積(以下「現況地積」という。)よりも大きいと認められる場合における当該土地の地積は,現況地積によるものとされている。 イ現況地積よりも登記地積が大きい場合,その土地の所有者,すなわち納税義務者の採り得る措置としては,地積更正の登記の申請をする方法があるが,本件のように,複数の土地があり,その土地のいずれもが地図混乱地域に存在するため,登記地積が現況地積より大きいものである蓋然性ががい極めて高いものの,土地の筆界の確定が困難であり,かつ,土地改良事業若しくは土地区画整理事業による是正又は国土調査法に基づく地籍調査に よる是正が期待できない事案においては,上記の申請をすることは容易ではない。 しかしながら,そのような場合であっても,小平市税条例施行規則24条所定の土地使用状況申告書に現況地積を記載し,これを小平市長に提出することなどによって,現況地積を基にした固定資産の価格の決定がされる余地はあるのであり,小平市では,原告らに対して繰り返しこのような申告をするように促しているものの,原告らは,本件各土地の相互の位置関係等が不明であり,これらの各地積も不明であるとして,これに応じようとしない。 ウ本件各土地の筆界の特定や各筆の土地の地積の確定 申告をするように促しているものの,原告らは,本件各土地の相互の位置関係等が不明であり,これらの各地積も不明であるとして,これに応じようとしない。 ウ本件各土地の筆界の特定や各筆の土地の地積の確定は,その所有者である原告らのするべきことであって,小平市固定資産評価審査委員会の義務ではなく,原告らにおいて本件各土地のそれぞれの現況地積を個別的に明らかにしない以上,登記地積を基にする本件各登録価格は適正である。 (2)原告らの主張ア本件各土地の登記地積の合計は630.92mであるが,その現況地積 の合計は502.15mにすぎないから,本件各土地の各登記地積は,そ の各現況地積よりも大きいものといえる。 ただし,本件各土地は地図混乱地域に位置するから,そもそもその存在すら明確ではなく,ましてや相互の筆界を確定することは不可能であり,原告らにおいて上記の各現況地積を個別的に明らかにすることはできない。 そうであるにもかかわらず,原告らが上記の各現況地積を明らかにしないことなどを理由として,登記地積を基にする本件各登録価格を適正であ ると認定した本件各決定は違法である。 イそして,本件各土地の合計現況地積502.15mの合計登記地積63 0.92mに占める割合を,本件各登録価格にそれぞれ乗じると,別紙物 件目録記載の各原告ら主張額となるから,原告らは,本件各決定のうち,これらを超える部分の審査の申出を棄却した部分の取消しを求める。 第3争点に対する判断 評価基準において,各筆の土地の評価額を求める場合に用いる地積は,登記簿に登記されている土地については,原則として登記地積によるものとされているが,登記地積が現況地積よりも大きいと認められる場合における当該土地の地積は,現況地積によるものとされているところ,前記第2の1の前提事実 いる土地については,原則として登記地積によるものとされているが,登記地積が現況地積よりも大きいと認められる場合における当該土地の地積は,現況地積によるものとされているところ,前記第2の1の前提事実(以下「前提事実」という。)(3)のとおり,本件各登録価格は,本件各土地について,各登記地積を基にして決定されたものである。 なお,評価基準別表第3では,1筆の宅地又は隣接する2筆以上の宅地について,その形状,利用状況等からみて,これを一体をなしていると認められる部分に区分し,又はこれらを合わせる必要がある場合においては,その一体をなしている部分の宅地ごとに一画地とするとされているところ,本件各土地はこの一画地として評価されたものである。 (甲5の1及び2) 小平市固定資産評価審査委員会は,本件各決定において,本件各登録価格が適正であるとの認定をしたが,その決定書の記載の一部を引用すると,下記のとおりである(なお,引用部分中に現れる「重ね図」とは,原告らが同委員会に対して提出した「現況実測図(重ね図)」のことを指し,別紙図面はその写 しである。)。(甲4,5の1及び2)記「重ね図で示されている現況の境界線の距離に関する数値は,平成18年10月24日に実施した実地調査(以下「実地調査」という。)で当委員会が現地を簡易測量した結果,概ね同じ数値であると認められた。よって,α×番12,35,36,39,40,41,56,64及び67の9筆の合計地積でみれば『登記地積が現況地積よりも大きい』ということができる(もっとも,重ね図で示されている土地全体の地積(502.15m)が正確か 否かの判断はできない。重ね図では北側,西側及び南側の境界を道路の中心線として実測しているが,当該境界の位置について隣地所有者の合意を得たものか否か判然としないか 地積(502.15m)が正確か 否かの判断はできない。重ね図では北側,西側及び南側の境界を道路の中心線として実測しているが,当該境界の位置について隣地所有者の合意を得たものか否か判然としないからである。)。」「登記地積によらずに現況地積をもって価格を算定するべきか否か判断するためには,『各筆ごと』の現況地積が明らかにされねばならない。」「しかし,重ね図ではあくまでも前記9筆全体の登記地積が現況地積よりも大きいと認められるにすぎず,各筆ごとの現況地積は明らかにされていない。 これでは評価庁が各筆ごとに価格を算定することは不可能である。また,ほかに各筆ごとに現況地積を明らかにした資料を申出人が提出した事実は認められない。」「各筆の境界は所有者側で主張すべきもので,評価庁の権限で確定できるものではない。」「現況では診療所・居宅部分の敷地は道路,塀により他の所有者の敷地と明確に区分されており,その境界については争い等が現在認められず,また, α×番12,35,36,39,40,41,56,64及び67の各筆が公図上において一団を形成して存在し,かつ,登記簿に申出人ら及び申出人らの被相続人が所有者として登記されている事実から考えると,評価庁が,部分的に差異が存するとしてもこれら各筆が,申出人が診療所・居宅部分として利用している敷地の中に存在するとしてこれらを合わせて一体をなしている部分と認め一画地と認定したことは,合理性があると認められる。」 ところで,固定資産税については,申告納付の方法ではなく,普通徴収の方法(賦課課税方式)が採られており(地方税法364条1項,1条1項7号),その課税標準である固定資産課税台帳に登録された価格(同法349条1項)が適正な時価(同法341条5号)に当たることの立証責任は,その登録価格が適正な時価 り(地方税法364条1項,1条1項7号),その課税標準である固定資産課税台帳に登録された価格(同法349条1項)が適正な時価(同法341条5号)に当たることの立証責任は,その登録価格が適正な時価であると認定した固定資産評価審査委員会の審査決定に係る取消訴訟においては,同委員会を代表者とする被告の側にあるものというべきであるところ,上記の登録価格が適正な時価であることを基礎付ける事実,本件についていえば,その基礎となる地積の正確性についての立証責任も,やはり被告の側にあるものと解することができる。 もっとも,不動産登記法は,不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより,国民の権利の保全を図り,もって取引の安全と円滑に資することを目的とし(同法1条),地積を登記事項とする土地の表示に関する登記(同法34条1項)については,登記官の実地調査権があり(同法29条),また,原則として登記官による実地調査義務があること(不動産登記規則93条本文)などに照らすと,登記地積が現況地積とおおむね一致する例が相当多いであろうことは容易に推認し得ること であるし,前記1のとおり,評価基準においても,登記簿に登記されている土地については,原則として登記地積によって評価額を求めるものとされている。 ただし,このように評価基準が原則として登記地積によって評価額を求めるものとしているのは,実際にすべての土地の現況地積を個別に測量してこれを確定することは現実的に不可能であるか,又は困難であることなどの課税技術上の問題を主な理由とするものであり,小平市税条例施行規則24条が小平市長に対する土地使用状況申告書の提出を納税義務者に求めていること(前提事実(3))も,同様の理由によるものと解することができる。 そうすると,前記 とするものであり,小平市税条例施行規則24条が小平市長に対する土地使用状況申告書の提出を納税義務者に求めていること(前提事実(3))も,同様の理由によるものと解することができる。 そうすると,前記2のとおり,本件各土地の地積の合計として「現況実測図(重ね図)」で示されている502.15mという数値が正確であるか否かの 判断は留保しつつも,「現況実測図(重ね図)」で示されている現況の境界線の距離に関する数値が実地調査の測量結果とおおむね同じ数値であることを認めた小平市固定資産評価審査委員会としては,本件各土地の地積の合計が上記数値と同程度のものであることを明らかに争うものではないところ,上記数値によると,本件各土地の地積の合計は登記地積の合計である630.92mの 約79.6%の割合にすぎないことになり,本件各土地の各登記地積がその各現況地積よりも相当程度大きいものである蓋然性が極めて高い(なお,被告は,このことについて,同様の主張を本件においてしている。)と判断することができるのであるから,地方税法433条1項の定めるところに従い,必要と認める調査その他の事実審査を行って,登記簿の記載以外にその登記地積が現況地積を上回るものではないことを明らかにする証拠その他の資料を徴しなければ,登記地積を基にする本件各登録価格をもって固定資産の価格と認定するこ とはできないはずである。そして,このような証拠等が存在しないのであれば,本件各土地がいわゆる地図混乱地域にあることに照らすと,原告らにおいて本件各土地の各現況地積を個別に明らかにしないからといって,直ちに本件各土地の各登記地積がその各現況地積と一致すると判断することはできないというべきであり,したがって,本件訴訟においても,被告は,本件各土地の各登記地積がその各現況地積を上回るもの いって,直ちに本件各土地の各登記地積がその各現況地積と一致すると判断することはできないというべきであり,したがって,本件訴訟においても,被告は,本件各土地の各登記地積がその各現況地積を上回るものではないことについて,登記簿の記載以外の証拠に基づいて主張立証を尽くすべきものである。 ところが,本件では,本件各土地の各登記地積がその各現況地積を上回るものではないことについて上記のような積極的な主張立証はなく,そうである以上,登記地積を基にする本件各登録価格をもって本件各土地の固定資産の価格と認定した本件各決定は違法であると判断せざるを得ない。 ただし,本件各土地の現況地積の合計が502.15mであるか,これに多 少の増減がある面積であるかは,前記2のとおり,小平市固定資産評価審査委員会が判断を留保しているところであり,本件訴訟においても,証拠上,必ずしも明らかとはいえない。 ところで,裁判所が,審理の結果,固定資産評価審査委員会の認定した価格が適正な時価を上回っていると判断するに至ったが,具体的な価格までは認定することができない場合には,同委員会に改めて審査をやり直させるため,審査決定の全部を取り消すほかないところ,この場合,原告が審査決定のうち一定の価格を超える部分の取消しを求めているときは,審査決定の全部を取り消すことが請求の範囲を超えることにならないかという問題があるが,原告が請求の趣旨に付した一定の価格を超える部分という限定は,訴訟物を限定するも のではなく,裁判所が固定資産の価格を認定して審査決定の一部を取り消す場合における勝訴判決の上限を画するものであり,裁判所が価格を認定しないで審査決定の全部を取り消す場合には,その限定は及ばないものと解するのが相当である。そして,固定資産評価審査委員会に審査をやり直させるために審 訴判決の上限を画するものであり,裁判所が価格を認定しないで審査決定の全部を取り消す場合には,その限定は及ばないものと解するのが相当である。そして,固定資産評価審査委員会に審査をやり直させるために審査決定の全部を取り消す判決と審査決定のうち一定の価格を超える部分を取り消す判決とでは,どちらが原告に有利であるかにつき単純な量的な比較はできないものであるから,本件においては,審査決定の全部を取り消す判決をしても原告の請求を超える判決をすることにはならないというべきである。 したがって,以上の検討の結果に基づき,本件各土地の固定資産の具体的な価格について小平市固定資産評価審査委員会に審査のやり直しを命ずるため,本件各決定の全部を取り消すこととする。 結論 よって,原告らの請求はいずれも理由があるから,本件各決定の全部を取り消すこととし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部杉原則彦裁判長裁判官品田幸男裁判官 島村典男裁判官

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